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判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(192)平成24年10月23日 東京地裁 平23(ワ)10060号 不当利得等返還請求事件

判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(192)平成24年10月23日 東京地裁 平23(ワ)10060号 不当利得等返還請求事件

裁判年月日  平成24年10月23日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平23(ワ)10060号
事件名  不当利得等返還請求事件
裁判結果  請求棄却  文献番号  2012WLJPCA10238015

事案の概要
◇原告の取締役が原告の預金口座から出金する等して被告Y1に交付したり、被告Y2名義の預金口座に入金した金員について、当該金員の交付はいずれも法律上の原因を欠くものであり、被告らは原告の損失において、金員を不当に利得したものであるとして、不当利得返還請求権に基づき、併せて、被告Y1については、当該金員の交付は被告Y1の詐欺によるものであるとして不法行為に基づく損害賠償請求権に基づき、被告Y1及び被告会社に対しては原告が支出したとする金員全額と同額の、被告Y2に対しては同被告名義の預金口座に入金された金員と同額の金員の支払をそれぞれ求めた事案

裁判年月日  平成24年10月23日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平23(ワ)10060号
事件名  不当利得等返還請求事件
裁判結果  請求棄却  文献番号  2012WLJPCA10238015

東京都世田谷区〈以下省略〉
原告 株式会社X
同代表者代表取締役 甲山A
同訴訟代理人弁護士 関根稔
東京都世田谷区〈以下省略〉
被告 Y1
同訴訟代理人弁護士 Y2
東京都千代田区〈以下省略〉
被告 Y2
上記両名訴訟代理人弁護士 中川潤
同 松井智
東京都港区〈以下省略〉
被告 Y3株式会社
同代表者代表取締役 B

 

 

主文

1  原告の請求をいずれも棄却する。
2  訴訟費用は原告の負担とする。

 

事実及び理由

第1  請求
1  被告Y1は,原告に対し,3億3600万円及び内金7500万円に対する平成22年2月20日から,内金1億円に対する同月23日から,内金2500万円に対する同年3月2日から,内金1億3600万円に対する同月24日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  被告Y2は,原告に対し,1億7500万円及び内金7500万円に対する平成22年2月20日から,内金1億円に対する同月23日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3  被告Y3株式会社(以下「被告会社」という。)は,原告に対し,3億3600万円及び内金1億7500万円に対する平成22年2月24日から,内金1億6100万円に対する本件訴状送達の翌日(平成23年4月15日)から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
本件は,原告の取締役が原告の預金口座から出金する等して被告Y1に交付したり,被告Y2名義の預金口座に入金した金員について,当該金員の交付はいずれも法律上の原因を欠くものであり,被告らは原告の損失において,金員を不当に利得したものであるとして,不当利得返還請求権に基づき,併せて,被告Y1については,当該金員の交付は被告Y1の詐欺によるものであるとして不法行為に基づく損害賠償請求権に基づき,被告Y1及び被告会社に対しては原告が支出したとする金員全額と同額の,被告Y2に対しては同被告名義の預金口座に入金された金員と同額の金員の支払をそれぞれ求める事案である。
1  前提となる事実(証拠を掲記しない事実は,当事者間に争いがないか,弁論の全趣旨により容易に認められる。)
(1)  当事者等
ア 原告は,代表取締役である甲山A及びAの子であり取締役である甲山Cが経営する小規模な会社であるが,平成22年3月まで,原子力施設等の運転保守管理を業とするa株式会社(平成22年4月9日,株式会社a1に商号変更登記。商号変更の前後を問わず「a社」という。),各種建物・施設等の警備,保守・管理を業とする株式会社b,機械設備の運転保守,施設の清掃等を業とする株式会社c,原子力施設及び関連施設等の運転,保守・管理等を業とするd株式会社(平成22年4月13日,株式会社d1に商号変更登記。商号変更の前後を問わず「d社」という。)の100%株式を保有していた持株会社であった(以下,上記4社を「4事業会社」と総称する。)。なお,4事業会社は,いずれも,独立行政法人e機構から関連施設の保守・点検業務等の発注を受けており,Aは4事業会社の代表取締役に就任していたが,他にも上記機構の意向により選任された代表取締役がおり,Aは,4事業会社の経営には実質的には関与していなかった。
イ 被告Y1は,Aとの間で,業務委託契約を締結し,原告や4事業会社の役員に就任していた者である。また,被告Y1は,平成22年3月頃まで,被告会社を実質的に経営していた。
ウ 被告Y2は,弁護士である。
(2)  Aと被告Y1は,平成21年7月17日,以下の内容を含む業務委託契約を締結した(甲2。以下「本件業務委託契約」という。)。
ア Aは,被告Y1に対し,Aが支配株式を所有する原告が全株式を所有する4事業会社の経営業務を委託する。
イ 被告Y1は,4事業会社の代表取締役会長としての権限を行使することにより,4事業会社の利益を最大に増大することにより,原告を通じて,4事業会社の利益をAに還元する。
ウ 委託業務の報酬は,4事業会社の利益が被告Y1の経営努力により相当額の増額が計られたときに,Aと被告Y1が協議してその額と支払方法を決するものとする。
(3)  A,被告Y1及び4事業会社は,平成21年12月18日付けで,4事業会社の資本政策に関する取引スキームの概要を以下のとおりとする基本合意をした(甲3。以下「本件基本合意」という。)。
ア 4事業会社は,原告に対し,A,被告Y1及び4事業会社が別途合意する金額の剰余金の配当を行う。
イ A及び被告Y1は,原告に,原告の所有する4事業会社の株式全てを,4事業会社が別途指定する者に譲渡させる。
ウ 4事業会社は,自ら及びaグループ持株会をして,これらが所有する原告の株式全てを原告に譲渡させる。
エ 上記イ及びウの株式譲渡の代金は同額とする。
(4)  Aは,平成22年1月20日,被告Y1に対し,本件業務委託契約及び本件基本合意に基づく業務を停止するよう通知した。
(5)  Cによる原告の金員の支出
ア Cは,平成22年2月19日,原告の預金口座から7500万円を出金し,被告Y2の預金口座に入金した(以下「本件金員金1」という。)。
イ Cは,同月22日,原告の預金口座から出金した金員1億円を,被告Y2の預金口座に入金した(以下「本件金員金2」という。)。
ウ Cは,同年3月1日,原告の預金口座から2500万円を出金し,被告Y1の預金口座に入金した(以下「本件金員3」という。)。
エ Cは,同月23日までに,少なくとも1億4000万円の原告の金員を被告Y1に交付した(同月下旬にCから被告Y1に対し交付された金員の額には争いがあり,また,被告Y1も受領を認める上記以外の300万円については,交付の時期について争いがある。以下「本件金員4」といい,本件交付金1から3と併せて「本件各金員」と総称する。)。
(6)  被告Y1は,平成22年2月22日,原告の預金口座に1000万円を送金した。
(7)  被告Y2は,平成22年2月23日,自らの預金口座から被告会社名義の三菱東京UFJ銀行青山支店の普通預金口座に,1億7500万円を送金した(甲8の3)。
(8)  被告Y1の自宅である株式会社f所有の不動産には,被告会社を債務者とする根抵当権が設定されていたが,平成22年3月19日,解除を原因とする抹消登記手続がされた(甲11の1・2)。
(9)  原告は,平成23年5月10日,本件訴状により,被告Y1に対し,本件金員4に関する不当利得返還請求権と上記(6)で被告Y1が原告に送金した1000万円の返還請求権とを対当額で相殺するとの意思表示をした。
2  争点
(1)  被告Y1が本件各金員を取得したことについて法律上の原因を欠くか否か
(原告の主張)
ア Cは原告代表者であるAの承諾を受けることなく被告Y1と報酬支払の合意をしており,また,C自身には当該合意をする権限はなかった。したがって,同合意の効力は原告に及ばないから,原告から被告Y1への本件各金員の交付は,法律上の原因なく行われたものである。
なお,本件業務委託契約の委託者はA個人であるから,本件業務委託契約に基づいて原告が被告Y1に報酬を支払う理由もない。
イ 仮に,原告と被告Y1との間に何らかの法律関係が存在するとしても,本件各金員が交付等された当時,被告Y1は原告の取締役であったから,原告から被告Y1への本件各金員の支出は,会社と取締役間の利益相反取引に該当し,取締役会の承認を要するところ,その承認はなされていない。
(被告Y1の主張)
ア 被告Y1とCとの間には,平成22年2月18日頃,原告が被告Y1に対し,本件業務委託契約に基づく報酬ないし本件基本合意を締結したことに関する報酬として3億5000万円を支払うとの合意が成立し,本件各金員は同合意に基づき支払われたものであるから,法律上の原因がある。
Cは,原告の取締役であり,代表者であるAの子としてかねてから原告の経営に関与し,原告の業務処理を委ねられ,自らの判断で,入出金を含む現金預金の管理,契約締結行為等原告のほとんどの業務を行い,本件基本合意の締結に関してもAと行動を共にしていた。また,被告Y1が4事業会社の経営改善を推進し,本件基本合意の締結に努力したことにより報酬請求権が発生することは,Aも認識していたこと,Cは,被告Y1に対し,原告の利益のために報酬の減額交渉していたことからしても,Cに被告Y1と報酬合意をする権限があったことは明らかである。
イ 本件業務委託契約はAの個人名で締結されているが,同契約に,被告Y1の原告取締役や4事業会社の代表取締役への就任,4事業会社からの取締役報酬や経費の支払など,被告Y1及びA以外を当事者とする事項が含まれていることから明らかなように,Aは原告及び4事業会社の代表者としても本件業務委託契約を締結したものである。なお,本件業務委託契約が原告の100%子会社である4事業会社の経営改革を行うことを目的とすることから,被告Y1に対する報酬は,原告が負担すべきものであり,A個人が負担する性質のものではなく,原告から被告Y1に対する報酬の支払が原告と被告Y1の利益相反取引になることはない。また,被告Y1は,原告の取締役であったものの,取締役としての権限はないものとされており,この点からも原告と被告Y1との利益相反が問題となることはない。
ウ 被告Y1は,平成21年12月頃,事態を放置すれば,e機構が別の受け皿会社を設けて,4事業会社の受託業務を移行させ,4事業会社及び原告が事実上解体されることになりかねない旨の情報を得,原告が4事業会社との関係を解消しなければ問題の解決にならないという事態の流れと意味を一向に理解していなかったAを再三にわたって説得し,手取額で約23億円が原告に支払われることになる本件基本合意にこぎ着けたのであり,本件各金員は,その対価として相当である。本件基本合意の成立後に行われた交渉は,基本処理スキームに従った事後的履行処理作業に過ぎない。
なお,被告Y1が上記交渉に関与しなかったのは,Aが,被告Y1を故意により排除したものであるから,民法130条により被告Y1は,委任事務を完了したときと同額の報酬を請求することができた。
(2)  Cによる本件各金員の交付等が被告Y1の詐欺(不法行為)によるものであるか否か
(原告の主張)
平成22年1月22日以降,原告訴訟代理人と4事業会社の代理人との間で協議が行われていたことから,当時は原告や4事業会社が倒産する危険はなかったにもかかわらず,被告Y1は,同年2月初旬以降,原告の取締役であるCに対し,原告訴訟代理人と4事業会社の代理人との間で行っているのは数字の調整に過ぎず,大きな方針は文部科学省等が決めるものであり被告Y1はそれらとコネクションがある等と虚偽の事実を告げ,国会議員秘書や文部科学省の職員との会談に同席させるなどすることにより,Cに,4事業会社が倒産せず親会社の原告に負担がかからないよう,同年4月1日までに原告と4事業会社との関係を絶つには被告Y1の協力が必要であり,そのためには同被告に報酬を支払うことが必要であると誤信させ,本件各金員を交付させた。
(被告Y1の主張)
被告Y1がCに対し,原告が4事業会社との関係を解消しなければ,問題の解決にならず,放置すれば原告の存在自体が危殆に瀕する旨を再三説明したことはあるが,それは本件基本合意の締結前である。また,平成22年1月下旬以降,被告Y1が行ったのは,本件基本合意を締結したこと等に関する被告Y1の報酬について,何ら返答をせず交渉を拒否するAないし原告に対する正当な権利主張等である。
争点(1)に関し主張したように,本件各金員は,原告の取締役として権限を有していたCが,被告Y1に対し報酬3億5000万円を支払うとの合意をし,同合意に基づいて支払われたものであり,同合意の形成過程で被告Y1がCに対し欺罔行為を行ったことはない。
(3)  本件金員1及び本件金員2(以下,併せて「本件金員1・2」という。)を受領したことについて,被告Y2に不当利得があるか否か
(原告の主張)
原告には,被告Y2に金員を交付すべき法律上の原因は存在せず,また被告Y2が代理人であるという被告Y1との関係でも,争点(1)に関し主張したように,金員を交付すべき法律上の原因はない。
被告Y2が被告Y1の代理人として本件金員1・2を受領する根拠とする合意書には,原告の取締役であるCの署名押印しかなく,弁護士であるY2には多額の金員の支払を内容とする当該合意が無効であることを認識できた。そうであれば,一旦,法律上の原因を欠く金員を受領した以上,被告Y2には利得があるというべきである。
(被告Y2の主張)
被告Y2が本件金員1・2を受領したのは,被告Y1の代理人としてであり,このことは,原告の代理人として同各金員を振り込んだCも認識していたことである。また,被告Y2は,被告Y1の指示により,本件金員1・2の全額を同被告が管理していた被告会社名義の預金口座に送金している。したがって,被告Y2に不当利得は存在しない。なお,被告Y2は,被告会社を通じて,平成22年1月以降,被告Y1からAらの本件基本合意違反について相談を受けていたことについての弁護業務の報酬を被告Y1から受領しているが,同金銭の受領が原告との間で不当利得になるものでもない。
(4)  被告会社が受領した金員の額及び受領した金員について,被告会社に不当利得があるか否か
(原告の主張)
被告会社は,本件各金員を受領しており,その際,同金員が,被告Y1及び被告Y2が法律上の原因なくして原告から受領した金員であると認識していた。被告会社は,本件各金員により被告会社の債務を弁済し,利得を得ているのであり,被告会社は悪意の転利得者として,被告Y1らと並んで,原告に対し,本件各金員相当額を返還する義務がある。
(被告会社の主張)
平成22年2月23日当時,被告Y1は,被告会社の経営を実質的に支配しており,被告会社の財務・資産管理は同社の財務担当取締役であった被告Y1の長男Dを通じて,被告Y1が掌握していた。そして被告Y1は,被告会社の運転資金を調達する責務も負っていたことから,被告Y1が得た資金である本件金員1・2を被告会社の運転資金に充てるために,被告Y2の口座に入金された本件金員1・2を被告会社の口座に入金させたものである。このように,被告会社が本件金員1・2を受領したことには法律上の原因があるから,同金員の受領が原告との間で不当利得になるものではない。また,本件金員1・2以外は受領していない。
第3  争点に対する判断
1  認定事実
証拠(個別に掲記したもののほか,甲9,19の1・2,乙9の3~6,10,11,証人甲山C,原告代表者本人,被告Y1本人)及び弁論の全趣旨によると,以下の事実が認められる(上記第2の1の前提となる事実を含む。)。
(1)  原告は,昭和45年5月15日に設立された資本金1000万円の株式会社であり,e機構の下請として,同機構の従業員の作業服の洗濯,事業所内の清掃業務等を行っていた。
原告を設立した甲山Eは,昭和47年から昭和53年までの間に,原子力施設等の運転保守管理等を業とする4事業会社を設立した。
(2)  平成14年4月27日,原告及び4事業会社の代表取締役であったAの夫甲山Fが急死したことから,Aは,急遽,原告及び4事業会社の代表取締役に就任した。なお,4事業会社については,Fのほかに,e機構を退職した者がそれぞれ代表取締役に就任しており,Aが4事業会社の代表取締役に就任してからは,4事業会社の実際の経営は,上記機構に関係する代表取締役が行っていた。
(3)  原告は,平成19年,株式移転により,原告が持株会社,4事業会社が原告の子会社となる組織の再編成を行い,原告の行っていた作業服の洗濯等の業務はa社に引き継がれた。
(4)  Aは,平成20年9月頃,原告が所有する賃貸ビルのテナントとなった弁護士のG(以下「G弁護士」という。)から紹介されて被告Y1と知り合い,同年11月頃以降,原告の不動産業に関する相談等をするようになり,平成21年1月に原告及びグループ会社が税務調査を受けてからは,これに関連する相談も行うようになった(乙9の1~6)。
(5)  上記のような交流を経て,Aは,平成21年7月17日,G弁護士の立会のもと,同弁護士が作成した書面により,被告Y1との間で,以下の内容を含む本件業務委託契約を締結した(甲2,甲20の6)。
ア Aは,被告Y1に4事業会社の経営業務を委託する。
イ 被告Y1は,4事業会社の代表取締役会長として権限を行使することにより,4事業会社の利益を増大させ,原告を通じて,4事業会社の利益をAに還元する。
ウ 被告Y1は,遅滞なく,4事業会社の経営計画を策定し,Aにその内容を報告する。被告Y1は,適宜,Aに4事業会社の経営改善進捗状況を報告するとともに,Aから求められたときは,速やかに4事業会社の経営状態等について報告する。
エ 委託業務遂行の条件として,Aは,速やかに4事業会社の株主総会を開かせ,被告Y1と被告Y1の指定するHを取締役に選任させ,各取締役会において,被告Y1を代表取締役会長に選任させる。
オ 本件業務委託契約の期間中,委託業務の円滑な遂行のために,4事業会社の全株式を有する原告の株式の2割相当を被告Y1に譲渡したこととし,A及び被告Y1間以外の外形上,被告Y1を原告の株式所有者として遇し,4事業会社及び原告の全役員,従業員にその旨周知させる。
カ 委託業務の円滑な遂行のために,被告Y1を原告の取締役に選任し,登記する。ただし,Y1には取締役としての権限はないものとする。
キ 委託業務の報酬は,4事業会社の利益が被告Y1の経営努力により相当額の増額が図られたときに,Aと被告Y1で協議して,額と支払方法を決定する。
ク 4事業会社の取締役会長としての業務遂行のために必要な費用は,4事業会社の内規に従い,4事業会社の負担とし,それ以外は全て被告Y1の負担とする。
ケ Hの取締役報酬は,4事業会社併せて年額840万円とし,4事業会社が等分を負担する。
コ Aと被告Y1は,契約期間内でも双方協議の上,本契約を解除し,被告Y1及びHの4事業会社の取締役資格及び被告Y1の原告の取締役資格を喪失させることができる。
サ 本契約の有効期間は3年間とし,期間満了前6か月以内にAと被告Y1のいずれからも異議のないときは,さらに3年間更新する。
(6)  平成21年7月22日,4事業会社の取締役会及び株主総会が帝国ホテルで開催されることとなった。Aは,本件業務委託契約に基づき,被告Y1及びHを4事業会社の取締役に就任させるため,被告Y1,Hのほか,G弁護士及び4事業会社の取締役に就任する予定であったCと共に,帝国ホテルに赴いた。しかしながら,a社代表取締役のIが,Aに対し,被告Y1に前科があること等を理由に同被告の取締役への就任に異議を述べたこと等から,当日の株主総会等は延期されることとなった。
被告Y1は,銀行から不正に融資を受けたとして詐欺罪で実刑判決を受け服役したことがあり,平成12年7月に刑務所を出所していた。G弁護士と被告Y1は,A及びCに対し,その旨及び平成20年2月29日に恩赦法に基づく復権をした旨を説明した。
(7)  その後,4事業会社の役員や株主が,被告Y1が4事業会社の取締役に就任することに賛同するに至ったことから,被告Y1は,平成21年7月31日,d社の代表取締役に,同年8月4日,a社及びcの代表取締役に,同月27日,b社の代表取締役にそれぞれ就任した。なお,被告Y1が代表取締役に就任すると同時に,Hは,上記各会社の取締役に就任した(甲20の7,乙1の1~4,9の11・12)。
(8)  被告Y1は,Aと協議しながら,4事業会社の業務改善にあたり,4事業会社の人件費が多額で経費が高く利益が出にくいと認識していたため,4事業会社の人員整理によるコストカット等により業務改革を推進しようとした。しかし,茨城県東海村,福井県敦賀市,青森県六ヶ所村など,原子力研究開発事業所を誘致した地域においては,雇用の確保により貧困地の地域振興を行い,地元の利益を図ることが前提となっており,被告Y1の上記改革はこれに反するものであった。そのため,同年10月頃,国会議員秘書の経歴のあるHに対し,衆議院議員から,被告Y1の行おうとする経営改革は,日本の原子力行政にとって好ましくないとの懸念が伝えられた。Hは,被告Y1にこれを伝え,被告Y1自身も上記の状況を確認したことから,被告Y1は,4事業会社を代表するd社の代表取締役Jに対し,今後は,相談・協議の上進めたいとの意向を伝えた(乙4の1,9の13~16・18・20)。
上記の事情により,人員削減の方法による4事業会社の収益力向上は不可能となり,被告Y1は,e機構に人材派遣している4事業会社の技術者の単価引上げを試みたが,同機構はこれに応じなかった。
なお,Aは,4事業会社の有り様が日本の原子力行政に関係していることを認識していなかった。そのため,本件業務委託契約締結にあたっても,被告Y1にその旨を説明することはなく,同年10月下旬頃,被告Y1やHから,A及びCに対し,原子力政策との関係により,4事業会社への対応を変更する必要がある旨説明がされた。
(9)  平成21年11月中旬から,同年1月の税務調査を契機として原告が国税当局からの指摘で追徴課税を受けたことに関し,原告及び4事業会社に対し,マスコミの取材が開始され,同年12月8日,a社,d社及びb社がe機構の複数のOB職員を役員として受け入れていたが,その中に十分な勤務実態のない者があり,関東信越国税局の税務調査において,その者らに対する報酬や給与が同機構に対する利益供与に当たるとして,所得隠しと認定された旨の報道がされた(甲1の1,18の1・2)。
(10)  上記報道と相前後して,e機構から,4事業会社への発注方法や4事業会社がオーナー企業である原告の支配下にあることが問われ,4事業会社の経営を原告から分離しなければ,平成22年4月1日以降,4事業会社はe機構との取引を継続できないという情報が被告Y1及びHに伝わってきた。
そのような事態になれば,4事業会社の従業員約1500名が職を失うことになり,e機構の現場業務にも大きな支障が生じることが予想された。そのため4事業会社は,4事業会社を原告から切り離す方法を検討し,dの代表取締役であるJが被告Y1を通じて,原告に提案した。上記の事態が生じれば4事業会社の100%親会社である原告にも影響が生じることが想定されたものの,Aは,当初,4事業会社と原告とを切り離すことに抵抗を感じていたが,後継者であるCを含む甲山家を守りたい気持ちから,e機構との取引を4事業会社が継続するため,原告の4事業会社に対する支配(持株)関係を解消する必要があることを理解するに至り,平成21年12月16日,被告Y1に対し,4事業会社の売却に関するJの話を聞くように依頼した。これに対し,被告Y1は,Aの意思を理解し,年内決着に向けてJと連絡を取ること,この件に関しては,被告Y1がAから全権委任を受けた者として対応しないと平和裏な着地ができないので了承を求めることをAに解答した(乙4の2)。
(11)  Jは,平成21年12月17日午後6時半頃,4事業会社側が作成した本件基本合意の文案(その内容は本件基本合意と同一である。)を被告Y1に送付し,これに対する被告Y1の返答の後,基本合意書の原本が同月20日,被告Y1に送付された。そして,同月22日,Cも賛同の上,A及び被告Y1が,4事業会社の資本政策に関する以下の内容の基本合意書に押印し,同月24日,4事業会社が基本合意書に押印して本件基本合意が成立した(甲3,20の8,乙4の3~7)。
なお,Aが基本合意書に押印した同月22日,被告Y1は,Aに対し,最終合意が成立した際には,回収金の25%に相当する金額を成功報酬として支払ってもらいたい旨伝えた(甲20の12・13)。
ア 4事業会社の資本政策に関する取引スキームの概要は,以下のとおりとし,その詳細については,A,被告Y1及び4事業会社が別途協議の上,合意する。
(ア) 4事業会社は,原告に対し,A,被告Y1及び4事業会社が別途合意する金額の剰余金の配当を行う。
(イ) A及び被告Y1は,原告に,原告の所有する4事業会社の株式全てを,4事業会社が別途指定する者に譲渡させる。
(ウ) 4事業会社は,自ら及びaグループ持株会をして,これらが所有する原告の株式全てを原告に譲渡させる。
(エ) 上記(イ)及び(ウ)の株式譲渡の代金は同額とする。
イ A及び被告Y1は,自ら並びにC及びHをして,4事業会社の役員を辞任させる。
ウ A,被告Y1及び4事業会社は,平成22年2月28日までにこの取引スキーム及び資本政策の目的を達成するために必要な事項の詳細について規定する最終契約を締結し,最終契約に従い,取引スキーム及び資本政策を実行する。
(12)  Aは,4事業会社の株式を売却して,原告から切り離すことについて,平成21年6月9日に死亡した養母甲山Kの相続税申告を依頼していたタクトコンサルティングの税理士L(以下「L税理士」という。)にも相談していたが,L税理士から4事業会社からの話がAにではなく,被告Y1にされるのはおかしいと聞かされたこと,親族等から被告Y1の詐欺の前科を理由として,Aが被告Y1に騙されているのではないかとの指摘を受けたこと等を契機として,同年12月24日,被告Y1に基本合意書を4事業会社に交付しないよう連絡したが,その時点では,既にA及び被告Y1が押印した合意書が4事業会社に交付されていた。
そこで,A及びCは,被告Y1に本件基本合意についてL税理士に説明するよう要望し,翌25日,被告Y1は,本件基本合意の締結に関しL税理士に説明したが,L税理士は,本件基本合意の方針には反対の意向であった。
(13)  Aは,上記の経緯から,平成21年12月31日,被告Y1に対し,「最後の幕引きは私とCですることがベストだと決断いたしましたので,会長にお退きいただきたくお願い申し上げます。」として,原告と4事業会社との今後の交渉等に被告Y1が関与することを断る旨通知し,これに対し,被告Y1は「甲山家の問題はお二人で処理されることをお薦めいたします」と返答した(甲20の8)。
(14)  被告Y1は,平成22年1月7日,Aに対し,被告Y1は甲山家の経済的メリットを出そうと努力し,本件基本合意の締結にまでこぎ着けたこと,被告Y1が退くにあたり,本件基本合意を締結したことに対する報酬の話が無く寂しい思いをしていること,被告Y1は本件基本合意の当事者であり,退くにあたっては相手方の了解を取るなど,引継ぎに関し決めなければならないことが残っている旨を告げ,協議を求めるメールを送信した(甲20の9)。
(15)  Aは,平成22年1月15日,L税理士と共に,茨城県東海村の4事業会社に赴き,被告Y1を介さず,タクトコンサルティングに依頼の上,自ら処理すると説明した(甲20の12)。
(16)  平成22年1月18日頃,Aと被告Y1が,C及びH同席の上,セルリアンタワー東急ホテルのロビーで面談し,被告Y1は,従前から提示している25%の成功報酬を求めると話したが,Aはこれに対し,回答をしなかった(甲20の11)。
(17)  Aは,平成22年1月20日,被告Y1に対し,本件基本合意のスキームを被告Y1が申し出たことを相手方の弁護士から確認したが,被告Y1からの説明とは逆であり,甲山家にとって本件基本合意のスキームでは損害が大きく今後の税務リスクも残ることから,e機構側に申し出る前に相談がなかったことが残念であること,タクトコンサルティングに交渉役を任せることはなく,基本合意書にはAとCの名前が載るようにしたいこと,本件業務委託契約の本来の業務に手を付けることもなく残念であったが,同契約を解除し,基本合意書を返還して欲しいこと,同月18日に話のあった報酬については,謝礼の意味で考えており,どれくらいお礼をすればいいか教えて欲しいことを内容とするメールを送信した(甲20の10)。
これに対し,被告Y1は,同日,Aに対し,以下の内容を含む反論を伝えた(甲20の12)。
ア Aが同月15日にJと会談した内容はJから聞いており,仲介者をL税理士に乗り換え,被告Y1を騙したことから,被告Y1が退くとの回答は取り消すこと
イ Jからは,Aらに対し,①本件基本合意のAと被告Y1の問題には,4事業会社は関与しない,②Aと被告Y1が合意して被告Y1以外の者が交渉を行うことは差し支えないが,Aが一方的に被告Y1を排除した場合,本件基本合意に反するので,最終契約には至らない,③最終契約に至らない場合,4事業会社の社長はe機構に戻るだけであり,同機構から4事業会社に対する発注はなくなり,同社らの社員は退職になると話したと聞いていること
ウ 最終契約に至らず,甲山家に金銭が入らない場合,被告Y1としては,得べかりし利益の喪失に対する法的な要求を含む何らかの手段に訴えざるを得ないが,信頼関係を修復するべく,被告Y1が行ってきたこれまでの交渉に対するしかるべき報酬内容を含め,具体的な話をしなければならないこと
エ 本件業務委託契約は,Aが4事業会社が実質的な国策企業である事実を被告Y1に知らせることなく,できもしない「経営改革」を行わせたものであるが,本件業務委託契約は現在も生きており,その延長線上にあるのが本件基本合意であること
オ 被告Y1の一連の行為はビジネスであり,Aから謝礼を受領することはなく,最終契約に至った際には,基本合意書に押印する際に伝えた「回収金に対する25%の成功報酬」を要求すること
(18)  Aは,被告Y1からの上記反論に返答せず,以後,被告Y1との接触を断つようになり,被告Y1の要求する報酬の問題について,1度も具体的な対応をすることはなかった。また,Aは,原告に出社して業務を行うこともなくなった。なお,Cは,Aと被告Y1との間のこれらの経緯を認識していた。
(19)  他方,平成22年1月20日,文部科学省が,e機構の職員が取引先企業に再就職することに関し,再就職者の雇用条件と勤務管理が不明確な状態を同機構と取引先企業が連携して解消すること,国家公務員法を参考に明確な退職者管理規定を作成すること,及び取引先企業との契約において随意契約の割合が高いことに関し,原子力災害防止等の観点から真に必要なものを除き,契約に競争性を持たせ,コスト改善に努めることを同機構に要請した旨発表したことから,同年4月以降の4事業会社に対するe機構の発注を維持するために,早急に原告と4事業会社との関係を解消することが,一層必要な状態となった(甲1の2)。
そのため,同月22日以降,原告訴訟代理人及びタクトコンサルティングの担当者らが,4事業会社側の代理人弁護士と協議し,Cも,これらの協議に参加していた。この協議においては,4事業会社側から,e機構は,職員OBの天下り先に税金を流したとの批判を回避するため,同年4月以降,原告の支配する会社に発注することができない旨,4事業会社から原告に配当を支払い,その資金で原告が4事業会社の所有する原告の株式を取得し,原告が所有する4事業会社の株式を4事業会社に譲渡することにより,4事業会社が原告の支配から離脱すれば,4事業会社はe機構から発注を受けられるようになるとの説明が改めてあったほか,4事業会社側の公認会計士の策定した具体的な処理案では,原告に税負担が生じ,資金繰りがマイナスになること等から,別の方法を検討すること等が協議された。
その結果,原告と4事業会社は,同年3月4日,4事業会社が原告に対し配当金約18億5596万円を支払い,原告はその保有している4事業会社の株式を総額約15億7296万円で売却し,4事業会社が保有している原告の株式会社を約7億6138円で買い受けること,並びにA,C,被告Y1及びHが4事業会社の役員を辞任すること等を内容とする最終合意が成立した(以下「本件最終合意」という。)。本件最終合意は,取引スキームの概要並びにA,被告Y1,C及びHが4事業会社の役員を辞任するとの内容において,本件基本合意と共通しており,これにより,原告と4事業会社とは経営上の関係を解消し,A,C,被告Y1及びHは,同月30日付けで4事業会社の役員を退任した。
(20)  被告Y1は,同人の報酬に関する対応がされない中で,被告Y1を排除して,本件基本合意に基づく最終契約に関する協議がされていたことから,平成22年1月下旬頃,弁護士である被告Y2に相談し,同年2月4日,被告Y2を代理人として,本件基本合意があるにもかかわらず,同年1月15日頃から4事業会社が被告Y1の了解を得ないまま,Aの代理人らと協議を行い,その後も継続させているとして,意図的に被告Y1を協議の場からはずして,剰余金の金額等の合意がされた場合は,当該合意は本件基本合意に反して無効である旨の警告書を,A及び4事業会社に送付し,同月8日付けで,A及び原告に対し,被告Y1抜きの交渉をやめること及び報酬の支払を書面で約定するように求める書面を送付した(甲4の1・2)。
(21)  Cは,平成21年8月頃から,原告の事務所に出勤して取締役として原告の経理を担当し,原告の銀行印や預金通帳を管理し,経費の支払や収支管理を行っており,Aが平成22年1月以降,原告に出社しなくなってからは,原告の業務を取り仕切っていた。また,上記(19)のように,原告と4事業会社の関係を解消する協議にも参加し,交渉が進展していることを認識する一方,被告Y1が,Aに報酬を要求しているが,Aはこれに応じず,連絡を取っていないことも認識していた。
このような状況において,同年1月末頃,Cは,Hから,被告Y1が法的な措置を取る可能性があるが,被告Y1はAから無視されたことに怒っているので,一度会ってみたらどうかと提案され,これを契機に,Cは被告Y1と会い,被告Y1に対する報酬について協議するようになった。なお,当時,Cのみでなく,Aも,被告Y1が原告のために行動したことに対し,何らかの支払が必要であるとは考えていた(乙7の1)。
(22)  Cは,平成22年2月16日までの間に,被告Y1と交渉し,被告Y1が原告が受領する金員の25%に相当する額の報酬を要求するのに対し,要求額は支払えないが,いくらかの支払はすること,被告Y1が求めていた4事業会社の役員会開催を取りやめてもらいたいことを伝えた。これに対し,被告Y1は,19日に予定されている取締役会の開催要求は取り下げる旨返答した。
Cは,被告Y1との交渉に関しL税理士に相談しており,同月13日頃,Aには報告していないが,報酬額は交渉可能であると被告Y1から聞いているので,20億円程度の金額がCらにもたらされるように調整したいこと,Aの関知しないところで支払をするため,被告Y1と合意した金額を4事業会社からの支払とし,その額を控除した額を原告に対する剰余金とする方法を採りたいこと等を伝えていた(甲20の13,乙7の2)。
(23)  平成22年2月18日,被告Y1とCは,H同席の上,西麻布のレストランで協議し,被告Y1が従前の要求から減額した報酬額3億5000万円を申し出,Cがこれを了承した。
(24)  Cは,報酬額の合意が成立したことから,原告において直ちに支払のできる1億7500万円をとりあえず払うことを被告Y1と合意し,同月19日,代々木上原所在の原告事務所において三菱東京UFJ銀行の法人用インターネットバンキングを利用して,原告の金員7500万円を,被告Y1が同席して指示した被告Y2の預り金口座に送金した。
なお,この頃,被告Y1とCは,支払を実行することになった1億7500万円について,その根拠となる文書を作成することを合意し,同月19日付けで,原告「代表取締役甲山A」と原告「取締役兼」被告会社「取締役会長」被告Y1が合意する形式で,以下の内容の合意書を作成し,Cは,同合意書に原告代表取締役Aの記名印を押し,原告の代表印を捺印した(甲14。以下「第1合意書」という。)。
ア 本件業務委託契約及び本件基本合意が締結され,その後,本件基本合意等に関して紛争が生じたが,原告代表取締役Aと被告会社取締役被告Y1との間で,以下のとおり合意し,解決した。
イ 原告代表取締役Aは,被告会社取締役被告Y1に対し,本件解決金として1億7500万円の支払義務のあることを認める。
ウ 原告代表取締役Aは,本日,イの解決金の内金7500万円を,被告会社取締役被告Y1の代理人である被告Y2の預り金口座に送金して支払う。
エ 原告代表取締役Aは,被告会社取締役被告Y1に対し,イの残金1億円を同月22日限り,上記ウの口座に送金して支払う。
オ 上記ウ及びエの支払の完了により,被告Y1は,本件業務委託契約が解消すること,支払の完了により,被告Y1と原告,A及びCとの間において,相互に何らの債権債務のないことを確認する。
(25)  Cは,同月19日頃,被告Y1の求めに応じ,自らの意思で,4事業会社を売却することとなる本件基本合意が締結されたことにより,原告から被告Y1への解決金支払問題等が発生した,Aが精神的にも肉体的にも疲れた状態であるため,これまでCが暗黙の了解の下,Aに代り原告の経営に携わってきた経緯から,今後のことはCがAの代理人として判断し,被告Y1と交渉して決定することを約束する,ただし,平成21年12月に提示された剰余金に対する25%の報酬はAもCも高すぎると感じているので理解を求める旨の書面を作成し,被告Y1に交付した(乙2)。
(26)  次いで,Cは,同月22日にみずほ銀行の原告の預金口座から1億円を送金しようとしたところ,同口座の残高が9600万円しかなかった。そこで,被告Y1が同被告の口座からC名義で原告の上記口座に1000万円を送金した上で,Cが被告Y1の指定する被告Y2の預金口座に1億円を送金した。
上記送金を受けて,被告Y1は,同日付けで,原告「取締役」C宛に,本件基本合意等に関し原告代表取締役Aとの間で紛争が生じたが,原告代表取締役Aの全権委任者を申し出るCとの間で,解決金の一部支払が履行されたので,Cに対し受領証を発行する旨を記載した「解決金一部金受領証」を作成し,Cに交付した(乙8)。
(27)  被告Y1は,平成22年2月から3月当時,被告会社の会長職で実質的な経営者の立場にあり,同社の株式も実質的に保有していた。当時,被告会社には,株式会社日本政策金融公庫から3口の借入債務が存在し,自動振替による返済のための口座は被告Y1が管理していた。被告Y1は,原告から受領する報酬金によって,被告会社の借入金債務を一括返済することとし,被告Y2に対し,被告Y2の口座に入金された1億7500万円を被告会社の口座に入金するよう依頼した。これを受けて,被告Y2は,同年2月23日,被告会社の預金口座に1億7500万円を送金した(甲8の3)。
そして,被告会社は,同金員を資金として,日本政策金融公庫に対し,同年2月25日に1102万2421円及び2525万2436円,同月26日に5895万0535円を弁済し(丙1),これにより,同年3月15日までに,fが所有する被告Y1の自宅不動産に設定されていた被告会社を債務者とする根抵当権が解除された。
なお,被告会社の預金口座からは,同年2月26日,上記弁済後の残金7977万4600円に相当する8000万円が引き出され,同金員は被告Y1が取得した(丙2)。この直後の同年3月末以降,被告Y1は被告会社と関わりを持たなくなった。
(28)  Cは,平成22年3月1日,原告の事務所において,インターネットバンキングを通じて,原告の預金口座から,被告Y1の預金口座に2500万円を送金した。
(29)  Cは,原告と4事業会社との最終合意が成立した後である平成22年3月19日頃,原告の預金口座から1億4000万円を出金し,被告Y1に対し,同被告の事務所で交付した。
なお,Cは,原告においてCが今後の事業を行うため,原告の資金を引き出しておきたいと考えていたが,当時,甲山Kの相続税申告手続を行っており,CやAの預金口座も税務署の調査対象となる可能性があったことから,引き出した原告の資金をCの口座に預金することは避ける必要があると考えた。そこで,Cは,被告Y1に相談の上,上記1億4000万円のうち1億2000万円を,C及びAのための金員として別に保管することを被告Y1と合意した。そこで,被告Y1は,Cと共にHに依頼し,受領した金員のうち1億2000万円を新たに開設したH名義の預金口座に入金させた。
なお,Hは,この後,原告の事務所が移動する際に発見された300万円をCから,既に預託している1億2000万円と同様に預り金として欲しい旨求められ,合計1億2300万円を預かるようになった。なお,Hは,当該金員がCのものであると認識していたが,被告Y1及びCの説明から,原告が被告Y1に対し支払うべき報酬残額の担保の性質を有するものであると認識していた。
(30)  上記(29)の1億4000万円の金員交付後,被告Y1とCは,預り金として交付された金員を含め,3億5000万円の報酬に関する文書を作成することとし,原告取締役であるCと被告会社「取締役会長」である被告Y1が合意するとして,以下の内容の合意書(以下「第2合意書」という。)を作成し,Cは原告取締役の肩書の下,C個人の印を押し,被告Y1は被告会社取締役会長の肩書で,被告会社の印を押した(甲8の2)。
ア 原告代表取締役Aと被告Y1との間の,Aが全株を所有する4事業会社の経営業務を被告Y1に委託するにつき,本件業務委託契約を締結し,更に,本件基本合意が締結された。その後,本件基本合意等に関し紛争が生じたが,Cと被告との間で,以下のとおり合意し,解決した。
イ Cは,被告Y1に対し,本件解決金として3億5000万円の支払義務のあることを認める。
ウ Cは,被告Y1に対し,平成22年2月19日,イの解決金の内金7500万円を,被告Y1の代理人である被告Y2の預り金口座に送金して支払う。
エ Cは,被告Y1に対し,イの残金2億7500万円を,平成22年3月19日限り支払う。
オ ウ及びエの支払の完了により,被告Y1は,本件業務委託契約が解消すること,同支払が完了することにより,被告Y1と「原告代表取締役甲山A及び甲山A並びに原告取締役甲山C及び甲山C」との間において,相互に何らの債権債務のないことを確認する。
(31)  第2合意書を作成した頃,被告Y1は,以下の内容を確実に履行することを約束する旨の原告代表取締役A宛の念書を作成し,Cに交付した(甲15)。
ア 本件業務委託契約を解消する。
イ 原告,A及びCに対し,被告Y1は,一切の権利の主張を行わないことを確認する。
ウ 本件基本合意に関し,被告Y1は一切の権利の主張を行わないことを確認する。
エ 4事業会社に対し,被告Y1は一切の権利の主張を行わないことを確認する。ただし,dにおけるデジタルアイ問題は除外する。
(32)  その後,Cが被告Y1に交付するなどした本件各金員を合算しても,3億5000万円に不足することが判明したが,被告Y1がCに「もういい」と言ったため,更に金員の交付が行われることはなかった。
(33)  被告Y1は,その後,原告から,預り金に代えた報酬の支払がされなかったため,平成22年5月27日,Hに預けられていた1億2300万円を受領した。
(34)  被告Y1は,平成22年6月7日,Cに対し,①預り金の返戻を心配しているようだが,Cと約束したことが全てなので,条件が整えば即日に送金すること,②同年春までCはAの代理人として,いろいろな条件について交渉,決定してきたが,今回,Aが納得しない内容もあったと聞かされたため,これ以上,Cだけとの間で何らかの話しを決める訳にはいかないこと,③Aの代理人である弁護士とこれまでの行為について確認等をして,後顧に憂いのない終結をしたいこと,④事態が終結するまで,Cからの連絡は遠慮して欲しいことをメールで伝えた(甲10)。
(35)  原告は,G弁護士に依頼して,調停手続により,被告Y1に対し,預り金として預託した1億2000万円の返還を求めていたが,これが功を奏しないことから,平成23年3月初旬,原告訴訟代理人から,被告Y1及び被告Y2に対し,受領した金員の返還を求めるようになった(甲5の1・2)。
これに対し,被告Y2は,本人及び被告Y1の代理人として,受領した金員総額は3億3300万円であり,原告と被告会社会長である被告Y1との合意に基づくものであるから返還する義務はないと回答した(甲6の1・2)。
2  争点(1)(被告Y1の本件各金員取得に関する法律上の原因の有無)について
(1)  原告の支出した金員の総額
原告が不当利得返還請求権を有するというには,原告に損失が生じていることが必要であるところ,Cが支出した原告の金員の総額について争いがあるので,まず,この点について検討する。
本件金員1から3の合計2億円が原告から支出されたことについては当事者間に争いがないが(前提となる事実(5)アからウまで),原告が平成22年2月23日に1億4600万円を支出したとする本件金員4について,被告Y1及び同Y2は,原告主張の頃に受領したのは1億4000万円であり,その後に受領した300万円と併せて,1億4300万円であると主張している。
この点,原告は,本件金員4の支出をしたCが,本件金員4を三菱東京UFJ銀行代々木上原支店の原告の口座から出金して被告Y1に交付したと陳述していることから(甲19の2),容易に提出できると推認される本件金員4の額に関する客観的な証拠を何ら提出していない。また,原告は,平成21年度の税務申告における「その他特別損失」において,平成22年3月23日における「被告Y1の横領損失」を現金600万円と現金1億4000万円に分けているが(甲13),これに関する合理的な説明も何らなされていない。さらに,本件金員4の交付に関与したHは,平成22年3月19日頃にやり取りされた金員として認識しているのは1億4000万円であり,300万円は別の時期に追加され,他に金員の授受は認識していないとの供述をしている。これらに,被告Y1は,原告から返還請求を受けた当初から,受領した金額は被告Y1が送金した1000万円を差し引いて合計3億3300万円であるとして,本件金員4が1億4300万円であることを前提とする主張をしていたこと(上記1(35))を併せ考えると,本件金員4として原告から支出された額は1億4300万円であり,その支出の時期・経緯は,上記1(29)で認定したとおりであると認めるのが相当である。
したがって,原告の損失の前提となる額は,本件各金員の合計3億4300万円から被告Y1が原告に送金した1000万円を控除した3億3300万円である。
(2)  Cと被告Y1が合意した報酬額
原告取締役であるCが,被告Y1との間で,原告が被告Y1に対し,本件基本合意の締結に関する交渉を行ったこと等に対する報酬を支払うとの合意をしたことは,原告も認めるところであるが,合意された報酬額について,2億2300万円であるとの原告の主張と3億5000万円であるとの被告Y1の主張が対立しているので,次にこの点について検討する。
上記1で認定したように,Cと被告Y1は,報酬合意後近接した時期に支払うことができる1億7500万円(本件金員1・2)に関し第1合意書を作成して,同額の金員の支払を実行し(上記1(24),(26)),後に追加された300万円を除いて本件各金員の支払が終了した時点で報酬額を3億5000万円とする第2合意書を作成しているが(上記1(30)),報酬額を2億2300万円とする書面を作成したとの事実は認められない。仮に,合意された報酬額が2億2300万円であったのであれば,被告Y1に対し報酬額を超えて交付した金員について返還を求めることのできる原告の取締役であるCとしては,被告Y1との間でその旨を明確にしておきたいと考えるのが通常であり,それと逆に,本件各金員全額が被告Y1の取得できる報酬である旨の第2合意書を作成することは,不自然であり,不合理と言わざるをえない。
また,Cの陳述(甲19の2)によると,被告Y1に対する報酬を2億2300万円,Cらのための預り金の額を1億2300万円と定めたことになるが,いずれについても300万円という端数で決定したとするのはやや不自然であるところ,そのような合意に至ったことが自然であったとの経緯も明らかにされていない。加えて,上記(1)で認定したように,本件各金員の合計は3億4300万円であって,Cの陳述とは齟齬していることをからすると,報酬額を2億2300万円と合意したとのCの陳述は信用性を欠くと言わざるを得ない。
以上に,被告Y1とCとの報酬合意がされた平成22年2月18日の協議に立ち会い,その後も本件各金員の支払に関与したHが,両者間で合意された報酬の額は3億5000万円であると供述していることを併せ考えると,被告Y1とCが合意した報酬の額は3億5000万円と認めるのが相当である。
なお,原告は,被告Y1がCに対し,本件各金員の一部が預り金であり,返還義務があると認めたとして(上記1(34)),報酬額は3億5000万円ではないと主張する。しかしながら,被告Y1の当該対応は,上記1(29)で認定したように,本件金員4のうち1億2300万円がCから被告Y1への預け金として,H名義の口座で別に保管されることが合意されていたことから出たものであると解されるのであり,被告Y1が「条件が整えば」返還するとしていることからしても,被告Y1の上記返答内容を理由として,報酬額が3億5000万円より低額であったと認めることはできないというべきである。
(3)  Cの権限の有無
上記(1)及び(2)で認定説示したところによれば,Cは被告Y1と,原告が3億5000万円の報酬を支払うとの合意をし,同合意に基づいて原告から,本件各金員合計3億4300万円を支出したことになる。Cは,原告の代表取締役ではなく,取締役であるに留まるため,Cに上記合意及び支出を行う権限があったか否かが問題となる。
上記1で認定したように,原告代表取締役であるAと被告Y1との間に本件業務委託契約が締結され((5)),被告Y1は,同契約の履行として,平成21年8月から同年10月半ば頃までは,4事業会社の代表取締役会長として,4事業会社の経営改革に取り組もうとし,同年10月下旬頃に当該改革が国の原子力政策に反し困難であることが判明してからは,方針転換して対応の道を探っていた((8))。また,同年12月初旬ころからは,原告が4事業会社を支配している限り,平成22年4月以降4事業会社への発注は行わないとのe機構の意向の下,4事業会社への発注を存続させ,親会社である原告に負担が及ばないようにするための協議を,Aの了解の下,4事業会社側と行い,本件基本合意の成立に至っている((10),(11))。本件基本合意はe機構の意向を反映しており((19)),原告及び4事業会社にとっては,同合意内容の実行以外に方策はなかったこと,本件最終合意においても本件基本合意の実質的な内容が維持され,原告は約26億円を得ていること((19))からすると,本件基本合意成立の時点で,原告が4事業会社から剰余金の配当等により相当額の金員を受領しうることが想定されていたと認められる。
他方,本件業務委託契約では,被告Y1に対する報酬は,被告Y1の経営努力の成果が出た時点で,Aと被告Y1が協議して決定することとされており((5)),被告Y1は,本件基本合意の成立に至るまで,原告,4事業会社あるいはA個人のいずれからも報酬を受領していなかった。被告Y1とAとの間で,被告Y1の報酬の話が具体的に持ち上ったのは,Aが基本合意書に押印した平成21年12月22日であり,この際,原告が受領する金員の25%に相当する金額を成功報酬とする旨被告Y1が要求し((11)),その要求が維持される中,Aは,被告Y1の行為に対し,何らかの支払をするとの意向を示しながら,平成22年1月20日以降,被告Y1との報酬に関する協議を行わず放置したものである((14),(16)~(18))。
なお,本件業務委託契約は,A個人を契約当事者と表記しているが,A及び被告Y1は,個人としてのみではなく,原告の代表取締役としても合意をしたものであり(乙10,原告代表者本人,被告Y1本人),報酬の支払は,A個人ではなく,4事業会社の経営改善により利益を受ける原告が行うことが,Aと被告Y1との間の前提となっていたものと解される。
以上によれば,平成22年1月20日以降,原告の業務として対処されるべき被告Y1との報酬に関する協議が,代表者であるAによっては行われていなかったものといえる。
そして,Aは,平成22年1月以降,原告本社にも出社せず,同月以降の原告の業務は,Aの子であり,Aの後に原告の代表者となることが予定され(甲19の1・2),平成21年8月頃から原告の取締役として原告の業務に関与していたCが取り仕切っていたのであり,CはAが出社しなくなる前から原告の金員の管理を単独で行っていた(上記1(21))。
これらの事情に照らすと,Aは,Cに対し,平成22年1月以降,原告の業務を行う権限を包括的に与えていたと認めるのが相当であり,当該業務の中には,当時,弁護士である被告Y2を代理人として内容証明郵便が送付されていた(上記1(20))被告Y1との報酬に関する協議が含まれていたと解するのが合理的である。
Aは,平成22年1月20日に被告Y1から強く報酬の支払を求める反論を受け,同年2月初旬には,弁護士を代理人とする内容証明郵便の送付により報酬の支払を求められていたにもかかわらず,自らは全く対処していなかった被告Y1の報酬問題について,被告Y1は「立派な紳士であるから矛先をおさめた」のかと思っていた旨の供述をするが,被告Y1の反論の強さ及びその後の内容証明郵便の内容に照らし不自然である。まして,Aは,被告Y1の前科の内容を書物により改めて認識し,そのような人物を原告に関与させられないと判断して,本件業務委託契約を解消しようとしたのであるから(原告代表者本人),Aの上記供述は,一層不自然であるといわざるを得ない。このように,A自身が被告Y1に対処しなかった理由に関するAの供述が信用性を欠くものでしかないことは,CがAに代り,権限を有して被告Y1と協議していたとの上記認定を裏付けるものである。
また,Cは,被告Y1に報酬を支払うことに反対していたL税理士に対しては,Aに内密に支払をするため,原告から金員を支出するのではなく,4事業会社からの剰余金等の支払に絡めること等を相談していたが(上記1(22)),実際には,原告の預金口座からの振込みあるいは引き出しによる出金により本件各金員を被告Y1に支払っている(上記1(24),(26),(28),(29))。Cは,原告の預金口座からの出金であっても,通帳等をCが管理していることから,発覚しないと思った旨の供述をするが,Cの認識によっても2億2000万円を超えることになる金員を被告Y1に対する報酬として支出しながら,当該事実が原告代表者であるAに発覚しないことはあり得ないのであり,Cの上記供述は不合理であると言わざるをえない。総額3億円を超える金員を支出し,何らこれを隠蔽するための措置を採ったとは伺えないことからすれば,Cには,被告Y1の報酬として,本件各金員を支出する権限があったと解するのが合理的である。
これに,Cが同人がAを代理する旨の書面を作成していること(上記1(25))を併せ考えると,Cには,原告の取締役として,被告Y1と報酬の合意をし,原告の金員を支出する権限があったと認められ,合意しうる報酬額について制限があったとは認められない。したがって,報酬合意の効力は原告に及び,本件各金員の支出には法律上の原因が存在することとなる。
(4)  なお,原告は,被告Y1は原告の取締役であったから,原告から被告Y1に対する本件各金員の支払は,利益相反取引に該当するのに,取締役会の承認がされていないと主張する。しかしながら,原告と被告Y1との報酬支払合意が会社法356条1項の利益相反取引に該当するとしても,被告Y1は,本件業務委託契約に基づく業務の必要上,原告の取締役に就任していたものの,被告Y1には取締役の権限はないものとするとされていた(甲2)。そうであれば,取締役会の承認を得ていないことにより,同項により保護されるべき原告の利益が害されることはないというべきであり,取締役会の承認がないことにより報酬合意が効力を欠くことはないというべきである。
3  争点(2)(被告Y1の不法行為の成否)について
原告は,平成22年1月22日以降,被告Y1がCに対し,虚偽の事実を告げ,国会議員秘書や文部科学省の職員との会合に同席させるなどして,4事業会社が倒産せず,原告に負担がかからないよう平成22年4月1日までに原告と4事業会社との関係を絶つには被告Y1の協力が必要であり,そのためには被告Y1に報酬を支払うことが必要であると誤信させたと主張する。
しかしながら,Cは国会議員秘書や文部科学省の職員との会合に同席したことはなく,被告Y1に連れ回されたというのは虚偽の言い訳であったことは,C自身が証人尋問で認めているところである。また,文部科学省が所管する原子力行政について国の方針があり,これに反する行動に対して圧力が掛けられることがあることは,上記1(8)で認定したとおりであるし,被告Y1が政治家等に一定の人脈を有しているとの事実が虚偽であるとも,本件証拠からは認められない。
Cの証人尋問の結果によれば,同人が被告Y1に騙されたというのは,被告Y1に対し,3億5000円もの報酬(Cの認識によると2億2300万円)を支払う必要がなかったにもかかわらず,同額の報酬の支払を合意させられたことであると解されるが,報酬額の決定に関し,被告Y1がCに虚偽の事実を告知したと認めるに足りる証拠は存在しない。
以上によれば,本件各金員の交付に関し,被告Y1に不法行為が成立するとは認められない。
4  争点(3)(被告Y2の不当利得の有無)について
上記1(20)及び(24)で認定したように,弁護士である被告Y2は,被告Y1と原告との間の報酬を巡る紛争について,被告Y1から委任を受けており,被告Y1が本件金員1・2の受領方法として代理人である被告Y2名義の預金口座を指定したことから,被告Y1の代理人として,本件金員1・2を受領したと認められる。そして,被告Y2は,本人である被告Y1の指示により,本件金員1・2の全額を,被告会社の預金口座に送金している(上記1(27))。
このように,代理人が本人のために金員を受領した場合,利得を得たのは本人であり,不当利得の返還の要否は本人との間で問題とされるべきものである。本件において,この点を別異に解すべき事情はない。
したがって,代理人として本件金員1・2を受領した被告Y2には利得がないから,同被告に対する請求は理由がない。
なお,上記2で認定説示したように,本件金員1・2は,原告取締役として権限を有していたCが,原告から被告Y1に対し報酬として3億5000万円を支払うとの合意に基づき支払ったものであり,本人である被告Y1との間でもその支払に法律上の原因が存在することからも,原告の請求は理由がないものである。
5  争点(4)(被告会社の不当利得の有無)について
上記1(27)で認定したように,被告会社の預金口座に入金されたのは,本件金員1・2の1億7500万円のみであり,これを超える本件各金員が被告会社の支配下に置かれたと認めるに足りる証拠はない。したがって,被告会社が本件各金員全額を利得したとの原告の主張は,その前提を欠くものである。
また,上記1億7500万円は,平成22年2月当時,被告会社の経営に実質的に関与しており,自宅不動産に被告会社を債務者とする根抵当権が設定されていた被告Y1が,被告会社に債務を弁済させ,根抵当権を抹消するための資金提供を行ったものと認められるところ,上記2で認定説示したように,本件金員1・2を被告Y1が受領するについて法律上の原因があることからすれば,同被告から資金提供を受けた被告会社に,不当利得が生じることはないというべきである。
したがって,本件各金員に関し,被告会社に不当利得の返還を求める原告の請求は理由がない。
6  結論
以上によれば,原告の請求は,いずれも理由がないから,これらを棄却することとして,主文のとおり判決する。
(裁判官 倉地真寿美)

 

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