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「テレアポ 営業」に関する裁判例(3)平成31年 1月24日 大阪地裁 平29(ワ)335号 賃金等請求事件

「テレアポ 営業」に関する裁判例(3)平成31年 1月24日 大阪地裁 平29(ワ)335号 賃金等請求事件

裁判年月日  平成31年 1月24日  裁判所名  大阪地裁  裁判区分  判決
事件番号  平29(ワ)335号
事件名  賃金等請求事件
文献番号  2019WLJPCA01248001

裁判年月日  平成31年 1月24日  裁判所名  大阪地裁  裁判区分  判決
事件番号  平29(ワ)335号
事件名  賃金等請求事件
文献番号  2019WLJPCA01248001

大阪府茨木市〈以下省略〉
原告 X
同訴訟代理人弁護士 細井信秀
東京都港区〈以下省略〉
株式会社Y1訴訟承継人
被告 Y2株式会社(以下「被告会社」という。)
同代表者代表取締役 A
兵庫県尼崎市〈以下省略〉
被告 Y3(以下「被告Y3」という。)
被告両名訴訟代理人弁護士 中島光孝

 

 

主文

1  原告の請求をいずれも棄却する。
2  訴訟費用は原告の負担とする。

 

事実及び理由

第1  請求
1  被告会社は,原告に対し,2638万7899円及びこれに対する平成28年9月16日から支払済みまで年14.6%の割合による金員を支払え。
2  被告らは,原告に対し,連帯して100万円及びこれに対する各訴状送達日の翌日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要等
1  本件事案の概要
本件は,原告が,①原告と株式会社Y1(以下「旧会社」という。)間の労働契約を承継した被告会社に対し,労働契約に基づき,平成26年10月1日から原告の退職日である平成28年8月5日までの間の未払賃金及び平成26年冬期から平成28年夏期までの未払賞与並びにこれらに対する退職日後の給与支払期日の翌日である平成28年9月16日から支払済みまで賃金の支払の確保等に関する法律6条1項に基づく遅延損害金の支払を求めるとともに,②被告Y3のいわゆるパワーハラスメント行為によって精神的苦痛を被ったと主張して,被告Y3に対しては民法709条,被告会社に対しては民法715条1項に基づき,慰謝料の請求及び各訴状送達日の翌日(被告会社については,平成29年2月2日,被告Y3については同月9日)から支払済みまでの遅延損害金の支払いを求めている事案である。
2  前提事実(当事者間に争いがないか,後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)
(1)  当事者等
ア 旧会社は,医療従事者の有料職業紹介事業等を目的とする株式会社であり,平成28年8月5日,a株式会社の子会社である被告会社の子会社となった。被告会社と旧会社は,平成29年4月1日,被告会社を存続会社とする吸収合併を行った。
イ 旧会社は,B(以下「B」という。)が代表取締役を務め,同社を運営していたものであるところ,平成26年6月1日,Bに加え,被告Y3も代表取締役に就任し,C(以下「C」という。)及びD(以下「D」という。)が,いずれも取締役にそれぞれ就任して,B,被告Y3,C及びDの役員4名の体制で運営されることとなった。被告Y3は主に財務や営業の取りまとめ,Cは主に人事関係,Dは主に営業関係の業務をそれぞれ分担していた(被告Y3)。
なお,被告Y3,C及びDはいずれも平成28年8月5日に,代表取締役あるいは取締役を辞任している。
ウ 原告は,旧会社との間で,①平成23年5月11日,同月17日から同年8月16日までを雇用期間とする有期労働契約を締結した後,②同年7月21日,同年8月1日から平成24年7月末日までを雇用期間とする有期労働契約の締結を経て,③平成24年3月1日,期間の定めのない労働契約を締結した(乙2の①,3の①,4の①)。
平成28年8月5日,旧会社が被告会社の子会社となったことに伴い,被告会社へ転籍した。
(2)  原告の賃金額等について
ア 原告と旧会社が合意した賃金額は,上記有期労働契約期間中については,それぞれ「月額25万円(残業40時間を含む)」というものであった。
平成24年3月1日付で原告が旧会社と期間の定めのない労働契約を締結した際,原告は,賃金額を「就業規則の定めるところによる」とする雇用契約書に署名押印をした(乙4の①)。なお,賃金の締日及び支払日は,毎月30日締めの翌月15日払いであった。
イ 原告と旧会社は,平成24年3月1日付で,「賞与に関する覚書」の内容に合意しており,これによると,「賞与は原則年3回,会社の業績と個人の成績を勘案して支給する」(第1条1項)とされている(乙4の②)。
(3)  就業規則の定めについて
ア 賃金額について,平成24年3月1日施行の旧会社就業規則の第28条には「基本給は,月額250,000円とする」との記載があり,平成27年3月1日施行の旧会社就業規則には,その第28条に「基本給は,年齢,勤続年数,職種,技能などを基準に従業員個別に定める」との記載がある(甲8,乙1)。
イ 賞与について,平成24年3月1日施行及び平成27年3月1日施行の旧会社就業規則第38条1項では,①算定対象期間を2月1日から7月末日まで,支給日を8月15日とするものと,②算定対象期間を「前年8月1日から1月末日」まで,支給日を2月15日とするものとの,年2回の賞与が予定されている旨の記載がある。賞与額については,同条2項において,「会社の業績及び従業員の勤務成績などを考慮して各人ごとに決定する」とされている。
(甲8,乙1)
(4)  平成26年11月までの給与等支払いの実態
ア 旧会社は,原告に対し,平成25年2月15日支給分(同年1月分)の給与までは月額25万円を支払っており,その給与明細書には「基本給250,000」との記載がある。また,旧会社は,平成25年1月25日,原告に対し,「春季賞与」として,原告に対し,276万2676円を支払った。
(甲1)
イ 旧会社は,原告に対し,給与明細書の記載によれば,平成25年3月15日から平成26年11月15日支給分まで,「基本給」として月額90万円を支払ったほか,平成25年8月には「夏季賞与」,平成26年2月には「春季賞与」として,それぞれ500万円を,同年8月には「夏季賞与」として100万円を支払った(甲1)。
(5)  労働条件の変更
ア 原告は,旧会社からの提案により,平成26年8月27日,給料を「月額最低保障450,000円」,賞与を「年2回(8月と2月)会社業績により支払日の変更または支給しないことがある。金額は本人の成績勤務態度,能力等を勘案して定める」とする内容の雇用契約書に署名押印をした(甲3)。ところが,上記内容の合意は現実には実施されなかった。
イ 原告は,旧会社からの再度の提案により,平成26年11月20日,給料を「年俸制5,400,000円最低保証」,賞与を「年1回(12月)会社業績により支払日の変更または支給しないことがある。金額は,会社業績,本人の成績,勤務態度,能力等を勘案して定める」との内容の雇用契約書に署名押印をして,賃金額及び賞与につき,上記内容の合意(以下「本件変更合意」という。)をした(甲4)。
ウ 旧会社は,原告に対し,上記変更に従って,平成26年12月15日,「冬季賞与」として303万7500円を支払った上,同日から平成27年11月15日支給分まで「基本給」として月額33万7500円を支払った。また旧会社は,原告に対し,平成27年12月15日に「賞与」として239万1214円を支払い,「基本給」として,同日以降平成28年8月15日支給分まで月額34万5000円を支払い,同年9月15日に4万4516円を支払った。
(甲1)
(6)  労働条件変更にあたっての事前説明
Cは,平成26年8月,原告に対し,労働条件変更にあたっての事前説明を行い,その際に,「給与・役員報酬への最低保障制度導入」と題する書面(甲2。以下「本件説明文書」という。)を用いて説明を行った。
(7)  役員報酬
本件説明文書を用いて労働条件変更についての説明を行った平成26年8月時点において,被告Y3及びCの役員報酬額は月額260万円,Dが月額242万5000円であり,本件変更合意の前後を通じて役員報酬額に変更はなかった(乙36の①ないし③)。
(8)  詐欺取消の意思表示
原告は,平成29年5月16日付第1準備書面をもって,被告会社に対し,本件変更合意を取り消す旨の意思表示を行った。
第3  本件の争点
1  賃金請求権及び賞与請求権について
(1)  原告と旧会社との間で,賃金月額90万円とする合意(以下「本件合意①」という。)及び年2回の賞与について金額を各500万円とする合意(以下「本件合意②」という。)があったか否か(争点1)
(2)  本件変更合意における原告の意思表示が,原告の錯誤あるいは被告の詐欺に基づいてなされたものであり,民法95条により無効または民法96条1項により取り消しうるものとなるか(争点2)
2  損害賠償請求権について
被告Y3の原告に対する,いわゆるパワーハラスメント行為の有無(争点3)
第4  争点に関する当事者の主張
1  争点1(本件合意①②の有無)について
(原告の主張)
(1) 原告の給与は,月額25万円とされていたところ,平成25年1月頃,Cと原告との間で,口頭により給与の増額が合意された。その金額が月額90万円,賞与金額各500万円であることは,同年3月以降の旧会社による支払いと原告の受領により,黙示の合意が成立している。
(2) 原告は,月額90万円のうち65万円が任意的恩恵的給付の趣旨であるとの説明を受けていない。平成26年8月にCが原告へ労働条件変更にかかる説明を行った際にも,賃金の減額である趣旨の説明を行っていた。
税金や保険料の控除も90万円全額が給与であることを前提として行われている。
(被告会社の主張)主に第3準備書面
(1) 本件合意①及び同②を裏付ける文書は存在しない。旧会社が「基本給」として支払っていた月額90万円のうち,25万円は当初合意のあった賃金であり,残り65万円は労務の対価として支払ったものではなく,節税効果を目的としてあくまで一時的に行っていた任意的恩恵的給付に過ぎず,会社の業績や経営方針の変更によって終了することが予定されているものであった。月65万円分の給付がかかる趣旨のものであることは,平成25年2月頃のCとの会話を通じて,原告も認識していた。
(2) 賃金は,人件費の固定費として企業の経営いかんにかかわらず使用者が支払義務を負うものであり,かつ容易に減額することができないものであるため,大幅な賃金の増額は特段の事情がなければ行われない。本件では,原告の生産性向上の観点や旧会社の採算上の観点に照らして,本件合意のような大幅な賃金増額を行う理由がない。
(3) 給与明細書に基本給が90万円であるとの記載がされているのは,賃金25万円と上乗せ支給の65万円を本来的に分けて記載すべきところを,まとめて記載したためであるに過ぎない。
2  争点2(本件変更合意が原告の錯誤または詐欺に基づく意思表示であるか否か)
(原告の主張)
Cは,本件説明文書を用いて労働条件の変更につき説明を行った際,旧会社の経営状態の悪化・窮状を述べ,こうした窮地を脱するため,全従業員の給与及び全役員の報酬を減額することを前提として,原告に賃金の減額に同意するよう求めたものである。しかしながら,旧会社の経営状態はCの述べたような窮状にはなく,被告Y3,C及びDの役員報酬も減額されなかった。これら前提事項についての原告の錯誤あるいは旧会社からの欺罔行為がなければ,賃金減額のような重要な労働条件の変更に同意することはなく,本件変更合意を行うことはなかった。そうすると,本件では法律行為の要素に動機の錯誤があり,かかる動機は明示されているといえるし,詐欺による意思表示であるといえる。
(被告会社の主張)
Cが本件説明文書を用いて行った説明の趣旨は,前記上乗せ支給の廃止と,賃金の増額である。本件変更合意を行った理由は,本件変更合意当時の旧会社の業績は好調であったが,経営課題として,過当競争に耐えうるだけの内部留保の確保と,業績が悪化した際の従業員の収入保障に対する不安の払しょくが必要であると考えていたからである。旧会社の窮状を原告に訴えたことはなく,本件変更合意の前提として役員報酬減額を行うと説明したこともないから,錯誤または欺罔行為は存在しない。
3  争点3(被告Y3によるパワーハラスメント行為の有無)
(原告の主張)
原告は,被告Y3より,旧会社から転籍をして退職するまでの間,多数のパワーハラスメント行為を受けた。
具体的に特定できるものとしては,被告Y3が原告に対し,①平成26年9月17日,営業会議の場で「地べたに這いつくばるように仕事をしてこい」などと罵倒された,②同年10月2日,営業会議の場でテレアポによる営業活動を提案したところ「コストがいくらかかるか知ってるのか。安易にそんな提案をするな」などと罵倒された,③同月15日,被告Y3から指示されたダイレクトメール送付を郵便局で断られた件につき「責任者を出せといってごねてでも指示どおりダイレクトメールを出してこい。そんなこともできないのか」と無理な行為を要求され,能力を否定する発言をされた,④同月24日,営業会議において上記テレアポの提案を撤回したところ,「だいたいお前は何もデータの重要性を分かっていない。今までのデータはどこにまとめているのか。どうせやっていないのだろう。1人で勝手に仕事しろ」と大声で30分以上罵倒された,⑤同年12月22日,被告Y3が原告にプリントを投げつけて「こんなものは調べたらすぐに分かるのに,お前はこんなこともできないのか」などと罵倒した点を挙げることができる。
(被告らの主張)
原告が具体的に主張する被告Y3のパワーハラスメント行為は一切存在しないし,他にパワーハラスメント行為と評価されるべき行為も存在しない。むしろ原告は,被告Y3らによる任意の食事会に参加するなどしていた。原告がうつ病を発症したとすれば,業務外の事情によるか,原告の脆弱性に起因するものに過ぎない。
第4  当裁判所の判断
1  認定事実
前記前提事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(1)  原告は,平成25年3月15日から月額90万円の支給を受けたことにつき,Cから,同年1月頃,具体的な金額は示されなかったものの,当時月額25万円の給与から増額される旨の説明を受け,その際,増額分は賃金ではないという説明を受けていなかったと述べている。この点,Cは,増額分について節税対策の上乗せ支給であって,賃金ではないとの認識であったところ,同年3月,原告に対し,当該増額分を「げたを履かせる」という表現を用いて説明をし,基本給が上がるとの説明はしていない旨を述べている。両者の供述は,説明の時期はともかく,支給増額がされた場合の増額分の性格について明確な説明を加えていないという意味では両者の供述は一致しているものと解される。
したがって,原告の供述内容は上記供述の限度で信用性があり,上記供述内容どおりの事実を認定することができる。
(以上につき,原告,証人C)
(2)  本件説明文書は,4頁からなるものであり,以下の記載がある。
ア 1頁目について
(ア) 「給与・役員報酬への最低保障制度導入」との題名が付されており,①旧経営体制からの経緯,②現状の課題1資金繰りの問題,③現状の課題2スタッフの収入が途切れることの不安をなくす,④新経営方針,⑤特記の5つの項目がある。
(イ) 「旧経営体制からの経緯」の項には,「現行高め報酬設定を実行してきみた結果,下記2点の経営課題,問題点が発生している。折角貯めた内部留保金を食いつぶしてしまい,手遅れになる前に,しっかりとした経営的解決策を講じておきたい。(山分け方式を廃止する。)」との記載がある。
(ウ) 「現状の課題1資金繰りの問題」の項には,「売上構成が高額商品主体の販売実績のため,解約の発生や,契約の遅れなどで,売上予測と実績とのブレが大きくなりやすい。減収月に消費税や社会保険の支払いが重なると,現預金が2000万円を下回る月が頻出しており,折角貯めた内部留保が底をつく危険性がある。内部留保金を減らさない様,全員の給与・役員報酬を企業規模が同等の一般企業クラスへ準拠させて一旦リセットしておきたい。(具体的な金額は後述)」との記載がある。
(エ) 「現状の課題2スタッフの収入が途切れることの不安をなくす」の項には,「現行の高め給与設定の場合,業績連動で報酬が下がることは最初の約束とはいえ,実際に報酬が半減すると,心理的に報酬の下げが許容できなくなる。スタッフが報酬に対してマイナス感情を持つことは,業務の質量に大きく影響する。今後,会社業績に変動があっても,給与額,役員報酬額へのブレが少なく,かつ,会社が永く存続できる支給形式にする。報酬の上限なし,下限もなしという乱高下スタイルではなく,最低保障額を設定し,スタッフの収入がなくなることへの不安をなくし,安心して働けるようにする」との記載がある。
(オ) 「新経営方針」の項には,「新経営体制になったのを機に,会社が倒産せず,可能な限り永く営業できることを最優先とした経営方針とする」「資金繰りに余裕を持たせる。(内部留保8000万円を目標)」「最低保障給与制度を導入し,個人目標の設定と業績への貢献度で,頑張れば高い報酬がとれるようにする」などの記載がある。
イ 2頁目について
(ア) 2頁目上部には,旧会社において「最低保障制度」を導入する前後の報酬又は賃金を比較する表が記載されている。導入前の報酬又は賃金は「旧月額報酬」の欄に記載があり,被告Y3,C及びDについては,月額120万円を意味する「120」,原告については月額90万円を意味する「90」,旧会社の従業員であるE(以下「E」という。)及びF(以下「F」という。)については,月額45万円を意味する「45」が記載されている。他方,「最低保障制度」導入後の報酬又は賃金については,「月額最低保障」の欄に記載があり,被告Y3,C及びDについては,月額60万円を意味する「60」,原告については月額45万円を意味する「45」,E及びFについては月額35万円を意味する「35」が記載されている。
(イ) 同じく本件説明文書2頁目には,職種及びその労働条件又は待遇が青字で記載され,本件説明文書作成当時に旧会社に所属する者で,当該職種に該当する者が赤字で記載されている。
このうち,「株主兼常勤・非常勤役員」の欄には,青字で「年俸720万(今後5年間は,最低保障なし 賞与なし 雇用保険なし)」,「月額固定給60万円」と記載されているものの,当該内容は,本件説明文書作成当時の被告Y3,D,C及びBといった取締役の報酬を記載したものではなく,同文書作成以降新たに株主兼役員として旧会社に参画することを認めるための条件として記載されたものである。
(以上につき,甲2,証人C)
(3)  説明内容
ア 会社の経営状況について
前提事実(6)の説明について,Cは,本件説明文書の内容をそのまま読んで説明したと供述するのに対し,原告及びEは,Cが,要旨,当時旧会社の内部留保は2000万円を切るような危機的状況が頻発しており,仮に年間1200万円の売上げが出ている顧客が2件契約関係解消となった場合,旧会社は倒産してしまう状態であると説明したと述べる。
本件説明文書の内容は,認定事実(2)のとおり,内部留保金が底をつく前に事前に対策を講じておくという趣旨であると理解することができ,現預金が2000万円を下回る月は「頻出」とされているものの,「減収月に消費税や社会保険料の支払いが重なる」場合との限定が付されていることから,旧会社の経営状態が当時の状況において悪化ないし窮状にあったという趣旨には理解することができない。そうすると,Cの供述内容には,客観的裏付けがある一方で,原告の供述内容は,かかる裏付けを欠くものということができる。
したがって,Cの上記供述には信用性があり,その供述内容どおりの事実を認定することができる。
(以上につき,甲2,証人C)
イ 報酬の減額について
(ア) 原告は,Cが原告に対し,本件説明文書による説明の際,原告については月額90万円の給与を月額45万円に,E及びFについては月額45万円の給与を月額35万円に減額すると説明しつつ,当時の役員であった被告Y3,C及びDの3名について,現状月額120万円である報酬を月額60万円に減額する,つまり旧会社の役員及び従業員の全員について支給額を減額すると説明したのであって,月額120万円は役員としての最低保障額であるとの説明はなかったと供述する。
(イ) これに対し,Cは,本件説明文書を一通り読んで説明したと述べつつ,本件説明文書2頁目の「120」の数字の意味について,現実の役員報酬額ではなく,役員として最低限支給される報酬の意味である旨を原告に説明したと供述する。そして,本件説明文書を用いた説明がなされた時点では,Bの役員報酬が月額110万円であり,同じく役員に就任していたBの配偶者の報酬が月額40万円であったことから,Y3とCとの間では,最低でも月額120万円の報酬が欲しいと話をしていたなどと述べている。
(ウ) 原告の供述内容については,本件説明文書の記載内容上,「60」が「月額最低保障」とされているから,必ずしも現実の支給額が60万円となることを意味するものと理解することができるわけではなく,客観的裏付けがあるとはいえない上,会社経営についての責任を負う立場にある取締役が,書面に残る形で明確な虚偽を述べるということ自体,にわかには信用しがたい。この点について,Dは,Cから役員の報酬を月額120万円から60万円に減額すると説明するので,従業員に聞かれたときは口裏を合わせてほしいと頼まれた旨供述するものの,その供述は,口裏合わせの方法について具体的に述べられていないものと評価することができ,かかる供述をもって原告の供述の信用性が客観的に裏付けるものとは言い難い。
確かに,C供述のうち,月額120万円の記載について役員の最低保障額であると説明したとの点については,本件説明文書をみても,「120」という記載が「最低保障額」である「60」と関連付けられてはいるものの,「120」が最低保障額であること自体は明示されていない。しかしながら,認定事実(2)のとおり,本件説明文書では,「内部留保金を減らさない」という目的達成のために,「全員の給与・役員報酬を企業規模が同等の一般企業クラスへ準拠させて一旦リセットしておきたい」とした上で,変更後の役員報酬については,固定給といった表現ではなく「月額最低保障」といった表現が用いられている。そして,役員については,その報酬は具体的金額又は具体的金額を算出する計算式が株主総会で決定されるものと考えられ,従業員のように賞与等による増額調整が想定されていないと考えられることからすると,本件説明文書の意味内容自体は,①従業員については,最低保障金額を支給しつつ,これに加え成績等によって賞与を支給する制度とする一方で,②役員については,業績が低迷した場合には,役員報酬を「月額最低保障」の金額を下限として定めるなどとする制度とし,これら制度の運用によって内部留保金を確保する趣旨と理解することができる。したがって,本件説明文書は,役員らの報酬を月額60万円などといった固定額に減額する趣旨のものと読むことはできないから,原告の供述はその中核的な部分について本件説明文書による客観的裏付けを欠くものといえる。
(エ) したがって,原告の上記供述内容は,十分な信用性を欠くものというべきであり,その供述どおりの事実を認定することはできない。
2  争点1について
(1)  まず,本件合意①について検討すると,旧会社は,労働者である原告に対し,前提事実(4)イのとおり,1年9か月もの間,月額90万円という一定金額が毎月支払い,給与明細書には「基本給」と記載されていた。かかる事実に照らすと,原告と旧会社との間で,平成25年3月15日の時点では,月額90万円が労務提供の対価として支払われることにつき合意があったものということができる。
これに対し,被告会社は,基本給25万円を超える部分につき,任意恩恵的な給付であると主張し,証人Cも平成25年1月の時点でそれに沿う趣旨の説明を原告におこなったと供述する。確かに,平成25年2月以前と同年3月以降とでは,原告に対する月ごとの支給額に75万円もの上昇幅があり,その金額からすると長期的に支給額が維持されることについての期待が高いとはいえない上,書面どころか,口頭ですら具体的な月給額について相互に確認はなされていない。しかしながら,認定事実(1)のとおり,25万円を超える部分について,賃金ではないとの明確な説明がなされていたとはいえない上,原告と旧会社との間で,その支給の有無や金額について使用者の裁量に委ねる旨の契約書は作成されているわけでもない。実際の支払状況をみても,使用者の裁量によって支給の有無や金額が決定されていたものということはできないから,被告会社の主張は採用できない。
したがって,本件合意①の存在を認定することができる。
(2)  他方,本件合意②の有無についてみると,前提事実(3)イのとおり,就業規則上一定の賞与金額が算出できる仕組みになっておらず,むしろ賞与の金額は,旧会社の業績を踏まえた上で裁量的に決定することが予定されている。また,原告と旧会社との間で,書面又は口頭によって賞与を500万円とする旨の確認はなされておらず,原告自身も賞与500万円という金額は,業績を踏まえて決定されたものである旨の認識を述べている。かかる事情に加え,前提事実(4)イのとおり,500万円の賞与は2度しか支給されていないことをも考慮すると,各500万円を固定の賞与額とする合意が成立したとはいえない。
したがって,本件全証拠によっても,本件合意②の存在を認定することはできない。
3  争点2について
(1)  詐欺について
認定事実(3)ア及びイによれば,Cが本件説明文書による説明の当時,会社の経営が危機的である旨の説明や,役員報酬について減額する旨の説明を行ったとの事実を認定することはできないから,Cによる欺罔行為があったとはいえない。
したがって,本件変更合意が詐欺に基づく意思表示であるとはいえない。
(2)  錯誤について
原告が,認定事実(3)ア及びイによれば,本件変更合意にあたり,旧会社の経営状況が悪化ないし窮状にある,あるいは最低保障制度の導入に合わせて役員報酬も減額されると考えたという動機が,旧会社に対して表示されたものということはできず,また,法律行為の要素に錯誤があったということもできない。
したがって,本件変更合意が錯誤に基づく意思表示であるとはいえない。
4  争点3について
原告は,前記のとおり被告Y3によるパワーハラスメント行為があったと主張し,これに沿う供述をするものの,原告がプリントを投げつけられたとする際の録音内容(乙37号証の①及び②)等に照らすと,原告の主張は採用することができず,他に原告主張の事実を認めるに足りる証拠はない。
5  結論
以上によれば,原告の本件請求はいずれも理由がないから,これらを棄却することとし,主文のとおり判決する。
大阪地方裁判所第5民事部
(裁判官 溝口達)

 

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