判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(45)平成29年 6月23日 東京地裁 平28(ワ)36554号 成果報酬等請求事件
判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(45)平成29年 6月23日 東京地裁 平28(ワ)36554号 成果報酬等請求事件
裁判年月日 平成29年 6月23日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平28(ワ)36554号
事件名 成果報酬等請求事件
裁判結果 認容 文献番号 2017WLJPCA06238005
要旨
◆アフィリエイトプログラムを運営する広告代理店である原告会社が、同プログラムにおけるクライアント(広告主)の立場として同社のサービスを利用していた被告会社に対し、アフィリエイトプログラムの利用に関する契約及び同契約に基づく成果報酬の支払等に関する合意(本件各契約)に基づき、成果報酬金等の支払を求めた事案において、本件申込書には、アフィリエイト申込みの主体である「貴社名」の項目に被告会社の社名が記載され、その「御担当者名」の項目には「訴外C」と記載されており、成果報酬の一部については被告会社による承認が行われて支払が完了している上、本件請求に係る成果報酬の支払について弁護士間の交渉に至った時点においても、その前提となる本件各契約の成立や内容それ自体は問題とされていないこと等から、原告会社と訴外Cとの間の本件各契約が成立し、被告会社が訴外Cに対して同各契約を締結する代理権を授与していたことは明らかであると判断するなどして、請求を認容した事例
参照条文
民法99条
裁判年月日 平成29年 6月23日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平28(ワ)36554号
事件名 成果報酬等請求事件
裁判結果 認容 文献番号 2017WLJPCA06238005
東京都渋谷区〈以下省略〉
原告 株式会社フォーイット
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 増渕勇一郎
同 高橋知洋
東京都港区〈以下省略〉
被告 株式会社キャリアウーマン
同代表者代表取締役 B
同訴訟代理人弁護士 五十部紀英
同 八木田大将
同 大橋史典
同 庄野航
同 堀向良介
同 田島清二
同訴訟復代理人弁護士 柳澤圭一郎
同 髙橋紗織
主文
1 被告は,原告に対し,996万3000円及びこれに対する平成28年9月1日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 請求
主文同旨
第2 事案の概要
本件は,原告が,被告に対し,アフィリエイトプログラムの利用に関する契約及び成果報酬の支払等に関する合意に基づき,成果報酬金996万3000円及びこれに対する弁済期の翌日である平成28年9月1日から支払済みまで約定の年14.6パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
1 争いのない事実
(1) 当事者
原告は,「○○」という名称のアフィリエイトプログラムを運営する広告代理店である。
被告は,△△という名称の化粧水(以下「本件商品」という。)をインターネット上で販売する株式会社であり,アフィリエイトプログラムにおけるクライアント(広告主)の立場として原告のサービスを利用していた者である。
(2) アフィリエイトプログラムの概要
アフィリエイトプログラムとは,クライアント(広告主)の依頼を受けて,原告のアフィリエイトパートナーを紹介するサービスのことであり,原告は,クライアントに対し,システム上の管理画面を利用させること,アフィリエイトパートナーを紹介すること等の業務を提供する(○○クライアント利用規約(甲2,以下「本件規約」という。)2条)。
アフィリエイトパートナーとは,クライアントの広告を自己のサイト(以下「アフィリエイトパートナーサイト」という。)上に表示させたり,アフィリエイトパートナーサイト上にクライアントのWEBサイトへのリンクを貼ったりして,アフィリエイトパートナーサイトの利用者をクライアントのWEBサイトへ誘導する役割を担う者をいう。
また,アフィリエイトプログラムにおいて,クライアントは,原告に対し,利用の対価として月額利用料金を支払うとともに,原告とクライアントとの間で別途定める広告成果が発生した場合には,別途定める成果報酬を支払うことになっている(本件規約4条3号)。
2 争点及び争点に対する当事者の主張
(1) アフィリエイトプログラムの利用に関する契約及び成果報酬の支払等に関する合意の成否
(原告の主張)
原告は,株式会社エイツ(以下「エイツ」という。)の代表取締役であるC(以下「C」という。)との間で,平成27年6月16日,Cが原告に○○/○○モバイル御申込書(甲3,以下「本件申込書」という。)を提出してアフィリエイトプログラムの利用に関する契約(以下「アフィリエイト利用契約」という。)を締結し,平成28年4月25日,アフィリエイト利用契約に基づく成果報酬の支払等に関する合意(以下「本件契約」という。)をした。アフィリエイト利用契約及び本件契約は,要旨以下の約定を含むものである。
ア アフィリエイトパートナー 株式会社ゼノグロシー
アフィリエイトパートナーサイト □□
URL https://〈省略〉
イ 本件商品の単価 500円
ウ 成果報酬(1件当たりのマージン) 2万5000円(消費税別)
エ 成果発生条件 本件商品を購入した消費者へ本件商品の発送が完了したこと
オ クライアントが原告に対する金員の支払を遅滞したときは,年14.6パーセントの割合による遅延損害金を付加して支払う。
カ クライアントは,成果報酬の承認又は却下を広告成果の発生日から60日以内に選択し,原告が管理するサーバーに送信するものとし,原告は,クライアントが広告成果の発生日から60日以内に何らの対応もしないときは,クライアントにより成功報酬が承認されたとみなすことができる。
原告は,利用料金について,毎月末日に締めて(成功報酬については,承認された日を基準とする),翌月5営業日までにクライアントに請求し,クライアントは,原告に対し,請求を受けた月の末日までに支払う。
(被告の主張)
本件申込書が存在することは認めるが,その余は否認する。また,原告は,アフィリエイト利用契約の内容について,本件規約に沿うことを前提として主張するが,本件申込書には本件規約に関する記載が一切ないから,仮に,原告との間でアフィリエイト利用に関する何らかの契約が成立しているとしても,原告の主張する契約内容まで当然に認められるものではない。
(2) 前記(1)に関するCの権限
ア Cの代理権の有無(有権代理)
(原告の主張)
被告は,Cに対し,前記(1)の契約に先立ち,前記(1)の契約を締結する代理権を授与し,Cは,被告のためにすることを示した。
(被告の主張)
否認する。確かに,本件申込書には,アフィリエイト申込みの主体である「貴社名」の項目に被告の社名が記載されており,その「御担当者名」の項目には「△△事業部」の「C」なる記載がされているが,Cは,原告の担当者とのメールのやり取りにおいては,エイツにおける肩書を記載するにとどまり,被告の社名等に一切言及していない。
イ 被告の追認
ウ 表見代理
(3) 債務の履行及び弁済期の経過
(原告の主張)
ア 債務の履行
原告は,被告に対し,アフィリエイト利用契約及び本件契約に基づき,アフィリエイトパートナーである株式会社ゼノグロシーを紹介し,株式会社ゼノグロシーは,自己の運営するアフィリエイトパートナーサイト上に本件商品の広告を表示させて閲覧者を被告のWEBサイトに誘導させるなどし,閲覧者が本件商品の購入手続をし,被告は,これに基づき本件商品を発送した。そして,前記(1)(原告の主張)エの成果発生条件を満たすものが,別紙のエビデンス欄に「●」の記載がある274件及び「▲」の記載のある95件の合計369件ある(2万5000円×369件×1.08=996万3000円)。
イ 弁済期の経過
これら369件のうち,最も遅いものでも平成28年5月25日には広告成果が発生しているが,被告は,同日から60日以内に成果報酬の承認又は却下のいずれの対応もしなかったことから,原告は,同年7月25日に成功報酬が承認されたとみなし,被告に対し,翌月(同年8月)5日までに請求しているから,前記(1)(原告の主張)カにより,同月31日が弁済期となる。しかし,被告は,同日が経過しても,前記の成果報酬996万3000円を支払わない。
(被告の主張)
否認する。
第3 当裁判所の判断
1 争点(1)及び争点(2)アについて
前記第2の1の争いのない事実,証拠(甲2ないし4,甲8の1ないし11,甲10の1ないし3,甲11ないし14,16,17,甲18の1ないし12,甲20)及び弁論の全趣旨によれば,争点(1)及び争点(2)アについての原告の主張を認めることができる。
この点,被告は,争点(1)及び争点(2)アについての原告の主張を否認するが,被告も主張するように,本件申込書(甲3)には,アフィリエイト申込みの主体である「貴社名」の項目に被告の社名が記載され,その「御担当者名」の項目には「△△事業部」の「C」と記載されていることが認められるほか,前掲各証拠によれば,Cと原告の担当者とのメールのやり取りに基づく約定に従って,原告から被告に対する報酬の請求がされ,本件契約がされた後である平成28年6月まで被告の原告に対する報酬等の支払が継続されていたこと,本件契約に基づく成果報酬のうち20件については,被告による承認が行われて支払が完了していること,被告は,原告に対し,本件訴訟前,本件訴訟の被告訴訟代理人でもある五十部紀英弁護士及び庄野航弁護士作成の平成28年8月3日付けのご連絡と題する文書において「納品書が存在する272件につきましては,商品の発送が完了したことは客観的に明らかであるため,支払う意向を有しております。」として,本件請求に係る成果報酬のうち272件分について支払う意向を示し,さらに,同月12日付けのご連絡と題する文書において「納品書が存在する274件については,その成果報酬金を支払う意向を有していることは同月3日付「ご連絡」と題する書面にて述べたとおりです。」として,本件請求に係る成果報酬のうち前記272件分に新たに納品書が提出された2件を加えた274件分について支払う意向を示していることが認められ,他方で,本件請求に係る成果報酬の支払について弁護士間の交渉に至った平成28年8月頃においても,本件規約の内容やCの代理権の有無を含め,成果報酬金の支払の前提となるアフィリエイト利用契約や本件契約の成立や内容それ自体が問題とされた形跡は全くうかがわれない。
以上によれば,争点(1)及び争点(2)アにおいて原告が主張する,原告とCとの間のアフィリエイト利用契約及び本件契約が成立し,被告がCに対しこれらの契約を締結する代理権を授与していたことは明らかというべきである。
よって,争点(1)及び争点(2)アについての原告の主張は理由がある。
2 争点(3)について
前記第2の1の争いのない事実,証拠(甲2ないし5,甲6の1ないし274,甲7の1ないし95,甲8の1ないし11,甲21)及び弁論の全趣旨によれば,争点(3)についての原告の主張を認めることができる。
3 結論
以上によれば,争点(2)イ(被告の追認)及びウ(表見代理)について判断するまでもなく,原告の請求は,理由があるからこれを認容することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第35部
(裁判官 岩﨑慎)
〈以下省略〉
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