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「営業支援」に関する裁判例(114)平成20年 2月27日 東京地裁 平19(ワ)4038号 立替金請求事件

「営業支援」に関する裁判例(114)平成20年 2月27日 東京地裁 平19(ワ)4038号 立替金請求事件

裁判年月日  平成20年 2月27日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平19(ワ)4038号
事件名  立替金請求事件
裁判結果  認容  文献番号  2008WLJPCA02278006

要旨
◆被告がその補助参加人等から購入したマーケティングや顧客管理等のシステム一式を購入した代金に関する立替払委託契約に基づいて売主に立替払をした原告が、弁済金と約定遅延損害金の支払を被告に請求した事案において、基本契約である購入契約自体が不正な粉飾決算を目的とした架空循環取引であるとしても、原告の認識・関与の程度等に照らせば、立替払委託契約までが無効になるとはいえず、また、基本契約の有効性が動機として表示されていないし、そのことが要素ともいえないから錯誤も成立せず、抗弁権の接続を認めて被告を保護する必要性もないなどとして、原告の請求を認容した事例

参照条文
民法90条
民法95条
民法96条1項
民法650条
民法656条
割賦販売法30条の4

裁判年月日  平成20年 2月27日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平19(ワ)4038号
事件名  立替金請求事件
裁判結果  認容  文献番号  2008WLJPCA02278006

東京都港区〈以下省略〉
原告 スカイピー・コム株式会社
代表者代表取締役 A
訴訟代理人弁護士 毛野泰孝
同 平岩利文
同 内山裕史
訴訟復代理人弁護士 中山達樹
東京都千代田区〈以下省略〉
被告 株式会社明光商会
代表者代表取締役 B
訴訟代理人弁護士 津田和彦
同 村西大作
同 田邊雅延
同 北村聡子
同 吉岡正智
大阪市〈以下省略〉
補助参加人 株式会社デジタルデザイン
代表者代表取締役 C
訴訟代理人弁護士 中本和洋
同 倉橋忍
同 高山智行
同 宮崎慎吾
同 松原弘幸
同 中山務

 

 

主文

1  被告は,原告に対し8億5648万5000円及びこれに対する平成19年2月1日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による金員を支払え。
2  訴訟費用は被告の負担とする。
3  この判決は第1項に限り仮に執行することができる。

 

 

事実及び理由

第1  請求
主文同旨
第2  事案の概要
1  本件は,原告において,被告との間で,被告が補助参加人及び共栄ビジネスサービス株式会社(以下「共栄ビジネス」という。)からそれぞれ購入したシステム一式の売買代金について,それぞれ原告が立替払をする代わりに,立替払をした金額に一定額を付加した金員を弁済金として被告が支払う旨の各立替払委託契約を締結し,同契約に基づいて補助参加人及び共栄ビジネスに対してそれぞれ立替払を行ったとして,弁済金合計8億5648万5000円及びこれに対する平成19年2月1日(弁済金支払期日の翌日)から支払済みまで年14.6パーセントの割合による約定遅延損害金の支払を求めた事案である。
2  争いのない事実等(証拠等により容易に認定できる事実については,末尾に証拠等を記載した。)
(1)ア  原告は,システム制作販売取引におけるコンサルティングや立替払等を業とする株式会社であり,D(以下「D」という。)は,原告の100パーセント株主である。
イ  被告は,シュレッダーの製造販売を主たる業務とする株式会社である。
ウ  補助参加人は,コンピューターソフトウエアの設計及び販売等を目的とする株式会社であり,ヘラクレス市場で株式を公開している。
(2)  株式会社アイ・エックス・アイ(以下「IXI」という。)は,ソフトフェアの製作及び販売を主たる業とする株式会社であり,東証第2部で株式を公開していた。
IXIは,約100億円以上にのぼる簿外債務の存在と,架空循環取引に関与した可能性が明らかとなり,上場廃止の可能性と信用不安が生じ,金融機関からの借入金に対する期限の利益を喪失させられる可能性が高まったとして,平成19年1月21日,民事再生手続開始の申立てをした(乙9及び22)。なお,IXIの再生管財人から旧経営陣の一部が刑事告発されている。
IXIについては,株式会社東洋経済新報社が発行する週刊東洋経済平成19年2月3日号において,「IXI“突然死”の真相」との標題のもと「 はたして,簿外債務とは何だったのか。再生手続き開始申立書などによると,仕組みはこうだ。東京リースを売主,日本アイ・ビー・エム(IBM)を買い主とする契約がまずあり,それに対してなぜか両社より信用力の劣るIXIが『債務引受書』を発行,事実上の連帯保証を打っていたのである。IXIは自らが販売先を見つけた段階で順次,債務引き受けを実行,東京リースから商品を仕入れていたようだ。申立代理人の弁護士によれば,取引の異常性はそこにとどまらない。日本IBMに照会したところ,問題の取引にかかわる書類の作成・捺印者は,その1年ほど前に退職した人物だったのである。さらに取引の対象となる商品についても実在しない可能性が高い。というのも,IXIの社内調査において,複数の営業担当者が『架空循環取引』に手を染めていたことを認め始めているからだ。架空循環取引とは,証憑類や入出金の形式だけを整えて,実在しない商品を複数の業者間で転売する行為のことだ。多くの場合,起点となる企業があり,架空商品は転々とした後そこに戻ってくる。起点の企業はそれを再び循環取引に流し込むことで,収益の水増し操作を続ける。驚くべき事に,IXIの売り上げのうち8~9割が架空循環取引によるものだった疑いが浮上している。これまでの社内調査では,営業担当者らが不正取引を認識し始めたのは2003年ごろのこととされる。全部で5人いる取締役のうち少なくとも営業担当の2人は不正を知っていたと認めているから,組織的な粉飾決算が続けられていたと断じてよい。」と報じられている(乙1)。
(3)  東京リース株式会社(以下「東京リース」という。)は,平成19年3月29日,IXIによる架空循環取引で融資資金約153億円が回収できなくなったとして,日本IBM,補助参加人,共栄ビジネス,D等を被告として,同金額の支払を求める訴訟を東京地方裁判所に提起した(以下「別件訴訟」という。)。
(4)ア  被告は,補助参加人から5億7928万5000円で以下のシステム一式を購入した(以下「原契約1」といい,原契約1の売買目的となった以下のシステム一式を「システム一式1」という。)。
(ア) エリアマーケティングシステム 7717万5000円
(イ) 顧客管理システム 7276万5000円
(ウ) 営業支援システム 5218万5000円
(エ) メッセージ配信システム 7392万円
(オ) 作業管理システム 5764万5000円
(カ) 倉庫管理システム 8589万円
(キ) 工程管理システム 8368万5000円
(ク) 販売管理システム 7602万円
イ  被告は,IXIに対して,システム一式1を代金6億3042万円,代金支払時期を平成19年1月31日として売却した。
(5)  原告と被告は,平成18年11月30日,下記の内容の立替払委託契約を締結した(甲1。以下「立替払委託契約1」という)。
ア 立替払の内容 原告は,平成18年11月30日,補助参加人に対し,原契約1の代金5億7928万5000円を被告に代わって立替払する。
イ 立替金の弁済 被告は,平成19年1月31日,立替金の弁済として原告に対し,6億1729万5000円(以下「弁済金1」という。)を支払う。
ウ(ア) 原告が立替金を補助参加人に支払った場合,理由の如何を問わず,被告は原告に対する弁済金1の支払を拒否もしくは留保することができないものとする〔4条(2)〕。
(イ) 原契約1に関する紛争は,全て被告と補助参加人との間で解決し,被告の原告に対する弁済金1の支払については何らの影響を及ぼさないものとする(9条)。
エ 被告が原告に対する弁済金の支払を遅延したときは,遅延した金額に対し年14.6パーセントの割合による遅延損害金を原告に支払う。
(6)ア  被告は,共栄ビジネスから2億2449万円で以下のシステム一式を購入した(以下「原契約2」といい,原契約1と合わせて本件原契約という。また,原契約2の売買目的となった以下のシステム一式を「システム一式2」という。)。
(ア) 購買システム 8526万円
(イ) 認証システム 6384万円
(ウ) 会計システム 7539万円
イ  被告は,IXIに対し,システム一式2を代金2億4444万円,代金支払時期を平成19年1月31日として売却した。
(7)  原告と被告は,前記(5)と同日である平成18年11月30日,下記の内容の立替払委託契約を締結した(甲2。以下「立替払委託契約2」といい,立替払委託契約1と合わせて「本件立替払委託契約」という。)。
ア 立替払の内容 原告は,平成18年11月30日,共栄ビジネスに対し,原契約2の代金2億2449万円を被告に代わって立替払する。
イ 立替金の弁済 被告は,平成19年1月31日,原告に対し,立替金の弁済として2億3919万円(以下「弁済金2」という。)を支払う。
ウ(ア) 原告が立替金を共栄ビジネスに支払った場合,理由の如何を問わず,被告は原告に対する弁済金2の支払を拒否もしくは留保することができないものとする〔4条(2)〕。
(イ) 原契約2に関する紛争は,全て被告と共栄ビジネスとの間で解決し,被告の原告に対する弁済金2の支払については何らの影響を及ぼさないものとする(9条)。
エ 被告が原告に対する弁済金の支払を遅延したときは,遅延した金額に対し年14.6パーセントの割合による遅延損害金を原告に支払う。
(8)  原告は,平成18年11月30日,本件立替払委託契約に基づき,被告に代わって,補助参加人に対し,5億7928万5000円を立替払し,共栄ビジネスに対して,2億2449万円を立替払した。
(9)  被告は,平成19年3月2日,IXIの再生管財人に対し,原契約1及び原契約2の各代金債権につき再生債権の届出を行ったところ(甲12),平成19年4月10日,同再生管財人から全額について否認する旨通知され(乙4),同月16日,否認の理由について,上記代金債権が架空循環取引の疑いのある取引にかかるものと思料される旨通知された(乙5)。
また,被告は,同月16日,同債権の再生債権査定申立てを行った(甲13)。
3  争点
(1)  本件立替払委託契約に関する無効事由の有無
(2)  本件立替払委託契約の詐欺取消しの可否
(3)  本件立替払委託契約に対する本件原契約の抗弁権接続の有無
(4)  本件立替払委託契約に基づく弁済金1及び弁済金2の請求の権利濫用該当性
4  争点についての当事者の主張
(1)  争点(1)(本件立替払委託契約関する無効事由の有無)について
ア 被告の主張
(ア) 公序良俗違反による無効
a 立替払委託契約において,立替払の対象となる債務の発生原因となる契約(以下「基本契約」という。)が公序良俗に違反する場合,その立替払委託契約の債権者が基本契約の取引の実情を知りながら,無効な契約の履行を目的として立替払委託契約をした場合は,同立替払委託契約は公序良俗に反する基本契約の履行を支持及び助長することになるから,それ自体も公序良俗違反となる。
b 架空循環取引とは,実際の販売対象が存在しないが,金銭の流れは存在しており,経理面のチェックでは架空取引であることが判明しない取引をいう。そして,本件原契約においても,売買対象であるシステム一式1及びシステム一式2は存在しないが,金銭の流れは存在しており,原告から補助参加人及び共栄ビジネスに対して送金された立替金は,IXIに送金されており,結局その金員が,IXIから被告に対して本件原契約の売買代金として支払われ,被告から原告に対して弁済金1及び弁済金2として支払われることによって,資金が循環するという仕組み(以下「本件架空循環取引」という。)が採られている。このような架空循環取引は,見かけ上の売上げを増加させるという,不正な粉飾決算を目的した違法なものであり,したがって,本件原契約は,公序良俗に反し,無効となる。
そして,Dは,原告の全株式を所有し,実質的に原告の意思決定を行っている者であるから,原告の実質的代表者といえるところ,本件立替払委託契約前後の2か月間に,原告が補助参加人ないし共栄ビジネスから一定のシステムを代金約2億8000万円から約10億5000万円までの範囲で購入し,それをIXIに転売するという,総額約25億円に上る多額かつ同種の取引を複数回行っているが,その多額の資金調達や資金の流れが不透明であり,Dは,目的物の存否や納品状況等について一切確認をしていないこと,別件訴訟において,Dは,東京リースに対して仕入先や納入先等が詳細に指示された「D表」という表を作成し,多数の取引案件を紹介した責任を問われているところ,東京リースの取引は,本件架空循環取引と同内容であること,Dはシステム販売取引に多数関与しており,相当な経験があること,Dが株式会社ネットワンシステムズ(以下「ネットワン」という。)に在籍していた当時,同社が架空循環取引に関与したところ,Dは,その取引を担当する部署の部長であり架空循環取引について知識を有していたこと,本件立替払委託契約による原告の利益が2か月間で5271万円と莫大であり,不自然であることに照らせば,Dは,本件原契約が架空循環取引の一環であることを十分認識でき,また,実際に本件原契約の審査を通じて,それを認識していたことは明らかである。
他方,被告が本件原契約締結に至った経緯は,被告は,新規事業の開発を意図していたところ,IXIの紹介を受け,同社のE執行役員から取引を持ちかけられ,本件原契約を補助参加人らと締結することとなったが,システム取引についてのノウハウを全く持ち合わせていなかったため,IXIの主導の下で,同社に対する見積書,注文書,納品書等の書類,補助参加人らに対する発注書を作成するなどしており,被告は,本件原契約が架空循環取引の一環であるとは全く認識することができなかった。
c 以上のとおり,本件原契約においては,システム一式1及びシステム一式2は存在せず,不正な粉飾決算を目的とした違法なものであった。そして,原告の実質的代表者であるDは,この本件原契約が架空循環取引の一環であり,公序良俗に反する無効なものであることを認識しながら,無効な本件原契約の履行を目的として本件立替払委託契約を締結している。したがって,本件立替払委託契約も公序良俗に反し,無効となる。
(イ) 錯誤による無効
立替払委託契約と売買契約等の基本契約とは,実質的にも経済的にも不可分一体のものとして把握されるべきであり,基本契約の無効事由の有無は,立替払委託契約の要素であって,基本契約が無効である場合に,契約当事者がそれを有効であると信じて立替払委託契約を締結した場合には,同立替払委託契約には要素の錯誤があるというべきである。
本件においては,前記(ア)のとおり,真実は,本件原契約は,売買対象となるシステム一式1及びシステム一式2を有せず,粉飾決算を目的とした架空循環取引の一環をなし,公序良俗に反する違法で無効な取引であったが,本件立替払委託契約締結当時,被告は,本件原契約には,売買対象となる商品であるシステム一式1及びシステム一式2が存在し,合法で有効な取引であると信じており,本件立替払委託契約には要素の錯誤があった。したがって,本件立替払委託契約は,錯誤により無効となる。
なお,前記(ア)のとおり,Dは,本件原契約が公序良俗に反することを認識していた以上,原告は,被告の重過失の主張適格を欠く。
イ 原告の主張
(ア) 公序良俗違反による無効
a 仮に,本件原契約に売買目的物が存在せず,架空循環取引の一環をなすことにより,本件原契約が公序良俗違反により無効になるとしても,本件立替払委託契約4条(2)により,本件原契約の無効は,本件立替払委託契約の有効性には影響しないこととされているから,被告が原告に対して弁済金1及び弁済金2の支払をしなくてはならないことは明らかである。
b 本件原契約に売買目的物であるシステム一式1及びシステム一式2が存在していなかった事実,及び本件原契約が架空循環取引の一環をなしていたという事実の立証はない。
また,原告は,本件原契約が架空循環取引の一環をなしているか否かを判断する資料を有さず,本件原契約の当事者のうち被告と補助参加人が上場企業であったことを信頼し,また,IXIの民事再生手続申立て以後,同社関係者を刑事告訴し,事案の真相解明を司直の手に委ねたのであるから,本件立替払委託契約締結当時,本件原契約が架空循環取引の一環をなしていたかどうかについて原告が善意であったことを疑う余地はない。
架空循環取引は,いずれ必ず破綻することが明らかで,極めて危険性の高い取引であるが,このような取引について,原告が数億円単位の出捐を伴いつつ立替払を行うなどというリスクを犯すことはあり得ない。また,原告がそのような架空循環取引に関与していることが明るみに出れば,原告の社会的信用は失墜し,原告を立ち上げたDが掲げているITビジネス中小企業の総合的支援という目的が達成不可能となってしまうことから,原告には,架空循環取引を知ったうえでそれに関与する動機はない。
なお,Dは,本件立替払委託契約前後の2か月間に,原告が補助参加人ないし共栄ビジネスからシステムを約2億8000万円から約10億5000万円までの範囲で形式上買主となって発注し,それをIXIに転売するという取引を行っていたが,これは,実質的には,IXIがシステムの買主として,システム開発者である補助参加人ないし共栄ビジネスに対して発注して,原告がその代金を先行支払するという取引である。本来,システムの代金は後払いとなるべきところ,原告が代金を先行支払することによって,システム開発者である補助参加人らが開発資金を工面することを可能とし,それによって,注文者であるIXIが要求水準に適ったシステムの納入を納期に受けることを可能にするために行われた取引であり,合理的なものである。
したがって,いずれにしても本件立替払委託契約が公序良俗に反し,無効になるということはない。
(イ) 錯誤による無効
仮に,本件原契約に売買目的物が存在せず,架空循環取引の一環をなすことにより,本件原契約が無効になるとしても,本件立替払委託契約9条に照らせば,本件原契約の有効無効は,本件立替払委託契約の要素ではなく,仮にこの点に錯誤があったとしても,本件立替払委託契約が錯誤無効とはならないのであり,被告が原告に対して弁済金1及び弁済金2の支払をしなくてはならないことは明らかである。
(2)  争点(2)(本件立替払委託契約の詐欺取消しの可否)について
ア 被告の主張
前記(1)ア(ア)bのとおり,Dは,本件立替払委託契約締結当時,本件原契約が架空循環取引の一環をなし,公序良俗に反して無効であることを認識していた。そして,被告が本件原契約を有効な取引と誤信していることを把握していたにもかかわらず,被告に本件原契約が架空循環取引の一環であることを指摘しないまま,本件立替払委託契約を締結させた。被告は,Dからそのような指摘を受けていれば,当然本件立替払委託契約を締結しなかった。
これらの事情に照らせば,本件立替払委託契約は,Dの不作為による詐欺に基づき締結されたものであり,被告は,原告に対し,平成19年7月5日の本訴第2回弁論準備手続期日において,本件立替払委託契約を民法96条1項に基づき取り消す旨意思表示をした。
イ 原告の主張
前記(1)イ(ア)bのとおり,本件原契約が架空循環取引の一環であることの立証はなく,原告は,本件立替払委託契約締結当時,本件原契約が架空循環取引の一環をなしていることを知らなかったのであるから,被告の詐欺の主張は,前提を欠き,理由がない。
(3)  争点(3)(本件立替払委託契約に対する本件原契約の抗弁権接続の有無)について
ア 被告の主張
割賦販売法30条の4第1項では,基本契約と立替払委託契約が実質的にも経済的にも強い結合関係があることに着目し,消費者が当事者となる場合において,基本契約固有の抗弁事由を立替払委託契約にも対抗できることを規定しているが,その趣旨は,会社同士が当事者となる場合にも及び,本件においても,同条の類推により,被告は,前記(1)ア(ア)bの本件原契約の公序良俗違反による無効の抗弁を本件立替払委託契約の無効の抗弁として主張できる。
仮に,同条項の類推が認められなくとも,Dは,本件立替払委託契約締結当時,本件原契約が架空循環取引であることを認識していたから,このような原告が被告に立替金の支払を求めるのは極めて不当であり,信義則上,抗弁権の接続が認められるべきであり,本件立替払委託契約の各契約書の4条(2)は,公序良俗に反し,無効である。
また,仮に無効であるとまでいえなくとも,公序良俗違反や権利濫用のような一般条項に基づく抗弁まで当事者の合意によって主張し得なくなることは一般法規範に反するから,被告は,少なくとも,公序良俗違反や権利濫用の抗弁については上記条項によっても喪失しない。
イ 原告の主張
被告の主張は争う。
なお,本件立替払委託契約の各契約書4条(2)には,原告が立替金を補助参加人及び共栄ビジネスに支払った場合は,理由の如何を問わず,被告は弁済金1及び弁済金2の支払を拒否及び留保できない旨規定されているため,被告は一切の抗弁を喪失した。
(4)  争点(4)(本件立替払委託契約に基づく弁済金1及び弁済金2の請求の権利濫用該当性)について
ア 被告の主張
本件では,Dが架空循環取引の一環であることを知りながら,被告との間で本件立替払委託契約を締結し,現在その弁済金1及び弁済金2の支払を求めているのであり,その請求は権利濫用というべきである。
イ 原告の主張
被告の権利濫用による無効の主張は,本件原契約が架空循環取引の一環であること及び原告がそれについて悪意であったことを前提としているところ,前記(1)イ(ア)bのとおり,本件原契約が架空循環取引の一環であることの立証はなく,原告は,本件立替払委託契約当時,本件原契約が架空循環取引の一環をなしていることを知らなかったのであるから,本件立替払委託契約に基づく弁済金1及び弁済金2の請求は,権利濫用とならない。
第3  争点に対する判断
1  争点(1)(本件立替払委託契約に関する無効事由の有無)について
(1)  前記第2の2の争いのない事実等によれば,本件においては,原告,被告間で,被告が本件原契約に基づき,補助参加人及び共栄ビジネスに対して支払うべき売買代金を原告が立替払する旨の本件立替払委託契約が締結され,同契約に基づき,原告は,被告に代わって,補助参加人に対して5億7928万5000円を立替払し,共栄ビジネスに対して2億2449万円を立替払している。
しかしながら,被告は,本件立替払委託契約が無効であり,弁済金1及び弁済金2の支払義務はない旨主張することから,以下検討する。
(2)  公序良俗違反による無効について
被告は,立替払委託契約において,基本契約が公序良俗に違反する場合,その立替払委託契約の債権者が取引の実情を知りながら,上記無効な契約の履行を目的として立替払委託契約をした場合は,同立替払委託契約は公序良俗に反する基本契約の履行を支持及び助長することになるから,それ自体も公序良俗違反となるとし,本件原契約においては,その目的物であるシステム一式1及びシステム一式2は存在せず,不正な粉飾決算を目的とした違法なものであり,公序良俗に違反する無効な契約であるところ,原告の実質的代表者であるDは,それを認識しながら,本件原契約の履行を目的として本件立替払委託契約を締結しており,本件立替払委託契約も公序良俗に反し,無効となると主張する。
そこで検討すると,まず,公序良俗に反する基本契約上の債務を代位弁済することを目的とする立替払委託契約は,基本契約とは別個の契約であり,原則として,基本契約が無効であるからといって直ちに無効となるものではないが,公序良俗に違反する基本契約に対する,立替払委託契約の受任者の認識,関与の程度に照らし,その立替払委託契約自体も公序良俗に違反すると認めることが相当な場合には,同契約についても無効となると解すべきである。
したがって,本件においては,①基本契約である本件原契約が公序良俗に反するか否か,②本件原契約が公序良俗に反することについての,原告の認識,関与の程度に照らし,本件立替払委託契約自体も公序良俗に反するものと認められるか否かが問題となる。
まず,①基本契約である本件原契約が公序良俗に反するか否かという点については,IXIの再生管財人が作成した大阪地方裁判所第6民事部宛の再生計画案補足説明書(乙22)においては,「再生債務者(IXI)においては,平成15年3月ころより,架空循環取引が本格的に実行に移されていったものと思料される。これ以降の再生債務者の売上高の90パーセント以上が架空循環取引にかかるものと思料される。」と報告されている。また,乙第10号証の通知書によれば,原告も,平成18年12月29日にシステム代金10億4317万5000円を支払い,共栄ビジネスがIXIにシステムを納入し,IXIが原告に対して平成19年2月28日に11億1142万5000円を支払うという取引について,それが架空循環取引であるにもかかわらず,共栄ビジネスに正常な取引であると誤信させられ,上記システム代金を支払ったとして,不法行為に基づいて,平成19年4月12日,共栄ビジネスに対して,上記代金相当額の損害賠償請求をしており,さらに乙第17号証の訴状によれば,原告は,平成19年6月11日,平成18年10月20日から28日にかけて,補助参加人に対し,システムの売買契約を締結し,その代金5億9209万5000円を支払い,補助参加人がIXI又はIXIの指定先にシステムを納入し,IXIが原告に対して6億3750万5000円を支払うという取引を行ったところ,補助参加人は,IXI又はIXIの指定先に対してシステムの納入等を行わなかったとして,補助参加人に対し,売買契約を解除し,支払った代金の返還を請求する訴えを提起し,同訴状の中で上記取引について,「原告は,『本件システム開発契約も架空循環取引ではないか』との疑いを抱き」と記載されている事実が認められるなど,原告自身も,本件訴訟外において,IXIがらみの架空循環取引に巻き込まれたと主張していることが認められる。このような事情に照らせば,IXIが行っていた少なくとも平成15年3月以降の取引については,商品の存在しない架空循環取引が混在していた可能性は否定できない。
また,共栄ビジネスの代表者の証人Fは,原契約2の取引について,システム一式2の存在を確認しておらず,原告から送金された金銭について,IXIにより指示された仕入れ先である情報システムサービス株式会社に振り込んだと供述しており,本件原契約においては目的物であるシステム一式1及びシステム一式2が存在せず,架空循環取引であったことを疑わせるだけの証拠も存在していると認めることができる。
しかしながら,本件においては,本件原契約が架空循環取引に当たり,公序良俗に反して無効となるとしても,②原契約についての原告の認識,関与の程度に照らし,本件立替払委託契約自体も公序良俗に反するものと認められるか否かについては,本件原契約には目的物であるシステム一式1及びシステム一式2が存在せず,それが架空循環取引に当たるということを,原告において熟知し,積極的に関与していたことまで認めるに足りる直接的証拠や客観的証拠は何ら存在しないから,この点に関する原告の熟知や積極的な関与を裏付けるに足りる特段の事情が認められない限りは,本件立替払委託契約自体が公序良俗に反するものとまでは,認めることはできず,いずれにせよ被告の主張を採用することはできないというべきである。
被告は,このような特段の事情として,まず,Dは,原告の全株式を所有し,実質的に原告の意思決定を行っている者であるから,原告の実質的代表者であるといえるところ,Dは,本件立替払委託契約前後の2か月間に,原告が補助参加人ないし共栄ビジネスから一定のシステムを代金約2億8000万円から約10億5000万円までの範囲で購入し,それをIXIに転売するという,総額約25億円に上る多額かつ同種の取引を複数回行っているが,その多額の資金調達や資金の流れが不透明であり,Dは目的物の存否や納品状況等について一切確認をしていないと主張する。
そして,Dが原告の全株式を所有していることは争いがなく,Dの認識が原告の認識と同視し得るものであることは原告自身認めているところである。また,振込受付書(甲9の1ないし4),D及びFの供述並びに弁論の全趣旨によれば,原告が,平成18年10月31日に共栄ビジネスに対してシステム一式を発注し,6億5499万円を支払い,それをIXIに対して売却する取引を行い,さらに,同年11月20日にも2億8042万5000円の,同年12月29日にも10億4317万5000円の,同様の取引をそれぞれ行い,また,同年10月31日に受注者を補助参加人とする5億9209万5000円の同様の取引を行ったことが認められる(以下これらの一連の取引を「本件一連取引」という。)。そして,原告は,多額の資金調達や資金の流れについて,具体的な主張立証をしておらず,また,Dは目的物の存否や納品状況等について一切確認していないことを認める供述をしている。
しかしながら,平成18年10月25日付手形貸付借入(変更)申込書(甲11の1),同月27日付保証書(甲11の2),担保品預り証(甲11の3)及びターゲット解約条件付定期預金証書(甲11の4)によれば,原告は,平成18年10月27日に3億円を(甲11の1ないし4),平成18年11月27日付手形貸付借入(変更)申込書(甲10の1),同月29日付保証書(甲10の2)及び約束手形(甲10の3)によれば,原告は,平成18年11月29日に4億円を,それぞれ株式会社三井住友銀行から借り入れた事実が認められるところ(以下「本件借入れ」という。),本件借入れの日時及び金額の合計額が,前記第2の2(5)及び(7)の本件立替払委託契約に基づく立替金支払日と立替金の合計金額に近接していることを勘案すれば,本件借入れは,原告が本件立替払委託契約に基づく立替金支払義務を履行するための原資を確保するために行われたものと推認するのが相当である。他方,原告が本件一連取引に要した金員をどのように確保したかは明らかにされていないものの,本件借入れによって,原告が本件立替払委託契約に基づく立替金支払義務を履行していることを勘案すれば,原告は,銀行から多額の借入れをすることが可能な程度の信用力を有し,原告は,そのような信用力の下で銀行等から資金を調達して,本件一連取引に基づく各支払義務を履行していたとも推測し得るものであり,原告が,多額の資金調達や資金の流れについて,具体的な主張立証をしていないことをもって,Dが本件原契約が架空循環取引に当たることを熟知し,積極的に関与していたと認めることはできない。なお,これらの取引は,短期間における多額の取引ではあるが,IXIや補助参加人が上場企業であったこと等に照らせば,これらの企業がこうした取引を実施すること自体が不自然と気が付くべきであるとまで認めることは相当でない。
また,Dは,本件一連取引は,原告がシステム開発者らに対してシステム一式を発注して購入し,それをIXIに対して売却するという形式をとっているが,実質的には,IXIがシステム開発者に対して発注して購入しており,原告は,その代金を先行支払しているにすぎないのであり,通常後払いとなる代金を原告が先行支払することによって,システム開発者が開発資金を工面することを可能とし,それによって,注文者であるIXIが要求水準に適ったシステムの納入を納期に受けることを可能にするために行われた取引であって,合理的なものである旨説明しており,この説明が特段不合理であると認めるまでの事情は見当たらない。そして,本件一連取引がこのような先行支払の手段にすぎないのであれば,原告にとっての関心の対象は,IXIの原告に対するシステム代金支払能力に尽きるものであり,原告とIXIとの約定において,本件の場合と同様に,原告が先行支払した場合には,IXIはシステム代金の支払を拒むことができないなどの特約を設けていたのであれば,あとは専らIXIの信用力が原告の関心の対象となり,商品の有無についての調査等は必ずしも必要なものではなくなるから,原告が商品の有無についての調査を行っていなかったとしても,そのことが不合理であり,Dが本件原契約が架空循環取引に当たることを熟知し,積極的に関与していた事実まで推認させるものということはできない。なお,被告は,架空循環取引であったとされる本件原契約のまさに当事者であるところ,本件原契約において,システム一式1及びシステム一式2が存在しておらず,それらが存在しないことを知らなかったと主張しているにもかかわらず,再生債権届出書(甲12)によれば,被告担当者であるG(以下「G」という。)は,システム一式1及びシステム一式2の納品書及び納品明細書に,Gの印及び被告の社印を押して,IXIに交付しているのであるから,被告が架空循環取引につき悪意ではなかったとしても,少なくともシステム一式1及びシステム一式2の存在を確認せずにこれらを発行した事実を認めることができることになる。したがって,被告自身も,原告と同様にシステムの発注者となりながら,商品の有無についての調査を行っていなかったことは明らかであり,商品の有無についての調査等の実施が架空循環取引に当たるか否かの認識や積極的な関与の有無に直結するものではないことは,この点からも明らかというべきである。
また,被告は,Dは,別件訴訟において,東京リースに対して仕入先や納入先等が詳細に指示された「D表」という表を作成し,多数の取引案件を紹介した責任を問われているところ,東京リースの取引は,本件架空循環取引と同内容であること,Dは,システム販売取引に多数関与しており,システム取引に相当な経験があること,Dがネットワンに在籍していた当時,同社が架空循環取引に関与したところ,Dは,その取引を担当する部署の部長であり架空循環取引について知識を有していたこと,本件立替払委託契約による原告の利益が2か月間で5271万円と莫大であり,不自然であることを特段の事情として主張する。
そして,Dは,ネットワンに勤務していた当時,同社が循環取引に関与した際,その取引を担当する部署の部長であったこと,別件訴訟においてDが提出した答弁書(甲14)によれば,平成17年2月から平成18年11月までにかけ,Dは,取引の対象となる「システム名」,「仕入先」,「販売先」,「仕入金額」,「販売額」等が記載された表(以下「取引案件表」という。)を作成し,東京リースに対し,総額約766億円に上るIXI関連取引を紹介したこと,前記第2の2(5)及び(7)によれば,本件立替払委託契約による原告の利益は2か月間で5271万円に上ることを認めることができる。
しかしながら,Dがネットワンに勤務していた当時,同社が循環取引に関与した際,その取引を担当する部署の部長であったからといって,本件原契約が架空循環取引に当たることについて,Dが熟知していたと直ちに推認することはできず,Dにおいて,そのような取引案件表を作成したり,東京リースに対してIXIとの取引を紹介した事実があったとしても,Dが取引案件表を作成して東京リースに対して取引を紹介した際に,紹介した取引が架空循環取引に当たるということまでDにおいて認識していたと認めるに足りる証拠がない以上,やはり,本件立替払委託契約において,本件原契約が架空循環取引の一環をなしていた事実をDが熟知し,積極的に関与していたとまで推認することは困難であるというべきである。また,本件立替払委託契約による原告の利益が2か月間で5271万円にも上るとしても,Gの陳述書(乙15)によれば,被告自身,本件原契約によって,何らのコストをかけることなく,単に取引の間に介在するのみで,1750万円(消費税抜)の利益を得る見通しであったことが認められる。そうするとこのような被告自身の得べかりし利益と原告の利益とを比較すれば,資金調達を必要とする原告において,上記の利益を得る取り決めになっていたとしても,それが不当に高額な利益とも言い難く,原告の利益の多寡をもってDの悪意を推認することはできない。
以上によれば,被告の主張する事実を勘案しても,D,ひいては原告において,本件原契約が公序良俗に反することを熟知し,積極的に関与していたと認定するに足りる特段の事情があるものと認めることはできない。
したがって,本件立替払委託契約自体が公序良俗に反し,無効となると認めることはできない。
(3)  錯誤による無効について
被告は,基本契約が無効である場合に,契約当事者がそれを有効であると信じて立替払契約を締結した場合には,同立替払契約には要素の錯誤があるというべきであるとし,本件においては,真実は,本件原契約には,売買対象となるシステム一式1及びシステム一式2は存在せず,本件原契約は,粉飾決算を目的とした架空循環取引の一環をなし,公序良俗に反する違法で無効な取引であったが,本件立替払委託契約締結当時,被告は,本件原契約には,売買対象となる商品であるシステム一式1及びシステム一式2が存在し,合法で有効な取引であると信じており,本件立替払委託契約には要素の錯誤があったので,本件立替払委託契約は,錯誤により無効となると主張する。
この被告の主張を検討すると,前記(2)で判示したとおり,本件原契約は,商品が存在せず,粉飾決算を目的とした架空循環取引の一環をなし,無効であることを疑わしめる証拠が存在してはいるが,本件原契約と本件立替払委託契約とは別個の契約であり,本件原契約が商品の存在する有効な契約であることは,原告が本件立替払委託契約を締結した動機にすぎないことに照らせば,本件立替払委託契約について錯誤無効が認められるためには,被告にとって,本件原契約が商品の存在する有効な契約であることが動機である旨表示され,かつそれが本件立替払委託契約の要素に当たる必要があるところ,本件立替払委託契約においては,本件原契約が商品の存在する有効な契約であることを前提とする旨の表示はない。むしろ本件立替払委託契約においては,前記第2の2(5)ウ及び同(7)ウのとおり,原告が立替金を本件原契約の売主に対して支払った場合,理由の如何を問わず,被告は原告に対する弁済金の支払を拒否もしくは留保することができないものとする〔4条(2)〕,本件原契約に関する紛争は,全て被告と本件原契約の売主との間で解決し,被告の原告に対する弁済金の支払については何らの影響を及ぼさないものとする(9条)旨明示されており,被告は,本件原契約の効力にかかわらず原告に対して弁済金を支払う旨表示している。さらに,前記(2)のとおり,被告は,システム一式1及びシステム一式2の存在を確認せずにそれらの納品書及び納品明細書も発行しているなど,本件原契約及び本件立替払委託契約において,商品が存在しているか否かについて関心がないかのような態度を示している。これらの事実に照らせば,本件立替払委託契約においては,被告にとって,本件原契約が商品の存在する有効な契約であることが動機である旨表示されているとは認められないというべきであり,また,そのことが本件立替払委託契約の要素とされているとも認めがたいというべきである。
2  争点(2)(本件立替払委託契約の詐欺取消しの可否)について
被告は,本件立替払委託契約は,原告と同視されるDの不作為による欺罔行為により,被告の瑕疵ある意思表示に基づいて締結されたものであるから,被告は,民法96条1項に基づき本件立替払委託契約を取り消す旨主張する。
しかしながら前記1(2)で判示したとおり,たとえ,本件原契約が架空循環取引に当たり,公序良俗に反して無効となり得るものであるとしても,本件原契約が公序良俗に反することを,Dにおいて熟知し,積極的に関与していたとまで認定するに足りる証拠はなく,むしろ本件においては,前記1(2)のとおり,架空循環取引とされる本件原契約の当事者である被告自身,本件原契約によって,何らのコストをかけることなく,単に取引の間に介在するのみで,1750万円(消費税抜)の利益を得ようとしていたこと,システムの発注者となりながら,商品の有無についての調査を行っていないなど,商品の存在に関心を持っていなかったこと等の事情が認められるのであるから,本件原契約とは別契約である本件立替払委託契約の当事者にすぎない原告ないしDに対して,本件原契約の公序良俗違反性について,被告よりも高度の調査義務や告知義務の存在を認め,不作為による欺罔行為が存在するものと認めることはできない。
したがって,この点に関する被告の主張についても理由がない。
3  争点(3)(本件立替払委託契約に対する本件原契約の抗弁権接続の有無)について
被告は,割賦販売法30条の4第1項の類推により,被告は,前記争点(1)における主張の中で述べた本件原契約の無効事由の存在を本件立替払委託契約の無効の抗弁として主張できるとする。しかしながら,割賦販売法30条の4第1項の趣旨は,立替払委託契約と基本契約は本来別個の契約であり,基本契約に存在する抗弁は,立替払委託契約に対する抗弁としては働き得ないところ,消費者を保護するため,購入者等が販売業者との間で生じている事由をもって,支払の請求をする割賦購入あっせん業者に対して対抗することができるとした創設的な規定であり,同条4項2号において,「その購入が購入者のために商行為となる指定商品に係るもの」については,同条1項の適用を除外すると明文で定めていることに照らしても,本件のような会社間の立替払委託契約であって基本契約が商行為に係る場合に,本条を類推適用する余地はないというべきである。
また,被告は,同条項の類推が認められなくとも,Dは,本件立替払委託契約当時,本件原契約が架空循環取引であることを認識していたことに照らし,信義則上,抗弁権の接続が認められるべきであるとも主張するが,前記1(2)で判示したとおり,本件において,本件原契約が架空循環取引の一環をなし,公序良俗に反し無効となるということについてDが熟知していたと認めることはできないし,前記2で判示したところに照らせば,被告について,信義則上抗弁権の接続を認めて被告を保護する必要性が存在すると認めることもできない。
したがって,その余の点について判断するまでもなく,この点に関する被告の主張は採用できない。
4  争点(4)(権利濫用による無効)について
被告は,Dが架空循環取引の一環であることを知りながら,被告との間で本件立替払委託契約を締結し,現在その弁済金1及び弁済金2の支払を求めているのであり,その請求は権利濫用というべきであると主張するが,前記1(2)及び2で判示したとおり,本件において,本件原契約が架空循環取引の一環をなし,公序良俗に反し無効となるということについてDが熟知していたと認めるに足りる証拠はないし,本件の弁済金1及び弁済金2の支払請求を権利濫用と認め,被告を保護する理由を見出すこともできないというべきである。
5  結論
以上によれば,原告の請求には理由があるから,これを認容することとし,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 菅野雅之 裁判官 杉山順一 裁判官 川山泰弘)

 

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