「成果報酬 営業」に関する裁判例(50)平成25年12月17日 東京地裁 平25(ワ)828号 損害賠償請求本訴事件(本訴)、委任報酬等請求反訴事件(反訴)
「成果報酬 営業」に関する裁判例(50)平成25年12月17日 東京地裁 平25(ワ)828号 損害賠償請求本訴事件(本訴)、委任報酬等請求反訴事件(反訴)
裁判年月日 平成25年12月17日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平25(ワ)828号・平25(ワ)11458号
事件名 損害賠償請求本訴事件(本訴)、委任報酬等請求反訴事件(反訴)
裁判結果 本訴請求棄却、反訴請求認容 文献番号 2013WLJPCA12178016
要旨
◆被告との間で、大手検索サイトで検索した場合に対象サイトを上位に表示させるサービスであるSEOのコンサルティング契約を締結していた原告が、被告による同契約の債務不履行を主張して損害賠償を求めた(本訴)のに対し、被告が、同契約に基づく未払業務報酬の支払を求めた(反訴)事案において、大手検索エンジンでの検索結果などによれば、被告が実施した外部施策に関し本件契約上の債務不履行はなく、大手検索サイトからの警告メール受信以降又は原告が対象サイトへの外部リンク削除依頼をした以降に被告の業務に善管注意義務違反があったともいえず、本件警告メールに対する対応につき被告に説明義務違反はないとして本訴請求を棄却する一方、反訴請求を全部認容した事例
参照条文
民法415条
民法632条
民法633条
民法643条
民法644条
裁判年月日 平成25年12月17日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平25(ワ)828号・平25(ワ)11458号
事件名 損害賠償請求本訴事件(本訴)、委任報酬等請求反訴事件(反訴)
裁判結果 本訴請求棄却、反訴請求認容 文献番号 2013WLJPCA12178016
本訴・平成25年(ワ)第828号 損害賠償請求本訴事件
反訴・平成25年(ワ)第11458号 委任報酬等請求反訴事件
東京都渋谷区〈以下省略〉
本訴原告・反訴被告 株式会社メディアート
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 吉田要介
東京都新宿区〈以下省略〉
本訴被告・反訴原告 株式会社フロムスクラッチ
同代表者代表取締役 B
同訴訟代理人弁護士 藤井総
主文
1 反訴被告は,反訴原告に対し,41万5838円及び内金14万8699円に対する平成24年7月1日から,内金12万9014円に対する同年8月1日から,内金13万8125円に対する同年9月1日から,各支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2 本訴原告の請求を棄却する。
3 訴訟費用は,本訴・反訴事件を通じ,本訴原告・反訴被告の負担とする。
4 この判決は第1項に限り仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 請求
(本訴請求)
本訴被告は,本訴原告に対し,177万8381円及びこれに対する平成25年2月5日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
(反訴請求)
主文同旨
第2 事案の概要
本訴原告・反訴被告(以下「原告」という。)は,本訴被告・反訴原告(以下「被告」という。)との間で,原告を委託者,被告を受託者としてSEOコンサルティング契約を締結していたところ,本件本訴事件は,原告が,被告に対し,被告には同契約の債務不履行があったと主張して,損害賠償及び遅延損害金の支払を求めている事案であり,本件反訴事件は,被告が,原告に対し,同契約に基づく未払の3か月分の業務報酬及び支払約定日の翌日から支払済みまでの遅延損害金の支払を求めた事案である。
1 前提事実
(1) 原告は,美容室経営・ヘアケア商品及び化粧品の企画,製作,販売,広告宣伝デザインの製作等を業とする株式会社である(争いなし)。
被告は,インターネットマーケティング・広告事業等を業とする株式会社である(争いなし)。
(2) SEOとは,利用者が選んだキーワード又はキーワードの組み合わせを使って大手検索エンジンにて検索した結果,上位に表示させるサービスである検索エンジン最適化の略称である(甲4)。
(3) 原告と被告は,平成23年7月22日,契約期間を同年8月1日から平成24年1月末日,初期費用15万円を支払い,月額固定金額9万円及び月額成果報酬上限金額を9万円として対象サイトが約定の順位以内に入った日につき約定の日次成果報酬(いずれも消費税別)を毎月月末締めで翌月末に支払う,期間満了の1か月前までに解約申込がない場合には同条件にて6か月間自動更新する,契約期間中の途中解約は認めないとの約定で原告が取り扱っている商品である「ケラスターゼ」など21のキーワード(以下「対象キーワード」という。)に対応する各対象サイト(以下「対象サイト」という。)に関し,対象検索エンジンを「aサイト又はbサイト」(以下,aサイトを「aサイト」といい,bサイトを「bサイト」という。)としたSEOコンサルティング契約(以下「本件契約」という。)を締結し(甲4),同年2月1日,契約期間を同年7月31日までとして自動更新された。
本件契約における被告の業務は,①内部施策,②外部施策,③原告に対する報告業務であり,原告と被告の間で,①及び③の業務について問題が生じたことはなかった(争いなし)。
なお,本件契約の利用約款には,第3条5項に,「当社が施す外部対策方法は以下のとおりです。自社保有ドメインまたは,提携サイトからの被リンク対策を行うものとします。」,第9条に「当社は,以下の各号の事由による場合,これによってお客様に損害が生じた場合,一切の責任を負わないものとします。1.本サービスの利用開始後,検索エンジンの表示順位が開始前と比較して下位になった場合」との規定(以下「本件免責条項」という。)がある(甲4)。
(4) 原告は,被告に対し,初期費用及び平成23年8月1日から平成24年4月30日分までの本件契約に基づく報酬として合計177万8381円を支払った(争いなし)。
(5) 原告は,平成24年2月8日,bサイトから,対象サイトのうち「http://〈省略〉」に対して警告を受けたため(以下「本件警告メール」という。),同月10日,被告に対し,対応を依頼したところ,被告は,対応は不要である旨の回答をした(争いなし)。
(6) 原告は,被告に対し,外部リンクを外すよう要求し,被告は,原告の要求に応じて外部リンク削除作業を行った。
(7) 原告は,被告に対し,平成25年3月5日に開かれた第1回口頭弁論期日で陳述された本訴状をもって,本件契約を解除する旨の意思表示をした。
2 争点
(1) 被告は,本件契約の外部施策の実施について,善管注意義務を尽くしたといえるか。
(原告の主張)
ア 被告は,本件契約に先立ち,原告に対する被告が実施するSEO対策をプレゼンテーションする際に,「質,量,関連性の揃った」リンクを「手張りする」と説明していたのであり,人がページ毎に内容等を確認した上で,バックリンク元のサイトの内容とバックリンク先のサイトの内容に共通性のある優良なリンクを張る外部施策を行うことが本件契約の内容となっていた。
しかしながら,被告は,外注先に指示をしてバックリンクの作業をさせ,外注先が行ったバックリンクは,ワードサラダなどの機械によって作られた論理的な文章になっていないサイト(甲6の2)からのリンクであるから,バックリンクを張る作業は手作業で行われなかった。
イ 仮に,本件契約締結時から本件警告メール受信までの間,被告の外部施策に善管注意義務違反がなかったとしても,それ以降は,論理的な文章になっていないサイトとの間のリンクの作成は許されないので,そのようなリンクを速やかに除去することが本件契約の債務の本旨に従った履行となるが,被告は,速やかにリンクを除去しなかった。
ウ 原告は,平成24年6月,被告に対し,リンクの削除を依頼したのであるから,リンクが張られた論理的な文章になっていないサイトとのリンクを速やかに除去することが本件契約の債務の本旨に従った履行となるが,被告は,速やかにリンクを除去しなかった。
エ 被告は,本件警告メールへ対応しないことによるリスクを原告に対して説明せず,本件契約に基づく説明義務を果たさなかったため,原告は,本件警告メールへの対応をしなかった結果,検索順位が急激に低下することとなった。
(被告の主張)
被告は,本件契約に基づき,ブログサービスを利用してブログを作成して対象ページへのリンクを設定すると共に,自社で取得したドメイン上にWEBサイトを作成して対象サイトへのリンクを設定する施策を株式会社DYM(以下「DYM」という。)に対して委託して行っており(乙25),その当時におけるSEO業界の水準に基づく外部施策業務を行っていた。
平成23年夏ころには,bサイトがSEO対策を行っているWEBサイトに対してガイドラインに違反する可能性があることを指摘するメールを発するようになったが,検索順位の変動は生じていなかったため,対応しないケースが多かったし(乙5,11,13),被告の顧客の中にもbサイトから警告メールが来たものの検索順位の低下も見られなかったこと,これまでの外部施策を中断した場合には,その効果が失われてしまうこと等を総合考慮し,外部施策の中断やバックリンクの削除をしない方が良いと判断したものである。
平成24年になり,bサイトがパンダアップデート,ペンギンアップデートを実施するなど,検索アルゴリズムの頻繁な変更があり,有効とされるSEOが短期間のうちに変化し(乙5~20),被告も,アップデートの内容が明らかになるに応じて,同年4月ころから,新しいバックリンクの構築と古いバックリンクの削除をすべきと判断して,DYMに対し,バックリンクサイトの構築方針を修正するように指示を出し,同月以降,ブログリンク削除及びオリジナルリンク削除作業を継続しており,被告に善管注意義務違反はない。
(2) 損害額
(原告の主張)
被告の不適切な外部施策の結果,検索順位は低下し,売上げが減少した。その金額は,原告が,被告に対して本件契約の業務報酬として支払った177万8381円を下回ることはない。
(被告の主張)
争う。
被告の外部施策によって,検索順位が低下したとの因果関係が認められる証拠はない。
(3) 本件免責条項による免責
(被告の主張)
仮に,被告に本件契約に基づく善管注意義務違反があり,それによって検索順位が低下したとしても,被告には軽過失しか認められないから,被告は,本件免責条項により免責される。
(原告の主張)
原告は,検索順位低下の責任を理由として損害賠償請求をしているのではないから,本件免責条項は適用されない。
(4) 過失相殺
(被告の主張)
原告は,本件契約締結当時,他のSEO業者とも契約を締結していたこと,内部施策についても,被告のアドバイスを受けて原告自身が実施していたことからして,SEOについて,ある程度の知識と技術を有していたから,SEOには,検索順位低下のリスクがあることを理解した上でビジネス判断により本件契約を締結したのであるから,過失相殺の適用又は類推適用により,被告は責任を負わない。
(原告の主張)
争う。
第3 争点に対する判断
1 前提事実,後掲各証拠(なお,書証の番号は,原則として枝番号を含むものとする。)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
(1) 原告は,平成23年7月末まで約2年間フォー・フュージョン株式会社との間でSEO契約を締結していたところ,同年5月ころから,被告を含めて7社からプレゼンテーションを受けるなどして契約する会社の選定を始めた(甲10,乙32)。
被告は,同年5月27日,原告に対してプレゼンテーションを行い,その際交付した資料には,サイト外部施策として,「質・量・関連性の揃った外部リンクを持続的に張っていくため,クローラーからの評価も高い。」,「バックリンク元のサイト内容とバックリンク先のサイトとの共通性まで評価対象となっているため,それぞれの企業様に合わせてバックリンクのサイトを制作しております。そのため,上記の各サイトは優良リンクとしてクローラーからも高い評価を受けております。」と記載されていた(甲3)。
(2) 被告は,本件契約に基づくリンク制作をDYMに発注し,DYMは,株式会社インタースペース(以下「インタースペース」という。)に対象となるホームページとキーワードを指示した上でリンク制作を発注し,インタースペースは,ブロガーに対して同様の指示をしてリンクを張らせた(乙25,37~39)。
(3) 平成24年3月ころ以降,SEOに関するブログ等でも,bサイトが平成23年夏ころ以降,ワードサラダサイトからのリンクや順位上昇用に用意されたサイトネットワークからのリンク等の外部リンクについてウェブマスター宛に警告メッセージを送信するようになったこと,同様の手法を採っているウェブマスターの全てに対してメッセージを送信している訳ではない様子であること,警告を受けたサイトの中にはペナルティとして順位が大幅に降下させられたものもあることなどが話題となっていた(乙10,12,14)。
bサイトは,平成24年4月ころ,ウェブスパムに対する検索アルゴリズムを変更するアップデート(公式名称ペンギンアップデート)を実施した(乙15~17)。
(4) 原告は,平成24年2月8日,本件警告メールを受けて被告に対して対応を依頼したところ,被告は,原告に対し,本件警告メールへの対応は不要であると説明し(甲10,11),直ちにリンクの削除などは行わなかった(弁論の全趣旨)。
なお,原告は,平成23年7月6日にもbサイトから同様の警告メールを受信しており,平成24年2月10日時点において,被告の前に委託していたSEO業者が原告のホームページに対してリンクを張ったと思われる論理一貫性がない文章が記載されたサイトを複数発見していた(甲11)。
被告は,同年4月23日,原告事務所を訪問し,一部のリンクの商品名を削除するなど対象サイトの修正方法等について指導をした(乙28)。
被告は,同年6月20日,原告に対し,bサイトに対する再審査リクエストの方法を指導した(乙31)。
原告は,同年7月6日,被告に対し,対象サイトとリンクしているサイトについて,機械的に設置したものでbサイトのガイドラインに沿っていないものが残っているので直ちに削除するように要請した(乙3)。被告は,同月8日,原告に対し,被告は,機械等で自動リンクを生成して貼り付けるような手法を取っていないこと,被告が設置したリンクを仕分けした後に削除のスケジュール等について説明をする旨回答した(乙3)。
被告は,同年7月25日,DYMに対し,対象サイトにリンクを張ったブログについて同月27日までにDYMが貼り付けたリンクかそうでないかの識別と削除済か否かを調査して欲しいと依頼をした(乙29)。
対象サイトに張られたリンクは同年7月末時点で2049あり,被告が削除の作業を進めた結果,同年9月24日時点で削除されずに残存しているリンクは359と推定された(乙30)。
(5) 被告が,本件契約に基づいて対象サイトとの間でリンクを張ったサイトの中には,平成24年9月5日時点で,対象キーワードが含まれた文章と,その前後の文章との間に論理的関連性の見られないサイトも複数存在した(甲6の2)。
(6) 対象キーワードである「ケラスターゼ」に対応する対象サイトのaサイト及びbサイトにおける検索順位は,平成23年7月29日までは圏外であったものが,同月30日以降,平成24年3月末日までは概ね20位以内であり,特に平成23年1月,同年2月は10位以内となることが多かったが,平成24年4月以降,次第に順位が低下するようになり,同月中旬ころには検索順位は70番台まで低下し,同年5月以降も低下した(甲5,乙22)。
他方,対象キーワードである「ルベル激安」,「ルベル通販」,「アリミノ通販」に対応する対象サイトのaサイト及びbサイトにおける検索順位は,平成23年7月22日以降,平成24年7月20日まで,一定期間順位が後退することもあるものの,10位以内となることが多く,その他の対象キーワードについても,キーワード「ミルボンディーセス」に対応する対象サイト(「ケラスターゼ」の対象サイトと同じサイト)は平成24年5月ころまでは概ね20位以内の順位にあり,同年5月及び同年6月は20位台~50位台の間で日によって推移するなどしていた(乙22)。
(7) 被告は,平成24年5月から~同年7月について,対象キーワードが10位以内に入った日数について契約時の約定報酬単価を乗じて日次成果報酬を計算し,原告に対し,月額固定金額9万円,日次成果報酬5万1618円,消費税7081円とする同年5月末日締め請求書,月額固定金額9万円,日次成果報酬3万2870円,消費税6144円とする同年6月末日締め請求書,月額固定金額9万円,日次成果報酬4万1548円,消費税6577円とする同年7月末日締め請求書をそれぞれ送付した(乙26,34~36)。
2 争点(1)(被告の債務不履行の存否)について
(1) 先ず,被告が実施した外部対策に本件契約上の債務不履行があるかについて検討する。
前記1(1)認定事実のとおり,被告が原告に交付したプレゼンテーション資料には,「質・量・関連性の揃った外部リンクを持続的に張っていく」などの記載があることが認められるが,本件契約第3条には,被告が施す外部対策について,「自社保有ドメインまたは,提携サイトからの被リンク対策を行うものとします。」としか定められておらず,被告が制作する外部リンクの内容については,何ら具体的に定められていないことからすれば,プレゼンテーションの際の抽象的なセールストークに基づいて,被告が,原告に対し,当時のbサイトの検索アルゴリズムに応じてSEO業界で適当と認められる程度の外部施策を施す以上の高度な契約上の義務を負っていたとは認められない。
そして,SEOとは,利用者が選んだキーワード又はキーワードの組み合わせを使って大手検索エンジンにて検索した結果,上位に表示させるサービスであるところ,同1(6)認定事実のとおり,原告が順位低下を問題とする対象キーワードである「ケラスターゼ」に対応する対象サイトは,平成23年8月以降平成24年2月までは上位にランクインしており,それ以外の20の対象キーワードに対応する対象サイトの中には,被告が「ケラスターゼ」の対象サイトと異なる対策を実施していたなどの事情も認められないにもかかわらず,同年4月以降も上位の状態を維持しているものが複数あるとの結果が出ている以上,被告の実施した外部施策が,bサイトの検索アルゴリズムの変更等に対応したSEO業界で求められる品質を逸脱したものであったとは認められず,被告の外部施策に関し,本件契約上の債務不履行があったとは認められない。
なお,同1(5)認定事実のとおり,平成24年9月時点で,対象サイトにリンクされたサイト内に記載された文章相互間に論理性が認められないものが現に存在したことは認められるものの,本件契約期間が開始した平成23年8月1日から本件契約期間が終了した平成24年7月末日までの間に,被告が,前記サイト以外に,どのようなサイトにどのようなリンクをどの程度張ったのかは具体的な主張立証はなく,前記サイト及び本件警告メールの存在のみをもって,被告から対象サイトへのリンク作成の依頼を受けたDYM及びDYMから依頼を受けたインタースペースがブロガーを使うなどして機械等によって作られた文章を使用したサイトを多数制作させて,対象サイトに対して質的・量的に標準の水準を逸脱した外部リンクを張ったと直ちに認められるものではない。
(2) 次に,本件警告メール受信以降又は原告が削除依頼をした平成24年6月以降,被告が実施したリンク削除に関して本件契約に基づく債務不履行があるかを検討する。
被告は,bサイトの検索アルゴリズムの変更に対応して適切なSEO対策を実施する義務を有していたというべきであるから,bサイトの検索アルゴリズムの変更が実施され,被告が制作した外部リンクが有効に機能しないことが判明した場合には,これを削除して,bサイトのガイドラインに対応する外部リンクを張り直すことも本件契約上の債務の内容であったと認められる。
しかしながら,先ず,原告が本件警告メールを受信したとしても,bサイトが取っている対策の内容がSEO業界において一般的には明らかになっていない段階においては,被告がそれまでに設定した外部リンクによって好成績が出ていた実績をも考慮すれば,直ちに対象サイトに張った全ての外部リンクを削除することがbサイトの検索アルゴリズムの変更に対応した適切なSEO対策であったとは未だ認められず,被告が,原告から本件警告メールを受信したとの連絡を受けた後,直ちに外部リンクの削除をしなかった点について,本件契約上の善管注意義務違反があったとは認められない。
また,被告は,原告から対象サイトに張った外部リンクの削除依頼を受けた後は,前記1(4)のとおり,本件契約期間が終了した後も外部リンクの削除作業を進めていたのであり,被告に本件契約に基づく善管注意義務違反があったとは認められない。
(3) 最後に,本件警告メールへの対応について被告に説明義務違反があったかについて検討する。
前提事実(5)のとおり,原告は,本件警告メールについて,被告に対応を依頼したところ,被告から対応は不要であると説明されたことが認められるが,原告としても,被告に対し,被告が対応不要と考える理由について更に説明を求めたなどの事情も窺われないのであるから,被告が,対応を不要と考えた理由や,対応をしなかった場合に考えられるリスクについて詳しく説明をしなかったとしても,被告に本件契約に基づく債務不履行があったとまでは認められない。
また,前記1(4),(6)認定事実のとおり,原告は,平成23年7月6日にもbサイトから同様の警告メールを受信しているが,その後に実施された被告の外部施策によって対象キーワードの検索による対象サイトの順位が上位に表示されるようになったこと,本件警告メール受信後の平成24年4月以降も検索順位が上位のままである対象サイトもあったことからすれば,被告が本件警告メールへの対応をしなかったことが一部の対象キーワードに対する対象サイトの検索順位が低下した主たる原因であったとは未だ認められない。
3 以上によれば,被告には,本件契約上の債務不履行があったとは認められないから,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求は理由がない。
前提事実(3)のとおり,本件契約は平成24年7月末日まで継続しており,原告は,被告に対し,同年5月分~同年7月分の本件契約に基づく業務報酬を支払っていないところ,各月分に対応する業務報酬は前記1(7)のとおりであり,その支払期日は各翌月末日であるから,被告の請求は理由がある。
よって,主文のとおり判決する。
(裁判官 小川理津子)
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