【営業代行から学ぶ判例】crps 裁判例 lgbt 裁判例 nda 裁判例 nhk 裁判例 nhk 受信料 裁判例 pl法 裁判例 pta 裁判例 ptsd 裁判例 アメリカ 裁判例 検索 オーバーローン 財産分与 裁判例 クレーマー 裁判例 クレプトマニア 裁判例 サブリース 裁判例 ストーカー 裁判例 セクシャルハラスメント 裁判例 せクハラ 裁判例 タイムカード 裁判例 タイムスタンプ 裁判例 ドライブレコーダー 裁判例 ノンオペレーションチャージ 裁判例 ハーグ条約 裁判例 バイトテロ 裁判例 パタハラ 裁判例 パブリシティ権 裁判例 ハラスメント 裁判例 パワーハラスメント 裁判例 パワハラ 裁判例 ファクタリング 裁判例 プライバシー 裁判例 プライバシーの侵害 裁判例 プライバシー権 裁判例 ブラックバイト 裁判例 ベネッセ 裁判例 ベルシステム24 裁判例 マタニティハラスメント 裁判例 マタハラ 裁判例 マンション 騒音 裁判例 メンタルヘルス 裁判例 モラハラ 裁判例 モラルハラスメント 裁判例 リストラ 裁判例 リツイート 名誉毀損 裁判例 リフォーム 裁判例 遺言 解釈 裁判例 遺言 裁判例 遺言書 裁判例 遺言能力 裁判例 引き抜き 裁判例 営業秘密 裁判例 応召義務 裁判例 応用美術 裁判例 横浜地裁 裁判例 過失割合 裁判例 過労死 裁判例 介護事故 裁判例 会社法 裁判例 解雇 裁判例 外国人労働者 裁判例 学校 裁判例 学校教育法施行規則第48条 裁判例 学校事故 裁判例 環境権 裁判例 管理監督者 裁判例 器物損壊 裁判例 基本的人権 裁判例 寄与分 裁判例 偽装請負 裁判例 逆パワハラ 裁判例 休業損害 裁判例 休憩時間 裁判例 競業避止義務 裁判例 教育を受ける権利 裁判例 脅迫 裁判例 業務上横領 裁判例 近隣トラブル 裁判例 契約締結上の過失 裁判例 原状回復 裁判例 固定残業代 裁判例 雇い止め 裁判例 雇止め 裁判例 交通事故 過失割合 裁判例 交通事故 裁判例 交通事故 裁判例 検索 公共の福祉 裁判例 公序良俗違反 裁判例 公図 裁判例 厚生労働省 パワハラ 裁判例 行政訴訟 裁判例 行政法 裁判例 降格 裁判例 合併 裁判例 婚約破棄 裁判例 裁判員制度 裁判例 裁判所 知的財産 裁判例 裁判例 データ 裁判例 データベース 裁判例 データベース 無料 裁判例 とは 裁判例 とは 判例 裁判例 ニュース 裁判例 レポート 裁判例 安全配慮義務 裁判例 意味 裁判例 引用 裁判例 引用の仕方 裁判例 引用方法 裁判例 英語 裁判例 英語で 裁判例 英訳 裁判例 閲覧 裁判例 学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例 共有物分割 裁判例 刑事事件 裁判例 刑法 裁判例 憲法 裁判例 検査 裁判例 検索 裁判例 検索方法 裁判例 公開 裁判例 公知の事実 裁判例 広島 裁判例 国際私法 裁判例 最高裁 裁判例 最高裁判所 裁判例 最新 裁判例 裁判所 裁判例 雑誌 裁判例 事件番号 裁判例 射程 裁判例 書き方 裁判例 書籍 裁判例 商標 裁判例 消費税 裁判例 証拠説明書 裁判例 証拠提出 裁判例 情報 裁判例 全文 裁判例 速報 裁判例 探し方 裁判例 知財 裁判例 調べ方 裁判例 調査 裁判例 定義 裁判例 東京地裁 裁判例 同一労働同一賃金 裁判例 特許 裁判例 読み方 裁判例 入手方法 裁判例 判決 違い 裁判例 判決文 裁判例 判例 裁判例 判例 違い 裁判例 百選 裁判例 表記 裁判例 別紙 裁判例 本 裁判例 面白い 裁判例 労働 裁判例・学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例・審判例からみた 特別受益・寄与分 裁判例からみる消費税法 裁判例とは 裁量労働制 裁判例 財産分与 裁判例 産業医 裁判例 残業代未払い 裁判例 試用期間 解雇 裁判例 持ち帰り残業 裁判例 自己決定権 裁判例 自転車事故 裁判例 自由権 裁判例 手待ち時間 裁判例 受動喫煙 裁判例 重過失 裁判例 商法512条 裁判例 証拠説明書 記載例 裁判例 証拠説明書 裁判例 引用 情報公開 裁判例 職員会議 裁判例 振り込め詐欺 裁判例 身元保証 裁判例 人権侵害 裁判例 人種差別撤廃条約 裁判例 整理解雇 裁判例 生活保護 裁判例 生存権 裁判例 生命保険 裁判例 盛岡地裁 裁判例 製造物責任 裁判例 製造物責任法 裁判例 請負 裁判例 税務大学校 裁判例 接見交通権 裁判例 先使用権 裁判例 租税 裁判例 租税法 裁判例 相続 裁判例 相続税 裁判例 相続放棄 裁判例 騒音 裁判例 尊厳死 裁判例 損害賠償請求 裁判例 体罰 裁判例 退職勧奨 違法 裁判例 退職勧奨 裁判例 退職強要 裁判例 退職金 裁判例 大阪高裁 裁判例 大阪地裁 裁判例 大阪地方裁判所 裁判例 大麻 裁判例 第一法規 裁判例 男女差別 裁判例 男女差别 裁判例 知財高裁 裁判例 知的財産 裁判例 知的財産権 裁判例 中絶 慰謝料 裁判例 著作権 裁判例 長時間労働 裁判例 追突 裁判例 通勤災害 裁判例 通信の秘密 裁判例 貞操権 慰謝料 裁判例 転勤 裁判例 転籍 裁判例 電子契約 裁判例 電子署名 裁判例 同性婚 裁判例 独占禁止法 裁判例 内縁 裁判例 内定取り消し 裁判例 内定取消 裁判例 内部統制システム 裁判例 二次創作 裁判例 日本郵便 裁判例 熱中症 裁判例 能力不足 解雇 裁判例 脳死 裁判例 脳脊髄液減少症 裁判例 派遣 裁判例 判決 裁判例 違い 判決 判例 裁判例 判例 と 裁判例 判例 裁判例 とは 判例 裁判例 違い 秘密保持契約 裁判例 秘密録音 裁判例 非接触事故 裁判例 美容整形 裁判例 表現の自由 裁判例 表明保証 裁判例 評価損 裁判例 不正競争防止法 営業秘密 裁判例 不正競争防止法 裁判例 不貞 慰謝料 裁判例 不貞行為 慰謝料 裁判例 不貞行為 裁判例 不当解雇 裁判例 不動産 裁判例 浮気 慰謝料 裁判例 副業 裁判例 副業禁止 裁判例 分掌変更 裁判例 文書提出命令 裁判例 平和的生存権 裁判例 別居期間 裁判例 変形労働時間制 裁判例 弁護士会照会 裁判例 法の下の平等 裁判例 法人格否認の法理 裁判例 法務省 裁判例 忘れられる権利 裁判例 枕営業 裁判例 未払い残業代 裁判例 民事事件 裁判例 民事信託 裁判例 民事訴訟 裁判例 民泊 裁判例 民法 裁判例 無期転換 裁判例 無断欠勤 解雇 裁判例 名ばかり管理職 裁判例 名義株 裁判例 名古屋高裁 裁判例 名誉棄損 裁判例 名誉毀損 裁判例 免責不許可 裁判例 面会交流 裁判例 約款 裁判例 有給休暇 裁判例 有責配偶者 裁判例 予防接種 裁判例 離婚 裁判例 立ち退き料 裁判例 立退料 裁判例 類推解釈 裁判例 類推解釈の禁止 裁判例 礼金 裁判例 労災 裁判例 労災事故 裁判例 労働基準法 裁判例 労働基準法違反 裁判例 労働契約法20条 裁判例 労働裁判 裁判例 労働時間 裁判例 労働者性 裁判例 労働法 裁判例 和解 裁判例

判例リスト「完全成功報酬|完全成果報酬 営業代行会社」(213)平成23年12月28日 東京地裁 平21(ワ)21388号 業務委託報酬請求事件

判例リスト「完全成功報酬|完全成果報酬 営業代行会社」(213)平成23年12月28日 東京地裁 平21(ワ)21388号 業務委託報酬請求事件

裁判年月日  平成23年12月28日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平21(ワ)21388号
事件名  業務委託報酬請求事件
裁判結果  請求棄却  上訴等  確定  文献番号  2011WLJPCA12288008

要旨
◆原告が、訴訟係属中に吸収合併により被告に訴訟承継された本件会社及び被告に対し、それぞれ、リファイナンス等に関する業務委託契約を締結したなどと主張して、報酬の支払を求めるとともに、被告の指示のもと、本件会社が故意に原告に情報を提供せず民事再生手続等から原告を排除したことが不法行為を構成すると主張して、損害賠償を求めた事案において、本件会社に対し原告が履行した委託業務によって本件リファイナンスが完了したということはできず、原告の報酬債権に係る停止条件の成就や、同債権について危険負担の債権者主義の適用も認められないことから、本件会社に対する本件業務委託契約に基づく報酬債権は発生していないとし、また、被告との間では業務委託契約は成立していないし、商法512条の適用もないなどとして、報酬支払請求を棄却するとともに、本件会社又は被告による不法行為の成立を否定して、損害賠償請求も棄却した事例

出典
判タ 1380号117頁
ウエストロー・ジャパン

参照条文
民法130条
民法536条2項
民法643条
民法709条
商法512条

裁判年月日  平成23年12月28日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平21(ワ)21388号
事件名  業務委託報酬請求事件
裁判結果  請求棄却  上訴等  確定  文献番号  2011WLJPCA12288008

東京都港区〈以下省略〉
原告 株式会社エスネットワークス
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 清水保晴
同 東道雅彦
同訴訟復代理人弁護士 牧田奈緒
さいたま市〈以下省略〉
被告(勝村建設株式会社訴訟承継人) 株式会社エム・テック
同代表者代表取締役 B
同訴訟代理人弁護士 中嶋公雄

 

 

主文

1  原告の請求をいずれも棄却する。
2  訴訟費用は,原告の負担とする。

 

事実及び理由

第1  請求
1  被告は,原告に対し,3150万円及びこれに対する平成21年7月5日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2  被告は,原告に対し,3420万9000円及びこれに対する平成22年1月14日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
1  本件各請求のうち,勝村建設株式会社(以下「勝村建設」という。)に対して生じた債権に基づく請求は,原告が,被告に対し,①勝村建設との間でリファイナンス等に関する業務委託契約(以下「本件業務委託契約」という。)を締結し,これに基づき原告が提供した委託業務によってリファイナンスが完了した等と主張して,本件業務委託契約に基づき,リファイナンスに関する成功報酬3150万円及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成21年7月5日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求め(以下「請求①」という。),②これと予備的併合の関係にある請求として,勝村建設が,被告の指示を受けて,故意に原告に情報を提供せず民事再生手続等から原告を排除した行為が,仲介業者の成功報酬に対する期待権を侵害し,不法行為を構成すると主張し,不法行為に基づき,損害賠償3150万円及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成21年7月5日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める(以下「請求②」という。)ものである。なお,本訴訟提起時点の被告は勝村建設であったが,本訴訟係属中に,平成21年10月31日付け吸収合併によって勝村建設から被告に訴訟承継がされた。
また,本件各請求のうち,被告に対して生じた債権に基づく請求は,原告が,被告に対し,③被告が,勝村建設に対して指示し,故意に原告に情報を提供せず民事再生手続等から原告を排除した行為が,仲介業者の成功報酬に対する期待権を侵害し,不法行為を構成すると主張し,不法行為に基づき,損害賠償3150万円及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成21年7月5日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める(以下「請求③」という。)とともに,④被告との間でリファイナンス等に関する業務委託契約を締結したと主張し,被告との間の業務委託契約に基づき,商法512条所定の相当な報酬として3420万9000円及びこれに対する訴え変更申立書送達日の翌日である平成22年1月14日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求め(以下「請求④」という。),⑤これと予備的併合の関係にある請求として,仮に被告との間の業務委託契約が成立していなかったとしても,原告が客観的にみて被告のためにする意思をもってアドバイザリー業務を提供したことは明らかであると主張し,商法512条に基づき,④と同額の報酬及び遅延損害金の支払を求める(以下「請求⑤」という。)ものである。
2  前提事実(当事者間に争いがないか,又は後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実である。)
(1)当事者等
ア  原告は,会計や合併・事業譲渡に関するアドバイス及び相談業務等を行うことを目的とする株式会社であり,A(以下「A」という。)は,原告の代表取締役,C(以下「C」という。)は,原告の取締役である(以下,Aと併せて「Aら」という。)(甲1)。
イ  勝村建設は,土木建築工事請負業等を行うことを目的とする株式会社であり,平成17年9月29日に東京地方裁判所へ民事再生法の適用を申請したKC株式会社(当時の商号は,勝村建設株式会社であった。)から新設分割されたことによって,平成18年7月18日に設立された(甲2,12,乙1)。勝村建設は,平成21年10月31日付け吸収合併によって消滅し,被告が存続会社として勝村建設の地位を承継した。
D(以下「D」という。)は,平成18年7月18日から平成20年12月24日までの間(ただし,平成20年10月4日から同月15日までの間を除く),勝村建設の代表取締役の一人であった(甲20)。
E(以下「E」という。)は,平成20年10月6日以降,上記吸収合併まで,勝村建設の代表取締役の一人であった。その後,平成21年10月30日以降は被告の取締役であり,平成22年10月31日以降は被告の代表取締役の一人である。
ウ  被告は,土木,建築等の企画,設計,施工,管理,請負等を行うことを目的とする株式会社であり,B(以下「B」という。)は,被告の代表取締役の一人である。
(2)DBZグローバルの勝村建設に対する10億円の貸金債権等
ア  D.B.Zwirn Global(Lux)S.a.r.l(以下「DBZグローバル」という。)は,平成20年4月25日,勝村建設に対して,9億2000万円を貸し付けた。また,D.B.Zwirn Asia Pacific LP(Lux)S.a.r.l(以下「DBZアジア」といい,DBZグローバルとDBZアジアを併せて「DBZら」という。)は,同日,勝村建設に対して,8000万円を貸し付けた。(甲4の2,乙10。以下,両貸金債権を併せて「本件貸金債権」という。)
イ  本件貸金債権の利息は,年15パーセントと定められた。
ウ  DBZアジアは,同年10月7日,DBZグローバルに対して,上記8000万円の貸金債権を譲渡した(甲4の2)。
エ  DBZらは,遅くとも同年8月1日の時点で,勝村建設発行の全ての株式を保有していた(甲12,乙1,2)。
(3)本件業務委託契約の締結
原告と勝村建設は,平成20年8月1日,勝村建設を委託者,原告を受託者とする下記内容の本件業務委託契約を締結した(甲3)。
ア 委託業務の内容
DBZらが保有する勝村建設発行の株式の譲渡(以下「本件株式譲渡」という。)に関するフィナンシャルアドバイザリー業務,勝村建設のエクイティファイナンスに関するアドバイザリー業務,DBZグローバル,株式会社レノ(以下「レノ」という。),株式会社ヒューネット及び原告と勝村建設との間で別途定めた者の勝村建設に対する貸付金・社債等のリファイナンスに関するアドバイザリー業務である。なお,ここでいうアドバイザリー業務とは,コンサルティング,スケジュール策定及び管理に関する助言,交渉に関する助言,契約書作成に関する助言等を意味する。
イ 報酬
(ア)リテーナーフィー
各業務終了月の末日に月額21万円を支払う。
(イ)成功報酬
①  本件株式譲渡のフィナンシャルアドバイザリー業務に関する報酬は,取引価額に6パーセントを乗じた額である。
②  リファイナンスアドバイザリー業務に関する報酬(以下「リファイナンス報酬」という。)は,リファイナンスにかかる一連の手続が完了した日に発生し,その金額は,以下の計算式により導かれる。
(リファイナンス額)×(現債権者からの資金調達に関する加重平均コスト(パーセント)-リファイナンスの資金調達に関する加重平均コスト(パーセント))×20パーセント
なお,ここにいう現債権者からの資金調達に関する加重平均コストとは,本件においては,本件貸金債権の利息及び遅延損害金を意味する。
ウ 契約期間
平成20年8月1日から平成21年3月31日までとするが,同日の1か月前までに合意解除されなかったときは,更に3か月間更新され,以降同様に更新されるものとする。
(4)勝村建設の営業休止及び三者会議
ア  勝村建設は,平成20年10月30日,営業休止を発表し(甲12),その従業員に対して,解雇予告の説明をした(甲16)。
イ  同月31日の13時から15時まで,B,E,D,A,Cなどの立会いの下,被告,勝村建設,DBZらの会議が行われた(甲16,甲31。以下「三者会議」という。)。
同日,Cは,Eの希望を受け,被告を作成名義人とし,被告が勝村建設の支援を検討する旨が記載された検討証明書(甲9。以下「検討証明書」という。)を作成した。
(5)勝村建設による民事再生手続の申立て
勝村建設は,平成20年11月11日,東京地方裁判所に,民事再生手続(以下「本件民事再生手続」という。)を申し立て(乙1),同月12日,F弁護士(以下「F」という。)が監督委員に選任された(甲4の2)。
(6)民事再生手続開始決定
東京地方裁判所は,同月17日,本件民事再生手続を開始する旨の決定をし,再生債権の届出期間を同年12月16日まで,認否書の提出期限を平成21年1月13日,再生債権の一般調査期間を同月20日から同月27日まで,報告書等(民事再生法124条,125条)の提出期限を同月13日,再生計画案の提出期限を同年2月9日と定めた(甲5)。
(7)本件貸金債権の譲渡
被告は,平成20年12月22日,DBZグローバルから,本件貸金債権を9億5700万円で譲り受けた(甲4の1,2,乙10。以下「本件債権譲渡」という。)。
本件債権譲渡について,勝村建設は,被告に対して異議をとどめないで承諾の意思表示をした。
(8)民事再生計画案の提出
勝村建設は,平成21年2月9日,民事再生計画案(乙2。以下「本件民事再生計画案」という。)を提出した。本件民事再生計画案には,再生計画の基本方針として,勝村建設は,DBZらから勝村建設の株式100パーセントを再生債権とともに譲り受けた被告をスポンサーとし,今後被告から営業面並びに運転資金及び弁済を合わせた資金面での協力支援を受け,再生を図ることとする旨記載され,一般再生債権については,元本の50万円を超える部分の98パーセントと利息及び遅延損害金の100パーセントを放棄してもらい,残りの元本債権を平成21年12月30日限り(認可決定確定日が当該日以降の場合は,認可決定確定日の3か月後に当たる日が属する月の末日限り),一括で弁済する旨記載されている。また,権利変更条項として,元本債権額が50万円を超える再生債権については50万円を超える元本債権部分の98パーセント及び開始決定日の前日までの利息及び遅延損害金並びに開始決定日以降の利息及び遅延損害金の全額について免除を受ける旨定められている。
(9)本件民事再生計画案の認可決定
本件民事再生計画案は,平成21年3月21日に可決され,同月25日に認可決定(乙3の1。以下「本件認可決定」という。)がされ,同年4月21日に確定した(乙3の2)。これにより,本件貸金債権元本額10億円のうち50万円を超える部分の98パーセントである9億7951万円が免除され,また,その利息及び遅延損害金である9431万1122円が全額免除された。
3  争点
(1)請求①について
ア  原告が履行した委託業務によってリファイナンスが完了したといえるか(争点1)
イ  勝村建設及び被告の妨害行為により停止条件が成就したとみなすことができるか否か又は危険負担の債権者主義(民法536条2項)の適用の有無(争点2)
ウ  原告の報酬請求権は共益債権か否か(争点3)
エ  勝村建設の原告に対する報酬債務について,被告による債務引受けがあったか否か(争点4)
(2)請求②③について
勝村建設又は被告による不法行為の成否(争点5)
(3)請求④について
被告との間の業務委託契約の成否(争点6)
(4)請求⑤について
商法512条の適用の有無(争点7)
4  争点についての当事者の主張
(1)原告が履行した委託業務によってリファイナンスが完了したといえるか(争点1)
(原告の主張)
ア 原告が履行した委託業務の内容
原告が履行した委託業務の中心は,平成20年以降急速に資金繰りが悪化して早急に経営再建に迫られていた勝村建設を,資本及び負債という企業の資金調達の両面で(すなわち,既存のスポンサーであるDBZらが保有していた勝村建設の株式及び勝村建設に対する債権を譲り受けて)サポートする新スポンサーを見つけ出し,新スポンサー候補と勝村建設を仲介して,両者にとって最大の利益となる勝村建設の事業再生を実現することであった。
このような業務の一環として,原告は,勝村建設の新スポンサー探しに奔走し,国内外の複数のスポンサー候補と接触した結果,ようやく平成20年10月に被告という新スポンサー候補を見つけ出し,勝村建設を紹介した。被告は勝村建設の新スポンサーへの就任に非常に前向きな姿勢を見せた。
その後,原告は,被告における検討のため勝村建設に係る情報提供を行ったり,三者会議を設定したりするなどして,勝村建設(及びDBZら)と被告の仲介を行った。これにより,原告は,勝村建設の民事再生手続において,被告が勝村建設の株式及び本件貸金債権の双方を取得して同社の新スポンサーとなり,勝村建設の事業再生を図る,という道筋を開いたのである。
イ 原告の業務提供と本件債権譲渡との間に因果関係があること
(ア)原告及び勝村建設は,本件業務委託契約締結時において,勝村建設が民事再生手続等の再建型法的整理手続をとることを想定していた。だからこそ,本件業務委託契約締結時において,本件業務委託契約の解除事由からあえて「民事再生」,「会社更生」等の文言を外したのであり,検討証明書においては,民事再生手続を予定した文言を入れているのである。
(イ)上記のとおり,原告は,本件業務委託契約に基づき各種業務を履行してきた。そして,平成20年10月30日にされた勝村建設の営業休止の発表は,事業会社にとって致命的なものであり,そのままの状態が続けば,勝村建設が確実に倒産に至ることは火を見るよりも明らかであった。しかしながら,B及びDとの長年のつきあいの中で信頼関係を構築してきたAであったからこそ,かかる危急の事態に迅速に対応し,三者会議を設定して勝村の事業再生に関する三者間の基本的な合意形成まで漕ぎ着けることができ,その合意に基づき最終的にリファイナンスの成功を導いたのである。
また,勝村建設の事業再生に関しては,民事再生手続を通して行うことが当初から検討されていたところ,上記の経緯で原告が設定した三者会議において,民事再生手続を通した被告による勝村建設の支援(DBZらが保有する株式及び債権の引受け)の意向が正式に表明されたのである。
そして,その後,三者会議での話合いのとおり,本件株式譲渡及び本件債権譲渡が実行された。これらの取引は,いずれも三者会議から約1ヶ月半という極めて短期間の間に成立している。さらに,その譲渡価格は,株式が4300万円,債権が9億5700万円であり,その合計額は三者会議の時点で話し合われていた価格(株式につき無償,債権につき元本額面である10億円)と同額である。
このような経緯に照らして,原告の業務提供によってリファイナンス及びこれを通じた勝村建設の事業再生が可能となったことは明らかである。
ウ 本件債権譲渡と本件民事再生手続は一体のものであること
本件貸金債権の債権者であったDBZらは,民事再生手続に反対しており,利息免除を内容とする本件民事再生計画案は,原告が勝村建設のスポンサー候補として紹介した被告が,本件貸金債権を譲り受け,勝村建設の新スポンサーとなることを前提としてはじめて成立したものである。したがって,本件債権譲渡と勝村建設の民事再生手続は一体のものであり,形式的には本件民事再生計画案により利息の免除が確定したとしても,原告の上記活動によりリファイナンスが完了したというべきである。
(被告の主張)
ア 原告が履行した委託業務の内容について
委託業務の内容については,原告が,本件業務委託契約に基づき,勝村建設と被告とを引き合わせるという業務を履行したことは認めるが,その余は否認ないし争う。
イ 原告の業務提供と本件債権譲渡との間に因果関係がないこと
(ア)本件業務委託契約を締結した趣旨・目的は,あくまでも勝村建設の事業継続,経営破綻回避(法的手続回避を含む。)にあり,民事再生手続申立後の債権者の変更は当該委託の趣旨・目的とはなっていない。そして,原告は,勝村建設の委託した趣旨・目的に沿ったアドバイス業務を一切行っておらず,勝村建設に被告を紹介しただけであるから,リファイナンス報酬が発生するような事実は存在しない。
(イ)①平成20年10月31日時点の勝村建設は,事業の閉鎖を決定し,あとは,法的手続をとらずに放置するか,民事再生を申し立てるか,破産を申し立てるかの選択しか残されていなかった。DBZグローバルは,本件貸金債権の担保として約束手形2通(以下「本件手形」という。)を保有していたことから,DBZらは,これを回収するため,法的手続に反対した。
これに対して,Dや勝村建設の従業員は,DBZらによる本件手形の回収を阻止するため,それぞれ民事再生手続申立てや破産申立ての意向を有していたが,当時,勝村建設の取締役の過半数はDBZらから派遣されており,DBZらが法的手続に反対している以上,法的手続をとる余地はなかった。
三者会議において,被告は,DBZらから,債権譲渡の提案を受けたが,本件貸金債権の担保である本件手形は全くの無価値であることから(明白な否認対象行為である。),当時は,債権譲渡を受ける意思は全く有しておらず,債権譲受を拒否した。そのため,DBZらは,法的手続をとる意思は全くなかったことから,当時は本件貸金債権の債権譲渡及び民事再生手続は,実現の見込みが全くなかったのである。
②  Dは,平成20年11月11日,DBZらから派遣されていた取締役の記名・捺印を偽造して取締役会議事録を作成し,民事再生手続を申し立てた。これを知ったDBZらは,民事再生の申立ての取下げを検討したが,勝村建設の従業員が破産申立てを準備していたため,法的手続をとらないというDBZらの意向が実現される可能性は存在しなかった。
そこで,DBZらは被告との間で協議を重ねた末,平成20年11月14日,本件株式譲渡及び株主間契約(以下「本件株主間契約」という。)を行い,被告は本件貸金債権の担保である本件手形を尊重すること,DBZらは民事再生の取下げをせず,基本的に再生計画に賛成することを合意した。この時点でも,被告は,債権譲渡を受ける意思を全く有していなかったのである。
③  その後,DBZらは,勝村建設の他の債権者から,DBZグローバルによる本件手形の取得が否認対象行為であることを指摘されたが,DBZらは否認の対象にはならないとして,監督委員と交渉した。しかし,他の債権者は,平成20年12月16日,否認権行使権限付与の申立てを行い,これを受けた再生裁判所は監督委員に対して,否認権行使権限付与決定を行った。
そこで,被告は,否認の問題を早期に決着する目的で,DBZグローバルから本件債権譲渡を受けた。
ウ 本件貸金債権の金利が0パーセントになったのは,原告の業務の結果ではないこと
本件貸金債権の金利が0パーセントとなるのを確定させたのは,本件認可決定によるものであって,原告の業務によるものではない。
また,DBZらの債権額11億4503万円は,一般債権総額31億0181万円のうち,36.9パーセントである。本件の民事再生は議決権数で96.18パーセント,議決金額で93.12パーセントの賛成を集めて認可されたのであるから,DBZらが反対しても,民事再生は認可されたのである。
(2)勝村建設及び被告の妨害行為により停止条件が成就したとみなすことができるか否か又は危険負担の債権者主義(民法536条2項)の適用の有無(争点2)
(原告の主張)
上記のとおり,原告の提供した業務によってリファイナンスが完了したことは明らかであるが,仮に,これが否定されるとしても,以下のとおり,条件成就妨害による条件の成就(民法130条)又は危険負担の債権者主義(民法536条2項)の適用が認められるので,原告の勝村建設に対する報酬請求はやはり認められる。
ア 仲介業者(原告)を排除して取引を成立させたこと
勝村建設は,原告の仲介行為により新スポンサー候補たる被告による勝村建設の支援(DBZらの保有する株式や債権の引受け)の目処が立った段階に至って,原告へのリファイナンス報酬の支払を免れるために,被告の指示を受け,原告に対する情報提供を断絶し,原告に何らの連絡をすることもなく,本件民事再生手続開始の申立てを行い,原告を排除して直接取引を行い,リファイナンスを完了させた。このことは,原告が民事再生手続申立ての直前ころからBへ何度か電話をしても繋がらない状態が続いたことなどからも明らかである。
これにより,原告は,民事再生手続申立て後の勝村建設の状況を全く把握することができなくなり,その後,勝村建設に対して適切な業務の提供を行うことができなくなったのである。
イ 停止条件が成就したとみなすことができること
仲介業者に仲介を依頼して仲介活動をさせておきながら,手数料・報酬の支払を免れる目的で仲介の委任者が途中で仲介業者を排除し,直接取引を進めてこれを成立させた場合,故意による条件の成就妨害として仲介業者は委任者に成功報酬を請求することができることは確立した判例である(最高裁昭和45年10月22日第一小法廷判決・民集24巻11号1599頁等)。
本件業務委託契約に基づく成功報酬は,原告の仲介による株式及び債権の処理の成功を条件とするものであった。しかし,上記アにおいて述べたとおり,被告及び勝村建設は,原告の仲介により間もなく取引の成立に至るべきことを熟知しながら,原告へのリファイナンス報酬の支払を免れるために原告を排除して直接取引を行い条件の成就を妨害したのである。そして,この点につき故意があったことは明らかである。
したがって,リファイナンスが完了したとみなされ,原告は,勝村建設に対し,リファイナンス報酬を請求できることは明らかである。
ウ 危険負担の債権者主義(民法536条2項)が適用されること
業務委託契約において,委託された事項が完了しない間に,委託者の責めに帰すべき事由によりその完了が不可能となった場合には,受託者たる仲介業者は自己の残債務を免れるが,民法536条2項により成功報酬全額を請求できるというべきである(最高裁昭和52年2月22日第三小法廷判決・民集31巻1号79頁)。
確かに,原告は,本件民事再生手続開始申立て後の取引や手続に関与できておらず,本来この期間に提供されることが予定されていた業務(民事再生に関するアドバイスの他,DBZらの保有する株式及び債権の譲渡に関するコンサルティングやスケジュール管理,交渉に関する助言,契約書の作成等)を提供できていない。しかし,原告は民事再生手続開始申立て後の取引や手続にも関与することを当然に意図しており,それにもかかわらずこれができなかったのは,上記のとおり,委託者である勝村建設が,被告の指示を受け,原告に対して情報の提供を拒み,原告を意図的に取引から排除したからにほかならない。その結果,原告が関与することなくDBZらが保有する株式及び債権の譲渡の取引が成立してしまったため,もはや原告がこれらの業務を履行することは社会通念上不可能となった。
したがって,原告が中途で業務を履行することができなくなったのは,勝村建設の責めに帰すべき事由に基づくといえ,民法536条2項により,原告は勝村建設に対して成功報酬全額を請求できるというべきである。
(被告の主張)
本件株主間契約の交渉も本件債権譲渡の交渉も,DBZらと被告との間の交渉であって,勝村建設と被告との間の交渉ではない。加えて,この契約にはDBZらの意向により守秘義務が存在しており,被告は,当然に,契約内容を原告に対して開示することもできなかった。
また,勝村建設は,民事再生手続開始を申し立てたため,資金繰り等も含めて全て裁判所と監督委員の監督下にあった。そして,申立代理人が監督委員や裁判所と相談しながら対応を進めていたのであるから,原告は,何らかの申入れがあるのであれば,申立代理人に行えばよかったはずであるが,そのようなことは行われていない。被告が法的対応は申立代理人が行うことを徹底した事実はあっても,勝村建設に対して原告に情報提供を行わないことを徹底した事実はない。
(3)原告の報酬請求権は共益債権か否か(争点3)
(原告の主張)
原告が業務の提供の途中で,勝村建設及び被告により取引から排除された事実に鑑みると,本件民事再生手続開始申立て時において双方に本件業務委託契約の未履行債務(業務提供義務及び報酬支払義務)が存したことは明らかである。
そして,本件民事再生手続開始の申立てがされた平成20年11月11日の直前ころから,原告に対し,勝村建設の事業再生に関する情報が遮断されるようになったことから,Aらは,勝村建設の状況に加えて,本件民事再生手続における本件業務委託契約の処理(原告の報酬請求権の帰趨)を確認するため,平成20年12月9日,申立代理人のG弁護士(以下「G」という。)を訪問したところ,Gは,本件業務委託契約に基づき発生する原告の成功報酬請求権が,勝村建設の民事再生手続において共益債権となる旨明確に回答し,請求書を勝村建設宛てに送ってほしい旨述べたこと等に鑑みると,この債務については,履行が選択され,あるいは解除権が放棄されたとみなされるから,共益債権(民事再生法49条1項及び2項)となっているというべきである。
(被告の主張)
勝村建設と原告との間で合意されているリファイナンスに関する原告の業務内容は,コンサルティング,スケジュール策定及び管理に関する助言,交渉,契約書作成等であり,その提供先は債務者である勝村建設である。しかるに,本件債権譲渡は,被告とDBZグローバル間の契約なのであるから,原告の業務は,被告を勝村建設に紹介した時点で尽きており,本件民事再生手続開始後において原告の行う業務は一切存しない。
したがって,本件民事再生手続開始時において双方未履行の債務が存在したとはいえないし,被告によって履行の選択の意思表示がされた事実もないから,仮にリファイナンス報酬の債権が発生するとしても,再生債権であることは明らかである。
(4)被告による債務引受の有無(争点4)
(原告の主張)
BとAが,平成21年2月20日,「チャイナブルー」というレストランで会食した際,Bは,Aに対し,業務の提供に対し謝辞を述べるとともに,株式譲渡に係る成功報酬を被告において支払う旨申し出た。そして,Bは,その場で封筒に入れた現金をAに渡そうとしたが,Aは後日請求書を送るので指定の口座に振り込む形で支払って欲しい旨述べた。その後,原告は,被告に対して請求書を送付した。そして,本件株式譲渡に係る成功報酬は,同年3月17日に,被告名義の振込により支払われた。
このような経緯からすれば,被告が,遅くとも平成21年2月20日時点で,勝村建設の原告に対する本件業務委託契約に基づく各成功報酬債務につき併存的債務引受をしていたのは明らかである。
(被告の主張)
否認する。
(5)勝村建設又は被告による不法行為の成否(争点5)
(原告の主張)
上記(2)のとおり,仮に原告の勝村建設に対する本件リファイナンス業務に係る報酬請求権が全額認容されないとすれば,それは勝村建設及び被告が当該報酬請求権を侵害したことによるものである。
すなわち,勝村建設が,民事再生手続開始申立て後,被告の指示を受けて,故意に原告に情報を提供せず取引から原告を排除した行為は,仲介業者の成功報酬に対する期待権を侵害するものとして,勝村建設及び被告の不法行為を構成する(最高裁昭和39年1月23日第一小法廷判決・民集18巻1号99頁)。
このような不法行為により原告が被った損害は,少なくともリファイナンス報酬相当額(3150万円)を下らない。
そして,勝村建設の民事再生手続は,平成20年11月17日に開始しているところ,原告に対する一連の排除行為のうち一部は,同年12月9日以降にされたことが明らかである。
したがって,一連の行為に対する不法行為に基づく損害賠償請求権は,「再生債務者財産に関し再生債務者等が再生手続開始後にした…行為によって生じた請求権」として共益債権となるというべきである(民事再生法119条5号)。
(被告の主張)
上記(2)と同様,否認ないし争う。
(6)被告との間の業務委託契約の成否(争点6)
(原告の主張)
ア  勝村建設の新スポンサーとなることに関し,平成20年10月8日の段階で,被告は原告に対して仲介業務を委託した。
原告は,前記のとおり,勝村建設との間の本件業務委託契約に基づき,被告における検討のため勝村建設に係る情報提供を行ったり,三者会議を設定したりするなどして,勝村建設(及びDBZら)と被告の仲介を行ったものであるが,これらは,被告との間の業務委託契約に基づく債務の履行にも該当するものである。また,これらに加え,原告は,平成20年11月1日から6日までの間,勝村建設に対する財務デューデリジェンス(以下「本件DD」という。)を実施し,同月5日にBに対する中間報告を行い,同月6日被告に対して勝村建設の資金繰りに関する一覧表を電子メールで送付し,同月7日には本件DDの報告書を交付したところ,これもまた,被告との間の業務委託契約に基づく債務の履行に該当する。なお,本件DDは,被告から別途発注を受け実施したものであり,報酬が支払われている。
そして,上記各行為の結果,本件債権譲渡(リファイナンス)が実現しているところ,Aだからこそ,勝村建設の営業休止発表という危急の事態に迅速に対応し,三者会議を設定して勝村建設の事業再生に関する三者間の基本的な合意形成まで漕ぎ着け,当該合意に基づき最終的にリファイナンスの成功を導くことができたのである。
また,被告が勝村建設の新スポンサーとなりその支配を取得する(それによりシナジーやメリットを得る)ためには,本件株式譲渡のみを行っても全く無意味であり,本件債権譲渡を合わせて受けることが必要不可欠であった。このことは,原告がBと面談し,勝村建設を紹介した平成20年10月8日の段階から明示的に伝えられていた。そして,被告は,最終的に本件株式譲渡及び本件債権譲渡の双方を受け,株式譲渡に関しては被告としてその対価を支払っている。これらの事実に鑑みても,被告自身,原告に対して,株式譲渡及び債権譲渡双方を含む業務の委託を行ったという認識があったことは明らかである。
イ  なお,この点について,訴訟承継前の被告(勝村建設)は平成21年8月19日の第1回口頭弁論期日において「原告は,M&Aを強く熱望していたエム・テックの依頼に基づき,民事再生手続きにおけるスポンサー候補者として,エム・テック側の立場でエム・テックを被告に紹介したのであり,被告のために,リファイナンスの提供候補者としてエム・テックを紹介したわけではない。」と記載した答弁書を擬制陳述したことから,被告との間の業務委託契約の締結については裁判上の自白が成立している。
これに対し,被告は,上記陳述は,錯誤によるものであるので撤回するなどと主張する。しかし,答弁書提出時点(平成21年7月14日)で既に被告は勝村建設の100パーセント親会社となっており,かつ,平成21年3月31日には被告代表取締役のBが勝村建設の代表取締役にも就任し,勝村建設の取締役4名中,Eを除く3名が被告の関係者となったことに鑑みれば,答弁書提出時点において勝村建設の実質的な意思決定を支配していたのも被告自身であったことは明らかである。したがって,答弁書の内容が被告にとって錯誤であるはずもなく,自白の撤回など認められない。
ウ  被告との間の業務委託契約においては報酬の定めはないが,当該業務の内容は,原告と勝村建設の間の本件業務委託契約に基づく業務と実質的に同一であり,本件業務委託契約に基づく成功報酬(3420万9000円)は,業界における合理的な成功報酬体系のスタンダードであるリーマン方式によって算出されるものであり,取引金額や業界における報酬の相場に照らして「相当な報酬」といえる水準である。したがって,被告の支払うべき「相当な報酬」は,本件業務委託契約第2条第2項第2号①及び③記載の成功報酬の額(270万9000円及び3150万円の合計3420万9000円)を下回ることはない。そして,当事者により仲介業者が業務提供の途中で排除され,仲介業務の全てを提供できなかった場合であっても,一定期間(一般的には2年間)以内に取引が成立した場合には仲介業者が成功報酬を請求できるとするのが業界の一般的な慣行である。したがって,本件においては原告が取引の最終段階の一部に関与できていないものの,上記「相当な報酬」の全額を支払うべきことは明らかである。
(被告の主張)
まず,明文の合意がない。原告は,平成20年10月31日付けで本件DDの見積書を提出した時点又は遅くとも同年11月7日に本件DDの請求書を提出した時点では,これら以外にも費用がかかる旨の見積書を提出することが可能であったし,そうすべきであったにもかかわらず,提出されていないのであるから,請求は認められない。
また,株式譲渡にしても,債権譲渡にしても,契約後は,勝村建設と被告は,債権者・債務者の関係になるのである。したがって,勝村建設の得るメリットと被告の得るメリットは,独立のものではなく,共通のものであるから,債権譲渡のコンサルティング業務において,新債権者と債務者の双方に二重請求することは,いかなる意味においても正当性を有しない。特に,被告が債権を譲り受けて,利息及び遅延損害金をそのまま請求すれば報酬が発生せず,利息及び遅延損害金を免除すれば原告に対する報酬が発生するなどということはおよそ考えられないことである。
訴訟承継前の被告(勝村建設)が,本訴訟第1回口頭弁論期日において原告主張の記載がある答弁書を擬制陳述したことは認めるが,これは真実に反し,かつ,被告にとって錯誤による主張であるから,撤回する。
(7)商法512条の適用の有無(争点7)
(原告の主張)
仮に上記の原告及び被告の間の業務委託契約の成立が認められず,原告及び被告の間の業務委託契約が存しない場合でも,上記の事実に鑑みれば,客観的にみて,原告が,勝村建設との間の本件業務委託契約の相手方当事者である被告のためにする意思をもって,被告が勝村建設の株式及び勝村建設に対する債権の取得に関する業務を提供したことは明らかであり,商法512条に基づき「相当な報酬」を請求することができることは明らかである(最高裁昭和50年12月26日第二小法廷判決・民集29巻11号1890頁参照)。
そして,「相当な報酬」は,上記のとおり,3420万9000円を下回らないことは明らかである。
(被告の主張)
争う。
第3  当裁判所の判断
1  後掲の各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められ,この認定を覆すに足りる証拠はない。
(1)勝村建設の経営悪化
平成20年6月,勝村建設が有する12億6961万8000円のマンション新築工事代金債権の債務者であった株式会社パラモド(以下「パラモド」という。)が事実上倒産し,同年9月1日,勝村建設が有する5億0574万3000円の債務者であった株式会社エフ・イー・シー(以下「エフ・イー・シー」という。)が東京地方裁判所に民事再生手続開始を申し立て,事実上倒産した。さらに,同年9月に発生したいわゆるリーマンショックにより,DBZらが新規融資に応じられなくなった。これらにより,勝村建設は,資金繰りに窮するに至った。(乙2)
(2)約束手形を本件貸金債権の担保とすることの合意
勝村建設は,DBZらに対し,平成20年7月8日,本件貸金債権の担保として,勝村建設が株式会社プロパスト(以下,「プロパスト」という。)に対して有する請負代金債権に質権を設定すること,後日プロパストから振り出される約束手形を担保として交付することを約束した(甲4の2)。
(3)勝村建設から原告に対するリテーナーフィーの支払
勝村建設は,原告に対し,本件業務委託契約に基づくリテーナーフィーの支払として,平成20年9月30日に21万3790円を,同年10月6日に22万3620円を,同年11月28日に22万1250円を,それぞれ支払った(乙4。いずれも税込みの金額である。)。
(4)プロパストによる勝村建設宛て約束手形の振出等
ア  勝村建設は,プロパストから建物建築を請け負い,その代金支払のために,平成20年10月6日,振出人をプロパスト,受取人を勝村建設とする下記内容の約束手形2通(以下「本件手形」という。)の振出交付を受けた(甲4の2)。
(ア)額面金額 6億7620万円 支払期日 平成20年12月29日
(イ)額面金額 6億2620万円 支払期日 平成21年2月27日
イ  勝村建設は,DBZグローバルに対し,平成20年10月8日,本件手形を譲渡担保として裏書交付した(甲4の2)。
(5)AらがBに対し,勝村建設をスポンサー候補として紹介したこと
Aらは,本件業務委託契約締結後,勝村建設の再生を支援するスポンサー候補者探しを行っていたところ,平成20年10月6日,Aは,Bに電話をし,勝村建設が事業の再生を支援する新スポンサー候補を探している旨を伝えた。同日12時18分にAがCらに宛てたメールには,「たったいまBに電話して,勝村建設の件伝えました。案の定,かなり乗り気です。。。ちなみに,下記メールにある債務超過2億の会社の合併っていまから中止できないですか?もしやるならあれもこれも手を出さず,勝村一本に絞ってもらったほうがいいと思うので。」と記載されている。(甲25,37,A)
Aらは,同月8日の17時ころから18時ころまで,Bと会い,「ご紹介案件概要」と題する書面(甲11の2)を提示の上,勝村建設のスポンサー候補を探している旨伝えた。その際,Cは,Bから,勝村建設の資金繰りについて尋ねられたのに対し,「現在,資金繰りについては,当社で精査を行っている。精査結果については,後日B宛報告したい」と答えた。これに対してBは,「了解。報告を待つ。また,勝村建設の詳細な資料を後日一式欲しい。資料を見る限り,粗利益3%は良い方。本件については,前向きに考えたい。また,勝村の経営陣・株主ともに,早めに面談を考えたい。宜しくお願いする。」などと述べた。(甲11の1,25,30,A)
原告は,被告に対し,同月10日,勝村建設の決算書,事業計画,予想損益計算書を郵送した。
(6)三者会議に至る経緯等
ア  前提事実(4)アのとおり,勝村建設が,平成20年10月30日に営業休止の公表等をしたことから,Aは,同日の夜,Bに対し,勝村建設についての支援を要請するとともに,Bから翌日会議を行うことについての内諾を得た(甲25,A)。
イ  三者会議の際,Cによって,メモ(甲31。以下「三者会議のメモ」という。)が作成され,これを基に,後日,Cによって,三者会議の会議録(甲16)が作成された。三者会議の会議録の記載内容は,以下のとおりである。
E ファンド(DBZwirn)としては,まだ会社(勝村建設)を続けてほしい。なので,任意整理の方向を考えたい。
D 現場の従業員への給与は1か月間払いたい。また下請けへの支払いは止めて,従業員の雇用は確保したい。その1か月間,スポンサーを探していきたい。
B 現場への支払いについては,相談してやっていけばいいのではないか。今回勝村はいきなり営業休止の発表をしたが,これは大変まずいことだ。
E DBZwirnは,勝村建設に対し10億円貸付を行っているが,プロパストの13億の手形を現在担保に取っている。プロパストの手形は,今年の12月末と来年の2月末が期日だ。DBZwirnは,勝村建設にはエクイティも出しているが,これについては,もう回収を諦めている。もしエム・テックがスポンサーとなり,10億円の回収の保証をしてもらえるのであれば,運転資金に供するためDIPファイナンスという形での資金拠出も可能である。エム・テックへDBZwirnから,勝村向け10億円の債権の譲渡を行うのはどうか。その場合,株式は無償譲渡を行う。なお,DBZwirnの意思決定機関は,日本にはもうなく,香港にある。私が知っている限り,消費税の未払が2.4億ある。また,その他の費用の未払が,8月,9月,10月で10億。今日支払のもので10億,未払は合計20億ある。
D 5時以降の従業員説明では,民事再生をやること,従業員は再雇用すること,を伝えたい。
B 今までの話を伺い,勝村建設の再生に関し協力を表明する。今後の精査を行う必要があるが,法的拘束力のない,「検討証明」を勝村建設に本日提出する。
(ウ)検討証明書(甲9)には,「貴社が今後予定される民事再生に関し,貴社が事業を継続するための業務上・資本上の支援をすることを当社が検討していることを,本書面において表明いたします。当社による支援は今後のデューデリジェンス結果に関し,当社が満足することを前提とするものであり,本書面において当社が法的に拘束されるものではありません。当社からの支援の時期,方法等その他の詳細については別途協議の上定めるものとします。本紙の有効期限は平成20年11月30日までとします。」と記載されている。
(エ)Bは,三者会議の際,勝村建設を民事再生手続によって再建することが望ましいと考えていた(乙12,B)。
一方,Eは,DBZらから,本件貸金債権を回収するよう指示を受け,そのために勝村建設の代表取締役に就任した者であるところ,勝村建設について民事再生手続等の法的整理を行うことになれば,本件貸金債権の回収が困難になることから,勝村建設について民事再生手続等の法的整理を行うことは許されない旨の指示をDBZらから受けており,そのため,Eは,三者会議の時点において,民事再生手続に反対の意思を有していた(A,E)。また,DBZらは本件貸金債権を回収することを至上命題として考えていたため,Eは,本件貸金債権の譲渡に前向きであり,Bに対して本件貸金債権の譲渡を提案した(B,E)。
(7)本件DD等
原告は,被告から,平成20年11月1日,本件DDを受託し,同日から同月6日まで,本件DDを実施した(甲10)。同月5日,原告は,被告に対し,本件DDの成果について中間報告を行い,同月6日,原告は,勝村建設の資金繰予定表(甲13)及び工事収入予測表(甲14)を作成した。さらに,同月7日,原告は,被告に対し,本件DDの最終報告を行い,本件DDの報酬として,106万1120円を請求した(甲19)。
同月中に,Aは勝村建設に対して3回以上電話をかけたが,勝村建設と被告との取引状況についての情報を開示することはできないと告げられた(A)。
(8)民事再生手続開始の申立て等
DBZらは,勝村建設の再建に消極的であり,民事再生手続開始の申立てに逡巡していたところ,勝村建設は,東京都から,平成20年11月12日までに法的再建手続をとらない限り3年間の指名停止処分にするとの通告を受けた(乙2)。そして,Dは,DBZらの意向に背き,本件民事再生手続開始を申し立てた(E)。
(9)株式譲渡及び株主間契約
平成20年11月14日より前の時点における勝村建設の株主は,DBZグローバル(2万9670株)及びDBZアジア(2580株)のみであった(乙2)ところ,DBZら及び被告は,平成20年11月14日,以下のとおり本件株式譲渡を行うとともに,DBZらと被告との関係について以下のとおり合意した(乙9。以下「本件株主間契約」という。)。
ア 本件株式譲渡
被告は,同日,DBZグローバルから,DBZグローバルが保有する勝村建設株式2万0963株を,被告がDBZグローバルを受取人として振り出した額面金額4300万円の小切手を受領することと引き換えに,譲り受ける。
被告は,民事再生手続終結決定が行われたときに,DBZらから,DBZグローバルが保有する勝村建設株式8707株,DBZアジアが保有する勝村建設株式2580株を,いずれも無償にて譲り受ける。
イ 本件株主間契約
被告は,本件民事再生手続に従い,勝村建設のために,民事再生法に基づく再生計画案を作成する。なお,被告は,勝村建設が,再生計画案を裁判所に提出する場合,事前にDBZらの書面による承認を得なければならない(第3条)。
被告は,勝村建設の債権者及び株主として,再生計画を誠実に遂行し,東京地方裁判所により勝村建設の利益となる最終決定がされるように最大限の努力をし,DBZらの利益の極大化を図るよう行為をするために最大限の努力をし,フューチャーファンド株式会社,レノその他の第三者,監督委員及びその他関連する当事者との交渉を通じ,勝村建設のDBZらに対する担保提供その他の行為につき否認権その他の取消権,異議申立権が行使され,又は勝村建設のDBZらに対する担保提供その他の行為の効力を阻害する一切の行為を防ぐよう最大限の努力をする(第6条)。
(10)被告の勝村建設に対する融資
被告は,平成20年11月28日,勝村建設に対し,2億4000万円を,利息年5分,平成21年11月27日限り,元利一括して被告の住所に持参し,又は送金して支払う旨の約定にて,貸し付けた(甲42の1ないし3)。
(11)平成20年12月9日付け請求書の送付
原告は,勝村建設に対し,上記融資に係る2億4000万円のリファイナンス報酬などを請求する旨の平成20年12月9日付け請求書を送付した(乙16の1,2。なお,宛名も,勝村建設と記載されている)。
(12)否認権行使権限付与決定等
ア  本件民事再生手続開始決定の直後,再生債権者であるレノから,本件手形の裏書譲渡の事実が指摘され,Fが調査したところ,本件手形がDBZグローバルに裏書譲渡された当時,DBZらが勝村建設の100パーセントの株式を保有していたこと,勝村建設の役員の大部分はDBZグローバルから送り込まれた者であること等が判明した。また,平成20年12月16日,本件手形の裏書譲渡について,レノから否認権行使権限付与の申立てがされ,同月17日,再生裁判所によってFへの否認権行使権限付与決定がされた。(甲4の2)
イ  平成20年12月22日,勝村建設,被告及びFは,次のとおり合意し(以下,この合意を「平成20年12月22日付け合意」という。),東京地方裁判所はこれを許可した(甲4の1,2)。
(ア)被告は,DBZグローバルから,本件手形の譲渡担保権とともに,本件貸金債権を譲り受け,これに対して,勝村建設は,異議なく承諾する(第2条)。
(イ)勝村建設は,被告が,DBZグローバルから本件手形の裏書譲渡を受け,被告自身の名義で取り立てることを承諾する(第3条第1項)。
(ウ)被告は,本件手形(の譲渡担保権)の転得者であるが,民事再生法127条の3第1項1号,134条1項1号により,Fの否認権行使の対象となることを認め,本件手形を取り立てた場合には,勝村建設に対し,速やかに取り立てた現金を交付する(第3条第2項)。
(エ)上記現金の交付後,勝村建設は,本件貸金債権を一般の再生債権として扱うものとし,被告は本件貸金債権について一般の再生債権として配当を受ける(第4条)。
(オ)Fは,以上の処理により,Fが否認権を行使したのと同様の経済的効果を生じさせることができること,DBZらが日本に本拠地を置かないファンドであり,送達及び執行に多大な困難が予想されることを考慮し,上記現金の交付がされることを条件として,付与された否認権を行使しないものとする(第5条)。
ウ  その後,被告は,本件手形に基づき,プロパストから,評価額10億円相当の現金や現物を取り立てたが,平成20年12月22日付け合意に基づき,これらを勝村建設に交付した。もっとも,被告は,勝村建設が請け負っていた事業を引き継いで行っていたことから,上記現金や現物の交付は,経済的観点から評価すると,被告にとって一方的に損失となるものではなかった。(B)
(13)D及びFとの面談
Aは,平成21年1月29日,Dと面談し,このとき初めて,本件債権譲渡の事実を知った(甲25)。
Aらは,平成21年2月5日の13時45分ころから14時15分ころまで,Fと面談し,被告が勝村建設の100パーセントの株式及び本件貸金債権を取得し,本件民事再生計画案に同意していることなどを確認した(甲23)。
(14)平成21年2月13日付け請求書及び同年4月9日付け請求書の送付
原告は,勝村建設に対し,本件貸金債権のリファイナンス報酬などを請求する旨の平成21年2月13日付け請求書(乙11)及び同年4月9日付け請求書(甲6)を送付した(いずれも,宛名は,勝村建設と記載されている。)。
(15)平成21年3月1日付け請求書の送付
原告は,被告に対し,本件株式譲渡のフィナンシャルアドバイザリー業務に関する報酬258万円(=4300万円×6パーセント)などを請求する旨の平成21年3月1日付け請求書(甲17。なお,宛名は,勝村建設と記載されている。)を送付したところ,平成21年3月17日,被告は,被告名義で,原告に対して同額を支払った(甲18)。
(16)原告は,勝村建設に対し,平成21年5月28日付け内容証明郵便を送付し,本件業務委託契約に基づくリファイナンス報酬3150万円の支払を催告した(甲7の1)。
2  原告が履行した委託業務によってリファイナンスが完了したといえるか(争点1)
(1)上記認定事実によれば,原告は,本件業務委託契約に基づき,勝村建設の再生を支援するスポンサー候補者探しを行い,勝村建設に被告を紹介し,勝村建設が営業休止を突然公表した平成20年10月30日の夜,Bに対し,勝村建設についての支援を要請し,Bから翌日の三者会議を行うことについての内諾を得る等の活動を行ったことが認められる。
他方,本件業務委託契約においては,原告のリファイナンス報酬の具体的金額は,本件貸金債権の利息及び遅延損害金の負担が軽減された度合いによって決せられるという定めとされているところ,本件貸金債権の利息及び遅延損害金の免除は,直接的には本件認可決定によってされたものであるから,これが原告の上記活動によってされたものであると直ちにはいうことができない。
この点について,原告は,本件業務委託契約締結時において,勝村建設が民事再生手続等の法的手続をとることを想定していたこと,三者会議の時点で,被告が,民事再生手続を通じた勝村建設の支援,すなわちDBZらの保有する株式及び債権の譲受けの意向を正式に表明したことから,原告の上記活動と本件債権譲渡との間には相当因果関係があり,かつ,本件債権譲渡と本件民事再生手続とは一体のものであるから,形式的には再生計画の認可により最終的に利息の免除が確定したとしても,原告の上記活動によってリファイナンスが完了したことは明らかであると主張する。
(2)ア  そこで,まず,本件業務委託契約が締結された時点で,勝村建設が民事再生手続等の法的手続をとることを想定していたといえるかを検討する。
上記認定事実によれば,勝村建設の債務者であったパラモドが平成20年6月に事実上倒産したことが,勝村建設の営業休止の一因となっていることは認められるものの,エフ・イー・シーが同年9月1日に民事再生手続開始の申立てをしたことや,同月発生したリーマンショックにより,DBZらが新規融資に応じられなくなったことも勝村建設の営業休止の原因となっており,また,DBZらは少なくとも三者会議の時点では法的再建手続をとることに反対していたが,勝村建設が東京都から同年11月12日までに法的再建手続をとらない限り3年間の指名停止処分にするとの通告を受けたため,DがDBZらの意向に背き本件民事再生手続開始を申し立てたという事情もあったことが認められる。そうすると,本件業務委託契約が締結された同年8月1日の時点において,既に,勝村建設が民事再生手続開始を申し立てる可能性が具体化するような状態であったとは考え難いから,本件業務委託契約締結の時点では,勝村建設が民事再生手続や本件債権譲渡を行うことを想定していたと認めることはできない。
イ  これに対し,原告は,本件業務委託契約締結時において,被告が民事再生手続等の再建型法的整理手続をとることは想定しており,だからこそ,本件業務委託契約締結時において,本件業務委託契約の解除事由からあえて「民事再生」,「会社更生」等の文言を外したと主張する。
しかし,証拠(乙5)によれば,被告は,平成20年8月11日,原告との間で,被告を委託者,原告を受託者とする被告の適正な財務諸表を作成することを目標とした決算支援業務の委託契約を締結したところ,その解除事由は,本件業務委託契約の解除事由と同一であり,いずれにおいても,解除事由の規定からは「民事再生」「会社更生」等の文言は除外されていることが認められることに照らせば,本件業務委託契約の契約書の文言をもって原告主張のとおり認めることはできず,原告の上記主張は採用することができない。
(3)次に,三者会議の時点で,被告が,民事再生手続を通じた勝村建設の支援,すなわちDBZらの保有する株式及び債権の譲受けの意向を正式に表明したといえるかを検討する。
ア  上記認定事実によれば,勝村建設は,三者会議の時点では,既に,勝村建設の債務者であるパラモドやエフ・イー・シーの事実上の倒産,平成20年9月のリーマンショックによりDBZらが新規融資に応じられなくなったことなどによって,法的整理又は任意整理を検討する必要を迫られる程度に経営が悪化していたことが認められるところ,これによれば,三者会議の際に勝村建設の再建の方向性として,民事再生手続について言及があったとしても不自然ではない。また,上記認定事実によれば,DBZらの意向を受けたEは,三者会議の時点において,民事再生手続に反対の意向を有していたことが認められるものの,Bは三者会議の際,勝村建設を民事再生手続によって再建することが望ましい旨考えていたことが認められ,さらに,検討証明書には「今後予定される民事再生に関し」と記載されているところ,これは作成直後にEにも交付されたものであるから,Eがその記載内容を確認しないままにこのような記載がされたものとは考え難い。これらを総合すると,三者会議においては,Eの反対はあったものの,Bが民事再生手続を通じ勝村建設を支援する意向を示したと認めることが自然というべきであり,これに反するEの供述は採用することができない。
イ  他方で,検討証明書,三者会議のメモ及び三者会議の会議録には,被告が本件貸金債権を譲り受ける方向で検討することが明記されていないばかりか,三者会議の会議録にも,Eの「もしエム・テックがスポンサーとなり,10億円の回収の保証をしてもらえるのであれば,運転資金に供するためDIPファイナンスという形での資金拠出も可能である。エム・テックへDBZwirnから,勝村向け10億円の債権の譲渡を行うのはどうか。その場合,株式は無償譲渡を行う。」との発言に対し,Bは具体的な返答を避け,あくまで民事再生手続を通じた支援を表明するにとどまっていた様子が記載されている。また,Aも,被告が本件貸金債権を譲り受けることの意向は表明していなかったことを自認し(A),Cも,この点についての供述は曖昧なものにとどまっている(C)。
さらに,そもそも三者会議は,勝村建設が営業休止を突然公表したことからその翌日に急遽実施されたものである上,被告が正式に民事再生手続による勝村建設の再建のスポンサーになるか否かも,後に予定されていた本件DDの結果が出るまでは留保されていたことや,本件手形の勝村建設からDBZらへの裏書譲渡自体,客観的にみて,否認権行使の対象となる可能性が極めて高いものであった(弁論の全趣旨)ところ,そのような状況下でBが民事再生手続と一体のものとして本件貸金債権の譲渡を受ける意向を示すとは考え難い。
これらに加え,本件民事再生手続開始の申立て後にされた本件株主間契約においても,勝村建設の株式のみが譲渡の対象とされ,本件貸金債権はDBZグローバルの下に留保され,本件手形の譲渡担保につき否認権行使がされないように被告が最大限の努力をすることが合意されたことにも照らすと,三者会議においては,Eから本件貸金債権の譲渡が提案されたものの,その提案は,あくまでDBZらが本件貸金債権を回収するための方法の1つとしてされたものにすぎず,これに対してBは,勝村建設の再生に協力をしていきたい旨を表明したにとどまり,本件貸金債権の譲渡を受ける方向で検討することの合意までがされたものではないと推認するのが自然というべきであり,これに反するAらの供述は,採用することができない。
(4)以上を前提に,原告が履行した委託業務によってリファイナンスが完了したといえるかを検討する。
まず,上記認定のとおり,三者会議においては,Bが民事再生手続に協力する旨の発言をし,これについての議論がされた一方で,Eから本件貸金債権の譲渡が提案されたものの,その提案は,あくまでDBZらが本件貸金債権を回収するための方法の1つとしてされたものにすぎず,これに対してBは,勝村建設の再生に協力をしていきたい旨を表明したにとどまり,本件貸金債権の譲渡を受ける方向で検討することの合意までがされたものではない。そうすると,三者会議の時点では,経営の危機に瀕した勝村建設の救済案として法的整理を行うか任意整理を行うか,また,DBZらが本件貸金債権を回収するために考えられる複数の手段(債権譲渡を含む。)のうちいかなる手段を採るかといった点については,いまだ明確な合意に至らず,更なる検討を要する段階にあったといわざるをえず,この時点で,原告及び勝村建設が,本件貸金債権の譲渡を予定していたとは考え難い。
また,このことに加え,前記のとおり,本件株主間契約においてもなお本件貸金債権はDBZグローバルに留保され,株式のみが譲渡の対象とされていたこと,本件債権譲渡に至った経緯としても,平成20年12月17日,Fに対する否認権行使権限付与決定がされ,平成20年12月22日付け合意において,勝村建設,被告及びFは,Fが否認権を行使しないこと,被告がDBZグローバルから本件手形の譲渡及び本件債権譲渡を受けることを合意した上,同合意を前提として,同日,被告は,DBZグローバルから,実際に,本件手形の譲渡及び本件債権譲渡を受けたと認められることに照らすと,本件債権譲渡は,原告の上記活動の結果によるものではなく,むしろ,本件民事再生手続開始決定後に監督委員のFが本件手形の裏書譲渡についての否認権行使に動いたことを契機として,独立に行われたとみるのが相当である。
(5)以上によれば,原告の上記活動と本件債権譲渡の間に相当因果関係があるとはいえず,原告が履行した委託業務によってリファイナンスが完了したとは認められない。
3  勝村建設及び被告の妨害行為により停止条件が成就したとみなすことができるか否か又は危険負担の債権者主義(民法536条2項)の適用の有無(争点2)
原告は,勝村建設が,原告の仲介行為により被告による勝村建設の支援(DBZらの保有する株式や債権の引受け)の目処が立った段階に至って,原告へのリファイナンス報酬の支払を免れるために,被告の指示を受け,原告に対する情報提供を断絶し,原告に何らの連絡をすることもなく,本件民事再生手続開始の申立てを行い,原告を排除して直接取引を行い,リファイナンスを完了させたと主張する。
そこで検討するに,上記認定事実によれば,Aは,平成20年11月,勝村建設に対して3回以上電話をかけたが,勝村建設と被告との取引状況についての情報を開示することはできないと告げられたことは認められる。
しかしながら,本件債権譲渡は,DBZグローバルと被告を当事者とするものである上,本件民事再生手続開始後にFが否認権行使に動いたことを契機として独立に行われたものであることは既に説示したとおりであるから,仮に,勝村建設や被告から原告に対する適時の連絡等がされたとしても,勝村建設との間で本件業務委託契約を締結にすぎない原告が,平成20年12月22日付け合意の成立に寄与し得たとは考え難いというべきである。
したがって,停止条件が成就したとみなすことはできないし,危険負担の債権者主義(民法536条2項)も適用されない。
4  以上によれば,原告が履行した委託業務によってリファイナンスが完了したということはできず,また,停止条件が成就したとみなすことや,危険負担の債権者主義を適用することもできないことから,勝村建設に対する本件業務委託契約に基づくリファイナンス報酬は発生していないものといわざるを得ない。したがって,争点3及び争点4について判断するまでもなく,請求①は,理由がない。
5  勝村建設又は被告による不法行為の成否(争点5)
本件債権譲渡が,Fが否認権行使に動いたことを契機として行われたものであって,原告が当該合意の成立に寄与し得たと考え難いことは既に説示したとおりであって,原告に,本件債権譲渡の成立につき仲介業者としての成功報酬の期待権があったとみることはできないから,原告主張の勝村建設ないし被告の不法行為は前提を欠き失当というほかない。
したがって,請求②及び請求③は,いずれも理由がない。
6  被告との間の業務委託契約の成否(争点6)
(1)原告は,被告との間で本件業務委託契約と同旨の業務委託契約を締結した旨主張し,Aは同旨の供述をする。
しかしながら,これを裏付ける契約書等が何ら作成されていないことは当事者間に争いがない。また,原告が主張する被告との間の業務委託契約の業務内容は,本件業務委託契約の業務内容と同一であるところ,上記で認定した三者会議に至る経緯等に照らせば,原告は,あくまで勝村建設との間で締結した本件業務委託契約に基づき,勝村建設のために委託業務を履行していたと評価するほかなく,原告が,同一の業務内容について勝村建設と被告の双方に二重に請求できると認識していたとはおよそ考え難い。かえって,原告が,本件債権譲渡後においても,平成20年12月9日付け請求書,平成21年2月13日付け請求書及び同年4月9日付け請求書の宛名をいずれも勝村建設と記載してリファイナンス報酬を請求したことや,勝村建設に対しては同年5月28日付け内容証明郵便によってリファイナンス報酬の支払を催告する一方,本訴訟において被告に訴訟承継されるまで,被告に対しては何ら内容証明郵便等による支払の催告を行っていないことは前記認定事実のとおりであり,また,本訴訟においても,訴え提起当初は被告を相手方とすることなく勝村建設のみを相手方としていたこと(当裁判所に顕著な事実)からすれば,原告自身,委託者として認識していたのは勝村建設のみであって,被告を委託者として認識していなかったことが強く推認される。この点,原告は,被告の指示の下,同年3月1日付け請求書については被告に対して送付したものであると主張するが,そうであるとしても,同請求書も宛名は勝村建設と記載されていることからすれば,原告としては,この時も,本件業務委託契約に基づく債務を負うのは勝村建設のみであることを前提に,便宜上被告が支払を代行するにすぎないと認識していたと考えるのが自然である。
そして,原告が本件業務委託契約に基づき,勝村建設に被告を紹介するなどの活動を行ったり,本件DDを行ったりしたことは前記認定のとおりであるが,これらは,勝村建設に対する債務の履行に当たるものであり,また,本件DDに関しては,原告はその対価を別途受領している以上,これらの点をもって被告との間の業務委託契約が存在すると推認することはできない。
以上を総合すると,Aの上記供述を採用することはできず,被告との間の業務委託契約は成立していないものというべきである。
(2)原告は,被告が本訴訟第1回口頭弁論期日において「原告は,M&Aを強く熱望していたエム・テックの依頼に基づき,民事再生手続きにおけるスポンサー候補者として,エム・テック側の立場でエム・テックを被告に紹介したのであり,被告のために,リファイナンスの提供候補者としてエム・テックを紹介したわけではない。」と記載した答弁書を擬制陳述したことから,被告との間の業務委託契約の締結については裁判上の自白が成立しており,これを被告が撤回することは許されない旨主張する。しかし,上記陳述は,勝村建設が被告と合併する前の,勝村建設から被告への訴訟承継が生じていない時点において,勝村建設によってされたものであり,原告が勝村建設の委託した趣旨・目的に沿ったアドバイス業務を一切行っておらず,原告の勝村建設に対する本件業務委託契約に基づく報酬請求権が発生するような事実は存在しない旨の理由付けの一つとされたものにすぎず,この陳述をもって,原被告間の業務委託契約の締結の事実を先行自白したものと評価し得るか自体に疑問がある。また,これを措くとしても,上記認定のとおり,被告との間の業務委託契約は成立しておらず,上記陳述は,真実に反するものと認められ,そうである以上,錯誤によるものと認めるのが相当であって,自白の撤回が許されるというべきである。
そうすると,被告との間の業務委託契約は認められず,請求④についても理由がない。
7  商法512条の適用の有無(争点7)
原告が委託を受けない当事者に対し商法512条に基づく報酬請求権を取得するためには,客観的にみてその当事者のためにする意思をもって業務の履行をしたものと認められることを要し,単に委託者のためにする業務の履行の反射的利益が委託をしない当事者に及ぶだけでは足りない(最高裁昭和50年12月26日第二小法廷判決・民集29巻11号1890頁参照)。
本件においては,被告との間の業務委託契約の成立は認められず,本件業務委託契約の成立が認められるのみであるところ,原告主張の被告との間の業務委託契約の業務内容は,本件業務委託契約の業務内容と同一であることは既に説示したとおりであるから,被告には,単に本件業務委託契約に基づく業務の反射的利益が及んでいるにすぎないといえるので,原告が客観的にみて被告のためにする意思をもって業務の履行をしたものと認めることはできない。
したがって,商法512条は適用されず,請求⑤についても理由がない。
第4  結論
以上の次第で,原告の請求は,いずれも理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 始関正光 裁判官 進藤壮一郎 裁判官 宮﨑文康)

 

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