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「成果報酬 営業」に関する裁判例(6)平成30年 3月16日 東京地裁 平29(ワ)22848号 業務委託料請求事件

「成果報酬 営業」に関する裁判例(6)平成30年 3月16日 東京地裁 平29(ワ)22848号 業務委託料請求事件

裁判年月日  平成30年 3月16日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平29(ワ)22848号
事件名  業務委託料請求事件
文献番号  2018WLJPCA03168018

裁判年月日  平成30年 3月16日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平29(ワ)22848号
事件名  業務委託料請求事件
文献番号  2018WLJPCA03168018

東京都品川区〈以下省略〉
原告 株式会社らしく
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 押見和彦
同上 阿部大介
東京都品川区〈以下省略〉
(訴状の送達場所 東京都大田区〈以下省略〉)
被告 株式会社レックスマネジメント
同代表者代表取締役 B

 

 

主文

1  被告は,原告に対し,171万4500円及びこれに対する平成29年8月18日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2  訴訟費用は被告の負担とする。
3  この判決は,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
主文同旨
第2  事案の概要
1  事案の要旨
本件は,原告及び被告がシステム製品開発契約とともに締結した,原告を受任者,被告を委託者とし,当該システム製品に係る事業化の支援を目的とするコンサルタント契約について,当該事業化の中止を理由として当該コンサルタント契約を合意解除した際,それまでの成果報酬を含めた精算を行う旨の合意をしたと主張して,原告が,被告に対し,当該合意に基づき,171万4500円及びこれに対する本訴に係る訴状送達の日の翌日である平成29年8月18日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
2  前提事実(当事者間に争いのない事実等)
(1)  原告は,ITサービスの開発,ITサービスの販売及びコンサルティングサービスの提供を目的とする株式会社であり,被告は,企業内部統制及びリスクマネジメントに関するコンサルティング並びにコンピューター等のソフトウェア開発と販売業務等を目的とする株式会社である。
(2)  原告及び被告は,平成25年1月31日,原告を受任者,被告を委託者とし,大規模災害発生時に設備等の損傷状況を把握し,復旧状況等を随時に把握し,可視化するためのKlothoシステム(以下単に「Klothoシステム」という。)の製品開発契約及びその事業化(以下「occcamプロジェクト」という。)の支援を目的とするコンサルタント契約(以下「本件コンサルタント契約」という。)を締結した。
(3)  原告は,平成25年2月から平成27年4月まで,本件コンサルタント契約に基づき,ビジネスコンサルティング,ビジネスリード及びプロジェクト管理等を行い,被告は,原告に対し,本件コンサルタント契約に基づく報酬として,157万7500円を支払った。
(4)  本件コンサルタント契約の前提となるocccamプロジェクトは,平成27年4月に中断することとなった。そこで,原告及び被告は,本件コンサルタント契約を合意解除し,成果報酬部分の支払について協議をした。
(5)  本訴に係る訴状は,平成29年8月17日,被告に送達された(当裁判所に顕著な事実)。
3  争点及び当該争点に関する当事者の主張
本件における主な争点は,原告及び被告が本件コンサルタント契約の合意解除に当たり,それまでの成果報酬を含めた精算を行う旨の合意をしたといえるかどうかであり,当該争点に関する当事者の主張は,次のとおりである。
(1)  原告の主張
原告及び被告は,本件コンサルタント契約において,原告の受け取るコンサルタント料金について,原告の通常1時間当たりのコンサルタント料金が2万円(ただし,消費税を含まない。)であるところ,その後も友好な交友関係を構築することを踏まえて減額することとし,75%割り引いて1時間当たり5000円(ただし,消費税を含まない。)と定め,他方で,occcamプロジェクトの成否の目途が立ったときに月額20万円程度の相当額の成果報酬を支払う旨を合意した。
原告及び被告は,平成27年5月1日,occcamプロジェクトが中断したことを踏まえ,支払を留保していた成果報酬について協議し,原告がocccamプロジェクトについて317.5時間の役務を提供したことを確認した上で,時間単価を本来の定価の50%である1万円(ただし,消費税を含まない。)として,既払金157万7500円を差し引いた残金158万7500円に消費税を加算した171万4500円を被告が清算金として支払う旨の合意をした(以下「本件合意」という。)。
(2)  被告の主張
上記(1)の原告の主張は,否認し,又は争う。
原告及び被告は,本件コンサルタント契約における成果報酬の支払時期について,Klothoシステムのライセンス販売が成約する都度に一定の比率で支払う旨を合意した。原告及び被告は,その後,本件コンサルタント契約を合意解除するに至ったものであるが,その成果報酬については,なお交渉の過程にあり,最終的に合意に至っていない。
第3  争点に対する判断
1  証拠(甲3の1,6)によると,原告の代表取締役であるA(以下「A氏」という。)は,被告の代表取締役であるB(以下「B氏」という。)に対し,平成27年4月30日,「契約の解除の条件を協議して合意したいと思います。」,「以下のようにご提案します。」,「■ご提案内容」,「弊社のocccamプロジェクト支援の時間単価を合意して、本来金額を算出し、お支払いいただいていないことになる金額をお支払いいただく。この際、御社の支払い能力を大幅に超えないこと、また当案件獲得の容易性などを考慮し、以下を配慮します。」,「製品開発費用として弊社にお支払いいただいた役務時間(金額換算1,850,000円)は対象外としています。」,「弊社オフィスご提供費用は、もちろん対象外としています。」,「通常のビジネスコンサルティング・ビジネスリード・プロジェクト管理の業務は時間単価20,000円となっておりますが、50%割り引いて10,000円でご提供させていただきます。」,「一括でのお支払いが難しい場合、必要があれば分割でのお支払いなど、協議可能とします。」,「■お支払いいただく金額の算出」,「これまでocccamプロジェクト支援という名目で、ビジネスコンサルティング・ビジネスリード・プロジェクト管理等の役務提供時間は317.5時間でした。」,「50%の特別値引きを適用した時間単価10,000円を適用すると、価格は3175,000円となります。」,「すでにお支払いいただいた分およびご請求書を発行済み分は、1,587,500円です。」,「よって、お支払いいただく残りの金額は、1,587,500円(税別)となります。」及び「まずは合意可能かどうか、合意できない場合は論点を、概ね合意できるがお願い事項がある場合はその内容を、ご提示いただければと思います。」とのメッセージを送信したものと認めることができる。
そして,証拠(甲3の2,6)によると,B氏は,A氏に対し,平成27年5月1日,「本来であれば私が提案しなければならないところ、たいへん申し訳なく思います。」,「内容につきましては同意いたします。ご検討いただきたいのが請求開始月と分割です。」,「またこの内容についての確定を5月末まで留保いただけると幸甚です。まずは支払の案としてご提示いたします。また最終的に合意した内容は支払の契約として紙に残したいと思います。」及び「お支払いの意思と金額についてはお申出通りとさせていただきますが、これらの支払条件の確定を、一旦5月末まで留保いただけると幸甚です。」とのメッセージを送信したものと認めることができる。
以上によると,原告及び被告は,原告がocccamプロジェクトについて317.5時間の役務を提供したことを確認し,時間単価を本来の定価の50%である1万円(ただし,消費税を含まない。)として,既払金157万7500円を差し引いた残金158万7500円(ただし,消費税を含まない。)に消費税を加算した171万4500円を被告が清算金として支払う旨の本件合意をしたものと認めることができる。
2  被告は,上記第2の3(2)のとおり,本件コンサルタント契約においては,Klothoシステムのライセンス販売が成約する都度に一定の比率で支払う旨の合意があった,あるいは本件コンサルタント契約を合意解除したものの,その成果報酬に係る最終的な合意に至っていないと主張し,本件合意の存在を否認する。
なるほど,原告も認めるとおり,原告及び被告は,本件コンサルタント契約においては,occcamプロジェクトの成否の目途が立った時に成果報酬を支払う旨を合意していたものということができるのであって,被告の主張するように,本件コンサルタント契約において,Klothoシステムのライセンス販売が成約する都度に一定の比率で支払う趣旨の合意があったものと解しても不自然とまではいうことができない。
しかしながら,上記第2の2(4)の前提事実において認定したとおり,原告及び被告は,本件コンサルタント契約の前提となるocccamプロジェクトが平成27年4月に中断することを踏まえ,本件コンサルタント契約を合意解除し,成果報酬部分の支払について協議をしたものと認めることができるのであって,原告及び被告が本件コンサルタント契約の定めと異なり,成果報酬を含めて精算する趣旨の本件合意をしたとしても,不合理であるとまではいうことはできない。
また,上記1において認定したとおり,B氏は,A氏に対し,平成27年5月1日,「内容につきましては同意いたします。」及び「お支払いの意思と金額についてはお申出どおりとさせていただきます」とのメッセージを送信したものと認めることができるのであって,上記清算金の金額について明確に同意していたものということができる(なお,上記1において認定したとおり,B氏は,A氏に対し,平成27年5月1日,「ご検討いただきたいのが請求開始月と分割です。」及び「お支払いの意思と金額についてはお申出どおりとさせていただきますが、これらの支払条件の確定を、いったん5月末まで留保いただけると幸甚です。」とのメッセージを送信していたものと認めることができるのであるから,原告及び被告が本件合意のほかに,その確定的な支払時期を合意するには至っていなかったものといわざるを得ない。)。
したがって,本件合意の存在を否認する上記被告の主張は,採用することができない。
3  したがって,被告は,原告に対し,本件合意に基づき,171万4500円及びこれに対する本訴に係る訴状送達の日の翌日である平成29年8月18日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払義務を負うものと認めることができる。
第4  結論
以上によれば,原告の請求は理由があるから認容することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第26部
(裁判官 水橋巖)

 

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