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「成果報酬 営業」に関する裁判例(71)平成21年 7月10日 横浜地裁 平19(ワ)2840号 報酬契約金請求事件

「成果報酬 営業」に関する裁判例(71)平成21年 7月10日 横浜地裁 平19(ワ)2840号 報酬契約金請求事件

裁判年月日  平成21年 7月10日  裁判所名  横浜地裁  裁判区分  判決
事件番号  平19(ワ)2840号
事件名  報酬契約金請求事件
裁判結果  一部認容、一部棄却  上訴等  控訴  文献番号  2009WLJPCA07106001

要旨
◆弁護士の委任契約におけるいわゆるみなし成功報酬特約が、消費者契約法9条1号により無効とされた事例
◆弁護士である原告が、被告から委任を受けた後、解任されたことに関し、未払着手金の支払を求めるとともに、いわゆるみなし成功報酬特約又は民法130条に基づくみなし条件成就を主張して、成功報酬の支払を求めた事案において、本件解任は、原告の責めに帰することができない事由によるものであるとした上、報酬額、委任処理事務の程度、同事務処理に要した費用などから、未払着手金の支払請求を一部認めたものの、成功報酬請求については、本件特約が定めるみなし成功報酬は、その全額が違約金等としての性質を有し、また、本件で消費者契約法9条1号所定の「平均的な損害」は存在しないとして、本件特約を全部無効とした上、本件解任が民法130条の所定の故意による条件成就の妨害に該当するとは到底いえないとして、成功報酬支払請求を棄却した事例
◆弁護士委任契約における着手金とは、一般に、「事件又は法律事務の性質上、委任事務処理の結果に成功不成功があるものについて、その結果のいかんにかかわらず受任時に受けるべき委任事務処理の対価」をいうと解されるところ、着手金も本質的には「委任事務処理の対価」である以上、委任が履行の途中で終了した場合には、民法648条3項、650条1項に従った精算を予定するものと解され、仮に、委任の中途終了の場合でも着手金の精算を一切認めない旨が合意されていた場合には、当該合意は、消費者契約法9条1号又は10条の規定により全部又は一部が無効となるとされた事例

新判例体系
民事法編 > 民法 > 消費者契約法〔平成一… > 第二章 消費者契約 > 第二節 消費者契約の… > 第九条 > ○消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効
◆弁護士が依頼者との間で締結したいわゆるみなし成功報酬特約が消費者契約法第九条第一号により無効とされた事例

 

出典
判時 2074号97頁

評釈
石田京子・NBL 954号92頁
浦川道太郎・判評 629号8頁(判時2111号154頁)
司法書士執務のための最新重要判例解説・市民と法 67号71頁

参照条文
消費者契約法9条1号
民法130条
民法648条3項
民法650条1項

裁判年月日  平成21年 7月10日  裁判所名  横浜地裁  裁判区分  判決
事件番号  平19(ワ)2840号
事件名  報酬契約金請求事件
裁判結果  一部認容、一部棄却  上訴等  控訴  文献番号  2009WLJPCA07106001

原告 X
被告 Y
同訴訟代理人弁護士 森誠一

 

 

主文

一  被告は、原告に対し、一〇五万円及びこれに対する平成一七年七月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二  原告のその余の請求を棄却する。
三  訴訟費用は、これを三〇分し、その二九を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。
四  この判決は、原告勝訴部分に限り、仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第一  請求
被告は、原告に対し、三三〇〇万円及びこれに対する平成一七年七月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二  事案の概要
本件は、弁護士である原告が、被告から遺産分割事務の委任を受けた後、解任されたことに関し、被告に対し、未払の着手金の支払を求めるとともに、いわゆるみなし成功報酬特約又は民法一三〇条の規定によるみなし条件成就を主張して、成功報酬の支払を求める事案である。
一  争いのない事実
(1)  原告は、昭和五九年四月に弁護士登録をした女性弁護士(修習○期)である。
(2)  被告は、平成一五年二月七日に夫であるA(以下「A」という。)が死亡したことに伴う遺産分割に係る事務を原告に委任した。そして、原告と被告は、平成一七年六月一六日付け遺産分割事件処理契約書(甲一)をもって、着手金を五〇〇万円、委任の目的を達したときの報酬を三〇〇〇万円(いずれも消費税別)と定めたほか、原告がその責めによらない事由で解任されたときは委任の目的を達したものとみなし報酬の全額を請求できる旨の特約(以下「本件特約」という。)を合意した(以下、この委任契約を「本件委任契約」という。)。被告は、その後、着手金の内金二〇〇万円を支払った。
(3)  被告は、本件委任契約とは別に、Aの相続に係る相続税申告事務についても、原告に委任し、その報酬一〇五万円を支払った。
(4)  原告が被告の代理人として申し立てた遺産分割調停事件(以下「本件遺産分割調停事件」という。)が係属中の平成一七年七月二八日、被告は、原告を解任し(以下「本件解任」という。)、もって本件委任契約を解除した。
二  争点及び争点に関する当事者の主張
(1)  着手金残金の支払義務(争点一)
(原告の主張)
被告は、本件委任契約において、着手金五〇〇万円(消費税別)を契約時に支払うことを約したが、このうち二〇〇万円を支払ったにすぎないから、着手金残金に消費税相当額を加えた三一五万円の支払義務がある。
(被告の主張)
本件委任契約は委任事務処理の途中で解除されるに至ったところ、これについて原告に支払うべき報酬、費用として、既払の二〇〇万円は相当なものであり、被告には着手金残金の支払義務はない。
(2)  原告はその責めによらない事由により解任されたといえるか(争点二)
(原告の主張)
被告は、相続税申告事務がずさんであったと主張するが、原告が行った相続税申告事務には何の落ち度もなく、被告の非難は当たらない。そもそも、被告は法定相続分を下回る取得分を希望していたから、配偶者控除により具体的な納税は発生せず、過少申告にならないように配慮して申告をすれば必要十分であった。現実にも、原告がした相続税申告により、被告は何の不利益も受けていない。なお、原告は、相続税申告事務は遺産分割調停の前提として必須であるから、サービスの意味も込めて一〇五万円という相場よりも安い報酬で受任したのである。
したがって、本件解任は、原告の責めによらない事由による解任に当たり、原告は被告に対し、本件特約により、報酬の全額を請求することができる。
(被告の主張)
被告が本件委任契約を解除したのは、原告による相続税申告事務が余りにもずさんであったからである。すなわち、通常であれば申告額に対し税務署がより高い金額に査定するものであるが、これと反対に、原告が申告した高額の遺産の評価額申告が税務署の査定により安く査定されたのである。また、被告が婚姻以前から所有していた資産まで遺産として申告するなど、到底納得できない内容が含まれていた。
したがって、本件解任は、原告の責めに帰すべき事由によるものであり、本件特約は適用されない。
(3)  本件特約は消費者契約法九条一号により無効とされるか(争点三)
(被告の主張)
本件特約は、損害賠償の額を予定し又は違約金を定める条項であり、消費者契約法九条一号により無効とされるべきである。
(原告の主張)
本件特約は民法一三〇条に由来するものであって、損害賠償の額を予定し又は違約金を定めるものではない。原告は、本件解任当時、既に委任事務の大半を終了していたのであるから、消費者契約法九条一号の適用場面ではない。
なお、被告の上記主張は、裁判所からの求釈明に基づくものであるが、弁論主義の観点から釈明権の範囲を逸脱するものである。
(4)  本件解任は民法一三〇条所定の条件成就の妨害に当たるか(争点四)
(原告の主張)
本件解任当時、原告は本件遺産分割調停事件の大半の事務を終了し、早期の解決が期待できる状況にあった。このような中でされた本件解任は、故意による条件成就の妨害に当たるというべきである。なお、その後、本件遺産分割調停事件が長引いているのは、本件解任が長期間の調停期日の空転を招き、気難しい代襲相続人らに心変わりの機会を与えたためである。
(被告の主張)
本件遺産分割調停事件は、申立てから現在に至るまで、二九期日を重ね、約四年半を経過して、ようやく道半ばという状態である。他方、原告が被告の代理人として本件遺産分割調停事件に関与していたのは、わずか四期日、約四か月間にすぎないのであり、委任事務の大半を終了させていたなどとはいえない。なお、平成一七年七月二八日の本件解任のため、同年八月二五日に予定されていた第五回調停期日が延期となったのは確かであるが、同年一〇月二〇日の第六回調停期日以降は被告代理人が新たな代理人として手続に関与しており、本件解任のために調停期日が長期間空転したなどという事実はない。
三  請求原因の要約
原告は、本件委任契約に基づき、着手金残金三一五万円(消費税分を含む。)及び報酬二九八五万円(三〇〇〇万円の内金。その原因として、主位的に本件特約を、予備的に民法一三〇条を主張。)の計三三〇〇万円並びにこれに対する本件解任の日の翌日である平成一七年七月二九日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
第三  争点に対する判断
一  前記争いのない事実に《証拠省略》を総合すると、以下の事実を認めることができる。
(1)  A(大正○年○月○日生)は、茅ヶ崎市内に多数の不動産を所有する資産家であったが、昭和五九年四月一四日に先妻を亡くし、昭和六〇年五月七日に被告(昭和○年○月○日生)と婚姻した(当時、Aが六六歳、被告が五一歳)。なお、Aと先妻との間には、長男Bと長女Cの二子がいたが、Bは平成五年一〇月二九日に死亡し、また、Cの長女Dが平成一四年九月三日にA・被告夫婦と養子縁組した。
(2)  Aは、平成一五年二月七日に死亡した。Aの法定相続人は、妻である被告のほか、実子のC、養子のD並びにBの子(代襲相続人)のE、F及びGの計六名である。
(3)  被告は、平成一五年二月下旬、紹介者を通じて、原告に対して遺産問題の処理を依頼することとし、同年三月一日、横浜市内で原告と会い、遺産分割に係る事務を原告に委任した。その後、被告は、着手金二〇〇万円を一〇〇万円ずつ二回に分けて原告に支払った。この時点では、委任契約書は交わさなかったが、原告は、報酬等は弁護士会の報酬規程によって請求する旨の説明をした。遺産分割に関する被告の基本的なスタンスは、他の法定相続人と争いたくないので、ある程度もらえれば相続分である二分の一より少なくてよいというものであり、被告はその旨を原告に伝えていた。
(4)  Aの相続に伴って、遺産分割の問題のほか、相続税の申告が必要になることから、被告は、遺産分割に係る事務とは別に、相続税申告事務についても、原告に委任することとした。そして、その報酬一〇五万円は、その後支払われた。また、被告は、Cとの養子縁組を解消したいという要望も原告に伝えたが、原告はこの件を正式に受任することはなかった。
(5)  原告は、その後、平成一五年三月一八日、同年五月八日、同年七月一五日、同月二七日、同月二八日に茅ヶ崎市内の被告の自宅を訪れて打合せをしたり、遺産である不動産の現地調査をするなどした。また、同年八月一〇日、同年九月二八日、同年一〇月一四日には、被告の自宅等で、関係者同席の下、遺産分割協議の場が持たれたが、①被告(その代理人弁護士原告)、②C及びD(その代理人弁護士H)、③E、F及びG(代理人なし)の三グループに分裂して、特にEらの対応が定まらないまま何の進展も見られなかった。また、このような状況であったため、相続税の申告も上記三グループにおいて別々に行うこととなった。
(6)  原告は、父親であるI弁護士(修習○期)が税務に詳しいことから、同弁護士とともに平成一五年一〇月一九日に現地調査をするなどした上、不動産の評価は主に同弁護士に担当してもらい、申告期限当日である同年一二月八日、藤沢税務署長あてに相続税の申告書を提出した。また、原告は、被告の相続については最終的に配偶者控除が受けられる見込みであったことから、上記申告書に記載の「申告期限までに納付すべき税額」八六八二万二五〇〇円のうち二万二五〇〇円のみを納税し、残額については延納申請をした。なお、本来は、いったん納税した上で、遺産分割協議により取得した遺産が配偶者としての法定相続分を超えないものであることが確定した時点で、初めて配偶者控除に基づく還付を受けることができるのであるが、その後、形式的な徴収手続が一部行われたにとどまり、実質的には納税が猶予された形で推移している。
(7)  原告は、平成一六年に入ってからも、一~二度はEらと協議を持ったものの、やはり進展がなかったため、平成一七年一月四日、被告の代理人として、横浜家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立てた。
(8)  平成一七年二月二一日に第一回調停期日があり、以後、同年四月一四日、五月一九日に、それぞれ第二回、第三回の調停期日があった。この間、原告の作成した遺産目録に訂正があったものの、遺産の範囲や相続分に格別の争いはなかった。
(9)  この間の平成一七年四月二七日、藤沢税務署長から、上記申告に係る相続税の更正の通知がされ、被告の申告額は、以下のとおりに減額更正された。
(申告額) (更正後)
ア 取得財産の価額
九億一二二三万三八五六円 八億六四一四万八九一三円
イ 債務及び葬式費用
一億七六六八万三一七八円 一億八四四九万五六七三円
ウ 課税価格
七億三五五五万円 六億七九六五万円
エ 相続税の総額
一億七三六四万五一〇〇円 一億五二八八万二八〇〇円
オ 被告の納付税額
八六八二万二五〇〇円 七六四四万一六〇〇円
(10)  平成一七年六月、被告から、原告に対し、もう三回も調停をやっているのにまだ終わらないのはおかしい、自宅も何もいらないから調停を終わりにしてほしいという趣旨の電話が数回あった。これに対し、原告は、老後の生活を賄えるだけの遺産は確保しておく必要があると説得し、同月一六日、I弁護士とともに被告の自宅を訪れ、同日付けの契約書(甲一)を取り交わした。これは、従前、口頭の合意していた委任契約を書面化するとともに、報酬等の取決めを明示したものであり、「確認事項」と題する別紙を含め、下記の記載がある。

第三条 甲(被告)は乙(原告)に対し、乙の所属する弁護士会の報酬規程に則り、後記の手数料(着手金)、報酬、訴訟費用等を次のとおり支払うものとする。
(1) 手数料(着手金)残金三〇〇万円は、本契約締結のとき。
(2) 訴訟費用等事件処理に必要な諸費用は乙が請求したとき。
(3) 報酬は委任の目的を達したとき。
第五条 甲が乙の責によらない事由で解任し、または無断で取下、放棄、和解等をなし事件を終了させ、もしくは委任事務の遂行を不能ならしめたときは、委任の目的を達したものとみなし、乙は甲に対し報酬の全額を請求することができる。
記 手数料(着手金) 五〇〇万円(消費税別)
諸費用(印紙、郵券、謄写、通信、交通費) そのつど
その他(旅費、日当、宿泊料) そのつど
報酬 三〇〇〇万円(消費税別)
確認事項三 本件遺産分割調停は、遺産が、多数の不定形の土地建物(多数の貸家、貸地含む)のほか、貸付金債権、株等種類額が多額で調整に時間がかかること、相続人が、甲を含め、六人存在し、特に孫らは事件理解が遅く、調整に時間がかかること、調停提起以前に乙とH弁護士が孫らと五回以上遺産分割協議をしたが孫らは意見さえ述べなかった経緯及び先妻の子と後妻の関係は一般的に不仲であることに照らし、調停に時間がかかることを、甲は乙の説明により理解した。
確認事項四 知人が言うような簡単に成立する遺産分割協議は遺言書があったり、事前に被相続人が遺産分割調整をしていたような格別のことが無い限り、遺産が少なく、具体的取得財産について争いのない調停であっても、甲乙のみで進められる手続きではなく、相手及び裁判所のあることなので、三回程度では終了しないことが多いことを、甲は乙の度重なる説明により理解した。
(11)  平成一七年六月二七日、第四回調停期日があり、原告から、不動産の評価は藤沢税務署長の更正決定後の金額によることにしたいとの提案があった。
(12)  平成一七年七月初めころ、被告は、国税当局から、Aの平成一四年分の確定申告に係る所得税が滞納になっている旨の督促通知を受領し、心配になって、J税理士に相談した。J税理士は、これを放置しておくと延滞税が大変になるとアドバイスをした。そして、J税理士は、被告から、相続税の申告手続は原告に委任したという話を聞いたが、被告は申告書の控えさえ原告から交付されていなかったため、J税理士が税務署に赴いて申告内容等を調査してみると、上記(9)のような大幅な減額更正が行われていることが分かった。しかも、その個別の内容をみると、①不整形地、無道路地などとして評価すべきなのに、そのような評価をしていないもの、②貸家建付地を各棟の敷地ごとに評価せず一括評価しているもの、③路線価の設定されていない私道に面している土地について、所轄税務署に特定路線価の設定を申請すべきところ、これをしていないもの、④私道の評価を一〇〇分の三〇で計算すべきところを一〇〇分の三で計算しているもの、⑤合併前後の農協の出資証券を漫然と二重に計上しているもの、⑥被相続人の退職金で非課税扱いになると考えられるのに漫然と課税対象に加えているもの、⑦被相続人の平成一五年度分の固定資産税等で、相続人の債務として控除が可能なのに、控除していないもの、⑧同族会社の株式評価で申告額をゼロ評価に更正されているもの、⑨被告が婚姻前に形成した被告名義の預金を遺産に計上しているもの等、相続税の申告事務に精通した税理士の目で見ると、目を疑うようなずさんな内容が含まれていた。
(13)  被告は、もともと、遺産分割調停の進行が遅いことに嫌気が差しており、原告に依頼していた養子縁組の解消も含め、何も解決してくれないと不満を募らせていたことに加え、J税理士を通じて、相続税の申告に上記のような問題があることを知らされ、その能力に対する不信感も生じ、原告に対する信頼を完全に失った。
(14)  被告は、平成一七年七月二八日到達の書面をもって、原告に対し、本件委任契約を解除する旨を通知した。この通知書には、「解除の理由は、貴殿にお願いしていた相続税の申告事務において、国税当局の税務調査を受けた結果、相続税を安くしてもらえたとの説明をいただきましたが……国税当局が相続税の減額更正処分をしてくだされたのは、貴殿の相続税の申告内容があまりにもずさんな内容であったからなのではないかと思慮致します。右理由により、貴殿との信頼関係は、著しく損なわれましたので、委任契約を解除するものです。」などと記載されている。
(15)  被告が原告を解任したことに伴い、平成一七年八月二五日に予定されていた第五回調停期日は延期となったが、同年九月三日、原告の後任として、森誠一弁護士(本件被告代理人)が就任した。その後、本件遺産分割調停事件は、同年一〇月二〇日(第六回)、同年一二月一九日(第七回)、平成一八年二月一六日(第八回)、同年五月一一日(第九回)、同年七月三日(第一〇回)、同年九月一四日(第一一回)、同年一〇月三〇日(第一二回)、同年一二月四日(第一三回)、平成一九年一月二九日(第一四回)、同年三月二二日(第一五回)、同年五月二八日(第一六回)、同年八月二〇日(第一七回)、同年一〇月一九日(第一八回)、平成二〇年一月二一日(第一九回)、同年三月三日(第二〇回)、同年四月二一日(第二一回)、同年六月二日(第二二回)、同年七月一四日(第二三回)、同年九月二二日(第二四回)、同年一一月六日(第二五回)、同年一二月一一日(第二六回)、平成二一年二月二日(第二七回)、同年四月九日(第二八回)、同年五月一八日(第二九回)と調停期日を重ねているが、いまだ解決に向けての具体的な見通しは立っていない。なお、この間の平成一八年二月一五日の期日以後はE及びGにK弁護士が、同年九月一四日の期日以後はFにL弁護士がそれぞれ代理人として就いたため、三名の代襲相続人の間でも更に二つのグループに分かれるに至っており、相続人間の対立構造は一層複雑となっている。
二  争点一(着手金残金の支払義務)について
(1)  弁護士委任契約における着手金とは、一般に、「事件又は法律事務の性質上、委任事務処理の結果に成功不成功があるものについて、その結果のいかんにかかわらず受任時に受けるべき委任事務処理の対価」をいうものとされ(日本弁護士連合会の報酬等基準規程三条二項〔甲三一〕参照。なお、同規程は平成一六年四月に廃止された。)、本件委任契約に定める着手金もこれと異なるものではないと解される。そうすると、委任事務処理が終了している限りにおいては、その結果いかんにかかわらず、受任者が着手金の全額を受領・保持することに妨げはないが、着手金も本質的には「委任事務処理の対価」である以上、委任が履行の中途で終了した場合には、民法の規定(六四八条三項、六五〇条一項)に従った精算を予定するものと解される。なお、仮に、委任の中途終了の場合でも着手金の精算を一切認めない旨が合意されていたとすれば、当該合意は、消費者契約法九条一号又は一〇条の規定により全部又は一部が無効とされることを免れないというべきである。
(2)  そこで、本件において、委任の履行の中途終了に伴い、民法六四八条三項、六五〇条一項の規定に基づいて原告が請求することのできる報酬額及び費用額について検討する。
ア まず、民法六四八条三項は、「委任が受任者の責めに帰することができない事由によって履行の中途で終了したとき」に限って、履行の割合に応じた報酬請求を認めていることから、この要件の充足が問題となる。
本件において、被告が原告に対する信頼を失い、原告を解任するに至った理由は、前記認定のとおり、①本件遺産分割調停事件が三回の調停期日を経ても解決しないことへのいらだちに加え、②相続税申告事務にJ税理士から問題点の指摘を受けたことをきっかけに原告の能力に不信感を抱いたことにあったと解される。しかし、上記①を原告に帰責することができないことはもとより、上記②についても、直接には本件委任契約とは別の相続税申告事務に関するものである上、配偶者控除を受けることができる限りにおいては実害がないものであるから、弁護士としての善管注意義務違反、任務懈怠があったものということはできない。そうすると、本件解任は、民法六四八条三項の適用に関する限り、原告の責めに帰することができない事由によるものと解するのが相当である。
イ そこで、次に、履行の割合に応じた報酬額を検討するに、これを定める前提として、本件委任契約が定める着手金五〇〇万円、委任の目的達成の際の報酬三〇〇〇万円という金額が、報酬等基準規程に照らして、極めて高額であることを指摘しておく必要がある。
すなわち、原告は、平成一五年三月一日に被告との間で口頭で遺産分割事務の委任契約を合意した際、その報酬等は弁護士の報酬規程によって請求する旨の説明をした(上記一(3))というのであるが、原告と被告が甲一の契約書を交わした平成一七年六月当時、遺産の時価を定めるについて、最も客観性と合理性があると考えられる数字は、藤沢税務署長の更正決定後の課税価格(総額六億七九六五万円)であったと考えられ、このことは、原告自身、本件遺産分割調停事件において、不動産の評価は上記更正決定後の金額によることを提案していることからも、十分裏付けられるものである。そして、当時、分割の対象となる財産の範囲及び相続分に格別の争いはなかったから、報酬等の算定の基礎となる「経済的利益の額」は、対象となる相続分の時価相当額の三分の一の額であり(報酬等基準規程一四条一項一三号ただし書)、Aの遺産につき二分の一の法定相続分を有する被告の経済的利益の額は、一億一三二七万五〇〇〇円ということになる(679,650,000×1/2×1/3)。そして、これを基準として、同規程一七条一項及び一八条により着手金及び報酬の額を求めると、標準着手金が四〇八万八二五〇円、標準報酬金が八一七万六五〇〇円となり、これに三〇%の増額(同規程一七条二項)をした上限額においてさえ、着手金が五三一万四七二五円、報酬金が一〇六二万九四五〇円にとどまる。
そうすると、原告は、口頭での委任契約の締結当初、弁護士会の報酬規程によって請求する旨を自ら説明しながら、その後、報酬規程が廃止されると、報酬等基準規程が定める上限報酬額の約三倍にも及ぶ三〇〇〇万円という高額の報酬を定めた契約書の作成に至ったのであり(原告は、この報酬額は弁護士会の報酬規程に従ったものであると主張している〔平成二一年六月八日付け準備書面〕が、そうだとしても、前提とした遺産総額が恣意的であるといわざるを得ない。)、しかも、そのような経緯について、被告に対し合理的な説明をした形跡はない。このような経過で合意された高額の報酬を正当化することができるとすれば、原告の格別の貢献により迅速な遺産分割が実現されることを期待しての成果報酬という意味合いを強く有していたとでも解するほかない。反面、このような成果を現実に上げることができなかった場合の履行割合に応じた報酬額は、合意報酬額よりも極端に低い金額とされてもやむを得ないというべきである。
ウ 次に、本件遺産分割調停事件の経過の中で原告の行った委任事務処理がどの程度のものであったかを見るに、前記のとおり、本件遺産分割調停事件は、平成一七年一月四日に横浜家庭裁判所に申し立てられ、以後、本件口頭弁論終結時(平成二一年六月一一日)まで、約四年半にわたり、二九回の調停期日を重ねたものの、いまだ解決に向けての具体的な見通しは立っていない状況にある。他方、原告は、調停申立て前の遺産分割交渉の場を数回持った後、本件遺産分割調停事件を申し立て、その後、四回の調停期日に被告の代理人として出席したことが認められるものの、原告が主張するように「委任事務の大半を終了させていた」などというには、ほど遠く、本件解任のされた平成一七年七月二八日の時点では、本件遺産分割調停事件は、実質的な進展をみるに至っていなかったといわざるを得ない。
なお、証人H(書面尋問)は、「(本件解約の)当時は大きな争点がなかったので、早期解決を期待できる状況にはありました」と述べるが、同人の当時の主観的な認識がそのようなものであったとしても、客観的にみて、近い時期に調停が成立するような状況でなかったことは、その後の推移に照らして明らかである。
エ 次に、原告の負担した委任事務処理費用については、その明細が明らかにされているわけではないが、上記一(5)、(6)で認定した事務は、本件委任契約とは別契約とされた相続税申告事務の委任契約(その報酬一〇五万円は支払済み)に係る委任事務処理という側面を併有するものであることも考えると、本件委任契約だけを取り上げて、その委任事務処理費用を積み上げても、さほど大きな金額になるとは考えられない。
オ 以上に認定判断した諸般の事情を総合すると、民法六四八条三項及び六五〇条一項に基づいて原告が請求することができる報酬額及び費用額は、これをすべて合わせても、せいぜい三〇〇万円であると認めるのが相当である。
(3)  したがって、既払の着手金二〇〇万円のほかに原告が請求することができる着手金の額は、消費税分を含め一〇五万円にとどまるというべきである。
三  争点三(本件特約は消費者契約法九条一号により無効とされるか)について
(1)  消費者契約法の適用上、遺産分割調停事件の依頼者である被告が「消費者」(二条一項)に、弁護士である原告が「事業者」(同条二項)に、両者間の本件委任契約が「消費者契約」(同条三項)に、それぞれ該当することは明らかである。なお、本件委任契約において、民法六五一条一項の定める解除権それ自体が放棄されたと解すべき事情は見当たらない。
(2)  そこで、本件特約が、消費者契約法九条一号に規定する「消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項」に当たるかどうかを検討する。
本件特約は、被告が原告をその責めによらない事由によって解任したときは、委任の目的を達したものとみなし、原告が被告に対し報酬の全額を請求することができる旨を定めるものであり、みなし成功報酬特約と呼ばれるものの一種ということができる(遺産分割事件においては、成功不成功の観念は相対的に希薄であるが、本件の三〇〇〇万円の報酬は広い意味で成功報酬と呼んで差し支えないと解される。)。これは、直接的には、民法六四八条三項の特則と理解される条項であり、損害賠償額の予定又は違約金(以下「違約金等」という。)を定めるという形式をとるものではないが、実質的に考えれば、委任者が委任契約を解除した場合の違約金等として機能することは否定し得ないというべきである(みなし成功報酬特約が違約金等の定めとしての実質を有することにつき、栗栖三郎「契約法」五四五頁、福原忠男「判批」民商法雑誌七一巻四号七四二頁参照)。そして、消費者契約法九条一号の適用上、違約金等の定めに該当するかどうかは、その実質、機能に着目して判断すべきであるから(特定商取引に関する法律四九条二項一号に関するものであるが、最高裁平成一九年四月三日判決・民集六一巻三号九六七頁参照)、本件特約は、「消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項」に当たるというべきである。
ところで、委任が履行の中途で終了したときの履行の割合に応じた報酬(民法六四八条三項)及び委任事務処理費用(同法六五〇条一項)の合計額が、着手金の額を超える場合には、当該超過額は、みなし成功報酬によって賄われることになると解される。そうすると、このような超過額が存在する場合に限っては、その限度で、みなし成功報酬特約は、違約金等の定めとしての性質が否定されるものと解されるが、本件に関していえば、履行割合に応じた報酬額及び委任事務処理費用を合わせても着手金の額を超えないことは前述のとおりであるから、本件特約が定める三〇〇〇万円のみなし成功報酬は、その全額が違約金等としての性質を有することになる。
(3)  進んで、違約金等の性質を有する上記三〇〇〇万円のみなし成功報酬が、消費者契約法九条一号にいう「平均的な損害の額」(本件委任契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額)を超えるかどうか、また、超えるとすればその範囲いかんについて、検討する。
ア 消費者契約法九条一号は、上記平均的な損害の額は、対象となる条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じて定めることを規定するところ、本件特約は、解除の事由を原告の責めによらない事由による解任等と定める一方、解除の時期については何の区分も設けていない。したがって、本件においては、遺産分割調停事件を受任した弁護士が、その責めによらない事由によって解任された場合に、当該弁護士に生ずべき損害としてどのようなものがあるかということを考える必要がある。
イ このような損害としては、①当該事件処理のために特別に出捐した代替利用の困難な設備、人員整備の負担、②当該事件処理のために他の依頼案件を断らざるを得なかったことによる逸失利益、③当該事件に係る委任事務処理費用の支出、④当該事件処理のために費やした時間及び労力、⑤本件委任契約の定める報酬を得ることができなかった逸失利益などが考えられる。
そこで、これらを上記「平均的な損害」に加えることができるかどうかを順次検討するに、まず、消費者契約法九条一号が典型的に想定しているのは、上記①、②のような損害であると解されるが、通常の弁護士の業務態勢を想定した場合に、本件遺産分割調停事件の受任のためにこのような損害が通常発生するとは言い難いから、これを平均的損害に加えることはできない。
次に、上記③、④は、通常、着手金によって賄うことが予定されているものと解されるから(本件においても、現実に着手金によって賄われる範囲に収まっている。)、みなし成功報酬によって賄われるべき損害に加えることはできないというべきである。
最後に、上記⑤は、これをそのまま平均的損害に加えてしまうと、中途解除に係る損害賠償額の予定又は違約金を適正な限度まで制限することを意図する消費者契約法九条一号の趣旨が没却されてしまうことは明らかである。委任事務の大半が終了していながら、受任者の責めに帰することのできない事由により委任契約が解除されたというような場合に、別途、民法一三〇条の適用があり得ることは格別、約定の報酬額を逸失利益として、これをそのまま平均的損害に含めるような扱いは許されないというべきである。
ウ 以上によれば、本件において、消費者契約法九条一号が定める「平均的な損害」は存在しないというべきであり、本件特約は、全部無効である。
(4)  以上によれば、本件特約を根拠とするみなし成功報酬の請求は、理由がない。なお、原告は、消費者契約法九条一号に係る被告の主張は、釈明権の範囲を逸脱する裁判所からの求釈明に基づくものである旨主張するが、当裁判所は、法的観点指摘義務を踏まえて議論を促したものにすぎないから、被告が上記主張を提出するに至った手続過程に所論の違法はない。
四  争点四(本件解任は民法一三〇条所定の条件成就の妨害に当たるか)について
原告は、本件解任当時、本件遺産分割調停事件の大半の事務を終了し、早期の解決が期待できる状況にあったとの前提に立って、このような中でされた本件解任は、故意による条件成就の妨害に当たる旨主張する。
しかし、本件解任当時の本件遺産分割調停事件は、客観的には、早期の解決が期待できるような状況とはほど遠く、いまだ実質的な進展をみるに至っていなかったことは前記認定のとおりであり、調停不成立という形で、目的不達成で終了する可能性も相当程度あったといわざるを得ない。なお、原告は、本件遺産分割調停事件が長引いているのは、本件解任が長期間の期日の空転を招き、気難しい代襲相続人らに心変わりの機会を与えたためであるとも主張する。しかし、本件解任後一一か月にわたって期日が空転した旨をいう証人Hの証言は根拠が不明なものであり、他に原告の上記主張を認めるに足りる証拠はない。
以上の認定判断を前提に考えれば、本件解任が民法一三〇条所定の故意による条件成就の妨害に該当するとは、到底いえないというべきである。
五  まとめ
以上によれば、原告の請求は、着手金のうちの一〇五万円及びこれに対する支払期日の後である平成一七年七月二九日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが、その余の着手金及び成功報酬の支払請求は、理由がないというべきである。
(裁判官 宮坂昌利)

 

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