「営業アウトソーシング」に関する裁判例(75)平成23年 6月28日 東京地裁 平21(ワ)22239号 代金返還請求本訴事件、同反訴事件
「営業アウトソーシング」に関する裁判例(75)平成23年 6月28日 東京地裁 平21(ワ)22239号 代金返還請求本訴事件、同反訴事件
裁判年月日 平成23年 6月28日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平21(ワ)22239号・平22(ワ)34458号
事件名 代金返還請求本訴事件、同反訴事件
裁判結果 本訴一部認容、反訴請求棄却 文献番号 2011WLJPCA06288008
要旨
◆業務委託契約の委託者である原告が、受託者である被告に対し、約定解除権を行使し、既払い代金の返還を求めたところ、被告がこれを争うとともに、反訴事件において代金の一部が未払いであるとしてこれを請求した事案において、当該代金の一部については第三者からの立替払いがあったとして、被告からの反訴請求を棄却するとともに、立替払いされた金銭について、被告は当該第三者への不当利得返還義務は負うものの、原告に対しては代金返還義務を負わないとして、原告請求金額の一部につき請求を認めなかった事例
参照条文
民法474条
民法545条
民法703条
裁判年月日 平成23年 6月28日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平21(ワ)22239号・平22(ワ)34458号
事件名 代金返還請求本訴事件、同反訴事件
裁判結果 本訴一部認容、反訴請求棄却 文献番号 2011WLJPCA06288008
平成21年(ワ)第22239号 代金返還請求本訴事件
平成22年(ワ)第34458号 同反訴事件
大阪市〈以下省略〉
本訴原告・反訴被告(以下「原告」という。) コクヨビジネスサービス株式会社
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 河野玄逸
同 川村英二
同 曽我幸男
同 北川恵子
同 古澤陽介
大阪市〈以下省略〉
本訴被告・反訴原告(以下「被告」という。) デベロソリューションズ株式会社
同代表者代表取締役 B
同訴訟代理人弁護士 桑原秀幸
同 浅倉晋作
同 三井良之
同 山本真子
同訴訟復代理人弁護士 野原正浩
主文
1 被告は,原告に対し,3727万5000円及びこれに対する平成21年7月7日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の本訴請求を棄却する。
3 被告の反訴請求を棄却する。
4 訴訟費用は,本訴反訴を通じて,これを50分し,その3を原告の,その余を被告の負担とする。
5 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 請求
1 本訴請求
被告は,原告に対し,3937万5000円及びこれに対する平成21年7月7日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。主文第1項と同じ。
2 反訴請求
原告は,被告に対し,210万円及びこれに対する平成21年1月1日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
本訴事件は,原告が,被告に対し,被告との間の屋内移動レーザー計測機器の開発及び製作業務に係る業務委託契約を約定解除権の行使により解除したと主張して,約定の代金返還請求権又は約定解除権の行使に基づく原状回復請求権に基づき,既払代金3937万5000円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日である平成21年7月7日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めている事案である。
反訴事件は,被告が,原告に対し,上記業務委託契約に基づいて未払開発費用210万円及びこれに対する弁済期の翌日である平成21年1月1日から支払済みまで商事法定利率の範囲内である年5分の割合の遅延損害金の支払を求めている事案である(なお,反訴状「請求の原因」3項には,商法所定の年6分の割合による遅延損害金の支払を求める旨の記載がある一方,反訴状「請求の趣旨」1項には,遅延損害金として「年5%の割合による金員」との記載がある。そこで,反訴の付帯請求については,反訴状の上記各記載に基づき,上記のとおりに解することとした。)。
1 前提事実(末尾に証拠等を掲記していない事実は,当事者間に争いがないか,明らかに争わない事実である。)
(1) 原告は,シェアードサービス事業(コクヨグループにおける人事,総務,経理,IT,広報,ファシリティマネジメントサービスの提供を行う事業)を営む株式会社である。
被告は,計測サービス,計測器及び関連ソフトウェアの販売等を業とする株式会社である。
(2) 原告は,平成20年4月30日,被告との間で,同日付けの業務委託契約書(甲1。以下「本件契約書1」という。)を交わし,屋内移動レーザー計測機器(以下「本件製品」という。)の開発及び製作業務を被告に委託する旨の契約(以下「本件契約1」という。)を締結した。その契約内容の要旨は,次のアないしウのとおりである(甲1)。
ア 原告は,被告に対し,① フェーズ1の業務として,本件製品の試作機の製作その他これに付帯する業務を,② フェーズ2の業務として,本件製品の完成品の製作,本件製品の量産化へ向けた検証,本件製品の品質検証,その他これらに付帯する業務を委託し,被告はこれを受託する(以下,上記①及び②の業務をまとめて「本件業務」という。)(本件契約書1の2条1項)。
イ 被告は,原告に対し,平成20年6月17日までにフェーズ1の業務の成果物として本件製品の試作機を納入し,同年9月末日までにフェーズ2の業務の成果物として本件製品の完成品,設計図,仕様書等を納入する(本件契約書1の6条1項及び2項)。
ウ 原告は,被告に対し,本件業務の対価として,平成20年4月30日までにフェーズ1の業務委託料1500万円(税別)を,同年7月31日までにフェーズ2の業務委託料1500万円(税別)を,それぞれ被告の指定する金融機関口座に振り込む方法により支払う(本件契約書1の8条1項)。
エ(ア) 原告及び被告は,相手方に,次の各号の一に該当する事由が生じたときは,何らの催告なしに本契約の全部又は一部を解除し,かつ,それによって生じた損害の賠償を請求することができる。
① 本契約の履行に当たって重大な過失又は背信行為があったとき(本件契約書1の21条1項(1))
(イ) 被告に前項各号に該当する事由が生じた場合,被告は,原告が次の各号の権利を行使することに予め合意する。
① 原告による被告宛て支払済み代金の返還請求権(本件契約書1の21条2項(1))
オ 上記エ(イ)の規定は,本契約終了後も有効に存続するものとする(本件契約書1の23条1項)。
(3) 原告は,平成20年4月21日,本件契約1の締結に先立って,被告に対し,フェーズ1の業務委託料1575万円(消費税75万円を含む。)を支払った。
(4) 原告は,平成20年7月28日,被告との間で,同日付けの「(仮称)3D Mobile Scannerに関する契約書」(甲2。以下「本件契約書2」という。)を交わして,要旨次の内容の契約(以下「本件契約2」という。)を締結した(甲2,乙27,弁論の全趣旨)。
ア 原告は,被告に対し,以下の業務を委託し,被告はこれを受託する(本件契約書2の2条,付則2及び別紙)。
(ア) フェーズ2(ステップ2)の業務
① データ収集側のパーソナル・コンピュータ(以下「PC」という。)に全てのデバイスを接続し,1台のPCでのデータ収集及び電力供給が可能かどうかを検証する作業
② 全てのデータを収集し,データを解析した後の座標解析プログラムを開発する作業
③ 座標解析後の総合的な精度の検証作業
④ できる範囲での精度の向上
⑤ データ収集プログラムの操作面の改良
⑥ 解析プログラムの操作面の改良
⑦ 全てのプログラムの安定化
(イ) フェーズ3(ステップ3)の業務(本件契約書2の別紙三丁目ないし五丁目に記載された以下の①ないし⑪の業務等)
① 本件製品の形状の変更及び再設計等
② 精度の向上
③ 配線のカールコードへの変更
④ アタッチメントの用意
⑤ プログラムの変更(座標出力のフォーマットをユーザーに合わせる作業等)
⑥ トータルステーションと計測器側PCを通信手段で接続し,使用するPCを2台(計測器収集側とトータルステーション収集側)から1台にする作業
⑦ データの取得状況をリアルタイムで閲覧可能にする作業
⑧ 既存レーザースキャナーのデータ,測量器のデータとのデータ結合
⑨ 収納用ケースの製作
⑩ マニュアル類の整備
⑪ トータルステーションのカラーの統一等
イ 被告は,原告に対し,原告の親会社を含む子会社及び関連会社が平成20年11月19日に実施するコクヨフェアまでに,フェーズ2の業務の成果物としてテクニカルシート及びサンプルデータを,フェーズ3の業務の成果物として本件製品の完成品及びその利用マニュアルを,それぞれ納入する(本件契約書2の6条1項及び2項)。
ウ(ア) 原告は,被告に対し,本件契約2締結後原告の10日営業日以内に,フェーズ2の業務委託料1500万円(税別)を支払う(本件契約書2の8条1項(1))。
(イ) フェーズ3の業務委託料は,別途,被告が原告に提示する見積りによるものとし,支払期日は別途定めるものとする。支払方法は,着手時に見積額の半額を,成果物納入後原告の10日営業日以内に残金を支払うものとする(本件契約書2の8条1項(2))。
エ(ア) 原告及び被告は,相手方に,次の各号の一に該当する事由が生じたときは,何らの催告なしに本契約の全部又は一部を解除し,かつ,それによって生じた損害の賠償を請求することができる(本件契約書2の21条1項(1))。
① 本契約の履行に当たって重大な過失又は背信行為があったとき
(イ) 被告に前項各号に該当する事由が生じた場合,被告は,原告が次の各号の権利を行使することに予め合意する。
① 原告による被告宛て支払済み代金の返還請求権(本件契約書2の21条2項(1))。
オ 上記エ(イ)の規定は,本契約終了後も有効に存続するものとする(本件契約書2の23条1項)。
(5) 被告は,平成20年7月29日,原告に対し,フェーズ3の業務委託料を750万円(税別)とする見積書(乙5)を提出した(乙5,弁論の全趣旨)。
(6) 原告は,平成20年8月5日,本件契約2に基づき,被告に対し,フェーズ2の業務委託料1500万円と消費税75万円との合計額1575万円,フェーズ3の業務委託料の半額である375万円と消費税18万7500円との合計額393万7500円を支払った(乙5,28,弁論の全趣旨)。
(7) 被告は,平成20年11月19日までにテクニカルシート,サンプルデータ,本件製品の完成品及びその利用マニュアル(以下,これらをまとめて「本件製品の完成品等」という。)を原告に納入しなかった。
(8) 原告と被告は,平成20年12月8日,同日付けの覚書(甲3。以下「本件覚書」という。)を交わして要旨以下の合意をした(甲3)。
ア 本件製品の完成品等の納入期限を平成21年2月末日に変更する。
イ フェーズ3の業務委託料残金の支払期日については平成20年12月末日とし,残金額の支払方法については中間精算金とする。
(9) 原告は,平成20年12月30日,被告に対し,フェーズ3の業務委託料残金375万円(税別)のうち180万円及び消費税3万7500円,合計183万7500円を支払った(弁論の全趣旨)。
(10) 被告は,平成21年2月末日までに本件製品の完成品等を原告に納入しなかった。
(11) 原告は,平成21年4月9日,被告に対し,同月7日付けの催告書をもって,同月9日から7日以内に本件製品の完成品等を原告に納入するよう催告したが,被告は,上記催告期間内に本件製品の完成品等を原告に納入しなかった(甲4の1及び2,弁論の全趣旨)。
(12) 原告は,平成21年6月30日に本訴を提起し,同年7月6日,被告に対し,同日被告に送達された本訴の訴状をもって,被告による本件製品の完成品等の納入の遅滞は著しい背信行為に当たるとして,前記(2)エ(ア)及び前記(4)エ(ア)の各規定(本件契約書1の21条1項(1),本件契約書2の21条1項(1))に基づき,原被告間の業務委託契約を解除する旨の意思表示(以下「本件解除」という。)をした(弁論の全趣旨,本件訴訟記録上明らかな事実)。
2 争点及びこれに関する当事者の主張
(1) 本訴請求の争点1及び反訴請求の争点(フェーズ3の業務委託料残金の支払の有無)について
(原告の主張)
原告担当者であるC(以下「C」という。),D(以下「D」という。)及びE(以下「E」という。また,上記3名をまとめて「Cら」ということがある。)は,平成20年12月25日,東京都港区白金所在の事務所(以下「白金の事務所」という。)に被告担当者B(以下「B」という。)を訪れ,Bに対し,フェーズ3の業務委託料残金375万円(税別)のうち175万円は同月末に支払うが,残る200万円は本件製品の完成品の納入後に支払うことにしたい旨を申し入れた。これに対し,Bは,本件覚書所定の残金全額の支払がなければ,本件製品の開発はしないと述べた。Cらは,Bに対し,Cが原告に代わってフェーズ3の業務委託料残金のうち200万円を被告に立替払することを提案した。Bは上記提案を受け入れ,原告と被告との間で,① 上記業務委託料残金のうち200万円をCが被告に立替払すること,② 被告は本件製品の開発業務を継続し,平成21年2月末に本件製品の完成品等を原告に納入すること,③ 上記200万円に対する消費税相当額10万円は,Bの負担とすることが合意された。
Cは,上記合意成立の際,Bに現金200万円を交付して被告に上記立替払をした。
原告は,平成20年12月末日までにフェーズ3の業務委託料残金183万7500円(消費税込み)を被告に支払った。
したがって,原告は,同日までにフェーズ3の業務委託料支払債務の履行を完了しており,原告に上記債務の不履行はない。
(被告の主張)
ア 本件覚書によれば,原告のフェーズ3の業務委託料残金393万7500円(消費税込み)の支払義務は,被告の本件製品等の完成品の納入義務より先に履行すべきものとされているところ,原告は,本件覚書所定の支払期日である平成20年12月末日までに,上記業務委託料残金393万7500円(消費税込み)のうち183万7500円を支払ったのみで,残る210万円を支払わなかった。
イ Cは,平成20年12月25日にBに現金200万円を預けたが,これは,被告に何とか本件製品の開発を続けてもらうためにCが個人的にBに預けたものであって,フェーズ3の業務委託料とは関わりがない。
(2) 本訴請求の争点2(解除原因の有無)について
(原告の主張)
ア 被告の背信行為
原告は,後記イに述べるとおり,被告に対し,委託業務の成果物の納入期限の延長を繰り返し認めてきたが,被告は,そのような原告をことごとく裏切り,結局,成果物を納入しなかった(被告は,本件製品の完成品はもとより,試作機すら納入していない。)。被告は,原告の再三の要請にもかかわらず,本件製品の現物を原告に見せることすら拒み,本件訴訟の最終段階に至っても,本件製品の開発がどの程度まで進んでいたのかを明らかにしない。
以上のような被告の対応から,被告に背信行為が認められることは明らかであって,約定解除権(本件契約書1の21条1項(1),本件契約書2の21条1項(2))に基づく本件解除及びこれに伴う既払代金全額(消費税込みで3937万5000円)についての約定の代金返還請求権(本件契約書1の21条2項(1),本件契約書2の21条2項(2))は,優に認められる。
イ 事実経過
(ア) 被告は,本件契約1所定の納入期限である平成20年6月17日までに,動いて計測することが可能な本件製品の試作機を原告に納入しなかった。このため,原告は,展示会において本件製品の模型だけで対応せざるを得なかった。
(イ) 原告は,平成20年11月に行われるコクヨフェアまでに本件製品の完成品を納入することを被告が確約したことから,同年7月28日,被告との間で本件契約2を締結した。しかしながら,被告は,その後,原告から本件製品の開発業務の進捗状況を尋ねられても,進捗状況を明らかにせず,開発中の本件製品の現品を見せてほしいとの原告の要請にも応じず,本件契約2所定の納入期限である平成20年11月19日までに本件製品の完成品を原告に納入しなかった。このため,原告は,コクヨフェアにおいて顧客に対し本件製品の完成品が実際に稼働している状態やデータを開示することができず,顧客の反応は芳しくなかった。
(ウ) Bは,原告に対し,本件製品の完成品の納入の遅れにつき,開発の遅れによるものである旨を説明するのみであった。Bは,原告に対し,本件製品の完成品を平成21年1月末に納入することができる旨述べたが,その後,同年2月末であれば大丈夫であると述べた。そこで,原告のファシリティマネジメントサービスアウトソーシング事業部(以下「FM部」という。)の事業部長F(以下「F」という。)は,平成20年12月8日,Bとの間で,本件覚書を交わし,本件製品の完成品等の納入期限を平成21年2月末日まで再度延長することを認めると共に,本件契約2所定のフェーズ3の業務委託料残金の支払期日を平成20年12月末日とし,残金額の支払方法については中間清算金とすることを合意した。
(エ) 原告代表者は,これまで被告に業務委託料を支払ってきたにもかかわらず,本件製品の現品を何ら確認することができない状態で被告に更に支払をすることはできないと考え,Fに対し,業務委託料残金の支払時期を変更するよう指示した。Fは,上記指示に基づいて,Bに対し,業務委託料残金の支払時期の変更を求めたが,Bはこれに応じなかった。
(オ) 原告担当者であるCらは,平成20年12月25日,東京都港区白金の事務所にBを訪れ,フェーズ3の業務委託料残金375万円(税別)のうち175万円は同月末に支払うが,残る200万円は本件製品の完成品の納入後に支払いたい旨を申し入れた。これに対し,Bは,本件覚書所定の残金全額の支払がなければ,本件製品の開発はしないと述べた。Cらは,Bに対し,Cが原告に代わってフェーズ3の業務委託料残金のうち200万円を被告に立替払することを提案した。Bは上記提案を受け入れ,原告と被告との間で,① 上記業務委託料残金のうち200万円をCが被告に立替払すること,② 被告は本件製品の開発業務を継続し,平成21年2月末に本件製品の完成品等を原告に納入すること,③ 上記200万円に対する消費税相当額10万円は,Bの負担とすることが合意された。
Cは,上記合意成立の際,Bに現金200万円を交付して被告に上記立替払をした。
原告は,平成20年12月末日までにフェーズ3の業務委託料残金183万7500円(消費税込み)を被告に支払った。
(カ) しかしながら,被告は,平成21年2月末日までに本件製品の完成品等を原告に納入しなかった。原告は,被告に対し,本件製品の現物を,開発途中のものでもよいから,平成21年3月19日の原告の役員会に持参するよう要請したが,被告は,上記要請に応じず,同日以降は原告に対し何らの連絡,報告もしなくなった。
原告は,平成21年4月9日,被告に対し,同月7日付けの催告書をもって,本件製品の完成品等の納入を再度催告したが,被告は何らの応答もしなかった。
(被告の主張)
ア フェーズ1の業務の完了について
フェーズ1の業務内容は,主として,平成20年6月に開催された二つの展示会(「地理空間情報フォーラム」及び「第16回産業用バーチャルリアリティ展」)に本件製品を出品するための準備作業であり,本件製品の外観を整える程度のものであった。被告は,展示会出品用の本件製品の模型及びデータ等を用意してフェーズ1の業務を完了し,これらを同年6月に開催された上記各展示会に出展した。
本件契約書2の冒頭には,「フェーズ1の業務完了に伴い,次期における契約を下記のとおり締結する」と記載されており,被告がフェーズ1の業務を完了したことは,原告も認めていた。そもそも,被告がフェーズ1の業務を完了していなかったのであれば,原告は,被告に対し1500万円もの開発費を支払ってフェーズ2の業務を委託するはずがない。以上から,被告がフェーズ1の業務を完了していたことは明らかである。
イ 本件製品の完成品等の納入の遅れが被告の責めによらない事由によるものであることについて
(ア) 原告の業務委託料支払債務の不履行に起因する開発の中断
前記(1)の被告の主張のとおり,原告は,平成20年12月末日までに被告に支払うべきフェーズ3の業務委託料残金210万円を支払わなかった。上記業務委託料残金210万円は,フェーズ2及びフェーズ3の開発業務のうちのソフトウェアの開発(座標計算用解析プログラムの仕上げ)のためになくてはならない資金であった。そして,上記プログラムは,他の装置が全て組み上がっても,これを欠けば,実際の計測をすることができないという意味で,本件製品の完成に不可欠なものであり,被告は,上記業務委託料残金の支払がなかったために,本件製品を完成させることができなかった。
以上のとおり,被告が本件製品の完成品を原告に納入することができなかったのは,原告が,先履行義務であるフェーズ3の業務委託料残金210万円の支払義務を怠ったことによるものから,上記納入の遅れに関し被告に帰責性はなく,背信性は認められない。
(イ) 被告の履行の提供及び原告の受領拒絶
被告は,平成21年2月25日,東京都品川区内に在る原告事務所で行われた会議の席上で,原告に対し,座標計算用解析プログラム以外のすべてのセンサーを組み込んだ装置,トラッカー,PC,収納用ケース等を納入することができる旨提案した。また,業務委託料残金が支払われれば本件製品の完成品を納入することができる旨を説明した。
しかしながら,原告は,被告との業務委託契約の主目的は屋内で使える計測機器の開発・販売にあるとした上で,本件製品の完成品の精度として計測距離1.5mに対し誤差10mm以下という実現不可能な精度を要求し,それ以外の精度のものは成果物として受領しない旨を被告に告げた。本件製品の開発中に想定された使用目的は,当面は屋外の計測が主であって,屋内使用に耐え得る精度の完成品の作成はあくまでも目標にすぎず,原告の上記主張は一方的なものである。
仮に原告が被告に対し業務委託料残金200万円を支払ったと認められるとしても,以上のとおり,原告は本件製品の完成品の受領を拒絶していたのであるから,被告が完成品を納入しないことに帰責性はなく,被告に背信行為は認められない。
(ウ) 被告が原告に対し実機の確認を拒絶したこと等はなかったことについて
被告は,平成20年9月3日の会議において,原告に対し,原被告間で特許に関する守秘義務契約を締結すれば,本件製品の組立等についても原告に公開することができる旨を話したが,結局,原被告間で守秘義務契約が締結されることはなかった。このため,被告は,特許の関係上,開発途中の本件製品の組立等を原告に公開することができなかった。
本件製品の開発業務について原告側の窓口となっていたD,Eほか1名は,平成20年末までに原告の関連会社に異動になり,原被告間の打ち合わせは困難になった。また,週1回行われてきた原被告間の打ち合わせは,同年12月頃から原告の拒否により行われなくなり,被告は,原告との共同開発として進めてきた本件製品の開発業務を続けることが著しく困難になった。
被告は,この間も,開発の進捗状況については常に原告に報告をしていた。
以上のとおり,被告は,本件製品の完成品の納入につき,原告に対し,常に前向きな回答をしていたが,原告は業務委託料の不払をはじめとして,これに応じる姿勢を見せなかった。
(3) 本訴請求の争点3(業務委託契約の個数,本件解除の効力が及ぶ範囲)について
(原告の主張)
本件製品の開発及び製作業務に関する原被告間の法律関係は,全体として,原告が被告に対し総コスト3000万円及び追加支払分750万円の対価を支払い,被告が原告に対し成果物を納入することを目的とする,不可分一体の1個の契約である。上記契約の目的からしても,本件解除の効力は,上記契約全体に及び,既払代金全額について原告の被告に対する代金返還請求権ないし原状回復請求権が認められる。本件契約書1及び本件契約書2には,原告の被告に対する代金返還請求権の根拠規定は本契約終了後も有効に存続する旨の残存条項(本件契約書1の23条2項,本件契約書2の23条2項)が定められており,原告の被告に対する代金返還請求権の有無は,契約が終了していたかどうかによって左右されるものではない。
(被告の主張)
原告と被告は,本件製品の開発及び製作業務に関する契約関係をフェーズ1,フェーズ2,フェーズ3の三段階に分けて認識していた。そして,フェーズ1の業務については本件契約書1のみに記載され,本件契約書2作成時にはフェーズ1の業務が完了したことが原被告間において確認されていることからすると,本件製品の開発及び製作業務に関する原被告間の契約関係は,フェーズ1とフェーズ2及びフェーズ3とで分断され,フェーズ1の業務に係る本件契約1とフェーズ2及び3の業務に係る本件契約2は別個の契約ととらえるべきである。したがって,仮に本件解除が有効なものと認められるとしても,フェーズ1の業務に係る本件契約1に関しては原被告とも履行が完了しており被告に債務不履行はないから,フェーズ2及びフェーズ3の業務に係る本件契約2についてのみ解除の効力が認められるべきである。
第3 当裁判所の判断
1 事実経過
前記第2の1の事実及び後掲の各証拠並びに弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。同認定に反する証拠は,これを採用しない。
(1) 原告のFM部は,オフィス空間を計測して図面化し属性値を与えて物品管理表を作成するなどのサービス事業を担当しており,平成20年末までは,コクヨグループ内部に対してだけでなく,外部の顧客に対しても上記サービスを提供していた。FM部は,平成17年頃から,上記サービス業務の効率化を図るための機材を探していた(甲11,証人F)。
(2) 被告は,平成18年8月に設立された受託計測サービス,計測器及び関連するソフトウェアの販売等を目的とする株式会社であり,その資本金(500万円)の80%はGが出資し,被告が設立された当時の代表取締役もGであった。
Gは,平成19年当時,被告の外に,計測器の開発等を行う株式会社デベロ(以下「デベロ」という。)を経営していた(被告代表者本人,本件訴訟記録上明らかな事実)。
(3) 原告のFM部の事業部長であるFは,デベロという計測器の開発を行っているベンチャー企業があるとの情報を入手し,平成19年5月頃,デベロを訪問した。Fは,デベロの代表取締役であるGと面談し,原告が,測量の専門家ではない者であっても簡便にオフィス空間を三次元で実測し作図することができる機器を探している旨,計測の精度としては計測距離5mに対する誤差を20mm以下とすることを想定している旨を説明したが,上記面談はデベロとの具体的な取引の話には発展しなかった(甲11,乙12,証人F,被告代表者本人)。
(4) Gは,平成19年10月に被告の取締役を退任し,以後,被告の従業員として被告の業務に従事するようになった。
デベロは,平成20年頃,破産した(被告代表者本人,本件訴訟記録上明らかな事実)。
(5) Gは,平成20年1月頃,被告を訪れたFに対し,原告が希望している3次元計測機器を被告において開発できる可能性が生じてきた旨を述べた。
その後,原告のFM部とGは,上記機器の開発及び製作に関し頻繁に打ち合わせを行い,Gは,同年3月,原告に事業計画資料(甲13)を提出して,原告に対し,被告が上記機器の開発業務を,開発費用を3000万円,開発スケジュールを同年4月から同年7月までという条件で行うことを原告に提案した。
また,Gは,上記打ち合わせの際,Fに対し,同年6月18日から同月20日までパシフィコ横浜において「地理空間情報フォーラム」が,同月25日から同月27日まで東京ビッグサイトで「第16回産業用バーチャルリアリティ展」が,それぞれ開催されることを伝え,これらの計測機器の展示会に原告が上記機器を出展すれば注目を浴びるであろうとの意見を述べて,上記機器を上記各展示会に出展することを提案した(甲11,13,乙12,証人F,被告代表者本人)。
(6) 原告は,被告の上記事業計画資料による提案を受け入れ,平成20年4月21日,業務委託契約の締結に先立って,本件製品の開発及び製作業務の業務委託料のうち1575万円(消費税75万円を含む。)を被告に支払い,同月30日,被告との間で本件契約書1を交わして,原告が被告に対し本件製品の開発及び製作業務を委託し,業務委託料として3000万円を支払う旨の本件契約1を締結した。
本件契約1においては,本件製品の試作機の納入期限は,平成20年6月に開催される上記(5)の各展示会への出展に間に合わせるために,同月17日とされた。
なお,本件契約1においては,本件製品の試作機の引渡完了日から30日以内に原告がフェーズ2の業務を被告に委託しないと判断する場合は,原告は,本件契約1をフェーズ2の業務の委託の部分について解除することができ,原告の被告に対するフェーズ2の業務に対する業務委託料の支払義務は発生しないものとされていた(本件契約書6条4項)(甲1,1113,証人F,被告代表者本人)。
(7) 原告と被告は,平成20年5月20日,覚書(乙4。以下「5月20日の覚書」という。)を交わし,本件契約書1に関し,業務委託であると共に共同開発でもあること,本件契約書1はフェーズ1の試作機についての契約書とすること,本件契約書1にいう試作機とは,5月20日の覚書別紙記載のとおりのものとすること,原告が本件契約書6条4項所定の30日以内の検討期間においてフェーズ2の業務を被告に委託する場合には,別途契約内容を定めること等を合意した。
5月20日の覚書には,別紙として,本件機器の概要及び機器構成(スキャナ,モーションセンサー,カメラ,レンズ,GPS,追尾用プリズム,トータルステーション,パーソナルコンピュータ,無線LANステーション)が記載されたフェーズ1のデバイス仕様書が添付されていた(乙4,18,弁論の全趣旨)。
(8) 被告は,平成20年6月17日までに本件製品の試作機(スキャナ,トラッカー,解析プログラムを搭載したPC,ビューワー等)を原告に納入しなかった。被告は,原告に対し,試作機の納入の遅れの原因につき,試作機に使用する機材の納品が遅れているためであると説明した。
上記(5)の各展示会には本件製品の模型(モックアップ)を出展することになり,原告は,被告から紹介されたビジュアツール株式会社(以下「ビジュアツール」という。)に対し,上記各展示会に出展する本件製品の模型の制作,ビデオの作成,ビラのデザイン及び印刷等の業務を依頼し,同年7月頃,その費用として157万5000円を支払った。
上記各展示会には,ビジュアツールが作成した本件製品のスキャナ部分の模型が展示されたが,上記模型は,展示会終了後に被告が持ち帰った。
なお,ビジュアツールは,被告の元従業員が経営する会社であるが,Gは,Fに対し,ビジュアツールは被告の子会社であると説明し,自らもビジュアツールの企画・開発担当者との肩書を記載した名刺を使用していた(甲11,14,18,証人F,被告代表者本人)。
(9) 上記各展示会前に行われた原告の役員会では,上記各展示会において原告が行う本件製品に関するアンケートに対し100通以上の回答があり顧客の需要が確認できたときには,本件製品の開発を継続するが,そうでないときは本件製品の開発を中止するとの方針が決定されていた。
原告は,上記各展示会において本件製品に関するアンケートを実施し,700通以上の回答を得た(乙12)。
(10) 被告は,前記(8)のとおり,本件契約1所定の納入期限までに本件製品の試作機を納入しなかったが,原告は,上記アンケート結果によって本件製品に対する顧客の需要があることが確認できたこと,本件製品の開発のために既に1500万円の業務委託料を被告に支払っていたこと等から,本件製品の開発及び製作業務を引き続き被告に委託することにした。
原告は,上記各展示会において聴取した顧客の意見の中に,本件製品による計測の精度の向上を求める意見,計測距離5mに対する誤差を20mm以下ではなく10mm以下に抑えないと商品にならないとの意見が多くみられたことから,その旨を被告に伝え,本件製品の計測の精度を上げるよう要望した。また,原告は,上記各展示会において顧客から聴取した本件製品に関するその他の要望(本件製品の形状及び機能等についての要望)をも被告に伝え,これらの要望への対応についても検討を依頼した。
Gは,原告に対し,同年7月14日付けの「(仮称)3D Mobile Scannerの開発に関するフェイズ1から3までの業務内容確認資料」と題する書面(本件契約書2の別紙)を提出し,本件製品に使用するジャイロをより精度の高いものに変更することによって,計測距離1.5mに対する誤差を10mm以下にすることができると提案し,また,上記書面において,本件製品の形状及び機能等に関する顧客の要望に対応する仕様の変更等を提案した。
原告は,Bの上記提案を受け入れ,上記提案によるジャイロその他の使用機材等の変更に伴い,被告に対し本件契約1所定の業務委託料3000万円(税別)とは別に,新たに追加された業務に対する業務委託料を支払うことを了承した。
原告は,平成20年7月28日,被告との間で本件契約書2を交わして,原告が被告に対し本件製品の開発及び製作に関するフェーズ2(ステップ2)及びフェーズ3(ステップ3)の業務を委託し,フェーズ2の業務の業務委託料として1500万円を,フェーズ3の業務の業務委託料として被告が別途原告宛てに提示する見積りによる金額を支払う旨の本件契約2を締結した。
本件契約書2には,別紙として,G作成の同年7月14日付けの前記書面(「(仮称)3D Mobile Scannerの開発に関するフェイズ1から3までの業務内容確認資料」と題するもの)が添付された。
本件契約2においては,フェーズ2の業務の成果物であるテクニカルシート等及びフェーズ3の業務の成果物である本件製品の完成品等の納入期限は,原告の親会社等が平成20年11月19日に実施するコクヨフェアまでと定められたが,Bは,本件契約2が締結された同年7月28日の時点で,原告のFM部SE部の部長であるC及びSE部所属のEに対し,フェーズ2の業務委託料1500万円が同月末日までに入金されず,入金が同年8月5日になれば,ジャイロの購入が遅れ,ジャイロの納入も予定されていた同月8日から同月18日になるので,これに伴い,本件製品の完成品等の納入も2週間程度遅れる可能性があるなどと述べた(甲2,11,乙28,証人F)
(11) 被告は,平成20年7月29日,原告に対し,フェーズ3の業務委託料を750万円(税別)とし,支払方法につき着手時半額,成果納入時残り半額とする見積書(乙5)を提出した。
原告は,本件契約2所定の支払期限内である同年8月5日,被告に対し,フェーズ2の業務委託料1500万円と消費税75万円との合計額である1575万円,フェーズ3の業務委託料の半額である375万円と消費税18万7500円との合計額である393万7500円を支払った(乙5,28,弁論の全趣旨)。
(12) Fら原告のFM部担当者は,本件契約2締結後,被告による本件製品の開発及び製作業務の進捗状況を確認するため,Bとの間で定期的に打ち合わせを行った。
Bは,平成20年8月6日に行われた原告との打ち合わせにおいて,Fらに対し,本件製品に使用する新たなジャイロは同月18日にアメリカから出荷され同月20日頃に入荷する予定であり,これに伴い本件製品の開発業務の工程が20日間遅れる可能性がある旨,ジャイロ以外のプログラム組みを先行して行う旨,検証等の作業期間が短くなれば,本件製品の完成が同年11月19日のコクヨフェアに間に合うかもしれない旨を述べた。
Bは,その後の原告との打ち合わせにおいても,新たなジャイロの入荷が遅れているため,本件製品の納入も遅れる旨の発言を繰り返した(Bは,同年8月22日の原告との打ち合わせにおいては,ジャイロの入荷が同年9月12日にずれこむこととなった旨を発言し,同年9月16日の打ち合わせにおいては,今週中にジャイロを納品することができる旨を発言する一方,Dらとの間で,本件製品の完成品等の納入がコクヨフェアに間に合わない場合につき既存のスキャナを展示するなどして対応することを協議した。)。
Fらは,Bに対し,本件契約書2所定の納入期限(同年11月19日)を守るように要請した。
同年10月3日に行われた原被告間の打ち合わせでは,本件製品の完成品等の納入が上記納入期限に間に合わないことがほぼ確実となり,Bは,本件製品の準完成品をコクヨフェアに間に合わせるために当初の計画を大きく変更して超特別短縮工程で作業を進めているなどと発言した。
この間,Fら原告のFM部担当者は,Bに対し,開発中の本件製品の実物及びデータを見せるように何回も要求したが,Bは,被告の特許に関わるとの理由で,上記要求に応じなかった。Fらは,原告と被告との間には本件契約1締結と同時に締結された機密保持契約があり,相手方から開示された機密情報及び機密情報については機密保持義務を負うこととされていたことから,原告が開発中の本件製品の実物を見ることに問題はないとの意見を有していたが,Bから,上記機密保持契約とは別に守秘義務契約を締結してほしいと要求があったため,守秘義務契約書のひな形を作成してBに渡した。Bは,平成20年10月9日の打ち合わせにおいて,原告に対し,上記ひな形を基に被告の意見を反映させた守秘義務契約書案を作成して原告に提示する旨を述べたものの,結局,上記守秘義務契約書案を原告に提示しなかった(甲10,11,17,乙29ないし33,証人F,被告代表者本人(但し上記認定に反する部分を除く。))。
(13) 被告は,本件契約2所定の納入期限である平成20年11月19日までに本件製品の完成品等を原告に納入しなかった。
同日開催されたコクヨフェアには,被告が用意した本件製品のスキャナの模型(モックアップ。同年6月の展示会に出展した模型とは異なるもの),トラッカー(但し,本件製品の構成機器であるトラッカーとは異なるもの),原告が事前にビジュアツールに依頼して作成させた本件製品を紹介するビデオ,パネル等が展示された。
原告は,同年11月21日,ビジュアツールに対し上記ビデオ,パネル等の制作費として合計183万7500円を支払った。
原告は,平成20年6月の展示会において本件製品に関心を示した顧客等をコクヨフェアに招待していたが,コクヨフェアでは本件製品のスキャナの模型が展示されるに止まり,本件製品の実物が作動している状況は展示されず,データの開示もなかったため,顧客の反応は芳しくなかった(甲11,15,証人F)。
(14) Fは,コクヨフェア終了後,Bに対し,本件製品の完成品等の納入が遅れている理由につき説明を求めたが,Bは,ソフトの開発が遅れていると説明するに止まった。
Bは,Fから本件製品の完成時期を尋ねられ,当初は平成21年1月末と答えたが,Fから本件製品が本当に完成する時期はいつかと問い詰められ,平成21年2月末であれば大丈夫である旨回答した。
そこで,Fは,上司の承諾を得た上で,本件製品の完成品等の納入時期を本件契約2所定の平成20年11月19日から平成21年2月末日に延期することにし,原告と被告は,平成20年12月8日,本件覚書(甲3)を交わして,要旨以下の合意をした(甲3,11,証人F)。
ア 本件製品の完成品等の納入期限を平成21年2月末日に変更する。
イ フェーズ3の業務委託料残金の支払期日については平成20年12月末日とし,残金額の支払方法については中間精算金とする。
(15) その後,本件覚書の内容を知った原告代表者は,被告に対し既に業務委託料を支払ってきたにもかかわらず,本件製品の現品を何ら確認することができない状態で被告に更に支払をすることはできないとの考えに基づき,Fに対し,本件覚書所定のフェーズ3の業務委託料残金の支払時期を変更するよう指示した。
Fは,上記指示に基づいて,Bに対し,業務委託料残金375万円(税別)のうち175万円を平成20年12月末日までに支払い,残る200万円を本件製品の完成品等の納入後に支払うこととしたい旨を申し入れたが,Bは,本件覚書の定めに従って支払をすべきであると主張し,Fの上記申入れに応じなかった。
Fは,同年12月24日,白金の事務所を訪れて上記申入れにつきBと協議しようとしたが,BはFに会おうとしなかった(甲3,11,証人F)。
(16) Fは平成20年12月25日に大津に出張し,C,D及びEが,同日午前10時頃,白金の事務所を訪れ,Bに対し,フェーズ3の業務委託料残金375万円(税別)のうち175万円は同月末に支払うが,残る200万円は本件製品の完成品の納入後に支払うことにしたい旨を申し入れた。これに対し,Bは,本件覚書所定の残金全額の支払がなければ,本件製品の開発はしないとの従前からの主張を繰り返した。Cは,Bに対し,Cが200万円を立替払することを提案した。Bは,誰が払おうとも同月末までに375万円全額が支払われればそれでよい旨を述べた。
Cらは,いったん白金の事務所を出て,Fと電話で連絡を取った。Cは,Fに対し,Bとの交渉状況について説明した上で,本件製品の開発業務はBでないと続けることができないので,フェーズ3の業務委託料残金のうち200万円をCが立替払することによってBに開発業務を続けてもらおうと述べ,Fの了解を得た。
Cは,三菱東京UFJ銀行白金支店に赴き,Cの普通預金口座から200万円の払戻しを受けた上,白金の事務所に戻り,Bに現金200万円を渡した。Cは,その際,Bに対し,これで本件製品の開発業務を続けてもらえますね,本件製品の完成品等を打ち合わせどおり納品してもらえますねと確認し,Bは,「はい,やります」と答えた。
上記話し合いの場に同席していたビジュアツール所属のH(以下「H」という。)は,C宛てのB名義の200万円の預り証(甲8)を作成し,Cに渡した。上記業務委託残金200万円に対する消費税相当額10万円については,HがBに対し「Bさん出しておいたら」と提案し,Bがこれを了承し,Bが上記消費税相当額10万円を負担することになった(甲8,11,12,証人F,同C)。
(17) 原告は,平成20年12月末日までにフェーズ3の業務委託料残金183万7500円(消費税込み)を被告に支払った。
(18) コクヨグループは,平成21年1月1日に組織の再編を行い,これによって,本件製品が完成した場合の販売事業は,原告からコクヨグループ内の他の事業会社に移管されることになった。
Fは,同月下旬にBに会い,上記の組織変更に関し打ち合わせを行った(証人F)。
(19) Bは,平成21年2月25日に行われたFら原告のFM部担当者らとの打ち合わせにおいて,本件製品の完成品の完成時期は同年3月中旬となる旨を発言した。Fらは,上記打ち合わせにおいて,Bに対し,被告が原告の役員らの前で本件製品の完成品の操作等を実演できる日程を教えてほしいと要請したが,Bは,追って日程を回答すると答えるに止まった(甲6の2,11,乙8,証人F)。
(20) コクヨグループ内では,本件製品の完成品等の納入期限である平成20年2月末日が迫っても,本件製品の操作の実演の目途すら立っていないことから,本件製品の販売事業を凍結すべきであるとの意見が強まり,原告のFM部は,平成20年3月19日開催予定の原告の役員会において上記事業について報告するよう求められていた。
F,D及びEは,同月12日,白金の事務所にBを訪れ,本件製品の完成品等の納入はいつになるのかを尋ねた。Bは,本件製品のデバイスを変更したことによるデータ解析をしている旨,同月16日にデータ解析を基にした打ち合わせを行い,納品日を協議させてほしいなどと述べた。Fらは,Bに対し,同月19日開催予定の原告の役員会において本件製品の開発業務につき報告するよう求められている旨を述べた。Fは,Gに対し,Fの私見として,少なくとも完成品に近い機能を備えた本件製品の現物が存在し,その場でデータを取得してビューワーで画像を確認できる状況となっていることが必要である旨の意見を述べ,Gに対し,上記役員会に完成前のものでよいから本件製品の現物を持参するよう強く要請した。
しかしながら,Bは,同月19日の原告の役員会に本件製品を持参しなかった。同役員会においては,開発中の本件製品の現物を確認することができず,本件製品による計測の精度も不明であること,被告のように約束を守れない会社の商品を顧客に販売することはできないことなどを理由に,本件製品の販売計画は中止することが決定された(甲7の2,11,証人F)。
(21) 被告は,平成21年3月19日以降,原告に対し,連絡や報告をしなくなった。原告は,平成21年4月9日,被告に対し,同月7日付けの催告書をもって,本件製品の完成品等の納入を再度催告したが,被告は応答をしなかった(甲4の1及び2,証人F,弁論の全趣旨)。
(22) 原告は,平成21年6月30日に本訴を提起し,同年7月6日,被告に対し,本訴の訴状をもって本件解除をした(本件訴訟記録上明らかな事実)。
2 本訴請求の争点1及び反訴請求の争点(フェーズ3の業務委託料残金の支払の有無)について
前記1で認定した事実によれば,① 原告担当者Cは,平成20年12月25日,白金の事務所において,被告担当者Bとの合意に基づき,原告が本件覚書に基づいて同月末日までに被告に支払うべきフェーズ3の業務委託料残金375万円(税別)のうち200万円を,原告に代わって被告に立替払したこと,② CとBは,上記200万円に対する消費税相当額10万円はBが負担することを合意したこと,③ 原告は,同月末日までに上記業務委託料残金183万7500円(税込)を被告に支払ったことが認められる。
以上の事実によれば,原告の被告に対するフェーズ3の業務委託料残金375万円(税別)の支払義務(ただし,上記②の合意によってBの負担とされた消費税相当額10万円の支払義務を除く。)は,本件覚書所定の支払期限である平成20年12月末日までに履行されたということができる。
被告は,平成20年12月25日にCからBに交付された200万円は,Cが個人的にBに預けたものにすぎず,フェーズ3の業務委託料とは無関係である旨を主張し,被告代表者も,本人尋問において,上記の200万円については,Cから,個人のお金として渡すと言われた旨を供述する。しかしながら,上記供述は,これと反対趣旨の証人Cの証言に照らし,信用性のないものといわざるを得ない。被告の上記主張及び被告代表者本人の上記供述は,上記認定を左右するに足りない。
3 本訴請求の争点2(解除原因の有無)について
(1)ア 証拠(乙4)によれば,5月20日の覚書には,本件製品の試作機につき,5月20日の覚書別紙記載のとおりに定義する旨が記載されており,同別紙(フェーズ1のデバイス仕様書)には,本件製品の概要並びに本件製品を構成する各機器の名称(スキャナ,モーションセンサー,カメラ,レンズ,GPS,追尾用プリズム,トータルステーション,パーソナルコンピュータ,無線LANステーション)及びその性能等が記載されていることが認められる。
以上の5月20日の覚書の記載に照らせば,5月20日の覚書により原被告間で合意された,被告が原告に納入すべき本件製品の試作機とは,上記各機器の外形のみを模した模型ではなく,本件製品の完成品としての性能を備えるには至っていないとしても,3次元計測器としての機能をある程度備えた機器を指すと解するのが合理的である。
そして,前記1で認定した事実によれば,被告は,本件契約1所定の納入期限である平成20年6月17日までに,上記のような機能を有する本件製品の試作機を原告に納入しなかったことが認められるから,被告はフェーズ1の業務をその本旨に従って遂行しなかったものというべきである。
イ 被告は,フェーズ1の主な業務内容は平成20年6月に開催された二つの展示会に本件製品を出品するための準備作業であり,本件製品の外観を整える程度のものであった旨を主張し,被告代表者本人も同旨の供述をする。
しかしながら,上記供述は,① 前記認定に係る5月20日覚書の記載内容,② 上記供述と反対趣旨の証人Fの証言,さらには,③ 本件製品の外観を整えるという程度の作業の対価としては,本件契約1所定のフェーズ1の業務委託料1500万円は明らかに高額に過ぎること等に照らし,措信することができない。
ウ 証拠(甲2)によれば,本件契約書2の冒頭には,「フェーズ1の業務完了に伴い,次期における契約を下記のとおり締結する」との記載があることが認められるところ,被告は,上記記載を根拠として,本件契約2締結当時,被告がフェーズ1の業務を完了したことは,原告も認めていた旨をも主張する。
しかしながら,証拠(甲1ないし3)によれば,本件契約書1においてはフェーズ1の業務内容は本件製品試作機の製作とされている一方,本件契約書2に記載されている「フェーズ1で行った作業」には,本件製品の試作機の製作自体は挙げられておらず(ただし,製品のモック(模型)の作成は挙げられている。),試作機の製作業務の一部に該当する作業が挙げられ,「フェーズ2として行う作業」の中にも,試作機の製作業務に含まれるようなプログラムの開発業務等が含まれていることが認められる。
上記認定事実に照らすと,本件契約書1で定義されているフェーズ1の業務内容と本件契約書2に記載されている「フェーズ1で行った作業」とは一致していない(前者の方が後者より広い内容である)ことが認められるのであって,本件契約書2の冒頭の記載をもって,原告が本件契約2締結当時,被告が本件契約1所定のフェーズ1の業務を完了していたことを認めていたと認定することはできず,他にこれを認める足りる証拠もない。
エ 以上のとおりであるから,フェーズ1の業務を完了したとの被告の主張は,採用することができない。
(2) 前記第2の1の事実及び前記1の認定事実並びに上記(1)の認定事実によれば,被告は,当初,原告に対し,本件製品を約5か月で完成させるとの見通しを示し,本件製品の試作機の納入期限を平成20年6月17日,本件製品の完成品の納入期限を同年9月末日とする本件契約1を原告との間で締結したが,同年6月17日の納入期限までに本件製品の試作機を原告に納入できず,また,本件契約2所定の納入期限である平成20年11月19日に本件製品の完成品等を原告に納入しなかったばかりか,本件覚書に係る合意による変更後の納入期限である平成21年2月末日にも本件製品の完成品等を原告に納入しなかったこと,さらには,平成21年2月25日の原告との打ち合わせにおいて,原告に対し,本件製品の完成品の完成時期は同年3月中旬となるとの見通しを示したにもかかわらず,本件製品の現物を同年3月19日の原告の役員会に持参し操作状況を示してほしいとの原告FM担当者らの要請に応じず,同日以降は,原告と連絡を取らなくなったことが認められる。また,前記1の認定事実によれば,被告は,本件契約2の締結以来,原告から,開発中の本件製品の実物及びデータを見せるよう何度も求められていたにもかかわらず,被告の特許に関わる,守秘義務契約を締結しないと見せられないなどの理由で上記要求を拒否し,原告が被告と守秘義務契約を締結するとの意向を示して契約書のひな形を被告に渡した後も,これを放置したことが認められる。
上記認定に係る経緯に照らすと,被告は,本件製品の完成時期につき具体的な見通しを持っていなかったにもかかわらず,原告に対し,本件契約1,本件契約2及び本件覚書等において,極めて安易に本件製品の完成品の納入時期を約束した上,これらの約束を次々に破って原告の信頼を大きく損なったというべきである。また,開発中の本件製品の現物を見せてほしいと何度も原告から要求されながらも,言を左右にして平成21年3月中旬になってもこれに応じなかった被告の上記態度は,被告による開発業務が,平成20年中はもとより,平成21年3月に至っても,本件製品を作動させられる程度には進捗していなかったのではないかとの強い疑いを抱かせるものである。
以上の被告の原告に対する極めて不誠実な対応は,本件契約1及び2の履行に当たっての原告に対する重大な背信行為に当たるというべきであるから,原告は,本件契約1所定の約定解除権(本件契約書1の21条1項(1))及び本件契約2所定の約定解除権(本件契約書2の21条1項(1))に基づいて,本件契約1及び本件契約2をそれぞれ解除することができるというべきである。
(3) 被告は,本件製品の完成品等の納入の遅れは原告がフェーズ3の業務委託料残金を支払わないことに起因するものである旨を主張するが,前記2で判示したとおり,原告は,本件覚書所定の支払期限までに上記業務委託料残金支払債務を履行したことが認められるのであって,被告の上記主張は,上記認定事実に照らし採用することができない。
被告は,平成21年2月25日に原告に対し本件製品の完成品を納入することができる旨を説明したが,原告は,本件製品の完成品の精度として計測距離1.5mに対し誤差10mm以下という実現不可能な精度を要求し,それ以外の精度のものは成果物として受領しないとして,本件製品の完成品の受領を拒絶した旨をも主張し,被告代表者本人も同旨の供述をする。また,証拠(甲6の2)によれば,平成21年2月25日の原被告間の打ち合わせにおいて,原告担当者が,本件製品に求められる計測の精度は10mm以下である旨の発言をしたことが認められる。
しかしながら,前記1の認定事実及び証拠(甲7の2,証人F)によれば,平成20年12月以降,原告が被告に対し最も強く求めていたのは本件製品の現物の納入であり,平成21年3月12日に行われた打ち合わせにおいても,Fは,Bに対し,本件製品が未だ完成していないことを前提として,完成前でもよいから同月19日の原告の役員会に本件製品の現物を持参するように強く要請していたことが認められる。
上記認定に係る平成20年12月以降の状況をも併せ考慮すると,原告が計測距離1.5mに対し誤差10mm以下の精度のものでなければ成果物として受領しないとの理由により本件製品の完成品の受領を拒否したとの被告代表者本人の供述は,反対趣旨の証人Fの証言に照らし,採用することができない。そして,他に原告が本件製品の完成品の受領を拒否した事実を認めるに足りる証拠はない。
また,そもそも,証拠(甲2,証人F)によれば,計測距離1.5mに対し誤差10mm以下という精度は,被告が,本件契約書2の別紙において,メーカースペック0.3°となっているジャイロを追加することにより達成可能であると記述している精度であり,上記精度を目指すことは本件契約2の内容となっていることが認められる。そうすると,原告が,本件製品の完成品につき計測距離1.5mに対し誤差10mm以下という精度を求めることは,本件契約2に従った要求というべきであるから,この点からしても,原告が本件製品の受領を不当に拒絶した旨をいう被告の上記主張は,採用し難いものというべきである。
4 本訴請求の争点3(業務委託契約の個数,本件解除の効力が及ぶ範囲)について
(1) 上記3で判示したとおり,本件解除は,被告が本件契約1及び本件契約2の履行に当たって行った一連の重大な背信行為(本件製品の完成時期につき具体的な見通しを持っていなかったにもかかわらず,原告に対し,極めて安易に本件製品の完成品の納入時期を約束して本件契約1及び本件契約2を締結させ,多額の業務委託料を支払わせ,上記約束に違反して本件製品の完成品を納入時期までに納入しなかった行為,開発中の本件製品の実物を原告に見せることを拒否した行為)を原因とするものであり,本件契約1及び本件契約2による各約定解除権(本件契約書1の21条1項(1),本件契約書2の21条1項(1))に基づく解除として,有効なものということができる。
(2) 被告は,本件契約1はフェーズ1の業務のみに関する契約であり,フェーズ1の業務は既に完了しているから,本件解除の効力は,本件契約1には及ばない旨を主張する。
しかしながら,上記3で判示したとおり,被告は本件製品の試作機を原告に納入したとはいえないから,フェーズ1の業務を完了したとはいえず,被告の上記主張は,その前提事実を欠くものというべきである。
そして,上記3及び上記(1)で判示したとおり,本件契約2だけでなく本件契約1の履行に関しても被告に重大な背信行為があったと認められる以上,本件解除は,本件契約1による約定解除権の行使としても有効なものということができるから,本件解除の効力は,本件契約1と本件契約2とが不可分一体の1個の契約か,それとも別個の契約かを検討するまでもなく,本件契約1に及ぶというべきである。
なお,仮に本件契約1が既に終了したものと認められるとしても,前記第2の1(2)エ及びオのとおり,本件契約1においては,被告に約定解除権の発生事由(「本契約の履行に当たって重大な過失又は背信行為があったとき」)が生じた場合には,原告は,本件契約1終了後も,被告に対し,既払代金の返還を請求することができるものとされている(本件契約書1の21条1項(1),2項(1),23条1項)から,原告は,本件解除に伴い,本件契約1に基づいて被告に支払った業務委託料の返還を請求することができるというべきである。
5 結論
以上によれば,本件解除は有効であり,原告は,本件契約1及び本件契約2所定の代金返還請求権(本件契約書1の21条2項(1),本件契約書2の21条2項(1))に基づき,被告に対し,既払代金全額の返還を求めることができるというべきである。
そして,前記認定事実によれば,原告は,被告に対し,本件契約1に基づく業務委託料として,平成20年4月21日に1575万円(税込)を支払い,本件契約2に基づく業務委託料として,同年8月5日に合計1968万7500円(税込),同年12月に183万7500円(税込)をそれぞれ支払ったことが認められるから,原告は,上記代金返還請求権に基づき,上記各金額の合計額である3727万5000円の返還を求めることができるというべきである。一方,Cが原告に代わって被告に立替払をした本件契約2に基づく業務委託料200万円については,被告は,本件解除によってCに対しては不当利得返還義務を負うと解されるものの,これを出捐していない原告に対しても約定の代金返還義務を負うと解することはできない。また,CとGとの合意によってGの負担とされた10万円(消費税額相当分)につき,被告が原告に対する代金返還義務を負わないことは明らかである。
以上によれば,本訴請求は,3727万5000円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日である平成21年7月7日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余は理由がなく,反訴請求は,理由がない。
よって,主文のとおり判決する。
なお,被告の申し立てる仮執行免脱の宣言は相当でないから,これを付さないこととする。
(裁判官 武田美和子)
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