【営業代行から学ぶ判例】crps 裁判例 lgbt 裁判例 nda 裁判例 nhk 裁判例 nhk 受信料 裁判例 pl法 裁判例 pta 裁判例 ptsd 裁判例 アメリカ 裁判例 検索 オーバーローン 財産分与 裁判例 クレーマー 裁判例 クレプトマニア 裁判例 サブリース 裁判例 ストーカー 裁判例 セクシャルハラスメント 裁判例 せクハラ 裁判例 タイムカード 裁判例 タイムスタンプ 裁判例 ドライブレコーダー 裁判例 ノンオペレーションチャージ 裁判例 ハーグ条約 裁判例 バイトテロ 裁判例 パタハラ 裁判例 パブリシティ権 裁判例 ハラスメント 裁判例 パワーハラスメント 裁判例 パワハラ 裁判例 ファクタリング 裁判例 プライバシー 裁判例 プライバシーの侵害 裁判例 プライバシー権 裁判例 ブラックバイト 裁判例 ベネッセ 裁判例 ベルシステム24 裁判例 マタニティハラスメント 裁判例 マタハラ 裁判例 マンション 騒音 裁判例 メンタルヘルス 裁判例 モラハラ 裁判例 モラルハラスメント 裁判例 リストラ 裁判例 リツイート 名誉毀損 裁判例 リフォーム 裁判例 遺言 解釈 裁判例 遺言 裁判例 遺言書 裁判例 遺言能力 裁判例 引き抜き 裁判例 営業秘密 裁判例 応召義務 裁判例 応用美術 裁判例 横浜地裁 裁判例 過失割合 裁判例 過労死 裁判例 介護事故 裁判例 会社法 裁判例 解雇 裁判例 外国人労働者 裁判例 学校 裁判例 学校教育法施行規則第48条 裁判例 学校事故 裁判例 環境権 裁判例 管理監督者 裁判例 器物損壊 裁判例 基本的人権 裁判例 寄与分 裁判例 偽装請負 裁判例 逆パワハラ 裁判例 休業損害 裁判例 休憩時間 裁判例 競業避止義務 裁判例 教育を受ける権利 裁判例 脅迫 裁判例 業務上横領 裁判例 近隣トラブル 裁判例 契約締結上の過失 裁判例 原状回復 裁判例 固定残業代 裁判例 雇い止め 裁判例 雇止め 裁判例 交通事故 過失割合 裁判例 交通事故 裁判例 交通事故 裁判例 検索 公共の福祉 裁判例 公序良俗違反 裁判例 公図 裁判例 厚生労働省 パワハラ 裁判例 行政訴訟 裁判例 行政法 裁判例 降格 裁判例 合併 裁判例 婚約破棄 裁判例 裁判員制度 裁判例 裁判所 知的財産 裁判例 裁判例 データ 裁判例 データベース 裁判例 データベース 無料 裁判例 とは 裁判例 とは 判例 裁判例 ニュース 裁判例 レポート 裁判例 安全配慮義務 裁判例 意味 裁判例 引用 裁判例 引用の仕方 裁判例 引用方法 裁判例 英語 裁判例 英語で 裁判例 英訳 裁判例 閲覧 裁判例 学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例 共有物分割 裁判例 刑事事件 裁判例 刑法 裁判例 憲法 裁判例 検査 裁判例 検索 裁判例 検索方法 裁判例 公開 裁判例 公知の事実 裁判例 広島 裁判例 国際私法 裁判例 最高裁 裁判例 最高裁判所 裁判例 最新 裁判例 裁判所 裁判例 雑誌 裁判例 事件番号 裁判例 射程 裁判例 書き方 裁判例 書籍 裁判例 商標 裁判例 消費税 裁判例 証拠説明書 裁判例 証拠提出 裁判例 情報 裁判例 全文 裁判例 速報 裁判例 探し方 裁判例 知財 裁判例 調べ方 裁判例 調査 裁判例 定義 裁判例 東京地裁 裁判例 同一労働同一賃金 裁判例 特許 裁判例 読み方 裁判例 入手方法 裁判例 判決 違い 裁判例 判決文 裁判例 判例 裁判例 判例 違い 裁判例 百選 裁判例 表記 裁判例 別紙 裁判例 本 裁判例 面白い 裁判例 労働 裁判例・学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例・審判例からみた 特別受益・寄与分 裁判例からみる消費税法 裁判例とは 裁量労働制 裁判例 財産分与 裁判例 産業医 裁判例 残業代未払い 裁判例 試用期間 解雇 裁判例 持ち帰り残業 裁判例 自己決定権 裁判例 自転車事故 裁判例 自由権 裁判例 手待ち時間 裁判例 受動喫煙 裁判例 重過失 裁判例 商法512条 裁判例 証拠説明書 記載例 裁判例 証拠説明書 裁判例 引用 情報公開 裁判例 職員会議 裁判例 振り込め詐欺 裁判例 身元保証 裁判例 人権侵害 裁判例 人種差別撤廃条約 裁判例 整理解雇 裁判例 生活保護 裁判例 生存権 裁判例 生命保険 裁判例 盛岡地裁 裁判例 製造物責任 裁判例 製造物責任法 裁判例 請負 裁判例 税務大学校 裁判例 接見交通権 裁判例 先使用権 裁判例 租税 裁判例 租税法 裁判例 相続 裁判例 相続税 裁判例 相続放棄 裁判例 騒音 裁判例 尊厳死 裁判例 損害賠償請求 裁判例 体罰 裁判例 退職勧奨 違法 裁判例 退職勧奨 裁判例 退職強要 裁判例 退職金 裁判例 大阪高裁 裁判例 大阪地裁 裁判例 大阪地方裁判所 裁判例 大麻 裁判例 第一法規 裁判例 男女差別 裁判例 男女差别 裁判例 知財高裁 裁判例 知的財産 裁判例 知的財産権 裁判例 中絶 慰謝料 裁判例 著作権 裁判例 長時間労働 裁判例 追突 裁判例 通勤災害 裁判例 通信の秘密 裁判例 貞操権 慰謝料 裁判例 転勤 裁判例 転籍 裁判例 電子契約 裁判例 電子署名 裁判例 同性婚 裁判例 独占禁止法 裁判例 内縁 裁判例 内定取り消し 裁判例 内定取消 裁判例 内部統制システム 裁判例 二次創作 裁判例 日本郵便 裁判例 熱中症 裁判例 能力不足 解雇 裁判例 脳死 裁判例 脳脊髄液減少症 裁判例 派遣 裁判例 判決 裁判例 違い 判決 判例 裁判例 判例 と 裁判例 判例 裁判例 とは 判例 裁判例 違い 秘密保持契約 裁判例 秘密録音 裁判例 非接触事故 裁判例 美容整形 裁判例 表現の自由 裁判例 表明保証 裁判例 評価損 裁判例 不正競争防止法 営業秘密 裁判例 不正競争防止法 裁判例 不貞 慰謝料 裁判例 不貞行為 慰謝料 裁判例 不貞行為 裁判例 不当解雇 裁判例 不動産 裁判例 浮気 慰謝料 裁判例 副業 裁判例 副業禁止 裁判例 分掌変更 裁判例 文書提出命令 裁判例 平和的生存権 裁判例 別居期間 裁判例 変形労働時間制 裁判例 弁護士会照会 裁判例 法の下の平等 裁判例 法人格否認の法理 裁判例 法務省 裁判例 忘れられる権利 裁判例 枕営業 裁判例 未払い残業代 裁判例 民事事件 裁判例 民事信託 裁判例 民事訴訟 裁判例 民泊 裁判例 民法 裁判例 無期転換 裁判例 無断欠勤 解雇 裁判例 名ばかり管理職 裁判例 名義株 裁判例 名古屋高裁 裁判例 名誉棄損 裁判例 名誉毀損 裁判例 免責不許可 裁判例 面会交流 裁判例 約款 裁判例 有給休暇 裁判例 有責配偶者 裁判例 予防接種 裁判例 離婚 裁判例 立ち退き料 裁判例 立退料 裁判例 類推解釈 裁判例 類推解釈の禁止 裁判例 礼金 裁判例 労災 裁判例 労災事故 裁判例 労働基準法 裁判例 労働基準法違反 裁判例 労働契約法20条 裁判例 労働裁判 裁判例 労働時間 裁判例 労働者性 裁判例 労働法 裁判例 和解 裁判例

判例リスト「営業代行会社 完全成功報酬|完全成果報酬」(409)平成10年 6月 5日 東京地裁 平8(刑わ)1887号 強盗殺人、死体遺棄、窃盗、有印私文書偽造、同行使、詐欺、銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件 〔SMクラブ経営者等強盗殺人事件判決〕

判例リスト「営業代行会社 完全成功報酬|完全成果報酬」(409)平成10年 6月 5日 東京地裁 平8(刑わ)1887号 強盗殺人、死体遺棄、窃盗、有印私文書偽造、同行使、詐欺、銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件 〔SMクラブ経営者等強盗殺人事件判決〕

裁判年月日  平成10年 6月 5日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平8(刑わ)1887号・平8(合わ)344号・平8(合わ)376号・平8(合わ)304号
事件名  強盗殺人、死体遺棄、窃盗、有印私文書偽造、同行使、詐欺、銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件 〔SMクラブ経営者等強盗殺人事件判決〕
上訴等  控訴  文献番号  1998WLJPCA06050005

要旨
◆被害者二名に対する強盗殺人、死体遺棄等を犯した被告人二名のうち、一名に対し死刑が、もう一名に対し無期懲役刑が言い渡された事例
◆殺害の約四日後に殺害現場とは異なる被害者の部屋(被害者の生前と変わらない平穏な管理状態が保たれ、施錠されている居室)から金庫を持ち出した行為について、窃盗罪が成立するとされた事例

出典
判タ 1008号277頁

評釈
大山弘・法セ 542号110頁

参照条文
刑法11条
刑法235条
刑法240条

裁判年月日  平成10年 6月 5日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平8(刑わ)1887号・平8(合わ)344号・平8(合わ)376号・平8(合わ)304号
事件名  強盗殺人、死体遺棄、窃盗、有印私文書偽造、同行使、詐欺、銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件 〔SMクラブ経営者等強盗殺人事件判決〕
上訴等  控訴  文献番号  1998WLJPCA06050005

主  文

被告人Aを死刑に処する。
被告人Bを無期懲役に処する。
押収してある回転弾倉式けん銃一丁(平成八年押第二二三〇号の1)、実包二三発(同押号の2及び3。ただし、うち六発は鑑定のため試射済みのもの)、斧一本(同押号の4)及びバタフライナイフ一本(同押号の5)を被告人両名から没収する。

 

理  由

(犯行に至る経緯)
一  被告人両名の身上・経歴
被告人両名は、昭和四五年に山口県下松市で当時船員をしていた父X、母Yの間の一卵性双生児の兄弟として出生した。被告人A(以下「被告人A」という。)が弟で三男、兄の被告人B(以下「被告人B」という。)が兄で二男になる。
被告人Aは、地元の高校を経て専修大学商学部に進学し、一年次で中途退学してデザインの専門学校を卒業した後、インテリアデザインを学ぶためにアメリカに留学したが、同地で犯罪に加担し発覚したため平成六年九月に帰国し、スポーツ新聞の求人広告をきっかけに、甲が経営していたSMクラブ「パラダイス」(以下その系列店を含めて「パラダイス」という。)の従業員として働き始めた。本件当時独身である。
被告人Bは、地元の高校を経て遅れて湘南工科大学に進学し、同大学在学中の平成七年八月ころから、被告人Aの誘いによりパラダイスで働き始めた。本件当時独身である。
二  判示第一の強盗殺人の被害者両名の身上・経歴
被害者甲は、宮崎県で出生し、昭和六三年三月慶応義塾大学経済学部を卒業し、住友不動産株式会社に入社したが、一年ほどで退社し、平成四年ころから、片桐哲也の名前で、東京都品川区東五反田〈番地略〉所在のマンション「○○五反田」の数室を使用してパラダイスの経営を始めた。甲は独身で、東京都渋谷区内のマンションに居住していた。
被害者乙は、兵庫県で出生し、昭和六〇年三月甲南大学経済学部を卒業し、株式会社マッキャンエリクソン博報堂に入社したが、平成六年一二月同社を退社し、同七年二月ころから、白石亮の名前で、甲が経営するパラダイスに店長として勤務した。乙は独身で、東京都品川区内のマンションに居住していた。
三  被告人両名と被害者両名の関係
被告人Aがパラダイスで働き始めた平成七年一〇月当時は従業員が少なかったため、経営者である甲と被告人Aの二人が中心となって同店を切り盛りしていたところ、被告人Aは、甲から「売上げが伸びたら、それに応じて歩合を付けてやる。店が増えたらその店を任せてやろう。」などと言われていた。その後被告人Aが、自分なりに営業方法につき工夫を凝らすなどしたこともあり、店舗も増えてそれまで毎月六〇〇万円から八〇〇万円程度だった売上金額が伸び、同年一二月には一〇〇〇万円を超えるに至った。しかし、甲は、被告人Aに対してわずかな一時金を与えるなどしただけであり、しかも、翌年二月ころには、それまでパラダイスの客の一人であった乙を店長として雇い入れた。
被告人Aは、甲との間でパラダイスの一日の利益が基準額を超えたら日当を追加するとの約束を改めて交わしたりしたが、利益が上がって来るにつれて甲が基準額を引き上げていったため、被告人Aの給料はあまり上がらなかった。その後も被告人Aは甲に、給料を引き上げたり店を持たせてほしいと度々迫ったが、同人はこれを聞き入れなかったため、被告人Aは甲が自分を軽視していると感じ、同人に対する不満を抱いた。
被告人Aは、また、乙に対しても、自分よりはるかに高い給料を得ていること、従業員らに対する態度が横柄であること、女性従業員に売春行為をさせてその客から別料金を取ったり、パラダイスの売上金の一部を横領していると疑っていたことなどから、憤りを覚えるようになり、乙の勝手な行いを甲に告げたりしたが、同人は相手にしなかった。
被告人Aの方でも、平成七年七月ころパラダイスの従業員であるCと相談の上、その友人を引き込んで三人で、いわゆる狂言強盗を行い、パラダイスの売上金約九〇万円を取得して山分けし、自らは約四〇万円を手に入れた。
同年一〇月下旬ころ、被告人Aは、甲が給料制変更の措置をとったことをきっかけに、店を持たせてくれる話はどうなったのかと尋ねたところ、「嫌だったら辞めてもいい。」と言われ不満を募らせた。
他方、平成七年八月ころからパラダイスで働くようになった被告人Bも、乙と接するうちに同人の態度を腹立たしく思うようになり、また、甲との間ではそれほどの付き合いがなく、自らが同人に特別不満を抱くことはなかったが、被告人Aから甲の仕打ちを聞くにつけ、同人に対しても良い感情を持たなくなった。
四  被告人両名らの共謀の成立までの状況
平成七年一〇月ころ、被告人Aは、甲が一向に約束を果たさないため独立することを考え始め、被告人B、パラダイスの従業員であるCやDらにその話を持ちかけた。しかし、資金調達の目処が立たなかった上、仮に独立できたとしても、甲らによって自分たちの店が潰されてしまうだろうと考え、同年一一月ころには独立することを諦めた。
被告人Aは、独立を考える一方、甲及び乙を殺してパラダイスを乗っ取り、同人らに代わってこれを経営することを思ったりもしていたが、独立を断念した同年一一月下旬ころ以降は、真剣にその実行を考えるようになり、被告人Bにその話を持ちかけ、あまり乗り気でない被告人Bを説得し、被告人Bもこれを承諾した。次いで、体格の良い甲及び乙を殺してその死体を見つからない場所に捨てるのを被告人両名の二人だけでやり遂げるのは難しいことから、被告人両名は、Cに手伝いを頼んだところ同人に断られたため、続いてDに話を持ちかけ、同人からは乗っ取り計画への加担の承諾を得た。
五  被告人両名らの共謀成立後、実行行為の日までの状況
被告人両名は、ときにはDも入れて、被告人Aを中心にしてこの計画の実行について話し合いを重ねた上、甲及び乙を殺害するために用いる斧、ハンマーなどの凶器や、布団袋やビニールシート等の死体遺棄を行うための用具を買い揃えるなどし、同年一二月二〇日ころまでには、機会さえあればいつでも殺害等を実行できるように準備を整え、被告人Aは、Dに対し、同日「明日以降、チャンスがあればやるから、ちゃんと出勤してくれ。」と告げた。
翌二一日午前一〇時過ぎころ、被告人Aが準備した凶器等を持って○○五反田九〇七号室に行くと、同室内のソファで夜勤明けの乙が熟睡していたため、被告人Aは、乙を殺害する絶好の機会だと思い、同六〇二号室で勤務していた被告人Bを呼びに行った。被告人Bは、これに応じてバタフライナイフを持って九〇七号室に赴いた。
(罪となるべき事実)
第一  被告人両名は、Dと共謀の上、甲(当時三二歳)及び乙(当時三三歳)の両名を殺害し、同人らが店内で所有又は管理する財物を強取しようと企て、
一  平成七年一二月二一日午前一〇時三〇分ころ、前記○○五反田九〇七号室において、被告人両名が、乙に対し、その頭部を斧(平成八年押第三二三〇号の4)の蜂の部分及びハンマーで数回殴打し、その胸部をバタフライナイフ(同押号の5)で数回突き刺すなどし、その場で同人を胸部刺創による心損傷により死亡させて殺害したが、その財物を強取するには至らず、
二  同日午後五時過ぎころ、被告人Aが、電話で甲を右○○五反田九〇七号室に呼び出した上、同所において、同人に対し、その頭部をハンマーで数回殴打し、その背部を前記バタフライナイフで数十回突き刺し、その頚部に紐を巻いて絞めつけるなどし、この間Dが甲の体を押さえ付けるなどしてこれに加勢して、その場で甲を背部刺創による肺損傷により死亡させて殺害した上、同人所有の現金約二〇万円在中の財布一個、普通乗用自動車の鍵等を強取した。
第二  被告人両名及びDは、甲及び乙の各死体(以下「本件各死体」という。)を遺棄することを企て、平成七年一二月二一日から翌二二日にかけて、本件各死体をビニールシート等に包んで布団袋に入れ、殺害現場である前記○○五反田九〇七号室から同九〇二号室に運び込んだ。
被告人Aは、同月二二日ころから同月二四日ころまでの間、E、F及びGに本件各死体の処分を依頼し、右三名は、現金やベンツ二台(金品総額一〇〇〇万円相当)を報酬として受け取ることを条件にこれを承諾し、ここに被告人両名、D、E、F及びGとの間で、本件各死体を遺棄することにつき共謀が成立した。
被告人A、E、F及びGは、同月二七日ころ、本件各死体を前記○○五反田九〇二号室から運び出してトラックに移し、その後、E、F及びGは、このトラックを千葉県浦安市舞浜二丁目一番一号先の路上、埼玉県日高市原宿一七番地七所在の空地、東京都豊島区池袋二丁目一二番二号宝栄駐車場等に移動させた上、平成八年一月一八日ころ、千葉県浦安市美浜一丁目九番地浦安ブライトンホテルの駐車場に駐車させた。この間、右三名は、布団袋に入れられた本件各死体を木箱に入れ、これに鉄アレイ数個を入れて重しにし、コンクリートを流し込んで密閉した。
Gは、これより前の同月一五日ころ、Hに現金一〇〇万円を支払う条件で本件各死体を投棄することを依頼し、同人がこれを承諾したので、ここにおいて、被告人両名を含む前記六名とHとの間でも、本件各死体を遺棄することにつき共謀が成立した。
F及びHは、右共謀に基づき、同月二〇日から同月二一日までの間、本件各死体の入った木箱をトラックで、前記浦安ブライトンホテルの駐車場から埼玉県川越市砂新田二〇番地二所在の鈴木土建の資材置場まで運搬し、ユンボ及びユニック車を使ってダンプカーに積み替えた後、茨城県鹿島郡神栖町大字居切字海岸砂地一九〇九―二〇番地所在の岸壁まで運搬し、同日午後九時ころ、右木箱を右岸壁から海中に投棄し、もって、本件各死体を遺棄した。
第三  被告人Aは、I及びCと共謀の上、平成七年一二月二五日ころ、東京都渋谷区広尾〈番地略〉一〇六号室甲方において、同人が所有し、管理していた同人名義の定期預金通帳等在中の耐火金庫一個を窃取した。
第四  被告人Aは、Eと共謀の上、前記第三の窃取に係る甲名義の定期預金通帳等を使用して、預金解約名下に現金等を騙し取ろうと企て、
一  平成八年一月五日、東京都品川区東五反田五丁目二六番五号株式会社三和銀行五反田支店において、行使の目的をもって、ほしいままに、同支店備付けの定期預金払戻請求書用紙のおなまえ欄に「東京都渋谷区恵比寿〈番地略〉甲」と記入し、その名下に甲と刻した丸印を押し、もって、同人作成名義の定期預金払戻請求書一通を偽造した上、同支店係員に対し、右偽造に係る定期預金払戻請求書を真正に成立したもののように装い、甲名義の定期預金通帳等と共に提出して行使し、同係員をして、その旨誤信させ、よって、即時同所において、同係員を欺いて、右定期預金解約名下に、現金五〇〇万五三九四円及び同支店支店長振出に係る額面五〇〇万円の自己宛小切手三通を交付させ、
二  同月八日、東京都品川区西五反田一丁目九番三号ホテルロイヤルオーク五反田客室において、行使の目的をもって、ほしいままに、委任状用紙一枚の委任事項欄に、甲の定期預金の解約事務手続の権限を委任する旨を記載し、委任者欄に「渋谷区恵比寿〈番地略〉甲」と記入し、その名下に甲と刻した丸印を押し、もって、同人作成名義の委任状一通を偽造し、次いで、同日、同区東五反田一丁目一四番一〇号株式会社さくら銀行五反田支店において、行使の目的をもって、ほしいままに、同支店備付けの払戻請求書用紙の店番号欄に「653」と、口座番号欄に「71759161」と、金額欄に「10007062」と、おなまえ欄に、「渋谷区恵比寿〈番地略〉甲」と各記入し、その名下に甲と刻した丸印を押し、もって、同人作成名義の定期預金払戻請求書一通を偽造した上、大友真実を介して、同支店係員に対し、右偽造に係る甲作成名義の委任状及び定期預金払戻請求書を真正に成立したもののように装い、甲名義の定期預金通帳等と共に提出して行使し、同係員をして、その旨誤信させ、よって、即時同所において、同係員を欺いて、右定期預金解約名下に、現金一〇〇〇万七〇六二円を交付させ、
三  同月九日、東京都目黒区自由が丘一丁目一三番一六号城南信用金庫自由ケ丘支店において、行使の目的をもって、ほしいままに、同支店備付けの定期預金払戻請求書用紙の年月日欄に「819」と、おなまえ欄に「甲」と各記入し、その横に甲と刻した丸印を押し、もって、同人作成名義の定期預金払戻請求書一通を偽造した上、同支店係員に対し、右偽造に係る定期預金払戻請求書を真正に成立したもののように装い、甲名義の定期預金通帳等と共に提出して行使し、同係員をして、その旨誤信させ、よって、即時同所において、同係員を欺いて、右定期預金解約名下に、現金一〇〇一万五〇九二円を交付させた。
第五  被告人両名は、共謀の上、法定の除外事由がないのに、平成八年八月二九日、同都品川区東五反田〈番地略〉被告人B方において、回転弾倉式けん銃一丁(同押号の1)を、これに適合する実包二三発(同押号の2及び3。ただし、うち六発は鑑定のため試射済みのもの)と共に保管して所持した。
(争点に対する判断)
第一  強盗殺人に関する本件の争点について
一  判示第一の一及び二の乙及び甲に対する各強盗殺人について、争点となっているのは、以下の諸点である。
〈1〉 乙からの財物強取の意図の有無(被告人両名共通)
〈2〉 乙からの二万円強取の有無(被告人両名共通)
〈3〉 甲からの強取金額(被告人A関係)
〈4〉 被告人Bの共謀からの離脱の有無(被告人B関係)
二  各争点についての主張内容やそれに対する当裁判所の判断ないし説明は順次これを示すが、それらの判断ないし説明をするに当たって前提となる事実として、前記認定の各事実に加えて、関係各証拠により次のような各事実が認められる。
1 平成七年一一月下旬以降、被告人Aと被告人Bとの間で、次いで被告人両名とDとの間で、パラダイス乗っ取り計画について共謀が成立したが、その後、被告人Aが中心になって話し合いが重ねられた。そこでの話し合いの内容は、主として(1)殺害の方法は、拳銃が入手ができないので凶器により撲殺する、(2)殺害後のパラダイスの営業については、被告人Aが総括的な責任者となり、Bは経験が浅いので受付を、Dは経験を生かし取材・広告を担当する、(3)殺害後の死体は、重しをつけて海に捨てる、(4)甲らの貯えもあるなら取りたいが具体的な話にならず、(5)甲は現金を持っているであろうからあれば取ることとするが、乙については特に話がなく、(6)二人がいなくなっても偽名を使っているので犯行が発覚しにくいだろう、といったものであった。
2 犯行当日である平成七年一二月二一日の午前一〇時三〇分ころ、被告人Aは、○○五反田九〇七号室(以下、○○五反田の部屋については号室のみを示す。)のソファで熟睡している乙を見て、この機会に乙殺害を実行することを決意し、被告人Bを呼んだ上、まず自ら斧で乙に攻撃しようとしたが、ためらって殴り付けられずにいたところ、被告人Bが代わって斧の峰の部分で乙の頭部を数回殴打し、更にバタフライナイフで胸部等を数回突き刺し、これを見ていた被告人Aもハンマーで頭部を殴打し、紐で頚部を絞めるなどして、乙を殺害した。
乙は本件犯行の前夜である二〇日夜から二一日朝までの遅番勤務に就いていたものであり、当時の帳簿には、同人がその日の日給である二万円を売上金の中から受領した旨の記載があった。
3 乙殺害後、被告人Bは、気分が悪くなって六〇二号室にいったん戻ったが、被告人Aは、同日午前一一時三〇分ころに出勤して来たDに乙を殺したことを話し、Dと二人で乙の死体を布団袋に入れて九〇二号室に運び込み、更に被告Bを呼んで、三人で乙の死体を同室のユニットバス内に入れた。その後、被告人Bは再び六〇二号室に戻り、被告人A及びDは九〇七号室に戻った。
4 被告人Aは、甲を九〇七号室に呼び出す準備のために同室内を掃除したが、その際乙が所持していたバッグを見つけ、同室内のボイラー室に放り込んだ。
5 甲を呼び出すための準備を整えた後、被告人Aは、甲の携帯電話に電話をかけ、「可愛い女の子がアルバイトの面接に来ている。」と偽って、甲が九〇七号室にやって来るように仕向けた。甲を待っている間、被告人Aは、六〇二号室でSMクラブの業務に就いていた被告人Bに対し、甲が来るので甲殺害を手伝うよう頼んだが、被告人Bが「すまんけどできそうもないんで勘弁してくれ。」とこれを断ったため、被告人Aはこれを了承し、結局、甲殺害は、被告人AとDの二人で行うこととした。
6 同日午後五時ころ、甲が九〇七号室に入るや、被告人Aが甲の頭部をハンマーで殴打した上、バタフライナイフで背中を突き刺し、紐で頚部を絞めるなどの攻撃を加え、その間Dが甲の身体を押さえるなどして加勢し、甲を殺害した。
その後、被告Aは、甲のズボンの後ろポケットから財布を取ってDに渡し、同人はその中から二万円の現金を取って被告人Aに返し、被告人Aは残りの現金全部を同室内の店の釣り銭入れに入れた。
7 被告人Aは、甲殺害後、当日パラダイスで勤務する予定の従業員らが九〇七号室に来ることがないようにするため、同人らに当日は都合で休業するので出勤しないように電話をし、また、被告人Bに同室の扉外側に入室禁止の貼り紙をするよう頼み、被告人Bは、「改装中につき立入り禁止」と書いた貼り紙を扉外側に貼りつけた。
翌二二日午前七時ころ、被告人両名は、布団袋に入った甲の死体を九〇二号室のユニットバス内に運び込んだ。
8 被告人Aは、Eらに対し、甲及び乙の死体処理を依頼したが、その報酬の支払いやパラダイスの運転資金に窮したため、乙や甲の居室に入って預金通帳などを得ようと考え、同月二四日ころ、九〇七号室のボイラー室に放り込んでおいた乙の所持していたバッグを自宅に持ち帰り、その中から運転免許証などを取り出して、残りをバッグごと廃棄し、また、乙の死体のポケットからキーホルダーを取り出した。
乙の居室から持ち出した通帳等からは金を引き出せなかったが、被告人AはEと共謀の上、判示のとおり、甲の居室から取ってきた同人名義の通帳等を利用して金融機関で約四〇〇〇万円を引き出すなどした。
9 被告人Aは、それらの資金やパラダイスにあった備品等を使用して、平成八年八月に逮捕されるまでの間、自らが中心となって、従前と同じ形態でパラダイスの営業を続けて多額の収益を得た。被告人Aは、逮捕された当時、これらで得た現金約五〇〇〇万円を被告人Bが居住していたマンションの居室に保管していた。
被告人Bは、平成八年一月に被告人Aからパラダイス乗っ取りの成功報酬として一五〇万円を受け取ったほか、同年二月以降は被告人Aと交渉して給料の額を上げてもらった。
第二  乙に対する強盗殺人罪の故意について
一  被告人両名及びその各弁護人は、被告人両名が乙を殺害したのは、同人に対する怨念のほか、パラダイスを乗っ取るには同人を排除する必要があったためであり、その個人的な財物を強取する意図はなく、また、殺害後に同人の所持していた現金二万円を奪ったこともないから、同人に対する関係では殺人罪が成立するにとどまると主張する。
二  前記認定の各事実を前提として検討すると、被告人両名が乙に対する憤りを感じていたことはこれを認めることができる。しかし、パラダイスの営業体制では、経営者である甲に次いで店長である乙の地位が高かったのであるから、被告人両名は、甲を殺害したからといって、一従業員にすぎない被告人両名が当然に甲に成り代わってパラダイスを経営する立場にはならず、乙をも殺害して初めてパラダイス乗っ取り計画が完遂するものと考えていたことは明らかであり、またそのこと自体は被告人両名も認めているところである。
そして、右乗っ取り計画の意味するところを考えると、パラダイスは、いわゆるSMクラブと呼ばれる風俗業の一種であるから、これを乗っ取るということは、同店の従業員や、知名度、営業方法等の無形の財産を利用するということばかりでなく、甲が経営者として所有し、また、乙が店長として管理していた店舗内の売上金、備品等の財物を奪った上で、これらを利用して営業するということも必然的に含まれているといわざるを得ない。
また、被告人両名が、乙個人の財物を奪うことを主たる目的として同人を殺害したとは認められないものの、同人を殺害してその管理するパラダイスの売上金、備品等の財物を奪う際に、同人がその場で個人的に所有していた現金等だけを区別して奪わないという事態は考えられず、そのような財物があればこれも奪うという認識があったものと認められる。
弁護人は、パラダイスを乗っ取るという被告人両名の認識は抽象的で、備品等を奪うという具体的な意識はなかった旨主張するが、被告人両名はパラダイスの設備をそのまま使用して同店の経営を引き継ぐことを考えていたのであるから、甲及び乙が店内で所有又は管理する財物を奪う認識があったものと認められる。弁護人の右主張は採用できない。
したがって、乙に対する強盗殺人罪における強盗の故意は優に認めることができる。
そうすると、当裁判所は、判示第一の一のとおり(後記第三において説明する。)、被告人両名が乙から現実に現金二万円を強取した事実はこれを認定しなかったものであるが、強盗殺人の故意をもって乙殺害に及んだ被告人両名には乙に対する強盗殺人罪が成立する。
第三  乙から二万円を強取した事実の有無について
一  検察官は、被告人Aが、乙殺害後に同人の所持していた現金二万円を強取したと主張するので、この点につき説明する。
二  前記認定の各事実、特に、(1)乙が犯行当日である二一日朝まで遅番勤務をしており、帳簿には二万円を受領した旨の記載があること、(2)被告人Aは、乙が所持していたバッグをいったん九〇七号室のボイラー室に放り込んだが、後に右バッグを被告人A宅に持ち帰り、その中から乙の運転免許証等を取り出していること、(3)甲からは、その殺害直後に同人のズボンのポケットから財布を取ってその中の現金を領得していることに加えて、関係証拠によれば乙の死体からは財布や現金が発見されていないことなどを総合すれば、被告人ら、特に被告人Aが乙の所持していたはずの少なくとも二万円の現金を奪ったものと推測することも一応可能である。
他方、被告人Aは、当公判廷で、「乙から二万円を奪ったことはない。捜査段階で現金を奪ったという供述調書が作成されたのは、乙のバッグに運転免許証が入っていたことから、運転免許証はそのままでは持ち歩かないので財布に入っていたのではないかなどと取調官から理詰めで追及され、現金を奪ったという調書に署名押印してしまったためである。乙から現金を奪ったという供述をしたことはない。」旨供述している。
三  そこで検討するに、被告人Aが捜査段階で乙から現金を奪ったと述べているのは、司法警察員に対する平成八年一〇月四日付け供述調書(乙二〇号証。なお、この調書は被告人Bとの関係では弾劾証拠にすぎない。)中の「乙を殺した後、乙のバッグの中からも手帳、携帯電話、充電器、現金二、三万円を抜き取っています。」という部分のみで、検察官に対する供述調書にはこの点について何らの記載もなく、甲から現金を強取した場面については詳細かつ具体的に記載されていることに比べて不自然の感を否めないことや、右司法警察員に対する供述調書に添付されている「乙のバッグの図」と題する図面には、バッグの絵の横に「手帳、けい帯電話、充電器、財布、免許証」と記載されてバッグの在中物が示されているものの、「財布」の文字の横には疑問符が付けられていることなどに照らすと、同調書の作成経過に関する被告人Aの右供述を一概に否定することもできない。
さらに、乙が前夜の日給に当たる二万円を実際に売上金の中から取って所持したかどうかについては帳簿の記載以外に証拠がなく、この点についても疑問がないわけではない上、乙が財布又は現金を所持していたとしても、その所持の形態は不明というほかなく、バッグに入ったまま廃棄された可能性や、乙の死体がコンクリート詰めにされるまでの過程で紛失した可能性も完全に否定することはできない。
以上からすると、被告人Aが乙から現金二万円を奪ったという点については、なお合理的な疑いをいれる余地があるといわざるを得ず、検察官の主張は採用できない。
第四  甲からの強取金額について
一  検察官は、被告人Aが甲から強取した金額は五〇万円であると主張し、被告人A及びその弁護人は、二〇万円から三〇万円にすぎないと主張するので、この点につき説明する。
二  被告人Aが甲から奪った現金の額については、被告人Aの捜査段階及び当公判廷の供述と、Dの捜査段階の供述しかこれを認定する証拠は存しないところ、被告人Aは、捜査段階及び公判段階を通じて、甲の財布には二、三十万円くらいの一万円札が入っていた旨供述しているのに対し、Dは、捜査段階で、財布には五〇万円以上入っていた旨供述しており、その内容が食い違っているので、これらのうちいずれを信用すべきかが問題となる。
この点、Dの右供述部分は、「お札の厚さでほぼ正確な金額が分かりました。甲社長の財布にはピン札もそうでない古い札も入っていましたが、少なくとも五〇万円あったことは間違いありません。誤差があって五一万円だとか五二万円だとかいう可能性はありますが、逆に四九万円だということはなく、少なくとも五〇万円は確実にありました。」というものであるが、財布の中の紙幣の厚みを一瞥したにすぎない者の供述にしてはいささか不自然な断定がされており、その信用性には疑問があるといわなければならない。他方、被告人Aは、二〇万から三〇万円くらいと述べるにとどまっているが、被告人Aがそれらの現金を一瞬手に取ってその後釣銭入れに入れていることを考えれば、金額に幅があるのはむしろ自然というべきであり、他に被告人Aの右供述の信用性を疑わせるに足りる事情は認められない。
したがって、被告人らが甲から強取した金額については、被告人Aの供述に従い、少なくとも二〇万円であると認めるのが相当である。検察官の主張は採用できない。
第五  被告人Bの甲に対する強盗殺人の共謀関係からの離脱について
一  被告人Bの弁護人は、被告人Bは、乙を殺害した後、被告人Aに甲に対する強盗殺人の共謀関係から離脱する意思を表明して、被告人Aからその了解を得たのであるから、甲に対する強盗殺人については責任を負わず、無罪であると主張するので、この点につき説明する。
二  乙を殺害した後六〇二号室でSMクラブの業務に就いていた被告人Bに対し、被告人Aが甲殺害を手伝うように頼んだところ、被告人Bが「すまんけどできそうもないんで勘弁してくれ。」とこれを断ったため、被告人Aはこれを了承し、結局、甲の殺害を実際に行ったのが被告人AとDの二名であることは、前記認定のとおりである。
しかしながら、前記認定の各事実、すなわち、(1)被告人Bはパラダイスを乗っ取る目的で本件犯行に及んだが、その目的を達成するために乙と甲の両名を殺害する計画であることを十分理解していたこと、(2)被告人Bは被告人Aと謀って、そのために斧等の凶器や両名の死体を遺棄するための布団袋等を購入し、また、殺害に使用する目的でバタフライナイフを準備したこと、(3)甲殺害に先立って乙を殺害した際には、犯行をためらう被告人Aに代わって乙の頭部を斧で殴打し、更に胸部をバタフライナイフで突き刺すなど、積極的に乙殺害行為に及んで一連の犯行の口火を切ったこと、(4)それにもかかわらず、被告人Aから甲殺害を手伝うよう頼まれた際、単にできないので勘弁してほしい旨述べているにすぎないこと、(5)甲を殺害した後、扉外側に「改装中につき立入り禁止」と記載した貼り紙を貼って甲殺害の発覚を防ぐための工作をし、被告人Aとともに殺害現場である九〇七号室を掃除して犯行の痕跡を消し、更に被告人Aとともに甲の死体を布団袋に包んで九〇二号室に運び込んでいること、(6)被告人Aから、平成八年一月にパラダイス乗っ取りの成功報酬として現金一五〇万円を受け取った上、同年二月以降は給料を上げてもらったことに、被告人Bが、「乙を殺したことで肉体的にも精神的にもくたくたになり、甲の殺害は被告人AとDに任せることにした。」旨供述していることを併せ考えれば、被告人Bは、他の共犯者らに甲を殺害させることによりパラダイス乗っ取りという当初の目的を達成したものと認められるのであって、甲に対する強盗殺人の共犯関係から離脱したとは到底認めることはできない。
したがって、被告人Bの弁護人の主張は採用できない。
第六  被告人Aに対する窃盗罪の成否について
一  被告人Aの弁護人は、判示第三の所為について、被告人Aが甲名義の定期預金通帳等在中の耐火金庫(以下「耐火金庫」という。)を取得した時点では、その所有者である甲は既に死んでおり、他の占有者も存在しなかったのであるから、窃盗罪は成立せず、占有離脱物横領罪が成立するにとどまると主張するので、この点について説明を加える。
二  関係各証拠によれば、(1)被告人Aは、甲殺害後の平成七年一二月二四日深夜、同人がパラダイスにかかわっていた痕跡を隠滅する目的で、甲の居室に同人から奪った鍵を使って入り込み、パラダイス関係の書類等を運び出したこと、(2)その後、被告人Aは、Eらに対する報酬に充てる金を作るため、甲の居室から金目のものを取ろうと考え、翌二五日、同室内の物色をして耐火金庫を発見したが、重くて運び出せずに引き上げたこと、(3)被告人Aは、自分が何度も甲の居室に出入りすると付近の住民に怪しまれると考え、パラダイスの従業員であるIに耐火金庫の運び出しを依頼し、同日午後九時過ぎころ、Iが甲の居室から耐火金庫を運び出して被告人Aに渡したことが認められる。
本件は、強盗殺人罪の犯人が被害者を殺害した約四日後に、殺害現場とは別の、被害者の生前と何ら変わるところのない平穏な管理状態が保たれた施錠されている被害者の居室において、強盗殺人罪とは別個の新たな財物取得の犯意に基づいて財物を持ち出した事案にかかるものである。
弁護人は、人を殺害した後に領得の意思を生じて被害者から財物を取得する場合に窃盗罪が成立するためには、殺害行為と財物取得行為との間に時間的、場所的接着性が認められることが必要である旨主張し、それ自体は正当な主張を含んでいるものと評価できるが、本件のように、殺害の現場とは全く別の、被害者の生前と何ら変わらない平穏な管理状態が維持され、施錠されている居室において財物を取る場合には、その外形的行為を客観的に観察する限り窃取行為と何ら区別ができないのであり、このような場合には、単に殺害の現場ないしその付近で財物を取得した場合とは異なり、場所的接着性はそれほど問題とならず、また、時間的な接着性についても相当程度緩やかに解するのが相当であり、本件程度の時間的接着性があるもとでは、窃盗罪として保護されるべき被害者の占有はなお存するものと認めるのが相当である。この点についての弁護人の主張は採用できない。
(法令の適用)
被告人両名の判示第一の一及び二の各所為はいずれも刑法六〇条、二四〇条後段に、判示第二の各所為はいずれも同法六〇条、一九〇条に、判示第五の各所為はいずれも同法六〇条、銃砲刀剣類所持等取締法三一条の三第二項、一項、三条一項に、被告人Aの判示第三の所為は刑法六〇条、二三五条に、判示第四の一ないし三の各所為のうち、各有印私文書偽造の点は同法六〇条、一五九条一項に、各偽造有印私文書行使の点は同法六〇条、一六一条一項、一五九条一項に、各詐欺の点は同法六〇条、二四六条一項にそれぞれ該当するが、判示第四の一及び三の各有印私文書偽造とその各行使と各詐欺との間には順次手段結果の関係があるので、いずれも同法五四条一項後段、一〇条により一罪として最も重い詐欺罪の刑(ただし、短期はいずれも偽造有印私文書行使罪の刑のそれによる。)で、判示第四の二の偽造有印私文書の一括行使は、一個の行為が二個の罪名に触れる場合であり、有印私文書の各偽造とその各行使と詐欺との間にはそれぞれ順次手段結果の関係があるので、同法五四条一項前段後段、一〇条により結局以上を一罪として最も重い詐欺罪の刑(ただし、短期は偽造有印私文書行使罪の刑のそれによる。)でそれぞれ処断することとし、判示第一の一及び二の各罪につき、後記量刑の理由で述べるところを考慮の上、各所定刑中、被告人Aについてはいずれも死刑を、被告人Bについてはいずれも無期懲役を選択し、被告人Aに対し、判示第一の一、二、第二、第三、第四の一、二、三、第五の各罪は同法四五条前段の併合罪であるが、同法四六条一項本文、一〇条により犯情の重い判示第一の二の甲に対する強盗殺人罪につき死刑に処することとして、他の刑を科さず、被告人Bに対し、判示第一の一、二、第二、第五の各罪は同法四五条前段の併合罪であるが、同法四六条二項本文、一〇条により犯情の重い判示第一の一の乙に対する強盗殺人罪につき無期懲役に処することとして、他の刑を科さず、押収してある斧一本(平成八年押第二二三〇号の4)及びバタフライナイフ一本(同押号の5)は判示第一の一及び二の各強盗殺人罪の用に供した物で被告人両名以外の者に属しないから、同法一九条一項二号、二項本文により、回転弾倉式けん銃一丁(同押号の1)及び実包二三発(同押号の2及び3。うち六発は鑑定のため試射済みのもの)は判示第五の銃砲刀剣類所持等取締法違反の犯罪行為を組成した物で被告人両名以外の者に属しないから、いずれも刑法一九条一項一号、二項本文により被告人両名からそれぞれ没収し、訴訟費用は、刑事訴訟法一八一条一項ただし書を適用していずれの被告人にも負担させないこととする。
(量刑の理由)
本件は、いわゆるSMクラブの従業員として主に受付業務をしていた被告人両名が、他の従業員一名と共謀の上、同クラブの経営者である甲及び店長である乙を殺害して同クラブを乗っ取ることを企て、乙、甲の順に殺害し、その際甲から現金約二〇万円を奪い(判示第一の一及び二の事実)、次いで犯行の発覚を防ぐためにEらに頼んで、被害者両名の死体をコンクリート詰めにして海中に投棄した(判示第二の事実)ほか、甲殺害後、被告人Aにおいて、ほか二名と共謀の上、甲が住んでいた居室から耐火金庫を盗み(判示第三の事実)、Eと共謀の上、その金庫の中にあった預金通帳等を利用して金融機関から約四〇〇〇万円を引き出す(判示第四の事実)などして、右クラブ乗っ取りの目的を遂げ、さらには、このようにして得た財産が他者に狙われることをおそれ、護身用として被告人両名においてけん銃一丁をその適合実包二三発と共に保管して所持した(判示第五の事実)、という事案である。
このように、本件各犯行は、SMクラブを乗っ取ってその収益を得る計画のもとに行われた一連のものであって、あらかじめ犯行に用いる凶器等を準備して敢行された計画的で悪質なものであることはもちろんのこと、金銭欲を満たすためには手段を選ばず、人命を奪うことをも辞さないという被告人両名の自己中心的かつ短絡的な態度が顕著に表れたものである。
殺害態様をみると、乙については、同人が夜勤明けで熟睡しているところを、被告人両名がこもごも斧やハンマーで頭部を殴打し、乙が驚いて声を上げたのにもかかわらず、更にバタフライナイフで胸部を刺した上、紐で頚部を絞めて殺害したというものであり、甲については、被告人Aが詐言を用いて右クラブ事務室に呼び出した上、頭部をハンマーで殴打し、命乞いをしつつ抵抗する甲をDに押さえ込ませて背中をバタフライナイフで刺し、それでも飽き足らず、頚部を紐で絞めつけて殺害したというものである。その犯行態様の執拗性、残虐性は目を覆うばかりである。
また、被告人両名は、犯行の発覚を防ぐため、金のためならば引き受けてくれるであろうことを見込んでEらに死体の処理の話を持ちかけ、交渉の末金品をEらに与えて被害者両名の死体を始末させ、その結果、これらの死体は、木箱にコンクリート詰めにされた上、約七か月もの間海中に沈められ、発見時には腐乱し変わり果てた姿となっていたものであって、まさに凄惨かつ非道というほかない。
被害者両名についてみると、甲は本件当時三二歳、乙は本件当時三三歳という若さであって、いずれも大学を出ていったんは有名企業に就職したという経歴を持ち、ゆくゆくはSMクラブを辞めて正業に就くことを考えていたところ、従業員である被告両名によって、理不尽にも突然その生命を奪われたのであり、その衝撃と無念さは察するに余りある。また、遺族らは、東京で一人暮らしをしている息子の身を案じ、その将来を嘱望していた折に悲報に接したもので、その怒りと絶望は筆舌に尽くし難く、公判廷においても被告人両名の極刑を望む旨の証言をしている。
これらに加え、いったん就職しながら風俗営業に転じて財を得たという甲の経歴もさることながら、同人らを殺害して営業を乗っ取るという本件犯行の動機、殺害方法、更に死体をコンクリート詰めにして海中に投棄したという一連の行為の残忍性などから、世間の耳目を集め、一般社会に強い衝撃を与えたことも看過することができない。
被告人両名のそれぞれの行為や役割などを個別に検討すると、被告人Aは、SMクラブ乗っ取り計画の首謀者として終始主導的役割を担って行動したものである。乗っ取り計画の実現のために共犯者らを巧みに誘い、Dのように本来本件にかかわりを持たなくてすんだはずの者をも巻き込んで被害者両名の殺害を実行し、殺害後は甲の居室から預金通帳等を持ち出して約四〇〇〇万円を引き出したほか、同人らが経営者等として築いた右クラブを我が物顔で経営して約八か月の間に億単位に上る巨額の利益を得た上、そうして得た利益を他人に奪われまいとして護身用にけん銃等を購入し、被告人B宅に適合実包と共に保管していたのであって、本件各犯行において果たした役割が極めて大きいことはいうまでもなく、また、単に同クラブの経営者と店長を殺害してその財物を奪うというにとどまらず、同人らに成り代わって何食わぬ顔で相当期間その経営を行っていたのであって、その行動はまさに大胆不敵というほかなく、その身勝手さには驚くべきものがあり、強い非難に値する。
被告人Bは、事前に凶器等を準備したほか、乙の殺害においては、犯行に当たってためらいを見せた被告人Aに代わり斧で乙の頭部を殴打して一連の犯行の口火を切ったもので、やはりその役割は大きい。加えて、右にみたとおり本件の首謀者が被告人Aであることは明らかとはいうものの、精神的な面での援助を含め、被告人Bの加担がなければパラダイス乗っ取りの計画は実行されるまでには至らなかったのではないかともいえるのであり、その意味で被告人Bの存在は軽視できない。
そこで、翻って、事案の性質等にかんがみ、被告人両名、特に被告人Aのために酌むべき事情についてみると、本件は、被告人Aにおいて、SMクラブという限られた人間関係の中で、一般社会では考えられない多額の利益を極めて容易に稼ぎ出して羽振りのよい暮らしをしていた甲を目の当たりに見るうち、同人に羨望の念を抱くとともに、当初の約束にもかかわらず店を任せてくれず、給料もあまり上げてくれないことに対し、利益を独り占めにして自分を利用しているだけであると考え、不満を募らせていったことに端を発するものであるところ、確かに甲らの被告人らに対する態度にも全く問題がなかったとまではいえないかもしれない。しかし、被告人両名の置かれた立場は、仕事の性質からすれば辞めようと思えばいつでも辞められる一従業員にすぎず、もともと甲らとの人間的信頼関係を基礎としたものではない。被告人Aが甲に対して持った不満も結局のところ金銭的なものにほぼ尽きるのである。また、甲が被告人Aを信用せず、乙を重用したことについてみても、被告人Aは、甲に本名等も知らせておらず、心も開いていなかったのであり、狂言強盗をするなどしていたのであるから、甲が被告人Aを信頼せず、乙に対して示した信頼感と比べて大きな違いをみせたこともやむを得なかったものである。被告人Aの不満を募らせた甲の言動等を過大視するのは適当でない。さらに、乙との関係で、被告人両名がその言動について憤りを感じていたことは認められるが、乙殺害は、本件においてパラダイスを乗っ取るには同人を排除する必要があったために企てられたものであるから、同人の言動を特に取り上げて問題視することも適切とはいえないと思われる。要するに、本件は、被告人両名において安易な方法で金を入手する目的で被害者両名を殺害してパラダイスを乗っ取ることを企て、これを実行したところにその核心があり、被告人両名に対する刑を考える上で被害者らの側にいわば落ち度とまでいうべき言動等があったとみるのは相当でない。
次に、被告人両名が保管していた現金合計約五〇四〇万円が被害者両名の遺族らに支払われていることは、被告人両名の慰藉の気持ちの表れとして評価すべきものがある。しかし、これについても、もともとは甲から領得した金の一部と本来甲が経営者として取得したであろう売上金とであることを考慮すると、被告人両名のために斟酌するとしても、そこには自ずから限度がある。
さらに、被告人両名の成育歴等についてみると、被告人両名に対する父親の態度には、親として問題がなかったとはいえないところがある。しかし、被告人両名とも、このような父親のもとでとはいえ、しっかりした母親の手で、親戚の協力を得ておおむね順調に育てられ、大学にも進学しているのであって、右のような成育環境を本件各犯行に結び付けて、被告人両名のために特に考慮すべき事情と考えることは相当とはいえない。
そうすると、右に指摘した限度で認められる被告人両名のために酌むべき事情のほか、被告人両名にはいずれも前科はなく、本件犯行当時二五歳であったこと、本件各犯行が発覚した後は、自分たちが行った行為の重大性や被害者両名及びその遺族らの心情に思いを致し、一部前記のような弁解をしているものの大筋において事実を認めて反省の態度を示し、ことに被告人Aにおいては真摯な姿勢がうかがわれること、被告人両名とも移植のために臓器を提供する意思を示すことなどを通じて反省の気持ちを態度に示そうと努力していることなど、被告人両名のために斟酌すべき諸事情を十分勘案しても、被告人両名の刑事責任はいずれも極めて重いといわざるを得ない。
被告人Aについては、死刑が人命を剥奪する究極の刑罰であってその適用は真にやむを得ない場合に限るという見地から慎重に検討を重ねたけれども、前記のような本件各犯行の罪質、動機、態様、結果、遺族の被害感情、社会的影響、犯行後の行動等の諸事情にかんがみれば、罪刑の均衡及び一般予防の見地からも、なお死刑をもって臨むほかはないと考えた。他方、被告人Bについては、その果たした役割などにかんがみ、長期にわたって被害者らの冥福を祈らせつつ反省の日々を送らせるのが相当であると判断し、無期懲役に処することとした。
よって、主文のとおり判決する。
(求刑 被告人Aにつき死刑、被告人Bにつき無期懲役。付加してけん銃及び実包並びに斧及びバタフライナイフの没収)
(裁判長裁判官 岩瀬 徹 裁判官 政木道夫 裁判官 木野綾子)

 

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