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判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(130)平成26年10月24日 神戸地裁尼崎支部 平25(ワ)962号 売買代金返還等請求事件

判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(130)平成26年10月24日 神戸地裁尼崎支部 平25(ワ)962号 売買代金返還等請求事件

裁判年月日  平成26年10月24日  裁判所名  神戸地裁尼崎支部  裁判区分  判決
事件番号  平25(ワ)962号
事件名  売買代金返還等請求事件
裁判結果  一部認容、一部棄却  上訴等  控訴  文献番号  2014WLJPCA10246004

要旨
◆破産者Aの破産申立前に、Aと被告Y1が共有不動産を任意売却して同不動産に設定されていた抵当権の被担保債権を弁済した際、Aは、売却代金の余剰金のうちAの共有持分相当である本件余剰金をY1が取得するのを承認し破産債権者を害したとして、Aの破産管財人である原告Xが、Y1に対し、否認権行使による本件余剰金の支払を求めた事案において、本件で、Aは本件余剰金をY1が取得するのを承認することで、同余剰金をAの財産から逸出させたのであるから、破産債権者の共同担保を害するものとして詐害行為否認の対象となるとして、請求を一部認容した事例
◆破産者Aの破産管財人である原告Xが、A及び被告Y1から破産申立等を受任した弁護士である被告Y2及び同Y3は、財産散逸防止義務に反し、AとY1の共有不動産を売却し債務弁済後に残った余剰金のうちAの共有持分相当の本件余剰金について、Y1による取得を容認したなどとして、損害賠償を求めるとともに、Aから受領した報酬の一部は提供役務との合理的均衡を失するとして、同部分につき否認権行使に基づく支払を求めた事案において、本件余剰金の扱いに関してY2及びY3に故意又は過失は認められないから賠償請求は理由がないものの、Aの破産申立てに対する適正報酬額を超える部分は、役務の提供と合理的均衡を失し詐害行為否認の対象となるとして、請求を一部認容した事例

出典
金商 1458号46頁

参照条文
破産法1条
破産法160条1項1号
民法249条
民法392条1項
民法643条
民法644条
民法648条
民法709条

裁判年月日  平成26年10月24日  裁判所名  神戸地裁尼崎支部  裁判区分  判決
事件番号  平25(ワ)962号
事件名  売買代金返還等請求事件
裁判結果  一部認容、一部棄却  上訴等  控訴  文献番号  2014WLJPCA10246004

原告 破産者A破産管財人 X
同破産管財人代理 中島健治
被告 Y1
被告 Y2
上記2名訴訟代理人弁護士 栁井健夫
被告 Y3
同訴訟代理人弁護士 佐藤貴夫

 

 

主文

1  被告Y1は、原告に対し、150万1820円及びこれに対する平成25年11月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  被告Y2及び被告Y3は、原告に対し、各自78万円及びこれに対する平成25年11月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3  原告のその余の請求をいずれも棄却する。
4  訴訟費用は、これを10分し、その3を原告の負担とし、その余を被告らの負担とする。
5  この判決は、1項及び2項に限り、仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
1  被告らは、原告に対し、各自200万1820円及びこれに対する被告Y2及び被告Y3については平成25年11月12日から、被告Y1については同月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2(1)  主位的
被告Y2及びY3は、原告に対し、各自110万円及びこれに対する平成25年11月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2)  予備的
被告Y2は、原告に対し55万円、被告Y3は、原告に対し55万円及びそれぞれこれに対する平成25年11月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
1  訴訟物
本件は、平成25年7月3日に破産手続開始決定を受けたA(以下「破産者」という。)の破産管財人である原告が、
(1)  破産者と被告Y1(以下「被告Y1」という。)は、破産申立前、その共有にかかる別紙物件目録記載1ないし3の土地・建物(以下「本件各不動産」という。)を売却し、本件各不動産に設定されていた抵当権の被担保債権を弁済したが、売却代金の余剰金のうち破産者の共有持分に相当する金員(以下「本件余剰金」という。)は破産者に帰属するのに、破産者は、被告Y1が本件余剰金を取得するのを承認し、破産債権者を害する行為をしたとして、被告Y1に対し、破産法(以下「法」という。)160条1項1号の否認権行使に基づき、本件余剰金200万1820円及びこれに対する被告Y1に対する訴状送達日の翌日である平成25年11月13日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案、
(2)  破産者及び被告Y1から破産申立て等を受任した弁護士である被告Y2(以下「被告Y2」という。)及び被告Y3(以下「被告Y3」という。)は、破産申立代理人として破産者の財産が破産管財人に引き継がれるまでの間に散逸することのないよう措置する法的義務(財産散逸防止義務)を負っているにもかかわらず、破産者及び被告Y1に対し、本件余剰金は破産者に帰属する資産であり、破産管財人に引継ぐべき資産であることを教示せず、被告Y1が取得するのを容認したとして、財産散逸防止義務違反の不法行為に基づく損害賠償として、被告Y2及び被告Y3に対し、各自、本件余剰金相当額200万1820円及びこれに対する不法行為の後で被告Y2及び被告Y3に対する訴状送達日の翌日である平成25年11月12日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案、
(3)  被告Y2及び被告Y3が破産者から支払を受けた報酬140万円のうち30万円を超える部分は、被告Y2及び被告Y3が提供した役務と合理的均衡を失するから、合理的均衡を失する部分の支払行為は破産債権者を害する行為にあたるとして、主位的に、法160条1項1号の否認権行使に基づき、各自110万円及びこれに対する被告Y2及び被告Y3に対する訴状送達日の翌日である平成25年11月12日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに、予備的に、不当利得返還請求権に基づき、それぞれ55万円及びこれに対する被告Y2及び被告Y3に対する訴状送達日の翌日である平成25年11月12日から支払い済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案
である。
2  前提事実(争いがないか、後掲証拠等により認める。)
(1)  当事者(争いなし)
ア 破産者は、平成25年6月19日、神戸地方裁判所尼崎支部において破産手続開始の申立て(以下、単に「破産申立て」という。)をし、同年7月3日、破産手続開始決定を受け、原告が破産管財人に選任された。
イ 被告Y1は、破産者の長男である。
ウ 被告Y2及び被告Y3は、破産者及び被告Y1から、自己破産申立て等の委任を受けた弁護士である。
(2)  本件各不動産の共有(争いなし)
破産者と被告Y1は、別紙物件目録記載1及び2の土地・建物については、破産者の持分が5分の3、被告Y1の持分が5分の2の各割合で、同目録記載3の土地については破産者の持分が30分の3、被告Y1の持分が30分の2の割合で、共有していた。
(3)  委任契約の締結
破産者及び被告Y1は、平成24年11月25日、被告Y2及び被告Y3との間で、次のとおり、委任契約(以下「本件委任契約」という。)を締結し(甲5)、被告Y2は、同年12月10日、破産者の債権者に対し受任通知を発送した(争いなし)。
委任内容 ① 破産者の自己破産申立てにあたっての申立人代理業務
② ①に関連する被告Y1の連帯債務・連帯保証債務等の処理
③ ①、②に付随して合理的に必要とされる法律事務
報酬 破産者と被告Y1は、連帯して、被告Y2及び被告Y3に対し、委任事務に対する報酬として140万円を、平成24年11月末日限り60万円(税込63万円)、平成25年1月から平成26年4月まで各月末日限り5万円(税込5万2500円)を分割して支払う。
実費 破産者と被告Y1は、報酬のほか、被告Y2及び被告Y3に対し、委任事務の提供に係る合理的な範囲の交通費、宿泊費、通信費、コピー代等の実費を、被告Y2と被告Y3の請求があり次第、これを支払う。
(4)  報酬・実費の支払(甲8)
被告Y3及び被告Y2は、本件委任契約締結後、次のとおり、破産者から141万円(以下「本件入金」という。)、被告Y1から50万円の支払を受けた。

入金日 入金額 振込人
平成24年11月30日 120万円 破産者
平成25年1月21日 5万2500円 破産者
平成25年2月22日 5万2500円 破産者
平成25年3月27日 5万2500円 破産者
平成25年4月8日 50万円 被告Y1
平成25年4月30日 5万2500円 破産者
(5)  本件各不動産の売却(甲1ないし4、弁論の全趣旨)
破産者と被告Y1は、平成25年4月7日、Bとの間で、本件各不動産を1880万円で売却する旨の契約(以下「本件売買契約」という。)を締結し、被告Y1は、同日、手付金として100万円の支払を受け、さらに同年5月27日、残代金1780万円の支払を受けた。同日、本件各不動産に設定されていた下記の抵当権の被担保債権が弁済され、抵当権抹消登記手続が経由され、本件各不動産につき所有権移転登記が経由された。

平成12年1月5日設定、平成19年4月1日移転の抵当権
債権額 2550万円(以下「本件融資」という。)
連帯債務者 破産者、被告Y1
抵当権者 独立行政法人住宅金融支援機構(以下「支援機構」という。)
(6)  余剰金の処理(争いなし)
被告Y1は、平成25年5月27日、本件各不動産の売買代金1880万円につき、下記のとおり支援機構等に対し合計1536万0733円を支払った。また、被告Y1は、本件売買契約に基づく売主の瑕疵修補義務として、同年6月10日、インターホン交換工事代金5万2500円を支払い、さらに、ガスレンジ交換費用5万0400円を支払予定である。したがって、本件各不動産の売買代金からこれらを控除した残額は、333万6367円(1880万円-1536万0733円-5万2500円-5万0400円=333万6367円)となり、その5分の3相当額は200万1820円(本件余剰金)となる。

支援機構に対する弁済 1453万6033円
登記手続費用 7万円
測量費用 11万円
仲介手数料 64万4700円
(7)  本件承認
破産者は、遅くとも破産申立て時までには、被告Y1が本件余剰金を取得することを承認(以下「本件承認」という。)し、被告Y2及び被告Y3は、被告Y1が本件余剰金を取得したことを認識していた(争いなし)。被告Y2及び被告Y3は、破産者の破産手続開始申立書の財産目録に本件余剰金を記載していない(甲10)。
(8)  否認権の行使(当裁判所に顕著な事実)
原告は、本件訴状において、破産者がした本件承認及び本件支払のうち110万円は、破産者が破産債権者を害することを知ってした行為であるとして、被告Y1に対しては本件承認につき、被告Y2及び被告Y3に対しては本件支払のうち110万円につき、法160条1項1号の否認権を行使する旨の意思表示をしたところ、本件訴状は、被告Y2及び被告Y3に対しては平成25年11月11日、被告Y1に対しては同月12日、それぞれ送達された。
3  争点
(1)  本件承認は法160条1項1号の詐害行為否認の対象となるか。
(2)  本件承認が詐害行為否認の対象となるとして、その返還額はいくらか。
(3)  被告Y2及び被告Y3の財産散逸防止義務違反の不法行為の有無
(4)  本件入金のうち110万円は法160条1項1号の詐害行為否認の対象となるか。
4  争点に関する当事者の主張
(1)  争点(1)(本件承認は法160条1項1号の詐害行為否認の対象となるか。)について
【原告】
ア 破産者と被告Y1の本件各不動産の持分割合は、登記された割合であり、持分割合に変更があったとしても、変更登記手続を経由していない以上、原告に対抗できないから、本件余剰金は破産者に帰属する。本件承認は、破産者が破産債権者を害することを知ってした行為であり、法160条1項1号の詐害行為否認の対象となる。
イ 被告Y1の主張に対する反論
破産者と被告Y1との間には、破産者が本件融資の全責任を負う旨の合意(本件負担合意)があったという被告Y1の主張、及び、破産者と被告Y1が、本件各不動産を売却する際、破産者の持分の売却純収入を被告Y1の持分の売却純収入よりも先に本件融資の弁済にあてる旨の合意(本件支払合意)があったという被告Y1の主張は、いずれも否認する。
原告が被告Y3に対し本件余剰金を被告Y1が取得したのは破産者の意思に基づくものか照会したところ、被告Y3は、破産者の意思に基づくものではなく、被告Y1が当然取得できるものとして取得した旨回答しており、実際、破産者が本件融資の処理について被告Y1に指示したり、同意した事実はなく、支援機構において弁済者を特に区別して弁済を受けたという事実もないから、本件支払合意は存在しない。また、本件支払合意に従い破産者の持分の売却純収入を被告Y1の持分の売却純収入より先に本件融資の弁済に充てたという事実もない。仮に、本件支払合意が存在し、本件支払合意に従い支援機構に支払われたとしても、本件支払合意は、破産者の支払停止後に、被告Y1が連帯債務における内部的負担部分を超えて本件融資を弁済することにより発生する求償権につき、本件余剰金から優先的に回収しようとするものにほかならず、破産手続において正当化される余地はない。
【被告Y1】
ア 破産者と被告Y1の本件各不動産の持分割合に変更があったとしても、原告に対抗できないことは認め、その余は否認する。本件余剰金は被告Y1に帰属するから、本件承認は破産債権者を害する行為には該当しない。
イ 破産者と被告Y1は本件融資の連帯債務者であるところ、連帯債務者間における負担部分は特約があれば特約に従い、特約がなければその債務につき各自の受けた利益の割合に従って定まる。
破産者と被告Y1は、本件各不動産の取得費用合計約4448万3675円(内訳:売買代金4230万円、登記手続費用約80万円、仲介手数料136万8675円、印紙代1万5000円)のうち、約5分の3を破産者が手持資金や本件融資で負担し、約5分の2を被告Y1が自己資金で負担することになったことから、破産者と被告Y1の共有持分割合を5分の3と5分の2としたもので、破産者と被告Y1との間には破産者が本件融資の全責任を負う旨の合意(以下「本件負担合意」という。)があり、被告Y1の負担部分は存在しなかった。
破産者と被告Y1は、平成25年3月、本件各不動産を売却して本件融資を弁済する旨合意したが、その際、本件負担合意から当然に、破産者の持分の売却純収入を被告Y1の持分の売却純収入よりも先に本件融資の弁済にあてる旨合意(以下「本件支払合意」という。)し、本件支払合意に基づき、本件各不動産の売却代金から登記費用、測量費用及び仲介手数料を控除した残額1797万5300円(1880万円-7万円-11万円-64万4700円=1797万5300円)の5分の3(1797万5300円×3/5=1078万5180円)はその全額が支援機構に対する弁済に充てられ、不足額が被告Y1の持分の売却純収入から弁済された。
したがって、本件余剰金は被告Y1に帰属し、破産財団を構成しないから、本件承認は詐害行為否認の対象とはならない。
(2)  争点(2)(本件承認が詐害行為否認の対象となるとして、その返還額はいくらか。)について
【被告ら】
仮に、本件承認が詐害行為否認の対象となり、被告Y1が破産者に本件余剰金を返還せねばならないとしても、被告Y1は、平成25年4月7日、本件売買契約の手付金100万円のうち50万円を破産者に振り込み、残り50万円を被告Y3に振り込んだ。破産者に振り込まれた50万円は破産者の引越費用及び生活費として費消され、残額は破産申立ての際に自由財産として申告されたから、既に破産者に返還済みというべきである。また、被告Y3に振り込まれた50万円は、破産者による報酬・実費の支払いを被告Y1が代行したものであるから、破産者への返還と評価されるべきである。
【原告】
被告Y1が、本件売買契約の手付金100万円につき、破産者及び被告Y3に各50万円を振り込んだ事実は認める。被告Y1の被告Y3に対する振込は、被告Y1が本件委任契約に基づき振り込んだものであり、それが破産者のために使用されたとしても、立替え又は貸付であり、破産債権に過ぎず、本件余剰金の帰趨に影響を及ぼさない。
(3)  争点(3)(被告Y2及び被告Y3の財産散逸防止義務違反の不法行為の有無)について
【原告】
債務者との間で同人の破産申立てに関する委任契約を締結した弁護士は、破産制度の趣旨に照らし、債務者の財産が破産管財人に引き継がれるまでの間、その財産が散逸することのないよう、必要な措置を採るべき法的義務(財産散逸防止義務)を負う。被告Y2及び被告Y3は、破産者及び被告Y1に対し、本件余剰金が破産者に帰属する資産であり、将来選任される破産管財人に引継ぎすべき資産であることを教示せず、被告Y1が本件余剰金を取得するのを容認し、破産財団を構成すべき本件余剰金を散逸させ、原告は本件余剰金相当額200万1820円の損害を被った。
【被告Y2、被告Y3】
債務者との間で同人の破産申立てに関する委任契約を締結した弁護士が財産散逸防止義務を負うことは認め、その余は争う。前記のとおり、本件余剰金は破産財団を構成しないから、被告Y2及び被告Y3に財産散逸防止義務違反はない。
(4)  争点(4)(本件入金のうち110万は法160条1項1号の詐害行為否認の対象となるか。)について
【原告】
ア 破産申立てに対する報酬の支払行為も、その金額が役務の提供と合理的均衡を失する場合、合理的均衡を失する部分の支払行為は破産債権者の利益を害する行為として法160条1項1号の詐害行為否認の対象となる。
イ 破産者の破産申立ては、定型書式に必要最小限度の記入をするだけで可能な事案であり、申立書及び添付資料の枚数も合計71枚であり、簡易な記入及び単純なコピー作業だけで完了する。被告Y2及び被告Y3が回収した資産はなく、破産者が賃借していた建物の明渡等の事務処理もしていない。破産債権者総数は、破産申立書の債権者一覧表上は合計28名であるが、兵庫県信用保証協会が6回計上され、うち1名は破産者の長男(被告Y1)であり、うち3名は公共料金関係の債権者、うち2名は公租公課関係の債権者であり、特段の対応は必要ない。破産者の破産申立て前に本件各不動産の処分がなされているが、被告Y2及び被告Y3が原告に対し合理的範囲内と主張できる役務の提供は、破産申立てに必要な事務及び破産者の責任財産の保全に必要な事務であり、逆に責任財産を逸出させた本件各不動産の処分は、幾ら労力が費されたとしても報酬は発生しない。被告Y2及び被告Y3の費やした労力等からして適正報酬額は30万円とするのが相当であるから、本件入金のうち110万円は合理的均衡を失する支払として法160条1項1号の詐害行為否認の対象となる。したがって、原告は、主位的に同号の否認権行使に基づき、被告Y2及び被告甲野に対し、各自110万円の支払を求め、予備的に、不当利得返還請求権に基づき、それぞれ55万円ずつ返還を求める。
【被告Y2、被告Y3】
ア アは否認する。受任時の合意に基づく報酬額のうち、相当額を超えると考えられる部分についての否認は、法160条3項の無償行為否認の対象であり、法160条1項1号の詐害行為否認の対象とはならない。
イ イは否認する。本件入金のうち、40万円は破産者の破産申立ての予納金、うち1500円は印紙代、うち6980円は予納郵券代、うち1万3450円は官報公告費用、うち7万5825円は本訴状送達前に支出した実費(被告Y3の交通費・通信費7425円、被告Y2の尼崎市への出張費4万0720円、被告Y3の債権者集会出席費用400円、被告Y2の債権者集会出席費用2万7280円)に充当され(以上合計49万7755円)、報酬に充当されたのは91万2245円(税込)(141万円-49万7755円=91万2245円)である。
被告Y2は、破産者の自己破産申立ての基礎報酬として債務総額約5800万円(本件融資を含む。)の場合の東京地裁の旧通常管財予納基準額の1.5倍である120万円と算定し、本件融資の処理に係る増額分として10万円、出張費引当として12万5000円を加算し(以上合計142万5000円)、端数を切って140万円(税別)と算定した。
破産者の自己破産申立ての基礎報酬として東京地裁の旧通常管財予納基準額の1.5倍を基準としたのは、以下の理由による。すなわち、東京弁護士会の旧報酬会規には自己破産申立ての報酬について着手金と成功(免責を得た場合)報酬金を規定しているが、自己破産の場合の弁護士報酬は着手金に限られるのが通常であるところ、旧報酬会規は事業者自己破産の着手金につき下限額50万円(税別)と定めるのみであった。ところで、旧報酬会規に民事再生(なお、通常再生をいう。以下同じ。)に関する会規はないが、民事再生と類似する手続である和議及び会社整理の着手金は下限額を100万円(税別)とする会規が存在し、事業者自己破産の着手金は民事再生の着手金の概ね2分の1が相当と考えられた。そして、民事再生の着手金は、最低でも予納金額の1.5倍から2倍を見込んでおくべきという文献が存在し、かつ、民事再生の予納金は債務総額10億円未満では通常管財の予納金額の概ね2倍以上であることからすると、通常管財の予納金額に1.5倍から2倍を乗じた額は、民事再生の相当な着手金の半分以下であり、相当な金額と考えられる。
加えて、本件各不動産の処理にあたっては高度な法的判断が必要であったこと、破産者の帳簿システムは整備されておらず、証憑類を整理して破産者の財産状況を把握するには非常な手間がかかったことなどからすると、被告Y2及び被告Y3が受領した報酬額が、被告Y2及び被告Y3の提供した役務に比し合理的均衡を失するとはいえない。
第3  当裁判所の判断
1  争点(1)(本件承認は法160条1項1号の詐害行為否認の対象となるか。)について
(1)  前提事実(1)、(3)、(4)及び(5)によれば、破産者と被告Y1は、被告Y2が受任通知を発送した後である平成25年4月7日、その共有する本件各不動産につき本件売買契約を締結し、その売買代金をもって抵当債務である本件融資と必要経費を弁済し、破産者は、同年6月19日、神戸地方裁判所尼崎支部において自己破産の申立てをしたことが認められる。
このように、破産申立前に担保物件を売却し、その売却代金をもって抵当権者に弁済することが詐害性を有しないとされるのは、抵当権者は破産手続開始後も抵当権に基づいて競売の申立てができ、一般債権者に優先して担保物件から被担保債権の弁済を受けられるからである。
したがって、売買代金から仲介手数料、別除権者への弁済金等の諸経費を控除した余剰金は破産債権者の共同担保となり、破産者が余剰金を減少させる等の行為をした場合には、破産債権者の共同担保を害するものとして詐害行為否認の対象となるというべきであるし、余剰金の帰属は、競売手続によった場合と同様に解するのが相当というべきである。
(2)  そこで、競売手続によった場合の余剰金の帰属について検討するに、本件では、破産者と被告Y1の持分は同時に売却されている。
この点、共同抵当権が同時に実行され、同時に配当がなされる場合につき、民法392条1項は「債権者が同一の債権の担保として数個の不動産につき抵当権を有する場合において、同時にその代価を配当すべきときは、その各不動産の価額に応じて、その債権の負担を按分する」と規定する。
同項の「不動産」には不動産の持分も含まれるが、本件各不動産に設定された抵当権は、破産者と被告Y1が各別にそれぞれの持分につき設定した訳ではなく、両名が一緒になって本件各不動産の全体につき設定したものであるから、「数個の不動産」としての破産者の持分と被告Y1の持分とをそれぞれ目的とする共同抵当権が設定されたものと解することはできない(なお、「数個の不動産」として別紙物件目録記載1の土地、同2の建物、同3の土地持分を目的とする共同抵当権であることは別論である。)。
しかしながら、本件のような場合にも、民法392条1項が類推適用され、破産者の持分と被告Y1の持分の価額に応じて、被担保債権の負担を按分すべきと解すべきである。なぜなら、民法392条1項の趣旨は、割付主義を採用することで、後順位抵当権者間に不公平が生じるのを回避し、かつ、抵当権設定者をして各不動産の残担保価値を有効に利用させる点にあるところ、不動産の共有持分に各別に抵当権が設定された場合のみならず、共有に係る不動産全部に抵当権を設定した場合にも、各持分の後順位抵当権者の不公平を回避したり、各持分の残担保価値を有効に利用するという民法392条1項の趣旨は妥当するからである。
なお、共同抵当権の目的たる数個の不動産のうちにいわゆる物上保証人に属するものがある場合において同時配当がなされた場合に民法392条1項の適用があるかは争いのあるところであるが(大阪地方裁判所平成22年6月30日判決・判例タイムズ1333号186頁、東京地方裁判所平成25年6月6日判決・判例タイムズ1395号351頁)、破産者と被告Y1はいずれも抵当権の被担保債権の債務者(連帯債務者)であり、仮に、連帯債務者間における被告Y1の負担割合が被告Y1主張のように存在しなかったとしても、被告Y1が債務者であることに変わりはないから、民法392条1項が類推適用されるという結論は左右されない。
(3)  上記判断に従い、本件各不動産の売買代金のうち、破産者の持分に相当する価額(売却代金の5分の3)から、前提事実(6)で認めた支援機構への弁済金等のうち破産者の持分価額に相当する額(弁済金等の5分の3)を控除すると、破産者に帰属すべき余剰金は200万1820円となる(1880万円×3/5-[1536万0733円+5万2500円+5万0400円]×3/5=200万1820円[円未満切り捨て])。
前提事実(7)によれば、破産者は、破産者に帰属する上記200万1820円(本件余剰金)を被告Y1が取得することを承認し(本件承認)、本件余剰金を破産者の財産から逸出させたものであるから、破産債権者の共同担保を害するものとして法160条1項1号の詐害行為否認の対象となると認められる。
2  争点(2)(本件承認が詐害行為否認の対象となるとして、その返還額はいくらか。)について
(1)  被告Y1が、平成25年4月7日、本件売買契約の手付金100万円のうち50万円を破産者に振り込み、残り50万円を被告Y3に振り込んだことは当事者間に争いがない。
(2)  被告Y1が破産者に振り込んだ50万円については、本件余剰金の前渡しと評価できるから、本件余剰金の返還額からは控除されるべきである。
(3)  被告Y1が被告Y3に振り込んだ50万円につき、被告Y1が破産者の報酬の支払を代行したものといえるかにつき検討するに、証拠(乙34、35)及び弁論の全趣旨(答弁書13から17頁)によれば、①被告Y2は、平成25年11月8日、破産者及び被告Y1と面談し、報酬140万円のほか、実費として、引継予納金40万円、印紙代等約2万円及び出張旅費約5万円の合計50万円弱が必要である旨説明したが、破産者は140万円程度しか準備できないと返答したこと、②被告Y2が、本件融資の処理はしない前提で100万円程度の報酬であれば検討できる旨伝えると、被告Y1から、不足分は被告Y1が負担するので本件融資の処理もして欲しい旨の申し出があったため、本件委任契約を締結するに至ったことなどが認められ、これに加え、前提事実(3)によれば、破産者がした本件支払は本件委任契約で定められた報酬の支払方法に概ね沿ったものであることなどを併せ考慮すると、被告Y1が被告Y3に振り込んだ50万円は、被告Y1が自らの財産から本件委任契約に基づき支払った実費(引継予納金、印紙代等、出張旅費)と認めるのが相当であり、被告Y1が破産者の報酬の支払を代行したものとは認められない。
したがって、被告Y1が法160条1項1号の否認権行使に基づき原告に返還すべき本件余剰金の額は、150万1820円(200万1820円-50万円=150万1820円)となる。
3  争点(3)(被告Y2及び被告Y3の財産散逸防止義務違反の不法行為の有無)について
債務者との間で同人の破産申立てに関する委任契約を締結した弁護士は、破産制度の趣旨に照らし、債務者の財産が破産管財人に引き継がれるまでの間、その財産が散逸することのないよう、必要な措置を採るべき法的義務(財産散逸防止義務)を負うことは当事者間に争いがない。
証拠(乙31、48)及び弁論の全趣旨によれば、本件各不動産の査定額は2119万円であり、オーバーローン物件ではなかったにもかかわらず、被告Y2及び被告Y3は、前記1の当裁判所の判断とは異なる法的解釈に基づき、破産者及び被告Y1に対し、本件余剰金が破産者に帰属する資産であり、将来選任される破産管財人に引継ぎすべき資産であることを教示せず、被告Y1が本件余剰金を取得するのを容認したと認められる。
債務者が危機状態に陥った後は、破産制度の趣旨に照らし、破産管財人に換価処分を委ねるのが原則であり、破産申立前の換価処分は、それを行わなければ資産価値が急速に劣化する等の事情のある場合に限られ、特に本件のように法的見解に相違があり得ることが予想される場合には、より一層速やかに破産申立てを行い、破産管財人の判断に委ねるのが相当であることはいうまでもないが、前記のとおり、被告Y2及び被告Y3が被告Y1に対し本件余剰金の取得を容認したのは法的見解の相違に基づくものであり、本件のように共有不動産全体に共有者を連帯債務者とする被担保債権とする抵当権が設定され、当該抵当権が実行された場合の処理につき明確に判断した最高裁の判例はなく、この点を意識的に論じた文献も必ずしも十分でないこと、破産申立前に破産申立代理人に対し換価処分が求められることは稀とはいえず、本件でも、破産者の援助者である被告Y1からその旨の希望があったこと(乙34、35、弁論の全趣旨)などを考慮すると、被告Y2及び被告Y3が、破産者及び被告Y1に対し、本件各不動産の処分を容認し、被告Y1が本件余剰金を取得するのを承認したことに故意又は過失があるとまでは認められないから、被告Y2及び被告Y3は、財産散逸防止義務違反の不法行為に基づく損害賠償責任を負わない。
4  争点(4)(本件入金のうち110万円は法160条1項1号の詐害行為否認の対象となるか)について
(1)  破産申立てに対する報酬の支払行為も、その金額が支払の対価である役務の提供と合理的均衡を失する場合、合理的均衡を失する部分の支払行為は破産債権者を害する行為として法160条1項1号の詐害行為否認の対象となると解される。
そして、具体的な報酬額が支払の対価である役務提供と合理的均衡を失するか否かの判断は、客観的な弁護士報酬の相当額との比較において行うのが相当であり、その判断にあたっては、廃止された日本弁護士連合会の弁護士の報酬に関する規程(第2条 弁護士の報酬は、経済的利益、事案の難易、時間及び労力その他の事情に照らして適正かつ妥当なものでなければならない。)や各弁護士会の報酬会規を基準とすべきである。
(2)  後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
ア 廃止された東京弁護士会の弁護士報酬会規(以下「旧報酬会規」という。)27条1項は、破産事件の着手金は、資本金、資産及び負債の額並びに関係人の数等事件の規模に応じて定め、事業者の自己破産事件につき50万円以上、非事業者の自己破産事件につき20万円以上とすること、同条2項は、報酬金の額は民事事件の報酬金に関する会規を準用するが、経済的利益の額は、配当額、配当資産、免除債権額、延払いによる利益及び企業継続による利益等を考慮して算定し、自己破産事件の場合は免責決定を受けたときに限ることを定めている(乙20)。
イ 経済的利益について
(ア) 破産者の破産申立書によれば、破産債権者数は28名(ただし、兵庫県信用保証協会が6回、オリエントコーポレーションが2回計上されており、うち1名は被告Y1、うち2名は租税公課、うち3名はNHK、大阪ガス株式会社、関西電力株式会社である。)、債務総額は4394万4237円である(甲10)。
(イ) 被告Y2と被告Y3が破産申立時に確保していた金員(引継予納金)は40万円であるが、被告Y1から実費として振り込まれた金員から拠出されており、被告Y2及び被告Y3が、本件各不動産の処分以外に、破産者の財産に関し労力を費やした形跡は窺えない(甲8、10ないし12、乙34、35、弁論の全趣旨)。
ウ 事案の難易について
破産者は、昭和51年ころから金属加工業を行っていたが、経営不振等により平成24年11月30日に買掛金の支払を停止して営業を廃止し、平成25年6月19日、自己破産の申立てをした。営業廃止時の買掛先は3社であり、破産者は従業員を雇用しておらず、破産申立時において賃借していた工場の明渡しは未了である(甲10)。
エ 時間及び労力その他の事情について
被告Y2及び被告Y3は、債権者に対する受任通知の発送、債権調査、破産原因の調査、資産調査、破産申立書及び添付資料の作成と裁判所への提出を行っているが、破産申立書は雛型に沿って必要事項を記載したもので、特段、その作成に労力を費やした形跡は窺えない。また、被告Y2及び被告Y3は、本件各不動産の換価処分を行っているが、前記3で認定・判断したとおり、破産者の援助者である被告Y1から希望があった以外に破産申立前に換価処分をなすべき特段の必要性は見当たらず、むしろ換価処分をせずに破産管財人の判断に委ねるのが相当であったのに、これを行い、本件余剰金を破産財団から逸出させたことからすると、無益な換価行為といわざるを得ない。
(3)  上記認定の事実によれば、破産者は金属加工業を行っていたから、旧報酬会規27条1項の事業者の自己破産の類型に該当するが、支払停止当時、破産者に従業員はおらず、買掛先は3社であったこと、破産債権者の総数や負債総額も事業者破産としては多くないことなどからすると、零細な個人事業主の破産申立てというべきである。
また、破産者に免責不許可事由は特に見当たらず、負債総額も事業者破産としては多くないこと、破産者の財産を増殖させた等の事情もないことからすると、破産者の経済的利益は大きくなく、複雑な処理を要する事案でもない。
また、時間や労力の点でも、破産申立てに必要とされる事務は一通り行われているものの、無益な換価行為である本件各不動産の処分以外に、特段、労力を費やした形跡は窺えない。
以上に加え、引継予納金を含む実費50万円は報酬とは別に被告Y1から支払済みであることも勘案すると、破産者の破産申立てに対する適正報酬額は、着手金と成功報酬を含めて63万円(消費税込)を上回ることはないと解するのが相当である。
よって、本件支払のうち63万円(消費税込)を超える部分は、役務の提供と合理的均衡を失するものであり、債権者を害するものとして法160条1項1号の詐害行為否認の対象となり、被告Y2及び被告Y3は、原告に対し、法160条1項1号の否認権行使に基づき、各自、破産者から受領した報酬141万円のうち63万円を超える部分である78万円を返還すべき義務を負うというべきである(なお、前提事実(3)によれば、本件委任契約に基づく被告Y2及び被告Y3の破産者に対する報酬債権は不可分債権と解されるから、否認権行使に基づき発生する破産財団への支払義務は不可分債務になると解する。)。
5  結論
以上によれば、原告の請求は、被告Y1に対し150万1820円及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成25年11月13日から、被告Y2及び被告Y3に対し各自78万円及びこれに対する訴状送達日の翌日である同月12日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し、その余はいずれも理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判官 佐藤志保)

 

(別紙)〈省略〉

 

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