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「業務委託 代理店 営業」に関する裁判例(1)平成30年12月25日 札幌地裁 平27(ワ)1598号 不当利得返還請求事件

「業務委託 代理店 営業」に関する裁判例(1)平成30年12月25日 札幌地裁 平27(ワ)1598号 不当利得返還請求事件

裁判年月日  平成30年12月25日  裁判所名  札幌地裁  裁判区分  判決
事件番号  平27(ワ)1598号
事件名  不当利得返還請求事件
裁判結果  請求棄却  上訴等  控訴  文献番号  2018WLJPCA12256002

評釈
淺野高宏・労働法律旬報 1937号6頁

裁判年月日  平成30年12月25日  裁判所名  札幌地裁  裁判区分  判決
事件番号  平27(ワ)1598号
事件名  不当利得返還請求事件
裁判結果  請求棄却  上訴等  控訴  文献番号  2018WLJPCA12256002

札幌市〈以下省略〉
原告 X
同訴訟代理人弁護士 淺野高宏
同 井澤慎次
同訴訟復代理人弁護士 庄子浩平
大阪府池田市〈以下省略〉
被告 株式会社Y
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 鈴江勝
同 宿龍太

 

 

主文

1  原告の請求を棄却する。
2  訴訟費用は原告の負担とする。

 

事実及び理由

第1  請求
被告は,原告に対し,2954万5156円及びこれに対する平成27年8月6日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
本件は,原告が,原告と労働契約書を取り交わしていたB(以下「B」という。)及びC(以下「C」といい,Bと併せて「Bら」という。)が実質的には被告の従業員であり,Bらが原告の従業員であることを前提として原告が被告に支払ってきた保証金並びに本来被告が負担すべきであるにもかかわらず原告が負担していた税金及び社会保険料相当額は被告の不当利得に当たるとして,被告に対し,不当利得返還請求権に基づき,上記保証金等相当額2338万3102円及びこれに対する平成27年6月30日までに発生した民法704条前段所定の利息616万2054円の合計2954万5156円並びにこれに対する訴状送達日の翌日である同年8月6日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
1  前提事実
以下の事実は,当事者間に争いがないか後掲各証拠又は弁論の全趣旨により容易に認められる事実である。
(1)  原告は,合同会社a(以下「原告会社」という。)の代表社員である。
被告は,冠婚葬祭互助会員(以下「会員」という。)の募集及び冠婚葬祭の請負等(以下,併せて「被告事業」という。)を目的とする株式会社である。
(2)  被告の組織としては,不動産部,営業本部,冠婚本部,葬祭本部,管理部門等があるが,営業本部については,北海道,東北,関西・四国・中部,西日本の各地方ごとのブロックに分けられ,それぞれの下に支社が設置されている。そして,支社の下に,被告と代理店契約及び業務執行委託契約を締結した個人事業主や法人である代理店が位置付けられている。平成23年6月には支部制が導入され,代理店を支部と称して,代理店の営業地域を原則として行政区画単位で割り振り,代理店はその範囲で営業を行うこととなった。(甲2,乙15)
代理店に所属する従業員には,葬儀施行を担当し互助会入会契約を獲得するFA,各家庭を訪問して互助会入会契約を獲得するPR等の職種がある。
また,被告の関連会社にはb生命保険株式会社(以下「b生命」という。)があり,代理店の中には,b生命との間で,保険商品販売の代理店契約を締結しているものがある。(甲1)
(3)  原告は,平成14年10月28日,被告との間で,被告の会員募集業務や互助会入会契約の契約代理業務(以下「本件業務」という。)を受託する旨の代理店契約及び被告の運営する葬儀の役務提供に関する業務執行委託契約を締結し,以後,1年ごとに上記各契約を更新しながら,被告の代理店として札幌市○○区で本件業務を行っていた。
(4)  原告は,平成20年4月,Cとの間で,1年間の期間の定めがある雇用契約を締結し,同契約は1年ごとに更新された。
原告は,平成21年4月,Bとの間で,1年間の期間の定めがある雇用契約を締結し,同契約は1年ごとに更新された。
(5)  原告は,平成22年12月6日,合同会社a(原告会社)を設立した。
(6)  原告は,別紙1のとおり,被告に対し,代理店契約に基づき保証金(業務委託契約による原告の被告に対する一切の債務を担保する金員)を支払った。(甲11,75)
原告は,別紙2ないし12のとおり,源泉税,消費税,申告所得税,法人税,法人事業税,個人事業税,法人道民税,法人市民税,市道民税,労働保険料,社会保険料・厚生年金保険料を納付した。(甲77ないし87)
ただし,原告は,源泉税については,平成23年4月27日納付以降の分,消費税については,平成25年12月30日納付分(244万1800円),平成26年9月26日納付分,同年11月27日納付分(122万0800円),同年12月5日納付分,同月26日納付分(56万円),平成27年1月30日納付分(5万円),同年4月13日納付分を,法人税,法人事業税,法人道民税,法人市民税,労働保険料,社会保険料・厚生年金保険料については,その全てを,原告会社名義で納付した。(甲77,78,80,81,83,84,86,87)
(7)  原告と被告の間の代理店契約及び業務執行委託契約は,平成27年1月31日に終了した。その後,札幌市○○区の代理店の業務はD(以下「D」という。)が行った。
2  争点
(1)  主位的主張
ア 原告が被告の商業使用人であるか(争点①)
イ 原告が被告の商業使用人である場合,原告とBらの間の雇用契約の効力が被告に帰属するか(争点②)
(2)  予備的主張①
原告が被告の代理商である場合,被告が代理商を主張することが信義則に反するなどして許されないか(争点③)
(3)  予備的主張②
原告が被告の代理商である場合,被告とBらの間に黙示の雇用契約が成立しているか(争点④)
(4)  その他
原告が原告会社の設立後の利得の返還を請求できるか(争点⑤)
3  争点に対する当事者の主張
(1)  争点①(原告が被告の商業使用人であるか)について
ア 原告
会社法14条1項の商業使用人は,必ずしも営業主と雇用関係にある者だけに限られず,これと委任関係にある者も含まれると解されるが,その場合においても,当該営業者の行う営業活動が,営業主の行う本店又は支店の営業活動の一部を成しているといえる必要がある。
そのため,原告が被告の商業使用人に当たるか否かの検討に当たっては,①被告からの指揮命令の有無が中心的要素となり,この点については,a.仕事の依頼,業務従事の指示に対する諾否の自由,b.業務遂行上の指揮監督,c.場所的・時間的拘束性の観点から労働力利用の自由を失わせるような拘束性が認められるか(人的従属性)という観点から検討することとなる。
さらに,②原告が自己の計算と危険負担によって仕事を遂行していたのか,それとも被告の営業補助者にすぎないのかという点を,a.報酬の労務対償性(労務の対価として報酬が支払われているのか)や,b.原告の事業者性の有無ないし被告への専属性の程度(被告の企業組織に組み込まれて労働するという組織的従属性)という観点から検討し,指揮命令関係を補完する要素として考慮すべきである。
これを本件についてみると,別紙13の「原告の主張」欄の各事実によるならば,原告は,被告の商業使用人であることは明らかである。
イ 被告
原告は,代理店を運営するに当たり,自らの経営上の意思と選択により,原告会社を設立し,被告から支払われる顧客獲得に伴う手数料を売上げとして計上し,他方で,従業員を原告会社に組み入れて,これを指揮監督して本件業務を処理するとともに,従業員の給与,これに伴う源泉所得税,社会保険料及びその他本件業務を処理するに当たり必要となる経費を計上していたのである。原告会社は,社会一般の会社と何ら異ならない事業実態を有しているのであるから,独立した一個の事業体であって,何ら被告により支配されていない。
また,原告が,原告が被告の商業支配人である根拠として主張する事情は,他の代理店にも当てはまる事情であるが,他の代理店については事業主としての独立性が損なわれているという実態はない。
したがって,原告会社ひいては原告が被告の商業使用人であるといったことはあり得ないし,原告会社の従業員であるBらが被告の従業員になることもない。
なお,原告の主張する根拠についての反論は,別紙13の「被告の主張」欄のとおりである。
(2)  争点②(原告が被告の商業使用人である場合,原告とBらの間の雇用契約の効力が被告に帰属するか)について
ア 原告
各代理店で採用されたFAら従業員は,被告から被告の従業員として扱われ,FAらが活動して生じた売上げ等は,全て直接被告に帰属している。このような被告の全体像からすると,FAらは被告の従業員という外観を有している。
Bらは,原告と形式的に労働契約書を取り交わすことにより,以上のような被告の従業員という外観の中に取り込まれるのである。そのため,上記労働契約書の「事業所名 札幌○○支部」との表記が被告を意味するものではないとはいえない。むしろ,そのような契約書を取り交わすことにより被告の従業員という外観の中に取り込まれる以上,Bらが原告と取り交わした労働契約書は,被告のための契約書だったというべきである。
そうすると,原告が被告の商業使用人として締結したBらとの雇用契約の効力は,会社法14条1項の適用により,被告に帰属する。
イ 被告
原告とBらの間の労働契約書では,雇用側の当事者として「事業所名 札幌○○支部」及び「店主 X」とあるだけであり,被告の名称は出てこない。
そうすると,仮に,原告が会社法14条1項の商業使用人に該当したとしても,Bらとの雇用契約に関する原告の法律行為は,代理店長である原告又は原告会社のためのものであることは明白であり,被告にその効果が帰属することはない。
(3)  争点③(原告が被告の代理商である場合,被告が代理商を主張することが信義則に反するなどして許されないか)について
ア 原告
仮に原告が商業使用人であると認められず,代理商であるとしても,争点①において指摘した各事実を前提とすると,被告は,本件業務を委託して代理商としての地位を与えていた原告に対し,①業務執行上の強固な指揮監督を行い,②代理店長の役職の選任,解任を命じたり,あるいは代理店契約の更新を拒否したりすることで,実質的には人事権,懲戒権を行使し,③代理店長を経済的に被告に依存させる関係を維持し,④支部制を採用し,支部について被告の内部組織としての物的,心理的支配関係をより強固なものとすることによって,社会的にも経済的にも単一体を構成していたといえる。
これらの事情によれば,被告は,原告に対し,代理商としての地位を形式上は与えていたにもかかわらず,代理商としての独立性を与えずに,意のままに管理支配することのできる地位にあったものというべきである。
そして,被告は,以上のような立場を利用し,本来使用者として負うべき公租公課等の負担等の雇用責任を免れるという違法,不当な目的に基づいて,FAらとの関係で被告が使用者として負うべき債務を原告に転嫁していた。
そうすると,被告は代理商という法形式を用いて,原告に対し,被告の意のままに支配管理するべき支配力を行使して,上記の違法,不当な目的で,原告に雇用責任を転嫁したから,被告は,信義則又は権利濫用の規定の適用により,代理商という法形式を主張することで,自らが負う雇用責任を否定することはできない。
イ 被告
原告が代理商であることは争わないが,その余はいずれも否認する。原告は独立した事業主として,経済面でのメリットを受けていたのであり,その態度を豹変させたのは代理店としての経営が苦しくなってからである。被告は,営利企業として本件業務を受託した原告と営業目標を共有していたが,それが達成できないからといって原告やその従業員に対し何らのペナルティを課したこともない。
代理店には,一つの法人格の下で被告以外の事業を行っている代理店もあるのであり,被告が原告ら代理店を何ら支配していないことを示している。
(4)  争点④(原告が被告の代理商である場合,被告とBらの間に黙示の雇用契約が成立しているか)について
ア 原告
原告が被告の商業使用人ではなく代理商であったとしても,①代理店におけるFAやパート従業員の採用実態,②指揮命令及び労務提供の態様(直接業務指示・指導を行う主体,労務提供の相手方等),③人事労務管理の態様(勤怠管理,配置,懲戒,解雇等の決定の主体等),④従業員に対する給与の支払の態様を踏まえると,原告が形式上雇用した扱いとされたBらと被告の間には,黙示の雇用契約が成立していたといえる。
以上のようにいえる具体的な根拠は,別紙14の「原告の主張」欄記載のとおりである。
イ 被告
否認ないし争う。
原告が主張する根拠に対する反論は,別紙14の「被告の主張」欄記載のとおりである。
(5)  争点⑤(原告が原告会社の設立後の利得の返還を請求できるか)について
ア 原告
原告会社は,形式的なものにすぎず,その実態は原告個人の計算において運営されていた。本来,原告会社が支払うべき経費等も全て原告が支出していた。
原告は,本来被告が支払うべき経費等を肩代わりさせられたことによって被告が利得を得たとして不当利得の返還を請求しているところ,原告会社の設立後も原告がその経費等を負担するための原資を支出していたのであるから,原告が被告に対し原告会社の設立後の経費等の返還を請求できる。
イ 被告
原告と原告会社は別の事業主体であるから,原告は,原告会社の設立後の経費等の返還請求権を有しない。
第3  当裁判所の判断
1  認定事実
前記前提事実,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められる(なお,被告の事業や組織についての認定事実は,特に断りのない限り,被告の北海道内におけるものである。)。
(1)  代理店契約の定め
ア 原告と被告が平成23年8月1日付けで取り交わした被告所定の書式による代理店契約に係る契約書には,要旨,次の定めがあった。(甲27,95)
(ア) 被告は,原告に対し,本件業務を委託し,原告はこれを了承した。(契約書1条)
(イ) 原告は,被告が指定する区域内で被告の会員募集業務を行い,かつ,原告が募集した会員と被告の互助会入会契約が成立した時点における金員(第1回月掛金,親睦会費,全納一括払金等)の集金業務を行う。(契約書2条)
(ウ) 被告は,本件業務につき,業務細則の手数料規定に基づいて,原告に対し,手数料を支払う。(契約書5条1項)
(エ) 原告は,本件業務を第三者に再委託してはならない。(契約書8条3項)
(オ) 原告が代理店契約の各条項及び業務細則に違反したとき(1号),原告が被告による本件業務に関する指示事項に違反したとき(9号)などには,被告は,催告なく代理店契約を解除することができる。(契約書9条1項)
(カ) 代理店契約の有効期間は平成23年8月1日から平成24年7月31日までとし,同日をもって代理店契約は終了する。(契約書11条)
(キ) 原告は,本件業務を遂行するに当たり,その従業員に対し,原告の外務員としての自覚と誇りをもって,代理店契約等の規定を理解させ,会員募集業務に従事するように指導監督し,外務員として不適当と認められる者を採用しないよう努めなければならない。(業務細則第3)
(ク) 会員募集に必要な契約約款や領収書は,被告が現品を支給し,その他原告の代理店事務所の経費,従業員の人件費,加入申込用紙,パンフレット等の一切は原告の負担とする。代理店事務所開設時に事務所用店舗を賃借する必要があるときには,被告は,これを賃借して必要な期間原告に使用させ,原告は,賃料等を被告に支払う。(業務細則第4)
(ケ) 原告は,税務署の定める申告期間内に税務申告を行わなければならない。(業務細則第6(8))
(コ) 被告は,委託業務の監督のため,いつでも原告の業務関係,帳簿その他の書類の点検及び閲覧をすることができる。(業務細則第7)
(サ) 被告は,原告に対し,その従業員の募集,指導,研修,監督をするための必要な費用の一部を負担するなど,原告に対して適宜援助を行うことがある。(業務細則第9)
(シ) 原告から支給されるべき原告の従業員の給与を速やかに原告の従業員の指定金融機関へ入金する便宜上,原告の従業員の指定金融機関への振込業務を原告の依頼により被告が代行して行う場合もある。(業務細則第12(29))
(ス) 原告が代理店契約に違反する行為をした場合,被告は,原告又は担当者に対し,違反の内容に応じた一定額の拠出等のペナルティを課す。(ペナルティ規定)
(セ) 手数料は,新規の互助会入会契約数等により半年ごとに定まるクラス及び互助会入会契約の種別により定まる1契約当たりの単価に獲得した同契約の数を乗じた額の募集手数料に,継続手数料その他の手数料を加算した額とする。(代理店募集手数料規定)
イ 原告と被告が平成24年8月1日付けで取り交わした被告所定の書式による代理店契約に係る契約書には,上記アとおおむね同じ規定が設けられたのに加えて,次の規定が設けられた。(甲93)
(ア) 原告の従業員で被告の会員募集を行う者は,原告の労働者に該当する。原告は,同従業員と労働条件を確認する雇用契約を交わす。(契約書15条(6))
(イ) 原告の従業員で会員募集を行う者(FA)は,被告の定める研修を修了しなければならない。同研修を修了しない者は,被告の会員募集を行うことはできない。(契約書15条(7))
(ウ)a 原告は,被告の指示に基づき,本件業務の状況に関し,自主点検を初めとする自己点検・監査を実施し,その結果を被告に報告しなければならない。(契約書16条1項)
b 被告が必要と認めた場合,被告は,いつでも原告の本件業務の状況を監査することができる。被告は,監査,立入検査において,原告の業務関係,帳簿その他の資料の点検,閲覧をすることができる。また,被告が必要と判断した場合,原告はそれらを提出しなければならない。(契約書16条2項)
c 被告は,本件業務の監督のため,本件業務の状況に関し,原告の事務所その他の施設に立ち入り,原告の従業員等に質問し,又は帳簿書類その他の物件をいつでも検査することができる。(契約書16条3項)
(エ) 代理店契約の解除事由に該当する場合,代理店契約に定める禁止事由に該当する場合及び原告による本件業務の運営に改善を要すると被告が判断した場合には,被告は,原告に対し,措置を講ずべきこと及び期限又は期間を示して,本件業務の健全性を確保するための改善計画の提出等(1号),業務細則に基づく訓告,罰金等の措置(2号),本件業務の健全性を確保するために必要な限度の本件業務の全部又は一部の停止(3号),その他必要な措置(4号)をとるべきことを命令することができる。原告は,その命令に従い,原告の従業員にもその命令に従わせるものとする。(契約書17条)
(オ) 原告が代理店契約に違反する行為をした場合,被告は,原告に対し,違反の内容に応じ,一定額の拠出等のペナルティを課す。(ペナルティ規定)
ウ 原告と被告が平成25年8月1日付けで取り交わした被告所定の書式による代理店契約に係る契約書には,上記ア及びイとおおむね同じ規定が設けられた。(甲94)
エ 原告と被告が平成26年8月1日付けで取り交わした被告所定の書式による代理店契約に係る契約書には,上記アないしウとおおむね同じ規定が設けられた。(甲11)
(2)  原告の業務の内容
ア 原告は,札幌市○○区を担当する代理店の代理店長として,被告からの各種指示,連絡事項の伝達,FAその他の従業員の営業活動の管理,経理会計事務等の業務を行っていた。
イ 原告は,Bらを含め20名程度から40名程度の従業員と雇用契約を締結し,上記アの業務を行っていた。(甲11,13,27,93ないし95)
ウ 原告の事務所は,被告が株式会社光泉インダストリーから月34万6164円(共益費込み)で賃借していたものであり,被告が原告に対し備品等と併せて月30万円で使用させていた。(甲75,234〔147頁〕,乙3,41の2〔93頁〕)
(3)  原告会社の設立
ア 原告は,平成22年12月6日,本件業務を行うため,原告会社を設立し,原告会社の代表社員となった。また,原告は,E(以下「E」という。)を原告会社の業務執行社員とした。(乙10)
イ 原告会社の設立後も被告との代理店契約は,原告の名義で締結された。(甲11,27,93ないし95)
ウ 原告会社は,事業年度ごとに確定申告を行っていた。(甲231〔33,34頁〕,234〔140,141頁〕,乙17ないし19)
上記確定申告には,原告会社から,原告に対し年336万円の役員報酬が支給され,Eに対し年96万円の役員報酬(ただし平成25年10月まで)が支給され,また,従業員に対する給与も原告会社から支給された旨の記載がされていた。(乙17ないし19)
(4)  原告や代理店に対する業務上の指示等
ア 原告は,被告の求めに応じ,互助会入会契約の獲得本数等の営業目標を定め,これを同支社長に報告していた。定めた営業目標については,被告から再考を促され,これを改めたこともあった。定めた営業目標は,原告が各FAに割り振っていた。もっとも,Bらは,自身に課せられた営業目標を達成できなかった場合でも,葬儀施行の担当から外されるといったペナルティを受けることはなかった。(甲31,32,229〔22頁〕,231〔8頁〕,232〔23,30,53頁〕,233〔80,89,90頁〕)
イ 被告では,被告の支社長がその担当する地域内の代理店長を集めて支部長会議を開催していた。支部長会議では,被告の支社長らから,被告の全国の支社長による会議を踏まえて,営業目標についての被告の要望が強く述べられ,それについて代理店長との間で協議が行われ,また,被告のライバル社の動向も踏まえた目標設定の話がされたほか,相当程度厳しい言葉で代理店に対する指示等が行われることもあった。(甲50,53ないし56,88,104,137,173の1,173の2,176の1ないし176の3,甲199,乙41の1〔24頁〕,41の2〔102,103頁〕)
ウ 被告は,原告の携帯電話宛に電子メールを送信して,営業目標の達成状況,各種書面の提出の締切日等について指示や連絡をしていた。(甲200の1ないし200の5,甲222,223)
エ 原告は,自ら企画して顧客向けの見学会その他の催しを実施したり,FA等の従業員の採用を行ったりしていたが,それに費用を要する場合には,必要に応じて,被告に対し,その費用の全部又は一部についての負担を求める稟議を上げ,被告は,適宜その全部又は一部を負担していた。(甲35ないし37,57,59ないし61,231〔20,21頁〕,乙40〔12頁〕,41の3〔125,126頁〕)
オ 被告では,人事異動と称して,代理店長に対し,営業地域の変更を打診し,代理店長がこれに応じれば,営業地域が変更されることがあった。(甲69,137〔1ないし3頁〕)
(5)  FAに対する指揮命令等
ア 被告からの指示や連絡は,基本的には,原告に伝達され,原告がその従業員に伝達していた。もっとも,被告から,代理店だけではなくそのFAも名宛人として,本件業務についての指示や連絡をする旨の文書が発出されたこともあった。また,b生命から,代理店だけではなく代理店の従業員を名宛人として,b生命の生命保険契約に係る業務についての連絡や指示を行う旨の文書が送付されたこともあった。(甲47の1,47の2,甲89の1ないし89の3,甲128,130,229〔12,13頁〕,230〔4頁〕,231〔8頁〕,232〔50頁〕,233〔87,88頁〕,234〔111頁〕,乙20〔1頁〕)
イ 被告は,FAに対し,葬儀施行の際に被告所定の制服を着用することを求め,また,社名を「(株)Y」又は「(株)Y北海道」とする外務員登録証を所持させていた。(甲127,150)
ウ 代理店長及びFAの役員会の申合せとして,FA間の待機順序や葬儀施行後の代理店間の営業権の所在など,葬儀施行に関するルールが定められ,文書化されていた。(甲201ないし203)
エ 葬儀を施行する際には,葬儀を施行する被告ホールの責任者である館長から,FAに対し,直接,葬儀施行に係る様々な指示が行われた。(甲229〔13,14,23,27頁〕)
オ 被告は,FAに対し,葬儀施行後に業務において気付いた事項や顧客からの意見等を被告に報告させていた。(甲47の1,47の2,甲132,185の1,185の2,甲233〔61,62頁〕,乙41の1〔38,39,47,48頁〕,41の3〔153,154頁〕)
カ 被告は,FAに対し,GPS機能付きの携帯電話を貸与し,その受取の確認や被告所定の使用上の注意を理解した旨の書面を提出させ,また,携帯電話の紛失に備えて常に電源を入れておくよう求めていた。(甲55〔3,5頁〕,68,229〔12,22,23頁〕,234〔109,110,133,148頁〕)
(6)  原告に対する金銭の支払等
ア 被告は,毎月,代理店契約の定めにより算出した手数料や貸付金等の合計額から,事務所賃料,電話料金,プール金,原告の代理店の従業員の給与,被告の原告に対する貸付金の返済分等を控除した額を原告に対し支払っていた。(甲11,18の1ないし18の11,甲27,75,93ないし95,231〔15ないし17頁〕,234〔148,149頁〕,乙1の1ないし1の5)
イ 上記アの金員の支払は,「代理店請求書」と題する所定の書式に基づいて行われていた。被告は,あらかじめ上記アの各項目の金額を代理店請求書に記入しておき,原告は,これに署名押印した上で,被告に提出していた。(甲18の1ないし18の11,甲75,231〔5,6頁〕,232〔19,20頁〕,234〔107,108,158,159頁〕,乙1の1ないし1の5,乙41の3〔153頁〕)
ウ 被告は,原告に対して,上記アの金員を給与名目で,毎月27日頃に振り込んで支払っていた。支払額は,0円(平成26年2月分等)から314万5000円(同年10月分)までの幅があり,月ごとに異なっていた。(甲18の1ないし18の11,甲75,111,乙1の1ないし1の5)
(7)  代理店とその従業員の関係
ア 代理店の従業員の採用については,原則として,代理店ごとに,代理店長が,募集をした上で面接を行って,その採否を判断していた。募集に要する費用の支援を受けるため,あるいは,採用後に被告所定の研修を受けさせる必要があるために,代理店がその限りで被告に連絡等をすることはあったが,採用自体に被告の許可は必要なかった。(甲234〔125,126頁〕,乙41の2〔75,76頁〕,41の3〔126,143,144,153,156頁〕)
求人募集の広告は,被告自身又は被告の支社,営業所若しくは代理店といった様々な名義で行われており,また,応募者の不採用の通知には,被告の人材開発課名義の文書が使用されることもあった。(甲119ないし121,143,168の1ないし171の2)
イ 被告は,代理店に対し,代理店が新たに採用した従業員について,被告のトレーナーによる冠婚葬祭の基礎知識や被告の冠婚葬祭の商品の説明等についての講習を受けさせ,互助会の募集活動に必要な資格及び生命保険契約の募集人資格を取得させるよう指示していた。(甲62ないし64)
各代理店では,上記指示を受けて,新たに採用した従業員に上記講習を受けさせるなどしており,また,被告の要請を満たさない従業員については,営業活動をさせられないことから解雇することもあった。(甲230〔20,21頁〕,231〔38頁〕,234〔116頁〕)
ウ 被告は,平成23年10月11日,代理店に対し,「重要通達」と題する書面を発出し,新たに採用する従業員との雇用契約について,被告が配布する労働条件通知書を使用することなど雇用の条件を統一することを求めた。(甲148)
エ 被告は,代理店ごとに異なっていたFAの給与を統一するため,平成25年12月頃,基本給は月18万円,歩合給は獲得した互助会入会契約1本ごとに2万円とする方針を打ち立てた。(甲92,104〔4,6,13頁〕,231〔27,28頁〕,乙41の2〔67,68頁〕,41の3〔153頁〕)
もっとも,その後も,従業員との雇用契約において,基本給を月18万円とする代理店もあれば,月15万円とする代理店もあるなど,従業員の基本給は必ずしも代理店間で統一されなかった。また,代理店とその従業員の雇用契約の条件についても,期間の定めの有無,勤務時間,休日の定め等は,代理店ごとに異なっていた。(乙31の1ないし31の9,乙41の2〔69頁〕)
オ 被告は,代理店に対し,代理店の従業員名簿,従業員のタイムカード,新たに採用した従業員の履歴書等の書類の提出を求めていた。(甲44,91,231〔6,7頁〕,234〔106,107頁〕)
また,被告は,代理店長及び代理店の各従業員について,それぞれ担当者コードを割り付けていた。(甲11,27,93ないし95,113)
カ 被告は,平成26年8月頃,代理店の従業員について,3か月以上の長期欠勤は認めず,長期欠勤した従業員については代理店が退職手続をとることとするとの方針を定め,これを代理店長に告知した。これを受けて,原告は,長期間欠勤していた原告の従業員1名を解雇した。(甲186〔2,3頁〕,231〔41,42頁〕,234〔114,115頁〕)
キ 被告は,FAが別の代理店に移動する場合,顧客対応が円滑に行われるようにするため,代理店に対し,その旨の報告を被告にするよう求めていた。(甲221の1,221の2)
ク 被告は,平成28年7月6日,割賦販売法に基づく経済産業大臣に対する報告の中で,従業員数について,全従業員7128人,うち臨時社員として外務員3799人,施行員2925人と報告した。(甲159)
(8)  原告とBらとの関係
ア Cは,平成20年に,被告の代理店であった株式会社cがハローワークに出していた求人募集を見て,これに応募したが,同社での採用期間が経過していたため,同社から原告を紹介されて原告の面接を受け,原告に採用された。(甲230〔1,18ないし20頁〕,233〔55,56,70ないし72頁〕)
Bは,平成13年3月に被告と代理店契約を締結して代理店長として稼働し,平成14年1月以降はFAとして稼働していたところ,平成21年に原告の面接を受けて,原告に採用された。(甲5,229〔1頁〕,232〔3,4頁〕)
Bらは,採用後,原告の指示により,被告所定の書式を用いた「株式会社Y代理店 a社」宛ての誓約書を原告に提出した。(甲6の1,甲9の1,甲229〔1,2,18頁〕,230〔1,2,21,22頁〕,231〔4頁〕,233〔56,57頁〕)
イ Cは,平成23年6月1日付けで,事業所名を「札幌○○支部代理店」,店主名を「X」とする原告宛ての労働契約書を取り交わした。同契約書には,雇主を被告とする旨の記載はなかった。(甲10の1,甲230〔4,5,22ないし24頁〕,233〔57,72,73頁〕)
ウ Bらは,平成25年8月1日付けで,事業所名を「札幌○○支部」,店主名を「X」とする労働契約書を原告と取り交わした。同契約書には,雇主を被告とする旨の記載はなかった。また,Bらは,同時に,原告の指示により,原告に対し,「札幌○○支部 X」宛ての誓約書や「株式会社Y 札幌○○支部代理店」宛ての確認書を提出した。同確認書には,Bらが原告の従業員として雇用されており,被告と何ら雇用関係がないこと,原告から支払われる給与が被告から振込業務を代行して支払われることを確認する旨が記載されていた。(甲6の2,甲7,9の2,甲10の2,甲15,16,229〔2,3,18,19頁〕,230〔1ないし6,25,26頁〕,232〔5,6,21頁〕,233〔56ないし58,72,73頁〕)
エ Bらに対する給与の支払は,被告が原告の振込業務を代行して行い,原告からの給与の名目でBらの口座に振り込まれていた。(甲13,110,190,229〔24,26頁〕,233〔60頁〕,乙41の1〔48,49頁〕)
オ Bらの社会保険については,平成23年頃から,事業主を原告会社とする扱いがされるようになり,Bらも,自らの被保険者証の事業所名欄に原告会社名が記載されていたことを認識していた。(甲230〔24,25頁〕,232〔52頁〕)
カ Bらの給与は,当初基本給が月15万円とされていたが,原告は,平成26年以降,前記(7)エの被告の方針に従い,基本給を月18万円とした。もっとも,互助会入会契約の獲得数に応じて変動する歩合給については,同方針では獲得した互助会入会契約1本ごとに最低2万円とされていたところを,原告は,Bらの生活を考慮し,被告と協議の上2万5000円としていた。(甲7,10の1,10の2,甲13,110,231〔27ないし30,38,39,42頁〕,232〔41,42頁〕,234〔132,156頁〕)
(9)  ○○第2支部の発足
被告は,原告に対し,原告が担当している札幌市○○区での営業目標を達成するため,その半分を営業区域とする○○第2支部を立ち上げ,同支部を原告以外の者に担当させることを打診した。原告は,これにより自身の営業区域が奪われ,売上げが減少する可能性があると思ったものの,これを断ると支部長の地位を降格させられたり,配置転換をされたりするおそれがあると考え,これを承諾した。その結果,平成25年6月1日,○○第2支部が発足した。(甲26,231〔8ないし10,43〕,234〔113,114,133ないし135,143,144頁〕,乙38)
(10)  被告の支社長と原告やBらとのやり取り
ア 被告東札幌支社のF支社長(以下「F支社長」という。)は,平成26年9月30日,原告に対し,b生命の生命保険契約の獲得条件を達成できない原告のFAを葬儀施行の担当から外すことを求めた。しかしながら,原告は,これに応じようとしなかった。(甲88〔2頁〕)
そこで,F支社長は,同日,Cを含む原告のFAを集め,原告におけるb生命の生命保険契約の獲得本数が芳しくないとして,獲得条件を達成できないFAを葬儀施行の担当から外すことについて,理解を求めた。ところが,Cは,これに反発して,F支社長に対し,「私たちはあなたたちの社員じゃありませんよ。」,「私たちはね,支社長たちとは,何の関係もないんですよ。雇用関係も。」,「私たちは,支部長と労働契約を結んでいる関係なんですよ。」,「私たちはY社に勤めているわけではないんですよ。」などと発言した。(甲88〔2頁〕,230〔15,16,28,29頁〕,233〔82ないし84頁〕,乙20)
イ 結局,原告は,F支社長の要請には応じず,原告のFAが葬儀施行の担当から外れることはなかった。(甲229〔22頁〕,232〔23,43,53頁〕,233〔80頁〕,乙41の2〔65ないし67頁〕)
(11)  原告と被告の代理店契約の終了
ア 原告は,平成26年7月以降,獲得した契約の本数が目標を下回り続け,経営状態が悪化し,同年10月からは,毎月,被告から借入れを行っていた。(甲75,231〔40,41頁〕,234〔130,131頁〕,乙7,38〔別表2〕,41の2〔54ないし56頁〕)
そこで,F支社長は,平成27年1月16日,原告に対し,面談をして,経営の悪化を理由に廃業するよう促した。原告は,その場ではこれに応じなかったもの,結局,同月29日,被告に対し,経営悪化を理由として,代理店契約の解除を申し出,原告と被告の代理店契約は解除された。(甲104〔16,17,21頁〕,231〔40,41頁〕,乙8,41の2〔59,60,64頁〕)
なお,F支社長は,上記面談の際に,被告では70歳で定年である旨述べたものの,被告においてそのような制度が設けられているわけではなかった。(甲104〔17頁〕,乙41の2〔60頁〕)
イ 原告による代理店契約の解除が決まった後,原告は,Bに代理店長への就任を打診したが,断られた。その後,被告が,代理店を経営していたDに打診したところ,Dは,一度は断ったものの,最終的にはこれに応じて札幌市○○区で代理店を経営することを承諾した。Dは,原告の従業員であったFA等の従業員を雇用し,事務所や備品等も承継したが,Bらは雇用しなかった。(甲229〔21,22頁〕,232〔13頁〕,乙40〔6,7,19頁〕,41の1〔25,26頁〕,41の2〔61,62頁〕,41の3〔116ないし119,134,135,140,141頁〕)
2  争点①(原告が被告の商業使用人であるか)について
(1)  原告は,原告が被告の商業使用人であったと主張するので,以下検討する。
(2)  確かに,被告は,被告事業の推進のため,代理店を被告の支社の下に位置付けて,これらが被告と一体的な組織であるかのように運用しようとし(前提事実(2)),代理店となる者に対し被告所定の条件の代理店契約を締結させた上で(認定事実(1)),代理店の営業目標や代理店と従業員との雇用条件等についても方針を定め,それを支部長会議等の場を通じて相当程度強く代理店に指示するなどしていたことは否定し難い(同(4)ア,イ,(7)エ)。
しかしながら,その指示を受けていた原告は,被告と代理店契約を締結した上で本件業務を行い,被告の意向を踏まえつつも,原告自身の判断において従業員の採否や雇用条件の決定を行っていたものである(認定事実(7)ア,(8)ア,カ,(10)ア)。また,原告は,相当数の従業員を雇用した上で(同(2)イ),従業員に対し各種指示を行って本件業務を行い(同(5)ア),しかも,平成22年12月からは,本件業務を行うために原告会社を設立し(前提事実(5),認定事実(3)ア),同社において確定申告を行って公租公課を負担していたのである(前提事実(6),認定事実(3)ウ)。そうすると,原告が被告の指揮監督に従って本件業務を行っていたとみることは困難である。
そして,原告は,代理店契約上,本件業務を再委託することこそ禁止されていたものの(認定事実(1)ア(エ)),原告のみにより本件業務を遂行することは何ら予定されておらず,むしろ,基本的には原告が従業員を雇用して本件業務を行うことが予定されており(同(1)ア(キ)),現に,原告はBらを含む相当数の従業員を雇用して本件業務を遂行していたのであるから(同(2)イ),業務の代替性があったといえる。
さらに,原告が被告から支払を受ける本件業務の遂行の対価は,原告が互助会入会契約を獲得した数に応じて定まる募集手数料にその他の所定の手数料を加えた手数料であり(認定事実(1)ア(ウ),(セ),(6)ア),基本的には原告が獲得した互助会入会契約の数に応じて定まるものといえ,それ自体原告が提供する労務の時間や量と相関関係があるものではない。しかも,互助会入会契約の獲得は,原告だけが行うものではなく,原告の従業員も行うものであるから(同(2)イ,(6)ア),手数料には,原告の従業員が提供する労務により得られる部分が含まれている。そうすると,被告から支払われる手数料が原告の提供した労務それ自体の対価であるとはいい難い。
以上の事情に照らすと,原告は,代理店契約に基づき,独立した事業者として本件事業を行っていたとみるのが相当である。
(3)  これに対し,原告は,以下のとおり,原告が被告の商業使用人であったと主張するが,いずれも採用することはできない。
ア 原告は,代理店契約上,被告が代理店契約の解除権限,監査権限,業務改善命令の発令権限を有することが定められており,これにより被告から依頼される仕事に対する諾否の自由がなかったと主張する(別紙13①a(a))。
しかしながら,原告が,被告との間で,本件業務の遂行を目的とする代理店契約を締結している以上は,原告が,被告から依頼される仕事に応ずるか否かを原告の完全な自由で決定できるわけではないことは,代理店契約の性質上当然のことである。そして,契約違反の事実があった場合に代理店契約を解除できることも,契約の性質上当然のことであるから,これをもって,原告が被告の商業使用人であったことが基礎付けられるとはいえない。
また,監査権限や業務改善命令の発令権限については,確かに,代理店契約の一方当事者である被告が原告に対し一方的に監査や業務改善命令を行うことができることを定めるものであり(認定事実(1)イ(ウ),(エ)),被告のみが一定の強力な契約上の権限を有していたことは否定し難い。しかしながら,被告事業は多数の代理店によって全国的に展開されるものである上(前提事実(2)),被告事業における冠婚葬祭互助会に係る契約が割賦販売法上の前払式特定取引(同法2条6項)として,同法の規制を受け,代理店に対する指導が十分でないときには被告が監督官庁から改善命令を受けることもあること(同法35条の3の62,20条の2,同法施行規則124条3項6号)も考えると,被告において各代理店における業務の内容や品質を統一する必要があることは明らかである。そうすると,被告が監査や業務改善命令を通じて原告の業務内容を統制することについても,代理店契約の趣旨ないし性質から導かれるものとみるべきであって,これを原告が被告の商業使用人であったことを基礎付ける事情とみることはできない。
イ 原告は,被告の指示により○○第2支部を発足させることを強いられたとして,原告に営業地域の配分についての諾否の自由がなかったと主張する(別紙13①a(b))。
確かに,○○第2支部は,被告の意向により発足することとなったものであり,札幌市○○区で営業を行う原告が,営業地域の競合により不利益を被る可能性があったことは否定できない。しかしながら,結局,原告は,そのような不利益を承知しながらその発足に同意したものであり(認定事実(9)),同支部の発足が被告により強制され,原告に営業地域の配分について諾否の自由がなかったとはいえない。
ウ 原告は,被告が,代理店長を異なる営業地域の支部長等に選任するなどし,また,原告を70歳の定年となったことを理由に支部長から解任したなどとして,被告が原告に対する役職の選任や解任の権限を有していたと主張する(別紙13①b(a)ⅰ)。
しかしながら,代理店長が異なる営業地域を担当することとなったのは,飽くまでその代理店長が同意したからであり(認定事実(4)オ),被告の一方的な人事権により行われたものではない。また,原告が代理店長を辞することとなったのは,原告の経営状況の悪化を理由として,被告から説得が試みられ,原告がこれに応じたことによるものであって(同(11)ア),原告が主張するような定年制度が存在することによるものではない。そうすると,被告が原告に対する役職の選任や解任の権限を有していたとはいえない。
エ 原告は,原告が行っていた業務内容に照らせば,原告の営業に対する被告の指揮命令があった旨主張する(別紙13①b(a)ⅱ)。
しかしながら,原告が主張する上記業務は,代理店契約により原告に義務付けられていた本件業務を行うための各種業務にとどまると認められるから(認定事実(1)ア(ア),(イ),(2)ア),これをもって原告が被告の商業使用人であったことが基礎付けられるとはいえない。
オ 原告は,本件業務のために相当程度の時間拘束されていたとして,原告の営業に対する被告の指揮命令があった旨主張する(別紙13①b(a)ⅱ,c(a))。
しかしながら,代理店契約上,原告の勤務時間についての規定は一切なく(甲11,27,93ないし95参照),また,被告から勤務時間についての具体的な指示があったと認めるべき証拠もなく,実際上原告が本件業務を行うために相当程度の時間を要していたとしても,それが被告の指揮命令によるものであるとはいえない。
カ 原告は,被告から営業目標の達成について強制されていたとして,原告の営業に対する被告の指揮命令があった旨主張する(別紙13①b(a)ⅱ)。
確かに,被告から代理店長に対し営業目標の達成についての強い指示があったことは事実である(認定事実(4)ア,イ)。しかしながら,そもそも,原告が行う本件事業は被告事業の推進のためものであり(同(1)ア(ア),(イ)),その営業目標の達成について委託者である被告が受託者である原告に対し強い指示をしたとしても,そのことから直ちに原告が被告の商業使用人であることが基礎付けられるものとはいい難い。
キ 原告は,被告が,原告に対し,被告の稟議を要する営業イベントの実施を義務付けるなど,営業方法についての具体的な指揮命令をしていたとして,原告の営業に対する被告の指揮命令があった旨主張する(別紙13①b(a)ⅱ)。
しかしながら,被告が個々のイベントの実施を原告に義務付けるなど,営業方法について具体的な指揮命令をしていたと認めるべき証拠はない。また,代理店が被告の稟議を経ることはあるものの,それは各種イベントに要する費用の全部又は一部について被告の負担を求めることについての稟議にすぎない(認定事実(4)エ)。そうすると,こうした稟議を経ることがあったからといって,原告の営業に対する被告の指揮命令があったとはいえない。
ク 原告は,原告の従業員の採用活動についても被告が指示をしていたと主張する(別紙13①b(a)ⅲ)。
確かに,代理店契約では,原告が被告の外務員として不適当な者の採用をしてはならないことが努力義務として定められていたものの(認定事実(1)ア(キ)),最終的に原告の従業員の採否を決定していたのは原告であったのであり(同(7)ア),被告が,原告の従業員の採否を直接決定していたとは認められない。また,代理店が採用に当たって被告の稟議を要する場面はあったものの,それは,採用の可否を被告に決定させるためではなく,採用活動に要する費用の負担を被告に求めるためにすぎなかった(同(4)エ)。
そうすると,以上の点から原告が被告の商業使用人であることが基礎付けられるとはいえない。
ケ 原告は,被告がBらを始めとする原告の従業員の給与を直接に支払っていたとして,被告が原告の従業員に指揮命令していた旨主張する(別紙13①b(b)ⅰ)。
確かに,Bらの給与は,被告がBらの預金口座に対し振り込んでいた(認定事実(8)エ)。しかしながら,これは,代理店契約にも明記され,Bらが確認書を提出して確認しているとおり,迅速な給与振込みのために,被告が給与の振込業務を代行したにすぎず(同(1)ア(シ),(8)ウ),しかも,その原資は原告が被告から支払を受ける手数料であった(同(6)ア)。
そうすると,被告が原告の従業員の給与を直接に支払っていたとはいえない。
コ 原告は,①被告が原告に対し,原告の従業員との労働条件を指図し,原告の従業員の労務管理の資料の提出を求め,原告の従業員に識別番号を付すなどして原告の従業員を管理し,②被告が原告の従業員の配置換えや懲戒,解雇等について決定権を有していたとして,被告が原告の従業員に対する人事労務管理を行っていた旨主張する(別紙13①b(b)ⅱ)。
確かに,被告は,代理店に対し,代理店とその従業員との雇用契約について,所定の労働条件通知書の使用を求め,あるいは,従業員の基本給を月18万円に統一することを求めたことが認められる(認定事実(7)ウ,エ)。しかしながら,結局,代理店とその従業員の雇用契約の内容は,基本給の点を含めて代理店間の統一が図られなかったのであるから(同(7)エ),被告が代理店の従業員の雇用条件を決定する権限を有していたとはいえない。
また,被告は,代理店に対し,タイムカード等の労務管理の資料を求め,代理店の従業員につき担当者コードを割り付けていたものの(認定事実(7)オ),それ以上に被告が実際に代理店の従業員の労務管理を行ったと認めるべき証拠はない。
加えて,被告が,原告の従業員に対し,人事権を行使して,原告の従業員の意向にかかわりなく,配置換え,懲戒,解雇等を行ったと認めるべき証拠はない。
この点について,原告は,被告の求めるとおりに,従業員の基本給を月18万円とし(認定事実(8)カ),3か月以上長期欠勤した従業員を解雇したことがあるが(同(7)カ),以上のとおり,代理店間で雇用契約の内容が統一されていなかったことも考えると,原告が代理店長として,被告の方針を踏まえて自身の判断でそのように決定をしたとみるのが相当である。
そうすると,被告が原告の従業員に対する人事労務管理を行っていたとはいえない。
サ 原告は,被告が,①原告の従業員に対し,被告所定の研修の受講を指示し,②営業目標を達成できないFAを葬儀施行の担当から外し,③原告を介さずに業務上の命令や指示を行い,④b生命の業務についても指示を行うなどしたなどと,被告が原告の従業員に対し業務指示をしていた旨主張する(別紙13①b(b)ⅲ)。
確かに,被告ないしその関係者から代理店のFAに対し直接の指示が行われる場面が一定程度あったことは否定し難い(認定事実(5)ア,ウないしオ)。しかしながら,基本的には,指示連絡の伝達は,被告から原告に対し行われた後,原告から原告の従業員に対し行われていた(同(5)ア)。また,原告が指摘する被告所定の制服の着用や被告等の名称の外務員登録証の所持(同(5)イ),葬儀施行後の業務報告(同(5)オ)は,被告事業の推進のために本件業務を遂行するという代理店契約の趣旨ないし性質から導かれる制約とみることができるものである。
加えて,少なくともFAであるBらは,営業目標を達成できない場合でも葬儀施行の担当から外されたことはなく(認定事実(4)ア),他に被告が営業目標を達成できないFAを葬儀施行の担当から外していたと認めるに足りる証拠はない。
また,被告から,代理店の従業員を名宛人として,b生命に係る業務についての文書が送付されたことはあったものの(認定事実(5)ア),これを超えて,被告が原告の従業員に直接b生命に係る業務について指示命令を行ったと認めるに足りる証拠はない。
そうすると,原告が主張する上記①ないし④を踏まえても,原告が被告の商業使用人であることが基礎付けられるとはいえない。
シ 原告は,拠点となる事務所を自由に決定できず,被告から場所的な拘束を受けていた旨主張する(別紙13①c(b))。
確かに,代理店契約上,原告の事務所の経費は原告の負担とされ,事務所を賃借する必要があれば,被告がこれを賃借して原告に使用させることが定められているものの(認定事実(1)ア(ク)),代理店が,被告が定める事務所を使用する義務を負うものとはされていない。そして,現に,原告の事務所は被告が貸主から賃貸し,その賃料より低額で原告に使用させており(同(2)ウ),その差額は被告が負担していたとみられることからすれば,上記の代理店契約の定めは,被告がこのような負担をすることで代理店を経済的に支援する趣旨であることがうかがわれる。
そうすると,原告が被告から場所的な拘束を受けていたとはいえない。
ス 原告は,被告が給与名目で代理店契約の報酬を支払っていたとして,その報酬は原告の労務の対価である旨主張する(別紙13②a(a))。
確かに,原告の報酬は経費を控除した上で給与の名目で振り込まれていたものの(認定事実(6)ウ),その報酬の内容に照らせば,これを原告の労務の対価とみることができないのは前記(2)のとおりであり,給与という名目で支払われていたからといって,これが原告の労務の対価であるとはいえない。
セ 原告は,原告に対する報酬は被告が指図しており,また,報酬の額が経費の額を下回った際には,原告の意思にかかわらず,被告の原告に対する貸付金として処理されていたのであるから,被告が原告の報酬を算定していた旨主張する(別紙13②a(b))。
確かに,原告に対する報酬額の計算過程を記載した代理店請求書は,被告がその原案を作成していたことが認められる(認定事実(6)イ)。しかしながら,原告に対し支払われる金員の額は,代理店契約の定めにより,基本的には原告が獲得した互助会入会契約の数に応じて機械的に算出される募集手数料その他の手数料の額から実際に支出された経費等を控除した上で定まるものであり(認定事実(1)ア(セ),(6)ア),代理店請求書もその内容を反映したものにすぎないから,同請求書の原案が被告により作成されたことをもって,被告が原告に対する報酬の額を定めていたとはいえない。
また,原告が指摘する貸付金の処理についても,これが原告の意思によらずに行われたと認めるべき証拠はなく,他方で,平成26年12月頃のものではあるが,原告が被告に対し借入金としての処理を申し出ている文書(乙7)も存在する。
そうすると,原告に対する報酬を被告が算定していたとはいえない。
ソ 原告は,被告の指示によるFAの増加に伴い経費が膨らみ,実際には原告の報酬を決める裁量が原告にはなかったと主張する(別紙13②a(c))。
しかしながら,代理店におけるFAの採用は代理店の判断で行われ(認定事実(7)ア),その給与も最終的には代理店の判断で決定されていたのであるから(同(7)エ,(8)カ),上記の点によって原告の報酬を決める裁量が原告になかったとは認められない。
タ 原告は,①原告が被告の従業員と同視できる名義で代理店契約を締結していたこと,②原告が被告事業のために従業員を採用していたこと,③FAに対する賃金その他の労働条件につき被告が決定していたこと,④FAの営業活動による売上げが被告に帰属していたことなどから,原告が独立の事業者であるとはいえない旨主張する(別紙13②b(a)ⅰないしⅳ)。
しかしながら,①については,単なる名義ないし名称の問題にすぎず,原告が独立した事業者として本件事業を行っていたとみるべきであることは,前記(2)のとおりである。②については,原告は,代理店契約上,被告事業の推進のために本件事業を遂行するものとされ(認定事実(1)ア(ア),(イ)),そのような原告の事業のために従業員を採用するのであるから,原告が自らの事業に関わりなく,専ら被告事業のために従業員を採用していたとはいえない。③については,被告がFAの労働条件を決定していたといえないことは前記コのとおりである。④については,以上のような原告の事業の性質上,互助会入会契約の獲得に伴う同契約の対価自体が被告に帰属し,原告に帰属するのはその獲得に伴い被告から支払われる手数料相当額にとどまるのは,当然のことである。
そうすると,原告が指摘する上記諸点は,原告が独立した事業者であるとの前記(2)の認定を覆す事情とはいえない。
チ 原告は,代理店契約で,本件業務を第三者に再委託することが禁止されていたから業務の代替性がなかったと主張する(別紙13②b(b)ⅰ)。
しかしながら,この点により業務の代替性がなかったとはいえないのは,前記2(2)のとおりである。
ツ 原告は,支部制の下で,①代理店の営業区域が制限され,代理店が被告の営業下部組織として組み込まれていたこと,②代理店が被告の組織の構成員を意味する支部等と呼称されていたこと,③被告の経済産業大臣に対する報告の中で代理店長やFAが被告の従業員とされていたこと,④被告は,原告のFAの労務提供により収益を得て,被告がその報酬を支払っているのに対し,原告は葬儀施行についてFAに指揮命令をしていなかったこと,⑤原告とBらの労働契約書上,原告が札幌○○支部と表記されていたこと,⑥札幌○○支部をDが引き継いだことが人事異動に当たることなどを挙げて,原告が被告の組織に組み込まれていた旨主張する(別紙13②b(b)ⅱ)。
①については,確かに,被告は,被告事業の推進のため,代理店を被告の支社の下に位置付け,一体的な組織であるかのように運用しようとしていたといえる(前提事実(2))。しかしながら,前記(2)のとおり,そのことから直ちに原告が被告の商業使用人として被告に専属していたということはできない。また,②及び⑤については,「支部」との名称は被告の組織の一部として理解できる名称であり,また,③については,原告が指摘するような報告がされていると認められるものの(認定事実(7)ク),いずれも形式的な面にとどまり,実体的な面では原告が独立した事業者であるというべきであることは,前記(2)のとおりである。さらに,④については,被告は原告に代わって給与の振込業務を代行しているにすぎず,被告がFAに給与を直接支払っていたとはいえないことは,前記ケのとおりであるし,FAらが基本的には被告ではなく原告の指示等を受けて業務に従事していたことは,前記サのとおりである。加えて,⑥については,Dが原告の事業を引き継ぐに当たって,打診を受けたBがこれを断り,Dも一度はこれを断っていることから明らかなとおり,Dが自身の意思により決定したものであり(同(11)イ),被告の人事権に基づく一方的な人事異動ではない。
そうすると,原告が指摘する上記諸点は,原告が独立した事業者であるとの前記(2)の認定を覆す事情とはいえない。
(4)  小括
以上を要するに,原告は,被告との間で代理店契約を締結した上,自ら原告会社を設立して相当数の従業員を雇用し,自らの危険と計算の下に本件事業を遂行していたものである。一方,被告は,支社及び代理店を一体的な組織であるかのように運用しようとし,原告を含む代理店に対して相当程度強い統制を及ぼしていたものであるが,その多くは被告事業を全国的に展開するという代理店契約の趣旨ないし性質から導かれるものとみることができる上,その統制は,原告に対する指揮命令と評価できるほど強固なものであったわけではないのであって,原告がこうした統制を受けていたからといって,直ちに原告が被告の指揮命令下にある商業使用人であることが基礎付けられるとはいえない。
そうすると,原告は,被告との間の代理店契約に基づき,独立した事業者として事業活動を行っていたというべきであって,原告が被告の商業使用人であるということはできない。したがって,争点②について判断するまでもなく,原告の主位的主張は採用できない。
3  争点③(原告が被告の代理商である場合,被告が代理商を主張することが信義則に反するなどして許されないか)について
原告は,被告が違法,不当な目的に基づいて,FAらとの関係で被告が使用者として負うべき債務を原告に転嫁していたなどとして,原告が被告の代理商であったとしても,被告がそのことを主張することは,信義則に反し,又は権利の濫用に当たるものであって,許されない旨主張する。
しかしながら,上記2で検討したとおり,原告は,自らの意思で被告との間で代理店契約を締結し,独立した事業者として事業活動を営んでいたのであって,原告は実態としても代理商に当たるというべきである。そして,原告が代理商に当たることを被告が主張することが信義則に反し,又は権利の濫用に当たるというべき事情を認めるに足りる証拠はないから,原告の予備的主張①は採用できない。
4  争点④(原告が被告の代理商である場合,被告とBらの間に黙示の雇用契約が成立しているか)について
(1)  原告は,原告が被告の代理商であったとしても,被告とBらの間に黙示の雇用契約が成立していたと主張するので,以下検討する。
(2)  原告は,自ら面接した上でBらの採用を決定し,Bらとの間で雇用契約を締結したものであり(認定事実(7)ア,(8)ア),その過程に被告が関与したとは認められない。また,被告からの指示については,一部,書面により直接Bらに伝えられたり(同(5)ア),Bらが直接指示等を受けたりしていたもの(同(5)エ,オ,(10)ア)もあるとはいえ,基本的には,支部長会議等において原告が被告から伝達を受け,それを更に原告が従業員らに伝達していたものであって(同(5)ア),被告からBらに対し直接の指揮命令が行われていたものではない。
また,被告がBらの労務管理を行っていたと認めるに足りる証拠はなく,Bらの給与も,原告に代わって被告が振込業務を代行していたにすぎず(認定事実(6)ア),原告によって支払われていたものである。
加えて,Cは,被告に対し,自身が被告の従業員ではなく原告の従業員である旨の発言を行っており(認定事実(10)ア),C自身もそのような認識であったことがうかがわれる。
そうすると,被告とBらとの間に黙示の雇用契約が成立していたとみることは困難である。
(3)  これに対し,原告は,以下のとおり,被告とBらの間に黙示の雇用契約が成立していたと主張するが,いずれも採用することはできない。
ア 原告は,①被告では一般的に,代理店の従業員の採用に関する広告や文書に被告名義が用いられていた(別紙14①bないしd),②採用面接に当たって被告所定の質問事項が用いられていた(同e),③採用活動について被告の指示や決裁を受けていた(同h,i)と主張する。
しかしながら,前記(2)のとおり,採用の過程に被告が関与していたとは認められないのであるから,被告における一般的な募集方法に関する事情は,Bらの採用について当てはまるものとはいえない。
イ 原告は,被告が各種の業務上の指示等を行っていた旨主張する(別紙14②aないしz)。
しかしながら,前記2(3)サのとおり,これらの指示等は基本的には原告を介して行われたものであるから,この点をもって,被告とBらとの間に黙示の雇用契約が成立していたとみることはできない。
ウ 原告は,被告が代理店に対し従業員の労務管理の資料の提出を義務付けていたこと(別紙14③a),被告が営業担当者の情報を把握していたこと(同b)を指摘して,被告がBらの人事労務管理を行っていた旨主張する。
しかしながら,被告は,代理店に従業員の労務管理の資料の提出を求め,営業担当者の情報を把握していたものの,それ以上に被告が実際に代理店の従業員の労務管理を行っていたと認めるべき証拠がないのは,前記2(3)コのとおりである。
エ 原告は,被告が,葬儀施行に関して,FAが担当した葬儀の施行報告書を送付するよう指示してFAの勤務状況を把握していたと主張する(別紙14③c)。
しかしながら,被告は,FAに対し,葬儀の施行後に業務において気付いた事項等を被告に報告させていたものの(認定事実(5)オ),これをFAの勤務状況を把握するために行わせていたと認めるべき証拠はない。
オ 原告は,被告が各支部の責任者に携帯電話を貸与し,その使用状況を管理し(別紙14③d),FAらに携帯電話の電源を常に入れさせてFAらの所在を把握していた(同e)として,被告がBらの人事労務管理を行っていた旨主張する。
しかしながら,被告が被告の財産である携帯電話を貸与する以上,その所在を管理することは,携帯電話を貸与する相手が誰であるかにかかわらず,合理的な措置といえるし,携帯電話の電源を常に入れさせていたのも,単に携帯電話の紛失に備えたものであって(認定事実(5)カ),FAの所在を把握するためではないから,これらの点をもって,被告がBらの人事労務管理を行っていたとはいえない。
カ 原告は,被告の指示により,代理店間でFAの異動が行われていたとして,被告がBらの人事労務管理を行っていた旨主張する(別紙14③f,g)。
しかしながら,被告がその人事権に基づき一方的な指示によりFAを他の代理店に異動させていたと認めるべき証拠はない。
キ 原告は,被告が代理店に対し,営業目標を達成できないFAについて,葬儀施行の担当から外すという不利益措置を講じていたとして,被告がBらの人事労務管理を行っていた旨主張する(別紙14③h)。
しかしながら,Bらは,営業目標を達成できない場合でも,このような不利益措置を課せられたことがないのであって(認定事実(4)ア),原告の主張は前提となる事実を欠いている。
ク 原告は,代理店契約においては,被告が代理店に対してペナルティを課すことができることとされていたとして,被告がBらの人事労務管理を行っていた旨主張する(別紙14③ⅰ)。
確かに,平成23年8月1日付けで締結された代理店契約では,被告が原告のみならず担当者に対してもペナルティを課すことができるとの規定はあったものの(認定事実(1)ア(ス)),平成24年8月1日付けで締結された代理店契約ではこれが改められ,原告のみに対しペナルティを課すことができることとされており(同(1)イ(オ)),少なくとも同日以後は,被告がペナルティを課すことができたのは原告に対してのみであった。
そして,被告が原告に対してペナルティを課すことができるからといって,直ちに被告がFAに対し人事労務管理を行っていたとみることはできない。また,平成23年8月1日付けで締結された代理店契約には被告が原告の担当者に対するペナルティを課すことができる旨の規定はあるが,以上に論じてきた諸点も考えると,この規定の存在が前記(2)の認定を覆すまでの事情に当たるとはいい難い。
ケ 原告は,被告がBら原告の従業員の給与を直接に支払っていたと主張する(別紙14④a)。
しかしながら,被告が原告の従業員に対し給与を直接に支払っていたといえないのは,前記2(3)ケのとおりである。
コ 原告は,FAに支払われる葬儀施行の対価は,支部制の施行前は,館長なる人物がFAに直接支払っており,支部制の施行後は,b生命の生命保険契約の獲得の対価とともに被告がFAに支払っていたと主張する(別紙14④b,c)。
しかしながら,館長なる人物がFAに葬儀施行の対価を支払っていたと認めるに足りる証拠はなく,また,被告がFAに対し給与を直接に支払っていたといえないのは,前記2(3)ケのとおりである。
サ 原告は,被告が,FAの賃金の統一を各支部に指示したと主張する(別紙14④d)。
しかしながら,これをもって,被告がFAの雇用条件を決定する権限を有していたとはいえないのは,前記2(3)コのとおりである。
(4)  小括
以上の次第であって,被告とBらとの間に黙示の雇用契約が成立していたとは認められないから,その余の点について判断するまでもなく,原告の予備的主張②は理由がない。
5  結論
そうすると,原告の請求は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。
札幌地方裁判所民事第1部
(裁判長裁判官 武藤貴明 裁判官 青野卓也 裁判官 岩竹遼)

 

〈以下省略〉

 

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