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「営業アウトソーシング」に関する裁判例(61)平成24年10月15日 東京地裁 平23(ワ)19589号 損害賠償等請求事件

「営業アウトソーシング」に関する裁判例(61)平成24年10月15日 東京地裁 平23(ワ)19589号 損害賠償等請求事件

裁判年月日  平成24年10月15日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平23(ワ)19589号
事件名  損害賠償等請求事件
裁判結果  一部認容  文献番号  2012WLJPCA10158007

要旨
◆原告が、フリーライターである被告のブログに掲載された記事及び原告の顔写真等によってプライバシー権及び肖像権を侵害され、名誉を毀損あるいは侮辱されたと主張して、被告に対し、不法行為に基づき慰謝料等の支払を求めるとともに、当該記事等の削除及び同ブログへの謝罪広告の掲載を求めた事案において、被告のブログ記事等の掲載による原告に対する名誉毀損、侮辱、プライバシー侵害及び肖像権侵害を認定した上で、原告の権利救済として、ブログ記事等の削除のほかに、慰謝料50万円、弁護士費用5万円の損害賠償を命じたが、謝罪広告の掲載は不要と判断し、請求を一部認容した事例

参照条文
民法709条
民法710条
民法723条

裁判年月日  平成24年10月15日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平23(ワ)19589号
事件名  損害賠償等請求事件
裁判結果  一部認容  文献番号  2012WLJPCA10158007

東京都千代田区〈以下省略〉
原告 X
訴訟代理人弁護士 髙木薫
東京都中野区〈以下省略〉
被告 Y
訴訟代理人弁護士 青山力
同 菊地陽介

 

 

主文

1  被告は,被告のブログ上の原告に関する別紙1の記事ないし記載を削除せよ。
2  被告は,原告に対し,55万円及びこれに対する平成23年5月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3  原告のその余の請求をいずれも棄却する。
4  訴訟費用は,訴え提起手数料のうち4万3000円を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。
5  この判決の第2項は,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
1  被告は,被告のブログ上の原告に関する別紙1の記事ないし記載を削除するとともに,別紙2記載の謝罪広告を同別紙記載の条件で同ブログ上に1か月間掲載せよ。
2  被告は,原告に対し,1100万円及びこれに対する平成23年5月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
1  争いのない事実
(1)ブログの記載並びに前科及び顔写真の掲載
被告は,フリーライターであり,『Yの日記帖』という被告のブログ(http://〈省略〉。以下「被告ブログ」という。)上において,平成23年5月21日から同年6月5日にかけて,原告の許可なく別紙1の記事・原告の顔写真を掲載し,現在も被告ブログに掲載している(以下別紙1の番号に従い,各ブログの記載をブログ1~17という。ブログの記載内容は,別紙3の1~17のとおりである。別紙3の枝番号は,別紙1の番号に対応する。)。
ブログ1~17には,以下の記載がされ,ないし記事の引用がされているほか,原告には平成15年1月に逮捕され平成17年5月頃に確定した詐欺・特定商取引に関する法律違反の前科(以下「本件前科」という。)があるところ,ブログ1,3,6,7には,本件前科について記載され,または本件前科に関する記事が掲載(引用)されている。
ブログ1において,被告は,「A1,A2,A3などの名前を使い分ける,○○書籍,a社,b社,△△サイトの実質的経営者,X氏がついに情報紙デビュー。」として,平成23年3月25日付「□□サイト」の記事(甲19)をそのまま引用及び記事そのものを掲載しているところ,当該引用記事には,「ネット恐喝の司令塔は前科2犯の男」との見出しで「X一味・一派が執拗にサイバー・ネット攻撃を,c社とF社長に集中したことによって,巧妙に狡猾に巨額の金品を巻き上げようとしている意図は明白である。」「ことに,黒幕のXは,ネット創生期に同様手口で詐欺・恐喝まがいの事件の主役をつとめたことで検挙された「前科2犯」の前歴がある」との記載がある。
ブログ3において,被告は,「Xの被害者のページも発見」として,有限会社d(以下「d社」という。)のホームページ上の記事をそのまま引用しているところ,当該記事には,「彼らは電話帳タウンページで調べ,d社が「テープ起こし」のベテランで,この仕事に精通してノウハウを持っていることに狙いをつけてきたのだった」「彼らはまったくのシロウトだったから,その知識を欲しかったのだろう」「請求書を送ると,すでに用意していたかの如く数日で,「内容証明つき郵便」が送り返されてきた」「最初は相手の能力を罵倒し,後半は脅し攻撃するのは,典型的なヤクザのやりかた」「若い割に,こういう踏み倒しに慣れている,と思わざるを得なかった」「新聞にも報じられているごとく,相手に正当な代価を払わないとうに常に悪知恵を働かしているのが見える」「以前に手本となる経験をしているのではないかと思った」「これ以上,この様な男と争ったところで,傷つけられることばかりだろう」「このように多くの人々を巻き込むまでに発展,逮捕されて,再び同じような罪を繰り返さなければよいと思う」などの記載がある。
ブログ7には,「X氏は(略)e社に対して恐喝を働いたとして,同社より恐喝容疑での被害届が万世橋警察署に提出され,受理されたという情報がもたらされました」「私はX氏から訴訟を提起すると脅迫されています」との記載があり,ブログ8には,「e社はX氏を恐喝容疑で万世橋警察署に被害届を提出し,受理されました」との記載がある。
ブログ11には,「事件屋・X氏は,これまで多くの人をだまし,脅し,金をむしり取り,言うことを聞かなければ,執拗なネット攻撃を繰り返してきました。」との記載がある。
(2)ブログ記事の記載に係る事実の経緯
① 原告と被告の関係について
原告は,a株式会社(以下「a社」という。)を実質的に経営している者であり(乙26),「a社・A3」又は「o会・A3」のペンネームを用いる(乙18,乙19)。原告は,遅くとも平成19年12月頃から株式会社b(以下「b社」という。)の実質的な経営者であり(乙1),同社を実質的に経営するにあたり,相談役「A2」の名を使用していた(乙13,乙25)。原告は,f株式会社(以下「f社」という。)の相談役として同社から「○○書籍」購入者向けメールマガジン(乙4)を発信するにあたり,「A1」の名で上記メールマガジン記事を発信し,又は「A1」の名で記事を書く同社の担当者に対し上記メールマガジン記事を作成して発信するよう依頼若しくは指示をしていた(乙2)。
被告は,平成21年8月頃,株式会社gの登記簿上の代表取締役であるCから,「△△サイト」なるウェブサイトに掲載する記事並びに同ウェブサイトと連動する紙媒体によるパブリシティ活動として使用する記事について取材及び執筆する業務の依頼を受けた。被告は,「△△サイト工程表」(乙6)記載のとおり,「特報Eコマースの闇 D&Y(被告)が斬る,情報詐欺最前線第2回e社16000w」「同第3回インフォポイント16000w」というコンテンツの取材活動と記事執筆を担当することになった。被告は,平成21年10月7日,「a社のA3」を名乗る原告と会い,取材対象についての基本的な情報の提供を受け(乙2),また,取材期間中である平成21年11月頃,再度原告と打合せを行った。被告は,上記パブリシティ活動として,Cを通じ原告に諮った上で,取材活動をもとにした記事を雑誌「月刊◎◎」に寄稿した。
② 原告によるe社批判(平成19年7月~平成20年7月)
f社は,平成19年7月頃,「○○書籍」なる電子書籍を販売した。「○○書籍」とは,多数の「情報商材」を購入し,ダイジェストを紹介しながら批評する電子書籍の商品名である。平成21年度に発売された「○○書籍2009-2010」は,f社からa社に販売元が変更された。「情報商材」とは,投資やギャンブルなどのノウハウや裏技であると称し,一般書籍と比較して高額で販売するものである(乙3)。
株式会社e(以下「e社」という。),h株式会社(以下「h社」という。),株式会社c(以下「c社」という。)は,いずれもインターネット上で情報商材を掲載し,これら情報商材の販売者と購入者との間の当該情報商材の代金決済を代行することを主な業務とする会社であり,各社は業務上競合する関係にある。このような業務を行う会社をASP(アフィリエイト・サービス・プロバイダ)ともいい,ASPとは,アフィリエイトプログラム(成功報酬型広告。ウェブサイトに広告媒体を設置し,当該広告によって閲覧者が商品等を購入し,発生した利益に応じて広告媒体に成功報酬を与える広告形態をいう。)を提供する広告企業をいう(乙8)。e社をはじめとするASPの多くが,自社ホームページにて情報商材の広告を載せ,その販売に係る代金決済の代行業務を行っている。
f社は,平成19年9月頃から,上記「○○書籍」の購入者向けに「f株式会社編集部 A1」の文責によるメールマガジンを発行し,e社の情報商材販売用のウェブサイトのランキングで上位に位置する商材を対象として,「詐欺商材である」「特商法違反である」などの批判を展開した。また,e社が常習的に詐欺的商法を行う悪質業者であるかのように記載し,同社や同社の代表取締役であるEを厳しく非難した(乙4)。
「f社・A1」によるメールマガジンにおけるe社と同社のウェブサイト上で販売されている情報商材の批判記事の配信は,平成20年7月頃まで続いた。
③ 原告とc社との間の経営コンサルティング契約等
原告が「相談役・A2」の名で実質的に経営していたb社は,平成20年5月22日頃,c社(代表取締役F)と,c社及び同社支配企業の経営,業務,法令遵守に係る助言及び業界の市場分析の遂行の委託によりc社の業務拡大と経営の安定,消費者の保護に資することを目的とする経営コンサルティング契約を締結した(乙12)。コンサルティングに係る報酬は,月額200万円のほか,c社と同社が支配する関連会社の情報コンテンツの月次販売額が一定額を超過した場合に成果報酬を支払うものとされた。また,b社は,c社と,平成22年2月21日,h社の全株式の買収及び経営権獲得に関する交渉業務の委託契約を締結した(乙14)。
しかし,c社は,平成22年3月4日付原告及びb社宛通知書(乙15)で,h社の株式買収に関する交渉業務委託契約が委任の目的を達し得ないことが確定したことを理由に終了したと通知し,平成22年3月29日付原告及びb社宛通知書(乙16)で,前記経営コンサルティング契約を解除すると通知した。ところで,この経営コンサルティング契約によると契約終了後も最低半年間,c社の関連するサイトの販売促進につながらない行為をしてはならないものと定められていた。
④ 原告によるc社批判(平成22年10月~平成23年4月)
前記③の解除通知から5か月が経過した平成22年9月頃から,原告が実質的に経営するa社は,同社の発行するメールマガジンにおいて,「まだ企業名は書けないが『即金系ASP』を追及する」旨記載し(乙18),また,平成22年10月6日,原告は「株式会社b」として,c社の代表取締役F宛に「今日辺り弁護士から通知が届いていると思いますが,期日を過ぎれば私もFさんとの話し合いによる解決を諦め,粛々と打てる手を打たざるを得ません」などと記載したメールを送付した(乙17)。
原告は,「a株式会社・A3」又は「o会・A3」の名で,平成22年10月から平成23年4月頃までの間,a社から販売されている「○○書籍」の購入者向けメールマガジン(乙18)や,a社のブログや,c社とその関係会社の経営者らの顔写真の入った「第1弾」などと銘打った特設サイト(乙20,以下「特設サイト」という。)に,「情報商材組織詐欺 c社・副業出版グループ」などと銘打ち,「c社は行政処分を受けた詐欺会社であり,計画倒産を目論んでいる」との趣旨の記事を掲載した。また,c社及び関連会社と,これらの会社の役員の実名を挙げて「拉致未遂や恐喝を行っている」との主旨の記事や(【第2回】c社・副業出版の内幕【拉致未遂と恐喝】),同人らの住居の階数や同人らの子,恋人のイニシャル(及び元タレントである当該恋人の出演していた番組名)を記載した上で「その幸せは,法を犯し,多くの善良な消費者の期待を踏みにじり,他人の財物を詐取することによって成り立っていることを。そしてその因果はいつか自分の子供に巡ってくるという,世の法則を,肝に銘じて欲しい。」などと記載した記事(【スクープ】c社悪党にメリークリスマス&コンクリートミキサー車に乗るグループ社長)や,「ブログ100サイト作戦」「ローラー作戦」など銘打ち,インターネット上で協力者を募集した上で,これにより,c社から情報商材を販売している者を個別に取材して追及する企画(【突撃記者募集】販売者住所をローラー作戦【54万部配信】)を掲載した(乙18,乙19)。
これらの記事は,「○○書籍」購入者等のa社が入手したメールアドレス宛に送信されるとともに,情報商材を評価する個人サイトや,「※※」等の掲示板サイトに転載され,インターネット上で広く流布された。
⑤ c社に対する訴訟提起と和解
a社が④のインターネット上での批判を展開している最中である平成22年11月26日,b社は,株式会社i(以下「i社」という。)と共に,c社とFに対して,未払のコンサルタント報酬の支払と,h社の経営権譲渡がc社とFの責任で不調に終わり,b社とi社を排除して直接契約したことによって両社が被った損害の賠償の合計1億6000万円の支払を求める訴えを提起した(乙20)。c社とFは,前記③の経営コンサルティング契約が強迫に基づいて締結したものであり取り消す,暴利行為による公序良俗違反であるなどの主張を展開し,訴訟上争う姿勢を見せた(乙21~24)。
他方,訴訟外では,原告は,双方の訴訟代理人弁護士を通さず平成23年3月11日付で直接Fに手紙を送付し,和解を提案した(乙25)。その後,平成23年6月1日付で,c社及びFとb社,i社及び原告との間で訴訟外の和解が成立した(乙26)。
2  原告の主張(請求の原因)
(1)プライバシー権侵害
確かに,原告には本件前科があるが,前科や犯罪経歴は個人のプライバシーのうちでも最も他人に知られたくないものの一つである。加えて,本件前科から約6年が経過し,原告は現在真面目に更生し,コンサルタント業や執筆業等の仕事をして新たな生活環境を形成しており,公職者や公職候補者等公的立場にある者ではないことはもちろん,原告の社会的活動の性質あるいはこれを通じて社会に及ぼす影響力も一般市民と何ら異なることはない。また,本件前科ないしこれに関係する事実を公表することに歴史的意義も社会的意義も全くない。特に,実名及び顔写真まで公表する意義は皆無である。したがって,原告については,本件前科ないしこれに関係する事実を公表されない法的利益が優越するのであり,原告について,前科の内容のみならず,実名及び顔写真を含む記事等を公表することは,かかる法的利益を侵害し,不法行為が成立する。この点,ブログ上での文章・記事の掲載は,現代におけるインターネットの普及率,インターネットの簡易・迅速性,時間的・場所的無限定性に鑑みれば,新聞・雑誌やテレビ等の報道と同等もしくはそれ以上の影響力を有するのであり,被告ブログ上で実名及び顔写真を掲載することは,違法性が極めて高い。
(2)肖像権侵害
ブログ1~16には,原告の顔写真が掲載されている。原告が被告に原告の顔写真を被告ブログ上で公表することを承諾した事実が無いことはもちろん,原告の顔写真を公表することが公共の利害に関するとはいえず,また,顔写真の公表に公益性は全くない。加えて,上記のとおりのブログの影響力に鑑みれば,手段の相当性も認められない。したがって,被告ブログによる原告の顔写真の掲載(顔写真入り新聞記事の掲載)は,原告の肖像権ないしみだりに写真を公表されない法的利益を侵害するものであり,不法行為が成立する。
(3)名誉毀損(侮辱)
被告は被告ブログ上において,別紙1及び3のとおりの記載ないし記事の引用をしているところ,これらの記載は,原告の名誉を毀損し,ないし原告を侮辱するものである。被告は,原告を害する意図を持って,被告ブログ上において,短期間に執拗にこれらの記載をしたものであり,その違法性は極めて強い。
ブログ1において被告が引用している「□□サイト」の記事の主旨は,経営コンサルタントで文筆業をしている原告が,原告が関係している企業を駆使してc社と同社のオーナーであるFに対して不当訴訟を提起し,さらに,原告がインターネットを使用したサイバー攻撃を仕掛け,企業恐喝を企てているというものである。当該記事では,原告のことを「X」とイニシャル表記しているが,「Xが,かつて,東京・平河町2丁目のjビルの一室を借りて「kセンター」(資本金1千万円)の代表取締役をしていたのを突き止め」「「kセンター」は平成15年4月に“破産宣告”を受け」等の記述から,当該記事は,不特定多数の者が原告だと特定できるものとなっている。現に当該記事をブログに載せた被告も「Xがついに情報誌デビュー」としており,Xが原告だと特定している。当該記事では,原告について,「ネット恐喝の司令塔は前科2犯の男」「ネット創生期に同様手口で詐欺・恐喝まがいの事件の主役をつとめたことで検挙された「前科2犯」の前歴がある」「巧妙に狡猾に巨額の金品を巻き上げようとしている意図は明白」「c社に対するネット攻撃が,(略)“捜査対象の網の目”にかかってしまったことだ」「“企業恐喝の犯罪の可能性”を敏感に読みとった捜査当局の“監視の目”があった」などとして,前科2犯の企業恐喝グループの黒幕であり,警察が,原告が企てる恐喝行為を捜査対象としたことを報じている。当該記事は,前科2犯の原告が(実際は1犯),ネット攻撃による詐欺・恐喝によって,企業から多額に金品を巻き上げており,それが警察の捜査対象となっているかのような印象を読者に与える。かかる記事は,全く事実に反し,原告の社会的評価を著しく低下させるものであり,かかる記事をそのまま引用することもまた,原告の社会的評価を著しく低下させるものであって,原告の名誉を毀損する。「実はわたすもX氏に利用されかかかったことがありますが,こんなことになっていたのか」などとした上で当該記事を引用することは,当該記事と同じ印象をブログの読者に与えるものであり,原告の名誉を毀損する。さらに,被告は当該ブログにおいて,原告の前科であるl新聞の記事も合わせて掲載しているところ,かかる記事の掲載によって,読者に対し上記印象を益々強く与え,この点からも原告の名誉を毀損する。
ブログ3は,原告がd社を騙しヤクザのようなやり方で代金を踏み倒したという印象を読者に与える。これは全く事実に反するものであり,かかる記載によって原告の社会的評価は著しく低下し,原告の名誉を毀損する。被告が「Xの被害者のページも発見」として,d社のホームページのアドレス及びその内容をブログ上に載せることもまた,同じ印象を読者に与え,原告の社会的評価を著しく低下させ,原告の名誉を毀損する。被告が引用しているd社のホームページ上の記載については,当該記事が原告のプライバシー権を侵害するとともに原告の名誉を毀損するものであることを認めて謝罪し,解決金を支払うことなどを内容とする裁判上の和解が成立している(甲18)。
ブログ5には,「逆に金払えと脅されていました」との記載があり,かかる記載は,読者に対し,原告が被告に対し,金を払えと脅したかのような印象を与える。全く事実無根の内容であり,原告の社会的評価を著しく低下させ,名誉を毀損する。
ブログ6には,「X氏の誤算は,あまりに派手にサイトを作ってしまったこと。」「GやHといった大物ジャーナリストを広告塔として担ぎ出してしまった。」「単なる悪徳商法ならあちこちありますが,有名人を担ぎ出してしまうと,マスコミのターゲットになってしまう。」との記載があるところ,かかる記載は,あたかも原告が悪徳商法を行うために「△△サイト」というサイトを作ったという印象を読者に与える。これは,被告独自の見解に過ぎず,全く事実無根の内容であって,原告の社会的評価を著しく低下させ,名誉を毀損する。
ブログ7は,原告がe社を恐喝し,そのことでe社が万世橋警察に被害届を提出している,また,原告が被告に対し,脅迫をしているかのような印象を読者に与える。全く事実無根の内容であり,原告の社会的評価を著しく低下させ,名誉を毀損する。
ブログ8は,原告がe社を恐喝し,そのことでe社が万世橋警察署に被害届を提出し,受理されているかのような印象を読者に与える。全く事実無根の内容であり,原告の社会的評価を著しく低下させ,名誉を毀損する。
ブログ9には,「聞くところによると,X氏は,昔,週刊誌記者をしていたとか,総会屋の事務所にいて企業への質問をバンバン書いていたとか,借金が何億もあるとか」とした上で「どうしてこういう話がネット上に書かれてしまうのか?それは裏の仕事をカタギの人間にアウトソーシングしてしまったからです。」との記載があり,かかる記載は,あたかも原告が裏の仕事をやっているような印象を読者に与える。全く事実無根の内容であり,原告の社会的評価を著しく低下させ,名誉を毀損する。
ブログ11は,原告が事件屋であり,多くの人をだまし,脅し,金をむしり取り,言うことを聞かなければ執拗なネット攻撃を繰り返してきた人物であるかのような印象を読者に与える。全く事実無根の内容であり,原告の社会的評価を著しく低下させ,名誉を毀損する。
ブログ14には,「X氏に荷担した場合は,共同正犯が成立します」との記載があるところ,当該記載自体によって,原告に何らかの荷担をした場合,犯罪が成立するかの印象を読者に与えるとともに,ブログ1~17の全ての記事の記載と相まって,さらに強く,原告に何らかの荷担をした場合,犯罪が成立するかのような印象を読者に与える。全く何ら根拠のない内容であり,原告の社会的評価を低下させ,名誉を毀損する。
ブログ15には,「警察がXの位置情報をm社に照会し,m社としてもXについてウェブを使って独自に調査している」「Xデーは目の前にある」との記載があるところ,当該記載は,警察が原告の位置情報をm社に照会し,m社もウェブを使って独自に調査しており,原告に対する捜査機関による身柄拘束もしくは強制捜査が行われる日が間近に迫っているかのような印象を読者に与える(「Xデー」とは前後の記載から捜査機関による身柄拘束もしくは内偵捜査ではなく強制捜査が行われる日を指すことは明らかである)。また,ブログ15の「X氏の反社会的活動を弱体化させる狙いもあります」との記載は,まるで原告が反社会的活動を行っているかのような印象を読者に与える。いずれも全く事実無根の内容であり,原告の社会的評価を著しく低下させ,名誉を毀損する。
ブログ16には,「X氏はe社の重大な疑惑についてネタを握っているのに,表に出していない。やはり両者は手を結んだと考えるべきなのではないか」「仮にそうだとしたら,e社は腐れ縁を断ち切るべきです」「金を払ったら,それが活動資金に回って,悪を拡大再生産させるだけです」との記載があるところ,当該記載は,原告がe社から不正なお金を受け取り,e社と手を結んだかのような印象とともに,原告が企業から不正に受け取ったお金を活動資金に回し,悪事を拡大させているかのような印象を読者に与える。何ら根拠のない内容であり,原告の社会的評価を著しく低下させ,名誉を毀損する。
(4)救済方法
被告は,故意にブログ1~17を被告ブログ上に掲載したことにより,原告の本件前科ないしこれに関係する事実を公表されない法的利益及び原告の肖像権ないしみだりに顔写真を公表されない法的利益を侵害した。また,名誉毀損ないし侮辱に当たる。これらによる原告の損害を回復するためには,民法709条に基づく妨害排除請求ないし民法723条(または類推)の適当な処分として,当該記事を削除するとともに別紙2記載の謝罪広告を被告ブログ上に掲載することが不可欠である。仮に謝罪広告が必要とまではいえなくても,早急に記事の削除がされることが不可欠である。加えて,原告が被った損害を回復するためには,記事の削除及び謝罪広告では到底不十分であり,後記(5)の損害も賠償されなければならない。
(5)損害
① 慰謝料 1000万円
原告は,被告ブログ上でのブログ1~17の掲載により,プライバシー権(本件前科ないしこれに関係する事実を公表されない法的利益)を侵害され,新たに形成しつつあった社会生活の平穏を大きく害されるとともに肖像権を侵害され,さらにその社会的評価を著しく低下させられたことにより多大な精神的苦痛を被った。被告は,平穏に生活していた原告を被告ブログ上において,短期間に繰り返し,表現や角度を変え,事実無根の内容を記載し,まるで原告が犯罪者であるかのように仕立て上げ,読者に本当に原告が被告がブログ上で記載したような人物であるかのような誤解を生じさせ,原告の社会的評価を著しく低下させたのであり,原告が被った多大な精神的苦痛は,記事の削除及び謝罪広告のみでは到底癒すことはできず,慰謝料をもってこれに充てる他ない。原告の多大な苦痛を慰謝するに足りる慰謝料の額は,少なくとも1000万円を下らない。
② 弁護士費用 100万円
原告は,被告の不法行為によって,原告訴訟代理人に本件訴訟の提起・遂行の委任のやむなきに至ったものであるところ,被告の不法行為と相当因果関係がある弁護士費用相当額の損害として,100万円が相当である。
(6)請求
よって,原告は,被告に対して,民法709条,710条,723条(類推)に基づき,ブログ1~17の削除と被告ブログ上での謝罪広告の掲載及び慰謝料1000万円と弁護士費用100万円の合計1100万円の損害賠償とこれに対する被告が最初に被告ブログ上に原告に関する記載をした平成23年5月21日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
3  被告の主張(争点)
(1)原告の名誉毀損の主張に対する反論
ブログ1~17が原告の名誉を毀損することは争う。ブログ1~17の記載は,原告による特定の企業に対する誹謗中傷と金銭の要求を明らかにするものであって公共の利害に関する事実であり,かつ公益性を図る目的でされたものである。そして,その主要な部分が真実である。被告は,ジャーナリストとして,e社やc社に対する原告によるインターネットを利用した中傷と金銭要求を記事として取り上げることによって,ネット中傷の被害拡大に対する注意喚起をするという目的で本ブログ記事を執筆して掲載したのである。
ブログ1,11については,下記のとおり主要部分は真実である。
① 原告が,前記1(2)④のとおり,その実質的に経営するa社において,「a株式会社・A3」又は「o会・A3」として,「○○書籍」購入者メールマガジンや「特設サイト」において,c社の社名,Fら同社の経営陣の氏名,同人らの住所,家族構成や交際相手のイニシャルと同交際相手が芸能人であった頃に出演していたテレビ番組名などを公開した上で,c社やFらが悪質商法を行うばかりか取引先の経営者の拉致監禁を企てている犯罪集団であるなどの批判を繰り返し,インターネット上の掲示板に拡散させ,もってFらの秘匿すべき個人情報を広く公開し,かつ,c社の信用を低下させて同社の売上げを激減させたこと。
② 原告が実質的に経営するb社は,前記1(2)⑤のとおり,a社による同④のインターネット上の攻撃が継続していた平成22年11月26日,i社と共に,c社とFを被告として,未払のコンサルタント報酬の支払と,c社がh社とのM&Aをi社と原告を排除して締結したことによってi社とb社がこうむった損害の賠償を求めるとして,合計1億6000万円の支払を求める訴えを提起したこと。
③ 原告は,Fに対して,前記1(2)⑤のとおり,平成23年3月11日に双方の訴訟代理人弁護士を通さずに直接連絡を取り,「私は今日,心をこめて,Fさんに和戦を提案します」「事態を収拾しましょう。ホイッスルを鳴らし,争いは終了しましょう」などと申し伝え,c社とFが原告と和解をするように勧誘したこと。
ブログ3は,被告が引用したd社のホームページ上の記事では,原告から送付された内容証明郵便本文を記載した上で,同本文について「最初は相手の能力を罵倒し,後半は脅し攻撃する」とまとめた上で,かかる手法を「ヤクザのやり方」と表しているに過ぎず,同記載をもって原告がd社を騙しヤクザのようなやり方で代金を踏み倒したという印象を直ちに読者に与えるものではない。
ブログ5については,被告が,「△△サイト」の取材に付随するパブリシティ活動として原告の了承を得た上でe社と同社代表取締役であるEについて取材して寄稿した「月刊◎◎」の原稿料について,原告に対して原稿料の半分を支払うよう要求されたことは真実である。
ブログ7,8については,e社と,平成20年当時の同社代表取締役であるEは,f社,b社及び原告から恐喝されたとして,平成20年5月から6月頃,万世橋警察署に被害届を提出して受理されたことは真実である。
ブログ14の「X氏に荷担した場合には,共同正犯が成立します」との記載は,ブログ1~17の被告ブログ上の記事での記載を前提に,原告によるネット上での恐喝行為を知りながら荷担した場合には共同正犯が成立するとの被告の法的見解を表明したものであり,かかる表現は,物事の価値,善悪,優劣についての批評や論議にあたる。
ブログ15の記事は,被告ブログへのアクセスログを解析し,リファラを見ると「X」で検索をかけてきた事実があり,リモートホストは株式会社mであり,ブラウザ環境がMacOSXであることからm社の携帯電話ではなくm社本社からのアクセスであると分析した上で,m社本社が被告のブログを「X」で検索した理由について「わたす(私)の推測は」と明示した上で警察がXの位置情報を云々という記述をし,文の末尾も「Xデーは目の前にある,ということではないでしょうか?」と被告自身の推測,見解であることを明示している。読者は,被告の記載した被告ブログへのアクセスログを見た上で,続く被告の推測部分としての「警察の捜査云々」の記載が合理的であるかを判断するのであり,原告に対する捜査機関による身柄拘束若しくは強制捜査が行われる日が間近に迫っているかのような印象を読者に与えるものではない。
ブログ16の「やはり両者は手を結んだと考えるべきなのではないか。仮にそうだとしたら,e社は腐れ縁を断ち切るべきです。重大な疑惑を握られてお困りのようでしたら,さっさと表に出してしまった方が楽になります。金を払ったら,それが活動資金に回って,悪を拡大再生産させるだけです。」の部分は,「X氏はe社の重大な疑惑についてネタを握っているのに,表に出していない」との事実を記載したことから,「両者が手を結んだのではないか」との被告の推論を記載したものであり,「仮にそうだとしたら,」以下の部分は,被告の推論を前提とした被告の意見を記載したものである。原告がe社から不正なお金を受け取り,e社と手を結んだかのような印象と共に,原告が企業から不正に受け取ったお金を活動資金に回し,悪事を拡大させているかのような印象を読者に与えるものではない。
(2)原告の逮捕歴の記事の記載及び顔写真の掲載の点
原告は,前科に係る逮捕当時,ベンチャーの若手旗手として社会的に注目を集めており,また,前科に係る事件は,被害が全国に拡大し被害総額が20億円に及ぶとされたことから,大きく報道され,社会的注目を集めた。現在でも,原告の前科に係る事件は,「google」などの検索エンジンや,各新聞社のインターネットを通じた過去の新聞記事の配信サービスなどにより容易に検索することができ,その公然性が失われていない。被告による被告ブログの記事における各記載は,原告による特定の企業に対する誹謗中傷と金銭の要求を明らかにすることを目的とするものであって,被告の財産犯前科に関する事実を公表する意義と必要性がある。
第3  裁判所の判断
1  ブログ記事の主旨について
争いのない事実並びに証拠及び弁論の全趣旨により以下の事実が認められる。
(1)ブログ1,2
ブログ1は,「c社攻撃で姿を現した「ネットジャーナリスト」X」と記載し,原告の実名を挙げて,原告がc社攻撃をしていることを見出しに掲げている。本文の前に,被告がインターネット上で発見した原告の顔写真を掲げている。ブログ2~16も同じ顔写真を本文の前に掲げている。
本文では,「A1,A2,A3などの名前を使い分ける,○○書籍,a社,b社,△△サイトの実質的経営者,X氏がついに情報紙デビュー。」との記載に続けて,平成23年3月25日付「□□サイト」の記事(甲19)を掲載している。引用された「□□サイト」の記事には,「ネット恐喝の司令塔は前科2犯の男」との見出しで「X一味・一派が執拗にサイバー・ネット攻撃を,c社とF社長に集中したことによって,巧妙に狡猾に巨額の金品を巻き上げようとしている意図は明白である。」「ことに,黒幕のXは,ネット創生期に同様の手口で詐欺・恐喝まがいの事件の主役をつとめたことで検挙された「前科2犯」の前歴がある」との記載がある。その記事の引用に続けて,原告が経営していた経営コンサルタント業を営む「kセンター」が,「テープ起こし」の内職をあっせんすると言って多額の研修教材費を詐取したとする詐欺と特定商取引法違反の前科で原告が逮捕されたことを報じたl新聞の平成15年1月29日付朝刊及び夕刊の記事をそのまま引用している。
「□□サイト」の記事の主旨は,原告が,原告が関係している企業を駆使してc社と同社のオーナーであるFに対してインターネットを使用したサイバー攻撃を仕掛け,企業恐喝を企てているというものであり,当該記事では,原告のことを「X」とイニシャル表記しているが,ブログの見出し及び本文と合わせ読めば,Xが原告を指すことは明らかである。更に,「□□サイト」の記事は,原告について,「c社に対するネット攻撃が,(略)“捜査対象の網の目”にかかってしまったことだ」「“企業恐喝の犯罪の可能性”を敏感に読みとった捜査当局の“監視の目”があった」などとして,警察が,原告のネット攻撃による企業恐喝を捜査対象としたことを報じている。
「□□サイト」の記事は,同種犯罪の前科がある原告が(もっとも前記の「テープ起こし」の内職あっせんの名目での詐欺前科は,ネット攻撃による企業恐喝と同種犯罪とはいえない。),ネット攻撃による恐喝によって企業から多額に金品を巻き上げてようとしており,それが企業恐喝として警察の捜査対象となっているかのような印象を読者に与えるものであり,この記事を引用しているブログ1も,原告や対象企業であるc社の実名を挙げた見出しや本文の記載と合わせて,読者に対し,原告がc社に対しネット攻撃により企業恐喝をしており,それが捜査対象となったとの印象を与え,原告の社会的評価を著しく低下させるものとなっている。
ブログ2は,ブログ1に続いて,本文冒頭に「Xとは何者か?過去のインタビュー記事より。」と記載し,インターネット上に掲載されている有限会社pの「◇◇マガジン」の原告のインタビュー記事のリンクを記載し,続いて「この取材対象者が「内職斡旋詐欺容疑」で逮捕されました。」と記載し,更に前記インタビュー記事をそのまま転載したものである。原告の人となりを詳しく掲載することにより,ブログ1による原告の社会的評価の低下を更に増大させている。
(2)ブログ3
ブログ3は,「X逮捕 被害者の一人として」との見出しに続き,本文冒頭に「Xの被害者のページも発見」と記載し,d社のホームページ上の記事をそのまま引用している。d社の記事の主旨は,詐欺前科において原告が利用した会社であるkセンターから「テープ起こし」のテキスト執筆の依頼を受けたd社が,原告から着手金以外の執筆料を支払わずに踏み倒された旨記述し,その際の原告のやり方は,典型的なヤクザのやり方であり,若い割に,こういう踏み倒しに慣れていると思ったとの感想を述べている。ブログ3は,d社の記事を引用することにより,読者に対し,原告がd社を騙しヤクザのようなやり方で代金を踏み倒したという印象を読者に与え,原告の社会的評価を著しく低下させるものである。d社は,平成22年2月25日に成立した原告との訴訟上の和解(甲18)において,当該記事の掲載が原告の名誉を毀損するものであることを認めて謝罪した。また,ブログ3は,ブログ1に続いて原告の人となりを詳しく記載し,ブログ1による原告の社会的評価の低下を更に増大させている。
(3)ブログ4,5
ブログ4は,「Xの代理人より架電」との見出しで,本文冒頭に「「Xさんが『何のつもりだ』『契約違反だ』『肖像権侵害だ』って言って,烈火のごとく怒ってますよ。Yさん,ブログの記事を削除できませんか?」と,n社のX氏の代理人より架電。」と記述し,ブログ5は,「Xさん,それは強要罪に抵触しませんか?」との見出しで,「またまた,X氏の代理人より架電。「Yさん,Xさんがブログ記事を取り下げないと,訴訟を起こすとか,契約書を海外サーバーにアップするぞって言ってますよ」とのこと。」と記述している。ブログ4,5のこれらの記事は,ブログ1に続いて原告の行動を詳しく記載してブログ1による原告の社会的評価の低下を更に増大させている。ブログ5には,続いて「わたす(私の意,被告を指す。)は悪いけど,X氏から1円ももらっていませんし,逆に金払えと脅されていました」との記載があるが,この記載は,一般読者から見れば,原告と被告との間に何らかの契約上の紛争があることを推測させる程度にとどまる記述であって,この記載がそれ自体として独自に原告の社会的評価を低下させるとまでは認められない。
(4)ブログ6
ブログ6は,原告が作った「△△サイト」というインターネットサイトに有名なジャーナリストやライターが多数参加していることを記述し,「X氏の誤算は,あまりに派手にサイトを作ってしまったこと。」「GやHといった大物ジャーナリストを広告塔として担ぎ出してしまった。」「単なる悪徳商法ならあちこちありますが,有名人を担ぎ出してしまうと,マスコミのターゲットになってしまう。」などと記述しており,ブログ1の記事と合わせて読むことで,原告が企業恐喝等の反社会的な目的で「△△サイト」というサイトを作ったという印象を読者に与え,ブログ1による原告の社会的評価の低下を更に増大させる。
(5)ブログ7,8
ブログ7には,「X氏は(略)e社に対して恐喝を働いたとして,同社より恐喝容疑での被害届が万世橋警察署に提出され,受理されたという情報がもたらされました」との記述があり,ブログ8には,「e社はX氏を恐喝容疑で万世橋警察署に被害届を提出し,受理されました」との記述がある。これらの記事は,原告がe社を恐喝し,そのことでe社が万世橋警察署に被害届を提出しているかのような印象を読者に与える内容であり,原告の社会的評価を著しく低下させる。なお,ブログ7の「私はX氏から訴訟を提起すると脅迫されています」との記述は,単なる契約上の紛争があることを推測させるにとどまり,原告の社会的評価を低下させるとは認められない。
(6)ブログ9~11
ブログ9には,「聞くところによると,X氏は,昔,週刊誌記者をしていたとか,総会屋の事務所にいて企業への質問をバンバン書いていたとか,借金が何億もあるとか」とした上で「どうしてこういう話がネット上に書かれてしまうのか?それは裏の仕事をカタギの人間にアウトソーシングしてしまったからです。」との記述がある。ブログ9に続き,ブログ10は,「X氏は,h社,c社とのコンサル契約を元にするという体裁で業界最大手であるe社叩きを進めていた。」「その後,h社はc社に買収され,情報商材業界はe社陣営とc社グループに2分された。X氏は,c社とコンサル契約を結んでいましたが,それを元にしたe社叩きには限界があった。e社は経営者の経歴にこそ問題はあったものの,経営的には透明度は高く,つけいる隙がなかった。また,X氏はe社から被害届が出ていたこともあり,なかなか手が出せない。一方のc社は,経営的には大きな問題があり,叩けばホコリが出てくるのは目に見えていた。そんなさなか,c社がXとのコンサル契約の打ち切りを通告。X氏がc社叩きに回ったのは言うまでもありません。」と記述している。ブログ10に続き,ブログ11は,「事件屋・X氏は,これまで多くの人をだまし,脅し,金をむしり取り,言うことを聞かなければ,執拗なネット攻撃を繰り返してきました。」との記述がある。
ブログ9~11の上記記事は,原告がc社及びe社に対して企業恐喝をしている旨のブログ1,7,8の記事と相まって,原告がc社及びe社に対し,ネット攻撃による企業恐喝をしているとの印象を読者に与えるものであって,原告の社会的評価を著しく低下させるものである。
(7)ブログ12~17
ブログ12は,原告が代理人を通じて被告に対し,被告ブログの記事が原告の名誉を毀損するとして訴訟を提起する旨の通知をしたことを記述しており,原告の行動を詳しく補足することで,ブログ13は,それまでのブログに対する読者の意見を掲載することで,ブログ14は,「X氏に荷担した場合は,共同正犯が成立します」と記述することで,原告がc社及びe社に対しネット攻撃による恐喝をしている旨のブログ1,7~11の記事による原告の社会的評価の低下を一層増大させるものである。
ブログ15は,「わたすの推測は,警察がXの位置情報をm社に照会し,m社としてもXについてウェブを使って独自に調査をしている,というものです。」,「Xデーは目の前にある,ということではないでしょうか?」と記述し,被告の単なる推測であるかのように記述しながらも,読者に対し,警察が原告の位置情報をm社に照会し,m社もウェブを使って独自に調査しており,原告に対する捜査機関による身柄拘束もしくは強制捜査が行われる日が間近に迫っているかのような印象を読者に与えているものであり,ブログ1,7~11の記事による原告の社会的評価の低下を一層増大させるものである。
ブログ16は,「X氏はe社の重大な疑惑についてネタを握っているのに,表に出していない。やはり両者は手を結んだと考えるべきなのではないか」「仮にそうだとしたら,e社は腐れ縁を断ち切るべきです」「金を払ったら,それが活動資金に回って,悪を拡大再生産させるだけです」と記述し,原告がe社を恐喝している旨のブログ7,8の記事を裏付ける趣旨の推測を積み重ねて記述することで,ブログ7,8による原告の社会的評価の低下を一層増大させている。
ブログ17は,「戦慄を覚えます」との見出しで,本文冒頭に「遅ればせながら,c社に対するX氏の攻撃内容をざっと読んでみたのですが……」と記述して,前記第2の1(2)④のとおり原告がc社を攻撃したネット記事へのリンクを掲載したものであり,原告がc社に対するネット攻撃による企業恐喝をしている旨のブログ1,9~11の記事を補足し,ブログ1,9~11による原告の社会的評価の低下を一層増大させるものである。
2  記事の真実性について
被告ブログの記事の主旨は,ブログ1,7~11,17により,①原告が,前記第2の1(2)のとおり,様々な会社や名義を用いて,情報商材のASPであるc社あるいはe社に対し,ウェブサイトや電子メールなどを通じてネット上で激しい批判を行い,これによって当該各企業から金員を恐喝しているとの事実,及び,②原告はc社及びe社からこの恐喝の事実について被害届を万世橋警察署に出されており,捜査当局において当該各企業に対する恐喝の事実について捜査の対象となっている事実を摘示しているものと認められる。
そして,ブログ1~17を通じ,上記摘示事実によって読者に作られる原告の悪性に関する印象を一層強くさせるように,平成15年1月に逮捕された原告の詐欺等の前科に関する記事(ブログ1,3,6,7)や過去のインタビュー記事(ブログ2)あるいは原告の顔写真(ブログ1~16)を掲載したり,原告を批判するd社のホームページを転載したり(ブログ3),関連する原告の行動を批判的に記述したり(ブログ4~6,12),原告を批判するブログ読者の意見を掲載したり(ブログ13),原告が犯罪者であると受け取られる被告の意見(ブログ14)あるいは推測(ブログ15,16)を述べたりしているものと認められる。
これらのブログ記事の主旨は,原告による企業恐喝の犯罪の疑いを明らかにすることにあるものと認められ,摘示された事実は,公共の利害に関する事実に係り,かつ,その目的は,専ら公益を図る目的に出たものと認められる。
そして,原告がe社及びその代表取締役であるEを前記第2の1(2)③のとおりネット上で厳しく批判していたところ,その際,e社の顧問弁護士の悪口をインターネット掲示板の書き込み業者を使って1記事100円で約300もの記事を書かせるなど正当な言論の範囲を逸脱した関係者に対する違法な権利侵害にまで及んでいたと推認される上に(乙2),競争関係にある同業他社であるc社から経営コンサルティング契約(乙12)に基づく報酬と称して同時期に月額200万円以上もの報酬の支払を受けていたこと,c社から経営コンサルティング契約が解除されるや,第2の1(2)④のとおり,関係者のプライバシーをも害しかねない記述を含めたネット上での厳しい攻撃を加え,かつ契約違反を理由にc社に対し1億6000万円もの損害賠償請求訴訟を提起した上で和解を申し入れ(乙25),c社及びその実質的経営者であるFから原告が実質的に経営する会社に対して7000万円もの解決金が支払われることを条件として原告が批判記事をウェブサイトから削除することを約束する和解を平成23年6月1日に合意していること(乙26),これらの事実から,原告がネット上で企業の批判を展開していることは,これを恐れる企業から金銭の支払を受けることを目的としているものと一応推認することができる。
しかし,被告が摘示した原告の企業恐喝という具体的な犯罪行為に関しては,e社については,被告から取材を受けたe社のE社長が,被告に対する平成21年11月25日付電子メール(乙5)において,現在,原告を刑事告訴している旨述べた事実が認められるが,この電子メールには,告訴した犯罪事実の記載もなく,また,このメール記載のe社による告訴の事実を裏付ける証拠もなく,被告が裏付取材を行ったこともない。更に,c社についても,原告とc社の和解合意書11条において,原告及びc社ともに合意成立前の事柄についてすでに被害届及び刑事告訴を提出している場合は,速やかに一切取り下げる旨の合意をしていることが認められるのみであって(乙26),c社のFが民事訴訟において提出した主張や陳述書(乙21~23)にも,c社が原告を恐喝の犯罪事実で被害届を提出し又は刑事告訴していることに触れた記述は全くなく,ほかにこれを裏付ける証拠はない。
すなわち,ブログ1~17の記事の主旨のうち,原告がc社あるいはe社に対し,ウェブサイトや電子メールなどを通じてネット上で激しい批判を行っていること,そしてその目的は,批判を恐れる企業から金員の支払を受ける目的にあることは,その限度で真実であると認められる。しかし,そのことが,ブログ1で引用した「□□サイト」の記事にあるc社攻撃による「企業恐喝の犯罪」,あるいは,ブログ7,8の「e社に対して恐喝を働いた」という恐喝容疑などの具体的な犯罪事実を直ちに裏付けるものではない。恐喝とは,人に暴行・脅迫を加えてこれにより財物や財産上不法の利益(財物等)を得ることを意味するが,本件において,原告が企業から金員の支払を受ける目的でネット上での批判を行っていることは認められても,原告から各企業に対する財物等を得るための具体的な脅迫行為及びこれと財物等の交付要求との結びつきについての的確な裏付けはない。原告がc社からコンサルティング契約に基づく報酬として月額200万円以上の支払を受けていたことは認められるものの,この支払が原告のc社に対する恐喝の結果によるものであることの客観的裏付けはなく,コンサルティング契約解除後のネット上での攻撃・訴え提起・和解に関しても同様である。c社の元代表取締役Fは,b社及びi社がc社及びFに対して提起した裁判(東京地方裁判所平成22年(ワ)第43975号)で提出した陳述書(平成23年3月13日付)において,「A2氏(原告)は,私に対し,「コンサルティング契約を締結しなければ,株式会社cの事業の売買成約を自身の運営管理する解約返金方法を促すインターネット上のサイトを使って,『強制解約させる。売上を下げさせる。』」と言ったり,「株式会社eへ行った制裁と同様に『会員への脅迫文書送付と同じことをするぞ』,『インターネットサイトへ誹謗中傷や社会的制裁を受ける様な書き込みをするぞ』,『会社や自宅近辺で街宣車やジャーナリストを使って嫌がらせをするぞ』,『平然と殺人や暴力行為をやる奴を身代わりとして依頼するぞ』,『人間を生きたまま焼いてその断末魔を聞くのが快感だ』」などと言って,脅してきて,右翼団体の名刺を私に見せてきた」,「このコンサルティング契約を締結したのは,A2氏に脅迫されて締結したもの」と述べ(乙23),原告によるc社及びFに対する恐喝行為があった旨供述しているものの,b社,i社,原告,c社及びFは,平成23年6月1日,上記裁判(東京地方裁判所平成22年(ワ)第43975号)等でc社やFが主張していた原告のc社及びFに対する脅迫行為等,一切の不法行為がなかったことを確認する旨の和解をしており(乙26),この和解の存在も踏まえると,上記の陳述書をもって直ちに,原告によるc社に対する恐喝行為があったと認めることは困難である。自己のブログ上における記載といえども,インターネット(情報が全世界に向けて発信され,その情報が半永久的に残りかねない。)上で,個人を特定した上で犯罪行為を行っている旨を摘示する以上,その摘示する内容が真実であるか否かの判断は慎重にされるべきであって,訴訟における真実性の判断,ひいては真実と信ずる相当な理由の判断もまた慎重に行われなければならないのである。
したがって,ブログの主旨のうち,①原告がc社及びe社に対する批判によって当該各企業から金員を恐喝しているとの事実,及び,②原告はc社及びe社からこの恐喝の事実について被害届を万世橋警察署に出されており,捜査当局において当該各企業に対する恐喝の事実について捜査の対象となっているとの事実については,これらが真実であることを裏付けるに足る証拠はないし,被告が,これらの事実を真実と信ずるにつき相当な理由があったとも認められないというべきである。
3  原告の請求について
以上の認定判断によれば,ブログ1~17の記事は,①原告がc社及びe社に対してネット上で展開している批判によって当該各企業から金員を恐喝しているとの事実,及び,②原告はc社及びe社からこの恐喝の事実について被害届を万世橋警察署に出されており,捜査当局において当該各企業に対する恐喝の事実について捜査の対象となっているとの事実を摘示しているところ,これらは真実であるとは認められないから,原告の社会的評価を著しく低下させ,原告の名誉を毀損する不法行為にあたる。また,原告は,原告の前科及び顔写真,d社の記事,原告の行動,読者の意見,被告の推測などが名誉毀損にかかる事実摘示と合わせてブログに掲載されることにより,名誉毀損にかかる事実摘示による原告の社会的評価の低下が更に増幅されて名誉が毀損されるとともに,侮辱され,プライバシー及び肖像権が侵害されたものと認められる。
以上の名誉毀損,侮辱,プライバシー・肖像権侵害の不法行為による権利救済としては,現に継続している不法行為による権利侵害を排除するための差止請求権に基づき,被告に対し,これらブログの記事ないし記載をすべて削除することを命ずることが,最も有効かつ適切であると認められる。そして,上記認定のブログ記載の経緯及び内容,被告ブログが社会的に信用性を高く評価されていることまでは認められないこと,ブログを削除することにより原告の権利救済が抜本的に図られることなど,本件の一切の事情を総合的に評価すれば,前記の名誉毀損等に対する原告の権利救済としては,ブログの削除命令のほかに,民法709条,710条に基づき,55万円(慰謝料50万円,弁護士費用5万円)の損害賠償を命ずることが相当であり,この損害賠償に加えて被告ブログ上での謝罪広告の掲載による名誉回復処分を民法723条に基づいて命ずることは適当とはいえない。
よって,原告の請求は,被告に対し,ブログ1~17の削除を命じ(主文1項),かつ,55万円の損害賠償とこれに対する不法行為の日(被告がブログ1~17のうち最初のブログ1を掲載した日)である平成23年5月21日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を命ずること(主文2項)を求める限度で理由があり,被告ブログ上での謝罪広告の掲載(第1の1の請求の後段)及びその余の損害賠償の支払を求める請求は,いずれも理由がない。
(裁判長裁判官 小林久起 裁判官 寺垣孝彦 裁判官 見原涼介)

 

〈以下省略〉

 

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