【営業代行から学ぶ判例】crps 裁判例 lgbt 裁判例 nda 裁判例 nhk 裁判例 nhk 受信料 裁判例 pl法 裁判例 pta 裁判例 ptsd 裁判例 アメリカ 裁判例 検索 オーバーローン 財産分与 裁判例 クレーマー 裁判例 クレプトマニア 裁判例 サブリース 裁判例 ストーカー 裁判例 セクシャルハラスメント 裁判例 せクハラ 裁判例 タイムカード 裁判例 タイムスタンプ 裁判例 ドライブレコーダー 裁判例 ノンオペレーションチャージ 裁判例 ハーグ条約 裁判例 バイトテロ 裁判例 パタハラ 裁判例 パブリシティ権 裁判例 ハラスメント 裁判例 パワーハラスメント 裁判例 パワハラ 裁判例 ファクタリング 裁判例 プライバシー 裁判例 プライバシーの侵害 裁判例 プライバシー権 裁判例 ブラックバイト 裁判例 ベネッセ 裁判例 ベルシステム24 裁判例 マタニティハラスメント 裁判例 マタハラ 裁判例 マンション 騒音 裁判例 メンタルヘルス 裁判例 モラハラ 裁判例 モラルハラスメント 裁判例 リストラ 裁判例 リツイート 名誉毀損 裁判例 リフォーム 裁判例 遺言 解釈 裁判例 遺言 裁判例 遺言書 裁判例 遺言能力 裁判例 引き抜き 裁判例 営業秘密 裁判例 応召義務 裁判例 応用美術 裁判例 横浜地裁 裁判例 過失割合 裁判例 過労死 裁判例 介護事故 裁判例 会社法 裁判例 解雇 裁判例 外国人労働者 裁判例 学校 裁判例 学校教育法施行規則第48条 裁判例 学校事故 裁判例 環境権 裁判例 管理監督者 裁判例 器物損壊 裁判例 基本的人権 裁判例 寄与分 裁判例 偽装請負 裁判例 逆パワハラ 裁判例 休業損害 裁判例 休憩時間 裁判例 競業避止義務 裁判例 教育を受ける権利 裁判例 脅迫 裁判例 業務上横領 裁判例 近隣トラブル 裁判例 契約締結上の過失 裁判例 原状回復 裁判例 固定残業代 裁判例 雇い止め 裁判例 雇止め 裁判例 交通事故 過失割合 裁判例 交通事故 裁判例 交通事故 裁判例 検索 公共の福祉 裁判例 公序良俗違反 裁判例 公図 裁判例 厚生労働省 パワハラ 裁判例 行政訴訟 裁判例 行政法 裁判例 降格 裁判例 合併 裁判例 婚約破棄 裁判例 裁判員制度 裁判例 裁判所 知的財産 裁判例 裁判例 データ 裁判例 データベース 裁判例 データベース 無料 裁判例 とは 裁判例 とは 判例 裁判例 ニュース 裁判例 レポート 裁判例 安全配慮義務 裁判例 意味 裁判例 引用 裁判例 引用の仕方 裁判例 引用方法 裁判例 英語 裁判例 英語で 裁判例 英訳 裁判例 閲覧 裁判例 学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例 共有物分割 裁判例 刑事事件 裁判例 刑法 裁判例 憲法 裁判例 検査 裁判例 検索 裁判例 検索方法 裁判例 公開 裁判例 公知の事実 裁判例 広島 裁判例 国際私法 裁判例 最高裁 裁判例 最高裁判所 裁判例 最新 裁判例 裁判所 裁判例 雑誌 裁判例 事件番号 裁判例 射程 裁判例 書き方 裁判例 書籍 裁判例 商標 裁判例 消費税 裁判例 証拠説明書 裁判例 証拠提出 裁判例 情報 裁判例 全文 裁判例 速報 裁判例 探し方 裁判例 知財 裁判例 調べ方 裁判例 調査 裁判例 定義 裁判例 東京地裁 裁判例 同一労働同一賃金 裁判例 特許 裁判例 読み方 裁判例 入手方法 裁判例 判決 違い 裁判例 判決文 裁判例 判例 裁判例 判例 違い 裁判例 百選 裁判例 表記 裁判例 別紙 裁判例 本 裁判例 面白い 裁判例 労働 裁判例・学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例・審判例からみた 特別受益・寄与分 裁判例からみる消費税法 裁判例とは 裁量労働制 裁判例 財産分与 裁判例 産業医 裁判例 残業代未払い 裁判例 試用期間 解雇 裁判例 持ち帰り残業 裁判例 自己決定権 裁判例 自転車事故 裁判例 自由権 裁判例 手待ち時間 裁判例 受動喫煙 裁判例 重過失 裁判例 商法512条 裁判例 証拠説明書 記載例 裁判例 証拠説明書 裁判例 引用 情報公開 裁判例 職員会議 裁判例 振り込め詐欺 裁判例 身元保証 裁判例 人権侵害 裁判例 人種差別撤廃条約 裁判例 整理解雇 裁判例 生活保護 裁判例 生存権 裁判例 生命保険 裁判例 盛岡地裁 裁判例 製造物責任 裁判例 製造物責任法 裁判例 請負 裁判例 税務大学校 裁判例 接見交通権 裁判例 先使用権 裁判例 租税 裁判例 租税法 裁判例 相続 裁判例 相続税 裁判例 相続放棄 裁判例 騒音 裁判例 尊厳死 裁判例 損害賠償請求 裁判例 体罰 裁判例 退職勧奨 違法 裁判例 退職勧奨 裁判例 退職強要 裁判例 退職金 裁判例 大阪高裁 裁判例 大阪地裁 裁判例 大阪地方裁判所 裁判例 大麻 裁判例 第一法規 裁判例 男女差別 裁判例 男女差别 裁判例 知財高裁 裁判例 知的財産 裁判例 知的財産権 裁判例 中絶 慰謝料 裁判例 著作権 裁判例 長時間労働 裁判例 追突 裁判例 通勤災害 裁判例 通信の秘密 裁判例 貞操権 慰謝料 裁判例 転勤 裁判例 転籍 裁判例 電子契約 裁判例 電子署名 裁判例 同性婚 裁判例 独占禁止法 裁判例 内縁 裁判例 内定取り消し 裁判例 内定取消 裁判例 内部統制システム 裁判例 二次創作 裁判例 日本郵便 裁判例 熱中症 裁判例 能力不足 解雇 裁判例 脳死 裁判例 脳脊髄液減少症 裁判例 派遣 裁判例 判決 裁判例 違い 判決 判例 裁判例 判例 と 裁判例 判例 裁判例 とは 判例 裁判例 違い 秘密保持契約 裁判例 秘密録音 裁判例 非接触事故 裁判例 美容整形 裁判例 表現の自由 裁判例 表明保証 裁判例 評価損 裁判例 不正競争防止法 営業秘密 裁判例 不正競争防止法 裁判例 不貞 慰謝料 裁判例 不貞行為 慰謝料 裁判例 不貞行為 裁判例 不当解雇 裁判例 不動産 裁判例 浮気 慰謝料 裁判例 副業 裁判例 副業禁止 裁判例 分掌変更 裁判例 文書提出命令 裁判例 平和的生存権 裁判例 別居期間 裁判例 変形労働時間制 裁判例 弁護士会照会 裁判例 法の下の平等 裁判例 法人格否認の法理 裁判例 法務省 裁判例 忘れられる権利 裁判例 枕営業 裁判例 未払い残業代 裁判例 民事事件 裁判例 民事信託 裁判例 民事訴訟 裁判例 民泊 裁判例 民法 裁判例 無期転換 裁判例 無断欠勤 解雇 裁判例 名ばかり管理職 裁判例 名義株 裁判例 名古屋高裁 裁判例 名誉棄損 裁判例 名誉毀損 裁判例 免責不許可 裁判例 面会交流 裁判例 約款 裁判例 有給休暇 裁判例 有責配偶者 裁判例 予防接種 裁判例 離婚 裁判例 立ち退き料 裁判例 立退料 裁判例 類推解釈 裁判例 類推解釈の禁止 裁判例 礼金 裁判例 労災 裁判例 労災事故 裁判例 労働基準法 裁判例 労働基準法違反 裁判例 労働契約法20条 裁判例 労働裁判 裁判例 労働時間 裁判例 労働者性 裁判例 労働法 裁判例 和解 裁判例

「テレアポ 営業」に関する裁判例(10)平成27年11月30日 大阪地裁 平25(ワ)7442号 地位確認等請求事件

「テレアポ 営業」に関する裁判例(10)平成27年11月30日 大阪地裁 平25(ワ)7442号 地位確認等請求事件

裁判年月日  平成27年11月30日  裁判所名  大阪地裁  裁判区分  判決
事件番号  平25(ワ)7442号
事件名  地位確認等請求事件
裁判結果  一部認容、一部棄却  上訴等  控訴  文献番号  2015WLJPCA11308001

裁判経過
控訴審 平成28年 7月29日 大阪高裁 判決 平28(ネ)93号 地位確認等請求控訴事件

評釈
皆川宏之・ジュリ 1510号126頁
西澤真介・民主法律時報 520号3頁
河村学・労働法律旬報 1860号24頁
戦東昇・法政研究(九州大学) 83巻4号249頁
國武英生・法時 89巻3号126頁

裁判年月日  平成27年11月30日  裁判所名  大阪地裁  裁判区分  判決
事件番号  平25(ワ)7442号
事件名  地位確認等請求事件
裁判結果  一部認容、一部棄却  上訴等  控訴  文献番号  2015WLJPCA11308001

主文

1  被告は,原告に対し,111万9054円及びこれに対する平成25年2月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  被告は,原告に対し,262万4756円及び別紙1「事務費認容額一覧表」の各認容額欄記載の各金員に対する各支払期日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3  被告は,原告に対し,80万8894円及びうち34万5065円に対する平成25年6月21日から,うち46万3829円に対する同年12月21日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4  原告のその余の請求をいずれも棄却する。
5  訴訟費用は,これを2分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。
6  この判決は,第1項ないし第3項に限り,仮に執行することができる。
 

事実及び理由

第1  請求
1  原告が,被告に対し,地域スタッフとしての契約上の権利を有する地位にあることを確認する。
2  被告は,原告に対し,116万2548円及びこれに対する平成25年2月21日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
3  被告は,原告に対し,平成25年3月20日から毎月20日限り,21万7917円及び同各金員に対する各支払期日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
4  被告は,原告に対し,平成25年6月20日から毎年6月20日限り,37万7830円,毎年12月20日限り,49万9863円及び同各金員に対する各支払期日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
5  被告は,原告に対し,330万円及びこれに対する平成24年9月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
本件は,原告が,被告との間で放送受信契約の締結や放送受信料の集金等を業務内容とする有期の委託契約(以下「本件契約」という。)を締結し,15年余にわたり業務に従事していたところ,業績不良を理由として中途解約(以下「本件中途解約」という。)をされたことから,被告に対し,原告は労働契約法上及び労働組合法上の労働者にあたり,本件中途解約は,労働契約法17条1項違反,民法90条違反(不当労働行為),本件契約の解約制限条項違反又は信義則違反により無効であると主張して,本件契約に基づき,①労働契約上の地位確認(請求1項),②平成24年8月25日から平成25年1月24日までの休業見舞金・報奨金・特別給付金,同月25日から同月31日までの事務費並びに同各金員に対する平成25年2月21日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払(同2項),③平成25年2月1日以降の事務費及びこれに対する各支払期日の翌日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払(同3項),④平成25年6月20日支払分以降の報奨金・特別給付金及びこれに対する各支払期日の翌日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払(同4項)を求めるとともに,⑤不法行為に基づく損害賠償及びこれに対する不法行為以後の日である平成24年9月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払(同5項)を求める事案である。
1  前提事実(争いのない事実のほか,掲記の証拠により容易に認められる事実)
(1)当事者
ア 被告は,放送法に基づき設立された法人である。
被告は,受信契約者が拠出する受信料をほぼ唯一の財源として運営されており,前身である社団法人日本放送協会当時の昭和5年から,地域の営業部・センターにおいて,放送受信料の契約・収納業務を個人又は団体に業務委託している。被告が上記業務を委託した個人(以下「地域スタッフ」という。)は,平成23年12月時点において,全国で4164名を数え,放送受信契約の契約取次件数の約5割を担っていた。
イ 原告(昭和43年10月*日生)は,平成9年1月29日,被告との間で本件契約を締結し,平成11年4月1日以降3年毎に契約更新を行い,平成23年4月1日に6回目の契約更新を行った。
本件契約を管理していた被告の部署は,当初,甲営業センターであったが,同センターの廃止に伴い,平成14年12月1日,乙営業センターへ変更された。
地域スタッフは,委託業務の内容に応じて数種に分かれているところ,原告は,平成15年10月1日から総数開発スタッフとして,平成20年6月1日から収納管理スタッフとして,同年10月1日から地域管理スタッフとして,平成21年12月1日から契約開発スタッフとして業務に従事していた。
原告は,平成15年8月頃,全日本放送受信料労働組合(以下「全受労」という。)に加入し,丙支部乙分会に所属した。平成16年4月1日,全受労の乙支部(以下「本件支部」という。)が結成され,原告は,同支部の委員長に就任し,その後辞任したが,平成22年10月1日,再び支部委員長に就任し,本件中途解約当時も支部委員長であった。
(2)契約書の内容
原告と被告は,平成23年4月1日,被告が作成した定型の「委託契約書」(以下「本件契約書」という。)に基づき,地域スタッフの種別を契約開発スタッフ,契約期間を同日から平成26年3月31日までとする本件契約の更新を行った。
本件契約書の主な条項は,以下の括弧内記載のとおりである(甲1)。
ア 第1条(委託業務)
「被告は,原告に対し次の範囲の業務(委託種別ごとの委託業務は予め別に定める。以下「委託業務」という。)を委託し,原告は,これを受託する。
(1)放送受信契約の締結および放送受信契約者の転入に伴う住所変更手続き(以下,あわせて「契約取次」という。)
(2)放送受信規約第6条第1項に定める各期(以下「各期」または「期」という。)分の支払いが行われていない放送受信料の集金,および前号または第5号の各業務に伴う放送受信料の集金
(3)放送受信契約者の転出手続き,氏名等の変更手続き,放送受信料口座振替および継続振込利用の手続きならびに放送受信契約の解約手続き
(4)放送受信契約未契約者に関する情報取次
(5)前各号に付随する業務
2  被告は,原告と協議のうえ,前項の委託業務以外の業務を臨時に原告に委託することができる。」
イ  第2条(受持区域)
「原告が委託業務を行う受持区域は,次のとおりとする。ただし,受持区域は,被告原告協議のうえ変更することができる。
[ 乙営業センター受持ち地域の一部 ]
2  被告は,予め定める方法により,原告以外の者に対しても,前項に定める受持区域内における前条に定める委託業務を行わせる。
3  被告は,原告と協議のうえ,第1項の受持区域外における,前条に定める委託業務を臨時に原告に委託することができる。」
ウ 第4条(再委託)
「原告は,原告の責任と計算において,委託業務の全部または一部を第三者に再委託することができる。
2  前項の場合,原告は,その旨を被告に通知するものとする。」
エ 第5条(委託業務の遂行方法)
「原告は,契約取次および訪問集金にあたっては,面接時等機会あるごとに口座振替またはクレジットカード継続払の利用勧奨を行う。また,原告は,被告が各期に交付する携帯端末,放送受信契約に関わる視聴者データ,放送受信料領収証発行データおよびその他のデータ等(以下,あわせて「本件データ等」という。)により,契約取次の徹底および契約取次に伴う集金を行い,また放送受信料領収書発行データにかかる放送受信料の当期中完全集金のための反復訪問を行う。
2  原告は,前項に基づく委託業務を計画的に遂行するため,毎期,被告の要請する目標達成をふまえて,当期の業務計画表を作成し,当期の委託業務の開始日までに被告に提出する。
3  被告は,本件データ等を各期の第1月の5日までに原告に交付する。ただし,当該期初頭に交付できないものについては,その後,随時交付する。
4  原告は,第1項に従い被告から交付を受けた本件データ等を翌期の第1月の3日までに被告に返還し,被告は本件データ等の入力・更新等必要な措置を行ったうえ,本件データ等を原告に再交付する。
オ 第6条(業績の確保)
「原告は,自己の目標を達成するよう業績確保に努める。
2 前項による業績確保の見通しが立たない場合は,被告は,原告と業績確保のための必要な措置について協議する。」
カ 第9条(報酬)
「被告は,当月の業務に係る報酬を,翌月末日までに原告に支払う。
2 前項の報酬は,委託業務について,格別に設定された単価に基づき,原告の処理した件数により処理する。
3  前項の単価は,毎年4月,被告原告協議のうえ,決定する。」
キ 第10条(携帯端末等の交付)
「被告は,携帯端末およびこれに付随する機器を原告に交付する。
2  被告は,委託証を発行し,原告に交付する。
3  被告は,委託業務に必要な書式用紙その他特に必要と認める物品を原告に交付する。
4  原告が,第4条による再委託を行い,原告から物品類の求めがあったときは,被告は,前各号に準じて物品を交付する。
5及び6 (省略)」
ク 第15条(契約の解約)
「被告原告のいずれかが,この契約上の義務を履行しなかったときは,他の一方は,前条の規定にかかわらず,直ちにこの契約を解約することができる。
2 この契約は,前条の規定にかかわらず,当事者の一方から他方に対する書面による1か月以前の予告をもって,解約することができる。」
(3)被告の地域スタッフに対する目標数の設定方法及び指導方針
ア  目標数の設定方法
被告が受持区を設定しない地域スタッフである契約開発スタッフに対して付与する契約取次等の目標数の設定方法は,乙営業センターを例に説明すると,次のとおりである(ただし,数値は平成26年3月現在のものである。)。まず,各市町の下の町丁を基本として地域を区分した「地域A」を2168か所設定し,この地域Aごとに目標数を設定している。そして,乙営業センター管轄下の12市4町が434のブロックに分けられ,各ブロックは,平均して5個の地域Aから構成される。被告は,各地域スタッフに対し,割り当てる地域を期ごとに変更しており,毎回6ないし8ブロックを組み合わせた地域を「業務従事地域」として交付している。したがって,各地域スタッフの目標数は,交付された業務従事地域を構成する各ブロックに含まれる各地域Aの目標数を合算して算出されることとなる。このように,各地域スタッフに設定される目標数は,割り当てられる業務従事地域によって左右されるから,同一の数値にはならない。被告は,地域スタッフの業績を,契約取次等の件数ではなく,目標数に対する達成率により評価している。
被告は,目標数の60パーセントを「最低業績水準」,目標数の80パーセントを「中間業績水準」と呼称しており,営業センター内の地域スタッフ種別毎の平均目標達成率が100パーセントに満たない場合,最低業績水準,中間業績水準に同平均目標達成率を乗じたものを「調整後達成率」と呼称している。(以上につき,乙32,乙72)
イ  指導方針
被告は,地域スタッフに対する指導方針を,「実施要領」及びこれを解説した「『実施要領』のあらまし」(以下「実施要領」という。甲3)に定め,これを地域スタッフに交付している。
実施要領には,目標数の設定,計画的な業務の推進,業績の確保,週の中間報告日等について,以下の括弧内及び表のとおり記載されている。
(ア)目標数の設定
「地域スタッフの各個人別目標数は営業部所の目標数の達成を図るため設定するものであり,地域スタッフ,職員等各取扱者の目標数の合計は営業部所目標数につながるものである。」
「目標数の設定にあたっては,各地域スタッフに対し,地域状況等に応じてその算出根拠を十分説明のうえ,とりすすめる。」
「計画表の作成にあたっては,営業部所と調整しながら,示された目標数を達成するための計画を自主的に作成する。」
(イ)計画的な業務の推進
「期末における業務の集中を避ける見地から,計画的に業務の推進を図る。」
「一定の業務水準に達しない場合の業務応援については,特別の事情がなく業務の進捗が遅れかつ期末における業績の確保が難しいと判断される場合に限ることとし,一律適用はしない。」
(ウ)業績の確保
「各期(【注】被告は,4月1日を起点に1年を2か月毎に6期に分けている。)とも第1月中に当期目標数の50%以上,期末までに当該目標数の完遂に向け努力する。毎週の報告および週の中間報告において,当月または当期の目標達成が懸念される場合,地域スタッフと十分話し合い適切な指導,助言を行う。」
「特別の事情がないにもかかわらず,当期の目標数の80%に達しない期が連続して3期以上続くとき,または当期の目標数の60%に達しないときは,特別指導を実施する。」
「特別指導は,指導の対象となった方の自力による業績回復を願って行うもので,3つのステップを順に踏みつつ実施します。」

ステップ 指導内容
1 「業務計画表」による計画の着実な推進
来局回数の増
帯同指導
2 業務の分割実施
応援収納,応援取次
立入調査の強化
帯同指導
3 受持数(交付)削減
帯同指導

「特別指導の実施は,当期の目標数を達成したとき,または当期の目標数の80%以上を3期連続して確保したときまでとする。ただし,再び特別指導の対象者となったときは,元の段階から実施するが,前期以前(特別指導実施期間を除く)に当期の目標数の80%以上を3期連続確保している場合には,第1ステップから指導を行う。」
(エ)週(【注】週とは,各局・センターが決める委託業務上の活動サイクルをいい,1か月を3週に分けている。)の中間報告
「計画的な業務の推進を図る見地から,週1回の所定の報告のほか週の中間日における業務の進捗状況の把握を次により行う。」
「各地域スタッフごとに連絡日時,連絡方法等をあらかじめ定め,連絡が不規則とならないよう配慮する。」
「連絡にあたっては,必要な情報等の連絡にあわせ,業務の進捗状況の把握を行う。」
「極力,短時間で終わるよう配慮するが,当該週の計画数の確保が難しいと判断される場合は,その補完策を十分話し合うものとする。」
「上記のほか,必要に応じ随時委託業務の進行状況の報告を求めることがあるが,局・センターの受信契約数50万突破目前とか,局・センターの上半期末,年間目標数の達成目前など日々の業務の把握が不可欠な場合に限定して運用することとする。」
(4)地域スタッフの業務の流れ
ア  地域スタッフの一月の業務の流れは,以下のとおりである。
被告は,各期(偶数月)の初日を報告日に指定している。報告日においては,「全体集会」,地域スタッフの種別毎の「チーム会議」,JG担当と呼ばれる被告の職員との個別面談(以下「個別対応」という。)が行われる。
全体集会では,業務上の連絡事項,年間目標達成状況及び今後の目標に関する報告,ビデオ上映による研修等が行われる。
チーム会議では,年間目標達成状況及び今後の目標に関する事項や業務上の注意事項が伝達される。
個別対応では,まず前週に行われた事務処理についての確認が行われた後,地域スタッフが,当日に配布された業務計画表(予め当該期の個人別の期間計画として取次数の目標数が印刷されている。)に休日と週毎の目標数を記入するとともに,中間連絡表に「当初計画(取次数)」及び「中間までの計画数(取次数)」を記入して提出する。その後,地域スタッフは,業務従事地域が指定され,その地域の地図と担当地域の顧客情報が入力された携帯端末(以下「ナビタン」という。)を交付される。そして,上記報告日から概ね6ないし7日後に中間連絡日が,概ね10日後の週初めの日に報告日が設けられている。地域スタッフは,中間連絡日には電話又はファクシミリにより,報告日には局・センターに出向いて,JG担当職員との間で,業務報告,目標達成度及び業務内容の確認,次の報告日までの目標の設定を行い,目標達成のための指導・助言を受ける。
このようにして第1月が終わり,第2月も第1月と同様のサイクルで業務が行われる。
イ  地域スタッフの一日の業務の流れは,以下のとおりである。
地域スタッフは,事前準備として,ナビタンで地域契約状況を確認し,当日訪問する区域を決定し,訪問ルート等を決定する。
地域スタッフは,現地に着くと,予定した世帯を訪問し,訪問の都度,その結果をナビタンに入力する。その間,JG担当職員から地域スタッフに対し,報告を求め,指導を行うこともある。
地域スタッフは,訪問予定を終えた後,自宅に戻り,顧客から受け取った各種契約帳票等の整理,現金の確認,各種帳票等の残部の確認等を行い,被告に対し,ナビタンにより1日の業務報告を送信し,顧客から受け取った現金は翌日中(土日を除く。)に被告に振り込む。
(5)地域スタッフの報酬等
被告は,地域スタッフに対して支払う報酬等を「事務費」と「給付」に分け,それらの算定方法を「事務費・給付のあらまし(平成23年度)」(以下「事務費・給付のあらまし」という。甲5)に次のとおり定めたうえ,地域スタッフに対し,これを交付している(なお,事務費の締切日・支払日は,本件契約書9条1項にかかわらず,毎月末日締切・翌月20日支払であることは当事者間に争いがない。)。
ア  「事務費」は,月例事務費,対策関係事務費,報奨金及び乗車賃・宿泊費からなる。
(ア)月例事務費は,月額事務費及び単価事務費からなる。
a 月額事務費は,運営基本額,大都市圏加算額,業績加算額及び業績基本額からなる。
(a)運営基本額は,当月に外務業務従事があった場合,15万円が支払われる。ただし,当月業務従事実績(取次実績)が20件未満かつ当月訪問件数が1500件未満の場合は10万円となり,当月業務従事実績が1件以上10件未満かつ当月訪問件数が1件以上750件未満の場合は7万5000円となる。
(b)大都市圏加算額は,月間従事日数の過半を指定された支払対象区域で従事した場合に,運営基本額に加算されるものであり,その額は,東京都及び大阪府の対象地域が1万5000円,その他の対象地域が1万円である。
(c)業績加算額は,上・下半期業績加算区分のaランク,bランクに該当する場合に運営基本額に加算されるものであり,aランク該当者には3万円,bランク該当者には1万円が支払われる。
(d)業績基本額は,当月の基本業績(取次件数,収納口数等)に応じ,地域スタッフの種別毎に定められた算定表に基づいて支払われる。
b 単価事務費は,取次関係事務費,収納関係
事務費,口座関係事務費及びその他事務費からなり,いずれも実績件数等に所定の基本単価を乗じて支払われる。
(イ)対策関係事務費は,講習事務費と当期事務費からなる。
講習事務費は,被告主催の講習会に参加した場合に支払われる。
当期事務費は,被告が指定した寒冷地域で業務に従事した場合に支払われる。
(ウ)報奨金は,毎年6月と12月に支払われ,平均事務費支払額,上・下半期業績加算及び業務奨励加算からなる。
平均事務費支払額は,6月が直前の第5期ないし第1期の月例事務費の1か月平均額の133パーセント,12月が直前の第2期ないし第4期の同平均額の189パーセントである。
上・下半期業績加算は,6月が直前の第4期ないし第6期の業績に,12月が直前の第1期ないし第3期の業績に応じ,目標達成率の区分(AないしE)に応じた額(10万円,6万5千円,4万円,2万5千円,1万5千円の5段階)が支払われる。なお,上・下半期業績加算の区分は,基本的に目標達成率によって決まるが,例外的に視聴者からの苦情などにより警告書の交付やてん末書の提出があった場合には,該当区分が下げられることもある。
業務奨励加算は,算定対象期間の運営基本額が一定金額以上等の条件を満たした場合に平均事務費支払額の5パーセントが支払われる。
(エ)乗車賃は,来局・回収や講習を受けた場合及び自宅から業務対象地域最寄り地点までの距離が30キロメートルを超える場合に支払われる。
宿泊料は,業務のために宿泊が必要な場合,1泊につき1万円が支払われる。
イ  「給付」は,①慶弔金等,②業務外の傷病について支払われる各種見舞金,③業務上の傷病について支払われる医療見舞金,傷害一時金,傷病給付金,障害補償金及び弔慰金,④委託契約が終了したときに支払われる餞別金及び⑤国民健康保険又は長寿医療制度に加入している場合に支払われる特別給付金からなる。
原告が請求している休業見舞金は,上記②の一つであり,その支給内容は,次のとおりである。
(ア)業務外の傷病により1か月以上休業した場合,各人の算出基礎額の70パーセントが支払われる(100円未満切上げ)。支払期間は,同一疾病について6か月を限度とする。
(イ)上記支払期間満了後も,同一疾病で休業が継続する場合,所定の解約猶予期間を限度として,各人の算出基礎額の60パーセントが支払われる。原告の解約猶予期間は,「休業開始までの委託期間が10年以上」に該当するから,1年2か月である。
(ウ)解約猶予期間をまたずに解約する場合,次の金額を支払う。
a 解約猶予期間開始時1か月以内の解約
算出基礎額×70パーセント×解約猶予月数 (100円未満切上げ)
b その後の中途解約
算出基礎額×60パーセント×残りの解約猶予月数(同上)
(6)本件中途解約に至る経緯
ア  原告は,平成21年度第2期(平成21年6月・7月)の業績が最低業績水準に達しなかったため,同年度第3期(同年8月・9月)から特別指導のステップ1の対象者となり,平成22年度第2期(平成22年6月・7月)から特別指導のステップ2に,同年度第4期(同年10月・11月)から特別指導のステップ3に進み,以後平成24年度第2期(平成24年6月・7月)まで連続11期(22か月)にわたり同ステップに置かれた。
イ  被告は,地域スタッフに対し,訪問先で口座振替又はクレジットカード払の方法により放送受信料の支払を受けることや,継続的な口座振替やクレジット継続払の方法により口座取次を行うことができる通信決済端末Qbit(以下「キュービット」という。)を貸与しているが,平成22年9月,利用実績が低位であることを理由として,原告からこれを回収した。被告は,平成23年1月4日,原告に対し,キュービットを貸与したが,同年4月1日,利用実績が低位であることを理由として,再び原告からこれを回収した。なお,被告は,平成24年2月以降,原告にキュービットを貸与した。(以上につき,乙70,原告本人)
ウ  平成23年4月1日の本件契約の更新に際し,原告は,被告に対し,委託業務改善要望書に従って委託業務を誠実に遂行することを誓うとともに,これに反したときは,本件契約書15条2項により本件契約が解約されても異議を述べないことを約束する誓約書(以下「本件誓約書」という。乙9)を提出し,被告は,原告に対し,以下の括弧内のとおり記載された委託業務改善要望書(乙8)を交付した。
「1 平成23年度における委託業務の遂行については,つぎにより改善を図ること。そのため第1期以降,毎期の業務水準の向上に努力すること。
(1)下記『目標』達成に向けて,誠実に委託業務を遂行する。
(2)第1期は,少なくとも下記の最低業績水準以上の業績を確保すること。
(3)その後も,毎期最低業績水準以上の業績を確保し,2期連続して中間業績水準を下回らないよう毎期業績の向上に努めること。

事項 目標 最低業績水準
総数取次数+ 口座(新規同時)取次 82件 50件
衛星取次数 45件 27件

2 前項の改善を果たすため,業務計画表に基づいて誠実に委託業務を遂行すること。」
エ  原告は,平成23年4月4日,Pクリニックで抑うつ状態の診断を受け,同日から同年8月3日まで休業した(乙75の1ないし5)。なお,原告は,同月9日を最後に同クリニックへの通院を止めた(乙66)。
オ  原告は,平成23年度第4期(同年10月・11月)の業績不良により,同年度第5期(同年12月・平成24年1月)以降,業務量を2分の1に減少する措置(受持削減)を受けた。
カ  被告は,平成24年6月1日,原告に対し,同日付け書面をもって,同年度第2期(同年6月・7月)の業績が次表の最低業績水準に達しない場合,又は同期から2期連続して中間業績水準に達しない場合は,本件契約書15条2項に基づき本件契約を解約することを予告する旨を通知した(乙10)。

事項 目標 中間業績水準 最低業績水準
総数取次数+ 口座(新規同時)取次 53件 40件 30件
衛星取次数 26件 20件 15件

キ  被告は,平成24年7月1日,原告に対し,同日付け書面をもって,原告の同年6月の実績が,総数取次件数4件・口座取次件数1件で目標達成率9.4パーセント,衛星取次件数3件で目標達成率11.5パーセントであることを指摘するとともに,同年度第2期の業績が最低業績水準に達しなかった場合は,本件契約書15条2項に基づき本件契約を解約することを再度通知した(乙11)。
ク  原告は,平成24年7月24日,約1年振りにPクリニックを受診し,診断書の発行を求めたが,これに応じてもらえなかったため,同月25日,Rクリニック(心療内科・精神科)を受診し,うつ病の診断を受け(甲12),同日以後,うつ病により就労不能であることを理由として休業した。なお,原告は,同年9月20日,Rクリニックを受診した後,通院していない。(以上につき,乙66,乙67,原告本人)
ケ  被告は,平成24年8月1日,原告に対し,同日付け書面(甲13)をもって,本件契約書15条2項に基づき,同年9月1日付けで本件契約を解約する旨の予告を行った。同書面には,解約理由として,「協会の再三再四の注意・警告にも拘わらず業績が著しく不良であり,放送受信料契約・収納業務を行う受託者として今後契約を継続することが不適当と認められるため。」と記載されていた。
コ  被告は,平成24年8月31日,原告に対し,同日付け書面(甲14)をもって,同年9月1日付けで本件中途解約を通知した。
(7)本件中途解約後の事情
ア  被告は,平成24年9月20日までに,原告に対し,委託契約終了時支払金Aとして362万4000円,同Bとして52万3000円,報奨金として14万6800円,特別給付金として2万4000円及び休業見舞金(同年7月25日から同年8月24日まで)として12万2600円を支払った(甲14)。
イ  原告は,平成25年1月4日,被告に対し,職場復帰の申出を行ったが,被告は,これを拒否した。
ウ  原告は,平成25年7月19日,本訴を提起した。
エ  原告は,平成26年3月30日,被告に対し,本件契約の更新の申込み(以下「本件更新申込み」という。)を行った(甲31の1,2)。
オ  原告は,平成25年5月まで無職であり,同年6月から同年12月まで労働者派遣により就労し,平成26年1月から同年3月まで就労せず,同年4月から現在まで,S運送でアルバイトとして就労している。原告がこの間に就労により得た収入は,別紙2「中間収入一覧表」記載のとおりである(甲54の1ないし14)。
2 争点
(1)本件中途解約の有効性
ア  労働契約法17条1項違反
(ア)労働契約法上の労働者性
(イ)労働契約法17条1項違反の有無
イ  公序違反(不当労働行為)
(ア)労働組合法上の労働者性
(イ)不当労働行為の有無
ウ  本件契約の解約制限条項違反の有無
エ  信義則違反の有無
(2)本件契約の更新の当否
ア  合理的期待の要件の有無
イ  本件更新申込みに対する拒絶の効力
(3)「事務費」及び「給付」請求の当否
(4)不法行為による損害賠償請求の当否
3  争点に対する当事者の主張
(1)本件中途解約の有効性
ア 労働契約法17条1項違反
(ア)労働契約法上の労働者性
【原告の主張】
以下の事情を総合すると,地域スタッフは,使用従属性が認められるから,労働契約法上の労働者に該当する。
a 仕事の依頼,業務従事の指示等に対する諾否の自由
被告は,地域スタッフの目標値及び担当区域を一方的に決め,地域スタッフがこれについて交渉する余地はないから,地域スタッフは,仕事の依頼,業務従事の指示に対する諾否の自由を有しない。
b 業務遂行上の指揮監督
被告は,地域スタッフに対し,業務マニュアル等の文書又は口頭で業務遂行の方法を詳細に指示しているほか,特定の営業活動や稼働時間,取次件数,心構えなどを指示する内容のファクシミリを地域スタッフの自宅に送信している。
被告は,地域スタッフに対し,目標値を達成させるための業務計画表を作成させ,地域スタッフは,業務計画表に記載されている目標値や一斉稼働日に事実上拘束されている。
被告は,地域スタッフに対し,ナビタンによって毎日の稼働状況・訪問結果を報告させ,それに基づき,稼働日数,稼働時間帯,稼働方法等について指導助言を行うとともに,月3回以上の業務計画表を提出させ,定期的な来局によって報告を義務付けている。こうした「業績目標の設定→報告→指導・助言」からなる被告の関与は,地域スタッフの業務遂行上の裁量を大きく減ずるものである。特に特別指導で行われる帯同指導は,業務上の指揮監督に等しい実質を有する。
地域スタッフは,被告の指導・助言に従わなければ,自己の受持区域に他の地域スタッフが投入されたり,不利な受持区域が割り当てられたりする可能性があるほか,事務費の減額,受持(交付)数削減を含む特別指導の実施,委託契約の解約という不利益を受ける可能性があることから,被告の指導・助言に従わざるを得ない。入金遅れ等被告の指示に従わない場合,警告書が出されたり,顛末書の提出を求められたりして報奨金が減額されるという不利益を受けることもある。
以上の業務遂行の実態によれば,被告の関与には相応の強制力があり,被告と地域スタッフとの間には実質的な指揮監督関係が存在する。
c 勤務場所・勤務時間に関する拘束性
地域スタッフは,被告が指示する稼働時間数及び稼働日数を確保しなければならず,これを確保していなければ,被告から業務計画表作成時や報告時に修正を求められるから,相当程度の時間的拘束性がある。また,被告による担当区域の一方的指定は,場所的拘束性と評価すべきである。
d 代替性
本件契約において再委託は許されているが,再委託が行われている例はごく僅かであり,また,再委託の場合には,使用機器に制約があることや運営基本額も委託者本人分しか支給されないことから,再委託は事実上困難である。
e 報酬の労務対償性
事務費は,基本的に出来高払方式であるが,事務費の基本的部分である運営基本額は,月間1500件以上訪問し,1件以上の当月従事実績があれば,月額15万円とされており,通常に稼働すれば,これらの件数を達成することができ,また,訪問テレアポや除票の処理など実績に反映されない業務も行っていたことから,基本給的性格を有する。他方,警告書や顛末書が出される場合には,報奨金が減額されることもある。したがって,被告から支給される金員は,仕事の完成に対する報酬という請負的側面と労務対償性の側面を併有している。
f 事業者性
地域スタッフは,被告から,身分証,ナビタン,キュービット,かばん,定型書式用紙,防犯装置等その他業務用機器を貸与されており,事業者性はない。
g 専属性
地域スタッフが実質的に兼業を行うことは困難である。
【被告の主張】
地域スタッフが労働契約法上の労働者に該当することは争う。以下の事情を総合すると,本件契約は,委任契約又はこれに請負契約たる性質を併せた混合契約であるといえる。
a 仕事の依頼,業務従事の指示等に対する諾否の自由
被告が地域スタッフに対し個別の仕事の依頼や業務従事の指示等を行うことはない。また,被告による除票やCAS情報等の情報提供は業務指示ではなく,地域スタッフがこれらに基づいて業務を行うか否かは自由である。そして,被告が地域スタッフの担当区域や目標数を定めることは,放送事業における委託契約の業務の性質上当然に必要とされるものであるから,指揮監督関係を認める根拠にはならない。
b 業務遂行上の指揮監督
以下のとおり,被告は,地域スタッフに対し,業務遂行上の指揮監督を行っていない。
(a)被告が各地域スタッフに対し目標の達成を求めているのは,本件契約書上で定められた業績確保のためであり,目標数は,その不達成により不利益な取扱いがなされるノルマとは性質を異にする。
(b)業務計画表は,地域スタッフの裁量により作成される。被告が,地域スタッフに対し,その修正を示唆することもあるが,指導・助言にとどまる。また,業務計画表の内容と実働との間に差異があったとしても,被告から不利益な取扱いをすることはない。
(c)ナビタンは,地域スタッフの稼働状況をリアルタイムで把握することができず,また,業務開始・終了時刻や休憩時刻を把握することもできないから,これによって地域スタッフを管理することはできない。
(d)JG担当職員による指導・助言や特別指導は,これを受け入れるか否かは地域スタッフの任意であって,これに従わなかったらといって何ら不利益な取扱いがなされることはない。
(e)「BS契変デー」等の「○○デー」は,単なるアドバルーン的な呼びかけにすぎず,これに参加するか否かは地域スタッフの任意であり,これと異なる業務を行うことも制限していない。
(f)全体集会やロール・プレイング形式の練習への参加も任意である。
c 勤務場所・勤務時間に関する拘束性
地域スタッフは,業務を遂行するにあたり,何曜日の何時から何時まで業務を行うのか,またどの世帯をどのような順序で何時に訪問するのか等について自らの裁量に基づく判断で行うから,業務について時間的にも場所的にも拘束を受けているとはいえない。
d 代替性
地域スタッフは,本件契約書第4条により,被告の許可を得ることなく,届出をするだけで再委託をすることが認められており,再委託者の属性,採用方法,人数,再委託の理由などには制限がない。実際に平成23年12月時点で,82名の地域スタッフが再委託を行っていた。
e 報酬の労務対償性
事務費は,概ね月間の契約取次数と収納枚数に応じて支払われる月額事務費(基本部分)と取次数や収納枚数にそれぞれ単価を乗じて支払われる単価部分(契約取次基本単価事務費,訪問対策票収納事務費)からなっており,いずれも熟練度,技能,年功,年齢,稼働時間等を加味することなく出来高に応じて決定されており,一定時間労務を提供したことに対する対価という性質はないから,労務対償性はない。報奨金も,毎月の事務費の平均額に一定の率を乗じた額を基本として,これに業績評価を加えて算出されるものであるから,実績を基準に決められる報酬であり,労務対償性はない。
f 事業者性
地域スタッフが,移動に必要な自動車,バイク等は自己所有のものを使用し,ガソリン代や交通費も自ら負担していたことは,事業者性を基礎づける。
g 専属性
地域スタッフは,自由に兼業することが認められている。被告が把握する限りでも,平成23年12月時点で25名の地域スタッフが兼業を行っている。
h その他
被告は,原告に対し,採用の際,本件契約が労働契約と異なることを説明している。
地域スタッフは,報酬について給与所得としての源泉徴収がなされず,社会保険も適用されない。
被告には地域スタッフに適用される就業規則は存在しない。
(イ)労働契約法17条1項違反の有無
【原告の主張】
a 本件中途解約の理由である成績不良は,労働契約法17条1項の「やむを得ない事由」に該当しない。
b 被告は,平成23年4月1日に本件契約を更新する際,原告に対し,委託業務改善要望書を提示せずに,これを誠実に遂行することを約束させる旨の本件誓約書を提出させており,本件中途解約は適正手続を欠くものである。
c 原告が他の地域スタッフと比較して成績不良であったことは否認する。その理由は以下のとおりである。
(a)年間地域目標の設定自体に合理性がない。
(b)原告が他の地域スタッフと比べて業績が特に低調であったとはいえない。
(c)原告は,契約の取りにくい地域を割り当てられていた。
(d)原告の平成24年度第2期の目標達成率は,47.8パーセントであったが,これはうつ病の影響によるものである。
【被告の主張】
争う。
イ 公序違反(不当労働行為)
(ア)労働組合法上の労働者性
【原告の主張】
以下の事情を総合すると,地域スタッフは,労働組合法上の労働者に該当する。
a 企業組織への組入れ
被告は,その事業が受信料収入によって成り立っているところ,地域スタッフに対し,受信契約の契約取次件数の過半数を担わせている。したがって,地域スタッフは,被告の業務に不可欠ないし枢要な労働力として組織内に組み入れられている。
b 契約内容の一方的決定
被告と地域スタッフとの契約に用いられる契約書は,定型の書式が用いられており,地域スタッフがこれを変更する交渉力を有しない。したがって,地域スタッフの契約内容は,被告が一方的・定型的に決定している。
c 報酬の労務対償性
前記ア(ア)【原告の主張】e記載のとおり
d 業務の依頼に対する諾否の自由
前記ア(ア)【原告の主張】a記載のとおり
e 指揮監督下の労務の提供・一定の時間的場所的拘束
地域スタッフは,ノルマの設定などにより広い意味での被告の指揮監督下の労務提供をしており,勤務時間・場所も被告に決定されていたため,一定の時間的場所的拘束下にあったといえる。
f 事業者性
前記ア(ア)【原告の主張】f記載のとおり
【被告の主張】
地域スタッフが労働組合法上の労働者に該当することは争う。
a 企業組織への組入れ
地域スタッフは,独立した事業者として取次業務等を行っているのであって,ライセンス制度などの一定の制度の下に被告により管理されている存在ではなく,また,被告が地域スタッフと調整しつつその業務日及び休日を指定しているという事情も一切ないことから,被告の事業遂行に不可欠な労働力として,その恒常的な確保のために組織に組み込まれているとはいえない。さらに,地域スタッフは,再委託や兼業を自由に行うことができることから,独立事業者として自己の裁量で業務を遂行し,被告の組織に組み込まれていないといえる。
b 契約内容の一方的決定
臨時業務の委託,受持区域の変更,区域外業務の委託,委託種別の変更については,被告と地域スタッフとの間で個別に協議しており,被告が一方的にその内容を決定していない。事務費単価については,毎年,地域スタッフの団体との間で協議し,その協議結果を踏まえて決定しており,被告が一方的にこれを決定しているという実態はない。業務マニュアルは,業務遂行の参考例にすぎない。
c 報酬の労務対償性
前記ア(ア)【被告の主張】e記載のとおり
d 業務の依頼に対する諾否の自由
前記ア(ア)【被告の主張】a記載のとおり
e 指揮監督下の労務の提供・一定の時間的場所的拘束
地域スタッフは,業務を行う日時,訪問先や訪問の順番等について広範な裁量を有するから,被告の指揮監督の下において労務を提供しているとはいえず,その業務について時間的場所的拘束を受けているともいえない。
f 事業者性
前記ア(ア)【被告の主張】f記載のとおり
(イ)不当労働行為の有無
【原告の主張】
a 被告は,平成21年6月,乙営業センター長にT(以下「Tセンター長」という。)を起用し,全受労及びその組合員である原告に対し,次のような嫌がらせを行った。
(a)被告は,原告を含む全受労組合員に対し,営業に不利な地域を割り当てた。
(b)本件支部は,担当地域が不公平に割り当てられているか否かを検証するため,被告から,ブロック表など地域の目標数や担当割当地域がわかる資料の開示を受けていたが,Tセンター長は,その開示を拒否した。
(c)被告は,平成21年8月1日,原告を特別指導の対象者とした。
(d)被告は,原告に対し,平成21年12月1日,一方的に大阪市(住吉区・住之江区)の契約開発スタッフに配置転換を命じ,平成22年10月1日,業務内容の変更のないまま,大阪市の担当から外すという措置をとった。
(e)キュービットがなければ,取次件数を増加させる機会を失うことになるところ,被告は,平成22年11月1日以降,原告に対し,キュービットを貸与しないという差別を行った。被告は,原告や全受労からの抗議を受けて,平成23年1月4日から,原告にキュービットを貸与するようになったが,同月17日,「2週で(同月21日までに)15件達成できなければ,キュービットを引き揚げる」と通告し,同月21日,同年2月1日,同年3月24日と執拗に返還を求めた。原告は,同年4月1日,乙営業センターのU統括によって,「はよ返せ,返さんかい」などと大声で恫喝されたため,キュービットを返還した。
(f)被告は,平成23年4月1日,原告に対し,本件誓約書への署名を強要した。
b 本件中途解約は,原告の病気休業中になされたものであるが,本件中途解約まで,このような病気休業中に解約されたことはなかったことである。そして,被告は,上記aのとおり一貫して反組合的態度をとり続け,その下で本件中途解約を行ったものである。したがって,本件中途解約は,被告が全受労の弱体化を図るべく,本件支部の委員長である原告を不利益に取り扱ったものであるといえるから,不利益取扱い(労働組合法7条1号)及び支配介入(同条3号)の不当労働行為に該当し,民法90条により無効である。
【被告の主張】
a 被告が全受労を嫌悪し,嫌がらせを行っていることは否認する。
(a)被告は,地域の特殊性等も考慮して,合理的な目標設定を行ったうえで,公平に業務従事地域の割当てを行っている。
(b)被告がブロック表の開示を中止したのは,平成22年10月の体制変更に伴い,ブロック表の作成を中止したためである。被告は,地域スタッフに対し,個別に目標数の根拠の説明を行っている。
(c)原告が特別指導対象者となった原因は,業績の不振によるものである。
(d)委託種別の変更は,原告被告間で合意のうえ,書面を取り交わして行われている。大阪市(住吉区・住之江区)の区域については,平成22年12月以降,法人事業者に業務を委託しており,地域スタッフには委託していない。
(e)キュービットは,利用の頻度に関わりなく月額3000円の通信費が掛かり,また,被告の保有台数が地域スタッフの人数より少ないため,有効活用が求められた。そこで,被告は,地域スタッフに対し,月間の利用実績が少ないことを引揚げの条件として,キュービットを貸与している。原告は,平成22年8月の利用実績が2件であったことから,同年9月にキュービットを引き揚げられている。被告が平成23年1月に原告に対しキュービットを貸与したのは,業績回復に配慮して,同月20日までに15件の利用を条件としてなされたものである。しかるに,原告は,同日までの利用実績が10件に止まったため,被告が返還を求めたが,これを拒否した。被告は,同年2月1日,利用実績が低位である場合はキュービットを引き揚げる旨伝えた上,その継続使用を許したが,その後の利用実績は,同年2月が5件,同年3月が4件であったため,同年4月1日に原告からキュービットを引き揚げた。このように被告が原告からキュービットを引き揚げたのは,正当な権利行使である。
(f)被告は,原告に対し,業務改善要望書を提示したうえで内容を説明しており,原告は,その説明を納得したうえで任意に本件誓約書を提出した。
b 本件中途解約は,原告の業績不振を原因としてなされたものであり,不当労働行為には該当しない。
ウ 本件契約の解約制限条項違反の有無
【原告の主張】
前提事実(5)イのとおり,事業費・給付のあらましによれば,地域スタッフは,業務外の傷病による休業が同一傷病につき6か月以内である限り,解約されないと定めているから,本件中途解約は,この定めに違反し無効である。
【被告の主張】
休業見舞金に係る解約猶予期間は,業務外の傷病を理由として休業する場合に解約を猶予する制度であり,他の理由による解約を制限するものではない。そして,本件解約の理由である原告の業績不振は,休業に起因するものではないから,休業見舞金制度によって解約が制限される場合にあたらない。
エ 信義則違反の有無
【原告の主張】
(ア)本件契約は,労働契約に当たらないとしても,労働契約に類似する継続的契約である。そして,当事者の一方が,継続的契約の解約の申入れをした場合,当該契約の趣旨,契約締結から解約申入れまでの期間の長短,予告期間の有無その他の事情に照らし,当該契約を存続させるにつき正当な事由があると認められるときは,信義則上,当該契約はその解約の申入れによっては終了しないものと解される。
(イ)①地域スタッフの業務は,被告の恒常的・基幹的業務であるから,本件契約は,特段の問題のない限り継続すべき性質の契約であり,現に特段の問題のない限り継続されていること,②原告は,本件中途解約までに約15年間継続勤務しており,継続契約に強い期待を有していたこと,③地域スタッフは,就労条件が被告により一方的に定められ,経済的劣位に置かれている点で労働契約に類似することから,本件契約は,契約を存続させるにつき正当な事由があると認められる。したがって,本件中途解約は,信義則に違反し無効である。
【被告の主張】
原告は,16期にわたり特別指導を受け続けたが,業績回復の見通しが立たなかったうえ,被告の指導・助言を受け入れず業績回復のための努力を怠ったことから,本件契約書15条2項により解約がなされたものである。したがって,本件解約は信義則に反しない。
(2)本件契約の更新の当否
ア 合理的期待の要件の有無
【原告の主張】
以下の事情によれば,原告は,平成26年4月1日に本件契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由がある。
(ア)地域スタッフの業務は,被告の事業の収入部門を担う恒常的業務である。
(イ)地域スタッフの大多数は契約更新されており,原告も,平成9年1月29日から約15年半にわたり就労してきた。
(ウ)地域スタッフの契約更新手続は,契約書を取り交わすだけであった。
(エ)被告は,地域スタッフに対し,長期契約を前提として退職金に当たる一般・特別せん別金の制度を設けている。一般せん別金は,最長30年の契約期間に応じて支払額が設けられている。
【被告の主張】
原告において,本件契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるとの主張は争う。
被告は,本件契約の期間が終了する際,その都度業績等を踏まえて契約を更新するか否か判断している。平成23年度末の契約更新においては,2361名のうち140名が更新されず,平成25年度末の契約更新においては,831名のうち63名が更新されなかった。
イ 本件更新申込みに対する拒絶の効力
【原告の主張】
原告は,他の地域スタッフに比して業績不良であったわけではなく,被告の指導・助言を拒否したこともない。また,原告は,本件中途解約の直前頃,うつ病のため業績が低調となったが,病気が寛解すれば,業績も回復した可能性が高かった。したがって,本件更新申込みに対する拒絶は,客観的に合理的な理由がなく社会通念上も相当でない。
【被告の主張】
(ア)被告は,平成23年4月1日,原告と本件契約を更新する際,原告が特別指導のステップ3の状態にあり,それ以前の3年間の業績が極めて不振であったことから,委託業務改善要望書を交付し,これを遵守するように求めた。しかし,原告は,その後も業績が改善せず,平成23年度第5期(同年12月・平成24年1月)以降,その業務量を2分の1に削減する措置(受持削減)を受けた。平成24年度第2期(同年6月・7月)における原告の最低業績水準は,総数及び口座が30件,衛星が15件であったところ,原告の実績は,総数及び口座が9件,衛星が5件であり,最低業績水準を大幅に下回った。
(イ)被告は,原告に対し特別指導を開始した以降,面談の機会を持ち,繰り返し稼働日数及び稼働時間を確保して訪問数を確保するように指導・助言を行ってきたが,原告はこれを不合理に拒むことがたびたびあった。例えば,原告は,帯同指導を断ることがあり,また,訪問総量を増やすことや1日のうち午前中と夕方以降の在宅率の高い時間帯を訪問する営業活動であるM字対策活動をすることはしない旨述べた。
(ウ)原告に交付された業務従事地域において,他の地域スタッフは,十分な業績を上げている。
すなわち,平成21年度第5期から平成24年度第2期までの期間のうち原告の休業期間(平成23年度第1期,第2期)を除いた14期の間の原告の業績が目標数の平均65パーセントであるのに対し,他の地域スタッフの業績の平均は目標数の103パーセントである。
(エ)原告が平成24年7月25日より前にうつ病で休業を要する状態であったとは認められず,平成24年度第2期の業績不振がうつ病に起因している可能性はない。
(3)「事務費」及び「給付」請求の当否
【原告の主張】
原告は,被告に対し,本件中途解約が無効であることを理由として,以下の金員を請求する。
ア 平成25年2月20日までに支払われるべき事務費・給付
(ア)平成24年8月25日から同年12月24日までの休業見舞金として61万0400円(原告の平均月収21万7917円の70パーセント(100円未満切上げ)である15万2600円の4か月分)
(イ)平成24年12月20日支払分の休業見舞金(報奨金)として28万8414円(15万2600円に1.89を乗じた額)及び特別給付金4万8000円の合計額である33万6414円
(ウ)平成25年2月20日支払分の報酬(平成25年1月1日から同月24日までは休業,同月25日から同月31日までは通常就労として計算する。)として下記合計額の21万5734円
a (平均月収21万7917円-運営基本額15万円)×24/30×0.7=3万8034円
b 平成24年5月の運営基本額15万円+業績基本額2万7700円=17万7700円
(エ)上記(ア)ないし(ウ)の合計額116万2548円に対する支払期日以降の日である平成25年2月21日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金
イ 平成25年3月20日支払分以降の事務費として,同日以降毎月20日限り21万7917円及びこれに対する各支払期日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金
ウ 平成25年6月20日以降の報奨金及び特別給付金として,同日以降毎年6月20日限り37万7830円(報奨金32万9830円及び特別給付金4万8000円の合計額),毎年12月20日限り49万9863円(報奨金45万1863円及び特別給付金4万8000円の合計額)並びに同各金員に対する各支払期日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金
【被告の主張】
争う。仮に原告の請求が認められる場合には,原告は,別紙2「中間収入一覧表」記載のとおり,本件中途解約に収入を得ているから,民法536条2項後段により,請求額から同収入を控除すべきである。
(4)不法行為による損害賠償請求の当否
【原告の主張】
原告は,前記(1)イ(イ)【原告の主張】欄記載の不当労働行為や本件中途解約により,収入が絶たれただけでなく,全受労の団結権を維持回復するために多大の精神的労苦を負担し,うつ病を発病するまで追いつめられた。これらの精神的苦痛は,収入の補填によっては回復できないものである。
よって,原告は,被告の不法行為により,慰謝料300万円及び弁護士費用30万円の損害を被った。
【被告の主張】
ア 原告主張の不当労働行為に対する認否反論は,前記(1)イ(イ)【被告の主張】欄記載のとおりである。
イ 原告が平成24年7月25日より前にうつ病で休業を要する状態であったとは認められない。
なぜならば,原告は,同月24日,主治医であるPクリニックのQ医師から診断書の発行を受けられなかったため,同月25日,Rクリニックを受診し,Pクリニックで通院治療を受けている事実を秘匿したうえ,実際以上に治療や休業を必要とするかのように誘導して,うつ病と診断する旨の診断書を取得したと考えられるからである。
ウ 損害額は争う。
第3  当裁判所の判断
1  争点(1)(本件中途解約の有効性)について
原告は,自己が労働契約法上の労働者に該当し,本件契約には労働契約法が適用されるから,本件中途解約は労働契約法17条1項に違反し無効であると主張する。これに対し,被告は,原告の労働契約法上の労働者該当性を争うので,以下検討する。
(1)労働契約法上の労働者性の判断基準
ア 労働契約法2条1項は,同法における労働者につき,「使用者に使用されて労働し,賃金を支払われる者をいう」と定義している。これは,労働基準法9条の労働者と異なり,事業に使用されているという要件を含まないものの,その余の点では同法の定義をそのまま継承したものと解される。したがって,労働契約法上の労働者性は,労働基準法上の労働者性と同様に,基本的に①「使用者に使用されて労働し」すなわち労働が使用者の指揮監督下において行われているか否かという労務提供の形態と②「賃金を支払われる」すなわち報酬が提供された労務に対するものであるか否かという報酬の労務対償性によって判断されることになる(以下,①及び②の基準を併せて「使用従属性」という。)。
そして,労働基準法は刑事法でもあるから,その適用対象を画する使用従属性は,明確かつ厳格に解釈しなければならないが,雇用契約,委任契約,請負契約といった契約の形式にとらわれるのではなく,労務提供の形態や報酬の労務対償性及びこれらに関連する諸要素を総合考慮し,実質的に判断する必要がある。
イ ①労務提供の形態については,仕事の依頼,業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無,業務遂行上の指揮監督の有無,勤務場所・勤務時間に関する拘束性の有無,代替性の有無等に照らして判断するのが相当である。②報酬の労務対償性については,報酬が一定時間労務を提供していることに対する対価と判断される場合には,使用従属性を補強すると考えられる。さらに,上記①及び②の基準のみでは使用従属性の判断が困難である場合には,③労働者性の判断を補強する要素として,事業者性の程度(機械,器具の負担関係,報酬の額,損害に対する責任,商号使用の有無等),専属性の程度,その他の事情(報酬について給与所得として源泉徴収を行っていること,労働保険の適用対象としていること,服務規律を適用していることなど)を勘案して総合判断する必要がある。
(2)本件における検討
以下において,上記(1)イの判断基準によって,原告が労働契約法上の労働者に該当するか否かについて検討する。
ア 仕事の依頼,業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無
(ア)相手方の具体的な仕事の依頼,業務従事の指示等に対して諾否の自由を有していれば,相手方に従属して労務を提供するとはいえず,対等な当事者間の関係となり,指揮監督関係を否定する重要な要素となる。これに対して,このような自由を有しない場合は,一応,指揮監督関係を推認させる重要な要素となる。ただし,典型的な委任契約や請負契約であっても,一定の包括的な仕事の依頼を受諾することはあり得るから,そのような場合に,当該包括的な仕事の一部である個々具体的な仕事の依頼について拒否する自由が制限されていたとしても,直ちに指揮監督関係を肯定することはできない。
(イ)前記前提事実(3)アによれば,被告は,地域スタッフに対し,業務従事地域として,期ごとに本件契約書2条に定められた受持区域内の数ブロックを指定しており,各ブロックを構成する地域Aごとに契約取次等の目標数が予め設定されていることから,業務従事地域の指定は,必然的に目標数すなわち業務量の設定を伴うこととなる。そして,証拠(乙36,証人W1,同W2)によれば,被告は,業務従事地域を指定するに際し,地域スタッフと個別に協議するようなことはなく,一方的にこれを行っており,地域スタッフは,被告の指定を拒否することができないことが認められる。したがって,地域スタッフは,被告の具体的な業務の依頼である業務従事地域の指示に対して諾否の自由を有していないといえるのであり,これと異なる被告の主張は採用できない。
他方,地域スタッフは,本件契約書6条に基づき被告が設定した目標数を達成するように業績確保に努める義務を負っていることに照らせば,被告から当該受持区域内における本件契約書1条所定の委託業務を包括的に受託しているものと解される。
そうすると,地域スタッフが被告による当該受持区域内における業務従事地域の指定に従うことをもって直ちに指揮監督関係を肯定することはできない。
イ 業務遂行上の指揮監督の有無
(ア)業務の内容及び遂行方法について相手方の具体的な指揮命令を受けていることは,指揮監督関係の基本的かつ重要な要素である。そして,具体的な指揮命令を受けているというためには,通常委託者や注文者が行う程度の指示にとどまらず,指揮命令の実効性を担保し得る間接強制力を有する指示がなされていることが必要であると解するのが相当である。
ただし,裁量労働制(労働基準法38条の3,4)の労働者のように,業務の遂行方法について具体的な指揮命令を受けていないものの,使用者の人事権や服務規律に服するなど一般的・包括的な指揮監督を受けている場合は,別論である。
(イ)前記前提事実(3),(4),証拠(甲17の1,2,甲25,乙24,乙25,証人W3,同W1,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
a 被告は,新規の地域スタッフに対し,基礎講習や実務指導を行い,新規委託期間経過後も,月初めには,局・センターにおいて,ビデオ上映による研修やロール・プレイング形式の練習を実施するなど,地域スタッフに対し継続的に丁寧なサポートを行っている。
b 被告は,地域スタッフに対し,期ごとに個人別の目標数を設定し,その目標数を達成させるための業務計画表を毎月作成させ,その内容が目標数の達成に不十分と認めた場合には,これを修正するように指導・助言を行うことがある。
c 業務計画表には,被告が設定した目標数や一斉デー(被告が特定の日時に特定の営業活動を推奨する日であり,「9時からデー」,「BS契変デー」などがある。)等の特定の活動日が予め印刷されているが,地域スタッフは,自己の裁量で稼働日と目標数を割り付けており,一斉デー等に参加しないことによって,被告から不利益を課せられることはない。
d 地域スタッフは,自ら訪問する区域を決定し,訪問ルートを決定する裁量を有している。
e 地域スタッフは,被告に対し,稼働した日ごとにナビタンにより1日の業務報告を送信するほか,週の初日には局・センターに出向いて業務報告を行うものとされていることから,被告は,地域スタッフの前営業日までの稼働状況を把握し,これらの業務報告に基づき,地域スタッフに対し,目標達成のための指導・助言を行っている。そして,被告は,業績不振者に対しては,稼働日数を増やしたり,夜間や土曜日・日曜日に稼働したりするように指導・助言を行うこともある。
f 被告は,地域スタッフが,特別の事情がないにもかかわらず,当期の目標数の80%に達しない期が連続して3期以上続くとき,又は当期の目標数の60%に達しないときは,当該地域スタッフに対し,特別指導を実施している。特別指導においては,来局回数を増やして指導の機会を増やすほか,被告の職員等が地域スタッフに対し実地で手本を示して指導を行う「帯同指導」が行われ,また,ステップ3に進むと,受持数(交付)の削減が行われることもある。
g 被告は,地域スタッフが上記の指導・助言や特別指導に応じなかったとしても,これをもって,当該地域スタッフに対し,債務不履行責任を問うたり,経済的不利益を課したりするようなことは行っていない。
h 地域スタッフに支給される事務費及び給付は,基本的に契約取次数等の出来高や目標達成率に応じて金額が客観的に決まっており,月額事務費のうちの業績加算額及び報奨金のうちの上・下半期業績加算を除き,被告の裁量により左右される部分はない。業績加算額及び上・下半期業績加算についても,単に被告の指導・助言に従わないことを理由として減額されることはない。
(ウ)上記認定事実のとおり,被告は,地域スタッフに対し,典型的な請負や委任ではみられないほどの手厚い報告・指導体制を敷いており(a,b,e,f),被告と地域スタッフとの間に一定の指揮監督関係があることは否定できないものの,他方で,被告による地域スタッフの業務遂行方法(稼働日,稼働時間帯,訪問区域・経路等)に関する指揮監督が緩やかであること(c,d)や,地域スタッフが被告の指導・助言や特別指導に応じなかったとしても,これをもって,債務不履行責任に問われたり,経済的不利益を課されたりすることはないこと(c,g,h)にかんがみると,被告の地域スタッフに対する指導・助言は,その実効性を担保し得るような間接強制力を有しているとまではいえない。そうすると,地域スタッフは,被告から業務の内容及び遂行方法について具体的な指揮命令を受けているとはいえない。
また,本件全証拠を検討してみても,地域スタッフが,裁量労働制の労働者のように被告から一般的・包括的な指揮監督を受けているような事情もうかがえない。
(エ)これに対し,原告は,特別指導のステップ3における受持数(交付)削減措置は,不利益な取扱いとしての実質を有すると主張する。しかしながら,同措置は,契約取次の機会減少をもたらすものの,他方で,目標数が低くなり,目標達成率の改善につながる可能性を高めることとなるから,必ずしも不利益な取扱いとしての実質を有するとはいえない。さらに,特別指導は,被告の指導・助言に従わなかったことを理由に実施されるのではなく,所定の目標数に達しなかったことを理由として実施されるから,特別指導に被告の指導・助言の実効性を担保するだけの間接強制力はない。
また,原告は,地域スタッフが,被告の指導・助言に従わなければ,①不利な受持区域が割り当てられたり,②自己の受持区域に他の地域スタッフが投入されたり,③委託契約を解約されたりする可能性があると主張する。しかし,①については,これを認める証拠はなく,②についても,業績の悪い地域スタッフの受持区域に他の地域スタッフが投入されることはあっても(弁論の全趣旨),業績の悪くない地域スタッフが,被告の指導・助言に従わないがために,その業務従事地域に他の地域スタッフを投入されることがあることを認めるに足りる証拠はない。③については,有期委託契約の解約は,地域スタッフの労働契約法上の労働者性如何によってその効果が左右されるから(労働契約法17条1項参照),これをもって労働契約法上の労働者性判断の考慮要素とすることは適当ではない。
前提事実(4)イ及び弁論の全趣旨によれば,地域スタッフが,顧客から受け取った現金を翌日中(土日を除く。)に被告に振り込むことは,本件契約上の義務といえるところ,これは,受任者による受取物の引渡しに関する義務であるとも解し得るから,これをもって,直ちに業務遂行上の指揮監督があるとはいえない。
よって,上記(ウ)と異なる原告の主張を採用することはできない。
ウ 勤務場所・勤務時間に関する拘束性の有無
(ア)勤務場所・勤務時間が指定され,管理されていることは,一般的には,指揮監督関係の基本的な関係である。
(イ)前記前提事実(2),(4),証拠(乙19ないし21,乙34,証人W3)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
a 地域スタッフの業務の開始・終了時刻及び休憩時間は,本件契約に定められておらず,地域スタッフの裁量に委ねられている。なお,本件契約は,裁量労働制のみなし労働時間のような定めも置いていない。
b 被告は,地域スタッフに対し,「9時からデー」,「BS契変デー」等の一斉デーを定め,特定の活動の日を定めてこれに従った業務を行うように推奨しているが,これに参加しない地域スタッフも一定数存在し,これに参加しなかったとしても,不利益を課すことはしていない。
c 地域スタッフが局・センターへ出向くのは,特別指導を除けば,基本的に週の初日(月3回)のみである。
d 各地域スタッフの1日の稼働時間及び1か月の稼働日数は,各人によって区々である。
e 地域スタッフは,被告が指定した業務従事地域の範囲内において,自ら訪問する区域を決定し,訪問ルートを決定する裁量を有している。
f ナビタンは,実際の操作時間が記録されるにとどまり,業務スタッフの業務従事の時間や訪問経路を記録するものではない。
g 被告は,業績不振の地域スタッフに対して,稼働日数を増やしたり,夜間や土曜日・日曜日に稼働したりするように指導・助言を行うこともあり,また,特別指導の対象者に対しては,帯同指導を行っているが,これらの指導に従わない者に対して,そのことを理由に不利益を課すようなことはしていない。
(ウ)以上の認定事実によれば,地域スタッフの勤務場所・勤務時間に関する拘束性は緩やかであるといえる。
これに対し,原告は,地域スタッフは被告が指示する稼働時間数及び稼働日数を確保しなければならず,これを確保していなければ,被告から業務計画表作成時や報告時に修正を求められるから,相当程度の時間的拘束性があると主張する。しかしながら,被告が,地域スタッフに対し,目標数の達成に必要な稼働日数・時間数を確保するように業務計画表を作成することを求めたとしても,地域スタッフは,業務計画表どおりに稼働する義務はないから,被告の指導・助言自体に時間的拘束性があるとはいえない。
エ 代替性の有無
(ア)本人に代わって他の者が労務を提供することが認められているか否か等労務提供に代替性が認められているか否かは,指揮監督関係そのものに関する基本的な判断基準ではないが,労務提供の代替性が認められている場合には,労務供給者が自己の労働力を他人に委ねている状況にはないといえるから,指揮監督関係を否定する要素の一つになる。
(イ)前記前提事実(2)及び証拠(乙32)によれば,本件契約書4条は,地域スタッフが自己の責任と計算において委託業務の全部または一部を第三者に再委託することができることを定めており,地域スタッフ全体に占める再委託者の割合は,平成23年12月時点で1.9パーセントであったことが認められる。したがって,本件契約の委託業務の再委託が容認され,委託業務の代替性が認められることは,指揮監督関係を否定する要素の一つになるものの,その否定する度合いは小さいといえる。
オ 報酬の労務対償性
(ア)労働基準法11条にいう賃金とは,名称の如何を問わず,労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。そして,この場合の「労働の対償」とは,労働者が使用者の指揮監督の下で行う労働に対して支払うものというべきであるから,報酬が賃金であるか否かによって,逆に使用従属性を判断することはできない。しかし,報酬の性格が,労務の結果又は出来高による較差が小さく,一定時間労務を提供していることに対する対価と評価される場合は,使用従属性を補強し,労務の結果又は出来高に対する対価と評価される場合は,使用従属性を減殺するものと考えられる。
(イ)証拠(甲2の1ないし6)によれば,原告は,被告から,平成23年9月分ないし同年11月分,平成24年2月分,同年4月分,同年5月分の事務費・給付として,別紙3「事務費・給付支給一覧表」記載のとおり支給を受けたことが認められる。
このうち,地域スタッフに支給される「事務費」の主要部分である運営基本額は,前記前提事実(5)ア(ア)a(a)のとおり,業務従事実績及び訪問件数に応じて,15万円,10万円,7万5000円,0円と4段階で支給の有無・額が決められており,労務の結果に対する対価であると評価し得る側面がある。他方,業績不振のため長らく特別指導のステップ3の対象者とされていた原告でさえ,継続的に運営基本額の上限である15万円の支給を受けていたことに照らせば,運営基本額として15万円の支給を受けることは容易であったと認められる。したがって,運営基本額は,少なくとも15万円の支給を受けている地域スタッフの間では,労務の結果又は出来高による較差が比較的小さく,一定時間労務を提供したことに対する対価と評価される側面があることも否定できない。そうすると,運営基本額は,使用従属性を補強する側面と減殺する側面の両方を併せ持つというべきである。
前記前提事実(5)ア(ア)aによれば,月額事務費のうち大都市圏加算額は,指定された業務従事地域が支払対象区域か否かによって支給の有無・額が決められるから,一定時間労務を提供していることに対する対価と評価し得るのに対し,業績加算額及び業績基本額は,業績に応じてその額が決められるから,基本的に労務の結果又は出来高に対する対価であると評価し得る。
前記前提事実(5)ア(イ)によれば,対策関係事務費のうち講習事務費は,講習への参加の有無によって支給の有無・額が決められるから,一定時間労務を提供していることに対する対価と評価し得る。
前記前提事実(5)ア(ウ)によれば,報奨金は,業績に応じてその額が決められるから,基本的に労務の結果又は出来高に対する対価であると評価し得る。
前記前提事実(5)イによれば,「給付」制度は,被告が,地域スタッフに対し,慶弔禍福,業務上・外の傷病,本件契約の終了,国民健康保険の加入などの事由を原因として「事務費・給付のあらまし」に定められた金額を支払う制度であり,具体的な労働ないしその結果に対する対価ではない。したがって,「給付」は,「事務費・給付のあらまし」によって支給条件が明確に規定され,被告に支払義務があると解したとしても,これをもって直ちに使用従属性を補強するとも,減殺するともいえない。
(ウ)以上の検討結果によれば,本件契約の「事務費」は,使用従属性を補強する側面と減殺する側面の両方を併せ持つ一方,「給付」は,いずれの側面も有しないといえる。
カ 事業者性の程度
(ア)労務提供者が自ら所有する機械,器具等を使用する場合には,自らの計算と危険負担に基づいて事業経営を行う事業者としての性格が強く,労働者性を弱める要素となる。また,報酬の額が同様の業務に従事している従業員に比して著しく高額である場合には,当該報酬は,労務提供に対する賃金ではなく,事業者に対する代金支払と認められ,労働者性を弱める要素となる。
(イ)前記前提事実(2),(4)アのとおり,被告は,地域スタッフに対し,本件委託書10条に基づき,ナビタン等の携帯端末や業務に必要な書式用紙その他特に必要と認める物品を貸与している。また,地域スタッフの報酬の額が同様の業務に従事している被告の従業員に比して著しく高額であることを認めるに足りる証拠もない。そうすると,地域スタッフは,移動に必要な自動車,バイク等は自己所有のものを使用し,ガソリン代や一定限度の交通費(前記前提事実(5)ア(エ)参照)も自ら負担していることを考慮しても,自らの計算と危険負担に基づいて事業経営を行う事業者としての性格は弱いといえる。
キ 専属性の程度
(ア)労働時間以外の時間の利用方法は基本的に労働者の自由に委ねられていること,職業選択の自由の保障(憲法22条1項)を考慮すると,使用者は労働者に対し合理的な理由なく兼業・兼職を制限することはできないと解するのが相当である。したがって,特定の企業に対する専属性がないことをもって労働者性を弱めることにはならないが,兼業・兼職が制度上制約され,又は事実上困難である場合には,専属性の程度が高く,経済的に当該企業に従属していると考えられるから,労働者性を補強する要素となると解される。
(イ)証拠(甲1)によれば,本件契約書には,地域スタッフの兼業・兼職を禁止又は制限する条項はないことが認められ,また,地域スタッフが他社の業務に従事することが事実上困難であったことを認めるに足りる証拠もない。したがって,地域スタッフは,被告に対する専属性があるとはいえないが,上記(ア)のとおり,これをもって労働者性を弱めることにはならない。
ク その他の要素
証拠(乙32)及び弁論の全趣旨によれば,①被告は,地域スタッフに報酬を支払う際,所得税法204条1項4号に基づき集金人の報酬として源泉徴収を行っており,給与所得としての源泉徴収を行っていないこと,②地域スタッフは労働保険の適用対象とされていないことが認められるところ,被告は,これらの事由が労働者性を弱める要素であると主張する。しかしながら,これらの納税や保険料納付の処理が適切か否かは,地域スタッフの労働者性如何によるから,これらの事由をもって,地域スタッフの労働者性を弱める要素とはならないというべきである。
ケ 小括
(ア)以上の検討によれば,地域スタッフは,被告の具体的な仕事の依頼,業務従事地域の指示等に対して諾否の自由を有しないといえるが,これは,委託業務を包括的に受託したことによるものであると解されるから,これをもって直ちに指揮監督関係を肯定することはできない。さらに,地域スタッフは,①被告から業務の内容及び遂行方法について具体的な指揮命令を受けているとまではいえないこと,②指示された業務従事地域内の勤務場所・勤務時間に関する拘束性は緩やかであること,③業務の再委託が容認され,委託業務の代替性が認められること,④報酬についても,使用従属性を補強する側面と減殺する側面の両方を併せ持ち,一義的に解することができないことを総合すると,使用従属性を認めることはできないから,労働基準法及び労働契約法上の労働者であるということはできない。
(イ)しかしながら,①地域スタッフは,個人であること,②本件契約は,民法上の労務供給契約(混合形態のものを含む。)にあたること,③地域スタッフは,被告の業務従事地域の指示(具体的な仕事の依頼)に対して諾否の自由を有しないこと,④被告は,地域スタッフに対し,典型的な請負や委任ではみられないほどの手厚い報告・指導体制を敷いており,被告と地域スタッフとの間に広い意味での指揮監督関係があること,⑤その報酬も一定時間労務を提供したことに対する対価と評価される側面があること,⑥地域スタッフは再委託することを容認されているものの,地域スタッフ全体に占める再委託者の割合は2パーセント前後と少なく,原告は再委託を行っていないこと,⑦地域スタッフの事業者性は弱いことを併せ考慮すると,原告は,被告に対し,労働契約法上の労働者に準じる程度に従属して労務を提供していたと評価することができるから,契約の継続及び終了において原告を保護すべき必要性は,労働契約法上の労働者とさほど異なるところはないというべきである。そして,労働契約法は,純然たる民事法であるから,刑事法の性質を有する労働基準法と異なり,これを類推適用することは可能である。そうすると,期間の定めのある本件契約の中途解約については,労働契約法17条1項を類推適用するのが相当である。
(3)本件中途解約の有効性
ア 契約の当事者は,契約の有効期間中はこれに拘束されるのが契約法上の原則であるから,期間途中の解雇を認めるには,この原則に対する例外を認めるに足りるだけの重大な事由が必要である。したがって,労働契約法17条1項にいう「やむを得ない事由」とは,期間の定めのない労働契約における解雇に必要とされる「客観的に合理的で,社会通念上相当と認められる事由」よりも限定された事由であって,就労不能や重大な非違行為など期間満了を待たずに直ちに契約を終了せざるを得ないような事由を意味すると解するのが相当である。
なお,前記前提事実(6)ウのとおり,原告は,被告に対し,平成23年度の契約更新にあたり,被告からの中途解約を認める旨の本件誓約書を提出しているが,労働契約法17条1項は,期間の定めのある労働契約の解雇について強行的な効力を有すると解するのが相当であるから,本件誓約書の上記部分は,同項の類推適用により無効であるというべきである。
イ 前記前提事実(6)ケのとおり,本件中途解約は,業績不良を理由とするものであるが,これは,期間満了を待たずに直ちに契約を終了せざるを得ないような事由であるとまではいえないから,労働契約法17条1項にいう「やむを得ない事由」にはあたらないというべきである。
なお,原告は,本件中途解約当時,うつ病のため就労不能であることを理由として休業していたが,被告は,本件訴訟において,原告がその当時就労不能であったことを争っているところであるから,本件中途解約の理由に就労不能が含まれると解する余地はない。
ウ よって,本件中途解約は,労働契約法17条1項の類推適用により,無効であるといわなければならない。
2  争点(2)(本件契約更新の当否)について
前記前提事実(7)エのとおり,原告は,平成26年3月30日,被告に対し,本件更新申込みを行ったが,被告は,これ以前から既に本件訴訟において本件契約の終了を主張し,同申込みに対しても黙示的に拒絶していることが明らかである。そして,前記1(2)ケ(イ)の判示のとおり,契約の継続及び終了において原告を保護すべき必要性は,労働契約法上の労働者とさほど異なるところはなく,期間の定めのある本件契約の更新については,労働契約法19条を類推適用するのが相当であるから,以下において,本件契約が労働契約法19条の類推適用により更新されたものとみなされるか否かについて検討する。
(1)合理的期待の要件の有無
証拠(甲1,乙15,証人W1)によれば,①本件契約は,更新の度に被告と地域スタッフとの間で契約書が取り交わされていること,②被告は,地域スタッフから契約更新を希望された際,実質的に更新の是非を判断していることが認められるから,本件契約を実質的に期間の定めのない契約と同視することはできない。
他方,前記前提事実(1)のとおり,①被告の地域スタッフは,昭和5年から現在まで80年以上続いている職種であり,平成23年12月当時でも放送受信契約の契約取次件数の過半数を担っていたなど被告の事業継続に不可欠な存在であったこと,②原告は,被告との間で6回にわたり本件契約を更新し,平成9年から15年余にわたり地域スタッフとして稼働していたことに照らせば,原告は,平成26年4月1日に本件契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があったと認められる。したがって,原告の本件更新申込みに対する被告の拒絶が,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められないときは,労働契約法19条の類推適用により,本件契約は,従前と同一の条件で更新されたものとみなされることとなる。
(2)本件更新申込みに対する拒絶の効力
ア 前記前提事実(6),証拠(乙24,乙71,乙73の1ないし4,乙74の1ないし4,証人W3,同W4)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
(ア)原告は,平成21年度第3期から平成22年度第1期まで連続5期(10か月)にわたり特別指導のステップ1の,同年度第2期から同年度第3期まで連続2期(4か月)にわたりステップ2の,同年度第4期から平成24年度第2期まで連続11期(22か月)にわたりステップ3の対象者とされた。
(イ)原告の上記(ア)の期間の業績の推移は,別紙4「原告の業績推移表」記載のとおりである。
平成24年度第2期における原告の最低業績水準は,総数及び口座30件,衛星15件であったところ,原告の業績は,総数及び口座9件,衛星5件であり,最低業績水準を大幅に下回った。
(ウ)被告の担当者は,平成24年5月から同年7月にかけて,原告に対し,稼働時間が少ないこと,稼働開始が遅いため時間を有効に使えていないことなど指摘するとともに,好適時間の活用,全戸点検,稼働量の確保等を求めた。これに対し,原告は,自己の稼働量が少ないことを認めるものの,「組合がらみで(稼働量を)確保できていない」,「忙しかった」,「家が遠く,M字対策(一日のうち午前中と夕方以降の在宅率の高い時間帯を訪問する営業活動)はできません」,「(契約取次を)とれる気がしない,取次計画が描きづらい」などと述べて,午前中に訪問営業をすることについては消極的であり,また,同年6月19日と同年7月2日の帯同指導を拒否した。原告が上記期間において契約取次等の訪問活動に従事した時間(ただし,これは,ナビタンに入力した情報から推測される活動時間であり,全稼働時間ではない。)は,平均すると1日4,5時間程度であった。
(エ)原告は,平成23年4月4日から同年8月3日まで,抑うつ状態を理由に休業し,平成24年7月25日からうつ病を理由に休業し,被告に対し復職を申し出たのは平成25年1月4日であった。
イ 上記認定事実のとおり,原告は,①平成21年度第3期から平成24年度第2期までの3年間にわたり,業績不良のため特別指導の対象者とされていたこと,②6度目の契約更新後(平成23年4月以降)も,総じて業績が低迷していたこと,③被告の職員の指導・助言に対して素直に従う姿勢を見せなかったこと,④平成23年4月4日から同年8月3日までと平成24年7月25日から同年9月1日(本件中途解約の日)まで2度も精神疾患を理由に長期休業をしたことを総合考慮すると,復職を申し出た平成25年1月以降に稼働することができなかったことを踏まえても,原告の本件更新申込みに対する被告の拒絶は,客観的に合理的な理由があり,かつ社会的通念上相当であるというべきである。
ウ これに対し,原告は,原告が他の地域スタッフに比して業績不良であったわけではないと主張する。しかしながら,証拠(乙71)及び弁論の全趣旨によれば,原告が特別指導の対象とされていた期間(平成21年度第3期から平成24年度第2期まで)の乙営業センターの同一種別の地域スタッフにおける原告の目標達成率の順位は,別紙5「目標達成率順位表」記載のとおりであると認められ,これによれば,原告の業績は,平成21年度第4期以降,乙営業センターの同一種別の地域スタッフの中で常に低位にあったといえるから,原告の上記主張を採用することはできない。
(3)小括
以上によれば,原告被告間の本件契約は,平成26年3月31日,期間満了により終了したといえるから,原告の労働契約上の地位確認の請求は,理由がない。
3  争点(3)(「事務費」及び「給付」請求の当否)について
(1)「事務費」及び「給付」請求の根拠
前記前提事実(5)のとおり,被告は,地域スタッフに対して支払う「事務費」及び「給付」の算定方法を事務費・給付のあらましに詳細に定めたうえ,地域スタッフに対し,これを交付するとともにこれに従って報酬等を支給していることから,当事者双方の意思を合理的に解釈すれば,事務費・給付のあらましの内容は,本件契約の内容となっていると解するのが相当である。
そして,上記2の判示のとおり,原告は,本件中途解約の日である平成24年9月1日から平成26年3月31日までの間,地域スタッフの地位にあったといえるから,民法536条2項前段により,被告に対し上記期間の事務費及び給付の支給を請求することができる。
(2)休業見舞金
ア 原告は,平成24年8月25日から平成25年1月24日まで休業したと主張し,5か月分の休業見舞金を請求するところ,休業見舞金の算出基礎となる平均月収は,事由発生月の前月以前12か月間(事由発生月の前月は含まない。)に支払われた月例事務費の1か月平均額により算定する。算定対象期間中に休業月(傷病により連続して1週間以上休業した月)があった場合,その月は算定対象から除外され,また,特別指導区分がステップ3にあり,受持数(交付)削減がなされた月も算定対象から除外される。よって,原告が平成24年7月25日以降に休業見舞金が支給される場合,その算定対象期間該当月の月例事務費は,以下のとおりである(当事者間に争いはない。)。

平成23年8月分 17万7050円
平成23年9月分 21万8080円
平成23年10月分 17万5940円
平成23年11月分 23万2340円
平成24年2月分 20万4330円
平成24年4月分 26万5060円
平成24万5月分 21万1750円

上記の合計額148万4550円を月数で除して平均月収を算定すると,21万2079円となる。したがって,原告に支払うべき5か月分の休業見舞金の金額は,次の計算式のとおり,74万2500円となる(計算方法については,前記前提事実(5)イ(ア)参照)。

(計算式) 1か月分 21万2079円×0.7=14万8500円
5か月分 14万8500円×5=74万2500円

イ 被告が原告に対し平成24年12月20日に支払うべき休業見舞金(報奨金)は,次の計算式のとおり,28万0665円と認められる。
(計算式)14万8500円×1.89=28万0665円
(3)特別給付金
被告は,国民健康保険に加入している地域スタッフに対し,報奨金支払時に4万8000円を支給していること,及び原告が国民健康保険に加入していることについては,当事者間に争いがない。したがって,被告は,平成24年12月20日,平成25年6月20日及び同年12月20日限り,原告に対し,特別給付金として4万8000円ずつ支払わなければならない。
(4)事務費
ア 被告は,原告が平成25年1月4日に行った復職の申出を正当な理由なく拒絶したというべきであるから,原告に対し,民法536条2項本文に基づき,同日以降の事務費を支払わなければならない。そして,原告は,仮に地域スタッフとして復職していれば,報奨金を除く事務費として,少なくとも上記(2)アの平均月収である1か月21万2079円を得たであろうと認めるのが相当である。
イ 被告が原告に対し平成25年2月20日に支払うべき事務費は,同年1月25日から同月31日までの稼働分に対するものであるから,次の計算式のとおり,4万7889円となる。
(計算式)21万2079円×7/31=4万7889円
ウ 被告は,原告に対し,平成25年2月1日から平成26年3月31日までの事務費(ただし,報奨金を除く。)として,平成25年3月20日から平成26年4月20日まで毎月20日限り,21万2079円ずつを支払わなければならない。
ただし,前記前提事実(7)オのとおり,原告は,本件中途解約後に,別紙2「中間収入一覧表」記載のとおりの収入を得ている。また,原告は,平成25年の8月及び9月も,労働者派遣により就労しているが,給与明細がないことから,その間の給与の具体的金額は明らかではないが,同年7月と同等の給与を得ていた蓋然性が高いから(弁論の全趣旨),同年の8月及び9月も,同年7月の給与と同額の3万7805円を得たと認めるのが相当である。よって,民法536条2項後段により,該当月の費用から上記中間収入を控除することとする。
エ 報奨金の額も,上記(2)アの平均月収である1か月21万2079円を基準に算定するのが相当であるから,報奨金のうち平均事務費支払額は,次のとおりと認められる。

6月支払分 21万2079円×1.33=28万2065円
12月支払分 21万2079円×1.89=40万0829円

上・下半期業績加算は,目標達成率の区分に応じた額となるところ,証拠(乙68)によれば,原告の平成24年6月支給分の報奨金における区分は「E」であると認められ,同区分に応じた業績加算額は1万5000円であるから(前記前提事実(5)ア(ウ)参照),平成25年度の業績加算額もこれと同額と認めるのが相当である。
よって,報奨金の総額は,次のとおりとなる。

6月支払分 28万2065円+1万5000円=29万7065円
12月支払分 40万0829円+1万5000円=41万5829円

(5)小括
よって,被告は,原告に対し,本件契約に基づき,以下の金員を支払わなければならない。
ア 平成25年2月20日までに支払われるべき事務費・給付として,次の(ア)ないし(エ)の合計額111万9054円及びこれに対する同月21日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金
(ア)休業見舞金として,74万2500円(上記(2)ア)
(イ)休業見舞金(報奨金)として,28万0665円(上記(2)イ)
(ウ)特別給付金として,4万8000円(上記(3))
(エ)事務費として,4万7889円(上記(4)イ)
イ 平成25年2月1日から平成26年3月31日までの間の事務費(ただし,報奨金を除く。)として,別紙1「事務費認容額一覧表」の各認容額欄記載の各金員の合計額262万4756円及び同各金員に対する各支払期日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金(上記(4)ウ)
ウ 平成25年6月20日及び同年12月20日に支払うべき報奨金及び特別給付金として,80万8894円及びうち34万5065円(29万7065円と4万8000円の合計額)に対する平成25年6月21日から,うち46万3829円(41万5829円と4万8000円の合計額)に対する同年12月21日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金(上記(3),(4)エ)
4  争点(4)(慰謝料請求の当否)について
原告は,被告の職員が,原告に対し,全受労の組合員であることを理由に数々の嫌がらせや本件中途解約を行ったと主張し,不法行為に基づき損害賠償(慰謝料及び弁護士費用)を請求するのに対し,被告は,そもそも原告の労働組合法上の労働者該当性を争うので,以下検討する。
(1)労働組合法上の労働者性の判断基準
ア 労働組合法3条は,同法における労働者につき,「職業の種類を問わず,賃金,給料その他これに準ずる収入によって生活する者をいう」と定義している。これは,労働基準法上の労働者と異なり,賃金等の収入によって生活する者であればよく,失業者も含まれ得る。さらに,団体交渉を助成するという労働組合法の趣旨を踏まえると,同法上の労働者には,自らの労働力を提供して対価を得て生活するがゆえに,相手方との個別の交渉において交渉力に格差が生じ,契約自由の原則を貫徹しては不当な結果が生じるため,労働組合を組織し集団的な交渉による保護が図られるべき者が幅広く含まれると解される。したがって,労働組合法上の労働者は,労働基準法上の労働者よりも広い概念であるといえる。
イ 上記の点を踏まえると,労働組合法上の労働者に当たるか否かについては,企業組織への組入れの有無,契約内容の一方的決定の有無,報酬の労務対償性,業務の依頼に対する諾否の自由の有無,指揮監督下の労務の提供・一定の時間的場所的拘束の有無,事業者性等の事情を総合考慮して,これを判断するのが相当である。そして,その判断にあたっては,契約の形式にとらわれるのではなく,契約の実際の運用等の実態に即して検討しなければならない。
(2)本件における検討
以下において,上記(1)イの判断基準によって,原告が労働組合法上の労働者に該当するか否かについて検討する。
ア 企業組織への組入れの有無
(ア)これは,相手方の業務に不可欠ないし枢要な労働力として組織内に組み入れられており,労働力の利用をめぐり団体交渉によって問題を解決すべき関係があることを示すものとして,基本的判断要素であると解される。
(イ)地域スタッフは,前記前提事実(1),(3)のとおり,①昭和5年から現在まで80年以上続いている職種であること,②実施要領にも,「地域スタッフの各個人別目標数は営業所の目標数の達成を図るため設定するものであり,地域スタッフ,職員等各取扱者の目標数の合計は営業所目標数につながるものである。」と記載されていること,③実際,平成23年12月時点でも放送受信契約の契約取次件数の過半数を担っていることに照らせば,被告の事業継続に不可欠な存在であり,被告の業務に不可欠ないし枢要な労働力として組織内に組み入れられているといえる。
(ウ)これに対し,被告は,地域スタッフは一定の制度の下に被告により管理されている存在ではないと主張し,企業組織への組入れを否定する。しかしながら,前記前提事実(3),(4)記載のとおり,被告は,地域スタッフに対する指導方針を実施要領に明らかにしたうえ,典型的な委任契約や請負契約で見られないほどの手厚い報告・指導体制の下に地域スタッフを置いているというべきであるから,被告の上記主張は採用できない。
イ 契約内容の一方的決定の有無
(ア)これは,相手方に対して労務供給者側に団体交渉法制による保護を保障すべき交渉力格差があることを示すものとして,基本的判断要素と解される。
(イ)証拠(甲1,甲5)及び弁論の全趣旨によれば,被告と地域スタッフとの契約に用いられる契約書は,委託業務の種別や受持区域を除いて統一の様式になっていること,被告が地域スタッフに対して支払う報酬等は,被告が作成した「事務費・給付のあらまし」に詳細に定められていることが認められるから,地域スタッフの契約条件の大半は,被告が一方的・定型的に決定しているといえる。
(ウ)これに対し,被告は,「事務費・給付のあらまし」に記載されている事務費単価について,毎年,地域スタッフの団体との間で協議し,その協議結果を踏まえて決定しており,被告が一方的にこれを決定しているという実態はないと主張する。しかしながら,被告と新たに地域スタッフの委託契約を締結しようとする者は,「事務費・給付のあらまし」に従わざるを得ないのであり,その場合,被告が地域スタッフの契約条件の重要な部分である事務費・給付の部分を一方的・定型的に決定していることは明らかである。さらに,被告が主張する上記実態は,使用者が労働組合と団体交渉を行ったうえで就業規則を改訂することと何ら異ならないのであって「事務費・給付のあらまし」が,就業規則に類似する性質(一方性,定型性)を有していることは否定し得ない。
ウ 報酬の労務対償性
(ア)これは,労働組合法3条に明示された要件であり,基本的判断要素である。
(イ)前記1(2)オ(イ)の判示のとおり,地域スタッフに支給される「事務費」は,全体として,労務の結果又は出来高に対する対価であると評価し得る側面と一定時間労務を提供したことに対する対価と評価される側面を併せ持つというべきである。
エ 業務の依頼に対する諾否の自由の有無
(ア)これは,労務供給者が労働力の処分権を相手方に委ねて就労すべき関係にあるという認識が当事者間に存在することを推認させ,上記アの事業組織への組入れの判断を補強する要素である。
(イ)前記1(2)ア(イ)の判示のとおり,地域スタッフは,被告の具体的な業務の依頼である業務従事地域の指示に対して諾否の自由を有していないといえる。
オ 指揮監督下の労務の提供・一定の時間的場所的拘束の有無
(ア)労働組合法3条は,労働基準法9条と異なり,労働者の要件として,「使用者に使用されて労働し」という要件を要求していないが,指揮監督下の労務の提供又は一定の時間的場所的拘束が認められる場合には,労働基準法上の労働者への類似性が強いこととなるので,これらの要素は,労働組合法上の労働者性も肯定する方向に働くと考えられる。したがって,労働基準法上は労働者性を肯定すべき程度に至らない広い意味での指揮監督や拘束であっても,労働組合法上の労働者性を肯定的に評価する補完的要素になり得る。
(イ)前記1(2)イ(ウ)の判示のとおり,被告と地域スタッフとの間には,労働基準法上の労働者性を肯定すべき程度の指揮監督があるとはいえないが,被告は,地域スタッフに対し,典型的な委任契約や請負契約ではみられないほどの手厚い報告・指導体制を敷いており,両者の間には広い意味での指揮監督関係があるというべきである。
カ 事業者性
(ア)労務供給者が,恒常的に自己の才覚で利得する機会を有し自らリスクを引き受けて事業を行う者とみられる場合には,事業組織からの独立性
や契約内容等の交渉可能性などを推認させるから,事業者性は,労働者性を消極的に評価する要素である。
(イ)前記1(2)カ(イ)の判示のとおり,地域スタッフは,自らの計算と危険負担に基づいて事業経営を行う事業者としての性格は弱いといえる。
キ 小括
以上の検討によれば,①地域スタッフは,被告の業務に不可欠ないし枢要な労働力として組織内に組み入れられていること,②地域スタッフの契約内容は,被告がその大半を一方的・定型的に決定していること,③地域スタッフに支給される「事務費」は,労務対償性の側面を有すること,④地域スタッフは,被告の具体的な仕事の依頼,業務従事地域の指示に対して諾否の自由を有しないこと,⑤被告と地域スタッフとの間には,広い意味での指揮監督関係があるといえること,⑥地域スタッフは,事業者としての性格は弱いことを総合考慮すると,地域スタッフは,労働組合法上の労働者にあたるというべきであり,これと異なる被告の主張は採用できない。
(3)不当労働行為の有無
原告は,被告の不当労働行為として,前記第2の3(1)イ(イ)【被告の主張】欄記載のとおり7つの事由を主張するので,以下検討する。
ア 営業に不利な地域の割当て
原告は,被告が,全受労の組合員に対し,営業に不利な業務従事地域を割り当てていると主張する。
しかしながら,証拠(乙64の1ないし4,乙65,証人W3,同W2)及び弁論の全趣旨によれば,①被告は,地域スタッフに対し,期(2か月)ごとに異なる業務従事地域を割り当てていること,②原告が担当した期の前後の期に原告と同じ業務従事地域を担当した地域スタッフの業務成績の平均は,目標数を上回っているか,又は目標数を下回っていても少なくとも調整後の中間業績水準を上回っていたことが認められる。そうすると,被告が,全受労の組合員に対し,ことさらに営業に不利な業務従事地域を割り当てたとはいえない。
イ ブロック表の不開示
原告は,Tセンター長が各地域の目標数を記載しているブロック表の開示を中止したことが不当労働行為にあたると主張する。
これについて,被告は,平成22年10月の体制変更に伴い,ブロック表の作成を中止した旨主張しているが,特段これを疑うべき事情も見出せない。また,ブロック表は,被告の内部資料にすぎず,これを作成するか否か,又は地域スタッフに開示するか否かは,被告の裁量に委ねられる事項であるから,これを開示しなかったからといって,直ちに不当労働行為にあたるということはできない。
ウ 特別指導の実施
原告は,被告が原告を特別指導の対象者としたことが不当労働行為にあたると主張する。
しかしながら,証拠(乙71)及び弁論の全趣旨によれば,原告の平成21年度第2期から平成24年度第2期までの期間の業績の推移は,別紙4「原告の業績推移表」記載のとおりであると認められ,これによれば,①原告が平成21年度第3期に特別指導の対象となったのは,同年度第2期の目標達成率が60パーセントに満たなかったことによること,②以後特別指導が継続したのは,3期連続して目標達成率の80パーセントを確保することができなかったことによることがわかる。このように原告は,被告の客観的な内部基準(前記前提事実(3)イ(ウ)参照)に従って,特別指導の対象とされたにすぎないから,これをもって不当労働行為にあたるとはいえない。
エ 地域スタッフの種別及び受持地域の変更
原告は,被告が,原告に対し,平成21年12月1日,一方的に契約開発スタッフに種別変更し,平成22年10月1日,受持区域を一方的に変更し,大阪市(住吉区・住之江区)の担当から外したと主張する。
しかしながら,前記前提事実(2)のとおり,委託種別及び受持区域は,本件契約の個別合意事項にあたり,被告が一方的にこれらを変更することができないことは,本件契約書上明らかである。そして,証拠(乙1)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,平成21年12月1日及び平成22年10月1日,被告との間で,本件契約を変更する旨の契約書を作成していることが認められる一方,被告が,原告に対し,一方的に委託種別や受持区域を変更したことを認めるに足りる証拠はない。
オ キュービットの不貸与
原告は,被告が,原告に対し,平成22年11月1日から平成23年1月3日まで及び同年4月1日から平成24年1月31日まで,キュービットを貸与しなかったことが不当労働行為にあたると主張する。
この点について,被告は,キュービットが利用の頻度に関わりなく月額3000円の通信費を要し,その保有台数が地域スタッフの人数より少ないため,月間の利用実績を基準として貸与するか否かを決めており,原告からキュービットを回収したのは,原告の利用実績が少なかったからであると主張するところ,本件全証拠を検討してみても,乙営業センターにおいて,原告より利用実績の少ない地域スタッフに対しキュービットが貸与されていたことを認めるに足りる証拠はなく,被告の上記主張を直ちに排斥するだけの理由はない。
したがって,被告が原告に対しキュービットを貸与しなかった行為が不当労働行為にあたるとはいえない。
カ 本件誓約書への署名の強要
原告は,被告が原告に対し本件誓約書への署名を強要したと主張するが,本件全証拠を検討してみても,これを認めるに足りる証拠はない。
キ 本件中途解約
原告は,本件中途解約が,全受労の弱体化を図るべく,本件支部の委員長である原告を不利益に取り扱ったものであると主張する。
しかしながら,前記前提事実(6)オ,カのとおり,被告は,平成24年6月1日,原告に対し,同年度第2期(同年6月・7月)の業績が最低業績水準に達しない場合,又は同期から2期連続して中間業績水準に達しない場合は,本件契約書15条2項に基づき本件契約を解約することを予告しており,本件中途解約は,同予告を実行したものにほかならない。したがって,本件中途解約が原告の業績が不良であることを理由になされたことは明らかであり,本件全証拠を検討してみても,原告が全受労の組合員でなければ,中途解約されなかったであろうといえるような事情は見出し難い。
(4)小括
以上のとおり,原告が主張する被告の不当労働行為は,いずれも認められない。ただし,本件中途解約は,労働契約法17条1項の類推適用により無効であり,これによって,原告が精神的損害を被ったことは否定できない。しかしながら,本件中途解約により被った精神的損害は,特段の事情のない限り,被告に対し本件中途解約後から本件契約の期間満了日までの報酬の支払が命じられることにより塡補されるものと解されるところ,本件においては,これによってもなお塡補され得ない精神的損害が生じたという特段の事情を認めるに足りる証拠はない。
よって,原告の不法行為に基づく損害賠償請求は,理由がない。
5  結論
以上より,原告の請求は,被告に対し,本件契約に基づき,①111万9054円及びこれに対する平成25年2月21日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金,②262万4756円及び別紙1「事務費認容額一覧表」の各認容額欄記載の各金員に対する各支払日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金,③80万8894円及びうち34万5065円に対する平成25年6月21日から,うち46万3829円に対する同年12月21日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の各支払を求める限度で理由があるから認容し,その余は理由がないからいずれも棄却する。

別紙
1 事務費認容額一覧表〈省略〉
2 中間収入一覧表〈省略〉
3 事務費・給付支給一覧表〈省略〉
4 原告の業績推移表〈省略〉
5 目標達成率順位表〈省略〉
*******

関連記事一覧

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。


Notice: Undefined index: show_google_top in /home/users/1/lolipop.jp-2394bc826a12fc5a/web/www.bokuore.com/wp-content/themes/rumble_tcd058/footer.php on line 296

Notice: Undefined index: show_google_btm in /home/users/1/lolipop.jp-2394bc826a12fc5a/web/www.bokuore.com/wp-content/themes/rumble_tcd058/footer.php on line 296