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「営業 外部委託」に関する裁判例(5)平成30年12月20日 東京地裁 平28(行ウ)375号 誤納金還付請求事件

「営業 外部委託」に関する裁判例(5)平成30年12月20日 東京地裁 平28(行ウ)375号 誤納金還付請求事件

裁判年月日  平成30年12月20日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平28(行ウ)375号
事件名  誤納金還付請求事件
文献番号  2018WLJPCA12208017

裁判年月日  平成30年12月20日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平28(行ウ)375号
事件名  誤納金還付請求事件
文献番号  2018WLJPCA12208017

東京都豊島区〈以下省略〉
原告 有限会社現代建築積算事務所
同代表者取締役 A
同訴訟代理人弁護士 三宮政俊
同 石田逸人
同補佐人税理士 B
東京都千代田区〈以下省略〉
被告 国
同代表者法務大臣 C
指定代理人 別紙1指定代理人目録のとおり

 

 

主文

1  原告の請求をいずれも棄却する。
2  訴訟費用は原告の負担とする。

 

事実及び理由

第1  請求
被告は,原告に対し,1514万9610円及びこれに対する平成28年8月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要等
1  事案の概要
建築設計時の概算書の作成等を目的とする会社である原告は,外部の委託先に対して業務を発注し報酬を支払うとともに,その報酬に係る所得税を源泉徴収していたところ,平成18年4月分から平成22年2月分までの源泉徴収に係る所得税(以下「源泉所得税」という。)について納付をしなかったため,豊島税務署長から国税通則法(以下「通則法」という。)36条に基づく納税告知を受けて,源泉所得税並びにこれに係る不納付加算税及び延滞税を納付した。本件は,原告が,上記委託先のうち建築士等の資格を有しない者は所得税法施行令320条2項が規定する「技術士又は技術士補以外の者で技術士の行う業務と同一の業務を行う者」に該当せず,これらの者に支払った報酬については所得税の源泉徴収義務を負わないにもかかわらず,これに該当すると誤認して所得税の源泉徴収をしたものであると主張し,①主位的に,原告が上記のとおり納税告知を受けて納付した金銭が,通則法56条に規定する誤納金に当たるとして,その還付及び誤納金額に対する最後の納付日の翌日である平成28年8月25日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払(なお,原告は,遅延損害金の支払を求める部分について,通則法58条所定の還付加算金を求める限度に請求を減縮する旨申し立てたが,被告がこれに同意しなかった。)を求めるとともに,②予備的に,豊島税務署長等が原告に対してした納税告知等が国家賠償法上違法であるとして,同法に基づく損害賠償及びこれに対する同日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
2  関係法令の定め
通則法,通則法施行令(ただし,平成30年政令第161号による改正前のもの。以下同じ),所得税法,同法施行令,技術士法及び同法施行規則の定めは,別紙2-1~2-6記載のとおりである。
3  前提事実(証拠等の掲記がない事実は,当事者間に争いがない。)
(1)  原告は,建築物の基本設計時の概算書作成,設計完了時の数量調書及び工事予算書の作成等を目的として昭和45年2月21日に設立された会社である。
(2)  豊島税務署の職員は,平成22年4月,原告の当時の税理士に対し,平成21年2月1日から平成22年1月31日までの事業年度に係る源泉所得税の未納税額につきその内訳を尋ねたところ,同税理士は,原告の源泉所得税勘定の総勘定元帳などを提出するとともに,源泉所得税の未納税額が合計1719万1460円である旨を説明した。
(3) 豊島税務署長は,上記(2)の税理士の説明に基づき,平成22年4月28日付けで,平成18年4月分から平成22年2月分までの源泉所得税の本税額1719万1460円(本件で問題とされている外部委託報酬に係る源泉所得税のほかに,平成20年6月分の給与に係る源泉所得税2万0550円を含む。)の納税告知(以下「本件納税告知」という。)及び不納付加算税169万4000円の賦課決定(以下「本件不納付加算税賦課決定」という。)をした。
(4)  原告は,本件納税告知に係る源泉所得税及び不納付加算税を,納期限である平成22年5月28日までに完納しなかった。
(5) 豊島税務署の徴収担当職員は,平成22年8月9日付けで,原告に対し,本件納税告知に係る源泉所得税等の納付を催告した(甲3。以下「本件納付催告」という。)。
(6) 豊島税務署長は,平成24年11月2日付けで,原告の城北信用金庫に対する6100口の出資持分(出資金額305万円)を差し押さえた(甲2の1。以下「本件差押」という。)。
(7) 豊島税務署の徴収担当職員は,平成28年1月20日付けで,原告に対し,差押予告通知書を交付した(甲2の2。以下「本件差押予告」という。)。
(8) 原告は,平成22年5月から平成28年8月までの間に,別表1記載のとおり平成18年4月分から平成22年2月分までの各月分の,本件納税告知に係る源泉所得税合計1717万0910円並びにこれに係る不納付加算税合計169万4000円及び延滞税合計848万4900円を納付した。
(9) 原告は,平成28年5月31日,豊島税務署長に対し,原告が上記(8)のとおり支払った金額は,通則法56条所定の誤納金に当たるとして,源泉所得税等に係る誤納額還付請求書(以下「本件誤納額還付請求書」という。)を提出した。
(10)  原告は,平成28年8月13日,本件訴えを提起した(顕著な事実)。
(11) 原告の外部委託先のうち,D,E,F,a社ことG,b建築事務所ことH,c建築事務所ことI及びJ(以下,併せて「本件無資格者」という。)は,建築士など所得税法204条1項2号及び同法施行令320条が定める資格等を有していない。
4  争点
本件における争点は以下のとおりである。
(1)  本件無資格者に対して支払った報酬は所得税法204条1項2号所定の報酬に該当するか
(2)  原告が本件無資格者に対して支払った報酬額
(3)  本件不納付加算税賦課決定の無効事由の有無
(4)  充当の適否
(5)  消滅時効の成否
(6)  豊島税務署長等の行為の国家賠償法上の違法の有無及び損害額
5  争点に関する当事者の主張
争点に関する当事者の主張の要旨は,別紙3のとおりである(同別紙で定義した用語は,本文でも用いる。)。
第3  当裁判所の判断
当裁判所は,原告が本件無資格者に対して発注していた本件業務は,所得税法施行令320条2項にいう「技術士の行う業務と同一の業務」に該当し,本件無資格者は同項にいう「技術士又は技術士補以外の者で技術士の行う業務と同一の業務を行う者」に該当すると認められるから,原告が本件無資格者に対して支払った報酬は所得税法204条1項2号にいう「その他これらに類する者で政令で定めるものの業務に関する報酬」に該当し,原告は上記の本件無資格者に対する報酬に係る所得税を源泉徴収して国に納付する義務を負っていたということができ,したがって,原告が本件納税告知及び本件不納付加算税賦課決定に基づき納付した源泉所得税,不納付加算税及び延滞税はいずれも誤納金に当たらず,また,豊島税務署長等の行為について国家賠償法上の違法も認められないから,原告の請求はいずれも理由がなく棄却すべきものと判断する。その理由の詳細は,以下のとおりである。
1  争点(1)(本件無資格者に対して支払った報酬は所得税法204条1項2号所定の報酬に該当するか)について
(1)  認定事実
ア 技術士試験について(乙7,9,14の1)
技術士の資格を得るための技術士試験は,第1次試験及び第2次試験に分かれており,第1次試験に合格した者は技術士補となる資格を有し,第2次試験に合格した者は技術士となる資格を有する(技術士法4条)。
第1次試験は,技術部門ごとに,基礎科目,適性科目及び専門科目について行われるところ,その専門科目においては,当該技術部門に係る基礎知識及び専門知識に関する試験がされる(技術士法4条1項,5条1項,同法施行規則5条)。技術部門は,機械部門,電気電子部門,建設部門等の21の各部門に分かれているところ(同規則2条),これらのうち建設部門(同条9号)においては,その出題範囲に「施工計画,施工設備及び積算」が含まれている。
第2次試験は,技術士となるのに必要な技術部門についての専門的学識及び高等の専門的応用能力を有するかどうかを判定するために(技術士法6条1項),技術部門ごとに,必須科目及び選択科目の試験により行われる。建設部門の必須科目は建設一般であり,選択科目の一つとして「施工計画,施工設備及び積算」が定められている(同法施行規則11条)。なお,その出題内容は「積算及び建設マネジメントに関する事項」とされている。
第1次試験及び第2次試験における「積算」には,土木工事の積算のほか,建築工事の積算も含まれている。
イ 建築積算業務について(甲10,36,乙10,14の1,14の2)
(ア) 建築積算業務の流れは,概ね,①発注者から受領した設計図書の確認,②設計図書に基づく建築数量の計測・計算,③内訳書(設計図書に対する工事原価の算出資料)の作成,④工事価格等の算定及び⑤計算書等の発注者への提出からなる。
(イ) 発注者から設計図書を受領した後は,業務を担当するチームを編成し,積算作業の分担を行うのが通常であり,建築工事であれば,仮設工事,躯体工事,仕上げ工事等に作業を分けて行う。各担当者は,まず,受領した設計図書を確認し,不明な点があれば発注者(代行する設計者を含む。以下同じ)に質問する。
設計図書は,設計図及び仕様書等から成るのが通常であるところ,設計図とは,建築物等を新築,増築又は改修する際,工事目的物の形状,内容,性能並びに品質等を図示した書面をいうとされ,建築工事においては,一般的には,意匠図,構造図及び設備図の3種類に大別される。より詳細には,意匠図としては,仕上表(建具,設備機器,下地材等が記載されている。),平面図(基本となる寸法や詳細な部分寸法,柱や壁の位置,床の高低差,造作家具等が記載されている。),建具表(取り付けられる建具が一覧表で記載されている。),立面図(屋根や外壁の形状及び材料,外部建具の位置や形状が記載されている。),断面図(基礎や床の高さ,軒高,天井高,ベランダなどの出寸法等が記載されている。),矩計図(垂直方向の詳細図であり,基礎,床,天井裏,階高,天井高等や各部位の内法高さ等,垂直方向の詳細寸法等が記載されている。),天井伏図(天井を下から見上げた平面形状を示し,天井の材料や形状,照明器具などが記載されている。)などがある。構造図としては,基礎詳細図(基礎の寸法,配筋状態〔鉄筋の種類や本数〕のほか,基礎下の捨てコンクリートや杭との接合状態等が記載されている。),軸組図(柱や梁の形状及び寸法等が記載されている。),配筋詳細図(柱,梁,壁,床,階段等の各部分について,鉄筋の位置,種類,本数等が記載されている。)などがある。
また,仕様書には,質問回答書,現場説明書,特記仕様書,標準仕様書等があるところ,これらのうち特記仕様書は,設計図に表現できない事項が表や記号などで記載されたものであり,工事別に使用される材料の規格や施工方法等が記載されている。
(ウ) 狭義の建築積算とは,上記(イ)のような設計図書に基づいて建築資材の数量を算出して工事費を算定することをいい,このうち特に設計図書から建築資材の数量を算出する作業を数量積算という。積算業務の中で数量積算が占める割合は,一般に60~70%程度であるとされているところ,数量に誤りがあると工事価格に影響することから,正確な数量を算出することが重要であるとされている。そのため,数量積算をするに当たっては,設計図書を見て建築物の情報を読み込み,その建築物に必要な細目と数量を正確に計測,計算することが必要となる。物件によっては,設計図書の精度不足により建築物の情報が十分に読み取れない場合もあるので,数量積算をする際には,設計図書に不明な点や記載が不足している点があれば,これらの点について発注者に確認する必要がある。
設計図書の読み取りには,建築現場に従事する者が有しているのと共通の,建築に関する幅広い知識が必要であり,具体的には,建築物の構造・設備,建築工事の工程・工法,建築資材・材料,建築基準法等の関係法令,専門用語・記号等に関する知識が必要となる。また,特記仕様書には,工事の工程・工法,建築資材の種類・品質などの建築工事に関する専門用語や記号等が記載されており,特記仕様書の読み取りには,これらの知識も必要となる。
(エ) 建築数量の計測は,建築数量積算基準に従って行われる。建築数量積算基準は,かつて建築数量の計算方法や考え方が担当者や企業により異なっていたことから,統一した基準に従って建築数量の計算ができるようにするために策定されたものであり,数量積算を行う者にとって必須の知識となっている。建築数量積算基準では,誰が積算しても建築数量の差が許容範囲を超えないように,計測・計算の対象となる細目の区分や,設計図からの計測・計算方法,有効数字のとり方,結果の表示方法,工事の種類や使用する建築資材ごとの細目などについて,標準的に定められている。
ウ 原告が本件無資格者を含む委託先に対して発注していた本件業務について(甲27~34の6,39,乙14の2)
(ア) 原告は,全国的にマンション,ビル及び規格住宅等の建設等を行っている会社(発注者)から,当該建築物に係る設計図書からその建築に使用する建築資材の数量を計算する業務を受注していた。原告は,少なくとも平成18年3月頃から平成22年1月頃までの間,そのようにして受注した業務のうち,およそ7割程度を,構造(躯体)部分,内装部分及び外装部分に分け,本件無資格者を含む複数の委託先に対し,それぞれの部分について設計図書から建築資材の数量を計算する業務(本件業務)を発注していた。
(イ) 本件業務は,当該委託先において,設計図書から建築に使用する建築資材を読み取り,建物の部分ごとに使用される資材を特定するとともに,建築資材の数量を計算することにより行われる。建築資材の数量の計算に当たっては,建築数量積算基準に従って計算をする。原告が発注者に対して納品する成果物は,このようにして得られた建築資材の数量を工事の種類別に集計したものであり,これに建築資材の単価を乗じれば見積書を作成することができるが,原告は,実際に使用する建築資材の選定(どのメーカーのものを用いるかなど)や値入れ,見積書の作成までは受注していなかったため,原告が発注する本件業務も上記の受注を受けた範囲にとどまるものであった。
(ウ) 本件業務の具体的な実施内容は,例えば次のとおりである。
例えば,内部仕上げのクロス工事であれば,壁面の幅を平面図から,壁面の高さを矩計図から読み取るが,図面には壁心からの距離が記載されているため,柱や梁の厚み,壁面の厚さ(実際に壁面に使用する資材から算出する。),各階の間(上階の床面から下階の天井面まで)の厚みを読み取り,実際にクロスを貼る面積を算出することになる。
また,鉄筋工事であれば,特記仕様書に鉄筋の規格や直径が記載されており,構造配筋標準図に配筋する箇所ごとに使用する鉄筋の直径が指定されているので,他の図面とも照らし合わせながら,使用する部分において,使用する鉄筋の種類ごとにその数量を算出する。
コンクリートやその施工に必要な型枠の数量の算出は,構造配筋標準図,基礎伏図及び基礎・地中梁リストからコンクリートの使用箇所を読み取って,コンクリートを打設する部分の体積を算出して,これらの数量を計算する。
そのほかの工事についても,以上と同様に,建築資材の規格や種類ごとに,図面から使用する部分を読み取り,その数量を算出するが,特記仕様書で仕様が定められている建築資材については,その図面から使用する箇所や数量を読み取って算出する。また,特記仕様書以外の図面にも仕様や規格が記載されているものもあるので,そのような建築資材についても,当該図面から使用する箇所を読み取って数量を算出する。
なお,委託先において本件業務を行う中で,図面間での記載の齟齬等を発見することもあるが,その場合には,原告を通じて発注者に確認し,図面の修正等により対応してもらうこととなる。
本件業務における数量の計算は,専用のパソコン用のソフトウェアを使用して行っていた。
(2)  判断
上記認定事実に基づき検討する。
ア 所得税法204条1項2号は,居住者である弁護士,司法書士,建築士,技術士その他これらに類する者で政令で定めるものの業務に関する報酬又は料金を国内で支払う者は,その報酬等について所得税を源泉徴収し,国に納付しなければならない旨を定め,同法施行令320条2項は,上記の政令で定める者には「技術士又は技術士補以外の者で技術士の行う業務と同一の業務を行う者」を含む旨を規定している。
本件では,原告が認定事実ウのとおり本件業務を本件無資格者に対しても発注していたことから,その業務に対して支払った報酬が所得税法204条1項2号所定の所得税の源泉徴収をすべき報酬に該当するか否かを判断するに当たり,本件無資格者が「技術士又は技術士補以外の者で技術士の行う業務と同一の業務を行う者」に該当するか,すなわち本件業務が「技術士の行う業務と同一の業務」に該当するか否かが問題となる。
イ 技術士とは,科学技術(人文科学のみに係るものを除く。)に関する高等の専門的応用能力を必要とする事項についての計画,研究,設計,分析,試験,評価又はこれらに関する指導の業務を行う者をいうとされ,技術士補とは,技術士となるのに必要な技能を修習するため,技術士の業務について技術士を補助する者をいうとされている(技術士法2条)。そして,認定事実アのとおり,技術士試験の第1次試験においては,技術部門のうち建設部門に係る出題範囲に「積算」が含まれ,第2次試験においても建設部門に係る選択科目として「積算」が含まれており,建築積算業務に関する専門知識が試験される。
このように,技術部門の一つである建設部門における技術士として求められる専門性を有するか否かの判定のための試験に,建築積算業務に関する試験が含まれていることからすると,建築積算業務は,建築部門に係る技術分野において技術士が取り扱うことが想定される高等の専門的応用能力が求められるべき業務であるということができる。
ウ また,認定事実イのとおり,建築積算業務においては,設計図書に基づく建築数量の計測・計算,内訳書の作成及び工事価格の算定等が行われるが,その業務の60~70%程度を占めるとされる数量積算においては,設計図書から建築物の情報を読み込み,建築数量積算基準に定められた数量積算の手法等の細目に従って,数量を算出すべきものとされている。設計図書は特定の建物を建築するために必要な様々な図面の複合物といえ,個々の施工に使用する建築資材の数量を計算するのに必要な寸法等の情報が,設計図や特記仕様書等の各書面にそれぞれ記載されていることから,各書面の該当箇所を併せて見なければ,その計算に必要な情報を理解することができない。また,実際の設計図書には,各図面間に齟齬があったり,必要な記載が不足していることもあり得るから,これらを発見して的確に発注者に確認することも必要である。このような設計図書の読み取りには,建築物の構造・設備,建築工事の工程・工法,建築資材・材料,建築基準法等の関係法令,専門用語・記号に関する知識など,建築に関する幅広い専門知識が必要といえ,数量積算をするにはそのような専門知識を要するものということができる。さらに,設計図書から読み取った寸法等に基づき建築数量積算基準に従って積算を行うためには,詳細に記載された同基準の内容を理解し,実際の設計図書にこれを当てはめる能力も必要になるものといえる。
以上のような数量計算を行うために必要とされる知識や能力は,高度に専門的な知識や能力であると評価することができるから,数量積算の業務は,技術士が有する高等の専門的応用能力をもってする業務に相応しいものであるというべきである。
エ 上記イ及びウによれば,設計図書から建築資材の数量を算出する業務(数量積算)は,技術士が行う業務である「科学技術に関する高等の専門的応用能力を必要とする事項についての計画,研究,設計,分析,試験,評価又はこれらに関する指導の業務」(技術士法2条1項)に当たると解するのが相当である。
オ そして,認定事実ウのとおり,原告が本件無資格者に対して発注していた本件業務は,設計図書から建築に使用する建築資材を読み取り,その数量を計算するというものであったから,建築積算業務のうち数量積算に相当する業務であったと認められる(なお,原告は,自らが受注していた業務を建物の部分ごとに細分化して本件無資格者を含む各委託先に発注していたものであるが,もとより建築積算業務においては業務を区分して分担して行うのが一般的とされており〔認定事実イ(イ)〕,このことは,本件業務が数量積算に相当する業務であると認めることを妨げるものではない。)。
カ 争点(1)についての小括
以上によれば,原告が平成18年2月頃から平成22年1月頃までの間に本件無資格者に発注していた本件業務は,所得税法施行令320条2項が定める「技術士の行う業務と同一の業務」に当たり,本件無資格者は同項が定める「技術士又は技術士補以外の者で技術士の行う業務と同一の業務を行う者」に該当するといえるから,本件業務の対価として原告が本件無資格者に対して支払った報酬は所得税法204条1項2号の報酬に該当し,原告は,その報酬について所得税を源泉徴収し,これを国に納付する義務を負っていたと認めるのが相当である。
キ 原告の主張について
(ア) 原告は,本件業務には,具体的な建築資材の選定等を含む見積書の作成までは含まれていないから,所得税法施行令320条2項が定める「技術士の行う業務と同一の業務」には当たらない旨主張する。しかし,建築積算業務から値入れや見積書の作成等の業務を除いた数量積算の業務だけを見ても,上記の「技術士の行う業務と同一の業務」に当たることは,これまでに説示したとおりであるから,見積書の作成等が本件業務に含まれていないことをもって,上記の認定判断が左右されるものではない。したがって,原告の上記主張は採用することができない。
(イ) 原告は,本件業務は専用のパソコン用ソフトウェアを使用することによって行うことができる業務であり,ある程度の指導を受け経験を積めば誰でも行うことができ,建築基準法等の法令の知識も必要ない旨主張する。しかし,これまでに説示したとおり,数量積算という業務そのものの内容が専門的知識や能力を要するものであるから「技術士の行う業務と同一の業務」と認められるのであって,専用のパソコン用ソフトウェアを使用できることをもって上記の認定判断が左右されるものではない。また,設計図書の読み取りに関して建築基準法等の関係法令の知識も必要であることは,上記ウに説示したとおりである。したがって,原告の上記主張は採用することができない。
2  争点(3)(本件不納付加算税賦課決定の無効事由の有無)について
上記1のとおり,原告は,本件無資格者に対する報酬の支払について所得税を源泉徴収して国に納付する義務を負っていたものであり,豊島税務署長は,平成22年4月,原告の当時の税理士に対して源泉所得税の未納税額を尋ね,同税理士の説明をもとに本件納税告知及び本件不納付加算税賦課決定をした(前提事実(2),(3))のであるから,同決定に違法があるとはいえず,他に同決定が無効であることを根拠付ける事情はうかがわれないから,同決定に無効事由があると認めることはできない。
3  争点(6)(豊島税務署長等の行為の国家賠償法上の違法の有無)について
上記1で説示したとおり,原告は本件無資格者に対して支払う報酬について所得税を源泉徴収して国に納付する義務を負っていたといえるから,これを前提にされた本件各処分・行為はいずれも適法というべきであり,豊島税務署長及び同署職員らの行為に,国家賠償法1条1項所定の違法があると認めることはできない。
したがって,その余の点について判断するまでもなく,原告の被告に対する国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求は理由がない。
4  小括
上記1において検討したとおり,原告が,本件納税告知に係る報酬に関し,平成18年3月頃から平成22年1月頃までの間に本件無資格者に対して発注していた本件業務は,所得税法施行令320条2項が定める「技術士の行う業務と同一の業務」に該当し,本件無資格者は同項が定める「技術士又は技術士補以外の者で技術士の行う業務と同一の業務を行う者」に該当すると認められるから,原告は,上記の期間中に本件無資格者に対して支払った報酬について,所得税法204条1項2号に基づき所得税を源泉徴収し国に納付する義務を負っていたといえる。豊島税務署長は,このことを前提に,原告の当時の税理士がした未納税額の説明に基づき本件納税告知及び本件不納付加算税賦課決定をし,原告は,これらを受けて源泉所得税合計1717万0910円,これに係る不納付加算税合計169万4000円及び延滞税合計848万4900円を納付したものである。上記2のとおり本件不納付加算税賦課決定に無効事由があるとは認められないことに加え,他に原告による上記の源泉所得税等の納付が誤納であることを示す事情はうかがわれず,原告の主張する誤納金があると認めることはできない。したがって,その余の争点について判断するまでもなく,原告の通則法56条に基づく誤納金の還付請求及びこれに対する遅延損害金の支払を求める請求(主位的請求)には理由がない。また,上記3のとおり豊島税務署長らの本件各処分・行為に国家賠償法上の違法があると認めることはできないから,原告の同法に基づく損害賠償請求及びこれに対する遅延損害金の支払を求める請求(予備的請求)にも理由がない。
第4  結論
以上によれば,原告の請求はいずれも理由がないから,これらを棄却することとして,主文のとおり判決する。
なお,原告は,平成30年4月11日付け証拠申出書により,原告代表者本人尋問の申出をしているが,取調べの必要性が認められないことから,これを却下することとする。
東京地方裁判所民事第51部
(裁判長裁判官 清水知恵子 裁判官 松長一太 裁判官 池田美樹子)

 

別紙1
指定代理人目録〈省略〉
別紙3
争点に関する当事者の主張の要旨
1 争点(1)(本件無資格者に対して支払った報酬は所得税法204条1項2号所定の報酬に該当するか)について
(1) 原告の主張の要旨
ア 原告は,平成17年2月頃から平成22年1月頃までの間に,本件無資格者を含む別表2記載の「外注先」欄記載の相手方との間で,業務を発注し,その報酬として「支払年月」欄記載の年月に「外注費」欄記載の報酬を支払うことをそれぞれ約し,同記載の年月に,同記載の報酬から,「送金料」欄記載の額及び「源泉額」欄記載の額を控除した残額を支払った。
イ 技術士は,科学技術に関する高等の専門的応用能力を必要とする事項について,計画,研究,設計,分析,試験,評価又はこれらに関する指導の業務を行う者である。したがって,科学技術に関する専門性が低く,知識を習得すれば業務に従事することができる程度の応用能力で行うことのできる業務は技術士の行う業務に当たらないというべきである。
ウ 原告が,本件無資格者を含む上記アの相手方(委託先)に対して発注していた業務(以下「本件業務」という。)は,以下のとおり建築積算業務に至らない業務であり,科学技術に関する専門性が低く,知識を習得すれば業務に従事することができる程度の応用能力で行うことのできる業務であるから,技術士が行う業務と同一の業務には当たらず,したがって,これらの業務に対し本件無資格者に支払った報酬は所得税法204条1項2号所定の報酬に当たらない。
エ 原告は,マンション建設等を業としている会社(発注者)から,設計図書から建物等で使用する建築資材の数量を算出する業務を受注しており,本件無資格者に対して発注していた本件業務は,原告が受注した上記業務の一部に限られるものである。
すなわち,原告は,上記受注した業務をさらに構造部分,内装部分,外装部分等に分けて,その部分ごとに外注していたものであり,本件無資格者に対して発注していた本件業務も,そのように細分化された,原告が受注した業務の一部のみである。
また,発注者から原告に対して交付される設計図書に含まれる仕様書には,使用する建築資材の指定があるので,本件業務において計算するのは,指定された建築資材の使用数量のみである。建築資材について,どのメーカーのどの種類,規格のものを使用するかの決定は,本件業務には含まれない。
設計図書から,使用する建築資材が建物のどの場所で使用されるものであるかを読み取れなければ算出漏れが生じるから,本件業務においてもそのような読み取りができる程度の知識経験は必要であるが,これは少し習熟すれば誰でも習得可能なものであって,特に専門的知識を要するものではない。
オ したがって,本件業務は,科学技術に関する高等の専門的応用能力を必要とする業務に当たらないから,所得税法施行令320条2項が規定する「技術士の行う業務と同一の業務」に該当せず,本件無資格者は同項が規定する「技術士又は技術士補以外の者で技術士の行う業務と同一の業務を行う者」に該当しないから,本件無資格者に支払った報酬は所得税法204条1項2号所定の報酬に当たらない。
(2) 被告の主張の要旨
ア 所得税法施行令320条2項所定の「技術士又は技術士補以外の者で技術士の行う業務と同一の業務を行う者」とは,技術士法2条に規定する技術士又は技術士補の資格を有しないで,科学技術に関する高等の専門的応用能力を必要とする事項について計画,研究,設計,分析,試験,評価又はこれらに関する指導の業務を行う者をいう。
イ 本件業務は建築積算業務に当たるところ,これは,建築工事に着手する前に施工計画や図面等を基にして,工事に必要な資材の数量や金額の見積りを行うものであって,専門的知識及び業務経験を要する業務である。特に,建築工事を対象とする建築積算業務は,予算内で良質な建物を建設するために設計図書(設計図,仕様書等)などから必要な工事を洗い出し,各工事に必要な資材の数量や工事価格を算出する作業であって,建築積算業務のうち,数量を計算する部分のみについて見ても,以下のとおり専門的な知識と相応の業務経験に基づく応用能力が必要となるものである。
ウ 建築積算業務のうち,建築資材の数量を計算する部分は,設計図書から必要な建築資材の数量を読み取って算出することが主たる業務となる。
まず,設計図書のうち設計図には,大別して意匠図,構造図及び設備図があるが,さらに意匠図は仕上表や配置図など,構造図は基礎伏図や各階伏図など,設備図は空調・換気設備図や給排水衛生設備図などといったように,様々な図面に分かれているから,それぞれの図面の内容を理解し,図面間の整合性にも配意しなければならない。次に,設計図書のうち仕様書は,使用される材料等を記載した書類であり,標準仕様書のほか,建物ごとに特徴的な部分について作成される特記仕様書があるので,ここから必要な建築資材の規格等を理解しなければならない。これらの図面のほか,さらに質問回答書や現場説明書といった書面が作成される場合もあり,これらの書類が建築積算の対象となる。
建築積算業務を行う際には,これらの図面を照合し,必要な資材の数量を読み取る必要がある。
オ 上記エのとおり設計図書から必要な資材の数量を読み取るためには,建築資材の数量に関する計測・計算の基準である建築数量積算基準に関する正確な知識が必要である。また,設計図書を正確に読み取るためには,建物の構造的な知識や建築工事の工程・工法の知識等が必要であるし,仕様書を読み取るためには,建築工事に関する専門用語や記号に関する知識が必要となる。
そして,設計図書の完成度には大きなばらつきがあるのが通常であることから,設計図書ごとにその完成度を見極め,必要な情報の有無を確認し,設計者の意図も読み取って建築積算を行う業務経験が必要となる。
カ したがって,建築積算業務のうち建築資材の数量を積算する業務部分のみについてみても,技術士法2条に規定する科学技術に関する高等の専門的応用能力を必要とする事項に当たり,本件業務は所得税法施行令320条2項所定の「技術士の行う業務と同一の業務」に該当するから,本件無資格者は,同項が規定する「技術士又は技術士補以外の者で技術士の行う業務と同一の業務を行う者」に該当するというべきであり,したがって,支払った報酬は同法204条1項2号所定の報酬に当たるというべきである。
2 争点(2)(原告が本件無資格者に対して支払った報酬額)について
(1) 原告の主張の要旨
原告が業務を発注していた本件無資格者を含む外注先,報酬額,送金料及び源泉所得税額は,それぞれ別表2記載の「外注先」欄記載の者,「外注費」欄記載の額,「送金料」欄記載の額及び「源泉額」欄記載の額のとおりである。
(2) 被告の主張の要旨
否認する。原告が,本件業務の対価として約した報酬額等を認めるに足りる証拠はない。
3 争点(3)(本件不納付加算税賦課決定の無効事由の有無)について
(1) 原告の主張の要旨
不納付加算税の賦課決定処分は,源泉所得税の納付義務が存在することを前提とし,それが納付されない場合の附帯税としての加算税を課すものであるから,源泉所得税の納付義務がそもそも存在しないときはその前提条件を欠くものとして当然に無効であるというべきである。
(2) 被告の主張の要旨
ア 通則法67条1項に規定する不納付加算税の賦課決定処分については,その処分に重大かつ明白な瑕疵があって当然に無効とされる場合を除き,いわゆる公定力を有し,裁判所等の権限ある機関により取り消されるまでは有効なものとして取り扱われるものであるから,これに基づいて納付された加算税については,たとえ,当該賦課決定処分に取消原因となる瑕疵がある場合であっても,それが裁判所等の権限ある機関により取り消されるまでは,これに対応する確定した租税債務が存在するものとして取り扱われるべきものである。
イ 源泉所得税は納税義務の成立と同時に特別の手続を要しないで税額が確定するものであるところ(通則法15条3項2号),豊島税務署長は,原告の当時の税理士の説明に基づき本件不納付加算税賦課決定を行ったものであるから,その処分に重大かつ明白な瑕疵があって当然に無効とされるものとはいえない。
4 争点(4)(充当の適否)について
(1) 原告の主張の要旨
原告が平成22年5月から平成28年8月までの間に,本件無資格者に係る源泉所得税として納付した金銭は誤納金に当たるから,本件無資格者以外の者に発注した業務の報酬に係る源泉所得税に充当されるべきである。
(2) 被告の主張の要旨
通則法57条1項の充当の要件は,還付金等と納付すべきこととなっている国税とが同一の納税者につき存在しており,これらが充当適状にあることである。還付金等について,その充当適状の基準時となる「還付金等が生じた時」(通則法施行令23条1項本文)とは,税務署長等が具体的な還付金等の額を認識することができるように至った時である。
本件においては,原告が本件納税告知に係る源泉所得税として納付した金銭は誤納金に当たらず,その立証がされていないから,未だ豊島税務署長においても,具体的な還付金等の額を認識しておらず,充当適状にあるとはいえない。仮に,本件において原告の請求を全部又は一部認容する判決が言い渡された場合には,そこで初めて具体的な還付金等の額を認識することができるから,その判決の言渡しがあったときが「還付金等が生じた時」(通則法施行令23条1項本文)である。したがって,本件において通則法57条1項は適用されない。
5 争点(5)(消滅時効の成否)について
(1) 被告の主張の要旨
源泉所得税の誤納金還付請求権は,納付日(請求ができる日)から5年間行使しないことによって,時効により消滅する(通則法74条1項)。そして,その消滅時効の起算日は納付日の翌日である(同法10条1項1号)。平成18年4月分の22万9300円及び同年5月分の金額17万4700円については,その最後の納付日がそれぞれ平成22年8月16日,平成23年5月10日であるから,これらが仮に誤納金に該当するとしても,本件誤納額還付請求書が提出された時点で既に納付日の翌日から5年が経過しており,時効消滅している。
(2) 原告の主張の要旨
争う。
6 争点(6)(豊島税務署長等の行為の国家賠償法上の違法の有無及び損害額)について
(1) 原告の主張の要旨
豊島税務署長は,本件納税告知及び本件加算税賦課決定をするに当たって,それが適法な処分であるかを十分精査すべきであったのに,これを怠って漫然と本件納税告知及び本件不納付加算税賦課決定をし,豊島税務署長や同署の職員らは,その後も本件納付催告,本件差押及び本件差押予告(以下,本件納税告知及び本件不納付加算税賦課決定と併せて「本件各処分・行為」という。)をした。これらは,国家賠償法上違法である。
また,本件各処分・行為は,原告から本件納税告知の誤りを指摘された以降も原告に源泉所得税を求め続けたものであり,国家賠償法上違法である。そして,豊島税務署長は,原告が本件納税告知に係る源泉所得税,これに係る不納付加算税及び延滞税を納付した後,誤納金の返還を求めたにもかかわらず,これに応じないのであり,このような行為は国家賠償法上違法である。
原告は,本件各処分・行為により,誤って納めた源泉所得税額,不納付加算税額及び延滞税額相当額の損害を被ったものである。
(2) 被告の主張の要旨
ア 原告は本件無資格者に対して支払った報酬につき源泉徴収義務を負う以上,本件各処分・行為につき,豊島税務署長等に職務上の法的義務違反はない。
イ 納税の告知(通則法36条)とは,納税者に対し納期限を指定して,確定した納税義務の履行を請求する行為であるとされているところ,豊島税務署長は,原告の当時の税理士の説明や資料の提出を受けた上で,それに基づいて本件納税告知及び本件不納付加算税賦課決定を行ったものであり,職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と職務行為を行ったと認め得るような事情は認められないことから,豊島税務署長等に職務上の法的義務違反はない。
以上

〈以下省略〉

 

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