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判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(143)平成26年 5月 8日 福島地裁会津若松支部 平25(わ)詐欺被告事件

判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(143)平成26年 5月 8日 福島地裁会津若松支部 平25(わ)詐欺被告事件

裁判年月日  平成26年 5月 8日  裁判所名  福島地裁会津若松支部  裁判区分  判決
事件番号  平25(わ)65号・平26(わ)4号
事件名  詐欺被告事件
裁判結果  有罪  文献番号  2014WLJPCA05086001

要旨
◆原発事故により営業損害を被った個人又は法人に対して電力会社が簡易迅速に賠償金を支払う手続を利用して賠償金を騙し取ろうとした被告人が、詐欺グループの共犯者らと共謀し、営業実態のない飲食店及び廃品回収業を仕立て上げて賠償金を請求したとして詐欺罪で起訴された事案において、被告人は本件各犯行を主導的な立場で遂行しており非常に悪質といえること、電力会社が被った損害額は大きい上、本件各犯行の結果、真実の被害者に対して速やかになされるべき損害賠償に係る事務処理手続に多大な支障、停滞が生ずる可能性があることからしても、本件各犯行のもたらした結果は深刻であり被告人の刑事責任は極めて重いなどとして、被告人に懲役4年の実刑を言い渡した事例

参照条文
刑法246条1項

裁判年月日  平成26年 5月 8日  裁判所名  福島地裁会津若松支部  裁判区分  判決
事件番号  平25(わ)65号・平26(わ)4号
事件名  詐欺被告事件
裁判結果  有罪  文献番号  2014WLJPCA05086001

上記の者に対する詐欺被告事件について,当裁判所は,検察官小原一利,私選弁護人岩崎修各出席の上審理し,次のとおり判決する。

 

 

主文

被告人を懲役4年に処する。
未決勾留日数中70日をその刑に算入する。

 

理由

(罪となるべき事実)
被告人は,平成23年3月11日に発生した東京電力株式会社福島第一原子力発電所及び福島第二原子力発電所における事故により営業損害を被った被害者に対して,同社が簡易迅速に賠償金を支払う手続を利用して,前記被害者であることを装い,同社から賠償金をだまし取ろうと企て,
第1  A,B及びCと共謀の上,平成24年7月中旬ころ,福島県会津若松市内の郵便局から,東京都港区〈以下省略〉郵便事業株式会社a支店に設けられた東京電力株式会社の私書箱宛てに郵送する方法で,同社福島原子力補償相談室補償推進ユニット補償運営第3部産業補償第11グループマネージャーDらに対し,真実は,前記Aが同事故当時から福島県会津若松市〈以下省略〉bビルにおいて飲食店を経営していた事実はなく,また,同事故によって同店が営業損害を被った事実もないのに,これらがあるように装い,前記Aが同事故当時から前記bビル4階において「スナックc」の名称で飲食店を経営し,同事故によって同店が営業損害を被った旨の虚偽の内容の「賠償金ご請求書」を送付するなどして賠償金を請求し,前記石坂らをして同事故によって生じた営業損害に基づく正当な賠償金請求である旨誤信させ,よって,同年8月14日,同社従業員をして,福島県耶麻郡〈以下省略〉株式会社福島銀行d支店に開設された前記A名義の普通預金口座に現金524万8288円を振込入金させ,もって人を欺いて財物を交付させた
第2  E及びCと共謀の上,平成24年7月下旬ころ,福島県会津若松市内又はその周辺から,東京都港区〈以下省略〉郵便事業株式会社a支店に設けられた東京電力株式会社の私書箱宛てに郵送する方法で,同社福島原子力補償相談室補償推進ユニット補償運営第3部産業補償第9グループマネージャーFらに対し,真実は,前記Eが同事故当時から福島県会津若松市〈以下省略〉において廃品回収業を経営していた事実はなく,また,同事故によって同人が同業に関して営業損害を被った事実もないのに,これらがあるように装い,前記Eが同事故当時から前記場所において「e社」の名称で廃品回収業を経営し,同事故によって同人が同業に関して営業損害を被った旨の虚偽の内容の「賠償金ご請求書」を送付するなどして賠償金を請求し,前記Fらをして同事故によって生じた営業損害に基づく正当な賠償金請求である旨誤信させ,よって,同年8月14日,同社従業員をして,福島県会津若松市〈以下省略〉株式会社東邦銀行f支店に開設された前記E名義の普通預金口座に現金278万5169円を振込入金させ,もって人を欺いて財物を交付させた
ものである。
(証拠の標目)
括弧内の甲,乙の番号は,検察官請求証拠の番号を示す。
判示全部の事実
被告人の当公判廷における供述
判示第1の事実
被告人の検察官調書(乙2)
A(甲19),B(甲20,21)及びC(甲26)の各検察官調書謄本
G(甲4),H(甲5),I(甲6),D(甲12),J(甲13),K(甲14),L(甲17)及びC(甲22ないし25)の各警察官調書謄本
M外1名の告訴状謄本(甲3)
捜査報告書謄本(甲2,18)
捜査復命書謄本(甲1,7ないし11)
捜査関係事項照会書謄本(甲15)及び同回答書謄本(甲16)
判示第2の事実
被告人の検察官調書(乙6)
E(甲41)及びC(甲42)の各検察官調書謄本
I(甲28)及びF(甲29)の各警察官調書謄本
Iの被害届謄本(甲27)
捜査復命書謄本(甲30,31,38ないし40)
電話聴取書謄本(甲43)
捜査関係事項照会書謄本(甲32,34,36)及び同回答書謄本(甲33,35,37)
(法令の適用)
罰条
判示第1,第2の各所為
刑法60条,246条1項
併合罪の処理 刑法45条前段,47条本文,10条により犯情の重い判示第1の罪の刑に法定の加重
未決勾留日数の算入 刑法21条
訴訟費用の不負担 刑事訴訟法181条1項ただし書
(量刑の理由)
本件は,東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)が,平成23年3月11日に発生した東京電力福島第一原子力発電所及び福島第二原子力発電所における事故(以下「本件原発事故」という。)により営業損害を被った個人又は法人(以下「被害者」という。)に対する簡易迅速な損害賠償を図る手続を採用していることを悪用し,被告人が,東京電力から賠償金名目で金銭を詐取しようとする詐欺グループの共犯者らとともに,東京電力に対し,営業実態のない架空の被害者を仕立て上げて損害賠償請求をし,本来被害者救済に充てられるべき賠償資金を管理する同社から,立て続けに,多額の金員をだまし取ったという事案である。
被告人は,あらかじめ,共犯者らとの間で,だまし取った金員の半分を成功報酬として受け取ること,また,営業実態を仮装するために行う虚偽の確定申告に係る納税費用を貸し付け,3割の利息を付して返済させることを約束した上で,被告人の指示を無碍には断れない従属的立場にある前記Cを使って,上記の確定申告手続や,損害賠償請求書類の作成等の細かな手口を共犯者らに対して種々指南又は指導する等,本件各犯行を主導的な立場で遂行しており,非常に悪質といわなければならない。
東京電力が被告人の関わった本件各犯行により被った損害額は800万円余と大きい上,賠償資金が国からの多額の財政支援,更には国民が負担する電気料金により形成されていること,本件各犯行の結果,真実の被害者に対して速やかになされるべき損害賠償に係る事務処理手続に多大な支障,停滞が生ずる可能性もあることからしても,本件各犯行のもたらした結果は深刻であって,被告人の東京電力に対する被害弁償が一部に止まり,その被害が未だ回復していないことも併せて考慮すると,被告人の刑事責任は極めて重大といわなければならない。
そうすると,被告人が本件各犯行を認めて反省していること,被告人が被害額の一部である400万円を東京電力に弁償したこと,被害弁償のために奔走した被告人の家族の被告人に対する今後の監督が期待できることなど,被告人に有利な事情を斟酌しても,なお,主文のとおりの実刑に処するのが相当であると判断した。
よって,主文のとおり判決する。
(求刑 懲役5年)
(裁判官 渡邉和義)

 

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