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「営業アウトソーシング」に関する裁判例(15)平成29年 8月30日 東京地裁 平28(ワ)18663号 損害賠償等請求事件

「営業アウトソーシング」に関する裁判例(15)平成29年 8月30日 東京地裁 平28(ワ)18663号 損害賠償等請求事件

裁判年月日  平成29年 8月30日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平28(ワ)18663号
事件名  損害賠償等請求事件
裁判結果  一部認容  文献番号  2017WLJPCA08308004

要旨
◆日本年金機構法に基づいて設立された特殊法人である原告が、株式会社である被告に対し、原告の各事務センターにおけるデータ入力業務等を受託した被告は契約期間の途中で履行不能に陥ったため、同各業務委託契約を解除したとして、債務不履行による損害賠償金及び約定の違約金等の支払を求めた事案において、本件各契約では、被告は原告に違約金額と損害額のいずれか高い方を支払うこととされていたところ、本件解除後の業務量がそれ以前よりも多かったこと、同各契約に係る業務委託料が人件費の水準に見合ったものとなっていなかった可能性を否定できないなどの事情を考慮すると、本件解除後に原告が負担した人件費が契約金額を大幅に超過したことが必ずしも不自然であるとはいえない上、業務時間数、支払った給与等の金額についても通常予測できる範囲を超えていたとはいえないこと等から、原告が負担した人件費はいずれも同各契約に定める「通常かつ直接の損害」と認められるなどとして、原告が請求できる損害額及び違約金額を認定し、請求を一部認容した事例

参照条文
民法415条
民法416条
民法420条
民法542条
民法643条
民法656条

裁判年月日  平成29年 8月30日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平28(ワ)18663号
事件名  損害賠償等請求事件
裁判結果  一部認容  文献番号  2017WLJPCA08308004

東京都杉並区〈以下省略〉
原告 日本年金機構
同代表者理事長 A
同訴訟代理人弁護士 浅岡輝彦
同 古原暁
同 藤並知憲
同訴訟代理人 C
同 D
同 Eほか
福井市〈以下省略〉
被告 株式会社共栄データセンター
同代表者代表取締役 B
同訴訟代理人弁護士 菱山泰男
同 北脇俊之ほか

 

 

主文

1  被告は,原告に対し,715万2428円及びこれに対する平成28年6月21日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2  原告のその余の請求を棄却する。
3  訴訟費用は,これを100分し,その3を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。
4  この判決の主文第1項は,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求の趣旨
被告は,原告に対し,737万0040円及びうち735万1672円に対する平成28年6月21日から,うち1万8368円に対する平成28年10月15日から,各支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
本件は,原告が,被告に対し,原告の和歌山事務センター,大分事務センター及び福島事務センターにおけるデータ入力業務等を委託したところ,被告が契約期間の途中で履行不能に陥ったため上記各業務委託契約を解除したとして,和歌山事務センター及び大分事務センターについては債務不履行による損害賠償金及び遅延損害金の支払を,福島事務センターについては約定の違約金及び遅延損害金の支払を,それぞれ求める事案である。
1  前提となる事実(当事者間に争いがないか,掲記の証拠又は弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1)  当事者
ア 原告は,日本年金機構法に基づいて設立された特殊法人である。
イ 被告は,ソフトウェアの開発,事務処理のアウトソーシング受託等を業とする株式会社である。
(2)  業務委託契約の締結
ア 原告と被告は,平成26年7月30日,原告の和歌山事務センターにおける入力業務及び共同処理業務に関し,次のような内容の業務委託契約(以下「本件契約(和歌山)」という。)を締結した。
(ア) 委託期間
平成26年10月1日から平成27年9月30日まで
(イ) 委託料
4226万2560円(月額352万1880円)
(ウ) 再委託の禁止
被告は,業務の全部又は主体的部分を一括して第三者に委託してはならない。
(エ) 履行不能の通知
被告は,履行期限までに履行を完了する見込みがなくなった場合,又は完了することができなくなった場合は,直ちに原告に書面により通知するものとする。
(オ) 原告の解除権
被告の責めに帰す理由により,被告が契約を履行しないとき,又は履行する見込みがないと明らかに認められるときは,原告は,被告に対し,直ちに契約を解除することができる。
(カ) 違約金,損害賠償
被告の責めに帰す理由により契約が解除されたときは,被告は,原告に対し,委託料総額から原告による納品等検査が完了した期間(原告が履行済みと認めた期間)に相当する委託料を控除した金額の100分の10に相当する金額を違約金として支払う。
また,被告は,原告に対し,原告が被った通常かつ直接の損害を賠償しなければならない。
ただし,被告は,原告に対し,違約金額と損害額のいずれか高い方を支払う。
(キ) 相殺
本件契約(和歌山)に基づき被告が原告に支払うべき金額があるとき,原告はいつでもその金額と原告が被告に対し支払う対価を相殺することができる。
イ 原告と被告は,平成26年8月7日,原告の大分事務センターにおける入力業務及び共同処理業務に関し,次のような内容の業務委託契約(以下「本件契約(大分)」という。)を締結した。
(ア) 委託期間
平成26年10月1日から平成27年9月30日まで
(イ) 委託料
4730万4000円(月額394万2000円)
(ウ)ないし(キ)
本件契約(和歌山)と同じ。
ウ 原告と被告は,平成26年8月8日,原告の福島事務センターにおける入力業務及び共同処理業務に関し,次のような内容の業務委託契約(以下「本件契約(福島)」といい,本件契約(和歌山)及び本件契約(大分)と併せて「本件各契約」という。)を締結した。
(ア) 委託期間
平成26年10月1日から平成27年9月30日まで
(イ) 委託料
6911万8272円(月額575万9856円)
(ウ)ないし(キ)
本件契約(和歌山)及び本件契約(大分)と同じ。
(3)  被告による債務不履行及び原告による解除
ア 被告は,平成27年3月27日,原告に対し,本件契約(和歌山)について,同年4月1日以降業務に従事する人員を確保できないとして,履行不能を通知した。また,被告は,同年3月30日,原告に対し,本件契約(大分)及び本件契約(福島)についても,同年4月1日以降業務に従事する人員を確保できないとして,履行不能を通知した。
被告が業務に従事する人員を確保できなくなったのは,被告が本件各契約に係る業務を再委託していた株式会社KDCキャリアコンサルティング(以下「訴外会社」という。)の被用者に対する賃金の支払が滞ったためであった。
イ 原告は,平成27年3月31日,被告の債務不履行に基づく履行不能を理由として,本件各契約を解除した(以下「本件解除」という。)。
ウ 本件解除により被告が原告に対して負担する違約金の額は,次のとおりである。
(ア) 本件契約(和歌山)
業務委託料総額4226万2560円から,業務が完了している期間(平成26年10月から平成27年3月分)の業務委託料2113万1280円を控除した2113万1280円の10%である211万3128円
(イ) 本件契約(大分)
業務委託料総額4730万4000円から,業務が完了している期間(平成26年10月から平成27年3月分)の業務委託料2365万2000円を控除した2365万2000円の10%である236万5200円
(ウ) 本件契約(福島)
業務委託料総額6911万8272円から,業務が完了している期間(平成26年10月から平成27年3月分)の業務委託料3455万9136円を控除した3455万9136円の10%である345万5914円
(4)  原告が被告に対して支払義務を負う業務委託料残金
原告が被告に対して負う平成27年3月分の業務委託料(本件各契約の総計)は,合計1322万3736円である。
2  争点
原告が,本件契約(和歌山)及び本件契約(大分)に関し,違約金額よりも多額の損害を被ったといえるか。また,原告が被告に請求することのできる違約金及び損害賠償の額はいくらか。
(1)  原告の主張
ア 原告は,本件契約(和歌山)及び本件契約(大分)に関し,次のとおりの損害を被った。これらは,いずれも,本件各契約に定める「通常かつ直接の損害」に当たる。
(ア) 人件費
本件各契約に基づく業務は,年金支給事務,健康保険事務等の適正な処理のため,1日たりとも停滞させることができない業務であったことから,原告は,平成27年4月1日から同年9月末日までの間,本件各契約の業務に従事していた訴外会社の被用者を直接雇用し,人員が不足するときは臨時に労働者派遣を受けるなどして,本件各契約に係る業務を自ら遂行せざるを得なかった。
そのために要した人件費は,次のとおりである。なお,被告は,雇用した人員に対し,原告の特定業務契約職員の給与規定に基づく適正な給与を支給している。
① 本件契約(和歌山) 2826万6365円
② 本件契約(大分) 3304万5923円
なお,上半期(平成27年3月まで)と比べて人件費が増大しているのは,主として業務量の増加によるものである。この点,被告は,原告が被告に対し契約外の業務を無償で行わせていたため,人件費が増加したと主張するが,被告が6か月間で行った業務は,年間見込件数の50%以内に収まっており,被告が行った業務は,本件各契約における想定の範囲内のものである。
(イ) 説明会費用
原告は,本件各契約の業務に従事していた訴外会社の被用者を直接雇用するため,現地において説明会を開催し,そのための費用として,以下の金員を負担した。
① 本件契約(和歌山) 6万7946円
② 本件契約(大分) 9万5046円
(ウ) 和歌山事務センターへの旅費及び滞在費
原告は,本件契約(和歌山)の業務に関し,業務停止による混乱を収束させ,また人員不足を補うため,平成27年3月26日から同年4月30日までの間,原告の近畿ブロック本部職員を延べ91回にわたり和歌山事務センターに応援として派遣し,その旅費,滞在費として合計22万8250円を支出した。
(エ) 被告への訪問費用
本件解除を受けて,原告は,被告と協議するため,平成27年4月24日,同年5月8日,同年8月24日,同月25日及び同年11月6日の5回にわたり職員に被告を訪問させ,その旅費として32万6417円を支出した。これを本件各契約について按分(三等分)すると,本件契約(和歌山)及び本件契約(大分)については,それぞれ10万8806円となる。
イ 控除すべき金額
原告は,本件解除により,平成27年4月から同年9月分の業務委託料の支払を免れたので,本件契約(和歌山)については2113万1280円,本件契約(大分)については2365万2000円(いずれも業務委託料総額の2分の1)を損害額から控除する。
ウ 損害額
以上のとおり,原告が,被告の債務不履行により,本件契約(和歌山)及び本件契約(大分)に関し被った損害の額は以下のとおりである。
(ア) 本件契約(和歌山) 754万0087円
計算式:2826万6365円+6万7946円+22万8250円+10万8806円-2113万1280円
(イ) 本件契約(大分) 959万7775円
計算式:3304万5923円+9万5046円+10万8806円-2365万2000円
エ 原告が被告に請求することのできる違約金及び損害賠償の額
以上によれば,原告は,被告に対し,本件契約(和歌山)に係る損害賠償金754万0087円,本件契約(大分)に係る損害賠償金959万7775円及び本件契約(福島)に係る違約金345万5914円(本件契約(福島)については,損害額が違約金より低額であるため,違約金を請求する。)の合計2059万3776円を請求することができる。
オ 相殺の意思表示
原告は,被告に対し,平成27年5月12日,原告の被告に対する前記違約金及び損害賠償債権2059万3776円と被告の原告に対する業務委託料債権(1322万3736円)とを対当額で相殺する旨の意思表示をした(以下「本件相殺」という。)。
したがって,原告は,被告に対し,本件相殺後の残金737万0040円を請求する。
3  被告の主張
(1)  原告が主張する人件費等は,いずれも,本件各契約に定める「通常かつ直接の損害」に当たらない。本件各契約は,毎月発生するデータを逐次入力するというものであり,1か月ごとの可分な業務の集まりにすぎないから,途中解約された場合でも,余分な作業やコストが大量に発生することは考えられない。したがって,本件解除後に発生した業務に係る人件費の増加等を損害として,違約金額を超える損害賠償請求をすることは,本件各契約において想定されていないというべきである。
(2)  仮に本件解除後に原告が本件各契約で定められていた金額を超える人件費を負担したとしても,その増加額は下半期における業務量の増加量に比して過大である。原告が,新たに雇用した従業員に対しどのような業務を行わせたのかは明らかではなく,人件費の増加分が,すべて本件各契約に定める「通常かつ直接の損害」に当たることの立証があるとはいえない。
原告は,本件各契約において,被告に対し無償で契約外の業務(入札時の仕様書において入力業務委託見込件数が0とされていた業務)を行わせており,本件解除後に人件費が増加したのは,当該業務に係る人件費を負担せざるを得なくなったことによるものである可能性を否定できない。このような損害は,被告に対し不当に安価で業務を行わせていたことによる一種の逸失利益であって,本件各契約に定める「通常かつ直接の損害」に当たらない。
(3)  説明会費用,旅費及び滞在費,被告への訪問費用についても,その必要性,相当性が認められず,本件各契約に定める「通常かつ直接の損害」に当たるとはいえない。
(4)  以上によれば,本件解除により被告が原告に負担するのは,本件各契約に定める違約金合計793万4242円にとどまるところ,本件相殺により,原告の違約金請求権は消滅した。
第3  当裁判所の判断
1  人件費について
(1)  証拠(甲14~19,23,29~31〔書証は,枝番のあるものは枝番を含む。〕,証人E)及び弁論の全趣旨によれば,①原告は,被告による履行不能の通知を受けて,平成27年4月1日以降,各事務センターにおいて訴外会社の下で入力業務等に従事していた被用者を直接雇用し,あるいは,人員が不足する場合には労働者の派遣を受けるなどして,各事務センターにおける業務を継続したこと,②その結果,同日から同年9月30日までの間に原告が支出を余儀なくされた人件費は,和歌山事務センターについては2826万6365円,大分事務センターについては3304万5923円であったことが認められる。
証拠(甲20,21,証人E)によれば,各事務センターにおいて被告が受託していた業務は,国民年金,健康保険・厚生年金保険及び年金給付に係る届出書等の入力業務及びこれに付随する業務であって,年金給付行政を遂行するに当たって必要不可欠な業務であったことが認められる。したがって,原告において,年金給付に係る業務に支障を及ぼさないよう,本件各契約に基づいて入力業務等に従事していた者らを直接雇用し,引き続き業務に従事させたことには合理性が認められ,これにより原告が支出した費用は,本件各契約に定める「通常かつ直接の損害」に当たると認められる。
(2)  この点について,被告は,本件各契約に係る業務は,毎月発生するデータを逐次入力するというもので,本件解除後に人件費が大幅に増加するということは考え難く,原告が主張する人件費の増加分は,契約外の業務を行わせたことによるものである可能性を否定することができず,本件各契約に定める「通常かつ直接の損害」には当たらないと主張する。
しかしながら,証人Eによれば,事務センターにおける入力業務は,4月から5月にかけてと7月が繁忙期であることが認められること,被告が原告に提出した積算資料等(甲17~19)によれば,被告は,平成27年4月から同年9月までの作業時間数を,平成26年10月から平成27年3月までの作業時間数より多く(本件契約(和歌山)については,入力業務で約6%,共同処理業務で約31%,本件契約(大分)については,入力業務で約9%,共同処理業務で約29%)見積もっていることからすれば,本件解除後の平成27年4月から同年9月までの業務量は,それ以前よりも多かったものと考えられ,人件費が増加することは不自然なこととはいえない。また,証人Bによれば,被告は,本件各契約において業務を一括して訴外会社に再委託し,業務委託料のうち8%を被告の利益とし,その余を訴外会社が取得していたことが認められるところ,前記前提となる事実のとおり,訴外会社は,従業員に対する給与の支払ができない状況に陥っていたこと,当時の被告代表者であったBは,本件契約(和歌山)及び本件契約(大分)は,いずれもそれほど利益の出ない安い金額で落札した契約であると述べていること(乙4,証人B)からすれば,そもそも本件契約(和歌山)及び本件契約(大分)における業務委託料が,人件費の水準に見合ったものとなっていなかった可能性も否定できない。
これらの事情を考慮すれば,本件解除後に原告が負担した人件費が契約金額を大幅に超過したことが必ずしも不自然であるとはいえない。そして,証拠(甲14,15〔いずれも枝番を含む。〕,17~19)によれば,原告において雇用した職員の数は,被告が予定していた作業員の数をやや上回る程度であったことが認められ,業務時間数,支払った給与等の金額についても,通常予測できる範囲を超えていたものということはできないから,原告が負担した人件費は,いずれも本件各契約に定める「通常かつ直接の損害」と認めることができる。
なお,この点に関し,証人Bは,原告が訴外会社の被用者を雇用した際の賃金水準が訴外会社のそれよりも高かった可能性を指摘し,証人Eもこの点は認めていることからすれば,賃金の上昇による人件費の増加もあったものと推測される。しかしながら,証拠(甲23,30,証人E)によれば,原告は,訴外会社の被用者を直接雇用するに際し,業務内容を原告の給与規程に当てはめて賃金を決定したことが認められるところ,前記のとおり,原告が事務センターにおける業務に支障が出ないように職員を直接雇用したことがやむを得ないものであったと評価できる以上,それが社会通念とかけ離れた賃金水準でない限りは,自らの給与規程に従って賃金額を決定することが許されるというべきであって,訴外会社の賃金水準よりも高い賃金を支払ったことは,当該支出が「通常かつ直接の損害」であることの妨げになるものではない。
2  説明会費用について
証拠(甲24~26,34〔いずれも枝番のあるものは枝番を含む。〕)によれば,原告は,本件解除の後,本件契約(和歌山)及び本件契約(大分)について訴外会社の被用者を直接雇用するため,平成27年3月31日,和歌山及び大分において1回ずつ説明会を開催したこと,そのため,原告の本部及び近畿ブロック本部又は九州ブロック本部の従業員が現地に出張するための費用として,本件契約(和歌山)に関しては6万7946円,本件契約(大分)に関しては9万5046円を支出したことが認められる。
上記説明会の趣旨,回数,出席人数等にかんがみれば,いずれも,被告の債務不履行による「通常かつ直接の損害」と認めることができる。
3  和歌山事務センターへの旅費及び滞在費について
証拠(甲27の1~91,甲34,証人E)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,被告の履行不能に伴い和歌山事務センターにおいて生じた業務の混乱を収束させるため,平成27年3月26日から同年4月30日までの間,原告の近畿ブロック本部職員を和歌山事務センターに派遣し,その旅費,滞在費として合計22万8250円を支出したことが認められる。
原告が,年金事務を停滞させないため,和歌山事務センターの業務を円滑に遂行すべき責任を負っていたことからすると,上記費用は,被告の債務不履行による「通常かつ直接の損害」と認めることができる。
4  被告への訪問費用について
原告は,本件解除後の損害賠償等をめぐる被告との折衝に際し,原告の職員が福井県の被告の本社等を訪問するために要した費用についても,被告の債務不履行による「通常かつ直接の損害」に当たると主張する。
しかしながら,本件解除により損害賠償債務を負うに至った被告との折衝に要する経費は,債権回収のための経費というべきものであるところ,どのような方法で,どの程度の経費をかけて債権回収を図るかは,債権者である原告の債権回収方針に左右されるものであって,債権回収のために要した費用が,すべて債務不履行から当然に生ずる損害であるとはいえない。そして,原告が請求する訪問費用の内訳についてみると,平成27年4月24日,同年5月8日,同年8月24日,同月25日及び同年11月6日にいずれも複数名の原告職員が福井県の被告本社を訪問したというもの(11月6日の訪問に際しては,さらに富山市の訴外会社の本社も訪問している。)であるが,これらの訪問が,債権回収のために必要不可欠であったことを認めるに足りる証拠はない。
そうすると,原告が請求する訪問費用は,被告の債務不履行による「通常かつ直接の損害」とまでは認めることができない。なお,甲1,2によれば,本件各契約において,原告には,被告に対する損害賠償債権等の保全のために必要な調査,立入権限が与えられていることが認められるが,権限があることと権限を行使した場合の費用がすべて債務不履行による損害に含まれるかどうかは別問題であるから,前記認定を左右しない。
5  結論
以上によれば,原告が被告に請求することのできる損害金及び違約金の額は,次のとおり715万2428円となる。
(1)  損害額
ア 本件契約(和歌山) 743万1281円
計算式:2826万6365円+6万7946円+22万8250円-2113万1280円
イ 本件契約(大分) 948万8969円
計算式:3304万5923円+9万5046円-2365万2000円
ウ 本件契約(福島) 345万5914円(違約金)
(2)  相殺後の残金 715万2428円
計算式:743万1281円+948万8969円+345万5914円-1322万3736円
よって,原告の請求は,被告に対し,715万2428円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成28年6月21日から支払済みまで年6分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるから認容し,その余は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第16部
(裁判官 谷口安史)

 

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