判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(144)平成26年 4月24日 東京地裁 平25(ワ)11337号 管理費等請求事件(本訴)、損害賠償等反訴請求事件(反訴)
判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(144)平成26年 4月24日 東京地裁 平25(ワ)11337号 管理費等請求事件(本訴)、損害賠償等反訴請求事件(反訴
裁判年月日 平成26年 4月24日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平25(ワ)11337号・平25(ワ)24996号
事件名 管理費等請求事件(本訴)、損害賠償等反訴請求事件(反訴)
裁判結果 本訴認容、反訴請求棄却 文献番号 2014WLJPCA04248008
要旨
◆本件マンションの管理組合である原告が、本件マンションの702号室(本件物件)の所有者である被告に対し、未払管理費、修繕積立金、水道光熱費及びこれらに対する遅延損害金並びに弁護士費用の支払を求めた(本訴)ところ、被告が、原告に対し、原告が書証として提出した管理規約等は、提出される時点以前まで被告には効力を有しないことの確認を求めるとともに、原告によって本件物件の使用を妨げられたことに係る損害賠償を求めた(反訴)事案において、管理規約等は本件物件を取得した時点で当然に被告にもその効力が及ぶものであり、また、原告において、共用玄関のカードキーと本件物件の専有部分の鍵を被告に交付する義務及び共用玄関のカードキー交付のための区分所有者変更届出手続を被告に教示するべき義務はなく、不法行為は認められないなどとして、本訴請求を全部認容し、反訴請求を棄却した事例
参照条文
建物の区分所有等に関する法律46条1項
民法709条
裁判年月日 平成26年 4月24日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平25(ワ)11337号・平25(ワ)24996号
事件名 管理費等請求事件(本訴)、損害賠償等反訴請求事件(反訴)
裁判結果 本訴認容、反訴請求棄却 文献番号 2014WLJPCA04248008
平成25年(ワ)第11337号 管理費等請求事件(以下「本訴」という。)
平成25年(ワ)第24996号 損害賠償等反訴請求事件(以下「反訴」という。)
静岡県熱海市〈以下省略〉
本訴原告(反訴被告) Xマンション管理組合
同代表者理事長 A
同訴訟代理人弁護士 三好徹
同 黒木義隆
東京都中野区〈以下省略〉
本訴被告(反訴原告) 株式会社マンション自主管理支援協議会
同代表者代表取締役 B
主文
1 本訴被告は,本訴原告に対して,金356万7017円及びうち金256万5800円に対する平成25年5月1日から支払済みまで年14.6%の割合による金員を支払え。
2 本訴被告は,本訴原告に対し,80万5053円を支払え。
3 反訴原告の請求をいずれも棄却する。
4 訴訟費用は本訴反訴を通じ本訴被告(反訴原告)の負担とする。
5 この判決の第1項及び第2項は仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 請求
1 本訴
主文第1項及び第2項に同じ
2 反訴
(1) 反訴被告が提出した管理規約,管理料等書証は,本訴提出以前における反訴原告に対しては全て効力を有しないことを確認する。
(2) 反訴被告は,反訴原告に対し,1980万円を支払え。
第2 事案の概要
本件は,熱海市○○町1865番地41,1865番地42に所在するマンション「Xマンション」(以下「本件マンション」という。)について,その各区分所有者により構成される本訴原告(反訴被告)(以下「原告」という。)が,本件マンションの702号室(以下「本件物件」という。)の所有者である本訴被告(反訴原告)(以下「被告」という。)に対し,未払の管理費,修繕積立金,水道光熱費及びこれらに対する遅延損害金並びに弁護士費用の支払を求めたところ(本訴),被告はこれを争うと共に,原告に対し,①原告が提出した甲第2号証ないし第11号証の管理規約等は,提出される時点以前まで被告には効力を有しないことの確認を求めるとともに,②原告によって本件物件の使用を妨げられた結果,11年間余りで1980万円もの売上げが失われたとして,その損害賠償を求めた(反訴)事案である。
1 争いのない事実の他,証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認定できる事実(証拠によって認定した事実には末尾に証拠番号を掲げる。)
(1) 原告は,本件マンションにおける各区分所有者によって構成された管理組合である(甲1ないし11,弁論の全趣旨)。
(2) 平成14年5月2日,被告は,静岡地方裁判所沼津支部による競売手続を通じて本件物件を取得した(甲1)。
(3) 原告における,昭和48年9月10日付け管理規約(甲5)(以下「本件規約1」という。),平成5年12月20日付け管理規約(甲2)(以下「本件規約2」という。),平成6年12月18日付け総会決議(甲4)(以下「本件決議1」という。),平成10年12月19日付け総会決議(甲7,8)(以下「本件決議2」という。),平成22年12月5日付け総会決議(甲11)(以下「本件決議3」という。)及び平成24年12月8日付け総会決議(甲3)(以下「本件決議4」といい,これらをまとめて「本件規約等」という。)によって,①管理費,修繕積立金,特別修繕積立金及び水道利用料(以下,まとめて「管理費等」という。)について,本件物件の区分所有者の負担を下記のとおりとする旨,②その支払日は当月分を前月27日限りとする旨,③支払を怠った場合,年14.6%の割合による遅延損害金が課される旨,及び,④支払を怠った場合,違約金として弁護士費用相当額が課される旨がそれぞれ定められている(甲2ないし11,弁論の全趣旨)。
記
① 管理費 月額2万2700円
② 修繕積立金 月額1万1300円
③ 特別修繕積立金(平成21年4月まで) 月額2万3800円
④ 水道利用料 月額4400円
(4) 被告は,平成20年6月分から平成25年5月分までの管理費等を一切支払っていない(争いがない)。
2 争点
(1) 本訴
(原告の主張)
ア 未払管理費等について
被告は,別紙記載のとおり,平成20年6月分以降の管理費等の支払を怠っており,その未払額は,平成25年4月30日現在,管理費136万2000円,修繕積立金67万8000円,特別修繕積立金26万1800円,水道光熱費26万4000円,滞納分に対する年14.6%の割合による遅延損害金100万1217円となっている。
イ 弁護士費用について
本件決議4によって,組合員が管理費等を納付しない場合には,原告は,弁護士費用を加算して組合員に請求できる旨が定められており,旧日本弁護士連合会報酬基準に基づけば,本件の弁護士費用は着手金が26万8351円,報酬金が53万6702円で,合計80万5053円となる。
(被告の主張)
被告は,本件物件を取得後,原告に対して,本件規約等の交付及び閲覧を請求したが,原告はいずれも拒否した。このため,管理規約の効力は被告には及んでいなかったことになり,管理費等の負担を知る必要はない。
また,被告が,共用玄関ロビーへの入口の鍵や本件物件の専用部分への入口の鍵のコピーを求めたのに,原告はこれを拒否したため,被告は本件物件を使用できない状態が継続している。そのため,被告は,本件マンションの運営に一切の負担を掛けていないのであるから,管理費等の支払義務は発生しない。
(2) 反訴
ア 本件規約等の無効確認について
(被告の主張)
上記のとおり,本件規約等は被告に交付も閲覧もされていないから,被告に対しては効力が及ばないことの確認を求める。
(原告の主張)
争う。
イ 本件物件の使用妨害について
(被告の主張)
(ア) 被告は,本件物件を取得するに当たり,訴外有限会社総合管財サポート(以下「訴外会社」という。)から競落資金の融資を受けており,訴外会社は,本件物件をコンドミニアムとして営業し,その売上げをもって当該貸付金を回収する計画を有していて,月額15万円程度の売上げが見込まれていた。
(イ) しかし,原告が,共用玄関ロビーへの入口の鍵のコピー,本件物件の専有部分への入口の鍵のコピーの交付をいずれも拒否したため,被告は訴外会社に本件物件を使用させることができず,平成14年5月から平成25年9月までの間に,取得が見込まれた売上げとして1980万円分の損害を被った。
第3 当裁判所の判断
1 本訴について
(1) 上記前提事実のとおり,被告が平成20年6月分から平成25年5月分までの管理費等を一切支払っていないことに争いはなく,被告は,別紙のとおり管理費等の支払義務を負う。
更に,本件決議4により,組合員が管理費等を納付しない場合には,違約金として弁護士費用相当額を当該組合員に課す旨が定められているが,当該規定は本件マンションの管理に関する区分所有者間の事項を定めたものとして有効であるから,本件訴訟を代理人弁護士に依頼するに際して負担する弁護士費用相当額を原告は被告に請求できることとなり,その額については,旧日本弁護士連合会報酬基準に基づいて判断するのが相当であるから,下記のとおり,80万5053円とみるのが相当である。
記
着手金相当額+成功報酬相当額=(経済的利益の額×5%+9万円)+(経済的利益の額×10%+18万円)=(356万7017円×5%+9万円)+(356万7017円×10%+18万円)=26万8351円+53万6702円=80万5053円
(2) これに対し,被告は,本件規約等の交付・閲覧を拒絶されたことによって,本件規約等によって定められた管理費等の支払義務を負わないかのような主張をする。
しかし,まず,被告による本件物件の取得以前に既に効力が発生していた本件規約1及び2,本件決議1及び2については,建物の区分所有等に関する法律46条1項が,規約及び集会の決議は,区分所有者の特定承継人に対してもその効力を生ずる旨を定めているので,本件物件を取得した時点で当然に被告にもその効力が及ぶものである。
また,被告による本件物件の取得以後になされた本件決議3及び4についても,有効に成立している以上,被告を含む全区分所有者を拘束するのは当然である。問題になるとすれば,各総会の招集手続上の瑕疵の有無であろうが,各招集通知が被告に到達しているか否かは本件記録上明らかではないものの,証拠(甲3,11)によれば,組合員総数88名中,本件決議3については72名の賛成により,本件決議4については69名の賛成によりそれぞれ承認されたものと認められる以上,仮に,被告への各招集通知に何らかの不備があったとしても,その手続上の瑕疵の存在が決議の結果に影響を及ぼさないことは明らかというべきであり,いずれにせよ本件決議3及び4の無効を主張することはできないものと解すべきである。
(3) また,被告は,本件物件を使用できていない旨主張するが,本件規約等において,管理費等は各区分所有者の区分所有権に基づいて持分に応じて負担する旨明記されており,実際の使用の有無に影響されるものではないから,支払を拒む理由とはなり得ない。
2 反訴について
(1) 本件規約等の無効確認について
前項(2)において判断したとおり,本件規約等は被告にもその効力が及んでおり,被告の請求には理由がない。
(2) 本件物件の使用妨害について
ア 被告は,平成14年9月ころ,共用玄関の鍵と本件物件の専有部分の鍵の交付を求めたのに対し,原告がこれを拒絶したことが,被告による本件物件の使用を妨げる行為であるかのように主張する。
この点,確かに,本件物件を使用するためには,本件マンションの共用玄関に入るためのカードキーと本件物件の専有部分に入室するための鍵がそれぞれ必要となるところではある(弁論の全趣旨)。しかし,たとえ競売手続による競落であろうとも,前所有者からその所有権を承継することに変わりはなくこれら鍵の引渡は本件物件の引渡の一環に他ならないから,被告がこれら鍵の交付を請求すべき相手はあくまで前所有者であって,原告には,管理規約等で特別に定められていない限り,被告へのこれら鍵の交付義務は課されていないというべきである。
本件の場合,本件物件の専有部分の鍵が事実上前所有者から原告に交付されていたようではあるけれども,それはあくまで前所有者と原告との間の関係であって,このことから当然に原告から被告に当該鍵の引渡義務が発生する訳ではないし,実際に被告としては当該鍵がなくとも自ら鍵を付け替えるなどによって対処することは充分に可能であり,原告を通じて交付することが必要不可欠というわけでもない。よって,管理規約等で特別な義務が設けられた事実がない以上,原告が本件物件の専有部分の鍵を被告に交付する義務はないという他ない。
また,共用玄関のカードキーについては,専有部分の鍵とは異なり区分所有者が独断で付け替えることができない以上,もし承継人が前所有者から引渡を受けられない状況となった場合には本件マンションに立ち入れないという問題が生じるが,証拠(甲12)及び弁論の全趣旨によれば,区分所有者が共用玄関のカードキーを紛失した場合には,原告の管理事務所において,区分所有者であることの確認を条件として新たなカードキー交付の申し出を受け付けるという対応を行っており,本件物件のように区分所有者が変更されている場合でもその変更届まで行うことで新たなカードキーが交付されるとの事実が認められる。本件の場合でも,被告はかかる手続を採ることで充分に対応できたはずであるのに,その届出はなされていない。この点,被告は,原告が敢えて当該手続を教示せず,差別的な扱いを行ったかのような主張をするけれども,訴外NPO法人マンション管理総合支援センターの代表理事を務めるC(以下「C」という。)作成の陳述書(乙8)の記載を前提としても,被告による本件物件取得から数か月が経過したころに,被告が原告の管理事務所を訪れて共用玄関の鍵の交付を求めたものの拒絶されたことが記載されているにすぎず,その後は平成23年11月になってCが原告の管理事務所を訪れた事実が記載されているだけで,この機会も含め現在までに被告の側から改めて鍵の交付を求めた様子は一切窺われない。即ち,被告は,たった一度,共用玄関の鍵を交付するよう求めたのみで,その後は10年以上もの間,何らの要求もしないまま放置したと評価せざるを得ず,本来,鍵の引渡義務を負わない原告としては,区分所有者変更届もなされてない段階で,一度だけ共用玄関の鍵を交付するよう求められたというだけでその際に届出を促さなかったとしても直ちに違法とはいえないし,その後改めての要求がなされていない状況下では,敢えて原告の側から手続を教示するべき義務はないものというべきである。
イ このように,原告について,鍵の交付を拒絶したことについても,区分所有者変更届出手続を教示しなかったことについても,いずれも被告に対する不法行為とはなりえず,被告の主張は採用できない。
第4 結論
以上のとおりであるから,原告の本訴請求はいずれも理由があるからこれを認容し,被告の反訴請求はいずれも理由がないから棄却し,訴訟費用について民事訴訟法61条を,仮執行の宣言については同法259条1項を適用して,主文のとおり判決する。
(裁判官 清水克久)
〈以下省略〉
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