【営業代行から学ぶ判例】crps 裁判例 lgbt 裁判例 nda 裁判例 nhk 裁判例 nhk 受信料 裁判例 pl法 裁判例 pta 裁判例 ptsd 裁判例 アメリカ 裁判例 検索 オーバーローン 財産分与 裁判例 クレーマー 裁判例 クレプトマニア 裁判例 サブリース 裁判例 ストーカー 裁判例 セクシャルハラスメント 裁判例 せクハラ 裁判例 タイムカード 裁判例 タイムスタンプ 裁判例 ドライブレコーダー 裁判例 ノンオペレーションチャージ 裁判例 ハーグ条約 裁判例 バイトテロ 裁判例 パタハラ 裁判例 パブリシティ権 裁判例 ハラスメント 裁判例 パワーハラスメント 裁判例 パワハラ 裁判例 ファクタリング 裁判例 プライバシー 裁判例 プライバシーの侵害 裁判例 プライバシー権 裁判例 ブラックバイト 裁判例 ベネッセ 裁判例 ベルシステム24 裁判例 マタニティハラスメント 裁判例 マタハラ 裁判例 マンション 騒音 裁判例 メンタルヘルス 裁判例 モラハラ 裁判例 モラルハラスメント 裁判例 リストラ 裁判例 リツイート 名誉毀損 裁判例 リフォーム 裁判例 遺言 解釈 裁判例 遺言 裁判例 遺言書 裁判例 遺言能力 裁判例 引き抜き 裁判例 営業秘密 裁判例 応召義務 裁判例 応用美術 裁判例 横浜地裁 裁判例 過失割合 裁判例 過労死 裁判例 介護事故 裁判例 会社法 裁判例 解雇 裁判例 外国人労働者 裁判例 学校 裁判例 学校教育法施行規則第48条 裁判例 学校事故 裁判例 環境権 裁判例 管理監督者 裁判例 器物損壊 裁判例 基本的人権 裁判例 寄与分 裁判例 偽装請負 裁判例 逆パワハラ 裁判例 休業損害 裁判例 休憩時間 裁判例 競業避止義務 裁判例 教育を受ける権利 裁判例 脅迫 裁判例 業務上横領 裁判例 近隣トラブル 裁判例 契約締結上の過失 裁判例 原状回復 裁判例 固定残業代 裁判例 雇い止め 裁判例 雇止め 裁判例 交通事故 過失割合 裁判例 交通事故 裁判例 交通事故 裁判例 検索 公共の福祉 裁判例 公序良俗違反 裁判例 公図 裁判例 厚生労働省 パワハラ 裁判例 行政訴訟 裁判例 行政法 裁判例 降格 裁判例 合併 裁判例 婚約破棄 裁判例 裁判員制度 裁判例 裁判所 知的財産 裁判例 裁判例 データ 裁判例 データベース 裁判例 データベース 無料 裁判例 とは 裁判例 とは 判例 裁判例 ニュース 裁判例 レポート 裁判例 安全配慮義務 裁判例 意味 裁判例 引用 裁判例 引用の仕方 裁判例 引用方法 裁判例 英語 裁判例 英語で 裁判例 英訳 裁判例 閲覧 裁判例 学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例 共有物分割 裁判例 刑事事件 裁判例 刑法 裁判例 憲法 裁判例 検査 裁判例 検索 裁判例 検索方法 裁判例 公開 裁判例 公知の事実 裁判例 広島 裁判例 国際私法 裁判例 最高裁 裁判例 最高裁判所 裁判例 最新 裁判例 裁判所 裁判例 雑誌 裁判例 事件番号 裁判例 射程 裁判例 書き方 裁判例 書籍 裁判例 商標 裁判例 消費税 裁判例 証拠説明書 裁判例 証拠提出 裁判例 情報 裁判例 全文 裁判例 速報 裁判例 探し方 裁判例 知財 裁判例 調べ方 裁判例 調査 裁判例 定義 裁判例 東京地裁 裁判例 同一労働同一賃金 裁判例 特許 裁判例 読み方 裁判例 入手方法 裁判例 判決 違い 裁判例 判決文 裁判例 判例 裁判例 判例 違い 裁判例 百選 裁判例 表記 裁判例 別紙 裁判例 本 裁判例 面白い 裁判例 労働 裁判例・学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例・審判例からみた 特別受益・寄与分 裁判例からみる消費税法 裁判例とは 裁量労働制 裁判例 財産分与 裁判例 産業医 裁判例 残業代未払い 裁判例 試用期間 解雇 裁判例 持ち帰り残業 裁判例 自己決定権 裁判例 自転車事故 裁判例 自由権 裁判例 手待ち時間 裁判例 受動喫煙 裁判例 重過失 裁判例 商法512条 裁判例 証拠説明書 記載例 裁判例 証拠説明書 裁判例 引用 情報公開 裁判例 職員会議 裁判例 振り込め詐欺 裁判例 身元保証 裁判例 人権侵害 裁判例 人種差別撤廃条約 裁判例 整理解雇 裁判例 生活保護 裁判例 生存権 裁判例 生命保険 裁判例 盛岡地裁 裁判例 製造物責任 裁判例 製造物責任法 裁判例 請負 裁判例 税務大学校 裁判例 接見交通権 裁判例 先使用権 裁判例 租税 裁判例 租税法 裁判例 相続 裁判例 相続税 裁判例 相続放棄 裁判例 騒音 裁判例 尊厳死 裁判例 損害賠償請求 裁判例 体罰 裁判例 退職勧奨 違法 裁判例 退職勧奨 裁判例 退職強要 裁判例 退職金 裁判例 大阪高裁 裁判例 大阪地裁 裁判例 大阪地方裁判所 裁判例 大麻 裁判例 第一法規 裁判例 男女差別 裁判例 男女差别 裁判例 知財高裁 裁判例 知的財産 裁判例 知的財産権 裁判例 中絶 慰謝料 裁判例 著作権 裁判例 長時間労働 裁判例 追突 裁判例 通勤災害 裁判例 通信の秘密 裁判例 貞操権 慰謝料 裁判例 転勤 裁判例 転籍 裁判例 電子契約 裁判例 電子署名 裁判例 同性婚 裁判例 独占禁止法 裁判例 内縁 裁判例 内定取り消し 裁判例 内定取消 裁判例 内部統制システム 裁判例 二次創作 裁判例 日本郵便 裁判例 熱中症 裁判例 能力不足 解雇 裁判例 脳死 裁判例 脳脊髄液減少症 裁判例 派遣 裁判例 判決 裁判例 違い 判決 判例 裁判例 判例 と 裁判例 判例 裁判例 とは 判例 裁判例 違い 秘密保持契約 裁判例 秘密録音 裁判例 非接触事故 裁判例 美容整形 裁判例 表現の自由 裁判例 表明保証 裁判例 評価損 裁判例 不正競争防止法 営業秘密 裁判例 不正競争防止法 裁判例 不貞 慰謝料 裁判例 不貞行為 慰謝料 裁判例 不貞行為 裁判例 不当解雇 裁判例 不動産 裁判例 浮気 慰謝料 裁判例 副業 裁判例 副業禁止 裁判例 分掌変更 裁判例 文書提出命令 裁判例 平和的生存権 裁判例 別居期間 裁判例 変形労働時間制 裁判例 弁護士会照会 裁判例 法の下の平等 裁判例 法人格否認の法理 裁判例 法務省 裁判例 忘れられる権利 裁判例 枕営業 裁判例 未払い残業代 裁判例 民事事件 裁判例 民事信託 裁判例 民事訴訟 裁判例 民泊 裁判例 民法 裁判例 無期転換 裁判例 無断欠勤 解雇 裁判例 名ばかり管理職 裁判例 名義株 裁判例 名古屋高裁 裁判例 名誉棄損 裁判例 名誉毀損 裁判例 免責不許可 裁判例 面会交流 裁判例 約款 裁判例 有給休暇 裁判例 有責配偶者 裁判例 予防接種 裁判例 離婚 裁判例 立ち退き料 裁判例 立退料 裁判例 類推解釈 裁判例 類推解釈の禁止 裁判例 礼金 裁判例 労災 裁判例 労災事故 裁判例 労働基準法 裁判例 労働基準法違反 裁判例 労働契約法20条 裁判例 労働裁判 裁判例 労働時間 裁判例 労働者性 裁判例 労働法 裁判例 和解 裁判例

「営業アウトソーシング」に関する裁判例(16)平成29年 8月25日 東京地裁 平27(ワ)17259号 未払賃金等請求事件

「営業アウトソーシング」に関する裁判例(16)平成29年 8月25日 東京地裁 平27(ワ)17259号 未払賃金等請求事件

裁判年月日  平成29年 8月25日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平27(ワ)17259号
事件名  未払賃金等請求事件
裁判結果  一部認容  上訴等  控訴(後、和解)  文献番号  2017WLJPCA08256007

要旨
◆出向手当は固定残業代の性質を有しないとされた例

【判例タイムズ社(要旨)】
◆1.「出向手当」及び「交通費」の各性質につき,雇用契約書の記載その他の事情から認定される労働契約の内容,労働契約と就業規則の優劣,労働条件の不利益変更の要件等の観点から判断した事例
◆2.使用者が労働者に対し就労に伴う交通費を貸し付け,雇用契約等に違反した場合には全額を返還しなければならない旨の定めが,実質的に労働契約の不履行に違約金を定めるものとして労働基準法16条(賠償予定の禁止)に違反し,無効であると判断した事例
◆3.法人格否認の法理の適用を肯定した事例

裁判経過
控訴審 平成30年 3月28日 東京高裁 判決 平29(ネ)4239号 未払賃金等請求控訴事件

評釈
三上安雄・労経速 2333号2頁
根本到・法セ 760号125頁

参照条文
労働契約法7条
労働契約法8条
労働契約法10条
労働基準法16条
民法1条2項
民法1条3項

裁判年月日  平成29年 8月25日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平27(ワ)17259号
事件名  未払賃金等請求事件
裁判結果  一部認容  上訴等  控訴(後、和解)  文献番号  2017WLJPCA08256007

原告 X1
原告 X2
原告 X3
原告 X4
原告ら訴訟代理人弁護士 A
同訴訟復代理人弁護士 B
同 C
同 D
被告 株式会社Y
同代表者代表取締役 E
同訴訟代理人弁護士 F

 

 

主文

1  被告は、原告X1に対し、次の各金員を支払え。
(1)  金30万円及びこれに対する平成27年3月1日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による金員
(2)  金14万2105円及びこれに対する平成27年4月1日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による金員
2  被告は、原告X2に対し、金30万4160円及びこれに対する平成27年3月1日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による金員を支払え。
3  被告は、原告X2に対し、金4万円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
4  被告は、原告X3に対し、次の各金員を支払え。
(1)  金22万2208円及びこれに対する平成26年10月1日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による金員
(2)  金15万円及びこれに対する平成26年11月1日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による金員
5  被告は、原告X4に対し、次の各金員を支払え。
(1)  金83万2263円
(2)  前記(1)の金83万2263円のうち金46万6551円に対する平成26年7月1日から本判決確定の日までは年6パーセント、本判決確定の日の翌日から支払済みまでは年14.6パーセントの割合による金員
(3)  前記(1)の金83万2263円のうち金36万4052円に対する平成26年8月1日から本判決確定の日までは年6パーセント、本判決確定の日の翌日から支払済みまでは年14.6パーセントの割合による金員
6  被告は、原告X4に対し、金8万円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
7  原告X2及び原告X4のその余の請求をいずれも棄却する。
8  訴訟費用は被告の負担とする。
9  この判決は、第1項、第2項、第4項及び第5項に限り仮に執行することができる。
 

事実及び理由

第1  請求
1  主文第1項に同旨
2  主文第2項に同旨
3  被告は、原告X2(以下「原告X2」という。)に対し、金8万2460円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
4  主文第4項に同旨
5  被告は、原告X4(以下「原告X4」という。)に対し、次の各金員を支払え。
(1)  金87万4800円
(2)  前記(1)の金87万4800円のうち金50万7937円に対する平成26年7月1日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による金員
(3)  前記(1)の金87万4800円のうち金36万4052円に対する平成26年8月1日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による金員
6  被告は、原告X4に対し、金20万8785円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
1  本件は、原告らが、被告に対し、労働契約に基づき次の各金員の支払を求める事案である(以下、ある月の1日から末日までの間の就労による月ごとの賃金を支払期日にかかわらず、就労した年月を示して「平成○年○月分」の賃金という。)。
(1)  原告X1(以下「原告X1」という。)に係る未払の基本給及び出向手当の合計(平成27年1月分30万円、同年2月分14万2105円)並びにこれに対する各支払期日(就労月の翌月末日で、いずれも退職後)の翌日から支払済みまで賃金の支払の確保等に関する法律(以下「賃確法」という。)6条1項、同法施行令1条所定の利率(以下「賃確法所定利率」という。)年14.6パーセントの割合による遅延損害金
(2)  原告X2に係る未払の平成27年1月分の基本給15万5000円、出向手当3万5000円及び交通費3万1700円並びに平成26年11月分から平成27年1月分までの労働基準法37条に基づく割増賃金8万2460円の合計30万4160円並びにこれに対する平成27年1月分の支払期日である同年2月末日の翌日で、退職後である同年3月1日から支払済みまで賃確法所定利率年14.6パーセントの割合による遅延損害金
(3)  原告X2の前記(2)の割増賃金8万2460円に係る労働基準法114条に基づく同額の付加金及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5パーセントの割合による遅延損害金
(4)  原告X3(以下「原告X3」という。)に係る次の未払賃金及び遅延損害金
ア 平成26年7月分の基本給の一部7万2208円及び同年8月分の基本給15万円の合計22万2208円並びにこれに対する原告X3の退職の日の翌日である平成26年10月1日から支払済みまで賃確法所定利率年14.6パーセントの割合による遅延損害金
イ 平成26年9月分の基本給15万円及びこれに対する支払期日の翌日である平成26年11月1日から支払済みまで賃確法所定利率年14.6パーセントの割合による遅延損害金
(5)  原告X4に係る次の未払賃金及び遅延損害金
ア 平成26年5月分の基本給及び出向手当の未払分27万5979円、同年6月分の基本給及び出向手当の計30万円、交通費5万3480円(同年5月分、6月分それぞれ金2万6740円)及び未払残業代(本判決では「残業代」の用語を労働基準法37条に基づく割増賃金に加え、法定労働時間内だが、所定労働時間を超える法内超勤に係る賃金を含む意味に用いる。)24万2530円(同年5月分までの分20万5218円、同年6月分3万7312円)の合計87万1989円並びに上記未払残業代に対する原告X4の退職日である平成26年6月30日までの商事法定利率年6パーセントの割合による遅延損害金2811円の総合計87万4800円
イ 前記アの平成26年5月分までの基本給及び出向手当の未払分、交通費並びに未払残業代の合計額50万7937円に対する退職日の翌日である平成26年7月1日から支払済みまで賃確法所定利率年14.6パーセントの割合による遅延損害金
ウ 前記アの平成26年6月分の基本給、出向手当、交通費及び未払残業代の合計額36万4052円に対する支払期日の翌日である平成26年8月1日から支払済みまで賃確法所定利率年14.6パーセントの割合による遅延損害金
(6)  原告X4の前記(5)アの未払残業代のうち労働基準法37条に基づく割増賃金20万8785円に係る労働基準法114条に基づく同額の付加金及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5パーセントの割合による遅延損害金
2  前提事実(争いのない事実及び括弧内の証拠等で容易に認定できる事実)
(1)  当事者
ア 被告は、IT(情報技術)人材育成・派遣事業、ITシステム開発・販売事業、ITアウトソーシング事業、その他ITソリューション事業、国際言語・教育等支援事業などを商業登記記録上の目的とし、東京都○区に本店を置く株式会社である。被告の取締役は、代表取締役でもあるE(以下「E」という。)のみである。G(以下「G」という。)は、Eの妻で、商業登記記録に登記された取締役ではないが、被告の「専務取締役総務部長」を称している。EとG専務はともに中華人民共和国(以下「中国」という。)の国籍を有する(書証〈省略〉、弁論の全趣旨)。
イ a株式会社(以下「a社」という。)は、商業登記記録上の目的を語学教室、料理教室その他教養教育サービス、翻訳、通訳その他言語サービス、ホームページ制作、WEBサーバその他ITサービス、ソフトウエア研究、開発、販売、導入、保守等、IT、翻訳、語学教師その他人材派遣、これらに附帯する一切の事業とし、商業登記記録上、千葉市○区に本店を置いていた株式会社である。Gは、その唯一の取締役で、代表取締役であったが、平成26年8月31日株主総会決議で、a社が解散となったことに伴い、代表清算人に就任した。a社は、同年11月10日清算が結了した旨の登記がされている(書証〈省略〉)。
ウ 原告X1、原告X2、原告X3及び原告X4は、中国の国籍を有する者である。
(2)  原告X1の雇用
ア 原告X1は、平成26年10月、被告との間の同月9日付け雇用契約書(書証〈省略〉)を作成して、同月8日から3年間の雇用期間、毎月の賃金30万円(基本給25万円、出向手当5万円)、月末締め翌月末日払い、原告X1は被告指定のIT開発その他の業務を担当するなどと約定する労働契約を締結し、平成27年2月13日、退職するまでIT技術者として被告が指示する別会社の事業場で被告が請け負った業務に就労した。
イ 原告X1は、平成27年1月は欠勤なく就労した。同年2月は同月13日に退職するまで同月の所定労働日数19日中9日就労し、日割計算した同月分の賃金額は金14万2105円である(書証〈省略〉、弁論の全趣旨)。
(250,000+50,000)×9÷19=300,000×9÷19=142,105.2…≒142,105
ウ 被告は、平成27年1月分の賃金30万円(支払期日は同年2月末日)、同年2月分の賃金14万2105円(支払期日は同年3月末日)を支払っていない(ただし、その未払に正当な理由があるかどうか争いがある。)。
(3)  原告X2の雇用
ア 原告X2は、被告との間で平成26年9月8日付け雇用契約書(書証〈省略〉)を作成して、同月5日から3年間の雇用期間、「基本報酬:200,000円/月平均。(内訳:基本給15万円/月、出向手当3万円/月、基本賞与2万円※年2回支払、評定賞与込み)」「交通費と残業代:就業規則に従い、精算とする。」、月末締め翌月末日払い、勤務時間は就業規則に従う(3条)、「出向の場合、勤務時間・休日休暇・精算などの諸事項は現場の規定に従い、待機の場合、就業規則に従う(8万円+交通費)」(5条)、原告X2は被告指定のIT開発その他の業務を担当するなどと約定する労働契約を締結し、平成27年1月31日に退職するまでIT技術者として被告の指示で株式会社b(以下「b社」という。)の事業場で被告が請け負った業務に就労した。毎月の賃金は、実際には基本給15万5000円、出向手当3万5000円(計19万円)及び交通費が支給されていた(書証〈省略〉、弁論の全趣旨)。
イ 原告X2が平成26年11月から平成27年1月31日に被告を退職するまでの間、b社の事業場で就労した労働時間の状況は、別紙1―1〈省略〉「勤務時間・賃金計算票(原告X2)」のとおりである。
ウ 被告は、原告X2の平成27年1月の就労に基づく賃金19万円(基本給15万5000円、出向手当3万5000円)をその支払期日(同年2月末日)を経過したあとも支払っていない(ただし、その未払に正当な理由があるかどうか争いがある。)。
(4)  原告X3の雇用
ア 原告X3は、a社との間で、平成25年12月31日付け雇用契約書(書証〈省略〉)を作成して、契約社員として平成26年1月1日から同月31日までの雇用期間(期間満了後、自動的に無期限の正社員に切り替わる。)、出向手当3万円を含む毎月15万円の賃金(同年7月31日まで試用期間中の賃金は80パーセント)、月末締め翌月末日払い、a社が指定するIT開発業務及びa社の他の業務を担当するなどと約定する労働契約を締結した。
イ 原告X3は、平成26年9月末日をもって退職するまでIT技術者としてa社の業務に従事したが、a社は、平成26年7月分の賃金のうち金7万2208円、同月8月分、9月分の賃金各15万円(合計37万2208円)を支払っていない。
(5)  原告X4の雇用
ア 原告X4は、a社との間で、平成25年9月30日付け雇用契約書(書証〈省略〉)を作成して、雇用期間平成25年10月1日から平成26年9月30日までの1年間、毎月の賃金は基本給14万円、「固定残業」2万円、交通費は実費精算(上限は月1万5000円まで)、月末締め翌月末日払い、精算条件、勤務時間、休憩休暇などは就業規則に準ずる、原告X4は主にa社指定の言語教育・翻訳、事務、営業補助関連その他の業務を担当する、出向・出張の場合、勤務時間・休日休暇・精算などの諸事項は現場の規定に従い、待機の場合、就業規則の待機規定に従うなどと約定する労働契約を締結した。
イ 原告X4は、平成26年1月20日、a社との間で覚書(書証〈省略〉。以下「原告X4覚書」という。)を作成し、前記アの労働契約を次のとおり変更することを合意した。
(ア) 雇用期間を平成26年2月1日から同年3月31日までとし、期間満了1か月前までに双方とも契約終了の意を明示しなければ本契約は自動的に同じ期間で延長する。
(イ) a社は、前記(ア)の期間において、原告X4の仕事の対価として「300,000円/月(交通費、各種手当等込み)の賃金」を支払う。この賃金を支払う対等条件として、原告X4は、承諾した契約事項を忠実に履行し、a社及びその顧客が指示した仕事を問題なく遂げ、更なる契約改定を要求しない。
ウ 原告X4は、a社との間で、改めて平成26年3月8日付け雇用契約書(書証〈省略〉)を作成して、雇用期間平成26年4月1日から1か月間、期間満了前日までに双方とも契約終了の意を明示しなければ自動的に同じ期間で延長する(ただし、開始、終了の日が原告X4の参加するa社の案件と異なる場合、その案件の開始や終了の日を有効とする。)、給与は基本給24万円、出向手当6万円、交通費は実費精算(3万円以上の場合、事前に申請し会社の承認が必要)、出勤時間、休日及び休暇は出向する現場の規定に従い、その他はa社の就業規則に準ずる、原告X4はa社指定のIT支援、文化支援関連その他の業務を担当するなどと約定する労働契約を締結した。
エ 原告X4は、平成26年6月30日、a社を退職するまで、a社が指示した就業場所でIT技術者として就労したが、a社は、同年5月分の賃金のうち金27万5979円及び同年6月分の賃金30万円を支払っていない。原告X4は、同年5月、6月の就労のため就業場所までの移動のための鉄道定期券(書証〈省略〉)の購入費用5万3480円(1月分2万6740円)を支払ったが、a社は、これに対応する交通費の支給をしていない。
(6)  紛争の経過
ア 原告らは、平成27年6月22日、本件訴訟を提起した。
イ 本件訴訟では当初、E及びG専務に対して、原告X1、原告X2及び原告X3が預託した卒業証書及び学位証書の返還を拒んだことによる慰謝料も請求されていたが、この請求に関しては、平成28年10月27日、原告X1、原告X2及び原告X3とE及びGとの間で訴訟上の和解が成立した。
(7)  被告の就業規則
被告の就業規則に関する証拠の概況は、次のとおりである(書証〈省略〉)。
ア 被告が乙第1号証として提出した就業規則(書証〈省略〉。以下「乙1の就業規則」という。)は、平成25年11月13日に適用を開始したものとされており(附則)、賞与以外の賃金(基本賃金)を「基本給」と「時間外手当」に、「時間外手当」を「固定残業代」と「追加残業代」に、「固定残業代」を「出向手当」、「役職手当」及び「営業手当」にそれぞれ分け(9条)、出向手当は「固定残業代として支給する」「支給額は、出向現場および勤務負荷等の実態により、個別に決定する」「28時間の固定残業時間が含まれる」と定めている(12条3項)。また、交通費は「従業員が自分で負担とする」ものとし、一定の社員に限って「会社からその費用の実費を上限に従業員に貸付で支払うことができる」「会社が貸付けで支払った交通費は従業員が雇用契約書・覚書・誓約書・就業規則などの規定を順守することを前提に返還を免除するが、違反した場合、全額を会社に返還しなければならない。」と定めている(13条)。
イ 被告は、後記第3の1(1)の別件訴訟でも被告の就業規則を書証として提出しており、原告は、これを甲第56号証として提出した(書証〈省略〉。以下「甲56の就業規則」という。)。この甲56の就業規則は、乙1の就業規則と比較すると、同じく平成25年11月13日から適用が開始したものとされているが(附則。つまり、両者は外形上改正前後の関係にない。)、賞与以外の賃金は「基本賃金」「基本報酬」とされて、「基準内賃金」「基準外賃金」に分けて、「基準外賃金」は「出向手当(固定残業代)」、「残業手当(超過残業代)」及び「役職手当(固定残業代)」からなる「時間外手当」を指すものとされて(9条)、異なる賃金体系が定められている。乙1の就業規則の出向手当に「28時間の固定残業時間が含まれる」という部分は「含まれる固定残業時間は給与明細等により個別に明示する」となっている。交通費は、「会社からその費用の実費を上限に従業員に貸付けで支払うことができる」との部分は「会社に実費を上限に精算することができる」と、「会社が貸付で支払った交通費は従業員が雇用契約書・覚書・誓約書・就業規則などの規定を順守することを前提に返還を免除するが、違反した場合、全額を会社に返還しなければならない。」との部分は、「交通費の精算は従業員が雇用契約書・覚書・誓約書・就業規則などの規定を順守することを前提とし、違反した場合、全額を会社に返却しなければならない。」となっている(13条)。
ウ 被告は、平成27年6月の本訴提起から2年近くが経過し、弁論準備手続も既に終結した平成29年5月になって、乙第12号証として別の就業規則(書証〈省略〉。以下「乙12の就業規則」という。)を提出した。この乙12の就業規則には適用開始日を示す附則はなく、「平成26年6月1日」という日付のみが記載され、「就業規則の了承に関する従業員(代表)のサインリスト」「私どもが、会社の最新就業規則の内容について、会社の通知と説明を十分に受け、理解した上で了承しました。」との文章の下に原告X3、原告X1、原告X2らの署名押印がある書面が添付されている(以下、この書面を「サインリスト」という。)。乙12の就業規則の内容は、概ね甲56の就業規則と同様であるが、始業時間及び終業時間となる時刻の定めが異なっている(4条3項)。
3  争点
(1)  原告X1の請求関係
原告X1の賃金と立替金との相殺
(2)  原告X2の請求関係
ア 原告X2の割増賃金
(ア) 出向手当の性質
(イ) 所定労働時間の時間数
イ 原告X2の交通費
ウ 原告X2の賃金と立替金との相殺
エ 原告X2の割増賃金に係る付加金
(3)  原告X3及び原告X4の各請求関係
ア a社と被告との間の法人格否認
イ 原告X4の残業代
(ア) 「固定残業」及び出向手当の性質
(イ) 所定労働時間の時間数
(ウ) 実労働時間
ウ 原告X4の残業代に係る付加金
4  争点に関する当事者の主張
(1)  争点(1)(原告X1の賃金と立替金との相殺)について
ア 被告の主張
原告X1は、在留期間を通じて被告で勤務する予定で来日し、原告X1の一方的な意思で中途退職したときは、それまでに被告が立て替えた入国費用等と賃金を相殺することを合意しており、原告X1の退職時に相殺処理がされた。被告が立て替えた入国費用等の金額は、原告X1の未払賃金44万2105円を上回っており、被告は、未払賃金の支払義務を負わない。
イ 原告X1の主張
被告は、被告が立て替え、未払賃金と相殺したと主張する入国費用等を別訴(千葉地方裁判所平成27年(ワ)第1712号)で請求中である。別訴の訴訟物となっている債権を自働債権として相殺の抗弁を主張することは許されないから(最判平成3年12月17日民集45巻9号1435頁)、入国費用等による相殺は主張自体失当である。
(2)  争点(2)ア(ア)(原告X2の割増賃金―出向手当の性質)について
ア 被告の主張
被告は、乙12の就業規則において、「出向手当は、固定残業代として支給する」旨を定めており、毎月3万5000円の出向手当は残業代に充当されるべきものであるから、割増賃金の基礎賃金から除外されるとともに割増賃金の弁済となる。原告X2には、毎月3万5000円(約31時間分)の出向手当を超える法定時間外労働はなかった。
就業規則は、入社時に閲覧させて、その内容を説明し、社員から就業規則の内容について説明を受けた旨のサインリスト(書証〈省略〉)に署名押印させ、さらに事業場に誰でもわかる形で備え置いている。
イ 原告X2の主張
原告X2は、被告の就業規則の周知も内容説明も受けたことがない。被告提出の乙12の就業規則は訴訟提起から約2年を経て提出されたものであり、原告X2の署名押印のあるサインリストも何らかの理由で署名押印させた別の用紙を添付した可能性が高く、証拠としての信用性は極めて低い。被告には、出向手当に含まれる固定残業時間は給与明細等で個別に明示する旨の別の就業規則(書証〈省略〉)が存しており、被告の主張は合理性に欠ける。
いわゆる固定残業代は、支給時に時間外労働の時間数及び残業代の金額を明示し、かつ、固定残業代を超える残業があった時は、別途、固定残業代では足りない分の残業代を支給することも予め明らかにされていなければならないところ(最判平成24年3月8日集民240号121頁櫻井裁判官補足意見参照)、原告X2は、乙12の就業規則でも雇用契約書、給与明細等でも出向手当に含まれる残業時間を明示されていない。
原告X2と被告との間の雇用契約書(書証〈省略〉)には出向手当を割増賃金又は残業代に充当する旨の約定はなく、むしろ、出向手当とは別途残業代が支払われるべきことが定められていた。
(3)  争点(2)ア(イ)(原告X2の割増賃金―所定労働時間の時間数)について
ア 原告X2の主張
原告X2の勤務時間は「現場の規定に従う」べきところ、「現場」となるb社の所定労働時間は午前9時から午後6時まで、休憩1時間の1日8時間であった。休日は土曜、日曜、祝日及び年末年始(12月29日から1月3日まで)が休日で、平成26年及び平成27年における休日数は123日であり、残りの暦日の日数である年間所定労働日数は、242日となる。年間所定労働日数242日に1日の労働時間8時間を乗じて、12月で除して、月平均所定労働時間は約161.33時間となる。毎月の基本給15万5000円と出向手当3万5000円の合計19万円を月平均所定労働時間161.33時間で除して、割増賃金の基礎賃金の時間単価は1178円(1円未満四捨五入)となり、割増賃金の金額は、別紙1―1〈省略〉「勤務時間・賃金計算票(原告X2)」及び別紙1―2〈省略〉「未払賃金集計表(原告X2)」のとおり、金8万2460円となる。
イ 被告の主張
所定労働時間は、被告の乙12の就業規則によって計算されるべきであって、1日の所定労働時間は8時間、年間の休日数は107日、年間の所定労働日数は258日、月平均労働時間は172時間である(5条5項)。「現場の規定に従う」とは勤怠のルールは就業場所となる現場の規定に従うという意味で、賃金計算の基礎となるのは就業規則上の所定労働時間である。労働実態に基づいて、労働契約や就業規則に定められるべき所定労働時間が変更されることはありえない。
出向手当は、被告の就業規則に基づいて残業代又は割増賃金に充当されるべきものであるから、割増賃金の基礎賃金から除外されるべきである。出向手当は、約31時間分の残業代であり、原告X2の各月の法定時間外労働の時間は、31時間を超えたことはないから、割増賃金の未払はない。
(4)  争点(2)イ(原告X2の交通費)について
ア 原告X2の主張
原告X2は、平成27年1月、自宅から就労場所までの往復に要する交通費3万1700円を支払ったから、その償還を求める。
原告X2と被告の雇用契約書(書証〈省略〉)には交通費は「精算」することのみが定められており、実費支給の定めと解され、原告X2が交通費を負担すべき労働契約上の根拠は存しない。原告X2は、被告から就業規則の周知を受けたことがない。被告には就業規則が複数存し(書証〈省略〉)、交通費の負担に関する部分も一方(書証〈省略〉)では、交通費を「実費を上限に貸付で支払う」と定められているが、他方(書証〈省略〉)では交通費を「実費を上限に精算することができる」と定めており、被告の主張は合理的な根拠に欠ける。
交通費を労働者に貸し付けるとの定めがあっても中途退職に交通費の負担を課すことで退職の自由を不当に制限するもので、労働契約の不履行につき違約金を定め、又は損害賠償を予定することを禁じた労働基準法16条に反して無効である。前借金の相殺を禁止した同法17条にも反し、少なくとも相殺はできない。
イ 被告の主張
被告は、乙12の就業規則において、交通費は被告が貸し付け、中途退職の場合、労働者が負担すべきことを定めて(13条)、周知しているから、被告は、交通費の立替金につき償還義務を負わない。
労務提供のための交通費は、民法485条のいう「弁済の費用」に該当するから、原則として労働者が負担すべきもので、一定の場合、労働者の負担とすること、交通費支給を行うときに貸付けの形をとることは法令に違反するものではない。労働者が負担すべき経費につき、使用者が労働者に貸し付けるものとした上、一定期間の労務提供がされることを条件として、これを免除する合意を行っても、その金額が多額にわたらず、免除までに要する在職期間も3年間と長期間ではなく、原告X2は被告での就労を前提に中国から来日して在留資格を得ており、一定期間、被告での就労を求めることも不当とはいえないから、労働者の退職の自由を不当に奪うものではなく、労働基準法16条に違反するものではない。
(5)  争点(2)ウ(原告X2の賃金と立替金との相殺)について
ア 被告の主張
原告X2は、在留期間を通じて被告で勤務する予定で来日し、原告X2の一方的な意思で中途退職したときは、それまでに被告が立て替えた入国費用等と賃金を相殺することを合意しており、原告X2の退職時に相殺処理がされた。被告が立て替えた入国費用等は、原告X2の未払賃金の金額を上回っており、被告は、未払賃金の支払義務を負わない。
イ 原告X2の主張
被告は、未払賃金と相殺したと主張する被告が立て替えた入国費用等を別訴(千葉地方裁判所平成27年(ワ)第1015号)で請求中である。前記(1)イのとおり、別訴の訴訟物となっている債権を自働債権として相殺の抗弁を主張することは許されないから、入国費用等による相殺は主張自体失当である。
(6)  争点(2)エ(原告X2の割増賃金に係る付加金)について
ア 原告X2の主張
被告は、給与明細書(書証〈省略〉)に「超過時間」等を記載していること、原告X2の平成27年1月就労分の基本給及び出向手当さえ全く支払っていないことに照らして、時間外労働の事実を認識しつつ、あえて割増賃金の支払を怠っていることは明らかであるから、労働基準法114条に基づき割増賃金8万2460円と同額の付加金を支払うべきである。
イ 被告の主張
争う。
(7)  争点(3)ア(a社と被告との間の法人格否認)について
ア 原告X3及び原告X4の主張
a社と被告は営業所、電話番号、役員、ロゴマークに共通部分があること、被告がa社の取引先を引き継いでいる可能性が高く、ともにIT支援サービスを事業内容としていること、被告のウェブサイトにa社の組織図が掲載されていたこと、a社の東京営業所と被告はほぼ同時期に設立されたこと、a社の事業の一部を被告が承継したこと、原告X1及び原告X2は当初a社での就労を予定していたが、被告側の都合で被告と労働契約を締結するに至ったこと、被告は原告X1及び原告X2の在留資格認定証明書交付申請のためa社の名義を便宜的に利用していたことなどに照らせば、a社と被告は実質的には同一の企業である。a社は平成26年6月分以降の原告X3及び原告X4の賃金を総勘定元帳(書証〈省略〉)に計上しておらず、同月以降も原告X3及び原告X4を就労させながら、解散で賃金支払義務を免れようとしたと考えられる。E及びGは、a社の役員として原告X3及び原告X4に対する賃金支払を履行すべきであるにもかかわらず、その履行を怠っており、会社法429条1項、487条1項に基づく損害賠償責任を負うべき立場にあるところ、被告は、E及びGが支配する会社であるから、上記賃金の支払義務を公平上負うべきである。
したがって、法人格否認の法理に基づき、被告は、a社の原告X3及び原告X4に対する賃金支払義務を免れない。
イ 被告の主張
a社はGが、被告はEがそれぞれ経営する別個の会社・経済主体であり、計算も別々に処理されている。被告がIT事業を主目的とする一方、a社は語学教育等を通じた文化交流事業を主目的とし、事業の実態も有していた。a社の解散はGの健康上の問題から経営を続けられなくなったことによるもので、法人格濫用の意図はない。
(8)  争点(3)イ(ア)(原告X4の残業代―「固定残業」及び出向手当の性質)について
ア 被告の主張
原告X4の賃金のうち「固定残業」及び出向手当は固定残業代であり、残業代算定の基礎賃金からも除外され、残業代に充当されるべきものである。原告X4覚書による平成26年2月分、3月分の出向手当は、給与明細(書証〈省略〉)に記載のとおり、月10万円であった。
イ 原告X4の主張
固定残業代は、支給時に時間外労働の時間数及び残業代の金額を明示し、かつ、固定残業代を超える残業があった時は、別途、固定残業代では足りない分の残業代を支給することも予め明らかにされていなければならないところ(前記(2)イ参照)、「固定残業」や出向手当は、対応する残業の時間数が示されておらず、足りない分の残業代を支給することも予め明らかにされていないから、固定残業代としての効力を有しない。原告X4覚書(書証〈省略〉)では、「固定残業」又は出向手当との文言すらない。平成26年2月分、3月分の出向手当10万円も給与明細(書証〈省略〉)に被告が一方的に記載したものに過ぎず、その金額には交通費も含まれている。雇用契約書(書証〈省略〉)でも出向手当が固定残業代であることも明らかにされていない。a社の就業規則も書証として提出されていない。
(9)  争点(3)イ(イ)(原告X4の残業代―所定労働時間の時間数)について
ア 原告X4の主張
原告X4の勤務時間は、平成25年9月30日付け(書証〈省略〉)、平成26年3月8日付け(書証〈省略〉)の各雇用契約書に基づいて、「現場の規定に従う」べきであり、残業代の計算に用いる所定労働時間数及び基礎賃金の時間単価は次のとおりである。
(ア) 平成25年11月1日から同年12月15日まで
「現場」たる就業場所となる○○(東京都○区所在)では、土曜、日曜、祝日及び年末年始(12月29日から1月3日)の121日が休日で、平成25年における年間所定労働日数は244日である。1日の所定労働時間は1日8時間であるから、年間所定労働時間は1952時間(月平均162.67時間)となる。賃金16万円(基本給14万円、固定残業2万円)を月平均所定労働時間162.67時間で除して、基礎賃金の時間単価は984円(1円未満四捨五入)となる。
(イ) 平成25年12月16日から同月31日まで
「現場」たる就業場所となる△△(東京都○区所在。以下「△△」という。)では、土曜、日曜、祝日及び年末年始(12月29日から1月3日)の121日が休日で、平成25年における年間所定労働日数は244日である。1日の所定労働時間は1日7時間45分であるから、年間所定労働時間は1891時間(月平均157.58時間)となる。基本給16万円を月平均所定労働時間157.58時間で除して、基礎賃金の時間単価は1015円(1円未満四捨五入)となる。
(ウ) 平成26年2月から6月まで
「現場」たる就業場所となる△△における前記(イ)の休日の定めに従うと、平成26年の休日日数は123日、所定労働日数は242日、1日7時間45分の所定労働時間を乗じ、年間所定労働時間は1875.5時間(月平均所定労働時間156.29時間)となる。原告X4覚書(書証〈省略〉)及び平成26年3月8日付け雇用契約書(書証〈省略〉)に基づく月30万円の賃金を月平均所定労働時間156.29時間で除して基礎賃金の時間単価は1920円(1円未満四捨五入)となる。
イ 被告の主張
原告X4は、a社と労働契約を結んでいるのであるから、就業場所で所定労働時間が変化することはない。出向手当及び固定残業は、基礎賃金の算定から除外すべきである。
(10)  争点(3)イ(ウ)(原告X4の残業代―実労働時間)について
ア 原告X4の主張
原告X4の平成25年11月1日から平成26年6月30日までの労働時間は、別紙2―1〈省略〉「勤務時間・賃金計算票(原告X4)」の①ないし⑧記載のとおりであった。
前記(9)アの基礎賃金の時間単価を用いた残業代の合計額は、別紙2―1〈省略〉「勤務時間・賃金計算票(原告X4)」の①ないし⑧及び別紙2―2〈省略〉「未払賃金・遅延損害金等集計表(原告X4)」の記載のとおり、金24万2530円である。
イ 被告の主張
原告X4の平成25年11月1日から平成26年3月31日までの労働時間が別紙2―1〈省略〉「勤務時間・賃金計算票(原告X4)」の①ないし⑤のとおりであったことは認める。同年4月1日から6月30日までの別紙2―1〈省略〉「勤務時間・賃金計算票(原告X4)」の⑥ないし⑧の労働時間は否認する。
(11)  争点(3)ウ(原告X4の残業代に係る付加金)について
ア 原告X4の主張
a社は、原告X4の時間外労働を認識しながら、あえて残業代を支払っておらず、悪質性が高く、法人格否認の法理でa社の債務を免れない被告も残業代と同額の付加金支払義務を負うべきである。
イ 被告の主張
争う。
第3  争点に対する判断
1  争点(1)(原告X1の賃金と立替金との相殺)について
(1)  弁論の全趣旨によれば、①被告は、平成27年2月、原告X1に対して、入国費用等の立替金の償還を求める民事訴訟を提起したこと(千葉簡易裁判所平成27年(ハ)第10065号)、②被告は、平成27年5月、原告X2ほか3名に対して、入国費用等の立替金の償還を求める民事訴訟を提起したこと(千葉地方裁判所平成27年(ワ)第1015号)、③上記①の民事訴訟事件は、千葉簡易裁判所から千葉地方裁判所に移送されて(千葉地方裁判所平成27年(ワ)第1712号)、上記②の民事訴訟事件と併合されて審理中であること(以下、一括して「別件訴訟」という。)、④別件訴訟で、被告から原告X1及び原告X2に対して償還が請求されている立替金等は、本件訴訟で被告が相殺を主張している入国費用等の立替金と同一であることが認められる。
前記①ないし④の事実を総合すれば、被告は、原告X1の請求に対する抗弁として、係属中の別件訴訟において訴訟物となっている債権を自働債権とする相殺の抗弁を主張していると認められ、このような相殺の抗弁の主張は、相殺の抗弁の判断に生じる既判力(民事訴訟法114条2項)が別件訴訟における判決の既判力と矛盾抵触するおそれがあり、審理の重複も生じるから、民事訴訟法142条の二重起訴の禁止の趣旨に抵触するものとして許されないと解される(前掲最判平成3年12月17日参照)。
(2)  被告提出の原告X1の署名押印のある「入社誓約書(兼覚書)」(書証〈省略〉)は実勤務時間が3年未満の場合、被告が原告X1のために立て替えた諸費用は免除にならず、退職時に賃金と清算、すなわち相殺することを定めていることが認められる。
しかしながら、相殺の自働債権となるべき立替金の具体的な金額、使途に関する主張立証は全くない。上記「入社誓約書(兼覚書)」(書証〈省略〉)にも「諸費用(例えば、人材紹介費、来日の諸費用、上記保証人費用など)」としか記載されておらず、費用の具体的内容は判然としない。かえって、原告X1の陳述書(書証〈省略〉)によれば、「来日の諸費用」のうち主要部分を占めると推測される原告X1の中国での査証申請手続及び来日のための航空券の費用は、原告X1自身が負担していることがうかがわれる。原告X1とEとの間の来日前の連絡内容(書証〈省略〉)にも何らかの立替えの事実を具体的にうかがわせるものは見当たらない。
(3)  前記(1)、(2)の認定判断によれば、被告主張の相殺の抗弁は、訴訟法上の主張制限、証拠関係、いずれの見地からも採用できず、被告は、原告X1に対する平成27年1月分の賃金30万円(支払期日は同年2月末日)及び同年2月分の賃金14万2105円(支払期日は同年3月末日)の支払義務を免れない。
なお、前記(2)の「入社誓約書(兼覚書)」の定めは、3年以上の勤務を原告X1に求め、原告X1が3年未満で退職したときには「立替金」と称する違約金を負担させ、又は労働することを条件とした立替金を賃金と相殺する趣旨とも解されるから、労働基準法16条の賠償予定の禁止、同法17条の前借金相殺の禁止との関係でも、その効力に疑義がある。
(4)  賃確法所定利率の適用を免れるためには、賃確法6条2項、同法施行規則6条4号、5号の定める「支払が遅滞している賃金の全部又は一部の存否に係る事項に関し、合理的な理由により、裁判所又は労働委員会で争つている」場合又はこれに準ずる事由に当たることを要する。
被告は、原告X1の基本給と立替金との相殺(争点(1))を主張して、原告X1の請求を争うが、相殺の自働債権となる立替金の具体的な金額や使途の立証が全くされていない以上、相殺の主張に相応の事実的根拠又は証拠の裏付けがあったとは認められないから、「合理的な理由」又はこれに準じる理由が存したとはいえない。
したがって、原告X1の請求に係る遅延損害金には、その退職の後の各支払期日の翌日以降、賃確法所定利率年14.6パーセントの利率を適用することが相当である。
2  争点(2)ア(ア)(原告X2の割増賃金―出向手当の性質)について
(1)  被告は、出向手当は固定残業代であると主張するところ、このような手当が固定残業代であると認められるためには、労働契約において、出向手当が固定残業代であると定められて、残業代ないし割増賃金の性質を有し、かつ、その他の賃金(通常の労働時間の賃金など)と明確に区別されていることで、固定残業代によらない労働契約、労働基準法37条等に基づく通常の計算方法による残業代ないし割増賃金の金額と比較することが可能であることを要すると解する。
(2)  証拠(書証〈省略〉)及び弁論の全趣旨によれば、①仮に出向手当が固定残業代の趣旨であれば、例えば「出向手当(○時間分の固定残業代)」と記載するなど、その趣旨を雇用契約書に明記することは容易であるが、原告X2と被告との間で締結された雇用契約書(書証〈省略〉)では、出向手当が固定残業代であること、更には恒常的な時間外労働が予定されていることをうかがわせる記載はなく、出向手当は基本給とともに「基本報酬」を構成するものであり、他方、「交通費と残業代」は「就業規則に従い、精算とする」ことが定められており、出向手当と残業代は別個のものであるように読み取れること、②原告X2は、被告との間で上記①の雇用契約を締結する前、a社から雇用契約書案(書証〈省略〉)の送付を受けていたが、その契約書でも出向手当が固定残業代であること、恒常的な時間外労働が予定されていることをうかがわせる記載はなく、出向手当は基本給とともに「基本報酬」を構成するものであり、「残業精算」は「就業規則に従い、精算とする」ことが定められていたこと、③原告X2に交付されていた給与明細書(書証〈省略〉)では、時間外労働の時間数の記載はあったが、出向手当との関係をうかがわせる記載はなかったこと、④基本給及び出向手当の合計額19万円は、IT技術者である原告X2の残業代又は割増賃金を含まない賃金額と考えても高額過ぎることが明らかな水準にはないことが認められる。また、「出向手当」という名称は、一般に出向先での作業の難度、移動の負担等に由来する手当と、「基本報酬」という名称は、一般に所定労働時間内の勤務に対する報酬で、時間外労働等の特別な勤務に基づく報酬を含まないものとそれぞれ理解でき、固定残業代を指すとは理解できない。原告X1尋問8、10、19頁(人証〈省略〉)によれば、中国でも「出向手当」という用語が固定残業代を示すという理解が一般化しているわけではないと認められる。
以上によれば、原告X2と被告との間の雇用契約書(書証〈省略〉)を合理的に解釈すれば、原告の賃金は所定労働時間内の勤務に対する賃金である「基本報酬」たる基本給及び出向手当に加え、残業代及び交通費で構成され、残業手当及び交通費は出向手当とは別に精算されることが定められていたというべきである。
(3)  これに対し、被告は、就業規則において、「出向手当は、固定残業代として支給する」旨が定められていると主張する。
就業規則の内容が労働契約成立時から労働条件の内容となるためには、①労働契約成立までの間に、その内容を労働者に説明し、その同意を得ることで就業規則の内容を労働契約の内容そのものとすること、又は②労働契約を締結する際若しくはその以前に合理的な労働条件を定めた就業規則を周知していたこと(労働契約法7条)を要する。ただし、上記②の場合は労働契約で就業規則と異なる労働条件が合意されている部分は、就業規則の最低基準効(同法12条)に抵触しない限り、労働契約が優先する(同法7条但書)。労働契約で用いられている用語につき、就業規則が一般に理解される意味とは異なる特別の意味で用いているからといって、就業規則での特別の意味で解釈することは労働者と使用者の個別の合意による労働契約の内容を使用者のみの制定による就業規則に基づいて変更し、就業規則を優先させることに等しく、使用者による労働者に対する労働条件の明示義務(労働基準法15条)及び理解促進の責務(労働契約法4条)並びに労使の対等な立場における合意原則(労働契約法1条、3条1項、8条、9条本文、労働基準法2条1項)の趣旨に反し、労働者に対し予測不可能な労働条件を押し付ける不意打ちにもなりかねないから、労働契約締結以前にその就業規則も示して、就業規則の内容が労働契約そのものとなり、労働契約の用語を就業規則での特別の意味で用いることが労働契約に取り込まれたといえる上記①の場合に当たらない限り、労働契約法7条但書の趣旨に従い、その労働契約はやはり一般に理解される意味で解釈されるべきである(就業規則の最低基準効に抵触する場合は除く。)。
前記(2)の認定判断によれば、原告X2と被告との間の労働契約では、出向手当は所定労働時間内の賃金に該当し、残業代は出向手当と別途に精算することが定められていたと認められるから、就業規則で「出向手当は、固定残業代として支給する」旨を定めることで、出向手当を固定残業代に当たるものと意味づけて、仮にこれが周知されて前記②の場合に該当しても、さらに前記①の場合に該当しない限り労働契約の内容が優先するというべきである。原告X2と被告との間の雇用契約書(書証〈省略〉)には残業代は「就業規則に従い、精算とする」との規定もあるが、この規定も残業代を出向手当とは別途精算する契約内容を前提としたものであるから、上記規定は出向手当の性質を就業規則で無制約に定めることを許したものではなく、労働契約と矛盾しない限度で残業代の計算方法を定めることを就業規則に委ねたものに過ぎないと解すべきである。就業規則でこの限度を超えた定めを置いても、労働契約に優先する効力を有するものではない。
したがって、就業規則での「出向手当は、固定残業代として支給する」旨の定めが労働契約成立時から労働条件の内容となるためには、前記①の場合に該当すること、すなわち、就業規則の内容を原告X2に説明し、その同意を得ることで就業規則の内容を原告X2と被告との間の雇用契約書(書証〈省略〉)と同様に労働契約の内容そのものとすることを要することになる。
なお、甲56、乙1、12の各就業規則には、「その他の契約内容が、本就業規則の規定と矛盾した場合、本就業規則の規定は優先される」との定めがあるが(31条5項)、被告が就業規則よりも労働者に有利な内容で労働契約を締結しながら、就業規則の優先を主張することが禁反言に反することは明らかであるから、上記定めは、合理的に解釈して、労働契約法12条と同様に就業規則の最低基準効を定めたものと解される。原告X2と被告との間の雇用契約書(書証〈省略〉)の「就業規則に規定がある場合、全てその規定に準じる」との定め(12条)も同様の趣旨と解される。
(4)  Eは、陳述書(書証〈省略〉)及びE尋問において、原告X2に対して、入社時に乙12の就業規則を読み聞かせて、出向手当は28時間分の残業代であることを説明した上、サインリストに原告X2の署名押印を得た、つまり前記(3)の①の場合に当たる旨を供述する。
しかしながら、サインリストにおける署名押印の位置や署名押印用の欄の体裁(上の欄から各従業員が署名押印していったものと認められる。)から見て、原告X2は、原告X1の署名押印以後に署名押印したと認められるところ、前記第2の2前提事実(2)、(3)に加え、証拠〈省略〉及び弁論の全趣旨によれば、原告X2は平成26年9月5日から雇用期間が開始するものとして同月下旬に同月8日付けに遡って雇用契約書(書証〈省略〉)を作成し、原告X1は、同年10月8日に来日して(つまり、その前にサインリストに原告X1が署名押印することは物理的に不可能である。)、同日から雇用期間を開始するものとして同月9日付けで雇用契約書(書証〈省略〉)を作成していることが認められるから、原告X2は、平成26年9月5日の雇用開始から1か月以上、雇用契約書(書証〈省略〉)の作成からでも8日以上、経過した後にサインリストに署名押印したことが推認され、Eの前記供述は採用できない。そのほかに原告X2と被告の労働契約が入社時から乙12の就業規則の内容を含むと認めるに足りる的確な証拠はない。
また、いったん雇用契約書(書証〈省略〉)の内容で労働契約が成立している以上、出向手当を固定残業代とすることは、従前、基本給及び出向手当から構成されていた所定労働時間の賃金を基本給のみに切り下げる労働条件の不利益変更に当たるから、その賃金減額が有効となるためには、原告X2の同意があり、かつ、その同意が原告X2の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在すること(労働契約法8条、最判平成28年2月19日民集70巻2号123頁参照)、又は従前の労働条件を変更する就業規則を労働者に周知し、かつ、その労働条件変更が合理的なものであること(同法10条参照)のいずれかを要するが、乙12の就業規則の内容に加え、不利益変更の内容、その理由等に関する適切な説明や協議がされて、原告X2が労働条件の不利益変更が生じることを正確に理解した上で、署名押印したことを示すなど、合理的な理由の客観的な存在を認めるに足りる的確な証拠はない。サインリストには、「私どもが会社の最新就業規則の内容について、会社の通知と説明を十分に受け、理解した上で了承しました。」との不動文字による記載があるが、これのみでは合理的な理由の客観的な存在を認めるには足りない。むしろ、後記7(1)ウのとおり、Eは、被告が原告X1及び原告X2を雇用する経過において、的確な説明を行ってこなかったことがうかがわれ、乙12の就業規則を示した際のみ的確な説明や協議がされたとは考え難い。労働条件変更の合理性を認めるに足りる主張立証もない。
(5)  なお、Eは、E尋問において、被告の就業規則を営業所に備えおいて、従業員にもそのことを知らせて閲覧に供していたとも供述する。
しかしながら、閲覧に供していた状況を具体的に認めるに足りる的確な証拠はなく、むしろ、前記第2の2前提事実(7)のとおり、被告には、適用開始日が同じなのに内容が異なる甲56、乙1の各就業規則が同時に存在する、本件訴訟で就業規則を適時に書証として提出していないといった就業規則管理上の不備があったことが認められる。乙12の就業規則には原告X1及び原告X2の署名押印があるサインリストが添付されているが、「周知」とは労働者が知ろうと思えばいつでも知ることができるようにしておくことをいうから、閲覧を1回許すのみでは周知とはいえない(労働基準法施行規則52条の2の周知方法でも「常時」という要素を明記している。)。被告の就業規則の存在すら知らなかったという原告X1(書証〈省略〉)及び原告X2(書証〈省略〉)の各陳述書並びに原告X1尋問における供述内容は、サインリストの存在を踏まえても1回限りの閲覧とその際の署名押印のみでは原告X1及び原告X2の記憶に残らないこともありうるから、不自然なものとはいえず、実効的な周知に疑問を抱かせるに足りる証拠というべきである。
したがって、被告が就業規則の内容を労働者がいつでも知ることができるよう周知していたとは認めるに足りない。
(6)  以上によれば、労働契約と就業規則の優劣、労働条件変更の要件、就業規則の周知、いずれの見地からも原告X2と被告との労働契約において、出向手当が固定残業代の性質を有するというに足る労働契約上の根拠があるということはできない。
3  争点(2)ア(イ)(原告X2の割増賃金―所定労働時間の時間数)について
(1)  証拠(書証〈省略〉)及び弁論の全趣旨によれば、原告X2と被告との間で締結された雇用契約書(書証〈省略〉)では、「勤務時間・休憩休暇・精算条件等その他規程は就業規則に従う」という規定(3条)とともに、「出向の場合、勤務時間・休日休暇・精算などの諸事項は現場の規定に従い、待機の場合、就業規則に従う」との規定(5条)も定めていることが認められる。この両者の規定を比較すると、3条では勤務時間、休日等は就業規則に従うべきことを一般的に定めているが、5条では「出向の場合」は、「待機の場合」を除き、就業規則より「現場の規定」を優先しており、5条は、3条の「出向の場合」、すなわち被告の指示で被告の事業場以外の場所において就労する場における特別規定と理解すべきである。このような5条のような規定は、就業規則に定めるべき事項を他者の定める規定に委任することになり、労働条件が現場ごとに変動することになるが、法定労働時間(労働基準法32条)の範囲内であれば所定労働時間の設定は労使の自治に委ねられており、変形労働時間制の規制(同法32条の2等)も法定労働時間内の所定労働時間を変形させることを制限するものではなく、現場での作業での便宜にも適い、不合理で労働者に著しい不利益を与えるともにわかにはいえないから、特段の事情がない限り、私法上の効力が否定されるものではないというべきである。
(2)  前記(1)の認定判断によれば、被告の就業規則における定め(5条)にかかわらず、b社での規定に従った所定の休日、労働日及び労働時間を前提として、割増賃金を計算すべきである。弁論の全趣旨によれば、b社での規定に従った月平均所定労働時間は、前記第2の4(3)アのとおり、月平均所定労働時間は約161.33時間となることが認められる。この月平均所定労働時間161.33時間で毎月の基本給15万5000円と出向手当3万5000円の合計19万円を除して、割増賃金の算定に用いるべき時間単価は1178円(1円未満四捨五入)となる(労働基準法施行規則19条1項4号)。
この時間単価を用いて、別紙1―1〈省略〉「勤務時間・賃金計算票(原告X2)」記載の労働時間(前記第2の2前提事実(3)イ)につき、割増賃金を計算すると、割増賃金の金額は別紙1―1〈省略〉「勤務時間・賃金計算票(原告X2)」及び別紙1―2〈省略〉「未払賃金集計表(原告X2)」のとおり、金8万2460円となると認められる。
(3)  これまでの認定判断に照らせば、原告X2の割増賃金につき、被告がその全部又は一部の存否を争うことに「合理的な理由」又はこれに準じる理由が存したとは認められないから、賃確法所定利率の適用も免れないというべきである。
4  争点(2)イ(原告X2の交通費)について
(1)  前記第2の2前提事実(1)、(3)に加え、証拠(書証〈省略〉)及び弁論の全趣旨によれば、①原告X2は、被告の関連会社であるa社との間で原告X2の就労に伴う交通費が賃金に含まれている旨の記載(「交通費・賞与込み」)のある雇用契約書案(書証〈省略〉)を示された上で、来日したこと、②原告X2の雇用主がa社から被告に変更される際、交通費の負担者が変更されることは話題に上らなかったこと、③原告X2と被告との間の雇用契約書(書証〈省略〉)では、交通費は「賃金待遇」の中で「就業規則に従い、精算とする」とされ(3条)、出向中で待機した場合、就業規則に基づく一定額の交通費を支給することが定められていること(5条)、④原告X2と被告との間の労働契約では、原告X2は被告が指定する事業場に赴いて就労することが予定されていたこと、⑤上記③の雇用契約書には、原告X2と被告との間で交通費を貸借の対象とすることをうかがわせる規定は存しないこと、⑥原告X2には、b社での平成27年11月、12月の就労に基づいて、翌月末に1か月の鉄道定期券代に相当する3万1700円が賃金とともに支給されており、給与明細(書証〈省略〉)にも貸付けであることをうかがわせるような記載もなく、もとより金銭消費貸借契約書、借用書も存しないこと、⑦原告X2は、平成27年1月、自宅から就労場所(b社)までの往復に要する1か月の鉄道定期券(甲27(書証〈省略〉)はその写真)を代金3万1700円で購入したことが認められる。
これらの事実に加え、一般に「精算」とは「計算して過不足などを処理すること」をいい、貸借の意味を含まず、「費用の精算」などという場合には「費用の金額を確認し、過不足を調整して支給する」という意味合いで用いられることが通常であることにも照らせば、原告X2と被告との間の労働契約では毎月、1か月の鉄道定期券代を上回らない限度で原告が就労のために負担した交通費の実費を被告が支給することが合意されていたと推認され、原告X2は、その合意に基づき交通費として前記⑥の金3万1700円の償還を求めることができるというべきである。また、交通費は労働契約の中で賃金の一部として支給基準が定められていると認められるから、賃金に当たるというべきである。
(2)  被告提出の乙1の就業規則には、交通費は従業員が負担すること、一定の条件のもと被告が実費を上限として交通費を貸し付けること、被告が貸し付けた交通費は、従業員が雇用契約書、覚書、誓約書、就業規則等の規定を順守すれば返還を免除するが違反した場合、全額を被告に返還すべきことの定めがある。
しかしながら、前記2(5)の認定判断に照らせば、乙1の就業規定が周知されていたものとは認めるに足りない。また、甲56、乙12の各就業規則では交通費は「精算」するものと定められており、仮に被告が就業規則を周知していても交通費は「精算」するものとして周知されていた可能性をにわかに排除できない。
仮に乙1の就業規則が周知されていても、前記2(3)のとおり、労働契約で就業規則と異なる労働条件が合意されている部分は、就業規則の最低基準効(同法12条)に抵触しない限り、労働契約が優先するところ(同法7条但書)、前記(1)で認定判断したとおり、原告X2と被告との労働契約では、交通費は「精算」して支給するものと定められているから、労働契約における定めが優先するというべきである。
(3)  また、労働基準法16条は、労働契約の不履行につき違約金を定め、又は損害賠償を予定する契約をすることを禁じる賠償予定の禁止を定めているところ、使用者が労働者に一定の金銭を貸し付け、一定期間勤続したときにその返還を免除する約定は、形式的な規定の仕方のみならず、貸し付けられる金銭の使途、貸付けを必要とする事情(特に使用者の業務命令を遂行するための費用としての性質、労働者の自主的な取り組みを支援する目的の有無)、労働者が貸付けを受け、予定された使途に用いることによる利益、貸付けを受けることの任意性、上記約定に関する使用者の目的などの事情を総合して、同条の賠償予定禁止に違反するか否か、判断することが相当である。
そして、証拠(書証〈省略〉)及び弁論の全趣旨によれば、①被告の乙1の就業規則における交通費貸付けの定めは、被告が従業員に指示し、また、随時変更されることもある就業場所と自宅との間を往復する交通費に関するもので、その交通費の支出は被告の業務命令を遂行するための費用としての性質が強いこと、②労働者の自主的な取り組みを支援する要素はないこと、③留学・研修費用のように貸付けを受けることで労働者に能力向上や資格取得、キャリア形成といった利益が残るわけではないこと、④被告は従業員の在職を確保するため、交通費を貸し付ける形式をとろうとしたこと、⑤従業員が雇用期間満了前に退職しても、それまで業務に従事している以上、それまでの交通費が被告にとって無益な費用に転じるわけではなく、従業員に負担させるべき理由に乏しいこと、⑥貸し付けた交通費は「従業員が雇用契約書・覚書・誓約書・就業規則などの規則を順守することを前提に返還を免除するが、違反した場合、全額を会社に返還しなければならない」とされており、文理解釈では期間の限定もなく、「違反」となる事由も広範・不特定であることが認められる。被告が原告X2ら従業員から個別に希望を聴取して交通費の貸付けを実施していたことをうかがわせる証拠もない。
これらの認定判断に照らせば、被告の就業規則における交通費貸付けの定めは、実質的には労働契約の不履行につき、支給済みの交通費と同額の違約金を定めるものにほかならず、交通費が必ずしも多額にならないことを考慮しても、労働者の足止めや身分的従属の創出を助長するおそれは否定できず、労働基準法16条の賠償予定の禁止に違反し、その効力は認められないというべきである。
被告の就業規則における交通費貸付けは、労働することが条件となっているとも認められるから、労働基準法17条の前借金相殺の禁止にも反すると解される。
被告は、労務提供のための交通費は、民法485条の「弁済の費用」に当たるから労働者に負担させることは差し支えないと主張するが、問題は、いったん支給した金員につき労働義務の違反を理由に同額を返還させる約定を設けること、労働を条件とした貸金と賃金を相殺することの適否であるから、民法485条の定めは、前記判断を覆すものとはいえない。
(4)  以上によれば、被告は、原告X2に対し、賃金の一部たる交通費として金3万1700円を支払うべきである。被告主張の就業規則における交通費貸付けの定めに基づく主張は、就業規則の周知、労働契約との優劣、労働基準法との関係、いずれの見地からも採用できない。
(5)  これまでの認定判断に照らせば、原告X2の賃金たる交通費につき、被告がその全部又は一部の存否を争うことに「合理的な理由」又はこれに準じる理由が存したとは認められないから、賃確法所定利率の適用も免れないというべきである。
5  争点(2)ウ(原告X2の賃金と立替金との相殺)について
(1)  前記1(1)の認定判断のとおり、被告は、原告X2の請求に対する抗弁として、係属中の別件訴訟において訴訟物となっている債権を自働債権とする相殺の抗弁を主張していると認められ、このような相殺の抗弁の主張は、民事訴訟法142条の二重起訴の禁止の趣旨に抵触するものとして許されないものと解される。
(2)  実体的にも、被告が入国費用等を立て替えた事実、立て替えた具体的な金額、その使途、被告の立替金と原告X2の賃金を相殺する原告X2の真意に基づく合意の事実を認めるに足りる証拠はない。むしろ、原告X2の陳述書(書証〈省略〉)によれば、来日に要した中国での査証取得手続及び航空券の費用は原告X2が負担し、被告もa社も立て替えていないことが認められる。
(3)  以上によれば、原告X2の請求に対する入国費用等の立替金との相殺の主張は採用できない。
(4)  相殺の自働債権となる立替金の具体的な金額や使途の立証が全くされていない以上、相殺の主張に相応の事実的根拠又は証拠の裏付けがあったとは認められないから、賃確法所定利率の適用を免れる「合理的な理由」又はこれに準じる理由が存したともいえない。
6  争点(2)エ(原告X2の割増賃金に係る付加金)について
(1)  労働基準法114条の付加金は、使用者の労働基準法違反による割増賃金等の未払につき、労働基準法違反の程度、態様、労働者の受けた不利益の性質、内容等の諸般の事情を考慮した裁判所の裁量的判断で支払の要否や金額を定めるべきである。
(2)  前記2ないし5の認定判断に加え、証拠(書証〈省略〉)及び弁論の全趣旨によれば、原告X2と被告との間の割増賃金支払義務の有無、金額に関する争いは、出向手当の性質、就業規則の周知、雇用契約書(書証〈省略〉)の解釈等に関するものであり、被告が労働契約締結の際、労働条件を明確にする措置を怠ったことに原因があると認められるが、他方、原告X2の時間外労働の事実のみならず、出向手当とは別の割増賃金支払義務を明確に認識しながら、その履行を殊更に怠っていたとまでは認められない。
以上の事情を考慮すると、割増賃金8万2460円の概ね半額に相当する金4万円の限度で付加金の支払を命じることが相当である。
7  争点(3)ア(a社と被告との間の法人格否認)について
(1)  後記各項掲記の証拠等によれば、次の事実を認めることができる。
ア 被告及びa社の事業、役員、株主等の状況
(ア) 被告及びa社はともにIT人材派遣その他の情報技術に関する事業を目的とする会社であり、被告及びa社がその従業員を就労させる関係先には、ともにc損害保険会社が含まれていた(書証〈省略〉、前記第2の2前提事実(1)ア、イ、弁論の全趣旨)。
(イ) Eは、被告の代表者であるとともに唯一の実質的な株主である。Eの妻であるGは、被告の「専務取締役総務部長」を称するとともに、a社の代表者(解散前は代表取締役、解散後は代表清算人)かつ唯一の株主であった。Eは、a社の「取締役・CEO」を称していた。被告とa社はともにHを相談役に就任させていた(証拠〈省略〉、前記第2の2前提事実(1)ア、イ)。
(ウ) a社は、解散前、平成22年3月7日までは千葉市○区××に、同日からは同区××に本店を置いていたが、いずれの場所も代表取締役であるG及びEの住居を兼ねていた。a社は、平成25年11月、本店としての機能の移転先とすることを予定して東京営業所を設置したが、その場所は、同月、会社として設立された被告の本店と同一であり(東京都○区××)、電話番号〈省略〉も同一であった(書証〈省略〉)。
(エ) a社と被告は、ロゴマークを共用し、両者との間には売買の取引関係があった(書証〈省略〉、弁論の全趣旨)。
(オ) 被告は、遅くとも平成27年4月9日まで、そのウェブサイトにa社の組織図を掲載していた(書証〈省略〉)。
イ a社及び被告のIT技術者雇用方法
a社及び被告は、ともに①中国のIT技術者を勧誘して、書面及び電話審査で採用を内定した上で来日させ、日本国内で就労させる、②労働契約締結の際、事実上の担保として卒業証書及び学位証書(いずれも再発行を受けられない上、中国では卒業証明書及び学位証明書による代替が著しく困難なものである。)を預かるといった雇用方法を多用していた。原告X1、原告X2の雇用は、上記①、②に(なお、原告X3及び原告X4は、a社と接触する以前から日本に滞在していた。)、原告X3の雇用は上記②にそれぞれ該当している。Eは、上記①の方法を用いるに際し、来日に必要な在留資格認定証明書交付申請手続を行う雇用主となるべき会社と実際に雇用する会社は異なっても差支えないという考えを有していた(証拠〈省略〉、弁論の全趣旨)。
ウ a社の解散並びに原告X1及び原告X2の雇用の経過
(ア) Gは、平成26年4月ころからa社を解散し、清算する準備を始めた(証拠〈省略〉)。
(イ) 原告X2は、まだ中国にいた平成26年6月ころから、Eを介して、a社との間で雇用契約締結を協議し、a社との間の雇用契約書案(書証〈省略〉)の送付を受けるなどして、a社との間の雇用契約締結の準備を進めていた。前記(ア)のとおり、a社は、既に解散・清算の準備を開始していたが、原告X2は全くそのことを知らされなかった(書証〈省略〉、弁論の全趣旨)。
(ウ) 原告X1は、日本でITエンジニアとして就労することを希望し、求人サイトに登録していたところ、a社から雇用の申込みを受けた。Eは、平成26年7月、原告X1に対し、「a社の取締役」と名乗って、原告X1とa社との間の原告X1がa社指定の「IT開発業務」を担当する旨の雇用契約書案(書証〈省略〉)を送付し、「原告X1の確認を得られ、特に問題がなければ、次は中国から日本に入国するためのビザの申請及び入社手続の案内を送る」旨を連絡した。さらにビザ申請の必要書類として、雇用契約書等をa社に充てて郵送するよう連絡した。原告X1は、これに応じて、a社に入社するため、雇用契約書、入社誓約書等ともに、原告X1の職業を「ITエンジニア」として、Gを「雇主」として申請代理人とする旨の入局管理局に対する在留資格認定証明書(出入国管理及び難民認定法7条の2参照)の交付申請書(書証〈省略〉)を送付し、a社は、これを用いて在留資格認定証明書を取得した。前記(ア)のとおり、a社は、既に解散・清算の準備を開始していたが、原告X1は全くそのことを知らされなかった(証拠〈省略〉)。
(エ) a社は、平成26年8月31日開催の株主総会で解散を決議し、同年10月1日、解散の登記をした(書証〈省略〉)。
(オ) 原告X2は、平成26年9月5日ころ、来日し、a社の業務内容や労働条件の説明を受けたが、同月下旬、G及びEから、a社の解散は知らされないまま、「a社は旅行会社に転換したい。IT派遣専門会社である被告に移ってほしい」という旨の理由で、被告との間での労働契約締結を求められ、不審を感じながらも、被告との労働契約締結を拒めば、来日しながら就労できないことになりかねないため、被告との間で遡って同月8日付け雇用契約書(書証〈省略〉)を作成した(書証〈省略〉、弁論の全趣旨)。
(カ) 原告X1は、平成26年9月、a社から送付されてきた在留資格認定証明書を用いて、中国で査証を取得した。原告X1は、同年10月8日、a社での就労のため、来日したが、間もなくEから「a社は旅行会社なので、a社の全社員はIT専門会社である被告に転籍する必要がある」旨の説明を受け、不可解に感じながらも、被告との労働契約締結を拒めば、来日しながら就労できないことになりかねず、Eから契約内容は変わらないとの説明も受けたため、同月9日付けで被告との雇用契約書(書証〈省略〉)を作成した。a社の解散は知らされなかった(証拠〈省略〉)。
(キ) 被告は、a社の解散・清算に伴い、a社の事業の一部を引き継ぎ、a社から被告に約10名の従業員が転籍した(証拠〈省略〉、弁論の全趣旨)。
エ a社の原告X3及び原告X4への対応等
原告X3は、a社と雇用契約を締結したが、平成26年6月以降の時期に被告から乙12の就業規則を示されて、添付のサインリストに署名押印した。a社は同年8月31日株主総会で解散が決議されたが、原告X3は、解散決議を知らされないまま、同年9月までa社の業務に従事した。a社は、原告X3の同年7月分の賃金の一部及び同月8月分、9月分の賃金全部並びに原告X4の同年5月分の賃金の一部及び同年6月分の賃金全部を支払わず、a社の解散・清算及び未払賃金の処理につき原告X3に説明すら行わないまま、商業登記記録に同年11月10日をもって清算が結了した旨を登記した。総勘定元帳でも原告X3の平成26年4月分及び同年6月分から9月分までの各賃金並びに原告X4の同年5月分の一部及び同年6月分全部の賃金を計上しなかった(何らかの事情で賃金支払ができなかったときでも「未払費用」「未払金」「預り金」等として計上されるべきだが、そのような計上もされていない。)。原告X3の同年4月分の賃金及び同年7月分の賃金の一部は実際には支払われたが、その資金の出所は不明である(前記第2の2前提事実(4)イ、(5)エ、証拠〈省略〉、弁論の全趣旨。なお、被告は、原告X3及び原告X4は、a社の清算を知りながら清算手続の全過程を通じ、未払賃金の請求を一切しなかったと主張するが、原告X3及び原告X4が就労済みの基本給を含む賃金の支払請求をたやすく放棄するとは考え難いし、原告X3又は原告X4からa社に対し賃金支払の請求を放棄する意思を合理的にうかがわせるような具体的な言動があったことを認めるに足りる証拠はない。)。
オ 被告の本件訴訟における主張内容等
(ア) 被告は、本件訴訟において、原告X1及び原告X2の請求に対する相殺の抗弁として、前記ウ(イ)、(ウ)、(オ)、(カ)の原告X1及び原告X2の来日に関する費用等の立替金(ただし、その具体的な金額、使途の立証はない。)を主張している(前記第2の4(1)、(5)参照)。原告X1の「入社誓約書(兼覚書)」(書証〈省略〉)にも被告が原告X1のため「来日の諸費用」を立て替えた旨の記載がある。しかしながら、原告X2及び原告X1はいずれもa社と協議の上、a社で就労するために来日した者であるから、a社が来日費用等を立て替えることが自然であるが、被告からa社の立替金償還請求権が被告に承継される原因(債権譲渡等)又は被告がa社に代わってa社に雇用される予定の者の来日費用等を立て替える特別の事情の主張立証はされていない。また、被告は、原告X1及び原告X2が被告で在職するため来日したことを前提とした反論をしている(書証〈省略〉)。
(イ) 被告は、原告X4の残業代請求に対する反論において、何の断りもなく、被告の甲56の就業規則に基づく主張をした(書証〈省略〉)。
(2)  前記(1)の認定事実を総合すれば、a社と被告は、事業内容、主要な役職員、主要な営業所、ロゴマーク、ウェブサイト等が共通し、それぞれの株主にも密接な関連(夫婦関係)があり、a社の解散後は、事業の一部及び従業員が被告に承継された上、a社は平成26年4月ころから解散の準備を始めた後も解散の予定を説明することなく、原告X1及び原告X2の雇用又はその準備を進め、被告は、a社の活動を引き継いで、原告X1及び原告X2を雇用し、あたかも当初から被告自身が原告X1や原告X2を雇用しようとしていたかのような認識をうかがわせる言動又は主張をしており、原告X3及び原告X4に関しても自己と雇用関係があることを前提とするような言動又は主張を示して、a社と被告のそれぞれの雇用及びその準備を密接な関連性のあるものとして扱っていたと認められるから、a社と被告は、少なくともIT技術者の雇用に関する限り、その事業運営は一体化し、a社はあたかも被告の一事業部門であるかのような実態を呈し、両者の法人格は便宜的に使い分けられるだけの形骸化したものになっていたというべきである。その上、a社は、原告X3及び原告X4との間の賃金の清算を済ませることなく清算結了登記をしたこと、原告X3を解散決議の後も清算中であることを知らせることなく平成26年9月まで就労させていたことにも照らすと、a社及び被告は、a社の解散・清算をもって原告X3及び原告X4に対する賃金債務を免れようとしていると推認されるから、被告がIT技術者の雇用に係る法的責任に関しa社との間の形式的な法人格の区別を主張することは形骸化した法人格の濫用というべきであって、法人格否認の法理に基づき、被告は、IT技術者の雇用に係るa社の法的責任を免れないというべきである。
(3)  証拠〈省略〉及び弁論の全趣旨によれば、被告とa社はそれぞれ別個に経理処理を行っていたこと、a社は語学教室運営事業を行っていたこと、a社の解散にはGの健康上の問題も影響していたことは認められるが、これらの事情を総合しても、前記(2)の認定判断を覆すには足りない。
(4)  なお、G(書証〈省略〉)及びE(書証〈省略〉)の各陳述書には、平成26年の春から8月ころにかけ、a社の解散に伴い、従業員の雇用確保のため、被告に転籍する意向を確かめる面談を実施したが、原告X3は面談で同年7月予定の在留資格更新の関係でa社に居続けることを希望して、転籍を断ったとの記載がある。
しかしながら、そのような経過を裏付ける客観的な証拠はない上、①a社は解散の方針を定めた後も、そのことを説明しないまま、原告X1及び原告X2を来日させていたこと(前記(1)ウ(イ)、(ウ)、(オ)、(カ))、②原告X3は同年9月まで就労しているのに同年6月以降、大部分の賃金の支払及び総勘定元帳計上を怠っていること(前記第2の2前提事実(4)イ、前記(1)エ)、③原告X3が在留資格更新予定とされる同年7月以降も転籍の見込みのないまま、解散が予定されるa社に残ることを希望することは不自然であり、解散・清算に伴う原告X3の賃金債権の取扱いにつき何らかの説明・協議がされた様子もないこと、④Gは自分の面談で原告X3が転籍を断った旨を供述する一方(書証〈省略〉)、EはGの聴き取りを経た上で、Eが転籍希望者の面談を行い、面談で原告X3からいったんは乙12の就業規則を了解した旨のサインリストの署名押印を得た旨を供述しており(証拠〈省略〉)、両者の供述には不整合な点があることに照らすと、原告X3が面談で転籍を断ったとの記載は採用できない。
8  争点(3)イ(ア)(原告X4の残業代の計算―「固定残業」及び出向手当の性質)について
(1)  平成25年11月分、12月分の残業代について
ア 前記第2の2前提事実(5)ア、イによれば、平成25年11月、12月分の残業代には、同年9月30日付けで雇用契約書(書証〈省略〉)で定められた賃金が適用されるところ、同契約書では交通費を除く毎月の賃金を基本給14万円及び固定残業2万円と定めており、この「固定残業」は残業に対する対価であることを示す名称であり、基本給とは金額で明確に区分されて、残業代に当たる金額を特定できるから、固定残業2万円は、いわゆる固定残業代であり、残業代計算の割増賃金からは除かれ、かつ、残業代の既払金として扱われるべきものというべきである。
原告X4は、固定残業代は、支給時に時間外労働の時間数及び残業代の金額を明示し、かつ、固定残業代を超える残業があった時は、別途、固定残業代では足りない分の残業代を支給することも予め明らかにされていなければならないと主張するが、時間数を示さず、固定残業代の金額を示すことでも特段の事情がない限り固定残業代によらない労働契約、労働基準法37条等に基づく通常の計算方法による残業代の金額と比較することは可能であり、固定残業代では不足があるときには法定の計算方法による割増賃金との差額を支給すべきことには労働契約上の特別な定めを要しないことにかんがみると、時間数の明示や差額支給の定めは要しないと解する。
イ 証拠(書証〈省略〉)及び弁論の全趣旨によれば、a社は、原告X4に対し、平成25年11月分、12月分の賃金として、基本給13万円、「出向手当(固定残業代)」3万円と内訳を給与明細(書証〈省略〉)に記載して支給していることは認められるが、給与明細の記載は同年9月30日付け雇用契約書(書証〈省略〉)作成後のa社による一方的なものに過ぎない。上記雇用契約書(書証〈省略〉)に基づく基本給14万円、固定残業2万円との賃金を変更する旨の原告X4とa社との間の合意が存し、かつ、基本給の減額を伴う同意が原告X4の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在すると認めるに足りる的確な証拠はない。
ウ 以上によれば、原告X2の平成25年11月分、12月分の残業代の計算では、同年9月30日付け雇用契約書(書証〈省略〉)に従って、基本給14万円を基礎賃金とし、固定残業2万円は基礎賃金から除外し、かつ、残業代の既払金として扱うべきである。
(2)  平成26年2月分以降の残業代について
ア 平成26年2月分以降の残業代には、原告X4覚書(書証〈省略〉)又は同年3月8日付け雇用契約書(書証〈省略〉)で定められた賃金が適用されるところ(前記第2の2前提事実(5)イ、ウ)、「固定残業」又はこれに類する賃金の定めは存しない。「各種手当」及び出向手当の定めはあるが、「各種手当」の種類又は金額は定められておらず、出向手当はその名称が示されているだけでは残業に対する対価に当たるということはできない。これらの手当が残業代としての性質を有することを定める契約や合意は見当たらず、a社の就業規則に関する主張立証もない。
イ 証拠(書証〈省略〉)及び弁論の全趣旨によれば、a社は、原告X4に対して、平成26年2月分、3月分の賃金につき給与明細(書証〈省略〉)で出向手当を「出向手当(固定残業代+交通費)」と表記して支給していたことは認められるが、給与明細はa社が一方的に作成するものに過ぎず、その記載内容が原告X4との合意内容を示すとは推認するには足りないから、前記アの認定判断を覆して、出向手当が残業代であることに労働契約上の根拠があるとは認めるに足りない。また、出向手当10万円には交通費が含まれており、その交通費の金額が別途明確に示されていたことを認めるに足りる証拠はないから、結局、出向手当として支給されている固定残業代の金額は不明というほかはなく、残業代がその他の賃金と明確に区分されて支給されているとはいえない。また、交通費の存在、金額は明らかでないから、通勤手当に相当する賃金として除外賃金(労働基準法37条5項)に当たる分があるということもできない。
証拠(書証〈省略〉)及び弁論の全趣旨によれば、a社は、原告X4に対し、平成26年4月分の賃金として、基本給24万円、「出向手当(固定残業代)」6万円と内訳を給与明細(書証〈省略〉)に記載して支給していることは認められるが、給与明細の記載は同年3月8日付け雇用契約書(書証〈省略〉)を作成した後のa社による一方的なものに過ぎないから、この記載をもって、a社と原告X4との間で出向手当が固定残業代の性質を有することが合意されたとは認めることはできない。
ウ 以上によれば、平成26年2月分以降の残業代には、原告X4覚書(書証〈省略〉)又は同年3月8日付け雇用契約書(書証〈省略〉)に従って、交通費、各種手当込みの賃金又は基本給24万円と出向手当6万円の合計額として基礎賃金を月30万円として算定することが相当である。
9  争点(3)イ(イ)(原告X4の残業代―所定労働時間の時間数)について
(1)  前記第2の(5)アないしウによれば、平成25年9月30日付け(書証〈省略〉)、平成26年3月8日付け(書証〈省略〉)の各雇用契約書では、原告X4の勤務時間は、「出向」の場合「現場の規定に従う」旨が定められており、その趣旨は、原告X2に係る同趣旨の規定と同様に(前記3(1))、a社の指示でa社の事業場以外の場所において就労する場合における特別規定で、a社の就業規則の定め(もっとも、a社の就業規則の内容に関する主張立証はない。)に優先すると解され、「現場」での規定に従って所定労働時間の時間数を定めるべきである。
(2)  弁論の全趣旨によれば、原告X4が就労した「現場」となった○○及び△△での規定に基づいて、前記第2の4(9)アのとおり、月平均所定労働時間は、平成25年11月1日から同年12月15日までは162.67時間、同月16日から同月31日までは157.58時間、平成26年2月から6月までは156.29時間となることが認められる。
10  争点(3)イ(ウ)(原告X4の残業代―実労働時間)について
(1)  原告X4の平成25年11月1日から平成26年3月31日までの労働時間は、別紙2―1〈省略〉「勤務時間・賃金計算票(原告X4)」の①ないし⑤記載のとおりであったことには争いがない(前記第2の4(10)イ)。
証拠(書証〈省略〉)及び弁論の全趣旨によれば、原告X4の平成26年4月1日から6月30日までの労働時間は、別紙2―1〈省略〉「勤務時間・賃金計算票(原告X4)」の⑥ないし⑧記載のとおりであったと認められ、これを覆すに足りる証拠はない。
(2)  前記(1)の労働時間の認定に加え、前記8で認定判断した基礎賃金及び前記9で認定判断した月平均所定労働時間を用いて、原告X4の残業代を算定するためには、別紙2―1〈省略〉「勤務時間・賃金計算票(原告X4)」の①ないし⑧及び別紙2―2〈省略〉「未払賃金・遅延損害金等集計表(原告X4)」に、平成25年11月分、12月分につき、基礎賃金から固定残業2万円を除いて算定した時間単価を用い、かつ、固定残業2万円を既払金として控除する修正を加えればよい。
すなわち、別紙2―2〈省略〉「未払賃金・遅延損害金等集計表(原告X4)」の平成25年12月分の残業代(行番号2、3)は金2万円に満たないから、時間単価を修正するまでもなく、固定残業2万円を既払金とすることで、同月分の残業代に未払はないことになる(なお、「固定残業」とは、実労働時間に基づいて算定した残業代が金2万円を下回っても減額調整しない趣旨のものと考えられるから、固定残業2万円が他の月の残業代に充当されることはない。)。
平成25年11月分は、基本給14万円及び固定残業2万円を基礎賃金として月平均所定労働時間162.67時間で除して算定した時間単価984円(前記第2の4(9)ア(ア))に基づいて計算しているから、まず時間単価から固定残業の分を除くため、金4万4895円に16分の14を乗じるべきであるが、時間単価984円に16分の14を乗じると金861円となって、原告X4の就業場所である○○が所在する東京都内の当裁判所に顕著な平成25年11月当時の最低賃金869円を下回ってしまうから、時間単価には金869円を用いることとする。そこで、時間単価を修正するため、別紙2―2〈省略〉「未払賃金・遅延損害金等集計表(原告X4)」の平成25年11月分の残業代4万4895円(行番号1)に984分の869を乗じた上、既払金として固定残業2万円を控除し、修正後の残業代は、金1万9648円となる。
984÷16×14=861
44,895÷984×869-20,000
=39648.125-20,000
=19,648.125≒19.648
(3)  なお、基本給14万円を平成25年11月の所定労働時間159時間30分(別紙2―1〈省略〉「労働時間・賃金計算票(原告X4)」①記載の実働時間196時間から法内超勤0時間及び法定時間外労働36時間30分を控除して算出される。)で除すれば、時間単価は金877円となるから、同年11月分の基本給14万円は最低賃金(1時間869円)を上回る金額であり、基本給14万円を月平均所定労働時間で除した時間単価が最低賃金に満たなくとも通常の労働時間の賃金に不足が生じたり、固定残業の無効原因になったりすることはない。同年12月1日から15日までの分も基本給14万円の出勤日数(別紙2―1〈省略〉「労働時間・賃金計算票(原告X4)」②、③参照)による日割を所定労働時間80時間(別紙2―1〈省略〉「労働時間・賃金計算票(原告X4)」②の実働時間87時間45分から法内超勤0時間及び法定外労働時間7時間45分を控除して算出される。)を除して時間単価は金921円となるから同様である。
196-(0+36.5)=159.5
140,000÷159.5=877.7…≒877
87:45-(0:00+7:45)=80:00
140,000÷(10+9)×10÷80
=921.0…≒921
(4)  以上によれば、原告X4の未払残業代(月末締め、翌月末日払い)は、平成25年11月分は金1万9648円、同年12月分は0円、平成26年2月分は金2万7800円、3月分は金3万8920円、4月分は金5万5016円、5月分は金2万2448円、6月分は金3万7312円、合計20万1144円となる。これらに対する平成26年6月末日までの商事法定利率6パーセントの割合による遅延損害金は、別紙3〈省略〉「原告X4残業代遅延損害金計算表」のとおり、金1660円である。
なお、原告X4とa社との間の平成26年3月8日付け雇用契約書(書証〈省略〉)には賃金の締日と支払日の記載がないが、それまでの原告X4とa社との間の賃金支払に関する合意内容(前記第2の2前提事実(5)ア、イ)に照らせば、それまでと同様、月末締め翌月末日払いとする口頭の合意があったと推認される。
(5)  これまでの認定判断に照らせば、原告X4の未払賃金に係る請求は、その一部に被告が存否を争う「合理的な理由」があったといえるから、賃確法所定利率の適用は本判決確定の日の翌日からに限定すべきである。
11  争点(3)ウ(原告X4の残業代に係る付加金)について
前記7ないし10の認定判断に加え、証拠(書証〈省略〉)及び弁論の全趣旨によれば、原告X4と被告との間の残業代支払義務の有無、金額に関する争いは、法人格否認、労働契約の内容の認定等に関するものであり、a社及び被告が労働契約関係の当事者や労働条件を明確にする措置を怠ったことに原因があると認められるが、他方、原告X4の時間外労働の事実のみならず、固定残業や出向手当とは別の残業代支払義務を明確に認識しながら、その履行を殊更に怠っていたとまでは認められない。
以上の事情を考慮すると、付加金は、残業代20万1144円から付加金の対象とならない法内超勤の分を除いた金額(割増賃金の金額)のうち金8万円と定めることが相当である。
12  結論
(1)  以上によれば、原告X1及び原告X3の各請求には全部理由がある。
原告X2の請求は、基本給、出向手当、交通費及び割増賃金並びにこれらの遅延損害金に係る請求(前記第1の2、第2の1(2))には全部理由があり、付加金に係る請求は金4万円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。
(2)  原告X4の請求は、次の限度で理由がある。
ア 平成26年5月分の基本給及び出向手当の未払分27万5979円、同年6月分の基本給及び出向手当の計30万円、交通費5万3480円(同年5月分、6月分それぞれ金2万6740円)及び未払残業代20万1144円(同年5月分までの分16万3832円、同年6月分3万7312円)の合計83万0603円並びに上記未払残業代に対する原告X4の退職日である平成26年6月30日までの商事法定利率年6パーセントの割合による遅延損害金1660円の総合計83万2263円
イ 前記アの平成26年5月分までの基本給及び出向手当の未払分、交通費及び残業代の合計額46万6551円に対する退職日の翌日である平成26年7月1日から本判決確定の日までは商事法定利率年6パーセント、本判決確定の日の翌日から支払済みまでは賃確法所定利率年14.6パーセントの割合による遅延損害金
ウ 前記アの平成26年6月分の基本給及び出向手当、交通費並びに残業代の合計額36万4052円に対する支払期日の翌日である平成26年8月1日から本判決確定の日までは商事法定利率年6パーセント、本判決確定の日の翌日から支払済みまでは賃確法所定利率年14.6パーセントの割合による遅延損害金
エ 付加金8万円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5パーセントの割合による遅延損害金
(3)  訴訟費用は原告X2及び原告X4の敗訴の程度がわずかであること、敗訴部分の大半は民事訴訟法9条2項の附帯請求に当たる付加金であることなどにかんがみ、民事訴訟法61条、64条ただし書を適用して、被告に全部負担させる。
(4)  よって、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第19部
(若松光晴)

 

(別紙〈省略〉)
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