「営業支援」に関する裁判例(57)平成26年 8月 7日 東京地裁 平24(ワ)19533号 損害賠償請求事件
「営業支援」に関する裁判例(57)平成26年 8月 7日 東京地裁 平24(ワ)19533号 損害賠償請求事件
裁判年月日 平成26年 8月 7日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平24(ワ)19533号・平24(ワ)20405号
事件名 損害賠償請求事件
裁判結果 請求棄却 文献番号 2014WLJPCA08078011
要旨
◆原告が、被告らの全部又は一部は共謀して原告を取引から排除する目的で、原告の営業秘密である原価表を漏洩し、原告の卸売先との取引を打ち切らせ、原告の廃業届を偽造し、原告所有の金型を不正使用するという不法行為を行ったとして、共同不法行為に基づく損害賠償を求めた事案において、本件で、原告が製造原価を営業秘密として取引先に秘匿すべきとしていたとはいえず、また、被告Y5らが共謀し卸売先に原告との取引を終了させたとはいえず、さらに、本件廃業届は原告自身が検討、決定して作成、提出されたもので偽造は認められない上、本件金型は被告Y3社が所有するから同金型の不正使用による原告の所有権侵害は認められないとして、各不法行為の成立を否定し、請求を棄却した事例
参照条文
民法719条1項
裁判年月日 平成26年 8月 7日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 平24(ワ)19533号・平24(ワ)20405号
事件名 損害賠償請求事件
裁判結果 請求棄却 文献番号 2014WLJPCA08078011
平成24年(ワ)第19533号 損害賠償請求事件(以下「A事件」という。)
平成24年(ワ)第20405号 損害賠償請求事件(以下「B事件」という。)
当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり
主文
1 A事件原告の請求及びB事件原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用はA事件原告兼B事件原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
1 A事件被告Y1株式会社,同Y5及び同株式会社Y3は,A事件原告に対し,連帯して1億1000万円及びこれに対するA事件被告Y1株式会社について平成24年8月3日,その余の被告について同月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え(附帯請求の始期はそれぞれのA事件被告らに対する訴状送達の日の翌日である。下記2及び3の附帯請求の始期についても同様である。)。
2 A事件被告株式会社Y2,同Y5及び同株式会社Y3は,A事件原告に対し,連帯して1億2500万円及びこれに対する平成24年8月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 A事件被告Y5及び同株式会社Y3は,A事件原告に対し,連帯して5000万円及びこれに対する平成24年8月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 B事件被告は,B事件原告に対し,3000万円及びこれに対する平成24年9月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え(附帯請求の始期は,B事件被告に対する訴状送達の日の翌日である。)。
第2 事案の概要
本件は,A事件原告兼B事件原告(以下,単に「原告」という。)が,A事件被告ら及びB事件被告に対し,同被告らの全部又は一部が共謀の上,a店(旧a1店)等と原告との取引から原告を排除するなどの目的で,①原告の営業秘密である原価表を漏洩し,②原告の卸売先と原告との取引を打ち切らせ,③原告の廃業届を偽造し,④原告所有の金型を不正に使用するという不法行為を行ったなどと主張して,共同不法行為に基づき,被った損害の賠償及び遅延損害金の支払を求める事案である。
1 前提となる事実(証拠を掲記しない事実は,当事者間に争いがないか,弁論の全趣旨により容易に認められる。)
(1) 当事者
ア 原告は,楽器附属品加工業等を目的とする株式会社である。
イ A事件被告Y1株式会社(以下「被告Y1社」という。)は,楽器類及びその附属品の製造,販売等を目的とする株式会社である。
ウ A事件被告株式会社Y2(旧商号・b株式会社。以下「被告Y2社」という。)は,Y1社商標の管・弦・打・鍵盤楽器の附属品や教育楽器等の開発,仕入れ,卸販売等を目的とする株式会社である。
エ A事件被告株式会社Y3(以下「被告Y3社」という。)は,電子機器部品,自動車部品その他金属製品の鈑金プレス加工,組立等を目的とする株式会社である。
オ A事件被告Y5(以下「被告Y5」という。)は,平成2年5月から平成19年1月頃まで原告の従業員であった者で,原告においては,主にa店等の卸売先に対する営業等を担当していた(なお,被告Y2社や被告Y3社などとの交渉も担当していたか否かは争いがある。)。
カ B事件被告Y4(以下「被告Y4」という。)は,平成12年4月から平成16年7月まで原告の従業員であった者で,原告においては,主に販売管理,購買仕入れを担当していた(なお,原価管理も行っていたか否かは争いがある。)。
(2) 原告と被告Y1社との間の取引
原告と被告Y1社との間には,以下のとおりの継続的な取引関係があった。
ア 製造委託契約
被告Y1社と原告との間には,Y1社商標で販売する,楽器とは別売りの商品の製造を委託する取引(製造委託契約)があった。
被告Y1社が原告に製造を委託していた製品は,具体的には,キーボード用スタンド(w1,w2),システムピック〈ギターのピックのセット〉,ストリングワインダー〈ギターの弦を巻き取る道具〉(w3),ポリシングクロス(w4)であった。
イ 売買契約
被告Y1社は,原告に対し,平成6年6月14日付けの取引基本契約(乙1)に基づき,a店オリジナル電子ピアノ,Y1社○○電子ピアノなどの被告Y1社の取扱商品の卸売をしていた。
(3) 原告と被告Y2社との間の取引
原告と被告Y2社との間には,以下のとおりの継続的な取引関係があった。
ア 製造委託契約
被告Y2社と原告との間には,Y1社商標で販売する譜面台,ベル等(具体的には,譜面台(鉄・アルミ)w5シリーズ・w6シリーズ,大正琴譜面台(アルミ)w7,譜面台附属品w8・w9,ベルw10・w11,ネオ琴スタンド,譜面台w12,タンブリン等)の商品の製造を委託する取引(製造委託契約)があった。
イ 売買契約
被告Y2社は,原告に対し,平成7年4月1日付けの取引基本契約(乙3)に基づき,ピアニカ,リコーダー,ハーモニカ等の被告Y2社の取扱商品の卸売をしていた。
(4) 原告と被告Y3社との間の取引
原告は,被告Y1社及び被告Y2社から製造委託を受けた製品の一部について,被告Y3社のほか,c株式会社(以下「c社」という。),有限会社d等に更に製造委託をして製造を行い,被告Y1社及び被告Y2社に納品していた。
原告が被告Y3社に製造委託していた商品は,被告Y2社から製造委託を受けた譜面台w5シリーズ・w6シリーズ,大正琴譜面台w7,ベルのうち鈴を輪に取り付ける部品の金具,ネオ琴スタンド,譜面台w12,タンブリンの鈴の部分などである。
(5) 原告と被告Y1社及び被告Y2社との売買取引の終了
原告は,被告Y1社及び被告Y2社との間の各取引基本契約に基づく売買取引に基づいて卸売を受けたY1社商標の商品を,全国のa店のうち東エリアの店舗や,e店,f店等に卸販売して納入していた。
平成17年2月10日,原告と被告Y1社は,同月21日をもって,原告とa店との取引関係を,被告Y1社とa店との直接取引に移管することに同意し,被告Y1社が原告から営業ノウハウの提供等の営業支援を受けることを条件に,同日から同年8月20日までの間,被告Y1社がY1社製品をa店に販売した金額の8%(消費税別途)相当額を原告に支払うとの合意をした(乙8の1)。
これにより,原告と被告Y1社との取引のうち,原告からa店へ卸販売する○○電子ピアノ及びEM商品(エンターテイメント関連商品等〈ギター,ドラムなどの軽音楽系楽器〉)に関する原告と被告Y1社との間の売買取引は,平成17年2月21日をもって終了した。
原告と被告Y2社との売買取引も,上記と同時に終了した。
なお,上記以外で被告Y1社が原告に○○電子ピアノを卸売する取引関係は,現在も継続している(乙2)。
(6) 原告と被告Y2社との製造委託取引の終了
原告の当時の専務取締役で現在の代表取締役社長であるA(以下「原告代表者」という。)は,平成18年11月17日,被告Y5と共に被告Y2社を訪れ,被告Y2社に対し,同日付け「御社OEM業務の廃業に関して」と題する書面(乙9の1。原告の押印はない。)を持参して提出した。原告は,さらに,同月22日付けで原告の社判(角印)の押印のある「御社OEM業務の廃業に関して」と題する書面(乙10。以下,同月17日付け及び同月22日付けの書面を「本件廃業届」といい,これら2通の書面を区別する場合には「17日付け廃業届」「22日付け廃業届」という。)を被告Y2社に提出した。22日付け廃業届(乙10)には,平成18年12月末日をもって被告Y2社のOEM業務を廃業したいこと,平成19年1月以降の商品供給は被告Y3社を指名することなどが記載されている。
これを受けて,その頃,原告と被告Y2社との間の製造委託取引は終了した(なお,原告は,本件廃業届は偽造されたものであり,それが被告らの不法行為の一つであると主張している。)。
(7) 原告と被告Y1社との製造委託取引の終了
被告Y1社は,原告に対し,平成18年12月28日付け発注書(乙4の1)をもって,翌19年1月3日,同月末日を納品日として,キーボード用スタンドw1と同w2を発注したが,原告は納期を遅延し,同月23日付けで,被告Y1社に対し,納期の遅延を証明する文書(乙5)を提出した。
被告Y1社は,原告に対し,同年3月3日頃,上記製品を3週間以内に納品するよう催告した上(乙6),同年6月14日頃,被告Y1社と原告との間のキーボード用スタンドに係る継続的製造委託契約を解除するとの意思表示をした(乙7)。
(8) 本件訴えの提起
原告は,被告Y1社,被告Y2社,被告Y5及び被告Y3社を被告らとして平成24年7月6日にA事件を,被告Y4を被告として同月17日にB事件を,それぞれ訴え提起した。
(9) 被告らによる消滅時効の援用
被告Y1社,被告Y2社及び被告Y3社は,原告に対し,平成24年9月19日の併合前の本件A事件第1回口頭弁論期日において,本件における不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効を援用するとの意思表示をした。
被告Y5は,原告に対し,平成24年10月31日の併合前の本件A事件第2回口頭弁論期日において,本件における不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効を援用するとの意思表示をした。
被告Y4は,原告に対し,平成25年3月26日の本件第4回弁論準備手続期日において,本件における不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効を援用するとの意思表示をした。
2 請求原因
(1) 不法行為の具体的内容
原告の主張する不法行為の具体的な内容は,以下の①~④である。
ア 営業秘密である原価表の漏洩(以下「不法行為①」ということがある。)
被告Y5,被告Y4及び被告Y1社は,共謀の上,平成16年5月18日頃,原告の営業秘密である原価表(甲1の1の2枚目から5枚目まで及び甲1の3の2枚目から7枚目まで。以下「本件原価表」という。)を,被告Y2社に漏洩した。このことは,被告Y5の使用していたコンピュータから復元された電子メール(甲1,6,7(特記しないものは全ての枝番を含む。以下同じ。)。以下,被告Y5のコンピュータから復元されたとされる電子メールを,一般的に「復元メール」といい,必要に応じて甲号証番号で特定する。)及び営業日報(甲5)により明らかである。そして,本件原価表を見ていた被告Y2社は,鋼材の値上げが続いたことなどを原因とした原告からの下請代金の値上げ要請に対し,最終的に1割の値上げをしたのみで,全く誠実に対処しなかった。
イ e店(現在のe1。以下「e店」という。),通信販売業者のf店に原告との取引を打ち切らせたこと(以下「不法行為②」ということがある。)
被告Y5と被告Y1社,被告Y2社との間には,遅くとも平成16年8月の時点で,e店及びf店という流通部門から原告を排除する共謀があった。このことは,復元メール(甲9)により明らかである。
被告Y5は,平成17年2月頃,原告に無断で,被告Y1社,f店等とメール等で連絡を取り,e店及びf店とのY1社商標製品の取引における原告の後任会社としてg社を決定し,原告とe店及びf店との各取引を打ち切らせた。このことは,復元メール(甲2,8)により明らかである。
こうした被告Y5の行為は,原告の従業員としての誠実義務に反し,背任にも該当する。
ウ 本件廃業届の偽造による被告Y2社との製造委託取引の打切り(以下「不法行為③」ということがある。)
被告Y5は,a店との直接取引を企図した被告Y1社及び被告Y2社と共謀の上,平成18年11月17日頃,原告の社判を偽造するなどし,本件廃業届(乙9の1,乙10)を勝手に作成して,被告Y2社に提出した。被告Y1社は,被告Y2社と共に上記被告Y5の行動を支援し,原告との間の製造委託取引を打ち切った。
こうした被告Y5の行為は,原告の従業員としての誠実義務に反し,背任にも該当する。
エ 原告の所有する金型の不正使用(以下「不法行為④」ということがある。)
被告Y5及び被告Y4は,被告Y1社及び被告Y3社と共謀の上,原告の所有する以下の金型5点(以下「本件金型」という。)を,被告Y1社及び被告Y2社と原告との売買取引及び製造委託取引の打切り後も,原告に返還せずにそのまま被告Y3社に使用させてa店に納入する製品を作らせることとし,原告をa店との取引から排除した。このことは,c社の平成19年2月20日付け「お預かり金型の件」と題する文書(甲3)により明らかである。
本件金型は,次の5点である。
ア 譜面台金属型w5 平成2年2月製造 金額180万円
イ 譜面台金属型w7(大正琴) 平成3年4月製造 金額30万円
ウ 譜面台金属型w8 平成10年12月製造 金額28万4000円
エ 譜面台金属型w6 平成13年4月製造 金額35万円
オ ネオ琴スタンド 平成14年3月製造 金額358万2000円
原告は,被告Y3社との取引開始の際,被告Y3社との間で,金型代金の支払方法については,製品の計画数量を設定し,原告に納品する単価に金型代を含んだ納品単価で原告に納品するとの合意をした。本件金型の製品については,いずれもほぼ計画数量を製造したので,本件金型は原告の所有である。
(2) 損害の発生及び額
ア 前記第1の請求1項関係(被告Y1社,被告Y5,被告Y3社)
(ア) 被告Y1社,被告Y5及び被告Y3社の共謀による不法行為①から③により,原告は被告Y1社との取引関係から排除されたが,これによる損害は,以下の合計1億1000万円である。
a店に納入する製品の売買取引に関する原告の利益は年間約2000万円であったので,その5年分として1億円
Y1社に納入する製品の製造委託取引に関する原告の利益は年間約200万円であったので,その5年分として1000万円
(イ) したがって,原告は,被告Y1社,被告Y5及び被告Y3社に対し,共同不法行為に基づき,1億1000万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める。
イ 前記第1の請求2項関係(被告Y2社,被告Y5,被告Y3社)
(ア) 被告Y2社,被告Y5及び被告Y3社の共謀による不法行為①から③により,原告は被告Y2社との取引関係から排除されたが,これによる損害は,以下の合計1億2500万円である。
a店に納入する製品の売買取引に関する原告の利益は年間約500万円であったので,その5年分として2500万円
Y1社に納入する製品の製造委託取引に関する原告の利益は年間約2000万円であったので,その5年分として1億円
(イ) したがって,原告は,被告Y2社,被告Y5及び被告Y3社に対し,共同不法行為に基づき,1億2500万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める。
ウ 前記第1の請求3項関係(被告Y5,被告Y3社)
(ア) 被告Y5及び被告Y3社は,不法行為④(金型の不正使用)により,原告の本件金型の所有権を侵害した。これによる原告の損害は5000万円である。
(イ) したがって,原告は,被告Y5及び被告Y3社に対し,共同不法行為に基づき,5000万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める。
エ 前記第1の請求4項関係(被告Y4)
(ア) 被告Y4の不法行為①(原価表の漏洩)により,原告は,被告Y2社から下請代金を低く抑えられ,年間500万円の損失を被った。これによる損害は,その5年分の2500万円である。
また,被告Y4の不法行為④(金型の不正使用)による原告の損害は500万円である。
(イ) したがって,原告は,被告Y4に対し,不法行為に基づき,3000万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
3 請求原因に対する被告らの認否及び反論
(1) 被告Y1社,被告Y2社,被告Y3社及び被告Y4
ア 被告らの共謀及び損害の発生を否認する。原告が被告らの共謀の根拠とする復元メールの信用性には疑問がある。
イ 原告との取引が終了した経緯は次のとおりであって,不法行為を構成しない。
(ア) 被告Y1社と原告との間の原告がa店に納入する製品の卸売に関する契約(売買取引)は,平成17年2月21日に終了したが,これは,販売員の派遣などの原告の販売サポート体制に不備があり,取引できないとの申入れがa店から被告Y1社にあったために,被告Y1社がa店と直接取引をするようになったものである。被告Y1社は,原告に対し6箇月分の利益補償を行い,原告も,被告Y1社との直接取引への移管に同意している(乙8の1)。
(イ) 上記の原告から被告Y1社へのa店の仕入先変更に伴い,被告Y2社商品の納入元についても,a店において,h社と合意の上で,h社を被告Y2社商品の納入元に決定し,被告Y2社と原告との売買取引が終了した。
(ウ) 被告Y2社と原告との継続的製造委託取引に関しては,平成18年11月17日に原告代表者が17日付け廃業届を持参してその申出をし,更に同月22日にも22日付け廃業届を提出して,原告から被告Y2社に対し,製造受託(OEM)事業を同年12月末日をもって廃業する旨の申入れがあって(乙9,10),原告自ら終了したものである。
(エ) 被告Y1社から原告への最後の製造委託の発注は,平成18年12月であったが,原告は納期を大幅に遅延し,再三の納品の催告にもかかわらず納品しないため,被告Y1社が,平成19年6月,原告との継続的製造委託契約を解除したものである(乙4~7)。
ウ 具体的不法行為についての反論
(ア) 不法行為①(本件原価表の漏洩)について
本件原価表は,営業秘密に該当しない。原告内では,誰でも鍵を掛けていない引き出しから原価表を取り出して見ることができた。
被告Y4は,本件原価表のうち,甲1の1の復元メールに添付された表の1枚目及び3枚目については,原告代表者らの指示を受けて作成したが,その余の作成には関与していない。
被告Y2社は,被告Y5に対し,原価表の送付を指示したことはない。本件原価表は,原価が値上がりになるので卸価格を値上げする必要があるということが示されており,仮にこの資料を被告Y5が被告Y2社に送信しているとすれば,下請代金の値上げ要請の説得材料であって,被告Y5の正当な業務行為と考えられる。被告Y5は,被告Y2社等の取引先と交渉する権限があったから,説得手段として原価表を開示すること,被告Y2社が原価表の開示を要請することが仮にあったとしても,不法行為を構成しない。
なお,原告は,平成16年頃以降,鋼材の値上げを理由に,何度か譜面台の買取価格の値上げ要請を被告Y2社に対し行っていたが,被告Y2社は,交渉の結果,平成18年1月1日からの買取価格を10%値上げすることで原告と合意した。また,被告Y2社は,原告に対し,その頃,310万円の事業資金融資もしている。
(イ) 不法行為②(e店,f店に原告との取引を打ち切らせたこと)について
e店,f店と原告との取引終了の事情は知らない。e店,f店又は原告の都合によるものと思われ,被告Y1社や被告Y2社から,e店やf店向け商品について,原告との取引を打ち切ったことはない。また,被告Y1社は,e店から原告以外の卸売業者を教えてほしいと依頼され,Y1社商標の商品の卸売を行っているg社を候補としてe店に伝えたことはあるが,f店に関しては紹介もしていない。なお,その後,e店はi社から,f店はj社から,それぞれY1社商標の商品を仕入れており,g社が原告の後任会社になったものでもない。
(ウ) 不法行為③(本件廃業届の偽造による被告Y2社との製造委託取引の打切り)について
本件廃業届が偽造されたものであることは否認する。本件廃業届は,原告代表者らの指示の下に被告Y5において作成したものであって,偽造ではない。原告代表者は,被告Y5と共に被告Y2社を訪問し,被告Y2社に対し本件廃業届を提出している。
(エ) 不法行為④(本件金型の不正使用)について
原告の本件金型の所有権を否認する。本件金型は,いずれも被告Y3社の所有である。
具体的には,譜面台金属型w5は,被告Y3社が請求した金型代金(乙27)を原告が支払っておらず,譜面台金属型w7(大正琴)についても同様である。譜面台金属型w8についても,被告Y3社は製品とは独立に見積もり,請求しているが(乙13の1),材料費,製作費とも原告からの支払がない。譜面台金属型w6については,そもそも被告Y3社は原告に金型代を請求していない(乙15)。そして,ネオ琴スタンドについては,被告Y3社は金型代金を請求したが(乙14の1),原告からの支払はなかったことから(乙14の2),被告Y3社が材料費及び加工費を支出している。以上のとおり,本件金型は,いずれも被告Y3社の所有である。
なお,被告Y1社及び被告Y2社と原告との製造委託契約が終了した後は,被告Y1社及び被告Y2社は,本件金型以外にも,原告が所有していた金型は一切使用していない。被告Y1社及び被告Y2社は,もともと被告Y3社が所有していた金型と,新たに被告Y2社が製作費を負担して作った金型と,被告Y2社が原告から買い入れた金型とで,製品を製造している。
(2) 被告Y5
被告Y5の不法行為(被告らの共謀)及び原告の損害は否認し争う。原告が共謀や個別の不法行為の根拠として提出する復元メールの信用性を争う。被告Y5がこれらを作成し送信したことは否認する。
不法行為①(本件原価表の漏洩)につき,本件原価表が営業秘密であること及び本件原価表を被告Y5が被告Y2社に伝えたことを否認する。原告においては,製品原価を示す資料は机上に放置されていることもよくあった。これに対し,被告Y5は,製品原価が対外的に漏洩し得る状態に,むしろ警告を発していた。
不法行為②(e店,f店に原告との取引を打ち切らせたこと)につき,共謀を否認する。
不法行為③(本件廃業届の偽造)につき,本件廃業届は,原告代表者の指示の下に作成した真正な文書であって偽造文書ではないし,被告Y2社への提出も原告代表者と共に被告Y2社を訪問して行っており,被告Y5に不法行為はない。
不法行為④(金型の不正使用)につき,本件金型が原告所有のものであることは知らない。金型を使用してよいなどと被告Y3社に告げる立場にもない。
4 抗弁(消滅時効)
(1) 被告Y1社,被告Y2社,被告Y3社,被告Y4
不法行為②,③につき,被告Y1社及び被告Y2社と原告とのa店やe店,f店関連の取引の終了は,遅くとも平成18年12月であり,その時点から訴え提起までに,既に5年6箇月以上が経過している。
不法行為①につき,原告は,平成21年3月には,被告Y5の使用していたコンピュータの解析により,営業秘密の漏洩の概要が判明したと主張しているから,その時点で損害賠償請求が可能である。
不法行為④につき,原告は,遅くとも平成19年2月20日に,被告Y3社宛て警告文書(乙16)で金型の無断使用を指摘しており,この時点で不法行為の加害者と損害を知った。
(2) 被告Y5
原告は,遅くとも平成21年6月11日以前に,被告Y5の使用していたコンピュータに残された電子メールの復旧と解析を完了しており(丙1),損害賠償請求ができる程度に不法行為の加害者と損害を知っていた。
5 抗弁に対する原告の反論(時効中断)
不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効の起算点は,被告Y5の使用していたコンピュータの解析が完了した平成21年7月であり,そこから3年以内に本件訴えを提起したから,時効期間は中断している。
第3 当裁判所の判断
1 不法行為①(本件原価表の漏洩)について
(1) 前記第2の1の前提となる事実及び証拠(甲5,12,17,乙11,24,32,33,原告代表者本人)並びに弁論の全趣旨によれば,原告は,平成16年3月頃から平成17年10月頃までの間,鋼材の値上がりを理由に,被告Y2社との製造委託取引における譜面台製造代金の値上げを被告Y2社に度々要請していたこと,これに対して被告Y2社は,値上げの根拠となる具体的な資料を要求しつつ,原告内におけるコストダウンがどの程度図られているかの具体的な検討を促すなどしていたこと,最終的には,原告が約20%の値上げを要請していたことから,平成18年1月1日から,その半分である約10%の値上げに応じることで原告と合意したことが認められる。
(2) これに対し,原告が不法行為①として主張するのは,平成16年5月18日付けの被告Y5から被告Y2社のEに宛てたとされる復元メール(甲1の1)及び平成17年9月28日付けの被告Y5から被告Y2社のFに宛てたとされる復元メール(甲1の3)の送信による本件原価表の漏洩である。甲1の1の添付ファイルである本件原価表4枚のうち,1枚目と3枚目は,w13及びw14についての部材名称と原価,卸価格及び粗利益等を一覧にしたもの,2枚目と4枚目は,それぞれの改訂原価,改訂卸価格を前提とした粗利益の額と,原価値上額,卸価格の値上額を一覧にしたものである。また,甲1の3の添付ファイルである本件原価表6枚は,w13,w15,w14,w16,w12,w17,w18,w9について,それぞれの内訳を示しつつ,現在納入価格と価格変更案を一覧にしたものである。
(3) 証拠(乙26,丙3,被告Y5本人)によれば,原告においては,被告Y1社や被告Y2社から製造委託を受けた製品の原価に関する資料は,原告代表者らの机の上に置かれたり,又は鍵のない引き出しに保管されたりしており,従業員のほか,原告を訪れた被告Y2社のEも事実上自由に見ることができる状態であったこと,本件原価表のうち少なくとも甲1の1添付の1枚目及び3枚目を作成した被告Y4においても,従業員が共通で使用するパソコンでこれを作成し,そのデータを消去する指示を原告代表者らから受けておらず,原告の従業員であれば誰でもそのデータを閲覧したり印刷したりできる状態であったことが認められる。また,甲1の1添付の原価表をみるに,その2枚目と4枚目のそれぞれの改訂原価,改訂卸価格,粗利,原価値上額,卸価格値上額の記載は,同添付の1枚目と2枚目の各部材ごとの原価,卸価格,粗利の記載を前提とし,商品を値上げしても原告の粗利につきほとんど変化がないことを示すものであって,この原価表は,むしろ取引先である被告Y2社に示して製品の値上げを説得するための資料として作成されたものと考えられ,原告においてこれらの原価を営業秘密として取引先に秘匿すべきものとしていたとは考え難いものである。
以上によれば,製造原価が営業秘密として管理されていたとする原告代表者の供述は採用できない。その他,原告において,本件原価表が営業秘密として管理されていたことを認めるに足りる証拠はない。
(4) また,復元メール(甲1,2,6~9)の信用性についてみるに,原告は,①被告Y5が原告の従業員であったときに使用していたマッキントッシュコンピュータにつき,被告Y5が原告を突然退職した後,原告において調査したが,メール等のやり取りの大半は削除されており,被告ら間のメールの送受信歴等も発見することができず,ただ一部にY1社に対して被告Y5が情報を漏洩したと解釈できるようなメールが出てきたが,事件全容の解明になるようなメールではなかったこと,そこで,②原告は,平成19年3月20日,東京都中小企業振興公社から紹介された「データ復旧センター」に同コンピュータを持ち込んで復旧を依頼したところ,約3週間後に,復旧の費用は30万円近く要し,データがなくなる心配もあるとの連絡があったことから,原告として復旧依頼を中止したこと,③原告代表者が原告に戻された同コンピュータを起動させてみると,デスクトップに「救出された項目Macintosyu」と題されたフォルダがあり,「データ復旧センター」が部分的にしろ復旧してくれたものと理解したが,開いてもメール等は表示されなかったこと,④原告代表者は,時間があるごとに,同コンピュータの操作等をして消されたメール等を復旧できるように努力した結果,偶然ではあったが,同年5月9日,被告Y5から被告Y1社に対する「今しばらくは私にご援助願います。」と記載されたメールを検出できたこと,さらに,⑤原告代表者は,一生懸命に同コンピュータのデータ復旧に努力したところ,平成21年3月7日に被告Y5から被告Y1社に対する「いろいろご配慮を賜り,御礼申し上げます。」とのメールが検出できたこと,⑥同月の時点で,各データが復旧でき,そのうちの「救出された項目Macintosh HD1」等を操作しているうちに,被告Y5やその他の被告らのメール等が検出されたことを主張する。しかしながら,データ復旧の専門業者に依頼した場合に,復旧費用として約30万円を要し,データがなくなる心配もあるとされていたにもかかわらず,コンピュータについて特別の知識を有しているとは認められない原告代表者が,コンピュータを操作してデータ復旧に努力したところ,本件に係る各復元メールが検出されたとすること,そのために原告代表者が行った操作内容も明らかにされていないことなどに照らすと,原告が本訴に提出する各復元メールにつき,これらの内容の全てについてその作成名義人が作成したものであると認めるには十分ではないといわざるを得ない。
(5) その上,復元メールの信用性については争いがあることを措き,仮に被告Y5が甲1の1や1の3の復元メールを被告Y2社に送信していたとしても,上記のとおり,被告Y2社は原告からの要請に一部応じて約10%の値上げの合意をしたこと,原告が当時主張していた20%の値上げに合理的根拠があったか否かも不明であることなどに照らすと,本件原価表を被告Y2社に送信したことによって原告の製造委託取引における代金額が低く抑えられたという事実を認めるに足りる証拠はない。
(6) さらに,原告の請求は,本件原価表の漏洩という不法行為により,原告が被告Y1社及び被告Y2社との取引から排除されたとして,取引終了による逸失利益を損害として賠償を求めるものと考えられるが,本件原価表を被告Y2社に送信したことが仮に認められるとして,その結果として原告と被告Y1社又は被告Y2社との取引が終了したと認めることもできないから,本件原価表の送信と原告主張の上記損害との間の因果関係も認めることができない。
(7) 以上によれば,甲1の1及び甲1の3の各復元メール添付の本件原価表を被告Y5が被告Y2社に送信したか否か,あるいは,被告Y1社又は被告Y2社が原告に製造原価の公表を求めたか否かにかかわらず,本件原価表の漏洩が不法行為を構成するとする原告の主張は理由がない。
2 不法行為②(e店,f店に原告との取引を打ち切らせたこと)
(1) 原告は,被告Y5が,平成17年2月17日にf店の担当者に送信したとされる復元メール(甲2の1)並びにe店へ卸売を行う後任会社について同日,同年3月17日及び同年4月11日に被告Y1社のGに送信したとされる復元メール(甲2の2,甲8,甲2の3)などにより,被告Y5が被告Y1社,被告Y2社と共謀の上,原告の後任会社としてg社を,e店,f店に紹介するなどして,原告との取引を打ち切らせたと主張する。
甲2の1の復元メールには,被告Y5からf店の担当者に対するものとして,原告が平成17年3月から卸業務から小売に特化した業態変更を行うため,同月23日にオンエアが決定しているY1社商標製品については,g社を原告の後任の卸業者とすることを提案した上,同年2月21日に,被告Y1社担当者,被告Y5及びg社の担当者の3名でf店を訪問したい旨が記載されている。
(2) ところで,証拠(乙23,36,丙3,原告代表者本人,証人H,被告Y5本人)及び弁論の全趣旨によれば,その頃e店からは,被告Y1社に対し,原告の営業活動不足への不満が述べられ,別の仕入先を紹介してほしいという問合せがあったこと,一方原告としても,e店からのリベート要求が厳しかったり,e店やf店との取引において,卸売代金を低く抑えられたりするために利益が出ないなどとして納入先が求める営業サービスをせず,これらの取引を継続しようとの意欲に欠けており,殊にe店との取引については終了させたいと考えていたこと,原告の後任であるY1社商標製品の卸売業者として,e店についてはi社が,f店についてはj社が,それぞれ担当することになったが,これらの新たな卸売業者が決まるに当たって,被告Y1社や被告Y2社は関与しておらず,e店やf店自身が交渉の上決めたものであることが認められる。
(3) そうすると,前記1(4)のとおり甲2,甲8の復元メールの信用性については争いがあることを措き,仮に被告Y5が上記復元メールを作成し,送信していたとしても,これにより被告Y5,被告Y1社及び被告Y2社が共謀の上,e店及びf店に原告との取引を終了させたとは認められず,e店及びf店との取引終了により,原告が被告Y1社及び被告Y2社との取引から排除されたとも認められないから,これが原告に対する不法行為を構成するとは認められない。
(4) 原告は,甲9の復元メールをもって,被告Y1社及び被告Y2社との共謀の証拠であるとするが,甲9は,被告Y5が,被告Y1社の弦打楽器事業部営業部の従業員で被告Y5の個人的な知り合いであるIの個人メールアドレス宛てに,「業界ネタ」との件名で送信したとされるものであって,その件名及び記載内容自体から,真偽が定かでない情報が混在していることが明らかなものであるから,仮に被告Y5が甲9の復元メールを送信していたとしても,これをもって被告Y1社や被告Y2社との何らかの共謀の事実を認定することはできず,他に,原告主張の不法行為②を認めるに足りる証拠はない。
(5) 以上によれば,甲2及び甲8の各復元メールを被告Y5が作成し,f店の担当者や被告Y1社のGに送信したか否かにかかわらず,e店・f店との取引終了が不法行為を構成するとする原告の主張は理由がない。
3 不法行為③(本件廃業届の偽造による製造委託取引の打切り)について
(1) 前記第2の1の前提となる事実(6)のとおり,原告代表者は,当時原告の専務取締役として,17日付け廃業届を被告Y5と共に持参して被告Y2社を訪問し,被告Y2社に提出している上,その場での被告Y2社との交渉にも同席していることは,原告本人も供述するところである。また,証拠(乙9,10,24,丙3,被告Y5本人)及び弁論の全趣旨によれば,17日付けの廃業届の提出によって,原告が被告Y2社との製造委託取引を終了することにつき被告Y2社の了解が得られたことから,被告Y5において,正式な書面として22日付け廃業届を作成し,これを被告Y2社に郵送で提出したことが認められる。
(2) そうすると,原告代表者は,当時専務取締役として,本件廃業届の内容を了解していたというべきものであって,これが偽造であるとの原告の主張は採用できない。このことは,仮に原告の当時の代表取締役であるJが病気のため出社していなかったとか,22日付けの廃業届に押された原告の社判が,公印ではなく請求書等に押印するための印章による印影であること(甲30)を踏まえても,異なるものではない。
なお,本件廃業届は,原告自身の検討と決定の結果,作成,提出されたものであるというべきであるから,本件廃業届の作成,提出につき,被告Y2社や被告Y1社との共謀も認められない。
(3) 以上によれば,本件廃業届の偽造が不法行為に該当するとの原告の主張は理由がない。
4 不法行為④(原告の所有する金型の不正使用)について
(1) 原告は,被告Y5及び被告Y4は,被告Y1社と共謀の上,原告の所有する本件金型を被告Y3社に使用させ,原告の金型の所有権を侵害し,原告をa店との取引から排除した旨主張するが,原告が本件金型を所有していることを認めるに足りる証拠はない。
(2) 原告は,被告Y3社との取引開始の際,被告Y3社との間で,金型代金の支払方法について,製品の計画数量を設定し,原告に納品する単価に金型代を含んだ納品単価で原告に納品するとの合意をし,本件金型の製品については,いずれもほぼ計画数量を製造したので,本件金型は原告の所有に帰していると主張するが,これを裏付ける証拠はない。
(3) また,原告代表者は,被告Y3社との取引開始の際,金型代は被告Y3社が負担する代わりに一定数量の製造という継続的取引が条件であるという合意をしたから,被告Y3社は,当初から金型の所有権を放棄していたのであり,当初から原告が本件金型の所有者であったのであって,上記(2)の主張内容は勘違いであったと供述する(甲33,原告代表者本人)。しかし,被告Y3社との間のこのような当初の合意も,したがって被告Y3社が本件金型の所有権を放棄したことも,これを認めるに足りる証拠はない。
(4) かえって,証拠(乙13~15,25,27~31)及び弁論の全趣旨によれば,本件金型のうち,譜面台金属型w6については被告Y3社はそもそも金型代を原告に請求しておらず,その余の本件金型については,被告Y3社は原告に金型代を請求したものの,原告はこれを支払っていないのであって,本件金型は被告Y3社の所有に属するものというべきである。
(5) したがって,本件金型の不正使用による原告の所有権侵害は認められないし,これにより原告が被告Y1社及び被告Y2社との取引から排除されたとも認められないから,この点の不法行為をいう原告の主張は理由がない。
第4 結論
以上によれば,損害の額や消滅時効の抗弁等,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がない。
よって,これらをいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 本多知成 裁判官 剱持淳子 裁判官 伊藤渉)
別紙
当事者目録
東京都世田谷区〈以下省略〉
A事件原告・B事件原告 株式会社X
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 金井克仁
浜松市〈以下省略〉
A事件被告 Y1株式会社
同代表者代表取締役 B
東京都港区〈以下省略〉
A事件被告 株式会社Y2
同代表者代表取締役 C
埼玉県桶川市〈以下省略〉
A事件被告 株式会社Y3
同代表者代表取締役 D
東京都墨田区〈以下省略〉
B事件被告 Y4
上記4名訴訟代理人弁護士 青木一男
同訴訟復代理人弁護士 杉本賢太
東京都日野市〈以下省略〉
A事件被告 Y5
同訴訟代理人弁護士 松尾文彦
同訴訟復代理人弁護士 與那嶺慧理
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