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「成果報酬 営業」に関する裁判例(9)平成30年 1月25日 東京高裁 平29(行コ)178号 不当労働行為救済命令取消請求控訴事件

「成果報酬 営業」に関する裁判例(9)平成30年 1月25日 東京高裁 平29(行コ)178号 不当労働行為救済命令取消請求控訴事件

裁判年月日  平成30年 1月25日  裁判所名  東京高裁  裁判区分  判決
事件番号  平29(行コ)178号
事件名  不当労働行為救済命令取消請求控訴事件
裁判結果  控訴棄却  上訴等  上告、上告受理申立て  文献番号  2018WLJPCA01256006

裁判経過
上告審 平成30年10月10日 最高裁第二小法廷 決定 平30(行ツ)177号・平30(行ヒ)192号
第一審 平成29年 4月13日 東京地裁 判決 平28(行ウ)8号 不当労働行為救済命令取消請求事件

評釈
田中誠・ジュリ増刊(実務に効く労働判例精選 第2版) 249頁

参照条文
労働組合法3条
労働組合法7条

裁判年月日  平成30年 1月25日  裁判所名  東京高裁  裁判区分  判決
事件番号  平29(行コ)178号
事件名  不当労働行為救済命令取消請求控訴事件
裁判結果  控訴棄却  上訴等  上告、上告受理申立て  文献番号  2018WLJPCA01256006

東京都渋谷区〈以下省略〉
控訴人 日本放送協会
代表者会長 A
訴訟代理人弁護士 永野剛志
同 清水豊
同 鈴木伸治
同 髙木志伸
東京都千代田区〈以下省略〉
被控訴人 国
代表者法務大臣 B
処分行政庁 中央労働委員会
代表者会長 C
指定代理人 W1
同 W2
同 W3
同 W4
同 W5
堺市〈以下省略〉
被控訴人補助参加人 Z労働組合
代表者執行委員長 D
訴訟代理人弁護士 井上耕史
同 河村学
同 野矢伴岳
同 西澤真介

 

 

主文

1  本件控訴を棄却する。
2  控訴費用は控訴人の負担とする。

 

事実及び理由

第1  控訴の趣旨
1  原判決を取り消す。
2  中央労働委員会が中労委平成25年(不再)第53号日本放送協会不当労働行為事件について,平成27年11月4日けでした命令を取り消す。
第2  事案の概要
1  本件は,控訴人と委託契約を締結して放送受信料の集金,放送受信契約締結の取次ぎ等の業務に従事していたE(以下「E」という。)が,控訴人から業務に使用する端末機器の貸与を取り消され,返還を命じられたことなどについて,Eが加入していた被控訴人補助参加人(以下「参加人」という。)から団体交渉が申し入れられたが,控訴人がこれに応じなかったことが不当労働行為に当たるとして,参加人が不当労働行為救済命令の申立てをし,大阪府労働委員会(以下「府労委」という。)は,控訴人と委託契約を締結して上記業務に従事する者(以下「地域スタッフ」という。)は労働組合法(昭和24年法律第174号。以下「労組法」という。)上の「労働者」に当たる等として,救済命令を発し,控訴人は,中央労働委員会(以下「中労委」という。)に再審査の申立てをした(中労委平成25年(不再)第53号)が,中労委がこれを棄却する旨の命令(以下「本件命令」という。)を発したところ,控訴人が本件命令の取消しを求めた事案である。
原審は,控訴人の請求を棄却し,控訴人が控訴した。
2  前提事実並びに争点及びこれに関する当事者等の主張は,次のとおり補正し,次項に当審における当事者等の補充主張を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」第2の1及び2に記載のとおりであるから,これを引用する。
(原判決の補正)
(1) 原判決2頁13行目の「2015人」の次に「,2018年度で1662人」を,同頁15行目の「16」の次に「,23」をそれぞれ加える。
(2) 同4頁7行目の「交渉拒否であり,」の次に「労組法7条1号ないし3号の」を加える。
(3) 同4頁15行目の「発した。」を「発し,命令書の写しは,同年12月10日,控訴人に交付された。」と改める。
(4) 同16頁25・26行目の「「受持区域の変更」」を「「受持区域」の変更」と改める。
(5) 同18頁17行目の「本件業務マニュアルは」の次に「効率的・効果的に委託業務を実施してもらうことを目的として作成され」を加える。
(6) 同19頁21行目の「(ア) 」を「(ア) 控訴人は,各団体との交渉に先立ち,交渉を誠実・紳士的に行うため,交渉ルールなどの必要な原則について,お互いに確認をして取り決めているところ,」と改める。
3  当審における当事者等の補充主張
(1)  地域スタッフの労働者性
(控訴人の主張)
憲法上の勤労者と労組法3条及び労働基準法9条の労働者とは,原則として統一的に解釈されるべきであり,労組法上の労働者も,雇用契約に基づき労働力を提供する者に限られるべきであるところ,地域スタッフは,委託契約により労務を提供する事業者であり,労働者に当たらない。仮に,事業者につき,労組法上の労働者としてその保護を及ぼすべき場合があるとしても,地域スタッフは,以下のアないしオの各考慮要素から見ても,労組法上の労働者とは認められない。控訴人は,地域スタッフの労働条件につき,多くの地域スタッフの利益を代表する複数の事業者団体と丁寧な交渉を重ねた上でその内容を統一的に決め,地域スタッフの処遇に公平性を保つなど,合理的かつ適切に契約内容を決定しており,地域スタッフに労働者性を認め,契約条件についての団体的交渉は労組法上の定められた団体交渉のルールで行うべきとの発想は,私的自治に基づき契約当事者間が策定した集団的な交渉ルールを無視して,労組法上のルールを強制するものであって,私的自治の原則を侵害する。
ア 事業組織への組込み
以下の各事実によれば,地域スタッフが控訴人の事業組織に組み込まれているということはできない。
(ア) 組織内に位置付けられているとはいえないこと。
控訴人においては,訪問集金業務の廃止,契約取次業務への移行とともに,法人委託の比率が拡大し,地域スタッフの比率は減少しており,平成23年度に4162人いた地域スタッフは,平成28年度には1662人に減少し,その業務比率のシェアは15%程度にすぎず,控訴人の契約・収納業務に関する外部委託先の一つであって,地域スタッフが控訴人の業務全体の中で枢要な部分を占めており,控訴人の事業の継続にとって不可欠な存在として,組織内に位置付けられているとはいえない。
また,控訴人は,事務費等の契約内容について,多くの地域スタッフの利益を代表する複数の事業者団体を相手方として30年以上にわたって交渉を重ね,その交渉の結果を受けて実際に事務費等の契約内容を変更しているが,そのような実態に照らしても,地域スタッフは,控訴人の組織内に位置付けられているのではなく,組織外部の委託先の一つである個人事業主であることは明らかである。
(イ) 契約の更新及び餞別金
地域スタッフの契約期間は新規委託契約を除いて3年間と限定されており,契約更新に当たっては,当該地域スタッフの業績を勘案し,低水準の場合には新たな委託契約の締結はせず,契約終了となる場合もある。また,餞別金等各種給付の制度は,地域スタッフとして優秀な人材を確保するために設けたにすぎず,地域スタッフを継続的に勤務させることを目的とするものではない。よって,いずれも地域スタッフが控訴人内部において継続的に勤務することを想定したものではなく,控訴人の事業組織へ組み込まれていることの根拠にはならない。
(ウ) 管理の態様が相当強度とはいえないこと。
地域スタッフの各個人別目標数の設定は,単に委託契約に基づく業務の履行を求める行為であって,地域スタッフの管理ではない。また,地域スタッフによる業務計画表等の提出及び各種報告は,委託契約の内容として,受託契約者の義務であるし,控訴人の地域スタッフに対する特別指導は,自力での業務回復を促進すべく,指導,助言を行うものであり,特別指導に従わないことにより不利益な取扱やペナルティが科されることもなく,強制力を有するものではない。地域スタッフに対するマニュアル等の交付は,地域スタッフにより効率的・効果的に委託業務を実施してもらうことを目的としており,地域スタッフの管理を目的とするものではない。
地域スタッフを一定の区域に配置することは,全国にわたる視聴者からの公的料金の確保という契約の性質に基づくもので,各センター等に配置された職員により業績確保を図るために地域スタッフに対し助言・指導を行うのも当然であり,それへの参加は任意であって,一斉デー等の機会も,一定の業務内容が強制されるわけではない。
いずれの事情も,控訴人の事業組織への組込みという考慮要素の根拠とするのは誤りである。
(エ) 地域スタッフには広範な裁量が認められていること。
地域スタッフには,業務を行う日時や業務量の決定につき,広汎な裁量が認められている。控訴人が,受持区域を指定し,目標数を定めることや,目標数実現に向けた指導・助言等を行うことをもって,地域スタッフに対する相当程度強い管理と評価することは誤りである。
(オ) 再委託及び兼業
地域スタッフの再委託について,委託契約上も,地域スタッフは,協議の上,受持区域外の委託業務を再委託することができ,実績にも加算される。実際も多数の再委託例があって,再委託先も家族以外にも公募を行ったものもあるなど多岐にわたる。さらに,兼業については届出すら必要ないため,実際例は相当数に及ぶ。
イ 契約内容の一方的・定型的決定
以下の各事実によれば,契約内容が一方的・定型的に決定されているとはいえない。
(ア) 報酬等の決定
契約内容の中核というべき報酬等について,控訴人は,約30年以上の長きにわたり,地域スタッフの各事業者団体と協議して全国統一基準としてその内容を決定してきており,控訴人が契約内容を一方的・定型的に決定してきた事情はない。控訴人が,地域スタッフ個人との交渉をせず,事業者団体と交渉して内容を統一的に決めているのは,地域スタッフの処遇に公平性を保つとともに,数千人もの地域スタッフとの個別交渉は現実には不可能であり,それが合理的かつ適切な方法だからである。
(イ) 個別交渉や目標数の設定
委託種別や受持区域については,地域スタッフ個人と個別の協議により決められ,控訴人が一方的に設定・変更することはない。目標数は,国会審議を経た年間予算に基づき設定されるもので,そもそも控訴人と地域スタッフとの協議によって決める性質のものではい。
(ウ) 地域スタッフの裁量
地域スタッフには,個別の業務の日時,業務量,担当地域内での訪問先や訪問の順序等の決定などの広い裁量が認められており,契約内容の一方的・定型的決定という考慮要素を満たさない。
ウ 報酬の労務対価性
地域スタッフは,報酬を事業所得として申告しており,以下の各事実によれば,地域スタッフの報酬に労務対価性があるとは認められない。
(ア) 運営基本額
地域スタッフに対する報酬である事務費は,成果報酬であり,事務費の支払に当たり,地域スタッフ個人の熟練度,技能,年功,年齢,稼働時間などは加味されない。そして,事務費のうち運営基本額は,契約取次等の実績がなければ一切支払われず,また,業務従事実績と訪問件数に応じて7万5000円から15万円の間で実績に応じて倍近く金額が変動するものである。よって,運営基本額は,あくまでも業務の実績・成果に応じて支払われる出来高払いであり,一定額の支払が保証されたものではない。
(イ) 運営基本額以外の月例事務費
運営基本額以外の月例事務費である業績基本額,業績加算額,単価事務費等(以下「業績基本額等」という。)の業績連動の歩合報酬部分については,細かく業績に連動する形で設定されており,業績基本額等は地域スタッフの報酬の多くを占めるものであるから,一定の労務を提供したことへの対価と評価することは不可能である。
(ウ) その他の報酬項目
餞別金,報奨金,慶弔金や業務上・業務外の事由に伴う医療費等を控訴人が負担する制度のうち,報奨金は,地域スタッフの業務の実績・成果に応じて支払われ,その他の給付も平均月収等の業績に連動する要素があり,地域スタッフの業務の実績・成果と無関係に支給されるものではなく,労務の提供に着目した制度であると評価することはできない。慶弔金や医療費等の負担については,労務の対価ではなく,恩恵的給付にすぎない。
(エ) 時間外手当等
地域スタッフには時間外手当は支給されないから,報酬が労務の提供の対価であるとはいえない。また,地域スタッフの業務従事日数や時間は画一的なものではなく,業務の実績・成果に応じて報酬が定まるのであって,稼働日数・労働時間の多寡と報酬額は連動していない。
エ 業務の依頼に応ずべき関係及び指揮監督下の労務関係
地域スタッフは,控訴人との業務委託契約により,業務の委託を受け,これに応じた業務を行うものであるから,業務全体について業務依頼に応ずべき関係が存することは契約上当然のことであるが,控訴人からの個別的な業務の依頼に応じるべき関係はない。また,控訴人が,地域スタッフの個別的な労務の提供について具体的な拘束を与え,あるいは,指揮監督を行うという関係は見い出し難い。
オ 顕著な事業者性
以下のとおり,地域スタッフには,顕著な事業者性が認められる。
(ア) 業務内容の差配
地域スタッフは,業務を行う日時の決定や担当する地域内での訪問先や訪問の順番等個別の業務をいつどのような方法で行うかなど,個別の業務遂行に広汎な裁量を有し,第三者に再委託することも自己の裁量で自由に行い,他の業務との兼業を行うこともでき,収入額は稼働状況と必ずしも比例しない。このように地域スタッフは,業務内容を差配して,収益管理をすることができる。
(イ) 再委託
地域スタッフは,控訴人の許可を得ることなく,再委託の届出をするだけで,自らの判断で再委託をすることができ,実際にも平成23年12月時点で82名のスタッフが再委託を行っており,委託態様も様々である。
(ウ) 兼業
地域スタッフは,業務を行う日時や業務量を裁量により決定できるから,兼業を行うことが十分に可能である。
(被控訴人の主張)
労組法3条に定める労働者は,労働基準法上の労働者よりも広く解し,労働契約によって労務を提供する者のみならず,これに準じて使用者との交渉上の対等性を確保するための労組法上の保護を及ぼすことが必要かつ適切と認められる者を含む。そして,以下によれば,地域スタッフは,使用者との交渉上の対等性を確保するための労組法の保護を及ぼすことが必要かつ適切と認められる一方で,その保護が不必要かつ不適切といえるような顕著な事業者性を基礎付ける事情があるとは認められないから,地域スタッフは,労組法上の労働者に該当するというべきである。
ア 事業組織への組込み
控訴人は,地域スタッフに対し,その業務態様を詳細なマニュアルを用いて指示し,業務遂行上不可欠な携帯端末機器(ナビタン)等を無償貸与し,担当区域及び個人別目標数を設定し,業務計画表を提出させ,目標数を達成させるため,全国各地域の各センター等に配置した職員及び地域スタッフを数名毎のチームに所属させ,各種研修や目標数の達成度が低い地域スタッフには特別指導を行う等,集団的かつ強い管理を行っているのであって,地域スタッフは,控訴人の事業活動に不可欠な労働力として恒常的に労務供給を行い,その事業組織に組み込まれている。
控訴人は,平成22年10月以降,契約取次等業務の委託先を地域スタッフから外部法人へと転換を進めていることから,地域スタッフが担う業務が,控訴人の事業の継続に不可欠な存在として,組織内で位置付けられていない旨を主張するが,本件命令時点における地域スタッフの控訴人組織内の位置付けを左右する事情に当たるとはいえない。
イ 契約内容の一方的・定型的決定
控訴人と地域スタッフの契約内容は,委託種別や受持区域の空欄を補充する以外の個別協議が排除され,一方的かつ定型的に決定されている。
ウ 報酬の労務対価性
控訴人は,地域スタッフに対し,業務遂行の対価として,取次件数に基づく出来高制を基調としつつ,訪問件数をも加味することで,労務の供給を促し,生活保障に資する額に近づける基本給的な性格を有する運営基本額等の報酬を与えており,地域スタッフの報酬は,労務提供の対価に類似する側面を有している。
エ 業務の依頼に応ずべき関係及び指揮監督下の労務関係
地域スタッフは,目標数の達成等に向けた強い働きかけを受け,契約の解約を示唆されるなど,控訴人の業務の依頼に応ずべき関係にあり,業務遂行過程に関する監督,指導等により,労務供給に係る一定の拘束を受けている。地域スタッフの業務の日時や業務量に係る裁量があることについては,その業務が受信契約者等からの個別の依頼を契機とせず,控訴人による集団的管理の下,自らが受信契約者等に働きかけを行うという業務の性格に由来するものであるから,労組法上の労働者性を否定する事情には当たらない。
控訴人は,控訴人と地域スタッフとの間には個別的な業務の依頼に応じるべき関係や,個別的な労務の提供について具体的な拘束を与え,あるいは,指揮監督を行うという関係は見い出し難いと主張するが,上記アにおいて認められる一定の管理状況においては,地域スタッフの契約の実態に即せば,地域スタッフの業務遂行が控訴人の相当程度強い管理下に置かれており,本件委託契約で委託された業務全体について,控訴人の業務依頼に応ずべき関係が存在し,その労務の態様について一定の拘束や指揮監督を受けている関係が認められるというべきである。
(参加人の主張)
労組法上の労働者には,交渉力に格差があることを前提に,労働組合を組織し集団的な交渉による保護が図られるべき者が幅広く含まれるものであって,各考慮要素の具体的検討に当たっては,契約の形式にのみとらわれるのではなく,当事者の認識や契約の実際の運用を重視し,実態に即して客観的に判断すべきものである。地域スタッフは以下のとおり,労組法上の労働者に該当する。
ア 事業組織への組込み
地域スタッフは,控訴人の事業組織に組入れられている。
(ア) 組織内の位置付けについて
地域スタッフの業務が控訴人の事業にとって主要な業務であり,かつ,なくてはならない不可欠の業務であること,それゆえに,控訴人側で継続的にその人員を把握し,かつ,その指示のもとに配置を決定し,業務方法・手段を指定し,教育等を行い,各種マニュアルが整備されていること等から見て,事業組織内に位置付けられていることは明らかである。地域スタッフの業務比率が年々減少していることは,地域スタッフが控訴人の事業組織に組み入れられていることを否定する事情とはならない。
毎年の事業費単価に関して,組合との中央交渉は行われているが,非組合員との交渉は行われておらず,個別交渉による契約条件の変更がされた事例はない。事業者団体の存在により,地域スタッフの労働者性が否定されるものでもなく,事業者団体との交渉の実態があるとしても,地域スタッフに団体交渉の保護を与えるべき必要性と適切性が否定されるわけではない。
(イ) 契約の更新及び餞別金について
地域スタッフの契約期間は形式的には3年間であるが,問題がなければ自動的に契約更新がされ,長期にわたって継続的に本件業務に従事している。また,事務費とは別に支給される各種給付金については,一般餞別金が慶弔金や見舞金,退職金に該当し,雇用保険に代替するものとしての特別餞別金もある。
(ウ) 管理の態様について
特別指導の実施は,解雇手続の一環と同視され,契約上のペナルティとして強制力を持つ仕組みとなっている。業務マニュアルについては,控訴人は,平成22年10月以降使用されていないと主張するが,「NHK業務ガイドブック」と名称を変更しただけで,内容は同じである。一斉デー等は事実上の強制であり,全体会議やチーム会議についても参加するのが前提であり,欠席する場合や遅れる場合には,連絡を入れなければならない。地域スタッフは,業務に従事する地域が指定された上で,休日や就業時間についても事実上管理され,業務の遂行方法は仔細に定められたマニュアル,職員の管理監督に従うことが強制されており,地域スタッフに業務遂行に関する裁量などなく,あるとしてもせいぜい営業職などの類似する外勤業務と同程度のものにすぎないのであり,相当程度強い管理があったものである。
(エ) 広範な裁量,再委託・兼業について
地域スタッフは,担当する区域以外においては取次業務によって契約を獲得しても業績として考慮されず,再委託については届出が義務付けられ,実際上も何らかの特別な事情がなければ再委託が行われることはなく,兼業も,地域スタッフは,控訴人の指導監督のもと,場所的にも拘束され,時間的にも週5ないし7日,1日8ないし10時間の就業を行うから,実際には極めて困難である。
イ 契約内容の一方的・定型的決定
控訴人と地域スタッフの契約は,委託契約書に記載のとおり,控訴人が作成した定型の契約書に,地域スタッフが署名・押印するだけであり,その契約内容に地域スタッフの意向が反映されることはなく,個別交渉の余地は全くなく,個別交渉の実例も存在しない。また,業務の対価として支払われる給付は,控訴人が作成した「事務費・給付のあらまし」(事務費等あらまし)で詳細に定められ,実際に交渉によって契約条件が変更された実例はない。委託種別や受持区域の指定は,契約に付随する控訴人からの制約にすぎないが,これとて個別協議で変更されることは原則としてなく,地域スタッフの希望が通るかどうかは控訴人側の一方的な決定による。
ウ 報酬の労務対価性
月額事務費のうち運営基本額については,出来高への対価という性格を有していることは否定できないものの,労務を提供していない場合と同視できるような例外的な場合でない限り,運営基本額は,当月業務従事実績の件数にかかわりなく,その上限である15万円の半額が支払われることが保障されており,当月業務従事実績の件数との相関は希薄であるから,基本給的な性格を併せ持っている。また,業績基本額等の歩合報酬部分も,労務供給者が自らの労働力を提供して報酬を得ているという関係があれば足り,歩合給部分が多いことにより労働者性が否定されるものではない。地域スタッフは,単に控訴人が定めた業務執行方法に従って労働力を提供し,これに対して報酬を受け取っているにすぎない。
さらに餞別金・報奨金等の支給も,労働契約における労働者の賃金制度と類似し,餞別金は退職金,報奨金は賞与,慶弔金は慶弔手当,医療費は労災給付や傷病手当と類似しているのであって,継続的に労務を提供する人材を確保するために必要な諸制度を採用している。
エ 業務の依頼に応ずべき関係及び指揮監督下の労務関係
上記アの事業組織への組込みその他控訴人と地域スタッフとの関係,地域スタッフの労務提供の実態に即して客観的に見た場合には,地域スタッフには,控訴人からの業務の依頼に応ずべき関係及び指揮監督下の労務関係が存在すると認められる。
オ 顕著な事業者性がないこと。
控訴人は,稼働時間・日数がある程度自由になること,再委託ができること,兼業ができることなどを顕著な事業者性の根拠としてあげる。しかしながら,地域スタッフは月23日,1日10時間程度業務に当たることを年頭において地域区割り,報酬体系の設定が行われており,また,地域スタッフが従事する業務は,控訴人においてしか通用せず,厳密な地域区割りによって他の地域への進出などができないなどの就労実態からみて,地域スタッフが,自己の才覚で利得する機会を有し,自らリスクを引き受けて事業を行う者とみられるとは到底いえない。
(2)  本件団交申入れに対する控訴人の対応が労組法7条2号の不当労働行為に当たらないこと。
(控訴人の主張)
ア 義務的団交事項が存在しないこと。
キュービットは本件委託契約上の業務を遂行する上で不可欠の物品ではなく,それを貸与するか否かは基本的には発注者である控訴人の裁量に基づき判断されるべき事柄であり,少なくとも労働条件(組合員である労働者の労働条件その他の待遇)ではないから,本件団交申入れには,義務的団交事項は存在せず,そもそも不当労働行為の問題は生じない。仮に労働条件その他の待遇に該当するとしても,日常的な軽微な事柄であって,その性質上使用者の労務指揮権に委ねられているものは,義務的団交事項ではないと解されているところ,キュービットの貸与・返還は,これに当たり,義務的団交事項ではない。
イ 本件事前了解の成立
本件事前了解は,これに関する控訴人・本件組合双方の合意書面が作成されていないものの,その交渉記録が書面化され(昭和57年10月18日の交渉の結果に係る乙第140号証の別紙2,乙第136号証の「合意は成立したという立場を双方とることにした」との記載など),その記載は作成経緯や関係証拠との整合性から信用性が高いこと,a労に対する取扱いがそのまま踏襲されていたことから,本件事前了解の全体を本件組合が受け入れているといえる。
また,本件組合は,条件付契約更新制度を承継しており,本件組合がこれを承継しているのであれば,本件事前了解によって承継したものといえるところ,本件組合作成の「条件付契約更新制度の見直しについて(乙184)と題する書面では,「本件組合は組合結成時にすでにあるルールとして否定も肯定もできないままに『交渉にあたっての事前了解』により承継させられたものである」との記載があり,抗議する趣旨があったかどうかに関係なく,これが本件事前了解の成立を前提とする記載であることは明らかである。
さらに,平成4年に組合役員の組合業務従事に関わる応援扱いの依頼に関して本件組合が作成した文書(乙190)には,本件事前了解に基づいて依頼を行うことが明確に記載されている。
また,中労委昭和59年不再第78号事件においてIは,本件事前了解が存在したことを明確に証言しており,本件組合以外の事業者団体も本件事前了解と同じ内容の事前了解に合意して,30年以上の間,当該事前了解に定めるルールに従い実際に交渉が行われている。
これらの事情からすれば,本件事前了解が合意されていることは明らかである。
ウ 本件交渉慣行の存在
平成16年4月以降,平成23年4月までの7年間だけみても,控訴人と参加人との間で40回以上交渉がされているが,その間地域スタッフ以外の者の出席の申し出がされておらず,これは交渉の出席者を交渉内容となる業務等を理解している地域スタッフに限ることで内容の濃い十分案議論ができ,交渉の実も上がるという合理性があるためであり,参加人において本件出席ルールと同様の規範意識があったことは明らかである。
エ その他の正当な理由
本件では,上部団体のメンバーが出席した交渉が2回行われたものの,上部団体からの申入れはされず,本件組合中央本部は,Eにキュービットを貸与しないことについては問題としない態度を示していた。それまで交渉に関与していなかった地域スタッフでない別の労働組合所属のFを出席させることは,交渉の蒸し返しを図ろうとしたもので,控訴人と本件組合との間で長年行われてきた紛争解決の仕組みそのものを混乱させようとする信義に反する不当な要求である。
オ 以上のとおり,本件団交申入れには義務的団交事項が含まれていない上,本件事前了解は成立し,これにより本件交渉ルールが控訴人と参加人との間で存在しており,そのルールの趣旨に従った控訴人の対応は,適法である。また,本件交渉慣行の成立,その他の正当理由という観点からしても,控訴人の対応は労組法7条2号に該当しない。
(被控訴人の主張)
地域スタッフで構成される本件組合及び参加人は,労組法上の労働組合であり,本件団交申入れの事項は,キュービットの貸与,目標数の開示,地域スタッフの希望する担当地域の指定等のいずれも義務的団交事項である組合員の労働条件に関わる事項が含まれている。
よって,地域スタッフでない者が出席することを理由に団体交渉を拒否した控訴人の対応は,正当な理由があるとは認められず,労組法7条2項の不当労働行為に該当する。
なお,控訴人は,控訴人が地域スタッフにより構成される事業者団体との交渉を行っていることをもって,正当な拒絶理由となると主張するが,憲法28条及び労組法は,労働者が団結して労働組合を結成し,使用者と対等な立場に立って,労働条件等に関する団体交渉を行うことを保障しているのであるから,使用者が,事業者団体と交渉を行っていることをもって,労働者や労働組合の団体交渉権を排除する正当な理由とはならない。
(参加人の主張)
ア 本件団交申入れには義務的団交事項が含まれること。
義務的団交事項には,労働者の経済的地位に関わるものであれば,集団的画一的に決定されるものだけでなく,個別的に処遇・決定されるものも含まれる。本件団交申入れは,キュービットの貸与,担当業務に関する目標数の開示,目標数が達成できない場合に行われている特別指導などを交渉事項とするものであり,これらは義務的団交事項である。
イ 本件事前了解が成立していないこと
本件事前了解は成立していない。これを直接裏付ける客観的証拠はなく,控訴人が一方的に作成した文書(乙140別紙2)は客観的証拠とはいえず,交渉記録(乙136),条件付契約更新制度の踏襲に関する文書(乙184),組合専従の踏襲に関する文書(乙190)の記載も,本件事前了解の成立を裏付けるものではなく,本件事前了解が成立したとのIの供述も信用できず,かえってこれを否定するGの供述が信用できる。本件組合がa労の事務所の貸与などの便宜を引き継いだことも,団体交渉手続とは関係がなく,控訴人と他団体との合意があったことも,本件事前了解が合意されたことを意味するわけではない。
なお,控訴人と本件組合との合意文書には,メモという文言と合意成立日が付記されているところ,控訴人が本件事前了解成立の根拠だと主張する各文書(乙130の1,136別紙2,140別紙2)にはいずれもこれらの記載がないこと,控訴人の主張からすると,昭和57年10月18日に本件事前了解が成立しながら,それから1か月も経たない同年11月8日にわざわざ同一事項につき交渉し,より限定的な合意を再度行ったことになって(乙71),極めて不合理であり,本件事前了解が成立しなかったからこそ,後日,より限定的な交渉ルールについての合意がされたと考えるべきである。
ウ 本件交渉慣行も存在しないこと。
平成18年8月1日,参加人とcセンターとの間の団体交渉に,地域スタッフでないd労連事務局長が出席しており,こうした事例からも,本件交渉慣行の成立は否定される。
エ その他控訴人が正当理由であると主張する事項について。
控訴人は,Fを出席させるのは交渉の蒸し返しであり,支部・本部の紛争解決の仕組みそのものを混乱させようとするものと主張する。しかし,上部団体が了解した事実はないし,本件団交申入れに係る団交は,参加人が交渉主体であって,本件組合の中央本部や関西協議会が交渉主体ではないから,参加人が交渉担当者を自主的に決めたところで,これまでの紛争解決の仕組みを混乱させることはない。
第3  当裁判所の判断
1  当裁判所も,控訴人の本件請求は理由がないものと判断する。その理由は,次のとおり補正し,次項のとおり当審における当事者等の補充主張に対する判断を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」第3の1ないし3に記載のとおりであるから,これを引用する。
(原判決の補正)
(1) 原判決23頁18行目の「2015人」の次に「,平成28年度には1662人」を加える。
(2) 同24頁15行目の「2015人と」から同頁17行目末尾までを「2015人,平成28年度には1662人と年々減少している。」と改め,同頁21行目の「21,」の次に「23,」を加える。
(3) 同39頁6行目の「企業組織」を「事業組織」と改め,同頁7行目の「一方的」の次に「・定型的」を加える。
(4) 同40頁25行目の「勤続年数」を「委託期間」と,同頁26行目の「原告に長期間勤務」を「控訴人と長期間委託契約を」とそれぞれ改める。
(5) 同41頁2行目,同頁5行目及び同頁10行目の「勤務する」をいずれも「委託契約を続ける」と改める。
(6) 同44頁22行目の「一方的」の次に「・定型的」を加える。
(7) 同45頁15行目の「一方的」の次に「・定型的」を,同頁16行目の「原告に」の次に「よって」を,同頁17行目の「一方的」の次に「・定型的」をそれぞれ加える。
(8) 同47頁22行目末尾の次に「控訴人は,上記(ア)と同様に,地域スタッフの募集に当たり,これら各種給付制度の充実をうたって,人材の確保を図っている。」を加える。
(9) 同48頁10行目末尾の次に「このことは,控訴人において業績基本給等が歩合給的な意味を持つなどの事情によっても左右されるものではない。」を加える。
(10) 同49頁23行目の「一方的」の次に「・定型的」を加え,同頁26行目の「見いだし難いものの」を「見い出し難いものの,これは戸別訪問により取次業務を行うという委託業務内容の性質上,個別的な依頼は困難であるという事情に由来すると解されるのであり,」を加える。
(11) 同52頁14行目末尾の次に改行の上,以下を加える。
「コ キュービットは,「Qbit」と表記される電子通信決済端末機器であり,これにより地域スタッフ等が受信者宅を訪問した際,受信者に振込手続用紙を交付して送付を待つなどの手続を行うことなく,その場で,口座振替又はクレジットカード払いの方法による放送受信料の支払のための手続を行うことが可能となり,地域スタッフによる本件取次業務を効率化する役割を担っている。(乙63,66)」
2  当審における当事者等の補充主張について
(1)  地域スタッフの労働者性について
控訴人は,憲法上の勤労者,労働基準法上の労働者と同様に,労組法上の労働者も,雇用契約に基づき労働力を提供する者に限られるべきであると主張する。しかしながら,労組法上の労働者については,労働契約によって労務を提供する者のみならず,これに準じて使用者との交渉上の対等性を確保するための労組法の保護を及ぼすことが必要かつ適切と認められる者をも含み,これに当たるか否かについては,契約の実際の運用等の実態に即して,事業組織への組込みの有無,契約内容の一方的・定型的決定の有無,報酬の労務対価性,業務の依頼に対する諾否の自由の有無,指揮監督下の労務の提供の有無,事業者性等の事情を総合考慮して判断すべきであることは,前記1説示のとおりである。控訴人の主張は採用の限りではない。
以下,前示の事情に関する控訴人の主張につき検討する。
ア 事業組織への組込みについて
(ア) 組織内に位置付けられているとはいえないとの主張について
控訴人は,訪問集金業務の廃止,契約取次業務への移行とともに,法人委託の比率が拡大し,地域スタッフの比率は減少し,業務比率のシェアも15%程度にすぎないことから,地域スタッフが控訴人の業務全体の中で枢要な部分を占めており,控訴人の事業の継続にとって不可欠な存在として,組織内に位置付けられているとはいえず,地域スタッフは,組織外部の委託先の一つにすぎないと主張する。
しかしながら,控訴人の事業収入の約96%を受信料収入が占め,受信者の転居等の移動状況や受信料の支払状況等を把握することこそがその収入を確保するための中心的業務であって,地域スタッフによる本件取次業務はそれを担うものとして,控訴人の事業活動において根幹を成す業務の一つであること,控訴人の契約取次等業務に伴う取次件数のうち,地域スタッフによる取次件数の割合は約半分弱であって,その貢献度は高く,口座振替等についても,地域スタッフの働きによって受信者の口座情報を把握している場合もあるなど,実際の受信料の収納についての地域スタッフの貢献度も高く,地域スタッフは,控訴人の事業の継続にとって不可欠な存在として組織内で位置付けられているといえること,控訴人内での地域スタッフの人数や取次件数及びその割合が年々減少していることは,いずれも本件命令時点における地域スタッフの控訴人組織内の位置付けを左右するような事情に当たるとはいえないことは,前記1認定説示のとおりである。
(イ) 契約の更新及び餞別金について
控訴人は,地域スタッフの契約期間は新規委託契約を除いて3年間と限定されており,契約更新に当たっては当該地域スタッフの業績を勘案するのであり,餞別金等各種給付の制度も,地域スタッフとして優秀な人材を確保するために設けたにすぎず,地域スタッフを継続的に勤務させることを目的とするものではないなどと主張する。
しかしながら,地域スタッフが契約を解消する際に支給される一般餞別金は,委託期間に応じて支給額が定められ,年数が長いほど高額になるなど,更新を繰り返し長期間委託契約を続けることが奨励される制度であり,実際にも複数回の更新を重ねて長期間委託契約を続ける例が一般的となっており,この点からも地域スタッフは控訴人の事業組織に組み込まれていたものと見るのが相当であり,餞別金が,優秀な人材確保を目的とする趣旨を含んでいるとしても,上記判断を左右するものではないことは,前記1認定説示のとおりである。
(ウ) 管理の態様が相当強度とはいえないとの主張について
控訴人は,地域スタッフの各個人別目標数の設定,各種報告等は本件委託契約に基づくものであるし,地域スタッフに対する特別指導は,強制力を有するものではなく,マニュアル等の交付も地域スタッフの管理を目的とするものではなく,地域スタッフを一定の区域に配置することは視聴者からの公的料金の確保という契約の性質等に基づくものであり,各センター等に配置された職員による全体集会等を通じた助言・指導も,その参加は任意で,一斉デー等の機会も一定の業務内容が強制されるわけではないなど,いずれも控訴人の事業組織への組込みという考慮要素の根拠とするのは誤りであると主張する。
しかしながら,控訴人は,地域スタッフの契約取次等業務の目標数を一方的に定め,地域スタッフはこれを達成するために業務計画表を作成・提出し,それを踏まえて目標数の達成に向けた進捗状況を報告することが求められ,業績が芳しくない地域スタッフに対しては特別指導が行われ,委託契約の解約を示唆されることもあるなど,控訴人は,地域スタッフを自ら設定した目標数を通じて管理していると評価すべきであり,その管理の態様は相当程度強度なものとみるべきであること,それ以外にも,業務方法に関するマニュアルを作成,配布して,業務遂行の方法を指導し,地域スタッフを一定の区域に配置した上で,各センター等に控訴人の職員を配置し,cセンターにおいては各地域スタッフをチームに加入させ,全体集会,チーム会議や講習会等を開催して助言・指導していること,cセンターでは,一斉デー等の機会を設け,その日の目標を定め,目標達成者の氏名及び獲得件数を公表するなど,営業職員に対するものと類似する管理を行っていること,これらの管理の態様は委託者から独立して業務を行う一般的な委任契約や請負契約の形態とは一線を画する相当強度なものであることは,前記1認定説示のとおりである。地域スタッフの各個人別目標数の設定,各種報告等が本件委託契約に基づくものであり,地域スタッフに対する特別指導や,全体集会等を通じた助言・指導が強制力を有するものでないとしても,前示の判断を左右するものとはいえない。
(エ) 地域スタッフには広範な裁量が認められていることについて
控訴人は,地域スタッフには,業務を行う日時や業務量の決定につき,広汎な裁量が認められており,受持区域を指定し,目標数を定めることや目標数実現に向けた指導・助言等を地域スタッフに対する相当程度強い管理と評価することは誤りであると主張する。
しかしながら,控訴人は,受持区域を指定し,目標数を定めることにより地域スタッフを管理している上,業務の進め方が裁量に委ねられている部分が多いとはいえ,目標数実現に向けた指導・助言等を通じ,地域スタッフに相当程度強い管理が及んでいたとみるべきこと,受持区域外の業務によって契約を締結しても業績としては算定されないこと,以上からすると,一定の裁量を有することにより,地域スタッフが控訴人の事業組織に組み込まれていることを否定することはできないことは,前記1認定説示及び前示のとおりである。
(オ) 再委託及び兼業について
控訴人は,地域スタッフの再委託について,委託契約上も,地域スタッフは,協議の上,受持区域外の委託業務を再委託することができ,実績にも加算されるし,実際も多数の再委託例があり,兼業についても実際例は相当数に及ぶと主張する。
しかしながら,再委託が可能であるとはいえ,その実績は極めて限定されていたことがうかがわれること,兼業が可能とはいえ,それに当てられる時間や収入は相当限定されたものになること,再委託や兼業が可能であることにより,地域スタッフが控訴人の事業組織に組み込まれていることを否定することはできないことは,前記1認定説示のとおりであり,平成24年11月2日に行われた参加人代表者の審問においても,参加人代表者はcセンターの地域スタッフの中に再委託している者はいないと述べていること(乙203)にも照らせば,控訴人の主張するところを考慮しても,地域スタッフが控訴人の事業組織に組み込まれているとの前示の判断を左右するものとはいえない。
(カ) 上記(ア)ないし(オ)のとおりであり,地域スタッフが控訴人の事業組織に組み入れられているということはできないとの控訴人の主張は,採用することができない。
イ 契約内容の一方的・定型的決定について
(ア) 報酬等の決定について
控訴人は,契約内容の中核というべき報酬等について,約30年以上の長きにわたり,各事業者団体と協議して全国統一基準としてその内容を決定してきており,控訴人が契約内容を一方的・定型的に決定してきた事情はないなどと主張する。
しかしながら,本件委託契約書は,地域スタッフの委託種別や受持区域などの一部の項目を除いて記載が統一され,統一されている項目について,控訴人と地域スタッフが個別に交渉するなどして内容を変更したことはなく,地域スタッフに求められる契約取次等業務の目標数は控訴人によって一方的に定められ,支払われる報酬の額も,控訴人が各団体と交渉した上で基準が決められ,その基準に沿って支払われることになっており,地域スタッフの契約内容の大半について,地域スタッフに交渉の余地は残されておらず,控訴人によって一方的・定型的に決定されているというべきであること,控訴人が各団体と協議し,その結果を踏まえて決定しているとしても,控訴人と個々の地域スタッフとの関係においては,控訴人が契約条件の重要な部分を一方的に決定しているものと見ざるを得ないことは,前記1認定説示のとおりである。
(イ) 個別交渉や目標数の設定について
控訴人は,委託種別や受持区域については,地域スタッフ個人と個別の協議により決められ,控訴人が一方的に設定・変更することはなく,そもそも目標数は控訴人と地域スタッフとの協議によって決める性質のものではないと主張する。
しかしながら,委託種別や受持区域が地域スタッフと控訴人が協議した上で,委託スタッフの希望どおりに決まることがあるとしても,契約内容の大部分とその中核を占める報酬は控訴人により一方的に決定され,受持区域内での目標数は控訴人によって一方的に設定されていることに鑑みれば,契約内容の重要な部分を控訴人が一方的・定型的に決定していると認められることは,前記1認定説示のとおりである。
(ウ) 地域スタッフの裁量について
控訴人は,地域スタッフには,個別の業務の日時,業務量,内容の決定の広い裁量が認められており,契約内容の一方的・定型的決定という考慮要素を満たさないと主張する。
しかしながら,地域スタッフが,業務の進め方につき一定の裁量を有しているとしても,前示のとおり,事業組織に組み込まれ,契約内容の重要な部分を控訴人が一方的・定型的に決定しているとの評価を左右するものとはいえない。
(エ) 上記(ア)ないし(ウ)のとおりであり,契約内容が一方的・定型的に決定されているとはいえないとの控訴人の主張は採用することができない。
ウ 報酬の労務対価性
(ア) 運営基本額について
控訴人は,地域スタッフに対する報酬である事務費は,成果報酬であって,そのうち運営基本額は,契約取次等の実績がなければ一切支払われず,業務従事実績と訪問件数に応じて7万5000円から15万円の間で実績に応じて倍近く金額が変動するものであるから,あくまでも業務の実績・成果に応じて支払われる出来高払いであると主張する。
しかしながら,1か月の間に相当程度の労務を提供しながら1件の契約取次等の実績にもつながらないという事態は極めてまれなことと考えられ,支払われる運営基本額と業務従事実績との相関は希薄であって,出来高への対価としての性質は乏しく,基本給的な性格をも併せ持っていると評価するのが相当であることは,前記1認定説示のとおりである。
(イ) 運営基本額以外の月例事務費について
控訴人は,運営基本額以外の月例事務費である業績基本額等の業績連動の歩合報酬部分について,業績に連動する形で細かく設定されており,地域スタッフの報酬の多くを占めるものであるから,一定の労務を提供したことへの対価と評価することはできないと主張する。
しかしながら,地域スタッフの報酬全体に占める運営基本額の割合は高くないとしても,控訴人においては最低限15万円が支給されることが前提となり,そこから歩合給的に業績基本額等が上積みされるという報酬の体系が採用されているとみることができ,このような報酬の体系を全体としてみると,労務提供の対価としての基本給的な部分があることに着目して労務対価性を認めることが不当といえないことは,前記1認定説示のとおりである。
(ウ) その他の報酬項目について
控訴人は,餞別金,報奨金や慶弔金その他の給付も平均月収等の業績に連動する要素があり,地域スタッフの業務の実績・成果と無関係に支給されるものではなく,また,医療費負担などは恩恵的なものであり,労務の提供に着目した制度であると評価することはできないと主張する。
しかしながら,一般的な退職金と類似性が認められる餞別金,賞与と類似性が認められる報奨金や慶弔金,業務上・業務外の事由に伴う医療費等を控訴人が負担する制度など,全体としてみると,通常の労働契約における労働者の賃金制度と類似した制度設計がされており,餞別金等は,ある程度継続的に労務を提供する人材を確保するために必要とされるものであって,これらは労務の提供に着目した制度とみるのが相当であることは,前記1認定説示のとおりである。
(エ) 時間外手当等がないことについて
控訴人は,地域スタッフには時間外手当は支給されないから,報酬が労務の提供の対価であるとはいえないし,稼働日数・労働時間の多寡と報酬額は連動していないと主張する。
しかしながら,地域スタッフに時間外手当が支給されておらず,労務に従事した時間当たりの対価が支払われるという報酬体系が採用されていないとはいえ,地域スタッフの報酬が労務の提供に対する対価としての性質を有することは否定できないこと,稼働時間や稼働日数とそのまま連動していない報酬体系を採用することは通常の労働契約においてもありえることは,前記1認定説示のとおりである。
(オ) 上記(ア)ないし(エ)のとおりであり,地域スタッフの報酬の労務対価性を否定する控訴人の主張はいずれも採用することはできない。
エ 業務の依頼に応ずべき関係及び指揮監督下の労務関係
控訴人は,地域スタッフは,控訴人からの個別的な業務の依頼に応じるべき関係や,個別的な労務の提供について具体的な拘束を与え,あるいは,指揮監督を行うという関係は見い出し難いのであるから,労働者性は否定されるべきであると主張する。
しかしながら,地域スタッフは,個別的業務の依頼に応ずるべき関係や個別的な労務の提供について具体的な拘束を与え,あるいは指揮監督を行うという関係は見い出し難いものの,目標達成に向けて業務に関する事細かな指導を受け,目標達成に至らなかったときは委託業務の削減や本件委託契約の解約等の段階的な措置を講じられることが予定されているなど,その業務遂行が控訴人の相当程度強い管理下に置かれていることに鑑みれば,控訴人の業務依頼に応ずべき関係が存在し,その労務の提供について一定の拘束や指揮監督を受けている関係が認められることは,前記1認定説示のとおりである。控訴人は,これら控訴人と地域スタッフとの関係は,本件委託契約に基づくものあるいは契約内容そのものであると主張するが,そういった側面を有するとしても,上記結論が左右されるものではない。控訴人の主張は採用することができない。
オ 顕著な事業者性
控訴人は,地域スタッフは,個別の業務をいつどのような方法で行うかなど,個別の業務遂行に広汎な裁量を有し,第三者に再委託することも,他の業務との兼業も自由にでき,収入額は稼働状況と必ずしも比例しないのであり,地域スタッフは,業務内容を差配して,収益管理をすることができると主張する。
しかしながら,地域スタッフは,再委託や兼業が可能であるとしても,その実態に鑑みれば,地域スタッフが控訴人から独立しており,事業者性が顕著であるということはできないこと,地域スタッフが事業所得として確定申告をし,社会保険に加入せず,各戸を訪問する移動手段につきバイク等の貸与やガソリン代の支給を受けていない点を含めて考えても,地域スタッフの事業者性が顕著であることを基礎付けるような事情であると認めることはできないことは,前記1認定説示のとおりである。控訴人の主張は採用することができない。
カ 以上のとおり,地域スタッフが労組法上の労働者には当たらないとの控訴人の主張は,いずれも採用することができない。
(2)  本件団交申入れに対する控訴人の対応が労組法7条2号の不当労働行為に当たらないとの主張について
ア 義務的団交事項が存在しないことについて
控訴人は,キュービットは本件委託契約上の業務を遂行する上で不可欠の物品ではなく,それを貸与するか否かは基本的には発注者である控訴人の裁量に基づき判断されるべき事柄であり,少なくとも労働条件ではないから,本件団交申入れには義務的団交事項は存在せず,そもそも不当労働行為の問題は生じないと主張する。
しかしながら,義務的団交事項とは,団体交渉を申し入れた労働組合の構成員たる労働者の労働条件その他の待遇又は当該労働組合と使用者との団体的労使関係の運営に関する事項であって,使用者に処分可能なものをいうと解され,労働者の経済的地位にかかわるものであれば,集団的画一的に決定されるものだけでなく,個別的に処遇・決定されるものも含まれるものと解すべきところ,キュービットを使用することにより,地域スタッフ等が受信者宅を訪問した際,その場で,口座振替又はクレジットカード払いの方法により,放送受信料の徴収を行うことが可能となり,その貸与の有無は本件取次業務による取次件数に大きく影響するものと解されるから,キュービットの貸与の有無は,地域スタッフの経済的地位にかかわるものであり,労働者の労働条件にかかわる事項であると認められる。
したがって,本件団交申入れは,義務的団交事項を含むものというべきである。控訴人の主張は採用することができない。
イ 本件事前了解の成立について
控訴人は,控訴人と本件組合との間では本件事前了解が成立しており,交渉記録等(乙136,140別紙2)はこれを客観的に証明するものであって,控訴人及び本件組合は,本件事前了解に従った行動を取っており,本件事前了解後に作成された書面(乙184,190)においても本件事前了解の成立を前提とした記載があることなどを主張する。
しかしながら,交渉記録等(乙136)の「両者の合意は成立したという立場を双方とることとした」の表現振りは,実際に合意が成立したか否かを明確にしていないとも言い得ること,この文書については,控訴人側で作成し,その文面につき本件組合にその適否を諮り,その了解を得たという経過も見当たらず,逐語的に記録されたことの裏付けもなく,合意が成立したというのであれば,これを書面化してしかるべきであり,それが困難な事情は見当たらないことからすると,前記の交渉記録等の記載から本件事前了解の成立を認めることはできないことは,前記1説示のとおりであり,このことは,上記交渉記録上の記載を前提として控訴人の内部連絡がされているとの事実(乙140及び同別紙2)があるとしても,左右されるものではない。
また,本件組合が,a労に対する扱いを一部そのまま受け入れたり,踏襲したりした事実があったからといって,他の事項・項目を含めた本件事前了解の全体を本件組合が受け入れており,控訴人との間で合意が成立しているものと推認するのは困難であることも,前記1説示のとおりである。控訴人は,本件組合は,a労に対する扱いを一部ではなくすべて踏襲したと主張するが,事務所の貸与,組合役員の応援の措置,組合費の控除及び委託制度改善検討専門委員会の実施等の受け入れが認められるとしても,直ちに交渉ルールの踏襲が認められるとはいえない。
さらに,本件組合が昭和59年に条件付契約更新制度に関して作成した書面(乙184)には,「b労成立時にすでにあるルールとして否定も肯定もできないままに『交渉にあたっての事前了解』により承継させられた」旨の記載はあるものの,直後に「b労は・・合意した経緯はない」と記載していることからすると,「承継させられた」という文言から直ちに本件事前了解の成立を認めていることにはならないことは,前記1説示のとおりであり,また,本件組合が条件付契約更新制度を承継することを認めているとしても,これにより直ちに本件事前了解の効力を承認するものともいえない。
さらに,平成4年に本件組合が作成した文書(乙190)には,「『日本放送協会とb労働組合との交渉開始にあたっての事前了解』に基づき」との記載はあるものの,本件事前了解に記載されている内容のうち,本件交渉ルールとは無関係な事項に係るものであるところ,一部本件事前了解に含まれる内容を受け入れ,その運用に従っていたとしても,そのことから直ちに本件交渉ルールの承継を含めた本件事前了解全体を受け入れているとは言い難く,そうした合意をしたことを認めたことにもならないことは,前記1認定説示のとおりである。
その他控訴人の主張を踏まえても,本件事前了解の成立を推認させるだけの事情は見当たらず,本件事前了解が成立したとは認められないとの前示の判断を左右するものではない。控訴人の主張はいずれも採用することができない。
ウ 本件交渉慣行の存在について
控訴人は,平成16年4月以降,平成23年4月までの7年間だけみても,控訴人と参加人との間で40回以上交渉がされているが,その間地域スタッフ以外の者の出席の申出がされておらず,これは交渉の出席者を交渉内容となる業務等を理解している地域スタッフに限ることに合理性があるためであり,参加人において本件出席ルールと同様の規範意識があったことは明らかであると主張する。
しかし,参加人の主張する団体交渉における地域スタッフでない者の参加があったとは認められないことは前記1説示のとおりであるものの,少なくとも本件組合傘下の他の支部では,地域スタッフではない者が出席した団交を申し入れ,実際にその者が出席しての団交が行われた例があることから,控訴人と本件組合との間で控訴人が主張するような慣行が成立していたということはできないこと,控訴人と参加人との過去の交渉においても,出席者を地域スタッフに限定するとの議論がなされたことを認める証拠はなく,当事者双方に本件出席ルールと同内容の慣行が存在し,これに従うことについて規範意識が形成されていたと認めることができないことは,前記1説示のとおりである。よって,本件交渉慣行が存在するとの控訴人の主張は採用することができない。
エ その他の正当な理由について
控訴人は,それまで交渉に関与していなかった地域スタッフでない別の労働組合所属のFを出席させることは,交渉の蒸し返しを図ろうとしたもので,控訴人と本件組合との間で長年行われてきた紛争解決の仕組みそのものを混乱させようとする信義に反する不当な要求であると主張する。
しかしながら,本件団交申入れにおいて議題事項とされたEへのキュービットの貸与の問題につき,本件団交申入れ時点までに,控訴人と本件組合又はEとの間で何らかの合意や了解に至っていたとの経過も,Fが他の交渉の場で混乱を生じさせたなどの事情も見当たらず,Fが出席することで紛争の蒸し返しや混乱が生ずるとするだけの根拠に乏しく,仮に混乱の懸念があっても,事前の折衝等を行わずに直ちに出席を拒否することに正当な理由は見い出せないことは,前記1説示のとおりである。控訴人の主張は採用することができない。
3  よって,控訴人の本件請求を棄却した原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第14民事部
(裁判長裁判官 後藤博 裁判官 藤岡淳 裁判官 大須賀寛之)

 

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