「営業アウトソーシング」に関する裁判例(99)平成21年 9月 7日 東京地裁 平20(ワ)13502号 株主権確認等請求事件
「営業アウトソーシング」に関する裁判例(99)平成21年 9月 7日 東京地裁 平20(ワ)13502号 株主権確認等請求事件
裁判年月日 平成21年 9月 7日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平20(ワ)13502号・平20(ワ)32691号
事件名 株主権確認等請求事件
裁判結果 第1事件請求棄却、第2事件認容 文献番号 2009WLJPCA09078002
要旨
◆第1事件原告兼第2事件被告(原告)と第1事件被告兼第2事件原告(被告T社)は、当時原告の子会社であった第1事件被告(被告F社)の株式を被告Tが原告から譲り受けるとともに、両社間で合弁契約を締結したが、相互に相手方の合弁契約に基づく債務の不履行を原因として合弁契約に基づき相手方保有の被告F社の株式につき買取権を行使した旨主張し、原告は被告T社に対し株主権確認及び被告F社に対し株主名簿の名義書換を求め、被告T社は原告に対し株主権確認及び被告F社に対する名義書換請求を行うことを求めるとともに、株式の売買契約の債務不履行に基づき損害賠償を求めた事案において、原告の買取権の行使は要件を欠くとして第1事件の請求を棄却し、原告に債務不履行を認め、被告T社の買取権行使を認める等し、第2事件の請求を全部認容した事例
参照条文
民法415条
民法555条
裁判年月日 平成21年 9月 7日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平20(ワ)13502号・平20(ワ)32691号
事件名 株主権確認等請求事件
裁判結果 第1事件請求棄却、第2事件認容 文献番号 2009WLJPCA09078002
平成20年(ワ)第13502号 株主権確認等請求事件(第1事件)
平成20年(ワ)第32691号 株主権確認等請求事件(第2事件)
東京都渋谷区〈以下省略〉
第1事件原告兼第2事件被告 株式会社シーウェイブマーケティング
代表者代表取締役 A
訴訟代理人弁護士 稲見友之
同 田邊勝己
同 片岡剛
同 寺島哲
同 里岡玲子
同 中川和寿
同 世利英之
訴訟復代理人弁護士 尾山祐介
東京都渋谷区〈以下省略〉
第1事件被告兼第2事件原告 トランス・コスモス株式会社
代表者代表取締役 B
東京都渋谷区〈以下省略〉
第1事件被告 トランスコスモスフィールドマーケティング株式会社
代表者代表取締役 D
上記2名訴訟代理人弁護士 吉峯啓晴
同 室伏美佳
同 高橋拓也
同 金舜植
同 大井倫太郎
同 木ノ切隆行
同 大河原啓充
同 中村栄治
同 朴鐘賢
主文
1 第1事件原告兼第2事件被告と第1事件被告兼第2事件原告との間において,第1事件被告兼第2事件原告が第1事件被告トランスコスモスフィールドマーケティング株式会社の普通株式につき2200株のほか,別紙株式目録記載の株式67株の株主であることを確認する。
2 第1事件原告兼第2事件被告は,第1事件被告トランスコスモスフィールドマーケティング株式会社に対し,別紙株式目録記載の普通株式67株の株式について,第1事件被告兼第2事件原告名義に名義書換請求をせよ。
3 第1事件原告兼第2事件被告は,第1事件被告兼第2事件原告に対し,1593万9999円を支払え。
4 第1事件原告兼第2事件被告の請求をいずれも棄却する。
5 訴訟費用は,第1事件原告兼第2事件被告の負担とする。
6 この判決は,第3項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 請求
1 第1事件
(1) 第1事件原告兼第2事件被告(以下「原告」という。)と第1事件被告兼第2事件原告(以下「被告トランス・コスモス」という。)との間において,原告が第1事件被告トランスコスモスフィールドマーケティング株式会社(以下「被告トランスコスモスフィールドマーケティング」という。)の普通株式67株のほか普通株式133株の株主であることを確認する。
(2) 被告トランスコスモスフィールドマーケティングは,原告に対し,普通株式133株の株式について原告名義に名義書換手続をせよ。
2 第2事件
主文1項から3項までと同旨
第2 事案の概要
原告と被告トランス・コスモスは,当時原告の子会社であった被告トランスコスモスフィールドマーケティングの株式を被告トランス・コスモスが原告から譲り受けるとともに,両社間で合弁契約を締結したが,相互に相手方の合弁契約に基づく債務の不履行を原因として合弁契約に基づき相手方保有の被告トランスコスモスフィールドマーケティングの株式につき買取権を行使した旨主張して,原告は被告トランス・コスモスに対し株主権確認及び被告トランスコスモスフィールドマーケティングに対し株主名簿の名義書換を求め(第1事件),被告トランス・コスモスは原告に対し株主権確認及び被告トランスコスモスフィールドマーケティングに対する名義書換請求を行うことを求めるとともに,株式の売買契約の債務不履行に基づく損害賠償を求めた(第2事件)事案である。
1 前提となる事実(証拠等により認定した事実は当該証拠等を文末に掲記し,当事者間に争いがない事実は証拠等を掲記しない。)
(1) 当事者等
ア 原告は,市場調査,広告,宣伝に関する業務及び広告代理店業を主な業務とする会社である。
イ 被告トランス・コスモスは,コールセンターの業務請負などを主な業務とする会社である。
ウ 被告トランスコスモスフィールドマーケティングは,労働者派遣事業などを主な業務とする会社である(乙2)。
なお,平成19年9月13日に現在の商号に変更したが,それまでは,株式会社aプロモーションという商号を使用していた(乙2)。
(2) 本件合弁契約
原告と被告トランス・コスモスは,平成19年9月12日,次の内容を含む合弁契約を締結した(甲1,以下「本件合弁契約」という。)
第1条(本契約書の目的)
本契約書締結の目的は,次のとおりとする。
1)原告の持つ顧客に対する販売支援業務と,被告トランス・コスモスの持つ営業力等のノウハウを融合させ,セールス・アウトソーシング事業を被告トランスコスモスフィールドマーケティングに遂行させること。
2)被告トランスコスモスフィールドマーケティングのセールス・アウトソーシング市場の拡大を図るとともに,市場における地位をより強固なものとすること。
第5条(当事者の保証および役割)
1 原告及び被告トランスコスモスフィールドマーケティングは,連帯して,被告トランス・コスモスに対し,以下の事項が真実であることを表明し,保証する。
⑦ 被告トランスコスモスフィールドマーケティングの平成19年6月30日時点の財務諸表が適正かつ正確であること。
⑧ 被告トランス・コスモスが被告トランスコスモスフィールドマーケティングから受領した決算書類及び直近の月次決算書(貸借対照表),損益計算書,資金繰り予定・実績表は,法令及び定款に適合して,一般に公正かつ妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成され,被告トランスコスモスフィールドマーケティングの財務状態に重大かつ有害な影響を及ぼすおそれのある債務,出資責任又は支払義務を負担していないこと。また,被告トランスコスモスフィールドマーケティングの経営,財政状態,経営成績,信用状況等に重要な悪影響を及ぼすべき後発事象が発生しないこと。
第9条(株式の譲渡)
2 原告と被告トランス・コスモス間で別途書面による合意がある場合を除き,自らの保有する被告トランスコスモスフィールドマーケティングの株式への質権等の担保権の設定又は移転はできない。
第12条(違反事項等)
次の違反事項のいずれかに該当した場合は,相手方当事者は,以下の対応を行う権利を有し,違反当事者はこれに応じるものとする。なお,本条の規定は,損害賠償請求を妨げるものではない。
《違反事項》
1)本契約書上の違反を犯し,催告にもかかわらず30日以内に当該違反を是正しない場合,又は当該違反が是正不可能であることが明らかな場合。
4)本件株式譲渡(後記(3))に際して,故意に虚偽の記載のある情報を被告トランス・コスモスに交付し,又は,事実に反する情報を提供したことが判明した場合
《対応》
2)違反当事者が保有する被告トランスコスモスフィールドマーケティング株式の全部または一部を,被告トランスコスモスフィールドマーケティングの純資産額を発行済株式総数で除して算出される一株あたりの価格の50%にて買い取ること。
第15条(競合禁止)
原告は,本契約書の契約期間中,人材派遣事業,被告トランスコスモスフィールドマーケティングの事業,その他本契約書第1条に定める本契約書の目的と競合する事業を直接にまたは第三者を通して間接にも運営してはならないものとする。
(3) 原告は,平成19年9月12日,被告トランス・コスモスに対し,原告保有の被告トランスコスモスフィールドマーケティングの普通株式200株のうち133株を3990万円で売却した(以下「本件株式売買契約」という。)。なお,被告トランス・コスモスは,平成20年5月以降被告トランスコスモスフィールドマーケティングの普通株式2067株を取得した(乙2,弁論の全趣旨)。
(4) 本件株式売買契約において,原告は,被告トランス・コスモスとの間で,次の内容の合意をした(甲2・3条)。
ア 原告は,被告トランスコスモスフィールドマーケティングの人員が,正社員10名,派遣社員(週4日以上勤務者)80名及び短期派遣社員(週3日以下勤務者)46名以上であることを保証する。
イ 原告は,被告トランスコスモスフィールドマーケティングが上記人員規模を満たさなかった場合,不足する人員数1名当たりにつき,次の減額単価を乗じた金額を本件株式売買契約の譲渡対価から減額する。また,この規定は,譲渡日から3か月後について改めて当事者において被告トランスコスモスフィールドマーケティングの人員規模を確認のうえ,満たされない場合は,同様に減額する。
正社員 減額単価107万円
派遣社員 同20万円
短期派遣社員 同10万円
(5) 平成20年4月21日当時,被告トランスコスモスフィールドマーケティングは債務超過であり,その純資産額は0円であった(乙15)。
(6) 被告トランス・コスモスは,平成20年4月21日,原告に対し,原告は本件合弁契約に違反して,①本件合弁契約締結前に被告トランスコスモスフィールドマーケティングには負債がないと表明していたのに社会保険料の未納があること,②被告トランス・コスモスに無断で被告トランスコスモスフィールドマーケティングの株式に担保権を設定して第三者から2000万円を借り入れたこと,③原告の業務遂行のために被告トランスコスモスフィールドマーケティングの派遣社員を流用したことを根拠に,原告が保有する被告トランスコスモスフィールドマーケティングの株式全株をその純資産額を発行済株式総数で除して算出される1株当たりの価格の50%より高い1円で買い取る旨意思表示をするとともに,②につき速やかに是正するよう催告した(甲3)。
(7) 原告は,被告トランス・コスモスに対し,平成20年5月19日,被告トランス・コスモスは本件合弁契約1条に違反しているとして,被告トランス・コスモスの保有する被告トランスコスモスフィールドマーケティングの株式全株を備忘価格である1円にて買い取る権利を行使する旨意思表示をした(甲9)。
2 争点及び争点についての当事者の主張
(1) 第1事件について
ア 被告トランス・コスモスは,本件合弁契約1条に違反したか。
(原告)
被告トランス・コスモスは,原告に対し,①日経リサーチのリサーチ業務,②KDDIの法人向け携帯電話機加入代行業務,③EPSONの販売員派遣等の業務,④NTT Bフレッツ販売業務,④ヒューレッドパッカードの販売員の人員配置の業務及び⑤USENの加入勧誘業務について,大規模な発注があるとしてその都度その業務に対応する体制を作らせたが,実際には小規模な業務しか発注せず,結局原告の業務実績の向上に効果がある行為はしなかった。また,被告トランス・コスモスは,平成19年11月以降,原告の業務と関係ない被告トランスコスモスフィールドマーケティングの仕事に原告の従業員を従事させ,原告の主業務における売上げ及び利益は減少した。このような被告トランス・コスモスの行為は,原告をないがしろにして,自社のみの利益を追求し,本件合弁契約に基づく事業提携スキームに則ってその目的を遂行しなかったものであり,本件合弁契約1条違反というべきである。
(被告ら)
いずれも否認する。
なお,被告トランス・コスモスは,原告に対して大規模な協業事業を発注することを約束したことはなく,見積もりを依頼したに過ぎず,原告の見積もりが他社のものより高かったため,発注に至らなかった。
イ 原告は,被告トランス・コスモスに対し,本件合弁契約12条に基づく催告を行ったか。
(原告)
原告は,平成19年10月から12月上旬ころ,被告トランス・コスモスに対し,本件合弁契約に違反する行為を是正するよう催告した。
(被告ら)
否認する。
(2) 第2事件について
ア 原告は,本件合弁契約に違反したか。
(被告ら)
(ア) 被告トランスコスモス・フィールドマーケティングは,社会保険料160万6645円を未納であった(5条違反)。
(イ) 原告は,被告トランス・コスモスに無断で,被告トランスコスモス・フィールドマーケティングの株式に担保権を設定して第三者より2000万円を借り入れた(9条違反)。
(ウ) 原告は,その業務遂行のために,被告トランスコスモス・フィールドマーケティングの派遣社員を流用した(15条違反)。
(原告)
いずれも否認する。
なお,原告の業務のために被告トランスコスモスフィールドマーケティングの人員を使用したのではなく,その逆であり,かつ,人員配置はすべて被告トランス・コスモスのE(以下「E」という。)の指示である。
イ 被告トランスコスモスフィールドマーケティングの人員数は,本件株式売買契約3条に違反していたか。
(被告ら)
被告トランスコスモスフィールドマーケティングの人員は,本件株式売買契約3条の規定に比べ,本件株式売買契約締結時において,正社員1名及び派遣社員37名が不足し,3か月経過時である同年12月11日の時点で正社員1名及び派遣社員32名が不足していた。
(原告)
否認する。原告は,Eから,本件合弁契約締結時の転籍人数の改ざん,従業員の勤務状況の偽装工作について指示を受けて行ったものであるし,人員配置等は,すべて被告トランス・コスモスの指示によるものである。
第3 判断
1 争点(1)イ(原告による催告)について
原告は,被告トランス・コスモスが本件合弁契約に違反する行為をしたため,平成20年5月19日,本件合弁契約12条に基づき被告トランス・コスモスが保有していた被告トランスコスモスフィールドマーケティングの株式133株について買取権を行使した旨主張する。しかし,本件合弁契約には,12条に基づく買取権行使の要件として,「相手方が本契約書上の違反を犯し,催告にもかかわらず30日以内に当該違反を是正しない場合,又は当該違反が是正不可能であることが明らかな場合」と規定されている(前記前提となる事実(2))ところ,原告が被告トランス・コスモスに対し違反行為を是正するよう催告をした事実を認めるに足りる証拠はなく,また,原告の主張する被告トランス・コスモスの違反行為がその性質上是正不可能であることが明らかであるともいえない。したがって,原告の上記買取権の行使は要件を欠くものであって,その効果の発生を認めることはできない。
したがって,争点(1)ア(被告トランス・コスモスによる本件合弁契約違反)について判断するまでもなく,被告トランス・コスモスの有していた被告トランスコスモスフィールドマーケティングの株式133株の所有権が原告に移転したとはいえない。また,これを前提とする株式の名義書換請求も理由がない。
2 争点(2)ア(原告の本件合弁契約違反)について
(1) 同(ア)(社会保険料)について
ア 証拠(乙7,乙8,乙24,乙25,乙31)及び弁論の全趣旨(原告は,第2事件の訴状の送達を受けてから4か月以上経過した後に提出した答弁書において「社会保険料の未払いはない。」と主張するのみで,港社会保険事務所からの納入告知書(乙7,乙8)やこの件に関する原告側と被告トランス・コスモス側との間のメール(乙24,乙25)についてさえ何ら具体的な反論をしない。)によれば,本件合弁契約締結に当たり,原告から被告トランス・コスモスに対し,平成19年8月分の社会保険料の支払義務があること(本件合弁契約締結時点で未納であること)は伝えられていなかったこと,港社会保険事務所から,同年11月15日,同年8月分の社会保険料として合計157万4645円の納入告知書が,同年12月14日,同年8月分として合計3万2000円の延滞金の納入告知書が,被告トランスコスモスフィールドマーケティングの経理業務を代行していた被告トランス・コスモスに届き,被告トランス・コスモスがこれらを立て替えて支払ったこと,原告においても当然原告が負担すべきものであると認識し,本件合弁契約時の純資産の金額にも影響があることを懸念する旨被告トランス・コスモス側に伝えていたことが認められる。
イ 原告作成の被告トランスコスモスフィールドマーケティングの平成19年7月及び8月の試算表(乙4)には,未払法人税等として約7万円が計上されているに過ぎないこと,被告トランスコスモスフィールドマーケティングの同年8月末における経常利益は約72万円と見込まれていたこと(乙4),同年7月から平成20年3月31日までの間の経常利益は約28万円に過ぎないこと(乙15),原告は上記ア認定の社会保険料の支払義務の存在が本件合弁契約5条(前記前提となる事実(2))に該当するかどうかについて何ら反論していないことに照らすと,上記ア認定の社会保険料合計160万6645円の支払義務はその財務状態に重大かつ有害な影響を及ぼすものということができる。
(2) 以上によれば,争点(2)アのその余の点については判断するまでもなく,原告は,本件合弁契約5条に違反したということができる。
3 被告トランス・コスモスによる被告トランスコスモスフィールドマーケティングの株式67株の買取権行使について
(1) 上記1認定の原告の本件合弁契約5条違反の行為は,原告が被告トランス・コスモスにその存在を伝えていなかった支払義務が存在したものであって,支払義務の存在自体が違反であるといえるから,当該違反行為はその性質上,是正不可能ということができる。
(2) 被告トランス・コスモスは,平成20年4月21日,原告に対し,本件合弁契約12条により原告の有する被告トランスコスモスフィールドマーケティングの株式67株を1円で買い取る旨意思表示をした(前記前提となる事実(6))から,上記67株の所有権は被告トランス・コスモスに移転したということができる。なお,被告トランスコスモスフィールドマーケティングは同日時点では債務超過であり,その純資産額は0円であったこと(前記前提となる事実(5)),原告も被告トランス・コスモスに対する買取権行使に関し被告トランスコスモスフィールドマーケティングの株式133株全部を1円で買い取る旨通知したこと(前記前提となる事実(9))に照らすと,被告トランスコスモスフィールドマーケティングの株式の価値はないということができ,1円という上記価格は,本件合弁契約12条の定める買取価格を満たすものといえる。
(3) 以上によれば,原告は,上記67株について,被告トランス・コスモスとともに,被告トランスコスモスフィールドマーケティングに対して,被告トランス・コスモス名義に名義書換を請求する義務を負うことになる。
4 争点(2)イ(本件売買契約3条違反)について
(1) 原告は,本件売買契約において,被告トランス・コスモスに対し,被告トランスコスモスフィールドマーケティングの人員が,本件売買契約締結日である平成19年9月12日及びその3か月後において,それぞれ正社員10名,派遣社員(週4日以上勤務者)80名及び短期派遣社員(週3日以下勤務者)46名以上であることを保証する旨約した(前記前提となる事実(4))。ところが,証拠(乙13)及び弁論の全趣旨によれば,被告トランスコスモスフィールドマーケティングの正社員は,平成19年9月12日時点及び同年12月11日時点でそれぞれ9名であったこと,週4日以上勤務の派遣社員は,同年9月12日には43名及び同年12月11日時点では48名であったことが認められる。
原告は,人員配置等はすべて被告トランス・コスモスの本件合弁契約の交渉等の担当者であったEの指示によるものである旨主張するが,乙第13号証に対する反論や,Eのどのような指示によって不足するに至ったのかについて具体的な主張を全く行わないから,原告の上記主張は採用できない。
(2) そうすると,原告は,本件売買契約に基づき,不足する正社員1人につき107万円,派遣社員(週4日以上勤務者)につき20万円を本件売買契約の代金から減額する義務を負う(前記前提となる事実(4))。すなわち,平成19年9月12日時点における正社員1名分107万円及び派遣社員37名分740万円の合計847万円並びに同年12月11日時点における正社員1名分107万円及び派遣社員32名分640万円の合計747万円,総合計1594万円を被告トランス・コスモスに対し,本件売買契約の代金から減額しなければならず,本件売買契約の代金を既に受領している(弁論の全趣旨)から,1594万円を支払う必要があるということになる。
(3) 被告トランス・コスモスは,平成20年9月22日,原告に対し,上記3の株式買取権行使の代金合計1円と上記1594万円とを対当額で相殺するとの意思表示をした(乙16の1,2)から,結局,被告トランス・コスモスは,原告に対し,1593万9999円の支払を求めることができる。
第4 結論
以上によれば,被告トランス・コスモスの原告に対する第2事件の請求にはいずれも理由があるからこれらを認容し,原告の被告らに対する第1事件の請求にはいずれも理由がないからこれらを棄却し,訴訟費用の負担につき民訴法61条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 森純子)
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