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「営業コンサルタント」に関する裁判例(9)平成31年 3月 7日 知財高裁 平30(行ケ)10141号 審決取消請求事件

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裁判年月日  平成31年 3月 7日  裁判所名  知財高裁  裁判区分  判決
事件番号  平30(行ケ)10141号
事件名  審決取消請求事件
裁判結果  請求認容  文献番号  2019WLJPCA03079002

要旨
◆「BULK AAA」の標準文字から成る本件商標と,「BULKHOMME」などの欧文字を横書きして成る引用商標2とは,いずれも「BULK」の部分が要部であり,両商標は類似すると判断された事例。

関連審決・命令
特許庁 無効2017-890079 平成30年 8月23日

出典
裁判所ウェブサイト

参照条文
商標法4条1項11号

裁判年月日  平成31年 3月 7日  裁判所名  知財高裁  裁判区分  判決
事件番号  平30(行ケ)10141号
事件名  審決取消請求事件
裁判結果  請求認容  文献番号  2019WLJPCA03079002

原告 株式会社バルクオム
同訴訟代理人弁護士 服部謙太朗
森一生
被告 カラーズ株式会社
同訴訟代理人弁護士 浅村昌弘
和田研史
和田嵩
松川直樹
同訴訟代理人弁理士 金井建
松宮尋統
伊藤由里

 

主文

1  特許庁が無効2017-890079号事件について平成30年8月23日にした審決を取り消す。
2  訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由

第1  請求
主文同旨
第2  事案の概要
本件は,商標登録無効審判請求に対する不成立審決の取消訴訟である。争点は,本件商標と引用商標の類否判断の誤りの有無である。
1  本件商標
被告は,次の商標(以下,「本件商標」という。)の商標権者である(甲1,2)。
(1)  登録商標  BULK AAA(標準文字)
(2)  登録番号  第5931607号
(3)  出願日   平成28年9月20日
(4)  査定日   平成29年2月21日
(5)  登録日   平成29年3月10日
(6)  商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務
第3類 化粧品,せっけん類,香料,薫料,歯磨き
2  特許庁における手続の経緯
原告が,本件商標についての商標登録無効審判請求(無効2017-890079号)をしたところ,特許庁は,平成30年8月23日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は,同月31日,原告に送達された。
3  審決の理由の要点
(1)  引用商標
原告が,本件商標の無効の理由として引用する商標は,次のとおりである(以下,それらを総称して「引用商標」という。)。
ア 登録第946635号商標(以下,「引用商標1」という。)は,以下のとおりの構成からなり,昭和45年4月23日に登録出願,第4類「せっけん類(薬剤に属するものを除く)歯みがき,化粧品(薬剤に属するものを除く)香料類」を指定商品として,昭和47年1月29日に設定登録され,平成13年9月19日に指定商品を第3類「せっけん類,香料類,化粧品,歯磨き」とする指定商品の書換登録がされたものである(甲3,4)。なお,引用商標1の商標権は,取消2018-300107号及び取消2018-300108号の審判事件がそれぞれ平成30年8月1日及び同月8日に確定し,取り消された。

イ 登録第5738351号商標(以下,「引用商標2」という。)は,以下のとおりの構成からなり,平成26年7月16日に登録出願,第3類「男性用の化粧品,男性用のおしろい,男性用の化粧水,男性用のクリーム,男性用の紅,男性用の頭髪用化粧品,男性用の香水類,男性用のせっけん類,男性用の歯磨き,男性用の香料,男性用の薫料,男性用のつけづめ,男性用のつけまつ毛」を指定商品として,平成27年2月6日に設定登録されたものであり,現に有効に存続しているものである(甲5,6)。

(2)  商標法4条1項11号該当性
ア 本件商標について
本件商標は,前記1のとおり,「BULK AAA」の文字を標準文字で表してなるものであるが,その構成態様についてみると,同書,同大の文字で表されており,全体としてまとまりよく一体に表されているといえる。
そして,本件商標からは,その構成文字全体に相応して「バルクトリプルエー」の称呼が生じるが,この称呼も格別冗長なものではなく,無理なく一連に称呼し得るものといえる。
また,本件商標の構成中の「AAA」の文字が,本件商標の指定商品の需要者に,その商品の品質の誇称表示を表したものと認識されると認め得るほどの事実は見いだせず,さらに,本件商標の構成中の「BULK」の文字部分のみを分離抽出して,本件商標の指定商品の需要者に認識されるというべき事実も見いだせない。
そうすると,本件商標は,一体不可分の商標というべきものであって,「バルクトリプルエー」の称呼のみを生じるものというのが相当である。
イ 引用商標について
引用商標の構成態様は,前記(1)のとおりの構成からなるものである。
ウ 本件商標と引用商標との類否について
本件商標と引用商標の外観は,明らかに異なり,外観上相紛れるおそれのないものである。
また,本件商標から生じる「バルクトリプルエー」の称呼と引用商標から生じる称呼とは,構成音数が明らかに異なり,称呼上相紛れるおそれのないものである。
さらに,「BULK」の文字から生じる観念については,原告の主張と被告の主張とが異なるが,需要者には本件商標から「BULK」の文字部分のみを分離抽出して認識されるものではないから,本件商標と引用商標とは,観念上相紛れるおそれのないものである。
そうすると,本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。
したがって,本件商標は,商標法4条1項11号に該当しない。
第3  原告主張の審決取消事由
1  取消事由1(本件商標と引用商標2の類否判断の誤り)
本件商標及び引用商標2の要部は,いずれも「BULK」であるから,両商標は類似する。その理由は,次のとおりである。
(1)ア  原告のBULK HOMME事業は,平成25年10月,洗顔料,化粧水,乳液の3種の商品につき,東急ハンズで取扱いが開始され,平成26年6月にはLoFtで取扱いが開始されるなど,感度の高い有名バラエティストアで取り扱われ,需要者の注目が高まった(甲52)。また,原告は,平成26年4月に,クラウドファンディングサイトで,当時の国内最高調達額となる3000万円の調達に成功し,スタートアップ企業に関するブログメディアで報道されるなどして,ベンチャー企業として注目されるようになった(甲53,54)。そして,平成27年7月には,スタータキットの発売を開始したが,発売開始から約2年半で10万セットを販売し(甲13),AMAZONのスキンケアトライアルセットで売上1位を記録した(甲55~57)。さらに,原告の商品は,セレクトショップQUOMISTが発表した「メンズコスメ大賞2016」で洗顔部門,化粧水部門で第1位となったほか(甲58),男性用ファッション誌において,「メンズノンノ」2016年12月号の保湿部門で第5位(甲18),「スマート」2017年1月号のスキンケア部門の化粧水部門で第1位(甲19),「メンズノンノ」2017年12月号の保湿部門で第4位(甲20),「スマート」2018年2月号の洗顔料部門で第1位(甲21)となった。原告の商品は,本件商標が登録査定された平成29年時点では,公式のオンラインストアのほか,全国500店舗以上の小売店・ヘアサロンにて提供されており,累計の販売数は100万個を突破していた(甲59)。男性向け化粧品市場は,グローバルでのトップシェア企業で年商500億円程度,国内でのトップシェア企業で年商40億円程度の規模と見込まれるが,平成28年のBULKHOMME事業の年商は6億円強であり,高いシェアを有していた。加えて,原告は,様々な広告宣伝活動を行っていた(甲60~80,102)。
以上によると,本件商標の登録査定時において,原告の社名である「バルクオム」及び引用商標2を含めた「BULK」とのブランドは周知であった。
イ  原告の商品容器の表示は,引用商標2の態様に始まり,その後,若干のデザインの変更があるが,以下の原告使用商標1・2を使用している(甲11,13~21)。
(原告使用商標1)

(原告使用商標2)

これらの使用態様では,いずれも「BULK」の文字部分が,他の文字部分と比べて太い書体で強調表示されており,「BULK」の文字部分が需要者に対して強く支配的な印象を与え,独立して看る者の注意をひくように構成されている。また,原告使用商標1・2のように,原告商品では,その後「BULK」をより一層強調した表記となっており,これを見た需要者には「BULK」との構成が強く印象に残る。
このような構成において,「BULK」との文字は,他の部分と分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものではないといえる。
また,引用商標2中の「HOMME」の文字部分は,「男性」を意味するフランス語であり,指定商品との関係において「男性用の化粧品」等であることを表示するために,必要かつ適切な表示として通用しているものであることは,経験則上明らかであるから(甲24~27,81~84),「HOMME」の文字部分から単独の出所識別標識としての観念,称呼は生じない。
以上によると,引用商標2において,需要者の注意をひく構成部分は,太く表示された「BULK」の文字部分にあり,この文字部分は需要者に出所識別標識として強く支配的な印象を与える構成要素に当たる。
(2)ア  本件商標の構成中「AAA」との文字部分は,次のとおり,商品の品質・等級を誇称するための一般的・普遍的な表示であり,出所識別標識としての称呼,観念が生じない。すなわち,金融庁に登録されている信用格付業者は,格付指標の最上位として「AAA」又は「Aaa」といった表記を使用している(甲88~91,103)。このような信用格付に関する表記は,例えば国債の格付変更等の際に報道されるほか(甲92,93),消費者が生命保険に加入する際に保険会社の持続可能性・信用度を検討するための指標として記載されるなど,広く用いられている(甲94~96,102)。また,三井住友海上火災では,インシュアランス・コンサルタント制度についてAAAを用いた格付を行っていたし(甲97),東洋経済新報社ではCSR企業総覧という特集誌を出版する際に,各社をAAAといった評価尺度で評価していた(甲98)。さらに,プロスポーツ関係では,米国の野球チームについてマイナーリーグの最上位であることを意味することは,一般需要者間に広く知られている。
確かに,原告が調査した限り,化粧品業界において,AAAが使用されている例は,被告のほかには見当たらないが,「医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律」や「不当景品類及び不当表示防止法」上,このような最上級を示す表記を具体的な根拠なしに付す行為が問題となるため,慎重な態度をとっているからであり,化粧品業界においても,AAAが出所識別機能を有する表示となるものではない。
また,「AAA」という文字のみからなる商標の登録例(甲38)は,「AAA」という構成が「BULK」のような出所識別機能を有する語句に引き続き使用されている場合に,需要者が「AAA」という文字を等級表示ではなく,出所識別表示と認識することを示すものではない。
以上によると,本件商標は,「BULK」と「AAA」の2つの文字部分を,その間に一文字分の空白を空けて配置した構成からなるが,前半の「BULK」と後半の「AAA」との間に観念上の結びつきはなく,全体として一つの観念を生じることもないし,後半の「AAA」は,一般的に最上位を意味する品質誇称表示として用いられているから,需要者は,本件商標中の「AAA」の文字部分を品質表示の誇称表示として理解する。
イ  本件商標の実際の使用態様においては,BulkAAAと,AAAの構成部分はBulkとの文字部分と比較して小さく,Bulkとの文字部分を修飾するものとして用いられている(甲7~11)。
ウ  一般消費者において,原告の商品と被告がマツモトキヨシから委託を受けて生産している上記イの表記が付された商品(以下,「被告の商品」という。)について,出所の誤認混同が生じている(甲28~33,86,87)。
エ  以上によると,本件商標では,「BULK」の文字部分が需要者に対して強く支配的な印象を与え,独立して看る者の注意をひくように構成されている。
オ  一般論としてBULKという単語が辞書にも掲載されている単語であるとしても,前記(1)のとおり,化粧品の分野においては,「BULK」との文字部分は,原告を示す表示として需要者に周知であり,需要者に対して支配的な印象を与える。
(3)  上記(1),(2)のとおり,本件商標の要部は「BULK」であり,引用商標2の要部も「BULK」である。
これらの要部は,外観が同一で,いずれも「バルク」との称呼が生じる。
また,引用商標2に接した需要者は,バルクオム社を示すブランドという観念を抱くのに対し,本件商標からも同様の観念を抱く。
したがって,本件商標と引用商標2とは,類似する。
2  取消事由2(本件商標と引用商標1の類否判断の誤り)
引用商標2では,「BULK」と「HOMME」は同一の書体で均等間隔に連続的に記載されているのに対し,本件商標では,「BULK」と「AAA」の間に一文字分の空白が設けられており,引用商標2よりも「BULK」を独立の要部として抽出しやすい構成となっている。
そして,引用商標2の登録審査では,引用商標1が商標法4条1項11号の先願先登録類似商標として引用された(甲85)。すなわち,「BULKHOMME」の要部が「BULK」と認定された。
そうすると,本件商標よりも要部抽出が困難である引用商標2の「BULKHOMME」と引用商標1「Barque/バルク」(判決注・「/」は改行を示す。以下,引用箇所において同じ)とは類似すると認定されたのであるから,引用商標2よりも「BULK」との構成部分が抽出しやすい構成となっている本件商標においても,「BULK」が要部であると認定されるべきである。
そして,本件商標と引用商標1とは,称呼が一致するから,類似する。
第4  被告の主張
1  取消事由1(本件商標と引用商標2の類否判断の誤り)に対し
(1)ア  化粧品分野では,化粧品との関係において,「BULK」(バルク)との文字列又は呼称は,化粧品の中身を意味する語として広く一般に使用されており,特定の企業を指す語として使用されていない(甲37の1~15)。原告自身も,自社のウェブサイトにおいて,「バルクとは,美容業界で製品の“中身”そのものを指す言葉です。」といった説明をしており,他の化粧品関連企業と同様に,「BULK」(バルク)を「中身」を示す語として使用している(甲36の1~3,甲52,76)。原告自身が「BULK」(バルク)を自社を識別するために使用しているという証拠もない。
イ  原告が提出した各証拠によると,原告は,原告ブランドを「BULKHOMME」(バルクオム)として,取引者及び需要者に認識させようとしており,実際に取引者及び需要者はそのように認識しているから(甲13,19~21,52,59~80,101等),「BULK」というブランドが周知であったとは認められない。
また,原告ブランドが「BULK」であるか「BULKHOMME」であるかにかかわらず,原告ブランド自体が周知とはいえない。原告は,原告の商品は平成29年度時点で全国500店舗以上の小売店・ヘアサロンにおいて提供されているとするが,平成29年度において,全国にはヘアサロンだけで少なくとも24万店舗以上存在するから(乙1),原告の商品は,全国の小売店・ヘアサロンのうちわずか0.2%にも満たない小売店・ヘアサロンで提供されているにすぎず,ほとんど普及していないに等しい。国内のトップシェア企業の年商が40億円であること,原告のBULKHOMME事業の年商が6億円であることを前提に,原告が高いシェアを有しているとの主張は,国内市場における企業の数や各企業の正確な年商を立証しておらず,証拠に基づかない主張である。原告が原告の商品に関して様々な広告活動を行っているという主張も,原告提出の証拠は,原告以外の者の商品も多数掲載されている出版物であり,とりたてて原告の商品又は原告ブランドが周知であることを示すものではない。
ウ(ア)  引用商標2は,上段に「BULKHOMME」の文字が配され,下段は縦方向の1本の罫線で区切られた左側に上下二段で書き表された「SIMPLE/LUXURY」の文字が,右側に上下三段で書き表された「TRUE LUXURY IS ABOUT/SIMPLICITY.THIS IS WHAT/OUR BRAND IS BASED UPON.」の文字が配されている。
このように,上段の「BULK」の文字が引用商標2の全文字数に占める割合は,ごくわずかであるし,面積を基準にしても,上段の「BULK」の文字部分が引用商標2全体に占める割合は1/4未満である。
(イ) 引用商標2の上段の「BULKHOMME」の文字については,「BULK」部分がやや太字で表されているが,続く「HOMME」とは同一の書体で均等間隔に記載されている。そこで,上段の「BULKHOMME」は,一連一体として看取されるのが通常である。
(ウ) 引用商標2の構成中,出所識別標識として認識される部分が「BULK」ではないことは,原告自身も,本件審判の審判請求書における請求の理由中で「次に,引用商標2は,上記のとおりの構成よりなるところ,出所識別標識として認識される構成部分は上段の『BULKHOMME』の文字部分であり・・・」と自認している。
エ  以上によると,引用商標2に要部と評価できる一部分はなく,少なくとも,引用商標2の「BULK」部分が需要者に出所識別標識として強く支配的な印象を与える構成要素に該当するとの評価はできないから,引用商標2を全体的に考察して本件商標と類否判断すべきである。
仮に,引用商標2に要部があるとしても,以上に加え,「HOMME」の称呼は「オム」と短い2音であり,前後の言葉と相まって一連になりやすい語であり,「バルクオム」の呼称も5音と短いこと,原告の名称は「株式会社バルクオム」であり,フランス語を理解できる者が少ない我が国では片仮名の「オム」から「男性」という観念が想起されることはなく,原告の商標は「バルクオム」と一連で認識されていることを併せ考慮すると,「BULK」ではなく「BULKHOMME」が要部である。
オ(ア)  原告は,原告の商品容器の表示に,原告使用商標1・2を使用していることを主張するが,引用商標2以外に原告使用商標1・2が使用されていることは,原告が常に「BULK」ではなく「BULKHOMME」を含む標章について商標権を取得し,それらを原告の商品等に付してきたこと,すなわち,原告が原告商品の識別標識として「BULKHOMME」又はこれを含む結合商標を使用してきたことを示しているにすぎず,需要者に「BULK」という構成が強く印象に残るとはいえない。
(イ) 原告は,引用商標2は,「BULK」の文字部分が,他の文字部分と比べて太い書体で強調表示されており,「BULK」の文字部分が需要者に対して強く支配的な印象を与えるなどと主張する。
しかし,このような主張が認められるとすると,自他識別力がないか,特定人に独占させることが不適当であること等の理由により商標登録の要件(商標法3条1項各号)を満たさない文字列を太い書体にして,他の文字部分を付加して登録すれば,上記商標登録の要件を満たさない文字列を特定の者が独占して利用できるということになり,商標法3条1項の趣旨を没却する不合理な結論になるから,原告の主張は,理由がない。
(ウ) 原告は,「HOMME」の文字部分から単独の出所識別標識としての観念,称呼は生じないと主張する。
しかし,原告指摘の甲24~27,81~84には,「HOMME」又は「オム」以外に男性用化粧品であることが分かる表記(男性用であることが分かる文字,又は男性の写真等)が併記されているが,そのような併記があること自体が,各証拠の作成者が「HOMME」又は「オム」の表記単独では需要者に男性用であることを看取させることができないと考えたからに他ならない。
また,フランス語で男性を示す「HOMME」は,我が国においてフランス語が普及していないことを考慮すると,特定の商品・役務等と結びつき難く,一般に識別力は強いと評価されるべきである。「HOMME」単独での商標登録も認められている(乙2の1・2)。
(エ) 仮に,引用商標2の「BULK」の文字部分が,「HOMME」の文字部分と比べて太い書体で強調表示されており,「BULK」の文字部分が需要者に対して強く支配的な印象を与え,「HOMME」の文字部分から単独の出所識別標識としての観念,称呼は生じないとしても,それらを総合考慮した結果は,原告が「BULK」部分を太字にした「BULKHOMME」という文字列(造語)を原告の商品を識別する標識として使用し,需要者はこの「BULKHOMME」をもとに原告の商品の出所を識別していると評価できるにすぎないから,引用商標2の「BULK」の文字部分が需要者に出所識別標識として強く支配的な印象を与える構成要素に当たるとはいえない。
(2)ア  審決が判断したとおり,本件商標は,「BULK AAA」の文字を標準文字で表してなるものであるが,その構成態様についてみると,同書,同大の文字で表されており,全体としてまとまりよく一体に表されている。
また,本件商標からは,その構成文字に相応して「バルクトリプルエー」の称呼が生じるが,この称呼も格別冗長なものではなく,無理なく一連に称呼し得る。
したがって,本件商標は,一体不可分の商標というべきものであって,「バルクトリプルエー」の称呼のみを生じるものと評価すべきであり,本件商標から「バルク」の称呼が生じると評価すべき理由はない。
イ  「BULK」は,通常の辞書に載っている一般的な英単語であり,これ単独で造語とみなされて強い識別力を発揮することはない。
また,前記(1)アのとおり,「BULK」(バルク)は,化粧品分野では,化粧品の中身を意味する語として広く一般に使用されており,特定の企業を指す語として使用されていない。そこで,化粧品との関係においては,「BULK」は,より一層識別力の弱い語である。
ウ  本件商標の構成中「AAA」の文字は,それ単体での商標登録が認められる識別力のある語であり,本件商標の構成中「BULK」のみが出所識別標識としての機能を有するものとはいえない。
原告提出の各証拠を検討しても,「AAA」は,株式や債権又はそれらの発行主体である企業や政府に対する信用力の格付けに用いられることはあっても,本件商標の指定商品において品質表示として用いられていることを示す客観的な証拠は何ら示されておらず,そのような事実はない。投資に興味のある消費者が「AAA」の表記を目にすることはあっても,化粧品を購入する消費者一般にとってその意味が常識であるとはいえない。我が国を代表する国語辞典にも「AAA」又は「トリプルエー」の語は掲載されていない(乙3の1・2)。
むしろ,「AAA」の文字について,多数の商標登録出願,登録例が存在しており(甲38の1~10),特に,本件商標と同一,類似の商品を指定して「AAA」が登録査定に至っている例があること(甲38の1~3)を考慮すると,本件商標の指定商品との関係において「AAA」が識別力を有することは明らかである。
また,仮に,「AAA」が最上級表示を意味し,識別力が弱いとしても,前記1(1)アのとおり,「BULK」も化粧品との関係では識別力が非常に弱いものであるから,本件商標が識別力の弱い語同士を組み合わせて,その全体でのみ識別力を有していることを意味しているにすぎず,「AAA」が最上級表示であることから本件商標の要部が「BULK」であるという結論を導けるわけではない。
エ  以上によると,本件商標の要部が「BULK」であるとはいえない。
オ  原告は,一般消費者において,原告の商品と被告の商品について,出所の誤認混同が生じていると主張するが,仮に,誤認混同が生じていたとしても,その混同が「BULK」の文字部分が需要者に対して強い印象を与えた結果によるものか否かを原告は立証していないから,本件商標の要部が「BULK」である否かとは関連性がない。また,原告の商品が男性向けであるのに対し,被告の商品は女性向けであるが,男性向け商品と女性向け商品は各小売店における商品陳列用棚が明確に分かれているから(乙5~8の各1・2),誤認混同が生じるとは考え難い。さらに,原告提出の甲28~33,86,87については,いずれも作成者の身元がはっきりせず,原告との関連性や利害関係の有無が判断できないから,およそ信用できないし,甲86,87については,作成日時が不明であって,本件紛争が生じた後に作成されたものかどうか判断できない。
(3)  上記(1),(2)のとおり,本件商標及び引用商標2の要部は,いずれも「BULK」ではないし,他に一部分を抽出すべき理由もないから,本件商標及び引用商標2を対比する際には,両商標の全体を観察して考察すべきである。
そして,審決が判断したとおり,本件商標と引用商標2の外観は,明らかに異なり,外観上相紛れるおそれはない。
また,本件商標から生じる「バルクトリプルエー」の呼称と,引用商標2から生じる呼称とは,構成音数が明らかに異なり,呼称上相紛れるおそれはない。
さらに,本件商標は,一連一体の造語として捉えられるものであるから,特定の観念を有するものではなく,引用商標2は,観念を有しない「BULKHOMME」の下段にある縦方向の1本の罫線で区切られた左右に示された英文に対応する観念が生じるが,それらを対比しても,観念上相紛れるおそれはない。
したがって,本件商標と引用商標2とは,外観,称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標である。
仮に,引用商標2の要部が「BULKHOMME」であるとしても,本件商標と「BULKHOMME」とは,文字数(全長)が大きく異なっているから,外観が明らかに異なり,外観上相紛れるおそれはない。また,本件商標から生じる「バルクトリプルエー」の呼称と「BULKHOMME」から生じる「バルクオム」の呼称とは,構成音数が明らかに異なり,呼称上相紛れるおそれはない。さらに,本件商標及び「BULKHOMME」は,いずれも造語であって,何ら観念を生ぜず,それらを対比しても,観念上相紛れるおそれはない。したがって,本件商標と引用商標2とは,外観,称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標である。
2  取消事由2(本件商標と引用商標1の類否判断の誤り)に対し
(1)  原告は,本件商標よりも要部抽出が困難である引用商標2の「BULKHOMME」と引用商標1の「Barque/バルク」とは類似すると認定されたのであるから,引用商標2よりも「BULK」との構成部分が抽出しやすい構成となっている本件商標においても,「BULK」が要部であると認定されるべきであるなどと主張するが,次のとおり,理由がなく,本件商標の要部は「BULK」ではない。
まず,本件商標の要部がどの部分であるかは,本件商標自身の問題であって,他の商標との関係で議論されるべきものではない。
また,前記1(1)のとおり,引用商標2の要部は「BULK」ではないから,仮に「本件商標よりも要部抽出が困難である引用商標2」という関係があるとしても,本件商標の要部が「BULK」であるとはいえない。原告又は引用商標2に係る出願手続の代理人が,引用商標2の「BULK」の文字部分が引用商標2の全文字数に占める割合がごくわずかであること,面積を基準にしても引用商標2全体に占める割合が1/4未満であること,「BULKHOMME」の各文字は同一の書体で均等間隔に記載されていること,引用商標2の指定商品分野では「BULK」は識別力を有さず要部とはいえないこと等を登録審査手続で主張することを怠ったことをもって,引用商標2の要部が「BULK」と評価できるわけではない。
さらに,商標の要部がどこであるかは,空白の有無だけで決まるものではないから,「本件商標よりも要部抽出が困難である引用商標2」ということもできない。
(2)  本件商標と引用商標1の構成態様は,いずれもアルファベット文字からなるが,文字数や綴りが異なっており,外観上相紛れるおそれはない。
また,本件商標から生じる「バルクトリプルエー」の呼称と引用商標1から生じる呼称「バーク」(甲39)とは,構成音数が明らかに異なり,呼称上相紛れるおそれはない。
さらに,本件商標は,一連一体の造語として捉えられるものであるから,特定の観念を有するものではなく,引用商標1は,我が国ではあまり使われていない語であるから特定の観念を有しないか,せいぜい「帆船」との辞書上の意味(甲39)を観念として有しているにすぎず,いずれにしても,観念上相紛れるおそれはない。
したがって,本件商標と引用商標1とは,外観,称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標である。
(3)  仮に,本件商標の要部が「BULK」であるとしても,次のとおり,本件商標と引用商標1とは,非類似の商標である。
「BULK」と引用商標1の構成態様は,いずれもアルファベット文字からなるが,文字数や綴りが異なっており,外観上相紛れるおそれはない。
また,「BULK」及び引用商標1は,いずれも我が国ではあまり使われていない語であるから特定の観念を有しておらず,観念上相紛れるおそれはない。化粧品業界では「BULK」を化粧品の中身を示す語として使用することがあるが(甲37の1~15),それを前提にしても,引用商標1は,せいぜい「帆船」との辞書上の意味(甲39)を観念として有しているにすぎず,観念上相紛れるおそれはない。
さらに,引用商標1は,本件商標の登録査定時には存在していたものの,平成30年5月23日に不使用を理由に商標登録が取り消されたから(乙9),引用商標1は,本件商標の登録査定時において,正当な権利者による使用の上に形成されるべき信用を保護すべき実体を欠く商標であった蓋然性が高い。そこで,このような取引の実情を考慮すると,本件商標と引用商標1との間には,商品・役務の出所についての混同が生じる可能性も皆無であった。
第5  当裁判所の判断
1  取消事由1(本件商標と引用商標2の類否判断の誤り)について
(1)  結合商標の構成部分の一部による類否判断の可否
商標法4条1項11号に係る商標の類否は,同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が,その外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して,その商品又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべきものであるが,複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて,商標の構成部分の一部(以下,「特定構成部分」という。)が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などには,特定構成部分を抽出し,特定構成部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することが許されるものと解される。
(2)  本件商標について
ア 本件商標の構成態様
本件商標は,前記第2の1のとおり,欧文字「BULK AAA」の標準文字から成り,「BULK」と「AAA」との間に1文字分の空白があることから,複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解される。
イ 欧文字「BULK」について
(ア) 後掲の証拠及び弁論の全趣旨によると,欧文字「BULK」について,次のとおり,認められる。
a 欧文字「BULK」と綴りを同じくする「bulk」は,「容積,大きさ,(船の)積み荷,(船荷の包装をしていない)ばら荷」などの意味を有する英単語である(小学館ランダムハウス英和大辞典第2版,平成6年1月1日)。日本語の辞書の一部でも,「バルク【bulk】」は,「船舶で,ばら積みの貨物。石炭・穀物・原油など。」(大辞林,三省堂,昭和63年11月3日),「①ばら荷。②粉状や粒状のものが,一塊りになっていること。③大量に扱うこと。④商品を大量に安値で売買すること。」(大辞林第三版,三省堂,平成18年10月27日)を意味する語として収載されている。
b(a) 平成27年4月頃発行のNile’s NILE(ナイルスナイル)2015年4月号には,原告の商品に関する記事において,パッケージに「BULK HOMME」と大書された原告の商品の写真と共に,「バルクオムシリーズ(洗顔料・化粧水・乳液・日焼け止め)は,パッケージコストや広告費なども抑え,あくまでも中身(バルク)重視の製品となっている。」との記載がある(甲64)。
(b) 平成28年1月頃発行のGISELe MEN(ジゼル メン)2016年1月号には,原告の商品の広告が掲載されており,同広告には,引用商標2が記載されているほか,パッケージに「BULK HOMME」と大書された原告の商品の写真と共に,「バルク(中身)を極めるメンズスキンケア」との記載がある(甲67)。
(c) 平成28年9月1日発行のMen’s PREPPY(メンズプレッピー)2016年10月号には,原告の商品の広告が掲載されており,同広告には,「BULKとは中身のこと」,「BULK(バルク)とは化粧品製造業界の用語で“容器の中の液体” つまり,化粧品の中身そのものを指す言葉です。」との記載がある(甲76)。
(d) 原告のウェブサイトには,平成30年2月9日現在,「ABOUT US」とのページにおいて,「BULK HOMMEを象徴する洗顔料,化粧水,乳液のパウチ容器。・・・それは,安全性と安定性を実現した上で,バルク(中身)で勝負するという私たちの意志の体現であり,アイデンティティなのです。」,「BULKとは英語で『容器の中身』,HOMMEはフランス語で『男性』を表します。・・・異なる言語からなるブランド名には,バルクの研究開発を通して世界中の男性に『ベーシックスキンケア』の答えを示し続けるという,想いと約束が込められています。」との記載がある(甲36の1)。
(e) オムニ7-ロフトのウェブサイトには,平成30年2月9日現在,「BULK HOMME」のページにおいて,「BULKとは英語で『容器の中身』,HOMMEはフランス語で『男性』を表します。・・・異なる言語からなるブランド名には,バルクの研究開発を通して世界中の男性に『ベーシックスキンケア』の答えを示し続けるという,想いと約束が込められています。」との記載がある(甲36の3)。
(f) ロフトのウェブサイトには,平成30年2月19日現在,「メンズコスメブランドBULK HOMME(バルクオム)」のページにおいて,「バルクとは,美容業界で製品の“中身”そのものを指す言葉です。」,「製品の中身(バルク)で期待に答えます」との記載がある(甲36の2)。
(g) 「バルクオムの効果が凄い!」と題するウェブサイトには,平成30年2月14日現在,「バルクオムの効果で1番実感できるのは!これだ!」のページにおいて,「男性用の洗顔料・化粧水・乳液として人気のある『バルクオム(BULK HOMME)』ですが,他のメンズコスメと比べると,価格がやや高いという点が気になるところです。・・・『バルクオム』はその製品名が示す通り,バルク(製品の中身)の品質を高めることに主眼を置いています。」との記載がある(甲42の2)。
(h) 原告のウェブサイトには,平成30年11月5日現在,「ABOUT」とのページにおいて,「BULK(中身)を追求した,至高のプロダクト」との記載がある(甲52)。
c(a) マツモトキヨシのウェブサイトには,平成29年11月30日現在,「BulkAAA」のページにおいて,「美しくなるための本質をすべて,バルク(中身・品質)に凝縮し,ついに誕生。」,「Bulk:バルク=化粧品の中身・品質」との記載がある(甲7)。
(b) FACYのウェブサイトには,平成30年2月16日現在,「コスパ最強スキンケアブランドBulk AAAがデビュー!ディープモイスチュアシリーズが10月14日に発売」のページにおいて,「過剰な外装資材の削減,原材料の直接取引などコストを必要最小限に抑え,浮いた分のコストを『Bulk=中身そのもの』の品質向上に投じることで,肌悩みを抱える女性たちが効果を実感できるクオリティの商品を,使い続けることができる価格でお届けします。」との記載がある。上記ウェブサイトによると,同ページは,平成29年10月17日に作成されたものと推認される。(甲49の1)
(c) Woman Wellness Onlineのウェブサイトには,平成30年2月16日現在,「マツキヨPB『Bulk AAA(バルクトリプルエー)』は“最高のコスパ”がコンセプト!」と題する記事において,「マツキヨがプライベートブランド『BulkAAA(バルク トリプルA)』シリーズを発売。過剰な外装資材の削減や原材料の直接取引などコストを必要最小限に抑えることで,そのコストを『バルク(中身)』の品質向上に投じることをコンセプトとした化粧品ブランドです。」,「過剰な外装資材の削減や,原材料の直接取引などコストを必要最小限に抑え,そのコストを『バルク(中身)』の品質向上に投じるmatsukiyoブランドの化粧品シリーズ。自信がある『バルク』を見て頂くために,3商品すべてクリアボトルを採用しています。」との記載がある。上記ウェブサイトによると,同記事は,平成29年11月11日に作成されたものと推認される。(甲49の4)
(d) 「大人の男女が意識する3473a(みだしなみ)」と題するウェブサイトには,平成30年2月16日現在,「コスパスキンケアの勢力図が変わる!【Bulk AAA(バルク トリプルA)】」と題する記事において,「なんでも過剰な外装資材の削減や,原材料を直接取引することでコストを最小限に抑え,『Bulk(バルク・中身)』の品質向上に投じることをコンセプトとしているそう。」との記載がある。上記ウェブサイトによると,同記事の表題直下には「11月21日」との記載があり,前記(a)~(c)を併せ考慮すると,平成29年11月21日に作成されたものと推認される。(甲49の5)
(e) VOCEのウェブサイトには,平成30年2月16日現在,「中身・品質(Bulk)にこだわるコスパコスメ!マツキヨのBulk AAA」と題する記事において,上記表題のほか,「中でもBul AAA〔判決注・「Bulk AAA」の誤記と認める。〕は,過剰な外装資材の削減と原材料の直接取引などコストを必要最小限に抑え,中身(Bulk)の品質向上のためにコストを投じたという素晴らしいアイテムです。」との記載がある。上記ウェブサイトによると,同記事は,平成29年12月29日に作成されたものと推認される。(甲49の6)
d 三丸機械工業株式会社のウェブサイトには,平成30年2月9日現在,公式ブログの「化粧品の製造工程って?意外と知らない『化粧品の作り方』」の記事において,「出来上がった製品の中身のことを『バルク』といい,バルクのチェックは1回1回の生産ごとに細かく行われることがほとんどです。」,「バルクは専用の充填機で容器に入れられ,ここでも人の目でチェックしながら包装されていきます。」との記載がある。上記ウェブサイトによると,同記事は,平成26年11月30日に作成されたものと推認され,また,三丸機械工業株式会社は,化粧品の原料を混合・撹拌する機械である「ホモジナイザー」の「専門メーカー」であると認められる。(甲37の4)
e ナチュラルサイエンスのウェブサイトには,平成30年2月9日現在,「化粧品づくりの現場をご紹介♪ナチュラルサイエンスのこだわり工場」のページにおいて,「化粧品バルク(中身)を作るエリアでは,ホコリの出ない作業着,靴に着替えます。」,「バルク(中身)の製造はもちろん,容器を袋に詰めている工程でも複数の人間で絶えず製品の状態をチェックしています。」との記載がある。このページの表題近傍には,「2015/03/18」と記載されており,平成27年3月18日に作成されたものと推認される。(甲37の3)
f 株式会社ファンケルのウェブサイトには,平成30年2月9日現在,「化粧品の製造管理」のページにおいて,「混ぜ合わせた原材料は真空乳化釜に送られ,ここで化粧品の中身(バルク)がつくられます。出来上がったバルクは,ストレージタンク室にパイプで送られ,貯蔵されます。」,「中身(バルク)をびんに詰めます。」との記載がある(甲37の1)。
g アルビオン(ALBION)のウェブサイトには,平成30年2月9日現在,「熊谷工場見学」のページにおいて,「原料を秤量・混合し,バルクと呼ばれる化粧品の中身をつくります。出来上がったバルクは容器に詰める前に厳しく品質チェックされます。」との記載がある(甲37の2)。
h 工場タイムズのウェブサイトには,平成30年2月9日現在,平成27年12月19日公開,平成29年9月15日更新の「女性用だけじゃない!肌に触れる化粧品の丁寧な製造工程を知る!」のページにおいて,「次に,決められた分量ごとに原材料を均一に混ぜる作業が行われます。この工程によって『バルク』と呼ばれる化粧品の中身が製造されます。」との記載がある(甲37の5)。
i ジェイオーコスメティックス(JO Cosmetics)のウェブサイトには,平成30年2月9日現在,「採用情報」の「社員インタビュー」のページにおいて,「製造したバルク(化粧品の中身)の検査を行っています。pHや比重などの物性測定や,バルクを腕に塗って色や感触を標準品と比較し,正しいものが製造されているかどうか検査しています。」との記載がある。上記ウェブサイトによると,上記記載は,2017年入社の社員の発言として記載されており,平成29年4月以降に作成されたものと推認され,また,ジェイオーコスメティックスは,化粧品のOEMメーカー(受託製造業者)であると認められる。(甲37の6)
j ピアスグループのウェブサイトには,平成30年2月9日現在,「新卒採用情報」の「仕事・社員紹介」の「生産技術」のページにおいて,「はじめに,スキンケア製品のバルク(化粧品の中身)を製造する機械の使用方法を学び,目指す質感や使用感に沿った製品を実現するための技術を学びました。・・・目標とするパフォーマンスを確実に実現するために,バルクのツヤやキメ,使用感を確かめながら機械を調整する必要があり,臨機応変に対応する力を身につけていきました。」,「調製グループに所属し,現場でスキンケア製品のバルク(化粧品の中身)の調製技術を学ぶ。」,「スキンケア研究部において,バルクの処方設計を経験。」,「掛川工場に戻り,量産グループでバルクのスケールアップや品質向上について検討する。」,「バルクのツヤやキメ,使用感を確認しながら,量産化に向けた調製を行う。」との記載がある。上記ウェブサイトによると,ピアスグループは,スキンケアからメイクアップ製品,食品,医療機関向け製品まで,幅広く製品を手がけていると認められる。(甲37の7)
k 株式会社桃谷順天館のウェブサイトには,平成30年2月9日現在,「化粧品 求人 採用 新卒」の「先輩の声 品質管理」のページにおいて,「私は化粧品の中身(バルク)が正しくできているかの分析や検査を行なっています。」,「当日充填を行なうバルクの検査」,「バルク検査」との記載がある(甲37の8)。
l 株式会社ドゥ・ベストのウェブサイトには,平成30年2月9日現在,「商品の安全性,品質管理について」のページにおいて,「アメリカや日本,EU等様々な国で製造された原材料を使用しても,化粧品のバルク(中身)を中国で製造した場合,その製品は“MADE IN CHINA”となります。」との記載がある(甲37の9)。
m 株式会社K&Sのウェブサイトには,平成30年2月9日現在,「化粧品OEMの流れ」のページにおいて,「化粧品のバルク(中身)を製造いたします。容器・化粧箱・バルク等の品質管理の中,生産いたします。」との記載がある(甲37の10)。
n 株式会社ピュールのウェブサイトには,平成30年2月9日現在,「生産体制」のページにおいて,「バルク(化粧品の中身)の製造」,「バルク検査・管理」,「製造したバルクは,保管室で検査・管理します。」,「バルクを充填します。」との記載がある。上記ウェブサイトによると,株式会社ピュールは,化粧品,ヘアケア・美容健康商品のOEM(受託製造)などを業とするものと認められる。(甲37の11)
o 三粧化研株式会社のウェブサイトには,平成30年2月9日現在,「設備紹介」のページにおいて,「真空乳化装置を使用し,バルク(化粧品の中身)を製造する現場です。」,「【バルク・製品試験とは?】工場で製造したバルク(化粧品の中身)と最終製品の物理試験(pH,比重,粘度等)と微生物試験(細菌,真菌)の試験を実施する事です。」,「バルク保管庫 調製室で生産し,充填前のバルク(化粧品の中身)の保管庫です。」,「バルク製造設備」,「バルク生産能力」との記載がある。上記ウェブサイトによると,三粧化研株式会社は,化粧品のOEM(受託製造)を業とするものと認められる。(甲37の12)
p アイメイトのウェブサイトには,平成30年2月9日現在,「生産管理・品質管理」のページにおいて,「アイブロウ,アイライナー,リップライナー等,バルク(化粧品の中身)の成型状態の確認にX線透視装置による検査を導入しております。これにより,製造したバルクを破壊することなく,選別,或いは製造設備の調整等の対応が迅速に行えることとなり,より効率の良い生産活動の実現が可能となりました。」との記載がある。上記ウェブサイトによると,アイメイトは,メイクアップ化粧品のOEM(受託製造)を業とするものと認められる。(甲37の13)
q 株式会社アイリードのウェブサイトには,平成30年2月9日現在,「工場案内」のページにおいて,「化粧品のバルク(中身)を製造する工場です。」との記載がある。上記ウェブサイトによると,株式会社アイリードは,化粧品のOEM(受託製造)を業とするものと認められる。(甲37の14)
r 株式会社ミリオナ化粧品のウェブサイトには,平成30年2月9日現在,「製品開発」のページにおいて,「化粧品のバルク(中身)を製造いたします。」,「容器・化粧箱・バルク等を受け入れ厳しい品質管理の中,生産いたします。」との記載がある。上記ウェブサイトによると,株式会社ミリオナ化粧品は,基礎化粧品・医薬部外品,健康食品の受託製造を業とするものと認められる。(甲37の15)
(イ) 前記(ア)によると,欧文字「bulk」は,我が国においても,「船舶のばら積みの貨物」などを意味する英単語として相応に知られていたことが認められる。
また,遅くとも平成30年2月9日には,片仮名「バルク」は,化粧品製造業界において,「化粧品の中身」を意味する用語として使用されていたことが認められ,本件商標の査定日(平成29年2月21日)前の使用例(前記(ア)b(a)~(c),d,e)が複数存在することを考慮すると,本件商標の査定日においても,片仮名「バルク」は,化粧品製造業界において,「化粧品の中身」を意味する用語として使用されていたものと推認される。しかし,前記(ア)b~rの広告やウェブサイトには,化粧品の受託製造業者のものが少なくなく,これらは必ずしも一般消費者に向けられたものとはいい難い上,欧文字「BULK」が「化粧品の中身」を意味する用語である旨を示したものは原告及び被告の商品に関するもの以外にはなく,また,欧文字「BULK」や片仮名「バルク」という用語を当然に「化粧品の中身」を意味する用語として使用するのではなく,「化粧品の中身」という意味である旨を併記して使用するものがほとんどである。そうすると,本件の全証拠によっても,本件商標の査定日において,欧文字「BULK」が,本件商標の指定商品(化粧品,せっけん類,香料,薫料,歯磨き)の一般消費者を含む取引者,需要者に,「化粧品の中身」を意味する用語として知られていたことを認めるには足りない。このことは,引用商標2の指定商品(男性用の化粧品,男性用のおしろい,男性用の化粧水,男性用のクリーム,男性用の紅,男性用の頭髪用化粧品,男性用の香水類,男性用のせっけん類,男性用の歯磨き,男性用の香料,男性用の薫料,男性用のつけづめ,男性用のつけまつ毛)との関係においても,同様である。
(ウ) 前記(イ)によると,欧文字「BULK」は,本件商標の査定日において,本件商標の指定商品の取引者,需要者に,上記指定商品との関係において,出所識別標識として認識されるものということができる。
ウ 欧文字「AAA」について
(ア) 後掲の証拠及び弁論の全趣旨によると,欧文字「AAA」について,次のとおり,認められる。
a 欧文字「AAA」は,広辞苑第六版(乙3の1)にも,大辞林第三版(乙3の2)にも収載されていない。
もっとも,広辞苑第六版付録のアルファベット略語において,「AAA;Aaa;aaa(トリプルエー)」は,「格付けでの最高点」を意味するものとされている。また,「エー【A・a】」は,「①アルファベットの最初の文字。②転じて,第一位。」などを意味する語(広辞苑第六版,岩波書店,平成20年1月11日),あるいは,「①英語のアルファベットの第一字。エイ。②第一の,最上の,の意を表す。」などを意味する語(大辞林第三版,三省堂,平成18年10月27日)として,知られている。
b 金融商品又は企業・政府などについて,その信用状態に関する評価の結果を記号や数字を用いて表示した等級を信用格付けというが,「AAA」又は「Aaa」は,長期格付の最高位を表す格付記号である(甲35,88~91)。
長期格付の最高位を表す格付記号としての「AAA」又は「Aaa」は,本件商標の査定日(平成29年2月21日)前においても,多くの新聞記事において広く用いられており,そこでは,その意味を特に説明することなく,「トリプルA」などと表記することもされていた(甲92,93)。また,生命保険会社であるアリコジャパンにおいては,世界的な二つの格付け会社から保険財務力が最上級の「AAA」又は「Aaa」と評価されていることに基づいて,CMやウェブサイトにおいて,「アリコは,最上級のトリプルA」というキャッチフレーズを用いていた(甲94~96,102)。
c 東洋経済新報社は,平成27年11月24日発売の「CSR企業総覧2016年版」において,上場企業を中心とする有力・先進1325社について,人材活用,環境,企業統治,社会性の4指標を各企業のCSR評価として,成長性,収益性,安全性,規模の4指標を財務評価として,それぞれ「AAA」,「AA」,「A」などの記号で格付けを行った(甲98)。
d 三井住友海上は,平成28年12月現在,最長5年間の研修期間を経て保険代理店経営者として独立後の保険代理店に対する評価制度として,「専属プロ代理店」の上に「プロ新特級代理店」を設け,売上規模,要員体制等に加え,「業務品質」「組織管理」「販売力・増収力」といった質を重視した基準を高いレベルで満たす代理店に対して,「TGA・AAA・AA・A+・A」の5段階の認定を行っていた(甲97)。
e 欧文字「AAA」又は「トリプルA」について,長期格付以外に,次のような使用例がある(甲92,93)。
(a) 情報セキュリティー対策の格付け会社は,データセンターに対して情報漏れ対策などのセキュリティー水準の格付けを開始し,第1弾として,富士通の拠点に最上級の「AAA(トリプルA)」を付与した(平成22年2月22日日本経済新聞)。
また,大日本印刷は,上記格付け会社から「AAA」の格付けを取得した(平成22年8月6日日本経済新聞)。
(b) 千葉銀行は,農林水産省のプロジェクトに参画して,食の安全を担保する業務ができているかを評価し,石井食品は,17段階中最高位の「AAA(トリプルA)」を取得した(平成22年3月30日日本経済新聞)。
(c) 「社内格付け制度」を設け,カンパニー制における各カンパニーを,利益率などを基準にトリプルAからDに分類し,高格付けのカンパニーには投資判断の裁量を与え,低格付けのカンパニーには本社が関与して立て直しを急ぐ(平成22年7月20日日本経済新聞)。
(d) 「出馬してくれるなら候補としてはトリプルA。」と語った(東京都知事選挙に関する記事。平成23年2月9日日本経済新聞)。
(e) 東京都は,平成23年3月初め,専門家による評価委員会でAAA(トリプルA)とされた事業所を,平成21年度までの5年間の排出量の削減実績が高かった事業所として表彰した(平成23年3月9日日本経済新聞)。
(f) トリプルA(AAA)タイトルといわれる,開発費が数十億円かかるような,まだパッケージが強い「超大型ゲーム」だ(平成24年3月28日日本経済新聞)。
(g) リオネル・メッシという至宝を抱く,格付けでいえばトリプルA級の国である(サッカーに関する記事。平成26年7月5日日本経済新聞)。
(h) プレイステーション4(PS4)について,「高精細で没入感が高く,コントローラーでしか体感できない『トリプルAのゲーム』。それこそがPSのDNAだ。」と語った(平成26年12月18日日本経済新聞)。
(i) 72の小工場を,1時間当たりの処理点数や売上高などをもとに「aaa」から「c」まで7段階に格付けし,格付けに応じて報奨金や物品がもらえる「社内格付け制度」を設けた(平成27年2月26日日本経済新聞)。
f マツモトキヨシのウェブサイトには,平成29年11月30日現在,「BulkAAA」のページにおいて,「AAA品質」,「AAA:トリプルA=評価※5を表現」,「※5 バルクトリプルA品質基準による評価」との記載がある(甲7)。
g タカラは,平成30年11月19日現在,「AAA-White」というブランドのスキンケア・基礎化粧品として,保湿ジェル,クレンジングクリームを販売していた(乙4の1)。
h ヴァーナル(VERNAL)は,平成30年11月19日現在,「年齢を重ねた肌のためのヴァーナル最高峰化粧水」として,「プレミアムミストAAA」という商品を,「モイスト・しっとり」,「ナチュラル・さっぱり」の2タイプについて,それぞれ240mlと60mlの容量で販売していた(乙4の2)。
i 欧文字「AAA」について,次の商標登録例・査定例がある。
(a) 欧文字「AAA」を標準文字で書して成る商標について,①第6類「金属鉱石」,第8類「手動工具」,第20類「家具」等を指定商品とする商標登録第4586559号(甲38の5),②第32類「ビール」等を指定商品とする商標登録第4877584号(甲38の7),③第9類「電子出版物」,第16類「書籍」等を指定商品とする商標登録第5489484号(甲38の8),④第29類「カルシウムを主原料とする錠剤状・粉末状又は液状の加工食品」を指定商品とする商標登録第5522792号(甲38の9・10)
(b) 欧文字「AAA」を一般的な書体で横書きして成る商標について,第3類「家庭用帯電防止剤」等を指定商品とする商願2010-069442号(甲38の1~3)
(c) 上段に欧文字「AAA」,下段に片仮名「トリプルエー」を一般的な書体で上下二段に横書きして成る商標について,第4類「工業用油」を指定商品とする商標登録第4585281号(甲38の4)
(d) 上段に片仮名「トリプルエー」,下段に欧文字「AAA」を一般的な書体で上下二段に横書きして成る商標について,第25類「被服」等を指定商品とする商標登録第4840954号(甲38の6)
(イ) 前記(ア)によると,欧文字「AAA」は,金融商品又は企業・政府などの信用状態に関する評価である長期格付の最高位を表す格付記号として,一般に知られていることが認められる。
また,欧文字「AAA」は,信用格付けにおける長期格付だけでなく,CSR(企業の社会的責任)に関する人材活用,環境,企業統治,社会性の指標における格付けや,保険代理店における売上規模,要員体制,業務品質,組織管理,販売力・増収力等に基づく格付けにも用いられていたことが認められる。
さらに,欧文字「AAA」は,本件商標の査定日(平成29年2月21日)前において,データセンターのセキュリティー水準の格付け,食の安全を担保する業務の達成度の評価,カンパニー制における各カンパニーや工場に対する社内格付け制度,排出量の削減実績などにおいても,最上級の評価として用いられていたほか,東京都知事選挙の立候補予定者に対する評価や超大型ゲームに対する評価にも用いられていたことが認められる。
(ウ) 前記(イ)認定の事実に,我が国の学校の成績や各種評価においても,Aを最上位とするABC評価が一般的な評価手法の一つであることをも考え併せると,最上を意味する「A」を重ねた「AAA」は,本件商標の査定日(平成29年2月21日)において,信用格付けにおける長期格付にとどまらず,一般に,最上位又は優良な評価を意味する表示であると認識されていたものと認められる。
前記(ア)のとおり,本件商標の査定日後には,化粧品の分野においても,欧文字「AAA」を品質の優良性を示す趣旨で使用した,被告の商品を含む商品が複数のメーカーから販売されているが,これも,化粧品の取引者,需要者において,「AAA」が最上位又は優良な評価を意味する表示であると認識されることを期待したものであるから,上記認定に沿うものということができる。
エ 本件商標の構成部分の一部による類否判断の可否
前記イ,ウによると,本件商標の構成部分である欧文字「BULK」は,本件商標の指定商品の取引者,需要者に,出所識別標識として認識されるものである一方,欧文字「AAA」は,最上位又は優良な評価を意味する表示であると認識されるものであるから,欧文字「BULK」の部分が取引者,需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。
したがって,本件商標と引用商標2の類否判断に当たり,本件商標の構成部分である欧文字「BULK」の部分を抽出し,この部分だけを引用商標2と比較して商標そのものの類否を判断することが許される。
オ 被告の主張について
(ア) 被告は,「BULK」は通常の辞書に載っている一般的な英単語であり,これ単独で造語とみなされて強い識別力を発揮することはないし,「BULK」は,化粧品分野では,化粧品の中身を意味する語として広く一般に使用されているから,より一層識別力の弱い語であるなどと主張する。
しかし,前記イのとおり,欧文字「BULK」は,「船舶のばら積みの貨物」などを意味する英単語として知られていたのであり,本件商標の指定商品である「化粧品,せっけん類,香料,薫料,歯磨き」に付された本件商標に接した取引者,需要者において,「化粧品の中身」を意味する語として知られていたことを認めるに足りる証拠はないから,本件商標について出所識別標識としての機能を十分に果たすものということができる。
(イ) 被告は,本件商標の構成中「AAA」の文字は,それ単体での商標登録が認められる識別力のある語であるし,「AAA」が本件商標の指定商品において品質表示として用いられている事実はないなどと主張する。
しかし,欧文字「AAA」が,信用格付けにおける長期格付にとどまらず,一般に,最上位又は優良な評価を意味する表示であると認識されていることは,前記ウのとおりである。
前記ウ(ア)iのとおり,欧文字「AAA」についての商標登録例・査定例も認められるが,本件商標が欧文字「AAA」の前に欧文字「BULK」を組み合わせて成る商標であり,「AAA」による最上位又は優良な評価が「BULK」に対し向けられているものと容易に認識することができるのに対し,上記商標登録例・査定例は,いずれも,欧文字「AAA」のみ又は片仮名「トリプルエー」と組み合わせて成る商標であって,欧文字「AAA」の前に異なる単語を組み合わせた商標ではないから,上記商標登録例・査定例の存在は,前記エの判断を左右するものではない。
(ウ) 被告は,本件商標は,全体としてまとまりよく一体に表されているし,「バルクトリプルエー」の称呼も無理なく一連に称呼し得るから,一体不可分の商標というべきものであるなどと主張する。
しかし,前記アのとおり,本件商標は,「BULK」と「AAA」との間に1文字分の空白があるから,「BULK」と「AAA」との複数の構成部分を組み合わせたものと容易に理解されるところ,前記イのとおり,「BULK」は,出所識別標識として認識されるものである一方,前記ウのとおり,「AAA」は,最上位又は優良な評価を意味する表示であると認識されるものであるから,本件商標全体がまとまりよく一体に表されていることや,「バルクトリプルエー」の称呼が無理なく一連に称呼し得ることを考慮しても,本件商標に接した取引者,需要者において,本件商標を一体不可分の商標と認識するものということはできない。
(3)  引用商標2について
ア 引用商標2の構成態様
引用商標2は,前記2の3(1)イのとおり,上段に「BULKHOMME」と横書きし(以下,この部分を「上段部分」という。),下段左側に「SIMPLE/LUXURY」と二段に横書きし(以下,この部分を「下段左側部分」という。),縦線を挟んで,下段右側に「TRUE LUXURY IS ABOUT/SIMPLICITY.THIS IS WHAT/OUR BRAND IS BASED UPON.」と三段に横書きして(以下,この部分を「下段右側部分」という。)成るものであり,複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解される。
そして,その構成文字の書体や大きさ等を見ると,上段部分は,同じ大きさで等間隔に記載されているが,「BULK」は「HOMME」に比し線幅が略2倍の太文字で記載されている。また,上段部分と下段左側部分,下段右側部分との縦(上下方向)の幅は略同一であるから,下段左側部分の文字は,上段部分の文字の略2分の1の大きさであり,下段右側部分の文字は,上段部分の文字の略3分の1の大きさである。
上記認定の構成態様によると,上段部分は,引用商標2に接した取引者,需要者に対し,下段左側部分,下段右側部分に比し,商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。
もっとも,上記認定のとおり,上段部分においても,欧文字「BULK」が欧文字「HOMME」に比し線幅が略2倍の太字で記載されているから,上段部分が一体として商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められるのか,欧文字「BULK」又は「HOMME」の一方が商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められるのかを,更に検討する。
イ 欧文字「BULK」について
前記(2)イと同様に,欧文字「BULK」は,本件商標の査定日において,本件商標の指定商品の取引者,需要者に,引用商標2の指定商品(男性用の化粧品,男性用のおしろい,男性用の化粧水,男性用のクリーム,男性用の紅,男性用の頭髪用化粧品,男性用の香水類,男性用のせっけん類,男性用の歯みがき,男性用の香料,男性用の薫料,男性用のつけづめ,男性用のつけまつ毛)に関連する用語として知られていたものではないから,上記指定商品との関係において,出所識別標識として認識されるものということができる。
ウ 欧文字「HOMME」について
(ア) 後掲の証拠及び弁論の全趣旨によると,欧文字「HOMME」について,次のとおり,認められる。
a 欧文字「HOMME」と綴りを同じくする「homme」は,「人間,人類,男,男性」などの意味を有するフランス語である(仏和大辞典,白水社,昭和56年4月25日)。日本語の辞書にも,「オム【homme】」は,「①男性。人間。②ファッションで男性用。」を意味する語として収載されており(大辞林第三版,三省堂,平成18年10月27日),また,カタカナ語辞典には,「オム【homme】」として,「男性。転じて衣服が男性用であることを示す。」(カタカナ語・略語辞典第三版,旺文社,平成12年8月25日),「①人間。男。②男物。」(コンサイスカタカナ語辞典第3版,三省堂,平成17年1月20日)の意味を有する語として収載されている。
b 株式会社トップインターナショナル営業企画部において,化粧品類の小売店への販売を担当しているAは,陳述書において,化粧品業界においては男性用化粧品について女性用化粧品と差別化するためにフランス語で「男性」を意味する「HOMME」を商品等に表示することが普通に行われており,一般消費者も「HOMME」を男性用の商品を示す語と理解していると思われる旨陳述している(甲34)。
c(a) 原告は,平成25年4月に,メンズコスメブランドとして「BULK HOMME」というブランドを立ち上げ,平成26年6月までに,東急ハンズ及びLoFtといった店で取り扱われるようになり,平成29年11月1日までに,オンラインストアのほか,全国500店舗以上の小売店,ヘアサロンで提供され,累計100万個以上を販売した(甲52,59)。
(b) 原告のウェブサイトには,平成30年2月9日現在,「ABOUTUS」とのページにおいて,「BULKとは英語で『容器の中身』,HOMMEはフランス語で『男性』を表します。」との記載がある(甲36の1)。
(c) オムニ7-ロフトのウェブサイトには,平成30年2月9日現在,「BULK HOMME」のページにおいて,「BULKとは英語で『容器の中身』,HOMMEはフランス語で『男性』を表します。」との記載がある(甲36の3)。
d 平成26年1月7日発行のSteady.(ステディ.)2014年1月号には,「ステディな彼へのギフト」として,「ジェラートピケ・オムのガウン」が紹介されており,「ジェラートピケ ルミネエスト新宿店」で販売されていることが記載されている。また,同誌には,同じ頁に「BULK HOMME」も掲載されている。(甲14)
e 平成29年8月頃発行のMADURO(マデュロ)2017年8月号には,男性用スキンケア商品として,GUINOT HOMME(ギノーオム)のアイジェルが紹介されており,販売元がギノージャパンであることが記載されている。また,同誌には,同じ頁に「BULK HOMME」も記載されている。(甲111)
f 平成30年6月18日現在,男性向け衣料品のブランドとして,「MICHEL KLEIN homme」,「23区 HOMME」,「agnès b.HOMME」,「TÊTE HOMME」というブランドが存在する(甲24~27)。
平成30年10月30日現在,オッペン化粧品株式会社の男性用化粧品のブランドとして「OPPEN HOMME(オッペン オム)」,株式会社ユーグレナのメンズスキンケアのブランドとして「B.C.A.D.HOMME」というブランドが存在する(甲81,82)。
平成30年11月5日現在,イオン株式会社のメンズコスメのブランドとして「BEAUTE HOMME」,クリスチャン・ディオールの男性用フレグランスのブランドとして「DIOR HOMME(ディオール オム)」というブランドが存在する(甲83,84)。
g 欧文字「HOMME」について,次の商標登録例・公告例がある。
(a) 欧文字「HOMME」を一般的な書体で横書きして成る商標について,第26類「印刷物」等を指定商品とする商標出願公告平2-27814号(乙2の2)
(b) 上段に片仮名「オム」,下段に欧文字「HOMME」を一般的な書体で上下二段に横書きして成る商標について,第30類「コーヒー及びココア」等を指定商品とする商標登録第4782427号(乙2の1)
(c) 上段に欧文字「HAGU HOMME」,下段に片仮名「ハグオム」を一般的な書体で上下二段に横書きして成る商標について,第3類「家庭用帯電防止剤,せっけん類,化粧品,香料」等を指定商品とする商標登録第5894592号(甲45の1)。なお,上段に欧文字「HUG」,下段に片仮名「ハグ」を一般的な書体で上下二段に横書きして成る商標について,第3類「せっけん類,香料類,化粧品」等を指定商品とする商標登録第4427083号が存在する(甲45の2)。
(イ) 前記(ア)によると,欧文字「HOMME」は,「男性」の意味を有するフランス語であるところ,我が国においても,本件商標の査定日(平成29年2月21日)の10年以上前から,日本語の辞書や複数のカタカナ語辞典において,男性用のものを意味する語として収載されていたことが認められる。また,化粧品業界の関係者が,男性用化粧品には女性用化粧品と差別化するために「HOMME」を商品等に表示することが普通に行われており,一般消費者も「HOMME」を男性用の商品を示す語と理解していると思われる旨陳述しているところ,原告の商品のみならず,多数のメーカーにおいて,男性用化粧品や衣料品のブランドに「HOMME」を付加していること(本件商標の査定日後の事実については,上記陳述の信用性を裏付ける限度で考慮する。)も,上記陳述を裏付けるものである。
そうすると,欧文字「HOMME」は,本件商標の査定日において,化粧品等の分野では,男性用のものを意味する語として知られていたものと認められる。
エ 引用商標2の構成部分の一部による類否判断の可否
前記ア~ウによると,引用商品2の構成部分である「BULK」は,引用商標2の指定商品との関係において,出所識別標識として認識されるものである一方,欧文字「HOMME」は,引用商標2の指定商品が含まれる分野では,男性用のものを意味する語として認識される上,引用商標2の指定商品は男性用のものに限られていること,「HOMME」は,「BULK」よりも細い字体で記載されていることを併せて考慮すると,欧文字「BULK」の部分が取引者,需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。
したがって,本件商標と引用商標2の類否判断に当たり,引用商標2の構成部分である欧文字「BULK」の部分を抽出し,この部分だけを本件商標(前記(2)のとおり,本件商標の構成部分である欧文字「BULK」の部分)と比較して商標そのものの類否を判断することが許される。
オ 被告の主張について
(ア) 被告は,化粧品分野では,化粧品との関係において,「BULK」(バルク)との文字列又は呼称は,化粧品の中身を意味する語として広く一般に使用されており,特定の企業を指す語として使用されていないなどと主張する。
しかし,欧文字「BULK」が,本件商標の取引者,需要者に,化粧品の中身を意味する語として知られていたものではないことは,前記イのとおりである。
(イ) 被告は,引用商標2の上段の「BULK」の文字が引用商標2の全文字数に占める割合は,ごくわずかであるし,面積を基準にしても,上段の「BULK」の文字部分が引用商標2全体に占める割合は1/4未満であるなどと主張する。
しかし,引用商標2の構成文字の書体や大きさ等によると,引用商標2に接した取引者,需要者に対し,上段部分が,下段左側部分及び下段右側部分に比し,商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えることは,前記アのとおりであり,「BULK」と「HOMME」の書体に加え,意味内容等をも考慮すると,「BULK」が引用商標2の要部と認められることは,前記ア~エのとおりである。このことは,商標中の全文字数や面積に占める割合が低いことによって左右されるものではない。
(ウ) 被告は,引用商標2の構成中,出所識別標識として認識される部分が「BULK」ではないことは,原告自身も,本件審判の審判請求書における請求の理由中で「次に,引用商標2は,上記のとおりの構成よりなるところ,出所識別標識として認識される構成部分は上段の『BULKHOMME』の文字部分であり・・・」と自認しているなどと主張する。
しかし,結合商標の構成部分の一部による類否判断が認められるか否かは,前記(1)のとおりであって,商標権者の主観的な認識により商標の要部が左右されるものではないし,上記の審判請求書中の記載によって,引用商標2の要部が「BULK」である旨の主張をすることが信義則上許されなくなるものともいえない。
(エ) 被告は,「HOMME」の称呼は「オム」と短い2音であり,前後の言葉と相まって一連になりやすい語であり,「バルクオム」の呼称も5音と短いこと,原告の名称は「株式会社バルクオム」であり,フランス語を理解できる者が少ない我が国では片仮名の「オム」から「男性」という観念が想起されることはなく,原告の商標は「バルクオム」と一連で認識されていることを考慮すると,「BULK」ではなく「BULKHOMME」が要部であるなどと主張する。
しかし,「BULK」と「HOMME」の書体に加え,意味内容等をも考慮すると,「BULK」が引用商標2の要部と認められることは,前記ア~エのとおりであって,このことは,「HOMME」の称呼が短い2音であり,「バルクオム」の称呼も5音と短いことや原告の名称によって左右されるものではない。
(オ) 被告は,「BULK」の文字部分が,他の文字部分と比べて太い書体で強調表示されており,「BULK」の文字部分が需要者に対して強く支配的な印象を与える旨の原告の主張が認められると,自他識別力がないか,特定人に独占させることが不適当であること等の理由により商標登録の要件(商標法3条1項各号)を満たさない文字列を太い書体にして,他の文字部分を付加して登録すれば,上記商標登録の要件を満たさない文字列を特定の者が独占して利用できるということになり,商標法3条1項の趣旨を没却する不合理な結論になるなどと主張する。
しかし,引用商標2の指定商品との関係において,「BULK」が出所識別機能を有することは,前記イのとおりであるから,被告の主張は前提を欠くものである。
(カ) 被告は,原告指摘の甲24~27,81~84には,「HOMME」又は「オム」以外に男性用化粧品であることが分かる表記(男性用であることが分かる文字,又は男性の写真等)が併記されているが,そのような併記があること自体が,各証拠の作成者が「HOMME」又は「オム」の単独表記では需要者に男性用であることを看取させることができないと考えたからに他ならないし,「HOMME」は,我が国においてフランス語が普及していないことを考慮すると,特定の商品・役務等と結びつき難く,一般に識別力は強いと評価されるべきであり,「HOMME」単独での商標登録も認められている(乙2の1・2)などと主張する。
しかし,欧文字「HOMME」が,我が国においても,引用商標2の指定商品が含まれる分野では,男性用のものを意味する語として知られていたことは,前記ウのとおりである。被告指摘の証拠に,男性用であることが分かる表記(男性用であることが分かる文字,又は男性の写真等)が併記されていることは,男性用の商品の広告という性質から当然のことであり,そのような併記があることから,「HOMME」の単独表記では需要者に男性用であることを看取させることができないと理解されていたということはできない。また,我が国におけるフランス語一般の普及の程度は,前記ウの認定を左右するものではない。さらに,被告指摘の商標登録例等があることは,前記ウ(ア)gのとおりであるが,引用商標2は,男性用を意味する「HOMME」の前に異なる単語「BULK」を組み合わせたものであり,その指定商品も男性用のものである点において,前記ウ(ア)g(a)(b)の商標登録例とは異なる。同(c)の商標登録例も,その指定商品は,男性用と女性用を区別したものではなく,直ちに「HOMME」が出所識別機能を有することを示すものということはできず,前記ウの認定を左右するものとはいえない。
(キ) 被告は,仮に,引用商標2の「BULK」の文字部分が需要者に対して強く支配的な印象を与え,「HOMME」の文字部分から単独の出所識別標識としての観念,称呼は生じないとしても,それらを総合考慮した結果は,原告が「BULK」部分を太字にした「BULKHOMME」という文字列(造語)を原告の商品を識別する標識として使用し,需要者はこの「BULKHOMME」をもとに原告の商品の出所を識別していると評価できるにすぎないから,「BULK」の文字部分が需要者に出所識別標識として強く支配的な印象を与える構成要素に当たるとはいえないなどと主張する。
しかし,被告の主張を採用できないことは,前記エのとおりである。
(4)  本件商標と引用商標2の類否判断
ア 前記(2),(3)のとおり,本件商標の要部と引用商標2の要部は,いずれも,欧文字「BULK」であるから,その外観は類似し,観念及び称呼は一致する。したがって,本件商標と引用商標2とは,類似する。
イ そして,前記第2の1のとおり,本件商標の指定商品は,第3類「化粧品,せっけん類,香料,薫料,歯磨き」であり,同3(1)イのとおり,引用商標2の指定商品には,第3類「男性用の化粧品,男性用のせっけん類,男性用の香料,男性用の薫料,男性用の歯磨き」が含まれるから,本件商標の指定商品と引用商標2の指定商品とは,類似する。
ウ 以上によると,本件商標は,その査定日において,その商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標である引用商標2に類似する商標であって,その商標登録に係る指定商品に類似する商品について使用をするものであるから,商標法4条1項11号に該当し,商標登録を受けることができないものである。
2  結論
以上によると,取消事由1は理由があるから,その余の取消事由を考慮するまでもなく,審決にはその結論に影響を及ぼす違法がある。
よって,原告の請求を認容することとして,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第2部
(裁判長裁判官 森義之 裁判官 森岡礼子 裁判官 古庄研)
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