【営業代行から学ぶ判例】crps 裁判例 lgbt 裁判例 nda 裁判例 nhk 裁判例 nhk 受信料 裁判例 pl法 裁判例 pta 裁判例 ptsd 裁判例 アメリカ 裁判例 検索 オーバーローン 財産分与 裁判例 クレーマー 裁判例 クレプトマニア 裁判例 サブリース 裁判例 ストーカー 裁判例 セクシャルハラスメント 裁判例 せクハラ 裁判例 タイムカード 裁判例 タイムスタンプ 裁判例 ドライブレコーダー 裁判例 ノンオペレーションチャージ 裁判例 ハーグ条約 裁判例 バイトテロ 裁判例 パタハラ 裁判例 パブリシティ権 裁判例 ハラスメント 裁判例 パワーハラスメント 裁判例 パワハラ 裁判例 ファクタリング 裁判例 プライバシー 裁判例 プライバシーの侵害 裁判例 プライバシー権 裁判例 ブラックバイト 裁判例 ベネッセ 裁判例 ベルシステム24 裁判例 マタニティハラスメント 裁判例 マタハラ 裁判例 マンション 騒音 裁判例 メンタルヘルス 裁判例 モラハラ 裁判例 モラルハラスメント 裁判例 リストラ 裁判例 リツイート 名誉毀損 裁判例 リフォーム 裁判例 遺言 解釈 裁判例 遺言 裁判例 遺言書 裁判例 遺言能力 裁判例 引き抜き 裁判例 営業秘密 裁判例 応召義務 裁判例 応用美術 裁判例 横浜地裁 裁判例 過失割合 裁判例 過労死 裁判例 介護事故 裁判例 会社法 裁判例 解雇 裁判例 外国人労働者 裁判例 学校 裁判例 学校教育法施行規則第48条 裁判例 学校事故 裁判例 環境権 裁判例 管理監督者 裁判例 器物損壊 裁判例 基本的人権 裁判例 寄与分 裁判例 偽装請負 裁判例 逆パワハラ 裁判例 休業損害 裁判例 休憩時間 裁判例 競業避止義務 裁判例 教育を受ける権利 裁判例 脅迫 裁判例 業務上横領 裁判例 近隣トラブル 裁判例 契約締結上の過失 裁判例 原状回復 裁判例 固定残業代 裁判例 雇い止め 裁判例 雇止め 裁判例 交通事故 過失割合 裁判例 交通事故 裁判例 交通事故 裁判例 検索 公共の福祉 裁判例 公序良俗違反 裁判例 公図 裁判例 厚生労働省 パワハラ 裁判例 行政訴訟 裁判例 行政法 裁判例 降格 裁判例 合併 裁判例 婚約破棄 裁判例 裁判員制度 裁判例 裁判所 知的財産 裁判例 裁判例 データ 裁判例 データベース 裁判例 データベース 無料 裁判例 とは 裁判例 とは 判例 裁判例 ニュース 裁判例 レポート 裁判例 安全配慮義務 裁判例 意味 裁判例 引用 裁判例 引用の仕方 裁判例 引用方法 裁判例 英語 裁判例 英語で 裁判例 英訳 裁判例 閲覧 裁判例 学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例 共有物分割 裁判例 刑事事件 裁判例 刑法 裁判例 憲法 裁判例 検査 裁判例 検索 裁判例 検索方法 裁判例 公開 裁判例 公知の事実 裁判例 広島 裁判例 国際私法 裁判例 最高裁 裁判例 最高裁判所 裁判例 最新 裁判例 裁判所 裁判例 雑誌 裁判例 事件番号 裁判例 射程 裁判例 書き方 裁判例 書籍 裁判例 商標 裁判例 消費税 裁判例 証拠説明書 裁判例 証拠提出 裁判例 情報 裁判例 全文 裁判例 速報 裁判例 探し方 裁判例 知財 裁判例 調べ方 裁判例 調査 裁判例 定義 裁判例 東京地裁 裁判例 同一労働同一賃金 裁判例 特許 裁判例 読み方 裁判例 入手方法 裁判例 判決 違い 裁判例 判決文 裁判例 判例 裁判例 判例 違い 裁判例 百選 裁判例 表記 裁判例 別紙 裁判例 本 裁判例 面白い 裁判例 労働 裁判例・学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例・審判例からみた 特別受益・寄与分 裁判例からみる消費税法 裁判例とは 裁量労働制 裁判例 財産分与 裁判例 産業医 裁判例 残業代未払い 裁判例 試用期間 解雇 裁判例 持ち帰り残業 裁判例 自己決定権 裁判例 自転車事故 裁判例 自由権 裁判例 手待ち時間 裁判例 受動喫煙 裁判例 重過失 裁判例 商法512条 裁判例 証拠説明書 記載例 裁判例 証拠説明書 裁判例 引用 情報公開 裁判例 職員会議 裁判例 振り込め詐欺 裁判例 身元保証 裁判例 人権侵害 裁判例 人種差別撤廃条約 裁判例 整理解雇 裁判例 生活保護 裁判例 生存権 裁判例 生命保険 裁判例 盛岡地裁 裁判例 製造物責任 裁判例 製造物責任法 裁判例 請負 裁判例 税務大学校 裁判例 接見交通権 裁判例 先使用権 裁判例 租税 裁判例 租税法 裁判例 相続 裁判例 相続税 裁判例 相続放棄 裁判例 騒音 裁判例 尊厳死 裁判例 損害賠償請求 裁判例 体罰 裁判例 退職勧奨 違法 裁判例 退職勧奨 裁判例 退職強要 裁判例 退職金 裁判例 大阪高裁 裁判例 大阪地裁 裁判例 大阪地方裁判所 裁判例 大麻 裁判例 第一法規 裁判例 男女差別 裁判例 男女差别 裁判例 知財高裁 裁判例 知的財産 裁判例 知的財産権 裁判例 中絶 慰謝料 裁判例 著作権 裁判例 長時間労働 裁判例 追突 裁判例 通勤災害 裁判例 通信の秘密 裁判例 貞操権 慰謝料 裁判例 転勤 裁判例 転籍 裁判例 電子契約 裁判例 電子署名 裁判例 同性婚 裁判例 独占禁止法 裁判例 内縁 裁判例 内定取り消し 裁判例 内定取消 裁判例 内部統制システム 裁判例 二次創作 裁判例 日本郵便 裁判例 熱中症 裁判例 能力不足 解雇 裁判例 脳死 裁判例 脳脊髄液減少症 裁判例 派遣 裁判例 判決 裁判例 違い 判決 判例 裁判例 判例 と 裁判例 判例 裁判例 とは 判例 裁判例 違い 秘密保持契約 裁判例 秘密録音 裁判例 非接触事故 裁判例 美容整形 裁判例 表現の自由 裁判例 表明保証 裁判例 評価損 裁判例 不正競争防止法 営業秘密 裁判例 不正競争防止法 裁判例 不貞 慰謝料 裁判例 不貞行為 慰謝料 裁判例 不貞行為 裁判例 不当解雇 裁判例 不動産 裁判例 浮気 慰謝料 裁判例 副業 裁判例 副業禁止 裁判例 分掌変更 裁判例 文書提出命令 裁判例 平和的生存権 裁判例 別居期間 裁判例 変形労働時間制 裁判例 弁護士会照会 裁判例 法の下の平等 裁判例 法人格否認の法理 裁判例 法務省 裁判例 忘れられる権利 裁判例 枕営業 裁判例 未払い残業代 裁判例 民事事件 裁判例 民事信託 裁判例 民事訴訟 裁判例 民泊 裁判例 民法 裁判例 無期転換 裁判例 無断欠勤 解雇 裁判例 名ばかり管理職 裁判例 名義株 裁判例 名古屋高裁 裁判例 名誉棄損 裁判例 名誉毀損 裁判例 免責不許可 裁判例 面会交流 裁判例 約款 裁判例 有給休暇 裁判例 有責配偶者 裁判例 予防接種 裁判例 離婚 裁判例 立ち退き料 裁判例 立退料 裁判例 類推解釈 裁判例 類推解釈の禁止 裁判例 礼金 裁判例 労災 裁判例 労災事故 裁判例 労働基準法 裁判例 労働基準法違反 裁判例 労働契約法20条 裁判例 労働裁判 裁判例 労働時間 裁判例 労働者性 裁判例 労働法 裁判例 和解 裁判例

「営業コンサルタント」に関する裁判例(15)平成31年 1月21日 東京地裁 平27(ワ)20008号 損害賠償請求事件

「営業コンサルタント」に関する裁判例(15)平成31年 1月21日 東京地裁 平27(ワ)20008号 損害賠償請求事件

裁判年月日  平成31年 1月21日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平27(ワ)20008号
事件名  損害賠償請求事件
文献番号  2019WLJPCA01218001

裁判年月日  平成31年 1月21日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平27(ワ)20008号
事件名  損害賠償請求事件
文献番号  2019WLJPCA01218001

東京都港区〈以下省略〉
原告 Suimei Mega Solar Park合同会社
同代表者代表社員 ソラリアント・キャピタル・エルエルシー
同代表社員職務執行者 A
同訴訟代理人弁護士 山田広毅
同 寺田知洋
同訴訟復代理人弁護士 井上俊介
同 飯島進
東京都港区〈以下省略〉
被告 Honua Capital Partners株式会社
同代表者代表取締役 B

 

 

主文

1  被告は,原告に対し,20億7000万円及びこれに対する平成27年4月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  訴訟費用は被告の負担とする。
3  この判決は,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求(選択的併合)
1  被告は,原告に対し,20億7000万円及びこれに対する平成27年7月18日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2  被告は,原告に対し,20億7000万円及びこれに対する平成27年4月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
本件は,太陽光発電事業を企図した原告が,被告を含む4名との間で,原告を営業者とし,上記4名を匿名組合員として,太陽光発電事業を行うために必要な土地や発電事業者たる地位を取得することを目的とする匿名組合契約を締結して資金調達を行った上で,訴外瑞穂トーアリゾート株式会社(以下「瑞穂」という。)との間では発電事業用地を購入する旨の売買契約を締結し,訴外株式会社WBI(以下「WBI」という。)との間では発電事業者たる地位を譲り受ける旨の譲渡契約を締結したところ,被告の代表者が,瑞穂及びWBIと共謀の上,両者をして上記各契約に違反して第三者に対して上記発電事業用地の所有権及び発電事業者たる地位を譲渡させたことによって,原告が企図した太陽光発電事業が実現不能となり,得べかりし収益相当額143億0273万8576円の損害を原告に生じさせたと主張して,被告に対し,選択的請求として,①債務不履行(匿名組合契約上の消極的義務の違反)による損害賠償請求権に基づく,上記損害の一部である20億7000万円及びこれに対する平成27年7月18日(本件訴え提起の日の翌日)から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の請求,又は②会社法350条若しくは民法709条による損害賠償請求権に基づく,上記損害の一部である20億7000万円及びこれに対する平成27年4月29日(不法行為後の日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の請求をする事案である。
1  前提事実
次の事実は,当事者間に争いがないか,後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実である。
(1)  当事者等
ア 原告
(ア) 原告は,太陽光発電プロジェクトの企画,計画及び管理等を目的として,平成26年8月12日に設立された合同会社である。
原告は,別紙事業目録記載の太陽光発電事業(以下「本件発電事業」という。)の事業者(以下「本件発電事業者」という。)となることを企図して設立された,いわゆる特別目的会社である。
なお,平成27年10月1日に目的の変更及びその旨の登記が行われており,原告の現在の目的は,再生可能エネルギー発電プロジェクトの企画,計画及び管理等である。
(甲1,戊25,弁論の全趣旨)
(イ) 原告の代表社員(会社法599条1項)は,米国法人ソラリアント・キャピタル・エルエルシー(以下「ソラリアント・キャピタル」という。)であり,ソラリアント・キャピタルの代表者であるA(以下「A」という。)が原告の職務執行者(会社法598条1項)を務めている。
原告の代表社員は,平成27年10月1日以前は,米国法人ソラリアント・インクであったが,その代表者であり,当時原告の職務執行者であったのも,Aであった。
(甲1,戊24の1,24の2,25)
(ウ) Aは,ソラリアント・インクのグループ会社であるソラリアント・ジャパン株式会社(以下「ソラリアント・ジャパン」という。)の代表者でもあった。
(戊16)
イ 被告
(ア) 被告は,不動産投資顧問業及び特別目的会社等に対する出資等を目的とする株式会社であり,その代表取締役は,B(以下「B」という。)である。
(甲6)
(イ) Bは,平成26年6月1日から平成27年5月31日まで,ソラリアント・ジャパンの従業員(プロジェクト開発本部長)として,本件発電事業のプロジェクトマネージャーとしての職務にも従事していた。
(争いがない。)
ウ その他の関係者
(ア) WBIは,太陽光エネルギーによる発電及び売電事業等を目的とする株式会社である。
(甲3)
(イ) 瑞穂は,ゴルフ場の造成及び経営等を目的とする株式会社であり,その所有する別紙土地目録(ただし,「サンエジソンへの登記」とあるのを「合同会社ナトスへの登記」と訂正する。)記載の各土地(以下「本件土地」という。)においてゴルフ場「○○カントリークラブ」を営業していた。
平成25年12月18日当時,瑞穂の100%親会社は,トランス・パシフィック・リンクス・ジャパン株式会社(以下「TPLJ社」という。)であった。
(甲2,弁論の全趣旨)
(ウ) 合同会社ナトス(旧商号は「サンエジソンジャパンSPC19合同会社」であり,平成28年4月18日に商号を「合同会社ナトス」に変更し,同年4月20日にその旨の登記がされた。以下,商号変更の前後を問わず,「ナトス」という。)は,太陽光発電所の開発,設計及び建設,電力の生産及び販売等を目的とするいわゆる特別目的会社である。
ナトスの代表社員は,サンエジソンジャパン株式会社(以下「サンエジソン」という。)であり,同社がナトスの唯一の業務執行社員でもある。サンエジソンは,太陽光発電システムの開発,設計,企画等を目的とする株式会社である。
(甲9,10,弁論の全趣旨)
(2)  太陽光発電事業に必要なプロセス
ア 一般に,発電事業者が,電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(以下「再エネ法」という。)に基づく固定買取制度を利用して,太陽光発電事業を営む場合には,平成26,27年当時,以下のようなプロセスを経る必要があった。
(ア) 再エネ法上の要件
再エネ法の下,発電事業者は,経済産業省による発電設備の安定性,効率性についての認定(設備認定)を取得し,太陽光発電設備で発生した電力を電気事業者(電力会社)に供給することを約する契約(平成28年法第59号による改正前の再エネ法4条1項)を締結し,事業者の発電設備と電気事業者の変電設備等を接続するための契約(平成28年法第59号による改正前の再エネ法5条1項)を締結する必要がある。
(イ) 関係個別法令に基づく手続の履践
発電事業者は,太陽光発電事業開始のために,太陽光パネルの設置用に広範な土地を取得し,当該土地を整備する必要がある。その過程で,例えば森林法の規定に基づく林地開発許可を都道府県知事から得る必要がある場合がある。
(ウ) 都道府県において定める条例・規則に定める手続の履践
本件土地が所在する島根県においては,土地の造成,土石の採取,土地の区画形質の変更を行おうとする者(以下「開発事業者」という。)は,島根県土地利用対策要綱(甲11)に基づいて,許認可申請等の手続を行う前に,当該事業計画について島根県知事と協議をしなければならない(同要綱6条1項)。開発事業者は,島根県知事から,開発事業を実施するに当たって必要となる法令に基づく手続その他指導事項等を記載した文書による通知(同要綱8条3項)を受領した後,太陽光発電事業の実施に必要な許認可を取得した上で,開発行為に着手する前に,着工届を島根県知事に提出しなければならない(同要綱11条1項)。
イ 太陽光発電事業を行う資金の調達に関して,特別目的会社(SPC)を利用したプロジェクト・ファイナンスの手法を用いる場合には,事業開発を担当する業者が,上記アのようなプロセスを行い,ある程度プロセスが進んだところで,それまでに取得した許認可や契約上の地位等を特別目的会社に移転するという実務がとられることが多い。
本件発電事業についても,これと同様に,WBIがまず事業開発を,WBIが取得した許認可や契約上の地位等を特別目的会社である原告に対して譲渡することが想定されていた。
(争いがない。)
(3)  原告の設立前後の経過
ア WBIは,瑞穂が所有する本件土地において太陽光発電事業(本件発電事業)を行うために必要な許認可等を取得した上で,同事業を売却する目的で,平成25年12月18日,TPLJ社との間で,「売渡し確認書」を交わし,TPLJ社が保有する瑞穂の発行済み全株式を代金7億5000万円で買い受ける旨の株式譲渡契約(以下「本件瑞穂株式譲渡契約」という。)を締結した。
WBIは,事業パートナーを選定することによって,上記株式譲渡代金の支払原資を調達することを考え,複数の事業パートナー候補者と接触していたが,その選定が思うように進まなかったため,平成26年1月31日,TPLJ社との間で,「『売渡し確認書』変更に関わる覚書」を交わし,当初は同年2月28日と合意されていたクロージング日(取引実行日)を同年6月30日に延期することを合意した。
(乙1,2)
イ WBIは,平成26年6月頃から,ソラリアント・ジャパンの関係者との間で,本件発電事業に関する打ち合わせを開始した。
(弁論の全趣旨)
ウ Bは,平成26年6月1日,ソラリアント・ジャパンの代表者であるAの誘いでソラリアント・ジャパンに入社した。
Bは,ソラリアント・ジャパンにおいて,プロジェクト開発本部長の肩書で,本件発電事業を含む,バイオマス発電や他の太陽光発電事業等の4,5件のプロジェクトの組成に向けた営業活動を担当していた。
(争いがない。)
エ 原告は,平成26年8月12日,本件発電事業の事業者となることを企図して,ソラリアント・インクによって設立された。原告設立後の本件発電事業におけるBの役割は,プロジェクトの関係者である原告及びWBIとの連絡を取ること,原告の資金調達を支援すること並びに投資家との連絡,報告及び交渉を行うこと等であった。
(争いがない。)
(4)  原告が本件発電事業を行うために必要な契約の締結
ア 原告とWBIとの間の地位譲渡契約の締結
原告及びWBIは,平成26年8月20日,WBIが取得した本件発電事業に係る発電事業者としての地位(再エネ法に基づく経済産業大臣の認可,電力会社との間で売電契約を締結する権利等を有する状態を指す。以下「本件地位」という。)を代金5億5000万円で原告に対して譲渡し,原告はこれを譲り受ける旨の契約(以下「本件地位譲渡契約」という。)を締結した。
本件地位譲渡契約には,次の約定が含まれていた。
(ア) 原告は,WBIに対し,上記代金を後記イの土地売買契約に定めるクロージング日に支払う(2条2項)。
(イ) 原告は,WBIに対し,平成26年8月29日までに手付金として1億3000万円を支払う。手付金は,上記代金の一部とする。(2条3項)
(ウ) 本件地位は,WBIが原告から手付金を受領したときに,WBIから原告に移転する(2条4項)。
(エ) 後記イの土地売買契約に基づくクロージング日が到来しない場合には,原告は,本件地位譲渡契約を解除することができる(4条(4))。
(甲4)
イ 原告と瑞穂との間の土地売買契約書
原告と瑞穂との間には,瑞穂が原告に対して本件土地を代金7億5000万円で売却する旨の平成26年8月20日付け不動産売買契約書(以下「本件土地売買契約書」という。)が存在する。なお,本件土地売買契約書の成立の真正については,後述のとおり争いがある。
本件土地売買契約書には,次の約定の記載がある。
(ア) クロージング日(取引実行日)は,原告が本件発電事業を実施するために必要なあらゆる許認可等の取得及び資金の調達(5条(6))等,5条に規定する全ての前提条件が成就した日又は平成26年9月30日のいずれか遅い方の日とする(3条1項)。
(イ) 原告は,瑞穂に対し,5条に規定する全ての前提条件が成就することを条件として,クロージング日において,売買代金を支払う。本件土地の所有権は,売買代金の全額が支払われたときに,瑞穂から原告に移転する。(4条1項,2項)
(ウ) 瑞穂は,本契約締結日からクロージング日までの間,本件土地の売却若しくは賃貸借又は本件土地において発電事業を行うことに関して,第三者と直接または間接に交渉を行わないことを誓約する(3条4項)。
(甲40)
ウ WBI,瑞穂及びTPLJ社の三者間の合意
WBI,瑞穂及びTPLJ社は,平成26年8月20日,本件瑞穂株式譲渡契約について,クロージング日(残代金支払期限)を平成26年9月30日に変更する旨を合意した。
(乙3)
(5)  匿名組合契約の締結
ア 原告は,平成26年9月1日,被告との間で,原告を営業者とし,被告を匿名組合員とする匿名組合契約を締結した。
上記匿名組合契約には,次の約定が含まれていた。
(ア) 匿名組合員は,営業者に対し,営業者が本件地位譲渡契約及び本件土地の売買契約等に基づく権利の行使と義務の履行並びにWBIが保有する太陽光発電事業者としての権利義務・地位の取得及び管理等を含む事業(以下「本件匿名組合事業」という。)を遂行するために出資し,営業者は,本件匿名組合事業から生じた利益及び損失を,想定分配額に至るまで,出資割合に従って,匿名組合員に分配する(2条1項)。
(イ) 事業期間は,事業開始日(本契約締結日)から事業終了日(平成26年12月31日)までの期間である(1条,3条)。
(ウ) 匿名組合員は,事業開始日以前に,営業者に対して5000万円を出資する。(4条)。
(エ) 本契約は,事業終了日が経過したとき,直ちに終了する(14条1項(1))。
(オ) 本契約の終了日に,営業者は,匿名組合員に対し,本契約の終了後60日以内に,出資持分に想定分配額を加えた金額を支払う義務を負う(15条1項)。出資持分とは,匿名組合員によって拠出された出資金額であり,想定分配額とは,1億3000万円に出資割合(全匿名組合員によって拠出される出資金総額に対する当該匿名組合員が拠出した出資金額の割合)を乗じたものである(1条)。
(甲7,8,戊2)
イ 原告は,平成26年9月1日,C,D及びE(以下,この3名をあわせて「訴外匿名組合員ら」という。)との間でも,出資金額はそれぞれ異なるものの,その余は上記アの匿名組合契約と同一内容の匿名組合契約をそれぞれ締結した(以下,被告及び訴外匿名組合員らを「本件匿名組合員ら4名」といい,原告と本件匿名組合員ら4名との間の各匿名組合契約を併せて「本件匿名組合契約」と総称する。)。訴外匿名組合らが出資を約した金額は,合計8000万円であった。
(戊3の1~5の2)
ウ 原告,ソラリアント・インク及びWBIは,本件匿名組合契約が締結された平成26年9月1日,以下の内容を含む合意書(以下「WBIサイドレター」という。)を交わした。
(ア) 原告は,本件匿名組合契約15条1項に基づき,平成26年12月31日(以下「匿名組合配当日」ともいう。)に合計2億6000万円の配当(以下「匿名組合員配当」という。)を行わなければならない(以下,原告のこの義務を「本件収益分配義務」ともいう。)ところ,WBIは,原告が匿名組合配当日までに匿名組合員配当を行わない又は行うことができないときには,匿名組合配当日から60日以内に,2億6000万円を原告に提供することを合意する。
(イ) 原告は,上記(ア)に基づいてWBIから資金を得た後,速やかに匿名組合員配当を行う。
(ウ) ソラリアント・インクは,WBIが上記(ア)に基づいて資金の提供を行い,かつ,原告が上記(イ)に基づいて匿名組合員配当を行った後,WBIに対し,原告の持分の全てを,ソラリアント・インクによる請求権なく,対価1円で譲渡することに同意する。
(戊7の1,7の2)
エ 原告,ソラリアント・インク及び被告を含む本件匿名組合員ら4名は,本件匿名組合契約が締結された平成26年9月1日,以下の内容を含む合意書(以下「TKサイドレター」という。)を交わした。
(ア) ソラリアント・インク及び原告は,原告が匿名組合配当日までに匿名組合員配当を行わない又は行うことができないときには,速やかにWBIに通知し,WBIに対し,WBIサイドレターに従って2億6000万円を原告に提供することを請求する。
(イ) 原告は,WBIサイドレターに基づいてWBIから資金を得た後,速やかに匿名組合員配当を行う。
(ウ) ソラリアント・インクは,原告が匿名組合配当日から60日以内に匿名組合員配当全額を支払うことができない場合には,本件匿名組合員ら4名の多数によって指名された者に対して,原告の持分全てを,何らの請求権も残さずに1円で譲渡することに同意する。
(戊8の1,8の2)
(6)  本件匿名組合契約に基づく出資による本件地位譲渡契約の手付金の支払
ア 原告は,WBIに対し,平成26年9月12日までに,本件匿名組合員ら4名に出資金を直接WBI名義の口座に振り込ませることによって,本件地位譲渡契約に基づく手付金1億3000万円を支払った。
(争いがない。)
イ 原告は,これ以降,WBIに対し,本件地位譲渡契約に基づく残代金を支払っておらず,また,瑞穂に対し,本件土地売買契約書上の売買代金を支払っていない。
さらに,平成26年12月31日(匿名組合配当日)は経過したが,原告は,被告を含む本件匿名組合員ら4名に対し,匿名組合員配当を行っていない。
(争いがない。)
(7)  WBI及び瑞穂から第三者に対する本件地位及び本件土地の譲渡
ア WBIからサンエジソンに対する本件地位の譲渡
WBIは,平成27年4月21日,サンエジソンとの間で社員持分譲渡契約を締結し,サンエジソンに対し,本件発電事業に関するプロジェクト合同会社の社員持分を譲渡することによって,本件発電事業の事業者としての地位(本件地位)を譲渡した。
このとき,WBIとの交渉に関与したサンエジソンの担当者は,F(以下「F」という)であった。
(甲52~55,57~60,丁2~4の1,5)
イ 瑞穂からナトスに対する本件土地の譲渡
瑞穂は,平成27年4月28日,ナトスに対し,本件土地合計454筆のうち,別紙土地目録記載2,4~297,299~347,349~364,366~454の449筆の土地(以下「本件移転済み土地」という。)を売却し,同日,所有権移転登記を完了した。
本件移転済み土地は,本件発電事業用地の主たる部分である。
(甲16の1~16の18,28)
2  争点
(1)  原告は,瑞穂との間で,本件土地の売買契約を締結したか。
(2)  被告は,本件匿名組合契約に基づく消極的義務に違反したか。
(3)  被告の代表者であるBの行為は,原告に対する不法行為を構成するか。
(4)  被告は,Bの行為について,会社法350条又は民法709条に基づく損害賠償責任を負うか。
(5)  原告に損害が発生したこと及びその額
(6)  原告が被告の責任を追及することは信義則に違反するか。
(7)  過失相殺
3  争点に関する当事者の主張
(1)  争点(1)(原告は,瑞穂との間で,本件土地の売買契約を締結したか。)について
(原告の主張)
原告は,平成26年8月20日,瑞穂との間で,本件土地売買契約書のとおり,本件土地の売買契約を締結した。
被告は,自ら原告との間で締結した本件匿名組合契約において,匿名組合の事業について「2014年8月20日付の瑞穂トーアリゾート株式会社と営業者の間で締結された不動産売買契約…に基づく権利の行使と義務の履行」と定めており(2条1項(1)),原告が瑞穂との間で本件土地売買契約書のとおりの内容の売買契約を締結したことを認めている。
被告は,本件土地売買契約書は真正に作成されたものではないと主張する。しかし,①本件土地売買契約書の瑞穂名下の印影は,瑞穂の印章によるものであること,②平成26年8月13日頃,WBIは,当時TPLJ社及び瑞穂の取締役であったGに対し,原告がWBIに送付した本件土地売買契約書の原案を添付したメールを送信したこと,③同年8月25日,原告は,WBIから,瑞穂が押印した本件土地売買契約書のPDFファイルを添付したメールを受領した(甲29,30)ところ,同メールの宛先には,当時瑞穂の取締役であったGも含まれていたことなどからすれば,本件土地売買契約書は真正に作成されたものである。
(被告の主張)
瑞穂は,元々,本件土地だけを譲渡する意図はなく,株式譲渡により会社自体をWBIに譲渡することを考えていた。本件土地売買契約書は,WBIが瑞穂の印影を冒用して作成したものである。
したがって,本件土地売買契約書は,真正に成立したものではなく,原告と瑞穂との間に本件土地の売買契約は存在しない。
なお,原告が指摘する本件匿名組合契約の約定については,原告が依頼した弁護士の誤った理解に基づいて記載されたものであり,被告は,十分に検討する時間を与えられないまま,契約書への署名を求められたため,これに気付かなかったにすぎない。
(2)  争点(2)(被告は,本件匿名組合契約に基づく消極的義務に違反したか。)について
(原告の主張)
ア 被告は,原告との間で本件匿名組合契約を締結した匿名組合員であるところ,匿名組合員は,匿名組合契約上,匿名組合の目的たる事業の達成を故意に妨げる行為をしてはならないという消極的義務を負っている。
イ 被告は,BがWBIとサンエジソンとの間の交渉に関与した時期には,本件匿名組合契約は既に終了していたから,上記消極的義務を負っていなかった旨主張する。しかしながら,以下の理由により,被告は,本件匿名組合契約の事業期間の終了によって,直ちに上記消極的義務を免除されるものではない。
(ア) 余後効
本件匿名組合契約は,本件匿名組合員ら4名の出資により,営業者である原告が事業期間内に本件匿名組合事業(本件発電事業に必要な本件土地及び本件地位を取得すること)を行うことを目的としていた。しかし,本件発電事業は,本件匿名組合契約に定められた上記事業の実施により当然に収益を生むものではなく,同事業によって確保した本件土地及び本件地位を利用して,相当長期にわたって本件発電事業を行うことにより,長期的に売電収入を得ることができるというものである。したがって,仮に,本件匿名組合契約の事業期間の終了後に,匿名組合員の行為によって,営業者である原告において本件土地及び本件地位に基づき将来にわたって売電収入を得ることができなくなるような事態が発生すれば,本件匿名組合契約の目的は達成することができないのであり,そのような事態を招く行為は本件匿名組合契約の趣旨に反する。
そうすると,匿名組合員である被告は,本件匿名組合契約上の事業期間の末日である平成26年12月31日からほど近い時期である平成27年3月16日から同年4月21日においても,本件匿名組合契約に基づく上記消極的義務を負っていたというべきである。
(イ) 本件匿名組合契約の合理的解釈
本件匿名組合契約は,営業者に対し,事業終了日経過後においても,匿名組合員配当を行う義務(本件収益分配義務)を課している(15条1項)ように,事業終了日の経過は,本件匿名組合契約の当事者間の全ての権利義務の消滅を意味するものではない。そして,本件発電事業が長期にわたって売電収入を得ることを目的としたプロジェクトであることを踏まえると,被告は,事業終了日後も継続して上記消極的義務を負担していたと解するのが,本件匿名組合契約を締結した当事者の合理的意思に合致するというべきである。
ウ 被告は,平成27年3月16日から同年4月21日までの間,上記消極的義務を負っていたにもかかわらず,代表者のBを通じて,①WBIとサンエジソンとの間の社員持分譲渡契約の締結及び②瑞穂とナトスとの間の本件移転済み土地の売買契約の締結を積極的に推進する行為を行い,上記消極的義務に違反した。
(被告の主張)
ア そもそも,本件匿名組合契約に基づき,原告主張の消極的義務が発生することについて争う。
イ 仮に,本件匿名組合契約の事業期間中には,匿名組合員が原告主張の消極的義務を負うとしても,本件匿名組合契約は,平成26年12月31日の事業終了日の経過によって終了したのであるから,原告が被告による債務不履行等があったと主張する時期(平成27年3月16日から同年4月21日まで)には,既に本件匿名組合契約は終了していた。したがって,同時期には,被告は本件匿名組合契約に基づく消極的義務を負っていなかった。
(3)  争点(3)(被告の代表者であるBの行為は,原告に対する不法行為を構成するか。)について
(原告の主張)
ア Bの不法行為
被告の代表者であるBは,ソラリアント・ジャパンのプロジェクト開発本部長として,本件発電事業のプロジェクトマネージャーを務めていながら,平成27年3月16日から同年4月21日頃までにかけて,あたかもWBIの社員であるかのようにふるまい,WBI及び瑞穂と通謀して,自らサンエジソンの担当者と交渉し,①WBIとサンエジソンとの間の社員持分譲渡契約及び②瑞穂とナトスとの間の本件移転済み土地の売買契約をそれぞれ締結させて,同月28日付けで本件移転済み土地についてナトスへの所有権移転登記が完了する事態へと至らせた。これにより,原告は,本件土地で本件発電事業を行うことができなくなった。
Bは,上記期間中,WBIの会長であるH(以下「H」という。)及びサンエジソンの担当者であるFに対して少なくとも25通のメールを送信しており,その中には,本件発電事業に関する支払スケジュールや利益分配の方法を提案するもの,契約締結までに解決すべき論点について協議を持ちかけるもの,契約書に対するWBIのコメントを送付するものなど,本件発電事業の売却を実現するために重要な事項に関するものが含まれている。また,Bは,同年3月16日には,Fとの間で本件発電事業に関する会議を行い,同年4月16日には,Fに対し,原告と瑞穂との間の本件土地の売買契約が原告の債務不履行により解除されたという虚偽の事実を伝えている。
Bのこうした交渉への関与は,Fにおいて,BをWBIの担当者であると認識し,陳述書(丁3)にその旨記載するほどであった。
Bの上記行為は,原告のWBIに対する本件地位譲渡契約に基づく本件地位等の引渡請求権及び瑞穂に対する本件土地の売買契約に基づく本件土地の引渡請求権を故意に侵害するものであり,原告に対する不法行為を構成する。
イ 被告の主張に対する反論
被告は,Bには故意・過失がなかった旨主張するが,次のとおり,Bに故意があったことは明らかである。
(ア) Bが原告の利益のためにWBIとサンエジソンの協議に参加した旨の主張は不合理であること
原告は,平成26年8月20日付けで,WBIとの間で本件地位譲渡契約を締結し,瑞穂との間で本件土地の売買契約を締結していたから,今更,他の投資家の動向を知ることに何の意味もなかった。
Bの行為は,原告の利益ではなく,被告及びBの利益のために行われたものである。匿名組合契約による資金調達をAに対して提案したのはBであるが,Bは,被告を介して個人的にも儲けを得たいと考えていたことから,そのような提案をしたのである。
(イ) Aの指示はなかったこと
Aは,Bに対し,WBI及び瑞穂による本件土地及び本件地位の売却活動をサポートするように命じたことはない。
被告がAから指示を受けた根拠として指摘するメール(戊22)は,本件匿名組合契約に基づく本件匿名組合員ら4名に対する匿名組合員配当を行う義務(本件収益分配義務)を放棄したり,Bに対してWBI及び瑞穂が第三者へ本件土地及び本件地位を譲渡することをサポートするように命じたりするような内容ではない。
Bは,Aに対し,WBIとサンエジソンとの交渉の状況を正確に報告していなかった。かえって,Bは,Aに対し,ソラリアント・ジャパンの一員としてWBIと交渉しているかのような報告を行っていた。以上の事実は,Bの行為がAの指示によるものではなかったことを裏付けるものである。
したがって,Aは,当時,Bの深い関与の下,WBI及び瑞穂とサンエジソンとの間で,本件発電事業の売却に関する交渉が進められていることを知らなかった。
(ウ) Bには動機があったこと
WBIは,被告を含む本件匿名組合員ら4名に対し,平成27年4月30日付けで,1億6250万円を支払った。
また,WBIと本件匿名組合員ら4名は,同年6月18日付けで,本件発電事業が建築準備完了の状況になり,サンエジソンからWBIに対して追加の支払がされた場合には,WBIは,本件匿名組合員ら4名に対し,WBIがサンエジソンからの支払を受領してから5営業日以内に,追加で9750万円を支払う旨の合意をした。
すなわち,Bには,被告の代表者として,本件匿名組合員ら4名において,WBIから,本件匿名組合契約に基づく出資の回収として合計2億6000万円の支払を受けるために行動する動機があった。
(被告の主張)
ア WBIサイドレター及びTKサイドレターを合わせると,被告を含む本件匿名組合員ら4名と原告との間では,次のような取り決めがされていた。
(ア) 本件匿名組合員ら4名は,原告に対し,合計1億3000万円の出資をする。これに対するリターンを確保するための手段は,次の3段階となっている。
(イ) 第1段階として,原告は,本件発電事業による収益が上がった場合には,平成26年12月31日までに,本件匿名組合員ら4名に対し,2億6000万円の匿名組合員配当義務を負う。
(ウ) 上記(イ)が実現できない場合には,第2段階として,原告は,平成27年3月1日までに,WBIに対して2億6000万円の資金拠出を願い出て,その資金をもって本件匿名組合員ら4名に対して同額の支払をする。なお,これが行われた場合,WBIは,見返りとして,原告の持分をソラリアント・インクから1円で譲り受ける。
(エ) さらに,WBIからの資金拠出も得られなかった場合には,第3段階として,本件匿名組合員ら4名は,原告の持分をソラリアント・インクから1円で譲り受ける。
イ 原告は,本件匿名組合契約の事業終了日(平成26年12月31日)が経過しても,本件匿名組合員ら4名に対して匿名組合員配当を行う義務を履行せず,その後の60日の間に,上記アの手続もとらなかった。そして,Aは,平成27年2月2日,Bに対し,「WBIが我々を排除した。匿名組合投資家は,ソラリアントを含まないWBIとの契約を結んでいる。どうしてソラリアントに責任があるのか。ソラリアントではなく,WBIにこそ責任がある。」とのメール(戊22)を送信し,本件匿名組合員ら4名に対する債務を履行するつもりがないことを伝えてきた。そのため,Bは,WBIから他の投資家に対して本件地位と本件土地を売却させることによって,WBIから原告への2億6000万円の資金援助を実現させ,それを本件匿名組合員ら4名への匿名組合員配当に回すように努力をする必要に迫られた。
BがWBIとサンエジソンとの交渉に参加していたのは,①第一次的には,ソラリアント・ジャパンの従業員として情報収集を行い,その情報を参考にして,原告をして,競争相手よりわずかに高い価格で本件地位と本件土地を獲得させるためであり,②第二次的には,原告が本件地位と本件土地を取得しない場合には,第三者にこれらを取得させ,その転売益をWBIにもたらすことによって,WBIの原告に対するWBIサイドレター及びTKサイドレターに基づく資金提供を可能とし,ひいては原告の本件匿名組合員ら4名への匿名組合員配当を可能にするためであった。
すなわち,Bとしては,Aが責任放棄をした結果として,このような動きをしなければならなくなったのであって,裏返せば,Aの指示に基づき,このような動きをしたにすぎず,BはAに対して交渉状況を逐一報告していたのであるから,Bの行為は,違法性が阻却され,不法行為には当たらない。少なくとも,Bには原告の権利を侵害する故意又は過失がないというべきである。
(4)  争点(4)(被告は,Bの行為について,会社法350条又は民法709条に基づく損害賠償責任を負うか。)について
(原告の主張)
ア 株式会社は,その代表者が「その職務を行うについて」第三者に損害を加えたときは,会社法350条に基づき,第三者に対し,その損害を賠償する責任を負うところ,「その職務を行うについて」とは,当該株式会社の本来の業務の範囲に属する行為に加えて,「外形上,職務に属する行為」や「職務執行と社会通念上適当な牽連関係に立つ行為」も含むと解されており,これに当たるか否かを判断するに当たっては,外形的・客観的に判断すべきである。
①Bの一連の行為は,B個人ではなく,被告が,原告から本件匿名組合契約に基づく出資を回収することを目的としていたこと,②WBIは,平成27年6月1日,B個人ではなく被告との間で業務委託基本契約を締結し(甲71),太陽光発電事業開発に関する企画業務等を委託し,Bは,被告の代表取締役として通訳及び翻訳の業務に従事していたことに照らすと,Bの行為は,被告の「職務を行うについて」行われたことは明らかである。したがって,被告は,原告に対し,Bの一連の行為により原告が被った損害について,会社法350条に基づき,損害賠償責任を負う。
イ 上記①②によれば,Bの一連の行為は,Bが被告の代表取締役の業務として行った行為である。したがって,被告は,原告に対し,民法709条に基づき,損害賠償責任を負う。
(被告の主張)
争う。
Bと被告は別人格であり,Bの行為が違法であったとしても,被告が当然に不法行為責任を負うものではない。
(5)  争点(5)(原告に損害が発生したこと及びその額)について
(原告の主張)
ア 原告は,Bの不法行為により,本件土地において本件発電事業を行うことができなくなるという損害を被った。その損害の額は,次のとおり,143億0273万8576円である。
イ 原告は,本件発電事業によって,143億0273万8576円の収益を得ることが見込まれていたところ,被告の債務不履行及び不法行為によって上記収益の実現が妨げられ,同額の損害を被った。
上記収益は,本件発電事業においてプロジェクト開始前に想定されていた稼働後20年間の総売上金額(420億1143万0498円)から,本件発電事業を開始するために必要となると見込まれていた初期投資総額(178億3775万7397円)及び稼働後20年間に必要となると見込まれていた運営維持費(99億7093万4525円)を控除することにより算出されたものであり,その算定の基礎及び原告が損害を被るに至った因果の過程には「特別の事情」(民法416条2項)は含まれていない。したがって,上記収益は通常損害であって,被告の予見可能性の有無は問題とならない。
また,被告の代表者であるBは,平成27年3月17日,サンエジソンの担当者であるFに対して送信した電子メールの中で,本件発電事業の基準譲渡価格が171億1200万円であることを前提として,本件発電事業を第三者に譲渡した場合に得られる事業開発報酬の分配方法について説明していたことからすれば,被告は,債務不履行及び不法行為の当時,本件発電事業の市場価値が171億1200万円を下らないことを認識していたといえる。
(被告の主張)
否認ないし争う。
原告は,本件発電事業の売却により事業開発報酬を得ることを目的としていたのであるから,原告の被る損害の範囲は,売却益である29億1355万7222円に限定される。
なお,本件発電事業による原告の収益として143億0273万8576円が見込まれていたことは認める。しかし,この損害は逸失利益であり,その発生が確実とはいえないから,いわゆる特別損害(民法416条2項)に当たるところ,被告は,上記損害の発生を予見していなかった。
(6)  争点(6)(原告が被告の責任を追及することは信義則に違反するか。)について
(被告の主張)
原告は,本件匿名組合契約15条1項に基づき,サイドレターに定められた手続を踏んで,本件匿名組合契約の事業終了日(平成26年12月31日)から60日の間に,本件匿名組合員ら4名に対して匿名組合員配当を行う義務(本件収益分配義務)を負っていた。
しかしながら,原告は,本件匿名組合契約の事業期間終了後,本件組合員ら4名が原告及びソラリアント・インクに対して3回にわたり通知書を送り,匿名組合員配当の履行を催告したにもかかわらず,平成27年6月8日に突然,本件匿名組合員ら4名に対して本件匿名組合契約を解除する旨の通知書を送ってくるまで,何らの回答もせず,その上,今日に至るまで,本件匿名組合員ら4名に対する匿名組合員配当を行っていない。そのような原告が,被告に対し,本件匿名組合員ら4名への匿名組合員配当を実現するために行われた行為の責任を追及することは,信義則(民法1条2項)に反し,許されない。
(原告の主張)
本件匿名組合契約15条1項に基づく収益分配義務は,本件匿名組合事業から収益が生じた場合にのみ発生するものである。本件匿名組合契約における金銭の分配が,事業から収益が生じたか否かにかかわらず行われることを合意した規定であるとすれば,そのような規定は公序良俗に反し無効になってしまうからである。そのことは,本件匿名組合契約締結前である平成26年8月19日に弁護士からアドバイスを受けて,AもBもよく理解していたから,当初から法的に無効となるような内容の合意をする意思はなかった。
そして,本件匿名組合事業から何らの収益も生じなかった結果,原告には,本件匿名組合契約15条1項に基づく収益分配義務は生じなかったのであるから,原告に債務不履行はない。
したがって,被告の信義則違反の主張は,その前提を欠き,失当である。
(7)  争点(7)(過失相殺)について
(被告の主張)
被告がWBIから第三者への本件発電事業の売却を図ったのは,原告が本件匿名組合員ら4名に対する匿名組合員配当を行う義務(本件収益分配義務)を果たさないという債務不履行を行った結果,本件匿名組合員ら4名への匿名組合員配当を行うことができなくなるおそれが生じ,被告において,この事態を打開する必要が生じたからである。
すなわち,仮に被告に不法行為があったとしても,それは,原告の債務不履行により惹起されたものであるから,過失相殺がされるべきである。
(原告の主張)
争点(6)について主張したとおり,原告には,被告の主張する債務不履行はない。
したがって,被告による過失相殺の主張は,前提を欠き,失当である。
第3  当裁判所の判断
1  認定事実
前記前提事実に加え,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によると,以下の各事実が認められる。
(1)  原告の設立前後の経過
ア WBIによる瑞穂の株式の取得
(ア) WBIは,瑞穂が所有する本件土地において太陽光発電事業(本件発電事業)を行うために必要な許認可等を取得した上で,同事業を売却する目的で,平成25年12月18日,TPLJ社との間で,「売渡し確認書」を交わし,以下の約定でTPLJ社が保有する瑞穂の発行済み全株式を代金7億5000万円で買い受ける旨の契約(本件瑞穂株式譲渡契約)を締結した。
a WBIは,TPLJ社に対し,平成26年1月6日のデューディリジェンス着手までに,第1回目の証拠金として1000万円を支払う。
b WBIは,TPLJ社に対し,平成26年1月31日午後5時までに,デューディリジェンスの結果による購入の意向を伝え,取引に進む場合は,第2回目の証拠金として2000万円を支払う。
c bで取引に進んだ場合,第1回目の証拠金と第2回目の証拠金は,理由の如何を問わず,WBIに対して返還されない。
d WBIは,bで取引に進んだ場合,平成26年2月28日午後12時(クロージング日)までに残代金7億2000万円を支払い,取引を完了させる。その際,第1回目の証拠金及び第2回目の証拠金は,代金に充当される。
e クロージング日までに残代金の支払がされず,取引を完了することができなかった場合,その時点で,本件取引は直ちに終了する。
(前記前提事実(3)ア,乙1)
(イ) WBIは,平成26年1月6日,TPLJ社に対し,第1回目の証拠金1000万円を支払った。
WBIは,事業パートナーを選定することによって株式譲渡代金の支払原資を調達することを考え,瑞穂の発行済み全株式を取得するための交渉と平行して,複数の事業パートナー候補者と接触していたが,その選定が思うように進まず,同月31日に支払うこととされていた第2回目の証拠金2000万円を支払うことができなかった。そこで,WBIは,同日,TPLJ社との間で,「『売渡し確認書』変更に関わる覚書」を交わし,第2回目の証拠金の弁済期を平成26年3月31日に延期するとともに,クロージング日を同年6月30日午後12時に延期することを合意した。
(前記前提事実(3)ア,乙2)
(ウ) WBIは,TPLJ社に対し,第2回目の証拠金2000万円を,手元資金から分割で支払ったが,株式譲渡代金の残金については,平成26年6月30日までに全額を用意することができなかった。
(弁論の全趣旨)
(エ) WBIは,平成26年6月頃から,事業パートナー候補者として,ソラリアント・ジャパンの関係者との間で,本件発電事業に関する打ち合わせを開始した。
(前記前提事実(3)イ)
イ Bのソラリアント・ジャパンへの就職
Bは,Aに誘われて,平成26年6月1日にソラリアント・ジャパンに就職し,平成27年5月末までソラリアント・ジャパンのプロジェクト開発本部長を務めた。Bは,ソラリアント・ジャパンにおいて,本件発電事業だけではなく,バイオマス発電や他の太陽光発電事業等の4,5件のプロジェクトの組成に向けた営業活動を担当していた。
Bは,本件発電事業について,ソラリアント・ジャパンの担当者として,Aと連絡を取りながら,種々の業務を遂行した。平成26年8月12日に原告が設立された後の本件発電事業におけるBの役割は,プロジェクトの関係者である原告及びWBIとの連絡を取ること,原告の資金調達を支援すること並びに投資家との連絡,報告及び交渉を行うこと等であった。
(前記前提事実(3)ウ,エ)
ウ 原告の設立
(ア) 原告は,平成26年8月12日,本件発電事業者となることを企図して,ソラリアント・インクによって設立された。
(前記前提事実(3)エ)
(イ) 原告は,本件発電事業者となるために必要な資金を調達するため,GSSG Solar社(以下「GSSG社」という。)及びFirst Reserve社(以下「ファーストリザーブ社」という。)との間で交渉を行ったが,契約締結には至っていなかった。
(争いがない。)
(ウ) Bは,平成26年8月18日以降,Aとの間でつなぎ融資に関するメールのやり取りをして,Dをつなぎ融資に関するソラリアント・ジャパンのアドバイザーとして関与させることを決め,匿名組合契約を用いたつなぎ融資のスキームについて検討を進めた。
(甲73の1~76の2,79の1~86の2)
(2)  原告が本件発電事業を行うために必要な契約の締結
ア 原告とWBIとの間の本件地位譲渡契約の締結
原告及びWBIは,平成26年8月20日,WBIが取得した本件地位を代金5億5000万円で原告に対して譲渡し,原告はこれを譲り受ける旨の契約(本件地位譲渡契約)を締結した。
本件地位譲渡契約には,次の約定が含まれていた。
(ア) 原告は,WBIに対し,上記代金を後記イの土地売買契約に定めるクロージング日に支払う(2条2項)。
(イ) 原告は,WBIに対し,平成26年8月29日までに手付金として1億3000万円を支払う。手付金は,上記代金の一部とする。(2条3項)
(ウ) 本件地位は,WBIが原告から手付金を受領したときに,WBIから原告に移転する(2条4項)。
(エ) 後記イの本件土地の売買契約に基づくクロージング日が到来しない場合には,原告は,本件地位譲渡契約を解除することができる(4条(4))。
(前記前提事実(4)ア)
イ 原告と瑞穂との間の本件土地売買契約書
原告と瑞穂との間には,瑞穂が原告に対して本件土地を代金7億5000万円で売却する旨の平成26年8月20日付け不動産売買契約書(本件土地売買契約書)が存在する。
本件土地売買契約書には,次の約定の記載がある。
(ア) クロージング日(取引実行日)は,原告が本件発電事業を実施するために必要なあらゆる許認可等の取得及び資金の調達(5条(6))等,5条に規定する全ての前提条件が成就した日又は平成26年9月30日のいずれか遅い方の日とする(3条1項)。
(イ) 原告は,瑞穂に対し,5条に規定する全ての前提条件が成就することを条件として,クロージング日において,売買代金を支払う。本件土地の所有権は,売買代金の全額が支払われたときに,瑞穂から原告に移転する。(4条1項,2項)
(ウ) 瑞穂は,本契約締結日からクロージング日までの間,本件土地の売却若しくは賃貸借又は本件土地において発電事業を行うことに関して,第三者と直接または間接に交渉を行わないことを誓約する(3条4項)。
(前記前提事実(4)イ)
(3)  本件匿名組合契約の締結による資金調達
ア 本件匿名組合契約の締結
原告は,平成26年9月1日,被告を含む本件匿名組合員ら4名との間で,次の約定を含む本件匿名組合契約を締結した。被告の出資額は5000万円であり,訴外匿名組合員らの出資額の合計は8000万円であり,原告が本件匿名組合契約により調達することができた資金は総合計1億3000万円であった。
(ア) 匿名組合員は,営業者に対し,営業者が本件地位譲渡契約及び本件土地の売買契約等に基づく権利の行使と義務の履行並びにWBIが保有する太陽光発電事業者としての権利義務・地位の取得及び管理等を含む事業(本件匿名組合事業)を遂行するために出資し,営業者は,本件匿名組合事業から生じた利益及び損失を,想定分配額に至るまで,出資割合に従って,匿名組合員に分配する(2条1項)。
(イ) 事業期間は,事業開始日(本契約締結日)から事業終了日(平成26年12月31日)までの期間である(1条,3条)。
(ウ) 匿名組合員は,事業期間の開始日以前に,営業者に対して出資する(4条)。
(エ) 本契約は,事業終了日が経過したとき,直ちに終了する(14条1項(1))。
(オ) 本契約の終了日に,営業者は,匿名組合員に対し,本契約の終了後60日以内に,出資持分に想定分配額を加えた金額を支払う義務を負う(15条1項)。出資持分とは,匿名組合員によって拠出された出資金額であり,想定分配額とは,1億3000万円に出資割合(全匿名組合員によって拠出される出資金総額に対する当該匿名組合員が拠出した出資金額の割合)を乗じたものである。
(前記前提事実(5)ア,イ)
イ WBIサイドレター
原告,ソラリアント・インク及びWBIは,本件匿名組合契約が締結された平成26年9月1日,以下の内容を含むWBIサイドレターを交わした。
(ア) 原告は,本件匿名組合契約15条1項に基づき,平成26年12月31日(匿名組合配当日)に合計2億6000万円の配当(匿名組合員配当)を行わなければならないところ(本件収益分配義務),WBIは,原告が匿名組合配当日までに匿名組合員配当を行わない又は行うことができないときには,匿名組合配当日から60日以内に,2億6000万円を原告に提供することを合意する。
(イ) 原告は,上記(ア)に基づいてWBIから資金を得た後,速やかに匿名組合員配当を行う。
(ウ) ソラリアント・インクは,WBIが上記(ア)に基づいて資金の提供を行い,かつ,原告が上記(イ)に基づいて匿名組合員配当を行った後,WBIに対し,原告の持分の全てを,ソラリアント・インクによる請求権なく,対価1円で譲渡することに同意する。
(前記前提事実(5)ウ)
ウ TKサイドレター
原告,ソラリアント・インク及び被告を含む本件匿名組合員ら4名は,平成26年9月1日,以下の内容を含むTKサイドレターを交わした。
(ア) ソラリアント・インク及び原告は,原告が匿名組合配当日までに匿名組合員配当を行わない又は行うことができないときには,速やかにWBIに通知し,WBIに対し,WBIサイドレターに従って2億6000万円を原告に提供することを請求する。
(イ) 原告は,WBIサイドレターに基づいてWBIから資金を得た後,速やかに匿名組合員配当を行う。
(ウ) ソラリアント・インクは,原告が匿名組合配当日から60日以内に匿名組合員配当全額を支払うことができない場合には,本件匿名組合員ら4名の多数によって指名された者に対して,原告の持分全てを,何らの請求権も残さずに1円で譲渡することに同意する。
(前記前提事実(5)エ)
(4)  本件匿名組合契約に基づく出資による本件地位譲渡契約の手付金の支払
ア 原告は,WBIに対し,平成26年9月12日までに,本件匿名組合員ら4名に出資金を直接WBI名義の口座に振り込ませることによって,本件地位譲渡契約に基づく手付金1億3000万円を支払った。
(前記前提事実(6)ア)
イ 原告は,これ以降,WBIに対し,本件地位譲渡契約に基づく残代金を支払っておらず,また,瑞穂に対し,本件土地売買契約書上の売買代金を支払っていない。
さらに,平成26年12月31日(匿名組合配当日)は経過したが,原告は,被告を含む本件匿名組合員ら4名に対し,本件匿名組合員配当を行っていない。
(前記前提事実(6)イ)
(5)  原告とWBIの関係の悪化
ア WBI,瑞穂及びTPLJ社は,平成26年8月20日,本件瑞穂株式譲渡契約について,クロージング日(残代金支払期限)を平成26年9月30日に変更する旨を合意した。この際,本件瑞穂株式譲渡契約における代金7億5000万の内訳について,株式譲渡代金が6億円であり,瑞穂における保有労働債務,債務清算,未払金清算のための支払が1億5000万円である旨が明確にされた。
(前記前提事実(4)ウ,乙3,4)
イ WBIは,原告から本件地位譲渡契約に基づく手付金の支払を受けた平成26年9月12日,TPLJ社に対し,本件瑞穂株式譲渡契約に基づく株式譲渡代金の一部として,5000万円を支払った。
(乙5)
ウ ソラリアント・ジャパンは,平成26年9月16日頃から同月27日頃にかけて,法務デューディリジェンスを依頼したa法律事務所の弁護士らを介して,WBIとの間で,必要な資料のやり取りを行った。
WBIは,この時点で,本件発電事業に必要な許認可等の取得を終えていなかった。
(甲48の1,48の2)
エ Aは,平成26年9月22日頃,TPLJ社に対し,①原告とGSSG社及びファーストリザーブ社との間の最終的な譲渡契約の調印を同年10月24日に行い,同月31日までに支払を受けることを達成すべく進めていること,②そのためには,開発及び工事の許認可の取得等を確認し,完了する必要があることを説明した。
(乙6の1,6の2)
オ 上記エを受けて,WBIは,平成26年10月27日,TPLJ社及び瑞穂との間で,「決済延期等にかかる変更契約書」を交わし,本件瑞穂株式譲渡契約のクロージング日(残代金支払期限)を同年9月30日から同年10月末日に変更する旨の合意をした。
WBI及びTPLJ社は,同年10月27日,覚書を交わし,①同月末日をもってTPLJ社がWBIから受領済みの8000万円のうち3000万円を違約金として没収することを条件に,本件瑞穂株式譲渡契約のクロージング日(残代金支払期限)を同年11月末日まで猶予すること,②同年11月末日までに残代金が支払われなかった場合には,本件瑞穂株式譲渡契約は自動的に失効し,TPLJ社は残りの5000万円を違約金として没収することを合意した。
(乙7,8)
カ Bは,平成26年11月6日,ソラリアント・ジャパンのプロジェクト開発本部長として,WBIが島根県邑南町の副町長らとの間で行った土地利用調整会議に出席した。
(甲23)
キ WBIのHは,平成26年12月3日,Aに対し,①原告が未だに本件土地の売買代金及び本件地位の譲渡代金を支払っていないこと,②WBIは,本件発電事業に関して多くの費用を立て替えていることもあり,原告を真の事業パートナーとして考えることが難しくなっていること,③同月末日までに本件地位の譲渡代金の支払をしてもらいたいことを内容とするメールを送信した。
(乙9の1,9の2,丁4の2)
ク Aは,平成26年12月4日,WBIのHに対し,①もともと,電力会社の承認や通行権の取得,許認可等の取得が原告と瑞穂との間の本件土地の売買契約のクロージングの前提条件であったこと,②これらは,GSGG社及びファーストリザーブ社の提示する条件であり,このような条件を課すことは,太陽光発電事業に投資する投資家として通常であること,③これらの条件のうち一部は,既に満たされているが,まだ満たされていないものもあり,ソラリアント・インクとしては,GSGG社及びファーストリザーブ社に対し,そのうちいくつかを放棄してくれるよう懸命に交渉に努めていること,④条件が満たされるまでにはまだ時間がかかるが,条件が満たされる限り,必ずファイナンスが付くので安心してほしいことを内容とするメールを送信した。
(甲33の1,33の2)
ケ WBIは,島根県土地利用対策要綱8条3項の規定に基づき,平成26年12月4日付けで,島根県知事から,開発協議通知書により,開発事業を実施するに当たって必要となる法令に基づく手続その他遵守すべき指導事項等の通知を受けた。
(甲11,19,22)
コ WBIのHは,平成26年12月5日,Aに対し,清水建設株式会社から求められている与信審査のためにGSSG社に会う予定であることを内容とするメールを送信した。
(甲34の1,34の2)
サ WBIは,平成26年12月24日,TPLJ社との間で,覚書を交わし,①同月1日付けで,TPLJ社がWBIから受領している8000万円を違約金として没収すること,②WBIは,TPLJ社との間で新たに瑞穂株式の譲渡契約を締結する場合は,証拠金として1000万円を同月30日までに支払い,株式譲渡代金の残金7億4000万円については平成27年1月末日までに支払うことを合意した。
(乙10)
シ ソラリアント・ジャパンは,平成26年12月27日付けで,a法律事務所から,本件発電事業に参加することの可否を評価するために実施された法務デュー・ディリジェンスの結果を記載したレポートを受領した。
(甲32の1,32の2)
ス WBIは,平成26年12月30日,TPLJ社に対し,上記サ②に基づき,証拠金として1000万円を支払った。
(乙11)
セ 原告は,平成26年12月末日になっても,WBIに対し,本件地位譲渡契約に基づく残代金の支払をしなかった。
(争いがない。)
ソ Bは,平成27年2月1日,Aに対し,訴外匿名組合員らにおいて,①GSSG社との取引がうまく行かない理由は何か,②匿名組合配当日が過ぎても,Aから匿名組合員配当について返答がないのはなぜか等について回答を待っているとの内容のメールを送信した。
これに対し,Aは,同月2日,「WBIが我々を排除した。匿名組合投資家は,ソラリアントを含まないWBIとの契約を結んでいる。どうしてソラリアントに責任があるのか。ソラリアントではなく,WBIにこそ責任がある。」との内容のメールを送信した。
(乙25,戊22)
タ WBIは,平成27年2月3日,TPLJ社との間で,覚書を交わし,①WBIは,TPLJ社との間で新たに瑞穂株式の譲渡契約を締結する場合は,証拠金として1000万円を同年2月6日までに支払うこと,②WBIはTPLJ社に対し,平成26年12月30日に預けた証拠金1000万円及び上記①の証拠金を株式譲渡代金から控除した残金7億3000万円を平成27年3月末日までに支払うこと,③同日までに決済が実行されない場合は,株式譲渡契約は自動的に失効し,証拠金2000万円はTPLJ社が違約金として没収することを合意した。
(乙11)
チ 被告を含む本件匿名組合員ら4名は,平成27年3月3日,原告に対し,本件匿名組合契約に基づく匿名組合員配当が同年2月28日までに行われなかったことを通知し,匿名組合員配当を行うよう求める旨の書面を送付した。
(戊9の1,9の2)
ツ Aは,平成27年3月3日,WBIのHに対し,「昨年GSSGが約束通りに資金提供してゴルフ場の買収が出来なかったことは,残念です。またそのことを理由としてH様が問題に直面されたことについてお詫び申し上げます。我々の関係が現在の状態に陥ってしまったことにつき昨年の時点で誤解があったのではないかと思っております。」「昨日,我々の提案がH様には応諾頂けないものだという連絡が弊社のBからありました。」と述べるとともに,①ドイツの開発ファンドが拠出する3億円で,WBIに1億円を支払い,2億円で本件匿名組合員ら4名の持分を購入すること,②高い信用力のある国内ファンドマネジメント会社が瑞穂に対して平成27年3月末までにゴルフ場買収のために7億5000万円を支払うこと等を提案する内容のメールを送信した。
(乙13)
テ WBIは,平成27年3月31日,TPLJ社との間で,覚書を交わし,①WBIは,TPLJ社との間で新たに瑞穂株式の譲渡契約を締結する場合は,証拠金として1000万円を同日までに支払うこと,②WBIはTPLJ社に対し,平成26年12月30日に預けた証拠金1000万円,平成27年2月6日に預けた証拠金1000万円及び上記①の証拠金を株式譲渡代金から控除した残金7億2000万円を平成27年4月末日までに支払うこと,③同日までに決済が実行されない場合は,株式譲渡契約は自動的に失効し,証拠金3000万円はTPLJ社が違約金として没収することを合意した。
(乙12)
(6)  WBIとサンエジソンとの交渉及びBの関与
ア WBIは,平成27年6月15日の時点でも,島根県知事に対し,本件発電事業に関する着工届をまだ提出しておらず,本件発電事業に必要な許認可等を全て取得するには至っていなかった。
(甲19)
イ WBIは,本件発電事業に必要な許認可等を全て取得するに至っていなかったため,原告から本件地位譲渡契約の残代金の支払を受けられないことから,平成27年2月頃から,サンエジソンとの間で本件発電事業の譲渡について交渉を開始した。
(甲69,70,丁2,弁論の全趣旨)
ウ b法律事務所は,平成27年3月27日付けで,サンエジソンの親会社であるテラフォーム・パワー社に対し,本件発電事業の取得に関して行った法務デュー・ディリジェンスの結果をまとめた報告書を提出した。
(丁1)
エ Bは,平成27年3月16日頃から同年4月21日にかけて,WBIとサンエジソンとの間で行われたサンエジソンによる本件発電事業の買収に関する交渉に関与した。
具体的には,Bは,サンエジソンの担当者であるFとの間で,サンエジソンによる本件発電事業の買収に関して,ミーティングを行ったり,メールのやり取りをして細かい条件を詰めたりしたほか,瑞穂のナトスに対する土地の売却に関する契約書についてドラフトをメールで送付し合う等した。
Bは,WBI側の窓口の立場として交渉に関与し,Fとのやり取りをWBI側に転送したり,WBI内部の電話会議に参加して,その結果として出たWBIとしての見解をFに伝えたりした。Bは,Fに対し,同年4月16日には,瑞穂は,瑞穂と原告との間の本件土地の売買契約は原告の債務不履行により解除されたと考えている旨を伝えた。
(甲52~60,丁2~4の1)
オ 他方,Bは,Aに対しては,平成27年4月6日,「今朝,WBIのHさん,Iさん及びJさんに会いました。」「林地開発申請は,4月15日までに提出されます。道路使用許可申請は,4月の終わりまでに提出することを目標にしていますが,県が未だ,ルート上にある橋に関する建築デザインを探しているため,5月になるかもしれません。」「他の潜在的な買い手に関しては,(中略)サンエジソンは,手続きにのっているかもしれませんが,系統連係のタイミング,費用及び付随する開発リスクに対して,いくつかの疑念を持っているようです。」「私は,Kさん及びHさんと,現状を確認するためにミーティングを開きたいと思っています。」との内容のメールを送信した。
また,Bは,同月10日,Aに対し,「WBIが,林地開発及び道路使用許可申請について,現地のコンサルタントに手こずっているようです。」「実際に,今月までに林地開発及び道路使用許可申請が完了しないという懸念があり(WBIは,4月15日までとするのを目標にしていた),この点が主な焦点になっています。前回のアップデートでも述べた通り,サンエジソンだけが未だに,WBIに対して今月融資できると話しています。」との内容のメールを送信した。
(甲77の1~78の2)
(7)  サンエジソンによる本件発電事業の買収及びその後の経過
ア WBIは,平成27年4月21日,サンエジソンとの間で,社員持分譲渡契約を締結し,本件発電事業に関するプロジェクト合同会社の社員持分をサンエジソンに対して譲渡することによって,サンエジソンに対して本件地位を譲渡した。
上記社員持分譲渡契約に係る契約書には,WBIが,原告と瑞穂との間で締結された平成26年8月20日付け土地売買契約及び原告とWBIとの間で締結された同日付け本件地位譲渡契約は既に解約されていることを表明及び保証する旨が記載されている。
(丁5)
イ 瑞穂は,平成27年4月28日,ナトスに対し,本件土地のうち,本件移転済み土地を売却し,同日,ナトスへの所有権移転登記を完了した。
本件移転済み土地は,本件土地の一部であるが,本件発電事業用地の主たる部分であって,本件移転済み土地がなければ,本件発電事業を実施することはできない。
(前記前提事実(7)イ,甲16の1~16の18,28)
ウ 平成27年4月当時の瑞穂の取締役は,同月30日付で全員辞任し,新しく3名の取締役が選任された。新しい取締役のうち,2名はWBIの取締役であり,残る1名は本件発電事業のWBIにおける担当者であった。これに伴い,WBIと瑞穂の代表取締役は,同一人となった。
(甲2,3)
エ WBIは,平成27年4月30日,被告を含む本件匿名組合員ら4名に対し,本件匿名組合契約に基づく出資金額の合計である1億3000万円に25%を上乗せした合計1億6250万円を支払った。
(甲87の1,87の2)
オ 原告は,平成27年5月26日付けで,WBIに対し,本件地位譲渡契約を履行すること及び瑞穂に本件土地の売買契約を履行させることを求める通知をした。
(甲17)
カ Bは,平成27年5月31日,ソラリアント・ジャパンを退職した。
(争いがない。)
キ Bがソラリアント・ジャパンを退職した日の翌日である平成27年6月1日,被告は,WBIとの間で,WBIから太陽光発電事業開発に係る企画業務,技術的検証業務等を受託する旨の業務委託基本契約を締結し,Bは,同日以降,WBIの「プロジェクト推進ゼネラルマネージャー」の肩書の下,通訳及び翻訳の業務を行うようになった。
(甲69~71)
ク WBI及び被告を含む本件匿名組合員ら4名は,平成27年6月18日,本件発電事業が建築準備完了の状況になり,サンエジソンからWBIに対して開発報酬が支払われた場合には,WBIがサンエジソンからの開発報酬を受領してから5営業日以内に,WBIから本件匿名組合員ら4名に対し,本件匿名組合契約に基づく出資金総額1億3000万円の75%に当たる9750万円を追加で支払う旨の合意をした。本件匿名組合員ら4名は,この際,追加の支払を受けることと引換えに,ソラリアント・インクから原告の持分の譲渡を受ける者を被告と指定し,被告は,当該持分を取得した後直ちに,WBIに対して当該持分を譲渡するために必要な書類を整えることを約した。また,WBIと本件匿名組合員ら4名は,これらの合意につき第三者に開示しないことに同意した。
(甲87の1,87の2)
ケ 原告は,WBIに対し,平成28年6月2日,瑞穂がナトスに対して本件移転済み土地を売却し,所有権移転登記を行ったことにより,本件土地の売買契約のクロージング日が到来しないことが確定し,そのことは本件地位譲渡契約の解除事由に当たるとして,本件地位譲渡契約を解除する旨の通知をした。
(甲49~51)
2  争点(1)(原告は,瑞穂との間で,本件土地の売買契約を締結したか。)について
(1)  認定事実
前記前提事実及び前記1で認定した事実に加え,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によると,以下の各事実が認められる。
ア WBIのHは,A及びBに対し,平成26年8月25日午前,原告及び瑞穂名義の押印のある本件土地売買契約書をスキャナで電子データ化した電子ファイルを添付して,「○○プロジェクトの不動産契約書送信いたします。」と記載した電子メールを送信した。この電子メールは,情報共有のため,瑞穂の取締役であるGにも送信された。
(甲2,29,30)
イ 本件匿名組合契約における本件匿名組合事業には,本件土地の売買契約に基づく権利の行使と義務の履行が含まれており(前記1(3)ア(ア)),本件匿名組合契約は,原告と瑞穂との間で本件土地の売買契約が締結されたことを前提とした内容になっている。
ウ B及びGは,いずれも,本件訴えの提起前は,原告と瑞穂との間の本件土地の売買契約の有効性について疑義を述べたことがなかった。
(弁論の全趣旨)
(2)  検討
前記(1)で認定した事実からすれば,原告と瑞穂との間で本件土地の売買契約が締結されたことを認めることができる。
これに対し,被告は,原告と瑞穂との間の本件土地売買契約書はWBIが瑞穂の印影を冒用して偽造したものであると主張する。しかしながら,WBIが偽造をした事実を窺わせる証拠はなく,むしろ,交渉過程においては,前記(1)アのように,瑞穂の取締役であるGも含めて,本件土地売買契約書に関するメールのやりとりがされていること(甲29,30,42~43の2)からすれば,原告と瑞穂との間に本件土地の売買契約が存在しなかったと解することはできないのであって,被告の主張は採用することができない。
3  争点(3)(被告の代表者であるBの行為は,原告に対する不法行為を構成するか。)について
便宜上,争点(2)をひとまず措き,争点(3)から判断することとする。
(1)  Bによる原告の権利侵害について
前記1で認定したとおり,①Bは,本件発電事業の事業者とするために原告を設立したソラリアント・インクのグループ会社であるソラリアント・ジャパンのプロジェクト開発本部長として本件発電事業に関与していたこと,②原告は,本件発電事業者となるため,平成26年8月20日,WBIとの間で本件地位譲渡契約を締結するとともに,瑞穂との間では本件土地の売買契約を締結したこと,③それにもかかわらず,Bは,平成27年3月16日頃から同年4月21日までにかけて,WBI側の窓口の立場として,サンエジソンの担当者であるFとの間で本件発電事業をサンエジソンに売却する交渉に関与したこと,④その結果,平成27年4月21日には,WBIがサンエジソンに対して本件発電事業に関する合同会社の社員持分権を譲渡することによって本件地位を譲渡し,同月28日には,瑞穂がサンエジソンの関連会社であるナトスに対して本件移転済み土地を売却して所有権移転登記を完了したことが認められる。
Bの上記行為は,本件地位及び本件発電事業用地である本件土地の主たる部分を占める本件移転済み土地について二重譲渡契約を締結させ,ナトスに対する所有権移転登記を完了させることによって,原告のWBIに対する本件地位譲渡契約に基づく一切の債権及び瑞穂に対する売買契約に基づく本件土地の引渡請求権を履行不能とさせたものであり,その結果,原告が本件土地において本件発電事業を行うことを不能とさせたものであって,原告のこれらの権利を侵害する行為であるといえる。
なお,Bは,陳述書(戊16)において,原告は,平成26年12月末までに資金調達を行うことができず,WBIに対して本件地位譲渡契約に基づく残代金の支払ができなかったことから,原告とWBIの間の本件地位譲渡契約は同月末の時点で解除されたと認識していた旨陳述しているが,BがWBIとサンエジソンとの交渉に関与した時点までに,原告及びWBIのいずれからも解除の意思表示がされた事実は認められず,原告のWBIに対する本件地位譲渡契約に基づく債権は有効に存在していたものと認められる。
(2)  Bの故意又は過失について
前記1で認定した事実によれば,①Bは,当初はソラリアント・ジャパンのプロジェクト開発本部長としての立場でWBI等との交渉に参加していたのであるから,原告が本件発電事業者となるために設立されたことや,原告が平成26年8月20日にWBIとの間で本件地位譲渡契約を締結するとともに瑞穂との間で本件土地の売買契約を締結したことを含め,原告の置かれている状況や利害については熟知していたこと,②Bは,同年9月1日には,自らが代表者を務める被告において,訴外匿名組合員らと共に,原告との間で本件匿名組合契約を締結して資金を提供するなど,原告のWBIに対する本件地位譲渡契約に基づく手付金の支払のための資金調達に協力をしていたことが認められる。
しかし,③Bは,本件匿名組合契約の事業終了日である平成26年12月31日から60日を過ぎても,原告から被告に対して匿名組合員配当が行われなかったことを受けて,平成27年3月3日には,被告の代表者として,訴外匿名組合員らと共に,原告に対して匿名組合員配当を求めるようになったこと,④原告の資金調達が難航したことなどにより,平成26年末頃には原告とWBIの関係が悪化し,WBIが平成27年2月頃からサンエジソンとの間で本件発電事業の譲渡について交渉を開始するようになると,Bは,同年3月16日頃から同年4月21日までにかけて,原告には報告することなく,WBI側の窓口としてサンエジソンとの交渉に関与したこと,⑤しかも,Bは,訴外組合員らと共に,同月30日には,本件匿名組合契約と同時に締結されたWBIサイドレターで定められた原告を経由する形ではなく,WBIから直接,1億6250万円の支払を受け,同年6月18日には,WBIとの間で,第三者に対する守秘条項を付した上で,9750万円の追加支払を受ける旨の合意を締結したこと,⑥Bは,同月1日には,被告の代表者として,原告と紛争関係となったWBIとの間で業務委託基本契約を締結した上で,WBIの「プロジェクト推進ゼネラルマネージャー」の肩書の下,通訳及び翻訳の業務を行うようになったことが認められる。
以上の経緯からすれば,Bは,被告が原告から匿名組合員配当を受けることができなかった平成27年3月以降,原告に本件地位及び本件土地を取得させて本件発電事業を実施させることにより原告から匿名組合員配当を受ける方法ではなく,WBIサイドレターに基づきWBIから匿名組合員配当の原資が提供される枠組みによる出資の回収を優先し,原告を排除する形でWBIから直接匿名組合員配当を受けようとしたものであり,本件地位及び本件土地につき二重譲渡契約を締結させることが原告の本件地位譲渡契約及び本件土地の売買契約に基づく権利を侵害することにつき,故意であったと認められる。B自身も,陳述書(戊16)において,「原告と投資先との交渉がうまく行かなかった場合には,WBIが他の投資先に売却してしまっても,サイドレターに従ってWBIが売却によって得た資金を原告に入れてくれれば,それが匿名組合員に配当されるので,それでも仕方がないと思っていました。」と陳述し,原告による本件発電事業の実施よりも,本件匿名組合員ら4名への匿名組合員配当の確保を優先させたことを認めている。
(3)  被告の主張について
ア これに対し,被告は,まず,Bは,本件匿名組合契約に基づき匿名組合員配当を行う義務を負う原告の利益のために行為していたものであるから,違法性が阻却される旨を主張する。
しかし,本件匿名組合契約において,原告と被告は営業者と匿名組合員の関係にあり,匿名組合員配当を行う場面においては,原告と被告の利益は相反するものである。また,被告は,WBIサイドレターで合意された内容とも異なり,WBIから直接,匿名組合員配当相当額の支払を受けようとしたのであって,被告の代表者でもあるBが,原告の利益のために行為していたとは認められない。
また,Bは,WBI又は瑞穂をして本件地位や本件発電事業に必要不可欠な本件移転済み土地を第三者に売却させることにより,被告に匿名組合員配当を受けさせようとしたものであるところ,原告は,本件発電事業を行うために設立された特別目的会社であることからすれば,本件発電事業に必要不可欠な土地等を第三者に譲渡されてしまうことは,原告の存立目的を脅かすものである。したがって,Bの行為が原告の本件匿名組合契約等に基づく義務を果たすことを目的とするものであったとしても,原告には受け入れられないことであり,ソラリアント・ジャパンのプロジェクト担当者であったBは,当然にこのような事情を認識していたはずである。
以上によれば,被告の上記主張は採用することができない。
イ また,被告は,AがBに対して「どうしてソラリアントに責任があるのか。ソラリアントではなく,WBIにこそ責任がある。」とのメール(戊22)を送信したことを指摘して,BはAからの指示に基づいて行為していたのであるから,違法性が阻却されるとも主張する。
しかし,上記メールの文言及び上記メールは訴外匿名組合員らが匿名組合員配当を求めている旨のBのメールに対する返信であること(前記1(5)ソ)を考慮すると,上記メールから,原告が被告を含む本件匿名組合員ら4名に対して匿名組合員配当を行うことを拒む趣旨は読み取ることができるが,それを超えて,AがBに対し,Bが本件匿名組合員ら4名に対する匿名組合員配当の実現のために行動することや,さらにはWBIの第三者に対する本件地位や本件移転済み土地の譲渡に協力することを具体的に指示するものであると読み取ることはできない。
なお,Bの陳述書(戊16)には,WBIとサンエジソンとの交渉経過の状況を逐一Aに報告していた旨の陳述もあるが,これを認めるに足りる客観的な証拠はなく,むしろ,Bは,WBIとサンエジソンとの間の社員持分譲渡契約の締結の直前である平成27年4月10日の時点においても,Aに対し,「サンエジソンだけが未だに,WBIに対して今月融資できると話しています。」などと記載したメール(甲78の1,78の2)を送るなどして,WBIとサンエジソンとの間で社員持分譲渡契約の締結に向けた最終交渉が行われており,これにBが関与していることについては報告をしていないことが認められるのであって,Bの上記陳述は信用することができない。
したがって,被告の上記主張は採用することができない。
(4)  結論
以上によれば,Bは,本件地位及び本件移転済み土地について二重譲渡契約を締結させることが原告の権利を侵害することを知りつつ,WBIとサンエジソンとの二重譲渡契約の締結に向けた交渉に積極的に関与したものであり,このようなBの行為は,原告に対する不法行為を構成する。
4  争点(4)(被告は,Bの行為について,会社法350条又は民法709条に基づく損害賠償責任を負うか。)について
前記1(6)で認定した事実によれば,Bは,平成27年3月以降,WBIとサンエジソンとの間で行われたサンエジソンによる本件発電事業の買収に関する交渉にWBI側の窓口として関与したことが認められるところ,これは,前記3で説示したとおり,本件匿名組合契約に基づき原告に出資した被告の代表者として,被告が訴外匿名組合員らと共に匿名組合員配当を受けることを目的として行われたものである。また,その頃,Bが,匿名組合員である被告の代表者として,原告に対して匿名組合員配当を行うよう求めていること(前記1(5)チ)からしても,Bの上記行為は,被告による本件匿名組合契約に基づく債権の回収行為の一環として行われたものであると評価するのが相当である。
また,前記1(7)キで認定したとおり,WBIは,二重譲渡契約の締結後間もない平成27年6月1日,B個人ではなく,法人としての被告との間で,被告に対して太陽光発電事業開発に係る企画業務等を委託する旨の業務委託基本契約を締結していることからすると,Bを二重譲渡契約の締結に向けたサンエジソンとの交渉の窓口としていた時期のWBIの認識としても,B個人ではなく,被告の代表者としてのBを交渉の窓口としている認識であったものと考えられる。
以上によれば,Bは,被告の代表取締役としての「職務を行うについて」原告に損害を負わせたものといえるから,被告は,原告に対し,会社法350条に基づく責任を負う。なお,原告は,被告に対して民法709条に基づく損害賠償請求もしているが,同請求と会社法350条に基づく損害賠償請求とは選択的併合の関係にあるから,後者が認められる以上,前者について判断する必要はない。
5  争点(5)(原告に損害が発生したこと及びその額)について
原告は,原告による本件発電事業が実現不能になったことにより,本件発電事業を20年間稼働させることにより得られるであろう143億0273万8576円の収益を得ることができず,同額の損害を被ったと主張し,被告に対し,一部請求として20億7000万円の賠償を請求している。これに対し,被告は,上記損害が生じたことを否認する一方で,原告が事業開発報酬として受け取る予定であった29億1355万7222円相当額の損害を被ったことは認めている。
前記1(6)アで認定したとおり,WBIは,平成27年6月15日の時点でも,本件発電事業に必要な許認可等の取得を終えていなかったことが認められるほか,原告は,平成26年12月末の時点で,WBIに対して本件地位譲渡契約に基づく譲渡代金の支払ができておらず(前記1(5)セ),その後も,平成27年3月になって,生命保険会社から,原告において上記許認可等を取得することを条件として出資及び貸付けの意向表明を受けたにとどまること(甲27の1,27の2)からすれば,原告が事業者として本件発電事業を20年間稼働させることにより,原告の主張に係る収益を得ることができたとまで認めることは困難である。
他方,原告は,平成26年9月1日,本件匿名組合員らに対し,「我々のゴールはこのプロジェクトの開発を完了し,2か月以内に売却することにある」とのメールを送信していること(戊21)などからも,原告が,資金を提供できる第三者に対し,本件地位及び本件土地を譲渡し,又は原告自身の支配権を移転する等の何らかの方法により,本件発電事業を転売する方向で動いていたことは認めることができる。原告は,WBIがサンエジソンに本件発電事業を譲渡した時点では,まだ転売先を見つけることができておらず,原告が第三者に対して本件発電事業を転売する方法について明確に決まっていたことを認めるに足りる証拠はないが,WBIが実際に本件発電事業をサンエジソンに売却したことからすれば,原告において,本件地位及び本件土地を取得することができれば,最終的には何らかの方法で本件発電事業を第三者に転売すること自体は可能であったというべきである。したがって,少なくとも,原告が事業譲渡の方法をとった場合に受け取ることができた事業開発報酬29億1355万7222円は,Bの不法行為により原告に生じた損害として認められる。
なお,原告と瑞穂及びWBIとの間には,平成28年9月30日,瑞穂及びWBIが原告に対して連帯して解決金5億円を支払う旨の訴訟上の和解が成立したことが認められる(戊15,顕著な事実)。原告が,この和解に基づき,瑞穂及びWBIから上記解決金の支払を受け,これが上記損害の填補に充てられるとしても,原告にはなお20億7000万円を超える未填補の損害があることが認められる。
6  争点(6)(原告が被告の責任を追及することは信義則に違反するか。)について
被告は,原告が,原告において本件匿名組合契約に基づき義務を負っている匿名組合員配当を実現するためにBが行った行為に関し,被告に対して責任を問うことは,信義則に反する旨を主張する。
しかし,前記のとおり,本件匿名組合契約に基づく匿名組合員配当の場面においては,営業者である原告と匿名組合員である被告の利益は相反する関係にあるのであって,原告に本件匿名組合契約上の債務不履行があったとしても,そのことから直ちに,原告が被告の責任を追及することが信義則違反になるわけではない。
本件において,Bは,ソラリアント・ジャパンのプロジェクト開発本部長としての立場も有していたにもかかわらず,自身の経営する会社である被告及びその余の訴外匿名組合員らに利益を得させるために,故意に原告の権利を侵害して,WBIに協力したものである。このように,原告は,Bによって故意に自らの権利を侵害されたのであって,原告がBの行為について責任を追及するに当たって,先に自らの契約上の債務を履行しなければ信義則に違反するということはできない。
したがって,被告の信義則違反の主張には理由がない。
7  争点(7)(過失相殺)について
(1)  被告は,Bの不法行為は原告の本件匿名組合契約上の債務不履行により惹起されたものであるとして,過失相殺も主張する。
(2)  前記3で説示したとおり,Bが原告に対する権利侵害行為に及んだきっかけは,被告が原告から匿名組合員配当を受けることができなかったためであることは認められる。
しかしながら,本件匿名組合契約に基づく匿名組合員配当の場面においては,営業者である原告と匿名組合員である被告の利益は相反する関係にあるところ,Bは,ソラリアント・ジャパンのプロジェクト開発本部長としての立場も有していたにもかかわらず,自身の経営する会社である被告及びその余の訴外匿名組合員らに利益を得させるために,故意に原告の権利を侵害して,WBIに協力したものである。このような態様の故意による不法行為について,仮に原告の本件匿名組合契約上の債務不履行があったとしても,これを原告の落ち度としてみて過失相殺を行うことは,損害の公平な分担の理念に照らし,相当とはいえない。
したがって,被告の過失相殺の主張は採用することができない。
8  まとめ
以上によれば,原告は,被告に対し,会社法350条による損害賠償請求権に基づき,原告に生じた前記5の損害の一部である20億7000万円及びこれに対する平成27年4月29日(不法行為後の日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求することができる。
債務不履行による損害賠償請求(前記第1の1)と会社法350条による損害賠償請求(前記第1の2)とは,選択的併合の関係にあるから,後者が全部認容される以上,前者について判断する必要はない。したがって,争点(2)について判断する必要はない。
第4  結論
よって,原告の会社法350条による損害賠償請求(前記第1の2)は理由があるからこれを認容し,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条を,仮執行の宣言につき同法259条1項を,それぞれ適用して,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第7部
(裁判長裁判官 三木素子 裁判官 畑佳秀 裁判官 山田裕貴)

 

〈以下省略〉

 

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