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判例リスト「完全成功報酬|完全成果報酬 営業代行会社」(207)平成24年 4月24日 東京地裁 平22(ワ)808号 損害賠償請求事件

判例リスト「完全成功報酬|完全成果報酬 営業代行会社」(207)平成24年 4月24日 東京地裁 平22(ワ)808号 損害賠償請求事件

裁判年月日  平成24年 4月24日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平22(ワ)808号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  一部認容、一部棄却  文献番号  2012WLJPCA04246005

要旨
【先物取引被害全国研究会(要旨)】
◆1.原告は、昭和一桁生まれで、長年専業主婦をしており、収入は、年金及び家賃収入である。投資信託及び株取引の経験はあるものの、投資に関する知識は乏しい。
◆2.本件は、投機性が高く、不適正な金融商品であること等が認定された。また被告らが一体となって、原告から出資金を詐取したことを認め、共同不法行為責任を肯定した。
さらに、一部の被告については、会社法429条1項の第三者責任も肯定されている。

出典
先物取引裁判例集 65号338頁

裁判年月日  平成24年 4月24日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平22(ワ)808号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  一部認容、一部棄却  文献番号  2012WLJPCA04246005

東京都〈以下省略〉
原告 X
同訴訟代理人弁護士 荒井哲朗
同 太田賢志
同訴訟復代理人弁護士 佐藤顕子
同 五反章裕
同 浅井淳子
東京都江戸川区〈以下省略〉
被告 東京プリンシパル・セキュリティーズ・ホールディング株式会社
(以下「被告東京プリンシパル」という。)

同代表者代表取締役 Y1
東京都〈以下省略〉
被告 OCS Rainbow Corp.こと OCS Rainbow Corp. chairman
Aこと Y1(以下「被告Y1」という。)

東京都〈以下省略〉
被告 Y2(以下「被告Y2」という。)
上記3名訴訟代理人弁護士 武中洋司
神奈川県〈以下省略〉
(送達場所) 山形市〈以下省略〉
被告 Y3(以下「被告Y3」という。)
東京都港区〈以下省略〉
被告 New Asia Asset Management株式会社
(以下「被告ニューアジア」という。)

同代表者代表取締役 Y4
東京都〈以下省略〉
被告 Y4(以下「被告Y4」という。)
東京都港区〈以下省略〉
被告 Mongol Asset Management合同会社
(以下「被告モンゴル」という。)

同代表者代表社員 Y5
東京都〈以下省略〉
被告 Y5(以下「被告Y5」という。)
上記4名訴訟代理人弁護士 河津良亮

 

 

主文

1  被告東京プリンシパル,被告Y1及び被告Y2は,原告に対し,連帯して,2496万2560円(ただし,2159万9560円の限度で被告Y3と,336万3000円の限度で被告ニューアジア,被告Y4,被告モンゴル及び被告Y5と連帯して)及びこれに対する平成22年1月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  被告Y3は,原告に対し,被告東京プリンシパル,被告Y1及び被告Y2と連帯して,2159万9560円及びこれに対する同月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3  被告ニューアジア,被告Y4,被告モンゴル及び被告Y5は,原告に対し,被告東京プリンシパル,被告Y1及び被告Y2と連帯して,336万3000円及びこれに対する被告Y4については同月17日から,被告ニューアジアについては同月19日から,被告モンゴルについては同月20日から,被告Y5については同年2月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4  原告の被告Y3に対するその余の請求を棄却する。
5  訴訟費用は,原告に生じた費用の80分の1及び被告Y3に生じた費用の10分の1を原告の負担とし,原告に生じた費用の80分の9及び被告Y3に生じたその余の費用を同被告の負担とし,原告に生じたその余の費用及びその余の被告らに生じた全ての費用を同被告らの負担とする。
6  この判決は,第1項ないし3項に限り,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求の趣旨
1  被告東京プリンシパル,被告Y1,被告Y2及び被告Y3は,原告に対し,連帯して,2496万2560円(ただし,336万3000円の限度で被告ニューアジア,被告Y4,被告モンゴル及び被告Y5と連帯して)並びにこれに対する被告Y3については平成22年1月17日から,被告東京プリンシパル,被告Y1及び被告Y2については同月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  被告ニューアジア,被告Y4,被告モンゴル及び被告Y5は,原告に対し,被告東京プリンシパル,被告Y1,被告Y2及び被告Y3と連帯して,336万3000円及びこれに対する被告Y4については同月17日から,被告ニューアジアについては同月19日から,被告モンゴルについては同月20日から,被告Y5については同年2月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
1  本件は,原告が,
(1)  OCM Oceans Corp.(以下「OCM」という。)を営業者とするオーシャンズ・オフショア・ファンド4(以下「オーシャンズファンド」という。)及びOCS Rainbow Corp.(以下「OCS」という。)を営業者とするキプロス・オフショア・ファンド(以下「キプロスファンド」という。)に係る取引について,被告東京プリンシパル,被告Y1,被告Y2(以下,これら3名の被告を併せて「被告東京プリンシパルら」という。)及び被告Y3が,一体となって組織的に,原告に対し,金融商品取引まがいの詐欺的取引の勧誘,又は適合性原則若しくは説明義務に反する勧誘をしたことにより,原告が出資金を交付して損害を被ったなどと主張して,同被告らに対し,民法709条,719条1項等に基づき,上記各ファンドに係る交付金相当額1963万9560円に,弁護士費用196万円を加えた2159万9560円の損害賠償を(前記「請求の趣旨」1の一部),
(2)  被告モンゴルを営業者とするモンゴル資源開発ファンド(以下「モンゴルファンド」という。)に係る取引について,被告ニューアジアが被告東京プリンシパルに対して販売を委託するなどして,被告らが,一体となって組織的に,原告に対し,出資者に適切に損益を帰属させるに足りる実質を欠いた詐欺的取引の勧誘,又は適合性原則若しくは説明義務に反する勧誘をしたことにより,原告が出資金を交付して損害を被ったなどと主張して,被告らに対し,民法709条,719条1項等に基づき,同ファンドに係る交付金相当額306万3000円に,弁護士費用30万円を加えた336万3000円の損害賠償を(前記「請求の趣旨」1の一部,2)
求めている事案である。
2  争いのない事実等(証拠を掲記した事実以外の事実は争いがない。)
(1)ア  原告は,昭和4年○月生まれの女性であり,長年専業主婦として暮らし,現在は年金及び家賃収入で暮らす者である。原告は,投資信託や現物株に係る取引の経験はあるが,投資に関する知識は乏しかった(甲46,原告本人)。
イ  被告東京プリンシパルは,匿名組合契約を利用したファンドの勧誘(有価証券の私募の取扱い)を業として行うと称する株式会社である。同社は,平成13年7月23日,「オービット・トレーディング・マネージメント株式会社」との商号で設立され,平成14年12月10日,商号を「オービット・キャピタル・マネジメント株式会社」に変更し,平成18年3月15日,「東京プリンシパル証券株式会社」に,平成19年1月13日,現在の商号に変更した。
ウ  被告Y2は,平成14年5月9日から同年12月10日まで及び平成18年5月22日から平成20年5月27同まで被告東京プリンシパルの代表取締役であった者である。
エ  被告Y1は,平成15年6月28日から被告東京プリンシパルの取締役,平成21年5月7日からは代表取締役を務めており,国内金融機関に「OCS Rainbow Corp. Chairman A」名義で口座を開設している者である。
オ  被告Y3は,原告に対し,オーシャンズファンド及びキプロスファンドへの出資の勧誘を直接行った者であり,被告東京プリンシパルの従業員であった。
カ  B(以下「B」という。)は,原告に対し,モンゴルファンドへの出資の勧誘を直接行った者であり,被告東京プリンシパルの従業員であった。
キ  被告ニューアジアは,モンゴルファンドの私募の取扱業者である株式会社であり,被告Y4は,平成20年7月1日から被告ニューアジアの代表取締役を務めている者である。
ク  被告モンゴルは,資本金10万円の合同会社で,匿名組合であるモンゴルファンドの営業者であり,被告Y5は,被告モンゴルの業務執行社員である。
(2)  原告は,被告Y3からオーシャンズファンドへの出資の勧誘を受け,平成17年7月1日,3万ドルを出資し,契約手続等報酬として6000ドルを支払う旨の「出資申込書」に署名押印し,同日,被告Y3に対して,上記合計5万6000ドルを円換算した計402万6240円を支払った。また,原告は,同月25日にも,4万ドルを出資し,契約手続等報酬として8000ドルを支払う旨の「出資申込書」に署名押印し,同月28日,被告Y3に対して,上記合計4万8000ドルを円換算した計544万5120円を支払った(甲17,18)。
(3)  原告は,被告Y3からキプロスファンドへの出資の勧誘を受け,平成20年2月19日,5万ドルを出資し,契約手続等報酬として1万ドルを支払う旨の「出資申込書」に署名押印し,同日,被告Y3に対して,上記合計6万ドルを円換算した計655万3800円を支払った。また,原告は,同年3月28日にも,3万ドルを出資し,契約手続等報酬として6000ドルを支払う旨の「出資申込書(追加)」に署名押印し,同日,被告Y3に対して,上記合計5万6000ドルを円換算した計361万4400円を支払った(甲19,20)。
(4)  原告は,Bからモンゴルファンドへの出資の勧誘を受け,平成20年12月17日,300万円を出資し,契約事務手数料として6万3000円を支払う旨の「モンゴル・ファンド出資申込書」に署名押印し,同月29日,被告Bが指定した口座に上記合計306万3000円を振り込んだ(甲21,23)。
3  争点
(1)  被告Y3によるオーシャンズファンド及びキプロスファンドへの出資の勧誘につき,被告東京プリンシパルら及び被告Y3が責任を負うか否か。
(2)  Bによるモンゴルファンドへの出資の勧誘につき,被告らが責任を負うか否か。
4  当事者の主張
(1)  争点(1)について
(原告の主張)
ア オーシャンズファンド及びキプロスファンドが金融商品まがい取引であること
オーシャンズファンド及びキプロスファンドは,出資者に対して出資金がどのように運用されているか報告がされず,出資金を勝手に別のファンドに振り替えるなどされており,証券取引等監視委員会によって,出資金の管理が適切に行われていないこと及びファンド間における資金の混同が行われていることが明らかにされた。そして,法律上必要な登録なくして勧誘行為が行われ,高齢者を集中的に勧誘の対象とし,「税金対策である」と告げるなど常軌を逸する(少なくとも適切な説明義務の履行が伴わない)勧誘が常態化していたことなどにも鑑みると,上記各ファンドは,「金融商品まがい取引」とでも呼ぶべき反社会的なものである。
そうでないとしても,その適法性には強い疑問があり,投資経験が乏しく判断能力の衰えた高齢者の原告に対して,何らリスクを説明せずに,上記各ファンドへの出資を勧誘して出資金等を支出させた行為は,詐欺にほかならない。
したがって,このような金融商品まがい取引を組織的に勧誘していた被告東京プリンシパルら及び被告Y3は,共同不法行為責任(民法719条1項,709条)を負う。
イ 被告Y3の説明義務違反等
上記アの詐欺の点を置くとしても,被告Y3によるオーシャンズファンド及びキプロスファンドへの出資の勧誘は,次のとおり,適合性原則及び説明義務に違反しており,これは被告東京プリンシパルの営業方針に基づく組織的なものであるから,被告東京プリンシパルら及び被告Y3は,共同不法行為責任(民法719条1項,709条)を負う。
(ア) 適合性原則違反
上記各ファンドは仕組み及びリスクが著しく不明確であり,正常な金融商品とはいえないものであって,およそ一般投資家に販売する適格を有しないものである。そして,原告は,投資経験はあるものの知識の乏しい高齢者であり,老後資金を出資したのであるから,原告に対する上記各ファンドへの出資の勧誘は適合性原則に違反する。
(イ) 説明義務違反
匿名組合契約を利用した上記各ファンドは,その仕組みが理解困難であることに加え,匿名組合契約特有の営業者リスクや,外国債券特有の為替リスク,情報リスクがあり,しかも利益の有無にかかわらず出資金の20%あるいは15%が報酬として設定されているなどの商品特性があるから,上記各ファンドへの出資を勧誘するに当たっては少なくともこれらの内容を顧客の理解能力に応じて説明しなければならない。しかし,被告Y3は,上記各ファンドの仕組み及びリスクについて,原告に対し何らの説明をしていなかったのであるから,被告Y3による勧誘は説明義務に違反する。
ウ 共同不法行為責任以外の責任
(ア) 被告東京プリンシパルについて
被告Y3による勧誘は,使用者である被告東京プリンシパルの指揮監督下で行われたものであるから,被告東京プリンシパルは被告Y3の使用者として使用者責任(民法715条1項)を負う。
(イ) 被告Y2について
被告Y2は,被告東京プリンシパルの代表取締役として同社の業務執行を適正にするべき義務を著しく懈怠しているものというべきであり,この点に故意又は重過失があることは明らかであるから,会社法429条1項に基づく損害賠償責任を負う。
(ウ) 被告Y1について
被告Y1は,被告東京プリンシパルの取締役として,同社の代表取締役の業務執行一般及び法令遵守態勢構築義務についての監視監督義務を負うところ,同社は組織的な違法勧誘行為を継続しているのであるから,被告Y1の監視監督義務違反には少なくとも重過失があるというべきであり,被告Y1も会社法429条1項に基づく損害賠償責任を負う。
エ 原告の損害
オーシャンズファンド及びキプロスファンドに関して原告が被った損害は,オーシャンズファンドに係る交付金相当額947万1360円及びキプロスファンドに係る交付金相当額1016万8200円に,弁護士費用196万円を加えた2159万9560円である。
(被告Y3の主張)
被告Y3は,被告東京プリンシパルに在籍した当時に違法な勧誘を行ったことはない。また,一従業員にすぎない被告Y3が,当時扱っていたオーシャンズファンド及びキプロスファンドの違法性を認識することはできなかった。
(被告東京プリンシパルらの主張)
ア オーシャンズファンドについて
(ア) オーシャンズファンドについては契約内容に沿った運用実体があり,原告の主張するような詐欺まがいの商品ではない。そのため,被告東京プリンシパルらが,オーシャンズファンドに運用の実体がないことを理由として責任を負うことはない。
(イ) 被告Y3は,被告東京プリンシパルに在籍中,顧客から苦情が出たりしたことはなく,誠実な対応を行う営業社員として職務に従事していた。被告東京プリンシパルとしても,顧客の勧誘に当たっては,その契約内容,取引の仕組み,リスク,価格変動要因等を十分に説明し,十分に理解,納得を得た上で契約を締結するよう各営業担当者に恒常的に注意を促し,教育を行ってきた。
被告Y3は,原告の了解を得ることなく,その自宅に押しかけたことはないし,高齢者で取引内容が理解できないことに乗じて契約を締結させたこともなく,オーシャンズファンドの契約内容,取引の仕組み,リスク,価格変動要因等を十分に説明している。
イ キプロスファンドについて
(ア) 被告東京プリンシパルが被告Y3を使用していたのは,平成19年9月頃までであり,同年10月以降,被告東京プリンシパルは営業を行っていなかった。そのため,原告が,平成20年2月19日及び同年3月28日に被告Y3の勧誘により申し込んだキプロスファンドにつき,被告東京プリンシパルらが,関与していないことは明らかであり,何らの責任を負うものではない。
(イ) キプロスファンドは,被告Y3が新たにファンド販売をするために自ら命名したものである。ファンド販売は,被告Y3とOCSによって行われていたものであり,そこには被告東京プリンシパルの関与も被告Y2の指示も存在しない。
(ウ) 被告Y2は,OCSの実質的支配者ではなく,ファンドの業務には一切関わっていない。
(2)  争点(2)について
(原告の主張)
ア モンゴルファンドが詐欺的な商品であること
モンゴルファンドは,配当原資であるリース料の支払がその第1回から不履行であるにもかかわらず,リースの実施を重ね,出資募集を継続し,出資者に対してはリース料の支払が予定どおりあるように装って出資金から配当した。また,同ファンドの出資募集額,募集期間の決定にあたっては,事業計画,資金需要,利率,収益性等,通常リースを実施する際に慎重に検討されるべき事項は何ら検討されておらず,予定配当率を明示して募集を開始した後に出資額の25%もの報酬を業務委託先である被告東京プリンシパルに対して支払うことが秘密裏に決定されるなどファンドの組成がおよそ正常な金融商品としては考え難いほど杜撰であり,その販売は,無登録業者である被告東京プリンシパルに被告ニューアジアを名乗らせるという法を潜脱する方法により行われていた。
これらの事情に鑑みれば,同ファンドは,出資金名下に資金を集め,一部は詐欺的商法であることを隠匿するための蛸足配当に,残りは報酬やリース代金等の名目で関係者が分配することを企図した詐欺的な商品というべきであり,少なくとも投資家に適切に損益を帰属させるに足りる実質を備えた金融商品ではないことは明らかであるから,このような商品を共同して販売した被告らは,詐欺を行ったものにほかならず,共同不法行為責任(民法719条1項,709条)を免れない。
イ Bの説明義務違反等
上記アの点を置くとしても,Bは,被告Y3と同様,被告東京プリンシパルの指揮監督下において,適合性原則違反,説明義務違反等の違法行為を行っていたところ,これは被告東京プリンシパルの営業方針に基づく組織的なものであり,また,被告ニューアジアは,無登録業者である被告東京プリンシパル及びその従業員であるBにモンゴルファンドの販売勧誘を行わせたものであるから,被告東京プリンシパルら,被告Y3,被告ニューアジア及び被告Y4は,共同不法行為責任(民法719条1項,709条)を負う。
ウ 共同不法行為責任以外の責任
(ア) 被告東京プリンシパルらについて
上記(1)(原告の主張)ウ(ア)ないし(ウ)と同様に,被告東京プリンシパルは使用者責任(民法715条1項)を,被告Y2及び被告Y1は会社法429条1項の責任を負う。
(イ) 被告ニューアジアについて
被告ニューアジアは,被告東京プリンシパル従業員に自社の名前で勧誘行為を行わせていたのであり,これは外形上「ある事業のために他人を使用」するものであるから,被告東京プリンシパル従業員の違法勧誘行為につき使用者責任(民法715条1項)を負う。
(ウ) 被告Y4について
被告Y4は,株式会社である被告ニューアジアの代表取締役として,同社の業務全般につき法令遵守態勢構築義務があるところ,上記アのとおり,同社は被告東京プリンシパルと共同して詐欺的商法を行ったものであるから,会社法429条1項に基づく損害賠償責任を負う。
(エ) 被告Y5について
被告Y5は,被告モンゴルの業務執行社員として,同社の業務全般につき適法に業務が執行されるよう監視監督するべき義務を負うところ,上記アのとおり,同社は被告ニューアジア及び被告東京プリンシパルと共同して詐欺的商法を行ったものであるから,会社法597条に基づいて損害賠償責任を負う。
エ 原告の損害
モンゴルファンドに関して原告が被った損害は,同ファンドに係る交付金相当額306万3000円に,弁護士費用30万円を加えた336万3000円である。
(被告東京プリンシパルらの主張)
ア 被告東京プリンシパルがBを使用していたのは,平成17年12月頃までであり,平成19年10月以降,被告東京プリンシパルは営業を行っていなかった。そのため,原告が平成20年12月17日にBの勧誘により申し込んだモンゴルファンドにつき,被告東京プリンシパルらが関与していないことは明らかであり,何らの責任を負うものではない。
イ 被告東京プリンシパル自身は,平成19年10月以降営業を停止しており,新規のファンド販売等の営業行為を行い得ない状況であった。しかし,モンゴルファンドについては,株式会社日本中央会計の代表であるC(以下「C」という。)から,直接のファンド販売者である被告ニューアジアより同ファンドの販売を請け負う形であれば可能であると助言されたことなどから,便宜上,被告東京プリンシパルを経由して株式会社日本ランドマーク(以下「日本ランドマーク社」という。)に業務委託を行う形としたものである。そして,被告東京プリンシパルを退社後のBは,日本ランドマーク社の従業員であって,給与も日本ランドマーク社から支払われており,同ファンドの販売において被告東京プリンシパルの名前は一切表に出ることはなく,業務上の処理を一切行っていないのであるから,被告東京プリンシパルは同ファンドの販売に関わってはいない。
(被告ニューアジア,被告Y4,被告モンゴル及び被告Y5〔以下「被告ニューアジアら」という。〕の主張)
ア 被告ニューアジアが取り扱っていたモンゴルファンドは,被告モンゴルが,モンゴルの鉱山で金を発掘,管理する合同会社に対して,金を発掘するための重機を貸し出し,被告ニューアジアは,同ファンドの販売,管理を行うものであって,同ファンドは実体のあるものであり,決して「投資まがい商品」ではない。
イ 被告ニューアジアは,出資者を募るため,被告東京プリンシパルと業務委託契約を締結したが,これはファンドの仕組み等について助言を受けていた日本中央税理士法人から被告東京プリンシパルを紹介されたからである。その際,被告ニューアジアらは,被告東京プリンシパルに業務委託することの問題や,被告東京プリンシパルの従業員であるBがどのような人物であるかを全く知らなかった。また,Bは被告ニューアジアの従業員ではないため,被告ニューアジアは,Bを指導・監督できる地位にはなく,Bが強引な勧誘方法をすることも,リスクを説明しないことも知らなかったし,知り得なかった。
したがって,被告ニューアジアらは,被告東京プリンシパル及びその従業員らとは何ら共謀もなく,共同不法行為が成立する余地はない。
第3  当裁判所の判断
1  争点(1)について
(1)  被告東京プリンシパルら及び被告Y3の関係について,前記第2,2「争いのない事実等」に加え,証拠(甲1,3,5,6,8,11ないし14,16ないし20,28ないし39,42,45,51,52,54ないし58,60,63,乙A2,4ないし7,被告Y2本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
ア 被告Y2は,かつて,金のいわゆるペーパー商法(現物を販売すると見せかけて売買契約を締結し,代金を受領しても現物は渡さず預かり証券のみを交付する商法)で社会問題に発展した豊田商事株式会社に銀座営業部支店長として勤務した後,昭和59年10月,海外における金融先物取引の仲介を目的とする株式会社飛鳥を設立してその社長となったが,昭和61年11月26日,海外先物取引を装って顧客から委託保証金名目で金員を詐取したとして逮捕され(被告Y2は,顧客から取引の仲介の委託を受け,委託保証金を預かりながら,取引注文を海外に取り次がず,受領した金員を海外に送金せずに自分たちの給料など会社経費に使用するなどしていた。),平成2年12月5日,東京地方裁判所で懲役7年の実刑判決を受けて服役した経歴を有している。
イ 被告東京プリンシパルは,OCM及びOCS(以下「OCMら」という。)を営業者とする匿名組合を利用したファンドの販売等を行っていた会社で,被告Y2が設立時以来株式の大半を保有していたところ,被告Y3が営業担当として入社した当時(平成13年ないし14年頃)から,被告東京プリンシパルを実質的に支配していたのは被告Y2であり,被告Y2は,ファンドの募集について実績を上げるよう,従業員に対して暴言,暴力等を用いて,厳しく指導をすることもあった。
ウ キプロスファンドの営業者であるOCSと,オーシャンズファンドの営業者であるOCMは,それぞれが使用する概要説明書等の書面の文面がほぼ同一で,いずれも被告東京プリンシパルの役員又は元役員が代表者となり,会社設立地であるケイマン諸島における所在地が全く同一であるなど,実質的に同一といえる会社であった。そして,OCSは,被告Y2の指示により,平成17年7月頃,被告東京プリンシパルの取締役であった被告Y1を代表者として設立された会社であるが,被告東京プリンシパルとも事務所が一体で,同社の一部門という位置付けにすぎず,被告Y2がファンドの運用先を決定するなど,被告Y2の実質的な支配の下に業務を行っており,一時期OCSの代表者を務めていた被告Y1は,被告Y2の指示を受けて,ファンドの組成,運用を行っていた。
エ 関東財務局は,平成19年1月12日,被告東京プリンシパルに対して,同社が法定の公告等を行わないまま証券業廃止の届出を行ったことは,投資者が不測の損害を被ることがないよう定められた法律の規定に違反し,また,同社の役員は法令遵守に係る基本的知識を欠いているなどとして,証券取引法に基づく業務改善命令を出すなどし,さらに,証券取引等監視委員会より,次の(ア)及び(イ)のとおり,法令違反行為等が認められるとして,行政処分を求める勧告等が行われたことから,同年5月9日,同年1月12日付け業務改善命令を当分の間継続することとした。
(ア) 同委員会は,同月11日,当時被告東京プリンシパルの代表取締役であった被告Y2に対して,証券取引法等に基づく検査を実施する旨告知したものの,被告Y2が「今日は協力できない」などとして検査を拒み続けたため,検査に着手することができず,さらに,同日,被告東京プリンシパルは,「臨時株主総会を開催し,議決したものである」として,関東財務局長に対し,法定の公告等を行わないまま,「証券業の廃止届出書」を発送した。その後,同月12日,15日にも検査官が被告東京プリンシパルを訪ねたが,いずれも検査を実施することはできず,同月16日,被告Y2から「協力する」旨の発言があったため,ようやく検査に着手することができた(ただし,被告東京プリンシパル監査役は,同月13日,同社備付けのシュレッダーで,証券業に関連する書類を裁断している。)。
(イ) また,同委員会は,同月16日,匿名組合に係る出資金の50パーセント以上を外国法人の発行する株式等へ出資するファンドに関して,同ファンドがみなし有価証券に該当するか否かを検証したところ,同ファンドへ出資を行う旨の顧客の意思が表示された書面等がほとんど存在しないなど,当該書面等の管理が不適当であることや,ファンド間における金銭の混同が行われていたことから,そもそも同ファンドの出資金総額を把握することが困難である状況が認められたなどとして,被告東京プリンシパルにつき,顧客との取引に係る重要な書類や,顧客の出資金について適切な管理を行っておらず,投資者保護上重大な問題があるなどと判断した。
オ その後,被告東京プリンシパルは,同年9月頃,金融商品取引法が施行され,匿名組合の持分権がみなし有価証券に該当することとなり,金融商品取引業者として登録を受けなければ,自らの取り扱っているファンドの募集,販売ができなくなったことから,その業務を廃止することとした。
カ 被告Y3は,被告東京プリンシパルが業務を廃止することから,同月末日,被告東京プリンシパルを退職し,同年10月から平成20年3月までは,OCSと個人で契約してその契約社員として,また,株式会社ピースステイブル(以下「ピースステイブル」という。)を設立して金融商品取引法上の第二種金融商品取引業者としての登録を完了した同年4月頃以降は,同社の代表者の立場で,同社の業務として,キプロスファンド等の販売等を行った。
キ 被告Y3に対してキプロスファンドの販売を指示したのは被告Y2であり,被告Y3は,同ファンドの販売によって得た出資金の全額を一旦OCSへ送金した後,その5%に相当する金額を販売手数料として,被告Y2から手渡しで受け取っていた。また,被告Y3は,被告Y2から,度々電話で同ファンドに係る販売実績を上げてもらいたいとの指示を受けるなど,被告東京プリンシパルに在籍していた当時と変わらず,販売実績を上げるように圧力を受けており,被告東京プリンシパルの既存契約者に対して,同ファンドへの出資を勧誘して,追加出資を得ることの了承も得ていた。
ク 被告Y1は,平成15年6月28日から被告東京プリンシパルの取締役,平成21年5月7日からは同社の代表取締役として,被告Y2と共に同社の経営に当たっており,ピースステイブルの設立に際しては,被告Y2と共に被告Y3に対する助言を行い,被告Y3がキプロスファンドへの出資の勧誘を行うについて,出資の契約に必要な概要説明書等の書面を交付し,OCSの事務処理担当者として被告Y3と連絡を取り合うこともあった。
(2)  次に,オーシャンズファンド及びキプロスファンドに係る原告に対する勧誘態様及び商品内容等について,前記第2,2「争いのない事実等」に加え,証拠(甲12,18,20,46,56,58,63,乙A2,4,6,原告本人,被告Y2本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
ア(ア) オーシャンズファンドについて
被告Y3は,平成17年7月1日,原告宅を突然訪問し,原告に対し,「税金対策を見てあげるから,通帳を見せて欲しい」などと言ったため,原告が預金通帳を見せると,被告Y3は,「これではだめだ」などと言って,その仕組みやリスク等を説明することなく,「税金対策にいい」として,オーシャンズファンドへの出資を勧めた。原告は,被告Y3を信用して,同ファンドに出資することとし,被告Y3と共に,芝信用金庫a支店へ行き,定期預金を解約して,出資金及び契約手続等報酬として402万6240円を被告Y3に交付した。
被告Y3は,同月28日にも,原告宅を訪れ,原告に対し,「もうちょっとやりませんか」などと言って,再び,同ファンドへの出資を勧誘したことから,原告は,これに応じることとし,被告Y3と共に,郵便局へ行き,544万5120円を引き出し,これを出資金等として被告Y3に交付した。
(イ) キプロスファンドについて
被告Y3は,平成20年2月19日,原告宅を訪れ,原告に対し,「またファンドに入りませんか。これも税金対策にいいですよ」などと言って,キプロスファンドへの出資を勧誘した。被告Y3を信頼していた原告は,同ファンドへ出資することとし,被告Y3と共に,銀行へ行き,655万3800円を引き出し,これを出資金等として被告Y3に交付した。
また,同年3月28日にも,被告Y3が,原告宅を訪れ,同ファンドへの出資を勧誘してきたことから,原告は,これに応じることとし,被告Y3に対し,出資金等として361万4400円を交付した。
イ オーシャンズファンド及びキプロスファンドは,次のとおり,匿名組合契約を利用した投資案件として構成されている。
(ア)a オーシャンズファンドは,出資者が匿名組合の組合員となり,同匿名組合の営業者であるOCMが出資金のほぼ全額を米国のサリス・アドバイザーズ社に委託して,同社の「リンクス・マルチ・ストラテジー・ファンド2」へ投資することによって積極的な運用を行い,利益が発生すれば匿名組合員である出資者に年2回分配することなどを内容とする。
b キプロスファンドは,出資者が匿名組合の組合員となり,同匿名組合の営業者であるOCSが,出資金の50パーセント以上をスイスのフェイザル・プライベート・バンクに委託して,フランスのソシエテ・オプション・ヨーロッパが発行する外国債券に投資することによって運用を行い(4つのファンドを選別し,それぞれに出資金の約25パーセントを配分して運用する。),利益が発生すれば匿名組合員である出資者に年2回分配することなどを内容とする。
(イ) オーシャンズファンド及びキプロスファンドの契約手続や管理サービス報酬は出資金の20パーセントとされ,出資者は,出資申込みの際に,オーシャンズファンドについてはOCMに,キプロスファンドについてはOCSに対し,同金員を出資金と共に支払う。
(ウ) オーシャンズファンド及びキプロスファンドにおいて,外国債券に投資するなど出資金の運用を実際に行うのはOCMらではなく,OCMらが運用を委託するサリス・アドバイザーズ社ないしフェイザル・プライベート・バンクである。
ウ オーシャンズファンド及びキプロスファンドに係る匿名組合契約には,次のような,営業者の義務が定められているが,実際には,営業者であるOCMらが正確な会計帳簿等を作成したり,出資者に対し,運用資産について,その総額,保有債券の内容及び運用状況等に関する報告を行うなどした形跡はない。
(ア) 営業者は,上記各ファンドの事業の執行に関するあらゆる取引について明瞭かつ正確な会計帳簿その他会計に関する記録を作成し,保管するものとする。
(イ) 営業者は,会計期間について,当該会計年度の事業損益を確定し,出資者に対し書面によりその報告を行わなければならない。営業者は,当該会計年度終了後約3か月ほどで出資者に対して書面により運用報告を行う。
エ 被告東京プリンシパルが販売していたOCMらを営業者とするファンドは,新たなファンドを売り出す度に運用先が変更されており(その結果,複数のファンドに係る出資金が同じ運用先によって運用されることもある。),実際に,オーシャンズファンドについては,当初の概要説明書によると,「運用の方針」として「リンクス・マルチ・ストラテジー・ファンド2」へ投資することとされていたにもかかわらず,その後,被告東京プリンシパルらにより,投資対象が「SC ロング/ショート エクイティー ファンド」などへと次々に変更されている。なお,OCMらを営業者とするファンドに係る匿名組合契約においては,出資金の運用先が適宜変更される可能性がある旨が定められている。
(3)  以上の認定に対し,被告Y2及び被告Y1は,被告Y2がOCSを実質的に支配していたことはなく,キプロスファンドの販売には関与していないなどの陳述(甲55,56,乙A5,7)及び供述をする。しかし,被告Y3が郵便局員を装って高齢者から詐取までした金員をキプロスファンドへの出資があったかのように装ってOCSに入金するなど,OCSのファンドの運用資産を増やすために自ら違法な行動までしていること(甲29ないし42,49,50)などを考慮すると,「OCSは被告Y2のものであり,被告Y3は,被告東京プリンシパルを退社した後も,被告Y2からキプロスファンド等の販売実績を上げるように圧力を受けていた」旨の被告Y3の供述(甲54)は信用できること,OCSと被告東京プリンシパルは事務所が一体であったこと(上記(1)ウ)などからすれば,被告Y2及び被告Y1の陳述及び供述のうち,上記(1)及び(2)の認定に反する部分は信用できない。
(4)  オーシャンズファンド及びキプロスファンドの金融商品としての性質について
上記(1)及び(2)の事実を前提に,まず,オーシャンズファンド及びキプロスファンドの金融商品としての性質について検討する(なお,下記(5)イのとおり,キプロスファンドについても,被告東京プリンシパルら及び被告Y3が一体となって販売を行っていたというべきであるから,ここでは両ファンドを特に区別せずに検討する。)。
ア 不明確で著しく大きなリスクを有する投機性の高い商品であること
(ア) 上記(2)イのとおり,オーシャンズファンド及びキプロスファンドの基本的な仕組みは,出資者から集めた出資金を,営業者であるOCMらが直接外国債券等に投資するのではなく,海外の運用管理会社に運用を委託し,同運用管理会社が外国債券等に投資するにすぎず,上記各ファンドに出資する者は,OCMらに対する契約手続等報酬に加え,上記各運営管理会社に対する手数料や報酬も負担することになるから,相応な運用益が期待できる外国債券等に投資されない限り利益を確保することは難しく,その反面,投資に伴うリスクも必然的に高くなる。
(イ) また,上記(2)エによれば,上記各ファンドに係る出資金の運用先は,新たなファンドが売り出される度に変更することが予定されていたといえるところ(オーシャンズファンドは,実際にその運用先が度々変更されていた。),一般的に,ファンドに出資しようとする者は,その出資金の運用先から,リスクが自己の投資意向と合致しているか等を判断して,出資の是非を決断するのであるから,出資金の運用先が一定でないオーシャンズファンド及びキプロスファンドは,その申込みの時点ではリスクが不明確で,出資者が適切にリスクを判断することができない(これ自体,リスクが著しく大きかったことを意味する。)商品であったと言わざるを得ない。
(ウ) したがって,上記各ファンドは,不明確でかつ著しく大きなリスクを出資者に負担させ,他方で,運用益を期待することが困難な,極めて投機性の高いファンドであったということができる。
イ 被告東京プリンシパルらに出資者の利益を保護する姿勢が欠けていること
(ア) 上記(1)エ及び(2)エからすれば,被告東京プリンシパル及びOCMらが関与するファンドに関しては,ファンドの資産が混然と管理され,ファンドごとの損益状況の把握が困難な状態に置かれていたことが推認される(被告東京プリンシパルが,自ら取り扱っていないはずのキプロスファンドについて,出資者からの返金に応じたこともこれを裏付ける〔甲56〕。)。また,OCMらは,オーシャンズファンド及びキプロスファンドに係る匿名組合契約上,営業者として善管注意義務を負っている(13条1項)ところ,上記各ファンドにおいては,出資金の運用先は適宜変更されることが予定されており,出資者の利益を適正に保護するために,運用状況等に関する報告をすることが重要であったにもかかわらず,上記(2)ウのとおり,OCMらは,運用状況等に関する報告を行わず,匿名組合契約で定められた営業者としての義務を履行しなかった。
(イ) さらに,上記(1)アないしウのとおり,これまで複数の投資詐欺に関与してきた被告Y2が,被告東京プリンシパル及びOCMらを実質的に支配していたことなどからすれば,上記(1)エのとおり,被告東京プリンシパルが,証券取引等監視委員会が検査を求めているにもかかわらず,証券業に関連する書類をシュレッダーで裁断するなどの暴挙に出たのは,ファンドの販売に関する不都合な証拠を隠滅するためであったと推認され,ひいては,被告東京プリンシパルらが,出資者の利益を犠牲にして自らの利を図るために,ファンドの販売,運用等を行っていたことがうかがわれる。
(ウ) 以上によれば,被告東京プリンシパルらは,出資者の利益を蔑ろにし,ファンドごとに損益状況を把握することも,運用状況等の報告を行うこともせず,さらに,ファンドに関する証拠の隠滅を図ろうとしていたのであるから,被告東京プリンシパルらは,そもそも,上記各ファンドの組成,運用において,出資金の運用によって生じた損益を出資者に適切に配分することは意図しておらず,出資者の利益を犠牲にして自らの利を図ることを目的としていたことが推認されるというべきである。
ウ 以上を総合すると,オーシャンズファンド及びキプロスファンドは,不明確で,かつ著しく大きなリスクを有する投機性の高いファンドであったというだけでなく,出資者から契約手続等報酬の名目で金員を徴収し,出資者の利益を犠牲にして被告東京プリンシパル関係者の利を図ることを意図して組成,運用されていた,出資者の利益を損なう不適正な金融商品であったと認めるのが相当である。
(5)  被告東京プリンシパルら及び被告Y3の責任について
ア オーシャンズファンドについて
上記(2)アのとおり,オーシャンズファンドを勧誘するにつき,被告Y3は,同ファンドが出資者の利益を損なう不適正な金融商品であるにもかかわらず,これを秘し,「税金対策にいい」などと言うだけで,その商品の特性を説明せず,原告に,同ファンドが原告の投資意向に沿った適正な金融商品であると誤信させ,出資金等を支出させたのであるから,このような被告Y3の行為は詐欺に該当する違法なものである。
そして,上記(1)アないしウ及び(2)のとおり,同ファンドは,被告Y2の指示の下,被告Y1により,出資者の利益を犠牲にして被告東京プリンシパル関係者の利を図るために組成,運用された不適正な金融商品であり,同ファンドの販売実績を上げるために,被告Y2は,被告Y3をはじめとする被告東京プリンシパルの従業員に対して,暴言,暴力等を用いて,厳しく指導していたのであるから,結局,原告に対する違法な勧誘は,被告Y2並びにその実質的支配下にある被告東京プリンシパル,被告Y1及び被告Y3が一体となって,被告東京プリンシパル関係者の利を図るために,原告から出資金を詐取したものと評価すべきであり,被告東京プリンシパルら及び被告Y3は,同ファンドの勧誘につき,共同不法行為責任(民法719条1項,709条)を負うというべきである。
イ キプロスファンドについて
上記(2)アのとおり,キプロスファンドについても,被告Y3は,同ファンドの内容を説明せず,原告に適正な金融商品であると誤信させ,出資金等を支出させたのであるから,被告Y3による勧誘は詐欺に該当する。
そして,上記(1)オないしクによれば,被告東京プリンシパルがファンドの募集,販売業務を廃止したはずの平成19年10月以降も,被告Y3は,被告東京プリンシパルの取締役である被告Y1から概要説明書等の書面の交付を受けて,被告Y2の指示により,被告東京プリンシパルの顧客らに対し,OCSが組成した同ファンドの販売を開始し,その後も,販売実績を上げるように被告Y2から圧力を受け,また,被告Y2及び被告Y1の助言を得て,同ファンドの販売を行うためのピースステイブルを設立したのであるから,原告に対する勧誘は,被告Y2並びにその実質的支配の下にある被告東京プリンシパル,被告Y1及び被告Y3が一体となって行っていたものと評価することができる。したがって,原告に対する同ファンドへの出資の勧誘についても,被告東京プリンシパルら及び被告Y3には,共同不法行為(民法719条1項,709条)が成立するというべきである。
(6)  被告東京プリンシパルら及び被告Y3の主張について
ア 被告東京プリンシパルらは,オーシャンズファンドには運用の実体があるから,その勧誘は詐欺まがいの行為ではないし,被告Y3を使用していたのは平成19年9月頃までであるから,被告東京プリンシパルらがオーシャンズファンド及びキプロスファンドにつき責任を負うことはないなどと主張する。
しかし,仮に,オーシャンズファンドに運用の実体があり,被告東京プリンシパルが被告Y3を使用していたのは平成19年9月頃までであったとしても,上記(5)のとおり,オーシャンズファンドについて,被告東京プリンシパルら及び被告Y3が,同ファンドが出資者の利益を損なう不適正な金融商品であることを秘して,原告から出資金等を詐取し,また,キプロスファンドについて,同被告らが一体となって,同ファンドの販売を行ったものというべきであるから,被告東京プリンシパルらの上記主張は採用できない。
イ また,被告Y3は,オーシャンズファンド及びキプロスファンドにつき,違法性を認識することはできなかったから,責任を負うことはないなどと主張する。
しかし,被告Y3は,自らファンドの勧誘を担当するものとして,上記各ファンドの内容を把握していたものと推認されるところ,そうすると,上記各ファンドのリスクが不明確で,著しく大きく,投機性が高いことも理解していたはずであり,それにもかかわらず,上記(2)アのとおり,上記各ファンドのリスク等を具体的に説明しなかったのであるから,被告Y3に共同不法行為責任を問えるだけの認識に欠けるところはなかったというべきである。したがって,被告Y3の上記主張は採用できない。
(7)  小括
以上によれば,被告東京プリンシパルら及び被告Y3は,原告に対して,不法行為責任に基づき,連帯して,オーシャンズファンド及びキプロスファンドに係る交付金相当額1963万9560円に,相当と認められる弁護士費用196万円を加えた2159万9560円の損害を賠償する義務を負う。
2  争点(2)について
(1)  モンゴルファンドに関して,前記第2,2「争いのない事実等」に加え,証拠(甲7,21,46,乙B1ないし7,原告本人,被告Y4本人,被告Y5本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
ア 被告Y4は,金の採掘資金を集めてファンドとして運用する事業を行うことを考え,Cに助言を求めたところ,Cから,被告ニューアジアがモンゴルファンドの販売及び管理を行い,別に設立する合同会社が同ファンドの営業をして,採掘業者に投資し,同採掘業者が重機のリース料を合同会社に支払うという形を取ることを示唆されたことから,知人であった被告Y5に依頼し,平成20年6月19日,被告Y5を代表役員とする被告モンゴルを設立した。なお,被告モンゴルの唯一の構成員である被告Y5は,被告ニューアジアの営業部長として,専ら被告ニューアジアから報酬を受け取っており,また,同ファンドの運用に係る経理を被告ニューアジアの従業員が行い,被告ニューアジアと被告モンゴルの事務所が同一のときもあるなど,両社は実質的に同一といえる会社であった。
イ モンゴルファンドの概要は,次のとおりである。
(ア) 同ファンドは,出資者が匿名組合の組合員となり,その営業者である被告モンゴルが,出資金をモンゴル国内での資源開発における車両・重機・採掘権等の権利全般の購入及びリース運用に供するほか,預金等の短期金融商品等に安全かつ適切と考えられる方法で運用を行う。
(イ) 年間の予定配当率は,出資金の多寡によって11.6%~18.6%とされており,奇数月ごとに2か月分の配当が行われる。ただし,配当金の支払を確約するものではない。
(ウ) 出資募集総額は10億円,募集期間は平成20年12月4日から募集総額に達するまでである(ただし,これは,被告Y4が,Cから「10億円ぐらいが1つ目のファンドとしてはいいですよ」などと言われたため,そのとおりに決定したものであり,上記重機等のリース先における資金需要や収益性等が検討された形跡はない。)。
ウ 被告Y4は,Cから,モンゴルファンドの販売を委託する会社として,被告東京プリンシパルの紹介を受け,被告Y2及びBと面会し(その際,Bは,被告Y4に対して,被告東京プリンシパルの名刺を渡している。),Cに勧められるまま,被告東京プリンシパルに対して,同ファンドの販売を委託することとした。被告東京プリンシパルに対する報酬については,実際に同ファンドの販売を開始してから,Cの意見を聞いた上で,出資金のうち25%に相当する金員を支払うことと決定された(実際に,出資者から集めた出資金約6億8000万円のうち,約1億円が被告東京プリンシパルへ報酬として支払われた。)。
エ Bは,平成20年12月頃,原告宅を訪れ,「被告ニューアジアで新しいファンドを立ち上げることになった」,「3年先になったら,出資金は全額返還されるし,年に6回配当も出る」,「今,銀行に預けていても利子はつかないので,もったいない」などと言って,モンゴルファンドへの出資を勧誘した。原告は,Bが強く迫ってきたため,同ファンドへ出資することとし,同月17日,Bが指定した口座に,出資金及び契約事務手数料として306万3000円を振り込んだ。
オ 第1回目の配当は,販売開始の約1か月後である平成21年1月に行うことが予定されていたが,実際に被告モンゴルに対して配当の原資となるべきリース料の支払が行われたのは同年7月になってからのことであり,同年1月ないし7月の配当は,重機等のリース運用等による収益ではなく,出資者からの出資金を原資として行われたものである(なお,出資金約6億8000万円のうち,約1億8000万円が出資者への配当や返金に充てられた。)。この点につき,被告Y4及び被告Y5は,Cから,「成功報酬の先取りという会計を行うので,決算のときまでにリース料が入ればいい」などと,上記のような蛸足配当でも特に問題はない旨助言を受けていた。
カ モンゴルファンドの販売を開始して3,4か月が経過した後,被告Y4は,2度にわたり,消費者生活センターから,「同ファンドを高齢者に販売してはならない」,「執拗な勧誘をしてはならない」旨の注意を受けることがあり,その度に,注意を受けた旨を被告Y2に伝えていた。これに対して,被告Y2は,「すぐに是正する」,「執拗な勧誘はやめさせる」などと返答をしていた。
キ 関東財務局は,同年9月11日,証券取引等監視委員会より,被告ニューアジアについて,次の法令違反行為等が認められたので,行政処分を求める旨の勧告を受けたため,同被告に対し,金融商品取引業の登録取消し及び業務改善命令の行政処分を行った。
(ア) 被告東京プリンシパルが金融商品取引業の登録を受けた者でないことを知りながら,ファンドの私募の取扱い業務を委託した。
(イ) 被告Y4は,同年7月28日,モンゴルファンドの収益金口座に入金されていた約3000万円を出金させ,これをグループ会社からの借入金の返済に充当した。
(ウ) 同年1月ないし7月における同ファンドの配当を行った時点において,リース料等の入金は一切なく,これらの配当は出資者の出資金を原資としていた。
(エ) ホームページ上において,上記(ウ)の配当金の支払について,「配当実績」と表示した上で「各出資額に応じた予定配当率で償還させていただきました。」と表示し,あたかも運用が順調に行われた結果,収益が発生し,予定どおり配当されたかのような表示を行った。
(オ) 出資者への説明資料に使用しているパンフレットにおいて,「ファンドの収益源となっているリース料は年間包括契約のため,採掘量などには左右されません。契約した時点でリース料は決まっているので配当の予測も可能です。実際,今年の1月と3月には予定通りの配当を行いました。」と表示されており,あたかも同ファンドに重機等のリース料として収益が発生し,当該収益が支払われたかのような虚偽の表示となっている。
(カ) 上記(ウ)の配当金の支払に際し,あたかもリース料収入に基づく配当を行っているかのように装うため,当該計算期間におけるリース料収入及びそこから控除する費用の計算を記載した「匿名組合損益計算書」にシミュレーションによって算出した虚偽の「リース料収入」の金額を記入し,各出資者に送付した。
(2)  モンゴルファンドの金融商品としての性質について
以上の事実を前提に,まず,モンゴルファンドの金融商品としての性質について検討すると,出資募集総額が10億円とされているものの,これはCから「10億円ぐらいが1つ目のファンドとしてはいいですよ」などと言われたことによるもので,特にリース先の資金需要や収益性等が検討されていたわけではないこと,同ファンドの販売開始後に出資金の25%もの金額(これもCの意見を受けて決定されたものにすぎない。)が被告東京プリンシパルへの販売委託の報酬として支払われることが決定されたこと,同ファンド販売開始からわずか1か月程度しか経過していない第1回目の配当から既に蛸足配当が行われていたこと,被告Y4及び被告Y5は,Cから,蛸足配当でも問題はない旨助言を受けていたこと,被告ニューアジアが出資者に対しては重機等のリース運用等によって生じた収益から配当を行っているように装っていたことなどからすれば,そもそも被告ニューアジアらは,出資金の相当部分を,重機等のリース運用等という本来の使途とは異なる,被告東京プリンシパルへの報酬や出資者への配当等に充てることを前提に,同ファンドの販売等を行っていたものと推認される。そうすると,同ファンドは,出資金をモンゴル国内での資源開発における重機等のリース運用等に供し,そのリース運用等により生じた収益を出資者への配当に充てるという基本的枠組みすら逸脱する形で販売等されていたというべきであるから,出資者に適切に損益を帰属させる前提を欠いた金融商品であったと認めるのが相当である。
(3)  被告東京プリンシパルら及び被告Y3の責任について
ア 上記(1)エのとおり,Bは,モンゴルファンドが出資者に適切な損益を帰属させる前提を欠いた金融商品であるにもかかわらず,これを秘し,「3年先になれば,出資金は全額返還される」,「銀行に預けていてももったいない」などと,モンゴルファンドのリスク等につき原告に誤解を与える説明を行い,強く迫って,原告をその旨誤信させて出資金を支出させたのであるから,このようなBの行為は詐欺に該当するというべきであるし,詐欺とまではいえないとしても(同ファンドが出資者に適切に損益を帰属させる前提を欠いた金融商品であることをBが知らなければ,詐欺とはいえない。),上記勧誘は説明義務に反する違法なものであるから,いずれにせよ,Bによる勧誘につき,不法行為が成立するというべきである。
イ そして,被告ニューアジアが販売委託契約を締結したのはあくまで被告東京プリンシパルであること,被告東京プリンシパルは,ファンドの募集,販売業務を廃止したはずの平成19年10月以降も,被告Y2による実質的支配の下,違法なファンドの勧誘に継続的に関与していたこと(上記1のとおり),被告Y4はCから被告東京プリンシパルを紹介される際,被告Y2及びBと面会し,Bからは被告東京プリンシパルの名刺を受け取っていること,その後,消費者生活センターから「モンゴルファンドを高齢者に販売してはならない」などの注意を受けたことにつき,被告Y4から苦情を申し入れられた被告Y2は,「すぐ是正する」などと返答していたことなどからすれば,原告に対するモンゴルファンドへの出資の勧誘を行ったBは,被告Y2の支配する被告東京プリンシパルの指揮監督の下にあったと推認されるから,原告に対する違法な勧誘は,被告Y2が,その実質的支配下にある被告東京プリンシパル及びBと一体となって行ったものというべきである。したがって,被告Y2及び被告東京プリンシパルは,Bと共に共同不法行為責任(民法719条1項,709条)を負う。
ウ 被告Y1については,モンゴルファンドへの関与が証拠上明らかでないので,共同不法行為が成立するとまでは認められないものの,上記1のとおり,被告Y1は,同ファンド以前にも被告Y2と一体となって違法なファンドの販売を行っていたことなどからすると,被告Y1は,被告東京プリンシパルの取締役として,被告Y2,被告東京プリンシパル及びBが一体となって行った原告に対する違法な勧誘を防止すべき監視監督義務を負っており,これを故意又は重過失により懈怠したものというべきであるから,会社法429条1項に基づく損害賠償責任を免れない。
エ 一方,原告は,被告Y3もモンゴルファンドにつき損害賠償責任を負う旨主張するが,被告Y3は,平成20年7月頃に逮捕されており(甲51),同ファンドへの関与を認めるに足りる証拠はないから,その責任を認めることはできない。
オ 被告東京プリンシパルらは,Bを使用していたのは平成17年12月頃までであって,平成20年12月当時,Bは日本ランドマーク社の従業員として勧誘を行っていたのであり,被告東京プリンシパルは,被告ニューアジアから受託したモンゴルファンドの販売を日本ランドマーク社に再委託したにすぎないから,被告東京プリンシパルらが責任を負うことはないなどと主張する。
しかし,被告ニューアジアが販売委託契約を締結したのはあくまで被告東京プリンシパルであることなど,上記イで述べたところによれば,Bは,被告Y2ひいては被告東京プリンシパルの指揮監督の下,同ファンドの勧誘を行っていたものと推認されるし,一時期,被告東京プリンシパルと日本ランドマーク社の本店所在地が同一であったこと(甲61)にも鑑みると,仮にBが日本ランドマーク社の従業員としての地位を有しており,被告東京プリンシパルが,被告ニューアジアから受託したモンゴルファンドの販売を,更に日本ランドマーク社に再委託していたとしても,それは被告東京プリンシパルが金融商品取引業者として無登録であることを潜脱するために便宜上採られた形式にすぎないというべきであるから,被告東京プリンシパルらの上記主張は採用できない。
(4)  被告ニューアジアらの責任について
上記(1)アのとおり,被告ニューアジア及び被告モンゴルは実質的に一体であったところ,被告ニューアジアらは,著しく杜撰な商品設計,運用計画等の下,被告東京プリンシパルに委託して,上記(2)のとおりの出資者に適切に損益を帰属させる前提を欠いた金融商品であるモンゴルファンドを,上記(1)イのとおりの適正な金融商品として販売させていたのであるから,被告ニューアジアらは,被告東京プリンシパル,被告Y2及びBと共同して,原告から出資金を詐取したものとして,共同不法行為責任(民法719条1項,709条)を負うというべきである。
(5)  小括
以上によれば,被告Y3を除くその余の被告らは,原告に対して,連帯して,モンゴルファンドに係る交付金相当額306万3000円に,相当と認められる弁護士費用30万円を加えた336万3000円の損害を賠償する義務を負う。
第4  結論
以上の検討によれば,原告の被告Y3に対する請求は主文第2項の限度で理由があり,その余の被告らに対する請求は全て理由があるから,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 石井浩 裁判官 久保田寛也 裁判官有賀直樹は,転補につき署名押印することができない。裁判長裁判官 石井浩)

 

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