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「業務委託 代理店 営業」に関する裁判例(10)平成30年 7月 2日 東京地裁 平28(ワ)8779号 業務委託料請求事件

「業務委託 代理店 営業」に関する裁判例(10)平成30年 7月 2日 東京地裁 平28(ワ)8779号 業務委託料請求事件

裁判年月日  平成30年 7月 2日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平28(ワ)8779号
事件名  業務委託料請求事件
文献番号  2018WLJPCA07028003

裁判年月日  平成30年 7月 2日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平28(ワ)8779号
事件名  業務委託料請求事件
文献番号  2018WLJPCA07028003

東京都渋谷区〈以下省略〉
原告 株式会社ファントム・フィルム
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 望月真
東京都渋谷区〈以下省略〉
被告 ぴあ株式会社(以下「被告ぴあ」という。)
同代表者代表取締役 B
同訴訟代理人弁護士 佐々木奏
東京都渋谷区〈以下省略〉
被告 株式会社ブラ・インターナショナル(以下「被告ブラ」という。)
同代表者代表取締役 C
同訴訟代理人弁護士 遠山友寛
同 宮澤昭介
同 吉野史紘
同訴訟復代理人弁護士 森安博行

 

 

主文

1  被告らは,原告に対し,連帯して,1億0041万9655円及びこれに対する平成27年10月1日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2  原告のその余の請求を棄却する。
3  訴訟費用は,これを10分し,その9を被告らの,その余を原告の各負担とする。
4  この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
被告らは,原告に対し,連帯して,1億1182万2068円及びこれに対する平成27年10月1日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え
第2  事案の概要等
1  事案の概要
本件は,原告が,被告ら又は被告らをその構成員に含む映画「○○」(以下「本件映画」という。)の製作に係る委員会(以下「本件製作委員会」という。)から本件映画の配給及び宣伝を内容とする配給宣伝業務委託契約(以下「本件配給等契約」という。)を受託し,その業務を行ったと主張して,被告らに対し,本件配給等契約に基づき,本件配給等契約で定められた手数料等のうち,配給業務の未精算の配給手数料382万2068円(消費税込み)及び宣伝業務の立替金ないし報酬であるPrint&Advertising費(以下「P&A費」という。)全額1億0800万円(消費税込み)の合計1億1182万2068円及びこれに対する弁済期の翌日である平成27年10月1日から支払済みまで商事法定利率である年6分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。被告らの同連帯支払の根拠として,原告は,被告らと原告との間の合意,表見代理による責任若しくは無権代理による責任又は民法上の組合である本件製作委員会のために被告ブラが本件配給等契約を締結したことによって商法511条1項に基づくものであると主張している。
2  前提事実(争いのない事実又は括弧内挙示の各証拠(特段の記載のないものは枝番を含む。以下同じ。)若しくは弁論の全趣旨により認められる事実)
(1)  当事者(争いのない事実)
ア 原告は,映画の配給並びに広告宣伝の企画及び制作等を目的とする株式会社である。
イ 被告ぴあは,映画等のチケットの販売,これらに関する情報の提供及び仲介並びに映画,ビデオ等の原盤企画,製作,販売及びレンタル等を目的とする株式会社である。
ウ 被告ブラは,映画演劇の企画及び制作販売等を目的とする株式会社である。
(2)  本件映画の企画
被告ブラ代表者は,「aプロジェクト」の第一弾と称して,本件映画の製作を企画し,平成26年初頭頃から,被告ぴあを含む複数の企業等に順次,本件映画の出資の打診をしていた(丙8,被告ブラ代表者)。
(3)  被告らの入金
TCエンタテインメント株式会社(以下「TCエンタ」という。)は,平成26年2月20日,315万円を,株式会社浅間製作所(以下「浅間製作所」という。)は,同年4月30日及び同年6月4日に各4320万円を,被告ぴあは,同年7月10日,2160万円から振込手数料を控除した2159万9568円を,株式会社第一興商(以下「第一興商」という。)は,同年12月25日,2160万円を,株式会社ソニー・ミュージックレーベルズ(以下「SML」といい,被告ら,浅間製作所,第一興商及びSMLの5社を総称して「本件5社」という。)は,平成27年3月末頃,1080万円をそれぞれ「(株)ブラ・インターナショナル aプロジェクト」名義の銀行口座(三菱東京UFJ銀行恵比寿支店。普通預金口座。口座番号〈省略〉。以下「本件口座」という。)に振り込む方法により支払った(甲56,乙9,丙1,2,被告ブラ代表者)。
本件映画は,上記の振込金や協賛金,被告ブラの負担した資金により製作が開始され,配給・宣伝業務等が行われた(甲56,弁論の全趣旨)。
(4)  本件配給等契約
原告と被告らのうち少なくとも被告ブラは,平成27年3月頃又は遅くとも同年4月17日までの間に,以下の内容の本件配給等契約を口頭で締結した。なお,本件配給等契約に関する契約書は完成されていない。(争いのない事実,甲3。ただし,被告ぴあが本件配給等契約の当事者となっていたか否か,被告ブラが本件製作委員会を代表して本件配給等契約を締結したか否かに争いがある。)
ア 被告ブラは,原告に対し,本件映画の配給及び宣伝業務を委託する。
イ 原告の配給手数料は,配給収入の20パーセントとし,その最低保証額は3000万円(消費税別。以下,特段の記載のないときは消費税別)とする。
ウ 原告は,P&A費を立て替えて負担し,配給収入から配給手数料を控除した本件製作委員会の収入からP&A費を優先回収することができる。
エ P&A費の上限は1億円とする。
オ 原告の配給手数料及びP&A費の精算は遅くとも平成27年9月末日までに行う。
(5)  本件映画の公開
本件映画は,平成27年4月17日に公開され,b映画館その他の映画館において上映が開始された(争いのない事実,甲6)。
3  争点
(1)  本件配給等契約の成否とその契約当事者(争点1・請求原因。下記アないしエに係る争点につき原告はいずれも選択的に主張する。)
ア 原告と被告らは,被告らが原告に対する債務を連帯して負担する旨の本件配給等契約を平成27年3月頃,又は遅くとも同年4月17日までの間に締結したか否か(被告らによる本件配給等契約の締結。争点1-1)
イ 本件5社又は被告ら及び浅間製作所の3社(以下「本件3社」という。)を構成員とする本件製作委員会が成立したか,成立した場合には本件製作委員会のために被告ブラが代表又は代理して原告と本件配給等契約を締結したか否か(被告ブラによる本件製作委員会の代表又は代理としての本件配給等契約の締結。争点1-2)
ウ 被告ブラに係る表見代理の成否(争点1-3)
(ア) 被告ぴあ,浅間製作所,第一興商及びSMLは,各々被告ブラに対し,本件映画の制作業務の委託先との契約の交渉・締結を行うことの代理権を授与していたか否か(争点1-3-1)
(イ) 原告は,被告ブラの代理権を信じて本件配給等契約を締結したか否か(争点1-3-2)
エ 被告らは,本件配給等契約について無権代理人としての責任を負うか否か(被告らの無権代理人の責任。争点1-4)
(2)  本件配給等契約に基づいて原告が立て替えた精算対象となるP&A費の範囲(争点2・請求原因)
(3)  本件配給等契約に基づいて原告が受領すべき配給手数料等の額(争点3・請求原因)
4  争点に関する当事者の主張
(1)  争点1-1(原告と被告らは,被告らが原告に対する債務を連帯して負担する旨の本件配給等契約を平成27年3月頃,又は遅くとも同年4月17日までの間に締結したか否か(被告らによる本件配給等契約の締結))について
ア 原告
(ア) 本件配給等契約は,原告と被告ブラの間だけでなく,被告ぴあも本件製作委員会から独立した当事者として,平成27年3月頃又は遅くとも同年4月17日までの間に本件配給等契約が口頭により締結されており,被告らは原告に対する債務を連帯して負担する旨を併せて約した。
(イ) 被告ぴあも本件配給等契約の当事者であることを裏付ける事情は,次のとおりである。
a 平成26年に実施されていた本件製作委員会の会議では,浅間製作所が本件配給等契約の当事者となる方向で話が進んでいたが,浅間製作所は,平成27年1月15日の本件製作委員会の会議において,映画業界に不案内であるから映画業界に知見のある被告ぴあが本件配給等契約の当事者となるべき旨を申し入れ,被告ぴあの責任者として出席していた被告ぴあコンテンツ事業局長であるD(以下「D」という。)は,この申入れを受け入れ,本件配給等契約は,被告ら2社を委託者側の当事者として締結する取扱いを承知する旨の表明を行い,同会議に参加していた被告ら以外の浅間製作所,第一興商及びオブザーバーとして参加していた原告は,異議なく被告ぴあが当事者となることを承諾した。
b Dは,平成27年3月4日,被告ぴあの事務所における被告ら,浅間製作所及び原告が参加した会議においても,被告らが本件配給等契約の当事者となることに応じる旨の発言をしており,このように,本件配給等契約は,被告ブラだけでなく,被告ぴあも委託者側の当事者として締結された。
(ウ) 被告ぴあは,以下のとおり,被告ぴあが本件配給等契約の当事者であることを前提とした行動を取った。
a Dは,平成27年3月6日,原告に対し,P&A費の上限額を1億円とする旨のメールを送信し,同月12日にも,原告の事務所における被告らと原告が参加した会議において,被告らが本件配給等契約の委託者になることを追認する旨の発言をした。Dは,この間,本件配給等契約の内容について,当事者を浅間製作所に代えて被告らとすること,P&A費の上限を1億円とし,それ以上の増額は当時の本件製作委員会の意向としてあり得ないことの2点を指摘しただけであり,本件配給等契約のその余の内容について異議を述べたり,修正を求めたりすることはなかった。
b 被告ぴあは,平成27年4月14日,原告が作成した原告と被告らとの3者契約を前提とする本件配給等契約の契約書案の送付を受けて何ら異議を述べていない。
c 被告ぴあは,本件映画の宣伝業務について,原告にプランを提供したり,特定の企画について単独で原告との間での連絡・確認・指示を行ったり,これらを決定する地位にあり,また,P&A費の金額について原告との交渉を担当したり,劇場パンフレットのデザイン決定に最終的な権限を持っていたりと,単なる本件製作委員会の構成員に留まらず,本件映画の配給宣伝業務を主導的・主体的に指揮・指導すべき地位にあり,現にそのように行動していた。
浅間製作所の担当者が,映画のスポンサー候補への営業に際し,被告ブラ代表者だけでなく,D又は株式会社フライング・ボイスのE社長(以下「E社長」という。)と同行するよう指示したことは,被告ぴあの上記地位を裏付けるものである。
d 被告らは,本件映画の公開日である平成27年4月17日の時点や同月22日の時点においても,原告に対し,本件配給等契約が口頭で成立していることを前提に,本件配給等契約の委託者としての立場で本件配給等契約の履行の継続を依頼し,原告による配給宣伝業務が進行されている事情を認識・認容しながら,本件配給等契約が成立していないことを理由にその進行をストップするよう求めることも,原告に対する配給宣伝業務の対価を組合債務として取り扱うことに異議を述べることもしなかった。
(エ) 被告ぴあのコンテンツ事業局局長や事業統括本部担当副本部長の肩書を有していたDは,被告ぴあから,本件製作委員会の組成に関する契約を締結する権限及び本件配給等契約を締結する権限をいずれも授権されており,Dないし被告ぴあは,一度も同授権がない旨の表明・留保をしたことがないまま,本件映画への出資を行うなど,その外形においても実質においても被告ぴあを代表していた。
(オ) 以上のとおり,本件配給等契約は,原告を受託者,被告らを委託者として締結されたものであり,被告らは本件製作委員会から独立した当事者として,被告らが原告に対する債務を連帯して負担する趣旨で本件配給等契約を締結した。
イ 被告ら
(ア) 本件配給等契約は,被告ブラが本件製作員会とは無関係に原告との間で単独で契約して,原告と被告ブラの2社間で成立したものである。
原告が本件映画の公開劇場の選定等をした平成26年9月の時点では,既に原告と被告ブラとの間で2社間の本件配給等契約が成立しており,被告ぴあは,同月まで原告関係者に会ったことすらなく,本件製作委員会も組成されておらず,被告ブラ1社のみが同時点で配給宣伝業務に係る債務を負担しており,被告ぴあが本件配給等契約に関して責任を負うことはない。
また,その後も,被告ぴあや本件映画の出資予定者が,原告と被告ブラ間の本件配給等契約の内容を引き受けるという具体的な合意をした事実もないから,被告ぴあが本件配給等契約に関して責任を負うことはない。
(イ) 本件製作委員会の会議では,平成26年12月9日及び平成27年1月15日に,原告から書面で本件配給等契約の条件提示がされたことはあったが,この時点では,本件映画の製作費の確保がままならず,配給等の条件を検討する余裕もない状況にあった。また,原告からの配給等の条件は,契約の相手方等の主たる条件が会議の度に変更されるなど確定したものでなく,契約交渉段階での条件として提示されたものにすぎなかった。
原告は,その後も同年3月11日の時点で,本件配給等契約の相手方が誰になるのか尋ねる趣旨のメールを送信したり,同年4月14日に従前の話とは異なる条件が記載された本件配給等契約の契約書案を送信したりするなどしており,仮に,原告の主張するように本件配給等契約が同年1月15日に口頭で成立しているのであれば,原告がこのような矛盾した行動を取るはずはない。
したがって,被告らが,同日の会議で本件配給等契約について承諾して被告ぴあが本件配給等契約の当事者となっていないことが明らかである。
(ウ) 被告ぴあは,平成27年3月12日の会議を踏まえ,同月16日,製作委員会の組成及び製作委員会契約の締結がされ,製作費の未払が完済されることを条件として,被告ブラとともに本件製作委員会の構成員として,本件配給等契約を締結する用意があることを回答していたにすぎず,本件製作委員会の組成ができていない段階で,原告との間で,本件配給等契約を締結する意思はなかった。
原告も,これと呼応して「委員会との契約でありブラとの契約ではない点,並びに委員会の代表幹事がブラ以外の会社もしくはブラ+もう一社との3社契約でなければ契約はできません」と,一貫して本件配給等契約の効果を本件製作委員会に帰属させることを望み,これを前提としたメールを送信していた。
(エ) Dは,被告ぴあから本件配給等契約を口頭で締結する権限を授与されていなかった。すなわち,東証一部上場企業である被告ぴあが,一従業員にすぎないDに対し,本件配給等契約のような億単位の契約を口頭で締結する権限を授与することはありえず,原告もDにそのような権限がないことを知っていたからこそ,再三にわたって被告らに契約書の締結を求め,契約書が作成されていないことを理由に被告ブラへの配給収入等の報告を一切行わないなどしていることからすれば,原告としても,口頭ではなく,契約書を取り交わすことにより契約を成立させる意思であったというべきである。また,被告ブラへの配給収入等の報告がない以上,原告としても本件配給等契約が締結されていないことを前提としていたというべきである。
(オ) 原告が本件配給等契約の成立を根拠付けるものとして主張するその他の各事実は,いずれも被告らが本件製作委員会の組成を見越して行っていたものにすぎず,本件配給等契約の成立を推認させるものではない。
(カ) 原告が,本件配給等契約が成立していないにもかかわらず,多額のP&A費を立て替えてまで,配給宣伝業務を事実上行ったのは,原告が平成26年12月の時点で,本件映画の公開に合わせて既にb映画館を上映館として押さえていたところ,同映画館は,本件映画の公開日である平成27年4月17日が開業日であり,本件映画はそのオープニング作品の1つとして位置づけられており,仮に,原告が,本件配給等契約が成立していないことを前提に,配給を行わず同映画館の上映作品に空きが出れば,原告の信用失墜につながることになりかねないためであり,原告としては,リスクを負っても配給宣伝業務を行う必要があった。
(2)  争点1-2(本件5社又は本件3社を構成員とする本件製作委員会が成立したか,成立した場合には本件製作委員会のために被告ブラが代表又は代理して原告と本件配給等契約を締結したか否か(被告ブラによる本件製作委員会の代表又は代理としての本件配給等契約の締結))について
ア 原告
(ア) 本件配給等契約は,原告を受託者,被告ブラを委託者として締結されたものであるが,被告ブラは,本件配給等契約成立までの間に組成された本件5社を構成員とする本件製作委員会のために,本件製作委員会を代表又は代理して,本件配給等契約を締結したものであって,本件配給等契約の委託者の債務は本件製作委員会がその事業のために原告に対して負担した債務にほかならず,本件5社はいずれも商人であるから,商法511条1項により,本件配給等契約について連帯債務を負う。
仮に,本件5社を構成員とする本件製作委員会の成立が認められずとも,少なくとも本件3社を構成員とする本件製作委員会は成立しており,かかる本件製作委員会のために,被告ブラはこれを代理又は代表して本件配給等契約を締結したものである。
(イ) 本件製作委員会の成立
a 映画の製作委員会は,通常,民法上の組合として組成され,組合の成立に契約書は必要ではなく,組合員の出資の形式,出資の額や割合の確定も必要ではなく,将来何らかの出資をすることが組合員間で明示又は黙示に決められ,各当事者が共同して一定の事業を営む業務活動を行う合意が当事者間で成立した時点で民法上の組合が成立するものである。
製作委員会の原始的な構成員は,最も初期の段階では最低2名の構成員により組成され,製作委員会への参加・出資を口頭で合意し,製作委員会は,随時,新たな構成員を参加させながら,映画事業を運営し,契約書は,製作委員会の組成のために構成員全員を当事者とする共同出資製作契約書を作成するのが通常であるが,実際には,映画事業が本格的に開始される時点,即ち映画の撮影開始時点までに共同出資製作契約書が構成員全員の記名・押印を経て作成されていない場合が多い。構成員全員の記名・押印による共同出資製作契約書の作成が未了のままでも,口頭の合意に基づいて出資金の払込みを実行して共同事業者として映画事業を担当し,その後に参加する構成員についても,参加以前の事業結果を承継・追認するのが通例である。原始的な構成員による製作委員会の組成後,予定どおりに新たな構成員の参加が達成されない場合も,その分は特定の出資者が負担することで映画事業を進行させる。多くの場合は,映画の完成・劇場公開の目処が立ち,映画のクレジット表記を決定するタイミングで構成員を最終的に確定させることになるが,劇場公開後もその作成が未了である場合も少なくない。
b 被告ブラは,当初,自らの負担で本件映画の企画・脚本開発,制作準備業務を進行させたが,平成26年1月頃,浅間製作所と被告ぴあに対し,その後,第一興商及びSMLに対し,本件製作委員会への参加と出資を呼びかけ,被告ぴあ,浅間製作所,第一興商及びSMLはそれぞれその呼びかけに応じて参加と出資を口頭で約束し,共同出資製作契約書の作成が未了のまま,出資金ないしP&A費をそれぞれ本件口座に振り込んだ。本件製作委員会に多くの構成員の参加・出資を求めて様々な映画関連の事業者への働きかけ,勧誘が行われていたところ,SMLの参加が確定した後,最後まで参加・出資が期待されていた会社については最終的に出資を断られたことから,これらの会社に予定していた出資分を被告ブラが負担することで出資比率が確定した。
本件製作委員会の組成・構成員の確定・出資と組合事業としての制作事務及び配給宣伝事務は,相前後しながら同時並行的に進行・実施されており,本件映画の撮影開始時点で現に出資していたのは被告ブラと浅間製作所だけであったが,被告ぴあは本件映画の内容や収支等の説明を受けて,第一興商及びSMLも本件映画の制作事務及び配給宣伝事務に関する取引状況の説明を受けて,それぞれ出資をした。
したがって,これらの本件5社が,本件製作委員会に構成員として参加したというべきである。
c その他,本件5社を構成員とする本件製作委員会が成立したことは,以下の各事情からも明らかである。
(a) 平成27年1月15日の本件製作委員会の会議において浅間製作所から配付された資料には,本件製作委員会としての議題や,P&A費の立替分は「製作委員会」が返済すること,被告ら,浅間製作所及び第一興商らが製作委員会に対して出資する企業となること,本件製作委員会が主体となって本件配給等契約を原告に委託することを窺わせる記載など,本件製作委員会の組成を前提とした記載があった。
(b) 映画のクレジット表記は,製作関与者の責任範囲を明確にし,また,責任者が誰であるかを明らかにする意味や表記される者の映画への貢献度や格・序列などを示し,さらに映画業界における実績を示す意味があることなどから,映画関係者にとって極めて重大な関心事であり,映画製作者の権限の下に,細心の注意と配慮をもって決定される事項と考えられている。
そして,本件映画のクレジット表記においては,本件映画の公式ホームページには,「製作:『○○』フィルムパートナーズ(浅間製作所,ぴあ,第一興商,ソニー・ミュージックレーベルズ,ブラ・インターナショナル)」との表記があり,本件映画の本編エンドクレジット表記やポスター,平成27年12月18日に発売されたDVDのパッケージ裏面にも同趣旨の記載があるとともに,同DVDに収録された本件映画のエンドクレジット表記には,配給統括として原告代表者及び原告取締役の氏名,宣伝プロデューサーとして原告専属の宣伝プロデューサーの氏名,配給・宣伝として原告の名称が表記され,また,「『○○』フィルムパートナーズ」として,本件5社の名称並びにD及び被告ブラ代表者の氏名が表記され,製作代表に本件5社の各代表取締役の氏名が記載されていた。これらの表記は,被告ブラの管理のもと,被告ぴあ,浅間製作所,第一興商及びSMLの事前の確認を経て決定・公表されているものであり,本件5社は,自らの商号を本件製作委員会の出資者ないし構成員の資格・肩書・立場にある事業者として広く対外的に表明した。
(c) 被告ブラが本件映画のビデオグラム化権許諾契約をTCエンタとの間で締結しているのは,平成27年8月31日付けの本件5社の記名があるものの,その全員の印鑑がそろっていない共同出資製作契約書案(丙1。以下「本件出資契約書案」という。)において,日本国内のビデオグラム化権の利用担当窓口を被告ブラと定めたことを反映したものである。
また,被告ブラが,株式会社オゾンネットワークとの間で本件映画を衛星放送に供する権利を許諾する内容の契約を締結しているのは,本件出資契約書案において日本国内におけるテレビ放映権の利用担当窓口を被告らの共同と定めたことを反映したものであり,同社の権利許諾の対価の振込先は,本件出資契約書案で組合口座と指定された本件口座と銀行及び支店名が同じであり,本件口座であると考えられる。
(d) Dは,平成27年6月10日付けの原告代表者に宛てた書面において,被告ぴあが本件映画の製作委員会の一構成員にすぎないこと,被告ぴあの判断で照会事項について回答することは他の構成員(被告ぴあを除く本件5社)に迷惑をかけることなどを記載しており,本件製作委員会が組成され,その構成員が本件5社であることを自認した。
(e) 被告ぴあは,平成27年4月頃以前は,自らが本件配給等契約の当事者であることを前提とした行動をとっていたにもかかわらず,同月頃に至って,原告に対する責任を被告ぴあのみが受けることを回避するために,従前の言動・態度を翻して,本件製作委員会の構成員全員が本件配給等契約の窓口になるべきであるとの態度をとるようになった。これは,被告ぴあが,本件配給等契約は,被告ブラを当事者として,被告ブラが本件製作委員会のために,本件製作委員会を代表又は代理して締結されるべきものであるとの認識を原告に示したものである。
被告ぴあ及びSMLは,被告ブラが本件製作委員会を代表して原告との間で本件配給等契約を締結し,本件映画の宣伝業務を行うことを委託する旨の記載のある本件出資契約書案に記名・押印しており,被告ぴあは,この段階でも当事者を除く本件配給等契約の内容について異議を述べたり,修正を求めたりしていない。
(f) 浅間製作所及び第一興商が,本件出資契約書案への押印を拒んだのは,平成27年4月17日以降であり,少なくとも原告はそれ以前に上記拒絶の事実を知らされていない。浅間製作所は,幹事会社として振る舞い,第一興商は本件映画の予告映像・PVの提供を受けて自らが運営・管理するカラオケ用媒体にて配信する権利を行使するなど本件製作委員会の構成員としてその事業の一部を実施しているところ,両社は,拠出額以上の対外的責任を負担する可能性があることを十分に認識していたにもかかわらず,同日以降,そのような負担が現実的になったことを知って従前の意思・態度を翻したにすぎず,浅間製作所及び第一興商のこのような態度は本件製作委員会の成否に影響するものではない。
d 以上のとおり,本件製作員会は,当初,本件3社を原始的な構成員として組成され,後に第一興商及びSMLが参加し,その後も,遅くとも平成27年4月17日まで新たな構成員の参加を模索した結果,本件5社を構成員とし,本件映画の制作事務及び配給宣伝事務を目的として,これに関する債務を組合債務として取り扱うべきことを内容とする本件製作委員会に係る共同出資製作契約(以下「本件出資契約」という。)を合意したというべきである。
仮に,本件5社を構成員とする本件製作委員会が成立していなかったとしても,上記経緯からすれば,本件3社を構成員とする本件製作委員会が成立していたというべきである。
e なお,本件出資契約は口頭で締結されたものであるが,被告ブラを除く本件5社は,いずれも,各社を代表して本件出資契約を口頭で締結する権限をその担当者に授与していた。
(ウ) 被告ブラによる代表又は代理
被告ブラは,本件5社ないし本件3社を構成員とする本件製作委員会のために,本件製作委員会を代表又は代理して,本件配給等契約を締結した。
(エ) 覚書及び担当者への授権に関する被告らの主張について
a 被告ブラは,口頭弁論終結予定の期日の直前に各覚書(丙14ないし16)を証拠提出し,被告ぴあ,浅間製作所及び第一興商の被告ブラに対する出金は出資金ではない旨や出資金の前渡金である旨の主張をし,被告ぴあも,同趣旨の主張及び被告ぴあ以外の当事者の授権が主張立証されていない旨の主張をした。かかる新書証の提出及び新主張は,証人尋問までに提出することも可能だったのであり,時機に後れて提出されたものとして却下されるべきである。
b 仮に,各覚書が証拠として扱われ,各覚書が被告ぴあ,浅間製作所及び第一興商に本件製作委員会の構成員たる地位を否定・撤回・解除する権利を付与するものであったとしても,当該各権利は,既に主張した被告ぴあらの行為・態度によって,遅くとも平成27年4月17日までに,被告ぴあらによって放棄され,又は信義則上これを行使することが許されなくなった。
また,各覚書は,浅間製作所,第一興商又は被告ぴあを一方当事者とし,被告ブラをもう一方の当事者とする2者間の合意にすぎず,原告はその存在を知らなかったのだから,被告らは,各覚書の効力を原告に対抗することはできない。
イ 被告ら
(ア) 本件製作委員会は法的に組成されていないこと
a 多額の費用を要する映画製作においては,一般に,リスクを分散しつつ,映画の上映及び二次利用で収益の最大化を図るために製作委員会方式が採られるところ,その法的性質は民法上の組合契約ないしそれに類似した契約であるとされている。
被告ブラは,本件映画についても,製作委員会方式で製作費を募ることを企画し,平成26年1月以降,被告ぴあ,浅間製作所,第一興商及びSMLと順次交渉し,被告ブラを含めた本件5社で共同出資製作契約を締結しようと試みた。
しかし,本件映画の完成後,出資比率は内定したものの,最終的な共同出資製作契約の交渉中に,拠出額以上の対外的責任を負担することに難色を示した浅間製作所及び第一興商が,民法上の組合員である製作委員会の構成員となることを否定し,浅間製作所は,製作委員会への出資金を協賛金に振り替えることを求め,第一興商は製作委員会の構成員ではないなどとしていずれも本件出資契約書案への押印を拒否し,被告らのほかにはSMLが押印しているのみで,現時点においても,本件5社による本件出資契約の締結には至っていない。
本件製作委員会は,本件5社を構成員とすることが前提となっており,浅間製作所及び第一興商が拒否している以上,民法上の組合ないしそれに類似した団体である本件製作委員会は成立していない。
また,上記経緯からすれば,本件3社を構成員とする本件製作委員会も成立していないというべきである。
b 浅間製作所と第一興商の出資額(出資比率)は,それぞれ4320万円(26.14パーセント),2160万円(13.07パーセント)であり,合計で6480万円(39.21パーセント)に及ぶのに対し,被告ぴあの出資額(出資比率)は,1080万円(6.54パーセント)にすぎず,被告ぴあとしては,大口出資者たる浅間製作所や第一興商も本件製作委員会に参加することを前提に本件出資契約書案に押印していたのであるから,被告ら及びSMLの3社のみで本件映画の共同製作・利用の事業を営むことを約して本件出資契約を締結する意思は有していない。
このことは,被告ぴあが被告ブラと締結した覚書(丙16)に,被告ブラ及び他の出資者との間で,最終的に交わされる共同出資製作契約書に基づく被告ブラの出資金2000万円との記載があるように,本件製作委員会の本件出資契約が本件5社で締結されることによって,初めて被告ぴあによる出金は出資金となり,それ以前は,同覚書に,被告ぴあが平成26年12月までに最終的な契約を締結しなかった場合,被告ブラは,その理由如何にかかわらず,被告ぴあに対し,出資金全額を返還する旨の記載があるとおり,前渡金として返還を求めることができるものであったことからも裏付けられる。
そして,同覚書は,当初本件映画への出資の意向を示していた原告にもそのひな型が送付されており,原告も,最終的な契約の締結により初めて本件5社の出金は出資金となって民法上の組合たる本件製作委員会が成立することを十分に承知していたからこそ,まずは製作委員会の組成を求めていたのである。
したがって,最終的な製作委員会契約書の締結により,初めて被告ぴあの出金は出資金となり,「出資をし」たものとして民法上の組合である製作委員会が成立する(民法667条1項)。
浅間製作所及び第一興商についても同内容の各覚書(丙14,15)があり,共同出資契約書の締結を条件に,初めて出資金として取り扱われ,条件が成就するまでは前渡金として取り扱われていたから,浅間製作所及び第一興商も出資をしていなかった。
c 本件映画の二次利用である衛星放送に関しては,いずれも被告ブラを通じて行われており,被告ぴあは本件映画の利用に関して一切の権利を有していない。本件出資契約書案では,テレビ放映権は被告らが共同で行使する旨が定められているが,本件出資契約が成立しなかったからこそ,衛星放送について被告ブラが単独で行使している。
この実態を前提とすれば,被告ぴあが被告ブラとの間で「共同の事業を営むことを約する」ものとはいえず民法上の組合である本件製作委員会は成立していない(民法667条1項)。
d 東証一部上場企業である被告ぴあが,一従業員にすぎないDに製作委員会契約を書面ではなく口頭で締結する権限を授与することはありえず,また,被告ぴあ以外の当事者において口頭での契約締結権限が存在したことも何ら主張立証されていない。
したがって,この観点からも原告主張の契約が成立していないことは明らかである。
e その他,原告は,本件映画のクレジット表記など,製作委員会成立に向けた一連のやり取りなどの経過を根拠に本件製作委員会の成立を主張するが,事実経過と法的に製作委員会が成立したかとは明確に区別されなければならず,原告主張の事実はいずれも法的に本件5社ないし本件3社による本件製作委員会が成立したことを根拠付けるものではない。
(イ) 被告ブラは単独で本件配給等契約を締結したこと
被告ブラは,本件製作委員会に効果帰属させる意思で本件配給等契約を締結したのではなく,本件製作委員会とは無関係に自らにのみ効果帰属させる意思で本件配給等契約を締結したにすぎない。
(3)  争点1-3-1(被告ぴあ,浅間製作所,第一興商及びSMLは,各々被告ブラに対し,本件映画の制作業務の委託先との契約の交渉・締結を行うことの代理権を授与していたか否か)について
ア 原告
仮に,被告らによる本件配給等契約の締結が認められない場合又は本件5社ないし本件3社を構成員とする本件製作委員会の成立が認められないとしても,被告ブラを除く本件5社又は本件3社は,被告ブラに対し,各々本件製作委員会の成立を見越して,自己を代表又は代理して,自己以外の構成員又はその候補者との間で本件製作委員会の組成に関する契約の交渉・締結を行う代理権ないし本件映画の制作業務の委託先との契約の交渉・締結を行う代理権を授与していた。
イ 被告ら
本件製作委員会の組成に関する契約の交渉・締結は,各社が独自に検討し,判断するものであり,これに関する代理権を他方当事者たる被告ブラに付与した事実はなく,本件映画の制作業務についても被告ブラが単独で発注しており,被告ブラを除く本件5社がその代理権を付与した事実もない。
本件出資契約書案において定められている被告ブラの権限は,あくまでも本件出資契約が締結され,本件製作委員会が組成された場合の幹事会社としての権限が定められているにすぎないから,原告主張に係る代理権授与の根拠とはならない。
(4)  争点1-3-2(原告は,被告ブラの代理権を信じて本件配給等契約を締結したか否か)について
ア 原告
(ア) 被告ブラは,自身のほか,被告ぴあ,浅間製作所,第一興商及びSMLを代理又は代表して,原告との間で本件配給等契約を口頭で成立させたところ,原告は,被告ブラに上記代理権があると信じ,前記(2)アで指摘した各事実のとおり,そのように信じることに正当な理由があったから,民法110条,商法511条1項により,本件配給等契約の効果は,本件5社に連帯して帰属する。
(イ) 被告ブラは,自身のほか,被告ぴあ及び浅間製作所を代理又は代理又は代表して,原告との間で本件配給等契約を口頭で成立させたところ,原告は,被告ブラに上記代理権があると信じ,前記(2)アで指摘した各事実のとおり,そのように信じることに正当な理由があったから,民法110条,商法511条1項により,本件配給等契約の効果は,本件3社に連帯して帰属する。
イ 被告ら
被告ブラは,本件5社を代理又は代表して本件配給等契約を締結したのではない。
また,前記(1)イ(イ)及び(ウ)のほか,Dが平成27年3月16日,原告代表者に対して本件製作委員会が組成されていないことを伝えたり,同年4月14日,本件製作委員会の契約書が届いていないことをメールで伝達したりしていることなどからすれば,原告が同日時点でも本件製作委員会が成立していないことを認識し,被告ブラが本件製作委員会を代理又は代表して本件配給等契約を締結する権限を有すると信じることについて正当な理由がないことは明らかである。
(5)  争点1-4(被告らは,本件配給等契約について無権代理人としての責任を負うか否か)について
ア 原告
虚無人の代理人として契約をした代理人については,民法117条の類推適用により当該契約の履行の責任が認められる。
被告ぴあは,被告ブラと共同して,本件配給等契約の委託者側の当事者となることを引き受ける旨の意思表示をしたところ,原告は,本件製作委員会が組成されておらず,虚無人であることを知らずに,被告らが,本件製作委員会のために,本件製作委員会を代理又は代表して本件配給等契約を締結する代理権を有していると信じて本件配給等契約を締結したのであり,そのように信じたことに過失はない。原告が善意・無過失であったことは,前記(2)アで指摘した各事実から明らかである。
したがって,被告らは,虚無人たる本件製作委員会の代理人として,原告との間に本件配給等契約を成立させたから民法117条により,本件配給等契約の履行責任を免れない。
イ 被告ら
被告らを当事者とする本件配給等契約は成立しておらず,被告ぴあは,本件配給等契約の契約当事者ではないから無権代理人としての責任を負う余地はない。
また,前記(4)イのとおり,原告は,平成27年4月14日時点で,本件製作委員会が成立していないことを知っていたから,有過失であることは明らかである。
(6)  争点2(本件配給等契約に基づいて原告が立て替えた精算対象となるP&A費の範囲)について
ア 原告
(ア) 総論
原告が立て替えたP&A費は別紙「P&A費一覧表(原告主張)」のとおりである。原告は,デジタル形式のプリント等の手配及び宣伝業務について,被告らに提示・説明をした実施概要の下,原告に与えられた合理的な裁量の下に,脱落・遅滞・不足なく完全に実施した。
(イ) P&A費の範囲
一般に,配給宣伝業務委託契約に基づいて映画製作者が配給会社に委託する業務は,大別すると配給業務と宣伝業務に分けられるところ,現在の映画業界ではこれらを1つの配給会社に委託するのが通例である。そして,配給会社が同契約に基づいて受領する金銭は配給手数料とP&A費に大別できるところ,概ね配給手数料が配給業務の対価,P&A費が宣伝業務の対価として位置づけられる。
このP&A費とは,我が国の映画界で通用している語句であり,配給宣伝業務委託契約において使用する場合,映画の劇場配給のためのフィルムないしDCP(Digital Cinema Packageの略で,従来の35ミリフィルムに替わるデジタルデータを用いた映画の上映方式のこと。)のプリント等の手配及び映画の宣伝業務を委託することの対価として,事業主体が配給宣伝業務の受託者に対して支払を約束する金銭を意味する。
また,P&A費は,配給会社自らの業務の対価をことさら除外するものではなく,現に原告が支出した金銭及び社内で要した費用に管理費を上乗せすることも通常である。
なお,P&A費の立替えという表現は,事業主体が映画の製作費に加えてP&A費について先に調達して配給会社に先払いするのではなく,一時的に配給会社が自ら支出し,配給収入から優先的に回収することを意味しているのであって,配給会社が第三者に実費を立て替えることを意味するものではなく,第三者に一部の宣伝業務を外注することに関する管理等の業務の対価を請求することを禁止する趣旨のものではない。
(ウ) P&A費の予算書について
原告が被告らに提示した「○○ P&A表」と題する書面(甲4。以下「本件P&A表」という。)や本件配給等契約の契約書案に,宣伝プロデューサー費や宣伝パブチームの業務の対価が記載されていないのは,P&A費に配給会社の人件費が含まれることが映画界において常識だからである。そもそも,宣伝業務の内の個々の具体的な業務の担当者の選定やその対価の設定について広範な裁量を配給会社に認めた上で,配給会社が支出・負担するP&A費についてその上限金額又は概算金額を合意することとし,配給会社の支出額がそれらの金額を超過すればその超過分は配給会社自らの負担する一方で,事前に概要として申し合わせた配給宣伝業務が不足なく実施されている限り,配給会社自身の業務報酬を殊更に除外することなく,上限金額又は概算金額を超えない額をP&A費として受領することが許容されているのであるから,人件費等を除外する理由がないことは明らかである。
また,原告自らが負担した交通費,接待交際費,会議費及び通信費について,本件P&A表上,「渉外費」中の「交通費」に50万円,同「打ち合わせ費」に15万円,「通信費」に30万円,「発送費」に150万円がそれぞれ計上され,その合計は245万円であるところ,原告が実際にP&A費として請求している交通費,接待交際費,会議費及び通信費はいずれも本件映画の配給宣伝業務に直接関連しているものであり,かつ,その合計は,191万8251円であり,他の項目にこれらが紛れているとしても少額であるから,原告は本件P&A表で示した予算の範囲で適切に実施したというべきである。
(エ) 特別値引きについて
原告が,P&A費の内訳で「特別値引き」の額を税込み338万2761円とした趣旨は,それ以外の項目全てを単純に合計するとその金額が税込み1億1138万2761円となって本件配給等契約において合意された税込み上限金額1億0800万円を超過することから,その超過分を「特別値引き」として調整し,合意されたP&A費に揃えようとした点にある。
したがって,P&A費として取り扱われるべき宣伝費の内訳に変更があり,その合計額が減少する場合には,「特別値引き」名目でマイナス計上した金額も減少させるのは当然であるから,仮に,原告がP&A費としている計上した項目の内,本件配給等契約に基づくP&A費の請求権の対象と認められない項目がある場合には,その項目の金額の分だけ「特別値引き」名目でマイナス計上した金額を減少させて主張することとする。
イ 被告ら
(ア) 本件映画公開前,被告らと原告との関係が必ずしも良好ではなく,特に原告と被告ブラとの間の信頼関係が破壊されており,本件配給等契約の契約書の締結に至っていないこと等からすると,原告が自ら進んでP&A費の未回収リスクを負担するとは考えにくく,また,実際に行われた本件映画の宣伝規模からすると,原告が実際にP&A費として1億円を支出したか疑わしい。
(イ) P&A費とは,劇場での上映に使用されるプリントと映画の宣伝費を意味し,前者は作成したプリントの本数で計算され,後者は映画の宣伝のために第三者に支払われた媒体費,宣伝素材の制作費の実費を意味し,委託契約における費用償還請求権(民法656条,650条1項)としての性質を有するものであり,請求できるのは実際に支出した額に限られ,かつ,実際に支出した額であっても遂行した準委任事務処理に要する費用として相当と認められる額を超える部分については請求することはできない(東京地判平成16年2月23日参照)。例外的に,配給会社自らが広告素材等の制作を自社で行った場合には第三者が当該作業を行った場合に通常請求するであろう金額と同等の金額を回収可能な費用として扱うことができるが,広告素材等の制作に関係ない社内の一般管理費に当たる費用,配給業務のための会議費や接待費,交通費,人件費などは宣伝費には当たらず,これらの費用は,配給業務の対価として取得する配給手数料から賄うものである。
このことは,原告作成に係る本件配給等契約の契約書案において,配給業務と宣伝業務を区別することなく本業務と規定しているところ,本業務遂行の対価として配給手数料を記載し,本業務遂行に係る費用をP&A費と規定していることからも明らかである。
(ウ) 被告らが,具体的にP&A費としての精算対象に当たらないと主張する費目は別紙「除外費目」1ないし6のとおりであり,配給宣伝管理費1452万8185円(税込み),宣伝プロデューサーへの432万円(税込み),宣伝パブチームへの648万円(税込み)などは,請求書等の根拠資料がなかったり,原告が提出したP&A費の予算表でも記載がなかったりと,原告においてもP&A費として請求することを想定していたとは言い難いものも含まれており,また,原告が本件配給等契約を締結したと主張する時点よりも相当前に支出された平成26年9月6日実施の試写会関連費用や交通費も原告は計上していたものである。
(エ) なお,原告は遅延損害金の起算日を平成27年10月1日とするが,訴状において初めて具体的な請求金額を明らかにして,本訴提起後にP&A費用明細が開示されたから,原告主張の遅延損害金の起算日は不当である。
(7)  争点3(本件配給等契約に基づいて原告が受領すべき配給手数料等の額)について
ア 原告
(ア) 配給収入
a 通常,配給会社と映画館との間で,契約書が交わされることはなく,興行収入に対する映画料の料率は,映画館の規模,過去の配給会社の実績や映画ごとの観客動員数の予測等を加味して,配給会社と映画館との間で一定の幅の中で,興業前に一応の値として合意される。一般にその料率は,興行収入に対し,上映開始時刻が午後8時台ないし午後9時以降のいわゆるレイトショーは,50パーセント,それ以外の上映は,60パーセントとされることが多い。
興行開始後であっても,上映作品に人気がなく,興行収入が伸びない場合には,後に配給会社が映画館から映画料の減額を求められ,料率を減額されることがあり,このような減額も当事者間において口頭でされるのが通常である。
b 本件においても,映画料率の決定や変更はいずれも口頭で行われていた。本件映画は観客動員が悪かったために映画館から映画料率を40パーセントに減額するよう要請されたため,原告はやむなくこれを受け入れたが,この40パーセントという映画料率の設定は映画興行に見られる一般的な料率設定の範囲内である。仮に,原告がこの減額要請を拒否すれば,当該映画館における本件映画の劇場興行・配給が打ち切られ,以降の配給収入の源が絶たれるだけであるし,本件配給等契約では,配給収入の20パーセントが配給手数料と定められていたから,原告としても積極的に映画料率を下げる理由はない。
以上の実情からすれば,本件映画における映画料率は原告の配給会社としての合理的な裁量と注意義務を尽くして決定・変更されたものといえ,そもそも被告らが当時その決定に影響を及ぼし得るような性質の事柄ではなかった。
そして,TOHOシネマズ株式会社(以下「TOHO」という。)から得た配給収入は,合計1906万1120円(税込み)であり,イオンエンターテイメント株式会社から得た配給収入は,合計525万2590円(税込み)であり,その他の各劇場から得られた配給収入の合計は,14万9530円(税込み)である。
c また,原告は,本件映画に関し,プログラム及びポスター等の売上により,映画館から合計414万6560円(税込み)の物品販売による配給収入の支払を受けた。
(イ) 配給収入から控除すべき金員
原告は,前記(ア)の配給収入を得るために,前売券販売手数料2万2148円及びセカンドラン以降のヴァーチャルプリントフィー経費(以下「VPF経費」という。)9720円の合計3万1868円(いずれも税込み)を負担している。
前売券販売手数料は,前売券販売業務を受託した配給会社の報酬で,前売券販売価格との一定割合が配給会社に支払われるものであり,VPF経費は,配給会社がVPFサービサーと呼ばれる映画館ヘデジタルシネマシステムを導入している者に対し,上映スクリーン数及び上映期間に応じて支払うことが求められる費用である。これらは,映画の人気が出るほど増額される性質のものであるから,仮に,これらを立て替えるP&A費に含めると,配給会社としては映画の評判を上げても精算されるP&A費が減少するという不合理な結果を招くことから,商慣習上,配給契約において配給会社の立替えP&A費にこれらは含まないという扱いがされている。
そして,本件配給等契約においても,被告らが上記商慣習を知らないはずはなく,前売券販売手数料及びセカンドラン以降のVPF経費がP&A費に含まれないこととする合意がされていた。
したがって,前売券販売手数料及びセカンドラン以降のVPF経費は,原告が配給収入から優先回収すべきものであるから,配給手数料から控除すべきである。
(ウ) 小括
原告が支払を受けた配給収入の合計2860万9800円(=1906万1120円+525万2590円+14万9530円+414万6560円)であり,これから3万1868円の経費を控除した2857万7932円が本件映画の配給収入である。
本件配給等契約によれば,この場合の配給手数料は3240万円である。
したがって,原告は,被告らに対し,未精算の配給手数料として382万2068円(=3240万円-2857万7932円。いずれも税込み。)の支払請求権を有する。
イ 被告ら
原告の主張する配給収入が全額であることは立証されていないし,原告の提出する成績週報(甲16)は,本件訴訟になってはじめて被告ぴあに提示されたものである。
また,被告ぴあは,少なくともテレビ・雑誌等の各種媒体への広告掲載の具体的内容については共有・報告を受けておらず,その内容を了解した事実はない。その他各種イベントの実施についても被告ぴあに事前に相談されることはなく,少なくともその内容を了解したことはない。
さらに,前売券販売手数料及びセカンドラン以降のVPF経費がP&A費に含まれないなどといった商慣習はなく,そのような合意をした事実もない。
第3  当裁判所の判断
1  認定事実
括弧内挙示の各証拠又は弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(1)  映画事業について
ア 劇場用映画の作成には多額の費用を要し,リスクも大きいことから,我が国の映画業界においては,製作委員会契約を締結した上で,いわゆる映画会社,放送局,出版社,制作会社,ビデオメーカー,芸能プロダクション,広告代理店等,映画の製作及び利用について何らかの関連を有している企業から複数の出資者を募り,製作費及び配給宣伝費等のリスクを分散しつつ,出資割合に応じて出資者で映画の著作権を共有した上で,映画の興行及びビデオグラム化,テレビ放送などの二次利用等の収益を配分するという製作委員会方式で映画製作が行われるケースが多い。
劇場用映画においては,劇場での上映のみで収益を確保できるケースは少なく,映画の二次利用を含めて出資金を回収した上で収益を見込むことが多い。二次利用については,製作委員会の構成員は,各々の得意分野に関する二次利用の窓口となって(ビデオメーカーがビデオグラムの製造販売,レコード会社がサウンドトラックの製造販売など),その窓口業務に関する手数料を取得することで収益を確保する方法がとられることが一般的である。
本件映画も製作委員会方式をとることとされた。(甲48,52,乙11,丙8,証人F,被告ブラ代表者,弁論の全趣旨)
イ 映画配給会社と映画館は,映画館が映画の放映権を取得し,その対価として映画上映料金(以下「映画料」という。)を映画配給会社に支払うことを内容とする契約を締結し,これに基づいて,映画館は,観客から入場料収入を徴収して映画を上映し,興行収入を得る。同契約では,映画ごとに興行収入に対する映画料の料率が定められており,その映画料の収入が配給収入となる。
映画の製作委員会等の製作者は,配給収入から配給手数料,広告宣伝費,映画撮影料等の諸経費を控除した額の収入を得ることになる。(甲48,丙7,8,弁論の全趣旨)
(2)  本件映画の上映開始まで
ア 被告ブラ代表者は,平成22年頃から「aプロジェクト」と称する企画を構想し,その第一弾として本件映画を製作することを計画していた。被告ぴあは,平成26年1月頃,被告ブラから,本件映画への出資の打診を受けた。
当初,本件映画の規模は,制作費が2億円,P&A費が2億円とされ,大手外資系配給会社であるワーナーブラザース社の配給に向けて交渉をしていたものの,それが実現しなかった。(甲65,乙9,丙8,証人D,被告ブラ代表者)
イ 原告は,平成26年5月頃,被告ブラから本件映画の配給宣伝業務の打診を受けるとともに,本件映画の製作委員会への出資も打診された。
これに対し,原告は,平成26年6月3日,被告ブラに対し,原告が総事業費の5パーセントを製作委員会に出資すること,原告が劇場配給業務を担当すること,P&A費は原告が立て替えるのではなく,先に製作委員会で集めて原告に支払う方法を希望する旨の提案をした。その後,原告がP&A費を立て替えるということになったことから,原告が本件製作委員会に出資するという話は立ち消えになった。(甲1,65,94,丙8,原告代表者,弁論の全趣旨)
ウ 浅間製作所も,被告ブラから本件映画への出資を打診され,これに応じることとし,平成26年4月30日及び同年6月4日に各4320万円を本件口座に振り込んだ(前記前提事実(3))。
エ 本件映画は,当初予定していた本件映画の主演女優が辞退することになり,平成26年4月21日に代わりの主演女優としてGが選ばれ,同人の同年6月のスケジュールが空いていたことから,当時,まだ本件映画の撮影に要する資金集めが十分ではなかったものの,同月2日から撮影開始(クランクイン)となった。
被告ブラは,撮影開始に向けて浅間製作所からの出資金を得た。本件映画の制作費は,1億7504万4000円(税込み)であり,本件映画の制作は,株式会社スーパーフィルムス(以下「スーパーフィルムス」という。)において行ったが,スーパーフィルムスに対しては,その制作費のうち2676万円が未払になっている。
本件映画は,逼迫した日程の中で撮影が行われ,同年7月9日,撮影完了(クランクアップ)となった。(甲1,丙8,被告ブラ代表者)
オ 被告ぴあは,被告ブラからの出資の打診を受けて,平成26年7月10日,本件口座に2159万9568円を振り込み,第一興商も被告ブラからの出資の打診を受け,同年12月25日,本件口座に2160万円を振り込んだ(前記前提事実(3))。
カ 本件映画の関係者向けの内覧試写会は,平成26年10月23日及び同月29日に行われ,マスコミ向け試写会は,平成27年2月18日,同月24日,同年3月4日,同月9日,同月13日及び同月18日に行われ,一般向けの完成披露試写会は,同月25日に行われた(甲18,60の2,乙9)。
キ 本件映画は,平成27年4月17日,b映画館のオープニング作品として,同劇場を含むその他の劇場において放映が開始され,最終的には,北海道及び沖縄地方を除く全国各地の合計102か所の劇場で公開された(前記前提事実(5),甲8ないし10,45,原告代表者)。
(3)  本件映画に関する会議,打合せ等
ア 被告ブラ代表者のE社長に対する平成26年11月25日の電子メール
被告ブラ代表者は,平成26年11月25日,電子メールで,浅間製作所のアドバイザーとしての立場であったE社長に対し,映画の製作費とP&A費を一緒に負担してもらう形で出資者に説明をしているものの,P&A費の分の資金が集まっていないこと,本件映画をb映画館のオープニング作品として上映開始することを目指して,P&A費の手当てを最優先に1日も早い製作委員会の設立と並行して原告とともに宣伝の立ち上げを行っていくつもりであることを述べた(甲43,乙9)。
イ 平成26年12月5日の会議
被告ら,浅間製作所及び第一興商は,平成26年12月5日,c総合法律事務所において本件映画に関する会議を開催した。同会議は,当時,本件映画のために資金を拠出していた会社が顔を合わせる初めての会議であり,被告ぴあも初めて参加し,原告もオブザーバーとして出席していた。同会議における議題の中心は映画の制作資金が足りていないのでいかに集めるかであり,この時点でも本件映画の製作費の集金状況は芳しくなかった。同会議以後も,出資者ないし出資予定者が出席する本件映画に関する会議は定期的に開催され,原告も以後の会議にオブザーバーとして継続的に出席した。(乙9,丙8,証人D,被告ブラ代表者)
ウ 平成26年12月9日の会議
被告ら,浅間製作所及び第一興商は,平成26年12月9日,本件映画に関する会議を開催した。
原告は,同日,「『○○』劇場配給業務委託について」と題する書面(甲2)を同会議の参加者に提示し,①P&A費を1億円から1億2000万円とすること,②製作委員会は最低2000万円のP&A費を拠出すること,③原告の配給手数料を3000万円の固定費に加えて配給収入の10パーセント相当額とすること,④劇場公開終了時点(公開日から4か月後の月末)において原告の配給手数料を控除後の配給収入の残額が,原告の立て替えたP&A費を下回った場合,その差額の半額を現金で精算し,残り半額を二次利用以降の売上げから優先的に原告が回収できること,⑤原告との配給契約は,製作委員会の2社以上との契約とすることが本件配給等契約の条件であることを示した。
同会議における話合いでは,浅間製作所が本件配給等契約の一方当事者となる方向で議論がされた。(甲2,3,弁論の全趣旨)
エ 平成26年12月24日の会議
浅間製作所は,平成26年12月24日に開催された本件映画に関する会議において,資金状況の確認をする書面(甲57)を出席者に配布し,本件口座の金銭が被告ブラにより正しく管理されているか不明であると指摘し,当分の間,本件口座は,浅間製作所が管理し,その内容を原告が検証することとなった。
当時,本件口座への資金は未入金であるものの,第一興商は出資者として,セイコーホールディングスは協賛社として,認識されており,その他の出資候補会社として,SML,LDH,日本出版販売,TSUTAYA,スペースシャワーネットワーク,小学館,小学館集英社プロダクションが挙げられていた。(甲57ないし59,65,乙9,丙2,証人D,被告ブラ代表者,弁論の全趣旨)
オ 浅間製作所の経理担当者から被告ブラ代表者等に対する平成26年12月26日の電子メール
浅間製作所の経理担当者H(以下「H」という。)は,平成26年12月26日,電子メールで,浅間製作所のI社長(以下「I社長」という。)の代理として,被告ブラ代表者に対し,原告の取締役,D,浅間製作所のアドバイザーとしての立場にあった株式会社アイグランドコンサルタンツのJ社長(以下「J社長」という。)などを同時送信者に入れつつ,今後の営業に関して,被告ブラ代表者が電通及び博報堂に今後接触することを止め,映画のスポンサーの件で営業する場合には,DかE社長を同行するよう要請した(甲37,乙9)。
カ 平成27年1月15日の会議
(ア) 浅間製作所は,本件映画に関する入金額及び出金額について,その支払名目等を含めて整理し,その内容の確認を求めるための書面を作成し,平成27年1月15日に原告事務所で開催された本件映画に関する会議において,参加者に配布した。同書面では,同月13日現在,出演者への出演料の未払分が1512万円,映画の制作を委託していたスーパーフィルムスへの制作費の未払分が3571万6205円あり,手元資金2179万6190円を控除すると,2904万0015円の資金が不足していることが記載されていた。また,同書面では,不足分の出資を全て被告ブラが行うことを前提に,本件映画に関する製作委員会の収入のシミュレーションがされており,同シミュレーションにおいては,劇場売上の半額が劇場手数料として計上され,配給手数料は3000万円が最低保証額であることを前提に,劇場手数料の2割が計上され,P&A費の立替分として1億円が計上され,アサヒ及びセイコーの協賛金840万円を加えて,委員会収入が計算されていた。そして,劇場売上が2億4320万円であれば製作委員会による追加負担はなく,劇場売上が同額以下であれば原告への支払のための追加負担が発生すること,劇場売上が4億9632万6733円であれば,委員会収入の内の被告ブラの取り分から,浅間製作所,被告ぴあ及び第一興商がP&A費分として入金した合計6480万円の返済が可能であること,劇場売上が6億6025万4363円であれば,委員会収入が製作委員会による出資額と同額になることなどの分析がされていた。(甲38の1,58,59,弁論の全趣旨)
(イ) 浅間製作所は,同会議において「アジェンダ」と題する書面(甲32の1)及び「事業スキーム」と題する書面(甲32の2)を参加者に配布した。前者の書面には,本件映画の撮影制作を担うスーパーフィルムスに対する未払金を含む制作費の確認,委員会契約についての出資比率,権利及び役割の確認,収入の分配,宣伝プラン及び公開劇場,エンドロールのクレジット表記などの会議の議題が項目として記載されており,後者の書面には,本件映画の製作に関するスキーム図が記載され,配給宣伝を原告が受託し,原告が映画館から受領する配給収入は興行収入の50パーセントであること,原告の配給手数料は配給収入の20パーセントで,3000万円の最低保証額の取り決めがあること,宣伝費は1億円で,原告が立て替えた上で本件製作委員会がその返済をすべきこと,被告ら,浅間製作所,第一興商及びTCエンタが本件製作委員会に出資し,配当を受けること,本件製作委員会がスーパーフィルムスに制作費を支払い,その未払分について被告ブラないし被告ブラ代表者が支払うこと,浅間製作所,被告ぴあ,第一興商及びTCエンタが被告ブラ代表者に貸付けをすることなどが記載されていた。(甲32の1・2,乙9,弁論の全趣旨)
(ウ) 原告は,同会議において,「『○○』配給委託に関する条件のご提案」と題する書面(甲3。以下「本件提案書」という。)をその参加者に提示した。
本件提案書には,①本件映画の配給業務委託は,原告と浅間製作所が当事者となること,②原告の受領する配給手数料は,配給収入の20パーセントを基本条件とし,その相当額が3000万円に達しないときは,原告は,優先的に配給収入から3000万円を取得することができること,③P&A費は原告が立て替えるが,製作委員会各社が集めた製作費から本件映画の実行制作費を引いた金額を,優先的にP&A費に充当すること,④P&A費の上限は1億円とするが,製作委員会の事前承認を受けた場合には1億2000万円までその上限を引き上げることができること,⑤原告の立て替えたP&A費の残額は,配給収入から配給手数料を差し引いた委員会収入から優先取得するが,委員会収入がP&A費の残額に満たない場合には,平成27年9月末日までに残額を精算することが条件として掲げられていた。
(エ) 同日時点では,TCエンタも本件製作委員会への出資を打診されて,既に入金していたところ,主演俳優が所属するポニーキャニオンが出資の候補者となったことから,同じビデオグラムの販売者であるTCエンタは,出資者から抜けることとなった。なお,その後未だにTCエンタの支出した出資金は返還されていない。(甲32の2,54,65,被告ブラ代表者)
(4)  原告による配給宣伝業務と本件配給等契約
ア 原告は,平成26年7月頃,b映画館を本件映画の上映館として確保した。本件映画は,同映画館のオープニング作品の一つであり,このことは,平成27年1月5日に公表された。(甲44,65,乙5の1・2,9,原告代表者,弁論の全趣旨)
イ 被告ぴあは,平成27年1月16日,原告に対し,ぴあによる本件映画のプロモーション提案を送付し,被告ぴあに宣伝業務を発注することを提案した(甲38の1・2)。
ウ 原告は,平成27年2月13日,同日に開催された本件映画に関する会議において,被告らに対し,本件P&A表を配布した。本件P&A表では,本件映画の配給宣伝業務におけるP&A費の予算が記載されており,その合計は1億0944万2000円とされ,宣伝費中の大項目として,渉外費が,その中の小項目として,交通費50万円,打合せ費15万円が計上され,また,大項目として外注費が,その中の小項目としてパブリシティ人件費300万円がそれぞれ計上されていた。(甲4,弁論の全趣旨)
エ 原告は,平成27年3月4日に開かれた本件映画に関する会議において,同日時点の劇場のブッキングリストを提示した。同日時点で確保した劇場数は95箇所であった。(甲29,弁論の全趣旨)
オ Dは,平成27年3月6日,原告代表者に対し,出資会社及び協力会社との協議の結果,P&A費の上限を1億円とし,その範囲内での宣伝プランの組み立てを求めるとともに,宣伝スケジュールと費用の明細の提示を求めた。
原告代表者は,同月11日,Dに対し,P&A費の上限額について了承した旨をメールで伝えるとともに,従前合意した条件を基に大至急,本件配給等契約を締結させて頂きたいこと,TVスポットの枠が埋まり始めているため至急発注をかけたいことを連絡した。Dは,配給契約は被告ブラ代表者から連絡が入る旨を返信したところ,原告代表者は,本件配給等契約の契約相手がどちらになるのか尋ねるとともに,委員会との契約であり,被告ブラとの契約ではなく,被告ブラ以外の委員会の代表幹事との契約又は被告ブラともう1社との3者契約でなければ契約はできないと返信した。(争いのない事実,甲5,乙1,2,弁論の全趣旨)
カ Dは,平成27年3月16日,原告代表者に対し,宣伝会議に先立ち,出資者の意見をまとめておく旨を連絡した。原告代表者は,その返信で,TVスポットについて,Dから株式会社クオラスで進めてよいとの了承をもらったことから,2000万円で発注した旨を報告し,これに対し,Dは,TVスポットを1週間に集中するのがよいとの意見を述べた。(甲40)
キ 被告ブラは,平成27年4月1日,原告に対し,本件映画のパンフレットのデザインの相談に関するメールを送信し,Dにもデザインを示した上で,委員会の総意として進めるよう依頼した(甲39)。
ク Dは,平成27年4月6日,原告に対し,パンフレットを送る劇場の送付先を尋ねるとともに,その送付数及び料金のアドバイスを求めるメールを送信し,また,同時に,c法律事務所を訪問して製作委員会の契約について現状の説明をし,被告ブラ代表者とc法律事務所が作成する契約書を待っている状態であるとの報告をした。(甲41)
ケ 原告は,平成27年4月14日,出資者が確定した旨の連絡を受けて,Dに対し,本件配給等契約の契約書案を送付した。同契約書案には,被告らが,原告に対し,被告らを含む複数の出資者により組成される本件製作委員会の幹事会社として,原告との間に本件配給等契約を締結するに必要かつ十分な地位と権能を付与されていること,当該製作委員会の構成員の変動等によっても本件配給等契約の履行に影響・支障が生じないことを保証する旨の条項(4条1項)が盛り込まれ,P&A費の内訳として,その他配給宣伝経費(通信費,交通費,打合せ費,取材費,雑費,イベント費,タイアップ関連費,映倫審査費,申請費など配給宣伝業務に必要な経費を含む。)が挙げられ,その他,前売券販売手数料及びセカンドラン以降のVPF経費はP&A費に含まないとする旨の記載や原告が興行収入等について報告義務を負う旨の記載がある。(甲42,乙4の1)
コ 原告は,株式会社クオラスに依頼して,日本テレビ放送網につき,4月10日から同月19日まで,讀賣テレビ放送・中京テレビ放送・九州朝日放送・仙台放送・静岡第一テレビ・西日本放送・広島テレビ放送・テレビ新潟放送網・青森放送・秋田放送・山形放送・山梨放送・テレビ信州・南海放送・熊本県民テレビ・テレビ大分・鹿児島読売テレビ・石川テレビ放送・北日本放送・長崎国際テレビにつき,同月11日から同月17日まで,本件映画のテレビCM放送をした(甲66ないし88)。
サ 原告は,本件映画に関して配給宣伝業務を行い,P&A費として,別紙「P&A費一覧表(認定)」記載のとおり,合計9662万9455円(税込み)を支出した(なお,下線部付きの数値は,原告の主張額と異なる認定をしたものである。)。中には,第一興商の協力により,全国のカラオケにおいて,本件映画の映像やインタビューを配信したものもあった。
また,原告は,本件映画の宣伝に関するスケジュールを含む宣伝資料を,H,J社長,E社長,D,I社長らに送信するなど,適宜,宣伝業務の予定,その実施内容及びマスコミへの露出状況等を報告していた。(甲15,甲18ないし28,30の2,31,44,49,50,53,60,65,93,94,原告代表者,弁論の全趣旨)
シ 原告は,前売券販売手数料として,チケット1枚分につき98円を負担していたところ,226枚の前売券販売手数料分として,2万2148円を負担した。また,原告は,VPF経費として9720円(いずれも税込み)を支出した。(甲12ないし14)
(5)  本件映画のクレジット表記について
ア 被告ブラ代表者及び原告代表者は,平成27年2月3日,本件映画のクレジット表記に,被告ら,浅間製作所及び第一興商の名称を出すか否か,その方法等について,E社長,J社長,D,浅間製作所のI社長,H,第一興商の担当者を同時送信者に入れて,電子メールで意見を述べた。被告ブラは,「配給・宣伝 ファントム・フィルム」,「『○○』フィルムパートナーズ(浅間製作所,ブラ・インターナショナル,ぴあ,第一興商)」などの記載のあるチラシ等のクレジット表記案や「製作『○○』フィルムパートナーズ(浅間製作所/ぴあ/第一興商/ブラ・インターナショナル)」などの記載のあるポスター案を提案し,SMLも出資を決めており,SMLからの出資額と入金日,クレジット表記する社名を確認している段階であり,間に合えばSMLもこれに加えたいと述べた。(甲35)
イ 被告ブラは,平成27年2月上旬頃,エンドクレジット表記の作成を行ったが,これは,同月18日のマスコミ試写に間に合わせるために,製作委員会の担当者,製作代表者名について,事前に受領したリストから作成したものであり,原稿を被告ぴあ,浅間製作所及び第一興商が事前確認することなく作成されたものである。被告ブラ代表者は,同月7日,同エンドクレジット表記の作成が完了した旨の報告をH,J社長,E社長,D,I社長,第一興商の担当者,原告代表者らにメールで行った。その際,被告ブラ代表者は,追加の出資会社について,被告ぴあ,第一興商やJ社長らと相談しながら翌週には固められるように進めている旨を併せて報告した。(甲36,被告ブラ代表者)
ウ 本件映画の公式ホームページには,「配給・宣伝:ファントム・フィルム」,「製作:○○ フィルムパートナーズ(浅間製作所,ぴあ,第一興商,ソニー・ミュージックレーベルズ,ブラ・インターナショナル)」と記載されている。
本件映画の本編エンドクレジット表記には,「配給・宣伝:ファントム・フィルム」と記載されている。
本件映画が収録されたDVDのパッケージには,「企画・製作:ブラ・インターナショナル」,「配給・宣伝:ファントム・フィルム」,「製作:『○○』フィルムパートナーズ(ブラ・インターナショナル,浅間製作所,ぴあ,第一興商,ソニー・ミュージックレーベルズ)」と記載されている。
なお,本件映画の公式ホームページは,原告が管理している。(甲8,33,乙12,弁論の全趣旨)
(6)  出資者の確定
ア 被告ブラは,平成27年1月や同年2月の時点でも,本件映画への新たな出資者を探し,出資について交渉していた(原告代表者,被告ブラ代表者)。
イ 平成27年2月下旬,SMLが本件映画に出資することが決定し,SMLは,同年3月末頃,本件口座に1080万円を振り込んだ。なお,SMLには,本件配給等契約の条件及び従前の経緯について説明されていた。(前記前提事実(3),乙9,被告ブラ代表者)
ウ 平成27年3月12日に行われた本件映画に関する打合せにおいて,ポニーキャニオンの2000万円の出資予定及びP&A費2000万円の負担について,同週中に結論を得ること,ポニーキャニオンが出資するに当たり,同年1月15日に原告と被告ら,浅間製作所及び第一興商で合意した配給委託に関する提案書の内容を同意済みであることを約すること,ポニーキャニオンの出資の有無にかかわらず,来週中の製作委員会の組成に向けて出資者で協議して契約を締結すること,現状での本件製作委員会の構成員は,本件5社であること,本件製作委員会組成の目途がついたところで,同日合意した同提案書の内容に従って,製作委員会の代表者(出資者から最低2社以上)と原告との間で本件配給等契約を速やかに締結すること,被告ぴあは,製作委員会契約が締結されて製作費の未払が完済されたことが確認できれば本件配給等契約を締結すること,原告は,立て替えているP&A費の広告費の内訳を配給委託契約の契約先となる委員会の代表者に提出することなどが話し合われた。
その後,原告は,同打合せの内容をまとめたメールをDに送付し,被告ブラ代表者に同年3月中の配給委託契約書の作成が期限であり,委員会の組成に注力するよう求めた。(乙3,原告代表者)
エ ポニーキャニオンは,その後,出資を断り,被告ブラ代表者は,平成27年4月13日,原告に対し,ポニーキャニオンが出資を予定していた分について被告ブラが負担する形で出資比率が確定したことをメールで連絡した。その際の出資比率の内訳は,浅間製作所が4320万円で26.147パーセント,被告ぴあが,1080万円で6.537パーセント,第一興商が2160万円で13.074パーセント,SMLが1080万円で6.537パーセント,被告ブラが7881万7624円で47.705パーセントとされ,合計出資額は1億6521万7624円であり,協賛金の合計は980万4000円であった。
原告は,これを受けて,Dに対し,原告及び被告らの3社を当事者とする本件配給等契約のドラフトを送付する旨を連絡したところ,Dは,配給契約は委員会契約の締結後になる旨を返信した。(甲89,乙4の1,7)
(7)  本件映画の公開前後の事情
ア 本件出資契約に関し,平成27年8月31日付けの本件出資契約書案が作成された。本件出資契約書案には,本件5社の名称が記名されているものの,その押印をしているのは,被告ら及びSMLのみである。被告ぴあは,同年9月中旬ないし下旬頃に社内の手続を経て押印した。本件出資契約書案の内容の一部は以下のとおりである。(丙1,証人D)
(ア) 被告ブラは,被告ブラ代表者名義,被告ぴあは,メディア・プロデュース事業局長K名義,SMLは代表取締役L名義である。
(イ) 被告ブラは,製作委員会の幹事会社として,善良な管理者の注意義務をもって,本契約当事者間の調整や本映画の製作・利用等に伴う収支の管理などの業務を行い,その他対外的な契約締結について製作委員会を代表する権限を有するものとする(1条3項)。
(ウ) 本件映画の製作費は,1億7504万4000円であり,P&A費はこれとは別に約1億円を予定する。
本件5社の出資額及びその比率は,被告ブラが7884万円(47.71パーセント),浅間製作所が4320万円で26.14パーセント,被告ぴあが1080万円で6.54パーセント,第一興商が2160万円で13.07パーセント,SMLが1080万円で6.54パーセントとされ,合計出資額は1億6524万円であり,協賛金の合計は980万4000円(いずれも税込み)であった。(2条1項,2項)
(エ) 組合口座は,本件口座とする(同条3項)。
(オ) 被告ブラは,製作委員会を代表して原告との間で配給業務委託契約書を締結し,原告に対し,P&A費の範囲内で本件映画の宣伝業務を行うことを委託する(4条)。
(カ) 日本国内におけるビデオグラム化権の利用担当窓口は,被告ブラであり,日本国内におけるテレビ放映権の利用担当窓口は,被告らの共同であり,カラオケ展開権及び利用権の利用窓口は,第一興商である(7条)。
(キ) 契約の有効期間は,平成27年3月31日に遡って効力を有し,本件映画の著作権存続期間終了日までである(18条)。
イ 原告代表者及び原告の担当者らと被告ブラ代表者は,平成27年4月22日,原告の事務所において面談を行った。同面談は,同月17日,被告ブラ代表者から,本件5社と調整の上,本件配給等契約の相手方とすべき者をいずれの会社にするかの回答を受ける期限として同月22日が設定されていたことから行われたものである。しかし,被告ブラ代表者は,同日までに上記回答ができず,原告代表者は,その対応の不手際等を指摘し,週明けの同月27日までに回答を得るとの被告ブラ代表者の約束を得た。
もっとも,その後も,本件出資契約書案は完成せず,また,本件配給等契約の契約書も作成されなかった。
被告ブラ代表者は,上記面談の中で,製作資金の補填が必要になった場合には本件製作委員会のメンバー全員がその補填をすべき責務があることを浅間製作所に対して説明し,納得を得ようとしていること,同年1月15日の会議の場で,原告が提示した本件配給等契約の条件について,本件製作委員会が合意していたこと,被告ぴあは,同年3月4日及び同月12日に,本件配給等契約の窓口になってもよいと述べていたこと,原告の配給宣伝業務に不足等はないが,より詳細な宣伝のプラン及び宣伝費の内訳の報告をもらいたいという本件製作委員会の要望があることなどを述べた。(甲94,弁論の全趣旨)
ウ 浅間製作所は,平成27年4月23日,被告ブラ訴訟代理人弁護士,D,I社長などに対し,本件出資契約書案に対し,同内容では,被告ブラ代表者から提案を受けて浅間製作所が望んでいた内容と異なり,出資者から外れる方がまだ本来の趣旨に近いこと,支払済みの4320万円はこれを協賛金へ切り替えることを求めるメールを送った(丙2)。
エ 原告は,平成27年6月2日,被告ぴあに対し,配給手数料及びP&A費について支払義務があることを認識しているか否かを問う連絡をした。
被告ぴあは,これに対し,同月10日,被告ら及び原告との3者では本件配給等契約は成立していない旨,他の製作委員会の構成員もいるため,被告ぴあのみでは原告からの要求に対処できない旨,遅くとも同年9月末日までには,本件配給等契約を締結できるよう製作委員会の構成員として善処したい旨を回答した。(甲7,17)
オ 第一興商は,平成28年5月20日,被告らに対し,本件出資契約締結の事実を否定し,また,平成27年1月末日までに本件出資契約が締結できなかったときには,第一興商が被告ブラに支払った前渡金全額が返還される内容の覚書が締結されている旨を指摘し,被告らによる,本件訴訟の訴訟告知を牽制した(丙3)。
カ 原告は,本件映画の公開後,その興行収入及び映画館から得る配給収入の割合等を報告することはなかった(乙9,丙8。証人D,原告代表者)。
(8)  本件映画の二次利用について
ア 被告ブラは,株式会社オゾンネットワークに対し,本件映画の衛星放送権を許諾し,同社は株式会社WOWOWに再許諾している(乙10の2・3)。
イ 被告ブラは,TCエンタとの間で,本件映画のビデオグラム化権の許諾をする契約を締結している(乙10の1)。
(9)  本件映画の配給収入
ア TOHO直営の劇場又は提携劇場及びイオンエンターテイメント株式会社の経営する劇場については,興行収入に対する配給収入の割合が当初60パーセント前後と合意されていたが,本件映画の公開後,概ね40パーセントで一部劇場について45パーセントと改定され,その結果,TOHO直営の劇場又は提携劇場の興行収入は4765万2800円,原告が受領した配給収入は1906万1120円,イオンエンターテイメント株式会社の経営する劇場の興行収入は763万3840円,原告が受領した配給収入は525万2590円であった(甲8,9,16,45の5ないし98)。
その他の劇場における興行収入の合計は,32万8300円であり,これに対する配給収入の割合は,50パーセント又は40パーセントであったことから,原告が受領した配給収入は,14万9530円(いずれも税込み)であった(甲10,45の1ないし4・100・101)。
以上のとおり,原告が,本件映画を放映した各劇場から得た配給収入の合計は,2446万3240円である。
イ 原告が劇場から受領した本件映画による物販収入は,合計414万6560円(税込み)である(甲11)。
(10)  パブリシティ
パブリシティとは,テレビ,新聞,雑誌,インターネットなどの情報媒体に映画に関連する情報を話題として取り上げてもらうよう種々の働きかけを行い,映画の認知度をあげて,ひいては映画に関心をもつ顧客を増やすための活動である。広告とは異なり,広告媒体に対する広告料の支払を要することなく,上記働きかけにより,情報媒体に自主的に話題として取り上げてもらうため,情報媒体での露出に対する何らかの対価を要するものではないことが特徴である。(甲65)
2  被告らによる各覚書(丙14ないし16)及び同覚書に基づく主張並びに被告ぴあによる浅間製作所,第一興商及びSMLの本件製作委員会の組成に関する授権が不存在である旨の主張が時機に後れた攻撃防御方法として却下されるべきであるか否か
(1)  原告は,被告らによる覚書に基づく主張が時機に後れた攻撃防御方法であるとして,その却下を求めるので,以下,検討する。
ア 被告ブラは,証拠調べ手続終了後,弁論終結が予定されていた平成30年1月24日の第3回口頭弁論期日前の同月16日,浅間製作所,第一興商及び被告ぴあが本件口座に振り込んだ資金が,最終的に締結される共同出資製作契約書に基づく出資金であること又は出資金の前渡金であり,本件出資契約が締結されなかった場合には全額を返還する合意があったことなどを立証趣旨として,被告ブラと浅間製作所との間の平成26年4月30日付け覚書(丙14),被告ブラ及び被告ブラ代表者と第一興商との間の同年12月19日付け覚書(丙15),被告ブラと被告ぴあとの間の同年6月19日付け覚書(丙16)を提出し,被告らは,第3回口頭弁論期日において,上記各覚書に基づき,上記立証趣旨と同趣旨の主張をして,本件口座への出金は出資金ではない旨を主張した(被告ぴあ第5準備書面,被告ブラ準備書面8)。
イ 本件では,当初より,本件5社を構成員とする本件製作委員会の成否が主要な争点となっていたところ,被告ぴあ,浅間製作所及び第一興商による上記出金の法的位置付けは同争点に対する被告らの重要な間接事実となり得るものであり,仮に,当該主張がされれば,原告による反論を要することになるから,争点整理及び証拠調べ手続が終了して弁論終結前の段階で,当該主張及びそれを支える証拠(丙14ないし16)の提出行為は,時機に後れたものであり,かつ,訴訟の完結を遅延させるものであるというべきである。なお,被告ブラは,証拠調べ手続が行われた第2回口頭弁論期日に上記各覚書を提出する予定であったとも述べるが,上記訴訟の経過を前提とすれば,同時期における提出であったとしても時機に後れたものといわざるを得ない。
そして,上記各覚書の内容は,いずれも被告ブラを当事者とし,丙第16号証については被告ぴあも当事者とするものであるし,第一興商から被告らに対する通知書である丙第3号証にもその存在を窺わせる記載があることからすれば,これらの提出及び上記主張はそれ以前に提出することが容易であったというべきであるから,その提出が時機に後れたことにつき被告らの重大な過失が認められる。
ウ したがって,丙第14号証ないし16号証及びこれに基づく上記被告らによる,被告ぴあ,浅間製作所及び第一興商による本件口座に対する出金の法的位置付けに関する主張は,時機に後れたものとして,これを却下することとする。
(2)  また,原告は,被告ぴあによる浅間製作所,第一興商及びSMLの本件製作委員会の組成に関する授権が不存在である旨の主張が時機に後れた攻撃防御方法であるとして,その却下を求めるので,以下,検討する。
ア 被告ぴあは,弁論終結が予定されていた第3回口頭弁論期日において,被告ぴあに加え,浅間製作所,第一興商及びSMLについても,本件製作委員会の会議に出席していた担当者等に対して,本件製作委員会の組成に関する授権がされていなかった旨を主張した。
イ 本件では,当初より,本件出資契約には契約書が作成されておらず,原告においても口頭による合意を前提とする主張がされていた。原告の当該主張を前提とすると,本件出資契約に当たり,口頭で合意したとされる本件5社の担当者に本件出資契約を締結する権限が授権されていたことを原告において主張することが必要であるところ,被告ぴあの上記主張は,原告による当該主張及び立証がない旨を指摘するものにすぎず,原告の主張する事実を積極否認するもの又は抗弁事実を主張するものではないから,これが時機に後れた攻撃防御方法であるということはできない。
ウ したがって,被告ぴあの上記主張の却下を求める原告の申立てには理由がない。
3  争点1-2(本件5社又は本件3社を構成員とする本件製作委員会が成立したか,成立した場合には本件製作委員会のために被告ブラが代表又は代理して原告と本件配給等契約を締結したか否か(被告ブラによる本件製作委員会の代表又は代理としての本件配給等契約の締結))について
(1)  原告は,本件5社を構成員とする本件製作委員会が成立しており,本件製作委員会のために被告ブラが代表又は代理して原告と本件配給等契約を締結したことから,本件配給等契約に基づく債務は本件5社全社に連帯して帰属する旨を主張するので,以下検討する。
(2)  本件製作委員会の組成
ア 本件製作委員会の組成の合意(本件出資契約)
(ア) 民法上の組合は,各当事者が出資をして共同事業を営むことを約することにより成立するところ,かかる約束は口頭の合意で足り,特別の方式を必要とするものではない(民法667条1項参照)。
本件では,前記前提事実(3)並びに前記認定事実(2)ア,ウ,オ及び(6)イのとおり,被告ブラを除く本件5社は,被告ブラの呼びかけに応じる形で,本件映画事業のための本件口座に,資金を振り込んでいること,前記認定事実(3)のとおり,SMLを除く本件5社は,平成26年12月以降,度々本件映画に関する会議ないし打合せを開催し,本件映画の資金集め,本件映画の上映に関するスキームの確認及びその収支のシミュレーション,P&A費の上限その他の条件など原告との本件配給等契約の内容について話合いを行っていたこと,前記認定事実(4)サのとおり,原告から本件配給等契約に基づく宣伝業務の予定やマスコミへの露出状況等の報告を受けていたことが認められる。
被告ブラは,この間に,本件映画を企画してその出資の呼びかけを行った者として,原告との間で本件配給等契約を締結したり,出資者を確定させた際には,不足分の資金を全て負担することにするなど,本件製作委員会の幹事会社として行動しており,被告ぴあは,前記認定事実(4)オないしケのとおり,浅間製作所及び第一興商らの意見を集約してP&A費の内訳や上限を伝えるなど,被告ブラとともに,原告との折衝の窓口となり,浅間製作所は,前記認定事実(3)ア,ウ,エ,オ,カ(ア)及び(イ)のとおり,当初は,自らが原告との本件配給等契約の当事者となる意向を示していたこと,アドバイザーとしてE社長やJ社長を関与させつつ,本件映画の製作・利用に関する資金状況,収支のシミュレーション,スキームについて,本件映画に関する会議の際に資料を示し,本件口座を浅間製作所において管理するなど,本件映画に関する事業全般について,被告ブラに次いでその中心的な役割を果たしていたといえ,第一興商は,前記認定事実(4)サのとおり,宣伝業務に協力して全国のカラオケ店において,本件映画の映像等を配信するなど,本件製作委員会の構成員として行動していた。
また,SMLは,本件配給等契約の条件及び従前の経緯について説明を受けた上で,前記前提事実(3)及び前記認定事実(6)イのとおり,平成27年2月末に出資を決め,同年3月末に本件口座に振り込みを行った。
してみると,本件5社は,それぞれ本件映画の製作及び利用のために必要な業務等について,その製作・利用主体として継続的に関わり,本件映画の利用等によって生じた収益についてその分配を得ることを当然の前提にしていたということができ,本件5社は,遅くとも本件映画の公開初日である平成27年4月17日までの間には,少なくとも黙示的に,各々が現金を出資して本件映画を製作し,その利用によって収益を得るという共通の事業を営むことを約していたということができるから,同日までの間に,本件映画の製作及び利用する事業を目的とする民法上の組合(本件製作委員会)を組成することを内容とする本件出資契約を締結していたということができる。
そして,この認定は,前記認定事実(5)のとおり,本件映画のクレジット表記には「『○○』フィルムパートナーズ(ブラ・インターナショナル,浅間製作所,ぴあ,第一興商,ソニー・ミュージックレーベルズ)」などとして,本件5社の名称が記載されているところ,かかるクレジット表記について,少なくとも被告ぴあ,浅間製作所及び第一興商は,平成27年2月3日から同月7日にかけて被告ブラ代表者からその内容の確認を求められていたが,特段その名称が記載されていることについて修正を要請した事実は認められないこととも整合するものである。
(イ) 本件では,本件出資契約にかかる契約書が作成されていないが,これは前記認定を左右するものではない。
すなわち,本件5社は,前記認定事実(2)アないしエ,(3)ア,イ,エ,カ,(4)のとおり,本件映画の製作等に要する資金集めが十分に進まない中,出資者を募り続けながら,逼迫した日程の中,これと同時並行的にスーパーフィルムスに本件映画の撮影を委託し,被告ブラは,原告との間で本件配給等契約を締結して,原告にb映画館のオープニング作品とすべく劇場公開に向けた上映館の予約,その他の配給宣伝業務を行わせるなど,本件映画の製作及び利用に関する事業を継続させていたのであり,出資者の追加を想定しつつ,本件製作委員会の目的とする事業を行っていたのであるから,本件5社としてもなるべく多くの出資者が参加するよう可能な限り出資者を探していたという状況の中で,最終的に出資者が確定するまで契約書を作成せず,契約書の作成可能となる時期が本件映画の公開に近い時期となったことも,当然の成り行きであってやむを得ない面がある。
また,前記認定事実(7)のとおり,平成27年8月31日付けの本件出資契約書案が完成しなかったのは,浅間製作所及び第一興商が押印を拒絶したことによるところ,前記認定事実(3)カ(ア)のとおり,浅間製作所が示したシミュレーションに追加の支出がありうることが記載されていたこと,浅間製作所が映画業界に疎かったとしてもE社長やJ社長というアドバイザーとしての立場にあった者と相談することが可能であったことからすれば,本件製作委員会の構成員がその目的とする事業について無限責任を負うことは十分に認識していたといえ,浅間製作所及び第一興商が,翻意することに合理的な理由はなく,無限責任を負うことの認識がなかったとか,本件出資契約を締結する意思がなかったということも考え難い。
そうすると,本件出資契約書案が完成しなかったのは,遅くとも本件映画の公開初日である平成27年4月17日までの時点において本件出資契約書案に基づく意思の合致がそもそも存在しなかったからではなく,意思の合致があった後に,前記認定事実(3)及び(6)の本件映画の公開に至るまでの会議,打合せ等における状況や出資者の確定に至る状況,また,本件映画の公開後の状況等を踏まえて,浅間製作所及び第一興商が,当初本件出資契約により得られると想定していた利益が得られるどころか,現実に相当程度の損害を負担することとなる可能性を認識したために翻意したことによるものであると推認できるから,本件出資契約書案が完成せず,契約書が不存在であることが本件出資契約の成否を左右するものではない。
(ウ) 被告らは,クレジットの表記など,本件製作委員会の成立に向けた事実経過と法的評価を区別すべきであると主張する。
しかし,一連の本件5社の事実経過が,本件5社において契約締結前に本件製作委員会の組成を見越して行われていたものだとしても,本件映画の製作・利用によって収益が生じるか損失が生じるか否かは,本件映画の公開後に明らかになるところ,本件映画の公開後に,本件製作委員会を組成するか否かを決定することを許せば,資金負担者のみが事業リスクを負う結果を招き,そもそもの製作委員会方式によるメリットを没却することになって,およそ経済的合理性がなく,本件映画の公開後に本件製作委員会を組成するか否かを決定することが本件5社の間の合理的意思であると認めることはできない。本件映画の公開日まで本件製作委員会の成立を断念したという事情がない限りは,本件映画の公開により,本件製作委員会を組成するに至ったというべきである。
したがって,被告らの上記主張は採用することができない。
また,被告らは,本件出資契約は,本件5社を構成員とすることが前提であると主張するが,前記(イ)において説示したとおり,本件出資契約は本件5社を構成員とする内容で成立しており,事後的に浅間製作所及び第一興商が脱退を求めているにすぎないと評価すべきであるから,被告らの上記主張は採用することができない。
イ 担当者への授権
(ア) 前記(2)アにおいて説示したとおり,本件5社は,いずれも,本件口座に資金を出金した上,その後も本件映画を製作・利用する主体として行動しており,その担当者への権限の授権に疑いがあることを窺わせる事実はなく,本件5社それぞれの担当者は,本件出資契約の締結に関する権限を有していたということができる。
そもそも,前記認定事実(3)オ,(4)サ,(5)ア,イのとおり,浅間製作所のI社長も,本件5社間の本件映画に関するやり取りを行う際のメールの同時送信者の宛先になるなどしており,担当者が権限なく本件出資契約を締結していたとは考え難いし,前記ア(イ)において説示したとおり,浅間製作所及び第一興商が本件出資契約書案に押印を拒否したのは,損失の負担を嫌ったためであることが窺え,本件出資契約当時の担当者の無権限ないし意思の不一致によるものであったとは認めることができない。
また,前記認定事実(7)アないしウのとおり,被告ら及びSMLは,本件出資契約書案に押印をしているところ,その内容は,本件5社を出資者とする点及びその出資割合も平成27年4月17日までに確定したものと異ならないだけでなく,既に原告が行った配給宣伝業務に関する本件配給等契約の締結も予定されるなど,本件出資契約の契約書作成前までの原告の従前の業務及びそれに伴う事業費等の発生等の既成事実を前提とするものであり,仮に,担当者が無権限であった場合に,浅間製作所から既に支出した金員につき出資金から協賛金に切り替えを求める趣旨の連絡を受け,浅間製作所が本件出資契約書案への押印を拒否する姿勢を示した後に,本件出資契約書案に押印するとは通常考え難いことからすれば,それぞれの担当者は本件出資契約を口頭で締結する権限を有していたということができる。
(イ) この点,被告らは,Dには,本件出資契約を締結する権限はなかったと主張し,Dはこれに沿う供述をする(乙9,証人D)。
しかし,被告ぴあは,前記ア(ア)において説示したとおり,本件口座に出金をしているだけでなく,その後の本件映画の公開に向けた行動も本件製作委員会の構成員としての行動であると評価できるところ,これらの行為を何らの法律関係に基づかずに行うとはにわかに考え難く,本件出資契約を締結することについての必要な社内手続を経て,既にDに対する授権があったというべきであり,これに反するDの供述は信用することができない。
したがって,被告らの上記主張は採用することができない。
ウ 被告らの本件製作委員会が組成されていない旨の主張について
被告らは,原告が本件製作委員会の組成に注力するよう述べていたことを捉えて本件製作委員会が成立していないと主張する。
しかし,前記認定事実(6)ウのとおり,原告の同発言のあった平成27年3月12日には,未だポニーキャニオンなどの出資者が確定していた段階ではないが,本件5社は少なくとも本件製作委員会の構成員であることを前提とした話し合いをし,被告ぴあからは,本件出資契約が締結され,スーパーフィルムスへの制作費の未払が完済されてから,原告と本件配給等契約を結ぶとの方針が示されており,原告としては,本件配給等契約の書面化を求めるために,その前提としての製作委員会の確定を求めていたにすぎないと解されるから,被告らの上記主張は採用することができない。
さらに,被告らは,本件出資契約書案の記載にかかわらず,被告ブラのみが本件映画の衛星放送権許諾の窓口となっていることから,本件製作委員会は組成されていない旨を主張するが,これまで説示した本件出資契約書案の作成経緯に照らして,当面の間被告ブラのみが窓口となっていたにすぎないというべきであるから,被告らの上記主張は採用することができない。
エ 以上によれば,遅くとも平成27年4月17日までの間に,本件5社の権限を有する担当者によって,本件映画の製作及び利用する事業を目的とする民法上の組合(本件製作委員会)を組成することを内容とする本件出資契約が締結され,本件5社を構成員とする本件製作委員会が組成されていたというべきである。
(3)  本件配給等契約の締結
ア 本件5社は,前記(2)ア(ア)において説示したとおり,原告による本件配給等契約に基づく業務の内容及びその対価ないし費用に当たるP&A費の上限について話合いを行うなど,原告が被告ブラとの間の本件配給等契約が,本件映画のために行われ,その対価が本件映画に係る事業費を構成することを当然の前提として行動していたということができるから,被告ブラは,本件配給等契約を本件製作委員会のために締結したということができる。
イ 被告らは,被告ブラが単独で本件製作委員会とは無関係に自らのみに効果帰属させる意思で本件配給等契約を締結したと主張するが,前記のとおり,本件5社は,いずれも本件映画の製作・利用による収益の分配を受ける前提でいたのであるから,本件配給等契約に係る債務を被告ブラのみが負担する理由はないし,被告ぴあとしても,前記認定事実(7)エのとおり,本件配給等契約は本件5社全員に帰属すべきものであると考えていたことからすれば,被告らの上記主張は採用することができない。
ウ 被告らは,その他に本件配給等契約が本件5社に帰属していれば,原告から興行の報告があったはずであるが,それがなかったと主張する。しかし,原告代表者は,その尋問において,本件配給等契約の締結にもかかわらず,その契約書面が作成されなかったことから,報告を行わなかった旨を述べており,その説明についても一定の合理性が認められることに照らせば,同報告の不存在をもって,本件配給等契約が本件5社に帰属していた事実を否定するに足りない。
(4)  本件配給等契約成立と本件出資契約成立の先後等
本件配給等契約及び本件出資契約の成立に至る経緯に鑑みれば,本件配給等契約が本件出資契約よりも前に被告ブラと原告との間で成立していた場合であっても,本件配給等契約は,本件映画の配給・宣伝業務を委託するもので,本件製作委員会がその目的とする本件映画の製作事業にとって必要不可欠のものであり,本件出資契約の際に本件配給等契約の存在を前提にこれを事後的に本件製作委員会のための契約として追認する趣旨を有していたことは明らかであるから,本件配給等契約及び本件出資契約の締結時期の先後にかかわらず,本件配給等契約は,本件製作委員会に帰属するというべきであり,これらの先後は本件配給等契約が本件5社に帰属するとの上記結論を左右するものではない。
(5)  小括
よって,遅くとも本件映画が公開された平成27年4月17日までの間に,本件出資契約が口頭で成立し,本件5社を構成員とする本件製作委員会が組成されているところ,本件配給等契約は,被告ブラが本件製作委員会の事業のために,原告との間で締結したもので,本件配給等契約は本件製作委員会に帰属し,本件5社は,いずれも株式会社であるから,商法511条1項により,本件配給等契約に基づく債務は,被告らを含む本件5社が連帯してその責任を負うと解するのが相当である(最高裁判所平成6年(オ)第2137号同10年4月14日第三小法廷判決・民集52巻3号813頁)。
4  争点2(本件配給等契約に基づいて原告が立て替えた精算対象となるP&A費の範囲)について
(1)  原告が要したP&A費
前記認定事実(4)サのとおり,原告は,本件映画の配給宣伝業務に関し,P&A費を別紙「P&A費一覧表(認定)」のとおり,税込み合計9662万9455円を支出した。
前記認定事実(4)のとおり,原告が本件配給等契約及び本件出資契約締結前から,本件映画のための配給宣伝業務を実施してP&A費を支出していたことが認められるものの,本件映画の配給宣伝業務に関するものである以上,原告及び被告ブラは,同時期に支出したP&A費についても,本件配給等契約に基づく支出として扱うことを当然の前提としていたといえる。したがって,本件配給等契約前に原告が支出したP&費についても,本件配給等契約の対象であるというべきであり,ひいては,前記3(4)及び(5)において説示したとおり,本件出資契約に基づき本件製作委員会を構成する本件5社にその効果が帰属するというべきである。
なお,被告らは,原告がこれらの費用を支出したか疑わしいと主張するが,抽象的な主張に留まり,それを具体的に疑わせる事実についての主張・立証がないから上記被告らの主張は採用することができない。
(2)  P&A費の範囲について
ア 原告は,P&A費について,配給会社自らの業務の対価をことさら除外するものではなく,現に原告が支出した金残及び原告社内で要した費用に加え,管理費を上乗せすることができると主張する。
P&A費の合意について,事前に配給宣伝業務の詳細な内容や業務量について,明確にできず,概括的・包括的な業務委託となって,配給会社の裁量に委ねる部分も大きく,精算金額や上限金額という形で合意することが多いことが窺え(甲65),被告ぴあ提出にかかるP&A表(乙8の1)にあるように,値引きその他価格調整をして予算と実際に要したP&A費を一致させる事例が映画業界に存在することが窺えることを踏まえても,このような事情から直ちに精算金額ないし上限金額として事前に合意された金額と実際に要した費用との差額が,配給宣伝会社の収入又は損失になるとはいえず,証人F及び原告代表者もその尋問において,予算上のP&A費と実際に要したP&A費に差額が生じた場合にはその精算を求める場合がある旨を供述していることに照らすと,P&A費の上限額として決めた金額以下に実際の支出を抑えればその差額は配給宣伝会社の報酬となるとの合意が必ずしも存在するとはいえず,本件配給等契約においても,そのような合意があったことを窺わせる事情は認めることができない。
また,宣伝業務に係る報酬の合意を認めるに足る証拠はなく,原告が支出した額の15パーセント相当分を管理費としてP&A費に含めている部分について,これらを宣伝業務に対する報酬であるということはできない。
さらに,証拠(甲52,乙4の2,8の1・2)及び尋問の結果(証人F,原告代表者)によっても,本件映画以外のケースにおいて管理費を明確に計上しているケースは見当たらず,原告も本件P&A表で管理費を計上するものでもないから,一般に実際に要した宣伝費及び自社内で要した宣伝費に加えて,一定割合の管理費を上乗せすることができる合意があったということはできない。
イ 被告らは,P&A費が委託契約における費用償還請求権としての性質を有し,請求が可能なのは実際に支出した額に限られ,かつ,必要かつ相当と認められる額を超える部分については請求することができず,例外的に配給会社自らが広告素材等の制作を自社で行ったときに第三者が当該作業を行った場合に通常請求するであろう金額と同等の金額を請求できるにすぎないと主張する。
しかし,費用償還請求権としての性質を持つことから直ちに実際に支出した費用のみを請求できるということにはならないし,P&A費の立替えとは,映画の配給宣伝に要する費用を映画製作者側が最終的に負担する場合において,配給宣伝業務を受託した配給会社に対してその要する費用を事前に支払うのではなく,事後的に配給収入等から優先回収させることを意味するものであり,宣伝業務を外注することなく,配給会社自らが当該業務を実施することも想定されていること(甲52,甲55,証人F)からすれば,原則として原告が実際に支出した額に限られるということはなく,被告らの上記主張は採用することができず,原告が社内で賄ったとする宣伝プロデューサー費及び宣伝パブチームの費用についてもP&A費であるということができる。
また,被告らは,原告が支出したと主張するP&A費のうち,配給業務のための会議費,接待費,交通費,人件費に当たるものは宣伝費ではないと主張するが,これらの支出が本件配給等契約に基づく宣伝業務に関連していると認められることは前記のとおりである。
(3)  以上より,原告がP&A費として請求することができる額は,9662万9455円及びこれに対する平成27年10月1日から支払済みまでの商事法定利率年6分の割合による遅延損害金であるというべきである。
(4)  これに対し,被告らは,P&A費の遅延損害金に関し,本訴提起後に初めてP&A費の明細が開示されたことから,平成27年10月1日を起算点とするのは不合理であると主張するが,前記前提事実(4)のとおり,本件配給等契約においては,遅くとも同年9月末を精算時期と合意していた以上,被告らの上記主張は採用することができない。
5  争点3(本件配給等契約に基づいて原告が受領すべき配給手数料等の額)について
(1)  前記認定事実(9)のとおり,原告が,本件映画を放映した各劇場から得た配給収入は,合計2446万3240円であり,物販収入は合計414万6560円であり,原告の配給収入は合計2860万9800円である(いずれも税込み)。
そして,前記前提事実(4)のとおり,本件配給等契約における原告の配給手数料の最低保証額は,3240万円(税込み)であるから,上記配給収入合計金額との差額である379万0200円が,被告らを含む本件5社からの配給手数料の未払分である。
したがって,原告は,本件配給等契約に基づき,配給手数料の残額379万0200円及びこれに対する平成27年10月1日から支払済みまでの商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。
(2)  原告は,前売券販売費用,前売券販売手数料及びVPF経費については,これをP&A費から除外するとの合意が存在するから,これらに要した費用を受領済み配給手数料から控除すべきであると主張する。
確かに,前売券販売費用,前売券販売手数料及びVPF経費は,配給業務に係るものであり,宣伝業務の費用としての性質を持つP&A費には含まれないとも考えられる。しかしながら,そもそも,前売券販売費用,前売券販売手数料及びVPF経費が配給業務に関する費用であるとしても,配給業務に関して生じる費用が全て本件5社の負担となる旨の合意は認められないし,前記認定事実(4)ケのとおり,本件配給等契約の契約書案には,前売券販売手数料及びセカンドラン以降のVPF経費はP&A費に含まれないとする旨の記載があるものの,被告ぴあの提出する過去のP&A表(乙8の2)では,前売券販売費用(前売券印刷代とシステム使用料)と前売券販売手数料について,P&A費とは区別されていること,映画制作会社である株式会社セディックインターナショナルの代表取締役であるMの陳述書(甲52)においても,配給経費の中で,プリント費と宣伝費がP&A費に当たると説明がされ,その他の前売券製作費・販促費及び前売券販売手数料と区別がされていることに照らせば,原告の上記P&A費から除外するとの合意が存在するとの主張を採用することはできず,これらの費用を受領済み配給手数料の額から控除することはできない。
(3)  他方,被告らは,原告の得た配給収入が原告の主張額に限られるか不明であると主張するものの,その抽象的可能性を指摘するのみで,他に配給収入が存在することを窺わせる事情を何ら主張立証するものではないから,被告らの上記主張は採用することができない。
第4  結論
以上によれば,その余の争点について判断するまでもなく,原告の請求は,被告らに対し,1億0041万9655円及びこれに対する平成27年10月1日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める限度で理由があり,その余の請求には理由がないから,上記限度で原告の請求を認容し,その余の請求を棄却することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第5部
(裁判長裁判官 吉村真幸 裁判官 鈴木秀孝 裁判官 野田翼)

 

〈以下省略〉

 

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