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「営業 外部委託」に関する裁判例(20)平成29年10月18日 長野地裁松本支部 平27(ワ)350号 雇用契約上の地位確認等請求事件

「営業 外部委託」に関する裁判例(20)平成29年10月18日 長野地裁松本支部 平27(ワ)350号 雇用契約上の地位確認等請求事件

裁判年月日  平成29年10月18日  裁判所名  長野地裁松本支部  裁判区分  判決
事件番号  平27(ワ)350号
事件名  雇用契約上の地位確認等請求事件
文献番号  2017WLJPCA10186013

裁判経過
控訴審 平成30年 5月30日 東京高裁 判決 平29(ネ)5125号 雇用契約上の地位確認等請求控訴事件

裁判年月日  平成29年10月18日  裁判所名  長野地裁松本支部  裁判区分  判決
事件番号  平27(ワ)350号
事件名  雇用契約上の地位確認等請求事件
文献番号  2017WLJPCA10186013

長野県塩尻市〈以下省略〉
原告 X
長野県松本市〈以下省略〉
被告 Y株式会社
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 植松泰子

 

 

主文

1  原告が,被告に対し,労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。
2  被告は,原告に対し,平成26年6月から本判決確定の日まで,毎月25日限り25万8016円,毎年6月10日限り12万4000円及び毎年12月10日限り25万円並びにこれらに対する各支払日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
3  原告のその余の請求を棄却する。
4  訴訟費用は,これを4分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。
5  この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
1  主文第1項と同旨
2  被告は,原告に対し,平成26年6月から本判決確定の日まで,毎月25日限り25万8016円,毎年6月10日限り28万7100円及び毎年12月10日限り34万4520円並びにこれらに対する各支払日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
3  被告は,原告に対し,300万円及びこれに対する平成26年11月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
本件は,被告を普通解雇された(以下「本件解雇」という。)原告が,本件解雇は無効であると主張して,①労働契約上の地位確認,②本件解雇後の月例賃金及び賞与並びに商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに,被告の従業員による国籍差別,違法な退職勧奨等のパワーハラスメント等を主張して,被告に対し,債務不履行又は不法行為に基づき,慰謝料及びこれに対する催告の日の翌日である平成26年11月29日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
1  前提事実
(1)ア  原告は,在日韓国人の女性であり,被告において住宅の販売等の営業活動を中心とした業務に従事していた(甲2)。
イ  被告は,戸建て住宅の販売等を業とする株式会社である。
(2)ア  原告は,平成23年12月3日,被告との間で雇用期間の定めのない労働契約を締結し,平成24年1月5日付けで被告に雇用された(甲2)。
イ  原告の平成26年4月時点の月給額及び支払日は,次のとおりであった(甲2,3)。
(ア) 基本給 19万1400円
(イ) 認定試験手当 5000円
(ウ) 特殊勤務手当 6万1616円
(エ) 毎月20日締め,当月25日払い
ウ(ア)  被告の給与規程においては,賞与は6月と12月に支給すると定められている。給与規程には,具体的な算定方法と支給日は定められていないが,基本給にその都度決定される支給係数(支給月数),支社評価係数,個人評価係数及び出勤割合を乗じて算定された額が,6月10日と12月10日までには支給されている(乙36)。
(イ) 原告の平成25年冬季賞与(支給対象期間は平成25年4月1日から同年9月30日まで)は,基本給19万1400円,支給係数(支給月数)1.8,支社評価係数1.0,個人評価係数0.85(D評価),出勤割合107/129で,24万3000円と算出されたが,代表取締役の判断により,調整額7000円が加算され,25万円が支給された。(乙36)
(3)  原告は,平成24年12月28日から平成25年4月30日までの間,抑うつ状態の病名により休職した(甲14の1ないし5,26の1ないし4,乙16)。
(4)  原告は,平成26年1月15日,被告の親会社であるa株式会社(以下「親会社」という。)の外部委託相談窓口「セクハラ・人間関係ホットライン」に対し,営業統括部長兼執行役員であるB(以下「B役員」という。)を中心とする上司・同僚等から集団いじめを受けているとの相談をした(甲6)。
(5)  同年3月13日,被告の人事担当部門長である管理本部長C(以下「C部長」という。)は,かつて原告が休職した経緯等を踏まえ,原告に対し,心療内科を受診するよう口頭で指示したが,原告は,翌14日,D専務(以下「D専務」という。)に対して,「業務命令取り下げてください。意味不明なんですよ。」などと述べて,前記受診命令に従わなかった。(乙8の1,9の1)
(6)  C部長は,同月24日,原告に対して,会社の選定する産業医その他の専門医への受診を命じる旨の業務命令書を交付した(甲8の1,乙16)。
(7)  原告は,同月29日,C部長が指定したb医院を受診した。原告を診察したE医師は,原告と職場からしか病歴を聴取できていないこと,原告に診断されることへの構えが強かったことから,この時点での診断はできないとした。原告はb医院を出た後,「あの医師の診察を受ける気はない。」と述べ,以降の受診を拒否した。(乙4,16)
(8)  正式な診断を下すためには再度の受診が必要とのE医師の意見を踏まえ,C部長は,同年4月3日,電話を掛けてきた原告に対して,b医院の受診を指示したが,原告は,受診を拒否し,出社もしたくないのでしばらく休ませてほしいと述べた。C部長は,原告の求めに応じ,同日から同月27日まで,原告を自宅待機とした(甲9の1ないし3,乙16)。
(9)  C部長から意見照会を受けたE医師は,同月21日付けの文書で,面接中の言動は被害的なものが主で,この部分だけとらえると妄想知覚と思える,はきはきとした言動からはうつ状態ではないとの意見を述べた(乙4)。
(10)  C部長は,同月25日付書面により,今後のことを打ち合わせるため,同月28日午前10時に被告松本本社に出社するよう指示した(以下「本件出社命令」という。甲11)。
原告は,同月28日の当日,C部長に対し,本件出社命令について打合せ場所の変更を求めて出社せず,その日以降も出社しなかった。(乙3,5)
(11)  被告は,原告に対し,概要以下のとおりの平成26年5月8日付解雇予告通知書及び就業規程を送付した(甲12の1,12の2)。
ア 原告の後記イの各行為が就業規程84条2号(業務能力又は勤務成績が著しく劣り,正従業員として適さないと認めた場合),3号(正当な理由なく勤務しない場合)及び6号(その他前各号に準ずる事由がある場合)に定める解雇事由に該当するものと判断し,原告を平成26年6月8日付で解雇する。
イ(ア) 平成26年3月下旬,顧客に対し,「自分はクビになるかもしれない」等と話し,顧客の被告に対する信用を著しく損ねた行為(以下「解雇事由①」という。)
(イ) 平成26年3月24日付業務命令に基づく,産業医の診察を受けるべき旨の業務命令を拒否する等,上司からの指導や命令に従わない行為(以下「解雇事由②」という。)
(ウ) 顧客の面前であっても,業務中の同僚従業員等を大声で責めたてたり,業務を中断させたりするなどして,職場秩序を乱し,同僚従業員等の業務を妨害した行為(以下「解雇事由③」という。)
(エ) 上司からの業務上の電話連絡に対する応答を拒否し,その業務に協力しない行為(以下「解雇事由④」という。)
(オ) 平成26年4月28日以降正当な理由なく欠勤していること(以下「解雇事由⑤」という。)
(カ) 原告と協議するため,業務時間中の指定した日時における被告内での面談を指示していたにもかかわらず,正当な理由なくこれに従わない行為(以下「解雇事由⑥」という。)
(12)  本件解雇時の就業規程(平成26年4月1日施行)のうち本件に関係する定めは別紙のとおりである(甲15)。なお,平成26年3月31日までは,休職に関する一部の事項が,休職関連規程(甲8の2)において定められていたが,本件に関連する規程の内容に特段の変更はないので,必要に応じて注記する。
2  争点に関する当事者の主張
(1)  本件解雇の有効性
(被告の主張)
下記アないしカのとおり,原告においては,協調性の欠如が顕著であり,同僚従業員等に対する誹謗中傷や職制無視の言動といった服務規律違反行為により職場秩序を大きく乱し,上司からの業務命令にも自分の意に沿わなければ激しく抗議し,断固として従わなかった上,上司であっても相手の意見には全く耳を貸さず,被告役員に対し報復行為に及ぶことを仄めかしたり,被告の信用を棄損する発言をしたり,更には被告の悪評を立てることまで仄めかして原告の抗議を聞き入れることを要求し続けることから,原告の言動につき,改善は見込まれない状況であった。そして下記キのとおり,本件解雇は社会通念上相当であり,有効である。
ア 解雇事由①
原告は,平成26年3月23日,被告の顧客に対し,「自分はクビになる」等と吹聴し,被告の信用を著しく棄損した。
イ 解雇事由②
C部長は,平成26年3月29日以降,原告に対し,複数回にわたり,休職関連規程7条2項(就業規程65条2項と同じ。)に基づき,b医院を受診すべき旨命じたが,原告は正当な理由なくこれを拒否したばかりが,D専務等に対して受診命令の撤回を求めた。
ウ 解雇事由③
(ア) 原告は,平成25年11月13日の営業イベントにおいて,営業1課のF係長(以下「F係長」という。)に対し,突然激昂して顧客の面前で激しく責めたてた。また,その約1週間後,F係長の携帯電話に電話を掛け,F係長が原告の自宅等を撮影した事実はないにもかかわらず,原告の自宅の写真をF係長が撮影したとして,その写真を出すよう要求した。
(イ) 原告は,受付業務担当のG(以下「G」という。)に対し,日常的に挨拶を無視し,必要な連絡をしないなどの問題行動があった上,平成26年3月1日,「私の悪口を言った」等と根も葉もないことで執拗に責めたて,受付業務を妨害した。
また,同月9日には,業務中のGに対し,突然「時間を作ってもらえます。専務の家で,専務と私の母親と4人で話をしましょう。」などと詰め寄って同人に恐怖心を与え,同人の業務を妨害した。
(ウ) 原告は,B役員に対して,平成24年3月頃,「今いる課長の下では働けない」,「課を変えてほしい」といった相談をしたり,平成25年11月21日には「自分の悪口を言われている」といった相談をしていた。B役員は,勤務時間を割き,時には原告宅に赴くなどして真摯に対応していたが,原告は,B役員の対応に不満を持ち,同人から退職勧奨等のハラスメントを受けたと親会社に通知した。
このように原告は,自己の望む対応をしないとなると,ハラスメントの加害者に仕立て上げて誹謗中傷をした。原告は,被害妄想によるものではなく,自己の要求を相手に聞き入れさせるために意図的にハラスメントを創り上げていた。
(エ) 他の複数の従業員も,原告から全く身に覚えのないことを責めたてられたりするため,怖くて原告とコミュニケーションが取れず,業務が妨害されていた。
エ 解雇事由④
原告は,平成24年12月28日から平成25年4月30日まで休職した際,休職前に原告がまとめた契約に関して引継ぎが必要であったにもかかわらずこれを怠り,休職中の上司からの連絡について一切応じなかった。また,平成26年3月30日午後から会社に出社しなくなって以降も同様であった。
オ 解雇事由⑤
原告は,平成26年4月28日以降,正当な理由なく欠勤した。
カ 解雇事由⑥
原告は,被告に出社すべき旨及び被告松本本社内で面談を行うべき旨の本件出社命令を,正当な理由なく拒否した。
キ 解雇の相当性
(ア) 前記のとおり,原告には解雇事由①ないし⑥の行為が認められたが,これらは原告の精神疾患に基づく可能性もあったため,C部長は,解雇を回避すべく,休職を命じるべきか判断するため,b医院に受診すべき旨を命じた。しかし,原告は精神疾患を否定して,前記受診命令を頑なに拒否した。そして,原告が正当な理由なく出社を拒否したため,C部長は原告に休職事由があるか否かを判断することができず,休職を命じることはできなかった。原告が出社を拒否していたため,平成26年4月3日から同月27日までを自宅待機とし,同月28日に原告の解雇事由,就業規程違反の行為に関して弁明の機会を設けたが,原告はこれも拒否した。
以上のとおり,被告は,原告の解雇を回避すべく可能な限りの努力をしたが,原告がこれを拒絶し,かつ,出社も拒否し続けたため,やむを得ず本件解雇をしたものあり,社会通念上相当である。前記経緯に鑑みれば,本件解雇の有効性を判断するに当たり,原告に精神疾患の疑いがあることを考慮すべきではない。
(イ) なお,原告に精神疾患の疑いがあることを考慮しても,本件解雇は普通解雇であるし,原告の著しい協調性欠如,職制無視,同僚等に対する業務妨害や業務命令違反,被告に対する信用棄損行為等も理由とするものである上,C部長は解雇を回避して休職を命じるべきか否かを判断するための配慮をしていたのであるから,休職等の処分を何ら検討せずに精神的な不調による欠勤のみを理由とする諭旨退職の懲戒処分を無効とした最高裁平成24年4月27日判決(以下「平成24年最判」という。)とは事案が異なり,本件解雇は相当である。
(ウ) また,解雇の理由となった労働者の服務規律違反行為が何らかの精神疾患に起因する場合であっても,当該労働者が自ら精神的な疾患について治療のために十分な措置を講じず,服務規律違反行為を悪化させた場合には,そのこと自体が解雇事由となり,使用者が休職を命じる義務もない。原告の服務規律違反行為は懲戒解雇事由にも該当する重大なものであるのに,原告は,受診命令を頑なに拒否するばかりか,創作したハラスメント行為を吹聴すると仄めかすなど他の従業員等に危害が及ぶことも懸念される状況下で,不合理な理由で出社を拒否するなどして服務規律違反行為を重ね,かつ,改善の見込みもなかったのであるから,原告と被告との間の信頼関係は修復不能なほどに破壊されており,雇用関係を継続することは不可能であり,本件解雇は相当である。
(原告の主張)
解雇事由①ないし⑥は,以下のとおり,いずれの事実も存在しないか,事実を歪曲しており,従業員Gと被告代表取締役A(以下「A社長」という。)の私的な関係を背景として,同従業員の意向に従う形で,原告に対し不当解雇という制裁を加えたものである。
したがって,本件解雇は,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当でないから,解雇権濫用に当たり,無効である。
ア 解雇事由①
被告社内において,役員及び従業員が,「いよいよXデー(原告の追い出し日)だな」,「(原告が)追い出されたら祝賀会をしましょう」等,原告が解雇されることが決まっている等と騒ぎ立てていた。これを受けて,原告は,顧客に対し,担当者の交代があり得ることを事前に説明するため,やむを得ず「自分はクビになるかもしれない」等と発言したものであり,顧客の被告に対する信頼が失墜するはずはない。被告には何ら損害は生じていないはずである。また,原告には顧客の被告に対する信用を失墜させる意図はなく,何ら責められるべき行為ではない。
イ 解雇事由②
E医師は認定産業医でないから,同医師の診察を受けなかったことは職務命令違反に当たらない。
また,原告は平成26年3月29日にC部長に連行されてb医院を受診したが,その際,E医師は精神病の兆候は全くないから診断書を発行することはできないと述べていた。その後,C部長を交えて話した際,E医師は,原告の親,友人,同僚等の関係者を交えてヒアリングをした上で精神鑑定をするため通院するよう提案したが,原告にとってこのような提案は無理であるからやむなく拒否しただけであり,原告がb医院を受診しなかったことには正当な理由がある。
平成26年3月29日に原告に対して業務に優先して受診したことは業務命令の範疇であるとしても,主治医から職場復帰証明書が発行され,b医院から診断書が発行されない以上,これ以上の受診命令は過度な業務命令であり違法である。
ウ 解雇事由③
原告は,顧客の前で同僚従業員等を大声で責めたり,業務を中断させたりして,職場秩序を乱したことはないし,同僚の業務を妨害したことはない。
被告の役員及び従業員は,日常的に,原告の担当していた顧客の前で原告を誹謗中傷したり,社内で公然と事実に基づかない野次を浴びせていた。
エ 解雇事由④
原告が上司からの業務上の電話連絡に対する応答を拒否したことはない。
オ 解雇事由⑤
原告は,平成26年4月28日の打ち合わせ場所の変更を求めたがこれを拒否されたため,当日出社することができなかったのであり,このことはC部長に連絡しているから,無断欠勤ではない。その際,原告は,C部長に対し,心療内科への受診命令が取り消されなければ出社できないと伝えていたが,受診命令は取り消されなかった。同月30日になってC部長が原告に対し,電話で「もう来なくていい。書類を送る。」等と述べたため,原告は自宅待機していたのであり,原告は出社を拒否したこともなければ,無断欠勤もしていない。
カ 解雇事由⑥
原告は,同月28日午前10時に被告本社に出社した途端,心療内科に強制的に連行されるのではないかと不安を覚えたため,同月27日,C部長に対し,打ち合わせ場所をホテルのロビー等公共の場所に変更してほしいと打診した。C部長がこれを拒否したため,原告は同月28日に出社することはできないと伝え,やむなく面談を拒否したのであり,出社命令に従わなかったことに正当な理由がある。
(2)  賞与額
(原告の主張)
原告の賞与額は,6月10日支給分が基本給19万1400円の1.5か月分の28万7100円であり,12月10日支給分が基本給の1.8か月分の34万4520円である。
(被告の主張)
争う。
(3)  被告従業員による国籍差別,違法な退職勧奨等のパワーハラスメントがあったか及び被告がこれらの被告従業員の違法行為を放置したか(債務不履行及び不法行為の成否)。
(原告の主張)
原告は,被告の役員及び従業員により,後記ア及びイのとおりの国籍差別及びパワーハラスメントに曝された。
被告は,雇用契約に基づき,原告に対し,国籍差別,パワーハラスメントによって就業環境が害されないよう必要な措置を講じるべきであるところ,後記ア及びイの事実があることを認識しながら,D専務,B役員及び国籍差別等に加担した従業員に対し,注意を与えるなどの必要な装置を講じなかった点に,職場環境整備義務違反がある。よって,原告は,被告に対し,主位的には,債務不履行に基づき損害賠償を求める。
また,予備的には,後記ア及びイの不法行為を被告従業員等が行ったことにつき,使用者責任に基づく損害賠償を求める。
なお,原告の精神的損害を慰謝するために必要な額は300万円を下らない。
ア 国籍差別
(ア) 平成24年1月5日の入社手続説明の際,当時の被告管理本部長は,原告に対し,「外国人って社会保険は入れるんだっけ。多分入れないよ。困るんだよね,本当に。もしかしたら手続できない(入社できない)ことも頭にいれておいてね。」等と言った。
(イ) 平成24年1月16日,D専務は,原告に対し,「帰化はしないのか。帰化してくれないと会社が困る。何せ外国人を受け入れるのは初めてだから周囲の反対もあるし,帰化してくれないと納得できない従業員がいる。」等と言った。さらに,原告の母親に対しても「会社的にまずいので,娘さんだけでもできる限り早めに帰化させてください。」等と再三にわたり打診し続けた。
(ウ) 原告の母親は,内定後の平成23年12月下旬,D専務に対し,職場で原告が国籍差別を受けることを恐れ,原告が外国籍であることを伏せてほしいと打診し,D専務はこれを了承した。
平成24年3月25日,D専務が原告に対し本名を尋ねてきたので,原告が不快に思いながらも本名を答えると,後日,原告の本名を知るはずのない営業事務従業員が,原告に対し,大声で「Hさん,Hさん(原告の本名)。」と連呼するようになり,また,前記従業員が他の従業員に原告が外国籍であることを吹聴した。これにより,原告に対する国籍差別はエスカレートした。
D専務は,原告に対し,「サッカーはどちらの国を応援するの。」等と尋ねてきた。
(エ) 平成24年4月下旬頃,営業3課のI課長(以下「I課長」という。)は,課のミーティングの際,何の脈絡もなく「北朝鮮なんて必要ない。竹島なんて爆発したらいい。」等と原告を見ながら朝鮮関連の話をした。
また,I課長は,原告に対し,業務時間中に突然,「北朝鮮についてどう思う。」等と脈絡なく尋ねてきた。
(オ) 平成24年4月下旬頃,B役員は,朝礼において,原告を見ながら,「日本人の場合は…」等と,日本人を強調するようなことを縷々述べた。このような朝礼は日常茶飯事行われるようになった。
イ パワーハラスメント
(ア) B役員は,平成24年4月2日,経営方針会議にて表彰対象となる営業2課のメンバーから原告のみ除外した上,「あなたのことはこれから退職勧奨させてもらう。」等と公然と言い放った。また,B役員の意向により,表彰対象となるメンバーに授与された報奨も原告のみ授与されなかった。
その後原告は,B役員から幾度にも渡り退職勧奨を受けた。
(イ) F係長は,B役員の指示を受け,原告の自宅,敷地周辺及び原告使用車両を盗撮し,その画像を社内メール及び営業用の携帯電話メールに添付して一斉送信する方法により従業員全員に公開した。
F係長は,当初から原告に対し,「話しかけるな。」「近寄るな。」等と言って理由なく避けていた。
(ウ) 平成24年5月上旬頃,原告が家具付き建売物件の見学予約を顧客から取り付けていたところ,事前の通告もないまま,営業2課のJ課長(以下「J課長」という。)の指示により,前記物件の家具が全て撤去された。原告は,家具がないまま前記物件を顧客に案内せざるを得ず,事前の説明と違ったことを顧客に謝罪した。
被告では,建売物件を案内する場合には家具を設置した上での案内を必須としている。原告が,J課長に対し,前記物件の家具を撤去した理由を尋ねたが,B役員の決定事項であるとの説明だった。
(被告の主張)
原告の主張は,その時々の原告の要求を被告役員又は同僚従業員に聞き入れさせるため,あるいは同人らに対する報復の手段として,意図的に同人によるハラスメントの事実を創作したものである。
第3  争点に対する判断
1  認定事実
(1)  原告の母親は,平成元年3月10日に自宅を新築した際(甲22),営業担当者だったD専務と知り合った。原告はD専務の紹介により,平成24年1月5日,被告に入社した(甲1,2,22)。
(2)  原告は,平成24年夏頃から不眠,頭痛,胸痛を感じるようになり,抑うつ状態の病名で,同年12月28日から平成25年4月30日までの間,休職した。cメンタルクリニックのK医師は,平成25年4月30日,原告の抑うつ症状は軽快しており,同年5月1日より就労可能である旨診断したので,原告は復職した。(甲14(枝番全て),甲26(枝番全て),乙16)
(3)  原告は,他の従業員から色々と嫌がらせを受けているとD専務に相談したところ,D専務から原告への対応を指示されたC部長は,同年11月17日に原告と面談した。その際,原告は,①入社前に被告松本店の店長が原告の経歴書を皆の前で読み上げたことにより原告の国籍が明らかになった恐れがある,②誰かが漏えいしたことにより,原告の住所が従業員に知られている,③平成24年4月中旬,F係長により原告の自宅が写真撮影され,社内メールにより当該写真が従業員に送信されて閲覧されたと述べた。(乙3,証人C)
(4)  C部長は,従業員からのヒアリングや個人情報の管理体制等を調査したが,前記①ないし③の事実が確認できなかったので,平成25年11月30日,原告に対してその旨を伝えた。原告は,③に関し,F係長のメールの送受信履歴等を確認して,写真を送信した事実を調査して欲しいと要望したので,C部長はF係長及び他の従業員のメールの送受信履歴を調査したが,原告の自宅写真を受信したメールは見つからなかった。(乙3,証人C)
(5)  原告は,平成26年1月15日,被告の親会社の外部委託相談窓口「セクハラ・人間関係ホットライン」に対し,概要以下のとおりの相談をした。(甲6)
ア 原告は,職場で,B役員を中心として同僚等から集団いじめを受けている。具体的なエピソードは以下のとおりである。(以下「被害事実①」という。)
(ア) 入社直後に顔合わせもかねて飲み会に誘ってもらったが,B役員に「来ないでくれ。」と言われた。その後に一度飲み会に顔を出したことがあったが,B役員に「何で来るんだ。」と言われ,席に座らせてもらえなかった。
(イ) 現地調査の仕事は,人員が足りていれば二人組で行うものであるが,原告は入社1年目から人が足りていても一人で行わされた。
(ウ) 原告が契約を2棟取ってきても,B役員に「あれはあの女の契約じゃない。俺は認めない。」と言われた。
(エ) 他の人は,一緒になっていじめたり,B役員の顔色をうかがって,見て見ぬふりをしている。みんなで購入しているお菓子を原告には回さないようにしたり,飲み会を内緒でしており,挨拶をしても無視をされ,会社で毎日悪口を言われている。原告が担当する顧客に対しては,相談会で挨拶もしない。
(オ) Gは,原告がD専務の愛人である等という嘘や原告が外国籍であることを営業マンに言いふらしていると聞いた。
(カ) 直属の上司である店長に相談したが,「あなたが全て悪いんでしょ。」と言われて話を聞いてもらえなかった。D専務に相談すると,いじめの事実があったと言ってもらえたが,改善には至らなかった。総務に相談したが,事実確認ができなかったと言われて,何もしてもらえなかった。
イ 原告が入社1年目のときに所属する課が表彰されたが,原告だけは壇上に上がらせてもらえなかった。賞品のハワイ旅行にも,原告だけ行かせてもらえなかった。(以下「被害事実②」という。)
ウ 履歴書や職務経歴書の内容が,営業部の人員に知られていた。また,外国籍であることは伏せているはずなのに,なぜが周囲に知られている。B役員は,原告について,「学歴を詐称している。」などと言ったり,原告の本名を呼んで爆笑している。北朝鮮の話をしたり,「日本人は…」という言い方をされる。(以下「被害事実③」という。)
エ B役員は,原告に対し,大勢の前ですぐに「辞めてもらいたい。」,「退職勧奨する。」,「ボーナス大幅カットだ。」,「飛ばしてやる。」等と大声で言う。(以下「被害事実④」という。)
オ 平成25年の初め,原告がうつで体調を崩し4か月休職して復職した後,賞与が6分の5にされていた。(以下「被害事実⑤」という。)
(6)  原告は,平成26年2月10日,親会社コンプライアンス部のL及びMに対し,本件被害事実①ないし⑤に加え,自宅を写真に撮られて社内メールで複数人に送信されたこと(以下「被害事実⑥」といい,全ての被害事実を合わせて「本件各被害事実」という。)を伝えた。L及びMは,原告に対し,関係者の処分を求めるのであれば事実確認が必要であり,個々にヒアリングを実施することなどを説明した(乙15)。
(7)  L及びMは,同年3月7日に被通報者であるN係長,F主任及びGから,同月14日にはD専務及びB役員からそれぞれヒアリング調査を実施した上,概要次のとおり,本件各被害事実は存在しないと判断した。(乙15)
ア 原告の証言はヒアリングの都度内容が変わる等一貫性がなく,また事実の裏付けなく,先入観や感情論で断定的に証言する傾向があり,信頼できるものではなかった。「いじめ」とされる通報のほとんどが伝聞であり,内部協力者から聞いたとして通報しているため,ヒアリングで協力者の証言を求めたが拒否された。結果として原告の証言を裏付ける客観的な証言は何ら得られなかった。原告は「いじめ」の事実を記録したメモの存在を仄めかしたが提出されなかった。
イ 被害事実①は,被通報者のヒアリングを通じ,いじめの事実は原告の思い込みであり,原告が創り上げたものか,誤解,勘違いであると確認された。一方,被通報者のヒアリングにより,原告が勤務時間中に受付女性に対する嫌がらせをしたり,上司の命令に従わず,顧客の面前で大声で上司に反論する行為等が明らかになった。
ウ 被害事実②については,表彰の時点で原告は入社3か月未満だったため,報奨の対象外となったものであった。被告は原告に対してその旨を何度か説明したが,受け入れる様子が見受けられない。
エ 被害事実③については,被通報者は,原告が韓国籍との認識はあったが,本名(韓国名)を知り得る立場にはなかった。原告の本名は,履歴書,従業員台帳に記載されておらず,知るすべはない。
オ 被害事実④については,被通報者が電話で話をしていた他の従業員のことが原告の耳に入り,原告のことであると誤解したものと判明した。
カ 被害事実⑤は,休職に伴い勤務実績が5か月となっていたことに加え,契約実績が目標棟数を下回ったため低い評価となったものであった。被告は,原告に対して,評価結果の根拠を再三説明しているが,受け入れる様子が見られない。
キ 被害事実⑥については,パソコンの履歴を調査しても,原告の自宅の画像,メールを確認することはできなかった。被通報者は,原告の自宅住所も知らなかった。
(8)  同月13日,C部長は,原告が平成24年12月28日から平成25年4月30日まで抑うつ状態にあるとして休職した経緯等を踏まえ,原告に対し,心療内科を受診するよう口頭で指示した。
(9)  原告は,平成26年3月14日,D専務に対して,「業務命令取り下げてください。意味不明なんですよ。」,「こういうやり方,ないでしょ。何が健康診断受けろだよ。診察受けろって。それも会社が指定する病院で。訳わかんないよ。」などと述べて,前記受診命令に従わなかった。(乙8の1,9の1)
(10)  原告は,同月23日,顧客に対して,「自分はクビになる」などと伝えた。これを聞いた顧客や紹介者から,被告に対し,原告がクビになると言っていたが事実か,現在仮住まい中でこれからという時で不安でしょうがないなどの連絡が電話であった。(甲13)
(11)ア  L,M及び親会社代理人の植松泰子弁護士は,同月24日,原告と面談し,本件各被害事実は一切確認できなかったという調査結果を伝えた。
イ  C部長は,同日,原告に対して,概要以下のとおりの同日付業務命令書を交付した。(甲8の1)
(ア) 被告は,原告に対し,休職関連規程7条2項に基づき,会社の選定する産業医その他の専門医への受診を命じる。受診の期限は平成26年3月29日までとし,同日までに受診した医師の診断書原本を会社に提出しなければならない。
(イ) 前記(ア)の命令に従わない場合,被告は,休職関連規程7条3項に基づき,産業医又は会社が選定する医師の意見を徴した上,原告について休職に該当する事由があるか否かを判断する。
(12)  原告は,同月29日,b医院を受診したが,E医師は,この時点での診断はできないと述べた。一方,原告はb医院での今後の受診を拒否した(前記第2の1(7))。
(13)  原告は,同年4月3日,C部長に対し,b医院を受診することを拒否するとともに,役員や部門長まで一緒になって集団いじめをする職場には出社する気になれないのでしばらく休ませてほしいと申し入れた。C部長は,原告が心療内科への受診を拒否しており,通常業務に耐え得るかの見極めができない状況にあるが,原告の言動により職場秩序に支障が出ていることなどを考慮し,会社としても自宅待機をしてもらいたいと考え,原告から申請をさせて同日から同月27日の間,原告を特別休暇扱いとした。(甲9の3,乙3,証人C)
(14)  C部長は,同月21日,就業規程65条2項に基づき,原告に対して傷病等休職を命じるか否かを判断するため,E医師に意見を求めた。E医師は,同年3月29日の診察結果に加え,同月31日及び同年4月12日に会社関係者と面談した内容を踏まえ,概要以下のとおりの同月21日付意見書を作成した。(乙4,7)
ア 原告の診察時の言動は,被害的なものが主だったが,いつ,どこで,誰に,どのような状況で言われたのかと質問しても返答は曖昧だった。原告が,会社のコンプライアンス係に相談したことが他の人に通じていたと言うので,どうして通じていることが分かったのか質問すると,会社の雰囲気で分かるのだと確信を持っているかのごとく返答した。この部分だけとらえると,妄想知覚を思えるものだと判断した。
イ 平成26年3月29日時点でのはきはきとした言動,表情からしてうつ状態ではない。
(15)  C部長は,同月25日付書面により,同月28日午前10時に被告松本本社3階管理部に出社するよう指示したが,原告はその日もそれ以降も出社しなかった(前記第2の1(10))。
(16)  被告は,同月29日付書面により,同月28日から欠勤状態となっていること,現在,原告に有給休暇の残日数はないこと,服務規律違反行為が複数あり,会社として対応を検討しなければならず,原告の弁明を聞く必要があることから,出社の指示をした旨通知した。(乙5)
(17)  原告は,同月30日,C部長に対し,服務規律違反の内容を教えて欲しいと電話で求めた。C部長は,原告に対し,本件受診命令を拒否したことや顧客に対して自分がクビになるかもしれないと伝えたこと等であるが,電話で伝える内容ではなく,原告の意見も聞きたいので出社するよう求めたが,原告は,「会社に行くと何をされるかわからないので,出社したくない。」,「会社に出社する気はない。説明したいことがあるなら文書で送ってほしい。」等と述べた。C部長は,「出社命令に従えないのなら仕方がない。別途文書を送るので待っていてほしい。」と伝えて電話を切った。(乙3,証人C)
(18)  被告は,原告に対し,平成26年5月8日付け解雇予告通知書及び就業規程を送付し,同年6月8日の経過により原告は解雇された。(前記第2の1(11))
2  争点(1)(本件解雇の有効性)について
(1)  まず,解雇事由①ないし⑥の事実が認められるか検討する。
ア 解雇事由①
認定事実(前記1(10))のとおり,原告は,顧客に対して「自分がクビになる。」等と伝えている。
この点,原告は,被告社内において,役員及び従業員が,「いよいよXデーだな。」,「追い出されたら祝賀会をしましょう。」など言って,原告が解雇されると決まっていると騒ぎ立てていた旨主張し,甲1号証にはこれに沿う部分があるが,客観的な裏付けを欠くほか,乙15号証に照らし直ちに採用することはできず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。そして,仮に解雇になるとしても,顧客に対しては担当者が交代する旨を伝えれば足りるのであって,殊更に顧客に対して自分がクビになるなどと伝えることは,顧客に対して,被告が解雇されるような従業員に顧客対応をさせているとの印象を与えるものであり,現に顧客や紹介者から,事実確認や顧客が不安に感じた旨の電話があったことを踏まえると,被告の信用を棄損する行為である。
イ 解雇事由②
認定事実(前記1(8),(9),(11),(12))のとおり,原告は,C部長からの口頭又は文書に基づく複数回にわたる受診命令を拒否している。
原告は,E医師が認定産業医ではないから職務命令違反ではない,原告に当時精神症状が見られないとの主治医の意見書があると主張するが,休職関連規程7条3項及び就業規程65条3項は人事担当部長の選定する医師への受診を命じることができると規定しているから,人事担当部門長であるC部長が選定したb医院への受診命令は適法である。
また,原告は,C部長にb医院へ強制連行されたなどと主張するが,これを認めるに足りる証拠はない。
ウ 解雇事由③
(ア) 被告が指摘する原告のF係長に対する言動については,当時原告に対して懲戒が検討されたことも注意がされたこともないのであって,解雇事由として考慮することはできない。
(イ) 原告が,平成26年3月1日,顧客の面前でGを「私の悪口を言うの,やめてもらえます。3倍になってかえってくるとか…言ってましたよね。…謝ってください」などと責めたてたこと,同月9日にGに対して「専務の家で…4人で話しましょう。」と詰め寄ったことは証拠により認められる(甲7の1,3)。
エ 解雇事由④
被告は,原告が休職の際や欠勤の際に引継ぎを怠り,上司の連絡に応じなかったと主張するが,どのような業務連絡が必要だったのか必ずしも明らかではない。
したがって,解雇事由④を解雇事由として考慮することはできない。
オ 解雇事由⑤
認定事実(前記1(15))のとおり,自宅待機が終了した平成26年4月28日以降,原告は欠勤している。
しかし,原告については,後記のとおり,精神的な不調がうかがわれる状態にあり,休むことを希望してもいたのであるから,被告としては,休職処分も検討して,その後の経過を見るなどの対応を採るべきであったのに,そのような対応を採らなかったのであるから,原告の前記欠勤は「正当な理由なく勤務しない場合」(就業規程84条3号)に当たない。
カ 解雇事由⑥
認定事実(前記1(15))のとおり,C部長が原告に対して本件出社命令を発令していたが,原告が同月28日に出社していない。
原告は,C部長に対し,被告本社に出社されると何をされるか分からないと恐れ,事前に場所の変更を申し出たものの,C部長がこれに応じなかったため,出社できなかったと主張するが,被告本社に出社することで原告に不当な損害が生じると認めるべき証拠はなく,原告の出社拒否には正当な理由はない。
キ 以上のとおり,解雇事由として考慮できるのは,原告が顧客に対して自分がクビになると伝えたこと,原告が受診命令に従わなかったこと,Gの業務を妨害したこと,本件出社命令に従わなかったことであるが,これらの事情だけでは,「業務能力又は勤務成績が著しく劣り,業務に耐えられない」(就業規程84条2号)とまでいえるか疑問が残るところであるが,進んで,次項において解雇の相当性について検討する。
(2)ア  原告は,認定事実(前記1(5),(7))のとおり,上司・同僚から多数の嫌がらせやいじめを受けていたと申告しているが,いずれも裏付けのないものであって,妄想知覚を疑わせる状況にあったといえる。原告を診察したE医師も留保付きではあるが原告の言動が妄想知覚に当たるとの意見を述べていた。また,原告が精神的不調によって休職した際にも上司・同僚から悪口を言われていると述べており(乙1),本件出社命令に対しても「何をされるか分からない。」などと被害に遭うことを恐れていたのであって,原告の欠勤は精神的な不調に基づくものであって,精神的な不調が解消されない限り引き続き出勤しないことが予想された。
そのような状況においては,被告としては,治療を勧めた上で休職等の処分を検討し,その後の経過を見るなどの対応を採るべきであったといえる。
イ  ところで,被告が原告に対して休職を命じることができるのは,傷病が診断書等により認定できる場合だけではなく,就業規程60条5号に,「会社が別に定める場合」も休職を命じることができる旨規定されている。原告のように,服務規律違反行為や欠勤が本人の精神的不調に由来するものである疑いがあるにもかかわらず,受診命令を拒否するために確定診断を得られない場合には,同規程により休職を命じることが可能であるところ,本件解雇に関し,被告においてこのような検討はされていない。
そうすると,精神的な不調のために欠勤を続けていると認められる労働者に対する使用者の対応としては不十分であったというべきである。被告は,本件と平成24年最判の事案が異なると主張するが,精神的な不調のために欠勤を続けていると認められる労働者に対する使用者の対応に関する平成24年最判の趣旨は,本件においても参照されるべきである。
ウ  被告は,原告は心療内科への通院を頑なに拒んでいたことに加え,原告の服務規律違反行為は懲戒事由にも該当する重大なものであり,改善の見込みもなく,原告と被告との信頼関係は破壊されていたと主張する。しかし,被告内で,原告の精神的な不調や問題行動について対応が検討された形跡はうかがえないのであって,原告の精神的不調を原告のみの責めに帰すのは妥当ではない。
以上によれば,本件解雇は社会的相当性を欠いたものというべきある。
3  争点(2)(賞与額)について
被告の給与規程には,賞与についての具体的な定めはないが,一定の計算式に従って支給されていることからすれば,原告には賞与請求権が認められる。
賞与額の算定要素である支給係数,支社評価係数,個人評価係数及び出勤割合がその都度決定されるものであり,本件解雇後の賞与額を一義的に算定するのは困難であるから,原告に対して支給された平成25年度夏季賞与と平成25年度冬季賞与の額をもって,本件解雇後に支給される賞与額と認めるほかない。
以上によれば,原告の賞与年額は,37万4000円と認める。
4  争点(3)(不法行為の成否)について
(1)  国籍差別について
ア 原告は,入社前に被告松本店の店長が原告の経歴書をみんなの前で読み上げたために原告の国籍が明らかとなり,またD専務が原告の本名を漏えいした旨主張する。
イ(ア) 乙15によれば,「被通報者らは,通報者が韓国籍との認識はあったが,本名については知りえる立場にはなかった」と記載されており,被通報者には,原告の国籍を知っているB役員及びD専務のみならず,N係長,F係長及びGも含まれていることからすれば,被告の従業員の中には,原告の国籍を認識していた者もいたと認められる。
(イ) しかし,乙3,証人Cの証言によれば,C部長は,平成25年11月17日に原告から同内容の相談を受けて事実関係を調査しており,その結果,松本店店長が履歴書及び職歴書に目を通したうえで,新たに入社してくる従業員の説明をしたことはあったが,これらには国籍の記載がないこと,また乙15によれば,履歴書や従業員台帳に,原告の本名の記載はないことが認められる。
したがって,松本店店長が履歴書及び職歴書に目を通した上で原告の説明をした際に,原告の本名及び国籍が漏えいしたと認めることはできない。
(ウ) 原告は,被告入社時に運転免許証の写しや宅地建物取引主任者資格試験の合格証書を提出しており,これらには原告の本名が記載されていることを指摘する。確かに,原告の本名を知れば,外国籍である可能性に思い至ると考えられるが,C部長の調査結果によれば,被告では個人情報のファイルは施錠されたキャビネットに収納されており,総務部門の従業員以外が閲覧できない環境にあることが認められ(乙3,証人C),個人情報ファイルから,原告の国籍や本名が漏えいしたとも考え難い。
(エ) D専務が原告の国籍や本名を他者に漏えいしたと認めるに足りる証拠もない。
(オ) 以上によれば,入社前の松本店店長やD専務が原告の本名,国籍を漏えいしたとも,被告による個人情報の管理不備により,原告の本名,国籍が漏えいしたとも認められない。
ウ 原告は,原告が韓国籍であることについて,被告従業員が差別的な言動を行ってきた旨主張する。しかしながら,親会社コンプライアンス部の調査によっても,このような事実は確認されておらず,前記のとおり,原告は悪口を言われているなどと誤認することが少なからずあることからすれば,このような事実があると認めることはできない。
(2)  パワーハラスメントについて
ア 平成24年4月2日の経営方針会議で原告の所属する課が表彰された際,原告が表彰対象者と扱われなかったことや,報奨を授与されなかったことは争いがない。
しかし,乙2及び証人Bによれば,当該表彰の対象期間は平成23年度下期(平成23年10月から平成24年3月)であり,原告は平成24年1月入社であるが,入社直後の3か月間は表彰の対象人員に含まれないこととなっていたとのことであり,かかる説明に不合理な点は見当たらず,信用できる。
したがって,B役員は被告内の慣例に従って原告を表彰対象としなかっただけであり,パワーハラスメントであったとは認められない。そして,慣例に従った取扱である以上,B役員が原告に対して「あなたのことはこれから退職勧奨させてもらう」等と公然と言い放つ合理的理由はなく,この点の原告の主張は認められない。
イ 原告は,F係長が原告の自宅,使用車両及び敷地周辺を撮影し,社内メール及び営業用携帯電話のメールに添付して一斉送信する方法により従業員全員に送信して公開したと主張するが,このような事実を認めるに足りる証拠はない。
ウ 原告は,平成24年5月上旬に,B役員の指示により,原告が見学予約を取り付けていた家具付き建売物件の家具を撤去し,別の家具付き物件に収納させたことがパワーハラスメントに当たる旨主張する。
家具付き建売物件の家具を撤去して,別の物件に収納したという出来事があったこと自体には争いはないが,B役員の指示によるものであると認めるに足りる証拠はない。そして,通常,家具付きで建売物件を案内することになっていたとしても,営業担当や上司の判断で一時的に家具を撤去したことがあり得ないとはいえず,このことがパワーハラスメントであるとは認められない。
(3)  以上によれば,被告の従業員及び役員による国籍差別やパワーハラスメントがあったとは認められず,原告の被告に対する債務不履行及び不法行為に基づく損害賠償請求は理由がない。
第4  結論
以上によれば,原告の請求は,原告の被告に対する労働契約上の地位確認及び平成26年6月から本判決確定の日まで,毎月25日限り25万8016円,毎年6月10日限り12万4000円及び毎年12月10日限り25万円並びにこれらに対する各支払日の翌日から支払済みまで年6分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
長野地方裁判所松本支部
(裁判長裁判官 松山昇平 裁判官 佐々木亮 裁判官 中井裕美)

 

〈以下省略〉

 

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