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「営業 外部委託」に関する裁判例(7)平成30年11月 9日 東京地裁 平29(ワ)14686号 損害賠償請求事件

「営業 外部委託」に関する裁判例(7)平成30年11月 9日 東京地裁 平29(ワ)14686号 損害賠償請求事件

裁判年月日  平成30年11月 9日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平29(ワ)14686号
事件名  損害賠償請求事件
文献番号  2018WLJPCA11098012

裁判年月日  平成30年11月 9日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平29(ワ)14686号
事件名  損害賠償請求事件
文献番号  2018WLJPCA11098012

東京都新宿区〈以下省略〉
原告 スマートレンダー株式会社
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 山川萬次郎
同 藤原圭一郎
同 伊藤花恵
同 岸野拓也
同 山川龍一郎
東京都中央区〈以下省略〉
被告 Y1
同訴訟代理人弁護士 伊藤祐介
東京都千代田区〈以下省略〉
被告 Y2
同訴訟代理人弁護士 中野秀俊

 

 

主文

1  被告Y1は,原告に対し,被告Y2と連帯して,56万7336円及びこれに対する平成29年8月27日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
2  被告Y2は,原告に対し,314万9319円及びこれに対する平成29年5月19日から支払済みまで年5%の割合による金員(ただし,うち56万7336円及びこれに対する平成29年8月27日から支払済みまで年5%の割合による金員の限度で被告Y1と連帯して)を支払え。
3  原告のその余の請求をいずれも棄却する。
4  訴訟費用は,原告に生じた費用の7分の1と被告Y1に生じた費用の2分の1と被告Y2に生じた費用の7分の1を原告の負担とし,原告に生じた費用の35分の6と被告Y1に生じたその余の費用を被告Y1の負担とし,原告に生じたその余の費用と被告Y2に生じたその余の費用を被告Y2の負担とする。
5  この判決は,第1項及び第2項に限り,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
1  被告Y1は,原告に対し,被告Y2と連帯して,94万9336円及びこれに対する平成29年8月27日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
2  被告Y2は,原告に対し,353万1319円及びこれに対する平成29年5月19日から支払済みまで年5%の割合による金員(ただし,うち94万9336円及びこれに対する平成29年8月27日から支払済みまで年5%の割合による金員の限度で被告Y1と連帯して)を支払え。
第2  事案の概要
本件は,株式会社ジョイント・コーポレーション(以下「ジョイント社」という。)と株式会社青山ダンシング・スクエア(以下「ダンシング社」という。)との間の別紙物件目録記載の建物(以下「本件建物」という。)を目的物とする賃貸借契約(以下「本件賃貸借契約」という。)に関し,ダンシング社の委託により同社がジョイント社に対して負担する債務を連帯保証した原告が,ダンシング社の前代表取締役である被告Y1(以下「被告Y1」という。)及び同社の代表取締役である被告Y2(以下「被告Y2」という。)に対し,本件賃貸借契約が解除により終了したにもかかわらず,被告らがそれぞれの在任期間中に本件建物の明渡しを怠ったことが代表取締役としての任務懈怠に当たり,これによりダンシング社の賃料等相当損害金が増加し,明渡訴訟やその強制執行等も必要となった結果,増加分の賃料等相当損害金や明渡費用等を保証人として負担した原告に損害が生じたと主張し,会社法429条1項に基づき,被告Y1に対しては,明渡費用等に相当する94万9336円及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成29年8月27日から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の被告Y2との連帯支払を求め,被告Y2に対しては,上記連帯支払に加えて,上記94万9336円に対する訴状送達日の翌日である平成29年5月19日から同年8月26日まで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払と,2か月分の賃料等相当損害金から填補分を控除した金額に相当する258万1983円及びこれに対する平成29年5月19日から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
1  前提事実
(1)  原告は,賃貸建物における家賃,共益費等の代金支払保証業務等を目的とする株式会社である(弁論の全趣旨)。
ダンシング社(旧商号「a株式会社」)は,バレエスタジオ及びダンススタジオの経営等を目的とする株式会社であり,被告Y1は,平成27年3月19日から平成28年1月12日まで同社の代表取締役の地位にあった者,被告Y2は,平成28年1月12日から現在まで同社の代表取締役の地位にある者である(甲1,2,弁論の全趣旨)。
(2)ア  ジョイント社は,平成26年2月24日,ダンシング社に対し,賃貸期間を同年4月15日から平成28年4月14日まで,月額賃料を146万9400円(消費税別),月額共益費を33万0600円(消費税別),毎月末日までに翌月分の賃料及び共益費を支払うものと定めて,本件建物を賃貸し(本件賃貸借契約),同契約に基づき,本件建物を引き渡した(甲13,弁論の全趣旨)。
イ  原告は,平成26年2月24日,ダンシング社との間で,同社の委託により,本件賃貸借契約に基づき同社がジョイント社に対して負う債務を原告が連帯保証するとの契約(以下「本件保証委託契約」という。)を書面により締結した(甲4)。
ウ  原告は,平成26年2月24日,ジョイント社との間で,本件賃貸借契約に基づきダンシング社がジョイント社に対して負担する賃料,共益費等を原告が連帯保証するとの契約(以下「本件保証契約」という。)を書面により締結した(甲13,弁論の全趣旨)。
(3)  本件保証委託契約及び本件保証契約(以下,合わせて「本件保証契約等」という。)には,次のような定めがある(甲4,13,弁論の全趣旨)。
ア 保証範囲について
(ア) 賃料等
a ダンシング社が本件賃貸借契約に基づきジョイント社に対して負担する賃料及び共益費月額194万4000円(消費税込)
b 本件賃貸借契約が解除された場合,ダンシング社がジョイント社に対して支払うべき本件建物の賃料等相当損害金
c 原状回復費用。ただし,本件賃貸借契約における月額賃料の1か月分を限度とする。なお,上記aからcの合計額は,本件賃貸借契約における賃料の8か月分を上限とする。
(イ) 明渡しに要する費用
本件建物の明渡しまでに要する通知,支払督促,訴訟その他法的手続に必要な費用(弁護士費用を含む)。ただし,150万円を限度とする。
イ 敷金の譲渡担保
ダンシング社が原告に対して負担する求償金債務を担保するため,ダンシング社は,原告に対し,ダンシング社がジョイント社に対して本件賃貸借契約に基づき預け入れた敷金881万6400円の敷金返還請求権を原告に譲渡する。
(4)  ダンシング社は,本件賃貸借契約に基づき平成27年8月31日に支払うべき同年9月分の賃料及び共益費計194万4000円の支払を怠ったため,原告は,ジョイント社の請求を受けて,同年9月29日,ジョイント社に対し,本件保証契約に基づく債務の履行として194万4000円を支払った(甲3,13)。
(5)  ジョイント社は,ダンシング社に対し,平成27年12月2日付けで未払賃料の支払を催告した上,支払がない場合には本件賃貸借契約を解除する旨を通知したが,ダンシング社は,未払賃料を支払わず,本件建物を明け渡さなかった。
そこで,ジョイント社は,平成27年12月18日,ダンシング社を債務者として占有移転禁止の仮処分命令(当庁平成27年(ヨ)第3708号。以下「本件仮処分命令」という。)の発令を受け,同月25日,本件仮処分命令の保全執行をした上,平成28年1月18日,ダンシング社を被告として本件建物の明渡請求訴訟(当庁平成28年(ワ)第1245号。以下「別件明渡訴訟」という。)を提起した。
(甲3,13,顕著な事実)
(6)  原告は,平成28年1月18日,ジョイント社との間で,本件保証契約に基づく保証範囲について,次のような合意(以下「本件合意」という。)をした(甲5)。
ア 原告は,ジョイント社に対し,本件賃貸借契約に基づく平成28年4月分までの賃料等を保証する。
イ ジョイント社は,原告に対し,ダンシング社がジョイント社に預託した本件賃貸借契約に基づく敷金881万6400円につき,本件建物の明渡しが完了した後,本件建物の原状回復費用及び平成27年7月分から同年12月分までの水道光熱費69万7008円及び同期間中の非常用発電機保守点検費1万2420円を控除した残額を譲渡する。
(7)  ダンシング社の代表取締役である被告Y2は,別件明渡訴訟において,答弁書を提出したものの,第1回口頭弁論期日を欠席し,平成28年4月27日,ダンシング社に対して本件建物の明渡しを命じる判決がされた(甲3,13)。
(8)  ジョイント社は,平成28年4月27日,本件建物をNITインベストメントパートナーズ株式会社(以下「NIT社」という。)に譲渡した上,NIT社及び原告との間で,ジョイント社がNIT社に対してダンシング社が占有した状態で本件建物を引き渡すこと,ダンシング社が退去した後の原状回復費用は原告の保証対象とはしないが,本件建物の明渡しに要した執行費用は原告の保証対象とすることを合意した(甲3,弁論の全趣旨)。
(9)  NIT社は,別件明渡訴訟の判決言渡後もダンシング社が本件建物を明け渡さなかったことから,本件建物の明渡強制執行を申し立て,同年6月28日,強制執行により本件建物の明渡しを受けた(甲3,13)。
(10)  原告は,ダンシング社に対し,原告が履行した保証債務に関する求償金として839万4364円の支払を求める訴訟(当庁平成28年(ワ)第28047号。以下「別件求償金訴訟」という。)を提起した。ダンシング社の代表取締役の被告Y2は,平成28年12月16日の第1回口頭弁論期日に出頭せず,何ら反論しなかったため,同月22日,上記全額を認容する判決が言い渡された(甲3)。
原告は,上記判決に基づく強制執行をし,平成29年2月23日,194万5569円を回収した。また,原告は,ダンシング社の連帯保証人であったB(以下「B」という。)に対しても訴訟を提起し,裁判上の和解により300万円を回収した。(弁論の全趣旨)
2  争点
(1)  被告Y1の任務懈怠の有無
(2)  被告Y2の任務懈怠の有無
(3)  被告らの任務懈怠による原告の損害
3  争点についての当事者の主張
(1)  争点(1)(被告Y1の任務懈怠の有無)について
(原告の主張)
被告Y1は,平成27年3月19日から平成28年1月12日までの間,ダンシング社の代表取締役の地位にあったところ,ダンシング社は,ジョイント社から本件賃貸借契約を解除された時点で,未払賃料等や解除後の賃料等相当損害金を支払うことが不可能であり,平成27年12月20日に本件建物で営業していたダンススタジオを閉鎖したことにより,本件建物をジョイント社に明け渡すことに支障がなくなったのであるから,被告Y1は,遅くとも同日の時点で,ダンシング社の代表取締役として,本件建物をジョイント社に明け渡すべき善管注意義務を負っていた。
それにもかかわらず,被告Y1は,上記義務を怠り,取締役を退任する平成28年1月12日までの間,本件建物を明け渡さなかった。
(被告Y1の主張)
原告の主張は争う。被告Y1は,ダンシング社において,専ら介護事業に従事しており,本件建物の明渡しを含むバレエ・ダンス事業の経営について,何ら権限を有しない名目的取締役であったため,本件賃貸借契約の終了後も本件建物をジョイント社に明け渡すことは不可能であったから,本件建物の明渡しに関し善管注意義務を負わず,被告Y1に任務懈怠はなかった。
仮に被告Y1に明渡しの権限があったとしても,ダンシング社は,平成27年12月20日をもって「bスタジオ閉鎖」を周知したものの,これはチケット制の顧客に対するものであり,外部委託のレッスン及びレンタルスタジオ事業はその後も継続していたのであるから,平成27年12月20日時点で本件建物の明渡しに支障がなかったとはいえない。したがって,被告Y1は同日時点で本件建物を明け渡す善管注意義務を負わず,被告Y1に任務懈怠はなかった。
(2)  争点(2)(被告Y2の任務懈怠の有無)について
(原告の主張)
被告Y2は,平成28年1月12日から,ダンシング社の代表取締役の地位にあるところ,就任時点で本件賃貸借契約は終了しており,本件建物におけるダンススクールも閉鎖されていたのであるから,速やかに本件建物を明け渡すべき善管注意義務を負っていた。
それにもかかわらず,被告Y2は,上記義務を怠り,平成28年6月28日に強制執行による明渡しが完了するまで,本件建物を明け渡さなかった。
(被告Y2の主張)
原告の主張は争う。被告Y2は,本件賃貸借契約に関する債務の存在を被告Y1から聞いておらず,別件明渡訴訟の提起により初めて債務の存在を認識したところ,代表取締役の就任時点でダンシング社は既に破産状態にあり,資金繰りの問題から早期の明渡しは困難であった上,被告Y2は,ジョイント社の担当者とも明渡しについて相談するなどしながら,同担当者の意向に沿って造作の解体や残存物の搬出等の原状回復工事を行い,本件建物の明渡しの強制執行がされるまでの間,本件建物の明渡しに向けて善処していたのであるから,被告Y2に任務懈怠はなかった。
(3)  争点(3)(被告らの任務懈怠による原告の損害)について
(原告の主張)
被告らが善管注意義務を怠って本件建物を明け渡さなかったことにより,ジョイント社は,本件仮処分命令の取得,その保全執行,別件明渡訴訟の提起,明渡しの強制執行等をせざるを得ず,これに伴い,原告は,本件保証契約等に基づき,弁護士費用43万2000円,本件建物の明渡しに要する費用39万1656円及び別件明渡訴訟に関する手続費用12万5680円の計94万9336円を負担することを余儀なくされ,同額の損害を被った。
また,被告Y2が善管注意義務を怠って本件建物を明け渡さなかったことにより,ダンシング社は,ジョイント社に対し,平成28年3月分及び同年4月分の本件建物の賃料等相当損害金債務を負い,原告は,本件保証契約等及び本件合意により,同債務を負担すること余儀なくされ,一部填補分を控除した258万1983円の損害を被った。
これらの損害は,被告らの任務懈怠により会社法429条1項に基づいて発生したダンシング社に対する求償金相当額の損害であるから,民法491条の「費用」には当たらず,ダンシング社及びBからの回収分が最初に充当されることはなく,未だに填補されていない。
(被告Y1の主張)
原告の主張は争う。弁護士費用は損害とならず,仮になるとしても原告の主張額は過大である。また,別件明渡訴訟は被告Y1の退任後に提起されているから,その関連費用の支出は被告Y1の任務懈怠と因果関係がない。
仮に損害があるとしても,弁護士費用や本件建物の明渡しに関連する費用は,民法491条1項の「費用」として,ダンシング社及びBからの回収分が最初に充当されるから,原告の損害は填補されている。
(被告Y2の主張)
原告の主張は争う。
第3  当裁判所の判断
1  認定事実
前記前提事実,証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(1)  ダンシング社は,平成27年3月当時,同社の元取締役であるC(以下「C」という。)が代表取締役兼一人株主である株式会社ダンスワークスジャパン(以下「ダンスワークス社」という。)の100%子会社であったところ,被告Y1は,同月19日,前任のBの辞任を受けて,ダンシング社の代表取締役に就任した(甲1,乙イ1~4,被告Y1・3頁)。
(2)  ダンシング社は,本件賃貸借契約によりジョイント社から賃借した本件建物において,「bスタジオ」の名称でダンススクールを経営していたが,Bが代表取締役を辞任した頃から経営状態が悪化し,賃料等を支払うことさえできなくなり,平成27年8月31日までに支払うべき同年9月分の賃料等194万4000円(消費税込)の支払を怠った(前提事実,証人D・2頁,被告Y1・12頁)。
本件保証契約等によりダンシング社の賃料等債務を保証していた原告は,ジョイント社の請求を受け,平成27年9月29日,ジョイント社に対し,本件保証契約等に基づく保証債務の履行として,平成27年9月分の賃料等194万4000円を支払った(前提事実)。
(3)  原告は,平成27年9月頃,ジョイント社の意向も踏まえて,ダンシング社に対し,未払賃料等の支払を求め,支払の目途が立たないのであれば,本件建物を早期に明け渡すように要請した。その際,ダンシング社側で対応したのは,被告Y1と経理担当の従業員であり,被告Y1は,原告側に対し,Bが代表取締役を辞めた際に顧客やスタッフ等を連れて行ってしまったため資金難になっていること,未払賃料等を支払う努力はするが支払の目途は立っていないこと,早期の明渡しを含めて検討するが,他の賃借人を探すので明渡しを待ってほしいこと等を話した(証人D・2~4頁,被告Y1・12~14頁)。
結局,他の賃借人は見つからず,ダンシング社から未払賃料等が支払われることもなかったため,原告は,平成27年10月頃,ジョイント社の担当者と被告Y1らを交えて協議し,本件賃貸借契約を終了させ,同年12月中に本件建物を明け渡す方向で進めることを確認した(証人D・5頁,被告Y1・18~19頁)。
ダンシング社は,平成27年11月頃,同社のウェブサイトにおいて,同年12月20日をもって,本件建物で営業していた「bスタジオ」を閉鎖するため,同スタジオの営業を終了する旨の告知をした(甲12,被告Y1・14~15頁)。
(4)  ところが,その後,ダンシング社から,被告Y1が納得していないため平成27年12月中に本件建物を明け渡すことはできず,退去するに際しては立退料を求める等の連絡があったことから,原告及びジョイント社は,任意交渉による明渡しは困難であると判断し,ジョイント社において,平成27年12月2日付けで被告に対する未払賃料の催告及び本件賃貸借契約の解除通知をした(証人D・6~8頁)。これにより,遅くとも同月16日頃には,本件賃貸借契約は終了した。
原告の担当者は,平成27年12月18日,ダンシング社に任意の明渡しを求めるため本件建物を訪問したが,被告Y1は不在で連絡を取ることができなかった。その際,ダンススタジオは営業している様子がなく,カウンターに同月20日をもってスタジオを閉鎖する旨の貼り紙がされていた。(証人D・8~10頁)。
(5)  ジョイント社は,代理人弁護士を通じて,平成27年12月18日付けで本件仮処分命令の発令を受け,同月25日に同命令の保全執行をしたが,同執行の際,本件建物には誰もおらず,ダンススタジオも営業していない状態であり,解錠作業を要した(甲8,証人D・10頁)。
(6)  被告Y2は,Cの経営するダンスワーク社からダンシング社の株式全部を無償で譲り受けた上で,平成28年1月12日,被告Y1の後任としてダンシング社の代表取締役に就任した(甲2,被告Y2・5~7頁)。
被告Y1は,同日付けで代表取締役を辞任し,これに際して被告Y2に対して業務の引継ぎをしたが,本件建物の明渡しについて見通しを立てておらず,被告Y2に明渡しを促すこともなかった(被告Y1・15~16頁,被告Y2・1~3,13~14頁)。
(7)  ジョイント社は,平成28年1月18日,代理人弁護士を通じて別件明渡訴訟を提起したが,被告Y2は,主張は追ってする旨の答弁書を提出したものの,同訴訟には出席せず,具体的な反論はしなかったことから,同年4月27日,ダンシング社に本件建物の明渡しを命じる認容判決が言い渡された(被告Y2・7~8頁)。
被告Y2は,上記認容判決後も本件建物を明け渡さなかったことから,平成28年4月27日にジョイント社から本件建物を譲り受けたNIT社により強制執行の手続がとられ,同年6月28日に本件建物の明渡しが完了した(前提事実)。
(8)  原告は,ダンシング社による本件建物の明渡しの不履行に伴い,本件保証契約等及び本件合意に基づく保証債務の履行として,以下の支払又は金銭負担をした。
ア 原告は,平成27年9月29日,ジョイント社に対し,平成27年9月分の賃料等に相当する194万4000円(消費税込)を支払った(甲3,13)。
イ 原告は,本件合意に基づき,平成27年10月から平成28年4月分までの賃料等(本件賃貸借契約の終了後は賃料等相当損害金)計1360万8000円と,原告がジョイント社から譲渡を受けた本件賃貸借契約における敷金881万6400円から平成27年7月分から同年12月分の水道光熱費69万7008円及び同期間中の保守点検費用1万2420円を控除した残額である810万6972円を相殺した後の550万1028円を,ジョイント社に対して支払った(甲3,13,証人D・12頁)。
ウ 原告は,本件保証契約等に基づき,本件建物の明渡しに関し,以下の費用を負担した。
(ア) 弁護士費用として,平成28年1月6日に着手金21万6000円(甲6),同年7月29日に21万6000円(甲7)
(イ) 本件仮処分命令申立てに要した印紙代2000円,郵券代1080円,資格証明書代1200円(甲9)
(ウ) 保全執行時に要した資格証明書代1200円,開錠費用3万2400円(甲8)
(エ) 別件明渡訴訟提起に要した印紙代11万3000円,郵券代6000円,資格証明書代1200円(甲10)
(オ) 明渡しの強制執行時の予納金6万8736円,執行費用29万0520円(甲8,11)
(9)  原告は,ダンシング社に対する別件求償金訴訟で回収した194万5569円のうち,損害金7万2976円及び執行費用9548円を控除した186万3045円と,Bから回収した和解金300万円の計486万円3045円を,前記(8)アにより発生した求償金債権194万4000円と,同イにより発生した求償金債権550万1028円の一部に弁済期の到来した順に充当し,同イの残額は平成28年3月分及び同年4月分の賃料等相当損害金の一部に相当する258万1983円となった(証人D・12~14頁,弁論の全趣旨)。
2  争点(1)(被告Y1の任務懈怠の有無)について
(1)  前記認定事実によれば,被告Y1は,平成27年3月19日以降,ダンシング社の代表取締役を務めていたところ,本件賃貸借契約は平成27年12月16日頃には解除されて終了しており,同社が本件建物を占有する権原は失われたにもかかわらず,同月20日に同社の「bスタジオ」を閉鎖して本件建物における主要な営業を終えた後も,本件建物をジョイント社に返還せず,同月25日に本件仮処分命令の保全執行がされても本件建物を明け渡すことはなく,後任の代表取締役である被告Y2に早期の明渡しを促すこともせず,返還の見通しも立たないまま,平成28年1月12日に代表取締役を辞任している。
このような被告Y1の行為は,ダンシング社による本件建物の明渡しを合理的な理由なく違法に遅滞させ,賃料等相当損害金などのジョイント社に対する債務を増大させるものであるから,ダンシング社に対する代表取締役としての任務懈怠に当たるというべきである。
そして,上記任務懈怠の態様からすれば,これが被告Y1の重大な過失によるものであることは明らかである。
(2)ア  これに対し,被告Y1は,ダンススクールの経営等について何ら権限を持たない名目的な代表取締役であったため,被告Y1の意向で本件建物をジョイント社に明け渡すのは不可能であったから,被告Y1に任務懈怠はなかったと主張する。
しかし,当時,被告Y1は,ダンシング社で唯一の代表取締役の地位にあり,そのこと自体から,被告Y1が本件建物を明け渡す権限を有していたことが強く推認されるところ,その権限がなかったことについては,オーナー会社の代表取締役のCに全権限があった旨を被告Y1自身が供述するのみで,これを裏付けるに足りる的確な証拠はない。むしろ,前記認定のとおり,被告Y1は,原告及びジョイント社からの未払賃料や明渡しの請求に自ら対応し,ダンシング社の経営状況や原告らへの対応方針を述べて交渉するなど,ダンシング社の代表者として振る舞っていたものと認められ,このことは被告Y1に本件建物の明渡権限があったことをうかがわせるものといえる。
よって,被告Y1の上記主張は,採用することができない。
イ  被告Y1は,「bスタジオ」の閉鎖後も外部委託の個人レッスン等の営業が行われていたため,本件建物の明渡しに支障があったと主張する。
しかし,前記認定事実によれば,平成27年12月18日に原告の担当者が本件建物を訪れた際も,同月25日の保全執行の際も,ダンシング社が本件建物で営業を継続していた形跡は見られなかったのであり,同月20日の「bスタジオ」の閉鎖により,少なくともダンシング社が主要な営業を終えていたことは明らかである。仮に外部委託の個人レッスン等が残っていたとしても,それが明渡しの支障になるようなものであったとは認められない。
また,前記認定のとおり,本件賃貸借契約は平成27年12月16日頃には解除により終了しており,その時点でダンシング社が同年9月分以降の未払賃料等を支払う目途は立っていなかったのであるから,協議による賃貸借継続の可能性は著しく低く,被告Y1もそのことを認識していたと認められる。このような状況下では,たとえ本件建物の明渡しに事実上の支障や困難があったとしても,被告Y1としては,速やかに本件建物をジョイント社に明け渡し,ダンシング社に生ずる賃料等相当損害金などの損害が拡大しないようにする善管注意義務を負っていたというべきである。
よって,被告Y1の上記主張は,採用することができない。
3  争点(2)(被告Y2の任務懈怠の有無)について
(1)  前記認定事実によれば,被告Y2は,平成28年1月12日,ダンスワーク社からダンシング社の株式を無償取得した上で同社の代表取締役に就任しているところ,既に本件賃貸借契約は終了しており,同社が本件建物を占有する権原はなかったにもかかわらず,同月18日に別件明渡訴訟が提起された後も,本件建物をジョイント社に返還することはなく,同年4月27日に認容判決が言い渡されてもなお,同年6月25日に明渡しの強制執行が完了するまで,本件建物を明け渡さなかったものと認められる。
このような被告Y2の行為は,ダンシング社による本件建物の明渡しを合理的な理由なく大幅に遅滞させ,賃料等相当損害金などのジョイント社に対する債務を増大させるものであるから,ダンシング社に対する代表取締役としての任務懈怠に当たるというべきである。
そして,上記任務懈怠の態様からすれば,これが被告Y2の重大な過失によるものであることも明らかである。
(2)ア  これに対し,被告Y2は,代表取締役に就任した時点でダンシング社は破産状態にあり,資金繰りの都合で早期の明渡しが困難であったと主張するが,本件建物の原状回復はともかく,その鍵をジョイント社に渡して占有を移転すること自体は資力が乏しくとも容易に行えたはずであるから,上記主張は明渡しの遅滞を正当化する根拠とはならない。
イ  また,被告Y2は,ジョイント社の担当者であるEが,原状回復工事が完了するまで鍵の受領を拒否したため,本件建物を明け渡すことができず,やむを得ず原状回復工事を行っていたと主張・供述する。
しかし,前記認定のとおり,ジョイント社は,平成27年12月25日には本件仮処分命令の保全執行をし,平成28年1月18日に別件明渡訴訟まで提起している。また,ダンシング社は,平成27年9月分以降の賃料等を一切支払わず,同年12月20日で「bダンススタジオ」を閉鎖するなど営業を停止していたのであるから,原状回復工事の費用を負担する余裕などあるはずがなく,ジョイント社もそのことを認識して別件明渡訴訟に至ったと推認される。このような状況下で,ジョイント社の担当者が,原状回復工事の完了まで鍵の受領を拒否するとは考え難く,被告Y2の上記主張・供述は,採用することができない。
ウ  なお,被告Y2は,本件建物の造作の撤去等,原状回復工事を行っていたことをもって,任務懈怠がなかったことの根拠としている。
証拠(乙ロ2,3)によれば,被告Y2は,本件賃貸借契約が終了し,別件明渡訴訟の認容判決が言い渡された後である平成28年5月頃,本件建物からシャワーやロッカー等を撤去する作業をしていたことがうかがわれる。これをもって原状回復工事といえるか否かはともかく,本件賃貸借契約によれば,ダンシング社は,契約の終了時までに,原状回復をした上で本件建物をジョイント社に返還することが求められるのであって,契約が終了し,かつ,別件明渡訴訟の認容判決が言い渡された後の段階に至って原状回復工事を行っていたことをもって,本件建物の明渡しをしなかった被告Y2の行為を正当化することはできない。
4  争点(3)(被告らの任務懈怠による原告の損害)について
(1)  被告らの任務懈怠による損害
ア 前記2(1)で説示したとおり,被告Y1が本件賃貸借契約の終了後に本件建物を明け渡さなかった行為は,代表取締役としての任務懈怠に当たるところ,前記認定事実によれば,ジョイント社は,ダンシング社が明渡しに応じないことを踏まえ,平成27年12月18日,本件仮処分命令の発令を受け,同月25日,その保全執行をしている。
また,前記3(1)で説示したとおり,被告Y2が平成28年1月12日にダンシング社の代表取締役に就任した後に本件建物を明け渡さなかった行為は,代表取締役としての任務懈怠に当たるところ,前記認定事実によれば,ジョイント社は,ダンシング社が全く明渡しに応じようとしないことを受けて,同月18日に別件明渡訴訟を提起し,同年4月27日に認容判決を受け,強制執行にまで至ったものと認められる。
これら一連の手続に要した実費計51万7336円(前記認定事実(8)ウ(イ)から(オ))は,被告らの任務懈怠がなければ発生しなかったものであり,本件保証契約等に基づいてこれらを負担することを余儀なくされた原告の損害であるというべきである。
もっとも,弁護士費用については,一連の手続がダンシング社の債務不履行に基づくものであって,不法行為に基づく場合とは異なり,その手続内では原則として弁護士費用が損害と認められないことや,本件訴訟の難易等に鑑み,5万円に限り,被告らの任務懈怠と相当因果関係のある損害と認める。
イ(ア) これに対し,被告Y1は,別件明渡訴訟の提起やその強制執行が代表取締役の辞任後に行われているから,これらに要した費用は被告Y1の任務懈怠と因果関係がないと主張する。
しかし,被告Y1がその在任中に本件建物を明け渡していれば,別件明渡訴訟の提起やその強制執行を要しなかったことは明らかである。また,前記認定のとおり,本件保証委託契約においては,本件建物の明渡しに要した訴訟費用及び弁護士費用も原告の保証対象とされているところ,被告Y1の在任中に本件仮処分命令の保全執行まで行われており,ダンシング社の未払賃料等がかさんで「bスタジオ」も閉鎖されるなど,直ちに明け渡さなければ明渡訴訟の提起が必至の状況にあったのであるから,被告Y1としては,在任中に本件建物を明け渡さなければ,辞任後に明渡訴訟の提起やその強制執行がされ,訴訟費用や弁護士費用が発生することを十分に予見し得たというべきである。
それにもかかわらず,被告Y1は,自ら本件建物の明渡しをすることなく,その見通しも立たないまま代表取締役を辞任し,このことが後の別件明渡訴訟やその強制執行につながっているのであるから,これらの手続に要した費用は被告Y1の任務懈怠と相当因果関係のある損害というべきである。
よって,被告Y1の上記主張は,採用することができない。
(イ) なお,被告Y1は,被告Y1の原告に対する損害賠償債務について,民法491条1項の「費用」に当たり,原告が別件求償金訴訟及びBとの和解により回収した494万5569円が最初に充当されると主張する。
しかし,被告Y1の原告に対する損害賠償債務は,原告が本件保証契約等に基づいて保証債務を履行し,ダンシング社に対して取得した求償金相当額について,被告Y1の任務懈怠を理由に会社法429条1項に基づいて発生するものであるから,民法491条1項の「費用」に当たらないことは明白であって,被告Y1の上記主張は,採用することができない。
(2)  被告Y2の任務懈怠による損害
前記認定事実((8)イ)によれば,原告は,本件保証契約等に基づき,ジョイント社に対し,ダンシング社がジョイント社に対して負っていた平成28年3月分及び同年4月分の本件建物の賃料等相当損害金を支払っているところ,被告Y2が,ダンシング社に対する任務を懈怠せず,平成28年1月12日の代表取締役への就任後速やかに(遅くとも平成28年2月中に)本件建物をジョイント社に明け渡していれば,平成28年3月分及び同年4月分の賃料等相当損害金の支払義務は発生せず,これを保証人である原告が支払う必要もなかったものと認められる。
したがって,上記損害金から填補分を控除した258万1983円は,被告Y2の任務懈怠と相当因果関係のある損害というべきである。
5  結論
以上によれば,原告の請求は,被告Y1に対し,会社法429条1項に基づき,損害金56万7336円及びこれに対する請求後である平成29年8月27日から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を求め,被告Y2に対し,損害金314万9319円及びこれに対する請求後である平成29年5月19日から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。
なお,会社法430条により,被告らは,重なり合う損害金56万7336円及びこれに対する平成29年8月27日から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金について,連帯支払義務を負う。
よって,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第25部
(裁判官 内田哲也)

 

〈以下省略〉

 

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