「成果報酬 営業」に関する裁判例(37)平成26年12月11日 東京地裁 平26(レ)679号 損害賠償請求控訴事件
「成果報酬 営業」に関する裁判例(37)平成26年12月11日 東京地裁 平26(レ)679号 損害賠償請求控訴事件
裁判年月日 平成26年12月11日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平26(レ)679号
事件名 損害賠償請求控訴事件
裁判結果 控訴棄却 文献番号 2014WLJPCA12118002
要旨
◆被控訴人と有料職業紹介契約を締結し柔道整復師を紹介するよう依頼した控訴人が、被控訴人は同契約に基づいて柔道整復師法所定の欠格事由の有無を調査、確認し欠格事由のない人材を紹介する義務を怠ったとして損害賠償を求めたところ、原審で請求を棄却されたため控訴した事案において、前科等の欠格事由がある求職者の採用の可否に関しては雇用主である控訴人が第一次的に調査、判断すべき事項といえ、候補人材の欠格事由の有無につき控訴人からの具体的な調査依頼がない本件では被控訴人は候補人材の欠格事由の存否を調査、確認すべき義務を負わず、また、保険請求事務の経験が全くなくともよいという採用条件が示されていたから、仮に保険請求事務が円滑に処理できなかったとしてもそれは被控訴人の債務不履行を意味しないとして、控訴を棄却した事例
裁判経過
第一審 東京簡裁 判決 平25(ハ)30752号
参照条文
民法415条
柔道整復師法4条3号
柔道整復師法8条1項
職業安定法2条1項
職業安定法5条の5
裁判年月日 平成26年12月11日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平26(レ)679号
事件名 損害賠償請求控訴事件
裁判結果 控訴棄却 文献番号 2014WLJPCA12118002
東京都中野区〈以下省略〉
控訴人 X
同訴訟代理人弁護士 東海林正樹
東京都渋谷区〈以下省略〉
被控訴人 株式会社Y
同代表者代表取締役 A
主文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は、控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1 控訴の趣旨
1 原判決を次のとおり変更する。
2 被控訴人は、控訴人に対し、112万4149円及びこれに対する平成25年5月25日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
本件は、被控訴人との間で有料職業紹介契約を締結した控訴人が、被控訴人に対し、上記契約の債務不履行に基づく損害賠償請求として、既払報酬相当額等の損害賠償金合計123万4149円及びこれに対する平成25年5月25日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
原審は控訴人の請求を全部棄却したことから、控訴人がこれを不服として控訴するとともに、第1の2のとおり、請求を減縮した。
1 争いのない事実
控訴人は、平成24年12月10日、有料職業紹介事業等を目的とする株式会社である被控訴人との間で、有料職業紹介基本契約(以下「本件職業紹介契約」という。)を締結し、柔道整復師の紹介を依頼した(なお、後記争点2記載のとおり、控訴人が依頼したのは保険請求事務をする技能を有する柔道整復師であるか否かについては争いがある。)。
被控訴人が控訴人に対して本件職業紹介契約に基づきB(以下「B」という。)を紹介したところ、控訴人は、Bを採用し、Bとの間で雇用契約を締結した。
控訴人は、平成25年5月1日、被控訴人に対し、本件職業紹介契約に基づく報酬として63万円(税込み)を支払った。
2 争点及び争点に関する当事者の主張
(1) 争点1(被控訴人に、柔道整復師法上の欠格事由の有無を調査、確認して欠格事由のない人材を紹介する義務の不履行があるか)
(控訴人の主張)
柔道整復師法において、窃盗の前科は欠格事由に該当し(同法4条3号)、上記欠格事由に該当する柔道整復師はその免許を取り消され得ることが規定されている。そして、欠格事由を有する柔道整復師はいつその免許を取り消されるか分からないのであり、特に、本件のように1名の有資格者を採用する場合には、当該有資格者の免許取消しは事務所の業務停止に直結するため、採用時にBに免許があったとしても事業が順調に進んで利益が上がるという見通しを立てることができない。本件職業紹介契約2条1項における「適切と判断」との文言については、被控訴人が主観的に適切と判断すれば足りると解釈すべきではなく、有償にて業務を請け負った者として責任ある判断をすることが前提とされており、客観的に適切であることを意味すると解釈すべきである。
このような観点からすれば、欠格事由を有する柔道整復師に対しては、いまだ免許が取り消されておらず営業行為が否定されていないとしても、自由な評価が可能な採用段階において、否定的な評価が下されるのであり、社会通念上、採用段階で前科という欠格事由が判明していれば当該欠格事由を有する有資格者を採用する雇用主はいない。本件においても、控訴人は、Bの欠格事由が判明していれば同人を採用することはなかった。
したがって、被控訴人は、本件職業紹介契約に基づき、柔道整復師法に定められた欠格事由の有無を調査、確認して欠格事由のない人材を紹介する義務を負う。
そうであるにもかかわらず、被控訴人は、Bに柔道整復師法上の欠格事由があるか否かを調査、確認することを怠り、控訴人に対し、同法上の欠格事由を有する柔道整復師であるBを紹介した。
以上によれば、被控訴人には、柔道整復師法上の欠格事由の有無を調査、確認して欠格事由のない人材を紹介する義務の不履行があるというべきである。
(被控訴人の主張)
被控訴人は職業紹介事業者として職業安定法の規制に服するところ、同法上、職業紹介業者は、法令に違反する内容ではない限り求職者の求職の申込みを拒否することができず(同法5条の5、5条の6第1項)、求職者に対する試問が許される場合も極めて限定されている(同法5条の6第2項)。また、本件職業紹介契約においても、被控訴人は、控訴人から依頼された求人情報に基づき被控訴人が適切と判断した人材を控訴人に紹介すれば足りるとされている(同契約2条1項)のであって、被控訴人には、本件職業紹介契約上、紹介する人材につき、客観的な適切性を調査すべき義務や客観的な適切性を保証すべき義務は課されていない。
以上によれば、被控訴人は、そもそも、本件職業紹介契約に基づき柔道整復師法に定められた欠格事由の有無を調査、確認して欠格事由のない人材を紹介する義務を負わないというべきであるから、被控訴人にその義務の不履行もない。
(2) 争点2(被控訴人に、柔道整復師の資格を有する者のうち保険請求事務をする技能を有する人材を紹介する義務の不履行があるか)
(控訴人の主張)
控訴人は、控訴人に対し、管理柔道整復師の紹介を依頼した。管理柔道整復師とは自己の名で保険請求をすることのできる者を指す言葉であり、控訴人は、保険請求事務をする技能を有する柔道整復師の紹介を依頼したのである。
したがって、被控訴人は、本件職業紹介契約に基づき、柔道整復師の資格を有する者のうち保険請求事務をする技能を有する人材を紹介する義務を負う。
そうであるにもかかわらず、被控訴人は、Bが保険請求事務をする技能を有するか否かを調査、確認することを怠り、控訴人に対し、上記技能を有しない柔道整復師であるBを紹介した。
以上によれば、被控訴人には、柔道整復師の資格を有する者のうち保険請求事務をする技能を有する人材を紹介する義務の不履行があるというべきである。
(被控訴人の主張)
否認ないし争う。柔道整復師の資格を保有する者は、保険請求事務をすることができるはずであり、被控訴人は、特段、保険請求をする技能を有する者という依頼はされておらず、単に柔道整復師の紹介を依頼されたにすぎない。控訴人は、Bが保険請求事務をこなすことができなかったとして、求職者の資質を問題としているようであるが、求職者の資質などは本件職業紹介契約の内容とはなり得ないし、そもそも控訴人が被控訴人に交付した求人票の「望ましい経験・スキル」欄にも「管理経験はなくても可」等の記載がある。
したがって、被控訴人は、そもそも、本件職業紹介契約に基づき柔道整復師の資格を有する者のうち保険請求事務をする技能を有する人材を紹介する義務を負わないのであるから、被控訴人にその義務の不履行もない。
(3) 争点3(損害の有無及びその額)
(控訴人の主張)
控訴人が被った損害額は、以下のアからエまでの合計額112万4149円である。
ア 紹介報酬金 63万円
イ 解雇予告手当 29万1954円
ウ 管理柔道整復師と柔道整復師の給与差額(2か月分) 10万円
エ 弁護士費用 10万2195円
(被控訴人の主張)
ア 争う。
イ 本件職業紹介契約12条2項は、損害賠償の額を、故意又は過失による場合を除き、控訴人が被控訴人に支払った紹介報酬金の総額をもって上限とすると規定していて、仮に被控訴人に債務不履行があるとしても、被控訴人の過失は軽微であり、故意又は重過失は存在しないといえるから、同条項により、控訴人の被控訴人に対する損害賠償額の上限は63万円である。
ウ 仮に被控訴人に債務不履行があるとしても、損害賠償額の算定においては、控訴人の過失が考慮されるべきである。
第3 当裁判所の判断
1 認定事実等
証拠(甲1~5、9、10、乙1~3)及び弁論の全趣旨によれば、争いのない事実を含め、以下の事実が認められる。
(1) 控訴人は平成25年3月から東京都港区赤坂において整骨院を営む者であり(甲10)、被控訴人は職業安定法30条に基づく厚生労働大臣の許可を受けて有料の職業紹介事業を行う株式会社である(弁論の全趣旨)。
(2) 控訴人は、上記整骨院を開設するための準備として、平成24年11月ころ、被控訴人に連絡し、その約1週間後、被控訴人担当者と面談をして、紹介を求める人材の条件などを告げ、求人票(以下「本件求人票」という。乙1)を交付した(甲10)。
本件求人票の「募集職種名」欄には「管理柔道整復師」、「望ましい経験・スキル」欄には「柔道整復師資格取得後3年及び施術経験3年を経過したもの。管理経験は無くても可。レセプト作成経験があれば尚可。」、「求人理由」欄には「新規開業整骨院での管理柔道整復師募集」との記載がある。
(3) 控訴人は、平成24年12月10日、被控訴人との間で以下の内容を含む本件職業紹介契約を締結した(甲1)。
ア 本件職業紹介契約は、被控訴人が控訴人の募集する人材を紹介し、控訴人と求職者との間における雇用契約の成立を有償であっせんすること(以下「紹介業務」という。)について、基本的事項を定めることを目的とする。(1条1項)
イ 被控訴人は、控訴人から依頼された職位、職務条件等の人材求人情報に基づき、該当する候補人材を求め、適切と判断した人材を控訴人に紹介する。(2条1項)
ウ 控訴人は被控訴人が前条により紹介した人材を自ら選考の上、適当と認めた場合には、求人条件等に基づき採用する。この場合、被控訴人は控訴人に必要なアドバイスを行い、その他の採用選考の支援を行う。(3条)
エ 控訴人は、人材紹介の報酬として、被控訴人が紹介した人材を採用する場合、成果報酬金(控訴人が当該人材に支払う月給の2か月分。)及びその消費税相当額を支払う。(4条1項)
(4) 被控訴人は、控訴人に対し、本件職業紹介契約に基づき、柔道整復師の資格を有するBを紹介した。なお、被控訴人は、Bを紹介する際、柔道整復師法4条所定の欠格事由の存在を知らず、Bに上記欠格事由に該当する事実があるか否かを調査しなかった。
(5) 被控訴人は、平成24年12月10日にBと面談した結果、同人を採用することとし、同月14日にBとの間で基本賃金を月額35万円(ただし、試用期間に当たる2、3か月の間は月額30万円)として雇用契約を締結した(甲3)。
なお、控訴人は、Bとの間で上記雇用契約を締結するまでに、自らBに対して柔道整復師法4条所定の欠格事由に該当する事実があるか否かを調査、質問したことはなかった。
(6) 控訴人は、平成25年5月1日、被控訴人に対し、本件職業紹介契約に基づく人材紹介の報酬として63万円(税込み)を支払った。
(7) 控訴人は、Bから過去に自己破産したことがあることを告げられたことから、Bが自己破産した正式な年月日を知りたいと考え、平成25年5月6日ころにインターネットでBの姓名を検索したところ、偶然、Bが平成22年9月20日に窃盗の容疑で逮捕されたことを報道する地方版のa新聞の記事(以下「本件記事」という。甲4)を見つけた(甲10)。
(8) 控訴人は、平成25年5月15日ころ、Bに対し、本件記事の内容の真偽を確認したところ、Bは、本件記事が自己に関する真実の内容であることを認め、現在、窃盗罪の裁判確定後の執行猶予期間中であることを告げた。
上記時点まで、控訴人及び被控訴人は、Bの窃盗に関する上記事実を知らなかった。
(9) 控訴人は、平成25年5月24日、Bを解雇し、同人に対して解雇予告手当として29万1954円を支払った(甲5、9、10)。
なお、Bは、控訴人との間で雇用契約を締結した平成24年12月14日から平成25年5月24日までの間、柔道整復師法4条3号に該当することを理由として8条1項に基づき柔道整復師の免許を取り消されることはなかった。
2 争点1(被控訴人に、柔道整復師法上の欠格事由の有無を調査、確認して欠格事由のない人材を紹介する義務の不履行があるか)について
(1) 柔道整復師法において、窃盗の前科は欠格事由に該当するものの(同法4条3号)、すでに柔道整復師の免許を付与された者が欠格事由に該当するに至ったとしても、その免許は直ちに取り消されるわけではなく(同法8条1項)、将来において取り消される可能性があるにとどまる。このように、窃盗の前科という柔道整復師法上の欠格事由が存在することがBの柔道整復師としての免許喪失に直結するものではなく、Bの柔道整復師としての免許が取り消されるか否かは将来予測にわたる性質を有する事項である。求職者が前科等の欠格事由を有する場合、当該求職者を採用するか否かに関しては、欠格事由を有する求職者の将来にわたる労働力をいかに予測し評価するかという、求職者の雇用政策に直接関わる問題であるから、雇用主である控訴人自らが第一次的に調査、判断すべき事項であるというべきである。
そして、前記1の認定事実によれば、本件職業紹介契約において、被控訴人は、控訴人から依頼された職位、職務条件等の人材求人情報に基づき、該当する候補人材を求め、適切と判断した人材を控訴人に紹介し(本件職業紹介契約2条1項)、控訴人は被控訴人が紹介した候補人材を自ら選考の上、適当と認めた場合には、求人条件等に基づき採用する(本件職業紹介契約3条)ことが合意されている。本件職業紹介契約では、控訴人が被控訴人から紹介された候補人材を採用するか否かを最終的に自ら判断することを前提として、職業紹介事業者である被控訴人において、控訴人が依頼した人材求人情報を踏まえ、それに客観的に該当する者ならば候補人材として控訴人に対して紹介することが予定されていたといえる。
以上からすれば、本件職業紹介契約においては、候補人材の欠格事由の有無について控訴人からの具体的な調査依頼がない以上、職業紹介事業者である被控訴人としては、候補人材を紹介するに当たって、控訴人から依頼された職位、職務条件等の人材求人情報に該当するか否かを調査、確認する義務を負うにとどまり、本件職業紹介契約に基づき候補人材の欠格事由の存否を調査、確認すべき義務を負うことはないというべきである。
(2) これに対し、控訴人は、採用段階で前科という欠格事由が判明していれば当該欠格事由を有する者を採用する雇用主はいないという社会通念が存在する以上、被控訴人は柔道整復師法に定められた欠格事由の有無を調査、確認して欠格事由のない人材を紹介する義務を負うと主張する。
確かに、雇用主は、人材の採用に当たって、その労働力を誤りなく評価し判断するために、それに必要な諸事項について関心を有しており、その一環として、前科の有無についてもその一資料として関心を払うことが多い。殊に、柔道整復師のように前科の存在そのものが法律上欠格事由として規定され労務遂行上の障害事情として問題となる場合には、前科の有無は職種との関連において当該人材の労働力評価に直接的な影響を与える重要な事項といえるから、雇用主にとっては、前科の存在は特に重要な関心事項の一つとなるということができる。
しかし他方で、前科を有する者の社会復帰実現のために、その雇用に積極的に取り組む民間の雇用主が現に存在し、また、そのような雇用主を支援する取組が社会全体として進められていることも当裁判所において顕著であり、前科という欠格事由の存在が免許喪失に直結しない柔道整復師の採否に関し、控訴人が主張するような、前科という欠格事由を有する者を採用する雇用主はいないという社会通念が存在するとはいえない。控訴人の上記主張は前提を欠き失当である。
(3) 本件では、控訴人は、本件記事を発見するまでは被控訴人に前科があるか否かについて関心を示していなかった。そして、控訴人は、本件職業紹介契約において、前科がないことを具体的に人材求人情報等に含めておらず、被控訴人に対して欠格事由の存否について調査することを依頼していなかった。
したがって、被控訴人は、本件職業紹介契約において、柔道整復師法上の欠格事由の有無を調査、確認して欠格事由のない人材を紹介する義務を負うとはいえない以上、被控訴人に上記義務の不履行は認められない。
3 争点2(被控訴人に、柔道整復師の資格を有する者のうち保険請求事務をする技能を有する人材を紹介する義務の不履行があるか)について
被控訴人は、本件職業紹介契約に基づき、控訴人から依頼された職位、職務条件等の人材求人情報に該当する候補人材を求め、適切と判断した人材を控訴人に紹介する義務を負うところ、上記1の認定事実のとおり、本件求人票には、「募集職種名」欄に「管理柔道整復師」、「望ましい経験・スキル」欄に「柔道整復師資格取得後3年及び施術経験3年を経過したもの。管理経験は無くても可。レセプト作成経験があれば尚可。」、「求人理由」に「新規開業整骨院での管理柔道整復師募集」との記載があることからすると、控訴人は、被控訴人に対し、保険請求事務を担当することを前提として人材の紹介を依頼したことが認められる。
もっとも、管理業務を行う柔道整復師が管理柔道整復師と通称されることはあるものの、柔道整復師法において柔道整復師という免許制度以外に管理柔道整復師という免許制度は規定されておらず、保険請求事務をするために管理柔道整復師という資格が必要なわけではないから、柔道整復師であれば誰でも保険請求事務を行うことができる。また、本件においては、本件求人票にレセプト作成経験があればより好ましい旨の記載があるにとどまり、レセプト作成経験を有することが必須であったわけでもない。このように保険請求事務の経験が全くなくともよいという採用条件が示されている以上、控訴人の被控訴人に対する柔道整復師の紹介依頼の具体的内容としては、柔道整復師の免許を有する者の紹介依頼にとどまり、保険請求事務をする技能があることは控訴人において採用を考慮する際の一要素にすぎないということができる。したがって、仮に結果的に保険請求事務が円滑に処理できないことがあったとしても、それは被控訴人の債務不履行を意味するものとはいえない。
以上によれば、被控訴人に控訴人主張の不履行は認められない。
4 結論
以上の次第であり、その余の争点について判断するまでもなく、控訴人の請求は理由がない。したがって、控訴人の請求を全部棄却した原判決は相当であり、本件控訴は理由がないこととなるから、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 佐久間健吉 裁判官 戸室壮太郞 裁判官 伊藤渉)
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