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判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(173)平成25年 4月24日 京都地裁 平23(ワ)1068号 損害賠償請求事件

判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(173)平成25年 4月24日 京都地裁 平23(ワ)1068号 損害賠償請求事件

裁判年月日  平成25年 4月24日  裁判所名  京都地裁  裁判区分  判決
事件番号  平23(ワ)1068号
事件名  損害賠償請求事件
文献番号  2013WLJPCA04246004

要旨
【先物取引被害全国研究会(要旨)】
◆1.原告は、昭和53年生まれの男性で、取引開始当時31歳、中古車販売業を営んでおり、投資経験はない。
◆2.原告は海外先物取引を行う適格性を欠いていることが明らかであるとし、長時間留め置くなどという執拗かつ強引な勧誘方法、当たり玉があるなどと利益が確実であるかのような断定的判断の提供が認められるとして、従業員の不法行為責任、会社の使用者責任を認めた。
◆3.被告日本アスターは、被告アスターが業務停止命令により業務ができないにもかかわらず、これを免れるという違法・不当な目的で設立されたものであるとして被告アスターと被告日本アスターの同一性を認め、別の法人格を主張することは権利の濫用に当たるとした。

出典
消費者法ニュース 98号314頁
先物取引裁判例集 68号299頁

裁判年月日  平成25年 4月24日  裁判所名  京都地裁  裁判区分  判決
事件番号  平23(ワ)1068号
事件名  損害賠償請求事件
文献番号  2013WLJPCA04246004

京都府〈以下省略〉
原告 X
同訴訟代理人弁護士 加藤進一郎
福岡市〈以下省略〉
被告 株式会社アスター(以下「被告アスター」という。)
同代表者代表取締役 Y1
住居不明
(就業場所)
福岡市〈以下省略〉
被告 Y1(以下「被告Y1」という。)
福岡市〈以下省略〉
被告 株式会社日本アスター(以下「被告日本アスター」という。)
同代表者代表取締役 Y2
住居不明
(就業場所)
福岡市〈以下省略〉
被告 Y2(以下「被告Y2」という。)
大阪府〈以下省略〉
被告 Y3(以下「被告Y3」という。)
北九州市〈以下省略〉
被告 Y4(以下「被告Y4」という。)
大阪市〈以下省略〉
被告 Y5(以下「被告Y5」という。)
大阪市〈以下省略〉
被告 Y6(以下「被告Y6」という。)
福岡市〈以下省略〉
被告 Y7(以下「被告Y7」という。)
奈良県〈以下省略〉
被告 Y8(以下「被告Y8」という。)
福岡市〈以下省略〉
被告 Y9(以下「被告Y9という。」)

 

 

主文

1  被告アスター,被告日本アスター,被告Y6,被告Y1,被告Y3,被告Y4及び被告Y5は,原告に対し,連帯して,444万4614円及びこれに対する平成22年8月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  被告アスター,被告日本アスター,被告Y6,被告Y2及び被告Y7は,原告に対し,連帯して,4000万6559円及びこれに対する平成22年11月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3  原告の被告アスター,被告日本アスター,被告Y6,被告Y2及び被告Y7に対するその余の請求及び被告Y8及び被告Y9に対する請求をいずれも棄却する。
4  訴訟費用は,原告と被告アスター,被告日本アスター,被告Y6,被告Y2,及び被告Y7との間では,原告に生じた費用の5分の4を前記被告らの,その余の費用を各自の負担とし,原告と被告Y1,被告Y3,被告Y4及び被告Y5との間では,前記被告らの負担とし,原告と被告Y8及び被告Y9との間では,原告の負担とする。
5  この判決は,第1,2項に限り,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
1  主文第1項と同旨。
2  被告アスター,被告日本アスター,被告Y6,被告Y2,被告Y7,被告Y8及び被告Y9は,原告に対し,連帯して,4440万6559円及びこれに対する平成22年11月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
1  事案の要旨
本件は,原告が,被告アスター,次いで,被告日本アスターの各従業員から勧誘されて行った原油の海外先物取引によって損害を被ったと主張して,次の各請求を行う事案である。
(1)  後記アスター取引につき
ア 次の各被告らに対し,各項掲記の請求権等に基づき,連帯して,後記イの金員を支払うよう求める。
(ア)被告アスターに対し,不法行為(民法709条,719条又は同715条)による損害賠償請求権に基づき
(イ)被告日本アスターに対し,法人格否認の法理又は事業譲渡会社の商号を使用した事業譲受会社の責任(会社法22条1項)に基づき,被告アスターと同一の責任を負うとして
(ウ)被告Y1に対し,不法行為(民法709条,719条)又は会社法429条1項に基づき,被告アスターの代表取締役として
(エ)被告Y3,被告Y4,被告Y5及び被告Y6に対し,不法行為(民法709条,719条)による損害賠償請求権に基づき,被告アスターの従業員として
イ 444万4614円及びこれに対する取引終了日の翌日である平成22年8月17日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金
(2)  後記日本アスター取引につき,
ア 次の各被告らに対し,各項掲記の請求権等に基づき,連帯して,後記イの金員を支払うよう求める。
(ア)被告日本アスターに対し,不法行為(民法709条,719条又は同715条)による損害賠償請求権に基づき
(イ)被告アスターに対し,法人格否認の法理又は自己の商号の使用を他人に許諾した会社の責任(会社法9条)に基づき,被告日本アスターと同一の責任を負うとして
(ウ)被告Y2に対し,不法行為(民法709条,719条)又は会社法429条1項に基づき,被告日本アスターの代表取締役として
(エ)被告Y6,被告Y7,被告Y8及び被告Y9に対し,不法行為(民法709条,719条)による損害賠償請求権に基づき,被告日本アスターの従業員として
イ 4440万6559円及びこれに対する取引終了日の翌日である平成22年11月19日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金
2  当事者の主張
(1)  請求原因
ア 当事者
(ア)原告は,昭和53年○月○日生まれで(被告アスターとの取引開始当時,31歳だった。),中古車販売業を営んでいる。原告は,下記イの被告アスターとの先物取引を行うまで,株式取引や先物取引の経験はなかった。
(イ)被告アスターは,海外商品先物取引業者であるが,平成22年7月2日,経済産業省及び農林水産省より,同月3日から6か月間の業務停止命令を受けた。その後,被告アスターは,平成23年1月1日以降に必要な海外商品先物取引業の許可を受けていない。
被告Y1は,被告アスターの代表取締役である。
(ウ)被告日本アスターは,海外商品先物取引業者であるが,平成23年1月1日以降に必要な海外商品先物取引業の許可を受けていない。
被告Y2は,被告日本アスターの代表取締役である。
(エ)被告Y3,被告Y4,被告Y5及び被告Y6は,被告アスターの従業員で,原告との取引を担当していた。被告Y6は,その後,被告日本アスターに移籍し,原告との取引を継続した。
(オ)被告Y7は,被告日本アスターの従業員で,原告の取引を担当した。
被告Y8は,被告日本アスターの大阪支店の管理部副部長であった。
被告Y9は,被告日本アスターの本社の管理部所属の社員であった。
イ 被告らとの取引
(ア)アスター取引
a 原告は,平成22年5月20日(以下,年号の記載がないときは,平成22年とする。),被告Y3から勧誘を受け,被告アスターの取引口座を開設し,同月21日,被告アスターに対し,証拠金として100万円を上記取引口座に送金して,被告アスターとの原油の海外先物取引を開始した(以下,原告と被告アスターとの海外先物取引を「アスター取引」という。)。
b アスター取引は,別紙「X(アスター)建玉分析表」記載のとおり,5月21日から8月16日まで行われた。また,アスター取引における原告の口座の入出金状況は,別紙「X(アスター)金銭推移表」記載のとおりである。
(イ)日本アスター取引
a 原告は,被告Y6から,会社が事業拡大して大きくなるので,会社名が変わると言われ,7月20日,被告日本アスターの取引口座を開設し,7月23日,被告日本アスターに対し,500万円を預託して,被告日本アスターとの原油の海外先物取引を開始した(以下,原告と被告日本アスターとの海外先物取引を「日本アスター取引」という。)。
b 日本アスター取引は,別紙「X(日本アスター)建玉分析表」記載のとおり,8月3日から11月18日まで行われた。また,日本アスター取引における原告の口座の入出金状況は,別紙「X(日本アスター)金銭推移表」記載のとおりである。
ウ 被告らの違法行為
(ア)アスター取引
被告アスター,被告Y6,被告Y1,被告Y3,被告Y4及び被告Y5は,手数料稼ぎ目的で,次のとおり,違法行為を行った。これらの行為は,海外商品市場における先物取引の受託等に関する法律(平成21年7月10日法律第74号附則2条による廃止前のもの。以下「法」という。)及び法施行規則(平成22年10月15日経済産業省令第51号による廃止前のもの。以下「省令」という。),法施行令(平成22年9月10日政令第196号による廃止前のもの。以下「政令」という。)に違反し,さらに,適合性原則違反であり,社会的相当性を逸脱しているのであるから,一連一体のものとして,違法性を有する。
a 法10条8号,省令8条1号・2号違反(迷惑勧誘)
被告Y3は,5月20日,原告が自営する事務所を訪れ,原告が取引を断ったにもかかわらず,午後4時から午後9時までの5時間にわたって居座り,取引の勧誘をした。
被告Y4は,同月22日,被告アスター大阪支店において,原告が取引拡大を断り退去の意向を伝えたにもかかわらず,午後5時から午後9時までの4時間にわたって原告を引き留め,取引を勧誘した。
上記各行為は,海外先物契約の締結をしない旨の意思を表示した顧客に対する勧誘及び顧客に迷惑を覚えさせるような仕方での勧誘であり,法10条8号,省令8条1号・2号に違反する。
b 法9条,政令4条1号,法10条1号・2号・8号,省令8条7号違反(不実告知,断定的判断の提供等)
被告Y4は,上記5月22日の勧誘において,原告に対し,利益が確定している当たり玉を原告に与えると説明をした。
被告Y6は,7月6日頃,原告に対し,「会社が建てている玉のうち,利益が出ている玉を集めて,当たり玉コレクションを作りましょう。必ず損を取り返します。」等と,7月12日頃,「当たり玉を入れるためには,見せ金が必要です。」等と説明をして,取引を勧誘した。
上記行為は,海外商品市場の相場の変動について不実のことを告げ,利益が生じることが確実であると誤解させるべき断定的判断を提供し,利益を保証し又は特別の利益を提供することを約した勧誘であり,法9条,政令4条1号,法10条1号・2号・8号,省令8条7号に違反する。
c 法10条6号,7号違反,商品取引所法(平成22年当時)6条,329条違反(自己玉の付け替え,他の委託者の委託玉の付け替え,のみ行為)
被告アスターによる5月21日の10枚の建玉は,自己玉を付け替えたのであれば,法10条6号に違反し,他の委託者の委託玉を付け替えたのであれば,法10条7号に違反する。
さらに,上記行為は,のみ行為であったとすれば,商品取引所法6条,329条に違反する。
d 法10条5号違反(返金拒否)
被告Y5は,6月7日,原告の返金要求を拒絶した。
上記行為は,海外先物契約に基づく債務の履行の拒否であり,法10条5号に違反する。
e 法10条8号,省令8条11号違反
被告Y5が,6月7日,両建の内容を理解していない原告に対し,両建を勧めて受託させたことは,法10条8号,省令8条11号に違反する。
f 無断取引
原告は,5月21日,原告に無断で,10枚の建玉を行った。
g 適合性原則違反
被告アスター,被告Y6,被告Y1,被告Y3,被告Y4及び被告Y5は,投資経験,知識のない原告に対し,アスター取引を行わせた。また,被告Y6は,上記7月6日頃の勧誘において,原告が追加に出資する資金がないことを理由に拒否したにもかかわらず,借金してまで投資するよう勧めた。
上記行為は,適合性原則違反に当たる。
h 詐欺行為
被告Y6が,被告アスターが7月2日に同月3日から6ヶ月の業務停止命令を受けたことを秘して,7月6日頃及び7月12日頃,追加出資を勧めた行為は,詐欺行為に該当する。
(イ)日本アスター取引
被告日本アスター,被告Y6,被告Y2,被告Y7,被告Y8及び被告Y9は,手数料稼ぎ目的で,次のとおり違法行為を行った。これらの行為も,法,省令及び政令に違反し,適合性原則違反であって,社会的相当性を逸脱しているのであるから,一連一体のものとして,違法性を有する。
a 法9条,政令4条1号,法10条1号・2号・8号,省令8条7号違反(不実告知,断定的判断の提供)
被告Y6は,7月21日頃,被告日本アスターの従業員として,原告に対し,「当たり玉を入れるのに見せ金500万円を入れて下さい。必ず勝つ勝負ですから。」等と説明して,取引の勧誘をした。
また,被告Y7は,8月末頃,原告に対し,「確実に下がる。絶好の売り場です。」等と説明して,取引の勧誘をした。
さらに,被告Y6は,9月及び10月,原告に対し,「絶対に下がる。」「当り玉を与える。」等と説明し,取引を勧誘した。
上記行為は,海外商品市場の相場の変動について不実のことを告げ,利益が生じることが確実であると誤解させるべき断定的判断を提供し,利益を保証して,特別の利益を提供することを約した勧誘であり,法9条,政令4条1号,法10条1号・2号・8号,省令8条7号に違反する。
b 法10条5号,8号,省令8条9号違反(返金拒否)
被告Y6は,8月24日以降,原告の返金要求を拒否し,さらに取引をするよう勧誘し,同日,原告の反対を押し切って50枚の売玉を建てた。
また,被告Y6は,9月初旬頃,原告が手仕舞いを要求しているにもかかわらず,これに応じず,「当たり玉を建てましょう。」等といって勧誘した。さらに,被告Y6は,10月以降,原告の手仕舞い及び返金要求を拒否し続けた。
上記行為は,海外先物契約に基づく債務の履行の拒否であって,決済を結了する意思表示をした顧客に対し引き続き取引を勧めるものであるので,法10条5号,8号,省令8条9号に違反する。
c 無断取引
被告Y6による8月27日の10枚の売玉は,原告に無断で行われた無断売買であり,違法である。
d 適合性原則違反
被告Y6は,資金が準備できない原告に対し,借金を勧めたうえ,証拠金不足のまま,建玉をさせた。上記行為は,適合性原則違反に当たる。
e 詐欺行為
被告Y6が,上記7月21日の勧誘において,真実は被告日本アスターにおける原告の口座開設は7月20日であり,法8条により同日から14日経過後でなければ建玉ができないにもかかわらず,即時の建玉が可能で必要であるかのように装って追加出資を勧めた行為は,詐欺行為に該当する。
エ 被告らの責任
(ア)被告アスター
a アスター取引に関する責任
アスター取引は,被告アスターが組織ぐるみで行ったものであるから,被告アスターは,民法709条に基づく不法行為責任を負う。
また,アスター取引は,被告アスターの従業員らが職務上行ったものであるから,被告アスターは,民法715条に基づく使用者責任を負う。
b 日本アスター取引に関する責任
被告日本アスターは,被告アスターの業務停止中でも業務を継続するために設立された会社であり,原告のアスター取引の口座残金も引き継ぎ,被告Y6が継続して原告との取引を担当していた上に,被告Y3,被告Y4,被告Y5,被告Y7,被告Y8及び被告Y9も,被告アスターから被告日本アスターに移籍したのであるから,被告アスターは,被告日本アスターと同一であり,これと同じ責任を負う。
また,被告アスターは,被告日本アスターに同一類似の商号を使用して営業を行うことを許諾したので,会社法9条に基づき責任を負う。
(イ)被告Y1
被告Y1は,被告アスターによる組織ぐるみの不法行為を執行しており,民法709条に基づく不法行為責任を負う。
また,被告Y1は,被告アスターの代表取締役として,従業員らの業務を改善する義務を怠ったのであるから,会社法429条1項に基づく損害賠償責任を負う。
(ウ)被告日本アスター
a 日本アスター取引
日本アスター取引は,被告日本アスターが組織ぐるみで行ったものであり,被告日本アスターは,民法709条に基づく不法行為責任を負う。
また,日本アスター取引は,被告日本アスターの従業員らが職務上行ったものであるから,被告日本アスターは,民法715条に基づく使用者責任を負う。
b アスター取引
上記(ア)bのとおり,被告アスター及び被告日本アスターは同一であるから,被告日本アスターは,被告アスターと同一の責任を負う。
また,被告日本アスターが被告アスターから営業譲渡を受けているのであれば,被告日本アスターは,会社法22条に基づき,または,外観法理に基づき,被告アスターと同一の責任を負う。
(エ)被告Y2
被告Y2は,被告日本アスターによる組織ぐるみの不法行為を業務として執行したので,民法709条に基づき不法行為責任を負う。
また,被告Y2は,被告日本アスターの代表取締役として,従業員らの業務を改善する義務を怠ったのであるから,会社法429条1項に基づく損害賠償責任を負う。
(オ)被告Y3,被告Y4及び被告Y5
被告Y3,被告Y4及び被告Y5は,組織的に上記ウ(ア)のアスター取引に関する違法行為を実行したのであるから,アスター取引によって生じた損害について,不法行為に基づく責任を負う。
(カ)被告Y6
被告Y6は,他の被告らと意を通じて組織的に,上記ウのアスター取引及び日本アスター取引に関する違法行為を実行したのであるから,全損害について,不法行為責任を負う。
(キ)被告Y7
被告Y7は,他の被告らと意を通じて組織的に,上記ウ(イ)の日本アスター取引に関する違法行為を実行したのであるから,日本アスター取引によって生じた損害について,不法行為責任を負う。
(ク)被告Y8及び被告Y9
被告Y8及び被告Y9は,上記ウ(イ)の違法行為を阻止・是正すべきであったのにこれを怠ったのであるから,日本アスター取引によって生じた損害について,不法行為責任を負う。
(ケ)被告らの不法行為は,組織ぐるみで行われたものであるので,共同不法行為となる(民法719条1項)。
オ 損害
(ア)アスター取引
原告は,アスター取引によって,次の合計444万4614円の損害を被った。
a アスター取引による損失額 404万4614円
b 弁護士費用 40万円
(イ)日本アスター取引
原告は,日本アスター取引によって,次の合計4440万6559円の損害を被った。
a 日本アスター取引による損失額 4040万6559円
b 弁護士費用 400万円
カ よって,原告は,被告アスター,被告日本アスター,被告Y6,被告Y1,被告Y3,被告Y4及び被告Y5に対し,第2の1(1)のとおり,不法行為(民法709条,719条又は同715条),法人格否認の法理,会社法22条1項又は同法429条1項に基づき,連帯して,被告アスターとの取引により被った損害444万4614円及びこれに対する取引終了日の翌日である平成22年8月17日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払うよう求める。
また,原告は,被告アスター,被告日本アスター,被告Y6,被告Y2,被告Y7,被告Y8及び被告Y9に対し,第2の1(2)のとおり,不法行為(民法709条,719条又は同715条),法人格否認の法理,会社法9条,同法429条1項に基づき,連帯して,被告日本アスターとの取引により被った損害4440万6559円及びこれに対する取引終了日の翌日である平成22年11月19日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払うよう求める。
(2)  請求原因に対する認否及び被告らの主張
ア 被告アスター及び被告Y1
原告が5月21日に100万円,同月28日に500万円,7月6日に1100万円,同月12日に350万円入金したこと,原告が同月22日に被告アスターに来店したこと,原告が6月7日に両建てしたこと,被告Y5から被告Y6に担当が変わったことは認めるが,その余の事実は否認する。
被告アスターの従業員は,原告の注文を履行したに過ぎず,また,原告からの返金要求もなかった。
イ 被告日本アスター及び被告Y2
被告日本アスターの属性,原告が7月20日に口座を開設したこと,日本アスター取引の経緯は認めるが,その余は否認する。
被告日本アスターの従業員は,原告からの要請に応じて取引を実行したに過ぎない。
ウ 被告Y3
被告Y3が被告アスターの従業員だったこと,被告Y3が5月20日に原告宅を訪問したことは認めるが,その余は否認する。
原告は,同日,取引を明確に断らず,外出をするので原告の妻に説明するように指示をしたために,午後9時まで滞在したのである。
被告Y3は,係長だったが,肩書きだけで,専ら営業活動をしており,売買管理はしていない。
エ 被告Y4
被告Y4が被告アスターの従業員だったこと,原告が5月21日に100万円を入金したこと,被告Y4が5月22日大阪支店で原告と面談したことは認めるが,その余は否認する。
上記面談の際,被告Y4は,取引の仕組み,危険性を説明したが,利益が確定したようなものである当たり玉をあげるとは説明した。被告Y4は,原告の資金力や年齢からして,当初から取引ができるとは思っていなかったが,原告は,被告Y4の提案に対し,積極的に応じてきた。
なお,被告Y4も,被告日本アスターに移籍した。
オ 被告Y5
原告が5月24日に400万円を,同月28日に500万円を入金したこと,原告が被告Y5と6月7日に面談したことは認めるが,その余は否認する。
カ 被告Y6
被告Y5から被告Y6に担当が変わったこと,原告が7月6日に1100万円,7月12日に350万円,同月23日に500万円,8月31日に200万円,9月10日に200万円を入金したことは認めるが,その余は否認する。
キ 被告Y7
被告Y7が,8月28日,原告事務所を訪問したことは認めるが,その余は否認する。原告は,自らの判断で取引を行った。
ク 被告Y8
いずれも否認する。
原告が面談及びアンケートで苦情を言わなかったので,被告Y8は問題ないと判断した。
ケ 被告Y9
否認する。
第3  当裁判所の判断
1  請求原因ア(当事者)について
(1)  証拠(甲14及び原告)によれば,請求原因ア(ア)の事実が認められる。
(2)  証拠(甲1,6〔枝番のあるものは枝番を含む。以下同じ。〕,14,原告,被告Y3及び被告Y4)並びに弁論の全趣旨によれば,請求原因ア(イ)~(オ)の事実が認められる(なお,一部の事実は,前記のとおり,原告と一部の被告らにおいて争いがない。)。
2  請求原因イ(被告らとの取引)について
(1)  証拠(甲2,3)によれば,請求原因イ(ア)の事実が認められる(なお,一部の事実は,前記のとおり,原告と一部の被告らにおいて争いがない。)。
(2)  証拠(甲4,5)によれば,請求原因イ(イ)の事実が認められる(同前)。
3  請求原因ウ(被告らの違法行為)・同エ(被告らの責任)について
(1)  本件取引の経緯について
前記1,2の事実に証拠(甲1~14,原告,被告Y3及び被告Y4)及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実が認められる。
ア 原告は,本件取引開始当時,31歳で,中古車販売業を営んでおり,年収は約400万円であった。原告は,本件取引をするまで,株式取引や先物取引の経験は全くなかった。
イ 被告ら
(ア)被告Y3は被告アスターの係長,被告Y4は営業課長で被告Y3の直属の上司であった。被告Y6は部長兼支店長,被告Y5は課長であるものの,支店長代理であり,同被告らは,被告Y4の上司であった。
(イ)被告Y7は,被告日本アスターの営業本部長であった(甲6の3)。
ウ アスター取引
(ア)被告Y3は,5月20日午後4時頃,原告が中古車販売業を営む事務所を突然訪問し,原告に対し,「南アフリカのワールドカップを控えており,全体的に相場が上がります。うちが扱っている原油の先物取引をしませんか。」などと,原油の先物取引を勧誘した。原告は,これを断ったが,被告Y3は,リスクはない,損はしないとして取引の勧誘を続けた。原告は,午後5時頃,外出したが,被告Y3は,原告の妻に対し,勧誘を継続した。原告の妻は,被告Y3に対し,「取引をするなら,こちらから連絡をする。」と言って退去を求めたが,被告Y3は,これに応じず,午後9時頃まで,リスクはない,損はしないとして勧誘を続けた。原告は,同時刻頃,原告の事務所に帰ったところ,「取引を承諾するまで帰ってもらえない。」,「被告Y3に帰って欲しい。」,「損しないんやったら。」等と思い,被告Y3に対し,最終的には,2口(100万円)で取引を開始することを承諾し,契約書を作成した。
被告Y3は,被告アスターにおいて,新規顧客を獲得する営業活動に従事していた。契約にこぎ着けた顧客について,顧客カードを作成して,管理部に渡すとともに,担当を上司に引き継ぐこととなっており,被告Y3は,原告について顧客カードを作成するとともに,担当を上司である被告Y4に引き継いだ。
(イ)原告は,5月21日,被告アスターに対し,証拠金として100万円を送金した。
(ウ)被告Y4は,5月22日,原告に対し,電話で,「いい話があるから,今日,大阪支店に来て欲しい。」等と言って,原告を被告アスターの大阪支店に呼んだ。原告は,同日午後7時から京都で食事会の予定があったために,これを断ったが,被告Y4が「7時の予定にも間に合うように話を終わらせます。」等と言ったので,午後6時頃には大阪支店を出られるだろう,この機会に被告アスターがどのような会社か一度見ておこうという気持ちになり,被告アスターの大阪支店を訪問した。原告は,同日午後5時頃から,同支店において,被告Y4と面談した。被告Y4は,原告に対し,「当たり玉があります。当たり玉は,利益が確定しているようなものです。500万円の方が得なので,利益を拡大しませんか。」等と言って,証拠金を400万円追加し,500万円に増額するよう勧誘した(被告Y4・2頁)。原告は,これを断ったが,被告Y4は,午後6時を過ぎ,午後7時からの食事会に間に合わないこととなっても,勧誘を続けた。原告は,取引拡大を承諾しないと,京都の食事会の相手方を待たせることになると思い,500万円へ増額することを承諾した。被告Y4は,原告に対し,「今日話したことは,昨日に話したことにして欲しい。」等と言った。原告は,午後9時頃,大阪支店を出た。
(エ)当たり玉とは,被告アスター又は他の顧客名義で建てた建玉のうち利益が出ているものを原告に対し付けるというものであった(被告Y4・11頁)。被告Y4,被告Y5及び被告Y6は,当たり玉による勧誘ができる立場にあり,当たり玉による勧誘を行っていた(同16頁)。
(オ)被告Y4は,被告アスターまたは原告以外の委託者の名義で,5月21日に建てていた建玉を原告に付け替えた(被告Y4・14頁)。
(カ)原告は,5月24日,証拠金追加分の集金に訪れた被告Y3及び被告Y4に対し,400万円を交付した。被告Y3はこの金員の中から成功報酬となる歩合給を受け取った。
(キ)被告Y4から担当を引き継いだ被告Y5は,5月26日頃,原告に対し,「さらに当たり玉を増やして利益を出しましょう。」等と言って,取引の拡大を勧誘した。原告は,お金がない等といって断ったが,被告Y5は,「当たり玉をつけておく。」と言って,8枚の新規建玉を行った。この新規建玉は,翌5月27日に決済し,利益が出た。被告Y5は,5月28日,原告に対し,「当たり玉でもいったんはお金を入れてもらう必要があります。すぐに出金していただけますので。500万円入れておいて下さい。」等と言った。原告は,同日,被告アスターに対し,500万円を送金した。
(ク)被告Y5は,6月1日,原告に対し,「10枚を一旦切って,20枚の取引にしましょう。」等と言って,10枚の買玉を仕切って,20枚の買玉を建て直すように勧誘し,原告がこれを断ったにもかかわらず,実行した。これは,10枚だけを追加で建てるのと経済的には同じである(ただし,被告アスターにより多くの手数料収入が発生する。)。
(ケ)被告Y5は,6月3日,原告に対し,「20枚の買いを一度仕切って利益を出して,もう一度20枚を買います。」等と言って,20枚の買玉を仕切って,20枚の買玉を建て直すように勧誘し,原告が断ったにもかかわらず,これを実行した。これは,何もしないのと経済的には同じである(ただし,被告アスターに手数料収入が発生する。)。
(コ)被告Y5は,6月7日,原告に対し,「両建にする必要があります。建てないと,中身が守れません。」等と言って,両建を勧誘し,原告が拒否したにもかかわらず,これを実行した。
(サ)原告は,被告Y5に対して不信感を抱き,被告アスターに対し,クレームをつけた。
(シ)被告Y6は,6月下旬頃,元広島カープのプロ野球選手であると自己紹介をし,原告の担当となった。
(ス)農林水産省及び経済産業省は,7月2日,被告アスターに対し,原油の海外先物取引について,法の違反行為を認定し,法11条1項に基づき,6か月(7月3日から平成23年1月2日まで)の業務停止命令を行い,その旨を公表した。同省が認定した法違反事実は,① 顧客に対し,利益を生ずることが確実であると誤解されるべき断定的判断を提供して,海外先物契約の締結又は顧客の売買指示について勧誘していた事実(法10条1号違反)及び② 海外先物契約の締結につき,その契約の締結をしない旨の意思を表示した顧客に対し,勧誘していた事実(法10条8号,省令8条1号違反)であった(甲1)。被告Y4は,この頃,日本アスターという会社を立ち上げるという話をきいた(被告Y4・20頁)。
(セ)被告Y6は,原告に対し,「Y5が損を出した分は必ず返します。私は支店長なので,利益が出ている玉を集めて,当たりコレクションを作りましょう。必ず損を取り返しますから,1100万円を用意してもらえませんか。」,「当たり玉とは,会社が建てている玉のうち,利益が出ているものを顧客にわけ,残りを会社の取引にします。」等と言った。原告は,資金がないことを理由に断ったが,被告Y6は,原告に対し,「リスクはないので,銀行かなんかでお金を借りてきてでも,用意して欲しい。」等と言って,勧誘を続けた。原告は,損を取り返したいと思い,7月6日,被告Y6に対し,1100万円を交付した。この1100万円は,原告が,原告の父親から560万円,●●●信用金庫から300万円(甲7),株式会社オリエントコーポレーション(以下「オリコ」という。)から99万円,●●●信用金庫から50万円を借り入れ(甲8),残りは,事業の運転資金を取り崩して調達した。
(ソ)原告は,被告Y6から,「当たり玉の見せ金が欲しいから,とりあえず入れてくれ。」等と言われ,7月12日,被告Y6に対し,350万円を交付した。この350万円のうち199万円は,原告が,●●●信用金庫から100万円,原告の妻が同金庫から99万円借りて用意したものだった(甲9,10)。
(タ)被告Y6は,原告に対し,「事業が拡大するから,会社名が変わります。同じ会社ですので,担当は変わりません。」等と言った。
(チ)被告アスターの原告口座の残高2053万5386円は,8月18日,出金され,そのうち2050万円が,同日,被告日本アスターの原告の口座に移された。
エ 日本アスター取引
(ア)被告日本アスターは,5月25日,設立された(被告日本アスターの履歴事項全部証明書)。
(イ)被告アスターの従業員であった被告Y3,被告Y4,被告Y5,被告Y6,被告Y7,被告Y8及び被告Y9は,被告日本アスターの従業員となった(被告Y4・7頁)。被告アスターの顧客の一部は,被告日本アスターの顧客となった(同6頁)。被告アスターの従業員の名刺と,被告日本アスターの従業員の名刺は,デザインが酷似している(甲6)。被告日本アスターの従業員の勤務場所は,被告アスターのそれと同じだった(被告Y3・7頁)。
(ウ)被告Y6は,原告に対し,「当たり玉があるから,見せ金500万円を入れて下さい。」等と言った。原告は,7月23日,●●●信用金庫から1000万円を借り入れ(甲11),被告日本アスターに対し,そのうち500万円を振り込んだ。
(エ)日本アスター取引は,8月24日,1160万0188円の利益が出た。原告は,被告Y6に対し,利益の返金を要請したところ,被告Y6は,これを拒否し,50枚の建玉を行った。
(オ)被告Y6は,8月27日,原告に無断で,10枚の売玉を建てた。
(カ)被告Y6は,8月末頃,原告に「Y7という,損が出ているお客さんに当たり玉をくれる本社経営陣の偉いさんが,東京出張からの帰りに京都でXさんとお会いしたいと言っています。」と電話連絡した。その翌日,被告Y7は,原告の事務所を訪れ,原告に対し,自分は基本的に顧客の担当を持たないが,原告のように損が出ている顧客には担当者がちゃんとしているかを見たり,当たり玉を分けるのが仕事だなどと話した上で,「当たり玉をXさんに渡します。今は売り一本で会社も建てているので確実に下がる,大丈夫,今は絶好の売り場です。次の当たり玉は,Xさんに一番に譲ります。」等と言った。
(キ)原告は,8月31日,200万円を入金していない。
(ク)原告は,9月初旬以降,原油相場が上がり続けたので,被告Y6に対し,取引の終了を要求したが,被告Y6は,「相場は必ず下がります。」等と言って,これに応じなかった。
(ケ)被告Y6は,原告に対し,「中身を守るために当たり玉を建てましょう。当たり玉をつけるのには,見せ金がいるので,借金をしてでも,800万円を用意して下さい。足りない分は,他の客から預かったお金を回すことができます。」等と言った。原告は,9月10日に200万円,同月24日に400万円,被告日本アスターに入金した。この合計600万円のうち300万円は,友人から借りたものであった(甲12)。
(コ)被告Y6は,10月初旬頃,原告に対し,「中身を守るために,当たり玉をつける必要があるので,見せ金を入れて下さい。8営業日になったら必ず返します。」等と言った。原告は,被告日本アスターに対し,10月7日,オリコから借り入れた300万円のうち100万円を,同月15日,原告の父親から借りる等した500万円を預託した(甲13)。原告は,預託から8営業日経過後,被告Y6に対し,返金要求をしたが,被告Y6は,これを拒否した。
(サ)原告は,11月上旬,返金要求に応じてもらえないことを不審に思い,インターネットで検索したところ,被告アスターに対する行政処分を知った。原告が,被告Y6に対し,被告アスターに対する行政処分について問いただしたところ,被告Y6は,原告に対し,「中身がなくなっちゃいました。」等と言った。
(2)  本件取引の違法性について
ア 海外先物取引業者及びその従業員の注意義務
商品の先物取引は,一般に,少額の証拠金で多額の取引ができるが,他方で,値動きにより大きな損失を被る可能性も大きく,極めて投機性が高い取引であるから,商品の先物取引には,高度な専門的知識経験が必要である。特に,海外先物取引においては,海外の相場や値動きの情報を得た上で,為替相場の変更も考慮しなければならないから,更により高度な専門的知識経験が必要となる。
したがって,海外先物取引業者及びその従業員が,一般の顧客を勧誘するに際しては,顧客の経歴,能力,先物取引の知識経験の有無等に照らし,取引適合性を判断した上,顧客の海外先物取引の仕組みや危険性を十分に説明し,取引開始後においても,顧客の経歴等の上記要素や取引の数量等を考慮し,顧客に損失発生の危険の有無・程度の判断を誤らせないように配慮すべき注意義務を負っているというべきである。。
以下,本件取引における注意義務違反の有無,態様,被告らの責任の関連性について検討する。
イ 前記(1)の認定事実によれば,原告は,中古車販売業を営んでおり,株式取引や先物取引の経験はなく,海外先物取引について全くの素人であったことが認められる。したがって,原告が上記のように投機性が高く,高度な専門的知識経験が必要となる海外先物取引を行う適格性を欠いていたことは明らかである。
ウ アスター取引
(ア)被告Y3による勧誘(迷惑勧誘)
前記(1)の認定事実によれば,① 被告Y3は,5月20日午後4時頃から午後9時頃まで,約5時間もの間,原告の事務所に居座り,原告が取引を断ったにもかかわらず,取引の勧誘を続け,原告が午後5時に一旦外出してから午後9時に帰るまでの間も,原告の妻に対し,取引の勧誘を続けたこと,② 原告は,取引を承諾するまで被告Y3に帰ってもらえないと考え,取引を開始することを承諾したことが認められる。これらの事実によれば,被告Y3は,原告に迷惑を覚えさせるような時間に,長時間の居座りという迷惑を覚えさせるような方法で,原告が取引を断っているにもかかわらず,勧誘を行い,その結果,原告は取引を承諾したといえる。
これに対し,被告Y3は,① 原告は取引を明確に断っていない,② 原告が原告の妻に対し代わりに説明をしてくれと言った,③ 原告の妻が被告Y3に対し原告を待っていてくれと言ったと供述する(被告Y3・2頁,3頁)。しかしながら,①の供述については,原告が取引を断っていないのであれば,被告Y3が午後9時まで原告事務所に居座り勧誘を継続する必要もない上,前記(1)の認定事実によれば,被告アスターは,契約を締結しない旨の意思を表示した顧客に対し,勧誘していたとして,業務停止命令を受けたことからすれば,同様の勧誘方法を組織的に遂行していたことがうかがえ,採用できない。また,②の供述については,原告が,自ら取引をするのに,原告の妻に対し,説明をするように頼むことは考え難いこと,③の供述については,原告の妻にしてみれば,被告Y3に出直してもらえば足り,3時間も被告Y3を引き留めておく必要性もないことから,いずれも採用できない。。
(イ)被告Y4による勧誘(断定的判断の提供,迷惑勧誘)
前記(1)認定事実によれば,① 被告Y4は,5月22日,原告に対し,「当たり玉があります。当たり玉は利益が確定しているようなものです。」等と言ったこと,② 被告Y4は,同日,原告が午後7時から京都で用事があり,午後6時には被告アスター大阪支店を出なければならないことを知りながら,午後5時頃から午後9時頃まで,約4時間もの長時間,原告が断ったにもかかわらず,勧誘を続けたこと,③ 被告Y4の勧誘により,原告は,証拠金を500万円に増額することを承諾し,5月24日,被告Y3及び被告Y4に対し,400万円を交付したことが認められる。これらの事実によれば,被告Y4は,原告に対し,長時間,原告を留めおくという迷惑な方法により,原告の拒否にもかかわらず,利益が生じることがほぼ確実であるかのように述べて,勧誘をし,その結果,原告が取引を拡大したものといえる。
これに対し,被告Y4は,① 取引のリスクも説明した,② 原告は取引を強くは拒否しなかったと供述している(被告Y4・3頁)。しかしながら,①の供述については,仮に取引のリスクを説明していたとしても,上記のとおり,利益が確定している当たり玉があるなどとして利益を殊更に強調していたのであるから,確実に利益が得られるとの原告の誤信を払拭するには足りず,上記判断に影響しない。また,②の供述については,原告が取引を拒否しなかったのであれば,原告は,4時間という長時間,被告アスター大阪支店に留まる理由がないのであるから,採用できない。
(ウ)その後の取引
前記(1)認定事実によれば,その後の取引についても,① 被告Y5も,原告に対し,「さらに当たり玉を増やして利益を出しましょう。」等と言って,利益を強調した勧誘を行うとともに,原告が拒否したにもかかわらず,両建,無意味な建替を行ったこと,② 被告アスターが業務停止命令を受けた後も,被告Y6が,これを秘して,原告に対し,「Y5が損を出した分は必ず返します。私は支店長なので,利益が出ている玉を集めて,当たりコレクションを作りましょう。必ず損を取り返しますから,1100万円を用意してもらえませんか。」等と言って,利益が確実であると誤信させる勧誘を行い,原告に借金までさせて証拠金を調達させたこと,が認められる。
(エ)まとめ
以上からすれば,被告Y3,被告Y4,被告Y5及び被告Y6は,適格性を欠くことが明らかな原告に対し,まず,被告Y3において,リスクはない,損はしないとして,強引な不退去より執拗に取引を勧誘し,2口の契約(証拠金100万円)を取り付け,その後,直属の上司である被告Y4(営業課長)が,原告を大阪支店に呼び出し,当たり玉があるなどと利益が確実であるかのように申し向けるとともに,長時間留め置くという強引な勧誘方法により,証拠金を500万円に増額することを承諾させ,次いで,被告Y5(支店長代理)が「さらに当たり玉を増やして利益を出しましょう。」等と言って,利益を強調しながら,取引の拡大を勧誘し,原告が拒否したにもかかわらず,両建や,無意味な建替を行い,原告が被告Y5に対して不信感を抱き,被告アスターに対し,クレームをつけると,被告Y6(支店長兼部長)が担当者となり,「Y5が損を出した分は必ず返します。私は支店長なので,利益が出ている玉を集めて,当たりコレクションを作りましょう。必ず損を取り返しますから,1100万円を用意してもらえませんか。」と言って,更なる取引の拡大を説得し,被告アスターが業務停止命令を受けたのを秘して,原告に借金までさせて証拠金の追加分(1100万円)を調達させ,原告の資金調達能力を超えた範囲まで取引を拡大させたと認められる。
これらの被告は,いずれも,原告と直接接触があったから,原告が適格性を欠いており,海外先物取引について理解していないことがわかっており,被告Y5及び被告Y6にあっても,原告が執拗かつ強引に迫る勧誘方法によって獲得した顧客であることを知っていたと推認される。上記被告らは,被告アスターとして,原告との取引を継続する限り,利益を約束しながら,執拗かつ強引に迫る勧誘方法によって取引の拡大を図っていくこととなることを共通の理解としており,原告が海外商品先物取引について理解しているか否かについては全く意に介していなかったと推認できる。そして,被告らは,実際,順次,交替し,次第に上位の者が原告の担当者となり,専ら,利益を約束しながら,執拗かつ強引に迫る勧誘方法を用いて取引を拡大させていった。これらの点にかんがみると,上記被告らは,被告アスターにおいて,連携しながら,組織的に原告との取引を遂行したと認めるのが相当である。
エ 日本アスター取引
(ア)前記(1)認定事実によれば,① 被告Y6は,原告に対し,被告アスターが業務停止命令を受けたことを秘して,会社名が変わります等といって,被告日本アスター及び被告アスターが同じ会社であるかのように装って,被告日本アスターとの取引を勧誘したこと,② 被告Y6は,当たり玉がある等と言って,原告に対し,利益が確実であると誤信させたうえ,原告の返金要求を拒否して取引を継続し,原告に無断で建玉をし,原告に借金をさせて証拠金を調達させたこと,③ 被告Y6の上司に当たる被告Y7も,原告に対し,被告Y6の触れ込みどおり,当たり玉を分けてくれる「本社経営陣の偉いさん」を演じ,当たり玉があると申し向けたことが認められる。
(イ)以上の事実によれば,被告Y6は,原告に対し,被告アスターが業務停止命令を受けたにもかかわらず,取引を継続させるため,会社名が被告日本アスターになったと申し向け,上司の被告Y7と連携し,アスター取引と同じく,利益を強調した取引を行い,原告の意に反する取引を行った。これらの点にかんがみると,上記被告らは,被告日本アスターにおいて,連携しながら,組織的に原告との取引を遂行したと認めるのが相当である。
(3)  被告らの責任について
ア 被告Y3,被告Y4,被告Y5及び被告Y6(アスター取引)
前記(1)・(2)ア~ウによれば,被告Y3,被告Y4,被告Y5及び被告Y6は,意を通じて,アスター取引につき,違法な勧誘を行ったものと認められる。
そして,その結果として原告は後記4(1)のアスター取引による損害を被ったことからすれば,同被告らは,同損害につき,共同不法行為責任(民法719条)を負う。
なお,被告Y4及び被告Y3は,各本人尋問において,被告Y3が当たり玉について,その言葉自体も知らなかったと供述する。しかしながら,被告Y3が当たり玉についてその言葉自体も知らなかったとは直ちに信じ難い。すなわち,商品先物取引には,当たり玉(あたりぎょく)という用語があり,値洗いが利益計算になっている建玉のことを意味することは当裁判所に顕著である。本件でいう当たり玉もこれと同旨と思われる。被告Y3は,被告アスターに勤務する以前,国内公設の商品取引であるセントラル商事に勤務していたことがあり(同被告本人尋問の結果),当たり玉という言葉自体を知らなかったとは考え難い。このことをさておくとしても,被告Y3は,前記認定のとおり,被告アスターとして,原告との取引を継続する限り,利益を約束しながら,執拗かつ強引に迫る勧誘方法によって取引の拡大を図っていくこととなることは理解しており,上司らがこれを遂行していくことは認識していたと考えられるから,上記の認定判断を左右しない。
イ 被告アスター及び被告Y1(アスター取引)
被告アスターは,被告Y3,被告Y4,被告Y5及び被告Y6の使用者であって,上記被告らがその事業の執行について,アスター取引を行い,その結果,原告が損害を被ったのであるから,被告アスターは,民法715条に基づく責任を負う。
また,被告Y1は,被告アスターの代表取締役として,被告アスターの従業員である被告Y3,被告Y4,被告Y5及び被告Y6が,違法な取引を行わないように監視する義務があったにもかかわらず,少なくとも重過失により,これを怠り,上記被告らが,違法なアスター取引を行い,これにより,原告が損害を被ったのであるから,被告Y1は,会社法429条1項に基づく責任を負う。
ウ 被告Y6,被告Y7,被告Y8及び被告Y9(日本アスター取引)
(ア)前記(1)・(2)ア,イ,エによれば,被告Y6及び被告Y7は,意を通じて,日本アスター取引につき,違法な勧誘行為を行ったものと認められる。そして,その結果として原告は後記4(2)の日本アスター取引による損害を被ったことからすれば,同被告らは,同損害につき,共同不法行為責任(民法719条)を負う。
(イ)被告Y8及び被告Y9については,① 被告Y8は大阪支店管理部副部長,被告Y9は管理部所属の社員であって,顧客との取引について,これを審査し,取引の適正を確保する職務を負う部門に属していたこと,② 被告アスターは,断定的判断の提供及び拒否する顧客の勧誘を理由に,業務停止命令を受けたこと,③ 被告Y8及び被告Y9は,もと被告アスターに所属しており,被告アスターが業務停止命令を受けた前後に,これを潜脱するために設立されたと推認される被告日本アスターへ移籍したことが認められる。したがって,被告Y8及び被告Y9が日本アスター取引の審査に関与した事実が認められれば,被告Y6,被告Y7による違法行為を阻止・是正すべきであったのにこれを怠ったということができるが,被告Y8及び被告Y9が具体的に日本アスター取引の審査に関与した事実を認めるに足りる証拠はない。よって,被告Y8及び被告Y9に関しては,原告が被った後記4(2)の日本アスター取引による損害につき,不法行為責任を認めることはできない。
エ 被告日本アスター及び被告Y2(日本アスター取引)
被告日本アスターは,被告Y6及び被告Y7の使用者であって,上記被告らがその事業の執行について,日本アスター取引を行い,その結果,原告が損害を被ったのであるから,被告日本アスターは,民法715条に基づく責任を負う。
また,被告Y2は,被告日本アスターの代表取締役として,被告日本アスターの従業員である被告Y6及び被告Y7が違法な取引を行わないように監視する義務があったにもかかわらず,少なくとも重過失により,これを怠り,上記被告らが,違法な日本アスター取引を行い,これにより,原告が損害を被ったのであるから,被告Y2は,会社法429条1項に基づく責任を負う。
オ 被告アスター及び被告日本アスターの同一性
前記(1)・(2)認定事実によれば,① 被告日本アスターは,5月26日,設立されたこと,② 被告アスターは,7月2日,業務停止命令を受けたこと,③ 被告Y4は,被告アスターが業務停止命令を受けた頃,被告日本アスターを立ち上げるという話を聞いたこと,④ 被告アスターの従業員,顧客は被告日本アスターに移転し,被告アスター及び被告日本アスターの従業員の事務所も同じだったこと,⑤ 被告アスター及び被告日本アスターの従業員の名刺のデザインが酷似していることが認められる。これらの事実からすれば,被告日本アスターは,被告アスターが業務停止命令により業務ができないにもかかわらず,これを免れるという違法・不当な目的で設立されたものと認められる。したがって,被告アスター及び被告日本アスターが,原告に対し,別の法人格を有することを主張することは,権利濫用にあたり,許されない。
(4)  以上によれば,被告アスター,被告日本アスター,被告Y1,被告Y3,被告Y4,被告Y5及び被告Y6は,アスター取引によって原告が被った後記4(1)の損害について,責任を負う。
また,被告アスター,被告日本アスター,被告Y6,被告Y2及び被告Y7は,日本アスター取引によって原告が被った後記4(2)の損害について,責任を負う。
4  請求原因オ(損害)について
(1)  前記2(1)の認定事実によれば,原告は,アスター取引によって,404万4614円の損害を被ったと認められる。
また,アスター取引について,弁護士費用として,40万円を相当と認める。
したがって,被告アスター,被告日本アスター,被告Y1,被告Y3,被告Y4,被告Y5及び被告Y6は,原告に対し,連帯して,アスター取引による損害として404万4614円及び弁護士費用40万円の合計444万4614円を賠償すべき義務がある。
(2)  前記2(2)及び3(1)の認定事実によれば,原告は,日本アスター取引によって,3640万6559円の損害を被ったと認められる。
この点,原告は,日本アスター取引によって,4040万6559円の損害を被ったと主張する。
しかしながら,前記3(1)認定事実によれば,① 原告は,8月31日,証拠金として原告主張の200万円を入金していないこと,② 原告は,9月24日,証拠金として,原告主張の600万円ではなく,400万円しか入金していないことが認められる。したがって,原告主張の損失額から,上記400万円を差し引く必要がある。以上からすれば,原告が,日本アスター取引によって被った損害は,3640万6559円と認めるのが相当である。
また,アスター取引について,弁護士費用として,360万円を相当と認める。
したがって,被告アスター,被告日本アスター,被告Y6,被告Y2及び被告Y7は,原告に対し,連帯して,日本アスター取引による損害として3640万6559円及び弁護士費用360万円の合計4000万6559円を賠償すべき義務がある。
5  結論
以上によれば,原告の請求は,被告アスター,被告日本アスター,被告Y1,被告Y3,被告Y4,被告Y5及び被告Y6に対し,連帯して,444万4614円及びこれに対する平成22年8月17日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による金員の支払を求め,被告アスター,被告日本アスター,被告Y6,被告Y2及び被告Y7に対し,連帯して,4000万6559円及びこれに対する平成22年11月19日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるから認容し,被告アスター,被告日本アスター,被告Y6,被告Y2及び被告Y7に対するその余の部分並びに被告Y8及び被告Y9に対する請求はいずれも棄却すべきである。よって,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 冨田一彦 裁判官 井川真志 裁判官 今野藍)

 

〈以下省略〉

 

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