【営業代行から学ぶ判例】crps 裁判例 lgbt 裁判例 nda 裁判例 nhk 裁判例 nhk 受信料 裁判例 pl法 裁判例 pta 裁判例 ptsd 裁判例 アメリカ 裁判例 検索 オーバーローン 財産分与 裁判例 クレーマー 裁判例 クレプトマニア 裁判例 サブリース 裁判例 ストーカー 裁判例 セクシャルハラスメント 裁判例 せクハラ 裁判例 タイムカード 裁判例 タイムスタンプ 裁判例 ドライブレコーダー 裁判例 ノンオペレーションチャージ 裁判例 ハーグ条約 裁判例 バイトテロ 裁判例 パタハラ 裁判例 パブリシティ権 裁判例 ハラスメント 裁判例 パワーハラスメント 裁判例 パワハラ 裁判例 ファクタリング 裁判例 プライバシー 裁判例 プライバシーの侵害 裁判例 プライバシー権 裁判例 ブラックバイト 裁判例 ベネッセ 裁判例 ベルシステム24 裁判例 マタニティハラスメント 裁判例 マタハラ 裁判例 マンション 騒音 裁判例 メンタルヘルス 裁判例 モラハラ 裁判例 モラルハラスメント 裁判例 リストラ 裁判例 リツイート 名誉毀損 裁判例 リフォーム 裁判例 遺言 解釈 裁判例 遺言 裁判例 遺言書 裁判例 遺言能力 裁判例 引き抜き 裁判例 営業秘密 裁判例 応召義務 裁判例 応用美術 裁判例 横浜地裁 裁判例 過失割合 裁判例 過労死 裁判例 介護事故 裁判例 会社法 裁判例 解雇 裁判例 外国人労働者 裁判例 学校 裁判例 学校教育法施行規則第48条 裁判例 学校事故 裁判例 環境権 裁判例 管理監督者 裁判例 器物損壊 裁判例 基本的人権 裁判例 寄与分 裁判例 偽装請負 裁判例 逆パワハラ 裁判例 休業損害 裁判例 休憩時間 裁判例 競業避止義務 裁判例 教育を受ける権利 裁判例 脅迫 裁判例 業務上横領 裁判例 近隣トラブル 裁判例 契約締結上の過失 裁判例 原状回復 裁判例 固定残業代 裁判例 雇い止め 裁判例 雇止め 裁判例 交通事故 過失割合 裁判例 交通事故 裁判例 交通事故 裁判例 検索 公共の福祉 裁判例 公序良俗違反 裁判例 公図 裁判例 厚生労働省 パワハラ 裁判例 行政訴訟 裁判例 行政法 裁判例 降格 裁判例 合併 裁判例 婚約破棄 裁判例 裁判員制度 裁判例 裁判所 知的財産 裁判例 裁判例 データ 裁判例 データベース 裁判例 データベース 無料 裁判例 とは 裁判例 とは 判例 裁判例 ニュース 裁判例 レポート 裁判例 安全配慮義務 裁判例 意味 裁判例 引用 裁判例 引用の仕方 裁判例 引用方法 裁判例 英語 裁判例 英語で 裁判例 英訳 裁判例 閲覧 裁判例 学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例 共有物分割 裁判例 刑事事件 裁判例 刑法 裁判例 憲法 裁判例 検査 裁判例 検索 裁判例 検索方法 裁判例 公開 裁判例 公知の事実 裁判例 広島 裁判例 国際私法 裁判例 最高裁 裁判例 最高裁判所 裁判例 最新 裁判例 裁判所 裁判例 雑誌 裁判例 事件番号 裁判例 射程 裁判例 書き方 裁判例 書籍 裁判例 商標 裁判例 消費税 裁判例 証拠説明書 裁判例 証拠提出 裁判例 情報 裁判例 全文 裁判例 速報 裁判例 探し方 裁判例 知財 裁判例 調べ方 裁判例 調査 裁判例 定義 裁判例 東京地裁 裁判例 同一労働同一賃金 裁判例 特許 裁判例 読み方 裁判例 入手方法 裁判例 判決 違い 裁判例 判決文 裁判例 判例 裁判例 判例 違い 裁判例 百選 裁判例 表記 裁判例 別紙 裁判例 本 裁判例 面白い 裁判例 労働 裁判例・学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例・審判例からみた 特別受益・寄与分 裁判例からみる消費税法 裁判例とは 裁量労働制 裁判例 財産分与 裁判例 産業医 裁判例 残業代未払い 裁判例 試用期間 解雇 裁判例 持ち帰り残業 裁判例 自己決定権 裁判例 自転車事故 裁判例 自由権 裁判例 手待ち時間 裁判例 受動喫煙 裁判例 重過失 裁判例 商法512条 裁判例 証拠説明書 記載例 裁判例 証拠説明書 裁判例 引用 情報公開 裁判例 職員会議 裁判例 振り込め詐欺 裁判例 身元保証 裁判例 人権侵害 裁判例 人種差別撤廃条約 裁判例 整理解雇 裁判例 生活保護 裁判例 生存権 裁判例 生命保険 裁判例 盛岡地裁 裁判例 製造物責任 裁判例 製造物責任法 裁判例 請負 裁判例 税務大学校 裁判例 接見交通権 裁判例 先使用権 裁判例 租税 裁判例 租税法 裁判例 相続 裁判例 相続税 裁判例 相続放棄 裁判例 騒音 裁判例 尊厳死 裁判例 損害賠償請求 裁判例 体罰 裁判例 退職勧奨 違法 裁判例 退職勧奨 裁判例 退職強要 裁判例 退職金 裁判例 大阪高裁 裁判例 大阪地裁 裁判例 大阪地方裁判所 裁判例 大麻 裁判例 第一法規 裁判例 男女差別 裁判例 男女差别 裁判例 知財高裁 裁判例 知的財産 裁判例 知的財産権 裁判例 中絶 慰謝料 裁判例 著作権 裁判例 長時間労働 裁判例 追突 裁判例 通勤災害 裁判例 通信の秘密 裁判例 貞操権 慰謝料 裁判例 転勤 裁判例 転籍 裁判例 電子契約 裁判例 電子署名 裁判例 同性婚 裁判例 独占禁止法 裁判例 内縁 裁判例 内定取り消し 裁判例 内定取消 裁判例 内部統制システム 裁判例 二次創作 裁判例 日本郵便 裁判例 熱中症 裁判例 能力不足 解雇 裁判例 脳死 裁判例 脳脊髄液減少症 裁判例 派遣 裁判例 判決 裁判例 違い 判決 判例 裁判例 判例 と 裁判例 判例 裁判例 とは 判例 裁判例 違い 秘密保持契約 裁判例 秘密録音 裁判例 非接触事故 裁判例 美容整形 裁判例 表現の自由 裁判例 表明保証 裁判例 評価損 裁判例 不正競争防止法 営業秘密 裁判例 不正競争防止法 裁判例 不貞 慰謝料 裁判例 不貞行為 慰謝料 裁判例 不貞行為 裁判例 不当解雇 裁判例 不動産 裁判例 浮気 慰謝料 裁判例 副業 裁判例 副業禁止 裁判例 分掌変更 裁判例 文書提出命令 裁判例 平和的生存権 裁判例 別居期間 裁判例 変形労働時間制 裁判例 弁護士会照会 裁判例 法の下の平等 裁判例 法人格否認の法理 裁判例 法務省 裁判例 忘れられる権利 裁判例 枕営業 裁判例 未払い残業代 裁判例 民事事件 裁判例 民事信託 裁判例 民事訴訟 裁判例 民泊 裁判例 民法 裁判例 無期転換 裁判例 無断欠勤 解雇 裁判例 名ばかり管理職 裁判例 名義株 裁判例 名古屋高裁 裁判例 名誉棄損 裁判例 名誉毀損 裁判例 免責不許可 裁判例 面会交流 裁判例 約款 裁判例 有給休暇 裁判例 有責配偶者 裁判例 予防接種 裁判例 離婚 裁判例 立ち退き料 裁判例 立退料 裁判例 類推解釈 裁判例 類推解釈の禁止 裁判例 礼金 裁判例 労災 裁判例 労災事故 裁判例 労働基準法 裁判例 労働基準法違反 裁判例 労働契約法20条 裁判例 労働裁判 裁判例 労働時間 裁判例 労働者性 裁判例 労働法 裁判例 和解 裁判例

判例リスト「営業代行会社 完全成果報酬|完全成功報酬」(303)平成19年12月19日 東京地裁 平16(ワ)26071号 損害賠償請求事件

判例リスト「営業代行会社 完全成果報酬|完全成功報酬」(303)平成19年12月19日 東京地裁 平16(ワ)26071号 損害賠償請求事件

裁判年月日  平成19年12月19日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平16(ワ)26071号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  一部認容  文献番号  2007WLJPCA12198013

要旨
◆原告と被告が、原告が扱っている織機の販売につき、被告が協力業務を行う旨の業務委託契約を締結したところ、被告に債務不履行があったとして、被告に対して債務不履行に基づく損害賠償を求めた事案において、契約後の経緯などからして、被告には委託契約の条項に反して機密事項を漏洩するなどの契約違反があることが認められるなどとして、原告の請求を一部認容した事例

参照条文
民法415条

裁判年月日  平成19年12月19日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平16(ワ)26071号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  一部認容  文献番号  2007WLJPCA12198013

東京都港区〈以下省略〉
原告 双日株式会社
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 淵邊善彦
同 上山孝紀
同 横澤靖子
中華人民共和国上海市〈以下省略〉
被告 Y

 

 

主文

1  被告は,原告に対し,2231万円及びこれに対する平成17年5月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  原告のその余の請求を棄却する。
3  訴訟費用は,これを3分し,その1を原告の負担とし,その余は被告の負担とする。
4  被告のために,本判決の控訴期間の付加期間を30日と定める。
5  この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。

 

 

事実及び理由

第1  請求
被告は,原告に対し,3511万5250円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2  当事者の主張
1  請求の原因
(1)  原告は,平成16年4月1日,日商岩井株式会社及びニチメン株式会社(以下「ニチメン」という。)の合併により発足した,各種繊維機械・特殊プラント・その他の工作機械及び素原料等の拡販等を業とする株式会社である。
ニチメンは,平成14年ないし平成15年当時,株式会社豊田自動織機製エアージェット織機(以下「AJ機」という。)の販売をしており,東レインターナショナル株式会社(以下「東レ」という。)と競業関係にあった。
また,誠成国際股 有限公司(以下「誠成」という。)は,東レの中国における代理店であり,東レの契約交渉に関する業務を担当していた。
(2)  ニチメンと被告は,平成14年9月30日,以下の内容の業務委託契約(以下「本件契約」という。)を締結した。
ア 第1条
(1) ニチメンは,被告に対し,以下の業務(以下「本件業務」という。)を委託し,被告はこれを受託する。
a)ニチメンが取り扱う各種繊維機械・特殊プラント・その他の工作機械及び素原料等を拡販するための協力業務
b)中国における前項の商品の市場動向に関する情報収集業務
イ 第2条
(1) ニチメンは,被告に対し,本件業務遂行の対価として,月額31万円を支払う。
ウ 第7条
(1) 被告は,本件業務の遂行に際し知り得た,ニチメンの一切の機密事項を第三者に漏らしてはならない。
(2) 前項の規定は,本件契約終了後又は解除後も有効とする。
エ 第9条
被告は,本件契約の有効期間中,ニチメンと競合する第三者の業務を受託し,又は,自らニチメンと競合する業務を行ってはならない。
オ 第15条
被告は,本件契約に基づきニチメンから指示された受託業務の範囲を超え,また,それに反する行為によりニチメンに損害を与えた場合,ニチメンに対し,当該損害を賠償するものとする。
カ 第18条
本件契約の有効期間は,平成14年10月1日から平成15年9月30日までとし,更新については,期間満了の1か月前までに,ニチメンと被告の協議の上定める。
(3)  被告の債務不履行①
ア ニチメンは,浙江立馬雲山紡績有限公司(以下「浙江立馬雲山紡績」という。)に対するAJ機159台の販売権を,被告の代理により,平成14年12月9日に落札した。
イ 被告は,以下のとおり,本件契約違反の行為をした(以下「債務不履行①」という。)。
(ア) 被告は,浙江立馬雲山紡績に対し,「ニチメンは経営状態が悪く,契約の履行能力がなくなっている。」,「ニチメンからは機械は入ってこない。東レからなら入ってくる。」等の虚偽の事実を述べ,浙江立馬雲山紡績をして,落札者であるニチメンからではなく,東レからAJ機を購入しなければ,浙江立馬雲山紡績が望む納期までにAJ機を購入することができなくなる旨誤信させた。
(イ) 第7条(1)違反
被告は,本件契約第7条(1)に違反し,東レ及び誠成に対し,被告が本件業務遂行に際して知り得た,浙江立馬雲山紡績に対するAJ機販売権の落札情報を漏洩した。
(ウ) 第9条違反
被告は,本件契約第9条に違反し,誠成から業務委託を受けた上,東レを代理して,前記(ア)のとおり誤信した浙江立馬雲山紡績を買主として,前記アのAJ機のうち,149台について,以下のとおり,3期に分けて売買契約を締結した(以下,順に「第1期売買契約」ないし「第3期売買契約」という。)。
a 第1期売買契約
平成15年3月10日,49台を,代金2億2251万0620円で締結
b 第2期売買契約
平成15年4月1日,54台を,代金1億7658万円で締結
c 第3期売買契約
平成15年4月24日,46台を,代金1億5258万6048円で締結
ウ ニチメンの損害
(ア) 平成15年8月,被告の債務不履行①がニチメンに発覚したところ,そのころ,浙江立馬雲山紡績は,第1期及び第2期売買契約に係るAJ機103台が船積みを完了し又は完了間近の状態であり,取引先から多数の受注を抱えていたため,東レとの売買契約を解除し,ニチメンと売買契約を締結し直す時間的余裕がなかった。そのため,ニチメンは,浙江立馬雲山紡績との間で,第1期及び第2期売買契約に係る上記AJ機103台について,前記アの落札に基づく売買契約を締結することができなくなった。
(イ) ニチメンは,浙江立馬雲山紡績と前記アの落札に基づく売買契約を締結していれば,第1期売買契約に係るAJ機については少なくとも2.25%の利益(500万円)を,第2期売買契約に係るAJ機については少なくとも2.83%の利益(500万円)を得ることができた。
(ウ) したがって,ニチメンは,被告の債務不履行①により,売買契約締結により得べかりし1000万円の利益を失い,同額の損害を被った。
(4)  被告の債務不履行②
ア 被告は,以下のとおり,本件契約違反の行為をした(以下「債務不履行②」という。)。
(ア) 第1条(1)b)違反
被告は,蘭渓市後陸織布廠に対するAJ機30台の販売権に関する入札情報を得たにもかかわらず,本件契約第1条(1)b)に違反し,これをニチメンに報告しなかった。
(イ) 第9条違反
被告は,本件契約第9条に違反し,誠成から業務委託を受けた上,ニチメンと競合する東レを代理して,蘭渓市後陸織布廠に対するAJ機30台の販売権を落札し,平成15年8月18日,東レを代理して,AJ機30台について,蘭渓市後陸織布廠を買主として,代金1億2020万円で売買契約を締結した。
イ ニチメンの損害
(ア) 蘭渓市におけるAJ機販売は,当時,ニチメンがほぼ独占状態で行っており,中でも,蘭渓市後陸織布廠は,従来からニチメンの有力な取引先であり,ニチメンが被告から蘭渓市後陸織布廠に対するAJ機販売権に関する入札情報を得ていれば,ニチメンが同権利を落札した可能性が非常に高かったところ,ニチメンは,被告の債務不履行②により,蘭渓市後陸織布廠との間で,上記AJ機30台について,売買契約を締結することができなくなった。
(イ) ニチメンは,蘭渓市後陸織布廠と上記AJ機30台について売買契約を締結していれば,少なくとも3%の利益(300万円)を得ることができた。
(ウ) したがって,ニチメンは,被告の債務不履行②により,売買契約締結により得べかりし300万円の利益を失い,同額の損害を被った。
(5)  被告の債務不履行③
ア 被告は,以下のとおり,本件契約違反の行為をした(以下「債務不履行③」という。)。
(ア) 第1条(1)b)違反
被告は,蘭渓市正大紡績有限公司(以下「蘭渓市正大紡績」という。)に対するAJ機32台の販売権に関する入札情報を得たにもかかわらず,本件契約第1条(1)b)に違反し,これをニチメンに報告しなかった。
(イ) 第9条違反
被告は,本件契約第9条に違反し,誠成から業務委託を受けた上,東レを代理して,蘭渓市正大紡績に対するAJ機32台の販売権を落札し,平成15年4月29日,東レを代理して,AJ機32台について,蘭渓市正大紡績を買主として,代金1億2000万円で売買契約を締結した。
イ ニチメンの損害
(ア) 蘭渓市におけるAJ機販売は,当時,ニチメンがほぼ独占状態で行っており,ニチメンが被告から蘭渓市正大紡績に対するAJ機販売権に関する入札情報を得ていれば,ニチメンが同権利を落札した可能性が非常に高かったところ,ニチメンは,被告の債務不履行③により,蘭渓市正大紡績との間で,上記AJ機32台について,売買契約を締結することができなくなった。
(イ) ニチメンは,蘭渓市正大紡績と上記AJ機32台について売買契約を締結していれば,少なくとも3%の利益(360万円)を得ることができた。
(ウ) したがって,ニチメンは,被告の債務不履行③により,売買契約締結により得べかりし360万円の利益を失い,同額の損害を被った。
(6)  被告の債務不履行④
ア ニチメンは,江西華源江紡有限公司(以下「江西華源江紡」という。)に対するAJ機80台の販売権を,被告の代理により,平成15年4月15日に入札し,同年5月20日に落札したところ,同落札通知書には,同年6月10日までに,江西華源江紡と落札設備供給契約を締結するように指示されていた。
イ 被告は,以下のとおり,本件契約違反の行為をした(以下「債務不履行④」という。)。
(ア) 第1条(1)b)違反
被告は,実際は被告がニチメンを代理して江西華源江紡に対するAJ機80台の販売権を落札したにもかかわらず,本件契約第1条(1)b)に違反し,ニチメンに対し,同入札が,当時中国で発生していた重症急性呼吸器症候群(以下「SARS」という。)の影響で,延期になった旨の虚偽の報告をし,入札案内書類を改ざんして提出した。
(イ) 第7条(1)違反
被告は,本件契約第7条(1)に違反し,東レ及び誠成に対し,本件業務遂行に際して知り得た,江西華源江紡に対するAJ機販売権の落札情報を漏洩した。
(ウ) 第9条違反
被告は,本件契約第9条に違反し,誠成から業務委託を受けた上,東レを代理して,前記アの80台のAJ機について,平成15年4月26日付けで,江西華源江紡を買主として,代金3億5650万円で売買契約を締結し,信用状(L/C)を開設させた。
ウ ニチメンの損害
(ア) その後,被告の債務不履行④が発覚し,ニチメンと江西華源江紡は,前記AJ機80台の販売権の本来の落札者であるニチメンを売主として,売買契約を締結し直すことに同意した。また,契約締結日付け等の売買契約の内容は,前記東レと江西華源江紡間の売買契約と同様とすることとされた。
そして,江西華源江紡は,ニチメンと売買契約を締結する条件として,ニチメンに対し,信用状の変更依頼など,関係手続に関して発生する一切の費用として,178万円の支払を要求したため,ニチメンは,江西華源江紡に対し,同額を支払った。
(イ) したがって,ニチメンは,被告の債務不履行④により,178万円の損害を被った。
(7)  被告の不法行為等
ア 信用毀損等による損害
(ア) 被告は,平成15年3月前ころから,中国におけるニチメンの取引先企業に対し,「ニチメンは経営状態が悪く,契約の履行能力がなくなっている。」,「ニチメンからは機械は入ってこない。東レからなら入ってくる。」等,ニチメンの経済的信用力に関し,虚偽の風説を流布し,債務不履行①ないし④に及ぶなどしたことにより,中国におけるニチメンの取引先企業に対し,ニチメン内部の人間が,AJ機の売買契約に関連し,何件ものトラブルを発生させたと認識させ,ニチメンの信用を毀損し,顧客である株式会社豊田自動織機からの信用を失わせた。
(イ) 前記被告の不法行為により,ニチメンは,既存及び新規のユーザーから受注すべき案件の多くを失うなど,経済的信用力が毀損され,少なくとも950万円(一部請求)の損害を被った。
イ その他の損害
(ア) 被告は,本件契約1条1項b)に違反し,ニチメンに対し,受託業務に関する行動計画及び報告書を定期的に提出せず,ニチメンが落札した中国企業との間の繊維機械等の売買契約をニチメンと競業関係にある東レを代理して締結したり,入札に関する情報を隠蔽し,また,虚偽の情報をニチメンに提供し,委託業務を遂行しなかった。
(イ) これらの被告の債務不履行ないし不法行為により,ニチメンは,平成15年3月から同年5月までの間,被告に対し支払った以下の損害を被った。
a 本件契約の報酬3か月分 93万円
b 出張費用 50万2750円
(8)  合併
原告は,平成16年4月1日,合併により,ニチメンの権利を承継した。
(9)  弁護士費用
原告は,被告の債務不履行ないし不法行為により,以下の損害を被った。
ア 本件訴訟に要した弁護士費用 300万円
イ 中国において提起した訴訟に要した弁護士費用 200万円
(10)  よって,原告は,被告に対し,債務不履行又は不法行為に基づき,3511万5250円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで,民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
2  請求原因に対する認否
(1)  請求原因事実は否認する。
(2)  原告が本件契約の証拠として提出した甲2は偽造されたものであり,売買契約に関する甲4ないし6も偽造されたものである。
3  被告の主張
(1)  被告は,平成15年5月末日,ニチメンから解雇された。
(2)  被告は,原告が提出した甲2とは別の契約書に基づき業務委託契約をし,それに相当する仕事をしたところ,ニチメンは,自己の都合で被告を解雇したため,被告は,以下のとおりの損害を被った。
ア 平成15年6月ないし9月の給料として124万円
イ 成功報酬として250万円
ウ 精神損失費と名誉損失費として200万円
4  被告の主張に対する認否
(1)  被告の主張(1)は否認する。
被告は,平成15年6月,ニチメンに対し,突然,一方的に本件契約を同年5月末をもって解除したい旨のメールを送信するなどしてきたことから,ニチメンは被告に対し,「業務委託契約の件」と題する書面を送付して抗議した。被告は,同年6月10日に,ニチメンに対し,仕事に疲れたとの理由で,同年5月末日をもって本件契約を解除したい,今後織機関係の仕事はしない,前記書面による抗議の内容についても了解し,今後ニチメンに迷惑をかけるような行為はしない,連絡も頻繁にとれるようにする旨約したが,その際,被告は自分の業務違反行為については説明せず,その後,前記約定もすべて反故にしたのであって,同年5月末日に本件契約が終了したとはいえない。
(2)  被告の主張(2)は否認する。
第3  当裁判所の判断
1  請求原因について
(1)  請求原因(1)について
証拠(甲2,15,31,36)及び弁論の全趣旨によれば,請求原因(1)の事実が認められる。
(2)  請求原因(2)について
ア 証拠(甲15)及び弁論の全趣旨により真正に成立したと認められる甲2(本件契約書)によれば,ニチメンと被告が,平成14年9月30日,本件契約を締結したことが認められる。
イ 被告は,原告が提出した本件契約書(甲2)は偽造である旨主張するが,同書面の末尾には被告の署名があるから,同書面は被告の意思に基づき作成されたものと推定されるところ,その推定を覆すに足りる証拠はない。かえって,甲2の署名が,被告が裁判所に提出した書面の署名と酷似していることに照らせば,甲2は真正に成立したものと認められる。
(3)  請求原因(3)(債務不履行①)について
ア 証拠及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。
(ア) 被告は,平成14年12月9日,ニチメンを代理して,浙江立馬雲山紡績に対するAJ機159台の販売権を落札したが,これをニチメンに報告しなかった(甲23の1・2,24の1・2及び弁論の全趣旨)。
(イ) 被告は,ニチメンと競業関係にある東レの契約交渉業務の代理店である誠成から業務委託を受けた上,東レの代理人と共に東レの営業活動を行い,平成15年3月10日から同年4月24日にかけて,前記(ア)の落札に係るAJ機のうち,149台について,売主を東レ,買主を浙江立馬雲山紡績とする以下の第1期ないし第3期売買契約締結に関与した(甲3,7の1・2,8,14,15,26,33,36及び弁論の全趣旨)。
a 第1期売買契約
平成15年3月10日,49台を,代金2億2251万0620円で締結
b 第2期売買契約
平成15年4月1日,54台を,代金1億7658万円で締結
c 第3期売買契約
平成15年4月24日,46台を,代金1億5258万6048円で締結
(ウ) なお,中国の入札法には,落札者が確定した後,入札者は,落札者に落札通知書を発送し,また,落札結果を落札できなかったすべての応札者に通知しなければならないこと,落札通知書は,入落札者に対して法的効力を有し,入札者が落札通知書の発行後に落札結果を変更した場合又は落札者が落札プロジェクトを放棄した場合,入落札者は法的責任を負うこと,入落札者は,落札通知書の発行日から30日以内に,入札文書及び落札者の応札文書に従って書面契約を締結し,入落札者は契約の実質的内容に反する契約を別途してはならないことなどが定められている(甲19)。
しかしながら,中国において,入札制度が十分理解されていないこと及び被告が浙江立馬雲山紡績に対し「ニチメンは経営状態が悪く,契約の履行能力がなくなっている」などの発言をしたことから,入札者である浙江立馬雲山紡績が,本来の落札者であるニチメンとAJ機の売買契約を締結しないという事態が生じたものである(甲15,21,36)。
(エ) 平成15年8月,上記(ア)ないし(ウ)がニチメンに発覚したところ,それ以前に,被告は,東レが第1期及び第2期売買契約の決済手段である信用状を開設したことに関与し,発覚時には,既に東レにおいて信用状を受領し,前記契約に係るAJ機が船積み間近になっていたため,ニチメンは,結果的に浙江立馬雲山紡績と売買契約を締結することができなかった(甲14,15,36及び弁論の全趣旨)。
(オ) ニチメンは,平成14年12月27日に,浙江立馬雲山紡績に対しAJ機を売却した際,3.69%の利益を得ていた(甲28)。
イ 前記ア認定の事実によれば,以下のとおり,被告に,本件契約の債務不履行が認められる。
(ア) 第1条(1)b)違反,第9条違反
被告は,ニチメンを代理して浙江立馬雲山紡績に対するAJ機159台の販売権を落札したにもかかわらず,これをニチメンに報告せず,さらに,本件契約の有効期間中に,ニチメンと競合する東レの代理人と共に営業活動を行い,第1期ないし第3期売買契約の締結に関与したものであり,かかる行為は,本件契約第1条(1)b),第9条に違反する。
(イ) 第7条(1)違反
また,前記のとおり,中国の入札法では,AJ機の落札については,落札者が確定した後,入札者は,落札者に落札通知書を発送し,また,落札結果を落札できなかったすべての応札者に通知しなければならないことが定められているが,証拠(甲24)及び弁論の全趣旨によれば,落札通知書には,入札募集番号,入札募集機構,入札募集者,公告名称,開札日時及び最終落札者が記載され,最終価格など詳細な情報は記載されておらず,他の応札者はこれを知り得ないことが認められる。
そうすると,前記ア(イ)の各売買契約締結の前提として,被告が,東レ及び誠成に対し,ニチメンがAJ機販売権を落札したこと及びその価格等の落札内容を漏洩したことが推認される。
したがって,被告は,ニチメンの機密事項を第三者に漏洩したものとして,本件契約第7条(1)に違反する行為をしたということができる。
ウ ニチメンの損害
(ア) 前記ア(ア)認定のとおり,ニチメンは,浙江立馬雲山紡績に対するAJ機159台の販売権を有していたから,ニチメンは,そのうち,東レと浙江立馬雲山紡績の第1期及び第2期売買契約に係るAJ機合計103台について,上記契約代金合計3億9909万0620円と同程度の売買代金で,浙江立馬雲山紡績と売買契約を締結した可能性が高かったところ,前記イの被告の債務不履行により,売買契約を締結することができなくなり,売買契約により得べかりし利益を失ったということができる。
そして,前記ア(オ)に認定した,ニチメンの従前の浙江立馬雲山紡績とのAJ機の取引における利益率に照らせば,その得べかりし利益は,ニチメンが浙江立馬雲山紡績とAJ機103台の売買契約を締結したと想定した場合の売買代金3億9909万0620円の約2.5%である1000万円を下らない。
(イ) したがって,ニチメンは,前記イの被告の債務不履行により,1000万円の損害を被ったことが認められる。
(4)  請求原因(4)(債務不履行②)について
ア 証拠及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。
(ア) 被告は,誠成から業務委託を受けた上,東レを代理して,ニチメンの有力な取引先であった蘭渓市後陸織布廠に対するAJ機30台の販売権を落札し,同落札に係るAJ機30台について,平成15年8月18日,東レを売主,蘭渓市後陸織布廠を買主,代金9689万5800円とする売買契約を締結した(甲3,9,15,31,36及び弁論の全趣旨)。
(イ) また,ニチメンは,平成15年5月31日に,蘭渓市においてAJ機を売却した際,3.39%の利益を得ていた(甲29)。
(ウ) 蘭渓市においては,ニチメンがAJ機の販売について圧倒的なシェアを有していた(甲36及び弁論の全趣旨)。
イ 前記ア認定の事実によれば,以下のとおり,被告に,本件契約の債務不履行が認められる。
(ア) 第9条違反
被告は,本件契約の有効期間中に,ニチメンと競業関係にある東レの業務を受託した上,東レを代理して,蘭渓市後陸織布廠を売主とする前記売買契約を締結したものであり,かかる行為は,本件契約第9条に違反する。
(イ) 第1条(1)b)違反
前記売買契約締結の前提として,被告が,本件業務遂行中に,蘭渓市後陸織布廠に対するAJ機販売権の入札に関する情報を取得したにもかかわらず,これをニチメンに報告しなかったことが推認できるところ,かかる行為は,本件契約第1条b)に違反する。
ウ ニチメンの損害
(ア) 前記ア(ウ)認定のニチメンの蘭渓市におけるシェアに照らせば,ニチメンが被告から蘭渓市後陸織布廠に対するAJ機30台の販売権に関する入札情報を得ていれば,ニチメンが同権利を落札し,東レとの売買契約代金9689万5800円と同程度の売買代金で,蘭渓市後陸織布廠と売買契約を締結した蓋然性が高かったものと推認できる。そして,前記イの被告の債務不履行により,ニチメンは,蘭渓市後陸織布廠と売買契約を締結することができなくなり,売買契約により得べかりし利益を失ったということができる。
また,前記ア(イ)に認定した,ニチメンの従前の蘭渓市でのAJ機の取引における利益率に照らせば,その得べかりし利益は,ニチメンが蘭渓市後陸織布廠とAJ機30台の売買契約を締結したと想定した場合の売買代金9689万5800円の約3%である300万円を下らない。
(イ) したがって,ニチメンは,前記イの被告の債務不履行により,300万円の損害を被ったことが認められる。
(5)  請求原因(5)(債務不履行③)について
ア 証拠及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。
被告は,誠成から業務委託を受けた上,東レを代理して,蘭渓市正大紡績に対するAJ機32台の販売権を入落札し,平成15年4月29日,東レを代理して,同落札に係るAJ機32台について,蘭渓市正大紡績を買主として,代金1億2020万円で売買契約を締結した(甲3,5,15,31,36及び弁論の全趣旨)。
イ 前記ア認定の事実によれば,以下のとおり,被告に,本件契約の債務不履行が認められる。
(ア) 第9条違反
被告は,本件契約の有効期間中に,ニチメンと競合する東レの業務を受託した上,東レを代理して,蘭渓市正大紡績を売主とする前記売買契約を締結したものであり,かかる行為は,本件契約第9条に違反する。
(イ) 第1条(1)b)違反
前記売買契約締結の前提として,被告が,本件業務遂行中に,蘭渓市正大紡績に対するAJ機販売権の入札に関する情報を取得したにもかかわらず,これをニチメンに報告しなかったことが推認できるところ,かかる行為は,本件契約第1条b)に違反する。
ウ ニチメンの損害
(ア) 前記(4)と同様に,ニチメンの蘭渓市におけるシェアに照らせば,ニチメンが被告から蘭渓市正大紡績に対するAJ機32台の販売権に関する入札情報を得ていれば,ニチメンが同権利を落札し,東レとの売買契約代金1億2020万円と同程度の売買代金で,蘭渓市正大紡績と売買契約を締結した可能性が高かったものと推認できる。そして,前記イの被告の債務不履行により,ニチメンは,蘭渓市正大紡績と売買契約を締結することができなくなり,売買契約により得べかりし利益を失ったということができる。
また,前記(4)ア(イ)に認定した,ニチメンの従前の蘭渓市でのAJ機の取引における利益率に照らせば,その得べかりし利益は,ニチメンが蘭渓市後陸織布廠とAJ機32台の売買契約を締結したと想定した場合の売買代金1億2020万円の約3%である360万円を下らない。
(イ) したがって,ニチメンは,前記イの被告の債務不履行により,360万円の損害を被ったことが認められる。
(6)  請求原因(6)(債務不履行④)について
ア 証拠及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。
(ア) 被告は,ニチメンを代理して,江西華源江紡に対するAJ機80台の販売権を平成15年5月20日に落札し,入札会社から,同年6月10日までに落札設備供給契約を締結するように指示されていたにもかかわらず,ニチメンに対し,同販売権の入札が,当時中国で発生していたSARSの影響で延期になった旨の虚偽の報告をし,入札案内書類を改ざんしてニチメンに提出した(甲15及び弁論の全趣旨)。
そして,被告は,誠成から業務委託を受けた上,東レの代理人と共に東レの営業活動を行い,同落札に係るAJ機80台について平成15年4月26日付けで締結された,東レを売主,江西華源江紡を買主,代金3億5650万円とする売買契約の締結に関与し,その結果,江西華源江紡の東レに対する信用状が開設された(甲31,36及び弁論の全趣旨)。
(イ) その後,同年6月初旬に,同年5月20日付けの前記落札の通知書がニチメンに送付されたことから,被告の虚偽報告が発覚した(甲15,22)。
(ウ) そして,ニチメン,東レ及び江西華源江紡が協議し,同年8月6日,東レ及び江西華源江紡間で締結された前記売買契約について,売主を東レからニチメンに変更し,その他の契約条件は変更しないことが合意され,また,ニチメンは,江西華源江紡に対し,信用状の条件変更依頼等,関係手続に関して発生する費用として,売買代金3億5650万円の0.5%である178万円を支払った(甲13の1ないし4,15,34,35及び弁論の全趣旨)。
イ 前記ア認定の事実によれば,以下のとおり,被告に,本件契約の債務不履行が認められる。
(ア) 第1条(1)b),第9条違反
被告は,ニチメンを代理して江西華源江紡に対するAJ機80台の販売権を落札したにもかかわらず,入札が延期になったなどの虚偽の報告をし,本件契約の有効期間中に,ニチメンと競合する東レの業務を受託して,東レの代理人と共に営業活動を行い,東レと江西華源江紡の同AJ機の売買契約締結に関与したものであり,かかる行為は,本件契約第1条(1)b),第9条に違反する。
(イ) 第7条(1)違反
前記(3)イ(イ)と同様に,被告が,前記売買契約締結の前提として,東レ及び誠成に対し,ニチメンがAJ機販売権を落札したとの情報を漏洩したことが推認できる。
したがって,被告は,ニチメンの機密事項を第三者に漏洩したものとして,本件契約第7条(1)に違反する行為をしたということができる。
ウ ニチメンの損害
(ア) 前記ア認定のとおり,ニチメンは,ニチメンが江西華源江紡に対するAJ機80台の販売権を有していたにもかかわらず,前記イの被告の債務不履行により,江西華源江紡と売買契約を締結することができなくなったため,東レの江西華源江紡に対する信用状の条件変更依頼等,関係手続に関して発生する費用として,江西華源江紡に対し,ニチメンが本来支払う必要のなかった178万円を支払うことになったものである。
(イ) したがって,ニチメンは,前記イの被告の債務不履行により,178万円の損害を被ったことが認められる。
(7)  請求原因(7)ア(信用毀損)について
ア 前記(2)アの事実に,証拠及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。
(ア) 被告は,平成15年3月前ころから,浙江立馬雲山紡績や江西華源江紡等の,中国におけるニチメンの取引先企業に対し,「ニチメンは経営状態が悪く,契約の履行能力がなくなっている。」,「ニチメンからは機械は入ってこない。東レからなら入ってくる。」等,虚偽の事実を述べるようになった。被告は,平成14年及び平成15年当時,ニチメンがAJ機について圧倒的なシェアを有していた中国の浙江省蘭渓市を担当し,同地域におけるAJ機の市場では広く顔を知られていた。被告がこのような発言をするのを聞いた者の中には,実際に,ニチメンの経営状態が悪く,契約の履行能力が低下していると信じる者もいた。
そして,被告がこのような発言をしたため,浙江立馬雲山紡績や江西華源江紡等のニチメンの取引先企業は,ニチメンの経営状態が相当悪く,契約の履行能力が低下していると信じ,ニチメンではなく,被告が代理人等として関与していた東レとの間で,AJ機の売買契約を締結した。
また,被告は,本件契約に基づき入札等の情報を収集しニチメンに報告すべき業務を受託していたのに,これを怠り,ニチメンが落札して売買契約を締結する蓋然性の高かった契約を,東レにさせ,結局,その後に,関係業者で協議しなければならない事態を招いた。(以上,甲15,31,32,36及び弁論の全趣旨)
(イ) 被告の債務不履行行為が発覚した後,前記(3)ア(イ)の浙江立馬雲山紡績と東レの売買契約については,浙江立馬雲山紡績が,その契約の販売権の落札者がニチメンであったことを認め,東レを代理して締結された契約についてニチメンに対して契約譲渡手続を行うよう依頼し,東レも自社のした契約の解除に異議はないとして,同契約の一部は契約の当事者をニチメンに戻すことができた(甲26,27及び弁論の全趣旨)。
また,前記(6)ア(ア)の江西華源江紡と東レの売買契約については,江西華源江紡,東レ及びニチメンが協議し,従来の商流どおり,ニチメン経由で江西華源江紡に売買するとの合意がされた(甲13の1ないし3,15及び弁論の全趣旨)。
(ウ) 他方,前記(3)ア(イ)の浙江立馬雲山紡績と東レの売買契約に関しては,入札会社である浙江栄大招標代理有限公司が,浙江立馬雲山紡績に対し,ニチメンを代理して入札に参加した被告が,入札に参加しなかった東レに契約をこっそり渡したことは詐欺であり,その行為は入札法に違反するものであり,入札会社にも悪影響を与えるものと指摘し,その入札活動により,同社の名誉が毀損された場合には,被告に対し訴えを提起する権利を留保するなどと記載した文書を送付していた(甲14)。
また,被告は,本件以外に,ニチメンが数年来取引していた浙江省蘭渓市対外経済貿易有限公司に対するAJ機46台の販売権を落札したにもかかわらず,東レを代理して同公司との間で売買契約を締結したことがあった。これに関し,同公司は,ニチメンに対し,被告の行為は商業上のモラルや正義を無視したものであり,ビジネス分野及び日本の法令の観点から断じて許されないなどと指摘したファクシミリ文書を送信した。
そして,前記文書は東レにも送信され,東レはこれを受けて,同契約を取り消すなどの事態となった。(以上,甲4,6の1ないし3)
イ 前記ア認定の事実によれば,被告は,虚偽の事実を述べて,ニチメンの取引先企業をして,本来ニチメンが締結することができたAJ機の売買契約について,東レと契約せしめたり,入札等の情報をニチメンに報告しないなどの本件契約に違反する行為を行った。そして,その後始末のために,ニチメンが関係会社と協議しなければならない事態を招き,また,関係会社にも,被告のようなトラブルを招く社員をニチメンが抱えていると認識させたものである。
以上のような被告の行為は,ニチメンの信用を毀損し,ニチメンの業務を妨害する行為であって,不法行為に当たる。
ウ ニチメンの損害
被告の前記不法行為の態様のほか,後日,ニチメンが,関係会社と協議し,売買契約をし直すなどすることができたこと等の事情に照らし,被告の不法行為によりニチメンが被った信用毀損にかかる損害は,200万円と認めるのが相当である。
(8)  請求原因(7)イ(その他の損害)について
ア 証拠(甲16の1ないし3)によれば,ニチメンが,被告に対し,平成15年3月分ないし5月分の本件契約の報酬として,合計93万円を支払ったことが認められる。前記認定によれば,被告は,同期間中,債務の本旨に従った履行をしたということはできないから,ニチメンの同支出は,被告の債務不履行と相当因果関係のある損害に当たる。
イ また,証拠(甲15)によれば,同期間中,ニチメンが,被告に対し,出張費用を支払ったことが認められる。他方,証拠(甲16の1ないし3)によれば,被告は,同期間中,ニチメンの本件債務不履行に係る以外の業務も行っていたことが認められるのであって,原告主張の出張費が,債務不履行に係ることを認めるに足りる証拠はない。
(9)  請求原因(8)(合併)について
原告は,平成16年4月,合併により,ニチメンの権利を承継した(弁論の全趣旨)。
(10)  請求原因(9)(弁護士費用)について
ア 弁論の全趣旨によれば,本件訴訟につき,原告が弁護士に委任したことが認められ,この事実に,前記認定の不法行為の態様及び損害額,本件訴訟の事案の内容及び審理経過等の諸般の事情を合わせみれば,被告の不法行為と相当因果関係のある弁護士費用は,100万円と認めるのが相当である。
イ なお,証拠(甲12の1ないし6)によれば,ニチメンが,中国における被告との訴訟において弁護士費用を支出したことが認められるが,同訴訟の請求内容が被告のいかなる行為を原因とするのかは不明であって,上記弁護士費用を,被告の不法行為と相当因果関係のある損害と認めることはできない。
(11)  小括
以上によれば,原告が被告の債務不履行ないし不法行為により被った損害は,合計2231万円である。
2  被告の主張について
(1)  被告の主張(1)について
ア 証拠(甲10,15)及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。
(ア) 被告は,平成15年6月2日,ニチメンに対し,メールで,同年5月末日限りで本件契約を解約する旨申し入れた。
(イ) ニチメンは,被告との本件契約を継続すべく,被告に対し,電話やメールで連絡を試みたが,被告と連絡をとることができなかった。
(ウ) そこで,ニチメンは,同月9日,被告に対し,「業務委託契約の件」と題する書面(甲10)をファクシミリで送信し,本件契約の継続を求めたが,これに対し,被告は,同月10日,同書面に,本件契約を同年5月末日に打ち切ることを要求する旨の文章を付記して,ニチメンに返信した。
(エ) 同書面において,ニチメンは,被告に対し,本件契約を終了するに当たっては,ニチメンが承諾し,あくまで双方同意を得る必要があり,まずは相互に話合いが持てるよう,通常の交信を回復,維持するとともに,ニチメンに対し,これ以上の迷惑又は損害発生の懸念を与えないよう真摯に対処してほしい旨を告げていた。
イ 前記認定の事実によれば,ニチメンは,被告の打切りの要求を受け入れたとはいえず,本件契約が平成15年5月末日に終了したとか,合意解約されたということはできない。
(2)  同(2)について
被告が,ニチメンの業務に関し損害を被ったとしても,それのみでは,原告の請求を妨げる事情ということはできず,またその主張を認めるに足りる証拠もない。
(3)  よって,被告の主張は,いずれも理由がない。
3  結論
以上によれば,原告の請求は,2231万円及びこれに対する遅くとも訴状送達が完了した日の翌日である平成17年5月26日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余の請求は理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法64条本文,61条を,控訴期間の付加期間につき同法96条2項を,各適用して,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 髙部眞規子 裁判官 桑原直子 裁判官 吉村弘樹)

 

*******

関連記事一覧

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。


Notice: Undefined index: show_google_top in /home/users/1/lolipop.jp-2394bc826a12fc5a/web/www.bokuore.com/wp-content/themes/rumble_tcd058/footer.php on line 296

Notice: Undefined index: show_google_btm in /home/users/1/lolipop.jp-2394bc826a12fc5a/web/www.bokuore.com/wp-content/themes/rumble_tcd058/footer.php on line 296