
判例リスト「完全成功報酬|完全成果報酬 営業代行会社」(206)平成24年 4月25日 東京地裁 平22(ワ)25990号 保証金返還本訴請求、報酬金反訴請求事件
判例リスト「完全成功報酬|完全成果報酬 営業代行会社」(206)平成24年 4月25日 東京地裁 平22(ワ)25990号 保証金返還本訴請求、報酬金反訴請求事件
裁判年月日 平成24年 4月25日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平22(ワ)25990号・平22(ワ)43577号
事件名 保証金返還本訴請求、報酬金反訴請求事件
裁判結果 本訴請求一部認容、反訴請求棄却 文献番号 2012WLJPCA04258011
要旨
◆原告が、賃借していたビルの貸主から提起された明渡請求訴訟等につき委任した弁護士である被告に対し、訴訟事件が和解により終了し、被告が貸主から受領した保証金の返還等を求めた(本訴)ところ、被告が、原告に対し、委任途中で委任契約を解除されたと主張して、みなし報酬金の支払を求めた(反訴)事案において、経済的利益、事件の難易度、弁護士の労力など諸般の事情を検討、勘案し、当事者の合理的意思を推定して、本件委任における報酬金の額を認定した上で、本件委任の範囲を確定して本件委任は終了したとし、保証金返還請求権と報酬請求権を相殺処理して、本訴請求を一部認容し、反訴請求を棄却した事例
参照条文
民法505条1項
民法643条
民法648条
裁判年月日 平成24年 4月25日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平22(ワ)25990号・平22(ワ)43577号
事件名 保証金返還本訴請求、報酬金反訴請求事件
裁判結果 本訴請求一部認容、反訴請求棄却 文献番号 2012WLJPCA04258011
平成22年(ワ)第25990号,第43577号
保証金返還本訴請求,報酬金反訴請求事件
東京都港区〈以下省略〉
原告・反訴被告(以下「原告」という。) X有限会社
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 牧野雄作
東京都千代田区〈以下省略〉
被告・反訴原告(以下「被告」という。) Y
同訴訟代理人弁護士 高橋信行
主文
1 被告は,原告に対し,825万2200円及びこれに対する平成22年7月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 被告の反訴請求を棄却する。
4 訴訟費用は本訴反訴を通じ,これを10分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。
5 この判決は,第1項に限り仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 請求
1 原告の本訴請求
被告は,原告に対し,1000万円及びこれに対する平成22年7月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告の反訴請求
原告は,被告に対し,1900万円及びこれに対する平成22年11月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
本件は,原告が,賃借していたビルの貸主から提起された明渡請求訴訟等につき委任した被告(弁護士)に対し,訴訟事件が和解により終了し,被告が貸主から受領した保証金1000万円の返還及びその遅延損害金の支払を求めたのに対し,被告が,原告に対し,委任途中で委任契約を解除されたとして,みなし報酬金請求権として1900万円及びその遅延損害金の支払を求めるものである。
1 争いのない事実等
(1) 原告とB(以下「B」という。)は,平成13年2月ころ,Bを貸主,原告を借主として,aビル(以下「本件ビル」という。)の1階の一部(以下「本件建物」という。)を賃借物件とする賃貸借契約を締結し,原告は,以後同所でチケット商として営業してきた。上記賃貸借契約の際,原告は,Bに対し保証金として1000万円を差し入れた。
(2) Bは,原告に対し,本件ビルの建替えを理由に,本件建物から立ち退くよう通告し,その後,原告は,平成21年2月26日,Bの代理人弁護士を差出人とする「建物明渡催告書」と題する内容証明郵便を受け取った。
(3) 原告は,被告に対し,同年3月3日,上記本件建物明渡し請求に関する一切の手続を委任した(以下「本件委任」という。)。本件委任の契約書(以下「本件委任契約」という。)においては,原告が被告の同意なく委任事務を終了させたとき・・その他原告に重大な責任があるときは,被告は,報酬金の全部を請求することができる(5条),原告が被告に支払うべき金員を支払わないときは,被告は原告に対する金銭債務と相殺することができる(6条)と定められている。
(4) 本件ビルのテナントとして残っていた原告ら計3社は,同年6月11日,本件ビルのオーナーから同年7月15日に本件ビルの電気を完全に止めるとの連絡があったので,原告は,被告に対し,この事態を阻止するよう依頼し,被告は,電力切断の意思表示を撤回させた。
(5) Bは,原告に対し,本件建物の明渡請求事件を提訴し(横浜地方裁判所川崎支部平成21年(ワ)第212号,以下「別件訴訟事件」という。),訴訟代理人であった被告は,同年7月16日,同支部において,Bとの間で,別件訴訟事件について和解を成立させた(以下「本件和解」という。)。
(6) 被告は,遅くとも同年10月6日までに,Bから上記(1)の保証金1000万円の返還を受けた。
(7) 被告は,原告に対し,平成22年10月20日の本件第2回口頭弁論期日において,下記2(1)ア,イ,ウ記載の各報酬請求権1900万円をもって,原告の保証金返還請求権とその対当額において相殺するとの意思表示をした。
2 争点 本件委任の範囲及び報酬債権等の発生の有無,金額(抗弁及び反訴請求原因)
(1) 被告の主張
ア 本件ビルのテナントとして残っていた原告ら計3社は,平成21年6月11日,本件ビルのオーナーから同年7月15日に本件ビルの電気を完全に止めるとの連絡があったので,被告に対し,この事態を阻止するよう依頼し,被告は,電力切断の意思表示を撤回させた。したがって,被告は,原告ら3社に,1社当たり50万円,合計150万円の報酬請求権を得た。
イ 被告は,同年7月16日,Bとの間で,別件訴訟事件について,本件和解を成立させたから,被告は,原告に対し,250万円の報酬請求権を取得した。
ウ 本件委任の内容には,明渡請求への対処のみならず,建替え後の新規ビルの同位置に原告の再入居を実現するための一切の事項も含まれており,本件委任契約には,争いのない事実等(3)記載の条項があったから,被告は,原告に対し,新規ビルへの入居が実現した場合の成功報酬又はみなし報酬として,1500万円の報酬請求権を得た。
(2) 原告の主張
ア 原告が被告に電力切断を阻止するよう依頼し,被告が電力切断の意思表示を撤回させたことは認めるが,原告は,既に着手金50万円及び中間金100万円を被告に支払っており,それ以外に150万円の報酬請求権は発生していないか,仮に発生していても,その請求額は極めて過大である。
イ 本件和解の成立による被告の報酬請求額は極めて過大である。
ウ 原告は,新規ビルへの再入居を実現することに関して,被告に委任していない。
第3 当裁判所の判断
1 別件訴訟事件等の報酬金請求権について
(1) 被告が受任した事務の報酬額
ア 証拠(甲2)によれば,本件委任における報酬金の額は,「成功の程度に応じて」(本件委任契約3条(3)),「成果及び経過により,協議の上決定する」(同特約2)と定められていることが認められる。ここにいう「成功の程度」「成果」とは,事件の難易度を勘案した依頼者が当該委任契約に基づき得ることのできた経済的利益を,経過とは,事件の難易度を勘案して弁護士の労力の程度をさすものと解され,そうすると,報酬額は,経済的利益,事件の難易度,弁護士の労力など諸般の事情を検討,勘案し,当事者の合理的意思を推定して定めることとなる。
イ 当事者間に争いのない事実及び証拠(甲9,乙50,51の各1・2~52~55,88,被告本人)によれば,平成21年6月10日ころ,原告は,本件ビルの管理組合から,マンション建替組合事務局株式会社GA建築設計社を通じ,電力を切断する旨を通告され,電力切断を阻止することを被告に依頼し,被告は,本件建物の電力を同年7月15日ころ止める予定だった本件建物の管理組合との間で,窓口となる人物を通し,数回にわたり,面談,電話等で交渉を行い,同月30日ころまでに,同管理組合による電力切断の意思表示を撤回させたこと,原告は,同年8月31日に本件ビルを退去したこと,原告の1か月あたりの営業利益は45万円程度であったことが認められる。
上記の委任事項,内容は,Bから原告に対する本件建物の明渡し催告,別件訴訟事件の提起に関連するものの,電力を切断する旨通告したのは本件ビルの管理組合であるから,本件委任には含まれておらず,原告被告間で,別途口頭で委任された事項と認められるところ,上記の事実によれば,被告が上記電力切断を阻止したことにより原告が得た経済的利益は,1.5か月分の営業利益67万5000円であることが認められる。他方,電力供給の切断は,本件建物の賃貸人の賃借人に対して負う使用収益させる義務の違反となることは明らかであり,本来,その是非自体が問題となるものではなく,被告による交渉も,面談,電話等数回の交渉で決着したものであり,他方,本件和解の成立により,原告の本件建物からの退去が同年8月31日に定められ,これが実行された経過があることをも考慮すると,本件委任とは別に,原告の依頼により電力切断の意思表示を撤回させた委任事務により被告が原告に請求できる固有の報酬は,上記営業利益の1割である6万7500円とするのが相当である。
なお,被告の陳述書(乙88)及び被告の供述中には,被告は,原告のほか2社からも原告と共同して電力切断の阻止を委任された旨の記載部分があるが,原告以外の会社が被告に対し上記問題について委任したことを認めるに足りる証拠はない。
(2) 証拠(甲6,乙2の2,20の1~30の4,33~34の2,35~38の1,44~49,57の1~65,82)によれば,本件建物の賃貸人Bは,原告に対し,平成20年10月15日当時,本件建物の明渡しに伴う補償費として319万7000円を支払う意向を示していたこと,平成21年7月16日,別件訴訟事件につき,Bが原告に対し立退料として1500万円支払うとの条項を含む本件和解が成立したが,本件和解には,Bが建物を建て替えた後の建物所有者と原告が再度賃貸借契約を締結できるようにBが努力すること,建替え後の建物所有者と原告とが新たな賃貸借契約を締結できなかった場合には,Bは,原告に対し,追加の立退料500万円の支払義務があることを認め,これを支払うことが定められたこと,被告は,本件和解成立まで,原告との打ち合わせやBとの交渉を行い,別件訴訟事件の被告となった原告の訴訟代理人として訴訟追行したことが認められる。
(3) 以上の事実によれば,原告が本件和解成立によって得た経済的利益は,まず,賃貸借契約の合意解除による立退料1500万円から前記319万7000円を控除した1180万3000円であることが認められる。また,原告が再入居することができる権利は,本件和解においては直接定められなかったものの,原告の再入居を実現するためのBの努力義務,及び,原告による再入居が実現できなかった場合のBの500万円の追加立退料の支払義務が定められたのであるから,この500万円についても被告の訴訟活動により獲得した原告の経済的利益になると認められる。また,被告は,本件和解成立に至るまで一定程度訴訟追行や和解交渉に労力を割いたことが認められる。他方,Bと原告との賃貸借契約上,川崎市の再開発事業計画の実施が決定され,Bがそれを原告に通報した場合は,6か月以内に原告はBに対し本件建物の明渡義務が生じることになる(乙31)が,その段階に至るまでは原告に建物退去義務が生じない以上,原告が建物を退去するに当たっては,相当額の立退料の支払が認められるべき事案であること,被告は,後記認定のとおり,着手金として,第1回,第2回併せて既に150万円を受領していることを考慮すると,本件委任により被告が原告に請求できる報酬は,上記各金額の合計1680万3000円の1割である168万0300円であると認めるのが相当である。
2 本件委任の範囲
(1) 証拠(甲2,4,11,乙4,9,10,37の1・2,45,49,60の1,61,82,原告代表者)によれば,以下の事実が認められる。
ア 原告は,平成20年1月に,Bから,本件ビルの建替え計画の説明を受け,平成21年4月までに退去して欲しい旨の申入れを受け,その後,月に1,2回,B又は同人の子息が原告の店を来訪し,同様の話をしていた。平成20年5月29日,同年7月30日の話合いの際,原告は移転先と代替店舗の斡旋を要望し,同年10月15日,Bから前記補償金の提示を受けた。平成21年1月13日,原告は,再建築後のビルの概要の説明を受け,原告も新築予定ビルに入居したい旨要望したところ,Bは可能であると返答していた。同年2月9日,原告は,B側から基本設計概要,再入居確認書,出店申込書の3点の書類を受領し,工期,募集時期,家賃相場等の説明を受けた。同月16日,Bは,原告に対し,双方の弁護士による詰めの話をしたいので,至急弁護士を選任して欲しいと申し入れ,同月26日,Bの代理人C弁護士より,原告に対し,「建物明渡催告書」が送付された。
イ 原告は,同年3月3日,被告を尋ね,原告が平成20年9月10日に再入居を申し入れたところ,Bはこれを承諾する旨の返事をしていたが,新築予定ビルの地権者は5,6名おり,協同組合又は株式会社が建物所有者になる予定であること,原告はBから明渡催告を受けていること,他のテナントの状況等を被告に説明し,再入居の合意ができることを希望した。その後,原告は,被告に対し,Bを相手方とする本件建物の「建物明渡催告事件」につき,「示談交渉」「調停」「訴訟(第一審)」を範囲とする委任をし(甲2,本件委任契約1条),着手金として50万円(消費税込み)を支払い,同年5月ころ,領収書の日付を同年4月15日と記載して,第2回着手金として100万円を支払い,合計150万円を支払った。
ウ 原告は,被告に対し,平成21年5月12日及び同年6月23日,再入居の保証を条件として,別件訴訟事件の和解の話合いに応じることを示した。被告は,原告に対し,同月3日,同和解の話合いについて,再入居することを前提に進めることをBに伝えたことを連絡した。
エ 同年7月7日に,Bの代理人が被告にファクシミリ送信した和解条項案の頭紙には,「万一再入居ができなかった場合の金500万円の支払義務」についての記載があり,その支払期日や遅延損害金について,原告代理人であった被告に回答を求める旨の記載がある。
オ 同月10日に,Bの代理人が原告代理人である被告に送信したファクシミリには,「そもそも,建て替え後の建物の所有者は,原告(B)だけではないそうなので,本訴訟で原告のみ保証しても,あまり意味がある条項とは思えません。被告(本件訴訟の原告)が建替組合に出店申込をしていることを確認し,それを原告(B)も尊重するような条項ではどうでしょうか」との記載がある。これに対し,原告代理人であった被告は,Bの代理人に「入居の保証条項も,できる丈上記会社が納得できるような内容・表現を盛り込んでいただきたく,条文をお送り下さい。」と記載されたご連絡をファクシミリ送信した。
カ 同月16日,Bは,「b駅北口地区第2街区10番地区マンション建替組合」に対して,原告が建替後の新築予定ビルに再度入居できるように努力すること,原告を賃借人とする新築予定ビルの賃貸借契約を締結できなかった場合,Bには原告に対する500万円の支払義務があることを内容とする本件和解が成立した(甲6,和解条項7項8項)。
(2) 以上の事実によると,本件委任契約には,新築予定ビルへの原告の再入居を実現することを内容とする記載はないものの,原告は,被告に対して,別件訴訟事件の和解は,新築するビルへの再入居が保証されることを条件として進めることを何度も依頼し,被告もそうした条件,要望を本件建物の賃貸人Bに連絡していることに照らすと,原告は,別件訴訟事件において,あくまで和解が成立する段階で再入居が保証されることを希望して委任し,被告も,原告の意向を認識,理解してBとの和解交渉に臨んだこと,しかしながら,立替後の新築予定ビルは,Bの単独所有ではなく,地権者全員の共有となり,地権者全員により設立する権利者法人が賃貸人となる予定であったため,現賃貸人Bの一存では原告の再入居を決定できなかったこともあり,本件和解には,建替え後の新築予定ビルの同位置に原告の再入居を実現する権利,義務を直接規定する条項を定めることはできず,あくまで,原告の再入居を実現するためにBが努力する義務,それが実現できなかった場合のBの原告に対する立退料の追加の支払義務が定められたにとどまることが認める。
また,原告が被告に本件委任をする前に,Bは,原告に対し,建替え後の新築予定ビルに原告が再入居することは可能である旨説明しており,そのための手続についても概要説明していたこと,本件委任の後,原告は,被告を通じて再入居のための関係書類をマンション建替組合理事長宛に提出してその手続を行い,再入居が契約上の権利として定められたわけではなかったものの,新たに原告の再入居が実現しなかった場合のBの追加の立退料500万円の支払義務が本件和解において定められたことが認められるから,原告が被告に委任する前後を通じて,原告の再入居についての直接の権利義務関係,法的地位には変動がなかったものの,本件和解により,上記の追加の立退料の支払義務の限度で,再入居に向けての間接的な権利義務が新たに定められたことになるから,この点は,本件委任に基づく被告の活動による成果であると認められる。
(3) 被告は,原告が再入居を実現することを内容とする事項も本件委任により受任したから,本件和解の成立によっても,原告の被告に対する委任は終了していない旨主張する。原告は,Bから本件建物の明渡しを催告されたため,その後予定されていた本件建物の明渡請求訴訟への対処のため,建替え後の建物への再入居を含めて被告に相談し,再入居の実現を希望していたことがうかがえるものの,当時,Bから本件建物の明渡し催告を受け,その後,Bが原告に別件訴訟事件を提起した経緯を踏まえると,原告が被告に委任した事項は,Bからの明渡催告及びその後提起された別件訴訟事件についての対処及び訴訟追行であり,同訴訟事件における和解協議において,原告から,再入居の実現を要望され,そのためのBに対する交渉権限も併せて委任されていたと認められるものの,Bが約束できる事項が限られていたため,前記の限度で本件和解が成立し,Bからの催告及び別件訴訟事件は終了して解決し,本件委任は終了したと見るのが相当である。そして,本件委任の時点においても,本件和解成立の時点においても,新築予定ビルの所有者となる権利者法人は成立しておらず,新築予定ビルへの再入居の許諾を決定する権限を有する者も特定していなかったのであるから,原告が,再入居への希望,期待を被告に述べていたことを超えて,被告に対し,相手方が未定,不特定の者に対し,相手方の有する権限も不明な事項,すなわち新築予定ビルへの再入居の保証についての交渉権限を具体的に委任する状況には未だなかったことは明らかである。したがって,原告が,Bによる別件訴訟事件が本件和解により終了した際に,相手方が未特定の者に対する再入居の権利義務の確保を求める交渉の権限をも別途被告に委任していたとは認められず,また,その際,新たに同権限を被告に委任したと認めることもできないのである。
そうすると,被告の原告に対するみなし報酬債権の請求は,理由がない。
3 返還債権と報酬債権との相殺
以上によれば,被告は,原告に対し,本件委任及びそれに関連する個別の委任により合計174万7800円の報酬請求権の発生が認められ,その対当額の範囲の原告の被告に対する保証金返還請求権との相殺の抗弁は理由があるが,被告にその余の報酬請求権の発生が認められないから,その余の相殺は理由がない。
4 本訴請求の結論
そうすると,本訴請求は,825万2200円及びその遅延損害金の限度で理由があり,その余の請求は理由がない。
5 反訴請求について
本件委任による報酬請求権として認められる174万7800円の報酬請求権は,被告による相殺の意思表示により,本訴請求債権の相殺に供され,消滅したから,反訴請求は理由がない。
第3 結論
以上によれば,原告の本訴請求は主文の限度で理由があるからこれを認容し,その余の請求は理由がなく,被告の反訴請求は理由がない。
(裁判官 生野考司)
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