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「業務委託 代理店 営業」に関する裁判例(20)平成30年 2月27日 東京地裁 平25(ワ)27874号 否認権行使請求事件

「業務委託 代理店 営業」に関する裁判例(20)平成30年 2月27日 東京地裁 平25(ワ)27874号 否認権行使請求事件

裁判年月日  平成30年 2月27日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平25(ワ)27874号
事件名  否認権行使請求事件
裁判結果  棄却  上訴等  確定  文献番号  2018WLJPCA02276003

評釈
小原将照・金融判例研究 29号48頁(金融法務事情 2121号)
水野信次・銀行法務21 840号53頁
水野信次・銀行法務21 835号66頁

参照条文
破産法162条1項1号
破産法162条1項2号

裁判年月日  平成30年 2月27日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平25(ワ)27874号
事件名  否認権行使請求事件
裁判結果  棄却  上訴等  確定  文献番号  2018WLJPCA02276003

東京都千代田区〈以下省略〉
株式会社ファースト・トループ破産管財人
原告 X
同破産管財人代理弁護士 横山順一
別宮聡太郎
横浜市〈以下省略〉
被告 株式会社横浜銀行
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 今井和男
柴田征範
板垣幾久雄
臺庸子
浜本匠
塗師純子
松浦賢輔
同訴訟復代理人弁護士 船木久義

 

 

主文

1  原告の請求をいずれも棄却する。
2  訴訟費用は原告の負担とする。

 

事実及び理由

第1  請求
被告は,原告に対し,2億5838万0044円及びうち9864万8000円に対する平成24年5月8日から,うち1億3733万2044円に対する同月31日から,うち2240万円に対する同年6月11日から,いずれも支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
本件は,破産者株式会社ファースト・トループ(以下「破産会社」という。)の破産管財人である原告が,破産会社が破産手続開始前に被告に対してした支払,具体的には,(1)平成24年5月8日の手形貸付けに係る合計9864万8000円の期限前弁済(以下「本件支払1」という。),(2)同月31日の無担保社債合計1億3733万2044円の償還期限前の買入消却に係る支払(以下「本件支払2」)という。),(3)同年6月11日の外国為替予約取引の合意解除に係る精算金2240万円の支払(以下「本件支払3」といい,本件支払1,本件支払2及び本件支払3を総称して「本件各支払」という。)について,破産会社は平成24年4月27日に支払不能に陥ったとして,本件各支払はいずれも支払不能になった後にされた行為(破産法第162条1項1号イ)であるとし,または,破産者は同年5月31日に支払不能に陥ったとして,本件支払1及び本件支払2は支払不能になる前30日以内にされ,その時期が破産者の義務に属しない行為(同法162条1項2号)であり,本件支払3は支払不能になった後の行為(同法162条1項1号イ)であるとして,否認権を行使し,本件各支払に係る合計2億5838万0044円及びうち9864万8000円に対する平成24年5月8日(本件支払1の日)から,うち1億3733万2044円に対する同月31日(本件支払2の日)から,うち2240万円に対する同年6月11日(本件支払3の日)から各支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めている事案である。
1  争いのない事実
(1)  破産会社は,パーソナルコンピューター等に使用するアメリカ合衆国の法人であるWestern Digital Corporation(以下「WD」という。)製のハードディスクを,WDの日本の子会社であるWestern Digital Technologies Inc.(以下「WDT」という。)から仕入れ,これを他に販売することを主な業務としていた。
(2)  平成24年5月8日,破産会社は,被告に対し,次のとおり,手形貸付けの方法による借入金のうち合計9864万8000円をその弁済期(約束手形の満期日)が到来する前に弁済した(本件支払1)。
ア 弁済期平成24年7月2日
8000万円全額
イ 弁済期平成24年8月31日
1170万6000円のうち390万2000円
ウ 弁済期平成24年8月31日
37万8000円のうち12万6000円
エ 弁済期平成24年10月31日
230万円のうち114万8000円
オ 弁済期平成24年11月30日
1010万円のうち589万円
カ 弁済期平成25年2月28日
910万円のうち758万2000円
(3)  平成24年5月31日,破産会社は,自社が発行した無担保社債について,その償還期限前に,第1回無担保社債につき合計6656万3819円(6649万5569円及び手数料6万8250円),第2回無担保社債につき合計7076万8225円(7069万4725円及び手数料金7万3500円)を被告に支払い,社債の買入消却手続をした(本件支払2)。
(4)  平成24年6月11日,破産会社は,被告との間で外国為替予約取引契約を合意解除し,被告に対し,その精算金として2240万円を支払った(本件支払3)。
(5)  上記(2)ないし(4)により,破産会社の被告に対する債務は完済された。
(6)  平成24年9月28日頃,破産会社は,東京地方裁判所に対し,破産手続開始の申立てをし(以下この申立てを「本件破産手続開始決定の申立て」という。),同年10月10日午後5時,東京地方裁判所(民事第20部)は,破産会社が支払不能の状態にあるとして,破産会社について破産手続を開始し,原告を破産管財人に選任するとの決定をした(東京地裁平成24年(フ)第11635号)(以下この決定を「本件破産手続開始決定」という。)。
2  争点
(1)  破産会社は,平成27年4月27日には支払不能であったか
破産会社は,同年5月31日には支払不能であったか
ア 原告の主張
(ア) 破産会社は,平成24年4月27日には支払不能であった。
① 破産会社は,WDTからハードディスクを仕入れたことにより,平成24年3月31日から同年5月中旬に順次弁済期が到来する買掛金債務合計約1033万4230ドル(約8億5557万円)を負担する一方で,ハードディスクの販売先に対し,平成24年4月27日に5億4094万9065円,同年5月31日に2億2770万6724円の弁済期がそれぞれ到来する売掛金債権を保有していた。
破産会社は,上記の買掛金債務等の支払に充てるため,平成24年3月30日,株式会社みずほ銀行(以下「みずほ」という。)との間で,当座貸越契約に基づく貸越限度額を増額する特別当座貸越契約を結んだ上で,同年4月3日,みずほから5億2800万円を借り入れた。しかし,破産会社は,同年4月17日までの間に,上記の買掛金債務の一部の支払を遅滞した。
WDTと破産会社との間においては,商品代金の支払が滞った場合,その後の商品の出荷停止をするとともに,それまでの商品の代金を一括請求するとの取引慣行が存在していたことから,破産会社は,上記の支払遅滞により,平成24年4月17日以降,WDTからの出荷を停止されるとともに,上記の買掛金債務の全額につき期限の利益を失い,同月27日の時点において,WDTに対する上記買掛金債務の残額合計976万3624ドル38セント(7億7425万5413円)の債務の弁済期が到来した。
破産会社は,平成24年4月27日,販売先から回収した5億4094万9065円のほとんど(5億2800万円)をみずほへの弁済に充て,金融機関からの借入れも困難となっていたことから,同日の時点において,WDTに対する債務を弁済する能力を欠き,かつ,将来にわたって継続的にその支払が出来ない状態に至った。
(イ) 破産会社は,遅くとも平成24年5月31日には支払不能であった(予備的主張)。
① 平成24年5月31日には,上記(ア)の破産会社のWDTに対する買掛金債務の弁済期は全て到来し,かつ,破産会社とハードディスクの販売先との取引が終了していた。
② 同日の時点において,破産会社の主な資産は,預貯金2億3297万1582円のみであり,大口の売掛金債権はなく,これに対し,破産会社の負債は,上記の(ア)の買掛金債務だけでも7億7425万5413円もあった。
(ウ) 破産会社とWDTのどちらかが,相手方に対し,平成24年7月23日,上記(ア)の買掛金債務について,同年9月から12月の4回に分けて分割して年内に支払うことを提案をしたのかは明らかでなく,また,どちらからの提案であろうと,分割払等の支払猶予の合意は成立していないから,このような事情は,破産会社が支払不能であることを認めることの妨げにはならない。
イ 被告の主張
(ア) 原告の主張(前記ア(ア)①)によれば,破産会社は,ハードディスクを約8億5557万円で仕入れて約7億6866万円で販売するということになるところ,破産会社がこのような約8700万円もの赤字が生じる取引をしたとは考え難く,結局のところ,支払不能の前提となる債務とその弁済期が明らかではない。
(イ) 仮に,破産会社が原告の主張に係る取引をしたとしても,平成24年4月27日時点で弁済期が到来していた買掛金債務は,482万5095ドル62セント(3億8263万0082円)であり,破産会社は,同日までの間,WDTに対し,そのうちの合計2億5665万8343円を弁済していたことから,同日時点において弁済期が到来していた買掛金債務の残額は,多くとも1億2597万1739円(3億8263万0082円-2億5665万8343円)であった。
その一方で,破産会社は,平成24年4月27日の時点で,金融機関に対する債務について被告やその他の金融機関から期限の利益を喪失させられていないし,相殺もされないまま,合計で3億8663万7889円の預金を保有していたほか,一定の現金や売掛債権等の資産も有していた。
このようなことから考えると,破産会社が平成24年4月27日に支払不能であったということはできない。
(ウ) WDTは,破産会社に対し,平成24年7月23日,同年9月から12月の4回に分割して買掛金債務の残額全額を支払うよう期限の猶予を与えた。
これによれば,平成24年5月31日に支払不能であったということはできない。
(2)  被告は,本件支払1,本件支払2又は本件支払3に際し,破産会社が支払不能であることを知らなかったか(破産法162条1項1号イ,2項2号)(なお,本件支払3は,合意解約に基づく精算金の支払であるから,破産会社の義務に属しない行為(破産法162条2項2号)に当たる。)
ア 被告の主張
被告は,本件支払1,本件支払2又は本件支払3に際し,破産会社が支払不能であることを知らなかった。
(ア) 被告と破産会社は,被告の破産会社に対する融資の弁済期が到来すると,破産会社が一度弁済した上で同額を借り入れ,被告との間で弁済期を延長する合意をするということが繰り返され,被告の破産会社に対する融資残高はほぼ一定額に保たれていたし,破産会社は,ハードディスクの販売先からの入金用に他の金融機関の口座を用いていたから,被告は,破産会社の売上げや仕入れといった資金繰りを把握できる状況にはなかった。
(イ) 平成24年4月になって,破産会社は,新規の融資は不要であるとの意向を示し,既存融資の弁済期の延長等を申し入れることもなかった。同年5月7日被告は,破産会社の関連会社に対する融資をその弁済期に支払うことはできないが破産会社の融資については弁済すると言われ,その後も,破産会社について何らかの問題が生じている等の話を聞かされず,かえって,破産会社から,資金に余剰があるなどと聞かされていた。
イ 原告の主張
被告は,本件支払1,本件支払2又は本件支払3に際し,破産会社が支払不能であることを知らなかったことは否認する。
(ア) 被告は,破産会社の主力銀行として,破産会社に対し融資を実行し,その資金繰りの支援をしていただけでなく,破産会社との間で外国為替予約取引契約を結んだり,破産会社による無担保社債の発行に関与するなどしていたし,被告の担当者は,破産会社の在庫調査等もしていたのであるから,WDTからの仕入れが減少すれば,販売先に対する売上げもなくなり,破産会社が経営危機に陥ることを認識していた。
(イ) 被告は,破産会社の関連会社が経営危機に陥ると,破産会社に対し,平成24年4月以降,新規貸付の申込みを受け付けず,既存貸付の返済を求め,また,当該関連会社への貸付分の返済も要求するようになり,併せて,被告の担当者は,同年5月以降,外国為替予約取引契約について別途担保で200万円を入金するか精算の上で約2000万円の支払をしないと被告と破産会社との取引を停止する意向であるなどと言った。
(ウ) 以上みたところによれば,被告は,破産会社が支払不能の状態にあることを知った上で,本件各支払を求めたものであり,破産会社が支払不能であったことについて悪意であった。
(3)  被告は,本件支払1又は本件支払2の当時,他の破産債権者を害する事実を知らなかったか(破産法162条1項2号)
ア 被告の主張
被告は,本件支払1又は本件支払2の当時,他の破産債権者を害する事実を知らなかった。
被告は,平成24年5月31日の時点において,破産会社が支払不能であることはもちろんのこと,他の債権者を害することなどは,全く認識していなかった。
イ 原告の主張
被告が,本件支払1又は本件支払2の当時,他の破産債権者を害する事実を知らなかったことは否認する。
第3  当裁判所の判断
1  争点(1)について
(1)  証拠(甲第1,第2号証,第3号証の1,2,第4号証の1,2,第5ないし第7号証,第8号証の1ないし4,第9号証の1ないし3,第10号証の1ないし3,第11号証の1ないし3,第12号証の1ないし3,第13号証の1ないし3,第14号証の1,2,第15号証の1,2,第16ないし第33号証,第34号証の1,2,第35,第36号証,第37号証1,2,第38ないし第41号証,第42号証の1,2,第43号証の1,2,第44号証の1,2,第45ないし第58号証,第58号証の2,第59号証,第59号証の2,第60ないし第69号証,第69号証の2,第70号証の1ないし81,第71号証,第72号証の1,2,第73号証の1,2,第74,第75号証,第76号証の1ないし23,第77号証の1ないし9,第78号証の1ないし14,第79号証の1ないし24,第80ないし第83号証,第84号証の1,第84号証の1の2,第84号証の2,3,第84号証の3の2,第84号証の3の3,第84号証の4,第84号証の4の2,第84号証の4の3,第84号証の5,第85号証の5の2,第84号証の6ないし10,第85号証の1ないし6,第86号証の1ないし11,第87ないし第91号証,乙第1ないし第3号証,証人Bの証言,証人Cの証言及び証人Dの証言)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
ア 破産会社(甲第47ないし第52号証)は,平成13年6月1日に設立され,発起人であるCは,設立時に発行された株式200株全部を引き受けてこれを保有した(いわゆる発起設立)。E,F及びGは,いずれも,破産会社の取締役であったが,Eは平成15年6月19日に,Fは平成16年2月29日に,Gは平成24年3月31日に,取締役を辞任した。Hは,破産会社の取締役及び代表取締役であったが,平成18年7月1日に代表取締役を辞任し,平成24年3月31日に取締役を辞任した。Iは,Jの弟であるところ(甲第59号証),平成15年6月19日に破産会社の取締役に就任したが,平成18年12月31日にこれを辞任した。Kは,Cの妹であるところ(甲第58号証),平成16年2月29日に破産会社の取締役に就任したが,平成17年6月14日にこれを辞任し,平成21年7月27日に破産会社の監査役に就任したが,平成23年11月29日にこれを退任した。破産会社代表者(L)は,Cの妹であるところ(甲第58号証),平成17年6月14日に破産会社の取締役に就任し,平成18年7月1日に破産会社の代表取締役に就任した。Jは,Cの配偶者であるところ(甲第58号証の2),平成17年11月11日に破産会社の取締役に就任したが,平成24年1月31日にこれを辞任した。Mは,破産会社の取締役であったが,平成15年11月14日にこれを辞任した。Nは,平成15年12月16日に破産会社の監査役に就任したが,平成20年8月20日にこれを解任された。Oは,Cの母であるところ(甲第58号証),平成20年8月20日に破産会社の監査役に就任したが,平成21年7月27日にこれを辞任した。
株式会社LEAP(甲第53号証)(以下「LEAP」という。)は,破産会社の設立に先立ち,平成12年8月1日に設立され,アメリカ合衆国のハードディスクメーカーの代理店の業務などに従事した。Pは,LEAPの取締役及び代表取締役に就任していたが,平成24年4月1日に代表取締役を辞任した。Qは,平成21年4月16日にLEAPの取締役に就任したが,平成24年5月31日にこれを辞任した。Rは,平成21年12月11日にLEAPの取締役に就任したが,平成24年4月1日にこれを辞任した。Cは,平成24年4月1日にLEAPの取締役及び代表取締役に就任した。
株式会社M・E(甲第56号証)(以下「M・E」という。)は,平成19年1月4日に破産会社とLEAPの共同出資により設立され,第一興商のカラオケ機器に使用するハードディスクへのデータ入力業務等に従事し,Iは,M・Eの取締役及び代表取締役に就任していた。
株式会社AlphaMega(甲第54号証)(以下「AlphaMega」という。)は,平成19年10月10日に破産会社とLEAPの共同出資により設立され,USEN社のカラオケ機器に使用するハードディスクへのデータ入力業務等に従事し,Sは,平成21年12月1日,AlphaMegaの取締役及び代表取締役に就任し,Tは,平成24年5月1日,AlphaMegaの取締役及び代表取締役に就任した。
株式会社Seek(甲第57号証)(以下「Seek」という。)は,平成19年11月1日に設立され,Uは,Seekの取締役及び代表取締役に就任していた。
LEAP,M・E,AlphaMega及びSeekは,いずれも,破産会社と同じくCが実質的に経営を担っていた破産会社の関連会社であった。
イ 破産会社は,当初,WD製のハードディスク(以下「本件商品」という。)をWDの日本における子会社であるWDTから仕入れ,これを株式会社LENOVO(以下「LENOVO」という。)に販売し,本件商品はWDTからLENOVOに直接納品され,WDTが破産会社に手数料を支払っていたが,これに代わり,平成19年7月から,破産会社は,WDTから本件商品を仕入れてこれを株式会社アイ・オー・データ機器(以下「アイ・オー・データ」という。)等に販売することとし,WDTと破産会社は,次の約定で,価格設定通知書(以下「本件通知書」という。)により,破産会社がWDTから本件商品を仕入れる契約(甲第19号証)を結び,これに基づき本件商品のWDTからの仕入れ及びアイ・オー・データへの販売が開始された。具体的には,アイ・オー・データが破産会社に注文をし,これを受けて破産会社がWDTに発注し,さらに,破産会社がアイ・オー・データに見積書を発行し,商品が輸入されるとともに破産会社にWDTからの請求書が届き,商品が倉庫会社である株式会社シーバロジステックスの成田倉庫に入庫され,当該倉庫から商品が直接アイ・オー・データに納品され,破産会社がアイ・オー・データに代金を請求する,という手順であった(以下この取引を「本件取引」という。)。
(ア) 破産会社は,WDTが発行した請求書に記載された本件商品の代金を,請求書の発行日から45日以内(以下これを「本件サイト」という。)に,米ドルでWDTに支払うものとし,WDTは,30日以内に支払われなかった請求金額の残高に対し,年率10パーセントの遅延損害金を請求することができるものとする。
(イ) WDTは,破産会社が本件通知書又はWDTの請求書で指定された支払条件に従わない場合には,いつでもそれ以降の本件商品の出荷を停止することができるものとし,この場合,破産会社は,それ以降本件商品を出荷するための条件としてWDTが定める全ての新たな支払条件に従うものとする。
ウ 平成17年6月30日,破産会社と被告は,両者間の一切の取引について,次の内容の銀行取引約定(甲第2号証)を結んだ(以下この約定を「本件銀行取引約定」という。)。
(ア) 破産会社が被告から手形貸付けを受けた場合には,被告は手形上の債権又は貸金債権のいずれによっても請求することができるものとする。
(イ) 破産会社について支払の停止又は破産等の開始の申立てがあったとき等は,破産会社は被告からの通知催告等がなくても被告に対する一切の債務について当然に期限の利益を失い,直ちに債務を弁済するものとする。
(ウ) 破産会社が被告に対する債務の一部でも履行を遅滞したとき等は,被告の請求によって,破産会社は被告に対する一切の債務の期限の利益を失い,直ちに債務を弁済するものとする。
エ 平成19年8月1日,破産会社と被告は,次の内容の外国為替予約取引約定(甲第4号証の1)を結び(以下この約定を「本件外国為替予約取引約定」という。),同月7日,Cは,被告との間で,書面(甲第4号証の2)により,本件外国為替予約取引約定に基づく破産会社の被告に対する債務を連帯保証するとの合意をした。
(ア) 定義
本件外国為替予約取引約定における予約取引とは,外国通貨をもって表示される支払手段又は外貨債権の売買を当該売買の契約日以後の一定時期(期日)に一定の外国為替相場により履行すべき取引をいう。
(イ) 予約取引の履行
予約取引は,期日に履行するものとする。
(ウ) 解約・期日の変更
破産会社がやむを得ない事情により予約取引の解約,期日の延長,期日前履行を依頼するときは,被告所定の手続により被告の承諾を要するものとし,これにより被告に生じた手数料,費用その他全ての損害は破産会社の負担とし,直ちに弁済する。
(エ) 債務不履行による解除
① 破産会社について予約取引の全部又は一部を期日に履行しなかったとき,または,支払の停止もしくは破産等の申立てがあったとき等は,被告からの通知催告等がなくても,被告との一切の予約取引が当然解除されたものとし,この解除により生じた手数料,費用その他全ての損害は破産会社の負担とし,直ちに弁済する。
② 破産会社について予約取引以外の債務の一部でも履行を遅滞したとき等は,被告は通知によって破産会社との一切の予約取引を解除することができるものとし,この解除により生じた手数料,費用その他全ての損害は破産会社の負担とし,直ちに弁済する。
オ 平成20年9月19日,破産会社と被告は,次の内容の当座貸越契約(個別返済型)(甲第3号証の1)を結び(以下この契約を「本件当座貸越契約」という。),同日,Cは,被告との間で,書面(甲第3号証の2)により,保証限度額2億4000万円との約定で,本件当座貸越契約に基づく破産会社の被告に対する債務を連帯保証するとの合意をした。
(ア) 極度額
2億円
(イ) 借入利率
基準金利(被告が定める短期貸出最優遇金利(短期プライムレート))に年6パーセントを加えた変動金利(年365日の日割計算)
(ウ) 返済
当座貸越請求書記載の返済予定日(分割返済予定日を含む)
(エ) 利息の支払方法
借入日に返済予定日までの分を前払する。ただし,借入日から返済予定日までの期間が1か月を超えるときは,借入日に1か月分の利息を前払し,以降1か月毎に翌1か月分の利息(返済予定日までの期間が1か月に満たない場合は返済予定日までの利息)を前払する。
(オ) 取引期間
契約日から1年とし,期間満了の1か月前に破産会社又は被告からの書面による更新拒絶の意思表示のない限り期間満了の翌日から更に1年間自動更新し,以後も同様とする。
(カ) 解約
破産会社について本件銀行取引約定における期限の利益喪失に係る事由(前記ウ(イ)(ウ))が1つでも生じた場合,並びに相続が開始した場合には,被告はいつでも本件当座貸越契約を解約することができる。
本件当座貸越契約を破産会社の都合で解約したとき,又は上記により被告が解約したときは,当然に借入元利金について期限の利益が失われる。
カ 平成21年8月25日,破産会社は,被告及び神奈川県信用保証協会との間で,破産会社を社債の発行体,被告及び神奈川県信用保証協会を共同保証人とする次の内容の無担保社債保証委託契約(甲第5号証)(以下この契約を「本件委託契約1」という。)を結び,これを受けて,破産会社は,同月31日,本件委託契約1に係る社債(以下「本件社債1」という。)を発行した。
(ア) 社債発行決定日
平成21年8月20日
(イ) 社債の名称
株式会社ファースト・トループ(破産会社)第1回無担保社債(横浜銀行(被告)・神奈川県信用保証協会共同保証付き,分割譲渡制限特約付)
(ウ) 社債の総額
1億円
(エ) 各社債の金額
1000万円の1種
(オ) 利率
年1.22パーセント
(カ) 払込期日(発行日)
平成21年8月31日
(キ) 利息支払期日
毎年8月末日及び2月末日
(ク) 最終償還日
平成28年8月31日
(ケ) 初回定時償還期日
平成22年2月28日
(コ) 定時償還期日
初回定時償還期日以降の毎年8月末日及び2月末日
(サ) 定時償還額
各社債の金額当たり70万円
ただし最終償還日には90万円
(シ) 共同保証人の保証割合
被告100パーセント
神奈川県信用保証協会80パーセント
(ス) 財務代理人(発行代理人及び支払代理人の地位を含む)
被告(本店)
(セ) 保証債務履行事務代理人
被告
(ソ) 総額引受人
被告
(タ) 振替機関
株式会社証券保管振替機構
(チ) 社債権者集会開催地
横浜市
(ツ) 保証料
① 被告
算出の基礎となる金額 社債の総額×20/100
料率0.1パーセント(年365日の日割計算)
② 神奈川県信用保証協会
算出の基礎となる金額 社債の総額×80/100
料率1.3125パーセント
(テ) 被告又は神奈川県信用保証協会が社債要項に従いその保証債務の全部又は一部を履行したときは,その理由のいかんを問わず,破産会社は,被告又は神奈川県信用保証協会が履行した金額並びに被告又は神奈川県信用保証協会が被った損害及び履行に要した費用等の一切の金額及びこれに対する保証債務を履行した日から支払済みまで年14パーセント(年365日の日割計算)の割合による損害金を支払う。
キ 平成22年9月27日,破産会社は,被告及び神奈川県信用保証協会との間で,破産会社を社債の発行体,被告及び神奈川県信用保証協会を共同保証人とする次の内容の無担保社債保証委託契約(甲第6号証)(以下この契約を「本件委託契約2」という。)を結び,これを受けて,破産会社は,同月30日,本件委託契約2に係る社債(以下「本件社債2」という。)を発行した。
(ア) 社債発行決定日
平成22年9月21日
(イ) 社債の名称
株式会社ファースト・トループ(破産会社)第2回無担保社債(横浜銀行(被告)・神奈川県信用保証協会共同保証付き,分割譲渡制限特約付)
(ウ) 社債の総額
1億円
(エ) 各社債の金額
1000万円の1種
(オ) 利率
年0.8パーセント
(カ) 払込期日(発行日)
平成22年9月30日
(キ) 利息支払期日
毎年9月30日及び3月31日
(ク) 最終償還日
平成27年9月30日
(ケ) 初回定時償還期日
平成23年3月31日
(コ) 定時償還期日
初回定時償還期日以降の毎年9月30日及び3月31日
(サ) 定時償還額
各社債の金額当たり100万円
(シ) 共同保証人の保証割合
被告100パーセント
神奈川県信用保証協会80パーセント
(ス) 財務代理人(発行代理人及び支払代理人の地位を含む)
被告(本店)
(セ) 保証債務履行事務代理人
被告
(ソ) 総額引受人
被告
(タ) 振替機関
株式会社証券保管振替機構
(チ) 社債権者集会開催地
横浜市
(ツ) 保証料
① 被告
算出の基礎となる金額 社債の総額×20/100
料率0.1パーセント(年365日の日割計算)
② 神奈川県信用保証協会
算出の基礎となる金額 社債の総額×80/100
料率1.3125パーセント
(テ) 被告又は神奈川県信用保証協会が社債要項に従いその保証債務の全部又は一部を履行したときは,その理由のいかんを問わず,破産会社は,被告又は神奈川県信用保証協会が履行した金額並びに被告又は神奈川県信用保証協会が被った損害及び履行に要した費用等の一切の金額及びこれに対する保証債務を履行した日から支払済みまで年14パーセント(年365日の日割計算)の割合による損害金を支払う。
ク 平成23年3月の東日本大震災で本件商品の部品を納入している業者が被災し,また,同年の秋頃,タイ国の洪水でWDの工場が被災したことから,本件商品の生産が滞り,かつ,その価格も高騰したことから,破産会社においては,本件取引による経営状況が悪化していった。
ケ 平成23年8月31日,被告は,破産会社に対し,手形貸付けの方法により1170万6000円及び37万8000円を融資し(以下これらの融資をそれぞれ「本件手形貸付け2」「本件手形貸付け3」という。),Cは,被告との間で,書面(甲第9号証の2,第10号証の2)により,本件手形貸付け2及び本件手形貸付け3に基づく破産会社の債務を連帯保証する旨を合意し,破産会社は,被告に対し,本件手形貸付け2及び本件手形貸付け3に際し,それぞれ,次の記載のある約束手形1通(甲第9号証の1,第10号証の1)(以下それぞれ「本件手形2」「本件手形3」という。)を振り出した。
(ア) 振出人
破産会社
(イ) 受取人
被告
(ウ) 手形金額
1170万6000円(本件手形2)
37万8000円(本件手形3)
(エ) 振出日
平成23年8月31日
(オ) 支払期日
平成24年8月31日
(カ) 支払地
横浜市
(キ) 振出地
横浜市
コ 破産会社の平成20年10月1日(第9期)から平成23年9月30日まで(第11期)の決算報告(甲第17号証,第31,第32号証)の内容は,次のとおりであった。
(ア) 貸借対照表
① 資産の部 合計17億2020万2233円
(前期11億0359万0640円)
(前々期16億2515万4627円)
(流動資産)16億7457万9774円
うち,主なものは現預金1億7580万7142円,売掛金5億9315万9956円(前期3億3670万4026円,前々期5億6487万9073円),棚卸資産7億6402万6203円(前期4億0153万4148円,前々期5億8835万6263円)うち商品が7億6400万3803円,短期貸付金1億1183万4867円である。ただし,貸付金はほぼ全てAlphaMegaに対する貸付金債権である。
(固定資産)4506万1208円
うち,主なものは投資その他の資産3955万5127円(うち2050万5127円が長期前払費用)であり,有形固定資産は116万5349円である。
(繰延資産(権利金))56万1251円
② 負債の部 合計16億2404万1771円
(流動負債)13億7775万9771円
うち,主なものは買掛金9億5271万0869円(前期2億4370万1150円,前々期8億8696万8631円)及び短期借入金2億5157万7000円(前期2億4581万円,前々期3億0332万円)であり,1年以内返済長期借入金が9520万4000円,未払金が7096万1990円である。
(固定負債)2億4628万2000円
うち長期借入金が9428万2000円及び社債が1億5200万円である。
③ 純資産の部(株主資本) 合計9616万0462円
(資本金)1000万円
(利益剰余金)8616万0462円
(前期9279万8721円)
(前々期8722万0017円)
うち別途積立金が3000万円および繰越利益剰余金が5616万0462円(前期6279万8721円,前々期5722万0017円)である。
(イ) 損益計算書
① 売上高 39億7800万4818円(売上値引,戻り高控除後)
(前期62億2274万7363円)
(前々期51億2008万0645円)
② 売上原価 36億9474万1805円
(期首棚卸高)4億0150万9030円
(商品仕入高)40億4296万8074円
(外注費)473万2930円
(輸入諸掛)953万5574円
(期末棚卸高)-7億6400万3803円
(前期-4億0150万9030円)
(前々期-5億8825万0088円)
③ 売上総利益 2億8326万3013円(①-②)
④ 販売費及び一般管理費 2億4280万7787円
うち主なものは,発送配達費2282万6336円,業務委託費1856万3102円,役員報酬5798万円,従業員給与7211万3611円である。
⑤ 営業利益 4045万5226円(③-④)
(前期5900万5421円)
(前々期8180万1687円)
⑥ 営業外収入 1426万2148円
⑦ 営業外費用 6268万4981円
うち主なものは,支払利息1695万2911円及び為替差損3938万2070円である。
⑧ 経常損失(引前当期純損失) 796万7607円(⑦-⑤-⑥)
⑨ 当期純損失 663万8259円
(前期純利益557万8704円)
(前々期純利益1223万5444円)
サ 平成23年10月3日,被告は,破産会社に対し,手形貸付けの方法により8000万円を融資し(以下この融資を「本件手形貸付け1」という。),Cは,被告との間で,書面(甲第8号証の3)により,本件手形貸付け1に基づく破産会社の債務を連帯保証する旨を合意し,破産会社は,被告に対し,本件手形貸付け1に際し,次の記載のある約束手形1通(甲第8号証の1)(以下「本件手形1」という。)を振り出した。本件手形貸付け1により,同日の被告の破産会社名義の普通預金口座(甲第7号証)(以下「本件口座」という。)の最終の残高は融資利息,印紙代及び手数料の控除後で8054万6568円となった。
(ア) 振出人
破産会社
(イ) 受取人
被告
(ウ) 手形金額
8000万円
(エ) 振出日
平成23年10月3日
(オ) 支払期日
平成24年4月2日
(カ) 支払地
横浜市
(キ) 振出地
横浜市
シ 平成23年10月4日,破産会社は,本件口座に合計1億8000万円を振り込んだが,破産会社は,被告に対し,融資元金合計1億8000万円を弁済するとともに,被告は,新たに,破産会社に対し,合計1億8000万円を融資し,さらに,破産会社は,2億円を本件口座から支払い,これにより平成23年10月4日の本件口座の最終の残高は6024万8608円となった。
ス 平成23年10月5日,被告は,6000万円を本件口座から支払うなどし,翌6日の本件口座の最終の残高は24万3883円となった。
セ 平成23年10月19日,M・Eは,本件口座に6938万6385円を振り込んだが,翌20日,破産会社は,6950万円を本件口座から支払うなどし,その日の本件口座の最終の残高は13万0193円となった。
ソ 平成23年10月28日,Seekは,本件口座に合計800万円を振り込んだが,破産会社は,被告に対し,本件外国為替予約取引約定に基づく債務の弁済として,本件口座から807万円を支払い,同日の本件口座の最終の残高は6万0193円となった。
タ 平成23年10月31日,破産会社は,本件口座に1150万円を振り込んだが,破産会社は,被告に対し,融資元利金の弁済として,合計116万1998円を本件口座から支払い,併せて,本件外国為替予約取引約定に基づく債務の弁済として,948万円を本件口座から支払い,同日の本件口座の最終の残高は90万3363円となった。
チ 平成23年11月1日,被告は,破産会社に対し,手形貸付けの方法により230万円を融資し(以下この融資を「本件手形貸付け4」という。),Cは,被告との間で,書面(甲第11号証の2)により,本件手形貸付け4に基づく破産会社の債務を連帯保証する旨を合意し,破産会社は,被告に対し,本件手形貸付け4に際し,次の記載のある約束手形1通(甲第11号証の1)(以下「本件手形4」という。)を振り出した。本件手形貸付け4により,同日の本件口座の最終の残高は融資利息,印紙代及び手数料の控除後で319万8856円となった。
(ア) 振出人
破産会社
(イ) 受取人
被告
(ウ) 手形金額
230万円
(エ) 振出日
平成23年11月1日
(オ) 支払期日
平成24年10月31日
(カ) 支払地
横浜市
(キ) 振出地
横浜市
ツ 平成23年11月9日,破産会社は,本件口座に2億円を振り込み,翌10日,被告は,2億円を本件口座から支払い,また,被告は,本件口座に2億円を振り込み,破産会社は,被告に対し,融資元金合計1億8000万円を弁済するとともに,被告は,新たに,破産会社に対し,合計1億8000万円を融資し,同日の本件口座の最終の残高は2億0275万3969円となったが,翌11日及び14日,破産会社は,合計2億0200万円を本件口座から支払い,14日の本件口座の最終の残高は75万2919円となった。
テ 平成23年11月21日,破産会社は,本件口座に800万円を振り込んだが,同月28日,破産会社は,本件外国為替予約取引約定に基づく債務の弁済等として,本件口座から合計807万1499円を出金し,同日の本件口座の最終の残高は68万1420円となった。
ト 平成23年11月30日,破産会社は,本件口座に3500万円を振り込んだが,破産会社は,被告に対し,融資元利金の弁済として,合計139万9088円を本件口座から支払い,併せて,本件外国為替予約取引約定に基づく債務の弁済として,3299万4000円を本件口座から支払い,同日の本件口座の最終の残高は128万8322円となった。
ナ 平成23年12月2日,被告は,破産会社に対し,手形貸付けの方法により1010万円を融資し(以下この融資を「本件手形貸付け5」という。),Cは,被告との間で,書面(甲第12号証の2)により,本件手形貸付け5に基づく破産会社の債務を連帯保証する旨を合意し,破産会社は,被告に対し,本件手形貸付け5に際し,次の記載のある約束手形1通(甲第12号証の1)(以下「本件手形5」という。)を振り出した。本件手形貸付け5により,同日の本件口座の最終の残高は融資利息,印紙代及び手数料の控除後で1136万6517円となった。
(ア) 振出人
破産会社
(イ) 受取人
被告
(ウ) 手形金額
1010万円
(エ) 振出日
平成23年12月2日
(オ) 支払期日
平成24年11月30日
(カ) 支払地
横浜市
(キ) 振出地
横浜市
ニ 平成23年12月15日,M・Eは,本件口座に6972万0315円を振り込み,同日の本件口座の最終の残高は8077万5154円となった。
ヌ 平成23年12月20日,破産会社は,みずほの普通預金口座(甲第18号証)(以下「本件みずほ口座」という。)から本件口座に2000万円を振り込み,また,破産会社は,被告に対し,融資元金の弁済として,1億円を本件口座から支払うとともに,被告は,新たに,破産会社に対し,1億円を融資し,同日の本件口座の最終の残高は1億0071万9940円となった。
ネ 平成23年12月26日午前10時,破産会社の臨時株主総会が開催され,破産会社の業績が不振であるなどとして代表取締役(破産会社代表者)及び取締役Gの役員報酬を平成24年1月分からそれぞれ78万円及び83万円に減額する旨の議案が全員一致で可決された(甲第33号証)。
ノ 平成23年12月26日,破産会社は,本件口座から9000万円を支払い,また,同月28日,被告に対し,本件外国為替予約取引約定に基づく債務の弁済として,本件口座から807万円を支払い,同日の本件口座の最終の残高は264万9415円となった。
ハ 平成24年1月,破産会社とWDTは,本件取引に係る本件サイトを,同月が支払期日の分以降,45日以内から30日以内に変更することを合意し,これにより,破産会社は,本件取引に係る資金調達が一層困難な状況となっていった。
ヒ 平成24年1月4日,破産会社は,被告に対し,融資元利金の弁済として,合計220万6382円を本件口座から支払い,同日の本件口座の最終の残高は44万3033円となった。
フ 平成24年1月6日,破産会社は,本件口座に合計8000万円を入金等し,同日の本件口座の最終の残高は8043万8833円となった。
ヘ 平成24年1月10日,破産会社は,被告に対し,融資金の弁済として,8000万円を本件口座から支払うとともに,被告は,新たに,破産会社に対し,8000万円を融資し,同日の本件口座の最終の残高は融資利息の控除後で8011万0149円となった。
ホ 平成24年1月19日,破産会社は,8000万円を本件口座から支払い,同日の本件口座の最終の残高は10万9424円となった。
マ 平成24年1月27日,破産会社は,本件みずほ口座から本件口座に1050万円を振り込んだが,同月31日,破産会社は,被告に対し,融資金の弁済として,合計221万5633円を本件口座から支払い,併せて,本件外国為替予約取引約定に基づく債務の弁済として,807万円を本件口座から支払い,また,本件口座に手形43万5750円の入金があり,同日の本件口座の最終の残高は75万9741円となった。
ミ 平成24年2月17日,破産会社は,本件みずほ口座から本件口座に1億円を振り込み,また,破産会社は,被告に対し,融資金の弁済として,1億円を本件口座から支払うとともに,被告は,新たに,破産会社に対し,1億円を融資し,同日の本件口座の最終の残高は融資利息の控除後で1億0044万2701円となった。
ム 平成24年2月20日,破産会社は,1億円を本件口座から支払い,同日の本件口座の最終の残高は44万3558円となった。
メ 平成24年2月24日,破産会社は,本件みずほ口座から本件口座に750万円を振り込んだが,破産会社は,被告に対し,本件委託契約1に基づく手数料8271円及び本件社債1の償還金743万9200円を本件口座から支払い,同日の本件口座の最終の残高は49万6087円となった。
モ 平成24年2月28日,破産会社は,本件みずほ口座から本件口座に4100万円を振り込んだが,破産会社は,被告に対し,本件外国為替予約取引約定に債務の弁済として,807万円を本件口座から支払い,翌29日,被告は,破産会社に対し,新たに手形貸付けの方法により910万円を融資し(以下「本件手形貸付け6」という。),破産会社は,被告に対し,融資元利金等の弁済として,合計224万2860円を本件口座から支払い,併せて,本件外国為替予約取引約定に基づく債務の弁済として,3299万4000円を本件口座から支払うなどし,同日の本件口座の最終の残高は27万0611円となった。
本件手形貸付け6と同じ日,Cは,被告との間で,書面(甲第13号証の2)により,本件手形貸付け6に基づく破産会社の債務を連帯保証する旨を合意し,破産会社は,被告に対し,本件手形貸付け6に際し,次の記載のある約束手形1通(甲第13号証の1)(以下「本件手形6」という。)を振り出した。
(ア) 振出人
破産会社
(イ) 受取人
被告
(ウ) 手形金額
910万円
(エ) 振出日
平成24年2月9日
(オ) 支払期日
平成25年2月28日
(カ) 支払地
横浜市
(キ) 振出地
横浜市
ヤ 平成24年3月から同年4月までの間,破産会社は,本件取引に基づき,WDTから本件商品11万4285個を,代金合計1028万4255米ドルで購入し,これをアイ・オー・データ及び株式会社KOUZIRO(以下「KOUZIRO」という。)に販売したところ,当該購入に係る破産会社のWDTに対する債務(以下「本件買掛金債務」という。)の弁済期は同年3月31日から同年5月14までであり(甲第19号証,第70号証の1ないし81),当該販売に係る破産会社のアイ・オー・データに対する代金の請求額は合計7億8998万6475円(3月分が5億5596万0526円及び4月分が2億3402万5949円)であり(甲第72号証の1,2,第73号証の1,2)),KOUZIROに対する代金の請求額は288米ドル及び7548万5675円(3月分が2884米ドルと360万0575円及び4月分が7188万5100円)であった(甲第74,75号証)。
破産会社は,WDTに対し,平成24年3月から同年4月までの間,本件取引に基づく買掛金債務の弁済として,次のとおり合計2億5665万8343円を本件みずほ口座から送金して支払った(甲第18号証)。(このうち(エ)の支払がその時期から見て本件買掛金債務の一部弁済に当たるものと思われ,これによれば,本件買掛金債務の未払残額はおよそ6億1400万円強(1028万4255米ドル×79.30円/米ドル(破産債権届出(甲第19号証)の為替レート)-2億0139万9900円=6億1414万1521円)になるものと思われる。)
(ア) 平成24年3月6日 2327万8477円(後記セ’(キ)の送金)
(イ) 同月23日 2048万9050円(後記セ’(ク)の送金)
(ウ) 同月30日 1149万0916円(後記セ’(コ)の送金)
(エ) 同年4月3日 2億0139万9900円(後記セ’(サ)の送金)
また,アイ・オー・データは,破産会社に対し,次のとおり上記の販売に係る代金の一部合計7億6865万5789円を本件みずほ口座に振り込んで支払ったが,後記セ’のとおり,同日あるいは約1か月後に,そのほとんどがみずほへの融資の弁済に充てられた(甲第18号証)。
(ア) 平成24年4月27日 5億4094万9065円(後記セ’(シ))
(3月分の代金の一部)
(イ) 同年5月31日 2億2770万6724円(後記セ’(ス))
(4月分の一部)
ユ 平成24年3月9日,破産会社は,本件みずほ口座から本件口座に8000万円を振り込み,また,破産会社は,被告に対し,融資金の弁済として,8000万円を本件口座から支払うとともに,被告は,新たに,破産会社に対し,8000万円を融資し,同日の本件口座の最終の残高は融資利息の控除後で8010万5862円となった。
ヨ 平成24年3月14日,破産会社は,M・Eの債務の弁済として,1050万円を本件口座から支払い,同日の本件口座の最終の残高は6960万5862円となった。
ラ 平成24年3月27日,破産会社は,被告に対し,本件委託契約2に基づく手数料1万1172円及び本件社債2の償還金1032万円を本件口座から支払い,同日の本件口座の最終の残高は5909万2088円となった。
リ 平成24年3月28日,破産会社は,被告に対し,本件外国為替予約取引約定に基づく債務の弁済として,807万円を本件口座から支払い,また,同日及び翌29日,破産会社は,合計4800万円を本件口座から支払う等し,29日の本件口座の最終の残高は302万1563円となった。
ル 平成24年4月2日,破産会社は,被告に対し,融資元利金等の弁済として,合計300万1103円を本件口座から支払い,同月6日,破産会社は,被告に対し,手数料合計4200円を本件口座から支払い,同日の本件口座の最終の残高は7780円となった。
レ 平成24年4月2日,破産会社と被告は,本件手形貸付け1の弁済期を同日から同年7月2日に変更することを合意し,これに基づき,破産会社は,被告に対し,次の記載のある約束手形1通(甲第8号証の2)(以下本件手形1の2)という。)を振り出し,被告は,破産会社に対し,本件手形1を返却した。
(ア) 振出人
破産会社
(イ) 受取人
被告
(ウ) 手形金額
8000万円
(エ) 振出日
平成24年4月2日
(オ) 支払期日
平成24年7月2日
(カ) 支払地
横浜市
(キ) 振出地
横浜市
ロ 平成24年4月9日,破産会社は,本件口座に20万円を振り込んだが,被告に対し,融資金の弁済として,13万6657円を本件口座から支払い,同日の本件口座の最終の残高は7万1123円となった。
ワ 平成24年4月13日,破産会社は,本件みずほ口座から本件口座に1億円を振り込んだが,同月16日,破産会社は,被告に対し,前記ミの融資の弁済として,1億円を本件口座から支払ったが(期限前弁済),これに伴う従前のような新たな同額の融資(借替え,ジャンプ)はされず,同日の本件口座の最終の残高は7万1123円となった。
ヲ 平成24年4月17日,破産会社は,本件買掛金債務の一部を請求書記載の支払期日までに支払わず,これを受けて,WDTは,本件取引に基づく破産会社に対する本件商品の出荷を停止した(甲第91号証)。これを受けて,破産会社は,その業務を本件取引から技術サポートに縮小していった。
ア’平成24年4月18日,破産会社の取締役であったGは,株式会社アイ・オー・データのVに対し,破産会社において資金調達の問題が発生したため本件取引に基づくWDTからの本件商品の購入とその販売に係るビジネスを中断せざるを得ない状態に陥ってしまった,そのため株式会社アイ・オー・データ向けの注残分(2TB/WD20EARXが300台及び3TB/WD30EARXが280台)のキャンセルや当面のビジネスに関しては他社への手配をお願いしたい,と電子メール(甲第45号証)で連絡し,破産会社は,本件商品を購入している他の顧客に対しても,同旨の書簡(甲第69号証の2の3枚目)を送付した。
イ’平成24年4月25日,M・Eは,本件口座に9492万2000円を振り込んだが,同月27日,破産会社は,被告に対し,本件外国為替予約取引約定に基づく債務の弁済として,807万円を本件口座から支払い,併せて,前記ユの融資の弁済として,8000万円(ただし戻し利息5万1835円控除)を本件口座から支払ったが(期限前弁済),これに伴う従前のような新たな同額の融資(借替え,ジャンプ)はされず,同日の本件口座の最終の残高は697万1958円となった(これに後記の破産会社名義の他の普通預金口座の残高を併せると,平成24年4月27日時点での残高合計額は3億3309万7651円(697万1958円+1億4159万6892円+678万7313円+1億1804万7187円+5216万8380円+160万5273円+592万0648円)となった。)。
ウ’平成24年5月1日,破産会社は,本店を横浜市〈以下省略〉から同市〈以下省略〉に移転した(甲第47号証,乙第1号証)。
エ’平成24年5月1日及び7日,破産会社は,被告に対し,融資金等の弁済として,合計298万7073円を本件口座から支払い,7日の本件口座の最終の残高は398万4885円となった。
オ’平成24年5月8日,破産会社は,本件みずほ口座から本件口座に1億円を振り込んだが,破産会社は,被告に対し,本件手形貸付け1ないし6の期限前の弁済として,本件手形貸付け1につき8000万円全額,本件手形貸付け2につき1170万6000円のうち390万2000円,本件手形貸付け3につき12万6000円,本件手形貸付け4につき114万8000円,本件手形貸付け5につき1010万円のうち589万円及び本件手形貸付け6につき758万2000円の合計9864万8000円(ただし戻し利息合計14万0201円が同月16日に本件口座に入金された。)を本件口座から支払い(甲第8号証の4,第9号証の3,第10号証の3,第11号証の3,第12号証の3,第13号証の3,これが本件支払1に当たる。),同日の本件口座の最終の残高は533万6885円(戻し利息入金等の後の同月16日の残高は547万5586円)となった。
カ’平成24年5月28日,破産会社は,本件口座に4107万円を振り込んだが,翌29日,破産会社は,被告に対し,本件外国為替予約取引約定に基づく債務の弁済として,807万円を本件口座から支払い,同日の本件口座の最終の残高は3847万5586円となった。
キ’平成24年5月31日,破産会社は,被告との間で,破産会社が被告から最終償還期限前の本件社債1に係る社債券を買入消却のため受渡代金6649万5569円(額面金額6500万円×1.0198(単価は額面100円につき101円98銭)+経過利子20万8569円),受渡日平成24年6月4日の約定で買い受ける旨の社債券売買契約(甲第14号証の1)(以下「社債券売買契約1」という。)を結び,併せて,破産会社が被告から最終償還期限前の本件社債2に係る社債券を買入消却のため受渡代金7069万4725円(額面金額7000万円×1.0085(単価は額面100円につき100円85銭)+経過利子9万9725円),受渡日平成24年年6月4日の約定で買い受ける旨の社債券売買契約(甲第15号証の1)(以下「社債券売買契約2」という。)を結んだ。
同日,破産会社は,本件みずほ口座から本件口座に1億円を振り込んだが,破産会社は,被告に対し,本件社債券売買契約2に基づく受渡代金7069万4725円及び買入消却手数料7万3500円の弁済として,合計7076万8225円(甲第15号証の2)(ただし戻保証料3134円が同年6月4日に本件口座に入金された。)を本件口座から支払い,併せて,本件社債券売買契約2に基づく受渡代金6649万5569円及び買入消却手数料6万8250円の弁済として,合計6656万3819円(甲第14号証の2)(ただし戻保証料4449円が同年6月4日に本件口座に入金された。)を本件口座から支払い(これが本件支払2に当たる。),同日の本件口座の最終の残高は14万4761円(戻保証料入金等の後の同年6月4日の残高は14万2929円)となった(これに後記の破産会社名義の他の普通預金口座の残高を併せると,平成24年5月31日時点での残高合計額は2億3240万7661円(14万4761円+1億4020万1441円+316万1062円+611万9128円+6万1830円+7694万1752円+577万7687円)となった。)。
ク’平成24年6月4日,破産会社は,被告に対し,本件社債券売買契約1及び本件社債券売買契約2に基づき買い入れた本件社債1及び本件社債2の買入消却の手続を依頼し,これにより破産会社は被告を通じて本件社債1及び本件社債2を買入れにより消却した。
ケ’平成24年6月7日,破産会社は,本件外国為替予約取引約定に係る追加担保の提供に応じないこととなり,破産会社と被告は,次の約定で,本件外国為替予約取引約定を解除し,これに伴う精算金の受け渡しをすることを合意した(甲第16号証)(以下この合意を「本件精算合意」という。)。
(ア) 契約解除日
平成24年6月11日
(イ) 精算金額
2240万円
(ウ) 精算金額支払人
破産会社
(エ) 精算金額受取人
被告
(オ) 精算金額受渡日
平成24年6月11日
(カ) 解約対象取引
① 当初成約日
平成22年9月28日
② 選択権の別及び売買の別
米ドルコール/円貨・プット(破産会社の購入)
米ドルプット/円貨・コール(破産会社の売却)
③ 取引通貨額
日本円 807万円
④ 対象通貨額
米ドル 10万米ドル
⑤ 行使価格
80.70円
⑥ 停止条件価格
95.00円
⑦ 解約対象取引の受渡日
平成24年6月28日から平成27年9月25日までの40回分
同日,破産会社は,本件口座から本件口座に2400万円を振り込んだが,本件精算合意において契約解除日及び精算金額受渡日とされた同月11日,破産会社は,被告に対し,本件精算合意に基づく精算金の弁済として,2240万円を本件口座から支払い(これが本件支払3に当たる。),同日の本件口座の最終の残高は173万8729円となった。
コ’平成24年6月から7月にかけて,破産会社は,WDTからの本件商品の仕入れに代わり,自社製品の開発を試みたが,商品化を断念した。
サ’平成24年6月12日,破産会社は,170万円を本件口座から支払い,同日の本件口座の最終の残高は3万8204円となったところ,その後本件口座への振込み等による入金はなく,同年9月6日に残高が2万6720円になって以降,本件口座の出入金はなくなった。
シ’平成24年6月28日,破産会社は,本件商品を購入する顧客らに対し,破産会社の資金調達問題による本件商品の販売中断により多大な迷惑をかけ謝罪する,前記ア‘の書簡を送付してから後も本件商品の購入資金調達が困難な状態が続いている,不本意ではあるが新たな商流を早急に検討し個別に提案,紹介をさせていただく,破産会社は現在は技術サポート業務を中心に事業を継続しているので今後ともよろしくお願いしたい旨の文書(甲第46号証)を送付した。
ス’平成24年7月頃,破産会社は,WDTに対し,支払が滞っている本件買掛金債務残額の弁済について,これを同年9月から12月まで4回に分割して支払うことを提案し,WDTはこの提案の検討を直ちには拒まなかった。
セ’本件みずほ口座の出入金の経過(甲第18号証)等は,本件口座への振込みを除き,概ね次のとおりであった。
(ア) 平成20年2月21日,破産会社とみずほは,銀行取引約定(甲第34号証の1)を結び,同日,破産会社代表者は,みずほとの間で,書面(甲第34号証の2)により,上記の銀行取引約定に基づく破産会社の債務を連帯保証する旨を合意し,同年10月8日,Cは,みずほとの間で,書面(甲第35号証)により,同旨の連帯保証契約を結んだ。
(イ) 平成21年2月23日,みずほは,破産会社に対し,証書貸付けの方法により,平成21年9月から平成31年2月まで毎月21日に分割弁済するとの約定で8000万円を融資し,同日,破産会社代表者は,みずほとの間で,書面により,破産会社のみずほに対する上記の債務を連帯保証する旨の合意をした(甲42号証の1,2)。
(ウ) 平成22年3月31日,破産会社は,みずほとの間で,貸越極度額を4億円とする特別当座貸越約定(甲第36号証)を結ぶとともに,破産会社とアイ・オー・データとの間の平成19年6月15日付けの取引基本契約に基づき破産会社がアイ・オー・データから回収した債権の回収金を開設済みの本件みずほ口座に入金する旨の覚書(甲37号証の1,2)を結んだ。
同日,みずほは,破産会社に対し,証書貸付けの方法により,平成22年4月から平成25年3月まで毎月1日に分割弁済するとの約定で1億円を融資した(甲43号証の1,2)。
(エ) 平成23年12月13日時点での残高は,742万0283円であった。
(オ) その後,破産会社等による入出金等やみずほへの融資金等の弁済を経て,平成24年2月13日,みずほは,破産会社に対し,8891万8133円を融資し,翌14日,6353万1462円が本件みずほ口座から仕向送金(外国送金)され,同日の本件みずほ口座の最終の残高は6710万1687円となった。
(カ) その後,破産会社等による入出金等やみずほへの融資金等の弁済を経て,平成24年2月29日及び翌3月1日,破産会社は,みずほに対し,融資金の弁済として,合計9183万5444円を本件みずほ口座から支払い,同じ3月1日,破産会社は,本件みずほ口座に570万円を振り込み,同日の本件みずほ口座の最終の残高は725万0370円となった。
(キ) その後,破産会社等による入出金等やみずほへの融資金等の弁済を経て,平成24年3月6日,みずほは,破産会社に対し,3495万2655円を融資し,同日,2327万8477円が本件みずほ口座からWDTに仕向送金されるなどし,同日の本件みずほ口座の最終の残高は7092万4548円となった。
(ク) その後,破産会社等による入出金等を経て,平成24年3月23日,2048万9050円が本件みずほ口座からWDTに仕向送金され,同日の本件みずほ口座の最終の残高は1億0287万5232円となった。
(ケ) 平成24年3月30日,破産会社は,みずほとの間で,特別当座貸越約定の貸越極度額を6億円に変更することを合意し(甲第38号証),併せて,破産会社のアイ・オー・データに対する債権に譲渡担保権を設定した(甲第39,第40号証)。
(コ) その後,破産会社等による入出金等やみずほへの融資金等の弁済を経て,平成24年3月29日,みずほは,破産会社に対し,証書貸付けの方法により,平成24年5月から平成31年3月まで毎月5日に分割弁済するとの約定で3000万円(同月30日に本件みずほ口座に入金されたのは2849万4103円)を融資し,同日,破産会社代表者は,みずほとの間で,書面により,破産会社のみずほに対する上記の債務を連帯保証する旨を合意し(甲第44号証の1,2),同月30日,破産会社は,みずほに対し,融資金の弁済として,本件みずほ口座から3500万円を支払い,併せて,融資更新手数料105万円および融資取扱手数料420万円を本件みずほ口座から支払い,同日,1149万0916円が本件みずほ口座からWDTに仕向送金されるなどし,同日の本件みずほ口座の最終の残高は3638万1654円となった。
(サ) その後,みずほへの融資金の弁済を経て,平成24年4月3日,みずほは,破産会社に対し,5億2800万円(本件みずほ口座への入金額は5億2728万5754円)を弁済期同月27日の約定で融資し(甲第41号証),同日,2億0139万9900円が本件みずほ口座からWDTに仕向送金されるなどし,同日の本件みずほ口座の最終の残高は3億9604万1789円となった。
(シ) その後,破産会社等による入出金等やみずほへの融資金等の弁済を経て,平成24年4月27日,アイ・オー・データは,本件みずほ口座に5億4094万9065円を振り込み,破産会社は,みずほに対し,前記(サ)の融資の弁済として,5億2800万円を本件口座から支払い,同日の本件みずほ口座の最終の残高は1億4159万6892円となった。
(ス) その後,破産会社等による入出金等やみずほへの融資金等の弁済を経て,平成24年5月31日,アイ・オー・データが本件みずほ口座に2億2770万6724円を振り込むなどにより,同日の本件みずほ口座の最終の残高は1億4020万1441円となった。
(セ) その後,破産会社等による入出金等やみずほへの融資金等の弁済を経て,平成24年6月29日,破産会社は,みずほに対し,融資金の期限前の弁済として,合計1億0763万2000円を本件みずほ口座から支払うなどし(ただし戻利息合計7万6582円が同日本件みずほ口座に入金された。),同日の本件みずほ口座の最終の残高は256万5415円となった。
(ソ) その後,平成24年8月21日,外貨預金から2970万5278円が本件みずほ口座に入金され,同日の本件みずほ口座の最終の残高は3131万4543円となったが,その後本件口座への振込み等による入金はなく出金のみが続き,同年9月18日に残高が119万1926円円になって以降,本件みずほ口座の出入金はなくなった。
ソ’破産会社名義の株式会社三菱東京UFJ銀行の3つの普通預金口座(甲第20ないし第22号証),破産会社名義の株式会社三井住友銀行の普通預金口座(甲第23号証),破産会社名義の株式会社りそな銀行の普通預金口座(甲第25号証)及び破産会社名義の被告の普通預金口座(甲第27号証)の出入金の経過は,いずれも,同口座が事業資金の融資を受けるために利用されることが少なかったところ,平成24年4月4月25日以降の破産会社等からの振込みによる入金(預金の利息を除く。)は次のとおりであった(いずれも入金後に相当額が出金されている。)。
(ア) 平成24年4月25日 1000万円(破産会社)
合計1万8150円(AlphaMega)
150万円(破産会社)
200万円(破産会社)
(イ) 同月27日 合計677万9330円(破産会社以外)
合計731万7030円(破産会社以外)
1615万9500円(Seek)
378万0184円(破産会社以外)
(ウ) 同月5月1日 17万0520円(破産会社以外)
4万6858円(破産会社以外)
(エ) 同月8日 2000万円(M・E)
(オ) 同月14日 2500万円(M・E)
(カ) 同月15日 8万8700円(預金機からの入金)
(キ) 同月17日 191万8350円(Seek)
(ク) 同月18日 408万4500円(破産会社以外)
9282万円(M・E)
(ケ) 同月22日 1900万円(M・E)
1600万円(破産会社)
(コ) 同月28日 2600万円(破産会社)
(サ) 同月29日 24万2322円(預金機からの入金)
(シ) 同月30日 300万円(破産会社)
200万円(破産会社)
(ス) 同月31日 合計567万1403円(破産会社以外)
合計477万7174円(破産会社以外)
合計2万1550円(AlphaMega)
91万8062円(Seek)
3万4582円(破産会社以外)
7547万8935円(破産会社以外)
7600万円(破産会社)
516万6489円(外貨預金からの入金)
(セ) 同年6月12日 1000万円(破産会社)
合計2170万円(破産会社)
(ソ) 同月14日 2000万円(破産会社)
(タ) 同月15日 3120円(保険関係)
(チ) 同月22日 1652万8365円(M・E)
(ツ) 同月26日 合計2000万円(破産会社)
(テ) 同月28日 500万円(破産会社)
(ト) 同月29日 合計465万5700円(破産会社以外)
合計1万9050円(AlphaMega)
61万1825円(破産会社以外)
(ナ) 同年7月2日 3万2760円(破産会社以外)
(ニ) 同月9日 370万円(破産会社)
(ヌ) 同月19日 200万円(破産会社)
(ネ) 同月25日 100万円(破産会社)
(ノ) 同月30日 合計400万円(破産会社)
(ハ) 同月31日 合計551万0169円(破産会社以外)
合計1万7250円(AlphaMega)
(ヒ) 同年8月8日 40万2304円(破産会社)
(フ) 同月9日 60万5545円(破産会社以外)
(ヘ) 同月24日 410万円(破産会社)
400万円(破産会社)
(ホ) 同月28日 300万円(破産会社)
(マ) 同月30日 2000万円(破産会社)
(ミ) 同月31日 6万4680円(破産会社以外)
合計595万5480円(破産会社以外)
(ム) 同年9月5日 20万円(破産会社)
(メ) 同月7日 2万2860円(保険関係)
(モ) 同月10日 合計2万7750円(破産会社以外)
8万6620円(保険関係)
(ヤ) 同月20日 1000万円(破産会社代表者)
(ユ) 同月27日 52万9500円(破産会社以外)
タ’平成24年9月25日,破産会社は,本件商品を購入している取引先に対し,諸般の事情により廃業することとなった,同月末日を目途に破産の申立てをする旨の文書(甲第69号証の2の4枚名)を送付した。
チ’平成24年9月28日頃,破産会社は,本件破産手続開始決定の申立てをし,同年10月10日,東京地方裁判所は,本件破産手続開始決定をした。
本件破産手続開始決定の申立て係る申立書(甲第67号証)には,平成24年5月14日,破産会社が,WDTに対し,長期の分割払による返済計画を提案したところ,WDTが検討すると回答したが,その後,平成24年7月23日,WDTが,破産会社に対し,同年9月から12月までの4回に分けて買掛金債務全額を年内に支払うよう求めた結果,破産会社が買掛金債務7億7102万2864円を支払うことができず,支払不能となるに至った,との記述がある。一方,平成27年1月頃作成ののWDTの原告に対する回答書(甲第91号証)には,上記の4回の分割の提案は,WDTからの提案ではなく,破産会社からの打診案であったとの記述がある。
ツ’平成24年11月5日,WDTは,本件破産手続開始決定に係る破産手続において,東京地方裁判所に対し,破産債権の届出として,本件取引に基づく本件商品の売掛債権の残元本7億7425万5413円(976万3624.38米ドル×為替レート79.30円/米ドル)及び損害金の届出(甲第19号証)をした。
テ’平成24年11月14日午後5時,東京地方裁判所は,AlphaMegaについて破産手続を開始し,W1を破産管財人に選任する旨の決定をした(甲第54,第55号証)。
ト’平成25年5月22日午後5時,東京地方裁判所は,Seekについて破産手続を開始し,W2を破産管財人に選任する旨の決定をした(甲第57号証)。
ナ’平成25年7月25日,東京地方裁判所は,AlphaMegaの破産手続終結の決定をした(甲第54号証)。
ニ’平成25年11月1日,東京地方裁判所は,Seekの破産手続終結の決定をした(甲第57号証)。
(2)  支払不能(破産法162条1項1号,2号,同法2条11号)とは,債務者が,支払能力を欠くために,その債務のうち弁済期にあるものにつき,一般的かつ継続的に弁済することができない状態であるところ,これを平成24年4月27日における破産会社についてみると,前記(1)で認定したところによれば,破産会社は,本件取引において,被告やみずほからの融資を口座にプールして,WDTへの買掛金債務の支払とアイ・オー・データ等からの売上金の入金とのブランクに対応し,その間に口座の残高が上下に推移するという経過をたどり,その財務状況も,ストックで見ると,資産の大部分が流動資産(現預金,売掛金,仕入れ商品)であり,負債の大部分がWDTに対する買掛金債務及び金融機関の融資であって,フローで見ると,売上高に占める売上原価,特に仕入高の割合が大きく(平成23年9月決算期において,売上高に対する売上原価の割合は約93パーセント,仕入高の割合は101.6パーセント),仕入れと販売のバランスで営業を継続し,本件取引に係る市況の変動によって利益が大きくなることも損失が拡大することも起こり得るビジネスモデルとなっていたところ,平成23年頃から本件取引による経営状況が悪化し,平成24年4月17日,本件買掛金債務の一部を支払期日までに支払わず,WDTが破産会社に対する本件商品の出荷を停止し,さらに,同月25日,破産会社は被告に対し融資に係る8000万円を全額弁済し融資の借換えや延長等はされず,同月27日にはアイ・オー・データから破産会社に本件商品の代金約5億4000万円強が支払われたが破産会社はそのうち5億2800万円をみずほからの融資の弁済に充てたというのであるが,一方で,破産会社は,上記の出荷の停止の後も,事業を技術サポート業務に縮小して営業を継続し,これに伴う収入等も関連会社を含め少額ながら継続的に入金されていて,また,本件買掛金債務の残額は約6億1400万円強であり,このうちいくらが平成24年4月27日の時点で弁済期が到来していたかについては必ずしも明らかでないが(なお,本件取引に期限の利益の喪失に関する約定があったことを認めるに足りる証拠はないから,上記の出荷停止により破産会社が期限の利益を失ったということはできない。),平成24年4月27日時点での破産会社名義の口座の残高は合計3億3309万7651円であったというのであり,また,本件取引本件取引によれば,出荷停止後においても破産会社がWDTの定める新たな支払条件を受け入れて出荷が再開される可能性が全くなかったとまで断ずることはできず,併せて,平成24年4月27日の時点で被告を含む金融機関が破産会社に対し融資をしない等の意向を示したことを認めるに足りる証拠はないのであるから,本件買掛金債務残額のうち平成27年4月27日に弁済期が到来した分について破産者が支払能力を欠くために一般的かつ継続的に弁済することができない状態であったとまでいうことはできない。
原告は,平成24年4月27日の時点では,既にWDTが破産会社に対し本件商品の出荷を停止したから,本件取引により破産会社のキャッシュを増やすことが見込めない一方で,破産会社は,アイ・オー・データからの入金をほぼそのままみずほからの融資の弁済に充て,金融期間からの借入れも困難であったから,同日の時点で破産会社は支払不能であったと主張する。しかし,上記のとおり,支払不能であるというためには,破産会社の債務のうち弁済期にあるものにつき一般的かつ継続的に弁済することができない状態であるといわなければならないところ,本件買掛金債務残額のうちいくらが平成24年4月27日の時点で弁済期が到来していたかが明らかでない以上,同日時点で破産会社が保有していたキャッシュ(預金)の額が本件買掛金債務残額のうち弁済期の到来している分の支払をするのに足りないとまで断ずることはできず,しかも,同日の時点で,破産会社は本件取引以外の事業を継続し,キャッシュの出入りもあったこと,金融機関からの借入れができなくなっているとまでいうことはできないことから,将来において破産会社がWDTから本件商品の仕入れを再開できなくなっていたとまでいうことはできないのであって,原告の主張は採用できない。
(3)  次に,平成24年5月31日において破産会社が支払不能であったかについてみると,平成24年5月31日の時点では,本件買掛金債務残額約6億1400万円強はその全額につき弁済期が到来し,また,平成24年5月31日時点での破産会社名義の口座の残高は合計2億3240万7661円に減少しているが,一方で,同日,アイ・オー・データから破産会社に本件商品の代金約2億2700万円強が支払われ,これを原資として破産会社はみずほに融資金約1億円強を弁済したのはその約1か月後の6月29日であったというのであって,また,破産会社は,同年6月以降,本件商品に代わる自社製品の開発を試みるともに,これを断念すると,同年7月頃,WDTに対し,本件買掛金債務の残金の弁済について,同年9月から12月まで4回に分割して支払うことを提案し,WDTはこの提案の検討を直ちには拒まなかったというのであり,併せて,平成24年5月31日の時点で被告を含む金融機関が破産会社に対し融資をしない等の意向を示したことを認めるに足りる証拠はないのであるから,同日の時点において,本件買掛金債務残額について破産会社が支払能力を欠くために一般的かつ継続的に弁済することができない状態であったとまでいうことはできない。
原告は,平成24年5月31日の時点では,本件買掛金債務の額が破産会社の資産額(預金額)を大きく上回り,破産会社は遅くとも同日には支払不能であったと主張する。確かに,上記でみたとおり,平成24年5月31日の時点においては,本件買掛金債務残額の弁済期が全て到来している一方で,破産会社のキャッシュ(預金)はその額に約3億8000万円強不足していたというのであるから,同日の時点においては,破産会社は本件買掛金債務残額を支払う能力がなかったといわざるを得ない。しかし,上記でみたところによれば,破産会社は,同日の時点においても,依然として2億3000万円を超えるキャッシュ(預金)を保有し,少なくとも当日の時点で金融機関から今後の融資を断られたといったような事情もなく,その後も,同年6月29日にみずほからの融資を弁済するまでの間は,相当額のキャッシュ(預金)の出入りを繰り返しているのであって,さらに,6月には自社製品の開発を試み,これに断念するも,同年7月になって,WDTに対し,本件買掛金債務残額の4回の分割払の提案をし,その提案に係る1回当たりの支払額はおよそ1億5000万円強であったと思われるところ,WDTがこれを直ちに拒否しなかったというのであり,このような分割払の提案等は,同年5月31日時点での破産会社の保有するキャッシュ(預金)の額や1回当たりの分割弁済額を考慮すれば,破産会社がいわゆる無理算段をして延命を図っているだけの現実味のないものであったと断じ切るのには躊躇を覚えざるを得ないのであって,このようなことから考えると,少なくとも同年5月31日の時点においては,破産会社が支払不能であったことが証明されたと断ずることはできない。なお,原告は,仮に上記の分割払の提案がされていたとしても,WDTが破産会社に対し本件買掛金債務残額の支払を猶予するには至らなかったのであるから,このような事情は破産会社が支払不能であると判断することの妨げにはならないと主張するが,WDTが最終的に支払を猶予しなくとも,上記でみたとおり,平成24年7月の時点で,破産会社がWDTに対し上記の分割払を提案し,WDTがこれを直ちに拒まなかったことは,そのおよそ1か月前である平成24年5月31日の時点で破産会社が支払不能であったことを覆す事情として考慮することはできるのであって,原告のこの点の主張も採用できない。
2  以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がない。
東京地方裁判所民事第48部
(裁判長裁判官 氏本厚司 裁判官 池田幸司 裁判官 鈴木実里)

 

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