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判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(127)平成26年11月21日 東京地裁 平24(ワ)27330号 地位確認等請求事件

判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(127)平成26年11月21日 東京地裁 平24(ワ)27330号 地位確認等請求事件

裁判年月日  平成26年11月21日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平24(ワ)27330号
事件名  地位確認等請求事件
文献番号  2014WLJPCA11218013

裁判年月日  平成26年11月21日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平24(ワ)27330号
事件名  地位確認等請求事件
文献番号  2014WLJPCA11218013

東京都江東区〈以下省略〉
原告 X
東京都千代田区〈以下省略〉
被告 Y株式会社
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 木下潮音
同 冨田啓輔

 

 

主文

1  原告の請求をいずれも棄却する。
2  訴訟費用は原告の負担とする。

 

事実及び理由

第1  請求
1  原告が,被告に対し,労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。
2  被告は,原告に対し,次の金員を支払え。
(1)  162万円及びうち54万円に対する平成24年7月26日から支払済みまで,うち54万円に対する同年8月26日から支払済みまで,うち54万円に対する同年9月26日から支払済みまで,いずれも年6分の割合による金員
(2)  平成24年10月から本判決確定の日に至るまで毎月25日限り,54万円及びこれに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員
第2  事案の概要
1  本件は,旧a株式会社(旧b株式会社と合併して現在の被告となった。以下,上記合併前のa株式会社を「旧a社」,同合併前のb株式会社を「旧b社」という。)と契約期間の定めのある雇用契約書を作成して稼働してきた原告が,被告から同契約書に係る労働契約を平成24年6月30日付けで終了する旨通知されたところ,①原被告間の労働契約は期間の定めのないものとみるべきであり,同通知による契約終了は解雇に当たり,同解雇は無効である,②仮に上記①のように解されないとしても,原被告間の労働契約は実質的に期間の定めがない労働契約と異ならない状態にあったというべきであり,そうでないとしても,雇用継続に対する合理的期待があり,雇止めを正当化すべき事情は認められないというべきであるから,同雇止めは無効であるなどと主張して,被告に対し,労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに(前記第1,1),労働契約に基づき,未払賃金162万円(平成24年7月から同年9月までの月例賃金54万円の未払合計額)及びこれらに対する各月例賃金の支払期日(各25日)の翌日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払(前記第1,2(1))並びに平成24年10月から本判決確定の日に至るまで毎月25日限り,月例賃金54万円の支払及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで同様の割合による遅延損害金の支払(同(2))を求めた事案である。以上に対し,被告は,要旨,原被告間の労働契約は名実ともに期間の定めのある契約であって,雇用継続に対する合理的期待も認められない,仮に雇用継続に対する合理的期待が認められるものであるとみるとしても,雇止めには正当性が認められるなどと主張して争っている。
2  前提事実(当事者間に争いがないか,証拠及び弁論の全趣旨により認めることのできる事実)
(1)  被告は,有価証券の売買,市場デリバティブ取引又は外国市場デリバティブ取引等を業とする株式会社である。なお,被告は,平成21年に,旧a社を吸収合併存続会社,旧b社を消滅会社として吸収合併をしている。
(2)  原告(昭和39年○月○日生)は,後記のとおり,旧a社との間で労働契約を締結し,稼働してきた者である。原告は,日本の薬剤師の資格を有し,サンディエゴ州立大学の経営学の修士課程を修了している。原告の職歴は概ね別紙1のとおりである。
(乙10)
(3)  原告は,旧a社との間で,平成16年12月1日付けで期間の定めのある雇用契約書(契約期間は同日から平成17年3月31日まで。乙3の1)を作成して労働契約を締結し,以降,旧a社(旧b社との合併後は被告)との間で,概ね契約期間を1年(最終の契約書においては1年3か月)とする雇用契約書を作成して稼働してきた(以下,これら契約書を「本件各契約書」といい,これらの契約書に係る各労働契約を「本件各労働契約」,これら契約を通じて「本件労働契約」ということがある。)。本件各契約書の記載内容は別紙2記載のとおりであり,勤務先部署を限定する約定もあった(なお,本件労働契約が期間の定めのないものとみるべきものか否かについては後記のとおり当事者間に争いがある。)。
(乙3(枝番を含む。以下,枝番があるものについては特記しない限り同じ。))
(4)  被告は,原告に対し,平成24年5月29日付けで,要旨,原被告間の労働契約が,所定の契約期間末日である同年6月30日をもって期間満了により終了し,原告が同日をもって退職となる旨の記載のある「労働契約期間満了通知」(乙7の1)を送付し,原告が雇止めとなる旨の通知をした(以下,同通知を「本件雇止め通知」といい,これによる契約の打切りを「本件契約打切り」という。なお,本件契約打切りが解雇に該当するか否かについては後記のとおり当事者間に争いがある。)。
(乙7の1)
(5)  被告は,原告の要望により,平成24年7月19日付けで「雇い止め理由証明書」(以下「雇止め理由書」という。乙8)を送付した。同書面の記載内容は,要旨,以下のようなものであった。
被告としては,アドバイザリー第5部において業務上求められるものと原告のスペックが整合せず業績が不足であること,被告をめぐる経営環境が極めて厳しく希望退職にも踏み切らざるを得なかったこと及び過去に他の業務への異動を打診してもこれに応じられてこなかったことから,平成24年6月末の契約期間満了をもって雇止めとすることにした。
(乙8)
3  争点及び当事者の主張
本件の争点は,本件契約打切りの肯否(本件雇止め通知による解雇ないし雇止めの肯否)であり,これに関する当事者の主張は,概ね以下のとおりである。
(1)  原告の主張
ア 解雇権濫用法理の適用ないし類推適用があること
(ア) 本件各契約書の内容は,前記前提事実(3)記載のとおりであり,あたかも有期労働契約であるかの体裁となっている。
(イ) しかし,本件労働契約の性質として,以下の点を指摘することができる。
a 原告の業務は被告の基幹的恒常的業務であること
(a) 前記前提事実(2)記載のとおり,原告は,薬剤師及び経営学修士の資格を持ち,外資系金融機関での職歴を有していた者であるところ,原告は,平成16年12月,旧a社に入社し,当初は常勤契約社員,平成17年4月からは,フィールド・スペシャリストとして投資銀行業務等に従事してきた。フィールド・スペシャリストとは,「高度なスキル・ノウハウを保有する者として専門分野における業務に従事する者」である(原告が入社した後の平成17年3月1日実施されたフィールド・スペシャリスト規程2条。乙2-1)。投資銀行業務は,証券会社において自社の収益に資する通常業務として恒常的に行われる性質のものであり,原告は,高度の専門性を持って被告(合併前は旧a社。以下,特記しない限り同じ。)の基幹的業務に従事してきた。
(b) 原告は,旧a社に入社した際は,エクイティキャピタルマーケット部(株式資本市場部)のエクイティシンジケーション課(株式引受課)に配属された。同課はIPO(Initial Public Offering。初めて上場するにあたり公募で株式を発行すること)及びPO(Public Offering。公募売出,既上場企業が新たに株式を発行,又は大株主保有分を売ること)における株価算定業務を実施する部署であり,原告は,IPOプレミアム(額面株式が額面以上の価額で発行された時の超過分)の分析,POディスカウント(株価を下回る価額での発行・売出の割引分)と多数のIPO案件・PO案件における株価決定までの会議や算定業務等に携わった。また,後に投資銀行部に異動することを前提に,増資案件における投資銀行部との会議や案件にも参加した。平成17年4月又は5月,原告は,インベストメントバンキング第1部(後に「企業金融第5部」に名称変更)に異動となり,製薬会社を担当することになった。課長とともに製薬会社を訪問し,企業の投資銀行業務(債券発行,増資,M&A)のニーズを探り,提案書作成やリサーチ業務等に従事した。投資銀行部の社員の特訓ということでセミナーに参加することもあった。平成20年4月から,原告は事業開発部に異動した。移動先の事業開発部で,原告は,引き続き上記大手製薬会社の案件を仕上げることとなり,以後,同部において,部長とともに様々なM&A案件に携わった。平成21年5月に旧a社と旧b社が合併したが,その後も,原告は,旧a社のカバレッジ部隊である企業金融部からM&A案件の依頼を受け,マーケティング業務(リサーチ業務,提案書作成,簡易価値算定,多数企業打診,スキーム策定等)及びエグゼキューション業務(契約締結,両社面談アレンジ,プロセスマネジメント,条件交渉サポート,株式価値算定等)といった投資銀行の基幹的業務に携わってきた。また,被告からは他のアドバイザリー部と協同するよう指示があり,薬剤師の資格を有し,長年にわたって製薬業界を担当していた原告は,医薬を担当しているアドバイザリー第2部から依頼を受けることが多く,同部と協同して案件に携わった。また,被告のグループ会社である株式会社c銀行(後に合併して株式会社c1銀行となった。以下「c銀行」という。)との協同も多く,一緒に企業を訪問し案件獲得に向けて動くことが多かった。
(c) 原告が,平成16年12月に旧a社に入社し,エクイティキャピタルマーケット部に所属していた当時,同部の社員約30名中,フィールド・スペシャリストは原告1名のみであった。また,原告が企業金融第5部に所属していたときも,企業金融第1部から第5部の社員約60名中フィールド・スペシャリストは原告1名だけであった。したがって,本来原告の従事する業務は正社員が担当するものであるところ,原告についてだけ期間1年という扱いがされていたことになる。フィールド・スペシャリスト規程(施行時期は,原告入社後の平成17年4月1日。)も,原告に合わせて作成されたものと推察される。平成21年4月以降,原告がM&Aアドバイザリー部(アドバイザリー第5部)に所属していた際には,同部の社員36名中,原告と同種の社員は数名程度(7名)となった。平成21年5月の旧a社と旧b社との合併後も,アドバイザリーグループ全体でフィールド・スペシャリストは10名程度であった。
原告は,上記のとおり,同じ部に所属する期間の定めのないとされる正社員と一緒に,協同して同じ案件に携わり,正社員と同じ内容の業務に従事していた。
以上のとおり,被告は,旧a社では原告ただ一人であったが,旧b社との合併前後を通じて,7~10名程度のフィールド・スペシャリストを常置しており,フィールド・スペシャリストが解雇・雇止めになったのは,原告が初めてのことである。
(d) 以上のとおり,原告の業務内容は,他の正社員とまったく同様であった。原告の業務内容は,証券会社の投資銀行部門における基幹的・恒常的業務であり,証券会社にとって不可欠の仕事であった。
b 契約締結時に長期雇用の合意が当事者間にあったこと
前記のとおり,原告は,薬剤師の資格を有し,医薬に関する知識を有するとともに,米国経営学修士の資格も持ち,英語能力も堪能であって,ソシエテ・ジェネラル証券ロンドン支店,クレディ・リヨネ証券などの企業でキャリアを積みながら(ただし,原告は,投資銀行業務の経験は豊かではなかった。),旧a社に入社した。
そのような原告について,旧a社は,当然に期間の定めのない長期雇用が前提である正社員の労働契約の締結を前提としていた。また,原告も当然に同様に,期間の定めのない正社員の労働契約を要求していた。しかし,原告は,その経歴からも明らかなとおり,外資系金融機関の職歴が長く,外資系金融機関では勤務地が東京に限定されており,職務も労働者と企業との合意で定まることが多いことから,原告は,期間の定めはないが,同時に勤務地東京,職務も労使の合意で決定する内容の労働契約とするよう求めた(ただし,勤務地等を限定した実相としては,証券業界ではセクハラが横行しており,その告発に対する意趣返しがあることから,原告としては,セクハラのありそうな部署への異動を回避する意図があった。なお,原告は,採用に際し,特定の職種に従事することを希望したわけではない。)。もっとも,旧a社人事部のB副部長(以下「B副部長」という。)は,原告に対して,正社員の労働契約は,他の日本企業と同様に,勤務地・職種とも限定されていないものしか予定していなかったため,「勤務地を限定し,職務を労使当事者の合意とする労働契約とするためには契約期間を1年間とする契約しかないが,実質的には正社員と同じであるから安心して勤務してほしい」との説明をした(なお,ほかの中途採用者はB副部長と面談しておらず,B副部長との面談は正社員と嘱託の違いを説明するために原告にだけ設けられたものである。)。そうした説明があったことから,原告は,契約書上は,有期労働契約となってはいても,「実質的には正社員と同じ」という被告の説明を了解し,以後,前記前提事実(3)記載のとおり期間の定めのある本件各契約書に署名押印してきた。
以上のとおり,当事者の意思は,期間の定めのない労働契約という点で一致しており,労働契約書上の期間の定めは,いわば形式という認識であった。
c 長期雇用を前提とする就業規則の規定等
(a) 平成17年3月から実施されたフィールド・スペシャリスト規程は,9条2項で「FS契約を再契約する場合がある」として,再契約(更新)を予定している。さらに,37条は,年次有給休暇が,入社日から通算した契約年数に応じて定められる旨や年次有給休暇の繰り越しについて規定しており,この規定自体が,原告が継続して雇用されることを前提としている。その他,詳細な服務規律(第2章),身元保証人に関する規定(12条~14条)等は,期間の定めのない社員と同様の条文であり,特別有給休暇に関する規定(39条~40条),産前産後休暇(43条)や育児・介護休業(44条)についても,詳細な規定によって正社員と同様に保障されている。これらの就業規則の定め自体が原告の長期雇用を前提とする規定であるといえる。
(b) 被告合併後に原告に適用されることとなった契約社員就業規則(乙2-3)も,フィールド・スペシャリスト規程と同様に長期雇用を前提としている。すなわち,正社員に適用される就業規則第2章「新規採用」5条(乙2-4)と,契約社員就業規則4条(乙2-3)はまったく同内容の規定である。また,契約社員就業規則5条の(試用期間)も,「採用日から6ヶ月以内の試用期間」とされ,同条2項で,「試用期間は必要により,前項の期間を超えて延長することがある」,同条3項で「会社は期間満了までに採否を決定するものとし,・・・」とするが,これらは正社員就業規則6条の1項ないし3項の規定とまったく同内容である。そもそも契約社員の期間は1年間とされるが,その半分の6か月ないし延長された場合にはそれ以上を試用期間とすることは,1年の契約期間に合理的な意味があるわけではなく,1年を超えて長期間労働契約を継続することを予定していることが明らかというべきである。また,契約社員就業規則15条(契約の更新)では,「満60才の誕生日の属する月の末日を超える契約期間の更新は行わない」と規定されているが,正社員に適用される職員就業規則(乙2-4)49条によると,「満60才の誕生日の属する月の末日が定年とする」とされており,契約社員なるものも正社員と同様に満60歳まで雇用することを前提とするものとなっている。さらに,契約社員就業規則の服務規律等には,職員就業規則の規律がすべて準用されている(6条)。また,休暇についても,11条によって職員就業規則34条が準用され,年次休暇の次年度への繰越しが可能となっている。これは,明らかに次年度に契約が更新されることを予定している。
(c) 原告と旧a社の最初の雇用契約も,5条で,「業務遂行上の貢献度によって,…協議の上,報酬金額等の本契約条項を変更することができる」とされており,更新を当然の前提としているといえる。
d 女性管理職育成セミナーへの参加
原告は,旧a社のときから女性管理職セミナーに参加させられていた。後記のとおり,被告から,平成23年10月28日,希望退職に応募しないと雇止めをするといわれた際も,別の人事の者からは,同年11月開催予定の女性管理職セミナーに参加するよう要請されていた(後日,原告が確認すると,参加しなくて良いとの回答があった。)。被告は,原告を将来の管理職候補と見ていた証拠である。
e 期間設定の合理性はなく原告は雇用調整弁でもない
原告の業務は,前記のとおり,投資銀行業務という証券会社にとって基幹的・恒常的で高度の専門的能力の活用が求められるものであり,原告ら個人の技術や能力に負うところのものが大きい。案件にはほとんどが正社員である複数人のチームで臨み,フィールド・スペシャリストを含め誰か一人でも途中で欠けると業務遂行に不都合が生じる。そもそも,アドバイザリー業務の案件は,開始から終了まで短期間での期間が長く,短期間で終了するものはない(求人情報でも,M&Aやカバレッジ業務では1年等の短期雇用は予定されていない。)。結局,本件の雇用期間の設定は,会社の経営上の都合から雇用調整を図るためのものではなく,むしろ更新を前提とする通常の賃貸借契約における期間が「賃料据え置き期間」とされるのと同様に,「年俸設定期間」の意味を有するものにすぎない。
f 7回の更新による長期雇用の継続
(a) 原被告間では,平成16年12月の入社以来,毎年3月になると,次期年俸についての交渉が始まる。契約社員にも正社員と同じ人事評価システムがあり,毎回の契約更新では,その評価によって次期の年俸を決定することになっていた。そして,原被告間で年俸が決まると,被告は雇用契約書を原告に渡し,原告がそれに署名押印して被告に提出するという手続をとっていた。
したがって,原告と被告との労働契約における期間の設定は,雇用管理のためではなく,次期の年俸を設定するために設けられたものである(なお,被告の査定では,主として会社の業績が重視され,年俸額については,更新間際に一方的に提示されてきた。)。
(b) 無期契約への転換の可能性
平成24年8月に成立し,平成25年4月1日から施行された改正労働契約法18条によると,有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合に,無期契約への転換申込権が発生し,労働者がこれを行使すれば,期間の定めのない労働契約に転換する。本件にはまだ適用がないものの,本件労働契約は,5年を超える7年以上にわたり反復更新を繰り返してきたのであるから,本来,原告は期間の定めのない契約への転換申込権行使が可能な契約である。同条の立法趣旨は,不安定な有期雇用を無期労働契約に転換させることによって,同法16条と解雇法理の適用による雇用の安定を図ることを目的としたものであり,その趣旨からすれば,本件も無期労働契約と同様の保護に値する。
g これまで更新拒絶された例はほとんどない
さらに前記のとおり,被告合併直前の平成21年4月以降,原告がM&Aアドバイザリー部(アドバイザリー第5部)に所属していた際には,同部の社員86名中,原告と同様のフィールド・スペシャリストは原告を含め7名であり,旧b社と合併した後も,アドバイザリーグループ全体でフィールド・スペシャリストは10名であった。したがって,被告は,原告の所属部署において常にフィールド・スペシャリストを一定数確保しており,合併前から,エクイティキャピタルマーケット部,企業金融第5部,アドバイザリー第5部などにおいて,雇止めになったフィールド・スペシャリストは本件の原告以外にはいない。
(ウ) 以上の点に照らせば,本件労働契約は,期間の定めのない労働契約と解すべきであるし,少なくとも労使当事者が契約の更新を当然に予定している実質的に期間の定めのない労働契約と異ならない状態にあったと解すべきである。仮に百歩譲って,原被告間の労働契約に期間の定めがある労働契約であったとしても,上記の点により,その契約の更新には当事者双方とも高度の期待を有していたと解すべきである。
(エ) 被告は,E職(合併に伴い,フィールド・スペシャリストはE職に移行した。)が,正社員と異なり,プロフェッショナルで高い賃金処遇を得ることができる代わりに役割期待が高く,長期雇用を前提としていないものであるなどと主張する。
しかし,少なくとも原告は高い賃金処遇を受けていたわけではない(旧a社の社員のほとんどは旧c1銀行の社員に比して低い処遇であった。)。
また,キャリア形成といった観点でも,G職(総合職)と同様,海外転勤や出向した者もおり,E職だけが異なるというのも実態を伴わない主張である。
そもそも,G職と人事評価項目も変わらない。
(オ) 被告は,後記のとおり,E職の勤続年数や年齢構成,雇止め実績等について指摘して,E職が長期雇用を前提とするものではないなどと主張する。しかし,被告指摘の統計は,E職に対する退職勧奨が行われた後のデータであるし,旧a社での雇止め実数も明らかでないなどの問題があり,この点から長期雇用を前提としないものであったなどとはいえない。そもそも,旧a社では解雇・雇止めなどなかったものであり,合併後,解雇・雇止めがなされるようになった。
イ 本件契約打切りは無効であること
(ア) 被告の雇止め理由書からすると,本件契約打切りは,2年連続の純損失の発生を理由とするものであり,経営上の理由による解雇・雇止めである。そうすると,労働者に責任のない経営上の理由による解雇(雇止め)として,いわゆる整理解雇の4要件ないし4要素が必要というべきであるが,本件では,以下のとおり,いずれも充たされておらず,原告に対する解雇・雇止めは客観的合理的な理由も社会的相当性もないものとして無効である。
a 被告による二次にわたる希望退職募集等
平成23年3月末時点(同年期首時点)での被告単体での従業員数は6123人であったが,3か月後の同年6月末時点での従業員数は6331人と増員となっている。その内訳は,新卒者が約180名,中途採用者が約30名と推測される。
このように被告は,同月末までに200名を超える新規採用をしておきながら,純損失が発生しているとして,同月28日に「キャリアセレクション制度における早期退職コースの募集について」と題する書面で,無期契約社員(総合G職/一般職A職)及びS職(特別専門職)らに対して,募集人員150名程度,募集期間同年7月8日から同月19日として退職条件を若干優遇する希望退職募集を行った。その結果,同年6月末時点で被告単体で6331人いた従業員数は,同年9月末時点で6103人となり,募集人員を大幅に超える削減となった。
さらに被告は,同年10月3日付け希望退職要項で,募集対象の枠を広げ,募集人員300名,期間同月21日から同年11月14日,退職日同年12月31日,退職条件(転職支援金)として,G職/A職基本給×年齢別月数+500万円,S職/E職(原告が該当)月棒×12+500万円,その他有給休暇取得,再就職支援サービスという提案を行った。
この際,原告が所属するアドバイザリー第5部のC部長(以下「C部長」,「C」などという。)は原告らE職の職員に対して,「君たちE職は希望退職に応じないと必ず(2012年)6月末で解雇する」と述べた。そこで,原告は,人事部のDディレクター(以下「Dディレクター」,「D」などという。)と面接し,なぜ希望退職に応じないと解雇となるのか,その理由について説明を求めたところ,同ディレクターは「会社が決定したことだから」と述べるだけでまともな説明はなかった。
この第二次希望退職募集の結果,平成23年12月末時点での被告単体での従業員数は,同年9月末時点の6103人からさらに大幅に減少して5455人となり,第二次希望退職募集目標の300人の2倍以上の648人の減員となった。
そして,平成24年3月には被告の従業員数は,平成23年12月時点からさらに136人が減少して5319人にまで減少した。結局,同年6月末時点で6331人いた従業員数は平成24年3月末時点で5319人となり,大幅な減員となった。
このように被告は当初目標を大幅に超える人員削減を行っているにもかかわらず,同年6月末時点での従業員数は5340人と,同年3月末時点の5319人より21人の増員となっている。その内訳は,新卒採用が約180名,中途採用が約15名,c銀行等からの異動者約20名と,退職者との差額と推測され,被告は単体で前年度に約1000名もの人員を削減しておきながら,新年度には約195名もの新規採用を行い,20名も関連銀行から受け入れている。
b 人員削減の必要性がない
(a) 被告の雇止め理由書によると,被告は平成22年度には293億円の純損失,平成23年度上期の純損失が267億円発生しているから業務の効率化を図るため希望退職募集を図ったというのであるが,希望退職募集の目標数の客観的根拠や目標達成のいかんは何ら明らかでない。
(b) しかも,平成24年3月の期末時点での実際の人員削減実績は,当初の目標を大幅に超過達成しており,なぜさらに原告に対する解雇・雇止めが実行されたのかまったく説明されていない。むしろ,前記のとおり,各200名を超える新規採用・中途採用・親会社である銀行からの出向受入を行っている。なお,原告が所属していたアドバイザリー第5部においては,平成23年4月及び平成24年4月に,まったくM&Aの経験がない正社員が配置されている。
(c) 被告は,雇止め理由書において,旧a社のM&A部隊の人数が多く,高コストでの業務運営となっており,利益を出しにくい構造となっていたことを理由として,原告の所属するアドバイザリー第5部の陣容の見直しを行い,平成22年4月までに,同第5部の人員を約30名から約10名に減少させたが,被告の業績が悪化したところから,さらに従業員の削減を行う必要があったかの主張をしている。しかし,もともと旧a社と旧b社が合併した平成21年当時の人件費(人件費/従業員数)を比較すると,旧a社が814万円に対して,旧b社は単体でも1561万円と,旧a社の2倍の人件費比率であり,高コスト体質は旧b社にあった(原告に至っては平成24年度の賃金は年俸で648万円にすぎない。)。さらに上記純損失の発生の原因も,旧a社にではなく,旧b社の海外子会社による損失の発生が主要な原因であり,その責めを原告ら旧a社の従業員に帰するのはあまりに不合理である。
また,原告が所属していたアドバイザリー第5部のM&A業務は,旧a社時代から中小企業対象であり,数値目標の設定もなかった。旧b社との合併後も,中小企業対象という性格は変えられず,にもかかわらず会社は突如として,合併後,一人当たりの年間の数値目標を7000万円という目標を設定して同部の従業員に強要した。さらに,案件の獲得においても他のアドバイザリー部がc銀行から大きな案件依頼があるのに対して,アドバイザリー第5部にはなく,また,逆に大きな案件が同部にあると,その案件を他のアドバイザリー部が第5部から引き取って担当してしまったり,他のアドバイザリー部が担当したくない小さい案件をアドバイザリー第5部に押し付けてきたりということが多く,これらがアドバイザリー第5部の売上げが低迷する主要な要因となっていた。また,原告は,旧b社のM&A部隊であるアドバイザリー第2部の多数の案件にもチームメンバーとして強い参加依頼を受け,多くの時間を費やしたが,それらはどれも数字に繋がらなかった案件ばかりであった。にもかかわらず,会社は,アドバイザリー第5部の案件数や売上げが非効率的と主張しているのであり,これまた不合理というほかない。
c 尽くされていない解雇回避措置
原告のアドバイザリー第5部への配置を継続したほうが,旧a社ないし旧b社の正社員を配置するよりも能力・経験の点でも人件費効率の点でも効率的であることはいうまでもないが,被告は,原告について,同部での業務の継続についてはもちろん,他の部署への配置を検討した形跡はまったくない。第2次希望退職募集の際,原告が所属するアドバイザリー第5部のC部長は原告を含むE職の社員に対して「君たちE職は希望退職に応じないと必ず6月末で解雇する」と述べ,さらにDディレクターも「(希望退職募集に応募しない場合の解雇は)会社の決定だから」というだけであったし,また雇止め理由書でも「過去に他の業務への移動を打診してもこれに応じてこなかった」ことを挙げるだけで,被告が本件契約打切りに際して,他の部署への再配置についてはまったく検討していなかったことを自白している。解雇・雇止めと回避措置の追求という点から見ても,解雇・雇止めが無効であることは明らかである。
d 人選の客観的合理性
被告は,原告に対し,解雇基準を全く説明してない。被告が原告に対して示した基準は「希望退職応募か解雇か」という基準だけである。なお,雇止め理由書で,被告は,原告のM&A業務における知識レベルが対顧客交渉に耐えられる水準ではなかったこと,収益実績が低水準であるかのような主張をしている。しかし,被告は,このようなことを本件契約打切り時までにまったく説明しておらず,後付けの理由というほかない(むしろ,改正労働契約法18条の施行を前に,原告を含むE職全員の雇用を打ち切ったものというべきである。)。被告は,c銀行から会社に出向してくる社員のM&Aに関する知識レベルや英語能力などについては,まったく問題としていないが,このことも合理性を欠いている。そして,原告は既に40歳代後半の女性であり,いかに高学歴とキャリアを有しているとしても,金融機関における正社員への採用(再就職)は非常に厳しい状況にあるが,被告はその点についての配慮も欠いており,人選の合理性という点でも客観的合理性がなく,社会的相当性もない。
e 被告の原告に対する誠実な説明はまったくない
本件においては,前記のとおり,被告から誠実な説明は一切なく,「希望退職募集に応募するか解雇」か,なぜ解雇かという問いに対しては「会社が決めたことだから」という説明しかしておらず,誠実な説明はなかった。
(イ) 仮に,原告に対する解雇・雇止めが整理解雇でないとしても,被告の主張する勤務実績を理由とする雇止めは,以下のとおり客観的合理性が認められず,社会的相当性もないものとして無効である。
a 能力・勤務成績を理由とする解雇・雇止めが客観的な合理性と社会的相当性があり,有効となるためには,当該労働者の勤務成績が著しく悪く,教育訓練等をしても改善の余地がなく,直ちに企業外に排除することが必要であり,労働者に宥恕すべき事情がないことが必要であるというべきである。
b 原告を直ちに企業から排除すべき事情はない
(a) 被告は,M&Aアドバイザリー部の役割期待が,カバレッジやマーケティング業務からエグゼキューション業務に変化する中で,原告はエグゼキューション能力に乏しいと主張する。
しかし,被告におけるアドバイザリー第5部を除く他のアドバイザリー部門は,もともと旧b社を母体としており,同じグループ銀行から大口案件が入ることが多く,各部長が各エグゼキューション案件を部員皆に振り分ける。しかし,旧a社を母体とするアドバイザリー第5部については,自らマーケティング業務をして案件を獲得しないと収益が上げられない。しかも,M&A案件は,投信販売とは違い,収益を達成できるタイミングが非常に遅い。マーケティングをすればすぐに収益が獲得できるわけではなく,契約しても途中で案件が頓挫することも多々あった。エグゼキューション業務は,案件を統括する部長やディレクターの指示のもと経験の浅い若手でもできる業務であるが,役員に直接交渉することが重要とされるマーケティング業務は長年業務に従事し経験豊富で知識も蓄積しているベテラン社員にしかできない。さらに,原告も,エグゼキューション業務を行わないわけではなく,行う機会が少なかったというだけである。
(b) 被告は,原告の収益実績が,平成22年度は6百万円,平成23年度は7.6百万円であり,低水準である旨主張する。
しかし,平成22年度のアドバイザリー第5部の収益目標が12億円であったのに対し,実際の収益は4億円であった。また,この4億円のほとんどは,他の部に異動となった20名以上の社員が担当していた未完了案件が完了したことによって得られた利益であり,アドバイザリー第5部に残った人員が実際に稼いだ収益は非常に限定的である。また,平成23年度は,被告のアドバイザリーグループ全体の収益目標は130億円であったが,実際は50~60億円と,被告のグループ全体が低かった。アドバイザリー第5部の収益実績についていえば,同部の収益目標は11.6億円であるのに対し,実績は1億円であり,平成22年同様,原告のみが収益達成できていないというわけではなかった(なお,これらを踏まえた原告の収益目標自体,過大であり,一方的に押しつけられたものである。)。そもそも,アドバイザリー第5部は,部全体の収益目標を重視しており,個々人の収益目標は実質的に設定されていないようなものであった。また,部全体の収益から個々人の収益に按分する方法については,明確な基準が定まっておらず,アドバイザリー第5部の部長の裁量によって決まっていた(案件の分配自体も,部長に委ねられている。)。したがって,個々人の実績や収益については,原告自身によってコントロールできるものではなかった。また,アドバイザリー第5部においては,旧a社からの中小企業案件が引き続き対象とされ,もともと収益性は高いものではなかった。にもかかわらず,被告は,収益目標だけは,系列銀行からの案件を持ち収益性が高い大企業案件を対象にした他の部と同等に設定した。すなわち,被告は,アドバイザリー第5部や原告が初めから達成不可能なことが明らかな目標を設定し,それが達成できなかったことを理由として解雇・雇止めの理由としている。信義に反する主張というほかない。
アドバイザリー第6部に至っては収益目標もなく,この点でも収益不達を理由に契約を打ち切るのは不当である。
(c) そもそも,原告がエグゼキューション業務を行わなかったなどという事実もない。原告は,アドバイザリー第2部との協働案件やカバレッジ部隊からの依頼も多く,それらに関与していたため一時的にアドバイザリー第5部の業務ができない場合もあったにはあったが,被告が主張するように,原告がエグゼキューション業務において途中からフェードアウトしたなどということはない。もし,原告がフェードアウトしたというのであれば,被告において協働案件に時間を費やさないよう指示すれば良い。被告が認める原告の関与したエグゼキューション案件には漏れもあり,不当である。
(d) 協働案件は,C部長の指示により行っていた。なお,C部長も,エグゼキューション業務だけをやっているわけではなく,原告と同様,マーケティング業務も行っていた(エグゼキューション業務が少ないときなどには他のアドバイザリー部でもマーケティングを行っていた。)。
(e) 被告は,原告の雇止めの判断前になされていた人事評価(平成21年度及び平成22年度の人事評価)について,原告が部内で最低クラスであったなどと指摘する。原告は,評価結果を伝えられたことはなかったが,いずれにしてもその業務課題項目は一方的に課されたもので努力目標にすぎないし,被告の査定した評価点も,数値目標を達成しているのに十分な評価が付けられていないなどの問題があり不当ではあるが,最終的には期待どおりとされる程度のものであったとはいえる。
(f) 被告は,原告がヴァイスプレジデントの職階にあったから,案件を主導的に進めることが求められていたなどと主張するが,ヴァイスプレジデントは部に5~7名おり(他には部長1名,事務員1名,派遣社員1名である。),その期待される役割といってみても,将来担って欲しい役割期待という程度にとどまる。
(g) なお,被告は,原告がアドバイザリー第5部で孤立しており,セミナーにも参加しようとしなかったなどの問題点もあった旨の主張もするが,そのような事実はない。
(h) 以上を踏まえると,原告を直ちに被告会社から排除しなければ企業秩序を維持できないような事情は存しない。
c 原告の改善の余地
被告は,原告がその役割期待を十分に全うできていないと判断したと述べている。
しかし,被告は,原告に対し,アドバイザリー第5部がエグゼキューション業務を主として行い,原告がその役割期待を十分に全うできていないとの指摘をしていない。合併後の更新の際にも,契約更新の手続を通常どおり行っていた。したがって,合併後の被告が原告に対して,雇止め前からあらかじめエグゼキューションの能力が必要であるという状況に変わったから,これが不足しているとの指摘をしていれば,原告もアドバイザリー第5部の全体収益を上げるためのマーケティング業務ではなく,少ない案件の中でそのエグゼキューション業務だけに従事したし,当然に業績改善は図られたはずである。
被告は,賃金が減額(平成23年3月31日付けの労働契約書では年俸が720万円から648万円となった。)となったことについても指摘するが,原告は,これも新しい人事システムへの移行が理由であるとの説明を受けており,原告の業務上の問題に基づくものではない。
d 原告には宥恕すべき事情がある
被告が,解雇の理由として主張する,原告が被告の合併による役割期待の変化に見合った業務が行えなかったこと及び原告の収益が低かったことは,前記のとおり,原告が所属していたアドバイザリー第5部の特殊性によるものであって,原告のみの責任ではない。そもそも合併による役割変化を原告に帰責するのは不当である。人事評価項目もあまり変化していなかった(収益目標,新規契約件数への貢献の評価点は200点中20点にとどまる。エグゼキューション業務を遂行するという項目もない。)。
e 不誠実な説明
前記のとおり,平成23年10月28日の面談で,被告は,原告に対し,なぜ雇止めになるのかの具体的な説明をすることもなく,ただ「会社の判断」,「会社として」としか答えておらず,書面も出さないと言っており,誠実な説明を全くしておらず,手続的相当性もない。
f 被告は,原告が投資銀行第4部への異動を断った経過があることを雇止めの根拠の一つとして指摘しているが,かかる異動の話の打診があったのは,合併して2,3か月後の話であり,高い収益目標について目標未達成であったことからされたものではなく,エグゼキューション業務に特化していくという話の中であったものでもない。
(2)  被告の主張
ア 解雇権濫用法理の適用ないし類推適用の基礎はないこと
(ア) 継続雇用に対する合理的期待は認められないこと
a 本件労働契約の契約内容の推移
原告は,平成16年12月1日に旧a社に入社したが,入社以降の本件労働契約の内容の推移は,別紙2のとおりである。いずれの労働契約においても,期間の定めがあるとともに,各契約において若干の差異があるものの,経営状況,勤務成績,勤務態度等を総合考慮して再契約の有無を決定する旨の更新基準が存在していた。また,従事業務,就業場所についても限定合意がなされていた。このように,本件労働契約は,名実ともに期間の定めのある有期労働契約であった。
原告は,当初の契約書において更新が当然の前提となっていた条項(5条)もあるなどと主張するが,当該契約書の契約期間は明確に区切られており,上記条項も,更新するという判断のなされることが前提となっているものであることは明らかである。
b 契約更新手続及び更新の状況
原告は,いわゆる単純作業等に従事する労働者ではなく,特定の専門分野において,自らの専門性を基に市場価値に見合った能力を発揮することが求められる専門職契約社員であった。現に,原告の職系は,フィールド・スペシャリスト,エキスパート社員(E職)であった。
被告は,人事部において,処遇水準に見合った実績をあげたか,役割期待を果たしたか,という点を,人事評価や日々の人事担当者と所属長との情報交換から獲られた情報を基にして,同種人材の人材マーケットや被告の業績等も踏まえながら査定し,契約更新の有無について検討している。そして,人事部は,グループ長から更新希望の可否及び処遇水準についての申請を受け付け,当該申請内容及び査定された評価(勤務成績,態度等),人事部独自の査定・評価等を総合考慮して,同種人材の人材マーケットや被告の業績等も踏まえながら遅くとも契約期間満了の1か月前に,更新の可否の判断をしていた。契約を更新するとの判断がなされると,人事部の査定に基づき,次年度の契約期間における年俸額が,前年度の実績,当該同種人材のマーケットプライス,被告の経営環境等を総合考慮の上決定され,対象者から面談の申し出がある場合など必要に応じて,当該対象者と協議を持ちながら,最終的に被告との合意で決定される。原告の場合も,毎契約期間,査定に基づいて決定されており,別紙2のとおり,その年俸額が増減している。
そして,原告は,被告との間で,各契約期間において,各契約期間の初日若しくはそれ以前に,例外なく,期間の定めのある雇用契約書を署名押印の上,締結してきた。
以上のとおり,更新手続が形骸しているなどといった事情は微塵もなく,むしろ,被告は,各契約期間において,査定→更新の可否の判断→年俸の設定→双方合意→期間の定めのある契約書の締結というプロセスを例外なく経て,原告との間で再契約に至っていた。このような厳格なプロセスが,雇用継続に対する合理的期待を生じさせるものではないことは明らかである。
c 採用時に継続雇用を期待させる言動はなかった
原告は,B副部長から,実質的には正社員と同じであるから安心して勤務してほしいとの説明があったと主張するが,そのような事実はない。B副部長は,採用権限を持つ者でもなかった。むしろ,B副部長は,採用時の面接において,期間の定めのある社員であることを明確に説明しており,当然に雇用を継続するものでないことを明確に説明していた。
d 原告は個別の賃金処遇を受ける専門職社員であること
(a) 原告の職系は,前記のとおり,フィールド・スペシャリスト,エキスパート社員(E職)であったところ,いずれも個別の賃金処遇が可能とされた専門職社員であり,長期雇用を前提とする職系ではなかった。
(b) フィールド・スペシャリストの位置付けについて
フィールド・スペシャリストは,後記のE職と同様,自らが専門分野である業務領域(従事する業務)及び勤務場所を限定して契約し,その専門性を発揮することが求められる職系である。すなわち,新卒採用からの枠組みではなかなか培えない証券業界特有の専門性を有し,また,特定分野にキャリアがあり即戦力となりうる人材を中途採用する際に適用する職系である。そのため,証券総合職の賃金テーブルではその処遇を行えない高額の賃金処遇等を享受することが可能なように個別契約となっている。一方,このような個別契約による個別の賃金処遇が可能になるというメリットの反面,その専門性の発揮に存在価値がある以上,業績は契約期間毎に厳しく査定され,その処遇水準は勿論,社員としての雇用自体が,契約期間内の自らの職務遂行によって決定されることになる。したがって,その職系の性質上,必然的に長期雇用を前提としない職系となっていた。
このことは,実際の運用をみても明らかである。すなわち,原告と同じ平成16年度に中途採用された他の投資銀行業務関連の中途採用者は,全部で11名いたが,そのうち,6名が特別専門職(期間の定めのない正社員としての専門職)に転換したものの,原告を除くそれ以外の者はいずれも短期間のうちに退職している。
このことは,原告と同時期に入社した投資銀行業務関連の中途採用者に限ったものではなく,フィールド・スペシャリストであった者のうち,実に平均75.7%が既に退職しており,職系転換をした人を含めると,平均88.8%にものぼる。
このように,フィールド・スペシャリストは,優秀な人材については特別専門職への職系転換がなされ,それ以外について短期間のうちに退職(退職勧奨による退職を含む。)をしていくことが想定されており,長期雇用を前提としたものではなかった。
(c) E職について
旧a社でのフィールド・スペシャリストにあたる職系は,旧b社ではプロ契約社員と言われていたが,名称こそ異なるものの,その役割期待や処遇(高い賃金処遇が可能であること,職務内容・勤務地域に限定があること,1年の有期労働契約であること)等は基本的にフィールド・スペシャリストと同様であった。両社の合併に伴い,フィールド・スペシャリストとプロ契約社員は,平成23年4月,E職に統合された。
E職も,フィールド・スペシャリストと同様,有する専門性・市場価値に見合った能力を発揮し,担当業務の遂行を通じて全社組織の発展に貢献することが期待されたキャリア採用の職系であり,基本給の賃金テーブルがある総合職(G職)と異なり,業績・実績やマーケットプライスに応じて,その職務遂行に見合った枠にとらわれない個別の賃金処遇を得ることが可能とされ,契約上,職務内容及び勤務地を限定することができるものとされていた。
それらのメリットの反面,終身雇用や長期に亘っての指導教育が念頭に置かれたG職などと異なり,プロフェッショナル故に,更新の可否,処遇の決定の点から,上記役割期待を果たしているかが,厳しく査定されることになる。
このように,E職という職系自体,継続雇用を期待させないもの(長期雇用を前提としていないもの)であった。
このことは,実際のE職の勤続年数が長くなく,年齢構成もパフォーマンスの高い30~45歳付近の年齢が多くなっていること,雇止め実績(合併後の平成23年4月に人事制度が統合された以降だけでも,平成24年12月までに合計39人のE職を雇止めにしている。この中に投資銀行業務に関連するE職の雇止めも含まれている。),雇止め者の勤続年数(3年が突出している。)等からも明らかである。
以上のとおり,E職においても,雇用継続(長期雇用)を前提としないものであった。
e 原告自身も,雇用継続が保証されたものでないことを入社当初から十分に理解していたこと
原告自身も,特定の分野の業務に従事し,かつ,勤務地を限定しての雇用を希望して被告に雇用されてきたものである以上,自らの雇用が長期雇用を前提としていないこと,すなわち,契約期間毎に更新の可否について査定され,雇用継続が保証されたものでないことを入社当初から十分に理解していた。
そして,このことは,原告が多くの外資系企業を短期間のスパンで渡り歩き,同分野でのキャリアを積み重ねてきたことや,原告自身の言動,すなわち,原告自身,雇用契約書に期間の定めがあることを認識した上で,何らの異議なく締結しつづけ(なお,原告は業務において契約書の作成等を取り扱う立場にあったものであり,契約書の重要性やその内容を十分に理解していた。),期間の定めのない職員である特別専門職への転換を希望することもあったこと,被告から異動の打診があった際に,会社の意向に従って異動をするためには,会社の指示どおりに異動できる正社員にするよう要求し,「同年代が高給で長時間の残業がある投資銀行4部へ異動しろというのであれば,会社の指示通り異動できる正社員にしたらどうですか」などと述べたこと等からも明らかである。
f 期間満了の約半年前の時点での雇止めの通告とその後の年休消化
被告は,平成24年10月の希望退職募集に伴う面談の際,原告に対し,次回の契約更改はしないことを事前に明確に伝えた。
そして,原告は,契約期間満了が近づくと,自ら人事部に対し,契約期間満了日までの年次有給休暇取得について問い合わせ,同年5月15日以降,契約期間満了日まで残存日数を消化するに至った。
このような原告の行動も,そもそも原告に雇用継続に対する合理的期待が存しなかったことを示すものである。
(イ) 以上のとおり,本件において,雇用継続に対する合理的期待が存しない。したがって,本件契約打切りに解雇権濫用法理の類推適用される余地はない。
(ウ) 原告は,就業規則の規定等や女性管理職育成セミナーへの参加が長期雇用を前提とするなどと主張するが,いずれもその根拠となるようなものではない。
また,E職と正社員と差異に関し,転勤・出向の有無や人事評価項目が正社員と異ならなかったことを指摘するが,転勤・出向等は特別な場合でない限り発令されていないし,人事評価項目についていえば,査定項目自体は同じであっても求められる水準が質的に異なる。なお,原告は,あたかも自らの給与が低額であり,高い賃金処遇を受けるものではなかったなどとも主張をするが,これは実績を上げていなかったからにすぎない。
イ 原告に対する雇止めは有効であること(予備的主張)
(ア) 百歩譲って仮に,本件において解雇権濫用法理が類推適用されるとしても,原告に対する雇止めには客観的に合理的な理由が存し,社会通念上も相当である。
(イ) 本件は,あくまでも期間の定めのある契約社員の雇止めであるところ,その効力を判断する基準は,期間の定めのない労働契約を締結している社員を解雇する場合とは異なり,おのずから合理的な差異があることはいうまでもない。ましてや,原告は,従事すべき業務及び勤務場所が特定され,かつ,即戦力として雇用されていた専門職社員であったのであって,正社員において要求されるような指導教育なども想定されておらず,雇止めの効力を判断するにあたっては,当該特定の業務分野において,当該賃金水準・地位に見合った(期待された)実績・役割期待を果たしているかという基準で判断すれば足りる。
(ウ) しかるところ,これを本件についてみると,原告に対する雇止めには客観的に合理的な理由が存する。
a 原告に求められていた役割期待
合併後のアドバイザリー第5部は,収益責任を負うことが明確にされ,エグゼキューション業務を実行して着実に収益をあげていくことが求められた。そのような中で,特に,「アドバイザリー業務及びこれに関連する業務」を従事業務とするE職であった原告は,M&Aアドバイザリーの専門職として,エグゼキューションにおいて,その専門性を発揮して,収益をあげることが求められていた。原告は,ヴァイスプレジデントという職階にあったので,特に案件を主導していくことも求められていた。
エグゼキューション業務に注力していくことは,合併直後の平成21年5月のアドバイザリー第5部の部会において,当時の部長であったE部長から,原告を含む部員に対して説明されているし(翌6月の部会でも同様の説明がされている。),アドバイザリーグループ全体の会議においても,平成21年7月3日,当時のアドバイザリーグループのグループ長であったFグループ長から,翌年の平成22年4月8日,当時のGグループ長から,それぞれ説明されている。
そして,同月からアドバイザリー第5部の部長になったC部長は,部員が人員見直しにより32人から10人に減少した際,部員を動揺させないために,同部が解体されるわけではないこと,今回の人員見直しによって,カバレッジ・マーケティングに適性がある者が異動し,カバレッジ部門の強化が図られたこと,これに伴い,アドバイザリー第5部においてエグゼキューション業務を本来的業務として,これまで以上にさらにエグゼキューション能力を強化していくことなどを原告を含む部員に対して説明し,原告との期初及び期末の評価面談において,収益目標を設定するとともに,個別に,収益をあげるように繰り返し伝えていた。なお,人事評価においても,エグゼキューション業務が占める割合が大きくなり,明確にエグゼキューション業務が求められるようになっている。
そして,原告自身自らの役割期待が変化していたことを認識していたことについては,原告本人も同趣旨の供述をしてこれを認めている。
b 原告は役割期待であるエグゼキューション業務を全うできなかったこと
しかしながら,原告は,ヴァイスプレジデント職階にあり,本来であれば,案件を主導的に進めることまでが求められていたにもかかわらず,上記のとおり,自らの変化した役割期待を認識しながらもエグゼキューション業務を行わず,他の部員と比べ,関与収益額,関与件数,関与作業いずれも著しく乏しい状況であった。
すなわち,原告の各年度におけるエグゼキューション業務の実施状況は別紙3(これには2部との協働案件はもちろん,FA契約を締結したが,途中で頓挫した案件も含まれている。)及び4のとおりであり,極めて乏しいものであった。特に判断資料準備支援以降の手続・作業については一切関与していなかった。また,他の比較対象となる部員を見ればわかるように,アドバイザリー第5部の中で原告だけがエグゼキューション業務を行っていなかった。
そして,収益についても,上記のとおり,原告がほとんどエグゼキューション業務を行っていなかったため,別紙5のとおり,原告の収益は非常に低迷していた。現に,部内でも最下位クラスの収益実績であった。額そのものだけではなく,収益貢献度としても低い。
c エグゼキューション業務を行おうとする努力もなかった
C部長は,原告にあまりに収益実績及びエグゼキューションの実績がないことから,原告が興味を持ちそうなout-inの案件(海外企業が国内企業を買収する案件で必然的に英語を使用する案件)に参加するように声をかけたが,原告は,エグゼキューション業務の段階になると避けるように,案件からフェードアウトしていった。そうしたことから,原告はアドバイザリー第5部内で孤立してもいた。
また,原告は,エグゼキューションに関連するセミナーに参加するなどエグゼキューション業務の能力を向上させようとする努力もしようともしなかった。
なお,原告は,前記のとおり,専門職として採用された者であり,殊更指導の対象となるような者ではない。
d 原告は,被告の指示によりアドバイザリー第2部と協働するなどマーケティング業務に従事していたなどと主張する。原告主張に係るマーケティング業務についての被告の認否は別紙6記載のとおりであるが,アドバイザリー第2部等他部との協働についても,C部長からアドバイザリー第2部との協働を指示・お願いしたことはなく,C部長が,原告とアドバイザリー第2部との協働について認識し報告を受けていたのは年2回ほどにすぎない。それ以外はC部長が認識しない範囲で行われていた。また,原告の関与は,いずれも初期レベルのものが多く,収益金額ベースでいえば,アドバイザリー第5部に収益をもたらしたのは平成21年度以降たった2件で145万円にすぎず,他のアドバイザリー第5部の部員のほうが成果をあげていた。原告の作業量や件数としても,アドバイザリー第5部ではマーケティングをカバレッジ部門にやってもらってエグゼキューションの段階に入っているものの件数は80件くらいあり,決して多いものでもなかった。
e 結局,原告は,不足するエグゼキューション業務の能力を向上させようとする努力もしようとせず,むしろエグゼキューション業務を通して収益を目指したアドバイザリー第5部においても,案件に結びつかず,また自らの役割期待に反して初歩的なマーケティング業務ばかり行いエグゼキューション業務を行わず,その結果として十分な収益をあげなかったものであり,原告の雇止めには客観的で合理的な理由がある。
(エ) また,原告に対する雇止めは社会通念上相当である。
a 被告は原告に対し異動の打診を行った
原被告間の労働契約においては,原告の就業場所及び従事業務について限定する旨の合意がなされているところ,被告に異動を命じる権限は存しなかった。もっとも,被告は,原告の適性等を踏まえ,エグゼキューションではなくカバレッジ業務を主として行う投資銀行第4部への異動を打診した。にもかかわらず,原告は,エグゼキューション業務を主として行うことが求められるようになったアドバイザリー第5部への残留を自ら希望した。
b 被告としては,原告がもはやエグゼキューション業務を主として行うようになったアドバイザリー第5部において,原告がその役割期待を全うできていないと判断せざるを得なかったが,それでも再契約を行い,原告の雇用確保にも努めた。
c さらに,被告は,極めて有利な優遇措置を内容とする希望退職を実施し,原告に対しても応募を促した。同希望退職には,優遇措置として転進支援金だけでなく,再就職支援サービス等も含まれていた。
d したがって,原告に対する雇止めが社会通念上相当であることは明らかである。
(オ) 以上のとおり,仮に本件雇止めに解雇権濫用法理が類推適用されるとしても,本件雇止めには客観的に合理的な理由が存し,社会通念上相当であるから,有効であることは明らかである。
ウ 原告は,本件雇止めが整理解雇である旨主張する。しかし,いわゆる整理解雇とは,企業が経営上必要とされる人員削減のために行う解雇であって,使用者側の経営上の理由に基づいて労働者の責めなくなされる解雇である。しかしながら,本件は,合併等に伴う役割期待の変化等に伴い,原告が求められる役割期待をその賃金処遇に照らし十分に全うできなくなったことから雇止めをしたにすぎない。したがって,いわゆる4要素に基づく判断手法は妥当しない。
第3  当裁判所の判断
1  前記前提事実のほか,当事者間に争いのない事実並びに証拠(後掲のもののほか,証人D,同C,原告本人。ただし,いずれも措信できる部分に限る。以下同じ。)及び弁論の全趣旨によれば,本件の基礎となる事実関係として概ね以下の事実を認めることができ,かかる認定を左右するに足るまでの的確な証拠はない。
(1)  被告の業務の概要
ア 被告の事業分野は,投資銀行ビジネス,市場・商品ビジネス,国内ミドル・リテールビジネス(国内営業)に大別され,これらの事業分野に応じて,被告組織も投資銀行部門,市場・商品部門,国内営業部門に大別される。
(乙1)
イ 投資銀行業務は,国内外の法人顧客に対して,株式・債券の譲渡・引受をはじめ,M&Aアドバイザリーや資産証券化など,複雑化,高度化,多様化する顧客のニーズに応えるための投資銀行ソリューション・サービスを提供するものである。
その担当業務は,概してカバレッジ担当とプロダクト担当に峻別することができ,その担当内容は,概ね次のようなものである。
(ア) カバレッジ担当
業種,地域,その他の特性に応じて,海外拠点等と協働して顧客のニーズを適切に捉え(マーケティング),買収や売却,合併,持株会社の設立といったM&A案件や事業再生案件,資金調達案件に関するアドバイスを提供する基となるFA契約(フィナンシャル・アドバイザリー契約)締結を目指す営業業務
(イ) プロダクト担当
FA契約を実際に作成・締結し,同契約に基づくフィナンシャルアドバイザー(FA)として,顧客のニーズへのソリューションに応じてカバレッジ組織や海外拠点と協働して最先端の金融技術,蓄積された専門的ノウハウを駆使して実際に個別案件を実行・推進していく業務
(乙16)
ウ エグゼキューション業務
(ア) 後記のとおり,原告は,本件契約打切りの際,M&Aにおけるエグゼキューション業務を担っていたところ,これは上記プロダクト担当に位置付けられるものであり,M&Aにおける一連の事務手続等の実行,管理をしていくことである。これとの対比で,マーケティング・カバレッジ業務もあるが,これは主として戦略の立案の支援や提案,情報提供を中心とするものであるのに対し,エグゼキューション業務とは,フィナンシャルアドバイザー(FA)としてM&Aをそのクロージング(成約)に向けて一つ一つ手続を実行していく業務である。その具体的内容は,概ね別紙7のとおりである。
(乙16。この点,原告は,別紙7の内容について疑義を呈する。しかし,同別紙の内容は,アドバイザリー5部の部長であったCが,他の部員と検討の上,通例の実務を踏まえて作成されたものである旨供述するところ,個々の案件において,顧客の意向を踏まえ,マーケティング・エグゼキューションの各作業をどの段階でどの程度まで提案するかは異なり得るとしても(甲12),概して同別紙のように進んでいくものという限度では,その信用性は左右されるものではない。)
(イ) エグゼキューション業務の進め方
被告においてエグゼキューション業務を進めるに当たっては,随時チームを組んで対応している。案件にもよるものの,基本的には,案件を統括する主担当者(ディレクターやヴァイスプレジデントなど),実務的な作業の管理を担う者(ヴァイスプレジデントなど),実際の作業等を行う者(ヴァイスプレジデント,アソシエイト・アナリストなど)という構成で行われている。
(乙16)
(ウ) エグゼキューション業務における収益
エグゼキューション業務を行う前提のFA契約では,通常,着手金,成功報酬の形で費用を取り決める(但し,中には着手金はなしとされ,成功報酬だけの場合もある。また,中間金(マイルストーン)を取り決める場合もある)。そのため,FA契約締結時点や案件が終了(成約)した時点で収益があがることになる。但し,成功報酬のほうが着手金よりも高いのが通例である。
なお,エグゼキューションによって上がった収益は,チーム内において按分され,それらの累計が個人別の関与収益の実績とされている。
(乙16)
(2)  被告の人事制度の概要
ア 旧a社
(ア) 旧a社には,期間の定めのない社員として証券総合職(現在のG職),証券特定職(現在のA職)及び特別専門職(現在のS職)が,期間の定めのある社員(契約社員)としてフィールド・スペシャリスト(現在のE職),フィナンシャルアドバイザー(FA)及び嘱託社員,という職系があった。その役割期待,キャリア形成,採用,雇用形態及び勤務地については概ね別紙8のとおりである。
(乙15)
(イ) フィールド・スペシャリストについて
フィールド・スペシャリストは,旧a社において,特別専門職と同時に平成17年3月に創設された職系である。
フィールド・スペシャリストは,1年以内のフィールド・スペシャリスト契約(雇用契約)を締結し,高度なスキル・ノウハウを保有する者として専門分野における業務に従事する者をいうものとされ(フィールド・スペシャリスト規程2条),その賃金額は,賃金テーブルがある証券総合職等とは異なり,1年毎の個別の契約により個別に決定され,その他の労働条件についても,従事する業務内容及び勤務場所についても個別の契約により決定することが可能とされていた。契約期間は,原則として1年とされ,契約期間毎の契約書及びフィールド・スペシャリスト細則に記載されているとおり,経営状況,勤務成績,態度等を総合考慮して,契約期間毎に更新の有無が検討され,決定するものとされていた。
フィールド・スペシャリストは,特定分野での専門職である点で特別専門職と共通するが,特別専門職は,専門分野で社内外から高い評価を得ることができる人材を対象に,正社員(期限の定めのない社員)として処遇する制度であり,この点においてフィールド・スペシャリストと異にする職系であった(なお,フィールド・スペシャリストからも,被告が優秀と認める人材について部店長等の推薦を踏まえ,特別専門職への転換が可能とされていた。)。
フィールド・スペシャリストの職系の創設以前の契約社員の受け皿として嘱託社員があったが,投資銀行業務関連の契約社員の中途採用者は,平成17年4月,同制度の創設に伴い,いずれもフィールド・スペシャリストないし特別専門職となっている。
(乙2,3,15)
イ 合併後の被告
(ア) 旧a社との人事制度統合(平成23年4月1日)後の被告には,期間の定めのない社員としてG職,A職及びS職が,期間の定めのある社員(契約社員)としてE職,フィナンシャルアドバイザー(FA)及び嘱託社員があった。そのキャリア形成,採用,雇用形態及び勤務地については概ね別紙8のとおりである。
(甲27,乙15)
(イ) E職(エキスパート社員)について
E職(エキスパート社員)は,その有する専門性・市場価値に見合った能力を発揮し,担当業務の遂行を通じて全社組織の発展に貢献する者とされ,その賃金額は,フィールド・スペシャリストと同様,個別の契約により決定され,従事する業務内容及び勤務場所についても個別の契約により決定することが可能とされていた。契約期間も有期契約であり,契約更新に当たっては査定を実施し,翌期の契約更新の有無や契約条件を決定するものとされていた。
被告においても,E職から,旧a社における特別専門職のような位置付けになるS職への職系転換の制度があった。
なお,旧a社のフィールド・スペシャリストは,旧b社と旧a社との合併に伴い,原則としてE職に移行した。旧b社にもプロ契約社員という職系があり,同様,E職に移行している。
(甲27,乙3,15)
(ウ) 職階
被告には,上記職系のほか,別紙9のとおり,職階(社員に求められる役割期待を,5つの段階(階層)に括ったもの)があり,ポストや職務ではなく,担う役割期待に応じて各社員につき設定されている。被告における職階及び同職階に求められる役割期待は,別紙9のとおりであり,原告の最終職階であったヴァイスプレシデント(VP)役割期待は,所属部室店方針の実現に向け,部室店の統率・運営或いは高度な専門領域における業務推進における重要な役割を果たす,管理範囲における組織運営,あるいは高度な成果実現の責務を担うというものであった。
(甲27,乙15)
(エ) キャリアセレクション制度
被告には,期間の定めのない社員であるG職,A職及びS職を対象に(期間の定めのあるE職は,対象とされていない。),個々人の多様なライフプランの実現に向け,セカンドキャリア選択を支援する制度として,キャリアセレクション制度がある。被告は,平成23年7月に早期退職コースの募集を実施しているところ,これは上記キャリアセレクション制度に基づくものであった。
(甲27,乙4,乙15)
(3)  フィールド・スペシャリスト及びE職における契約更新の状況等
原告は,被告において,フィールド・スペシャリストやE職などとして稼働していたものであるところ,これらの職系における契約更新の状況等に関しては,以下のとおりである。
ア フィールド・スペシャリスト
原告と同時期の投資銀行業務関連の中途採用者は11名いたところ,そのうち6名が,別紙10のとおり,特別専門職に転換し,原告を含むそれ以外の者は,いずれも短期間のうちに退職している。
その他,フィールド・スペシャリストとして採用された者(採用後にフィールド・スペシャリストになった者を含む。)の推移状況についてみると,別紙11のとおり,フィールド・スペシャリストであった者のうち75.7%ほどの者が退職し,これに職系転換をした人を含めると,88.8%ほどにのぼる。
(乙15)
イ E職
平成24年6月末時点における被告に在籍するE職の勤続年数(原告は概ね7年半),年齢構成(原告は雇止め時47歳)は,それぞれ別紙12グラフ①,②のとおりである。
被告のE職の雇止め実績は,平成23年4月の人事制度以降,平成24年12月までの間,合計39人というものであり,この中に投資銀行業務に関連するE職の雇止めも含まれている。なお,これら雇止め者の勤続年数,年齢構成は,別紙12グラフ③,④のとおりである。
(乙15)
ウ 契約更新手続の状況
被告は,人事部において,処遇水準に見合った実績をあげたか,役割期待を果たしたかという点を,人事評価や日々の人事担当者と所属長との情報交換から得られた情報をもとにして,同種人材の人材マーケットや被告の業績等も踏まえながら査定し,契約更新の有無について検討している。
そして,人事部は,グループ長から更新希望の可否及び処遇水準についての申請を受け付け,当該申請内容及び査定された評価(勤務成績,態度等),人事部独自の査定・評価等を総合考慮して,同種人材の人材マーケットや被告の業績等も踏まえながら遅くとも契約期間満了の1か月前に,更新の可否の判断をしていた。
契約を更新するとの判断がなされると,人事部の査定に基づき,次年度の契約期間における年俸額が,前年度の実績,当該同種人材のマーケットプライス,被告の経営環境等を総合考慮の上決定され,最終的に被告と原告との合意で決定される。
そして,各契約期間において,各契約期間の初日若しくはそれ以前に,期間の定めのある雇用契約書を署名押印の上,作成していた。
(乙3,15,17~19)
(4)  本件契約打切りに至る経緯
ア 原告は,日本の薬剤師の資格を有し,サンディエゴ州立大学の経営学の修士課程を修了し,別紙1のとおり,外資系の金融機関を中心に職歴を重ねてきた者であるところ,旧a社の採用活動に接し,採用面接に応募した。
第1次面接は,実際の現場である法人企画部のH部長及びエクイティキャピタルマーケット部のI部長らによってなされ,原告が日本の薬剤師の資格及びMBAを有していることなどに関心が持たれた。
次に,平成16年10月6日には,人事部のB副部長との面接が行われた。同面接では,応募理由や身辺の情報,過去の処遇条件のヒアリングが行われ,B副部長からは,人事制度の説明が行われた。なお,原告は,採用面接において,原告は,採用される場合における自己の労働条件について,従前の外資系企業での経験を踏まえ,勤務地について東京に限定し,一方的な異動も命ぜられないという嘱託社員の制度内容に関心を示し,職務内容も個別の労働契約で決めることなどを求めていた。B副部長は,採用する場合における原告の労働条件については,期間の定めのある有期雇用契約(常勤契約社員)となり,正社員ではないことを説明した(なお,原告は,原告についてだけB副部長との面接が特に設けられたと主張するが,これを裏付ける的確な証拠はない。その他,原告は,同面接において,B副部長から,実質的には正社員と異ならないとの説明も受けたなどと主張するが,これについては後記参照。)。
そして,J人事部長が,同月21日,最終面接を行い,原告は,旧a社に採用されることとなった。
こうして,原告は,旧a社との間で,平成16年12月1日付けで期間の定めのある雇用契約書(契約期間は同日から年度末である平成17年3月31日まで)を作成して労働契約を締結し,旧a社で稼働をすることとなった。
(甲28,乙3の1,10,11)
イ その後も,原告は,被告との間で,契約期間を1年(最終の契約書においては1年3か月。有期契約社員の期間満了終期を旧b社の契約社員の終期である6月末に合わせるためであった。)とする内容を含む雇用契約書を作成してきた。その内容は,別紙2記載のとおりであり,勤務地・就業場所の限定も含まれていた。
なお,原告は,当初の契約においては嘱託社員であったが,平成17年4月,フィールド・スペシャリストの制度が創設されたのに伴い,フィールド・スペシャリストに移行した。
(乙3)
ウ 原告は,旧a社への入社以降,被告から,製薬関係の知見等を生かした業績貢献を期待され,フィールド・スペシャリストとしてエクイティキャピタルマーケット部に配属され,同部で稼働した。その後,平成17年4月になると,インベストメントバンキング第1部(後に企業金融第5部と改称)への配属に応じ,IPO案件・PO案件及びこれに関連する算定業務等に関わった。平成18年4月になると企業金融第5部第1チームに異動して製薬会社を中心に担当するなどし,平成20年4月になると事業開発部に異動してM&A案件に関与した。同年8月にはM&A・アドバイザリー部に配属され,M&A業務に従事した。そして,平成21年5月に旧a社と旧b社が合併すると,アドバイザリー第5部に配属され,以降,契約終了に至るまで同部においてM&A業務に従事した。
原告の当初の配属部署においては,フィールド・スペシャリストとして勤務するものは原告一人という状況であったが,その後,M&A・アドバイザリー部に配属された頃には,概ね7~10名ほどのフィールド・スペシャリストが存在した。
原告は,この間,上長とともに企業を訪問して投資銀行業務に係るニースを調査したり,セミナーに参加するなどもした。
(甲28,乙3の2~8)
エ 合併とそれに伴う組織統合
(ア) 旧b社は,リテール業務を中心としていた旧a社と異なり,合併による統合前から,c銀行をはじめとする○○グループ傘下の企業との連携の下,主として大企業法人等を対象に投資銀行業務を展開していた。そのため,その組織においても,主としてカバレッジ・マーケティングを行う投資銀行グループ(投資銀行第1部から第7部まで)と,主としてエグゼキューションを行うアドバイザリーグループ(アドバイザリー第1部から第5部)とが存在していた。
他方,旧a社は,旧b社とは異なり,日本全国に支店を有し,リテール業務を主として行っていたことから,本社のM&A・アドバイザリー部は,支店のネットワークから上がってくる案件(国内中堅企業の事業拡大支援等)を主要な業務として取り扱っていた。そのため,旧b社の投資銀行グループに該当する部署として企業金融第5部から第7部が存しはしたものの,M&A業務については,M&A・アドバイザリー部が主としてカバレッジ・マーケティングからエグゼキューションまでを一貫して行っていた。そのため,旧b社とは異なり,M&A・アドバイザリー部には,カバレッジ・マーケティングを行う者とエグゼキューションを行う者が混在していた。
(乙16)
(イ) そうした中の平成21年5月,旧b社と旧a社が合併し,部門の統合が行われることとなった。その際,投資銀行業務に関しては,旧b社の投資銀行グループと旧a社の企業金融第5部から第7部が統合され,旧b社のアドバイザリーグループと旧a社のM&A・アドバイザリー部が統合されることになった。そして,旧a社のM&A・アドバイザリー部の人員は主として被告のアドバイザリー第5部に移ることとなり,同部は旧a社出身者で占められることとなった。その結果,旧b社では,カバレッジ・マーケティング機能とエグゼキューション機能とが組織上明確に分かれていたものの,旧a社のM&A・アドバイザリー部が移ったアドバイザリー第5部については両機能が混在することとなった。
なお,合併時点におけるアドバイザリー各部の陣容は,概ね下記のとおりであった。

部 H21.5時点 H22.4時点 H24.4時点
第1部 18人 19人 18人
第2部 21人 21人 19人
第3部 21人 20人 18人
第4部 17人 22人 23人
第5部 32人 10人 9人
第6部 24人 27人 18人

また,統合後のアドバイザリーグループ各部の業務は下記のとおりとなった。結局,主として旧a社出身者で構成されたアドバイザリー第5部は,旧a社の支店のネットワークからくる中小型案件を中心に担当することとなった。

部 取扱分野
第1部 金融機関,リース,ノンバンク,建設,不動産,再生案件等
第2部 食品,医薬,繊維,鉄鋼,非鉄金属,エネルギー,流通,小売,商社等
第3部 電機,電子,通信,メディア,IT,自動車,機械等
第4部 運輸,物流,化学,自動車部品等
第5部 中小型案件(旧a社のネットワーク関係)
第6部 クロスボーダー案件,ファンド案件

(乙16)
(ウ) 上記のとおり,旧a社におけるM&A・アドバイザリー部を事実上引き継いだアドバイザリー第5部は,マーケティングからエグゼキューションまで一貫して行う形であったところ,内外の証券会社間における競争の激化等を踏まえ,合併によるシナジー効果を実現するために業務の効率化,一人あたりの収益率の改善等が求められ,カバレッジやマーケティング業務は主として投資銀行グループが担い,エグゼキューションは主としてアドバイザリーグループが担うという役割分担の峻別,専門化が図られることとなった。
こうした観点から,アドバイザリーグループでは,より収益性の高いエグゼキューションにおいてその能力を発揮することが求められるようになった。
(乙12,16)
(エ) 上記の役割期待の変化やそれに伴うカバレッジ・マーケティング機能の投資銀行グループへの集約・業務効率化,一人あたりの収益率の改善による競争力の強化等の観点から,アドバイザリーグループの他部に比して人員が多かったアドバイザリー第5部の人員体制を見直す必要性が生じ,カバレッジ・マーケティングを得意とする者については,平成22年4月までの間に,順次,カバレッジやマーケティングを主として担当する投資銀行グループや国内営業部門等への異動がなされた。
そして,原告の場合においても,英語力,製薬関連の知見を活かした顧客提案,カバレッジサポートにおいては相当程度の成果をみせていたとみられたことから,被告は,原告には就業先の限定があったため,カバレッジ業務を主として行う投資銀行第4部(当時)への異動を打診した。もっとも,原告は,自己の賃金額に照らして同部での就業は過酷であるなどとして,上記被告からの異動の打診を謝絶し,アドバイザリー第5部に残留することを希望し,結果として,原告の異動はかなわなかった。
こうして,平成22年4月時点において同部の人員は32人から10人となり,同部は,エグゼキューションを重視した部隊として専門化していくこととなった。
かかる方針は,合併直後の平成21年5月のアドバイザリー第5部の部会において,当時の部長であったE部長から,原告を含む部員に対し,今後はエグゼキューション能力を強化して業務を行っていくこと及び旧a社時代と異なり第5部に収益責任が課せられることの説明の中で伝えられ,翌6月の部会においても,同部長から,再度,合併に伴う役割期待の変化に対する意識を徹底させるために,エグゼキューションを着実に実行し収益を上げることが求められていることの説明がなされ,伝達されていた。また,アドバイザリーグループ全体のグループ会議(平成21年7月3日,平成22年4月8日各開催)においても,当時のグループ長であったFグループ長やGグループ長から,同様の観点の指示,説明がなされていた。
そして,平成22年4月からアドバイザリー第5部の部長になったC部長においても,部員が人員見直しにより32人から10人に減少したことに関連して,同部が解体されるわけではないこと,今回の人員見直しによって,カバレッジ・マーケティングに適性がある者が異動しカバレッジ部門の強化が図られたこと,これに伴う第5部においてエグゼキューション業務を本来的業務として,これまで以上に更にエグゼキューション能力を強化していくことを原告を含む部員に対し説明し,原告を含む課員との期初及び期末の評価面談において,部及び一人当りの収益目標を設定した。
(甲28,乙12,16,18,19)
(オ) しかし,被告においてみた原告の稼動成果は,その英語力・製薬関連の知見を活かした早い段階でのカバレッジ等においては一定の力を発揮していたとはみられたものの,上記方針と異なり,原告のエグゼキューション業務への関与が薄く,関与収益も低迷していたというものであった(なお,被告の査定した原告の関与収益は,別紙5のとおりであり,部全体の寄与度という観点からも低いものであった。)。もっとも,平成22年3月,合併後,初めての契約期間満了期を迎え,契約更新の判断に当たっては,本件合併による統合後間もなくであり未だ両社の人事制度が統合されておらず事実上人事が凍結されていた等も踏まえ,被告は原告と前年度と同一の年俸720万円にて再契約することに応じた。
しかし,その後も,関与収益の実績は低迷を続け,翌年度は,人事制度の統合による兼ね合いもあって,年俸額720万円から1割を業績年俸として切り出し基本年俸を年俸648万円として減額した上で,原告と再契約を行うこととした。もっとも,原告のこれまでの実績や平成22年度の人事評価,C部長も原告の異動が適切との意見を示していたことを踏まえ,人事部としては原告を雇止め候補者として検討することとし,平成23年10月,後記のとおり希望退職が実施されることになっていたことから,同月の段階で雇止めを通知し,原告に希望退職への応募を勧めることにした。
その希望退職の概要は,概ね以下のとおりである。
a 被告は,業績悪化が続き,平成23年10月3日,厳しい経営環境の長期化の可能性を睨み,収支改善への取り組みを加速させるべく,「業務基盤再構築プログラム」を発表したところ,業務基盤の強化および一部業務体制の見直しとして,投資銀行業務等,各分野の収益力回復・強化に向け,業務の選択と集中の徹底によりメリハリのある業務運営を実施することとしたほか,効率的な業務運営のため組織のスリム化を行うとともに,希望退職の募集を実施する。
b 対象者は,満35歳以上満59歳以下のG職/A職/S職/E職のうち,本人が希望し,適用対象外に該当しないものとして会社が認めた者であり,募集人員は300名とする。
c 優遇措置として,E職に対しては,転進支援金として基本年俸(月俸×12)+500万円を交付し,希望退職の適用が確定し,所定の手続が完了し,所属部店長が承認した場合,12月30日まで有給休暇の取得を認める。また,希望退職を通じて退職する場合,希望者に対して,再就職支援サービスとして,被告において費用負担の下,当社が契約した再就職支援会社(提携会社は6社)を紹介する。
(乙3の7,3の8,5,6,15~18)
(カ) そして,C部長は,希望退職募集について説明するために,平成23年10月14日,被告会議室において,原告との間で面談を行い,その中で,原告について被告内で期待されるポジションやポストはないことや今回の希望退職に応募しない場合でも,次回の契約更改はしないこと等被告の考えを伝え,上記希望退職への応募を勧めた。もっとも,原告は,人事部より書面にて趣旨と理由を提示してもらいたいなどと述べて応じず,同月28日,人事部のDディレクター及びC部長において,原告と再度面談を行った。同面談において,Dディレクターは,原告に対し,会社をめぐる経営環境が厳しいこと,会社の判断として,将来のポジションがないこと,希望退職について応じる機会をもうけていること,応募しなかった場合でも,契約更新はしない予定であることを伝えた。これに対し,原告からは,「契約更改をしないとの人選に関わったのは人事部なのか,それとも別の誰なのか」という旨の質問があったが,これに対し,Dディレクターは,「会社として判断している」旨回答した。また,この際,原告から「2年前,投資銀行第4部への異動の話があったが…」との質問があったが,Dディレクターは,その当時から既に業務の専門化が進められ,少数精鋭化・人員のスリム化が行われていたことから投資銀行グループへの異動を提案することは不適切と考え,「2年前とは,まったく会社の状況が変わっている」旨回答し,原告に対し,異動という選択肢もない旨説明した。しかし,原告はこれに応じる意向は示さず,結局,原告から希望退職への応募もなかった。
(甲11,16,乙13,15)
(キ) 平成24年5月15日に至り,精神的不調の状態にあるとの診断書を被告に提出するとともに,同日から契約期間満了まで残存していた年次有給休暇を消化し,同日以降,被告に出社しなかった。
(乙15)
(ク) 被告は,上記希望退職の際の面談の際,契約を更改しない旨を口頭で通知はしていたものの,原告に対し,平成24年5月29日付けで改めて本件雇止め通知を送付し,同年6月30日の経過をもって,本件労働契約は,期間満了により終了したものとして取り扱った。
(乙7,15)
(ケ) 平成24年7月5日付で原告代理人から被告に対し,雇い止め理由証明書の請求等があったことから,被告代理人は,同月19日付で原告代理人に対し,雇止め理由書を送付した。
(乙8)
2  そこで,上記認定事実を踏まえ,以下検討する。
(1)  上記認定事実によれば,原被告間の労働契約は前記1(4)ア,イのとおり更新されてきたものではあるが,採用に当たり,期間の定めのある契約であることの説明もなされていた上(この点は,原告もその説明は受けたとして認めている。),更新に際しては,毎回,契約書が取り交わされてきたこと,その契約の内容も,当事者の契約内容に係る意向を踏まえ,勤務地・勤務先部署の限定がなされたり(原告自身も,その主張するようなセクハラ被害申告による嫌がらせ防止の目的であったかはともかく,勤務地等の限定を求めていたことは認めている。),年俸額も,各年度において取り決められ,変動していることを指摘することができる。そして,被告において,本件労働契約が,本件各契約書の記載に反し,期間の定めがないものであるとか,原告に対し,実質的にこれと異ならないと認識させるような説明をしていた事実があるとも認められない。この点,原告は,B副部長が,原告の採用に当たり,正社員と変わらないなどと述べていたなどと主張し,原告本人の供述(陳述書による陳述を含む。以下,特記しない限り同じ。)にもこれに沿う部分はあるが,被告は,かかる事実を否認して上記原告本人の供述争い,B副部長の反対趣旨の陳述もあるところ,他に原告主張事実を裏付ける的確な証拠はなく,原告主張事実を認めることはできない。
以上によれば,本件労働契約は,その所定の期間どおりの期間の定めがあるものとして更新されてきたということができるのであり,期間の定めがないものであるとか,これが実質的に期間の定めのない契約と異ならない状態に至っていたと認めることは困難というべきである。
この点,原告は,原告が正社員とともに同様の業務に携わっていたことなどを指摘し,実質的には他の正社員と変わりなかったなどとして,本件労働契約も期間の定めのないものとみるべきであるなどとも主張する。しかし,原告が他の正社員とともに投資銀行業務をはじめとする専門業務にともに従事してきたものであるとしても,原告については,上記のとおり,年俸額が各年にわたり決定され,勤務地も限定されているなど,他の正社員とその基本的な労働条件を異にしていたといえるのであり,更新の度毎に,上長が契約更新の許否に関する意見を具申して,更新拒否が検討されていたことも認められる(乙17,18)。原告は,E職の労働条件に関し,正社員と同様,転勤・出向もあったし,人事評価項目も同じであるなどと主張する。しかし,転勤・出向がE職について一般的に行われていたことを裏付ける証拠はないし,人事評価項目の点についても,その項目や評価要素自体は同じであっても,他方で,原告らについては,その成果を踏まえ,更新拒否の検討がされている。そうしてみると,正社員とともに稼働してきたこと等の事実があったからといって,その契約が上記説示の点に反し,直ちに期間の定めがないものとなったり,あるいは実質的に見てこれと異ならない状態になっていたものと解することはできない。かかる指摘によって,前記判断が左右されることはなく,他にこれを左右するに足りる的確な主張もない(なお,原告の他の指摘については後記(2)も参照。)。
(2)  原告は,本件労働契約においては,原告が雇用継続に関する合理的期待があるから,解雇権濫用法理の規定が適用ないし類推適用されるべきであるなどとも主張する。
ア よって検討するに,確かに,本件労働契約が初回の契約締結後,7回に亘って更新され,通じて7年余りの期間,継続してきたものであることは前記認定のとおりである。
イ しかしながら,前記認定事実を踏まえると,以下の点も指摘することができる。
(ア) 前記認定のとおり,原告は,前記1(4)アのような資格・経歴を有し,職歴を有する点に着目されて採用され,被告において,フィールド・スペシャリスト,E職などとして稼働をしてきた者である。フィールド・スペシャリストは,高度なスキル・ノウハウを保有する者として,1年以内の期間を定めて専門分野における業務に従事するものと位置付けられ(フィールド・スペシャリスト規程2条),合併後,統合された後のE職(エキスパート職)も,有する専門性・市場価値に見合った能力を発揮し,担当業務の遂行を通じて全社組織の発展に貢献する者として有期の期間を定めて雇用する者と位置付けられている。なお,いわゆる総合職とは異なり,これらの職においては,賃金額等の労働条件において個別処遇が可能とされている。
そうすると,原告の担当していた業務が,それ自体としては,投資銀行業務に係る専門的かつ高度な金融サービスの一端を担うものとして(乙1),被告の臨時的業務でなく,恒常的に存在するものであったといえるとしても,その契約は,個別処遇が可能である一方,その業務の担当者につき,期間満了毎に,その労働者の当該期間の成果の有り様を踏まえて引き続き担当をさせるかどうか検討・判断することが予定されていた契約であったといえる。このような原告の本件労働契約自体の位置付け・契約目的は,雇用継続に当然に結びつくものではなく,むしろ,上記の点に照らせば,各回毎の査定を前提とするものとして長期雇用を当然の前提とするものではなかったといえ,事実,原告の契約更新に際しては,前記認定のとおり,その許否が検討されていたことが認められる。
(イ) そして,上記の点は,前記1(4)アのような資格・経歴を有し,職歴を有する原告においても,十分認識し,あるいは認識し得たものというべきである。殊に,合併以降においては,上記のような契約内容を踏まえ,被告から,収益に関する成果が求められ,契約を不更新とすることがある旨の説明もなされている(この点は原告自身も認めている。)。
なお,原告は,B副部長から,採用に当たり,正社員と変わらないなどといった説明を受けた旨主張するが,そのような事実自体認め難く,かかる主張を採用できないことは前記(1)説示のとおりである。
(ウ) しかも,原告の本件労働契約に至っては,勤務地や勤務先部署の限定もなされている(初回の契約書においては,契約書上,勤務地・勤務先部署の限定につき明示的な条項までは設けられるに至っていないが,採用に際し,原被告間で勤務地・勤務先部署限定のやりとりがあり,これを踏まえて契約が締結されたことは前記説示のとおりであり,初回の契約においてもこれが前提とされていたことに変わりはない。)。かかる限定合意がなされている場合,雇用の継続が仮に義務づけられるとすると,原告の真摯な合意が得られない限り,部署変更等による内部的雇用調整の方途はおよそなく,そのまま約定の部署での雇用を継続せざるを得ないこととなる。なお,実際に,被告が,原告に対し,より適性を有すると考えたカバレッジ業務(投資銀行部)への異動を打診したが,原告がこれを拒絶したこともあったことは前記認定のとおりである。そうしてみると,そのような限定合意がされていることは,雇用継続を前提とする要素を強く減殺するものと見ざるを得ない。そして,以上の限定合意は,原告の要望を踏まえて設けられたものであったのであるから,原告においても,上記処遇を受ける代わりに約定部署での雇用継続が当然に保証されるものではないことを自覚すべきものであったといわざるを得ない。
(エ) そして,本件労働契約が7度にわたり更新されてきたものであることは前記アのとおりではあるが,同一,同内容の契約が漫然と更新され続けたものでもなく,その労働条件は,別紙2のとおり,賃金額はもちろろん,雇用期間,勤務地・勤務先部署等もその都度,状況に応じ,異にして締結されている。原告は,本件各労働契約の更新に関し,賃金査定の意味合いしか存しないなどとも主張するが,更新許否について各回毎に検討されていたことは前記説示のとおりであり,原告においても上記限定合意を踏まえて異動の打診を拒絶するなど契約内容を前提とした言動も見せているのであって,単純にそのように言い切れるものでもない。結局,原告の労働条件は,その時々に応じ,個別的に検討されていたものと見ざるを得ない。
更新手続としても,前記認定のとおり,原告の成果等に係る情報を基に,なお同種人材の人材マーケットや被告の業績等も踏まえ,グループ長から更新希望の可否及び処遇水準についての意見を経て,契約期間満了の1か月前には更新の可否の判断をし,年俸額の決定をしてきたものと認められるところであり,契約書の作成も,各契約期間において,各契約期間の初日若しくはそれ以前に,例外なくされていると認められる。契約更新は,その手続においても,厳格に行われていたものといわざるを得ない。
(オ) さらに,フィールド・スペシャリストやE職に係る他の労働者の契約更新状況をみても,前記認定のとおり,フィールド・スペシャリストについて,原告と同じ平成16年度に中途採用された他の投資銀行業務関連の中途採用者は11名いたが,特別専門職に転換した6名と原告を除いた者はいずれも短期間のうちに退職していること,投資銀行業務関連の中途採用者以外においても,フィールド・スペシャリストであった者のうち平均75.7%(職系転換をした人を含めると平均88.8%)が既に退職していること,E職においても,全体的傾向として,その勤続年数は必ずしも長期に及んではおらず,人事制度の統合以降,平成24年12月までに合計39人のE職を雇止めにしているという雇止め実績もあること,その中には,原告と同様,投資銀行業務に関連するE職の雇止めも含まれていること,以上の点も指摘することができ,これらの点からは,フィールド・スペシャリストやE職について,契約更新が必ずしも当然の前提とされているものでなかったという傾向を看取することができる。
この点,原告は,上記の統計においては旧a社における雇止め件数が明らかでないなどの問題があるなどとして上記評価を争う。確かに,旧a社時代の雇止め実績が現状必ずしも明らかでないなど原告指摘の点も認められるが,それにしても,合併後の実績としては上記のとおり認められるし,旧a社時代の契約の推移の点も,フィールド・スペシャリスト契約が必ずしも長期雇用に及ぶものでなかったことを推知させる限度では有意なものとはいえる。
ウ 以上によれば,本件労働契約の通算期間や更新回数が前記アのとおり相当期間・回数に亘っている状況があるとはいえるものの,本件労働契約に係る契約の位置付け・目的,内容,これに関する当事者の認識,雇用継続を合理的に期待させるべき被告の言動の有無・程度,契約更新の更新内容の経過,更新手続の履践の状況,同種労働者の契約更新に係る更新状況等を踏まえると,なお雇用継続に対する期待を抱くことが合理的といえる状況にまで亘っていると認めることには疑義が残るというべきである。
エ(ア) 以上に対し,原告は,原告に適用されるべき就業規則の諸条項も長期雇用を前提とするものであるなどと主張する。しかし,原告指摘の条項は,いずれも一般的にみられる条項か,行政取締法規との兼ね合いで規定された条項にすぎず,かかる条項があるからといって,雇用継続に対する期待をすることが合理的といえるものではない。
(イ) 原告は,当初の契約書も,協議の上,契約条項を変更することができると規定しており(5条),更新されていくことが当然に予定されていたなどとも主張する。しかし,同契約書も期間は期間として定めており,当然に更新されるものとしているわけではない。むしろ,その後の契約書においては期間満了による終了が原則とされているところ,原告は異議なくこれに応じている。そうしてみると,初度の契約書に上記限度の条項があったからといって,当然に継続雇用への期待が合理的になるものとは解されない。
(ウ) 原告は,原告に女性管理職セミナーへの参加が要請されていたことや,アドバイザリー業務の案件の受任期間が長いこと等を指摘して,長期雇用を前提とするものであるなどとも主張する。しかし,同セミナーも契約が更新されることを確証する趣旨のものではないし,アドバイザリー業務の案件の受任期間が長いことについても,およそ担当者の変更を許さないものとも解されない。
(エ) 原告は,労働契約法18条の趣旨からすれば,本件労働契約においても保護を図るべきであるとも主張する。しかし,原告自身も指摘しているように,本件は,同条の施行前の事象であり,かかる点から雇用継続に対する期待が合理的であったとみることは困難である。
(オ) 原告は,旧a社では雇止めなどなかったところ,被告は合併後,解雇・雇止めのあるものとして扱っており,従前より不利に扱うもので不当であるなどとも主張する。しかし,旧a社において雇止めがなかったといえるか自体,疑問は残るし(少なくともそうみるべき証拠はない。),この点を措くとしても,前記イの事情の認められる本件について,原告が,合併時,当然に継続雇用を受け得る地位にあったとも見難いから,その主張はその前提からして採用できない。
(カ) そして,他に原告の指摘をみても上記判断を左右するに足りる的確なものはない。
そうしてみると,これら原告の主張によっても前記判断は左右されるということはできず,原告の主張は採用することができない。
(3)  以上のとおりであるから,本件においては,雇用継続に対する期待が合理的であるとは認め難く,本件契約打切りは雇止めとして肯認することができる。
3  以上によれば,原告の請求は,その余の点について判断に及ぶまでもなく,いずれも理由がないからこれらを棄却すべきである。
よって,主文のとおり判決する。
(裁判官 芝本昌征)

 

〈以下省略〉

 

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