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「営業 外部委託」に関する裁判例(8)平成30年 9月28日 東京地裁 平29(行ウ)15号 不当労働行為救済命令取消請求事件

「営業 外部委託」に関する裁判例(8)平成30年 9月28日 東京地裁 平29(行ウ)15号 不当労働行為救済命令取消請求事件

裁判年月日  平成30年 9月28日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平29(行ウ)15号・平29(行ウ)137号
事件名  不当労働行為救済命令取消請求事件
文献番号  2018WLJPCA09286007

裁判年月日  平成30年 9月28日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平29(行ウ)15号・平29(行ウ)137号
事件名  不当労働行為救済命令取消請求事件
文献番号  2018WLJPCA09286007

平成29年(行ウ)第15号 不当労働行為救済命令取消請求事件(第1事件)
平成29年(行ウ)第137号 不当労働行為救済命令取消請求事件(第2事件)

東京都渋谷区〈以下省略〉
第1事件原告・第2事件参加人 X1協会(以下「原告協会」という。)
同代表者会長 A
同訴訟代理人弁護士 B
同 C
同 D
同 E
東京都渋谷区〈以下省略〉
第1事件参加人・第2事件原告 X2労働組合(以下「原告組合」という。)
同代表者中央執行委員長 F
同訴訟代理人弁護士 G
同 H
東京都千代田区〈以下省略〉
被告 国
同代表者法務大臣 I
処分行政庁 中央労働委員会
同代表者会長 J
被告指定代理人 W1
同 W2
同 W3
同 W4
同 W5

 

 

主文

1  原告協会及び原告組合の請求をいずれも棄却する。
2  訴訟費用は,第1事件及び第2事件を通じ,参加によるものも含めてこれを2分し,その1を原告協会の負担とし,その余を原告組合の負担とする。

 

事実及び理由

第1  請求
1  第1事件
中央労働委員会が平成27年(不再)第42号事件について平成28年11月16日付けでした命令を取り消す。
2  第2事件
中央労働委員会が平成27年(不再)第46号事件について平成28年11月16日付けでした命令を取り消す。
第2  事案の概要
1  事案の要旨
(1)  原告組合は原告協会との間で委託契約を締結して放送受信契約(以下「受信契約」という。)の締結や放送受信料(以下「受信料」という。)の収納等の業務に従事する地域スタッフ(以下「地域スタッフ」という。)により組織される団体であるところ,原告組合が申し立てた原告協会に係る不当労働行為救済命令の申立て(平成23年(不)第102号,以下「本件申立て」という。)について,東京都労働委員会(以下「都労委」という。)は,原告組合の申し立てた原告協会による不当労働行為の一部を認め,これに対する救済を命じるとともに,その余の申立てを却下ないし棄却する内容の命令(以下「初審命令」という。)をした。そこで,原告協会及び原告組合の双方が初審命令について再審査の申立て(平成27年(不再)第42号,同第46号)をしたところ,中央労働委員会(以下「中労委」という。)は,各申立てを併合して審査した上,いずれも棄却する旨の命令(以下「本件命令」という。)をした。
(2)  第1事件は,原告協会が国に対して中労委が同原告に対してした再審査の申立てを棄却する旨の命令の取消しを求める事案であり,第2事件は,原告組合が国に対して中労委が同原告に対してした再審査の申立てを棄却する旨の命令の取消しを求める事案である。
2  前提事実(顕著な事実及び当事者(参加人を含む〔以下同様〕。)間に争いのない事実のほか後掲証拠(特記しない限り枝番を全て含み,後記認定に抵触する部分を除き,本件命令の命令書(甲2)における事実認定部分のうち,原告協会及び原告組合の双方が認めている事実に関する甲2以外の書証については必要な範囲で掲記する〔以下同様〕。)及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)
(1)  当事者等
ア 原告協会は,国内基幹放送を行うことなどを目的として放送法に基づき設立された特殊法人であり,放送法の規定に基づき,収支予算・事業計画を策定して総務大臣に提出し,国会の承認を経て事業を展開している。原告協会は,その事業収入のほとんどを受信料収入に依存しており,受信契約の締結及び受信契約者の転入に伴う住所変更手続(以下「契約取次」という。)や未払受信料の収納(以下「収納」という。)等を進める拠点として,全国で75か所(平成25年2月6日現在)の放送支局,放送局営業部及び放送局営業センター(以下「営業センター等」という。)を設置している。a営業センター(旧称:a1営業所。以下「本件センター」という。)もその一つであり,K(以下「Kセンター長」という。)は,平成22年6月11日,そのセンター長として着任した。(甲2〔19,38頁〕)
イ 地域スタッフは,原告協会との間で委託契約を締結し,営業センター等に所属して,契約取次や収納等の業務に従事している。平成22年10月以降の地域スタッフ体制下では,地域スタッフの委託種別は,「契約開発」,「支払再開」,「地域管理」又は「総合」のいずれかとされている。また,地域スタッフに対して支給される事務費及び給付のあらまし(平成23年度版の「事務費・給付のあらまし」による〔以下同様〕。)は別紙1のとおりである。なお,○○メイトとは,未振込・振込不能者への収納・口座取次業務に従事する個人受託者であり,原告協会の規則上,70歳以上の者は契約できないこととされている(甲2〔19,21頁〕,乙A3,4,B5,6,49,C5〔8,40頁〕)。
ウ 本件センターには,平成25年2月2日時点で職員15名(センター長1名,副部長3名,統括主任3名及び一般職8名),契約社員9名及び地域スタッフ62名が所属し,「開発・育成チーム」,「開発・推進チーム」及び「支払・再開チーム」のいずれかのチーム(以下「チーム」という。)に所属していた。各チームは,総括主任1名,一般職3,4名,契約社員約3名及び地域スタッフにより構成され,各チームの中に一般職の人数と同じジョイント・グループ(以下「JG」という。)があった。(甲2〔19,20頁〕)
エ 原告組合は,地域スタッフたる組合員により組織され,組合員の団結の力により,労働条件を改善し,労働者の権利を守ることなどを目的とする団体であり,元々b労働組合(以下「b労」という。)に所属していた地域スタッフらにより昭和57年8月25日付けで結成された。L(以下「L元中央書記長」という。)は,昭和49年10月から昭和51年9月までb労の中央常任執行委員を務めていたが,b労を脱退して原告組合の結成に参加し,その結成当初から平成21年9月まで中央書記長を務め,同月から平成24年9月まで中央執行委員長を務めた後,特別執行委員に就任した。原告組合は,cセンター内に中央本部(以下「中央本部」という。)を置くほか,全国各地に約20の支部を置いている。支部は,原告組合の規約上,その相当地域で団体交渉その他の団体行動を行う単位となり,規約及び中央本部の各機関の決議に反しない限り,その行動と業務遂行に自主性が認められるなどと定められている。なお,平成26年第4四半期時点において,原告組合と同様に地域スタッフたる組合員により組織される団体(以下「受託者組合」という。)は,昭和49年10月31日に設立され,全地域スタッフの過半数が加入するb労を始めとして10以上が存在していた。d支部(以下「本件支部」という。)は,平成21年11月1日に結成された本件センター所属の地域スタッフで組織される原告組合の支部組織である。(甲2〔18頁〕,乙B59,70C9〔35頁〕)
オ M(以下「M副委員長」という。)は,昭和15年○月生まれであり,昭和56年4月,原告協会との間で委託契約を締結し,その後も同契約の更新を継続し,平成23年11月に同契約を合意解約するまで,本件センター及びe営業センターにおいて地域スタッフとしての業務を行っていた。M副委員長は,昭和56年8月にb労に加入したが,平成21年10月にb労を脱退して本件支部の結成に参加し,平成23年11月に委託契約を解消するまで本件支部の副執行委員長を務めていた。(甲2〔19,43頁〕,乙A10,13,C1〔4,18頁〕)
(2)  本件の経緯等
ア 中央本部は,平成23年2月22日の事務折衝において,原告協会本部・視聴者総局・営業局・委託推進部(以下「委託推進部」という。)に対し,70歳以上の地域スタッフは契約更新できないという誤った内容の発言をKセンター長がしたのでこれを是正するよう申し入れた。これを契機として,同年4月8日,同月14日,同月27日及び同年5月20日の4回にわたる中央交渉(中央本部と委託推進部との間で行われる団体交渉(以下「団交」という。)を指す〔以下同様〕。)が実施された。同交渉には,原告組合からは,N中央書記長(以下「N中央書記長」という。),O中央執行委員(以下「O中央執行委員」という。)及び本件支部の執行委員長をも務めるP中央執行委員(以下「P委員長」という。)らが出席し,原告協会からは,委託推進部のQ担当部長(以下「Q担当部長」という。)らが出席した。(甲2〔43,44頁〕,36,乙B7)
イ 本件支部は,平成23年6月13日付けで,本件センターに対し,Kセンター長の発言(内容)を交渉事項(以下「本件交渉事項」という。)とし,中央執行委員(原告組合の中央執行委員会の構成員たる中央役員を指し,中央(副)執行委員長,中央書記(次)長及び中央(常任)執行委員を含む(乙A69の規約27条,45条参照)〔以下同様〕。)4名及び支部執行委員5名を出席者として,同月21日に支部交渉(原告組合の支部と原告協会の営業センター等との間で行われる団交を指す〔以下同様〕。)を申し入れた。これに対し,原告協会は,原告組合に対し,本件交渉事項に係る支部団交について,中央執行委員は出席しないよう求め,結局,同日の支部交渉は実施されなかった。本件支部は,平成23年7月1日,本件センターに対し,本件交渉事項等について,新年度執行委員を出席者として,同月12日に支部交渉を申し入れ,同月11日の定期大会において,R中央副執行委員長(以下「R中央副委員長」という。),N中央書記長及びO中央執行委員について,本件支部の特別執行委員(以下「特別執行委員」という。)に選出した。同月12日に支部交渉は実施されたものの,原告協会は,原告組合に対し,本件交渉事項に係る支部団交について,中央執行委員は出席しないよう求めたことから,結局,本件交渉事項に関する交渉は,原告組合の中央執行委員兼特別執行委員の同席無しで実施された。(甲2〔44~48頁〕,乙A8~10,63)
(3)  本訴提起に至る経緯等(甲1,2,14)
ア 原告組合は,平成23年11月11日,都労委に本件申立てをしたところ,その申立てに係る原告協会による不当労働行為の概要は次の(ア)ないし(ウ)のとおりである。
(ア) Kセンター長は,M副委員長に対し,次のaないしcの発言(以下「本件各発言」という。)をしたところ,これらは原告組合の運営に対する支配介入(労働組合法(以下「労組法」という。)7条3号)に該当する。
a 平成22年6月21日の発言(本件支部のS書記長(以下「S書記長」という。)について,「S君も,あんなところで書記長をやっていてどうするんだろう。」という類の発言をしたもの,以下「本件S君発言」という。)
b 同年11月1日の発言(M副委員長について,「70歳以上は,委託契約の更新ができません。あっちこっち骨を折ったけど,70歳を過ぎているから,○○メイトの仕事もできません。」という類の発言をしたもの,以下「本件70歳定年発言」という。))
c 平成23年1月21日の発言(S書記長及び本件支部所属の原告組合の組合員であるT(以下「T組合員」という。)について,「新しい会社が近いうちにできるけど,あんなところにおっては,S君もT君も推薦できないよ。」という類の発言をしたもの,以下「本件新会社発言」という。)。
(イ) 原告協会は,平成23年4月27日の中央団交及び同年7月12日の支部団交において,本件各発言があったことを否定し,虚偽の回答を繰り返した(以下「本件不誠実団交」という。)ところ,このような原告協会の態度は不誠実団交(労組法7条2号)に該当する。
(ウ) 原告協会は,平成23年6月13日付けの団交申入れに対し,中央執行委員の出席を理由としてこれを拒否し,同年7月12日に開催された団交において中央執行委員の出席を拒否した(以下,これらの原告協会の対応を「本件出席拒否」という。)ところ,このような支部交渉への中央執行委員の出席拒否は,正当な理由のない団交拒否(労組法7条2号)に該当する。
イ 本件申立てにおいて原告組合が請求した救済内容の要旨は次のとおりである。
(ア) 組合員に対し,「委託契約を更新する時に70歳以上になっている受託者は,契約更新できない。」などと告げて辞表提出を要求し,原告組合の弱体化を図ったり,組合員を不利益取扱いしたりしないこと。
(イ) 組合員に対し,原告組合の弱体化を図って,「S君も,あんなところで書記長をやっていてどうするんだろう。」,「新しい会社が近いうちにできるけど,あんなところにおっては,S君もT君も推薦できないよ。」などと発言しないこと。
(ウ) 団交において,Kセンター長の本件各発言を否定するなどして虚偽の回答をせず,誠実に団交に応ずること。
(エ) 原告協会の放送局支局,同営業部,同営業センターが原告組合の支部と行う団交について,原告組合の中央執行委員の出席を拒否しないこと。
(オ) 誓約書の交付及び掲示
ウ 都労委は,本件申立てについて,平成27年8月25日,次の要旨の初審命令を発令した。
(ア) 本件出席拒否に係る申立てについて,正当な理由のない団交拒否(労組法7条2号)に該当することから,原告協会に対し,①今後,原告組合が申し入れる支部団交について,原告組合の中央執行委員の出席を理由として拒否しないこと,②初審命令に係る命令書受領の日から1週間以内に文書(本件出席拒否が,いずれも都労委において不当労働行為であると認定されたこと及び再発防止に留意する旨を記載したもの)を原告組合に交付するとともに,同一内容の文書をaセンターの従業員の見やすい場所に10日間掲示すること,及び③上記②を履行したときは,速やかに都労委に文書で報告することを命じる。
(イ) 本件S君発言及び本件70歳定年発言に係る申立てについて,行為の日(継続する行為にあってはその終了した日)から1年を経過した事件に係るものであること(労組法27条2号及び労働委員会規則33条1項3号)から,これを却下する。
(ウ) 本件新会社発言及び本件不誠実団交に係る申立てについて,不当労働行為の存在を認定できないことから,これを棄却する。
エ 原告協会は,初審命令のうち救済命令を命じた部分(上記ウ(ア))の取消し及び同部分に係る申立ての棄却を求め,中労委に再審査の申立て(平成27年(不再)第42号)をした。原告組合は,初審命令のうち本件申立てを却下ないし棄却した部分(上記ウ(イ),(ウ))の取消し及び上記イ(上記イ(エ)及びこれに係る同(オ)の部分を除く。)の内容の救済を求め,中労委に対し,再審査の申立て(同第46号)をした。中労委は,これらの申立てを併合審理した上,平成28年11月16日,いずれも棄却する旨の命令(本件命令)をした。
オ 原告協会は,平成29年1月10日に第1事件を提起し,原告組合は,同年3月31日に第2事件を提起して,それぞれ本件命令の取消しを求めた。当裁判所は,両事件の弁論を併合した上,行政事件訴訟法22条に基づき,原告組合の申立てにより同原告を第1事件に参加させ,原告協会の申立てにより同原告を第2事件に参加させた。
第3  争点及び争点に関する当事者の主張
本件の争点は初審命令を維持した本件命令の違法の有無であり,具体的には,①地域スタッフの労組法上の労働者性,②本件S君発言等に係る申立ての期間徒過の有無,③本件各発言及び本件不誠実団交の不当労働行為該当性,④支部交渉の出席者は,原則として支部メンバーに限ることなどを内容とする交渉ルール(以下「本件交渉ルール」という。)の適用の可否,⑤本件出席拒否の不当労働行為該当性の5点が問題となるところ,これに関する当事者の主張は次のとおりである。
1  争点1(地域スタッフの労組法上の労働者性)
(1)  被告の主張
ア 判断枠組みについて
(ア) 労組法3条が労組法上の労働者について労働契約下の労働者を想定した上で「これに準ずる収入によって生活する者」にまでその定義を拡げたのは,請負や委任等の労働類似の契約により賃金に準ずる報酬を得る者であっても,労組法による保護を及ぼす必要性と適切性が認められれば労組法上の労働者と認める趣旨であると解され,労働基準法(以下「労基法」という。)や労働契約法(以下「労契法」という。)上の労働者と区別されるべきことは明らかである。
(イ) そして,労組法上の労働者に該当するか否かについては,①事業組織への組込み(労務供給者が相手方の業務遂行に不可欠ないし枢要な労働力として相手方の組織内に確保されており,労働力の利用をめぐり団交によって問題を解決すべき関係があること),②契約内容の一方的・定型的決定(相手方に対して労務供給者側に団交法制による保護を保障すべき格差があること),③報酬の労務対価性(労務供給者が自らの労働力を提供して報酬を得ていること)を中心的な考慮要素とし,さらに,④業務の依頼に応ずべき関係,⑤労務供給に係る拘束や指揮監督を補助的考慮要素とし,⑥顕著な事業者性を消極的考慮要素として,労組法の保護を及ぼすことが必要かつ適切と認められるか否かを総合的に検討して判断すべきものと解される。
イ 事業組織への組込みについて
原告協会が,全国に営業部署を配置した上,地域スタッフの担当する区域の設定,目標数の設定,業務計画表の作成等により組織的に地域スタッフに業務を配分しているという事情を考慮すると,地域スタッフとの委託契約は,受信料を基本に運営されている原告協会の事業の遂行に必要な労働力を確保する目的で締結されているものといえる。また,地域スタッフの委託種別の区分,受持区域の設定・変更やチーム・JGの設定,業務遂行過程にわたる指導,目標達成のための強い働きかけ等の事情(後記カ)に照らせば,原告協会は地位スタッフを集団的に管理しているものといえる。そして,地域スタッフの契約期間や餞別金の制度の内容,地域スタッフが原告の事業活動全体の中で占める規模に照らせば,地域スタッフは,原告協会の事業活動において量的にも不可欠な労働力として機能しているものといえる。このように,原告協会は,地域スタッフから継続して労務供給を受けられる仕組みを構築し,地域スタッフは,原告協会から独立した立場で断続的に業務委託を受けるのではなく,むしろ,その事業活動に不可欠な労働力として恒常的に労務供給を行っているものであるから,原告協会の事業組織に組み込まれていると評価できることは明らかである。
ウ 契約内容の一方的・定型的決定について
地域スタッフの委託契約書の様式は,委託種別や受持区域等を除く大部分が定型のものであり,報酬や特別指導の措置についても全国統一の基準が設定されている。したがって,地域スタッフの契約内容の大部分について,地域スタッフが原告協会との対等な立場での個別交渉により合意しているものではなく,原告協会により一方的かつ定型的に決定されていることは明らかである。
エ 報酬の労務対価性について
地域スタッフの月額事務費の基本運営額については,出来高制を基調としつつも,事業達成のリスクを緩和するとともに,訪問による労務の供給を促し,報酬を生活保障に資する額に近づける基本給的な性格が加えられたものといえる。また,報奨金は業務遂行過程上の問題を踏まえて調整する面のある報酬であり,慶弔金,見舞金及び餞別金等の給付は,ある程度の専属性をもって労務を継続的に供給する人材を確保するための制度である。したがって,地域スタッフの報酬は労務供給の対価に類似する面を有しているものといえる。
オ 業務依頼に応ずべき関係について
原告協会が,地域スタッフに対し,目標数を記載した業務計画表の提出を求め,進捗状況を把握した上,その達成に向けて助言・指導を行っており,取り分け業務遂行過程に係る特別指導や「一斉デー」(「口座一斉デー」(口座取次を重点目標として定めた日),「BSデー」(地上契約から衛星契約への契約種別変更取次を重点目標として定めた日)等の重点目標を定めた日)においては,労働契約下における営業成績の管理方法と遜色のない強い働きかけがされている実態があり,地域スタッフが原告協会からの業務依頼に応ずべき関係についても,労働契約下と同様の面があるといえる。
カ 労務供給に係る拘束・指揮監督について
「新たな地域スタッフ業務マニュアル」(以下「マニュアル」という。)等の設定・交付,ナビタン(受信契約者の契約内容等の顧客情報がダウンロードされた業務用携帯端末機)による稼働時間の把握,目標数達成に向けた指導の実態等に照らせば,原告協会は,地域スタッフについて,チームや受持区域のローテーション等の集団的な管理や,業務遂行過程に関する個別の指導・監督を行っているものといえ,労務供給に係る拘束や指揮監督が存することは明らかである。
キ 顕著な事業者性について
原告協会は,地域スタッフに対し,担当する業務従事地域を配分し,地域状況等に応じて目標数を一方的に設定し,地域スタッフは,当該目標の達成に向けて,ナビタンにより再訪問を要する受信契約者等の情報を得て業務を遂行している。このような地域スタッフの業務は定型性が強く,達成される業績の幅も受信者の情報を集約している原告協会が目標値により予め目安を有しているものであって,地域スタッフの年収分布を見ても,多数の使用人を管理・活用して収益を挙げることが可能な額ではなく,事業者性が顕著であるとはいえない。
ク まとめ
以上によれば,地域スタッフについては,①事業組織への組込み,②契約内容の一方的・定型的決定及び③報酬の労務対価性という中心的な考慮要素並びに④業務依頼に応ずべき関係及び⑤労務供給に係る拘束・指揮監督という補助的考慮要素をいずれも有する一方,消極的考慮要素である⑥顕著な事業者性を基礎づける事情は認められず,原告協会との交渉上の対等性を確保するため労組法上の保護を及ぼすことが必要かつ適切であるといえるから,労組法上の労働者に該当する。
(2)  原告組合の主張
ア 判断枠組みについて
労組法上の労働者については,同法の目的に照らし,労働組合による団交を保障すべき者であるか否かにより判断されるものであって,労契法及び労基法上の労働者よりも広い概念と解され,①事業組織への組込み,②契約内容の一方的・定型的決定,③報酬の労務対価性,④業務依頼に応ずべき関係,⑤労務供給に係る拘束・指揮監督を積極的考慮要素とし,⑥顕著な事業者性を消極的考慮要素として総合勘案して判断すべきである。
イ 事業組織への組入れについて
(ア) 地域スタッフは,その人数,契約取次の件数及び全体に占める割合等に照らし,不可欠ないし枢要な役割を果たす労働力として原告協会の組織内に位置付けられており,原告協会は,次のとおり,地域スタッフから継続して労務供給を受けられる仕組みを構築している。すなわち,原告協会は,全国に契約取次等を進める拠点として営業センター等を設置し,各営業センター等に所属する職員と各地域スタッフとでチーム・JGを組織した上,地域スタッフに対し,目標数を設定し,マニュアルやナビタン等を交付・貸与し,業務計画表を提出させ,稼働日数・時間数や訪問の時間帯等について管理・指導するなどして,その目標の達成に向けた強い働きかけを行っている。また,原告協会は,地域スタッフに対し,新規契約締結時から,更新を原則とする契約であることを説明し,委託契約を終了した際に支給される餞別金の制度も,20年ないし30年以上にわたる委託契約の継続を予定したものとなっている。
(イ) 以上によれば,地域スタッフが,原告協会の事業組織に組み込まれていると評価できることは明らかである。なお,地域スタッフについて,業務を行う日時や業務量の決定に多少の裁量があっても,それは業務の性格に由来するものである。また,再委託を行っている地域スタッフは極めて少ない上,再受託者の大半が業績不振による委託契約の更新拒絶等を避けるため家族の助力を得ているにすぎないのが実態である。さらに,原告協会は,平均的な稼働時間に応じて平均的な報酬が得られるように事務費の単価を定めているが,その算定に当たっては兼業を想定していないし,現に兼業している者もわずかである。
ウ 契約内容の一方的・定型的決定について
原告協会が,受託者組合との間で交渉を行ってきたからといって,各地域スタッフとの関係で,契約内容を一方的・定型的に決定してきたことは否定し得ないし,受託者組合との関係でも,合意が成立しなくとも,一方的・定型的に報酬等を決定してきた。また,委託種別や受持区域について,各地域スタッフとの間で個別交渉がされているとしても,その各内容は原告協会によりあらかじめ一方的・定型的に決定されている上,原告協会から希望に沿わない委託種別を命じられた場合であっても,地域スタッフがこれを拒否することはできない。なお,個別の業務の日時,業務量,内容等の決定について地域スタッフに一定の裁量があるとしても,業務遂行方法の問題にすぎない。以上のとおり,地域スタッフの契約内容については,原告協会が一方的・定型的に決定している。
エ 報酬の労務対価性について
運営基本額は,訪問件数1件以上かつ業務従事実績1件以上であれば,7万5000円が支給されるもので,募集広告において「固定報酬」と記載されていたことは,これが固定報酬であるという認識を原告協会も有していたことを示している。そして,業務従事実績20件以上又は訪問件数1500件以上であれば15万円が支給されるところ,この条件を満たすのは容易であり,地域スタッフの約96%が15万円の支給を受けているほか,大都市地域で業務に従事した場合には,大都市圏加算額として,これに1万円ないし1万5000円が加算される。また,原告協会は,平均的な稼働時間に応じて平均的な報酬が得られるように事務費の単価を定めており,地域スタッフは,労務供給に対する対価としての報酬により生活を営むことが想定されている。そして,報奨金は,年2回支給され,算定期間における業績に応じて相対的に加算額が変わり,原告協会が警告書を発した場合には加算区分を下げることがあるなど,賞与に相当する報酬であるほか,運営基本額及び大都市圏加算額に応じて算定される部分も含まれている。慶弔金,見舞金及び餞別金等についても,労務供給を専属的かつ長期にわたり供給することを促進する制度であり,福利厚生に相当する。以上によれば,地域スタッフの報酬には労務対価性が認められる。
オ 業務依頼に応ずべき関係について
原告協会は,地域スタッフに対し,受持区域及び目標数を設定し,その達成のため管理・指導を行い,「一斉デー」への参加を促し,これに参加しない場合には説明を求めるなど,実質的に見て,個別の業務依頼に応ずべき関係がある場合と同程度の強い働きかけを行っている。以上によれば,地域スタッフについて,業務依頼に応ずべき関係が認められる。
カ 労務供給に係る拘束・指揮監督について
原告協会は,チームやJGを組織した上,地域スタッフに対し,目標数値を設定し,具体的な仕事の進め方等の記載された「『実施要領』のあらまし」(以下「実施要領のあらまし」という。)やマニュアル等の資料を交付し,出局日や中間連絡等の機会に助言・指導を行い,ナビタンの情報に基づき訪問時間や訪問経路等についても業務改善指導を行っていた。また,目標の達成状況が芳しくない場合には,来局回数の増加,立入調査の強化,受持数削減,帯同指導等から成る特別指導を実施するほか,その対象者の契約更新に当たっては,具体的な業務改善要望事項を示し,これを誠実に履行するという条件付き更新とし,業績改善の見通しが立たない場合には委託契約を終了していた。そして,地域スタッフが,業務を行う日時や業務量の決定等の業務遂行方法について一定の裁量を有していたとしても,原告協会の決定した範囲内に限られていた。以上のとおり,地域スタッフは,原告協会による拘束・指揮監督を受けていた。
キ 顕著な事業者性について
原告協会は,平均的な稼働時間に応じて平均的な報酬が得られるように事務費の単価を定めていたのであり,業務内容を差配して収益管理することなどできないし,再委託や兼業の実態も限定的なものであった。また,地域スタッフが自動車等の移動手段を自ら準備し,報酬を事業所得として確定申告していることは,顕著な事業者性を示す事実とはいえない。以上によれば,地域スタッフについて,顕著な事業者性は認められない。
ク まとめ
(ア) 以上の次第で,地域スタッフについては,積極的考慮要素である①事業組織への組込み,②契約内容の一方的・定型的決定,③報酬の労務対価性,④業務依頼に応ずべき関係,⑤労務供給に係る拘束・指揮監督はいずれも認められ,消極的考慮要素である⑥顕著な事業者性は否定されるから,労組法上の労働者に該当する。
(イ) そもそも,地域スタッフが原告協会に対して委託条件について交渉する力を全く備えていないからこそ,原告組合等の受託者組合が団交を行っており,地域スタッフについては労組法上の労働者性が認められるべきである。原告協会の主張するとおり,同原告と受託者組合との間に交渉ルールが合意・慣行化しているとしても,それが労組法による保護に代わることはない。原告協会は,原告組合との団交の結果として労使合意が成立しても,その協約化を拒否するという不当労働行為を繰り返しており,地域スタッフを労組法上の労働者として保護する必要がある。
(3)  原告協会の主張
ア 判断枠組みについて
(ア) 本件命令が,①事業組織への組込み,②契約内容の一方的・定型的決定,③報酬の労務対価性,④業務依頼に応ずべき関係,⑤労務供給に係る拘束・指揮監督,⑥顕著な事業者性等の事情を考慮して労組法上の労働者性を判断すべきとした枠組みについては概ね適当である。
(イ) ただし,憲法28条にいう「勤労者」とは,労働力を他人に売ることによって生活する者をいい,自らのリスクで業を営む自営業者は含まれず,時間や場所等の制約・拘束を受ける「勤労者」のみが,憲法27条2項及び同法28条により,労基法による最低労働条件による保護や団結権・団体交渉権等の保障を受ける。このような観点からすると,労基法上の労働者と労組法上の労働者は基本的には統一的な解釈をすべきであり,地域スタッフについても,自ら原告協会から委託を受けた法人の従業員ではなく自営業者としての契約類型を選択しておきながら,労働者として保護を求めることを安易に許容すべきではない。
イ 事業組織への組入れについて
(ア) 地域スタッフについては,原告協会の契約取次等の業務の外部委託先の一つにすぎない上,近年は同業務における法人委託の比率が拡大しており,平成27年度には契約取次総数に占める地域スタッフの業務比率(シェア)は2割を切るに至っていて,地域スタッフが,不可欠ないし枢要な役割を果たす労働力として原告協会の組織内に位置付けられているとはいえない。また,地域スタッフの業務は,受信料を納付していない受信契約者を訪問して集金するなどの能動的な働きかけを行う性質を有するものであって,業務を行う日時や業務量の決定につき,広範な裁量が認められている。しかも,再委託・兼業については,制度上認められているというだけでなく,多岐にわたる活用実例がある。
(イ) なお,原告協会が,①営業部署を設置し,そこに地域スタッフを配置するなどしているのは,その目標を営業部署に落とし込み,さらに各地域スタッフや委託先の法人へと細分化していくことにより,全国に広範囲にわたり分布する受信契約者等から公的料金である受信料の支払を確保するという業務の性質によるものであり,②地域スタッフに対し,目標を設定し,マニュアルを交付し,業務計画表の提出を求め,助言・指導を行っているのは,一定の期間に一定の業績を確保することを求める委託契約上の業務の履行を求め,効率的・効果的な業務遂行を支援し,一定の業績を確保するために委託者として当然の対応を行っているものであり,③地域スタッフに対し,ナビタンや契約書類等の物品を貸与しているのは,委託業務の遂行上,必要不可欠なものを貸与しているにすぎないものであり,④新規契約を除く地域スタッフの委託契約の期間を3年間としていることについては,業績等を勘案して契約更新を行わないことも見据え,契約期間を限定しているものであり,⑤餞別金等の各種給付の制度は,地域スタッフとして優秀な人材を確保するために設けたものであり,これらの事情をもって,原告協会が地域スタッフから継続して労務供給を受けられる仕組みを構築しているなどと評価することはできない。
(ウ) 以上によれば,原告が地域スタッフを事業遂行に不可欠ないし枢要な労働力として原告の組織に組み入れていたということはできない。
ウ 契約内容の一方的・定型的決定について
(ア) 契約内容の中核ともいうべき報酬等については,原告協会が数千人の地域スタッフとの間で個別に交渉することは現実的にも不可能であるところ,約30年以上にわたり,原告協会と受託者組合とが丁寧に交渉した上,全国統一基準としてその内容を決定してきたものであり,事務費単価の決定プロセスは原告協会が一方的に決定するものではない。また,委託契約の根幹的内容をなす委託種別や受持区域の設定・変更については,原告協会と各地域スタッフとの間で個別に協議して決定することとされ,原告協会が一方的に決定するのではない。しかも,地域スタッフには,個別の業務の日時,業務量,内容を決定する広い裁量も認められていた。
(イ) 以上によれば,原告が地域スタッフとの委託契約の内容や提供する業務の内容を一方的・定型的に決定していたということはできない。
エ 報酬の労務対価性について
(ア) 地域スタッフに対する報酬の多くを占めるのは運営基本額以外の月例事務費である業績基本額や単価事務費であって,これらは細かく業績に連動する形で設定された完全な歩合報酬である。そして,運営基本額についても,一定額の支払が保障されていたものではなく,契約取次等の実績がなければ一切支払われないものであるし,業務従事実績と訪問件数の実績に応じて,7万5000円から15万円までの範囲で倍近く金額が変動する出来高制の報酬である。なお,これと異なる募集広告等の誤った記載は,すでに是正されている。また,報奨金については,業績を基準として算出された毎月の事務費の平均額に一定の率を乗じた額を基本として,これに業績加算(目標達成率によるランクに応じて認められる加算)や業務精励加算(業績が一定の条件を満たした場合に認められる加算)を加えて算出されるものであって,地域スタッフの業務の実績・成果に応じて支払われる出来高制の報酬であり,勤務態度等を査定するような労務の供給に着目したものではないし,警告書の提出があった場合等に加算区分を下げるのは一部の例外的な算定要素にすぎない。そして,慶弔金,見舞金及び餞別金等の給付は,恩恵的給付にすぎない上,平均月収等の業績に連動する要素があり,労務の供給に着目したものではない。そもそも,地域スタッフの報酬は,稼働日数・時間に連動した仕組みになっておらず,時間外手当に相当する報酬も一切支払われていない上,地域スタッフには業務を行う日時や業務量等の決定について広範な裁量が認められており,現に年収分布と稼働日数・時間には相関関係は見られない。
(イ) 以上によれば,地域スタッフの報酬について,一定の労務を提供したことへの対価であるとか,労務供給の対価に類似する面を有しているなどと評価することはできない。
オ 業務依頼に応ずべき関係について
(ア) 地域スタッフは,一定の期間に一定の業績を確保することが求められるだけで,業務を行う日時,訪問先や訪問の順番等については広い裁量が認められ,個別の業務に関する拘束は一切受けていない。また,一定の業績を確保することを求められている原告協会が,地域スタッフに対し,目標を設定し,助言・指導や特別指導を行うことは,委託者として委託契約に定められた業務の履行を求め,その業績の改善を支援するものにすぎず,従わなかった者にペナルティを科すこともない。「一斉デー」への参加も任意のものであって,これに参加しない地域スタッフも一定数存在し,その不参加により不利益を受けることもない。
(イ) したがって,原告協会が地域スタッフに対して強い働きかけをしている実態があるなどということはできず,まして,個別の業務依頼に応ずべき関係があるなどと評価することは不可能である。
カ 労務供給に係る拘束・指揮監督について
(ア) 地域スタッフは,目標達成に向けて業績を上げることが求められるだけで,業務を行う日時,訪問先や訪問の順番等については広い裁量が認められ,個別の業務に関する拘束は一切受けていない。また,原告協会が,地域スタッフに対し,目標数を設定し,その達成が懸念される場合に助言・指導を行うことは,委託契約に定められた業務の履行を求め,その業績の改善を支援するものにすぎず,従わなかった者にペナルティを科すこともない。なお,収納した受信料の入金遅延等は明らかな契約違反であるから,それに対して警告書等を交付することは,契約の履行を求める委託者として当然の行為である。
(イ) そして,マニュアルは,地域スタッフが効率的・効果的に委託業務を実施することを支援するために作成されていたものであり,これに従わなかった者がペナルティを受けることもない上,平成22年10月の制度変更以降は改訂されておらず,使用もされていない。また,原告協会がナビタンにより業績改善のため稼働時間に関する助言することはあるが,これは,地域スタッフの時間管理を行うものではない。加えて,原告協会の職員と地域スタッフとでチームやJGを組んでいるのは,連絡や報告の便宜のためのものにすぎないし,地域スタッフの担当地域を定期的に変更させるのは,地域スタッフ間の公平を確保するという合理的な理由に基づく措置にすぎない。
(ウ) 以上によれば,地域スタッフについては労務提供に係る時間的場所的な拘束や指揮命令といった要素を認めることはできない。
キ 顕著な事業者性について
(ア) 地域スタッフは,業務を行う日時や訪問先,訪問の順番等については広い裁量を有しており,その実績・成果に応じて報酬の支払を受けることができる。そして,その年収分布は300万円未満から1000万円以上まで幅広く分布しており,稼働日数・時間が少なくとも,高い業績を挙げることによりそれに応じた報酬を得ることができ,この点で業務内容を差配して収益管理をすることができる。また,原告協会に届出をするだけで再委託をすることも収益管理の一環として認められており,家族・友人や従業員等に対して再委託を行っている実績も存在する。さらに,地域スタッフは,自動車やバイク等の訪問先等への移動手段を自らが準備し,報酬を事業所得として確定申告しているほか,届出・許可なしで兼業も許されている。
(イ) 以上によれば,地域スタッフについては,独立の事業者としての実態を備えていると認めるべき特別の事情があるといえ,顕著な事業者性を肯定することができる。
ク まとめ
(ア) 以上の次第で,地域スタッフについては,①事業組織への組込み,②契約内容の一方的・定型的決定,③報酬の労務対価性,④業務依頼に応ずべき関係,⑤労務供給に係る拘束・指揮監督が否定される一方,⑥顕著な事業者性が肯定され,労組法上の労働者であると認定できないことは明らかである。したがって,争点3ないし5について検討するまでもなく,原告協会が不当労働行為を行ったと判断される余地はない。
(イ) そもそも,地域スタッフは,受託者組合を複数組織し,原告協会と対等の立場で交渉ルールを締結又は慣行化した上,30年以上にわたり事務費等の委託契約の条件について交渉してきた実績を有する。したがって,労基法及び労契法上の労働者に該当しないことが判例上も確定している地域スタッフの保護としては,私的自治に基づき策定された交渉ルールに従った集団的な交渉や独占禁止法等の経済法制の体系により図られるべきである。かかる交渉ルールの存在を不当にも否定する受託者組合は原告組合のみであり,地域スタッフについて労組法上の労働者性を認める必要は全くない。
2  争点2(本件S君発言等に係る申立ての期間徒過の有無)
(1)  原告組合の主張
ア 原告協会は,原告組合が昭和57年に結成されて以来,一貫して原告組合を敵視し抑圧してきたところ,Kセンター長は,原告組合を抑圧し切り崩すという意図の下,本件各発言,本件出席拒否及び本件不誠実団交(平成23年7月12日の団交におけるもの)を行った。原告組合は,本件各発言に係る問題を自主的に解決しようとして支部団交を要求していたところ,原告協会は,本件不誠実団交及び本件出席拒否に及んだ。
イ 以上の事情によれば,本件申立てに係る各不当労働行為は一連のものであって「継続する行為」と見ることができるところ,その終了した日から1年を経過するまでに本件申立てはなされているから,本件S君発言及び本件70歳定年発言に係る申立ての期間は徒過していない。
(2)  被告の主張
ア 本件各発言は,いずれも異なる機会に1回限りされたもので,その間隔も2か月以上ある。また,本件各発言と本件不誠実団交及び本件出席拒否とは,その内容や性質が明らかに異なるから,本件申立てに係る各不当労働行為を「継続する行為」と見ることはできない。
イ したがって,本件S君発言及び本件70歳定年発言に係る申立ては,労組法27条2項所定の期間を徒過している。
(3)  原告協会の主張
ア 本件各発言は3回にわたるが,2か月ないし4か月程度の間隔が空いており,いずれの発言も異なる機会に1回限りでされたものである。また,Kセンター長のM副委員長に対する本件各発言と,原告組合との交渉における原告協会の対応である本件不誠実団交及び本件出席拒否とは,その内容や性質が明らかに異なる上,原告組合の弱体化に向けた意図が一貫して表れているなどと見ることもできない。「継続する行為」に該当するためには,「査定行為,これに基づく賃金決定,及び毎月の賃金の支払」のように,同一の目的の実現のためにされ,かつ,客観的に一体を成す行為でなければならないが,本件申立てに係る各不当労働行為が「継続する行為」に該当しないことは明らかである。
イ したがって,本件S君発言及び本件70歳定年発言に係る申立ては,労組法27条2項所定の申立期間を徒過している。
3  争点3(本件各発言及び本件不誠実団交の不当労働行為該当性)
(1)  原告組合の主張
ア Kセンター長は,本件センターのセンター長として就任するに当たり,原告組合の切崩しを使命としていたところ,良好な人的関係のあったM副委員長に対し,原告組合を攻撃する本件S君発言をしたものである。なお,M副委員長は,平成23年4月以降も自らの契約を更新できるかについて不安を抱いており,Kセンター長と敵対的な関係になることは避けたいと考えていたのであり,平成23年1月14日になって,P委員長らに対し,本件S君発言があったことを報告したことが特に不自然とはいえない。
イ M副委員長から報告を受けた本件支部では,地域スタッフの契約更新に係る年齢制限について,中央本部を介して委託推進本部へ問い合わせているのであり,本件70歳定年発言が存在したことは明白である。なお,M副委員長は,個人的にはKセンター長を信頼していた上,センター長の地位にある者が事実と異なる発言をするとは思えなかったために70歳以上は委託契約の更新ができないものと信じたのであるから,P委員長らに本件70歳定年発言があったことを報告するのが平成23年1月14日になったことが不自然とはいえない。
ウ M副委員長は,新会社に関する噂を聞いていた上,本件新会社発言が露骨な組合切崩しの発言であったことから,その場で直ちに抗議するよりも,速やかに他の組合員に報告し,対策を協議しようと考えたものであり,そのような対応が通例である。
エ M副委員長の陳述するとおり本件各発言が存在したことは明白であり,これを否定する原告協会の交渉態度は不誠実というほかないから,本件各発言及び本件不誠実団交は不当労働行為に該当する。
(2)  被告の主張
ア Kセンター長がM副委員長を原告組合から引き離し原告組合の切崩しを図ることを使命としていたことの具体的な証拠は見当たらない。かえって,本件S君発言以前にはM副委員長に対して原告組合を嫌悪するような態度を示したことはなかったKセンター長が,面識のないS書記長を「S君」と呼び,原告組合への嫌悪感を示す本件S君発言をしたことの不自然さは否めない。また,M副委員長がP委員長らに本件S君発言があったことを報告したのは,本件S君発言から約7か月が経過し,自らの委託契約の更新がないと認識した平成22年12月1日からも1か月半以上が経過した平成23年1月21日になってからであり,それまでに報告しなかったのは不自然といわざるを得ない。したがって,本件S君発言の存在を認定することは困難である。
イ 本件70歳定年発言があったにも関わらず,M副委員長が平成23年1月21日までP委員長らに本件70歳定年発言があったことを報告しなかったというのは不合理であり,M副委員長が問題であると認識するようなKセンター長の発言はなかったことが窺われる。したがって,本件70歳定年発言の存在を認定することは困難である。
ウ 本件新会社発言があったにも関わらず,M副委員長が,新会社に係る情報の詳細や地域スタッフの委託契約への影響等について,その場で質問していないことから,その不自然さは否めない。また,M副委員長は,本件新会社発言により著しく気分を害したとしながら,その場で抗議等を行っていないというのも不自然である。したがって,本件新会社発言の存在を認定することは困難である。
エ 以上のとおり,本件各発言の存在を認定することができないことに加え,交渉の当時も本件各発言の存否に争いがあったなどの事情に照らせば,原告協会が団交において本件各発言の存在を否定したことをもって,虚偽の回答を繰り返したということはできず,原告協会の交渉態度が不誠実なものであったと評価することもできない。したがって,本件新会社発言及び本件不誠実団交に係る申立てについて,不当労働行為に該当する事実は認められない。
(3)  原告協会の主張
ア Kセンター長が,M副委員長と旧知の仲であったとはいえ,本件センターのセンター長に着任して早々に本件支部に対する嫌悪感を示す本件S君発言をすれば,重大なトラブルとなることは明らかであったから,そのような発言をしたはずがない。このことに加え,M副委員長が,本件S君発言について直ちにKセンター長に対して抗議せず,P委員長らに約7か月も報告しなかったというのはいかにも不自然であることなどに照らせば,かかる発言がなかったことは証拠上も明らかである。
イ 地域スタッフに定年がなく,70歳以上でも契約更新がされ得ることは,当時からM副委員長も認識していた周知の事実であり,Kセンター長がこれと矛盾する本件70歳定年発言をすれば,重大なトラブルとなることは明らかであったから,そのような発言をしたはずがない。このことに加え,本件70歳定年発言がされたとすれば,全ての地域スタッフに極めて大きな影響を及ぼすものであるところ,M副委員長は,本件70歳定年発言について直ちにKセンター長に対して問い質さず,P委員長らに2か月以上も報告していなかったというのはいかにも不自然であることなどに照らせば,かかる発言がなかったことは証拠上も明らかである。
ウ Kセンター長は,M副委員長から受けていた個人的な食事の誘いを多忙のため数回断っていたことに対するお詫びの趣旨で,平成23年1月21日にM副委員長を食事に誘ったものであり,不快感を与えるような本件新会社発言をしたはずがない。このことに加え,本件新会社発言は,新会社について何らの具体性もない空疎なものであり,その詳細を確認するのが通常の対応といえるところ,M副委員長が,新会社についてKセンター長に対して直ちに問い質さなかったというのはいかにも不自然であることなどに照らせば,かかる発言がなかったことは証拠上も明らかである。
エ 以上のとおり,本件各発言は存在しないから,本件各発言を否定した原告協会の交渉態度を不誠実と評価する余地はない。したがって,地域スタッフが労組法上の労働者に該当しないことを措いても,本件新会社発言及び本件不誠実団交に係る申立てについて,不当労働行為に該当する事実は認められない。
4  争点4(本件交渉ルールの適用の可否)
(1)  原告協会の主張
ア 昭和57年2月ないし4月にかけて,b労からの脱退者を構成員とする受託者組合として,f労働組合(以下「f労」という。)及びg労働組合(以下「g労組」という。)が結成されていたところ,同年8月25日,f労の一部とg労組が統合して原告組合が結成され,同年10月6日,原告協会との間で,組織統制力等の確認を行った。原告協会と原告組合との間では,同月12日から同月18日まで4回にわたり,原告協会が他の受託者組合との間の事前了解と称する交渉ルールを参考に作成・提示した事前了解案(乙B31)について,延べ8時間20分の時間をかけて折衝が行われ,別紙2のとおり口頭で合意(乙B34〔別紙1〕,以下「本件事前了解」という。)が成立したのであり,これは信用性の高い交渉記録等において確認することができる。そして,原告協会は,全国の営業センター等に対し,本件事前了解が成立したことを周知した上,原告協会・b労間の別紙3の合意(乙B19,20,以下「本件交渉レベル合意」という。)を含む本件事前了解に基づく交渉ルールに基づき,原告組合との交渉を継続してきたのであり,その後に原告組合との間で改めて事前了解に関する交渉が行われた事実はない。
イ 原告協会は,各受託者組合と正式に交渉を開始するに先立ち,事前了解を取り決めており,b労,f労及びg労組とも,本件事前了解と同様の合意を締結しているのであり,原告組合のみを特別扱いして,事前了解の成立なしに交渉を行う理由はない。むしろ,原告組合は,昭和57年10月当時,原告協会との交渉が開始されないことへの不安から多数の脱退者が生じていたため,早急に交渉を開始するために本件事前了解で妥協する必要が高かった。また,原告組合は,b労をはじめとする他の受託者組合との差別取扱いを懸念していたのであり,他の受託者組合が合意しているものを拒絶する理由もなかったし,4回の折衝においても,大幅な修正を求めることもなかった。原告組合は,都労委における審問において,L元中央書記長は本件事前了解の成立を拒んだ合理的な理由を説明できていない。原告協会は,昭和57年4月5日までに原告協会とb労との間で確認された事項を包括的に承継する旨の本件事前了解の条項(以下「本件包括継承条項」という。)に基づき,原告組合に対しても,事務室貸与,報酬からの組合費の天引き,「組合役員の応援」(甲12,一部の組合役員に対する委託業務の遂行猶予措置),委託制度改善検討専門委員会の設置等を行ってきたのであり,b労に対する扱いの中で原告組合に承継されなかったものは存在しない。しかも,原告組合が作成した昭和59年3月21日付け「条件付契約更新制度の見直しについて」と題する書面(乙B39)及び平成4年3月31日付け届出書(乙B45)には,本件事前了解の存在を前提とした記載もある。
ウ したがって,本件事前了解は成立していたということができ,本件包括継承条項により原告組合と原告協会との間の団交には本件交渉レベル合意が適用される。すなわち,交渉は,支部・中央の交渉レベルで段階を踏んで行うものとし,下部交渉には上部役員は出席しないことを原則とし,例外的に下部交渉に上部役員が出席する場合は双方の了解が必要であり,交渉の持ち方について双方の意見が対立したときは,直近の上部組織において調整を図ることとされる。
エ そして,本件事前了解の成立が認められない場合であっても,原告協会と原告組合との間では,「支部交渉の出席者は,原則として支部メンバーとし,中央執行委員の出席は,例外的に双方の協議が整う場合に限られる,交渉の出席者は事前折衝の中で双方の合意により定める」という交渉慣行(以下「本件交渉慣行」という。)が成立していた。なお,原告協会が原告組合の中央執行委員の出席を拒否した先例の具体的事例の記録が残っていないのは,出席を拒否しなければならない事例が少なかったからにすぎない。また,交渉慣行が成立したとされるための要件として,労使双方の規範的意識に支えられていることは必要ではない。
オ さらに,原告協会は,平成23年4月8日の中央交渉以降,事実調査を実施したものの,本件各発言があったことを確認することができず,中央本部は,本件支部からの報告を鵜呑みにして十分な事実確認を行っていない様子であり,中央交渉では交渉の進展が期待できない状況であった。そのため,原告協会は,同月27日の中央交渉において,原告組合に対し,支部交渉による事実確認を促す趣旨で,「本件センターの現場で,通常のメンバーで一度話し合ってはどうか」と提案したところ,原告組合もこれを受け入れて支部交渉が行われることとなり,支部メンバーだけでこの支部交渉を行うという合意(以下「本件個別合意」という。)が成立した。本件各発言については,支部交渉を経ずに中央交渉が行われるという異例の経過を経ており,事情を知らない中央のメンバーが入ると話合いがいたずらに硬直化したり,支部交渉を中央のメンバーが主導したりするおそれが高く,発言当事者を含めた支部メンバーのみで支部交渉を行うという方法は極めて合理的なものであったため,本件個別合意がされたものである。
カ 以上のとおり,本件支部と本件センターとの間の支部団交については,本件事前了解の本件包括継承条項に基づき本件交渉レベル合意が適用されることにより,又は本件交渉慣行や本件個別合意により,一般的に本件交渉ルールが適用されるというべきであるし,少なくとも,本件各発言に係る支部団交については,本件交渉ルールが適用されるということができる。
キ なお,原告協会と原告組合は30年以上にわたり日常的に交渉を行い,本件交渉ルールを互いに熟知していたから,原告協会が,原告組合に対し,支部交渉の出席者について再考を求めた際,本件交渉ルール等に言及しなかったことは全く不自然ではない。むしろ,S書記長は,本件交渉ルールに従い,原告協会に対して出席者を記載した書面により支部交渉の事前申入れを行うといった対応をしている上,出席者を制約する交渉ルールの存在を否定する発言もなかった。また,原告協会と原告組合との間の合意事項について,原告組合の署名・押印のある文書は他にも全く作成されていないし,本件事前了解を記載した書面と他の合意を記載した書面の形式の差異に特段の意味は存しない。
(2)  被告の主張
ア 本件事前了解について,原告協会と原告組合との間で確定的な意思の合致があったことを示す書類等は作成されておらず,本件事前了解が成立した証拠として原告協会が提出するものは内部記録にすぎない。また,原告協会は,受託者組合との合意事項について,労組法14条所定の労働協約の様式を備えることを拒否してきたため,原告組合は「メモ」等の文言を表題に付記することで対応してきた経緯があるところ,原告組合が同時期に明確に合意した「X2労働組合のX1協会への事前説明に基づく合意」(以下「本件事前説明合意」という。)については,「57.11.8メモ」(乙B23)が作成されているが,本件事前了解については,かかる形式の文書も作成されていない。しかも,本件事前了解が成立したとされる間もない時期に,原告組合が本件事前了解の成立を否定していたことを確認することができるのであり,b労の扱いの一部を踏襲した状況があったというだけで,本件包括継承条項を含む本件事前了解に合意していたと認めることはできない。
イ 労組法6条は,労働組合の代表者又は労働組合の委任を受けた者に対して団交の交渉権限を認めており,自主的に団交の出席者を決定するのが労働組合の通常の意思というべきである。そして,原告組合において,本件交渉慣行に係る規範意識を形成する契機となるような事情も全く認められないから,本件交渉慣行が成立していたとはいえない。
ウ また,本件各発言に係る団交について,原告組合が支部交渉への移行に同意したとしても,出席者については何ら協議されていなかったから,本件個別合意が成立したと評価することもできない。
エ 以上によれば,原告組合が,本件事前了解,本件交渉慣行又は本件個別合意に基づいて本件交渉ルールに拘束されることはない。
(3)  原告組合の主張
ア 原告組合と原告協会は,昭和57年10月12日から同月18日まで4回にわたり,事前了解に関する折衝を行ったが,本件事前了解について合意が成立した事実はなく,原告協会が一方的に作成した交渉記録には客観性,信用性はない。原告組合は,双方の立場と人格を尊重し信義誠実の原則に沿って円満かつ平和裡に行う旨の基本精神(本件事前了解(別紙2)の2(1)参照)は了解できると考えていたが,原告組合の交渉委員は原告組合の組合員によって選出された執行委員の中から若干名とする旨の条項(同(2)参照)については,将来的に上部組織に加盟する可能性も考慮して反対していたし,本件包括継承条項についても終始一貫して反対していた。原告組合が,なかなか正式交渉の開始に応じようとしない原告協会に対し,不当労働行為救済申立ても検討せざるを得ないと通告したところ,原告協会は,事前了解に係る合意を断念し,既に合意されていた本件事前説明合意をもって正式交渉を開始することに同意した。
イ したがって,本件事前了解は成立していない。なお,f労については不明であるが,少なくともg労組については,事前了解を合意しないまま,原告協会との間で事務費等に関する団交を行っていた。また,原告組合は,原告協会に対し,b労と均等の待遇を要求し,事務室の貸与,報酬からの組合費の天引き等の措置を受けているが,本件事前了解を妥結しなければ,かかる措置を受けることができない訳ではない。
ウ そして,原告組合の中央執行委員が支部団交に出席した例は多数ある一方で,本件出席拒否より前に原告協会が原告組合の中央執行委員の出席を制限したことはなく,本件支部を当事者とする平成22年7月12日の支部団交についても,本件センターの了解を得ることなく,L元中央書記長及びO執行委員が出席していたのであって,このような状況下において本件交渉慣行が成立することはあり得ない。
エ 原告協会は,平成23年4月27日の中央団交において,原告組合に対し,これ以上本件各発言について中央団交で話し合っても意味がないとして,支部団交の実施を勧めてきたが,原告組合の中央執行委員の出席を禁止するといった提案もなかった。そして,同年5月20日の中央団交において,原告組合は,支部団交を検討するとの回答はしたが,それに中央執行委員が出席しないなどとは述べておらず,本件個別合意が成立していたとは認められない。
オ 以上によれば,原告組合が,本件事前了解,本件交渉慣行又は本件個別合意に基づいて本件交渉ルールに拘束されることはない。
5  争点5(本件出席拒否の不当労働行為該当性)
(1)  被告の主張
ア 本件交渉事項の義務的団交事項該当性について
原告組合は,本件70歳定年発言について,Kセンター長がM副委員長に対して退職の意思表示をするよう誤導しようとした点を問題としていた。これは組合員の退職という労働条件に関する事項であって義務的団交事項に該当するから,本件交渉事項には義務的団交事項が含まれる。
イ 不当労働行為該当性について
(ア) 原告協会は,平成23年6月13日付けの原告組合からの団交申入れに対し,中央執行委員が出席するなら交渉しない旨を述べてこれに応じず,同年7月12日の支部交渉においても中央執行委員の出席を認めなかったものであり,これ(本件出席拒否)は団交拒否に該当する。
(イ) 前記のとおり,原告組合が本件交渉ルールに拘束されることはないし,そもそも,原告協会は,原告組合に対し,中央執行委員の出席を認めないとの結論を伝えるのみで,その理由として本件交渉ルールの存在を説明していなかった。また,支部交渉に中央執行委員が出席したからといって,中央交渉と同じやり取りが繰り返されるおそれがあったとまではいえない。したがって,本件出席拒否は労組法7条2号所定の正当な理由のない団交拒否として,不当労働行為に該当する。
(2)  原告組合の主張
ア 本件交渉事項の義務的団交事項該当性について
(ア) 本件交渉事項のうち,①本件S君発言については,S書記長が,Kセンター長から嫌悪の意思を表明された状況で働くことを余儀なくされ,受持区域等で不利益取扱いを受ける危険があることを問題とし,②本件70歳定年発言については,Kセンター長がM副委員長に対して退職の意思表示をするよう誤導したことを問題とするほか,委託契約に年齢制限はなく70歳以上でも更新できることをKセンター長(本件センター)との間で確認し,③本件新会社発言については,新しい会社への推薦においてS書記長及びT組合員を差別・不利益取扱いすることを問題とする趣旨であったから,本件交渉事項は,労働者の労働条件その他の待遇であって使用者に処分可能なものを含む。M副委員長の委託契約の更新は,原告組合が原告協会に対して問合せを行ったりした結果として実現したものであるから,M副委員長の契約更新について交渉すべき事項は存在する。
(イ) また,本件各発言は,原告組合の弱体化を図る支配介入に該当する発言でもあるところ,支配介入の有無や支配介入に対する使用者の責任の取り方(被害回復策および再発防止策の要求)については,「当該団体と使用者との間の団体的労使関係の運営に関する事項であって,使用者に処分可能なもの」に該当する。
(ウ) したがって,本件交渉事項には義務的団交事項が含まれるということができる。
イ 不当労働行為該当性について
(ア) 平成23年6月13日付けの支部団交申入れに対し,原告協会は,原告組合の中央執行委員が出席することを拒否したため,同月21日の団交は中止となった。原告組合は,同年7月12日の支部団交においても,N中央書記長とO中央執行委員の出席を予定しており,両名は本件支部の特別執行委員にも選任されたので,その出席を認めないのは不当であると主張したが,原告協会が両名の出席に応じなかったことから,やむなく両名を外して支部団交を実施することとした。したがって,これ(本件出席拒否)は,団交の出席者を自主的に決定する原告組合の権利を侵害するものであって,団交拒否に該当する。
(イ) 前記のとおり,原告組合が本件交渉ルールに拘束されることはないし,そもそも,原告協会は,原告組合に対し,中央執行委員の出席を認めないとの結論を伝えるのみで,その理由として本件交渉ルールの存在を説明していなかった。したがって,本件出席拒否は,労組法7条2号所定の正当な理由のない団交拒否として不当労働行為に該当するのであって,本件各発言の存在が認定されるか否かは別の問題である。
(3)  原告協会の主張
ア 本件交渉事項の義務的団交事項該当性について
(ア) 本件70歳定年発言に係る交渉事項については,原告組合は,Kセンター長がM副委員長に対して退職の意思表示をするよう誤導したという点を問題にしていたのであり,委託契約に年齢制限はなく70歳以上でも更新できることは確認済みであった。そもそも,Kセンター長には,契約更新の条件について回答する権限はないし,M副委員長は70歳到達後である平成23年4月1日付けで契約更新を完了し,同年6月13日及び同年7月12日の時点においては,委託契約の更新について70歳定年との制限が存在しないことは原告協会と原告組合との間で共通認識となっていた。そして,「団体的労使関係の運営に関する事項」とは,ユニオン・ショップ,組合活動に関する便宜供与やルール,争議行為に関する手続やルールなどを意味するところ,上記のように本件70歳発言について原告組合が問題としていた個別の不当労働行為の存否についての質疑は,これに該当しない。
(イ) また,支配介入の有無や支配介入を行った使用者の責任の取り方(被害回復策および再発防止策の要求)という問題については,そもそも交渉事項とはされていなかったし,かかる事項は,労組法7条が禁止する不当労働行為の存否及びそれが存在する場合に生じる法的責任の内容という労働委員会や裁判所において判断されるべき事柄である。組合員であることを理由とする不利益取扱いなども,不当労働行為として労組法上明確に禁止されていることである。したがって,これらの事項は,労使が協議して決めていく「団体的労使関係の運営に関する事項」にも「使用者に処分可能なもの」にも該当しない。
(ウ) したがって,本件交渉事項について,義務的団交事項が含まれているとはいえない。
イ 不当労働行為該当性について
(ア) 原告協会は,本件各発言について,中央交渉を4回実施したほか,直ちに事実調査をして本件各発言が存在しないことを確認し,その結果も説明するなどして誠実に対応していたから,支部交渉に入る前の段階で既に団交義務を尽くしていたということができる。そして,原告協会が平成23年6月13日付け及び同年7月11日付けの支部交渉の申入れに対して出席者について再考を求めたことは,交渉態度として殊更に非難されるようなものではなく,交渉の拒否には該当しない。
(イ) そのことを措くとしても,原告協会が原告組合の中央執行委員の地位にある出席者について再考を求めたのは,本件交渉ルールに従った対応であるし,直近の上部組織における調整という本件交渉レベル合意に従った手続もいまだ尽くされてはいなかった。そして,本件交渉ルールの趣旨によれば,N中央書記長及びO執行役員は中央執行委員の地位を有する以上,本件支部の特別執行委員に併任されたからといって支部メンバーとはみなされない。したがって,仮に支部交渉の申入れに対する原告協会の対応が交渉の拒否に該当するとしても,それには正当な理由があり,不当労働行為には該当しない。
第4  当裁判所の判断
1  争点1(地域スタッフの労組法上の労働者性)について
(1)  判断枠組みについて
労組法が「労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進することにより労働者の地位を向上させること,労働者がその労働条件について交渉するために自ら代表者を選出することその他の団体行動を行うために自主的に労働組合を組織し,団結することを擁護すること並びに使用者と労働者との関係を規制する労働協約を締結するための団体交渉をすること及びその手続を助成すること」(同法1条)を目的としていることに鑑み,労組法3条が労組法上の労働者を「職業の種類を問わず,賃金,給料その他これに準ずる収入によって生活する者」と定義するその規定振りに照らせば,労組法所定の労働者は,必ずしも契約形態上労働契約によって労務提供をしている者に限られず,労働契約以外の契約形態によって労務提供をしている者であっても,その労務提供関係の実態に照らし労組法所定の団体交渉の保護を及ぼすのが相当である者をも含むと解するのが相当である。その意味で労組法所定の労働者は,労基法・労契法上の労働者よりも広い概念であり,雇用契約ないし労働契約下にある労務供給者及びこの者と同程度に団体交渉の保護を及ぼす必要性と適切性が認められる同種の労務供給契約下にある者と解される。
以上からすれば,ある者が労組法所定の労働者に該当するか否かについては,当該具体の労務提供関係の実態にも着目した上で,①労務供給者が相手方の事業遂行に不可欠ないし枢要な労働力として相手方組織に組み入れられているか(事業組織への組入れ),②労働条件や提供する労務の内容を相手方が一方的・定型的に決定しているか(契約内容の一方的・定型的決定),③労務供給者の報酬が労務供給に対する対価又はそれに類するものとしての性質を有するか(報酬の労務対価性),④労務供給者が相手方からの個々の業務の依頼に対して基本的に応ずべき関係にあるといえるか(業務依頼に応ずべき関係),⑤労務供給者が,労務の提供に当たり,日時や場所等について一定の拘束を受けているか(労務供給に係る拘束・指揮監督),⑥労務提供者に労組法所定の労働者該当性を否定すべき顕著な事業者性があるか否か(顕著な事業者性)について実質的に検討し,それらの要素を総合考慮した上で判断するのが相当である(最高裁平成23年4月12日第三小法廷判決・民集65巻3号943頁,同平成24年2月21日第三小法廷判決・民集66巻3号955頁参照)。
(2)  前記前提事実に後掲各証拠及び弁論の全趣旨を併せると次の各事実を認定することができる。
ア 原告協会の契約取次等の業務における地域スタッフの位置付け等(甲2〔20頁〕,7,18,20,乙B1,11,13,46~49)
(ア) 原告協会はその事業収入のほとんどを受信料収入に依存しているところ,平成21~23年度X1協会経営計画では,契約取次等の業務を効率的かつ効果的に行うべく,訪問集金の廃止に伴う地域スタッフの業務体制の変更(契約取次業務へのシフト),外部法人への委託の推進等の構造改革を進めることとされた。その結果,地域スタッフ数は,平成20年度末の約4800名から平成23年度末の約3800名まで減少し,予算での計画値も,平成23年度が4400名,平成24年度が3900名,平成25年度が3200名,平成26年度が2600名と減少した。
(イ) 地域スタッフの減少と法人委託の増加に伴って契約取次の総数(平成23年度は415.9万件,平成28年度は330.8万件)に占める取扱者種別のシェアも変化しており,平成23年度から平成28年度にかけての取次数に占める取扱者種別のシェア(甲7,18による。なお,これと異なる方法による集計として,乙B1,49がある。)を見ると,地域スタッフについては,平成23年度が46.7%,平成24年度が42.1%,平成25年度が32.2%,平成26年度が24.7%,平成27年度が19.5%,平成28年度が15.2%と減少傾向にある一方,法人(公開競争入札法人,エリア型法人,広域型法人の合計値)については,平成23年度が10.2%,平成24年度が15.4%,平成25年度が24.0%,平成26年度が30.0%,平成27年度が35.0%,平成28年度が38.6%と増加傾向にある。
イ 地域スタッフの委託契約の内容等(甲2〔21~27頁〕,6,乙A3,B5,6,11)
(ア) 委託契約書は,原告協会が用意した全国共通のひな形を用い,地域スタッフの氏名,委託種別,受持区域,報酬支払期日,契約期間等を記入することにより作成され,新規の契約期間は6月ないし8月程度とし,適性を認めた者について更新する際の契約期間は3年としている。平成22年度において,1年以上継続した地域スタッフの平均継続年数は8.9年,全地域スタッフのうち委託契約継続年数が10年未満の者の割合は66%,委託契約継続年数が20年を超える者の割合は5.3%であった。
(イ) 委託契約書(条数は乙B5による〔以下同様〕。)上,契約上の義務不履行があった場合等の即時解約(15条1項)のほか,1か月前の予告による無条件解約(15条2項)が規定されている。平成22年度に新規委託契約を締結した559名の地域スタッフの約4割に相当する221名が新規委託期間中に解約となっている。
(ウ) 委託契約書上,臨時業務の委託(1条2項),受持区域の変更(2条1項),報酬単価(9条3項)及び委託種別の変更(13条1項)が協議事項として定められているところ,原告協会は,報酬単価については受託者組合と協議して全国統一基準を決定し,その余の協議事項については各地域スタッフと個別協議して決定している。
(エ) 委託契約書上,地域スタッフは,原告協会に通知した上,自己の責任と計算において,委託業務の全部又は一部を第三者に再委託することができるとされている(4条)ところ,平成23年3月31日時点において,86名(1.9%)の地域スタッフが再委託をしている。また,兼業については許可や届出無しで認められており,原告協会が把握している限り,25名の地域スタッフが兼業をしている。
ウ 地域スタッフの報酬等(甲2〔27~31,38頁〕,乙A4,31,33,34,46~59,B15,51~53,丙1~3)
(ア) 原告協会は,事務費や実施要領等について,受託者組合との間で定期的に協議を行い,春闘時には受託者組合から出される処遇改善要求に回答している。全ての受託者団体と合意に至らない場合であっても,毎年度の事務費単価等について,最終的には原告協会において決定しており,前年度よりも低い単価を設定したこともある。
(イ) 原告協会は,地域スタッフを社会保険に加入させておらず,その報酬について給与所得としての源泉徴収も行っていない。地域スタッフは,その報酬について事業所得として確定申告をしている。
(ウ) 運営基本額とは,当月訪問件数が1件以上かつ当月業務従事実績(単価事務費の支払対象となる契約取次実績等の合計件数をいう〔以下同様〕。)が1件以上である場合に支払われる月額事務費であり,その支払額は当月訪問件数が1500件以上又は当月業務従事実績20件以上である場合は15万円,これに満たないが当月訪問件数が750件以上又は当月業務従事実績10件以上である場合は10万円,これにも満たない場合は7万5000円である。
(エ) 大都市圏加算額とは,支払対象地域で業務従事したことなど所定の要件を充足した場合に運営基本額に加算して支払われる月額事務費であり,支払額は1万5000円又は1万円である。本件センターは,名古屋市(h区ほか6区)が支払対象地域に含まれており,支払額は1万円である。
(オ) 業績加算額とは,上・下半期の業績加算区分のランクに応じて運営基本額に加算して支払われる月額事務費であり,支払額は3万円(aランク)又は1万円(bランク)である。
(カ) 業績基本額とは,委託種別毎に設けられた当月の基本業績の件数区分に応じた報酬表に基づき支払われる月額事務費である。
(キ) 単価事務費とは,各事務について設定された単価(新規契約(地上)の契約取次1件につき300円,長期未収受信者からの収納1件につき500円など)に当月の件数を乗じて支払われる月例事務費である。
(ク) 報奨金とは,年2回(6月及び12月),算定対象期間(半年)について,次のaないしcのとおり算定した金額を支払う事務費である。
a 平均事務費支払額:月例事務費の1か月平均額×133%(6月支払分)又は189%(12月支払分)
b 上・下半期業績加算:目標達成率により5段階の加算区分に区分し,1万5000円(最下位区分)ないし10万円(最上位区分)を上記aに加算するもの。ただし,算定対象期間中に警告書の発布や顛末書の提出があった場合には,加算区分を下げることがある。
c 業務精励加算:算定対象期間において,運営基本額の合計額が90万円であること,上記bの加算区分が最下位区分以外であること(90%がこれに該当する。)等の対象条件を満たした場合,上記aの金額に5%を加算するもの。
(ケ) 餞別金とは,委託契約終了時において支払われる給付であり,地域スタッフの不都合があって委託契約が解約された場合には支払われない。一般餞別金は,委託期間の区分に応じて設定された支払額及び特別加算額が支払われ,その合計額は,例えば委託期間が3年以上4年未満の場合は34.2万円,20年以上21年未満の場合は604.2万円である。特別餞別金は,平均月収額の区分と委託期間の区分に応じて設定された額が支払われ,例えば,平均月収額が20万円以上21万円未満で,委託期間が1年以上5年未満の場合は28万円,委託期間が20年以上の場合は58.6万円である。
エ 地域スタッフの業務遂行方法等(甲2〔31~36頁〕,乙A1~3,35,37,83,84,)
(ア) 原告協会は,地域スタッフに対し,業務遂行のための用具として,ナビタン,キューピット(電子決済端末であり,有償貸与),ファクシミリ送受信機,プリンター,集金かばん,書類・金銭収納用トランク,セキュリティアラーム,パンフレット,住宅地図等を無償で貸与している。他方,地域スタッフは,委託業務に使用する自動車等を自ら用意し,その燃料代も自ら負担している。(乙C2〔91頁〕)
(イ) 原告協会は,委託契約に基づく地域スタッフの仕事の進め方について,5項目(①週の中間報告,②計画的な業務の推進,③目標数の設定,④業績の確保及び⑤傷病又は老齢化により業務遂行に支障が生ずるおそれがある時の取扱い)から成る実施要領を定め,実施要領のあらましを配布することなどにより,その趣旨を地域スタッフに周知している。
(ウ) 原告協会は,平成20年9月,同年10月以降の訪問集金廃止等の受信料体系の変更に伴う新たな役割分担や業務内容について具体的に記載したマニュアルを作成し,これを地域スタッフに配布するなどして周知した。マニュアルでは,各委託種別の仕事の進め方として,1日の活動イメージ,各業務のポイント,お客様対応例等が具体的に説明されている。
(エ) 原告協会は,各地域スタッフに毎期(2か月間)の目標を設定し,実施要領のあらましにおいて,①各地域スタッフの目標数が達成されないと,所属先の営業センター等や原告協会全体の目標数が達成されないことにつながるので,その達成には万全を期してもらいたいこと,②当期の前半(1か月目)に目標数の50%以上を確保するよう努力し,さらに期末までに当期目標数を完全に達成するよう努力することが求められることなどを記載している。
(オ) 地域スタッフは,設定された目標数を期末までにどのようなスケジュールで達成するかを明らかにする週単位の計画表(乙B16~18参照)を作成し,これを期初に原告協会に提出し,毎週1回報告書を提出することにより,原告協会及び地域スタッフの双方が目標達成に向けた進捗状況を把握することとされている。なお,地域スタッフは,ナビタンにダウンロードされた顧客情報等に基づき戸別訪問等の計画を立てて外回りを行い,顧客対応の結果をナビタンに入力しており,その情報(乙A83参照)は電話回線を通じて原告協会のホストコンピューターに送信されている。原告協会は,この情報を「稼働時間データ」(乙A84)として集計するなどし,地域スタッフに対する指導に活用することもあった。
(カ) 本件センター所属の地域スタッフは,毎月3回(1日,10日前後及び20日前後)の出局日(来局日)に本件センターに出局して報告等を行うほか,出局日の中間時点において,定型の中間連絡用紙を用いた中間連絡を行うこととされている。本件センターでは,これらの機会において,各地域スタッフに対して個別に,又はチームやJG等の単位により,各種連絡や目標達成のための指導等を行っている。特別の事情がないのに,業務の進捗が遅れ,当期の目標達成が危ぶまれる場合には,原告協会の判断により,業務応援を実施することもある。
(キ) 原告協会は,毎月,「口座一斉デー」,「BSデー」等の重点目標を定めた「一斉デー」を設定し,重点目標数を1件達成するごとに担当職員に電話連絡するよう求めているほか,「一斉デー」に参加しなかった地域スタッフに対し,不参加についての説明を求めている。
(ク) 原告協会は,業績確保の見通しが立たない地域スタッフ(具体的には,3期連続で当期の目標数の80%に達しなかった者又は当期の目標数の60%に達しなかった者)に対しては特別指導を行っている。特別指導は三つのステップからなり,ステップ1は,業務計画表による計画の着実な推進,来局回数の増,帯同指導から成り,ステップ2は,業務の分割実施,応援収納・取次,立入調査の強化,帯同指導から成り,ステップ3は,受持数(交付)削減,帯同指導から成る。特別指導実施中に委託契約を更新する場合には,原告協会から示した具体的な業務改善要望事項を誠実に履行することを約束してもらい,この約束が果たされず,業務改善の見通しが立たない場合には,委託契約を解約することとされている。
(3)  地域スタッフの労働者性について
ア 事業組織への組入れについて
原告協会は,その事業収入のほとんどを受信料収入に依存しているから,その事業存続のため契約取次・収納等の地域スタッフの担う業務は重要であるところ,地域スタッフ数は減少傾向にあるものの,平成23年度は4400名,平成26年度も2600名が所属しており,契約取次の総数(平成23年度は415.9万件,平成28年度は330.8万件)に占める地域スタッフのシェアも,平成23年度は46.7%,平成28年度においても15.2%である(上記(2)ア(イ))。このような原告協会の事業における地域スタッフの果たす役割の重要性やその規模に加え,原告協会が,契約取次等を進める拠点として全国75か所の営業センター等を設置し,これに各地域スタッフを配置して,職員や契約社員と地域スタッフとでチームやJGを組織した上,実施要領,マニュアル,目標数の設定,計画表・報告書,出局日・中間連絡,一斉デー,特別指導等により組織的に地域スタッフを管理・指導して契約取次等の効率的・効果的な遂行を図っていること(前提事実(1),上記(2)エ)や,1年以上継続した地域スタッフの平均継続年数が8.9年にのぼるなど地域スタッフによる労務提供が恒常的なものであること(上記(2)イ(ア))に鑑みれば,地域スタッフは,原告協会の事業遂行に不可欠ないし枢要な労働力としてその組織内に確保されており,事業組織へ組み入れられている面があるということができる。
イ 契約内容の一方的・定型的決定について
地域スタッフの委託契約書は,原告協会が用意した全国共通のひな形が用いられ,委託種別や受持区域等以外の大部分が定型の内容となっており,契約期間も新規の場合は8か月程度,更新後は3年とされている上,全国統一基準である事務費単価や委託契約に基づく地域スタッフの仕事の進め方を定める実施要領等についても,受託者組合と協議の上で,最終的には原告協会が決定している(上記(2)イ(ア),(ウ),ウ(ア))のであり,原告協会がこれに抵触する契約の締結に応じることはない。そうすると,地域スタッフは,その委託契約の大部分について,原告協会との間で対等な立場での個別交渉により合意しているものではなく,契約内容を一方的・定型的に決定されている面があるということができる。
ウ 報酬の労務対価性について
(ア) 運営基本額は,当月訪問件数が1件以上かつ当月業務従事実績が1件以上であれば少なくとも7万5000円(大都市圏加算額の支払対象地域にあっては,8万5000円ないし9万円)が支払われる(上記(2)ウ(ウ),(エ))ところ,証拠(乙D1〔46頁〕)及び弁論の全趣旨によれば,平成23年度のi放送局管内の地域スタッフのうち,運営基本額が支払われなかった地域スタッフの割合は月平均約5.8%にとどまっており,これは実際に業務に全く従事しなかった者も含めた割合であることが認められるから,運営基本額の支払要件を充足することは相当程度容易であると考えられる。しかも,運営基本額の支払要件を充足した上で,当月訪問件数が1500件以上となれば,業務従事実績の件数に関係なく月額15万円(大都市圏加算額の支払対象地域にあっては,月額16万円ないし16万5000円)が支払われる(上記(2)ウ(ウ),(エ))ものであり,原告協会も,春闘時に受託者組合に交付した平均的な報酬に関する資料(乙A85)において運営基本額を15万円と記載し,求人広告(乙A21~29)においても報酬が固定報酬(乙A28の2においては15万円)と歩合から成ると記載していた(ただし,現在はそのような記載はしていない(甲30)。)のであるから,運営基本額及び大都市圏加算額については,基本給的な性格を有するものと見ることができる。そして,原告協会の作成した平成24年の春闘用の資料(乙A85)において,地域スタッフの平均的な報酬(月例事務費)は37万円程度とされていることに照らせば,運営基本額及び大都市圏加算額は地域スタッフの月例事務費の相当割合を占めているものということができる。
(イ) また,報奨金は,平均事務費支払額,上・下半期業績加算及び業務精励加算により構成されるところ,このうち平均事務費支払額は,月例事務費の1か月平均額に133%(6月支払分)又は189%(12月支払分)を乗じることにより算定されるものであり,年間で月例事務費の3.22か月分に相当する額が支払われることになる(上記(2)ウ(ク))。また,業務精励加算についても,運営基本額の合計額が90万円であること(6か月連続で月額15万円の支払を受けることにより達成される。)が中心的な支払要件とされている(上記(2)ウ(ク))。このように報奨金のうち平均事務費支払額及び業務精励加算の相当部分については,基本給的な性格を有する運営基本額及び大都市圏加算額に連動している。そして,報奨金のうち上・下半期業績加算は最大でも10万円である(上記(2)ウ(ク))から,平均事務費支払額(月例事務費の1か月平均額が30万円の場合,6月支払い分は約40万円,12月支払分は約57万円となる。)が報奨金の中核を占める。
(ウ) さらに,委託契約終了時に支払われる餞別金のうち一般餞別金は委託期間の長さのみにより支払額が決められており,その額も20年以上で600万円を超えるほか,特別餞別金についても委託期間の長さ次第で支払額が最大2倍程度異なり(上記(2)ウ(ケ),乙A4〔68,69頁〕),契約期間が長期にわたる地域スタッフを厚遇する仕組みとなっており,退職金制度に類似している。
(エ) 以上によれば,運営基本額・大都市圏加算額,報奨金(平均事務費支払額・業務精励加算)及び餞別金については,労務供給に対する対価としての性質を有するということができる。そして,地域スタッフの在職中に支払われる主な報酬は月例事務費及び報奨金である(別紙1参照)ところ,これらは,運営基本額・大都市圏加算額ないしこれに連動する部分が相当割合を占めているから,地域スタッフの報酬は,労務供給に対する対価という性質を有する面があるということができる。
エ 業務依頼に応ずべき関係について
原告協会は,委託契約において合意された委託種別及び受持区域等の範囲において,各地域スタッフに毎期(2か月間)の目標数を設定しており,地域スタッフはその目標数を変更することもできず,実施要領のあらましにおいても,各地域スタッフの目標数が達成されないと,所属先の営業センター等や原告協会全体の目標数が達成されないことにつながるので万全を期してもらいたいことを記載しているほか,目標数の達成状況が芳しくない地域スタッフについては,特別指導や委託契約の解約等の対象とされる(上記(2)エ(エ),(ク))。また,原告協会は,「一斉デー」に参加しなかった地域スタッフに対し,不参加についての説明を求めている(上記(2)エ(キ))。これらの事情に鑑みれば,地域スタッフは,原告協会からの業務依頼に基本的に応ずべき関係にある面があるということができる。
オ 労務供給に係る拘束・指揮監督について
原告協会が,地域スタッフに対し,①地域スタッフの仕事の進め方について定めた実施要領のあらましや1日の活動イメージ等を記載したマニュアルを配布していること,②毎期の目標数を設定し,それを期末までにどのようなスケジュールで達成するかを明らかにする週単位の計画表の提出を求めていること,③目標達成の進捗等について,毎週1回の報告書の提出,定期的な出局(本件センターにおいては月3回)及び中間連絡を求めているほか,顧客対応の結果も配布したナビタンを通じて原告協会に報告させていること,④目標達成に向けて来局日等に指導を行い,取り分け所定の成績不振者については,帯同指導等を含む特別指導を行っていることといった事情(上記(2)エ(イ)~(カ),(ク))に鑑みれば,地域スタッフは,その労務の提供に当たり,原告協会から日時や場所等について一定の拘束を受けており,労務供給に係る拘束・指揮監督を受けている面があるということができる。
カ 顕著な事業者性について
原告協会は,地域スタッフが業務を行う日時や訪問先や訪問の順番等について広い裁量を有しており,その実績・成果に応じて報酬の支払を受け業務内容を差配して収益管理をすることができ,兼業や再委託が許されていることなどを指摘して,地域スタッフについて労組法所定の労働者性を否定することになるような顕著な事業性を肯定することができる旨主張する。しかしながら,上記エ(業務依頼に応ずべき関係)及びオ(労務供給に係る拘束・指揮監督)について説示したところに加え,再委託を行う地域スタッフの割合は1.9%と低く,再委託先の多くは目標数達成のため親族の助力を得るという域を出ないものと見られること(乙B56,66,86,弁論の全趣旨)に鑑みると,原告協会が主張する事情を考慮しても,地域スタッフについて労組法所定の労働者性を否定することになるような顕著な事業者性を有する者であると評価することはできない。
キ まとめ
(ア) 以上のとおり,地域スタッフについては,原告協会の事業組織へ組み入れられ,契約内容を一方的・定型的に決定されていて,その報酬は労務供給に対する対価という性質を有し,原告協会からの業務依頼に基本的に応ずべき関係にあり,労務供給に係る拘束・指揮監督を受けているという面があるということができる一方,労組法所定の労働者性を否定することになるような顕著な事業者性を肯定することは困難である。そして,これらのことを総合的に評価すると,地域スタッフは労働契約下にある労務供給者と同程度に団体交渉の保護を及ぼす必要性と適切性が認められる同種の労務供給契約下にある者といえ,労組法所定の労働者に該当すると認めることができる。
(イ) ①事業組織への組入れに関し,法人委託の比率の拡大に伴い,地域スタッフ数が減少傾向にあり,契約取次の総数に占める地域スタッフのシェアも2割を切っていること(上記(2)ア(ア),(イ)),②契約内容の一方的・定型的決定に関し,受持区域の変更等については地域スタッフと個別協議されているほか,事務費単価は受託者組合と協議の上で決定されていること(上記(2)イ(ウ),ウ(ア)),③報酬の労務対価性について,原告協会は,地域スタッフを社会保険に加入させておらず,その報酬については,地域スタッフが事業所得として確定申告しているほか,当月業務従事実績がなければ運営基本額は支払われず,業績基本額,単価事務費及び報奨金の上・下半期業績加算並びにこれらに連動する報奨金の平均事務費支払額及び業務精励加算は歩合ないしこれに類する報酬であること(上記(2)ウ(イ),(ウ),(オ),(カ),(ク)),④業務依頼に応ずべき関係,労務供給に係る拘束・指揮監督及び顕著な事業者性等に関し,地域スタッフは,業務を行う日時や業務量の決定につき一定の裁量を有し,再委託・兼業も認められており,委託業務に使用する自動車等を自ら用意し,その燃料代も自ら負担しているほか,助言・指導等に従わない者や一斉デー・出局日に不参加・欠席した者等(甲22~24)が懲罰を受けることもなく,地域スタッフの目標設定及びその達成は放送法に基づく原告協会の事業活動の性質等に由来する面があること(前提事実(1),上記(2)イ(エ),エ(ア),弁論の全趣旨)などの原告協会が指摘する諸事情を考慮しても,上記アないしカにおいて検討したところに照らせば,地域スタッフについて,労組法所定の労働者に該当するとの評価を覆すには足りない。以上のほか,原告協会の主張するところを検討しても,上記(ア)の判断を覆すに足りる事情は見当たらない。
2  争点2(本件S君発言等に係る申立ての期間徒過の有無)について
(1)  本件申立てに係る各不当労働行為のうち本件S君発言(平成22年6月21日)及び本件70歳定年発言(同年11月1日)については,本件申立てがされた平成23年11月11日時点において1年を経過しており,労組法7条2項所定の申立期間を徒過したものでないかが問題となるところ,原告組合は,本件申立てに係る不当労働行為(本件各発言,本件不誠実団交及び本件出席拒否)は一連のものであって,労組法7条2項所定の「継続する行為」と見ることができるなどと主張する。
(2)  しかしながら,原告組合の主張によれば,本件S君発言がされたのは平成22年6月21日,本件70歳定年発言がされたのは同年11月1日,本件新会社発言がされたのは平成23年1月21日であって,それぞれの間隔も2か月以上開いており本件各発言は別個の発言というほかないから,本件各発言を一連のものとみて「継続する行為」に当たると認めることは困難である。また,本件不誠実団交及び本件出席拒否は団交の局面における不当労働行為を主張するものであり,Kセンター長のM副委員長に対する個別の発言である本件S君発言や本件70歳定年発言とは時期が異なるだけでなくその内容や性質をも異にするから,これらの発言と本件不誠実団交及び本件出席拒否を一連のものとして「継続する行為」と評価することもできない。そして,本件各発言,本件不誠実団交及び本件出席拒否の背景として,原告組合を切り崩すという原告協会ないしKセンター長の意図があったことを認めるに足りる証拠は見当たらない。したがって,本件申立てに係る各不当労働行為を「継続する行為」と評価することはできない。
(3)  以上によれば,本件申立ての時点において1年を経過していた本件S君発言及び本件70歳定年発言に係る申立ては申立期間を徒過していたものであって,これと異なる原告組合の上記(1)の主張は採用することができない。
3  争点3(本件各発言及び本件不誠実団交の不当労働行為該当性)について
(1)  前記前提事実に証拠(甲2〔38~43頁〕,乙A12〔4頁〕,13,16,B2,7のほかは各項末尾に掲記する。)及び弁論の全趣旨を併せると次の各事実を認定することができる。
ア Kセンター長は,本件センターにおいて勤務していた平成2年ころにM副委員長と知り合い,平成12年10月にはM副委員長の娘の結婚式に出席するなど,本件センターに着任した平成22年6月までに約20年間にわたり交友関係が継続していた。(乙C5〔15,16頁〕)
イ 平成22年6月21日はKセンター長着任後初めての出局日であり,M副委員長は本件センターに出局してKセンター長に挨拶をしたほか,P委員長とS書記長をKセンター長に紹介した。P委員長とS書記長は,Kセンター長に挨拶した後すぐに退室した。Kセンター長は,P委員長とは面識があったが,S書記長とは初対面であった。(乙C3〔4頁〕,5〔23頁〕)
ウ M副委員長は,平成22年7月8日ころ,愛知県清須市内の寿司屋でKセンター長の歓迎会を開き,これにはM副委員長の妻及びM副委員長の担当を務めていたこともある本件センターのU職員(以下「U職員」という。)も同席した。(乙B16,C1〔28頁〕,5〔4,44頁〕,6〔54,55頁〕)
エ M副委員長は,平成16年2月ころから業績不振により特別指導を受けていたところ,平成22年8・9月期の成績が悪く,同年10・11月期は「ステップ3」として受持数を半分にされていた。Kセンター長は,同年11月ころ,M副委員長から契約更新がされないかについて尋ねられた際,これを否定しなかったことがあった。(乙C5〔6頁〕)
オ 本件センターにおいて,平成22年12月1日(出局日),契約更新対象者への説明会が開催された。M副委員長は,Kセンター長に対して契約更新がされないのであれば出席する必要はないかを尋ねたところ,Kセンター長から出席するように言われたため,結局上記説明会に出席した。
カ U職員は,Kセンター長からM副委員長の勤続30年を祝う会の幹事を頼まれていたこともあり,平成23年1月11日(出局日),M副委員長を誘って昼食をともにした。なお,その際の昼食代金はM副委員長が負担した。(乙C1〔28頁〕)
キ Kセンター長は,平成23年1月21日(出局日)M副委員長を誘って昼食をともにし,その際,同年4月以降に○○メイトの委託契約をすることは年齢制限によりできないことを伝えた。M副委員長は,Kセンター長との昼食後,P委員長,S書記長及びT組合員を含む原告組合の組合員数名が昼食をとっていた飲食店に合流し,Kセンター長から,70歳以上は委託契約を更新することはできないと言われたことなどを話した。これを聞いた原告組合の組合員らは,組合つぶしではないかなどの話をしていた。(乙C3〔8頁〕)
ク P委員長は,70歳以上であっても契約更新をすることができるとの認識であったことから,平成23年1月下旬,N中央書記長に対し,M副委員長がKセンター長からが70歳以上は委託契約を更新することはできないと言われたことを報告した。N中央書記長も,70歳以上でも契約更新をすることはできるとの認識であったため,その旨をP委員長に返答したほか,委託推進部に対してもその認識に誤りがないことの確認を取り,これをP委員長にも伝えた。
ケ 中央本部は,平成23年2月22日の事務折衝において,委託推進部に対し,70歳以上の地域スタッフは契約更新をすることができないという誤った内容の発言をKセンター長がしたのでこれを是正するよう申し入れた。
コ M副委員長は,平成22年12月・平成23年1月期に所定の目標数を達成したことに伴い,本件センターは,M副委員長に対する特別指導を終了した。また,同年4月以降のM副委員長の委託契約は更新された。(乙A36)
サ P委員長は,本件各発言に係る経緯についてM副委員長から聴取した内容をまとめたメモ(乙B7)を平成23年4月6日付けで作成した。中央本部では,このメモを踏まえて,同月8日以降,委託推進本部との間で中央交渉を行った。(乙C3〔12頁〕)
(2)  本件各発言の有無について
ア 原告組合の主張等
(ア) 原告組合は,Kセンター長が平成22年6月21日にM副委員長に対して本件S君発言(「S君も,あんなところで書記長をやっていてどうするんだろう。」という類の発言)をしたと主張するところ,M副委員長も,同日,Kセンター長に対し,P委員長及びS書記長を紹介した直後に,本件S君発言があったなどとこれに沿う証言(都労委の審問におけるものを指す〔以下同様。〕。)ないし記載(乙A13〔4頁〕,C1〔7~9頁〕)をしている。
(イ) また,原告組合は,Kセンター長が平成22年11月1日にM副委員長に対して本件70歳定年発言(「70歳以上は,委託契約の更新ができません。あっちこっち骨を折ったけど,70歳を過ぎているから,○○メイトの仕事もできません。」という類の発言)をしたと主張するところ,M副委員長も,同日,Kセンター長に対し,次回の更新はできるかを尋ねたところ,本件70歳定年発言があったなどとこれに沿う証言ないし記載(乙A13〔5頁〕,C1〔9~11頁〕)をしている。
(ウ) さらに,原告組合は,Kセンター長が平成23年1月21日にM副委員長も本件新会社発言(「新しい会社が近いうちにできるけど,あんなところにおっては,S君もT君も推薦できないよ。」という類の発言)をしたと主張するところ,M副委員長も,同日,Kセンター長から昼食に誘われ,本件新会社発言があり,原告協会が設立予定の契約取次・集金専門の法人に推薦してもらえないという話であったなどとこれに沿う証言ないし記載(乙A13〔7頁〕,C1〔13~11頁〕)をしている。
イ 検討
(ア) 本件各発言については,これを裏付ける客観的な証拠やM副委員長の証言ないし陳述書の記載以外の直接証拠は存在しない。
(イ) そして,本件S君発言はKセンター長がS書記長と知合いである場合にされるような内容のものであるところ,Kセンター長は,M副委員長から紹介を受けるまではS書記長とは面識すらなかったのであり,挨拶した後,すぐに退室しただけのS書記長に対してかかる発言を行ったという経緯自体が不自然といわざるを得ないし,Kセンター長が本件センターに着任早々に本件支部の幹部であるM副委員長に対してそのような発言をすべき動機も理由も見当たらない(乙B2〔1頁〕)。しかも,原告組合の主張を前提としても,M副委員長が原告組合の他の組合員に対して本件S君発言があったことを伝えたのは,当該発言があったとされる日時から半年以上も経過した平成23年1月21日になってからのことである。
(ウ) また,地域スタッフは70歳以上であっても委託契約を更新することができるところ,本件Kセンター長が,本件支部の幹部であるM副委員長に対し,そのような虚偽の発言をすべき動機や理由は見当たらない。しかも,Kセンター長は,平成22年12月1日に開催された契約更新対象者への説明会に出席する必要がないかを尋ねたM副委員長に対し,その出席を促しているのであり,このようなKセンター長の行動は,M副委員長に退職の意思表示をさせようと誤導したとの原告組合の主張と整合しない。そして,原告組合の主張及びM副委員長の証言(乙C1〔25~27頁〕)を前提するとしても,M副委員長は,本件70歳定年発言を聞くまでは70歳以上でも契約更新できるとの理解であったのであり,実際に更新している地域スタッフがいることも知っていたが,本件70歳定年発言を聞いた後,Kセンター長や本件センターの他の職員に対し,制度変更があったのかを確認したり,平成23年1月21日まで,本件組合の他の組合員に相談したりすることもなかった。これは同年4月以降も契約が更新されるかを不安に感じていた者の行動としては不自然といわざるを得ない。本件70歳定年発言に関連してM副委員長は,平成23年1月11日,U職員に誘われて昼食をともにした際,辞表の提出を求められ,契約期間満了の1か月前(乙B5の15条1項参照)の3月1日までに出せばいいんだろうと答えたとも証言ないし記載する(乙A13,C1〔27頁〕)けれども,その際の昼食代金はM副委員長が負担している上,契約期間満了により契約が終了する際に辞表(解約届)を提出しなければならない理由も不明である(乙C1〔28頁〕)。
(エ) さらに,証拠(乙A15,32,B13,14,C4〔73~75頁〕,C8〔65,66頁〕)及び弁論の全趣旨によれば,平成20年ないし平成21年ころ,原告協会が別法人を設立した上,同法人が地域スタッフを雇用するという形に再編していくことが,地域スタッフ体制の改革における選択肢の一つとして検討されたことはあったものの,その構想が具体化することはなく,平成23年1月21日の段階においても,かかる別法人が近いうちに設立されるような客観的状況にはなかったことが認められる。そのような状況において,Kセンター長が,本件支部の幹部であるM副委員長を昼食に誘った上で,新会社が近いうちに設立されることや当該新会社に原告組合員の組合員を推薦できないことを発言する動機や理由は見当たらない。しかも,原告組合の主張やM副委員長の証言(乙C1〔40,41頁〕)を前提としても,M副委員長は,本件新会社発言を聞いた際,Kセンター長に対し,どのような新会社がいつ設立されるかやその場合の地域スタッフに対する影響等について,何ら確認することなく,また,明らかな組合員差別について抗議することもしなかったということであり,いかにも不自然であるといわざるを得ない。
(オ) 以上によれば,M副委員長の証言ないし陳述書の記載に基づき,本件各発言があったことを認定することは困難であるし,他にも本件各発言の存在を認定するに足りる的確な証拠は見当たらない。したがって,原告組合の上記アの主張はいずれも採用することができない。
(3)  本件新会社発言及び本件不誠実団交の不当労働行為該当性について
ア 上記(2)において検討したとおり,本件新会社発言があったとは認められない。
イ 上記(2)において検討したとおり,本件各発言があったとは認められない以上,原告協会が平成23年4月27日の中央団交及び同年7月12日の支部団交において本件各発言があったことを否定したからといって,虚偽の回答を繰り返したとか,原告協会の交渉態度が不誠実であると評価することはできないこととなる。
ウ 以上によれば,本件新会社発言及び本件不誠実団交に係る申立てを棄却すべきものとした本件命令は適法であって,これと異なる原告組合の主張は採用することができない。
4  争点4(本件交渉ルールの適用の可否)について
(1)  原告の主張等
ア 原告協会は,①本件事前了解中の本件包括継承条項により原告組合との交渉においても本件交渉レベル合意(別紙3)が適用されること,②本件交渉慣行(支部交渉の出席者は,原則として支部メンバーとし,中央執行委員の出席は,例外的に双方の協議が整う場合に限られる,交渉の出席者は事前折衝の中で双方の合意により定めるという交渉慣行)が存在すること,及び③本件個別合意(平成23年4月27日の中央交渉において成立した,本件各発言に関する支部交渉を支部メンバーだけで行うという個別合意)が存在することから,本件各発言に係る支部交渉について,本件交渉ルールが適用されると主張する。
イ ところで,既に説示したとおり,地域スタッフは労組法上の労働者と認められるから,地域スタッフにより構成される原告組合は同法でいう労働組合に該当することとなる。そして,労組法6条が労働組合の代表者又はその委任を受けた者が団交における交渉権限を有すると定めていることに鑑みれば,使用者は,特段の事情がない限り,労働組合の代表者又はその委任を受けた者の出席を拒みえないものと解される。しかるところ,本件交渉レベル合意(別紙3)の4(2),(3)は,下部交渉に上部役員が出席することができる場合を「特に必要がある場合」に限定し,上部役員の出席については事前に労使間で話し合い,双方了解の上で行うことを定めており,団交の出席者に関する労働組合の裁量を相当程度制約する内容となっており,原告協会が主張する本件慣行の内容もこれに類似するものである。
ウ そして,団交ルールに関する合意や慣行が存在する場合,それが特に不合理なものでない限り労使当事者を拘束すると解されるところ,まず,そのような合意ないし慣行が平成23年6月ないし7月当時存在したと認められるかについて以下で検討を加えることとする。
(2)  本件事前了解ないし本件慣行に基づく本件交渉ルールの適用の可否について
ア 原告協会は,原告との間で本件事前了解が成立していたことを裏付ける事情として,①原告組合との間では,昭和57年10月12日から同月18日にかけて,事前了解について4回にわたる交渉が延べ8時間20分実施されその結果として本件事前了解が成立したことが,信頼性の高い交渉記録等により確認できること,②原告協会が原告組合のみを特別扱いして事前了解の成立無しに交渉を行う理由はなかった一方で,原告組合は,早急に交渉を開始するために本件事前了解で妥協する必要が高かったこと,③原告組合は,他の受託者組合との差別取扱いを懸念していて他の受託者組合が合意しているものを拒絶する理由もなかったし,4回の折衝において大幅な修正を求めることもなかったこと,④原告協会は,本件事前了解中の本件包括継承条項に基づき,原告組合に対しても,事務室貸与,報酬からの組合費の天引き,「組合役員の応援」,委託制度改善検討専門委員会の設置等を行ってきたこと,⑤原告組合の作成した書面にも本件事前了解の存在を前提とした記載があることを指摘する。
イ 本件事前了解が成立したとされる昭和57年10月18日の団交に関する原告協会の作成した交渉記録(乙B34)によれば,①書記局(事務室)貸与の問題について,原告組合は引き続き早急な目途の提示を強く求め,この問題は継続要求とすること,②原告組合は,従来主張を繰り返す中で,書記局の問題と労働協約の文書確認の問題とのいずれかについて具体的な形を取ることを要求し続けるが,当面,原告組合としては,交渉を正式の中央交渉(中央団交)の形に移行させたいこと,③原告協会は,継続要求に関する組合主張はさて措き,現在の交渉原則案の内容について合意するかどうかを質したところ,原告組合は,文書確認の段階では表現上の注文があり得るが基本精神は了解するとして,重ねてこの表現で口頭確認とする旨の意向を述べたので,事前了解事項については両者の合意は成立したという立場を双方取ることとしたことなどが記載されている。そうすると,原告協会の交渉記録の記載を前提としても,事前了解に関する折衝の最終日の段階において,少なくとも書記局の問題及び労働協約の文書確認の問題については決着を見ていないこと,原告組合が「文書確認」の段階では表現上の注文があり得るとか,基本精神を了解するにとどまるなどと述べていたことを指摘することができる。
ウ また,本件事前了解(本件包括継承条項を除く。)には,原告組合側の団交の出席者について,原告組合の組合員によって選出された執行委員の中から若干名という以上の限定はされていないところ,本件事前了解の下において,本件包括継承条項を介して本件交渉レベル合意が適用される結果,支部交渉において中央執行委員の出席が制約されることになるのか否かは必ずしも明確になっているとはいえない。原告協会の作成した交渉記録(乙B31~34,42)を見ても,昭和57年10月12日から同月18日までの4回の交渉において,本件包括継承条項を介して原告組合との団交に本件交渉レベル合意が適用されることや支部交渉において中央執行委員の出席が制約されることについて,個別具体的なやり取りがされた形跡は全く窺われない。
エ そして,原告組合がb労から脱退した地域スタッフらにより結成された受託者組合であること(一般に,b労の執行部の方針に不満があったからこそ脱退したものと理解されること),事前了解については正式交渉を開始する前提で協議されていたものであったこと,労働組合からの団交申入れに対し,使用者が交渉ルール未確立を理由として交渉を拒否することは原則として許されないと解されることを併せ考慮すれば,本件事前了解が「口頭確認」されていたとしても,その趣旨は終局的に労使双方を拘束する合意の成立を意味するものではなく,取り分け本件包括継承条項の適用範囲等については,その後に正式交渉を続けていく中で具体化していくことを前提とした暫定的な交渉ルールが確認されたにすぎない(乙C9〔26頁〕)と評価すべきことも十分に考えられるところである。したがって,本件出席拒否に係る支部交渉以前に,原告協会が,原告組合との支部交渉において,中央執行役員の出席を制約してきた実績がどの程度存在したかも踏まえて更に「文書確認」に至らない「口頭確認」の趣旨を評価する必要がある。
オ この点について,証拠(甲2〔50~52頁〕,乙A15,61,64,75~77,C3〔54頁〕)及び弁論の全趣旨によれば,①L元中央書記長及びO中央執行委員は,平成22年7月12日に実施された本件支部の支部交渉に出席し,N中央書記長は,平成21年4月21日,同年11月12日及び平成23年2月10日に実施された支部交渉に出席し,R中央副委員長は平成21年11月12日及び平成23年8月11日に実施された支部交渉に出席しているなど多数回の支部団交に原告組合の中央執行委員が出席していること,②原告組合の中央執行委員が支部団交に出席したことは原告協会の記録においても29回(支部結成通告9回,その他20回)あったことが確認できることが認められる。そして,原告協会が,これらの中央執行委員を出席者に含む支部交渉の申入れに対し,本件交渉レベル合意に基づき,中央執行委員の出席を制約したことを窺わせる記録等も全く見当たらない(乙C4〔94,95頁〕,7〔24頁〕)。
カ また,原告組合が原告協会に対して提出した昭和59年3月21日付け「条件付契約更新制度の見直しについて」と題する書面(乙B39)には,条件付契約更新についての現行ルールは,昭和54年3月に受託者組織(b労)も了解したものであるが,全受労は組合結成時に既でにあるルールとして否定も肯定もできないままに「交渉に当たっての事前了解」により継承させられたものである,原告組合は,原告協会と条件付契約更新についてのルールについて交渉を行い合意した経緯はないと記載されている。また,昭和60年2月15日に実施された都労委での審問(乙A65〔21,22頁〕)において,L元中央書記長は,本件包括継承条項には反対した旨を述べている。さらに,事前了解に係る交渉において,本件包括継承条項により原告組合を拘束することになる原告協会・b労間の過去の取決事項を交付した形跡も見当たらない(乙B31~34,42,C8〔49頁〕)ことも併せ考慮すると,本件事前了解中の本件包括継承条項については,原告組合に対してb労と同等の便宜供与を図る点についてはともかく,それ以外のb労が妥結した過去の取決事項の全てを確定的に原告組合に対して継承させる趣旨のものではないという原告組合の認識が窺われる。
キ 以上に加え,原告協会の交渉記録が交渉の一方当事者の記録にすぎないことを考慮すれば,同記録に「事前了解事項については両者の合意は成立したという立場を双方取ることとした」との記載があることや,その後に原告協会が本件事前了解は成立したとの内部連絡・周知をしたこと(甲11,15)などをもって,直ちに本件事前了解の「口頭確認」が労使双方が本件交渉レベル合意に拘束される趣旨での確定的な合意であったと評価することまではできないというべきである。また,上記エにおいて説示したところに照らせば,「支部交渉の出席者は,原則として支部メンバーとし,中央執行委員の出席は,例外的に双方の協議が整う場合に限られる,交渉の出席者は事前折衝の中で双方の合意により定める」ことが反復継続されていたという事実自体が認められないから,本件交渉慣行が存在するともいえない。したがって,本件事前了解又は本件交渉慣行に基づいて原告協会と原告組合との間で本件交渉ルールが適用されることになるとは認められない。
ク なお,事前了解が成立していたことを裏付ける事情として原告協会が主張するもののうち,原告組合が事務室貸与等の便宜供与を受けていること(上記(2)ア④)については,地域スタッフにより構成される他の労働組合との関係で差別取扱いをされるべきでないという観点からもごく自然な対応であると評価することができるところ,そうであるからといって本件事前了解や本件交渉慣行が存在し,これらに基づき原告協会と原告組合との間で本件交渉ルールが適用されることになるものではないから,本件交渉ルールの適用の可否を判断するに当たって,これを特に重視することはできない。また,原告組合が原告協会に対して提出した平成4年3月31日付け「組合役員の組合業務従事に関わる応援扱いの依頼について」と題する書類(乙B45)に本件事前了解に基づき組合活動に専従従事させるとの記載があること(上記(2)ア⑤)についても,上記と同様に,本件交渉ルールの適用の可否を判断するに当たって,これを特に重視することはできない。以上のほか,本件事前了解又は本件交渉慣行に基づいて本件交渉ルールが適用されるとは認められないとの判断を覆す事情を認めるに足りる証拠は見当たらず,この点に関する原告協会の主張は採用することができない。
(3)  本件個別合意に基づく本件交渉ルールの適用の可否について
ア 原告協会は,平成23年4月27日の中央交渉において,「本件センターの現場で,通常のメンバーで一度話し合ってはどうか」と提案したところ,原告組合もこれを受け入れて支部交渉が行われることとなり,支部メンバーだけで本件各発言に関する支部交渉を行うという本件個別合意が成立したなどと主張する。
イ しかしながら,証拠(甲2〔44頁〕,36の4,乙B12,C8〔56~59頁〕)及び弁論の全趣旨によれば,平成23年4月27日及び同年5月20日の中央団交において,原告協会は,原告組合に対し,本件各発言については支部団交で交渉することが提案したものの,原告組合の中央執行委員の出席を認めないことを明示的に提案することはなく,原告組合との間で,出席者の範囲について協議したこともなかったことが認められるのであって,本件個別合意が成立したと認めることは困難である。
ウ したがって,本件各発言に関する支部交渉において,本件個別合意に基づき本件交渉ルールが適用されるとは認められない。以上のほか,この判断を覆すに足りる証拠も見当たらないから,上記アの原告協会の主張は採用することができない。
5  争点5(本件出席許否の不当労働行為該当性)について
(1)  本件交渉事項の義務的団交事項該当性について
ア 本件命令(甲2〔71頁〕)は,本件70歳定年発言に関する団交が義務的団交事項に該当することを理由として,本件交渉事項に義務的団交事項が含まれていると判断している。そして,原告協会は,①原告組合が委託契約の更新に年齢制限がなく70歳以上でも更新できることは確認済みであったこと,②Kセンター長には委託契約の更新の条件について回答する権限はないこと,③M副委員長の委託契約は平成23年4月1日付けで更新済みであることなどを指摘して,本件70歳定年発言に関する交渉事項は,個別の不当労働行為の存否の質疑にすぎず,これは義務的団交事項に該当しないことを主張する。
イ この点,義務的団交事項とは,団交を申し入れた労働組合の構成員の労働条件その他の待遇,当該労働組合と使用者との間の団体迪労使関係の運営に関する事項であって,使用者に処分可能なものと解するのが相当である。そして,証拠(甲36の1〔5頁〕,3〔3頁〕,乙A12,13,62,B7,C3〔32,33頁〕)及び弁論の全趣旨によれば,本件70歳定年発言について,原告組合は,Kセンター長がM副委員長に対して70歳の到達を期に辞職届を提出させ,委託契約の更新を求めないよう誘導した点をも問題視していたことが認められるところ,これは退職や契約更新といった組合員の労働条件に関する事項であるということができる。けだし,実施要領においても老齢化により業務遂行に支障が生ずるおそれがあるときの取扱いに関する定めがあること(乙A1〔11,15頁〕や,委託契約の更新については地域スタッフの所属する営業センター等において行われるものである(乙A38~45参照)ことに鑑みれば,上記アの①ないし③の事情を考慮しても,本件各発言に関する支部団交における本件70歳定年発言に関する交渉事項について退職や契約更新に関する事項が含まれることは否定することができないというべきである。
ウ したがって,その余の事項について検討・判断するまでもなく,本件交渉事項には義務的事項が含まれるから,原告協会の上記アの主張は採用することができない。
(2)  本件出席許否の不当労働行為該当性について
ア 上記4(1)イにおいて説示したとおり,使用者は,特段の事情がない限り,労働組合の代表者又はその委任を受けた者の出席を拒みえないものと解されるところ,上記4(2),(3)のとおり,本件事前了解,本件慣行ないし本件個別合意に基づき原告協会と原告組合との間で本件交渉ルールが適用されるということはない。原告協会が提出する平成23年6月13日のやり取りの記録等(甲35,36)を検討しても,本件各発言に係る支部交渉において,原告組合の中央執行委員の出席を認めるべきでない特段の事情が存在することは窺われない。そして,証拠(甲36の4,乙A14,15,17,C2,〔54~69頁〕,3〔14~19頁〕,7〔14,34頁〕,8〔59~61頁〕)及び弁論の全趣旨によれば,原告協会は中央執行委員が出席する場合には本件各発言に関する支部団交に応じないという対応をしていたのであり,そのために平成23年7月12日の支部団交において原告組合が中央執行委員の出席を断念したことが認められ,かかる原告協会の対応(本件出席許否)は正当な理由のない団交拒否に該当するということができる。
イ 以上の点に関連して,原告協会は,平成23年4月8日の中央交渉以降,事実調査を実施したものの,本件各発言がされた事実を確認することができず,中央本部は,本件支部からの報告を鵜呑みにして十分な事実確認を行っていない様子であり,中央交渉では交渉の進展が期待できない状況となったことを主張する(上記第3の4(1)オ)けれども,本件交渉事項に関しては,中央団交を経て支部団交が実施されるという経緯にも鑑みれば,上記原告協会の主張するところをもって中央執行委員が支部メンバーとともに支部団交に出席することを認めるべきでない特段の事情があるということはできない。また,原告協会は,本件各発言については,支部交渉に入る前の段階で既に団交義務を尽くしていたなどとも主張するが,平成23年4月27日及び同年5月20日の中央団交において,支部団交への移行を提案したのは原告協会であることに照らせば,必ずしも支部交渉に入る前の段階で既に団交義務を尽くしていたと評価することはできないから,本件出席拒否(団交拒否)に正当な理由があるとはいえない。
ウ 以上によれば,原告組合の主張に係る本件出席拒否は,労組法7条2項所定の正当な理由のない団交拒否として,不当労働行為に該当するものと認められることとなる。
6  結論
以上のとおりであるから,本件S君発言及び本件70歳定年発言に係る申立てを却下し,本件新会社発言及び本件不誠実団交に係る申立てを棄却し,本件出席に係る申立てを認容し,前提事実(3)ウ(ア)①ないし③の内容の救済命令を発令した初審命令を維持した本件命令は適法である。
よって,本件命令の取消しを求める原告協会及び原告組合の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとして,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第11部
(裁判長裁判官 佐久間健吉 裁判官 石田佳世子 裁判官 井出正弘)

 

〈以下省略〉

 

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