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「営業支援」に関する裁判例(13)平成30年 1月25日 東京地裁 平27(ワ)3127号 リース料請求事件

「営業支援」に関する裁判例(13)平成30年 1月25日 東京地裁 平27(ワ)3127号 リース料請求事件

裁判年月日  平成30年 1月25日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平27(ワ)3127号
事件名  リース料請求事件
裁判結果  認容  文献番号  2018WLJPCA01258002

要旨
◆リース会社である原告が、弁理士である被告に対し、本件破産会社が開発し販売していた特許業務統合処理ソフトを被告にリースすることを内容とする第1リース契約及び第2リース契約(本件各リース契約)を締結したとして、残存リース料等の支払を求めた事案において、本件破産会社の被告に対する第1リース契約の勧誘が欺罔行為であるとは認められないが、第2リース契約の勧誘に当たり、第1リース契約に関するキャッシュバックを少なくとも同契約の終了まで約定どおり行うことが困難であることを認識していた本件破産会社はこれを秘して被告をその旨誤信させたと認めたものの、同社は原告の代理人あるいは契約締結の補助者といえず、原告が本件破産会社の欺罔行為について悪意であったともいえないから、本件各リース契約の詐欺取消しは認められないとし、また、原告のリース料請求が信義則上許されない特段の事情があるとは認められないと判断して、請求を認容した事例

参照条文
民法1条2項
民法96条

裁判年月日  平成30年 1月25日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平27(ワ)3127号
事件名  リース料請求事件
裁判結果  認容  文献番号  2018WLJPCA01258002

大阪市〈以下省略〉
原告 シャープファイナンス株式会社
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 清水幹裕
同 溝内健介
東京都千代田区〈以下省略〉
被告 Y
同訴訟代理人弁護士 小澤優一
同 惠木大輔
同 稲垣司

 

 

主文

1  被告は,原告に対し,1819万0830円及びこれに対する平成26年11月4日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による金員を支払え。
2  訴訟費用は被告の負担とする。
3  この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
主文第1項と同旨
第2  事案の概要
1  本件は,リース会社である原告が弁理士である被告に対し,コンピュータソフトウェアをリース物品とする2個のリース契約を締結したとして,両リース契約に基づき,残存リース料(約定損害金を含む。以下同じ。)1819万0830円及びこれに対する期限の利益喪失の日の翌日である平成26年11月4日から支払済みまで約定の年14.6%の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
2  前提事実(当事者間に争いがないか,証拠等により容易に認められる事実。証拠等によって認定した事実についてはその後に証拠番号を掲げる。)
(1)ア  原告は,各種リース事業,信用販売事業等を目的とする株式会社である。
イ  被告は,弁理士であり,a特許事務所(以下「被告事務所」という。)を開設して弁理士業務を行っている。
(2)  b株式会社(以下「b社」という。)は,コンピュータソフトウェア(以下「ソフト」という。)の開発,販売等を目的とする株式会社であり,特許事務所の出願業務等に用いることを想定した「○○」と称する特許業務統合処理ソフトをシリーズとして開発し,これを販売していた(乙2,19,37)。
(3)ア  原告は,平成23年3月1日,被告との間で,名称を「○○-World」と記載したソフトについて,次の約定で原告が被告にリースすることを内容とするリース契約(以下「第1リース契約」という。)を締結した。
(ア) リース期間 平成23年3月1日から平成28年2月29日まで
(イ) リース料 平成23年4月から平成28年3月まで毎月3日限り各80万0100円(総額4800万6000円)を支払う。
(ウ) 期限の利益喪失 被告がリース料の支払を1回でも遅滞したときは,当然に期限の利益を失い,直ちに残存リース料を支払う。
(エ) 遅延損害金の割合 年14.6パーセント
イ  原告は,平成23年3月1日頃までにb社から被告が署名押印した原告所定の様式によるリース物件受領書の交付を受けており,その頃,b社との間で,リース物件であるソフトをb社から買い受ける旨の売買契約を締結し,間もなく売買代金をb社に支払った(甲1,3,11,16)。
(4)ア  原告は,被告との間で,平成26年2月27日,名称を「○○」と記載したソフトについて,次の約定で原告が被告にリースすることを内容とするリース契約(以下「第2リース契約」といい,第1リース契約と併せて「本件各リース契約」という。)を締結した。
(ア) リース期間 平成26年2月27日から平成30年2月26日まで
(イ) リース料 平成26年4月から平成30年3月まで毎月3日限り各11万1930円(総額537万2640円)を支払う。
(ウ) 期限の利益喪失 被告がリース料の支払を1回でも遅滞したときは,当然に期限の利益を失い,直ちに残存リース料を支払う。
(エ) 遅延損害金の割合 年14.6パーセント
イ  原告は,平成26年2月27日頃までにb社から被告が署名押印した原告所定の様式によるリース物件受領書の交付を受けており,その頃,b社との間で,リース物件であるソフトをb社から買い受ける旨の売買契約を締結し,間もなく売買代金をb社に支払った(甲2,4,11,17)。
(5)  前記(3)イ及び(4)イの各リース物件受領書には,原告とのリース契約に基づき,リース物件の引渡しを受け,その物件の内容が契約と相違ないこと,リース物件が瑕疵なく完全に稼働することを確認し,検収した旨の記載がある(甲3,4)。
(6)  被告は,原告に対し,本件各リース契約の平成26年11月分のリース料を同月3日までに支払わなかった。
(7)  b社は,平成26年11月18日,東京地方裁判所に破産手続開始の申立てをし,同日,破産手続開始決定(当庁平成26年(フ)第11426号)を受けた。
(8)  被告は,原告に対し,平成27年4月24日の本件第2回口頭弁論期日において,本件各リース契約を取り消す旨の意思表示をした(顕著な事実)。
3  争点
(1)  本件各リース契約の詐欺取消しの可否
ア b社による欺罔行為の有無
イ b社が原告の代理人あるいは契約締結の補助者といえるか。
ウ 原告が悪意か否か。
(2)  原告の請求が信義則違反か否か。
4  争点に関する当事者の主張
(1)  争点(1)(詐欺取消し)について
(被告の主張)
ア b社による欺罔行為の有無
被告は,平成15年頃からb社の代表取締役であったBから,新たなリース契約を締結してくれれば,既存のリース契約を解約処理して新たなリース契約のリース料の一部又は全部についてキャッシュバックを行うと執拗な勧誘を受け,これに応じてb社を介し,原告との間で,リース契約を締結してきた。b社の被告に対する勧誘は,原告から受領する売買代金と被告にキャッシュバックとして支払うリース料相当額との差額をb社が負担する内容であり,同社の資金繰りが圧迫されて経営破綻する可能性が極めて高いものであることに加え,b社が平成12年頃には自転車操業に陥り,その後も経営状況が悪化していたことからすれば,b社は遅くとも第1リース契約が締結された平成23年頃にはキャッシュバックの支払が滞るおそれが高いことを認識していたことは明らかである。にもかかわらず,b社は,キャッシュバックの支払が滞るおそれがないかのように装って被告に対する勧誘を行い,被告をその旨誤信させて本件各リース契約を締結させたのであるから,b社の勧誘は欺罔行為に当たる。
イ b社が原告の代理人あるいは契約締結の補助者といえるか。
b社は,原告の代理人又は契約締結の補助者に当たるから,被告は,民法96条1項により本件各リース契約を取り消すことが可能である。
ウ 原告が悪意か否か。
原告は,上記アのb社の欺罔行為について悪意であったから,被告は,民法96条2項により,本件各リース契約の取消しが可能である。すなわち,被告事務所は,弁理士1,2名,事務員2~4名で構成される小規模な事務所であり,原告との間のリース契約が同時期に最大で8契約,リース物件に○○という名称が付されたリース契約が最大で5契約というのはあまりに過大である。また,第1リース契約のリース料総額は,4800万6000円に上るが,b社の設定した基本ライセンスの価格水準である258万円等に照らして著しく高額であり,たとえそれまでに締結されていたリース契約(後記第3の1(3)ウの旧リース契約⑬)の中途解約金である2796万6750円が上乗せされていると考えてもその評価は変わらない。そして,第2リース契約のリース物件については,平成12年に発表された○○2000を契約書に記載したと解さざるを得ないところ,このような旧型ソフトをリース物件にするというのは不自然である。さらに,本件各リース契約では,原告内部で策定された契約確認業務マニュアルにより被告に対する直接確認が必要であり,第1リース契約の契約金額は支店長の同行が必要とされているにもかかわらず,原告は,これを遵守せず,被告に対する電話確認さえしなかった。これらの事実からすれば,原告は,b社の被告に対する欺罔行為を是認しており,悪意であるといえる。
(原告の主張)
ア b社による欺罔行為の有無
被告は,b社の株主であり,その妻とともにb社の新株予約権付社債を有していたほか,b社が同社内に設立した特定非営利活動法人c(当時の名称「特定非営利活動法人c1」)の顧問を務めており,b社と極めて密接な関係にあった。弁理士である被告が安易に空リースの勧誘に応じるとは考え難く,被告は,b社から,株式上場のために売上げを増やす必要があるので,新たなリース契約を締結してほしいと勧誘され,上場益を期待して本件各リース契約を締結したものと推察され,被告には原告に対して虚偽の説明を行う動機がある。○○は,内容や機能が固定された市販の既製品のソフトではなく,顧客の要望や法改正等に対応して常に発展し続けるソフトであり,同一名称であっても内容・機能・代金額がそれぞれ異なり得るものであった。
そして,被告とb社は実体を伴わない業務支援契約(コンサルティング契約)なるものを締結して,被告がb社に対して業務支援を行うことの対価として報酬が支払われるという虚偽の体裁をあえて整えていた。
したがって,b社の被告に対する欺罔行為は認められない。
イ b社が原告の代理人あるいは契約締結の補助者といえるか。
原告は,b社に代理権を授与したことはない。これは,原告がユーザーである被告とリース契約を締結すべきか否かを独自に審査していることから明らかであり,b社は原告の代理人に当たらない。また,b社が契約締結の補助者であることは争う。その欺罔行為を原告の行為と同視すべき理由はない。
ウ 原告が悪意か否か。
原告は,リース契約のユーザーが経済的に破綻したときは,リース料の支払を受けることができなくなる。そのため,原告が,b社がユーザーを欺罔する勧誘を行っていることを認識しながら,ユーザーとの間でリース契約を締結してb社に売買代金を支払うなどということはあり得ない。○○は,特許業務のために使用される専門家のための定評のある特殊なソフトであり,実際に原告は多数の弁理士との間でリース契約を締結していたが,リース料の支払が滞ることはほとんどなく,b社に対する苦情は一度もないまま契約関係は何年も順調に推移していたため,原告は,b社や弁理士であるユーザーを信頼していた。本件各リース契約の締結に当たっても,原告は,b社から「今回,米国IDS出願システムを導入することになったが,過去に入れ替えたソフトとの相性が悪く,ユーザーからクレームが入り,基幹ソフトごと入れ替えることになった。被告は,それまでに締結されていたリース契約(後記第3の1(3)ウの旧リース契約⑬)を中途解約し,新たなリース契約の締結を希望している。」とか,「被告が○○について追加でリース契約を締結することを希望している。」との説明を受けており,契約締結に至る経緯は自然である。加えて,原告は,被告作成のリース物件受領書の交付を受け,原告の従業員であるC(以下「C」という。)が被告に対する電話確認を済ませており,本件各リース契約に問題があることを疑う余地はなかった。第1リース契約のリース料総額にはそれまでに締結されていたリース契約(後記第3の1(3)ウの旧リース契約⑬)の中途解約金が上乗せされていたことに加え,○○の代金は,顧客毎に異なるというものであったから,契約金額が不自然であるとはいえない。
(2)  争点(2)(信義則違反)について
(被告の主張)
本件各リース契約については,原告において,不当な勧誘があると疑うに足りる十分な事情が存在していたことは明らかである。にもかかわらず,原告は,必要な確認作業を行っておらず,リース物件の内容さえ全く把握していなかったことからすれば,信義則上,被告に対して本件各リース契約に基づくリース料の支払を請求できないというべきである。
(原告の主張)
本件各リース契約について,原告は,b社や専門家である被告を信頼しており疑問を抱く余地はなかった。被告はb社と共謀の上,リース契約に問題がないように装い原告を欺罔してきたのであるから,被告に対する請求が妨げられるというのは明らかに不当であり,仮に被告に対するリース物件の確認行為が行われていないとしても,原告の請求が信義則に反するなどということはあり得ない。
また,被告は,業務のための特殊なソフトウェアを無償ないし極めて低廉な価格で使用するという利益を得てきており,b社が倒産するや,今度は自らが負担すべきリスクをリース会社である原告に負担させようとしているのであり,被告の主張はいずれにしても理由がない。
第3  当裁判所の判断
1  事実経過等
前提事実に加え,証拠(認定事実の後に証拠番号を掲げる。)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
(1)ア  原告は,b社との間で,平成13年7月3日,b社がその商品についてリース契約等の申込みをした顧客を原告に紹介し,原告がその申込みを承諾してリース契約等が成立した場合には,原告からb社に商品代金等を支払う旨の契約を締結して覚書を取り交わした(甲14の1。以下「本件覚書」という。)。
イ  本件覚書9条は,要旨次のとおり原告による無催告の契約解除事由を規定していた(甲14の1)。
(ア) b社が顧客の申込みに関し原告に対して虚偽の報告をしたとき(9条2号)
(イ) b社の経営状態の不良,営業の不振,その他原告が本件覚書の履行を不適当と認める事由があったとき(同条3号)
(2)ア  b社の特許業務統合処理ソフトは,多数の弁理士が利用しており,その中には,b社の紹介により,原告との間でリース契約を締結した者も少なくなかった。b社は,顧客にソフトを提供する際,ソフト自体の対価に加え,年単位の期間に及ぶメンテナンス費用も合わせた金額を売買代金として設定することが少なくなく,顧客によっては,カスタマイズをしたソフトの提供を受けることがあった。(甲1,2,15,乙4ないし11,19,20[3枚目],33,37)
イ  b社は,遅くとも平成17年3月頃までに,新規開発又はバージョンアップしたソフトの販売実績を増加させるとともに,新たなリース契約の締結に伴い原告から一括払いされるソフトの売買代金により資金繰りを改善するため,原告との間でリース契約を締結した既存顧客に対し,既存のリース契約を解約した場合に顧客が支払義務を負う残存リース料をb社が負担する,あるいは既存の又は新たなリース契約の毎月のリース料相当額の全部又は一部を毎月顧客に支払うので,実質的にリース料の負担はない又は軽減されるなどと告げ,新たなリース契約を締結するように組織的に勧誘するようになった(乙19,25,26,31)。
ウ  b社の勧誘に応じた顧客と原告との間で締結された新たなリース契約は,ソフト自体の引渡しを伴わない場合が少なくなかった(乙25,26,31,32)。
(3)ア  被告事務所は,昭和47年に設立されたが,平成20年8月に弁理士1名が加わるまでは弁理士として在籍していたのは被告のみであり,ほかに2ないし4名の事務員が勤務していた(乙32)。
イ  被告の妻は,平成13年5月から平成16年6月までの間,b社から3回にわたり社債を購入して合計300万円を支払った。また,被告は,平成19年9月,b社から新株予約権付社債を購入して100万円を支払い,いずれかの時期にb社の株式360株を取得した。(甲12の3,12の4,13[枝番を含む。])
ウ  原告は,被告との間で,次のとおり各リース契約(以下,各契約の冒頭の番号に従い,「旧リース契約①」などという。)を締結した(乙3ないし7)。
① 契約申込日 平成15年9月30日
リース物件 △△ WORLD
リース期間 60か月
リース料額 月額6万2685円(総額:376万1100円)
② 契約申込日 平成15年11月28日
リース物件 ○○ World Version
リース期間 60か月
リース料額 月額6万0270円(総額:361万6200円)
③ 契約申込日 平成16年7月13日
リース物件 ○○ World(M)
リース期間 60か月
リース料額 月額2万0265円(総額:121万5900円)
④ 契約申込日 平成18年2月21日
リース物件 ○○ World(DS)
リース期間 60か月
リース料額 月額2万2260円(総額:133万5600円)
⑤ 契約申込日 平成18年9月15日
リース物件 ○○ World
リース期間 60か月
リース料額 月額12万5370円(総額:752万2200円)
エ  平成17年4月当時,原告と被告との間には旧リース契約①ないし③が継続されていたが,b社は,旧リース契約①の月額リース料に相当する6万2685円を毎月被告に支払い,被告は,これに旧リース契約②及び③のリース料月額8万0535円を加えた金額をリース料として原告に支払っていた(乙24の1,乙32)。
オ  b社は,平成19年3月15日,原告に対し,旧リース契約①ないし④に係る残存リース料合計411万2850円を代位弁済し,原告と被告は,旧リース契約⑤の締結後,旧リース契約①ないし④を合意解除した(乙12[枝番を含む。])。
カ  原告は,被告との間で,次のとおり各リース契約を締結した。(甲15,乙8ないし11)
⑥ 契約申込日 平成19年4月24日
リース物件 特許受発注システム
リース期間 60か月
リース料額 月額8万3580円(総額:501万4800円)
⑦ 契約申込日 平成19年11月20日
リース物件 ○○ World
リース期間 60か月
リース料額 月額15万4980円(総額:929万8800円)
⑧ 契約申込日 平成20年1月31日
リース物件 ○○専用会計システム
リース期間 60か月
リース料額 月額19万6350円(総額:1178万1000円)
⑨ 契約申込日 平成20年4月1日
リース物件 □□
リース期間 60か月
リース料額 月額5万7750円(総額:346万5000円)
⑩ 契約申込日 平成20年5月30日
リース物件 ○○ World(SE)
リース期間 60か月
リース料額 月額12万7680円(総額:766万0800円)
⑪ 契約申込日 平成20年6月25日
リース物件 ◇◇
リース期間 60か月
リース料額 月額4万9980円(総額:299万8800円)
⑫ 契約申込日 平成20年9月26日
リース物件 ○○ World(外国出願)
リース期間 不明
リース料額 月額9万9540円
⑬ 契約申込日 平成21年1月16日
リース物件 ◇◇
リース期間 60か月
リース料額 月額79万9050円(総額:4794万3000円)
キ  b社は,平成21年1月頃,旧リース契約⑤ないし⑦及び⑩ないし⑫の月額リース料に相当する64万1130円を毎月被告に支払い,被告は,これに旧リース契約⑧及び⑨の月額リース料25万4100円を加えて原告にリース料として支払っていた(乙24の4,乙32)が,旧リース契約⑤ないし⑫を合意解除する一方,リース契約⑬を締結した。
ク  b社は,平成23年3月頃までに旧リース契約⑬に係る被告の残存リース料2796万6750円を代位弁済し,原告と被告は,旧リース契約⑬を合意解除した(甲9)。
(4)ア  b社は,平成21年3月頃から平成23年3月頃まで旧リース契約⑬のリース料月額79万9050円を毎月負担し,同月頃,被告に第1リース契約の締結を勧誘したが,第1リース契約は,リース物件であるソフトの引渡しを予定しておらず,被告もそのことを知っていた(乙24の4,5,乙32)。
イ  被告は,b社の勧誘に応じ,b社との間で,第1リース契約の月額リース料80万0100円のうち,b社が57万6066円を毎月被告に支払い,被告がこれに22万4034円を上乗せして原告に支払うことを合意し,第1リース契約締結のため,原告宛の平成23年2月24日付け契約申込書,リース物件受領書に加え,旧リース契約⑬を解約するための同月25日付けリース中途解約申出書に署名押印していずれもb社に交付した(甲1,3,9,乙24の5)。
ウ  原告の従業員であるCは,これらの書類をb社から受領し,与信審査部門に第1リース契約の締結が可能であることを確認した上,平成23年3月1日,被告の申込みを承諾して第1リース契約を成立させた。原告は,間もなくb社に対してリース物件の売買代金として4324万8555円を支払い,b社は,原告に対して旧リース契約⑬の残存リース料2796万6750円を代位弁済したが,被告は実際にはリース物件とされたソフトを受領していなかった。(甲1,3,16,乙24の5,29,32,証人C)
(5)ア  b社は,被告に対し,毎月約定どおりの支払を続け,平成26年3月末時点で第1リース契約のリース料のうち,b社の負担額を除いた被告の原告に対する実質的な支払予定残額は537万6816円(1か月22万4034円の24回払い)になった。b社は,同年2月頃,被告に対し,上記支払予定残額にほぼ合致する537万2640円をリース料総額として第2リース契約を締結すれば,第1リース契約の残存リース料を全額b社で負担するので,被告の毎月のリース料の実質的な支払額が月額22万4034円から第2リース契約のリース料である月額11万1930円に軽減されるとして第2リース契約の契約締結を勧誘した。この第2リース契約もリース物件であるソフトの引渡しを予定しておらず,被告もそのことを知っていた。(甲11,12の2,乙24の6,24の7,24の10,32)
イ  被告は,b社の勧誘に応じ,原告宛の同年2月27日付け契約申込書,リース物件受領書に署名押印してb社に交付し,Cは,b社からこれらの書類を受領して与信審査部門に第2リース契約の締結が可能であることを確認した上,同日,被告の申込みを承諾して第2リース契約を成立させた。原告は,間もなくb社に対してリース物件の売買代金として486万6435円を支払ったが,被告は実際にはリース物件とされたソフトを受領していなかった。(甲2,4,11,17,乙32,証人C)
(6)ア  Cは,原告において,平成18年4月からb社の契約関係の処理を伴う業務を担当するようになり,b社から紹介を受けた数百名の顧客との間の契約手続の処理を行った(甲11,証人C)。
イ  原告は,契約締結に先立ち,契約の相手方に対して行う契約確認の手順を定めた社内用のマニュアルを備えており,そのマニュアルでは,契約金額が500万円を超える場合は契約先を訪問して行う直接確認が必要であり,3000万円を超える場合は支店長を同行して直接確認を行うことが定められていた。Cは,本件各リース契約を始めとする被告との間のリース契約の締結に先立ち,被告事務所を訪問したことはなかった。(乙29,証人C)
(7)  被告は,原告から平成15年10月に発売されたソフトである○○ World Versionの引渡しを受けており,現在もこれを保有している。○○ World Versionは,特許業務関係の法令改正に対応するためのバージョンアップの保証に加え,ユーザーの要望に対応するための改良が可能であることがセールスポイントの一部に挙げられており,実際にも最新のOSに対応するためのバージョンアップが行われていた。b社は,平成26年9月1日当時,○○ World Versionの基本ライセンスを258万円(利用者:1~39人)から858万円(利用者100~149人)で販売しており,メンテナンス費用を年間12万円に設定していた。(乙19,32,35,37)
(8)ア  b社は,平成23年4月に日本マイクロソフト株式会社とクラウドビジネスを開始し,同年9月から平成25年4月までの間,4回にわたる増資を行い,資本金を1億7166万5000円から2億2258万5000円にまで増額させた。また,同年5月,特許事務所のための営業支援ツールを発売し,平成26年8月,新たな文書検索ソフトを発表した。しかし,b社は,被告を含む多数の顧客に対するキャッシュバックの支払額が増加し続けたことや,平成24年11月から平成26年2月の間に元取締役会長に多額の退職慰労金を支払ったために資金不足に陥り,同年10月3日以降の被告を含む顧客との間で合意したキャッシュバックの支払ができずに経営破綻し,同月14日,他社から破産手続のための借入れを行い,同年11月18日に破産手続開始の申立てをした。(乙2,19)
イ  原告は,平成26年9月に至ってもb社の紹介による顧客との間でリース契約を締結していた(乙31)。
2  争点(1)(詐欺取消し)について
(1)  b社による欺罔行為の有無
ア 被告は,b社が,遅くとも第1リース契約が締結された平成23年頃には被告に対する約定どおりのキャッシュバックが困難になることを認識していた旨主張する。
イ そこでまず,被告が第1リース契約を締結した平成23年3月の時点についてみるに,事実経過等によれば,第1リース契約のリース期間は5年間であるところ,b社は,同年4月頃から平成26年9月頃まで3年6か月にわたり被告に対する支払を合意どおりに行ったことに加え,平成23年3月以降も複数回の増資に及んだほか,新規事業の展開を図り新製品を発売したことが認められ,これらの事実からすれば,b社が,上記リース期間内に合意どおりの支払が困難になると認識していたと推認することは困難である。
したがって,b社による第1リース契約の勧誘が欺罔行為であることをいう被告の主張を認めることはできず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。
ウ 次に,被告が第2リース契約を締結した平成26年2月の時点についてみるに,被告の原告に対するリース料債務は,第2リース契約の締結により537万2640円増加することになるが,この金額は,被告が原告に対して支払うことを予定していた第1リース契約の残存リース料の実質的な負担部分にほぼ等しい。そのため,b社が約定どおり第1リース契約のリース期間の最終月である平成28年3月まで第1リース契約のリース料相当額の支払を継続すれば,被告は,支払総額を増加させることなく,支払期間のみを延ばして1か月当たりの原告に対する支払額を減少させることができるというメリットが得られる。そこで,b社において,第2リース契約を締結した平成26年2月の時点で,第1リース契約が終了する平成28年3月までに第1リース契約のリース料支払が困難になる見込みであることを認識していたと認められるか検討する。
事実経過等によれば,b社の第1リース契約のリース料相当額の弁済(キャッシュバック)は,平成26年3月から同年9月まで7か月間継続されてはいるが,b社の資金不足が突発的な出来事ではなく,顧客との合意に基づく支払額の増大という徐々に資金繰りを圧迫する要因により生じたもので,b社において,近い将来,資金繰りが困難になると予見することは比較的容易であったと認められること,b社は,破産手続開始の申立ての際,破産手続のための費用を借入れにより賄わざるを得ないほど資金繰りが悪化していたこと,平成24年11月以降,元役員に対して相当性に多大な疑問が抱かれる多額の退職慰労金が支払われていたことが認められ,これらの事実に照らすと,b社は,平成26年2月の時点で平成28年3月まで事業を継続することが困難であることを認識していたことが推認される。
したがって,b社は,被告に対する第2リース契約の勧誘に当たり,第1リース契約に関するキャッシュバックを少なくとも平成28年3月まで約定どおり行うことが困難であることを認識していたにもかかわらず,これを秘して被告をその旨誤信させたと認められる。
(2)  b社が原告の代理人あるいは契約締結の補助者といえるか。
被告は,b社が原告の代理人又は契約締結の補助者に当たると主張する。
しかしながら,事実経過等によれば,原告とb社との間で取り交わされた本件覚書からは,原告とb社が紹介した顧客との契約関係について,b社が検討・判断を行うことを予定していないことは明らかであり,他にb社が原告の代理人に当たることを認めるに足りる証拠はない。また,事実経過等によれば,b社は,原告の指揮監督下にないことも明らかであるから,原告と顧客との間のリース契約締結に向けた行為について,b社が原告の契約締結の補助者であるとして,その行為を原告の行為として認めることには無理がある。
したがって,被告の主張は採用することができない。
(3)  原告が悪意か否か。
ア そこで民法96条2項の適否について検討するに,原告がb社の第2リース契約の勧誘に関する被告に対する欺罔行為について悪意であると認めるには,b社の勧誘内容に加え,b社にキャッシュバック分の支払の見通しがなかったこと,すなわちb社について平成26年3月の時点で平成28年3月まで事業を継続することが困難であると原告が認識していたことが必要である。
しかしながら,本件全証拠によっても原告が,b社との間の本件覚書所定の経営不振を理由とする契約解除を検討した形跡はうかがわれないし,かえって,事実経過等によれば,原告はb社の破産申立ての直前まで同社の紹介による顧客との間でリース契約の締結を継続していたことが認められるのであり,これらの事実に照らすと,原告がb社が近い将来経営破綻するおそれがあると認識していたとは認められないし,他にこれを認めるに足りる証拠はない。
イ 被告は,被告事務所の規模に対してリース契約の数が多いことや代金額が高額であること,旧型ソフトをリース物件にするというのは不自然であること,さらに,本件各リース契約では,原告内部で策定された契約確認業務マニュアルにより被告に対する直接確認が必要であり,第1リース契約の契約金額は支店長の同行が必要とされているにもかかわらず,原告は,これを遵守せず,被告に対する電話確認さえしなかったことを,原告がb社の被告に対する欺罔行為を是認しており,悪意である理由として主張する。
しかしながら,上記アに判示した事実に照らすと,被告の上記主張の事実を考慮しても原告が悪意であったとまでは認められないし,後記3に判示のとおり,被告の上記主張から本件各リース契約が空リースであることを疑うことが容易であるとは認められない上,Cが本件各リース契約が空リースであることを是認していたということもできない。
ウ そうすると,原告がb社の欺罔行為について悪意であったという被告の主張は採用することができない。
(4)  小括
したがって,本件各リース契約の詐欺取消しをいう被告の主張はいずれも理由がない。
3  争点(2)(信義則違反)について
(1)  本件各リース契約は,リース物件であるソフトの引渡しが当初から予定されていないいわゆる空リースとしての契約であると認められるところ,被告は,原告がこのような契約を是認していた,あるいは不当な勧誘があると疑うに足りる十分な事情が存在していたにもかかわらずこれを看過したから本件各リース契約に基づくリース料の請求が信義則に反する旨主張する。
本件各リース契約のようないわゆるフルペイアウト方式によるファイナンス・リースでは,リース物件の使用収益とユーザーのリース業者に対するリース料債務とが対価関係に立つものではない(最高裁平成7年4月14日第二小法廷判決・民集49巻4号1063頁)。そのため,リース業者がユーザーから借受証の交付を受けてリース物件の売買代金を支払った場合,ユーザーは,原則としてリース料の支払を拒絶することはできないのであり,①リース業者と販売業者との関係,②販売業者による違法不当な行為についてのリース業者の認識の有無及び程度,③リース業者のユーザーに対する契約意思等の確認状況のほか,④ユーザーがリース物件の引渡しが予定されていないリース契約の申込みに応じるに至った経緯などに照らして,リース業者のユーザーに対する支払請求が信義則上許されない特段の事情があると認められる場合に,リース業者の支払請求を拒むことができる余地があるにとどまると解される(最高裁平成29年2月21日第三小法廷判決・裁判所時報1670号49頁D裁判官反対意見参照)。
(2)  そこで,上記特段の事情について検討するに,本件では,①b社が販売するソフトをリース物件とするリース契約の申込みをした顧客を原告に紹介するという提携関係を定めた本件覚書が原告とb社との間で交わされているが,原告は,当該顧客について別途与信審査を行うことを予定していたほか,リース物件の売買代金とは別にb社に金銭的利益を供するような関係はうかがわれないこと,②Cが本件各リース契約が空リースであることを知っていたと認めるに足りる証拠はないこと,③Cが被告に対して直接電話で本件各リース契約のリース物件の引渡しを確認していないとまでは認められないこと,④被告は,b社の株式及び社債を保有しており,被告とb社は比較的密接な取引関係にあり,本件各リース契約は被告事務所における事業に関連するものでそれまでに同種の契約の締結が繰り返され,b社からの勧誘内容にはリース契約の趣旨や内容に偽りはなかったという事情があり,これらの事情を総合考慮すれば,前記特段の事情があるとは認められない。
(3)  この点に関する被告の主張について補足的に説示する。
ア 被告は,本件各リース契約を始めとするb社の紹介による顧客との間のリース契約について,b社の販売ソフトは到底契約金額に及ばないことや,Cが所定の契約確認の手続を履行していないことをもってCが本件各リース契約を空リース契約として是認していたことを裏付けるとともに,不当な勧誘があると疑うに足りる十分な事情に当たる旨主張する。
確かに,第1リース契約のリース料総額は4800万6000円であり高額である。しかしながら,事実経過等によれば,第1リース契約は,旧リース契約⑬の中途解約に伴い締結されたものでその中途解約金として2796万6750円が原告に支払われており,第1リース契約は旧リース契約⑬の切替えとしての性格を併有していると理解し得るし,第1リース契約のリース期間は5年間にわたり,契約金額のうち,b社に支払われた売買代金とリース料総額との差額部分(原告の利益)が475万7445円に及ぶと認められることや,b社は,顧客に対して単に同一のソフトを販売するというのではなく,ソフト自体をカスタマイズしたり,販売後も顧客に対するサポートとしての関与を行ったりして,顧客毎に契約内容が異なっていたことからすれば,契約締結に至る経緯を問うことなく,契約金額自体から直ちに第1リース契約がリース物件の引渡しを前提としない契約であることを疑って然るべきであるとまではいえない。そして,証人Cは,第1リース契約締結の経緯について,b社から海外の特許システムのオプションを付加することになったが,前のソフトとの互換性が悪かったため,基幹ソフトごと全て入れ替えるという説明を受けたと供述しており,これを覆すに足りる証拠はないから,第1リース契約の契約金額をもってCが空リース契約であることを是認していたとは認めるに足りない。
また,第2リース契約の契約金額は537万2640円であり,事実経過等に認定したようなb社のビジネスモデルに照らせば,第2リース契約について,契約金額自体からリース物件の引渡しを前提としない契約であることを直ちに疑うことが必ずしも容易であるとはいえない。
被告事務所は,特許事務所として比較的小規模であると認められるが,本件各リース契約が事業経営上の契約であり,その契約内容は経営判断により定まるもので,少なくとも経営者の立場からは事業継続にとっての合理性を備えていることが通常であることに照らせば,被告事務所の規模をもって直ちに本件各リース契約が空リースであることを疑うことが容易であると認めることは困難である。
イ また,被告は,Cは,本件各リース契約について,原告の社内用マニュアルでリース物件等の直接確認が必要とされる金額を超える契約金額であるのに直接確認をしていないと主張し,確かに事実経過等によれば,そのマニュアルでは,契約金額が500万円を超える場合は契約先を訪問して行う直接確認が必要であり,3000万円を超える場合は支店長を同行して直接確認を行うことが定められていたのに,Cは本件各リース契約を始めとする被告との間のリース契約の締結に先立ち被告事務所を訪問したことはなかったことが認められ,被告作成の陳述書(乙32)には本件各リース契約に先立ち原告から電話確認を受けたことがない旨の記載がある。
しかしながら,被告作成の陳述書には,原告からリース物件の引渡しについて電話確認を受けたことは1度もない旨の陳述記載があるが,被告の原告との間の取引実績が乏しく,C以外の者が原告の契約を担当していた時期についても原告からの電話確認を受けたことはないという経過の記載には疑問がある上,新たなリース契約の締結により,被告の実質的な負担額がかえって増大している時期もあり(前記1(3)エ,キ),被告がb社の勧誘に応じた経緯に判然としないところがあるなど契約の経緯についての記載を直ちに採用することはできない。また,証人Cは,本件各リース契約の締結に先立ち被告に対してリース物件について電話で問題がないことを確認した旨供述するところ,電話確認の手続が現地における直接確認と比較して負担が小さく,Cが被告に対する電話確認の手続を省略することについての動機が乏しいことに加え,Cが担当していたb社の紹介による多数の顧客との間の契約手続で電話確認が行われていなかったことが問題視されている形跡はうかがわれないことからすれば,原告が電話確認の際にその結果を記載した書面を作成した旨主張しながらこれを提出しない点に疑問はあるものの,Cが本件各リース契約の締結に際して電話確認をしなかったとまでは認められない。
そして,被告がキャリアの豊富な弁理士であり,被告のような専門家が空リースのような契約に関与するという状況は容易に想定し得るものではないことに加え,原告とb社や被告との間の取引関係は相当期間に及んでおり,その間b社の紹介による他の顧客も含めてそれまでにトラブルが生じた形跡がうかがわれないことに照らせば,Cによる契約確認の手順が原告の社内用マニュアルに沿っていないことをもって,Cが本件各リース契約が空リースであることを是認していたとまでは認められない。
(4)  小括
以上のとおり,原告の被告に対するリース料の請求が信義則上許されないことをいう被告の主張は採用できない。
4  まとめ
以上の次第で,原告の被告に対する本件各リース契約に基づく残存リース料1819万0830円及びこれに対する期限の利益喪失の日の翌日である平成26年11月4日から支払済みまで約定の年14.6パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める請求は理由がある。
よって,原告の請求を認容することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第44部
(裁判長裁判官 脇博人 裁判官 齋藤岳彦 裁判官 井廻直美)

 

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