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「成果報酬 営業」に関する裁判例(77)平成17年10月12日 大阪地裁 平15(ワ)12850号 損害賠償請求事件

「成果報酬 営業」に関する裁判例(77)平成17年10月12日 大阪地裁 平15(ワ)12850号 損害賠償請求事件

裁判年月日  平成17年10月12日  裁判所名  大阪地裁  裁判区分  判決
事件番号  平15(ワ)12850号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  一部認容、一部棄却  文献番号  2005WLJPCA10126001

要旨
◆有名私立大学を卒業後、就職後留学をしてMBAを取得し、大卒男子平均賃金を上回る給与を得ていた交通事故被害者(年齢不明・男・再就職内定)につき、再就職時に年俸1500万円、成果報酬ボーナス、ストックオプションの付与という条件で内定を得、翌年も同程度の年俸で契約更新する可能性は低いとはいえず、症状固定後の被害者の現実の収入に照らし、後遺障害等級14級の労働能力喪失期間5年間にも年間1500万円の収入を得た蓋然性があるとして、逸失利益が算定された事例。
◆交通事故により受傷した被害者(年齢不明・男・再就職内定)につき、年1500万円の収入を得られたとしてこれを基礎とし、再就職内定会社の業務内容は財務コンサルタント業務であり、頸部捻挫・腰部捻挫にすぎない被害者の受傷内容に対する治療内容・治療経過、最終的な後遺障害内容等に照らし、被害者が再就職内定取消しを自ら申し出たことと本件事故との因果関係はないとして、通常の休業と同様、症状との相関関係において休業割合を認定すれば足りるものとして、本件事故後約2か月は全部、その後の3か月は60パーセント、その後の3か月は30パーセントにつき、休業を認めるのが相当とされた事例。
◆交通事故により受傷した被害者の通院治療費につき、症状固定時期までの治療費及びその期間内のリハビリ及びセカンドオピニオンを得るための2つの他病院受診による診療・治療費についても、本件事故と相当因果関係のある損害と認められた事例。
◆交通事故により受傷した被害者につき、遠方である姉の居住地付近の病院に通院しなければならない必然性はないとして、請求金額の4分の1が通院交通費として損害と認められた事例。
◆片側1車線の交差点において、赤信号で停止線手前で停止した被害車(普通自動車)に後続の加害車(普通貨物自動車)が衝突した事故につき、加害車運転者には明らかな前方不注視があり、横断歩道上にさしかかった時点で赤信号であれば停止するのも自動車運転者として当然の行為であるとして、進行すべきところを進行せず急停車したとの加害者側の主張を認めず、過失相殺が認められなかった事例。
◆事故発生の約3年後に加害者側が保険会社を通じ債務承認行為をしていることから、このときから時効が進行し、それ以前に時効が完成していたとしても信義則上援用できないとして、事故発生の約4年後の本訴提起において消滅時効が完成していないとされた事例。〔*〕

出典
交民 38巻5号1406頁

評釈
交通事故損害賠償データファイル(過失相殺)
交通事故損害賠償データファイル(消極損害)
交通事故損害賠償データファイル(消極損害)

裁判年月日  平成17年10月12日  裁判所名  大阪地裁  裁判区分  判決
事件番号  平15(ワ)12850号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  一部認容、一部棄却  文献番号  2005WLJPCA10126001

原告 X
被告 Y1
ほか一名

 

 

主文

一  被告らは、連帯して、原告に対し、金一二二二万二五四三円及びこれに対する平成一一年一月九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二  原告のその余の請求をいずれも棄却する。
三  訴訟費用は、これを一〇分し、その三を被告らの、その余を原告の負担とする。
四  この判決は、第二項を除き、仮に執行することができる。

 

 

事実及び理由

第一  請求
被告らは、連帯して、原告に対し、金三八三二万四四六四円及びこれに対する平成一一年一月九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二事案の概要
本件は、交差点直前で追突したという交通事故において、被害者が、有名大学を卒業してMBAを取得し、就職先の著名な証券会社が破綻した後、高額の年俸を内約して就職内定を得たのに、本件事故によりこれらの得べかりし利益を失ったなどとして、損害賠償請求を行う事案である。
一  争いのない事実等
(1)  本件事故の発生(当事者間に争いがない)
ア 日時 平成一一年一月九日午前一〇時五〇分ころ
イ 場所 東京都港区高輪三丁目一三番先路上三叉路交差点
ウ 事故車両
(ア) 被告車両 普通貨物自動車(〈番号省略〉)
運転者 被告Y1
(イ) 原告車両 普通乗用自動車(〈番号省略〉)
運転者 原告
エ 態様 片側一車線の本件事故現場交差点において原告車両が直進しようとしたところ、赤信号となったため停止線手前で停止したが、後続の被告車両が停止しなかったため、停止した原告車両に追突したもの
(2)  責任原因
ア 被告Y1
被告Y1が信号表示及び前方車両の動静の注視すべき義務あるのにこれを怠り、漫然と自車を進行させた過失があるから、民法七〇九条の責任を負う。
イ 被告有限会社関商
被告Y1は、被告有限会社関商の業務の執行に当たり被告車両を運転していたから、被告有限会社関商は民法七一五条の責任を負う。
(3)  受傷・通院
ア 原告は、頚部・腰部捻挫の傷害を負った(甲二ないし八)。
イ 原告は、上記アの受傷治療として、以下のとおり通院した。
〈1〉 平成一一年一月九日 東京船員保険病院
〈2〉 同年一月一二日から同年一二日二八日 六甲アイランド病院
〈3〉 同年五月二七日から平成一二年一二月二八日 a外科
〈4〉 平成一一年五月二八日 西病院
(4)  後遺障害認定
原告は、頚部・腰部捻挫のため局部に神経症状を残すものとして一四級一〇号の後遺障害等級認定を受けた。
(5)  既払い金
被告らが本件事故に関し、原告に対して支払った金額の合計は四八万二二一〇円であった。
二  争点
(1)  相当治療期間
(2)  基礎収入
(3)  損害(休業損害、後遺障害の存続期間、交通費)
(4)  過失相殺
(5)  消滅時効
三  争点に関する当事者の主張
(1)  相当治療期間・重複通院
ア 原告の主張
(ア) 症状固定診断
原告は、平成一二年一二月九日、a外科において症状固定診断を受けた。
(イ) 治療期間について
症状固定とはそれ以上改善される見込みがなくなった状態を指すところ、原告は、治療及びリハビリにより徐々に改善されていったのである。症状固定時の握力診断でさえ、その後のリハビリで改善したのであり、むしろ症状固定診断は早すぎた。
(ウ) 重複通院について
原告は可能な限り早期に回復したいと考えて、リハビリ治療を並行して受けることとし、より待ち時間の少ない病院で主としてリハビリを受けたたため、重複通院となったにすぎない。
(エ) 事故が軽微であるとの主張について
a 原告車両はベンツであり、多少の衝撃では何らの破損も起きないのに、損傷が相当程度に及んでおり、事故の衝撃が軽微であるとはいえない。
b 被告車両はブレーキを掛けずに突っ込んでいったため、原告車両は数メートル押し出されており、相当程度に強い衝撃が加わったものである。
c 被告車両の写真提出がないことからすると、被告車両の損壊は相当程度に及んでいるものと推察される。
イ 被告らの主張
(ア) 相当治療期間
a そもそも、本件事故は、修理費用額及び修理内容に照らせば極めて軽微な事故であったもので、半年を超える通院治療を要するような事故でなかったことは明らかである。原告は、ベンツが強固な車体を有するなどと主張するが、そうであるとしても、バンパーは衝撃吸収の必要上ある程度破損しやすい構造となっている。
b 原告が、上記一(3)のとおり通院して症状固定診断を受けたこと自体は認めるが、諸検査の結果に照らせば、実質的にはこれより相当早期の段階で症状固定していたものと認められ、診療録上の記載を総合すると、平成一一年五月に症状固定していたものと考えられる。
c 原告は、医師の判断に従わないなど、治療期間を遷延させている。
d 原告は、症状固定については医師の判断が絶対であると主張するが、実際には主治医が患者の意向を確認し、同意を得た上で初めて症状固定の診断を行い治療の打ち切りを行うのが実際であり、本件でも患者の強い意向により治療が継続されたものである。
(イ) 重複通院
同時期に複数の病院に通院するのは過剰診療である。
(2)  基礎収入
ア 原告の主張
(ア) 原告の経歴
a 原告は、昭和六三年に慶應義塾大学経済学部を卒業後、株式会社b証券(以下「b証券」という。)に就職した。
b 原告は、b証券在籍当時、企業調査と数量分析の各部署に在籍経験がある。
c 原告は、平成六年から同八年までb証券からアメリカのカーネギー・メロン大学にMBA留学し、経営学修士を取得した。この間、フランスのリヨン高等商業学院のMBAプログラムにも参加した。
d 原告のb証券での給与は、平成八年度は九月から一二月の四か月で二九五万一二五六円(留学中は諸手当が支給されていたが、無税扱いとなるため、源泉徴収票は発行されていないにすぎず、合算すると一一五〇万円程度となる。)、平成九年度は七一〇万四八一七円、平成一〇年度一月分給与は六〇万七七二〇円であったが、既にb証券は破綻に瀕していたため、原告の稼働能力に見合ったものではない。
e 原告は、b証券が破綻したため、本件事故当時は無職であったが、その後、自らの専門性を行かせる就職先としてプラスチック部品の製造・加工を業とする勝山産業株式会社(以下「勝山産業」という。)の役員待遇で年俸一五〇〇万円という条件で内定をもらっていた。上記カーネギー・メロン大学では、原告は製造業の経営を専門としていた。
(イ) 事故後の就職
原告は、本件後、株式会社ロプロと顧問契約を締結し、一五日間の勤務で一八四万五八三四円の報酬を受領する実績があり、勝山産業での報酬の信用性を裏付けている。なお、この報酬は、事故後五年一〇か月後の稼働によるものであり、原告の能力の高さを裏付けるものではあっても、それ以前に発生した逸失利益の発生には何の関係もない。
イ 被告らの主張
(ア) 原告は、本件事故当時無職であった。
(イ) 原告の「勝山産業内定」との書面は信用性がなく、客観性にも乏しい。年俸等も社会通念上考え難い額である(年俸額は、取締役全体の報酬額の半分以上となっており、原告が企業財務管理の実務経験がうかがわれないことに照らせば、不自然と言わざるを得ない)。また、役員選任手続を照会しても、位置づけとして極めて暖昧な回答であった。
(ウ) 原告は、平成八年度はc投資顧問株式会社から給与を得ていたのであり、破綻したb証券とは別会社であるから、給与額は実績を反映している。
(エ) 原告は本件事故後、株式会社ロプロから高額な報酬を得ているとして基礎収入の裏付けとするが、そうだとすれば、逸失利益は発生していないことを裏付けてもいる。
(3)  損害(休業損害、交通費、後遺障害の存続期間、弁護士費用)
ア 休業損害
(ア) 原告の主張
a 休業損害の額(三〇〇〇万円)
原告は、本件事故による受傷のため、運動機能の低減が生じ、日常生活にも支障を来す状態であったため、内定をもらっていた勝山産業に就職できなかった。そのため、保証されていた年俸一五〇〇万円を二年にわたり得られなかった。
b 原告は本件事故当時は、無職ではあったものの、就職が内定していたもので、休業損害が発生している。
(イ) 被告らの主張
a 原告は特段安静を要するような症状はないから休業の必要性は認められない。
b 診療録上見られる記載からすれば、原告はこの時期完全な無職者ではなく、しかも、部分的に稼働していたことは明らかである。
イ 交通費
(ア) 原告の主張
a 交通費の額(二八万一四〇〇円)
〈1〉 六甲アイランド病院(七八〇円×二×八九日)
〈2〉 西病院(五四〇円×二×一日)
〈3〉 a外科(五四〇円×二×一三一日)
b 原告は、通院に当たり姉の自家用車による送迎を使ったが、請求としては高額になるため、公共交通機関の利用額で計算した。
c 原告の自宅は、本件事故後一貫して大阪市生野区にあるのであり、芦屋市にあったことはない。
(イ) 被告らの主張
a 原告の選択した病院は、東京船員保険病院を除きいずれも神戸市近郊の病院であって、診療録上に見られる記載等も併せると、大阪市生野区から通院していたものとは考え難い。現就職先との契約書に記載された現住所とも併せると尚更である。
b 仮に大阪市生野区から真実通院していたものとしても、原告側の事情により発生して拡大した損害にすぎないから、相当因果関係がない。
ウ 後遺障害の存続期間
(ア) 原告の主張
後遺障害等級一四級とはいえ、少なくとも五年は継続すると解すべきである。
被告らは、株式会社ロプロからの収入をもって原告に減収がないなどとするが、同社での収入は事故後五年一〇か月後の収入なのであり、後遺障害の存続期間として一四級の場合通常考えられる五年を経過している。
(イ) 被告らの主張
a 原告の後遺障害等級一四級は、頚部痛のみであり、腰部痛は非該当とされた。
b 原告の現症状は、株式会社ロプロにおける原告の稼働能力に影響しているのか強い疑念を抱かざるを得ない。
エ 弁護士費用
(ア) 原告の主張(一三〇万円)
被告の契約する保険会社は、自賠責保険も含めてすべて手続は保険会社側で行う旨申し出て手続を進めたものであり、原告としては被害者請求など思いもよらなかった。しかも、示談案がそれまでの交渉とはかけ離れた不当なものであったため、提訴の決断をした段階では自賠責保険の時効が経過していたのであり、自賠責保険の被害者請求を敢えてしなかったというような場合には該当しない。
(イ) 被告らの主張
原告が自賠責保険の被害者請求手続をとっていれば合計一四六万七七九〇円(傷害部分七一万七七九〇円、後遺傷害部分七五万円)の支払を受けることができたのに、この手続を取らないまま本訴を提起したものであるから、弁護士費用は上記額を控除した額を基礎とすべきである。
(4)  過失相殺
ア 被告らの主張
原告車両は交差点進入直前で黄信号を認めたのであるから、停止できないことは明らかであり、そのまま直進すべきであったのに、本件交差点直前の横断歩道上で急停止したため、本件事故が発生した。このような急停止は予見できないから、過失相殺をするのが相当である。
イ 原告の主張
原告車両の前には右折待機中の大型トラックがあり、視界を遮られていたところ、同車が右折終了した途端、前方の信号機が赤信号となっていたことが判明したので、原告は発進を止め、わずかに前進しただけで停止したにすぎず、急停止や急ブレーキといった事情はない。
(5)  消滅時効
ア 被告らの主張(症状固定時期)
原告は、もっと早期に症状固定していたのであり、消滅時効の起算点は実質的な症状固定日を基準に考えるべきである。そうでなければ、被害者は意図的に治療を遷延させて消滅時効の進行を遅らせることが可能となってしまい、不当である。
イ 原告の主張
(ア) 症状固定時期
医師が症状固定していないと判断したものを素人である被告らが症状固定であるというのは根拠がなく、原告としては医師の指示に従って治療に専念するほかない。しかも、原告は、被告らから支払われていた治療費の支払が平成一一年五月で打ち切られたため、支払に窮した同年一二月やむなく六甲アイランド病院通院を断念したにすぎない。そして、その後のa外科での治療とリハビリにより徐々に腰痛や頚部痛、回旋制限が軽減改善されていったものであって、平成一一年五月や一二月で症状固定となったものではない。
(イ) 債務の承認
a 原告は、本件事故後、被告の保険会社担当者と交渉を継続してきたもので、平成一三年一二月二八日にはその指示に従って、診断書や後遺障害診断書を送付し、同担当者は手続に時間がかかる旨の説明をするに止まっていた。
b 平成一四年三月二七日には、後遺障害認定がなされたが、保険会社は処理を遅延させ、原告の催促の結果、ようやく平成一四年六月一一日賠償額支払い書面を送付しており、これによれば、被告は少なくとも賠償義務があることを認めている。
第三  争点に対する判断
一  相当治療期間・消滅時効
(1)  通院経過について
証拠(甲二、四ないし六、乙二の一ないし三)によれば、以下の事実が認められる。
ア 東京船員保険病院
(ア) 原告は、本件事故(平成一一年一月九日)後、東京船員保険病院で診察を受けた。
(イ) 諸検査の結果は、頚部は、関節可動域は疼痛のため計測できなかったが、ジャクソンテスト、スパーリングテストの結果はいずれも陰性、徒手筋力テストによる筋力低下もなく、感覚障害もみられず、筋反射テストも異常がみられず(乙二の一)、レントゲン上問題がなかった(甲二)。腰部は、下肢伸展位挙上テストで七〇で正常であり(乙二の一、三)、感覚障害もなく、筋力低下もなく、腱反射はいずれも正常であった(乙二の一)。頚部・腰部捻挫と診断された(甲二)。
この時点に撮影された画像を見た被告ら側医師は、C六/七レベルの前縦靭帯骨化所見が見られるとしている(乙三)。
イ 六甲アイランド病院
(ア) 平成一一年一月一二日
a 原告は、頚椎カラーを装着して六甲アイランド病院を受診した(甲四)。
b 同日の診察の結果によれば、頚部が硬直し、傍脊柱筋の圧痛があったが、ホフマン反射はいずれも陰性であった。筋力テストは右はいずれも五であったが、左が若干弱くいずれも四であった。頚椎C七の支配領域が知覚減退していた(乙二の二・二丁、乙三)。
腰部は、下肢伸展位挙上テストが七〇、感覚障害も問題がなく、反射などにも問題がなかった(乙二の二・二丁)。
(イ) 平成一一年一月中の経過
a 一月一三日
この日も症状は変わらず、原告は頚椎カラーの予備を欲しいと言ってきたので、医師は頚椎カラーを処方した(乙二の二・三丁)。
b 同月一八日
この日は頚椎MRI検査を行った。頚椎六/七のレベルで椎間板はわずかに後方に突出しており、膨隆型ヘルニアの可能性はあるが、右傍正中部においてわずかに硬膜嚢陥没が認められ、症状とは一致しないとされた(乙二の二・一九丁)。
c 同月一九日
原告の症状は変わらなかった。
d 同月二一日
原告の頚部痛・腰部痛は変わらず、良くなったり悪くなったりしたようであり、嘔気も変わらなかった。
e 同月二五日
左の握力が低下したようである。
(ウ) 平成一一年二月中の経過
a 同月一日
医師は、原告が装着していた頚椎カラーをはずすよう指示した。原告が異議を唱えたのかは不明であるが、医師は、一日二、三回の装着のみ可であると付記し、原告にその旨の指示もなされたようである。
b 同月三日
同日、腰椎MRI検査が行われた。検査上、腰椎には明らかな異常は指摘されなかった(乙二の二・二〇丁)。
c 同月五日
医師は、原告が頚椎カラーを装着しているため、外す努力をするように指示した(同五丁)。
d 同月八日
医師は、原告の来院頻度が高いため、一週間に一回以上は来院の必要がないと説明した(同五丁)。
e 同月一〇日
医師は、投薬のためにのみ訪れた原告に対し、頻繁に外来に来なくても良い、診察を受けた際に投薬を受けるように指示した。カラーも頚椎にfitしておらず効果不明であるにもかかわらず、上記指示に従わず未だ装着しているので、再度外すように指示した(同五丁)。
f 同月一五日
原告は、仕事はしたり休んだりしていて、完全には休めないなどと医師に説明した(同六丁)。
g 同月二三日、二五日
原告は未だカラー装着し、症状には著変なかった(同六丁)。
(エ) 平成一一年三月、四月の経過
a 整形外科における経過
(a) 同年三月
原告は、前月からトリガーポイント注射をしてもらうようになっていたが、このころから、自ら注射を希望するようになっている(乙二の二・七丁)。記録上トリガーポイント注射は七月末まで施行されている(同一三丁)。
(b) 同年四月七日
原告は、上記指示に従わず、なお頚椎カラーを付けており、医師から意味がないので外すよう注意されている(同八丁)。
(c) 同月一六日
医師は再度「カラー外しなさい」と注意したが、原告は全く意に介さない様子であった。
(d) 同月二一日
症状に著変なかった。
b 脳神経外科における経過
原告は、頭痛が続くとして同年四月一七日同科を受診した。同月二四日、医師からはあまり薬をのまないようにと指示されている(乙二の二・三四丁)。
(オ) 平成一一年五月の経過
a 整形外科における経過
(a) 同月一二日
原告はなお頚椎カラーを外さず、医師が外せといってもその注意を守らなかった。通院頻度についても再度注意を受けている(乙二の二・一〇丁)。
(b) 同月一八日
原告は、再度、仕事は店舗自営であり、仕事はやれる範囲でやっていると答えている(同一〇丁)。
(c) 同月二五日
徒手筋力テストは、やや左が弱いものの、両手ともに五であり正常であったが、握力は右一七kg、左一二kgであった。
(d) 同月三一日
原告は症状は二割ほどしかよくなっていないと説明した。医師は近医でのリハビリを勧めたが、原告は、保険会社が認めてくれなければ自費ででも両方の病院に通院したいと訴えた。
b 脳神経外科における経過
(a) 同年五月一三日
MRI検査では異常がなかったが、医師は、慢性硬膜下血腫の可能性も否定できないとして、注意書記載の症状が出てくれば脳外科を受診するよう指示した(同三四丁)。
(b) 同年五月二九日
原告は、我慢できない頭痛が続くとして、投薬を希望した(同三五丁)。
(カ) 平成一一年六月の経過
a 整形外科における経過
(a) 同年六月七日
原告は、大阪の病院に行ったと医師に説明したが、病院名は言わなかった(同一一丁)。しかし実際には後記ウのとおり、同年五月二七日から神戸市内のa外科に通院を開始し、同月二八日にやはり神戸市内の西病院に一度のみ受診した(甲五、六)。
(b) 同月二一日
原告は依然として医師の注意を守らず、頚椎カラーを装着していた。医師は、a外科への通院を保険会社から聞いたことや、近所に別宅があることを初めて話すなどの原告の態度に疑問を感じ、これでは医師・患者間に必要な信頼関係が成り立たないと説明した(乙二の二・一二丁)。
b 脳神経外科における経過
原告は、六月中、二回同科に通院し、頭痛は変化がないと答えている(同三五丁)。
(キ) 平成一一年七月ないし九月の経過
a 整形外科における経過
(a) 同年七月二一日
原告はソフトカラーを付けて来診した。医師は頚椎の可動域訓練をするように説明した(一三丁)。
(b) 同年八月、九月
原告の症状には著変なしと記載されることが多くなっており、投薬治療として鎮痛剤の投与が継続している(一三、一四丁)。
b 脳神経外科における経過
(a) 同年七月の経過
医師は、原告に対し、薬を減量するよう指示した(同三五丁)。
(b) 同年八月の経過
原告は、できるだけ飲まないようにしているが、などと訴え、医師は規定量で持たせるように指示している(同三六丁)。
(c) 同年九月の経過
原告は、薬を飲む量は減ってきていると申告している(同丁)。
(ク) 平成一一年一〇月以降
a 整形外科(同年一〇月以降)
原告の症状には変化がなく、原告は同年一二月二八日まで同病院同科に通院した(同一六丁)。
b 脳外科
(a) 同年一〇月、一一月
原告の症状には変化がなかった。
(b) 同年一二月
医師は、原告に対し、カラーを外すように指示しており、他科の医師からも原告のカラー装着が不適切であると判断されたものとみられる(同三六丁)。原告は、脳外科には同年一二月二五日まで通院した(同三六丁)。
ウ 他院での経過
(ア) a外科
原告は、平成一一年五月二七日、a外科にリハビリ目的で転医し、平成一二年一二月九日まで通院を継続し(甲五)、同日を症状固定とする後遺障害診断書が発行された(甲一七)。同病院のA医師によれば、腰痛はかなり軽減し、頚部痛は日によって痛みの変化はあるが、強い痛みは軽減し、回旋制限も改善されたとされている(甲五。なお、同病院は、その後事実上倒産し、診療録は送付されるに至らなかった。)。
(イ) 西病院
原告は、同月二八日、西病院に一度だけ受診した(甲六)。
その際、原告は職業について「立ち仕事」であると申告した上、頚部痛及び背部痛、腰部痛を訴えているが、神経学的所見はないとされた(乙二の三)。
(2)  検討
ア 被告ら側医師の意見書について
東京海上日動メディカルサービス株式会社のB医師は、原告の傷病については、画像上の診断及び諸検査(ジャクソン、スパーリング等の誘発テスト、腱反射、病的反射、伸展テスト、筋力テスト、知覚障害)の結果はいずれも異常がない(但し、画像検査についてはC六/七レベルに前縦靭帯骨化所見が認められるとされている。)ことを前提に、原告の主訴を中心に分析し、結局、症状が終始変わらないこと、原告の自己判断による頚椎カラー装着や捻挫の場合の平均的(精度の高い研究で報告されているもの、とか、社会的に容認されることの多い、などとの表現を用いてはいるが)治療期間として三か月程度、五月ころまでの治療を認めてよいなどとの意見を提出している(乙三)。
イ 頚椎捻挫と症状固定について
(ア) 頚椎捻挫は、頚椎が過度に伸展、次いで屈曲されて生じるものであり、骨部・椎間板・靭帯の損傷を伴わない(したがって、他覚的所見のない・他覚的所見の現れにくい)軟部組織のみが損傷されたものであるのは知られた事実であるが、その治療については、安静臥床の要否やリハビリテーションの始期や期間につき、英国のクリニカルガイドラインによれば、できるだけ活動性を維持し、運動量を増やすように、そして、安静臥床は推奨しないと勧告され、カラーの装着についても、安静同様推奨されていないと考える余地がある。そして、頚椎捻挫は、ある程度の治療を加えた後は、軟部組織の自然治癒に委ねざるを得ないけれども、「治癒」に至るまでには相当(事案によっては相当長期)の時間的経過を要することもまた知られた事実である(このことは後遺障害の労働能力喪失期間を五年や三年に区切る等の取り扱いからも窺われる。)。頚椎捻挫を後遺障害として把握するときには、そのような長期間にわたる自然治癒の間のある時点において、症状がある程度(自然的治癒の経過の中であるから若干の漸次的治癒の中で)一定化した時期を症状固定として把握した上で構成せざるを得ないのもこの種事件の実務の取扱である。
(イ) そして、症状固定に至ったか否かは、頚椎捻挫は上記のとおり他覚的所見に欠けるため、症状がどの程度緩和したのか、それともある程度不変という段階となったのかという判断をせざるを得ないが、患者の主訴に多くを依拠せざるを得ない点があるため、判断が極めて困難である。しかしながら、改めていうまでもなく、症状固定は、患者の主訴にのみ依拠して決まるものではなく、医師の診断や治療内容、診療経過などを総合して決すべきものであり、本件においても、原告の主訴のほか、医師の診断や治療内容、診療経過に照らしてその症状固定時期を検討するほかはない。
ウ 本件における症状固定
本件では、上記のとおり、原告は、平成一一年二月時点で六甲アイランド病院の医師の、再三にわたるカラー装着の解除の指示を守らず、その後一〇か月間以上カラーを装着し続けており、そのことにより自然的治癒が阻害された可能性は否定できないが、さりとてどの程度遅延したかは不明である。原告は、平成一一年五月からa外科(重複通院そのものは、セカンドオピニオンを得るという観点からは必ずしも否定すべきものではないが)においてリハビリを受けるようになった(リハビリの時期そのものは、平成一一年七月に医師が可動域訓練をするよう指示しているから、この時期にリハビリに入るのが相当であったということができる。)。原告は、その後も六甲アイランド病院での受診を継続したが、平成一一年八月、九月ころには、診療録に症状に著変なしと記載されることが多くなっており、a外科へのリハビリ通院中の経過において、次第に、症状が一定化していることが窺われるから、結局平成一一年八月時点で症状固定と取り扱うことが相当である。原告は、六甲アイランド病院への通院は、同年一二月で同病院への通院を終了しており、その後はa外科に平成一二年一二月まで通院継続し、その間の経過は必ずしも明らかでないけれども、上記の経過は上記六甲アイランド病院における診療録である程度代替されているということができ、上記認定の妨げとはならない。
二  基礎収入
(1)  証拠(甲一九、二七ないし三五、三六)によれば、以下の事実が認められる。
ア 大学の卒業・就職
証拠(甲二七)によれば、原告は、昭和六三年(一九八八年)三月三一日、慶應義塾大学経済学部経済学科を卒業し、b証券株式会社(以下「b証券」という。)に就職した。
イ 留学
証拠(甲二八の一、二八の二)によれば、原告は、平成六年(一九九四年)八月から平成八年(一九九六年)五月まで、アメリカ合衆国ペンシルバニア州ピッツバーグ市所在のカーネギー・メロン大学に留学し、産業経営学の修士号を取得した。
証拠(甲二九)によれば、原告の平成八年当時の給与は、c投資顧問株式会社から二九五万一二五六円支給された。
ウ b証券の破綻
(ア) b証券は、平成九年一一月に大蔵大臣に対し自主廃業を届け出、その後、平成一〇年三月に上場廃止処分を受け、平成一一年六月に破産宣告を受けたことは、公知の事実である。
(イ) 証拠(甲三〇)によれば、原告の平成九年中のb証券から得た収入は、七一〇万四八一七円であった。
(ウ) 証拠(甲三一)によれば、原告は少なくとも平成一〇年一月までb証券に在籍し、同月は六〇万七七二〇円(手取額四三万六〇〇〇円)の給与の支給を受けた。
エ 勝山産業株式会社への就職内定
証拠(甲一九、乙七、調査嘱託)によれば、原告は、平成一〇年一二月、平成一一年三月から大阪府南河内郡太子町所在(登記簿上は大阪市生野区桃谷所在)の勝山産業株式会社に年俸制・財務生産管理担当部長待遇で就職する内定を得ていた。同会社は、合成樹脂原料販売並びに各種安定剤及び充填剤、天然ゴム、各種合成ゴム販売、ビニール製品、ゴム製品、各種繊維製品の製造・販売等を業としており、役員は平成一七年当時代表取締役C外六名であった。なお、同社は、調査嘱託に対し、平成一一年三月当時従業員一三名、年俸制の従業員はおらず、賃金給与額は合計四五六五万〇九五九円、取締役報酬額の限度額は二八九三万円、平成一〇年度の売上高は二億五〇五六万〇八五八円、平成一五年度の売上高は一二億八九九二万三四八一円であると回答している。
オ 本件事故
本件事故は、平成一一年一月九日発生した(争いがない)。
原告は、事故のため受傷したとして上記勝山産業の内定を辞退するに至った(争いがない)。
カ 受診中の言動
(ア) 原告は、本件事故後ほどなく六甲アイランド病院を受診した。その間、以下のような言動があった。
〈1〉 平成一一年一月一二日の初診時、職業は店舗経営であると回答している(乙二の二・二丁)。
〈2〉 平成一一年五月にも、職業は店舗自営であり、仕事はやれる範囲でやっていると答えている(乙二の二・一〇丁)
(イ) 原告は、西病院においても、職業は立ち仕事であると回答している。
キ 本件事故後の就職
(ア) 原告は、平成一七年五月、株式会社ロプロと顧問契約を締結し、時給一万二五〇〇円を支払う旨の契約を締結した(甲三五)。
(イ) 原告は、上記以前から株式会社ロプロの顧問業務を行っており、その顧問料は、平成一六年一二月は一八四万五八三四円、平成一七年一月は一一二万一八七五円、同年二月は一二四万〇六二五円、同年三月は一〇一万八七五〇円、同年四月は一三一万八七五〇円、同年五月は一一三万一二五〇円、同年六月は二七五万六二五〇円の収入を得た(甲三二ないし三四の六)。
(2)  検討
上記によれば、原告は、社会的に著明な私立大学経済学部を卒業した上、b証券に就職し、留学をしてMBAの資格を取得し、破綻寸前のb証券においてさえ平成九年には同年大卒男子平均賃金三〇歳~三四歳平均(五九八万二九〇〇円)の一・一八倍の給与を得ていたものであるから、原告がその後、勝山産業に再就職をするに当たり、年俸一五〇〇万円・成果報酬ボーナス・ストックオプションの付与という条件で内定を得たと主張する点も、あながちあり得ないとはいえない。
また、勝山産業の記載した確認書面は契約書そのものではないこと、年俸制での内約であること、取締役報酬総額が二八九三万円であったことなどからすれば、契約年度以降については同様に一五〇〇万円その他の条件を継続して得られたかどうかは不透明な面もあるが、他方で、上記のとおりの勝山産業代表取締役の原告の採用に関する裁量性の程度や、同代表取締役が、同時期以降の売上につき、具体的な数字を挙げた上、飛躍的に伸びていると陳述していることからすれば、それなりのキャリアを積んだ原告を翌年も同程度の年俸で契約更新する可能性は低いとはいえないこと、原告は事故・症状固定後五年後である平成一六年一二月以降は一か月平均一四九万〇四七六円(年収に換算すると、一七八八万五七一二円)の収入を現実に得たことなどの事実に照らせば、後遺障害認定一四級の労働能力喪失期間五年間の見通しとしても、年間一五〇〇万円の収入を得た蓋然性がないとはいえない(被告らは、MBA取得者が直ちに高収入であるとは限らない旨の主張をするが、上記具体的事情の下で原告が勝山産業のほか、株式会社ロプロとの関係においてもそれなりの実績を積んでいることや、MBA取得者の年収の分布等に関する反証がないことからすれば、認められない。)。
三  損害
(1)  治療関係費用
ア 治療費
(ア) 東京船員保険病院
証拠(甲九)によれば、原告は同病院の治療費として、四万三〇〇〇円要したことが認められる。
(イ) 六甲アイランド病院
証拠(甲一〇ないし一一)によれば、原告は同病院の治療費として、脳外科の三月から五月三一日分として一〇万四一〇〇円及び整形外科の一月から五月三一日分として三三万五一一〇円、脳外科の六月から一二月分として四万〇七〇〇円(甲一五)、整形外科の六月から一二月分として二四万七七五〇円(甲一六)支出したことが認められ、上記一によれば、症状固定時期は平成一一年八月をもって相当とするから、相当因果関係ある治療費は、五六万二八三一円を認める。
10万4100円+33万5110円+(4万0700円+24万7750円)×3/7
=43万9210円+12万3621円
=56万2931円
(ウ) a外科
上記一認定の事実によれば、原告は、セカンドオピニオン及びリハビリ受診のためa外科に通院したものであるところ、原告が同病院での治療費として平成一一年五月二七日から平成一二年一二月九日まで三五万二六四〇円支出したことが認められる(甲一三)が、そのうち本件事故と相当因果関係を有するのは、平成一一年八月までの治療費(五万八七七三円)である。
35万2640円×3/18(18か月)=5万8773円
(エ) 西病院
原告は、セカンドオピニオンを得るため、平成一一年五月二八日に西病院を一度受診したところ、その診療費用は三万四八二四円要したことが認められ(甲一四)、セカンドオピニオンとして二病院を受診する程度であれば相当性の範囲内と認められる。
(オ) 治療費の合計
以上の合計は、六九万九四二八円となる。
イ 通院交通費
上記認定によれば、原告は(同人の主張に依ったとしても)大阪市生野区内に居住しているにもかかわらず、姉の居住地付近のいずれも神戸市内の病院に通院したものであり、姉が受診を勧める病院であったとしても、受診態度や診療経過を見ると必ずしも原告がこれらの病院全てを信頼していたとの事実がないことは明らかであり、にもかかわらず強いて神戸市内の病院に通院しなければならない必然性はないから、この点は相当性を欠くといわざるを得ず、距離関係などに照らせば、請求のうち、四分の一を認めるのを相当とする。
そうすると、証拠(甲九ないし一六)によれば、八月末までの通院日数は、六甲アイランド病院は七六日(一月~五月は六一日〔甲一〇、一一〕、六月から八月まで脳外科六日〔甲一五〕、整形外科九日〔甲一六〕〔重複なし〕)、a外科は不明であるから全診療日数一三一日(甲一三)の一八分の三である二一・八日を相当というべきであり、西病院には一日通院しているところ、一回の通院に要する費用は三五五〇円(ガソリン代一一五〇円、高速道路料金二四〇〇円)(明らかに争わない。)を要した(なお、往復代金を相当とする。)というのであるから、結局、八万七六八五円を認めるのを相当とする。
(1150+2400円)×(76日+21.8日+1日)×1/4=8万7685円
(2)  消極損害
ア 休業損害
上記認定の事実によれば、原告の基礎収入は年一五〇〇万円を認めるのを相当とするが、就職内定を得ていた勝山産業における業務内容が財務コンサルタント業務であり、受傷内容が頚部捻挫・腰部捻挫にすぎないこと、これに対する治療内容や治療経過、最終的な後遺障害内容から窺われる原告の症状、原告の稼働開始時期及び勝山産業の従業員数、代表取締役としてCのみが業務執行の実質を担当するとの回答内容から窺われる勝山産業の原告就職内定に関する裁量の程度に照らすと、この就職内定の取消を原告自ら申し出たこと自体についてまで相当因果関係があるとはいえないから、通常の休業と同様、症状との相関関係において休業割合を認定すれば足りるものと解される。
そうすると、上記診療経過に照らせば、一月から二月までは全部休業が相当であると認められるが、その後の三月ないし五月については六〇%、六月ないし八月については三〇%の休業を認めるのが相当である。
(ア) 一月九日から二月末日
1500万円×51/365=209万5890円
(イ) 三月ないし五月
1500万円×3/12×0.6=225万円
(ウ) 六月ないし八月
1500万円×3/12×0.3=112万5000円
(エ) 計
五四七万〇八九〇円
イ 逸失利益
上記認定の事実によれば、原告の逸失利益算定に際しての基礎収入も一五〇〇万円と認めるのが相当であり、証拠(甲一八)によれば、原告が後遺障害等級一四級の認定を受けていることが認められ、その内容に照らせば労働能力喪失期間は五年と認めるのが相当であるから、原告の後遺障害逸失利益は、三二四万六七五〇円と認めるのが相当である。
一五〇〇万円×〇・〇五×四・三二九=三二四万六七五〇円
(3)  慰謝料
ア 通院慰謝料
上記認定によれば、症状固定は平成一一年八月末であると認めるのが相当であり、通院八か月間の通院慰謝料としては、一一〇万円を相当とする。
イ 後遺障害慰謝料
原告は、後遺障害等級一四級の認定を受けたのであるから、その後遺障害慰謝料としては一〇〇万円が相当である。
(4)  小計
上記の小計は、一一六〇万四七五三円である。
四  過失相殺
証拠(甲三六、乙一)によれば、被告Y1が原告を発見したのは原告車両の手前わずか三・二mの地点であり、被告車両には明らかな前方不注視があるほか、右折待ち車両の後続車として交差点手前で停止していた原告車両としては、仮に右折待ち車両が前進して右折を終えたとしても、横断歩道上に差し掛かった地点で赤信号であれば、停止するのも自動車運転者として当然の行動であるから、これを急停車と捉えて過失相殺すべき旨の主張は採用することができない。
五  消滅時効
(1)  症状固定及び交渉経過
前記認定の事実及び証拠(甲二一ないし二三の一)によれば、以下の事実が認められる。
ア 症状固定の診断
上記のとおり、原告は、平成一一年一二月二八日まで六甲アイランド病院に通院し、その後、a外科のみに通院するようになり、同病院において平成一二年一二月九日時点において症状固定した旨の診断書が発行されている(甲五)。
イ 治療費の支払
証拠(甲二一)によれば、被告が治療費を支払った最終の時点は平成一一年五月三一日までの分である(支払日は明らかでない。)。
ウ 平成一三年一二月二八日付けの催告
証拠(甲二一、二二)によれば、原告は、被告の契約する東京海上火災保険株式会社に対し、本件交通事故により生じた損害賠償に応じて欲しい旨の請求書を発送し、平成一三年一二月二八日、同郵便が同会社に到達した。
エ 平成一四年六月一一日
証拠(甲二三の一、二三の二)によれば、被告の契約する東京海上火災保険株式会社は、原告に対し、本件事故の損害賠償金として一二五万八四〇〇円の支払を申し出たことが認められる。
(2)  検討
上記によれば、被告らは、保険会社を通じ、平成一四年六月一一日に債務承認行為に出ているのであるから、時効はこの時点から進行する(それ以前に時効完成していたとしても信義則上援用できない)と解するのが相当であり、その後本件提訴が平成一五年一二月であるから、消滅時効は完成していない。
六  既払い金の控除
被告らが本件交通事故に関する損害賠償として、東京船員保険病院に四万三〇〇〇円、六甲アイランド病院に四三万九二一〇円の合計四八万二二一〇円を既に支払ったことは争いがないから、上記小計額からこれらを差し引くと、原告の本件事故と相当因果関係ある損害額は一一一二万二五四三円となる。
七  弁護士費用
本件に関する弁護士費用は一一〇万円を相当とする(なお、被告らは、原告が自賠責の被害者請求を行わなかったため被害が拡大したから、弁護士費用の算定基礎としてはこれらによる額は差し引くべきであると主張するが、本件事故後の経過や自賠責の被害者請求として得られる見通しの額などを勘案すれば、原告が被害者請求を行わなかったのもあながち責められず、被害拡大の程度もそれほど多額でもないから、弁護士費用に勘案することはしない。)。
八  結論
以上によれば、原告の被告らに対する請求は、金一二二二万二五四三円の限度で理由があるから認容し、その余は理由がないからいずれも棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判官 天野智子)

 

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