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「営業支援」に関する裁判例(120)平成19年11月12日 名古屋地裁 平19(ヨ)498号 株式交換承認の議決件行使禁止仮処分申立事件

「営業支援」に関する裁判例(120)平成19年11月12日 名古屋地裁 平19(ヨ)498号 株式交換承認の議決件行使禁止仮処分申立事件

裁判年月日  平成19年11月12日  裁判所名  名古屋地裁  裁判区分  決定
事件番号  平19(ヨ)498号
事件名  株式交換承認の議決件行使禁止仮処分申立事件
裁判結果  申立却下  上訴等  確定  文献番号  2007WLJPCA11126005

要旨
◆医薬品卸売業を営む債権者が、債務者及び債務者の子会社との三社間で締結した基本合意書の株式譲渡禁止条項に基づき、債務者は子会社の株主総会で同社と訴外会社との株式交換契約の承認を目的とする議案に賛成してはならない不作為義務を負うと主張して、同条項に基づく差止請求権を被保全権利として、本件議決権行使禁止の仮処分を求めた事案において、債権者は本件条項中の「株式の譲渡」に株式交換が含まれることを前提に本件主張をしているが、「株式の譲渡」の文理解釈のほか、同条項の趣旨や本件合意書が締結された経緯・目的等を考慮しても、「株式の譲渡」に株式交換を含めるには疑問があり、被保全権利の疎明があったとするに足りないなどとして、本件申立てを却下した事例
◆議決権拘束契約に基づく議決権行使の差止請求の可否について、契約当事者の一方が、議決権拘束契約に基づき、議決権を行使してはならない不作為義務を負う場合であっても、法的安定性の見地からすれば、原則として議決権行使の差止請求を認めることはできないが、株主全員が当事者である議決権拘束契約であり、かつ、契約内容が明確に当該議決権を行使しないことを求めるものといえる場合には、例外的に差止請求が認められる余地があるとされた事例

出典
金商 1319号50頁

評釈
野田耕志・ジュリ 1395号164頁
釜田薫子・旬刊商事法務 1934号46頁
岩田合同法律事務所・新商事判例便覧 2876号(旬刊商事法務1872号)
大塚和成・銀行法務21 705号50頁
大塚和成・銀行法務21 714号107頁
岩﨑惠一・龍谷法学 44巻4号731頁
浅妻敬=行岡睦彦・ジュリ増(実務に効くM&A・組織再編判例精選) 36頁

参照条文
民事保全法23条2項
会社法767条
商法352条(平17法87改正前)

裁判年月日  平成19年11月12日  裁判所名  名古屋地裁  裁判区分  決定
事件番号  平19(ヨ)498号
事件名  株式交換承認の議決件行使禁止仮処分申立事件
裁判結果  申立却下  上訴等  確定  文献番号  2007WLJPCA11126005

債権者 株式会社スズケン
同代表者代表取締役 A
同代理人弁護士 楠田堯爾
同 中根浩二
債務者 小林製薬株式会社
同代表者代表取締役 B
同代理人弁護士 松井秀樹
同 浜口厚子
同 山内洋嗣

 

 

主文

1  債権者の本件申立てを却下する。
2  訴訟費用は債権者の負担とする。

 

 

理由

第1  申立ての趣旨
債務者は、平成19年11月下旬を会日とする株式会社コバショウ(本店所在地;東京都中央区〈以下省略〉)の臨時株主総会において、同社と株式会社メディセオ・パルタックホールディングス(本店所在地;東京都中央区〈以下省略〉)との株式交換契約の承認を目的とする議案に賛成してはならない。
第2  事案の概要
1  本件は、債権者が、債務者は、債権者との間の平成16年9月22日付け基本合意書(以下「本件合意書」という。)17条1項に基づいて、債権者に対し、平成19年11月下旬を会日とする株式会社コバショウ(以下「コバショウ」という。)の臨時株主総会において、同社と株式会社メディセオ・パルタックホールディングス(以下「メディパル」という。)との株式交換契約の承認を目的とする議案(以下「本件議案」という。)に賛成してはならない不作為義務を負うと主張して、同条項に基づく差止請求権を被保全権利として、本件議案に賛成する議決権(以下「本件議決権」という。)行使禁止の仮処分を求めた事案である。
2  前提事実(疎明資料及び審尋の全趣旨により、容易に一応認められる事実)
(1)  当事者等
ア 債権者は、医薬品の卸売等を業とする株式会社である。医薬品は、医師の処方箋に基づき処方される医療用医薬品と、一般の薬局で医師の処方箋なしで購入できる一般用医薬品に大別されるところ、債権者においては、医薬品卸売部門のほとんどが医療用医薬品の卸売事業であったが、一般用医薬品及び化粧品の卸売(以下「薬粧卸売」ともいう。)事業も行っていた。
イ 債務者は、一般用医薬品の製造等を業とする株式会社であるが、平成12年10月、一般用医薬品卸売事業を分社化するため、コバショウを設立し、その株式の99.5パーセントを保有して、コバショウを債務者のほぼ100パーセントの子会社とした。
ウ 平成十五、六年当時、薬粧卸売業界では、競争激化に基づく利益率の低下等を契機として再編が進められていたところ、債権者と債務者は、債権者の薬粧卸売事業と債務者の一般用医薬品卸売事業子会社であるコバショウの統合について交渉した結果、平成16年9月22日、債権者、債務者及びコバショウの三者間において、本件合意書が締結された。
(2)  本件合意書(甲1)の条項
本件合意書の条項は、別紙のとおり(ただし、17条、24ないし26条のほか、本件合意書が条項中に引く別紙及び別表は省略した。)であるが、17条は下記のとおりである。

17条(株式の譲渡)
1  債権者及び債務者は、本条第2項及び第3項の場合を除く他、本基本合意に基づき取得し、保有するコバショウの株式(新株予約権を含む。本条において以下同じ。)の全部又は一部を他に譲渡してはならない。但し、相手方の書面による事前の承認を得た場合は、この限りではない。
2  本基本合意締結後5年間経過した後、
①  債権者又は債務者が、その所有するコバショウの株式の全部又は一部を、他に譲渡しようとする場合は、先ず、相手方に対し書面にて株式譲渡の申込みを行う。相手方は申込みを受けた株式を自己にて買い取るか、又は自己の指名する第三者に買い取らせることができる。相手方が、自己若しくはその指名する第三者による株式買取りを拒否した場合、又は申込み受領後3ヶ月以内に買取り受諾を書面にて回答しない場合には、債権者又は債務者は、その3ヶ月以内に限り、相手方に提示した条件と同条件又は譲受人にとって、より有利とはならない条件で、当該株式を譲渡することができる。
②  債権者又は債務者が、前項に定める株式譲渡の申込みを行った結果、相手方又は相手方の指名する第三者以外の者にその所有するコバショウの株式を譲渡する場合、債権者又は債務者は、譲受人となるべき第三者を特定した上で相手方に対し予め書面にて通知しなくてはならない。この場合、当該第三者と相手方が信頼関係を構築できない特段の事由が存すると相手方が判断したときは、相手方は債権者又は債務者が譲渡を希望する株式を、相手方と債権者又は債務者が別途合意する第三者機関の適正な評価に基づく価額により買い取ることができるものとする。
3  前2項の規定により債権者の所有株式の一部が譲渡され、かつ、譲渡後の債権者の議決権比率が10パーセント以上に維持される限り、債権者は取締役の1名を就任させることができる。
4  本条第1項及び第2項の規定により、債権者若しくは債務者の全所有株式が譲渡された場合、又はコバショウ発行済株式の3分の1以上が第三者によって所有されるに至った場合には、本基本合意の各規定は同時点をもって終了する。尚、本項にいう「第三者」には、コバショウ、債権者又は債務者がその総株主の議決権の20パーセント以上を有する会社は含まれないものとする。
(3) 債権者、債務者及びコバショウは、本件合意書に基づいて、いずれも平成17年4月1日までに、債権者において、その薬粧卸売事業のうち、北海道及び東海地区の事業を分割し、これを承継させる新会社(以下「新設会社」という。)を新設した上で、コバショウと債務者は、同日ころまでに、債権者が保有する新設会社の株式とコバショウ株式について株式交換を行うとともに、コバショウは、債権者の薬粧卸売事業のうち、H&BC東日本支店及びH&BC近畿支店が従事する事業を吸収分割した。その際、コバショウが上記吸収分割及び株式交換(以下「債権者及びコバショウ間の本件吸収分割及び株式交換」という。)により取得する債権者の薬粧卸売事業の純資産額の合計は26.5億円とされ、債権者は、上記の対価としてコバショウの発行株式の20パーセントに相当する2694株をコバショウ株式を取得した。
その結果、コバショウの株主構成は、債務者、債権者、コバショウ従業員持株会のほか、コバショウ代表取締役社長Cら個人株主8名となり、その持株比率は、債務者が74.22パーセント、債権者が20.00パーセント、コバショウ従業員持株会が5.60パーセント、個人株主8名が併せて0.18パーセントとなっている。
(4) メディパル、同社の連結対象完全子会社である株式会社パルタック(以下「パルタック」という。)、コバショウ及び債務者の4社は、平成18年12月20日、債権者に対し、パルタックとコバショウ両社の経営統合に関する協議を開始することに合意した旨通知した。
上記4社は、協議の結果、まず、コバショウをメディパルの100パーセント子会社とするため、両社で株式交換を行った(その結果、コバショウの株主である債務者、債権者らはメディパルの株主となる。)上で、パルタックが、コバショウを吸収合併し、パルタックが存続会社となる方針(以下「本件方針」という。)を決定した。
(5) コバショウは、前記(4)の方針に基づいて、平成19年9月6日開催の取締役会において、コバショウをメディパルの100パーセント子会社とする株式交換手続(以下「本件株式交換」という。)を進めることを決議しており、本件株式交換契約の承認を会議の目的たる事項(本件議案)とする臨時株主総会(以下「本件総会」という。)を平成19年11月下旬に開催する予定である(ただし、本件総会を招集する旨の決議は未だなされていない。)。
3  争点及びこれに関する当事者の主張
(1)  被保全権利の有無(債権者は、本件合意書17条1項に基づいて、債務者が、本件総会において、本件議案に賛成する本件議決権を行使することを差し止めることができるか否か。)
(債権者の主張の要旨)
ア 以下のとおり、本件合意書17条の解釈や、本件合意書が締結された趣旨・目的に照らすと、本件合意書17条1項で禁止されている「株式の譲渡」には株式交換が含まれるから、債務者が、同条項に基づいて、本件総会において本件株式交換契約を承認する旨の本件議案に賛成してはならない不作為義務を負うことは明らかであり、債権者は、債務者に対し、本件議案に賛成する本件議決権行使の差止請求権を有する。
(ア) 契約上の条項に基づく差止請求権の成否の判断に当たっては、当該規定の文言のみならず、当該契約の締結に至る経緯や目的といった成立過程や背景事情、同締結後の債務者の言動等をも加味した合理的意思解釈によって判断すべきである。
(イ) 本件合意書17条の解釈
同条1項は、債権者及び債務者の双方に、本件合意書に基づき取得し、保有するコバショウの株式の全部又は一部を、相手方の事前の承認を得ることなく、譲渡することを禁止するものであるところ、「譲渡」とは権利等を他人に譲り渡すことを意味し、他方、株式交換とは自己が有する株式を、別の株式という対価を得て他人に譲り渡すものであるから、これが同条の禁止する「株式の譲渡」に該当することは明らかである。そして、株式交換は、株式交換の当事会社間で株式交換契約を締結し、両社の株主総会の承認手続を経てなされるものであるところ、本件株式交換契約は、コバショウとメディパル間で締結されるのであり、債務者が本件株式交換行為のためになす行為は、本件総会で本件議案に賛成する本件議決権を行使することのみであるから、本件合意書17条に基づいて債務者に禁止される行為は、本件株式交換手続においては、本件議決権を行使することにほかならない。また、本件合意書17条が、債権者及び債務者の双方について、互いに、締結後5年間は、その保有するコバショウ株式の無断譲渡を禁止する(同条1項)ともに、締結後5年経過後も、自己の保有する株式を相手方又はその指名する以外の第三者に譲渡する場合で、相手方が譲渡先である第三者と信頼関係を構築できない特段の事由があると判断したときは、相手方は、その株式を買い取ることができるとした(同条2項)趣旨は、債権者及び債務者の何れかにとって不都合な第三者がコバショウの経営に参画することを防ぐことにあるところ、同条のこのような趣旨は株式譲渡であっても株式交換であっても同様である。
そうすると、本件合意書17条1項の「譲渡」には株式交換が含まれるといえるし、債務者は、同項の合意に基づいて、本件議案に賛成する本件議決権を行使してはならない不作為義務を負う。
(ウ) 本件合意書締結に至る経緯・目的及び同締結後の事情等
a 本件合意書締結に至る経緯・目的
債権者が、本件合意書を締結することによりコバショウに資本参加をした目的は、債権者の薬粧卸売事業の最適化、すなわち、①債権者の薬粧卸売事業をコバショウに移管・統合することにより、その価値を有効に生かすとともに、②薬価改定等を契機として、業界再編が進んだ医薬品卸売業界にあって(債権者は、医薬品卸売業界において、以前はシェア1位であったが、業界再編の結果、平成16年当時の医薬品卸売業界のシェア1位は旧株式会社三星堂と旧クラヤ薬品株式会社が核となり、武田薬品系の卸を中心に集約した株式会社メディセオホールディングス(メディパルの前身)グループ[以下「メディパルグループ」という。]、同2位は株式会社アズウェルと福神株式会社が核となるアルフレッサホールディングス株式会社グループであり、債権者グループが同3位となっていた。)、今後、債権者が上記3位グループ以外の医薬品卸と事業統合する際、コバショウをそれらの薬粧卸売事業部門を受け入れる受け皿とし、メディパルグループに対抗する卸の連合を作るための有効な手段とし、さらに、③将来的にドラッグストアでの調剤薬局併設が拡大した場合にコバショウのドラッグ向け販路により、債権者が医療用医薬品をドラッグストアに販売できるための備えとし、ひいては、メディパルに対抗しうる卸の一大グループを作るためであって、決して、債権者の不採算部門である薬粧卸売部門を切り離し、医療用医薬品卸売事業に特化するためではない。このことは、本件合意書の前文、1条、14条ないし16条等の規定によれば、本件合意書による統合後のコバショウがあくまで債権者と債務者の相互補完的協力を基本とし、債権者がコバショウの経営に参画することが予定されていることのほか、債権者が、コバショウへの事業移管の際、本件合意書に基づいて、債権者及びコバショウ間の本件吸収分割及び株式交換をなして資本参加しており、薬粧卸売部門を切り離したわけではないことからも明らかである。
このような目的からすれば、債権者にとって、競合他社であり、シェア争いをしているメディパルグループが、コバショウの経営に参画し、業界4位以下の同業者を統合する際の有力な受け皿とすることが可能となるような事態は到底容認できるものではなく、本件合意書においても、債権者、債務者にとり、不都合な第三者がコバショウに資本参加できないことは、重要な前提とされていたのであり、この点を集約し明記したのが本件合意書17条の規定である。
そして、債務者としても、本件合意書によりパートナーとして、債権者と組んだ以上、コバショウに、債権者とシェア争いをしているメディパルを資本参加させることが、本件合意書上許されないことは当然、認識していた。
b 本件合意書締結後の債務者の言動等
コバショウは、本件合意書締結後、業界4位グループや三菱商事等の参加を模索し、平成17年12月1日開催の取締役会において、株式会社菱食(以下「菱食」という。)に対し、コバショウに出資比率51パーセントで資本参加することを要請することが議決された。しかし、その後、債務者代表取締役会長のD(以下「D会長」という。)の意向により、菱食の資本参加の方針が否定されるに至り、同月19日開催のコバショウ取締役において、メディパルとの提携に関する議題が審議されたが、その際、債務者代表者取締役社長兼コバショウ取締役のB(以下「B社長」という。)は、賛成票を投じつつ、「債権者というパートナーを失う結果を織り込んで、本件は債務者としても時間をかけて吟味検討した結果で苦渋の決断」「今回の結論は誠に忸怩たるものがある」などと述べ、また、当時、コバショウ代表者取締役会長であったE会長(以下「E会長」という。)は、「パートナーとして我々を信頼し委ねて戴いた債権者の関係者、私を信じて誠実に前向きに応じて戴いたこれら多くの方々との経緯に鑑み結果的に与えてしまう不義理・不誠実を思うと、決して安易に賛成票を投じることはできないが、・・誠に不本意ながら苦渋の結論として断腸の思いで賛成する。」と表明した上、後に会長職を退任するなど、両人において、メディパルとの統合が本件合意書に反することを認識していたことを前提とする言動をしている。そのほか、D会長やB社長のほかメディパルの首脳が、度々債権者を訪ね、メディパルとの統合の了承を求めたことは、その証左といえる。
c 以上のa及びbの事情からしても、本件合意書17条1項の「株式の譲渡」には、「株式交換」により、債務者がコバショウ株を他に移転することも含まれることが明らかである。
イ 債務者の主張について
債務者は、本件仮処分申立てが認められた場合には、債務者は、本件合意書17条という債務者と債権者間の議決権拘束契約により、本件議案に賛成する本件議決権の行使を差し止められることになるから、本件被保全権利の成否については、会社法の理論を加味すべきであると主張するが、その成否は、同条の合理的解釈の問題であるというべきであり、債務者の主張は失当である。
なお、債務者自身、議決権拘束契約がある場合も、①株主全員が当事者である議決権拘束契約であること、②契約内容が明確であることの2つの要件を充たせば、議決権行使の差止めを認める見解があることを自認しているところ、本件において、②の要件を満たすことは前記アのとおりである。また、①についても、その趣旨は、矛盾する複数の議決権拘束契約が存在する場合に収拾がつかなくなることを防ぐことにあるところ、コバショウの株主構成によれば、債権者及び債務者以外の株主は、5.8パーセントにすぎない上、コバショウ従業員持株会が5.6パーセントを占め、残りの株主も債務者の役員、コバショウの役員及び従業員であることからすれば収拾がつかなくなる危険はおよそ考えられず、株主全員の同意があった場合と同視しうるから、この要件を充たすというべきである。
(債務者の主張の要旨)
ア 以下のとおり、本件合意書17条が、コバショウの「株式の譲渡」を制限する条項にすぎず、本件合意書上、コバショウによる株式交換契約の締結・実行やコバショウの株主総会において、同社を当事者とする株式交換契約を承認する旨の議案に賛成する議決権を行使することを禁じる明文上の規定が存在しない以上、本件合意書に基づいて、債務者が、本件総会において本件株式交換契約を承認する旨の本件議案に賛成してはならない不作為義務を負うことはない。
(ア) 本件合意書は、いずれも一部上場企業であり、社内に複数の法務スタッフを擁する大企業であって、かつ、過去にM&Aの豊富な経験を有している債権者と債務者間の合意書である上、その内容も、債権者の一般用医薬品卸売事業のコバショウへの事業移管に伴って、債権者と債務者の共同出資会社となるコバショウの経営・運営方針について定めた株主間契約であって、合意内容は文言により一義的に明らかになることが要請されるものである。しかも、本件合意書29条には、本件合意書の合意内容については、締結に至るまでの交渉、申し合わせ等の本件合意書上に現れない事情を考慮せず、本件合意書の条項のみにより明らかにすべきである旨の完全合意条項があることなどからすれば、本件合意書17条の解釈は、同条や本件合意書の他の規定の文言のみによるべきであり、本件合意書締結に至る経緯や目的等をも加味した合理的意思解釈をすることは許されない。
(イ) これを本件についてみると、まず、株式譲渡と組織法上の行為である株式交換とは法律上異なる概念であるにもかかわらず、本件合意書には17条を含め株式交換を禁止する規定は一切存しない。また、通常、企業間の株主間契約において、各株主による株式譲渡の禁止・制限のほか、対象会社の株式交換を含む組織再編などの重要な決定事項について制限をしたいと考える場合には、株式譲渡の譲渡・制限条項とは別個に、株式交換を含む組織再編その他の重要な決定事項についての明文の事前同意条項(いわゆる拒否権条項)をもうけるのが実務上の確立した取扱いであるにもかかわらず、本件合意書には拒否権条項はもうけられていない。これらによれば、本件合意書17条の「株式の譲渡」には「株式交換」は含まれないというべきである。
(ウ) さらに、以下のとおり、債権者の主張する本件合意書締結の経緯・目的等は認められないから、この意味でも債権者の主張は失当である。
まず、債権者は、本件合意書を締結した目的として、今後、債権者が上記3位グループ以外の医薬品卸売と事業統合する際、コバショウをそれらの薬粧卸売事業部門を受け入れる受け皿とし、メディパルグループに対抗する卸の連合を作るための有効な手段としたり、将来的にはドラッグストアでの調剤薬局併設が拡大した場合にコバショウのドラッグ向け販路により、債権者が医療用医薬品をドラッグストアに販売できるための備えとしたりして、ひいてはメディパルグループにも対抗しうる卸の一大グループを作る計画であったと主張するが、そのような事実はない。債務者及びコバショウが、本件合意書締結当時、債権者からそのような説明を受けたことはないし、当時、債権者に上記のような目的がなかったことは、債権者自身、本件合意書締結後の記者会見等で、債権者の一般用医薬品卸売業の規模では、今後、サービスの水準の向上が困難で、コバショウへの事業移管により医療用医薬品卸売業に特化していきたい旨、あるいは、事業の選択と集中によりコア事業である医療用医薬品卸売業に経営資源の集中を行う旨述べていたことなどから明らかである。
次に、債権者は、コバショウにメディパルが資本参加できないことは本件合意書の当然の前提であり、債務者はこれを認識していたと主張するが、そのような事実はない。このことは、本件合意書により保有することになった債権者のコバショウにおける持株比率は20パーセントにとどまり、取締役も5名中1名を指名できるのみとなっており、債権者の上記前提を阻止することを確保できない状況にもかかわらず、本件合意書にはコバショウの組織再編を含む重要な業務の決定について債権者の拒否権条項がもうけられていないことからも明らかである。
さらに、債権者は、本件合意書締結の目的や認識の形成について、債権者側とE会長とのやり取りを主張するが、そのようなやりとりが仮に存在していたとしても、本件合意書29条によって当事者間の合意を形成しないことが確認されている「従来の交渉、申し合わせ」に過ぎず、本件合意書の解釈に影響を与えるものではない。
イ 仮に、債務者が、本件合意書17条1項に基づいて、本件議決権を行使してはならない不作為義務を負うことになれば、コバショウの株主である債権者及び債務者間における議決権拘束契約である同項に基づいて、債務者の議決権行使が制限されることになるが、議決権が株主権の中でも最大限尊重される権利であること等からすれば、これを制限できるためには、議決権行使の制限を受け入れる旨の明確な意思を読みとれることが必要であるところ、同条項は、株式の譲渡を制限するにとどまり、議決権については一切言及していないから、債務者が、同項に基づいて、本件議決権を行使してはならない不作為義務を負うことはない。
また、仮に、同条項に何らかの意味で議決権拘束の趣旨を読みとることができるとしても、株主の自由な意思に基づく議決権行使を尊重する趣旨やこれが株主間の債権的契約にすぎないことなどからすれば、これに違反した場合の損害賠償請求は認められるとしても、これを越えて、議決権行使の差止請求は認められないというべきである。
なお、近時の学説中には、①株主全員が当事者である議決権拘束契約であること、②契約内容が明確に特定の議決権行使を求めるものであることの2つ要件を充たせば議決権拘束契約に基づく差止請求権を認める見解も見られる。しかし、①コバショウの株主には債権者と債務者以外の株主が存在していることや、②本件合意第17条の規定が、本件株式交換契約を承認する旨の本件議案に賛成する本件議決権行使を禁止していることは明確ではないことからすれば、上記①②の要件をいずれも欠くことになるから、仮に、本件合意書17条1項が、株式交換によるコバショウ株式の移転を禁止しているものとしても、これに基づく本件議決権行使の差止請求権は認められない。
(2)  保全の必要性の有無
(債権者の主張の要旨)
ア 債権者の著しい損害
本件仮処分申立てが認められない場合、債権者は、以下のような著しい損害を被るのに対し、債務者はメディパル以外との経営統合等を含めた経営上の選択肢があるため損害はなく、また、本件株式交換を中止すれば、かえって契約違反、コンプライアンス違反との社会からの非難を回避できる。
(ア) 企業秘密等の流出に伴う損害
債権者は、本件合意書に基づき、債権者及びコバショウ間の本件吸収分割及び株式交換をなした結果、北海道地区、東海地区等につきコバショウに対して人材を含めた事業移管を行っており、その際、債権者のノウハウ等の企業秘密等がコバショウに渡っている。そして、本件仮処分申立てが認められなければ、コバショウがメディパルの完全子会社となることは必定であり、これが、最大の競争相手であるメディパルに流出することによる債権者の損害は計り知れない。
(イ) 損失等の発生
債権者は、本件合意書に基づいて、コバショウに資本出資するに当たり、共同事業の収益の期待を含めて本来のコバショウの企業価値よりも相当高額な出資をしている。本件仮処分申立てが認められない場合には、債権者は、株式買取請求権の行使(会社法785条、797条)、本件合意書19条1号、7号による契約解除を経た上で、20条1項による取得価格での買取請求権の行使、あるいは株式交換により取得したメディパル株式の市場での売却等により、被った損害を補填することとなるが、これらの手段により補填できる額は現時点では未定だが、いずれにせよ債権者におけるコバショウ株式の簿価との乖離は著しく、債権者において数億円の損失が発生するおそれがある。これに加えて、契約を解除しても東日本営業部、西日本営業部、東海営業部、北海道営業部について既に移管した事業を完全に元に戻すことは不可能であり、この点に関する金銭に見積り難い損害は質的に重大である。さらに、本件仮処分申立てが認められず、仮に、コバショウがメディパルに統合されれば、債権者は、業界4位以下の同業を統合するための有力な受け皿を失うことになる一方で、メディパルは、有力な受け皿を手に入れることとなる。今回の債務者の契約違反により、債権者はメディパルに追いつくどころかさらに差を広げられてしまう蓋然性が高い。また、ドラッグストアでの調剤薬局併設が拡大した場合、医療用医薬品卸である債権者としても、ドラッグストアへ通じる薬粧卸の販路を持っていなければ不利となる。その損害は金銭等で償うことができず、しかも甚大なものとなること明白である。
(ウ) 信用の毀損
債権者の取引先も、債権者の競争会社であるメディパル側に帳合が移ってしまうことなど想定していなかったはずであり、本件仮処分申立てが認められなければ債権者の信用が著しく毀損される。また、本件株式交換は債務者の契約違反、コンプライアンス違反であり、本件仮処分申立てが認められなければ、かような株式交換を阻止できないこととなり、債権者に対する社会的評価も損なわれる結果となる。
(エ) 債権者従業員のインセンティブの低下
本件合意書に基づき、債権者及びコバショウ間の本件吸収分割及び株式交換をなした際、債権者からコバショウに承継された従業員は、本件仮処分申立てが認められなければ、結局競争会社であるメディパル側に承継される結果となり、しかもメディパル側へ承継された後の給与等の水準はコバショウでのそれよりも格段に低い。このような事態を放置すれば現在債権者に在籍する多数の従業員の債権者に対する信頼、インセンティブも著しく損なわれる。債権者において生じるこのような損害も、質的に重大である。
イ 債権者の急迫の危険
本件仮処分申立てが認められず、本件株式交換が実行されれば、本件合意書により、債権者と債務者間で合意された「債権者・債務者の相互補完的協力によるコバショウの発展」、「債権者のコバショウへの参画維持」といった最重要基本スキームが崩壊し、債権者に受忍限度を超えた現在の不利益なり危険を負わせること明白である。
ウ 以上のとおり、債権者に生ずる「著しい損害」又は「急迫の危険」を避ける必要性があるから、本件仮処分の必要性がある。
(債務者の主張の要旨)
否認ないし争う。
第3  当裁判所の判断
1  被保全権利の有無について
債権者は、本件合意書17条1項の「株式の譲渡」に株式交換が含まれることを前提に、債務者は、同項に基づいて、本件株式交換契約を承認する旨の本件議決権を行使してはならない不作為義務を負うから、債務者に対し本件議決権行使の差止請求権を有すると主張するところ、債権者の上記主張が認められるためには、①本件合意書17条1項の「株式の譲渡」に株式交換が含まれるといえること、②債務者が、同項に基づいて、本件議決権を行使してはならない不作為義務を負うといえること、③債権者が、同項に基づいて、本件議決権行使の差止請求をできるといえることが必要である。
以下、順次検討する。
(1)  前記①(本件合意書17条1項の「株式の譲渡」に株式交換が含まれるか否か)について
この点、債権者は、本件合意書17条の「株式の譲渡」の文理解釈に加え、同条の趣旨や、本件合意書が締結された経緯・目的、本件合意書締結後の債務者側の言動等を勘案すれば、本件合意書17条1項の「株式の譲渡」に株式交換が含まれることは明らかであると主張する。
ア 本件合意書17条の「株式の譲渡」の文理解釈について
(ア) 債権者は、一般的に「譲渡」とは権利等を他人に譲り渡すことを意味するところ、株式交換は、自己が有する株式を別の株式という対価を得て他人に譲り渡すものであるから、文理解釈上、同条の「株式の譲渡」に株式交換が含まれると主張する。
しかし、株式交換は、平成11年8月13日法律第125条による改正により、ある会社を他の会社の完全子会社とするため、会社組織法上の行為として新設された制度であり(その際、株式交換を、完全親会社となる会社にとって、完全子会社となる会社の株主の有するその会社の株式の現物出資に対する株式その他の財産の交付とする構成も考慮されたが、合併に類似する組織法的行為として立法された。)、完全子会社の株式は、株式交換の当事会社間で締結された株式交換契約が両社の株主総会の特別決議で承認されることにより、株式交換に反対する株主の意思にかかわらず法律上当然に移転する(本件合意書締結当時、効力のあった平成17年7月26日法律第87号による改正前の商法[以下「旧商法」という。]352条以下。なお、会社法上767条以下参照)ところ、本件株式交換において、株式交換契約の当事者はメディパルとコバショウであって、債務者は当事者ではないし、債務者の保有するコバショウ株式のメディパルへの移転も、法的には債務者の意思に基づくものとはいえない。債権者の上記主張は、本件株式交換が、旧商法ないし会社法上の株式交換であることを理解せず、債務者とメディパル間のコバショウ株式の民法上の交換契約であるかのような誤った理解に基づくものであるといわざるを得ず、採用できない。
なお、債権者の主張中には、上記説示の点を踏まえて、債務者がコバショウの発行済株式総数の74パーセントを保有し、本件株式交換を承認するのに必要な特別決議を決することができる立場にあることからすれば、本件株式交換契約及び本件総会における本件議決権の行使には、債務者の意思が表象されているといえるから、本件株式交換は、実質的には、債務者がメディパルに対し、債務者が保有するコバショウ株式を譲渡することと同視できるとする部分がある。
しかし、上記主張は、旧商法ないし会社法上、株式交換と株式譲渡が別個のものとされていることを看過するものといわざるを得ないし、債務者がコバショウの株主総会の特別決議を決することができる立場にあるとしても、本件合意書17条1項の「株式の譲渡」に本件株式交換が含まれるとするには疑問があることは後記イ(ア)で指摘するとおりであるから、採用の限りではない。
(イ) もっとも、「譲渡」の一般的な国語の用語法によれば、同条の「株式の譲渡」には、株式交換を含むおよそ株式が移転される場合すべてが含まれるとする文理解釈も不可能ではなく、債権者の主張も上記のような趣旨であるとも解される。他方、本件合意書締結当時、前記のとおり、株式交換がある会社を他の会社の完全子会社とするための会社組織法上の行為であって、取引法上の行為である株式譲渡とは、当事者(株式交換の場合には、株式交換契約の当事会社であるのに対し、株式譲渡の場合には、譲渡契約の当事者である。)や、株式の移転が生じる根拠(株式交換の場合には、上記のとおり、法律上当然に移転するのに対し、株式譲渡の場合には、譲渡契約の効果による。)の点で、法律上異なるものであることが、旧商法上の一般的な理解であったことが一応認められる(乙24ないし26)。
そうすると、本件合意書17条の「株式の譲渡」の文理解釈としては、二通りの解釈が一応可能ということになるが、契約条項の文理解釈に当たっては、当該契約の当事者やその契約内容等を考慮して、合理的に解釈するのが相当である。
そこで、検討するに、甲1及び審尋の全趣旨によれば、本件合意書は、いずれも一部上場企業で、過去にM&Aの経験を有する大企業同士の債権者及び債務者を当事者とし、その内容も、債権者の薬粧卸売事業を、債権者及びコバショウ間の本件吸収分割及び株式交換の方法によりコバショウに移管することや、それに伴って債権者と債務者の共同出資会社となるコバショウの経営・運営方法を定めたものであること、本件合意書上、4条には、債権者がその薬粧卸売事業をコバショウに移管する方法として株式交換が規定され、9条には、債権者の不作為義務として、債権者の薬粧卸売事業について、債権者及びコバショウ間の本件吸収分割及び株式交換がなされるまでの間、第三者との合併、営業譲渡、会社分割等の組織再編行為を禁止する旨規定されていることが一応認められる。これらによれば、本件合意書は、まさに旧商法ないし会社法上の法律関係にかかわるものといえる。そして、このような当事者が、上記内容の本件合意書を作成するに当たり、旧商法ないし会社法上の用語法ではなく、あえて一般的な国語の用語法に従って同条の規定を作成したとは考え難いことに照らすと、本件合意書17条1項の「株式の譲渡」とは、旧商法ないし会社法上、株式交換とは区別される同法上の株式譲渡を意味するものと解するのが相当ではないかとの疑問を払拭できない。
そうすると、本件合意書17条の「株式の譲渡」の文理解釈として、債権者が主張する用語法に従ったとの疎明があったとするに足りないといわざるを得ない。
(ウ) よって、債権者の上記主張は採用できない。
イ 本件合意書17条の趣旨、本件合意書締結に至る経緯・目的について
(ア) 同条の趣旨について
まず、債権者は、本件合意書17条が、債権者及び債務者の双方について、互いに、締結後5年間は、その保有するコバショウ株式の無断譲渡を禁止する(同条1項)とともに、締結後5年経過後も、自己の保有する株式を相手方又はその指名する以外の第三者に譲渡する場合で、相手方が譲渡先である第三者と信頼関係を構築できない特段の事由があると判断したときは、相手方は、その株式を買い取ることができるとした(同条2項)趣旨は、債権者及び債務者の何れかにとって不都合な第三者がコバショウの経営に参画することを防ぐことにあることを前提に、このような趣旨は、株式譲渡であっても株式交換であっても同様であるから、同条の「株式の譲渡」には株式交換が含まれるなどと主張し、疎明資料(甲11、24)中にはこれに沿う部分がある。
たしかに、債権者及び債務者は、同条の規定により、互いに、「株式の譲渡」によって自己に不都合な第三者がコバショウの経営に参画することを防ぐことができる。
しかし、仮に、一般的な国語の用語法に従い、同条の「株式の譲渡」に、株式の移転全般が含まれるとしても、これを制限する同条の規定では、債権者及び債務者が保有する株式の移転を伴わないコバショウの合併等の手続により、自己に不都合な第三者がコバショウに参画することを防ぐことはできないといわざるを得ない。そうである以上、同条の存在をもって、その趣旨が、債権者及び債務者の何れかにとって不都合な第三者がコバショウの経営に参画することをおよそ防ぐことにあるとまでいうことはできない。しかも、本件合意書が、過去にM&Aの経験を有する大企業同士の債権者及び債務者を当事者とし、債権者の薬粧卸売事業をコバショウに移管するに伴って、債権者と債務者の共同出資会社となるコバショウの経営・運営方法を定めたものであり、まさに、旧商法ないし会社上の法律関係を規律するものであるから、同条の「株式の譲渡」が、一般的な国語の用語法に従い規定されたとは考え難い(債権者が、本件合意書を締結するに当たり、旧商法ないし会社法上、株式交換と株式の譲渡とが別個のものであることを認識しないまま、同条の規定をもうけたとは考え難い。)ことは、前記のとおりである。
また、本件合意書は、その当事者や合意内容に照らし、その性質上、合意内容については、高度の明確性が要請されるものといえる上、本件合意書上も、権利義務等の変更は当事者の記名押印のある書面によってのみなされるものとされ(27条)、本件合意書はその目的に関する当事者間の合意のすべてを構成する唯一のものであり、従来又は現時点の交渉、申し合わせの一切に優先するとされている(29条)ことに照らすと、本件合意書の合意内容の解釈に当たっては、本件合意書の明文の規定により確定することが予定されているものと考えられる。そうであれば、債権者、債務者及びコバショウ間で定められた本件合意書上、コバショウの組織再編行為を禁止する明文の規定が存在せず、しかも、本件合意書17条をもってしては、合併等、株式の移転を伴わない方法で、自己に不都合な第三者がコバショウに参画することを防ぐことができないことに照らすと、債権者の主観的意図がどうであったとしても、同条を根拠として、自己に不都合な第三者がコバショウの経営に参画することをおよそ禁止する合意があるとするには疑問があるといわざるを得ない。そして、現に、本件合意書中には、債権者に対し、債権者及びコバショウ間の本件吸収分割及び株式交換が行われるまでの間、コバショウに移管する債権者の薬粧卸売事業について、第三者との合併、営業譲渡、会社分割等の組織再編行為を禁止する明文の規定(9条)が存在することや、債権者が、本件合意書を締結するに当たり、旧商法ないし会社法上、株式交換と株式の譲渡が別個のものであることを認識しないまま、17条の規定をもうけたとは考え難いことを考慮すると、本件合意書の当事者が、コバショウに自己に不都合な第三者が参画することをおよそ防止しようとすれば、本件合意書中に、本件合意書締結後のコバショウの合併や株式交換等の組織再編行為を制限する旨の規定をもうけたはずである。しかも、債権者が本件合意書によりコバショウに資本参加しても、債務者がコバショウの発行済株式総数の74パーセントの株式を保有して、同社の株主総会の特別決議を決することができる支配的な立場にあることからすれば、債権者が、コバショウに自己に不都合な第三者が参画することをおよそ防止しようとすれば、なおさらそうであったといえる。にもかかわらず、本件合意書には、コバショウの組織再編行為を禁止する明文の規定は存しないことに照らせば、合理的意思解釈によるとしても、本件合意書17条を根拠として、債権者と債務者との間に、自己に不都合な第三者がコバショウに参画することをおよそ禁止する合意があったとするには疑問があるといわざるを得ない。
そうすると、上記疎明資料はそのまま信用できず、債権者の上記主張は採用できない。
(イ) 本件合意書締結の目的等について
次に、債権者は、自己が本件合意書を締結することによりコバショウに資本参加をした目的(本件合意書前文にある「薬粧卸売事業の最適化」)には、①債権者の薬粧卸売事業をコバショウに移管・統合することにより、その価値を有効に生かすことのほか、②今後、債権者が上記3位グループ以外の医薬品卸と事業統合する際、コバショウをそれらの薬粧卸売事業部門を受け入れたり、将来的にドラッグストアでの調剤薬局併設が拡大した場合に債権者が医療用医薬品をドラッグストアに販売したりするための受け皿とし、ひいては、メディパルに対抗しうる卸の一大グループを作るためであることを前提に、そのような債権者にとって、競合他社であり、シェア争いをしているメディパルグループが、コバショウの経営に参画し、業界4位以下の同業者を統合する際の有力な受け皿とすることが可能となるような事態は到底容認できるものではなく、本件合意書においても、債権者が、不都合な第三者の典型ともいえるメディパルがコバショウに資本参加できないことは、重要な前提とされていたから、本件合意書17条1項の「株式の譲渡」には、本件株式交換が含まれるなどと主張し、疎明資料(甲11、21の2、24、26)中にはこれに沿う部分がある。
しかし、コバショウに移管した債権者の薬粧卸売事業は、本件合意書締結前の平成16年3月期の実績によれば、連結売上高に占める割合にして2.8パーセント程度であり(乙21)、債権者自身も、本件合意書締結後の記者会見等で、債権者の一般用医薬品卸売事業の規模では、今後、サービスの水準の向上が困難で、コバショウへの事業移管により医療用医薬品卸売事業に特化していきたい旨や、事業の選択と集中によりコア事業である医療用医薬品卸売事業に経営資源の集中を行う旨述べていたこと(乙32、37)、債権者は、本件合意書により、コバショウの発行済株式総数の20%を保有することになったが、コバショウについては、当期純損益(持分に見合う額)及び利益剰余金(持分に見合う額)等からみて、持分法の対象から除いても連結財務諸表に及ぼす影響が軽微であり、かつ、全体としても重要性がないとして、コバショウを持分法非適用会社としている上(乙4)、実際にも、平成19年3月期の財務状況をみると、債権者の同期の連結売上高が1兆4548億円、連結経常利益が321億円、連結当期純利益が177億円、連結総資産が8575億円であるのに対し、コバショウの債権者持分に見合った売上高は331億円、経常利益は1億7000万円、当期純損失は5260万円、総資産は129億円にとどまること(乙4、7)、債権者自身も、債権者の主たる事業が医療用医薬品事業であることは否定していないこと(審尋の全趣旨)が一応認められる。
これら事実に照らすと、債権者が、本件合意書締結により、コバショウに資本参加した目的である「薬粧卸売事業の最適化」として、上記①の目的が含まれるといえるとしても、上記②③の目的やメディパルに対抗しうる卸の一大グループを作ることが含まれるとするには疑問があるといわざるを得ない。
しかも、債権者が主張する目的や前提が、債務者との間でも共通の認識となっており、まして、それが、債権者にとって経営戦略を左右するような重大なものであれば、本件合意書上、その旨、明記されてしかるべきであったにもかかわらず、上記の目的やこれを担保するためのコバショウの組織再編行為を制限する明示の規定は存在せず、そのような目的や前提について、債権者と債務者との間に共通の認識(合意)があったとするには疑問があるといわざるを得ない。
そうすると、債権者の上記主張は、その前提を欠き採用できない。
ウ 本件合意書締結後の債務者側の言動について
疎明資料(甲20、21の1ないし2、22、24)によれば、コバショウは、本件合意書締結後、平成17年12月1日開催の取締役会において、菱食に対し、出資比率51パーセントでコバショウに資本参加することを要請することを議決したが、同月7日開催の債務者取締役会において、コバショウと菱食の資本業務提携に関する件が否決された上、メディパルグループと連携すべきことが指示されたこと、これを受けて、同月19日開催のコバショウ取締役において、メディパルの資本参加を認める本件方針を進める議案が議決されたが、その際、B社長は、「債権者というパートナーを失う結果も織り込んで、本件は債務者としても時間をかけて吟味検討した結果で苦渋の選択であったことを理解してもらいたい。今回の結論は誠に忸怩たるものがある。」と述べたこと、また、同取締役会において、E会長は「ここに至るまで折衝し交渉してきた菱食・三菱商事関係者、並びに菱食とのアライアンスを前提に説明し交渉してきたM&A候補先各社の関係者、及びパートナーとして我々を信頼し委ねて戴いた債権者の関係者、私を信じて誠実に前向きに応じて戴いたこれら多くの方々との経緯を鑑み結果的に与えてしまう不義理・不誠実を思うと、決して安易に賛成票を投じることはできないが、・・誠に不本意ながら苦渋の結論として断腸の思いで賛成する。」と表明した上、後に会長職を退任したこと、その後も、D会長やB社長のほか、メディパルの首脳が、債権者を訪問し、本件方針の了承を求めたことが認められる。
債権者は、上記事実は、債務者が、メディパルとの統合を進める本件方針が本件合意書に反することを強く認識していたことを前提とするものであると主張する。
しかしながら、コバショウ取締役会におけるB社長及びE会長の上記発言は、メディパルとの統合を進める本件方針が本件合意書に法的に違反することを自認したものとまではいえず(両者の発言中に、本件方針が本件合意書に反すると述べた部分はない上、甲8中には、債権者取締役兼コバショウ取締役であるFですら、「メディパルとのアライアンスは会社法上はやれるのかも知れないが」などと発言している部分があることに照らすと、B社長及びE会長の上記発言は、コバショウに資本参加をしてパートナー関係となった債権者や、アライアンスを前提に説明し交渉してきた菱食その他M&A候補先各社に対し、菱食との統合の方針を変更して、本件方針をとることになったことについて、道義的な責任を吐露したものと解する余地がある。)、これをもって、本件合意書17条の「株式の譲渡」に本件株式交換が含まれるとの疎明があったとするに十分なものとはいえない。
エ 以上のとおり、本件合意書17条1項の「株式の譲渡」の文理解釈のほか、同条の趣旨や本件合意書締結の経緯・目的等を考慮しても、同条項の「株式の交換」に株式交換が含まれるには疑問があるといわざるを得ず、その疎明があったとするに足りない。
(2)  前記②(債務者が、本件合意書17条1項に基づいて、本件議決権を行使してはならない不作為義務を負うか否か)、前記③(債権者が、同項に基づいて、本件議決権行使の差止請求をできるか否か)について
ア 前記②について
この点、前記①について、本件合意書17条1項の「株式の譲渡」に株式交換が含まれるといえる場合には、同項により、株式交換である本件株式交換も禁止されるといえることや、本件株式交換契約の当事者は、コバショウとメディパルであり、コバショウの株主にすぎない債務者が本件株式交換手続のためになす行為は、本件総会で本件議案に賛成する本件議決権を行使することのみであるから、本件合意書に基づいて、債務者が禁止される本件株式交換に関する行為とは、本件議決権を行使することにほかならないと解されることに照らすと、債務者は、同項に基づいて、本件議決権を行使してはならない不作為義務を負う(前記②)と解される。
しかしながら、前記①について、本件合意書17条1項の「株式の譲渡」に株式交換が含まれるとの疎明があったとするに足りないことは前記のとおりであるから、債務者が、同項に基づいて、本件議決権を行使してはならない不作為義務を負うとはいえない。
イ 前記③について
前記②が否定される以上、債権者が、本件合意書17条1項に基づいて、債務者に対し、本件議決権行使の差止を請求できるとはいえない(前記③)。
なお、仮に、前記①が認められ、前記②について、債務者が、同項に基づいて、本件議決権を行使してはならない不作為義務を負うといえるとしても、同項に基づいて、ただちに、債務者に対し、その差止めを請求できるかは別の考慮を要する問題というべきである。
なぜなら、仮に、債務者が、同項に基づいて、本件議決権を行使してはならない不作為義務を負うといえる場合には、その債権的効力(同義務違反に基づく債務不履行責任)を否定する理由はないが、これを越えて、債務者の議決権行使を差し止めることになれば、その影響は、本件合意書の当事者である債権者及び債務者にとどまらず、コバショウの他の株主にも及ぶことになる。しかも、これが認められることになれば、債権者と債務者間の議決権拘束契約に基づいて、債務者の議決権行使が差し止められることになるところ、本件合意書締結当時、議決権拘束契約に基づく議決権行使の差止めの可否について判断した判例は見あたらず、学説上はこれを否定する学説が優勢であったこと(乙24、25、27)からすれば、本件議決権行使の差止めを認めることになれば、法的安定性を害するおそれがあるからである。
これらを考慮すれば、仮に、前記①が認められ、前記②について、債務者が、同項に基づいて、本件議決権を行使してはならない不作為義務を負うといえる場合でも、原則として、本件議決権行使の差止請求は認められないが、①株主全員が当事者である議決権拘束契約であること、②契約内容が明確に本件議決権を行使しないことを求めるものといえることの二つの要件を充たす場合には例外的に差止請求が認められる余地があるというべきである。
これを本件についてみるに、まず、前記前提事実のとおり、本件議案について議決権を行使しうるコバショウの株主は、債権者及び債務者に限られないから、上記①の要件を充たすとはいえない(これに対し、債権者は、この要件の趣旨は、矛盾する複数の議決権拘束契約が存在する場合に収拾がつかなくなることを防ぐことにあるところ、コバショウの株主構成は、債権者及び債務者以外の株主は、5.8パーセントにすぎない上、このうち、コバショウ従業員持株会が5.6パーセントを占め、残りの株主も債務者の役員、コバショウの役員及び従業員であることからすれば収拾がつかなくなるおそれはなく、株主全員の同意があった場合と同視しうるから、この要件を充たすというべきであると主張するが、株主全員の間に本件議決権の行使をしない旨の合意があると一応認めるに足りる疎明資料はない[個人株主のうち、D会長、B社長及びコバショウの役員については同意があると推認することも不可能ではないが、コバショウ従業員持株会やその他の個人株主については、本件議決権の行使をしない旨の合意があるとの疎明があるとはいえない。]から、上記主張は採用できない。)。
また、②の要件について、仮に、本件合意書17条1項の「株式の譲渡」に株式交換が含まれるとしても、同項の規定上、コバショウといかなる当事会社間の株式交換が対象になるかは不明であり、②の要件を欠くといわざるを得ない(この点については、前記②について、債務者が、同項に基づいて、本件議決権を行使してはならない不作為義務を負うといえる場合には、②の要件を充たすというべきではないかとの反論が考えられるが、債権者と債務者間の債権的効力を越えて、本件議決権行使の差止請求が認められるためには、いかなる株式交換に関する議決権行使が禁止されるかについて、議決権拘束契約(条項)である同項の規定上、明確であることを要すると解するのが相当であるから、上記反論は採用しない。)。
そうすると、仮に、前記①が認められ、前記②について、債務者が、同項に基づいて、本件議決権を行使してはならない不作為義務を負うといえるとしても、債権者の債務者に対する本件議決権行使の差止請求権は認められないといわざるを得ない。
(3)  以上によれば、債権者が主張する被保全権利があるとの疎明があったとはいえない。
2  保全の必要性について
本件仮処分は、仮の地位を定める仮処分(民事保全法23条2項)に当たるから、保全の必要性が認められるためには、争いのある権利関係について債権者に生じる著しい損害又は急迫の危険を避けるために本件仮処分を発令する必要があるといえることを要すると解される。
(1)  これを本件についてみるに、債権者が主張する著しい損害ないし急迫の危険は、債権者が主張する被保全権利、すなわち、債権者の債務者に対する、本件合意書17条1項に基づく本件議決権行使の差止請求権が認められることを前提にするものであるところ、その疎明があったとするに足りないことは前記のとおりであるから、債権者の主張はその前提を欠くものといわざるを得ない。
(2)  次に、この点はしばらく措き、債権者が主張する損害ないし急迫の危険(以下「損害等」という。)の存否について検討する。
まず、債権者は、債権者が本件合意書を締結した目的が、今後、債権者が上記3位グループ以外の医薬品卸と事業統合をする際、コバショウをそれらの薬粧卸売事業部門を受け入れたり、将来的にドラッグストアでの調剤薬局併設が拡大した場合に債権者が医療用医薬品をドラッグストアに販売したりするための受け皿とし、ひいては、メディパルに対抗しうる卸の一大グループを作ることにもあることを前提に、本件仮処分申立てが認められない場合には、債権者とシェア争いをしているメディパルがコバショウを傘下に置くことになり、債権者グループとメディパルグループの差がさらに広がるところ、これは債権者にとって致命傷的であるなどと主張する。しかし、債権者にそのような目的があったとするには疑問があることは前記第3の1(1)イ(イ)で指摘したとおりであり、債権者が主張する上記の損害等があるといえるか疑問があるといわざるを得ない。
また、債権者は、本件仮処分申立てが認められなければ、企業秘密等の流出に伴う損害、コバショウに対する出資を回収できないことによる損失、信用の毀損、債権者従業員のインセンティブの低下等の損害等を被ると主張する。しかし、いかなる価値のある企業秘密等が流出したか明らかでないなど、その主張する損害等の内容自体明確ではないものがある上、その損害額がいくらになるかも不明確であることに照らすと、債権者の主張する上記損害等が、事後の損害賠償によって償えない程のものであるといえるかについても疑問があるといわざるを得ない(債権者が、本件合意書締結当時、コバショウへの事業移管により医療用医薬品卸売事業に特化していきたい旨述べていたことや、コバショウを持分法非適用会社としていることは前記第3の1(1)イ(イ)で指摘したとおりであり、これら債権者におけるコバショウの位置付けからすると、その損害額が事後の損害賠償によって償えない程のものといえるか疑問があるといわざるを得ない。)。
これらによれば、債権者の著しい損害又は急迫の危険を避けるために本件仮処分を発令する必要があるといえるとする疎明があったとするには疑問があるといわざるを得ない。
3  以上のとおり、本件仮処分の申立ては理由がないから、これを却下することとして、主文のとおり決定する。
(裁判官 西田政博)

 

(別紙)本件合意書
本基本合意書は、株式会社コバショウ(以下「コバショウ」という。)、株式会社スズケン(以下「債権者」という。)及び小林製薬株式会社(以下「債務者」という。)との間で平成16年9月22日付けで締結された。
前文
コバショウは、長年にわたり首都圏・近畿圏を中心に薬粧分野で商品の卸売業を営んでおり、業界において有数の売上高と高い販売生産性をあげている。また業容の拡大による急速な成長を目指している。債権者及び債務者は、長年にわたり組織的企業経営及び、卸売業全般の経験と知識とを保有している。
コバショウ及び債務者は、コバショウのさらなる事業拡大と経営強化を希望しており、債権者は、北海道、首都圏、東海及び近畿圏の薬粧卸売事業(以下「薬粧卸売事業」という。)の最適化を検討しており、当該事業の分割及びコバショウへの承継並びにコバショウの経営への参画を希望している。
よって、コバショウ、債権者及び債務者は、以下の内容を有する本基本合意を締結する。
第1章 基本理念
第1条(本基本合意の前提・趣旨)
債権者は、会社分割及びコバショウとの株式交換の方法により、債権者の薬粧卸売事業をコバショウに承継させ、同時にコバショウの株式を取得することにより、債務者とともにコバショウが薬粧卸として成長し、業界で確固たる地位を築けるよう以下に記載する内容について、業務及び資本の提携を行う。
①業務提携の内容
・ 営業活動における相互補完的協力
・ 効率的物流を実現するための協力
・ 情報システムの開発及び運用に関する協力
・ 従業員の教育・研修に関する協力
・ その他経営資源の有効活用に関する協力
②資本提携の内容
・ 債権者はコバショウに薬粧卸売事業を移管し、その対価としてコバショウの株式を債権者に割当てる。詳細は本基本合意各条項及びコバショウ、債権者別途協議する内容に従うものとする。
第2章 会社分割及び株式交換
第2条(債権者による新設分割)
1 債権者は、平成17年4月1日を目処に、債権者の薬粧卸売事業のうち、北海道及び東海地区の事業につき、それぞれ新設分割手続を実施・完了しなければならない(以下、北海道の薬粧卸売事業を承継させて新設する会社を「(仮称)コバショウスズケン北海道」、東海の薬粧卸売事業を承継させて新設する会社を「(仮称)コバショウスズケン東海」といい、2社を合わせて「新設会社」という。)。
2 債権者は、前項の新設分割後の新設会社における営業の円滑な遂行に支障を来さぬよう、必要となる許認可につき、事前に申請等の手続を行い、分割期日において許認可を取得するものとする。
3 債権者が新設会社に対し承継する財産及び雇用契約その他の契約ならびに各新設会社の定款及び事業内容等については、コバショウ、債権者及び債務者が別途協議のうえ決定した内容に従って、分割計画書において定めるものとする。
第3条(コバショウによる吸収分割)
コバショウは、平成17年4月1日を目処に、債権者の薬粧卸売事業のうち、H&BC東日本支店及びH&BC近畿支店が従事する事業を吸収分割することとする。なお、吸収分割の条件については、本基本合意に定める方針に従うほか、コバショウ、債権者間にて別途協議の上締結する分割契約書によるものとする。
第4条(コバショウ、債務者による株式交換)
コバショウ及び債務者は、平成17年4月1日を目処に、債務者が保有する新設会社の株式と、コバショウ株式について、適正に算出された比率に基づき、株式交換を行うものとする。株式交換の条件については、本基本合意に定める方針に従うほか、別途コバショウ、債権者間にて定める株式交換契約書によって定めるものとする。
第5条(分割により承継する財産)
第2条の新設分割にかかる分割計画書、第3条の吸収分割にかかる分割契約書及び第4条の株式交換にかかる株式交換契約書の作成にあたっては、次の各項を前提として、各分割及び株式交換により承継する財産及び株式を調整するものとする。
1 コバショウが、吸収分割及び株式交換により取得する債権者の薬粧卸売事業の純資産額の合計は26.5億円であること。
2 債権者は、上記の対価としてコバショウの発行済株式総数の20%に相当する2,694株のコバショウ株式を取得すること。
第6条(従業員等の取扱い)
1 債権者は、第2条の新設分割及び第3条の吸収分割(以下あわせて「両分割」という。)に先立って、別途コバショウ、債権者間の合意により取り決めた内容による労働契約の承継、整理等が円滑かつ適法に行われるように、従業員の了承をとるなど適切な措置を講ずるものとする。
2 両分割により承継する従業員の労働条件は、両分割期日から1年間は同等の条件を維持するものとする。
第7条(表明及び保証)
1 コバショウは債権者に対し、本基本合意締結日及び両分割期日の前日において、別紙第1に記載の事項が真実かつ正確であることを表明し保証する。
2 債権者はコバショウに対し、本基本合意締結日及び両分割期日の前日において、別紙第2に記載の事項が真実かつ正確であることを表明し保証する。
第8条(コバショウの約束事項)
1 コバショウは、本基本合意に定める吸収分割及び株式交換に関し、コバショウの取締役会承認決議を示す当該取締役会議事録の謄本又は抄本、その他本基本合意に定める事項を実行するために必要とされる全ての資料の写しを、両分割期日の前日までに債権者に交付するものとする。
2 コバショウは、別紙第1の表明及び保証に違反する事実が判明した場合は、直ちに債権者に通知するものとする。
3 前2項のほか、別途債権者が実施したデュー・ディリジェンスにおいて、債権者が発見した問題点につき、コバショウ、債権者協議の上、両分割期日の前日までに適切な対策を講じるものとする。
第9条(債務者の約束事項)
1 本基本合意締結日から両分割期日の前日までの間、債権者の薬粧卸売事業は、従前の合理的慣行に従った、通常行われる営業のみを行うものとする。また、本基本合意締結日から両分割期日の前日までの間、債権者は薬粧卸売事業に関する以下の事項を実施してはならないものとする。
① 第三者との合併、営業譲渡、会社分割等
② 資産の処分(但し、従前の合理的慣行に従った、通常行なわれる営業に伴うものを除く。)
③ 借入、保証の実施(但し、従前の合理的慣行に従った、通常行われる営業に伴うものを除く。)
④ その他薬粧卸売事業の運営、資産、財務状況、経営成績、信用状況等に重大な悪影響を及ぼす事項
2 債権者は、本基本合意に定める両分割及び株式交換に関し、債権者の取締役会承認決議を示す当該取締役会議事録の謄本又は抄本、その他本基本合意に定める事項を実行するために必要とされる全ての資料の写しを、両分割期日の前日までにコバショウに交付するものとする。
3 債権者は、別紙第2の表明及び保証に違反する事実が判明した場合は、直ちにコバショウに通知するものとする。
4 前3項のほか、別途コバショウが実施したデュー・ディリジェンスにおいて、コバショウが発見した問題点につき、コバショウ、債権者協議の上、両分割期日の前日までに適切な対策を講じるものとする。
第10条(コバショウの諸手続実行の前提条件)
本基本合意に基づいて、コバショウが吸収分割及び株式交換を実行する義務は、債権者において以下の全ての項目が両分割期日の前日までに充足されていることを条件とする。
① 別紙第2に定める債権者による表明及び保証が真実かつ正確であること。
② 第9条各項に定める債権者の約束事項につき違反のないこと。
第11条(債権者の諸手続実行の前提条件)
本基本合意に基づいて、債権者が両分割及び株式交換を実行する義務は、コバショウにおいて以下の全ての項目が両分割期日の前日までに充足されていることを条件とする。
① 別紙第1に定めるコバショウによる表明及び保証が真実かつ正確であること。
② 第8条各項に定めるコバショウの約束事項につき違反のないこと。
第12条(補償)
1 各当事者は、本基本合意に定める表明及び保証が真正又は正確でなかったことあるいは第8条及び第9条に定める約束事項に違反したことに起因して生じる他の当事者の損害を補償するものとする。かかる損害には当該当事者が損害を回復するために必要とした弁護士費用その他の争訟関連費用を含むものとする。
2 別紙第2に定める債権者による表明及び保証が、真正又は正確でなかったことあるいは債権者が第9条に定める約束事項に違反した場合は、コバショウ又は債務者は前項の定めに加え、債権者の保有するコバショウ株式全てを、コバショウの直近の1株当たりの純資産額又は取得価額のいずれか低い価格にて買取ることができるものとする。この場合、コバショウは債権者に対する通知により、何らの義務を負うことなく本基本合意を解除することができる。
3 別紙第1に定めるコバショウによる表明及び保証が、真正又は正確でなかったことあるいはコバショウが第8条に定める約束事項に違反した場合は、債権者は第1項の定めに加え、コバショウ又は債務者に対し、債権者の保有するコバショウ株式全てを、債権者によるコバショウ株式の取得価額に相当する金額を対価として買い取らせることができるものとする。この場合、債権者はコバショウに対する通知により、何らの義務を負うことなく本基本合意を解除することができる。
4 本条第1項に基づく補償及び前2項に基づく売渡/買取を求める当事者は、本基本合意締結日の3年後の応当日までの間に(当該応当日を含む。)、原因事実を書面により特定して請求しなければならないものとする。本基本合意締結日の3年後の応当日の翌日以降は、いずれの当事者も表明及び保証ならびに約束について、何らの責任も負わないものとする。ただし、他の当事者の故意又は重過失による表明及び保証違反又は約束事項違反の場合についてはこの限りではない。
第13条(補償2)
債権者はコバショウに対し、本基本合意第2条及び第3条の会社分割により新設会社又はコバショウにその契約上の地位を承継させようとする得意先に対して債権者が平成17年3月末日現在有する売掛債権につき、平成17年4月1日から6ヶ月間これを保証するものとする。万一この期間中に、新設会社又はコバショウの当該債権の回収に遅滞又は不能が生じた場合には、債権者は、コバショウ又は新設会社に対し、別途コバショウ、債権者、債務者間にて合意する覚書に従い、これを補償するものとする。
第3章 コバショウの事業運営における協調
第14条(取締役)
1 コバショウの取締役の員数は、5名とする。
2 コバショウの取締役として、債権者は1名、債務者は4名をそれぞれ指名するものとし、債権者及び債務者は、コバショウの株主総会において、相手方の取締役候補が取締役に選任されるよう議決権を行使するものとする。
3 前項の取締役のうち、債務者指名の1名がコバショウの取締役会において代表取締役社長として選任されるよう、債権者及び債務者は、自己の派遣した取締役をして意思表示させるものとする。
第15条(資金調達に関する協力)
1 コバショウが、その業務の遂行上資金の調達を必要とする場合には、債権者及び債務者は、コバショウに独自に調達させることとする。
2 コバショウの独自の調達が困難な場合には、債権者及び債務者は別途協議のうえ、両者が必要と認めた場合には、債権者又は債務者が個別にコバショウに対し融資するか、又はコバショウの借入に債権者及び債務者が連帯保証するという協力を行うことによりコバショウの資金調達に協力するものとする。なお、この場合の債権者及び債務者の負担割合は、そのときの債権者及び債務者の議決権比率(総株主の議決権に占める各当事者の有する議決権の割合をいう。以下同じ。)によるものとする。ただし、債権者の議決権比率が20.0%を下回った場合は、この限りではない。
第16条(コバショウ、債権者及び債務者の役割)
1 コバショウの円滑な事業運営への支援のため、債権者及び債務者は次のとおりコバショウに協力するものとする。
債権者:仕入先との条件交渉、債権者得意先への共同営業、その他コバショウの求める営業支援全般、物流及びシステムに関わるインフラの共同利用、経営補佐
債務者:経営支援全般
2 債権者の円滑な事業運営への支援のため、コバショウは次のとおり債権者に協力するものとする。
コバショウ:コバショウ得意先への共同営業、物流及びシステムに関わるインフラの共同利用
第18条(競業避止)
1 債権者は、自己又は関連会社を通じて、両分割期日から本基本合意が終了するまでの間、コバショウの事前の書面による同意なしに、沖縄を除く日本において、薬粧卸売事業及びこれと同種の業務に従事してはならない。
2 債権者が、M&Aを実行するに際して、一時的に薬粧卸売事業に従事する場合は、前項の限りではない。ただし、この場合は事前に書面によりコバショウに通知し、当該薬粧卸売事業のコバショウへの移管につき、誠意を持ってこれを検討するものとする。
第4章 雑則
第19条(本基本合意の解除)
当事者のうちいずれか(以下、違反当事者という。)が次の事項に該当したとき、他方の当事者(以下、非違反当事者という。ここに言う他方当事者とはコバショウ及び債務者においては債権者を、債権者においてはコバショウ又は債務者を意味し、以下同様とする。)は書面による通知をもって本基本合意を解除することができる。この場合、非違反当事者の違反当事者に対する損害賠償の請求を妨げない。なお、第12条及び第13条に定める事態が生じた場合は、各条の定めに従うものとし、本条は適用されないものとする。
① 本基本合意の各条項の一に違反し、1ヶ月経過してもその違反状態が治癒されないとき。
② 差押、仮差押、仮処分、公売処分、租税滞納処分、その他公権力の処分を受け、又は会社整理開始、民事再生手続開始、会社更生手続開始、特定調停、若しくは破産その他倒産手続の開始の申立がなされたとき。
③ 営業の全部若しくは重要な一部を譲渡し、又はその決議をしたとき。ただし、当該営業譲渡につき、事前に非違反当事者の同意を得た場合を除く。
④ 自ら振り出し若しくは引き受けた手形又は小切手が不渡りとなる等支払停止状態に至ったとき。
⑤ 競売を申し立てられ、又は仮登記担保契約に関する法律第2条に基づく通知を受けたとき。
⑥ 監督官庁から営業停止又は営業免許若しくは営業登録の取消しの処分を受けたとき。
⑦ 前各号のほかパートナーとしての信頼関係を破壊する相当の事由(コバショウの事業運営に関する軽微な意見の相違にすぎない場合を除く。)が生じたとき。
第20条(本基本合意解除による権利行使)
1 前条により本基本合意を解除した違反当事者がコバショウ又は債務者の場合は、債権者は自らが保有するコバショウの株式の全部又は一部をコバショウ又は債務者に買い取らせることができ、この時の譲渡価格はコバショウの直近の1株当たりの純資産額又は取得価額のいずれか高い価格とする。
2 前条により本基本合意を解除した違反当事者が債権者の場合は、コバショウ又は債務者は、債権者が保有するコバショウの株式の全部又は一部を買い取ることができ、この時の譲渡価格はコバショウの直近の1株当たりの純資産額又は取得価額のいずれか低い価格とする。
3 第1項の権利行使の結果、債権者がコバショウの株主でなくなった場合には、債務者は、コバショウに対する債権者の貸付金を直ちにコバショウに代わって返済するとともに、コバショウの資金調達に対して債権者が行った連帯保証債務を免責的に引き受けるものとする。
4 第2項の権利行使の結果、債権者がコバショウの株主でなくなった場合でも、本基本合意に基づき既に行ったコバショウに対する貸付及びコバショウの資金調達に対して行った連帯保証を、a)当該権利行使をした日から3年後又はb)当該貸付による貸付金がコバショウにより完全に返還された日若しくは当該連帯保証債務が消滅した日のいずれか早く到来する日まで、引き続き継続するものとする。
第21条(本基本合意の実行)
債権者及び債務者は、本基本合意の各条項においてコバショウを当事者とする事項については、コバショウが当該事項を規定どおり実行するようにそれぞれの株主としての権利を行使するとともに、それぞれが指名した取締役をしてこれを遵守せしめる。
第22条(本基本合意の存続期間)
本基本合意に規定される権利義務は、本基本合意締結日からその効力を生じ、次の事由が発生するまでの間は存続する。
① 本基本合意の解除に合意したとき(この場合、債権者及び債務者が解除に合意した場合はコバショウも解除につき合意したとみなされるものとする。)
② 債権者又は債務者の議決権比率が3.0%を下回ったとき
③ コバショウの株式公開によりコバショウの発行済株式が証券取引所に上場される、又はコバショウの発行済株式が店頭市場で取引されるようになったとき
④ コバショウが解散となったとき
第23条(秘密保持)
1 各当事者は、本基本合意の履行及びコバショウの運営に関して知り得た、又は開示を受けた営業上若しくは技術上の情報及び資料(以下「秘密情報」という。)については、本基本合意期間中はもちろん、本基本合意終了後2年間は、これを秘密に保持するものとし、第三者に漏洩しないものとする。ただし、次の秘密情報については、この限りではない。
① 相手方から開示された又は知り得た時点ですでに公知であったもの
② 相手方から開示された又は知り得た後に公知となったもの(ただし、開示をうけた者の故意、過失により漏洩されたものを除く。)
③ 相手方から開示された又は知り得た時点ですでに保有していたもので、文書の証拠のあるもの
④ 第三者から秘密保持義務を負うことなしに合法的に取得したもの
⑤ 法令に基づき官公庁から開示を強制されたもの。
2 各当事者は、秘密情報について、自己の役員及び従業員に対しても前項同様の義務を課すものとする。
第27条(本基本合意の変更)
本基本合意に規定される権利義務等の変更は、当事者間にて協議の上、各当事者の記名押印ある書面によってのみなされるものとする。
第28条(疑義の解釈)
本基本合意に定めのない事項その他本基本合意に関し生じた疑義については、各当事者誠意をもって協議のうえ、決定するものとする。
第29条(唯一の合意)
本基本合意は、本基本合意の目的に関する当事者間の合意のすべてを構成する唯一のものであり、従来又は現時点の交渉、申し合わせの一切に優先する。

 

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