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「営業支援」に関する裁判例(105)平成21年 6月30日 東京地裁 平20(ワ)25189号 売掛代金等請求事件

「営業支援」に関する裁判例(105)平成21年 6月30日 東京地裁 平20(ワ)25189号 売掛代金等請求事件

裁判年月日  平成21年 6月30日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平20(ワ)25189号
事件名  売掛代金等請求事件
裁判結果  一部認容  文献番号  2009WLJPCA06308025

要旨
◆原告が、被告Y1及び被告あおみやに対し、不二家ファミリー・チェーン店の経営に係るフランチャイズ契約(FC契約)に基づき、仕入れた商品等代金とロイヤルティなどの支払を求めるとともに、被告Y2及び被告Y3に対し、連帯保証契約に基づき、同額の金員の支払を求めた事案において、被告らの、原告と被告Y2との間では被告あおみや守谷駅前支店のFC契約について連帯保証契約は締結されていないとの主張、原告の商品供給義務違反により買掛金等債務は発生していないとの主張、原告の買掛金等債務の支払請求は権利濫用に当たるとの主張を排斥し、原告の請求を一部認容した事例

参照条文
民法446条1項

裁判年月日  平成21年 6月30日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平20(ワ)25189号
事件名  売掛代金等請求事件
裁判結果  一部認容  文献番号  2009WLJPCA06308025

東京都文京区〈以下省略〉
原告 株式会社不二家
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 松嶋英機
同 宮崎信太郎
同 金山伸宏
同 波里好彦
同 髙橋洋行
茨城県つくば市〈以下省略〉
被告 Y1
茨城県つくば市〈以下省略〉
被告 株式会社あおみや
同代表者代表取締役 Y2
茨城県つくば市〈以下省略〉
被告 Y2
茨城県つくば市〈以下省略〉
被告 Y3
被告ら訴訟代理人弁護士 糸賀良徳
同 小西俊一

 

 

主文

1  被告Y1及び被告Y2は,原告に対し,連帯して,金1220万7251円及びこれに対する平成19年7月11日から支払済みまで年14.5パーセントの割合による金員を支払え。
2  被告株式会社あおみや,被告Y2及び被告Y3は,原告に対し,連帯して,金183万3292円及びこれに対する平成19年6月1日から支払済みまで年14.5パーセントの割合による金員を支払え。
3  被告株式会社あおみや及び被告Y2は,原告に対し,連帯して,金212万7814円及びこれに対する平成19年6月1日から支払済みまで年14.5パーセントの割合による金員を支払え。
4  原告の被告らに対するその余の請求をいずれも棄却する。
5  訴訟費用は,これを15分し,その1を原告の負担とし,その余は被告らの負担とする。
6  この判決は,第1項ないし第3項に限り,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  当事者の求めた裁判
1  請求の趣旨
(1)  被告Y1及び被告Y2は,原告に対し,連帯して,金1291万7749円及びこれに対する平成19年7月11日から支払済みまで年14.5パーセントの割合による金員を支払え。
(2)  被告株式会社あおみや,被告Y2及び被告Y3は,原告に対し,連帯して,金240万1511円及びこれに対する平成19年6月1日から支払済みまで年14.5パーセントの割合による金員を支払え。
(3)  被告株式会社あおみや及び被告Y2は,原告に対し,連帯して,金215万4189円及びこれに対する平成19年6月1日から支払済みまで年14.5パーセントの割合による金員を支払え。
(4)  訴訟費用は被告らの負担とする。
(5)  仮執行宣言
2  請求の趣旨に対する答弁
(1)  原告の請求をいずれも棄却する。
(2)  訴訟費用は原告の負担とする。
(3)  仮執行免脱宣言
第2  事案の概要等
1  事案の要旨
本件は,原告が,被告Y1(以下「被告Y1」という。)及び被告株式会社あおみや(以下「被告あおみや」という。)との間で,不二家ファミリー・チェーン店の経営に係るフランチャイズ契約(以下「FC契約」という。)を締結し,被告Y2(以下「被告Y2」という。)及び被告Y3(以下「被告Y3」という。)との間で,同被告らがFC契約によって発生する被告Y1及び被告あおみやの債務を連帯保証する(ただし,被告Y3は,同チェーン店「つくば二の宮店」に係る被告あおみやの債務についてのみ)旨の連帯保証契約を締結したと主張し,被告Y1及び被告あおみやに対し,FC契約に基づき,仕入れた商品等代金とロイヤルティ及びこれらに対する消費税の合計額並びにこれに対する遅延損害金,被告Y2及び被告Y3に対し,連帯保証契約に基づき,同額の金員の支払を求めた事案である。
2  前提事実(末尾に証拠の記載のない事実は当事者間に争いがない。)
(1)  当事者
ア 原告は,菓子食品の製造販売及び洋菓子類の製造販売並びに喫茶,飲食店の経営等を主な事業内容とする株式会社である。
イ 被告Y1は,不二家ファミリー・チェーン店「つくば桜店」(以下「つくば桜店」という。)及び同チェーン店「谷田部店」(以下「谷田部店」という。)を経営していた者である。
ウ 被告あおみやは,不二家ファミリー・チェーン店「つくば二の宮店」(以下「つくば二の宮店」という。)及び同チェーン店「守谷駅前店」(以下「守谷駅前店」という。)を経営していた株式会社である。
エ 被告Y2は,被告あおみやの代表取締役である。
(2)  FC契約及び連帯保証契約の締結
ア 原告は,被告Y1との間で,平成8年11月21日,原告をフランチャイザー,被告Y1をフランチャイジーとするFC契約を締結した上,当該FC契約に基づき,谷田部店を開業し,また,平成10年2月19日にもFC契約を締結した上,当該FC契約に基づき,つくば桜店を開業した。
イ 原告は,被告あおみやとの間で,平成14年10月26日,原告をフランチャイザー,被告あおみやをフランチャイジーとするFC契約を締結した上,当該FC契約に基づき,つくば二の宮店を開業し,また,平成18年5月ころにもFC契約を締結した上,当該FC契約に基づき,守谷駅前店を開業した。
ウ 被告Y2は,前記谷田部店,つくば桜店及びつくば二の宮店に係る各FC契約に関し,原告との間で,当該各FC契約に基づき,被告Y1又は被告あおみやに生ずるすべての債務について,被告Y2が連帯保証する旨の契約をそれぞれ締結した。
エ 被告Y3は,前記つくば二の宮店に係るFC契約に関し,原告との間で,当該FC契約に基づき,被告あおみやに生ずるすべての債務について,被告Y3が連帯保証する旨の契約を締結した。
(3)  FC契約の内容等
ア FC契約に基づき,被告Y1及び被告あおみやが負担する債務の内容
被告Y1及び被告あおみやは,前記各FC契約に基づき,原告に対し,①原告又は原告の指定した仕入先から納入を受けた商品類,物品類及び包装資材の代金債務(以下「商品代金等債務」という。),②売上高(税抜き)の5パーセントのロイヤルティ債務(以下「ロイヤルティ債務」という。),③前記①及び②に係る消費税額相当額(以下,①ないし③を併せて「買掛金等債務」という。)を負担することになる。
イ 弁済期
前記各FC契約に基づく買掛金等債務の弁済期は,各月の1日ないし10日までに係る分については,当該月の20日まで,各月の11日ないし20日までに係る分については,当該月の末日まで,各月の21日ないし当該月の末日までに係る分については,当該月の翌月の10日までであり,弁済方法は,各弁済期までに原告の指定する銀行口座に振り込むというものである。
ウ 遅延損害金
前記各FC契約に基づく買掛金等債務に係る遅延損害金は年利14.5パーセントである。
(4)  残債務の内容
平成19年7月10日における,被告Y1の原告に対する,谷田部店及びつくば桜店に係る買掛金等債務の元本,及び平成19年5月31日における,被告あおみやの原告に対する,つくば二の宮店及び守谷駅前店に係る買掛金等債務の元本は,それぞれ次のとおりであり,これらの弁済期は全て前記日時において到来している。
ア 谷田部店 566万8608円(詳細は,別紙1の1のとおり)
イ つくば桜店 724万9141円(詳細は,別紙1の2のとおり)
ウ つくば二の宮店 240万1511円(詳細は,別紙1の3のとおり)
エ 守谷駅前店 215万4189円(詳細は,別紙1の4のとおり)
(5)  FC契約の取決めにおいて,大口の注文があった場合,商品を正規の金額から値引きした特別価格で販売してもよいとされ,この場合,原告が売上げの5パーセントを負担すると合意されていたところ,谷田部店について,特別注文伝票による原告の負担分合計は4万1911円である。
(6)  谷田部店に併設されていた原告の子会社のサーティワンアイスクリーム株式会社の店舗について,一連の消費期限切れ原料使用問題に伴う長期休業期間中,同店舗も休業せざるを得ず,その際の商品ロス分合計17万8241円については,原告と被告Y1との間で,原告において負担することを合意していた。
(7)  谷田部店,つくば桜店及びつくば二の宮店の3店舗について,閉店に伴い原告において資材包材やペコグッズを引き取っており,原告は,被告Y1及び被告あおみやに対し,次のとおりその引取代金の支払義務がある。
ア 谷田部店 20万3146円
イ つくば桜店 23万4450円
ウ つくば二の宮店 54万1844円
被告らは,原告に対し,平成21年4月28日,本件第5回口頭弁論期日において,上記引取代金債権をもって,原告の本訴請求債権とその対当額において相殺するとの意思表示をした。
(8)  原告発行の「御贈答券」112枚(額面額合計5万6000円)及び「株主ご優待券」99枚(額面額合計4万9500円)が,被告Y1及び被告あおみやの経営していた店舗において,額面額相当の金券として使用されたが,同金券で支払を受けた店舗は,これを原告に提出することにより,支払金額を減額するなどして額面相当額の対価を受けることになっていたところ,これらの金券が被告Y1及び被告あおみやの経営していたいずれの店舗で使用されたものか不明であるので,谷田部店,つくば桜店,つくば二の宮店及び守谷駅前店の4店舗に等分してそれぞれ2万6375円(=(5万6000円+4万9500円)÷4)の支払を原告に求めることができることになる。
被告らは,原告に対し,平成21年4月28日,本件第5回口頭弁論期日において,上記金券支払請求債権をもって,原告の本訴請求債権とその対当額において相殺するとの意思表示をした。
3  争点及び争点についての当事者の主張
(1)  守谷駅前店についての連帯保証契約の有無について
ア 原告の主張
被告Y2は,原告との間で,被告あおみやが経営する守谷駅前店について被告あおみやが負う債務を連帯保証する旨の連帯保証契約を締結した。
イ 被告らの主張
否認する。
(2)  原告の商品供給義務違反により買掛金等債務が発生しないことになるか。
ア 被告らの主張
原告の一連の消費期限切れ原料使用問題が発覚した平成19年1月10日以前及びその後販売を再開した同年3月23日までの間において,原告は,被告Y1及び被告あおみやに対し,FC契約に基づき,同被告らの注文に応じ,客観的に安全で,法令を遵守し,客観的安全性に疑問を持たれることのない商品を供給すべき義務を負い,仕入れ代金やロイヤルティの支払義務は,原告が上記の義務を果たしたことの対価として発生するものであるところ,原告は,この義務に違反した商品を供給したので,買掛金等債務は発生しない。
イ 原告の主張
被告らの主張は争う。
(3)  原告の買掛金等債務の支払請求が権利濫用に当たるか。
ア 被告らの主張
(ア) 仮に,買掛金等債務が発生したとしても,原告は,自らの不祥事によって長期にわたり被告らフランチャイズ店を販売不可能な状態に陥れて閉店に追い込み,補償も一切していないので,このような自らの責任を棚に上げた上での一方的な請求は,権利濫用に当たり,許されない。
(イ) 一連の消費期限切れ原料使用問題を境として,原告と被告らとの間の契約関係には著しい事情の変更があったのであるから,フランチャイザーである原告には,FC契約を継続するにあたって今後の売上げの予想や商品の供給内容等について,正確かつ十分な情報を提供すべき信義則上の義務があったところ,販売再開後における長期間にわたる売上不振や閉鎖店舗が多くあることに照らせば,原告がその義務に違反したことは明らかであって,一連の売上不振は,原告の不祥事によって引き起こされたものであり,上記の原告の情報提供義務違反をも併せ考慮すれば,販売を再開した平成19年3月23日以降の買掛金等債務の支払請求も,権利濫用に当たり,許されない。
イ 原告の主張
(ア) 被告らの主張(ア)は争う。谷田部店及びつくば桜店については,被告Y1の債務不履行を原因とする契約の解除により終了したのであり,また,つくば二の宮店及び守谷駅前店の営業については,「不二家洋菓子チェーン」からの異業種転換を希望する被告あおみやの要請により,FC契約を合意解約したことにより終了したので,原告によって閉店に追い込まれたことはない。また,原告は,平成19年1月11日以降,フランチャイズ店を休業させたことについて,すべてのフランチャイジーに対し,平成19年1月11日から同年4月10日までの間,前年の同期間に係る粗利益相当額の休業補償を行った。さらに,原告は,平成19年3月23日以降に営業を再開した店舗に対し,同年4月11日から同月30日までの間,前年の同期間における売上高との差額に対する粗利益の補填を行い,加えて,同年5月1日から平成20年3月31日の間には,売上高の5パーセントに相当する金額を営業支援金として支払った。
(イ) 被告らの主張(イ)は争う。原告の不祥事により被告らの売上げが減少したこと,及びフランチャイズ店の再開にあたり,原告に情報提供義務違反があったと主張するが,その内容や根拠は示されておらず,また,それらの主張が何故権利濫用の主張に結びつくのか不明である。
第3  当裁判所の判断
1  争点(1)の守谷駅前店についての連帯保証契約の有無について
(1)  乙第4号証の原告と被告あおみやとの間の守谷駅前店に関するFC契約書によれば,その末尾の署名ないし記名押印欄には,原告の記名押印はあるものの,フランチャイジーである被告あおみやの記名押印,及び被告あおみやの連帯保証人の署名押印がないことが認められる。もっとも,同FC契約書には,上記のとおり被告あおみやの記名押印がないにもかかわらず,原告と被告あおみやとの間の守谷駅前店に関するFC契約の成立については,当事者間に争いがない。
(2)  証拠(甲1ないし3)及び弁論の全趣旨によれば,原告とフランチャイジーとの間で,継続的な契約関係であるFC契約を締結する場合,原告とフランチャイジーの債務を連帯保証する者との間で連帯保証契約を締結することが当然の前提になっていること,したがって,原告と被告あおみやとの間のつくば二の宮店に関するFC契約では,被告あおみやの代表者である被告Y2と被告あおみやの実質的な代表者である被告Y3が連帯保証人になっていること,原告は,被告あおみやが守谷駅前店を開店することなり,平成18年5月10日,被告Y3に対し,原告の記名押印済みのFC契約書2通(乙第4号証はその一部)を交付し,当事者である被告あおみや,連帯保証人になることとされていた被告Y2及び被告Y3の記名ないし署名押印した上で,その契約書1通を原告に返還するように求めたが,返還しなかったこと,その後,被告あおみやは,守谷駅前店の営業を開始し,原告に対してFC契約所定の商品等の供給を求めるなど,原告との間で営業取引を行ったが,その間,被告あおみや,被告Y2及び被告Y3は,連帯保証条項を含め,FC契約の内容について異議を述べていないこと,しかし,被告Y3は,原告から法定開示書面の交付やFC契約について十分な事前説明がなかったことなどを述べて,被告あおみや,被告Y2及び被告Y3の記名ないし署名押印したFC契約書の原告への返還を拒絶したことが認められる。
(3)  以上によれば,原告と被告あおみやとの間の守谷駅前店に関するFC契約書の連帯保証人欄には,被告Y2及び被告Y3の署名押印はないが,原告と被告Y2及び被告Y3との間で,平成18年5月ころ,守谷駅前店のFC契約について被告あおみやが負うすべての債務について連帯保証する旨の合意が成立したと認められる。
2  争点(2)の原告の商品供給義務違反により買掛金等債務が発生しないことになるかについて
被告らは,原告が,FC契約に基づき,被告Y1及び被告あおみやに対し,客観的安全性に疑問を持たれることのない商品を供給すべき義務を負い,仕入れ代金やロイヤルティの支払義務は,原告がこの義務を果たしたことの対価として発生するものであるところ,原告がこの義務に違反した商品を供給したので,買掛金等債務は発生しないと主張する。
しかし,弁論の全趣旨によれば,被告Y1及び被告あおみやは,原告との間のFC契約に基づき,原告から商品等の納品を受け,不二家洋菓子の商品として顧客に販売してその対価を得,利益を上げていたことが認めれ,この事実に照らせば,仮に原告が被告Y1及び被告あおみやに対し,安全性に疑問を持たれるような商品を供給したことがあったとしても,これをもって,直ちに買掛金等債務が発生しないことになるということはできない。
したがって,被告らの前記主張は失当というべきである。
3  争点(3)の原告の買掛金等債務の支払請求が権利濫用に当たるかについて
(1)  被告らは,原告が自らの不祥事によって長期にわたり被告らフランチャイズ店を販売不可能な状態に陥れて閉店に追い込み,補償も一切していないので,このような自らの責任を棚に上げた上での一方的な請求は,権利濫用に当たり,許されないと主張する。
しかし,被告Y1及び被告あおみやが経営していたフランチャイズ店が原告の不祥事によって長期にわたり販売不可能な状態に陥り,閉店に追い込まれたと認めるに足りる証拠はない。
証拠(乙5)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,平成19年1月11日以降,フランチャイズ店を休業させたことについて,すべてのフランチャイジーに対し,平成19年1月11日から同年4月10日までの間,前年の同期間に係る粗利益相当額(前年の同期間における当該フランチャイジーの売上高の平均約36パーセントに相当する金額)の休業補償を行ったこと,また,原告は,平成19年3月23日以降に営業を再開した店舗に対し,同年4月11日から同月30日までの間,前年の同期間における売上高との差額に対する粗利益の補填を行い,さらに,平成19年5月1日から平成20年3月31日までの間は,売上高の5パーセントに相当する金額を営業支援金として支払ったことが認められる。
以上によれば,原告の買掛金等債務の支払請求が権利濫用に当たるということはできず,被告らの前記主張は採用することができない。
(2)  被告らは,原告には,一連の消費期限切れ原料使用問題後において,フランチャイズ契約を継続するにあたって今後の売上げの予想や商品の供給内容等について,正確かつ十分な情報を提供すべき信義則上の義務があったところ,販売再開後における長期間にわたる売上不振や閉鎖店舗が多くあることに照らせば,原告がその義務に違反したことは明らかであって,一連の売上不振は,原告の不祥事によって引き起こされたものであり,原告の上記情報提供義務違反をも併せ考慮すれば,販売を再開した平成19年3月23日以降の買掛金等債務の支払請求も権利濫用に当たり,許されないと主張する。
しかし,フランチャイズ店の再開にあたり,原告に情報提供義務違反があったと認めるに足りる証拠はない上,仮に原告に情報提供義務違反があったとして,そのことが,原告の買掛金等債務の支払請求の権利濫用と,どのように結びつくのか不明である。したがって,被告らの前記主張は採用することができない。
4  前記第2の2の前提事実(4)によれば,原告は,被告Y1に対し,FC契約に基づき,谷田部店に係る買掛金等債務の元本566万8608円及びつくば桜店に係る買掛金等債務の元本724万9141円の各支払を求めることができ,また,被告あおみやに対し,FC契約に基づき,つくば二の宮店に係る買掛金等債務の元本240万1511円及び守谷駅前店に係る買掛金等債務の元本215万4189円の各支払を求めることができる。
5  前記第2の2の前提事実(5)及び(6)によれば,原告の被告Y1に対する谷田部店に係る買掛金等債務の元本から,特別注文伝票による原告負担分4万1911円及び商品ロスの原告負担分17万8241円を控除するのが相当であり,控除後の原告の被告Y1に対する谷田部店に係る買掛金等債務の元本は544万8456円となる。
6  前記第2の2の前提事実(7)の相殺によれば,原告の被告Y1に対する谷田部店に係る買掛金等債務の元本は,相殺(相殺額20万3146円)により,524万5310円となり,また,原告の被告Y1に対するつくば桜店に係る買掛金等債務の元本は,相殺(相殺額23万4450円)により,701万4691円となり,さらに,原告の被告あおみやに対するつくば二の宮店に係る買掛金等債務の元本は,相殺(相殺額54万1844円)により,185万9667円となる。
7  前記第2の2の前提事実(8)の相殺によれば,原告の被告Y1に対する谷田部店に係る買掛金等債務の元本は,相殺(相殺額2万6375円)により,521万8935円となり,また,原告の被告Y1に対するつくば桜店に係る買掛金等債務の元本は,相殺(相殺額2万6375円)により,698万8316円となり,さらに,原告の被告あおみやに対するつくば二の宮店に係る買掛金等債務の元本は,相殺(相殺額2万6375円)により,183万3292円となり,そして,原告の被告あおみやに対する守谷駅前店に係る買掛金等債務の元本は,相殺(相殺額2万6375円)により,212万7814円となる。
8  以上によれば,原告は,被告Y1に対し,FC契約に基づき,谷田部店に係る買掛金等債務の元本521万8935円とつくば桜店に係る買掛金等債務の元本698万8316円の合計1220万7251円及びこれに対する平成19年7月11日から支払済みまで年14.5パーセントの割合による遅延損害金の支払を,被告Y2に対し,連帯保証契約に基づき,上記と同額の支払を求めることができ,また,被告あおみやに対し,FC契約に基づき,つくば二の宮店に係る買掛金等債務の元本183万3292円及びこれに対する平成19年6月1日から支払済みまで年14.5パーセントの割合による遅延損害金の支払を,被告Y2及び被告Y3に対し,連帯保証契約に基づき,上記と同額の支払を求めることができ,さらに,被告あおみやに対し,FC契約に基づき,守谷駅前店に係る買掛金等債務の元本212万7814円及びこれに対する平成19年6月1日から支払済みまで年14.5パーセントの割合による遅延損害金の支払を,被告Y2に対し,連帯保証契約に基づき,上記と同額の支払を求めることができる。
9  よって,原告の被告らに対する請求は,前記8の限度で理由があるので,これらを認容し,その余の請求は,理由がないので,これらをいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。
なお,被告らの仮執行免脱宣言の申立てについては相当でないので,これを認めないこととする。
(裁判官 大段亨)

 

〈以下省略〉

 

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