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「営業アウトソーシング」に関する裁判例(35)平成27年 4月28日 東京地裁 平24(ワ)32039号 売買代金等請求事件、売買代金請求事件、代金返還等請求事件、代金返還等請求事件(反訴)

「営業アウトソーシング」に関する裁判例(35)平成27年 4月28日 東京地裁 平24(ワ)32039号 売買代金等請求事件、売買代金請求事件、代金返還等請求事件、代金返還等請求事件(反訴)

裁判年月日  平成27年 4月28日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平24(ワ)32039号・平25(ワ)3822号・平25(ワ)10520号・平26(ワ)17583号
事件名  売買代金等請求事件、売買代金請求事件、代金返還等請求事件、代金返還等請求事件(反訴)
文献番号  2015WLJPCA04288013

裁判年月日  平成27年 4月28日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平24(ワ)32039号・平25(ワ)3822号・平25(ワ)10520号・平26(ワ)17583号
事件名  売買代金等請求事件、売買代金請求事件、代金返還等請求事件、代金返還等請求事件(反訴)
文献番号  2015WLJPCA04288013

平成24年(ワ)第32039号 売買代金等請求事件(第1事件)
平成25年(ワ)第3822号 売買代金請求事件(第2事件)
平成25年(ワ)第10520号 代金返還等請求事件(第3事件)
平成26年(ワ)第17583号 代金返還等請求事件(第1事件反訴)

当事者 別紙当事者目録記載のとおり

 

 

主文

1  インターニツクスは,TMリンクに対し,64万6215米ドル及び288万7500円並びにこれらに対する平成23年10月21日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2  遠藤照明は,インターニツクスに対し,74万米ドル及びこれに対する平成23年12月21日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。
3  TMリンクの第1事件のその余の請求を棄却する。
4  インターニツクスの第1事件反訴及び第2事件のその余の請求をいずれも棄却する。
5  遠藤照明の第3事件の請求をいずれも棄却する。
6  訴訟費用は,第1事件,第1事件反訴,第2事件及び第3事件を通じ,TMリンクに生じた費用はこれを18分し,その1をTMリンクの,その余をインターニツクスの負担とし,遠藤照明に生じた費用はこれを20分し,その1をインターニツクスの,その余を遠藤照明の負担とし,インターニツクスに生じた費用はこれを38分し,その1をTMリンクの,その19を遠藤照明の,その余をインターニツクスの負担とする。
7  この判決は,第1項及び第2項に限り,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
1  第1事件
インターニツクスは,TMリンクに対し,76万4944米ドル及び288万7500円並びにこれらに対する別紙「遅延損害金一覧」記載の金員を支払え。
2  第1事件反訴
(1)  TMリンクは,インターニツクスに対し,106万3785米ドル及びうち23万米ドルについては平成23年7月20日から,うち80万5000米ドルについては平成23年8月19日から,うち2万8785米ドルについては平成24年11月12日から各支払済みまで,年6%の割合による金員を支払え。
(2)  TMリンクは,インターニツクスに対し,別紙倉庫目録記載1の倉庫において,別紙物件目録1記載の動産3万5655台を受領せよ。
(3)  TMリンクは,インターニツクスに対し,平成24年6月5日から前項の受領の日まで1か月当たり2万1713円の割合による金員を支払え。
(4)  TMリンクは,インターニツクスに対し,別紙倉庫目録記載2の倉庫において,別紙物件目録記載1の動産1万4345台及び別紙物件目録2記載の動産9万台を受領せよ。
(5)  TMリンクは,インターニツクスに対し,平成24年6月5日から前項の受領の日まで1か月当たり6万3546円の割合による金員を支払え。
(6)  TMリンクは,インターニツクスに対し,468万4304円及びうち2万1182円に対する平成24年8月20日から,うち266万2334円に対する平成23年12月25日から,うち200万0788円に対する平成24年1月20日から各支払済みまで,年6%の割合による金員を支払え。
3  第2事件
(1)  遠藤照明は,インターニツクスに対し,74万米ドル及びこれに対する平成23年12月21日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。
(2)  遠藤照明は,インターニツクスに対し,11万8729米ドル及びこれに対する平成26年7月15日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。
4  第3事件
(1)  インターニツクスは,遠藤照明に対し,108万9900米ドル及びうち61万4946米ドルに対する平成23年8月19日から,うち47万4954米ドルに対する同年9月20日から各支払済みまで,年6%の割合による金員を支払え。
(2)  インターニツクスは,遠藤照明に対し,別紙倉庫目録記載1の倉庫において,別紙物件目録1記載の動産3万5655台を受領せよ。
(3)  インターニツクスは,遠藤照明に対し,平成24年6月5日から前項の受領の日まで1か月当たり2万1713円の割合による金員を支払え。
(4)  インターニツクスは,遠藤照明に対し,別紙倉庫目録記載2の倉庫において,別紙物件目録記載1の動産1万4345台及び同目録記載2の動産9万台を受領せよ。
(5)  インターニツクスは,遠藤照明に対し,平成24年6月5日から前項の受領の日まで1か月当たり6万3546円の割合による金員を支払え。
(6)  インターニツクスは,遠藤照明に対し,468万4304円及びうち2万1182円に対する平成24年8月20日から,うち266万2334円に対する平成23年12月25日から,うち200万0788円に対する平成24年1月20日から各支払済みまで,年6%の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
1  遠藤照明が製造するLED照明器具に用いる部品である調光電源(「調光」とは,照明の明るさを調節する機能を指す。以下「本件調光電源」という。)5万台及び非調光電源(以下「本件非調光電源」といい,本件調光電源と併せて「本件各電源」という。)10万台を,遠藤照明の要求に合わせてTMリンクが製造し,インターニツクスを介して遠藤照明に販売するため,TMリンクとインターニツクスとの間で,インターニツクスが,TMリンクが製造する上記本件各電源を買い受け(以下「本件契約1」という。),インターニツクスと遠藤照明との間で,インターニツクスがTMリンクから買い受けた上記本件各電源を売り渡す(以下「本件契約2」という。)旨の各契約を締結した。
第1事件は,TMリンクが,インターニツクスに対し,本件非調光電源1万台につき,インターニツクスが引取を拒否するため,本件契約1を解除したとして,11万8729米ドル(売買代金から他に売却する場合の売却額を控除した金額に弁護士費用を加えたもの)の損害賠償を求めるとともに,本件調光電源5万台については引渡が完了したとして,売買代金64万6215米ドルの支払と,同契約に付随して支払を合意した開発費用288万7500円の支払を求めた事案であり,第1事件反訴は,インターニツクスが,TMリンクは,本件各電源の納入義務に関して仕様不合致という債務不履行を侵しているし,TMリンクの責めに帰すべき事由により,遠藤照明は,インターニツクスに対し,本件契約2を解除していることから,TMリンクの仕様合致義務の履行は不能になっているため,本件契約1を全部解除したと主張して,TMリンクに対し,原状回復請求として,①支払済みの代金合計106万3785米ドルの返還,②すでに納入された本件非調光電源9万台及び本件調光電源5万台の引取を,損害賠償請求として,③保管料相当損害金,荷役料金及び海上運賃等の支払を求めた事案である。
第2事件は,インターニツクスが,遠藤照明との間で,本件契約2を締結し,本件調光電源5万台を引き渡したが,遠藤照明はその代金を支払わないとして,遠藤照明に対し,売買代金74万米ドルの支払を求めるとともに,遠藤照明のインターニツクスに対する契約解除が法的な理由がないものであり,不法行為に該当するとして,不法行為に基づき,本件非調光電源1万台に関し損害賠償請求をした事案である。
第3事件は,遠藤照明が,本件契約2において平成23年3月15日付け「詳細仕様設定書」(丙5)の内容が要求仕様(注文製品が満たすべき性能)とされていたことを前提に,納入された調光電源及び非調光電源がその要求仕様を満たしていないとして,本件契約2を解除したと主張して,インターニツクスに対し,原状回復請求として,①支払済みの売買代金108万9900米ドルの返還,②本件各電源14万台の引取を,損害賠償請求として,③保管料相当損害金,荷役料金及び海上運賃等の支払を求めた事案である。
2  前提事実(当事者間に争いがないか,掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1)  当事者
ア TMリンクは,半導体,電子機器の製造,販売等を行っている株式会社であり,資本金の額は,本件契約1締結当時2000万円であり(甲15),A(以下「TMリンク代表者」という。)が代表取締役を務めている。同社は,設計は行うものの,工場を保有しておらず,海外の工場と提携し,当該工場で製造した上で納品を行っている。
TMリンクは,本件各電源に関しては,ACEPower社(以下「ACE社」という。)の工場で生産を行った。
イ インターニツクスは,主に半導体,電子部品及び電子機器等の販売を行っている株式会社(商社)であり,資本金の額は,本件契約1締結当時3億円を超えていた(甲14)。
なお,インターニツクス株式会社を,平成25年7月1日,アヴネットジャパン株式会社が合併して,商号をアヴネット・インターニックス株式会社に変更し,平成27年1月1日,同社が,アヴネット株式会社に商号を変更した。
ウ 遠藤照明は,照明器具,照明器具の安定器及びその電子部品の製造販売及びリース等を業とする株式会社であり,LED照明器具等を製造している。代表取締役は,C(以下「遠藤照明代表者」という。)である。
なお,本件各電源に関する取引に関与したD(以下「D」という。)は,平成23年3月当時,遠藤照明の開発推進部部長であり(丙59,99参照),E(以下「E」という。)は,遠藤照明のコア技術開発課の課長であった(丙90の2参照)。
(2)  遠藤照明とインターニツクスとは,平成22年9月頃から別製品の商談を行っていたが,インターニツクスは,平成23年1月28日,遠藤照明に対し,LED照明器具に用いる調光電源及び非調光電源の調達に関し,その製造及び販売等を業とするTMリンクを紹介し,遠藤照明とTMリンクは,その頃,同日付け機密保持契約を締結した(丙44)。
(3)  遠藤照明(遠藤照明代表者)は,同年2月1日,TMリンクに対し,見積もり作成等に利用するため,同年1月31日付け詳細仕様設定書(乙3の2)を送った(乙3の1)。同仕様設定書には,突入電流(照明器具の電源を入れてから電流が安定するまでの間に瞬間的に流れる大きな電流のこと)規格として「≦12.5A,≦1ms(100VAあたり)」と記載されていた。
(4)  同年2月15日,TMリンク(TMリンク代表者),インターニツクス[F(以下「F」という。)]及び遠藤照明(遠藤照明代表者,D)との間で打合せが行われた。
そして,売買の単価が一旦決まり,翌16日,TMリンクから,インターニツクスに対し,見積書(本件調光電源の単価13.50米ドル,本件非調光電源の単価11.50米ドル。甲34の1及び2,乙11)が提出され,同月28日には,開発スケジュール表が送付された(甲35の1及び2)。
(5)  同年3月15日頃,遠藤照明は,本件各電源に関し,改定詳細仕様設定書(以下「本件仕様書①」という。乙16,丙5)を作成し,同月28日,インターニツクス及びTMリンクに提出した(乙15)。
本件仕様書①には,「突入電流」欄に,「≦12.5A,≦1ms(100VAあたり)」と記載されていた。
(6)  TMリンクは,インターニツクスに対し,同月23日付け「詳細仕様設定書Rev.1」(以下「本件仕様書②」という。甲8の3)を交付した。同仕様書には,突入電流欄に「≦12.5A,≦1ms(100VA)⇒12.5A/100VA 目標 目安としては,≦2ms~10ms」と記載されていた。
なお,遠藤照明は,平成24年7月まで,本件仕様書②(甲8の3)を受領していない旨主張している。
(7)  インターニツクスは,平成23年3月27日頃,TMリンクが作成したスケジュール表をもとに(乙35の1及び2),同月29日付けで本件各電源の開発スケジュール(甲8の4,丙6)を作成し,遠藤照明に提出した。
また,TMリンクは,インターニツクスに対し,同月23日,本件各電源の見積書を提出した(本件調光電源,数量100台につき単価26米ドル,数量5000台につき単価18米ドル,本件非調光電源,数量100台につき単価23米ドル,数量5000台につき単価16米ドル,数量5万台につき単価12.5米ドル。甲40の2)。同見積書には,詳細仕様設定書Rev.1に基づいた価格である旨記載されている。
(8)  インターニツクスとTMリンクは,同年4月1日,代理店基本契約を締結するとともに(以下「本件基本契約」という。甲3),本件各電源を含む遠藤照明向けの製品に係る覚書を締結し(甲4),当該覚書で,毎月20日までに引渡完了した商品について,代金支払日を翌月20日とする旨合意した。
本件基本契約には,以下のような規定がある。
ア 8条 納期とは,個別契約に定める本商品をインターニツクスの指定する場所に納入すべき期日をいい,個別契約ごとに,TMリンクとインターニツクスとが協議して定める。
イ 9条1項 TMリンクは納期に,本商品をインターニツクス所定の納入手続に従い,インターニツクスの指定する場所に納入する。
ウ 10条1項 インターニツクスは,TMリンクによる本商品の納入後,速やかに予め協議して定めた受入検査を行う。
エ 同条7項 第1項の検査合格をもって,本商品のインターニツクスへの引き渡しがあったものとし,予め受入検査を省略する旨の定めをした場合は,本商品の納入をもって,本商品のインターニツクスへの引き渡しがあったものとする。
オ 15条1項 TMリンクは,インターニツクスに納入する本商品について,インターニツクスの要求を満足する品質であることを保証し,かつこれに関する全ての責任を負う。
(9)  同月8日,インターニツクス[F,G(以下「G」という。)],TMリンク(TMリンク代表者)及び遠藤照明(遠藤照明代表者,D)は打合せを行った。インターニツクス作成の同打合せの議事録(甲8の5)には,電源仕様に関する遠藤照明からTMリンクへの確認として,「突入電流:問題無い」と記載されている。他方,遠藤照明が作成した同打合せの議事録(丙31)には,突入電流に関する記載はない。
(10)  同月13日頃,TMリンクは,インターニツクス及び遠藤照明に対し,同日付「製品仕様書(暫定)」を提出した(以下「本件仕様書③」という。甲20,丙94の1)。同仕様書において,突入電流については,「条件」欄に「<2ms~10ms(100VA)」,「最大」欄に「TBD」(「追って決める」の意味)と記載されていた。
(11)  インターニツクスは,遠藤照明に対し,同年4月11日付けで見積書(本件調光電源,量産5万台単価14.8米ドル,本件非調光電源,量産10万台単価12.11米ドル。丙7)を提出した。同見積書には,「仕様書の変更が生じる場合は別途協議させていただきます。本見積り単価は,詳細仕様設定書Rev.1に基づきます。」と記載されている。
(12)  遠藤照明は,インターニツクスに対し,納期を同年5月10日として,同年4月23日付けで注文連絡書(乙1,丙8)を発行し,同月28日,インターニツクスは,TMリンクに対し,注文書(甲1の1)を発行した。
遠藤照明作成の上記注文連絡書には,「※本書は,注文の確認です。 月日までに必ず連絡下さい。※納品日の納期で注文書を発行致します。」との記載がある。
したがって,遠藤照明とインターニツクスは,同年4月23日には,本件調光電源につき代金合計74万米ドル,本件非調光電源につき,代金合計121万1000米ドルとして本件契約2を,インターニツクスとTMリンクは,同月28日に,本件調光電源につき代金合計67万5000米ドル,本件非調光電源につき,代金合計115万米ドルとして本件契約1をそれぞれ締結した。
また,本件契約1に付随する契約として,TMリンクは,インターニツクスとの間で,インターニツクスは,TMリンクに対し,本件各電源などの開発にかかる開発費用288万7500円(消費税込)を支払う旨の合意をした(以下「本件開発契約」という。甲1の1及び2)。
(13)  TMリンクは,同年5月27日,インターニツクス及び遠藤照明に対し,同日付け製品仕様書Rev.1.1(甲21)を提出した(乙67)。同仕様書において,突入電流に関する記載は,同年4月13日付本件仕様書③(甲20)と同様であった。
(14)  遠藤照明(D)は,インターニツクスのH(以下「H」という。)に対し,同月28日,本件各電源について同年6月10日から同年7月24日までの間の納期を記載し,その納期を遵守するよう求めるメールを送信し,インターニツクスのGは,これをTMリンク代表者に転送した(甲22)。
他方,遠藤照明のEは,TMリンク及びインターニツクスに対し,同年5月30日,「【TMリンク製】50W非調光LED用定電流電源」と題する同月27日発行の評価チェックリスト(「最大突入電流」欄に,ランク「F」,判定「NG」,「確認必要」と記載されている。乙34の2)と同日発行の仕様書チェックリスト(「突入電流」欄に,ランク「E」,判定「NG」,「確認必要」と記載されている。丙45の2)を提出した(乙34の1,丙45の1)。
(15)  同年6月28日,遠藤照明からTMリンクに対し,本件調光電源について,温度を上昇させると点滅が発生するので対応を取るようにとの指示があり(以下「本件点滅問題」という。),TMリンクがこれに関して対応をとった。
(16)  TMリンクは,同年7月11日,インターニツクス及び遠藤照明に対し,同日付「製品仕様書Rev.1.2」(甲50)を提出した。同仕様書において,突入電流に関する記載は本件仕様書③(甲20)と同様であった。
他方,遠藤照明(E)は,インターニツクス及びTMリンクに対し,同年7月13日付け(乙6の2)及び同月22日付け(丙48)で評価チェックリストを作成し,提出した。各評価チェックリストには,最大突入電流の項目に,ランク「E」,判定「NG」,「基準値を超過している。改善必要。」と記載されている。
(17)  TMリンクは,同年6月から本件非調光電源の出荷を開始した。本件非調光電源は,合計9万台が,同年7月13日から同年9月2日にかけて,中国上海市の日本通運倉庫を経て遠藤照明の佐野工場に搬入された。
そして,遠藤照明は,インターニツクスに対し,本件非調光電源9万台の代金として,同年8月19日に61万4946米ドル,同年9月20日に47万4954米ドルを支払い,インターニツクスは,TMリンクに対し,同様に,本件非調光電源9万台の代金として,同年7月20日に23万ドルを,同年8月19日に80万5000ドルを支払った。
(18)  TMリンクは,同年8月5日付け「製品仕様書Rev.1.3」(甲52)を作成した。同仕様書において,「突入電流」欄の記載は,本件仕様書③(甲20)と同様であったが,加えて,100V入力時の突入電流の数値として14A,242V入力時の突入電流の数値として33.9Aとの記載があった。同仕様書は,遠藤照明に対し,Eに宛てたメールにより,データをダウンロードするよう求める形で提出され,そのメールはインターニツクスにも送信された。
(19)  TMリンクは,インターニツクスに対し,同月23日頃,同月19日付け製品仕様書Rev.1.5(甲55)を提出した。同仕様書には,「突入電流」の「条件」欄上段に,「Vf=100V,T=0.8ms」,「最大」欄上段に「14.0」と,「条件」欄下段に,「Vf=242V,T=0.8ms」,「最大」欄下段に「33.9」と記載されていた。
同仕様書は,インターニツクスのHから,遠藤照明のEに対し,同月24日付けメールに添付して提出された(乙71)。
なお,上記仕様書に先立つ,同月9日付け製品仕様書Rev.1.4(甲53)にも,突入電流に関し同様の記載がある。
(20)  TMリンクは,本件調光電源5万台を製造し,同年9月9日までに出荷したが,遠藤照明がその受け取りを拒否したため,東京の大井ふ頭にある日本通運株式会社の保税倉庫に留め置かれた。
(21)  同年11月17日,遠藤照明,インターニツクス及びTMリンクとの間で,現状確認のため会合がもたれた。
その後,大井ふ頭に置かれていた本件調光電源5万台につき,インターニツクスから遠藤照明に対し請求書が発行され(丙25の1~3),同年11月22日及び29日,遠藤照明の佐野工場に搬入された。
(22)  遠藤照明は,日本通運に対し,本件調光電源5万台の海上運賃等として,同年12月20日に合計266万2334円を,平成24年1月20日に合計90万1100円をそれぞれ支払い(丙26の1~6),また,同日,保税倉庫の保管料として合計109万9688円を支払った(丙27の1~3)。
(23)  平成23年11月以降,遠藤照明,インターニツクス及びTMリンクの間で会合はもたれたが,遠藤照明は,インターニツクスに対し,平成24年6月1日付け回答書兼解除通知書(同月4日配達)において,本件契約2を解除する旨の意思表示を行い,本件非調光電源9万台の支払代金108万9900米ドルの返還及び本件各電源を遠藤照明の佐野工場から運び出すことを求めた(丙29の1及び2)。
(24)  TMリンクは,インターニツクスに対し,同年9月20日,同月末までに,本件非調光電源1万台について,引取方法を指定するように催告したが(甲6),インターニツクスは上記期限までに連絡をしなかった。
TMリンクは,インターニツクスに対し,第1事件訴状,又は予備的に,TMリンク第1準備書面をもって,本件非調光電源1万台に関し,本件契約1を解除する旨の意思表示をした。
(25)  インターニツクスは,TMリンクに対し,平成26年7月14日,第1事件反訴状をもって,本件各電源に関し,本件契約1を解除する旨の意思表示をした。
3  主な争点
【第1事件・第1事件反訴】
(1) 本件契約1における,本件各電源の突入電流規格に関する合意内容(争点1)
(2) 債務の本旨に従った履行の有無―TMリンクは,納入手続として,遠藤照明の事前評価及び承認手続を経た上で,遠藤照明が定めた受入検査に合格する必要があるか否か(争点2)
(3) 開発費用の支払義務の発生について(争点3)
(4) 本件非調光電源1万台にかかる損害賠償請求について(争点4)
(5) 下請代金支払遅延等防止法(以下「下請法」という。)の適用の有無(争点5)
【第2事件・第3事件】
(6) 本件契約2における本件各電源の突入電流規格に関する合意内容(争点6)
(7) 「12.5A/100VA」以下の基準が要求仕様であった場合にも,遠藤照明が,本件各電源の納入を履行として認容したといえるか否か(争点7)
(8) 遠藤照明による本件契約2の解除が不法行為に該当するか(争点8)
(9) 信義則違反,権利濫用(争点9)
第3  当事者の主張
【第1事件・第1事件反訴】
1  本件契約1における,本件各電源の突入電流規格に関する合意内容(争点1)
(1) TMリンクの主張
ア 本件契約1における,本件各電源の突入電流規格に関する合意内容は,本件仕様書③(甲20)のとおりである。すなわち,遠藤照明の了解を取るのは,インターニツクスの責任及び役割であり,TMリンクは,インターニツクスの発注(甲1の1~3)に基づき納品を行えば足りる。そして,インターニツクスとTMリンクとの間で,発注当時,突入電流規格が議論になった事実はなかったのであるから,インターニツクスは,平成23年4月13日付け本件仕様書③(甲20)の内容を了解して本件契約1を締結したものであり,本件契約1における本件各電源の突入電流規格の内容は,遠藤照明の了解の有無にかかわらず,上記仕様書記載のものである。
イ 遠藤照明も,以下のような事実からすれば,本件各電源の突入電流規格の内容について本件仕様書③のとおり了解し,問題としていなかったものである。
(ア) TMリンク代表者らは,インターニツクスから正式発注を受ける過程の打合せやメール,電話等のやり取りにおいて,インターニツクス(F,G)及び遠藤照明(D,E)などに対して,本件各電源の突入電流のレベルについて説明し,遠藤照明が理想値として定める値にすることは売買の予定金額との兼ね合いからコスト的に対応できないことを伝え,遠藤照明,インターニツクス及びTMリンクが出席した平成23年4月8日の打合せにおいても,突入電流については問題ないと確認がされた(甲8の5)。
(イ) TMリンクは,インターニツクスを経由して遠藤照明に対し,又はインターニツクスと遠藤照明に対し同時に,複数の仕様書を提出していた(甲20,21,50,52,53,乙66~71)が,突入電流の項目が「TBD」ないし「14.0」となっていても,遠藤照明からもインターニツクスからも全く異議は出なかった。
(ウ) 遠藤照明は,インターニツクスに対し,平成23年5月28日,本件調光電源の納期を遵守するよう求めるメールを送信し(甲22),同年6月11日には本件調光電源の納品を急ぐように催促する(甲8の7)など,納品を急いでいた。
(エ) 本件調光電源と本件非調光電源は,突入電流のレベルは同様であるところ,TMリンクは,同年6月に本件非調光電源を納品したが,その後も突入電流について問題にならなかった(甲8の8及び9)。
ウ 遠藤照明は,同年5月27日から同年7月22日にかけて,評価チェックリストを送付し,TMリンクに対し突入電流規格に関し不合格であると通知していた旨主張する(乙6の2,34の2,丙45の2,48)。しかし,これらのやり取りは,遠藤照明が,本件各電源の後に続けて,インターニツクスを経由してTMリンクに発注する予定であった(甲8の9)蛍光灯電源の性能を良くすることを考え,やり取りされていたものであり,これらのやり取りをもって,突入電流規格が要求仕様であったということはできない。
エ なお,「12.5A/100VA」というのは,「12.5A/100V」又は「12.5A/100VAC」の誤記であり,100ボルトの電圧で12,5アンペアの電流が流れること,「30.25A/242VA」も同様に,242ボルトの電圧で30.25アンペアの電流が流れることを指す。
(2) インターニツクスの主張
ア 本件仕様書①(乙16,丙5)に記載されている突入電流の数値である,「12.5A/100VA」以下は,本件各電源が満たさなければならない要求仕様値であった。TMリンクは,平成23年4月13日付け本件仕様書③(甲20)が正式な仕様書であるとするが,これは「暫定版」と記載されているとおり,遠藤照明との間で合意したものではない。また,注文書は,あくまでも展示会用の製品の製造及び「プリプロ初期量産」のために発行することになっていたに過ぎず(甲8の4,乙35の2),注文書の発行があるからといって,遠藤照明が本件各電源の仕様や品質について了解又は承認していたはずであるということはできない。
なお,本件に関しては,本件契約1と本件契約2という,二つの契約の形式を採っているが,インターニツクスの役割は,遠藤照明とTMリンクとの間の調整,物流・商流の調整をすることであり,専ら商社的な関与にとどまるものであり,実際にはTMリンクと遠藤照明との間で本件各電源の開発仕様,価格,納期等の契約の主要部分が決定されたものであった。
イ 以下のような事実からすれば,遠藤照明は,本件仕様書①の内容を要求仕様としており,本件契約1でも同様に,本件仕様書①の内容が要求仕様とされていたものである。
(ア) 遠藤照明は,同年3月28日に,インターニツクスに対し,本件各電源の「要求仕様」として,「目標」などの記載のない本件仕様書①(乙16,丙5)をEメールで転送し,これがTMリンクにも送信された(乙15)。
これに先立つ,同月4日付けメールにおいて,TMリンクは,突入電流規格を満たすように対応する旨の意思を表明していた(乙17)。
(イ) 平成23年5月27日付け製品仕様書Rev.1.1(甲21)については,同月30日,遠藤照明からTMリンクに対し,メールに添付して送信された評価チェックリスト(乙34の2)に,最大突入電流についてランク「F」,判定は「NG」,「確認必要」と記載がされ,改善するよう指摘されていた。
(ウ) 同年7月11日付け製品仕様書Rev.1.2(甲50)については,同月13日,遠藤照明からTMリンクに対し,最大突入電流について,ランク「F」,判定は「NG」,「基準値を超過している。改善必要。」として改善要求がされていた(乙6の1及び2)。
上記各評価チェックリスト(乙6の2,34の2)は,いずれも「【TMリンク製】50W非調光LED用定電流電源」と題するチェックリストであり,これは明らかに本件各電源の仕様とTMリンクが製造した製品との間に仕様上の齟齬がないかどうかを確認し,齟齬があった場合の対応を依頼するためのものである。そして,上記各評価チェクリストによる指摘に対し,TMリンクから何ら反論はなかった。
(エ) 同年11月17日の会合で,TMリンク代表者は,要求仕様は開発における契約条件であることを認めていた(乙8)。
ウ 「12.5A/100VA」以下とは,突入電流が100VA当たり12.5A以下となることを意味し,VAとは「電圧×電流」を意味する。本件各電源の入力電流は100V電源使用時0.6Aであるから,本件各電源の「VA」は100V電源使用時60VAとなる。よって,本件突入電流規格をかかる本件調光電源のVAに引き直すと,100V電源使用時7.5Aとなる。したがって,本件調光電源の突入電流の実測値が14.0Aであるなら,本件突入電流規格の約2倍である。
2  債務の本旨に従った履行の有無―TMリンクは,納入手続として,遠藤照明の事前評価及び承認手続を経た上で,遠藤照明が定めた受入検査に合格する必要があるか否か
(1) TMリンクの主張
TMリンクは,インターニツクスに対し,本件各電源の引渡(本件非調光電源1万台については引渡の準備)を完了した。
インターニツクスは,TMリンクが,遠藤照明が指定した納入手続に従っておらず,受入検査に合格していない旨の主張をするが,そもそも納入手続において,インターニツクスの主張するような「事前評価及び承認手続」などというものはなかった。注文書の内容を決めるために仕様書及びサンプル品を提出し,それに対して遠藤照明が評価を行い,了解した場合に注文書が発行されるのであり,TMリンクは,当該仕様書を満たす製品をインターニツクスに納品すれば,その債務は果たしていることになる。また,いわゆる「納入手続」とは,納品個数の検査等を指すものであり,その時点で「評価」を行うことはない。
(2) インターニツクスの主張
本件基本契約9条1項,10条1項,7項によれば,TMリンクが代金請求をするためには,TMリンクは,遠藤照明所定の納入手続として,事前評価及び承認手続を経て納入し,その後,遠藤照明が定めた受入検査に合格する必要があり,遠藤照明及びTMリンクも,以下のア及びイのとおり,上記手続を前提としていたが,TMリンクが出荷した本件各電源は,上記各手続を経ていない。したがって,インターニツクスが本件調光電源の送付を受けた場合でも,上記各手続を経ていない以上,それは本件基本契約9条の「納入」には当たらないし,「納入」を前提とする「引き渡し」(10条)にも当たらない。
ア 遠藤照明は,事前評価及び承認手続のため,TMリンクに対し,本件調光電源の量産開始前に再三にわたって,現品サンプル,仕様書(図面)及び評価データ(以下,これら3点を併せて「本件3点セット」という。)の提出を求め,TMリンクもこれに応じる対応を示していた(乙7の1~3,21)。
イ TMリンクは,平成23年6月30日には,評価不足を謝罪し(乙22),同年11月17日の会合では,未承認のまま量産を開始したことを認めていた(乙8)。
3  開発費用の支払義務の発生について
(1) TMリンクの主張
TMリンクは,本件開発契約に基づき,本件各電源開発関連品(サンプル,基板及び金型)を納品したが(甲7の1~3),インターニツクスは,開発費用288万7500円(消費税込。支払期日平成23年10月20日)を支払わない。
(2) インターニツクスの主張
本件開発費用は,本件各電源開発関連品(サンプル,基板及び金型)の製作にかかった費用であるが,本件各電源の製作のために必要不可欠なものとして製作されたものであるから,本件基本契約上,本件各電源と不可分一体として「本商品」に当たると考えられるべきである。そして,本件各電源に関して,上記2(2)のとおり,債務の本旨に従った履行がなされていない以上,本件各電源開発関連品の弁済の提供があったとしても,代金支払請求権は発生しない。
4  本件非調光電源1万台にかかる損害賠償請求について
(1) TMリンクの主張
ア 本件非調光電源のうち,既に代金の支払を受けた9万台を除く1万台について,引渡の準備が完了しているにもかかわらず,インターニツクスは受領を拒否した(甲6)。そこで,TMリンクは,第1事件訴状をもって本件契約1の当該部分を解除する旨の意思表示をした。
また,TMリンクは,予備的に,遅くとも,弁済の提供を行った平成24年9月20日の翌々月10日である同年11月10日にはインターニツクスに代金支払義務が発生しているが,インターニツクスが代金の支払をしないとして,平成25年3月13日の本件第2回弁論準備手続期日において,同月20日までに代金を支払うよう催告を行うとともに,その支払がなかった場合には解除する旨の意思表示をした。
イ 損害
(ア) 本件非調光電源1万台の売買代金11万5000米ドルから,他に売却した場合の代金1925米ドルを差し引いた11万3075米ドル
(イ) 弁護士費用 上記(ア)の5%に相当する5654米ドル
(2) インターニツクスの主張
本件非調光電源1万台の納入義務は,TMリンクのインターニツクスに対する請負契約又は製造物供給契約に基づく債務の履行であるので,仕事が完成していなければ代金支払義務は発生しないところ(民法632条の適用又は準用),TMリンクは,本件非調光電源1万台を完成させていないのであるから,そもそも代金支払請求権が存在していない。
5  下請法の適用の有無
(1) TMリンクの主張
インターニツクスとTMリンクとの資本金の額の差異や,インターニツクスからTMリンクへの発注は製造委託に当たることからすれば,インターニツクスは下請法上の親事業者に,TMリンクは下請事業者に該当する。したがって,インターニツクスは,TMリンクに対し,同法4条の2による遅延利息を支払う義務を負う。
(2) インターニツクスの主張
商社が,製造委託等の内容(①製造仕様,②下請業者の選定,③下請代金の額の決定等)に全く関与せず,事務手続の代行(注文書の取次,下請代金の請求,支払等)を行っているに過ぎないような場合には,当該商社は,下請業法上の親事業者に当たらない(乙33)。
そして,本件におけるインターニツクスの関与の内容及び程度からすれば,インターニツクスには,下請法の適用はない。
【第2事件・第3事件】
6 本件契約2における本件各電源の突入電流規格に関する合意内容
(1)  インターニツクスの主張
ア 本件各電源の突入電流規格に関する合意内容は,インターニツクスが平成23年3月23日にTMリンクから受領した本件仕様書②(甲8の3)のとおりであり,突入電流規格「12.5A/100VA」以下という基準は,仕様合意ではなく,目標値であると理解している。
他方,遠藤照明は,本件仕様書①(丙5)の突入電流規格が要求仕様である旨主張するが,遠藤照明が,平成23年6月の段階で本件各電源の突入電流値が要求仕様を満たしていないと指摘したことはなく,同年10月下旬頃になって初めてそのような主張をし始めたにすぎない。
イ 以下のような点から,突入電流規格「12.5A/100VA」以下の基準は,目標値であって,仕様合意ではない。
(ア) インターニツクスが,平成23年3月23日にTMリンクから受領した本件仕様書②(甲8の3)には,突入電流規格について「12.5A/100VA 目標 目安としては,≦2ms~10ms」と記載されていた。
(イ) インターニツクスは,平成23年4月8日の会議における遠藤照明からの要請に基づき(甲8の5),同月11日付けの本件各電源に関する「御見積書」(丙7)を遠藤照明に提出したが,同見積書には,「本見積単価は,詳細仕様設定書Rev.1に基づきます。」との記載があった。そして,同日以前にTMリンク又は遠藤照明から発行された詳細仕様設定書の中で,「詳細仕様設定書Rev.1」との名称がついていたのは,本件仕様書②(甲8の3)のみであり,本件仕様書②(甲8の3)は,平成23年3月23日頃,インターニツクスのFが,TMリンクから受領し,遠藤照明のEに手渡しで交付していた。そして,上記見積書(丙7)を受領した遠藤照明は,同見積書の記載に何ら異議を止めることなく,注文連絡書(乙1,丙8)を発行し,これをインターニツクスに交付したのである。そうすると,上記見積書の「本見積単価は,詳細仕様設定書Rev.1に基づきます。」との記載が遠藤照明とインターニツクスとの間の合意内容になることは明らかである。
(ウ) 遠藤照明は,平成23年6月には,本件各電源の突入電力値が「12.5A/100VA」以下の基準を満たしていないことを熟知しながら,TMリンク又はインターニツクスが提示した量産スケジュールを前提に量産を許可し,かつ同月16日から同年9月9日にかけて,量産された本件各電源を指定された受渡場所(中国上海市)において受領した。その後,本件非調光電源9万台については,遠藤照明において代金の支払も完了し,本件調光電源5万台についても,インターニツクスは,遠藤照明の指示により平成23年11月18日付けで請求書を発行した(乙42の1~3)。
ウ 丙6号証には,テクニカルサンプルや展示会用サンプルにより評価を行う旨の記載はあるが,遠藤照明主張の本件3点セットを基に評価する旨の記載はない。遠藤照明が主張する「評価チェックリスト」は,契約締結時のものではなく,契約締結時の遠藤照明とTMリンク,あるいは遠藤照明とインターニツクスとの間の共通認識又は合意内容を示すものではない。
エ 平成23年10月7日にTMリンク(I)が遠藤照明(E)に送付した電子メール添付の評価チェックリストによれば(乙78の1及び2),最大突入電流の評価はDランクになっており,不合格ではないし,このように上記評価チェックリストによって最大突入電流の評価がDランクとなっていることからすれば,「12.5A/100VA」以下という基準は要求仕様ではなく,目標値であったことは明らかである。
(2)  遠藤照明の主張
ア 遠藤照明は,TMリンクを交えて,インターニツクスとの間で,インターニツクスから購入するTMリンク製の本件各電源の要求仕様について協議を重ね,平成23年3月10日頃,同月15日付け本件仕様書①(丙5)の内容で(ただし,時間制限は要求仕様に含まれない。)協議がまとまった。すなわち,本件契約2において,突入電流は「12.5A/100VA」以下(突入電流が100VA当たり12.5A以下となることを意味する。)の基準を満たすことが要求された。
なお,遠藤照明は,同年6月,外部に電源ユニットを発注する際の一般的な突入電流規格をVAあたりの基準から,絶対値で5A以下とするより厳しい基準へと社内的に変更し,同月27日,TMリンクに対し,遠藤照明の現在の突入電流規格が「①5A以下基準又は②入力電流20倍基準」である旨メールで通知した(丙43)。ただし,同通知は,上記新基準を本件契約2に適用するよう強要したものではない。
イ 「12.5A/100VA」以下の基準は要求仕様であり,目標値に過ぎないとの合意がないことは,以下のような事実から認められる。
(ア) 遠藤照明は,平成24年7月に至るまで,インターニツクスが合意内容を示すと主張する本件仕様書②を受け取っていない。
(イ) 遠藤照明からTMリンクに対し,平成23年4月8日までの間に,「12.5A/100VA」以下の基準は目標値に過ぎない等と口頭で伝えたことは一切ない。遠藤照明は,従前より電源ユニットについては自社開発ではなくアウトソーシングにより調達してきたものであり,製品の要求仕様は極めて重要な数値であり,それを目標値とすることはあり得ない。また,平成23年4月8日打合せにかかるインターニツクス作成の議事録(甲8の5)に「突入電流:問題無い」と記載されているのは,遠藤照明が,本件仕様書①の突入電流規格について「問題ないか」を確認し,これに対してTMリンク代表者が「問題ない」と回答したことを記載したものと考えられる。
(ウ) 本件仕様書②には,製品の安全性に影響する突入電流規格のみならず,JIS規格や電気用品安全法上の規格についても「関連基準として目標にする。」と記載されており,記載内容があまりに不合理であるから,この内容で遠藤照明が合意することはおよそあり得ない。
ウ 本件契約2では,遠藤照明が,インターニツクス及びTMリンクから提出される①プリプロ(量産仕様の試作品),②仕様書,③評価データを基に性能評価し,契約上の要求仕様を満たすこと(合格)が確認された場合に量産開始が承認される旨合意していた(丙6)。そして,遠藤照明(E)は,インターニツクス及びTMリンクから提出された評価データ,仕様書につき,チェックリストに基づいて評価した上で,都度,当該チェックリストを送付して,突入電流を含む不合格(NG)事由を通知していた。
なお,遠藤照明がインターニツクス及びTMリンクから本件各電源の突入電流に関する評価データを初めて受け取ったのは平成23年6月24日である(丙43,90の22,94の3)。
(ア) 遠藤照明は,TMリンクから提出された本件非調光電源の評価データが不十分なために評価不能であったため,同年5月30日,インターニツクス及びTMリンクに対し,判定NGと付した評価チェックリスト(乙34の2)を送付して,不合格である旨通知した(乙34の1)。
(イ) 遠藤照明(E)は,インターニツクスから提出された本件調光電源の仕様書Rev.1.1(甲21)についてチェックを行い,同月30日,同月27日付け仕様書チェックリスト(丙45の2)を送付して不合格である旨通知した(丙45の1)。
(ウ) TMリンクは,同年7月12日,本件非調光電源の評価データ(丙12,33の1及び2)を提出し,遠藤照明Eはこれに基づき評価をしたが,同月12日頃,評価チェックリスト(乙6の2。日付は誤記である。)を送付して不合格である旨通知した(乙6の1)。
(エ) その後も,遠藤照明Eは,TMリンクから順次評価データ及び仕様書が提出される都度,評価の上でインターニツクス及びTMリンクに対し,チェックリストを付して不合格である旨通知した(丙48)。
エ インターニツクスは,遠藤照明に交付した見積書(丙7)に,「本見積単価は,詳細仕様設定書Rev.1に基づきます。」との記載があることから,本件仕様書②の内容が,遠藤照明とインターニツクスとの間の合意内容になることは明らかである旨の主張をするが,遠藤照明は,その当時,同仕様書の存在すら知らなかったものであり,その内容も電気用品安全法上の規格を目標値とする等極めて不合理なものであるから,本件仕様書②の内容がインターニツクスと遠藤照明との合意内容になることはおよそあり得ない。
7 「12.5A/100VA」以下の基準が要求仕様であった場合にも,遠藤照明が,本件各電源の納入を履行として認容したといえるか否か
(1)  インターニツクスの主張
遠藤照明は,遅くとも平成23年7月12日には本件各電源の突入電力の実測値が「12.5A/100VA」以下の基準を超過していることを知っていたにもかかわらず,翌13日以降,同年9月にかけて5回にわたり,本件非調光電源の搬入を受け,本件非調光電源の検収を完了させ,その代金を支払っている。
したがって,遠藤照明は,本件非調光電源9万台について,「12.5A/100VA」以下の基準を超過していることを知りつつ履行として認容していたことは明らかである。また,本件非調光電源と本件調光電源は,突入電流仕様について内容に違いはないから,本件調光電源についても,「12.5A/100VA」超過の事実を了承した上で,履行としてその納入を受けているといえる。
したがって,仮に「12.5A/100VA」以下という基準が要求仕様であったとしても,遠藤照明は,本件非調光電源9万台及び本件調光電源5万台のいずれについても,「12.5A/100VA」を超過していることを理由とする解除権及び損害賠償請求権を放棄したものとみるべきである。
(2)  遠藤照明の主張
本件非調光電源9万台と本件調光電源5万台のいずれについても,上記6(2)のとおり,契約上の要求仕様を満たしておらず,本旨弁済には当たらない。
そして,本件非調光電源の納入及び代金支払は,本件非調光電源が未承認であるという事実を知らない遠藤照明購買課とインターニツクスHらが機械的に行ったものであるから(丙91の1の1~14の2),遠藤照明が,本件非調光電源9万台が要求仕様である突入電流規格を満たさないことを知りながら,これを履行として認容し,代金を支払ったということはない。
8 遠藤照明による本件契約2の解除が不法行為に該当するか。
(1)  インターニツクスの主張
前記6(1)アないしエに加え,後記9(1)の事情からすれば,遠藤照明による本件契約2の解除は不当かつ違法なもので,不法行為に該当し,インターニツクスがTMリンクから請求される11万8729米ドルはインターニツクスの損害である。
(2)  遠藤照明の主張
前記6(2)の事情からすれば,遠藤照明による本件契約2の解除は有効である。
9 信義則違反,権利濫用
(1)  インターニツクスの主張
平成23年11月17日,遠藤照明,TMリンク及びインターニツクスとの間で,突入電流問題に関する協議がなされた。その際,三社の間で,突入電流を改善する措置として,本件各電源のサーミスタを付け替えることに合意し,TMリンクが自らの費用で内部のサーミスタの付替えを実施することにより,遠藤照明は,本件調光電源5万台について検収を実施し,突入電流の問題を主張しない旨の合意が成立した(乙8)。しかしその後,TMリンクは,サーミスタの付替えに着手したが,遠藤照明は,上記合意を反故にし,かかる作業の実施を妨げた。
また,遠藤照明は,平成24年5月7日,インターニツクスとの間で,インターニツクスが本件非調光電源9万台のサーミスタ付きケーブルハーネスの量産スケジュールを提出することを停止条件として,本件調光電源5万台を検収するとの合意をした。その後,インターニツクスは,上記量産スケジュールを提出したが,遠藤照明は,前記第2,2(23)のとおり,本件契約2を解除する旨の意思表示を行い,第3事件の訴えを提起した。このような経緯からすれば,遠藤照明の請求は,権利濫用又は信義則に違反し,許されない。
(2)  遠藤照明の主張
否認ないし争う。TMリンクがリワークを行う方向で協議が進められたが,遠藤照明のリワーク要求に対し,インターニツクス及びTMリンクは,先に遠藤照明が,本件調光電源5万台の代金を支払ように求めたのであり,遠藤照明の請求は,何ら権利の濫用又は信義則違反に当たらない。
第4  当裁判所の判断
1  第2,2記載の事実に加え,証拠(以下に記載するものの他,甲76,乙98,100,丙99,104,証人F,証人D,証人E,TMリンク代表者)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められ,これに反する部分は採用できない。
(1)  平成23年1月当時,遠藤照明は,TMリンクとは別のメーカーの電源ユニットを使用して,同年6月にLED照明器具の新製品を発売しようと計画していたが,TMリンクに電源の製作を依頼して安い価格で電源ユニットを仕入れることを考えた(証人D・7頁)。
(2)  同年2月15日,遠藤照明代表者,TMリンク代表者,Fなどが参加して打合せが行われ,本件各電源の単価の額(目標)が定められ,開発費は遠藤照明が負担することにつき検討可能とされた(乙5の4,丙53の1)。
(3)  同年3月2日,FやE,TMリンク代表者らが出席して打合せが行われた(丙56の2)。その際,本件非調光電源の試作品が来週中に,本件調光電源の試作品がその1週間後くらいに提出できる予定であるとの話がされた。
その翌日である同月3日,Eは,TMリンク代表者,TMリンクの執行役員であるJ(以下「J」という。)及びH(インターニツクス)に対し,「【重要】要求仕様の変更について」との件名で,突入電流に関する要求仕様を「12.5A/100VA」に変更する旨,メールで連絡した(乙73,丙90の6)。
これに対し,Jは,同月4日,Eに対し,HやTMリンク代表者もCCに入れて,先に受領した要求仕様書には,「≦12.5A,≦1ms(100VAあたり)」との記載があるので,前日のメールによる要求仕様の変更の趣旨は「≦1ms」との制限を外すという趣旨であるかと尋ねるメールを送ったところ,Eは,変更前の要求仕様が「30A(≦1ms)/50VA」であったことを前提にして,突入電流の上限値が低くなったことと時間の制限を外したことが変更の趣旨である,時間の目安としては「≦2ms~10ms」になるとするメールを送信した。上記要求仕様の変更を受け,TMリンクは,内部で検討を行い,I(以下「I」という。)からHに対し,試作品ができてから調整することで対応する予定である旨メールで回答した(乙17)。
F(インターニツクス)は,同月3日,TMリンク代表者に対し,遠藤照明から,本件各電源の開発費の詳細を翌日午前中に提出するように依頼されたとして,これをFに提出するよう依頼した他,遠藤照明から課題を提示されたとして,打合せの機会を設けるよう求めるメールを送信した(甲27)。
また,Fは,同月4日,TMリンク代表者に対し,「遠藤照明様からの要望」と題する書面(甲8の2)を提出した。同書面によると,遠藤照明は,TMリンクの会社の規模で,量産時に,キャッシュ・フローは大丈夫か,量産スケジュールに対応した部材調達ができるのか,開発スケジュールを守ることはできるのかなどと不安を持っており,部材調達を含めて量産まで,詳細に開発スケジュールを示すこと等を求め,今後,遠藤照明とTMリンクとの間のやり取りの内容は必ずインターニツクスにも分かるようにすること,TMリンクの管理はインターニツクスにおいて行うことを求めたため,FはこれをTMリンクにも周知したものである。
(4)  同月8日付けで,インターニツクスは,遠藤照明に対し,本件各電源に関し,TMリンクの開発状況を勘案し,代替メーカーも検討する旨提案した(甲18の2)。
(5)  同月10日,HとDとの間で,本件各電源に関する要求仕様について確認するメールのやり取りが行われ,Dから,要求仕様は,最後に提出した突入電流の件で終了である,取引条件,スケジュールについて別途打合せをしたいとのメールが送信された(丙57)。
(6)  同月16日,本件非調光電源の試作品がDを通じて遠藤照明に渡された(乙81)。
同日の打合せには,TMリンク代表者,F,遠藤照明の生産本部長であるK(以下「K」という。),Dなどが参加し,同日渡した試作品を双方ともすぐに評価し,4月7日までに評価結果を反映した基板リメイク(量産版)開発を終了させる,その後,遠藤照明において温度試験等を行い,本件非調光電源のプリプロ100台(展示会用を含む。)を4月末に納入する必要がある等の話がされた。
(7)  TMリンクは,同月16日の上記打合せを受けて開発目標スケジュールの見直しを行い,これをインターニツクスに知らせ,同月29日,インターニツクスは,第2,2(7)のとおり,遠藤照明に対し,「TMリンク社開発スケジュールご報告」と題する書面を提出した。同スケジュールによると,本件非調光電源のテクニカルサンプル開発が同月18日までに行われ,それを同月24日までに遠藤照明とTMリンクが評価し,承認されると,展示会用の注文書が発行され,4月7日にプリプロの注文書が発行される予定になっており,本件調光電源は,3月28日までにテクニカルサンプルの開発が行われ,それを4月7日までに評価し,承認されると展示会用とプリプロの注文書が発行される予定になっており,5月中旬から下旬に量産が開始される内容になっていた。
(8)  同年3月28日,遠藤照明は,インターニツクス及びTMリンクに対し,本件仕様書①(「≦12.5A,≦1ms(100VAあたり)」と記載)を提出し(乙15),他方,TMリンクは,インターニツクスに対し,同月23日付け本件仕様書②をその頃交付した。また,TMリンクは,遠藤照明に対し,同月28日,本件調光電源の試作品を提出した(丙61)。
本件仕様書②に関し,Fは,証人尋問において,同年4月8日の打合せ(後記(9))の際に,HからDに渡された旨証言する。しかし,これを裏付ける的確な証拠はない上,インターニツクスの主張の変遷状況からすれば,Fにおいて明確な記憶があるものと認めることはできず,また,TMリンクから遠藤照明に対し,直接交付していないことはTMリンク代表者も供述するところであるから,本件仕様書②が,当時遠藤照明に交付されていたものと認めることはできない。
(9)  同年4月8日の打合せは,TMリンク代表者,F,G,H,遠藤照明代表者及びDが参加して行われた。D作成の議事録によれば,同打合せでは,本件各電源の単価の金額,発注数,開発費及び金型費の負担について話し合いがされている。他方,インターニツクス作成の議事録(甲8の5)によると,単価の交渉の他,仕様に関し,遠藤照明からTMリンクに対して確認が行われ,「突入電流:問題無い」と記載された。
同打合せについて,Dは,価格に関して申入れがあり,その協議に終始した旨供述する(4頁)。しかし,価格をいくらにするのかということは,仕様をどのようにするのかということと当然に関連するものであるから,インターニツクス作成の上記議事録に記載されているように,仕様に関する確認も行われたものと認められる。
なお,同打合せは,TMリンク代表者が,遠藤照明代表者との面談を希望し,同代表者の都合を確認した上で行われたものである(乙74)。
(10)  TMリンクは,同月13日頃,インターニツクス及び遠藤照明に対し,本件仕様書③(突入電流に関し,「最大」欄に「TBD」と記載)を提出し,TMリンク代表者は,同月19日,DとEに対し,GやFもCCに入れて,本件各電源について,最終仕様で試作を進めており,試作品が,同月26日に遠藤照明に到着する予定である旨メールで報告した(甲43)。
(11)  Eは,同月26日,TMリンク代表者に対し,試作品を受領したことを報告するとともに,サンプルだけを送付することはできるだけ避けてもらいたい,評価データと仕様を簡単なものでも良いので添付してほしいと連絡した(丙65)。
また,Eは,同年5月10日,TMリンク代表者に対し,現品サンプル,仕様書(図面),評価データの3点を準備するよう依頼するメールを送信した(乙7の1)。Eは,同メールの中で,同人はこれらを3点セットと呼んで準備してもらえるようお願いしている,問題点を早く見つけるにも効果的であるとして協力を求めた。
(12)  Dは,同年5月から6月にかけて,インターニツクスやTMリンクに対し,6月1日から発売することはインターニツクスにも伝えてある,何を何台,いつ納品するのか明確にするようになどと,納期を守るように何回も督促していた(甲8の7,45,乙14,59)。
これに対し,Hは,おおむね6月10日に納品するとのメールを返信した。そして,Dは,同年5月28日,インターニツクスのFやHに対し,6月10日から納品されるという入荷予定を記載したメールを送信した(甲22)。
しかし,同年6月中旬以降,Dは,一転して催促をしなくなった。
(13)  TMリンクのL(以下「L」という。)は,同年5月27日,Eに対し,メールで,仕様書とともに突入電流の試験データを送付した(甲80の1及び2,乙67)。他方,Eは,評価に必要な90度のデータがない,確認が必要として「NG」と連絡した(丙94の2,3)。
(14)  Eは,同月31日に,TMリンク代表者とHに宛てて,「量産納期が10日後です。評価の進捗をお願いします」との件名で,量産納期が10日後と迫っている,評価関係が相当遅延している旨のメールを送信した(乙7の3)。同メールは,Dに対してもCCで送信されていたが,Dは,上記(12)のとおり,その後も納期を守るように納品を催促していた。
(15)  同年6月11日付けで,量産日程の状況に鑑み,改善を推進していくことを条件に,量産を許可との記載がある監査報告書が提出された(甲47の2,乙39)。
(16)  TMリンクは,同月13日,本件各電源の量産を開始した(甲12の1)。
また,TMリンク代表者は,同月16日,遠藤照明のMに対し,CCにEを入れて,最終的な出荷の可否を尋ねるメールを送信した。
(17)  同月30日,TMリンクは,Eに対し,本件非調光電源の評価データを送った。これに対し,Eは,同年7月1日,チェックリストでも不足がないか確認するよう求めるメールを送信した(丙90の27)。
(18)  同年7月11日,Iは,Eに対し,本件各電源につき,仕様書,試験項目一覧表,評価データをメールにリンク先を掲載するなどの方法で送った(甲50,乙68,92,93の1及び2,丙33の1)。
(19)  同月23日,TMリンクの会議室で,EやFが参加して会議が開かれたが,その際,本件点滅問題に関することは話し合われたが,突入電流規格に関しては特段問題とされなかった(甲8の9)。
(20)  TMリンクは,同年8月9日付け仕様書Rev.1.4において,突入電流につき,14.0A/100V,33.9A/242Vと記載した。
(21)  平成24年1月18日に行われた遠藤照明生産本部とインターニツクスとの話し合いでは,インターニツクス作成の議事録によれば(乙43),本件非調光電源9万台は遠藤照明で引き取るが,残りの5万台の本件調光電源については,現段階で引き取ることはできないとのことで,今後も打合せを継続することになった。同年2月3日,遠藤照明生産部とインターニツクスとの間で打合せが行われた。Hが作成した同打合せ議事録(乙44)では,本件非調光電源9万台については検収済みということで了解を得たが,本件調光電源5万台については,インターニツクスにおいても負担をしてもらいたいということで,インターニツクスが持ち帰って検討することになったとの記載がある。
(22)  調光電源1万台について,不具合(本件点滅問題)が出たため,一旦回収され,非調光電源に変更して特別に採用するという話が出たことがあったが,結局,採用されることはなく,平成23年10月頃には保留扱いとなった(乙32)。上記(21)におけるインターニツクスと遠藤照明との間の打合せにおいても,上記のとおり非調光電源に変更することとした1万台については,議題に上らなかった。
(23)  同年5月7日に行われた,インターニツクスと遠藤照明生産本部の打合せで,取締役生産本部長であるKは,サーミスタの入荷スケジュールを受領した後に本件調光電源5万台の検収を行うと発言したが,その後遠藤照明内部で協議がなされ,同発言は撤回された(乙47)。
2  争点1(本件契約1における,本件各電源の突入電流規格に関する合意内容)及び争点6(本件契約2における本件各電源の突入電流規格に関する合意内容)について
(1)  本件契約1に関し,TMリンクは,本件各電源の突入電流規格に関する合意内容は,本件仕様書③のとおりであると主張するが,インターニツクスはこれを否定し,本件仕様書①のとおりであると主張するので,検討する。
上記認定の事実によれば,遠藤照明は,Eが,平成23年3月3日に,重要な要求仕様の変更であると明記して,突入電流規格を「12.5A/100VA」に変更する旨メールを送り,同月15日頃,本件仕様書①を作成して,同月28日,インターニツクス及びTMリンクに交付している(第2,2(5))ところ,本件仕様書①には「≦1ms」との表記が残っており,これは,遠藤照明の主張によると,要求仕様の変更(時間制限の削除)を反映し忘れたものというのであるが,その点を除き,メールの内容と合致したものとなっている。
しかし,上記認定のとおり,インターニツクスは,同じ頃TMリンクから,本件仕様書②を受け取り,遠藤照明に対して,詳細仕様設定書Rev.1に基づく旨記載した,同年4月11日付け見積書を提出しているところ,「Rev.1」というのは,本件取引において本件仕様書②の他見当たらず,同仕様書の記載を前提とすれば,本件各電源の突入電流規格が,要求仕様として「12.5A/100VA」以下と決定されたとは考えがたい。そして,前記第2,2(10),(12)のとおり,本件仕様書③が,TMリンクにより同月13日付けで作成され,TMリンクからインターニツクスや遠藤照明に提出され,その後別の仕様書が作成されることなく,同月28日には本件契約1が締結されたことが認められるところ,同仕様書には,突入電流の最大値が「TBD」とされているが,その点について,インターニツクスは何ら訂正を求めていないことからすれば,インターニツクスが本件仕様書①を前提に本件契約1を締結したものと認めることはできない。
そうすると,インターニツクスのFが,遠藤照明では,その物を作りながら仕様を詰めていくということだったと証言するように(証人F・30頁),遠藤照明は,上記のとおり,要求仕様として突入電流規格「12.5A/100VA」以下を提示するも,本件契約1において,それは必ず満たされるべき規格というものではなく,製作過程において変動が許容されたものであったと認めるのが相当であり,TMリンクとインターニツクスとの間では,そのような前提で本件契約1が締結され,遅くとも量産開始までに突入電流規格を確定することとされたものと認めることができる。
(2)  これに対し,インターニツクスは,仕様については遠藤照明とTMリンクとの間で決定された旨主張し,遠藤照明は,本件仕様書①の数値は要求仕様であり,リファレンス(参考)値ではないと主張し,Eは,陳述書(丙104)において,平成23年3月3日にメールで,突入電流規格が変更になったことを伝えたが,インターニツクスやTMリンクから特段異議がでなかったから,変更した内容になったと記載し,平成23年3月に電源ユニット全体の要求仕様が決まった旨証言する(証人E・5頁)ので,引き続き,本件契約2における合意内容について,検討する。
確かに,前記のとおり,Eから要求仕様の変更を伝えるメールが送信されたことは認められる。しかし,仕様書は,そもそも製品の性能等を示すものであるから,仮にそれだけが渡されたとしても,その記載内容が要求仕様と異なるのであれば,それは仕様書の記載自体から明らかであり,まずはその記載を訂正させた上で,訂正された仕様に合致するサンプルや製品を製作させなければならないところ,遠藤照明は,TMリンクが提出した本件仕様書③に対し,訂正や修正を求めていないのであるから,かかる数値にこだわっていなかったものとみる他なく,この点は,前記認定のとおり,遠藤照明が本件仕様書②を受領していないとしても変わりはない。
この点について,遠藤照明は,仕様書についても,インターニツクス及びTMリンクから仕様書が提出される都度,チェックリストに基づき突入電流が不合格である旨通知している(丙45の2,94の14の1及び2)と主張する。しかし,本件仕様書③に関し,作成されたチェックリストは見当たらないし,そもそもチェックリストはその製品の評価データをまとめて記載するものであり,それによって仕様書の記載の訂正変更を促すものでもない。
そうすると,本件契約2においても,本件契約1と同様に,突入電流規格「12.5A/100VA」以下という規格は,必ず満たされるべき規格というものではなく,製作過程において変動が許容されたものであったと認めるのが相当である。
(3)  そこで次に,量産開始段階で,突入電流規格がどのように確定されたかについて検討する。
まず,TMリンク代表者は,平成23年4月8日の打合せで,当時の実力値が100V入力時に14Aくらいであると話し,問題ないということになったと供述する(TMリンク代表者本人8,33,34頁)ので検討する。インターニツクス作成の打合せ議事録(甲8の5)には,「問題ない」との記載があるが,当該記載欄は,遠藤照明からTMリンクに対する確認事項とされているのみで,いかなる趣旨で上記のような記載となったのかは記載自体からは明らかではない。また,そもそも同議事録には実力値に関し何ら記載がされていないし,当時の実力値を示す客観的な証拠もない。そして,同打合せに出席したDやFはそのような話は聞いていない旨証言するところであり(D・6頁,F・11頁,36頁),Dは,加えて,要求仕様について問題ないから価格を上げてほしいという話があった旨証言するところである。
しかし,Dは,その証言の内容からすれば,そもそも要求仕様に関するやり取りを具体的に記憶していないのであるし,上記打合せの1週間ほど後に作成された本件仕様書③には,突入電流規格が「TBD(追って定める)」と記載されていることからすれば,上記証言は採用できない。かえって,本件仕様書③が作成され,それにもかかわらずインターニツクスも遠藤照明も何ら異議を唱えていないことからすれば,上記打合せにおいて,少なくとも,遠藤照明がメールにて変更を通知し,本件仕様書①に記載した規格は,価格と納期との関係で要求仕様とすることは困難であるとの話があり,これが了解されたものと推認することができる(なお,低価格で早く量産するという当時の状況からすれば,突入電流規格として遠藤照明主張よりもより厳しい数値を記載することを念頭に置き,「TBD」と記載することになったとは考え難い。)。
そして,上記認定のとおり,本件各電源の製作に関しては,工場監査において,条件付きで量産が承認され,平成23年6月に量産が開始される経過となっているところ,量産に際しては,TMリンクのJから,同月13日,遠藤照明において製造承認を行う品質保証部の担当課長であるM(E・25頁,31頁)及びインターニツクスのHに対し,量産に向けすでにスタートしているので,今後の改善は継続的改善としてリストにまとめる旨(甲47の1),その記載内容からすれば,既に量産を開始したか,少なくとも量産をすぐに開始する予定であることが明らかなメールが送信されている。他方,TMリンク作成の仕様書に突入電流規格の数値が記載されたのは同年8月になってからのことであるが,その内容が,仕様書に記載されるまで口頭で何もやり取りされないというのはむしろ不自然であるし,そのような記載が行われた段階で,同記載自体に関し,問題となり,訂正が指示され,あるいは商品の受領が拒否されるといったことはなかったものと認められる。そうすると,量産開始段階では,仕様書としては提出されていなかったものの,突入電流規格は,TMリンクが実力値として把握していた,「14.0A/100V,33.9A/242V」以下という規格で確定されたものと認めるのが相当である。
この点に関し,遠藤照明は,遠藤照明が本件各電源の突入電流に関する評価データを初めて受け取ったのは平成23年6月24日であり(丙43,90の22,94の3),それまで評価データを受け取ってもおらず,遠藤照明として量産を承認しうる状況にはなかった旨の主張をする。しかし,前記のとおり,仕様書自体に許容し得ない数値が記載されていれば,それのみで当然に問題となり,訂正が求められるものであるのに加え,遠藤照明に対しては試作品が提出されていたし,遠藤照明の主張によれば評価データの提出の有無やその内容を把握する立場にあることになるEも,同年6月から量産がされていることを承知していたのであるから,仕様書の記載自体が許容できないものであるならば,遠藤照明としても当然受領は行わないこととし,同年7月23日の打合せでも当然に大きな問題として取り扱われたはずであるが,協議がされた様子もない(甲8の9)。
そして,何ら問題にすることなく,遠藤照明は,本件非調光電源9万台を受領し,代金さえ支払っていることからすれば,上記のとおり認めることができる。
また,遠藤照明は,チェックリストで,再三突入電流が問題であると指摘した,平成23年7月1日付けのEのメールでも,「最終的には,このチェックリストで合否判定をします。」と記載している等主張する。この点について,TMリンクは,評価データは,Eが収集していたために送付したものである旨主張するが,TMリンクのLからのメール(乙69)でも,これらを送付し,その上で量産の許可を求めているのであり,上記主張は採用できない。しかし,確かにチェックリストにおいて,判定が「NG」とされているものがいくつもみられるが,そもそも遠藤照明は,「12.5A/100VA」以下とすることを希望していたのであるから,チェックリストにおいて上記のような記載がされたとしても,それ自体,不自然ではない。そして,Eの上記メールも,チェックリストの記載内容をみて合否判定を行うものと読むことができ,同メールにより,これがすべて合格となることを前提としているものということはできないから,上記認定と矛盾するものではない。
さらに,遠藤照明は,Eが,平成23年6月28日付けメール(乙24,丙14)で,インターニツクス及びTMリンクに対し,本件各電源について,評価未了のため使用不可であると通知したと主張する。
しかし,上記のメールは,本件点滅問題に関し送られたメールとみることができるし,遠藤照明の主張によれば,Eは,インターニツクスやTMリンクに向けて「使用不可」と通知しながら,量産されていることを承知しているのに,自社内に対しては何らの措置を取らなかったこととなり,不合理といわざるを得ず,上記の主張は採用できない。
また,遠藤照明は,「14.0A/100V,33.9A/242V」以下という規格は,遠藤照明の基準からして受け入れられないものである旨主張する。しかし,上記規格が,当時,LED照明器具に用いる電源の規格として一般的に想定しがたいものであったと認めるに足りる証拠はないし(乙75~77参照),そもそも遠藤照明は,本件取引の当初において,低価格で,早期に電源を調達することを目的として,TMリンクとの取引を始めたものであるから,上記規格がそもそも受け入れられないものであったとは認められない。
なお,遠藤照明とTMリンク及びインターニツクスは,「12.5A/100VA」以下という規格につき,異なる認識を有していた可能性があるが,いずれにしても,上記認定のとおり,「12.5A/100VA」以下という規格が必ず満たされるべき規格であると認めることはできず,突入電流規格をみるに際しては,100V時の数値のみならず,242V時の数値もみた上で,その内容を判断していることからすれば,上記の認定を左右するものとはいえない。
3  争点2(債務の本旨に従った履行の有無―TMリンクは,納入手続として,遠藤照明の事前評価及び承認手続を経た上で,遠藤照明が定めた受入検査に合格する必要があるか否か)
この点について,インターニツクスは,TMリンクは本件基本契約に基づき,遠藤照明所定の納入手続を取る必要があり,具体的には,量産開始前に本件3点セットを提出しなければならなかったのにこれを怠り,評価不足又は未承認のまま量産を開始した旨主張する。
しかし,インターニツクスも主張し,Fも証言するとおり,遠藤照明は,物を作りながら仕様を詰めていたものであり,納入手続が明確に存在したものとは認めがたい。また,Eは本件3点セットの提出を求めてはいたが,それも平成23年5月10日に送信したメールで,提出を求める趣旨を説明して依頼したものであり,本件3点セットの提出が,納入手続とされていたものと認められる証拠はない。
したがって,TMリンクにおいて納入した本件各電源14万台については,債務の本旨にしたがって履行されたものと認めることができ,これを覆すに足りる証拠はない。
4  争点3(開発費用の支払義務の発生について)
TMリンクは開発費用の支払を請求し,インターニツクスは,本件各電源に関して,債務の本旨にしたがって履行がされていないことから,代金支払請求権は発生しない旨主張する。
しかし,上記2及び3のとおり,本件各電源14万台については履行が行われたものと認められるのであるから,インターニツクスの上記主張は採用できず,TMリンクの開発費用にかかる請求には理由がある。
5  争点4(本件非調光電源1万台にかかる損害賠償請求について)
本件非調光電源1万台は,当初,調光電源として製造され,出荷されたが,本件点滅問題が発生し,ACE社の工場に戻され,非調光電源として採用することができるか否かという観点から当事者間で協議が進められていたものであるが(乙25,26),本件点滅問題については,TMリンクも,自社が提出した仕様書の要件を満たさないレベルの欠陥であったから至急対応した旨主張するところであり,TMリンクにおいて対応が必要であったことについては当事者間に争いがない。
そして,上記の協議が合意に至ったと認めるに足りる証拠はなく,遠藤照明が,特別に採用することはなかったものであり,本件各証拠によっても,上記本件非調光電源1万台が完成したものと認めるに足りる証拠がない。
したがって,本件非調光電源1万台については,そもそもTMリンクにおいて,履行ないし履行の提供を行ったものと認めることができないから,TMリンクの行った解除は無効であるといわざるを得ず,TMリンクの本件非調光電源1万台にかかる損害賠償請求には理由がない。
6  争点5(下請法の適用の有無)
TMリンクの請求に関し,下請法が適用されるか否か,すなわち,インターニツクスが同法の「親事業者」に当たるか否かについて検討する。
ところで,企業間の取引においては,資金調達やリスク分散等のため,商社を介する場合があり,下請取引においても,商社が取引の各段階で関与する例がみられるが,当該商社を下請取引の当事者として取り扱うか否かは,商社の介在が実質的な製造委託等に該当するか否かによって決するのが相当である。
そこで本件について検討するに,そもそも,本件各電源の取引に関しては,遠藤照明代表者から,TMリンク代表者に対し,直接電話があり,メールが送られるなどして契約に向けた話が始まっていること(乙3の1)に加え,上記認定の事実によれば,インターニツクスの担当者は,仕様書を受領し,単価決定の打合せにも同席するなどし,それぞれの意向を他方に伝えるなどしているが,例えば仕様や製造スケジュールの決定につき,インターニツクスが意向の伝達の他に,具体的な内容の決定に関与したとは認められないし,遠藤照明に対する売価も,TMリンク代表者が遠藤照明代表者との面談を希望して開かれた打合せにおいて決められていること(乙89参照)からすれば,実質的にはTMリンクと遠藤照明との間で取り決めが行われたものと認められる。
この点について,TMリンクは,遠藤照明との交渉はインターニツクスが行っていたし,甲18号証のメール等を挙げて,同メールは,TMリンクがあくまでインターニツクスの指示に基づいて製造を行う下請業者に過ぎないことを示している等主張する。しかし,契約関係は,遠藤照明とインターニツクスとの間,インターニツクスとTMリンクとの間にそれぞれあるのであるから,インターニツクスが,遠藤照明と打合せを行い,それをTMリンクに報告し,遠藤照明も自社の要望をインターニツクスに対して伝えることがあっても,それをもって,直ちに下請法上の「親事業者」に当たるということはできないし,かえって,遠藤照明が,TMリンクとの間で直接やり取りを行うことを前提に,その内容は必ずインターニツクスにもわかるようにすることという要望を出している(甲8の2)ことからすれば,仕様や代金額など,取引の重要な部分に関しては,遠藤照明とTMリンクが直接の交渉で決定していたものとみることができる。また,甲18号証のメールの内容からみても,製造を行う業者を決めるのは,インターニツクスではなく,遠藤照明であることが窺われるところであるし(インターニツクスの提案にもかかわらず,遠藤照明はTMリンクとの取引を継続している。),上記認定(上記1(3)及び(4))のとおり,そもそもインターニツクスが代替メーカーの検討を提案したのは,その直前に遠藤照明が,TMリンクの開発,生産能力に不安を示したことが契機となっているものと認められるから,TMリンクの上記主張は採用できない。
したがって,インターニツクスが下請法上の「親事業者」に該当すると解することはできず,この点のTMリンクの主張は採用できず,同法に基づく遅延損害金の支払を求めるTMリンクの請求には理由がない。
7  争点7(「12.5A/100VA」以下の基準が要求仕様であった場合にも,遠藤照明が,本件各電源の納入を履行として認容したといえるか否か)及び争点9(信義則違反,権利濫用)
前記2のとおり,「12.5A/100VA」以下の基準は,必ず守るべき規格(注文製品が満たすべき性能)であったとは認められないことからすれば,遠藤照明による本件契約2の解除は理由がないことになり,上記争点については判断する必要がないこととなる。
8  争点8(遠藤照明による本件契約2の解除が不法行為に該当するか)
上記2及び5によれば,遠藤照明による本件契約2の解除は,本件非調光電源1万台に係る分を除き,理由がないことになるが,他方,TMリンクの,本件非調光電源1万台に係る請求が認められないことからすれば,本件非調光電源1万台に関し,インターニツクスに何らかの損害が生じたものと認めることはできない。
したがって,その余の点について判断するまでもなく,インターニツクスの本件非調光電源1万台に関し損害賠償を求める主張は採用できない。
9  以上により,①TMリンクがインターニツクスに対し,本件調光電源5万台につき売買代金の支払を求める請求及び開発費用の支払を求める請求(第1事件),②インターニツクスが遠藤照明に対し,本件調光電源5万台の売買代金の支払を求める請求(第2事件)については理由があるが,両事件のその余の請求には理由がなく,また,納入された各電源が要求仕様を満たしていないことを理由とする遠藤照明の契約解除は無効であるといわざるを得ないことから,第3事件の遠藤照明の請求及び第1事件反訴のインターニツクスの請求は理由がないことになる。
第5  結論
よって,その余の点について判断するまでもなく,第1事件及び第2事件は主文の限度で理由があるから,その範囲でこれを認容し,第1事件反訴及び第3事件並びに第1事件及び第2事件のその余の請求は理由がないからいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。
(裁判官 篠原礼)

 

別紙
当事者目録
東京都中央区〈以下省略〉
第1事件原告(第1事件反訴被告) 株式会社TMリンク(以下「TMリンク」という。)
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 播摩洋平
同 古川和典
東京都渋谷区〈以下省略〉
第1事件被告(第1事件反訴原告・第2事件原告・第3事件被告) アヴネット株式会社(以下「インターニツクス」という。)
同代表者代表取締役 B
同訴訟代理人弁護士 寺澤幸裕
同 稲田森
同 藤木崇
大阪市〈以下省略〉
第2事件被告(第3事件原告) 株式会社遠藤照明(以下「遠藤照明」という。)
同代表者代表取締役 C
同訴訟代理人弁護士 久保井一匡
同 今村峰夫
同 佐藤高志
以上

〈以下省略〉

 

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