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「営業コンサルタント」に関する裁判例(5)平成31年 3月22日 東京地裁 平30(ワ)10772号 株主総会決議不存在確認請求事件

「営業コンサルタント」に関する裁判例(5)平成31年 3月22日 東京地裁 平30(ワ)10772号 株主総会決議不存在確認請求事件

裁判年月日  平成31年 3月22日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平30(ワ)10772号
事件名  株主総会決議不存在確認請求事件
裁判結果  認容  上訴等  控訴  文献番号  2019WLJPCA03226007

事案の概要
◇原告X1及び原告X2が、被告会社の株主であるとして、同社の平成30年3月22日付け臨時株主総会における訴外Aを取締役及び代表取締役に選任する旨の決議が不存在であることの確認を求めた事案

評釈
弥永真生・ジュリ 1537号2頁

裁判年月日  平成31年 3月22日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平30(ワ)10772号
事件名  株主総会決議不存在確認請求事件
裁判結果  認容  上訴等  控訴  文献番号  2019WLJPCA03226007

東京都練馬区〈以下省略〉
原告 X1(以下「原告X1」という。)
川崎市〈以下省略〉
原告 X2(以下「原告X2」という。)
上記両名訴訟代理人弁護士 春木成得
東京都練馬区〈以下省略〉
被告 有限会社Y
同代表者代表取締役 A

 

 

主文

1  被告の平成30年3月22日付け臨時株主総会におけるAを取締役及び代表取締役に選任する旨の決議が不存在であることを確認する。
2  訴訟費用は,被告の負担とする。

 

事実及び理由

第1  請求
主文同旨
第2  事案の概要
本件は,原告らが被告の株主であるとして,被告の平成30年3月22日付け臨時株主総会におけるA(以下「A」という。)を取締役及び代表取締役に選任する旨の決議が不存在であることの確認を求める事案である。
1  前提事実(後掲各証拠及び弁論の全趣旨により認定することのできる事実)
(1)  当事者
ア 被告は,平成16年4月8日に「有限会社a」との商号で設立された,広告代理業などを目的とする,発行済株式総数60株の特例有限会社である(甲2,乙2)。
イ 原告X1は,平成29年9月27日,被告の取締役及び代表取締役に就任したとの登記がされた者である(甲7)。
ウ 有限会社b(以下「本件会社」という。)は,平成13年8月1日に設立された,経営コンサルタント業などを目的とする,Aが全株式を保有し,唯一の取締役を務める特例有限会社である(乙6,弁論の全趣旨)。
エ B(以下「B」という。)は,原告X1の夫であり,Aの幼なじみであり,株式会社c(以下「c社」という。)で勤務していたが,平成20年6月に同社取締役に就任し,平成28年6月に同社取締役を退任し,同年10月1日,株式会社dの取締役に就任した(甲6,弁論の全趣旨)。
(2)  被告の設立時の状況
ア Bは,平成12年5月ころ以降,e株式会社(以下「e社」という。)からゴルフトーナメントの前夜祭へのプロゴルファー招聘等の費用及び報酬の支払を受けていたところ,平成14年ころ,Aとの間で,その対価の支払をりそな銀行本件会社名義の普通預金口座(以下「本件口座」という。)で受け,Bがその一部を使えるようにする合意をした(甲46,乙23)。
イ Aは,平成16年初めころ,Bからe社等からの入金が増えることを聴き,Bとの間で,新会社を設立して同入金を受けることを合意した(甲46,乙23)。
ウ Aは,平成16年3月16日付けで,社員の氏名及び出資口数を本件会社60口とし,本件会社の記名押印のある被告の定款を作成し,同年4月6日ころ,被告設立時の出資金を本件口座から支出するなどして,被告を設立する手続をした(乙2から5まで)。
(3)  原告ら間の株式譲渡契約
原告X1は,原告X2に対し,原告X1が被告の出資持分60口を保有すること,そのうち30口を代金150万円で原告X2に売ることなどを内容とする平成28年10月31日付け持分譲渡契約書(以下「本件契約書」という。)をもって,被告株式を譲渡した(甲20)。
(4)  本件決議
Aは,平成30年3月22日,本件会社が被告の一人株主であるとして,Aを被告の取締役及び代表取締役に選任する旨の被告の書面による臨時株主総会決議(以下「本件決議」という。)をした(甲14)。
2  争点
(1)  被告設立時の株主は原告X1か
(2)  被告設立時ころ,本件会社が原告X1に株式を譲渡したか
3  争点に対する当事者の主張
(1)  被告設立時の株主は原告X1か
【原告らの主張】
原告X1及びBは,平成14年ころ,本件会社との間で,企業を紹介する代わりに,e社からのゴルフトーナメントへの男子プロゴルファー招聘費等を代わって受領すること,必要に応じて引き出すまで一時預かることを内容とする寄託契約を締結したのであり,被告設立直前ころ当時,本件会社に対し,300万円を超える寄託契約に基づく返還請求権を有していた。被告への出資は,上記返還請求権への返済に代えて被告名義の預金口座から支払われたものであるから,被告の出資金を出捐したのは原告X1である。
Aは,①被告の設立費用をBに支払わせたこと,②被告設立直後から判定明細に原告X1が被告の株主である旨記載したこと,③被告設立から本件決議までの間,原告X1又は原告らを被告の株主として扱ってきたこと,④原告X1及びBが被告名義の預金口座から自由に金員を引き出すことを許容していたこと,⑤原告X1に被告所有車両を使用させていたこと,⑥本件譲渡契約書の案文を作成したことなど,原告らが株主であることを前提とする行動をとった。
本件会社は,被告設立手続を進めるために,原告X1の使者として原始定款に署名押印したに過ぎない。
【被告の主張】
本件会社は,Bとの間で,e社からの売上高から実効税率40%を控除した60%を,必要経費であればという条件付きで引出可能とする合意をした。企業の紹介は,本件会社及びAにとって時期が遅く,メリットが少ないもので,前記合意によるメリットがあるので十分だった。本件会社は,被告設立当時,原告X1及びBに対する前記合意に基づく債務を返済済みであり,300万円を超える債務は存在しない。原告らは,当初,原告X1の金銭で設立されたと主張しており,主張が変遷している。寄託契約であるとすると,Bから領収書が本件会社に提出されたことが説明できない。本件会社は,e社に対して請求書を提出し,振込入金を受け,法人税を負担しているのであり,Bがe社との契約者で,本件会社とは寄託契約を締結しただけとはいえず,Bがe社との契約者であるとすると,e社から本件会社への支払は第三者のためにする契約といえる。被告設立時の定款には原始社員として本件会社の記名押印があり,被告の設立はAからの提案であり,原告X1が積極的に望んだものではないから,本件会社が原始社員となることを原告X1が依頼するとは到底思えない。原告X1を出資者とする会社の設立を依頼されていたのであれば,本件会社の名義を使って無断で設立することはあり得ない。
前記原告らの主張の①は否認する。②は設立時に本件会社を社員として届け出した上で,税務上のリスクを低減するために原告X1の名義を借りた。③は,原告X1が株主ではないという話をすると,本件会社がe社からの外注費を受け取ることができなくなると考えて,話を持ち出さなかったのであり,こうして外注費を餌に原告らを株主として扱うことを強要されたことを除き,株主として扱ったことはない。④は,信頼関係を前提に会社法の範囲内での委任行為であり,Aも自由に引き出していた。⑤は,業務上必要であるとのBの助言に従っただけであり,原告X1以外にも車両の貸与はあった。⑥は,強要によるものであり,積極的な関与ではない。
原告らは,株主総会の開催や決算書の開示を要求したことはなく,印鑑や住所の届出もしていないなど,株主としてとるべき行動をとっていない。代表取締役が記名押印した株主名簿記載事項証明書の保有者が会社に対し株主権を主張でき,本件会社はこれを保有し,原告らは保有していない。
(2)  被告設立時ころ,本件会社が原告X1に株式を譲渡したか
【原告らの主張】
本件会社は,原告X1が被告の資本金を出捐し,被告の株主を原告X1とするという原告X1及びBとの合意に基づき,被告設立直後に原告X1に対し被告株式全部を譲渡した。
Aが前記(1)原告らの主張①から⑥までの行動をとったことからも前記譲渡があったといえる。
【被告の主張】
否認する。
第3  当裁判所の判断
1  前記前提事実並びに甲46,乙23,証人B,被告代表者,後掲各証拠及び弁論の全趣旨により認めることのできる事実は以下のとおりである。
(1)  被告設立に至る経緯
ア Bは,平成12年5月ころ,e社から,同社が主催するゴルフトーナメントの前夜祭に男子プロゴルファーが出席するよう働きかけることを依頼され,招聘に関する費用を含めた報酬の支払を受けることとなったが,勤務先であるc社とe社では系列が異なる放送局であることから,これを,Bの義兄が経営するf社名義の預金口座に振り込ませた。
Bは,その後も同様の依頼を受け,e社からの入金を受け取るのに,f社名義の預金口座のほか,Bの知人が経営するg社名義の預金口座を利用していたが,平成14年ころ,Aとの間で,e社からの入金を本件口座で受け,入金に伴って生ずる税金の支払に必要な額を控除した残額を使えるとする合意をし,Aが管理する本件口座を利用することとなった(甲34,43)。
イ 本件会社の設立時である平成13年8月1日から平成14年7月31日までの事業年度(以下,事業年度については期末をもって「平成14年7月期」のように表記する。)の損益計算書には,売上高980万4370円,営業利益99万5820円,営業外収益合計32円,営業外費用117万9440円が計上された(乙21)。
ウ Aは,平成14年9月12日,原告X1に対し,200万円を振り込み送金した(乙14)。
エ 本件会社の平成15年7月期の損益計算書には,売上高1257万8564円,税引前当期損失96万3392円,法人税等7万円が計上された(乙21)。
本件会社の平成16年7月期の損益計算書には,税引前当期損失158万1869円,法人税等7万円が計上された(乙21)。
オ Bは,平成16年初めころ,Aに対し,e社以外からもゴルフトーナメントへのプロゴルファー招聘に関する依頼が増えることとなり,その費用及び報酬の入金が増加することを伝えたところ,Aから,平成16年8月1日から課税事業者となって益税を享受できなくなること,法人税が高額になることを理由として,新会社を設立する旨の話を持ち出された。そこで,Bは,Aに対し,新会社の資本金をどうするのか質問したところ,Aから本件口座に300万円残っている旨の回答を受けたことから,Aとの間で,出資金を本件口座内の金員から支出し,株主名義を原告X1とする新会社を設立することを合意した。
原告X1は,その後,Bから前記合意を聴いて被告の株主となることを承諾した(原告X1)。Bは,原告X1が承諾した旨をAに伝えた。
カ 本件口座については,平成15年8月29日当時の残高が354万9401円,同日から平成16年4月6日までの間,c社からの月額5万円を含め本件会社の顧客からの入金554万6954円,e社からの入金94万9160円,現金での出金合計508万円,本件会社の中小企業退職金共済の掛け金,国民生活金融公庫への返済及び社会保険料の支払合計69万5216円があり,被告出資金を出金する直前の残高が406万7332円となった(乙3,10)。
本件口座にe社から入金された金額の合計は,少なくとも751万7500円であった。
(2)  被告設立手続
ア Aは,平成16年3月16日付けで社員を本件会社とする旨の記載があり,本件会社の記名押印のある被告の原始定款を作成した(乙2)。
イ 被告の出資については,平成16年4月6日に本件口座から引き出された金員をもって行われた(乙3から5まで)。
ウ Aは,被告設立の登記手続を自ら行ったところ,その際,他人の会社設立の登記手続をするには,司法書士に依頼しなければならないが,親会社が子会社を設立する登記手続をする場合には司法書士に依頼しなくともよいと認識していた。
エ Aは,平成16年4月21日,被告について,設立の動機を親会社の事業部等の独立と記載した法人設立届出書を板橋税務署に提出した(乙19,20)。
(3)  被告設立後のAの行動等
ア Bは,被告設立後,Aから被告名義のりそな銀行普通預金口座のキャッシュカードの交付を受け,同口座から自由に金員を引き出せる状態となった。被告名義のりそな銀行普通預金口座への入金は,被告設立から平成17年10月31日までの間,出資金の300万円,e社から合計約884万円のほか,キャッシュカードによる79万円のみであった(甲4の1)。
イ Aが作成し,板橋税務署長に提出された被告の平成18年12月期から平成27年12月期までにおける同族会社等の判定に関する明細書(以下「判定明細」という。)には,原告X1が60株の株主である旨の記載がされていた(甲18〔枝番含む〕)。
ウ Bは,平成28年6月,c社の取締役を退任したことから,被告を清算して原告X2の夫を代表者とする新会社に金銭を引き継がせようと考え,Aに被告名義の通帳の引渡を求めた。これに対し,Aは,被告で経理を引き続き行うので,原告X2に株式を譲渡することを提案した。
エ Aは,Bに対し,平成28年6月2日,原告X2の名前,住所の記載がなく,日付が「平成28年6月○日」となっているほかは,本件契約書と同一である本件契約書の案文とともに,被告から本件会社が売上又は粗利の10%を業務委託料などとして受け取ることを確認するメールを送信した(甲19)。
原告X2の夫は,Aに対し,平成28年6月13日,上記案文に原告X2の名前,住所を補充したものを送信した(甲35)。
オ Aは,平成29年8月15日,Bに対し,役員報酬は月額5万円でよいか,株主にも確認してほしい旨のメールを送信した(甲26)。
カ Aは,平成29年8月17日,原告X2の夫に対し,「Y社は,X2さんとX1氏とで保有しているのですから」とのメールを送信した(甲42)。
(4)  本件に至る経緯
ア 原告らは,平成29年10月3日,Aを被告の取締役から解任する旨の書面による株主総会決議をした(甲7,21,29)。
イ 被告は,平成29年10月13日,Aに対し,取締役を解任した旨,キャッシュカード等の引渡を求める旨などを内容とする通知をした(甲7,21)。
Aは,平成29年10月19日,被告からの前記通知に対し,取締役の解任及び選任が記載された履歴事項全部証明書の送付を求めるとともに,速やかにしかるべきものを郵送する予定である旨通知した(甲22)。
Aは,平成29年10月25日,被告に対し,履歴事項全部証明書を受け取った旨,引継資料の整理に作業が必要であり,その報酬や不当解任に基づく損害賠償金などとして100万円の支払を求める旨を通知した(甲23)。
ウ 被告は,平成29年10月30日,Aに対し,Aの請求に応じない旨,さらに引渡を求める旨を通知した(甲24)。
Aは,平成29年11月2日,被告からの前記通知に対し,不当解任に基づく損害賠償として600万円の請求をした(甲25)。
エ 被告は,平成29年12月21日,原告X1を代表者取締役として,Aに対し,被告名義の預金口座の預金通帳及びキャッシュカード並びに被告の決算書などの引渡,同口座から金員を正当な理由なく領得した不法行為に基づく損害賠償約520万円などを求める訴訟(以下「別件訴訟」という。)を提起した(甲8)。
Aは,別件訴訟において,引渡を求めている動産については被告の残置物であり,引き取りを希望している旨,不当解任に基づく損害賠償を請求する旨の平成30年1月29日付け答弁書を提出した(甲9)。
オ Aは,平成30年2月5日別件訴訟第1回口頭弁論期日において,春木弁護士に対し,本件会社が原告X1に対し被告株式全部を譲渡した旨述べたほか,同期日の後,春木弁護士に対し,被告名義の通帳を引渡し,本件会社から原告X1に対し被告株式を譲渡する旨の契約書の画像を自ら見せた(甲10,11,被告代表者)。
カ Aは,平成30年3月22日,本件会社を株主として,Aを被告の取締役及び代表取締役に選任する旨の書面による株主総会決議をした旨の株主総会議事録を作成し,その旨の登記申請をした(甲13,14)。
被告は,平成30年3月28日,Aを代表取締役として別件訴訟を取り下げた(甲12)。
2  争点(1)について
(1)ア  有限会社の社員については,一般私法上の法律行為の場合と同じく,真に契約の当事者として申込をした者が社員としての権利を取得し,義務を負担するものと解すべきであり,旧有限会社法上,設立時には,定款に社員の氏名及び住所並びに各社員の出資の口数を記載し,社員が定款に署名又は記名押印をすることが必要とされているから(旧有限会社法5条1項,6条1項5号6号,2項,87条),有限会社の設立時社員の確定に当たっては,契約の当事者として社員となる意思表示をした者が誰か,すなわち,定款への署名又は記名押印が誰のものかが問題となる。本件においては,被告の設立時の定款に本件会社の記名押印があることから,この記名押印が実質的に原告X1のものといえるかが問題となる。
イ  この点,被告設立に関し,BとAとの間で資本金を本件口座から支出すること,被告の株主の名義を原告X1とすることの合意がされたこと(前記1(1)オ)の限度ではB及びAの間で争いがないことから,被告の実質的な株主を原告X1とする合意(以下「本件合意」という。)がされたかが問題となる。
(ア) まず,被告設立の目的をみると,Bが,プロゴルファー招聘等に関する入金が増加することをAに伝えたところ,Aが本件会社が課税上不利益を被るとして新会社の設立を提案したことから被告が設立されることとなったのであり(前記1(1)オ),そもそもBへのプロゴルファー招聘等に関する入金先として本件口座を利用していたに過ぎないこと(前記1(1)ア)を併せて考えると,被告を設立した主たる目的は,Bのプロゴルファー招聘等の事務に関する費用及び報酬の入金先を新設することにあったといえる。さらに,被告設立直後ころの被告名義の預金口座への入金状況をみると,売上といえる入金は,Bのプロゴルファー招聘等の費用及び報酬と考えられるe社からの入金のみであり(前記1(3)ア),Aが被告の取締役として独自に行った事業による売上はなかったことからすると,被告設立時点で,A独自の事業による入金については予定されていなかったといえる。かかる被告設立の主たる目的などからすると,被告への入金から生ずる利益の最終的な帰属者である株主に関し,Aが支配する本件会社が株主となる合理的な理由はなく,Bが株主となることが最も合理的といえ,ただ,Bがc社に勤務していたため,系列が異なるe社からの入金を隠す必要があったこと(前記1(1)ア)に照らすと,その妻であり,生計を一にする原告X1が株主となることも合理的といえる。
(イ) また,被告の資本金の原資が誰のものかについてみると,資本金は本件口座から支出されているが,本件口座への入金は,Bのプロゴルファー招聘等によるもの及びA独自の業務によるものからなり,本件口座からの支出が本件会社の社会保険料や借入れに対する返済などのほか,現金での出金があり(前記1(1)カ),被告の出資金を支出した時点での本件口座内の残金が本件会社とBのいずれに実質的に帰属するともいえず,両者の金員が混在している状況といえる。
さらに,被告設立当時,本件会社がBに対して支払うべき金員があったかについて,e社からの入金に伴って生ずる税金についてはBが負担し,その余はBが使用できるという合意であったこと(前記1(1)ア)を前提に本件口座の入出金状況をみると,e社から本件口座に入金された金額は少なくとも約752万円であった(前記1(1)オ)。そのうちBに交付された金員について,Aは被告代表者尋問において,①原告X1に200万円を振り込み,②その翌年の9月に200万円をBの勤務先であるc社の会議室においてBに手渡し,③12月18日に60万円を手渡した旨説明する。まず,①Aが原告X1に平成14年9月に200万円を振り込んだことは認められる(前記1(1)ウ)。次に,②その翌年9月の200万円については,平成15年9月2日,本件口座から3回に分けて261万円が引き出されていることが認められるものの(乙10),Aの説明と金額が合致しておらず,Bが証人尋問において否定しており,Aが他の用途で引き出した可能性を否定できないこと,Bはe社からの入金を受けていることを勤務先であるc社に明らかにしたくない状況にあったこと(前記1(1)ア)を踏まえると,Aの上記説明をにわかに信用しがたく,これを手渡したことを認めるに足りる証拠はないことからすると,Aが,このころ,Bに対して,200万円を手渡したとはいえない。さらに,③12月18日の60万円については,平成15年12月17日,本件口座から60万円が引き出されていることが認められるが(乙10),Bが証人尋問において受け取りを否定していることに照らすと,前同様に他の使途で引き出された可能性が残り,他方で,Aは陳述書(乙23)において,同月18日にc社東京支社において原告X1への業務委託料として60万円をBに手渡し,その証拠が乙第16号証である旨説明しているところ,Bが勤務先で受け取るとは考え難いことは前同様であり,乙16の1をみると原告X1名義の60万円の領収証があるものの,日付は平成15年9月30日となっており,乙16の2から16の49までの領収証をみてもAの上記説明に符合するものはなく,客観的事実に符合しない。乙16の1については,原告X1は,当事者尋問において,AからBを通じて領収証が欲しいと依頼され,指示されるがままに書いた旨説明しており,Aが消費税の課税事業者となることを免れ,法人税の軽減税率の適用を受けるために新会社を設立しようとするなど,課税を免れるため脱法行為を行っていること(前記1(1)オ)に照らすと,Aが架空の領収証の作成を依頼したことがうかがわれる。以上によれば,Aがこの60万円をBに手渡したとは認められない。この点,被告は,Bに金員の交付をしていた証拠として多数の領収証(乙16〔枝番含む〕),これらを経費として経理処理した証拠(乙15)を提出するが,Bの説明する金員の交付額と整合しておらず,BがAからどんどん領収証をくれと言われ,多数の領収証を渡していた旨証言し,原告X1も同様の説明をしており,本件会社の平成14年7月期から平成16年7月期まで損失を計上し,法人住民税の7万円以外の法人税を免れていること(前記1(1)イ,エ)に照らすと,これらの領収証は,Bが本件口座を借用していることの見返りに本件会社の税務上の負担を軽減するため提供したものというべきである。以上からすると,e社から本件口座への入金額と本件口座からBへの支払金額との差額は少なくとも約552万円であり,平成14年7月期から平成16年7月期まで本件会社が損失を計上し,その設立時期と売上高に照らして消費税の課税事業者でないこと(前記1(1)イ,エ)からすると,本件口座へのe社からの入金があったことによる法人税及び消費税は生じていないから,被告設立当時,本件会社がBに対して支払うべき金額は少なくとも552万円であったといえる。
(ウ) さらに,被告設立後のAの行動についてみると,Aは,原告X1を株主として平成18年12月期から平成27年12月期までの判定明細に記載していたのであり(前記1(3)イ),原告X1を被告の株主として扱っていたといえる。また,Bが,原告X2の夫を代表者とする新会社を設立し,新会社で金銭管理をしようとしたのに対し,反対して原告X2に原告X1から被告株式を譲渡するという原告X1が被告の株主であることを前提とする提案をしたほか(前記1(3)ウ),その契約書の作成事務を行い,報酬の支払を求めるだけで何ら被告の株主であることを主張していないだけでなく,Aの報酬を株主で決めるよう求めるメールをBに送り,原告らが株主であることを明言するメールを原告X2の夫に送るなど(前記1(3)エからカまで),自らは株主でなく,原告X1が株主であることを前提とする行動をとっていたといえる。加えて,Aは,解任された後,キャッシュカードや決算書などの引渡を求められたのに対し,自らが株主であるなどとして解任を争うのではなく,株主であれば応ずる必要のない引渡しに応ずる態度をみせつつ,金銭請求をし(前記1(4)アからウまで),別件訴訟に至っても,当初,本件会社が原告X1に被告株式を譲渡した旨主張し,自らそれに沿う契約書の画像を春木弁護士に見せ,被告名義の通帳を引き渡すなど(前記1(4)エ,オ),被告設立後一貫して自らは被告の株主ではなく,原告X1が被告の株主であるとの態度を示し,被告からAが取締役から解任されたことを通知し,原告ら及びBとの紛争が顕在化し,Aが遅くとも被告の株主は本件会社であると主張してしかるべき状況となった平成29年10月13日から本件決議のあった平成30年3月22日まで約5か月にわたり,Aが被告の株主が本件会社である旨の主張をしなかったのであり,その合理的な理由も見当たらない。かかるAの態度は,本件合意があったことに沿った態度といえ,本件決議から6日後に別件訴訟を取り下げていること(前記1(4)カ)を併せて考えると,被告からの請求を回避する目的で本件会社が被告の株主である旨を主張するに至ったものといえる。
他方で,原告らは,本件契約書を交わし(前記第2の1(3)),Aを取締役から解任するなど(前記1(4)ア),被告の株主としての行動をとっていたといえる。
(エ) 以上を前提に,本件合意があったかについてみると,前記の被告設立の目的からすると,Aが新会社を設立する旨説明したのは,Bが実質的に支配する会社を設立する趣旨であったと解するのが相当であり,資本金に関し,本件口座に300万円残っている旨のAの回答(前記1(1)オ)は,本件口座内の金員はB及び本件会社の資金が混在し,本件会社は約552万円をBに支払うべき状況にあったことを踏まえて合理的に解釈すると,本件口座内に本件会社の資金が混在しているが,Bに対して支払うべき金員をBに直接支払う代わりに被告の出資金として支出するという趣旨と解するのが相当であって,被告設立後のAの態度,原告らの態度は,かかる解釈に沿ったものといえる。そうすると,AとBとの間に本件合意があったといえる。
この点,Aが定款に直接原告X1の記名押印をしていないが(前記1(2)ア),Aが会社設立の登記手続をするためには,司法書士に依頼しなければならないが,親会社が子会社の設立登記手続をする場合には司法書士に依頼しなくともよいと認識していたこと(前記1(2)ウ)を踏まえると,Aが自ら被告設立の登記手続をするためには,原告X1を設立時の株主とすることはできず,本件会社を設立時の株主とする必要があると考えたためであるといえる。これに,Aが,被告株式を本件会社から原告X1に譲渡する旨の契約書を作成していたこと(前記1(4)オ)を併せて考えると,被告の設立登記を自ら行いつつ,本件合意の内容を実現する方策として,被告設立時の定款に本件会社の記名押印をし,被告設立の登記手続を自ら行って,その後,本件会社から原告X1への被告株式譲渡の契約書を作成して,原告X1が被告株主である旨の判定明細などの書類を作成したといえる。
(2)  以上を踏まえると,Aは,本件合意及び原告X1の承諾(前記1(1)オ)に基づき,その合意内容を実現しつつ自ら登記手続をするため,被告設立時の定款に本件会社の記名押印をしたに過ぎず,被告定款の本件会社の記名押印は,本件合意に基づいて原告X1の使者として行ったものというべきである。
そうすると,被告の設立時の株主は,原告X1であるというのが相当である。
(3)ア  被告は,本件会社は,Bとの間で,e社からの売上高から実効税率40%を控除した60%を,必要経費であればという条件付きで引出可能とする合意をした,企業の紹介はメリットが少なく,企業紹介を条件とする必要はなかった旨主張する。
しかし,本件口座へ入金される金員は,Bの費用及び報酬であるから,必要経費でない限りBが使用できないとすると,報酬部分がすべて本件会社の収入となることとなり,Bに何らの利益も生じないこととなるのであるから,このような条件でBが本件口座の借用を合意するとは考えられない。また,本件会社は,Bから紹介を受けてc社から月額5万円の報酬を受け取っているのであり,Aがc社及び株式会社hとの取引を経歴として挙げており(甲32),収入として,コンサルティング業の実績の宣伝として,本件会社及びAに利益が生じたといえる一方,Bにとっては本件会社及びAに企業を紹介することには何らメリットがないことを踏まえると,本件会社への企業の紹介は本件口座への入金を受ける対価となり得るといえる。前記検討したところを併せて考えると,被告の主張は前記判断を左右しない。
イ  被告は,本件会社が原告X1及びBに対する債務は返済済みである,e社からの入金は本件会社とe社との契約に基づくものであるなど,被告の出資金は本件会社の資金によって支出された旨主張する。
しかし,Bがe社からプロゴルファー招聘等の費用及び報酬の支払を受けるに当たり,第三者名義の口座に入金させていたものを,本件口座に入金させることとなったという経緯に照らしても,e社からの入金と対価関係に立つのはBのプロゴルファー招聘等の事務であり,本件会社の業務ではないといえるから,本件会社とe社との間に業務委託契約が成立し,その代金として入金されたものということはできない。本件会社名義のe社宛ての請求書等の書類(乙11,12)があるものの,これがe社に対して実際に送付されたことを認めるに足りる証拠はなく,これまで検討したところに照らせば,e社からの入金に関する経理処理等のためにe社との契約がある外観を作出するために作成された書類である可能性が極めて高いから,この書類をもって本件会社とe社との間に契約があったと認めることはできない。また,本件会社が法人税を負担していた旨の主張については,本件口座に入金があった時期に本件会社は法人税を負担しておらず,前提を欠く。この主張が本件口座への入金を本件会社の売上として計上しているという趣旨であるとしても,本件口座へ入金するに至った経緯に照らせば,本件会社がBに代わってe社からの入金を受けただけであっても,Bの収入であることを隠匿するため本件会社において経理上売上として計上することは不自然ではなく,この事実のみで本件口座への入金が実質的に本件会社の収入であるということはできない。被告の主張は前記判断を左右するものではない。
ウ  被告は,原告X1が被告の原始社員を本件会社とする依頼をするとは思えない,Aは,原告X1を出資者とする会社の設立を依頼されていたら本件会社名義で無断で設立することはあり得ない旨主張する。
しかし,本件合意は,本件口座の資金を出資金として被告を設立すること,株主を原告X1とすることを要素とする合意であって,その合意内容を実現するためにどのような書類を作成するかなどの手続面についてはAに任されていたといえる。そうすると,被告の原始社員を本件会社とする書類,本件会社が原告X1に株式を譲渡する書類を作成することは,本件合意の範囲内の行為といえるから,被告の主張は,前記判断を左右しない。
エ  被告は,税務上のリスクを低減するために原告X1の名義を借りた,外注費を餌に原告らを株主として扱うことを強要されたなど主張する。
しかし,税務上のリスクを低減するために名義を借りた旨の主張については,本件口座へのe社からの入金が本件会社の収入であることを前提とするものであり,前記イに照らし前提を欠く。さらに,被告設立時に,板橋税務署長に対して,被告が本件会社の子会社である旨の法人設立届出書を提出しており(前記1(2)エ),税務上の不利益を回避するための被告の設立でありながら,税務当局に親子会社であることを知らせたこととなり,合理性を欠く。以上にこれまで検討したところを併せて考えると,税務上のリスクを低減するために名義を借りたとの主張は採用できない。さらにAは,原告ら又はBが株主であることを争えば外注費を払わないなど言われたことはないと供述しており,Aが送ったメールや株式譲渡契約書の案文を作成したことなど,原告らを株主として扱った理由についての合理的な説明とはいえない。その他るる主張するところを考慮しても,被告の主張は前記判断を左右しない。
オ  代表取締役が記名押印した株主名簿記載事項証明書の保有者が会社に対し株主権を主張でき,本件会社はこれを保有し,原告らは保有していない旨など主張する。
しかし,株主名簿記載事項証明書は,株主名簿そのものではなく,商業登記規則61条3項により,登記の際の添付資料と要求されているにすぎず,会社法130条1項に株主名簿の記載を会社及び第三者への対抗要件とする旨の定めがあるから,被告の主張は,独自の見解にすぎない。その他るる主張するところも,前記検討したところを併せて考えると,前記判断を左右するものではない。
3  なお,被告は,本件会社が被告株式を時効取得した旨主張するが,本件会社が原告らに対し取得時効を援用する旨の書面を乙第27号証として証拠申出をしたが,本件口頭弁論期日において同書面の原本をAが所持している旨説明したことは当裁判所に顕著な事実であり,取得時効を援用する旨の意思表示が原告らに到達したとはいえないだけでなく,被告において原告X1が株主である旨の判定明細が平成18年12月期から平成27年12月期まで作成され,板橋税務署長に提出されているのであるから(前記1(3)イ),本件会社が被告の株主である外観があるとはいえないから,被告の主張は採用できない。被告は,その他るる主張するが,いずれも採用できない。また,原告らの平成30年7月27日付け文書提出命令申立て及び被告の同年11月24日付け文書送付嘱託申立てについては,いずれも必要性がないから却下する。
4  結論
以上によれば,争点(2)について判断するまでもなく,原告らの請求には理由がある。よって,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第8部
(裁判官 諸井明仁)

 

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