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「営業アウトソーシング」に関する裁判例(20)平成29年 3月23日 東京地裁 平26(ワ)28746号 地位確認等請求事件

「営業アウトソーシング」に関する裁判例(20)平成29年 3月23日 東京地裁 平26(ワ)28746号 地位確認等請求事件

裁判年月日  平成29年 3月23日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平26(ワ)28746号
事件名  地位確認等請求事件
文献番号  2017WLJPCA03238014

裁判年月日  平成29年 3月23日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平26(ワ)28746号
事件名  地位確認等請求事件
文献番号  2017WLJPCA03238014

横浜市〈以下省略〉
原告 X
同訴訟代理人弁護士 上條義昭
同訴訟復代理人弁護士 尾籠真弥
江藤里恵
東京都千代田区〈以下省略〉
被告 Y株式会社
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 浅井隆
同訴訟復代理人弁護士 小山博章

 

 

主文

原告の請求をいずれも棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。

 

事実及び理由

第1  請求
1  原告が,被告に対し,労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。
2  被告は,原告に対し,平成26年11月1日から本判決確定の日まで,毎月25日限り,91万6667円及びこれに対する各月26日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
1  事案の要旨
本件は,証券会社である被告との間で労働契約を締結する原告が,被告からされた普通解雇が無効であると主張して,被告に対し,労働契約上の権利を有する地位にあることの確認とともに,解雇後の賃金の支払を求めた事案である。
2  前提事実(争いのない事実又は後掲の証拠(枝番のあるものは特に断らない限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨によって認められる事実)
(1)  当事者等及び原被告間の労働契約
ア 被告は,有価証券の売買,市場デリバティブ取引及び外国市場デリバティブ取引等を目的とする平成22年(2010年)9月1日に設立された株式会社である。
被告は,パリを本拠地とする世界規模の金融グループである○○グループに属するところ,その日本における沿革についてみれば,1867年におけるa銀行横浜支店開設,昭和43年(1968年)におけるb銀行東京駐在員事務所開設,昭和46年(1971年)におけるc銀行東京駐在員事務所開設,昭和62年(1987年)におけるd証券会社東京支店開設等に端を発し,平成12年(2000年)に世界規模でb銀行と○○が合併したことに伴い,e証券会社東京支店(「e1社」とも呼称される。以下,単に「訴外会社」という。)及びf銀行東京支店と名称変更し,その後,訴外会社が平成20年(2008年)11月28日付けで金融庁から業務改善命令でもって経営管理態勢の整備と内部管理態勢の再構築を求められたことを踏まえ,上記のとおり,平成22年(2010年)9月1日付けで被告(旧商号・g株式会社)が設立され,平成23年(2011年)1月21日付け事業譲渡契約書でもって,訴外会社から被告に対して,同年5月1日に財産の一部が事業譲渡された。
(甲26,乙1,12~13,28,弁論の全趣旨)
イ 原告は,昭和34年(1959年)○月○日生の女性であり,外国語専門学校を卒業した後,昭和55年(1980年)3月にc銀行東京支店に入社し,平成12年(2000年)に訴外会社とc銀行東京支店の総務部及び人事部の統合を受けて訴外会社人事部に配属となったところ,上記アの訴外会社から被告への事業譲渡に伴い,平成23年(2011年)4月20日に,同月30日付けで訴外会社を合意退職する旨を約するとともに,同年5月1日付けで被告に入社する旨の労働契約(以下,原被告間の労働契約を「本件労働契約」という。)を締結した。ちなみに,原告は,訴外会社を合意退職するに当たって,2945万2468円の退職金を受領したものである。
(甲31,乙2,14,弁論の全趣旨)
ウ 本件労働契約においては,原告の配属が被告の経理・財務部とされ,基本給年給1100万円が支給(1か月ごとに毎月25日限り91万6667円が支給)されるほか,被告の完全なる裁量にてパフォーマンス・ボーナスが支給され得ることとされた。
(乙2,弁論の全趣旨)
(2)  被告の経理・財務部について
ア 被告の経理・財務部は,全体として20~30人程度の人員で構成され,原告が被告に在籍していた当時,Bチーフ・ファイナンシャル・オフィサー(「Chief Financial Officer」。「CFO」と略されることがある。本判決においては,以下,「B部長」という。)の下,6つのチームから成り,原告は,そのうちのAccounts Payableチーム(以下「APチーム」という。)に所属していた。
(乙36,原告21頁,弁論の全趣旨)
イ 平成26年(2014年)4月28日,原告の直属の上司であるAPチームのマネージャーのCが被告を退職した。もっとも,同人は,同年5月から同年11月末まで,パートタイムの契約社員という立場で,週2日程度,被告の経理・財務部で勤務を続けていた(以下,Cのことを「C元マネージャー」という。)。
そして,同年7月1日に,Dが被告に入社し,経理・財務部のAPチームのマネージャーに就任した(以下,Dのことを「Dマネージャー」という。)。
APチームは,平成25年(2013年)1月から平成26年(2014年)1月までは,C元マネージャーと原告の他に社員1名及び業務委託スタッフ1名の合計4名であったが,同年2月には社員1名が加わって合計5名となり,上記のとおり,C元マネージャーがパートタイムの契約社員として週2日程度勤務した時期(同年5月~同年11月末)やDマネージャーが入社した時期(同年7月),後記のとおり原告が解雇された時期(同年9月)等で多少変動するが,基本的に1名のマネージャー(課長)を含めた3名の社員と業務委託スタッフ1名の合計4名程度の人員で構成されている。
(乙35,37,弁論の全趣旨)
(3)  被告の人事考課制度及び原告の評価等
ア 被告の平成23年(2011年)における人事考課(アプレイザル)は,「1/above expectations(期待以上)」,「2/Meets expectations(期待に沿っている)」,「3/to be improved(改善の余地あり)」,「4/inadequate(不適切)」の4段階評価であった。
その後,被告の平成24年(2012年)及び平成25年(2013年)における人事考課(アプレイザル)は,「1/Outstanding performance(傑出した優れた成績)」,「2/significantly above expectations(はるかに期待を超える)」,「3/above expectations(期待以上)」,「4/Meets expectations(期待に沿っている)」,「5/below expectations(期待以下)」,「6/significantly below expectations(甚だしく期待以下)」の6段階評価に変更された。
イ 被告においては,自身の仕事が世界的かつ戦略的な会社の目標達成のためにどれほど貢献しているのかを従業員においてよりよく理解するのを手助けすることと,毎年の人事考課(アプレイザル)のプロセスを通じて,マネージャーと従業員に実り多く透明性の高い対話の機会を与えることのために,「SMARTS」(平成24年(2012年)以前は「SMART」)という「Specific(目標は具体的であるか?)」,「Measurable(達成度は測定可能か?)」,「Achievable(目標は達成可能か?)」,「Relevant(目標の関連性はどうか?)」,「Time-bound(期限,頻度等はどうか?)」,「Shared(目標は理解され,合意されているか?)」の頭文字を取った目標設定の指針を掲げている。
(甲22,弁論の全趣旨)
ウ 原告の平成23年(2011年)の人事考課(アプレイザル)による総合評価は「3/to be improved(改善の余地あり)」,平成24年(2012年)及び平成25年(2013年)は「5/below expectations(期待以下)」と,いずれも下から2番目であった。
(甲14~16,乙4~6)
エ ちなみに,原告は,平成12年(2000年)に訴外会社人事部に配属となって以降,同部の他に,IT部,総務部,財務部等で勤務したが,平成13年(2001年)から平成20年(2008年)の人事考課(アプレイザル)による評価(なお,訴外会社における人事考課は,前記ア前段の被告の平成23年(2011年)における4段階評価と同様のものであった。)は,個別の項目につき,概ね「2/Meets expectations(期待に沿っている)」を得て(なお,平成21年(2009年)の人事考課(アプレイザル)の評価は,証拠上明らかになっていない。),その業績評価に伴う昇給を重ねていたものの,訴外会社の財務部に配属されていた平成22年(2010年)の人事考課(アプレイザル)による総合評価は「3/to be improved(改善の余地あり)」であった。
(甲12~13,31,弁論の全趣旨)
(4)  被告による原告への個別指導(警告)
ア B部長は,複数年にわたって原告の被告における人事考課(アプレイザル)の結果が低調であることを踏まえ(前記(3)ウ),個別指導として,平成26年(2014年)5月29日,原告に対し,原告のパフォーマンスに関する被告の重大な懸念を伝えるとして,6つの改善項目,それらの改善項目に対する行動計画の詳細及び改善完了日を掲げ,これらの項目に関する原告のパフォーマンスにおいて継続した改善が達成されなかった場合,同年8月末頃において,原告の将来の雇用関係について検討せざるを得ない旨等を記載した書面(以下「第1警告書」という。)を交付した。
(甲3,乙7,弁論の全趣旨)
イ B部長は,平成26年(2014年)7月7日,原告に対し,業務指示又は業務命令であることを強調して,第1警告書と同内容の記載に係る書面(以下「第2警告書」という。)を交付した。
(甲7,乙9)
ウ B部長は,平成26年(2014年)同年8月4日,改善事項を限定してより具体的に明示した上で,第1警告書及び第2警告書と同内容の記載に係る書面(以下「第3警告書」という。)を交付した。
(甲10,乙11)
(5)  被告による原告の解雇
ア 被告は,平成26年(2014年)9月17日,原告に対し,繰り返し業務パフォーマンスに関する懸念を伝えて具体的指示を行った上で業務改善を行うよう注意・指導をしたにもかかわらず,改善がなかったとして,被告の就業規則33条の(1)(「上司の命令に従わず,又は他の従業員との協調性を欠くなど勤務態度が不良であり,改善の見込みが乏しいと認められる場合」),(3)(「業務能率又は勤務成績が著しく不良で,職務遂行に必要な能力が欠如又は不足している場合」),(4)(「特定の地位,職種又は一定の能力を条件として雇用された者で,その職務遂行に求められる能力が欠如又は不足し,その適格性がないと認められる場合」),(12)(「その他やむを得ない事由により解雇する必要があると認められる場合」)に該当する事由があるので,同年10月末日をもって解雇する旨の意思表示(以下「本件解雇」という。)をし,その後,同日が経過した。
(甲1,乙3,弁論の全趣旨)
イ 被告の平成26年(2014年)9月18日付け解雇理由証明書には,本件解雇の理由について,被告が,原告に対し,繰り返し業務パフォーマンスに関する懸念を伝えて具体的指示を行った上で業務改善を行うよう注意・指導をした,より具体的には,同年5月29日,同年7月7日,同年8月4日に第1警告書ないし第3警告書でもって指導かつ警告したにもかかわらず,業務遂行の改善がされなかったことから,原告の業務遂行の不良が上記アで摘示した就業規則の条号に該当すると判断した旨が記載されている。
(甲2)
3  争点
本件解雇の有効性
第3  争点に関する当事者の主張
1  被告の主張
(1)  要旨
外資系金融機関である被告は,他の世界規模の金融機関と同様に,リーマンショック後の市況の低迷に対応すべく,例えば,他の地域よりも相対的に人件費が安く,IT技術力の高いインドへ,国境を越えて,外注できる業務をできるだけ外注し,外注できない仕事であっても,やり方を工夫して効率化を図り,できるだけ少ない労働時間と従業員数で業務を処理することを可能にし,限られた収益の中で,従業員の高額な賃金を維持するよう努力しているところ,そのような世界の経済情勢の変化に対応すべく業務の外注化,効率化を図る過程において,能力主義による成果型の賃金制度の下で各従業員にその職責に応じた貢献を求める中,原告において,その要求に3年も応えることができなかったばかりか,そのような状況下において,第1警告書ないし第3警告書により3度にわたって個別指導(警告)として業務指示又は業務命令を与えられたにもかかわらず,訴外会社における過去の業績評価に固執し,上記業務指示又は業務命令を不当評価あるいはパワーハラスメントと一方的に決めつけて,これに従う姿勢を一切みせなかったため,もはや改善の見込み等はないものと判断せざるを得ず,退職勧奨や,法令の予告期間よりも長い期間を予告期間とする等の配慮をした上で,普通解雇をしたものであるから,本件解雇は,客観的に合理的な理由があり,社会通念上も相当であることは明らかである。
(2)  被告における原告の職責等
原告は,訴外会社から被告へ事業譲渡がされることに伴い,3000万円弱に及ぶ高額の退職金を得て訴外会社との雇用関係を完全に清算した上で,会計士や税理士資格を持たない専門学校卒の学歴であるにもかかわらず,同年代・同程度の学歴の女性の平均年収をはるかに上回る年俸1100万円(賞与は別)もの処遇でもって被告に入社したものであるが,それは,一般的な経理担当者としての職責を果たすことはもちろんのこと,シニア・スタッフとしてチーム全体の効率性の改善や管理の強化といったことへの貢献を期待されたからにほかならない。
(3)  原告の業績評価等
しかしながら,原告は,被告に入社した平成23年(2011年)から平成25年(2013年)までの3年にわたって,チームワーク及びチームの効率性の改善等(優先順位を意識した業務の処理,業務上の問題点の分析と対策立案等)の課題を繰り返し問題とされ,その期待に沿うことができなかったばかりか,ケアレスミスや担当分野に係る専門的知識の不足を露呈し続け,低評価にとどまった。
(4)  原告に対する個別指導(警告)等
ア 被告は,原告に対し,毎年の人事考課ミーティング(アプレイザル・ミーティング)や毎月の会議等において,前記のような改善事項を,原告との間で十分に議論をした上で繰り返し説明したにもかかわらず,原告において改善が認められなかった。
そこで,被告は,将来における原告の業務改善を図る目的の下,個別指導として,業務指示又は業務命令であることを強調しつつ,本件雇用契約が継続されない可能性についても言及した上で,平成26年(2014年)5月から同年8月頃にかけて,第1警告書ないし第3警告書の交付,それに伴うパフォーマンス・レビュー・ミーティングの実施,メールでの業務指示等を行った。
イ しかしながら,これに対して,原告は,業務改善の姿勢を全く見せることがなく,それどころか業務指示に係るメールへの対応等を懈怠することさえしばしばあり,挙げ句は,被告が将来における原告の業務改善を図る目的の下で現状の問題を具体的に指摘するのをさて措いて,訴外会社における過去の業績評価に固執して,過去において高評価であった原告が被告において低評価を受けるのは経験則に反するもので,この点に関する合理的な説明がされない以上,現状の業績評価や業務指示又は業務命令は原告を退職に追いやるためにB部長によって恣意的になされた不当なパワーハラスメントに当たるなどと一方的に決めつけて,これに従う姿勢を一切みせなかった。
ウ そして,原告は,平成26年(2014年)8月から同年9月にかけて,代理人弁護士を通じて,被告又は被告代理人弁護士とやり取りをしたところ,その過程において,被告代理人弁護士から書面や口頭で再三にわたって,過去の業績評価が複数年に及んで低調であったという事実はあれども,その評価の妥当性の問題ではなく,現状及び将来の業務改善に係る指示又は命令に原告が従わないことを被告において問題視していることを平易に説明されたにもかかわらず,この点を全く理解することができず,議論の噛み合わないままに,相変わらず訴外会社での業績評価を持ち出して被告における業績評価の不当性やB部長によるパワーハラスメントを論難し続けて,業績評価が恣意的なもので不当である以上,被告の現状及び将来の業務改善に係る指示又は命令はその前提根拠を欠くなどという態度を示した。
また,原告は,代理人弁護士間における早期解決に向けた話合いにおいても,B部長による退職強要やパワーハラスメントの事実を具体的証拠の摘示もないままに主張して,漫然とB部長の配置転換を要求するとともに,仮に原告が被告を退職するのであれば1億円近くに及ぶ定年までの賃金相当額が支払われない限りこれに応じないなどという法外な要求に終始した。
(5)  本件解雇の客観的合理性及び相当性
ア 原告は,被告における3年にもわたる業績の低評価の結果,個別指導の対象となったが,それにもかかわらず,訴外会社における過去の業績評価等に固執して,被告が現状において求める業務遂行のやり方や,上司の指導方法等を受け入れることなく,むしろこれを不当評価あるいはパワーハラスメントと受け取り,外部環境の変化に対応して業績改善を図っていくことの重要性を全く理解せず,賞与を別として年俸1100万円もの処遇を与えられた経験のあるシニア・スタッフに対する被告の期待を遥かに下回り,一般的な労働者が遵守すべき基本行動すら達成できない状況にあったもので,就業規則33条の(1)(「上司の命令に従わず,又は他の従業員との協調性を欠くなど勤務態度が不良であり,改善の見込みが乏しいと認められる場合」),(3)(「業務能率又は勤務成績が著しく不良で,職務遂行に必要な能力が欠如又は不足している場合」),(4)(「特定の地位,職種又は一定の能力を条件として雇用された者で,その職務遂行に求められる能力が欠如又は不足し,その適格性がないと認められる場合」),(12)(「その他やむを得ない事由により解雇する必要があると認められる場合」)に該当する事由が明らかにあり,本件解雇は,客観的に合理的な理由がある。
イ そして,被告が原告に対して業務改善の機会を幾度となく与えたにもかかわらず原告がこれを受け入れようとする姿勢すら一切見せなかったこと,早期解決等に向けた代理人弁護士間の話合いの際にも,原告及び代理人弁護士において,被告が重視する問題点を正しく理解することのできないままに法外な要求に終始したために,円満退職等を含めた早期解決の道が閉ざされてしまったこと,そのような原告の姿勢にもかかわらず,被告は,原告の再就職活動機関を提供する配慮から,法律上の予告期間よりも長い期間を有給で設定した上で本件解雇に及んだものであること等を踏まえれば,本件解雇は,社会通念上も相当なものであるといえる。
2  原告の主張
(1)  要旨
原告は,昭和55年(1980年)3月に新卒社員としてc銀行東京支店に採用された後,数次の組織再編等を経て,平成26年(2014年)まで34年間にわたって,前身を含めて被告において誠実に職務に取り組み,平成21年(2009年)まで比較的高い業績評価を複数の上司から受けて地道に年俸1100万円まで昇給をしていたが,平成22年(2010年)に○○グループ外から転入してきたB部長が訴外会社における原告の上司となってから,それまで「SMARTS」という目標設定の指針に沿って公正に行われてきた人事考課(アプレイザル)をないがしろにして,年俸が高額であることを理由に,シニア・スタッフという抽象的な概念に基づいて,あいまいかつ達成不可能な目標を設定された上で不当な低評価を与えられ続けたばかりか,C元マネージャーの退職に伴う人員不足等からくる繁忙といった事情をさて措いて,業務改善の名の下に無意味かつ無駄に時間を要するだけの加重な仕事を果てしなく要求され続けたもので,客観的な解雇事由が全く存在しないにもかかわらず,B部長が原告の上司になった当初から意図していた原告の解雇を実現するために,原告の能力不足や業務指示又は業務命令違反を論難して強引に解雇事由に結びつけられたにすぎず,本件解雇に客観的に合理的な理由は一切ないし,仮に原告の能力不足や業務指示又は業務命令違反があったところで何らの業務上の支障や損害が被告に生じていないことに鑑みれば,本件解雇には社会通念上の相当性もないことが明らかである。
(2)  原告が被告会社に入社するまでの経緯等を踏まえるべきこと
ア 被告は,あたかも原告が年俸1100万円の条件で被告に中途採用された労働者であるかのような前提に立った上で,原告が被告に入社するに至るまでの経緯を殊更に無視するとともに,シニア・スタッフとしての職責の高さを強調し,本件解雇の有効性を論難するが,被告とその前身である訴外会社等は事業の実態や,人事考課の制度設計等が全く同じであること,被告も原告の人事考課(アプレイザル)に係る書面において原告の入社日を被告への入社日よりも前の日を記載していること等からすると,原告が昭和55年(1980年)3月にc銀行東京支店に新卒採用されてから,34年にわたり誠実に職務に取り組み,比較的高い業績評価を複数の上司から受けて地道に年俸1100万円まで昇給して,被告への入社に至ったという経緯を無関係なものとして取り扱うべきではない。
イ 原告の給与は,新卒採用当時において年収250万円に満たなかったところから始まり,その後の誠実な職務への取組みと正当な業績評価に伴う昇給を積み重ねて年俸1100万円に至ったもので,被告入社時において年俸1100万円を条件に高度の職責が特段課せられたものではない。被告において,シニア・スタッフという立場は,飽くまで「経験の長い」といった程度の意味合いで用いられているにすぎないもので,そのような特定の地位や職種が存在しておらず,本件労働契約の内容を構成しているものともいえないから,就業規則33条の(4)(「特定の地位,職種又は一定の能力を条件として雇用された者で,その職務遂行に求められる能力が欠如又は不足し,その適格性がないと認められる場合」)の解雇事由に該当することはおよそあり得ない。
(3)  被告による原告の業績評価が恣意的なものであること
ア 原告は,訴外会社において「SMARTS」という目標設定の指針に沿って公正に行われてきた人事考課(アプレイザル)で比較的高い業績評価を長年にわたり受け続けてきたにもかかわらず,B部長が訴外会社において原告の上司となった平成22年(2010年)から,突如として低い業績評価を与えられ,被告に入社した平成23年(2011年)以降も同様に低い業績評価をされた。
イ 個人の能力は,簡単に劣化するものではなく,特定の従業員が同じような仕事を処理しているケースにおいて,年月の経過により熟練度を増して上がることはあれども,若年性認知症を発生したというような特段の事情が生じない限り下がることがないのが社会常識であるにもかかわらず,原告の業績評価は,B部長が上司になってから,不自然かつ不合理に突如として下げられたもので,そこには,当初から原告を解雇に追いやらんとするB部長をはじめとする被告の意図がみてとれる。
つまり,B部長及びC元マネージャーは,原告よりも知識や能力が劣るにもかかわらず,従前の人事考課(アプレイザル)の運用に反して,その指針である「SMARTS」を意図的に無視し,いかなる課題を達成すれば評価が高まり,あるいは逆に達成できなければ評価が低まるのかの予測もつけられないような抽象的な目標設定を掲げ,そもそも恣意的な業績評価を自在にできる状況を作出したばかりか,原告との議論を通じて理解を得ようとすることもないままに一方的な目標を押しつけた上で,「シニア・スタッフ」等のテクニカルタームを用いつつ些細な出来事を誇張して目標未達成や原告の能力に関係ない事柄に基づく能力不足を論難し,挙げ句は,人事考課(アプレイザル)に直接影響しない部分において原告を高く評価するような言辞(「チームに貢献しました。」,「・・・様々なフォローをしました。」,「チームのメンバー・・・を助けました。」,「SAPシステムやエクセルを使ったどんなレポート作成も得意です。」等)を並べてごまかしつつ,肝心な原告の業績を人事考課(アプレイザル)において意図的に取り上げず(例えば,平成23年(2011年)における「携帯電話料金及び通常回線電話料金の支払」と「SAP(経費支払システム)データの作成」を外注業者に移管するプロジェクトにおける原告の貢献等),あるいは過小評価して(例えば,平成24年(2012年)における「エクセルによる集計表」の発案及び完成等),解雇に追いやるために意図的に異常に低い業績評価をし続けたものである。
そして,そのような被告の意図は,平成24年(2012年)12月27日に実施された原告とC元マネージャーとのアプレイザル・ミーティングの会話録音内容(甲37)を踏まえれば,C元マネージャーが,原告の業績評価を「5/below expectations(期待以下)」とする客観的事由がないことを認識しながら,原告の年俸がマネージャー並みに高額であり,APチームにマネージャーの他にそれと同等の年俸を得る人員が存在することは経済的合理性を欠くという観点の下,正当な理由もないままに業績に見合わない低い評価を与えたことを自認していることからも明らかであるといえる。
(4)  業務命令違反の主張に対して
被告は,原告が第1警告書ないし第3警告書を交付されたにもかかわらず,これに従わずに業務改善を行わなかった旨を論難する。
しかしながら,これら警告書において問題とされる出来事は,そもそもいずれもC元マネージャーの退職に伴う人員不足等(消費税の税率変更に伴う業務の増加等の事情もある。)からくる繁忙期にかかるものであり,当時の残業時間からもその様子は優にうかがえるところ,そのように1人で2人分の仕事を処理しなければならないような加重業務の状態をさて措いて,また,平成26年(2014年)7月から同年8月における原告とB部長,C元マネージャー及びDマネージャーとのミーティングにおける会話録音内容(甲38~40)から明らかなように,シニア・スタッフという抽象的な概念の下に,本来的な日常業務の範囲を超えて,原告を解雇に追いやるための粗探しというB部長の考えに基づいて時間の浪費にしかならない無意味な作業を過度に強いるような業務命令に従うことは,期待可能性もなければ必要性もない。
(5)  本件解雇に客観的合理性及び相当性がないこと
ア 本件解雇は,年俸の高い原告をコストカットするという観点の下,そもそも訴外会社においてB部長が原告の上司に就任した当初の段階から意図されていたもので,シニア・スタッフという抽象的な概念に基づく高い職責を振りかざし,その職責に見合った業績が上げられていないであるとか,原告の能力による問題ではない事柄を原告の能力不足に起因するものであるとか決めつける等して,客観的な解雇事由が全く存在しないにもかかわらず,原告とB部長等とのミーティングの内容(甲38)につき原告の業務遂行能力が著しく劣るとの誤った印象に誘導するような虚偽を並べ立てた議事録(乙18)を作成してまで,原告の解雇事由を仕立て上げたもので,客観的に合理的な理由は一切存在しない。
この点,被告は,本訴が提起される以前の段階で,原告の3年にわたる能力不足からくる業績不良を解雇理由としていたにもかかわらず,それが困難であるとみるや,第1警告書ないし第3警告書に対する業務指示又は業務命令違反に解雇理由をすり替えており,このことからも本件解雇に解雇事由がないことがみてとれる。
イ 仮に,原告について,能力不足や業務指示又は業務命令違反と評価されたものとしても,それによって何らの業務上の支障や損害も被告には生じていないことに鑑みれば,本件解雇に社会通念上の相当性がないことは明らかである。
第4  当裁判所の判断
1  認定事実
前記前提事実に加えて,後掲の証拠(枝番のあるものは特に断らない限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨によれば,次のような事実が認められる。
(1)  原告が被告に入社するまでの概況及び本件労働契約等
ア 被告は,パリを本拠地とする世界規模の金融グループである○○グループに属するところ,原告は,外国語専門学校を卒業した後,昭和55年(1980年)3月に同グループ内のc銀行東京支店に入社し,その後,同社と訴外会社の部門統合等を経て,訴外会社の各部署に配属されていたが,平成20年(2008年)11月における金融庁の訴外会社に対する業務改善命令を踏まえて,被告が設立されて訴外会社から一部の事業譲渡がされることに伴い,平成23年(2011年)4月30日付けで訴外会社を合意退職し,同年5月1日付けで被告に入社した。原告は,訴外会社を合意退職するに当たって2945万2468円の退職金を受領した。
(前記前提事実(1)ア,イ)
イ 本件労働契約においては,原告の配属が被告の経理・財務部とされ,基本給年給1100万円が支給されるほか,これとは別に賞与(パフォーマンス・ボーナス)が支給され得ることとされた。
(前記前提事実(1)ウ)
ウ 被告の就業規則3条2項は,被告の従業員が,その職務に応じて,「管理職従業員」(会社が指定した,他の従業員の管理・監督を行う者又は,重要な職務,責任及び権限を有し,勤務態様を含めたその業務遂行方法において裁量を広く与えられている者,若しくは経営上の重要な事項に関する企画,立案,調査,分析等の業務を担当する者で,相応の待遇を得ている者),「専門職従業員」(管理職従業員以外で会社の指定した専門業務に従事する者)及び「一般職従業員」(管理職従業員及び専門職従業員のいずれにも該当しない者)に分類される旨を定めるところ,本件労働契約等において,原告は,被告から管理職従業員及び専門職従業員に指定されてはいない。
もっとも,原告は,訴外会社を含めて○○グループでの経歴を有することを踏まえ,職制上の正式な地位ではないものの,経験を有する者という意味合いで,また,高給を得ている者(ちなみに,原告の年俸は,APチームのマネージャーの年俸と同額であった。)という意味合いも含めて,被告においてシニア・スタッフと位置付けられ,そのように呼称されていた。
(乙2~3,証人C元マネージャー2,13~15頁,証人B部長19~20頁,弁論の全趣旨)
(2)  業務の外注化及び効率化に関する被告の経理・財務部の取組み
ア 被告を含む世界規模の外資系金融機関においては,特に平成20年(2008年)秋のリーマンショック以降,市況の顕著な悪化を踏まえ,経費を節減するための効率化の一環として,多くの業務を相対的に人件費が安い地域に国境を越えて外注するとともに,一層の効率化を求める傾向が強まっており,被告も,IT関連業務を技術力が高く英語圏であるインドへ外注し,日本ではその外注した仕事の管理(コントロール)の構築・強化が業務の重点を占めるようになっており,原告自身についてみても,原告が訴外会社等で過去に自ら取り組んでいた業務それ自体は,外注化され,その管理(コントロール)をすることが被告における日常の仕事になっていた。
(証人C元マネージャー2頁,証人B部長1~3頁,原告17~18,32~33頁,弁論の全趣旨)
イ 被告の経理・財務部では,年1回,同部全体の取組みや年度目標を話し合い,説明をするタウンホール・ミーティングを構成員全員の出席の下で開催しているところ,上記アのような状況を踏まえ,平成23年(2011年)から平成25年(2013年)にかけて,毎年,「コントロールの改善」(外注化した業務の管理体制の改善)及び「効率性」を中心に,その他に「積極的な問題解決」,「コミュニケーションとチームワーク」,「会計及び規制の知識」,「業務知識」等を目標に掲げて,年ごとにこれらの目標を具体的な事象に落とし込んで説明等していた。
(乙30,証人B部長3頁,原告19~21頁,弁論の全趣旨)
(3)  被告における原告の業績等
ア 原告は,平成23年(2011年)4月30日付けで訴外会社を合意退職の上,同年5月1日付けで被告に入社し,それまでの○○グループ内での長い勤務経験や,賞与を別とした年俸が1100万円であるという処遇に鑑みて,シニア・スタッフと位置付けられ,そのように呼称されていたところ,被告の経理・財務部APチームにおいては,シニア・スタッフである原告に対し,インドの関連会社や国内のアウトソーシングの会社(h社)に外注した業務(経理業務における入力作業等)をチェックして管理(コントロール)することと,経理の本質的な部分に関わる効率化や制度的な変更を考察する仕事を担うことが期待されていた。
この点,原告の平成23年(2011年)における人事考課の書面(アプレイザル・シート)においても,原告の仕事内容に関して,外注化管理を含む経理業務(請求書の審査,SAP(経費支払システム)記帳のクオリティチェック,外貨支払,SAP上での手動の支払(入金)の記帳,インドの関連会社(i社)のバランスシート(BS)レポートに対する残高の確認を含む賃借対照表勘定の管理,外形標準課税レポートの作成,インドの関連会社によって準備された請求書データを確認した後に会社間の請求書を発行すること,会社間の現金受取の管理,財務会計チームのための未払及び前払残高リストの準備等)及び「○○の恒久的な業務管理体制に関する直接的貢献」との説明がされている。
(前記(1)ア~ウ,甲14,乙4,証人C元マネージャー2~3頁,証人B部長3頁)
イ 被告における従業員の毎年の人事考課は,マネージャーが,従業員のアプレイザル・シートのドラフトを作成し,その内容について当該従業員とミーティングを行った上で,同シートを完成させ,これを当該従業員が確認してコメントを加えて署名する方法で実施されるところ,原告の平成23年(2011年)のアプレイザル・シートは,C元マネージャーによって,平成24年(2012年)1月11日の同マネージャーと原告との間のミーティングを経て作成された。
このアプレイザル・シートの中で,原告の平成23年(2011年)における業績目標として掲げられた「プロセス改善の実施とともにB/S項目の管理を検討する」,「会社間の付け替え手続の管理を検討する」,「事故と間違いの記録をモニターし,管理するとともに,インドの関連会社(i社)における日々の業務を監視することによって,同社の質を向上させる」等の項目について「更なるプロセス改善が依然必要」とされ,「チームのシニア・スタッフとして・・・プロセス改善の提案に貢献する必要」があるために目標達成率70(%)とされて,総合評価を「3/to be improved(改善の余地あり)」と位置付けられた。
C元マネージャーは,原告の長所として,よく働く点や,○○グループでの長い勤務経験,チームワークを挙げる一方,主な改善項目として,コミュニケーション(長すぎる説明及び電子メール),フォローアップ及び効率性を掲げ,業務を完了するために過大な時間を費やし,重要性や実質を理解せず,非効率的であった旨を指摘し,今後,経験豊富なシニア・スタッフとして振る舞うよう要請した。
これを受けて,原告は,来年度の目標として,第1四半期の終わりまでにIT部門及び外注業者と協力して電話関連経費の仕訳に係るプロセスを改善すること,同時期までに家賃収入及び家賃支出が更に明確に理解できるような外形標準課税レポートにおける効率的な業務ファイルを作成すること,第2四半期の終わりまでに賃借対照表勘定の確認又は管理の単純化に関する考察すること,業務の管理及び効率を改善するための更なる効率的な方法を見出すことを設定した。
(前記前提事実(3)ウ,甲14,乙4,乙35・4頁,証人C元マネージャー4頁)
ウ(ア) 原告の平成24年(2012年)のアプレイザル・シートは,C元マネージャーによって,同年12月27日の同マネージャーと原告との間のミーティングを経て,作成された。
このアプレイザル・シートの中で,原告の仕事内容に関して,外注化した業務の管理を含む経理業務が具体的に説明されているほか,「○○の恒久的な業務管理体制に関する直接的貢献」が優先度の高い目標に掲げられている。そして,原告の業績目標について,「効率性」に関してはシニア・スタッフとしてチーム全体の効率性を考える必要があること,「管理の強化」に関しては合理化されるべき分野が依然としてあること,「コミュニケーションとチームワーク」に関してはインドの関連会社に対する不満を漏らすのではなくてシニア・スタッフとして同会社のミスが減るよう手助けする立場にあること,「経理と規則の知識」に関しては経験年数の長さから慣例化された作業を続けているものの,本来的により経理的な見方に基づいてプロセスを考えていく必要があること等を指摘されて,総合評価を「5/below expectations(期待以下)」と位置付けられた。
C元マネージャーは,原告がIT部門とともにh社に対する電話料金の支払プロセスの外注業務に係る様々なフォローアップを行ったことや,原告がSAPとエクセルを用いてレポートを作成することが得意であることをコメントする一方で,シニア・スタッフとしてAPチームの効率性を考えてプロセスを合理的かつ単純なものとするよう期待されていることもコメントしている。
これを受けて,原告は,アプレイザル・シートのドラフトが交付されてからミーティングまでに時間的余裕がなかったことに関して被告に対応の改善を求めつつも,来年度の目標として,○○の恒久的な業務管理体制への直接的寄与,管理の強化(具体的には新しい経費請求ツール等の導入補佐),効率化(合理化することが可能な分野を特定し,効率的に働くよう努めること),主体的な問題解決(全ての問題につき主体的に解決するよう努めること),コミュニケーションとチームワーク(ジュニア・スタッフの援助等),経理と規則に係る会計知識の向上等を設定した。
(甲15,乙5)
(イ) 上記アプレイザル・シートの作成に当たって平成24年(2012年)12月27日に実施されたC元マネージャーと原告とのミーティングにおいて,C元マネージャーは,原告に対し,①○○グループでの長い勤務経験を踏まえて原告が会社の仕組みやシステム等に精通していることや,得意なエクセル操作を活用してレポート作成をこなすこと等でもって,円滑な業務遂行を補助している点を具体的に摘示して,前年に引き続く貢献に対する謝意を示す一方で,②そのようにエクセル操作を活用してレポート作成をこなすこと等のみでは,マネージャー並みに高額である原告の年俸に見合う仕事がなされているとはいえず,そのような観点を踏まえれば,高い評価を与えることが困難であり,③原告の知識や能力が特段劣っているものではないが,そのような高額な年俸を踏まえれば,例えば,税理士試験を受けるなどして,より専門的な知識を身につけることで,評価が向上する可能性がある旨等を説明ないし示唆した。
このようなC元マネージャーの説明のうち特にマネージャー並みに高額である年俸に見合う職責の点に関して,原告は,「・・・そういうポジション(判決注・マネージャーのポジション)に私いれば,やりますけど。・・・私はCさんみたいに,税理士さんでもないし,だけど自分のいままで得た知識と,あとタックスの人たちの助けで,たとえばそういった言ってくださいって言われたら,それももちろん,できると思うんですけど。いま私はそういうポジションじゃないですから・・・」(甲37の1・19~20頁)という見解を述べた。
(甲37,証人C元マネージャー16~21,23~24頁)
エ 原告の平成25年(2013年)のアプレイザル・シートの中で,原告の業績目標について,「経理と規則の知識」に関しては日常業務について理解しているものの高いレベルのスタッフとして作業の目的及び望まれる結果に対する理解が依然として必要であること,「○○の恒久的な業務管理体制への直接的関与」に関してはインドの関連会社(i社)に代わって記帳や記帳データの作成を行うのではなく,同会社に対して自らそれら業務を行うよう指導すべきこと,「効率化(効率化することが可能な分野を特定し,効率的に働くよう努める)」に関してはシニア・スタッフとして自発的な行動がほとんどなかったこと,「一般的な仕事に対する態度及び業績」に関してはインドの関連会社に対する指示についてケアレスミスがあり誤解を生じたこと等を指摘されて,総合評価を「5/below expectations(期待以下)」と位置付けられた。
C元マネージャーは,原告が○○グループで長い勤務経験とそれに伴う人脈を有していることやデータ処理が得意であることを強みとして挙げる一方で,作業を複雑にする傾向があり手続を簡素化・効率化する必要があることや柔軟に対応できないことを改善分野として挙げて,APチームのために,更に積極的に行動し,効率性に関する提案を自ら行うことが期待されている旨をコメントしている。
これを受けて,原告は,一部の評価に同意できない旨を明らかにしたものの,来年度の目標として,効率性,積極的な発案(自分で考え,積極的に働くこと),プロセスの把握及び問題解決(管理又は手順の目的及び望まれる結果を完全に理解する等)等を設定した。
(甲16,乙6)
(4)  原告の超過労働時間被告のオフィスが存在する建物のゲートを原告が通過した時間の記録から算出される原告の法定の8時間を超過する労働時間は,平成26年(2014年)1月が6時間,同年2月が10時間58分,同年3月が33時間16分,同年4月が62時間37分,同年5月が37時間32分,同年6月が26時間55分,同年7月が43時間3分,同年8月が14時間35分,同年9月が13分であった。
ちなみに被告の従業員の就業時間は1日当たり7時間15分とされているところ(就業規則12条1項),上記期間について,法内残業時間も含めれば,原告の残業時間は,同年1月が約18時間(経理・財務部の全従業員の平均が約56時間。以下,この項における括弧内において同様。),同年2月が約24時間(約39時間),同年3月が約48時間(約43時間),同年4月が約78時間(約61時間),同年5月が約52時間(約44時間),同年6月が約41時間(約36時間),同年7月が約60時間(約48時間),同年8月が約19時間(約34時間),同年9月が約5時間(約34時間)であった。また,平成23年(2011年)の月平均残業時間が約54時間(約67時間),平成24年(2012年)の月平均残業時間が約39時間(約61時間),平成25年(2013年)の月平均残業時間が約33時間(約52時間)であった。
(乙3,29,31)
(5)  被告による個別指導(警告)等
ア(ア) 原告は,平成26年(2014年)5月7日に,B部長から,同月27日までに,「電話経費処理プロセス改善」,つまり,電話経費データのチェック及び修正にAPチームにおいて多くの時間を費やしている状況について,現状のプロセスの見直しと原因の分析,改善策の提案を行うよう指示されたが,業務が繁忙であることを理由として,期限までにこれに応じることがなかったばかりか,B部長を恐れていることを理由に,期限を徒過する旨の報告やそのことに関する許可の申請ないし理由の説明もしなかった。
(乙18~19,原告25~26頁,弁論の全趣旨)
(イ) B部長は,原告が最もシニアな会計スタッフとしてAPチームにおいて重要なコントロールの役割を担うことが期待されていたにもかかわらず,複数年にわたって原告の被告における人事考課(アプレイザル)の結果が低調であることや,業務指示を放置していることを踏まえて,個別指導として,平成26年(2014年)5月29日,原告に対し,人事部長が同席した上での面談において,口頭での説明を交えながら,原告のパフォーマンスに関する被告の重大な懸念を伝えるとして,6つの改善項目,それらの改善項目に対する行動計画の詳細及び改善完了日を掲げ,定期的なモニターとフォローアップ・ミーティングを経た上で,これらの項目に関する原告のパフォーマンスにおいて継続した改善が達成されなかった場合,同年8月末頃において,原告の将来の雇用関係について検討せざるを得ない旨を記載した第1警告書を交付した。
その改善項目等について具体的にみると,①「所定の又は合意されたプロセスに対する適時な行動」という改善項目については,同年6月を完了日として,「現在定められている日々/月々のプロセスは,一切の遅滞なく,また,マネージャーからの一切の督促なく,適時に遂行されなければならない。」こと,②「プロセスの把握及び問題解決」という改善項目については,同月を完了日として,「コントロール及びプロセスの目的,並びに求められている成果を完全に理解すること。そして,解決策を見つけ,リスクを軽減するために必要な変更を行い,経理上必要なコントロール又はプロセスの健全性を確保する。」こと,③「全ての依頼及び質問に対する即時の行動」という改善項目については,同月を完了日として,「全ての要求及び質問に対し,放置することなく,また,マネージャーからの一切の督促なく,即時の行動が要求される。検討事項又は問題項目が最終的に解決されるまで,即時の行動は継続されなければならない。」こと,④「職務,新規の依頼及び変更を処理するための適切な判断」という改善項目については,同年7月を完了日として,「日常業務について,貴殿(判決注・原告)自身により,適切かつ合理的な判断がなされる必要がある。」こと,⑤「プロセスを合理化するよう効率を高める」という改善項目については,同年8月を完了日として,「組織,システム又は作業フローの変更に関して現在の設定を評価し,効率を高めるための提案を行う。現行プロセス又はコントロールに対する変更の実施は,いかなる問題も生じることなく実施される必要がある。」こと,⑥「会計及び規制の知識」という改善項目については,同月を完了日として,「会計,コントロール及び規制の知識に関して理解のレベルを向上させる。」ことが記載されている。
(前記前提事実(4)ア,甲3,乙7,証人B部長4~5頁,原告26~27,30頁,弁論の全趣旨)
(ウ) 原告は,平成26年(2014年)6月2日,B部長に対し,第1警告書の内容を踏まえ,その前提として原告のいかなる行為を問題とするのか具体的な指摘がない以上,今後の改善も不可能であるので,具体的な事実,それによる支障の程度,改善のための期限設定をする緊急性の事情,改善達成の基準等を客観的に明らかにするよう要請し,第1警告書への署名を拒否した。
これに対し,B部長は,同月10日,第1警告書に記載された全ての改善項目が原告の毎年の人事考課(アプレイザル)等で設定されたパフォーマンス目標に基づいたもので,アプレイザル・ミーティングや日々の作業で行われる議論等の機会を通じて改善が必要な分野や理由を具体的に伝えてきた旨を回答したものの,原告の上記要請を踏まえて,項目ごとの問題点を具体的な例を書面に記載して示すとともに,口頭でその内容を説明した。その書面には,①改善項目「所定の又は合意されたプロセスに対する適時な行動」について,「―貴殿(判決注・原告。以下,引用部分について同じ。)に与えられた責任を果たすための積極性の欠如。例えば,・Ulysee(立て替え経費のシステム)の承認権者の変更といった単純なプロセスでさえ,マネージャーが貴殿に催促しなければならない。 ・i社との月次のダッシュボード・ディスカッションに関する会議のスケジュール設定に1か月を要した。 ・i社の入力エラーを修正ログファイル(amendment log file)に記載し,将来の改善のため,i社との毎月のディスカッションで使用される事になっているが,その修正ログ(amendment log file)にi社の入力エラーを適時に記録しなかった。」,②改善項目「プロセスの把握及び問題解決」について,「―経費承認に関する議論点を適時に問題解決できないため,この問題を解決する為に,パフォーマンス・マネジメント・チームが完全に関与することとなった。 ―SAPシステムにおける外貨記帳の設定に関する十分な分析及び解決策がない。その結果,この要求は,1年以上も未解決のままである。」,③改善項目「全ての依頼及び質問に対する即時の行動」について,「―マネージャーは,貴殿に対し,i社によるエラーを防ぐ為に経費伝票のレイアウトの見直しを終了するよう,催促しなければならなかった。 ―SAPシステムにおける外貨記帳の実施に関して状況報告及び作業のフォローアップをするよう貴殿のマネージャーが定期的な催促を必要とした。」,④改善項目「職務,新規の依頼及び変更を処理するための適切な判断」について,「―要求された重要な情報のみを共有する重要性について,CFOより繰り返し注意されていたにもかかわらず,他の者に不要な情報を提供する。例えば,外部監査人から請求書のコピーの要求に対し,当該監査人に渡される文書の中に,業者の銀行口座の変更に関する不必要な文書が含まれていた。 ―作業のプロセス及び職務についての適切な判断がない。例えば,旅費及び交際費に関する報告書にデータサービスに関する費用が含まれていたなど,報告書又はプロセスの目的を理解せずに職務を遂行した。 ―2014年4月のj社からの請求書を計上しなかったため,関連会社間での報告数字に違いが生じた。」,⑤改善項目「プロセスを合理化するよう効率を高める」について,「―関連会社の費用計上に係る書式が未処理残高のみを示すよう,書式の簡素化が出来ていない。 ―電話経費の確認プロセスの改善につき,二度目の要求をした後であっても,なお改善及び提案がない。」,⑥改善項目「会計及び規制の知識」について,「―3月末の未払経費の計上の誤りの為に3月年度決算の帳簿を閉めた後に修正が必要となった。 ―外貨の評価に関する会計上の取扱いについての乏しい理解。」という旨の記載がされて,問題点が摘示されている。
もっとも,原告は,同月18日,B部長に対し,被告の摘示する問題による支障の程度や改善達成の基準等に関する回答がなされていないほか,同部長の掲げる上記の具体的な例が,いずれもC元マネージャーの退職後の繁忙期に係る出来事のみであり,その繁忙による影響を看過したまま,抽象的にシニア・スタッフとしての資質と通常時と同等の業務精度を求めて低評価とするのは「SMARTS」という被告の目標設定指針に沿わない過剰な要請であるとの意見を返すとともに,訴外会社に在籍した当時と同内容の業務をしているところ,訴外会社に在籍した当時の業績評価と比較して被告における業績評価が落ちていることに関し,知識と経験は時間の経過とともに上昇こそすれ,下降することは社会通念上理解し難いことであるとして,同内容の業務でありながら業績評価が落とされた理由を具体的な事実に基づいて説明するよう要請した。
(甲4~6,乙8,証人B部長5頁,原告27~31頁)
イ(ア) B部長は,平成26年(2014年)7月7日,人事部長が同席した上での面談において,口頭での説明を交えながら,原告に対し,第1警告書と同内容の記載に係る第2警告書を交付した。
B部長は,第2警告書において,被告が原告の過去の問題点について懲戒処分を行うことを意図しているのではなく,それら過去の問題点に係る被告の評価に原告が満足するか否かにかかわらず,将来における改善を求める意図でなされるものであることを誤解しないよう伝えるとともに,これが原告に対する業務指示又は業務命令であって,原告が同書面に同意(署名)するかどうかに関わりなく,業務改善を求められているものである旨を説明した。
(前記前提事実(4)イ,甲7,乙9,原告31頁)
(イ) 原告は,平成26年(2014年)7月14日,B部長に対し,第2警告書の内容及び同年6月10日に摘示された具体的な問題点について,いずれの問題点もC元マネージャーの退職後の繁忙期に係る出来事であり,概ね,その繁忙による影響が原因であって,原告の能力に起因する問題ではなく,C元マネージャーの後任者であるDマネージャーがこれらの仕事を担うことで解消されるものである旨や,B部長以前の上司から指摘されたことがない問題点である旨を回答したほか,特に,SAPシステムにおける外貨記帳の設定に関しては,即座に実現することが困難である(Atlas2にはSAPから外貨をフィードすることができるが,Glossには外貨をフィードすることが不可能で,その変更には○○グループのパリ本部の承認と予算が必要であるため)ことから,C元マネージャーと相談の上で平成25年(2013年)5月に一度終了(クローズ)し,その後,B部長の指示で同年11月に再調査したものの,平成26年(2014年)3月に断念して,再度,C元マネージャーと相談の上で終了(クローズ)した旨等を回答した。
(甲8)
ウ(ア) 上記のとおり,原告は,平成26年(2014年)5月から同年7月にかけて,B部長から書面及び口頭で,業務の効率化や積極性に関する指示又は命令をされたにもかかわらず,同年6月から同年7月頃にかけて,インドの関連会社等からの問合せに適時に対応せず催促が来るまで返事をしないであるとか,経理に関する基本的な事項に関して同社に誤った業務指示を伝達する,同社に対する催促等の管理(コントロール)を遅滞する,同社の行った記帳の誤りの訂正を怠る等の事態が頻回に生じる状況であった。
(乙20,証人Dマネージャー2~10頁)
(イ) B部長,C元マネージャー及びDマネージャーは,第1警告書及び第2警告書で,原告の業務改善に係る定期的なモニターとフォローアップ・ミーティングに言及したことや原告の上記(ア)のような状況を踏まえ,原告との間で,平成26年(2014年)7月28日,パフォーマンス中間レビューとしてミーティングを行った。そこでは,主に,同年5月に原告に対して業務指示がされた「電話経費処理プロセス改善」,「関係会社間経費未払費用計上プロセス改善」,「問い合わせ対応時間分析及び改善」と,それ以前に業務指示がされていた「SAP(会計システム)外貨エントリープロジェクト」に関する原告の業務の進捗状況等が議題とされた。
「電話経費処理プロセス改善」に関しては,電話経費データのチェック及び修正にAPチームにおいて多くの時間を費やしている状況について,同チーム内の他の従業員に移管したことで足りるとする原告の見解では何らの解決にもなっていないことから,改善策を講ずるよう指示されていたものであったが,原告は,そもそもの現状の分析すらできていなかったため,現状のプロセス等の分析に係る報告を踏まえた上で解決策を検討するようB部長から指導された。
「関係会社間経費未払費用計上プロセス改善」に関しては,関係会社からチャージされる経費の未払費用計上に多くの時間を費やしている状況の改善を指示されていたもので,同年7月1日にAPチームのマネージャーに就任したDマネージャーから,この業務に関して原告が作成したワークシートが複雑で分かりにくいために簡単なものにするよう要請されていたものであったが,原告は,これに着手しておらず,その旨の指摘を受けて,既存のものを手直しして,同月中にこれをDマネージャーに渡す旨を約束した。
「問い合わせ対応時間分析及び改善」に関しては,APチーム内の他の従業員に移管したことで足りるとする原告の見解では何らの解決にもなっていないことから,現状を分析するために,誰から,どのような内容につき問合せがあり,誰が担当して,対応にどれくらい時間がかかったのかをリスト化した上で問題点を分析し,対応時間を短くするための提案を指示されていたものであったが,原告は,同年4月分のリストしか作成しておらず,その内容も不十分であったため,B部長から,そもそも分析ができていないし,根本的かつ積極的な改善提案もない旨を注意された。その際,B部長は,他のチームの経験年数四,五年程度の従業員について,原告と同様に,業務の効率化のための現状分析と解決策の提案を指示したところ,その内容を踏まえた報告書が提出され,それに基づいた改善が図られたことと比較して,原告の対応が不十分であり,満足のいくものではないことを告げた。
「SAP(会計システム)外貨エントリープロジェクト」に関しては,もともと平成24年(2012年)頃から開始されたものであるところ,そのプロジェクトを遂行する上で○○グループのパリ本部にSAPシステムに関するリクエストを上げるフォーム又はツールであるTMA(ITプロジェクト管理ツール)を継続することが困難で,ホールド(待機)せざるを得ないという状況であったことを踏まえ,原告においては,このプロジェクトがC元マネージャーの了解の下で終了(クローズ)したものと認識していたが,B部長やC元マネージャーは,上記プロジェクト自体の終了(クローズ)を原告に指示しておらず,TMAの再開を目指した改善策の検討を要請し,定期的に状況を確認していたもので,原告において一方的にプロジェクトを終了(クローズ)したものと判断したことや,その経緯等に関して一切報告がなされていないことについて厳しく注意し,これを受けて,原告において,同年7月中に,現状,問題点及びその解決策を踏まえた報告書を出すことを約束した。
そして,Dマネージャーは,自身がAPチームのマネージャーに就任してからおよそ1か月の原告の働きぶりをみて,インドの関連会社等の外注先からメール等での問合せに対して適時に対応しておらず,催促がなければ返事をしないケースが見受けられる点を問題視していることを伝え,また,B部長は,被告がシニア・スタッフである原告に求める職責は原告が考える以上に高いレベルのもので,少なくとも指示された事項に関しては,被告から進捗状況を確認されるまで放置するものではないし,数度もミーティングを重ねて同様の指摘をいちいち繰り返されるのではなく,一,二回の指示を踏まえて,完全とはいえなくても80%くらいのレベルまでは仕上げて,期限までに自ら提出してくるべきものである旨を諭し,原告もその旨を了解した。
(甲38,乙18の1,原告4~9頁)
(ウ) B部長は,上記平成26年(2014年)7月28日におけるミーティングで原告が約束した同月末の提出物の期限を遵守しなかったこと等を踏まえ,同年8月4日,人事部長が同席した上での面談において,口頭での説明を交えながら,原告に対し,同ミーティングの内容を具体的に文章に落とし込み,かつ,第1警告書及び第2警告書の内容を踏襲して,改善がなされなかった場合の本件労働契約の見直しに言及しつつ,業務指示又は業務命令として業務改善を求める旨の第3警告書を交付した。
この面談の直前に原告はB部長に対して以前から要請されていた提出物をメール送信したが,B部長は,原告に対し,原告が前回のミーティング(平成26年(2014年)7月28日実施)において約束した期限を守らなかったことについて,B部長やDマネージャーに期限を徒過する旨の報告や理由の説明が事前にないことや,原告が一方的にこれ以上の改善点がなく終了したものと考えて報告をしないことといった方法が,仕事のやり方として間違っている旨を指導した。
(前記前提事実(4)ウ,甲10,33,40,乙11,17の3,18の2)
(エ) B部長,C元マネージャー及びDマネージャーは,原告との間で,平成26年(2014年)8月5日,パフォーマンスレビューとして,「SAP(会計システム)外貨エントリープロジェクト」に関するミーティングを行った。
原告は,その進捗状況等について説明を行ったものの,特に就任後間もないDマネージャーからプロジェクトの概要等を体系立てて説明するよう要求され,B部長からも,プロジェクトが立ち上がってからのおよそ1年半の経緯を踏まえた現状分析を行った上で,課題とその問題解決策を明らかにするよう指示された。
(甲38,乙18の3)
(オ) B部長,C元マネージャー及びDマネージャーは,原告との間で,平成26年(2014年)9月2日,パフォーマンスレビューとして,「電話経費処理プロセス改善」,「関係会社間経費未払費用計上プロセス改善」,「問い合わせ対応時間分析及び改善」及び「SAP(会計システム)外貨エントリープロジェクト」に関してミーティングを行った。
「電話経費処理プロセス改善」に関しては,原告から現状の処理体制に関するフローが提出されたものの,結果(時間の短縮)については達成された旨の口頭での報告があったのみであったので,B部長は,原告に対し,問題点や改善策の提案に関する報告書を提出して,いかなる問題点にどのように対処したから結果が出たのかということを考察するよう指示していたもので,結果が出さえすればよいものではなく,業務遂行のやり方を指示されたあるべき姿に変えるよう注意した。
「関係会社間経費未払費用計上プロセス改善」に関しては,結局,原告がAPチーム内での他の従業員に対する移管等による時間減縮をいうのみであったため,B部長は,再三指摘したとおり,それではAPチームとしての問題は解決しない旨を注意した。
「関係会社間経費未払費用計上プロセス改善」に関しては,原告が作成したワークシートが複雑で理解しづらいものとなっていることについて,原告がレポーティングチームからの指示に従って実施した旨を述べるのに対し,B部長は,過去に指示されたことがあったとしても,将来に向けた業務改善を考える中で,何のために作業をしているのかという目的と,その作業のアウトプットがどのように使われるのかを理解することが求められている旨を何度も伝えており,訴外会社において過去に「言われたから理由もわからずやっている」というカルチャーがあったのだとしても,被告においてそのような業務遂行では不十分である旨を指導した。
「SAP(会計システム)外貨エントリープロジェクト」に関しては,原告が作成したパワーポイントの資料のみでは,不明な点(SAPの仕訳,レポーティングシステムへのフィード上の問題,ポジション勘定のバランスをどのように扱うか等)が多く,B部長は,それらの点も明らかにするように指示した。
(乙18の4)
エ 原告は,遅くとも平成23年(2011年)の人事考課(アプレイザル)の頃から,原告が幾ら頑張っても被告において評価されない,原告の年俸が高いことからB部長に悪意を持たれている,原告の業績が評価されないのは原告の問題ではなく被告の査定の問題である等の考えを抱いており,第1警告書ないし第3警告書をはじめとするB部長からの業務指示又は業務命令が原告を解雇するためのプログラム又は解雇するために組まれたプロジェクトであると捉えて,それら警告書への署名に応じなかったものである。
また,原告は,それらの業務指示又は業務命令で改善を求められた業務の内容について,毎年の経理・財務部のタウンホール・ミーティングで説明される同部の目標に根ざしたものであることには一定の理解を示しつつも(ただし,原告は,タウンホール・ミーティングでの説明内容をあまり正確には把握していない。),それが実際に業務を遂行する上で自身に設定された目標とは結び付いていないという感覚を持ち合わせており,改善項目として求められている内容(つまり,職責の中で積極的に問題点を指摘し,原因の分析及び解決策を提示すること)についても,その指示内容自体を理解することはできる旨を一応述べるものの,具体的に何を達成すれば人事考課(アプレイザル)における評価の数字が上下するのか基準が不明確であり,恣意的な評価をされるから合意できないものと考えていた。
(原告14~15,19~24,29~30,32,36頁)
(6)  代理人弁護士間でのやり取り及び本件解雇
ア 原告と被告は,平成26年(2014年)8月頃から,それぞれ代理人弁護士を通じるなどして,書面及び面談でのやり取りを行ったところ,被告代理人弁護士から現在の具体的な業務改善の要請に従わない点を問題視している旨の注意喚起が幾度となくされたにもかかわらず,原告代理人弁護士からは,訴外会社における過去の人事評価と対比したB部長による恣意的な人事評価,原告に対する退職強要,無用な業務指示又は業務命令等によるパワーハラスメント等について具体的な事実や資料の摘示のないままに主張がされ,議論が全く噛み合わず,早期解決に向けた話合いに関しても,原告は,B部長の配置転換や,あるいは原告が被告を退職するのであれば,1億円近くにのぼる定年までのおよそ10年分の賃金相当額が支払われなければこれに応じないという要求に終始し,結局,話合いは調わなかった。
(甲11,乙23~26)
イ 被告は,平成26年(2014年)5月から同年8月にかけて第1警告書ないし第3警告書でもって指導かつ警告したにもかかわらず,原告の業務遂行の改善がされなかったことを理由に,同年9月17日,原告に対し,被告の就業規則33条の(1)(「上司の命令に従わず,又は他の従業員との協調性を欠くなど勤務態度が不良であり,改善の見込みが乏しいと認められる場合」),(3)(「業務能率又は勤務成績が著しく不良で,職務遂行に必要な能力が欠如又は不足している場合」),(4)(「特定の地位,職種又は一定の能力を条件として雇用された者で,その職務遂行に求められる能力が欠如又は不足し,その適格性がないと認められる場合」),(12)(「その他やむを得ない事由により解雇する必要があると認められる場合」)に該当する事由があるとして,同年10月末日をもって解雇する旨の意思表示(本件解雇)をし,その後,同日が経過した。
(前記前提事実(5)ア,イ)
2  検討
(1)  解雇の合理的な理由(解雇事由該当性)について
ア 被告は,本件解雇の解雇事由として,原告が経験の長いシニア・スタッフであることを踏まえ,それにもかかわらず業績改善がなされないことから,就業規則33条の(4)に定める解雇事由(「特定の地位,職種又は一定の能力を条件として雇用された者で,その職務遂行に求められる能力が欠如又は不足し,その適格性がないと認められる場合」)に該当する旨を主張する。
しかしながら,前記認定事実によれば,原告は,平成23年(2011年)4月に○○グループの訴外会社を合意退職した上で,同年5月に本件労働契約に基づいて同グループ内の被告に入社したところ,その待遇は賞与を別とした年俸が1100万という金額にのぼるものであり,被告においても,そのような原告の○○グループでの長年の経験や年俸の高さに鑑みて,シニア・スタッフと位置付けて,そのように呼称していたものの,それは正式な職位ではなくて,管理職や専門職の指定はされておらず,飽くまで一般職従業員であったものと認められる。
そうすると,被告において,本件労働契約を締結するに際して,特定の地位,職種又は一定の能力を条件として原告を雇用したものとまでは認められないから,上記解雇事由は,そもそも前提を欠くと言わざるを得ない。
イ(ア) もっとも,法的には別会社とはいえ,原告が,被告と同様,訴外会社を含む○○グループの会社で30年以上にわたって勤務を続けてきた経験を有し,その過程において業績評価に伴う昇給がされてきたというような事情が存在する中で,同グループの再編に伴い,原告が,訴外会社を合意退職して,被告と本件労働契約を締結したという経緯を踏まえれば,被告において,そのような原告の経験や待遇に鑑みて,原告に対して,設定された日々の業務内容の範囲において一定程度の水準を保った業務遂行を期待することは,合理的に理解し得るものと考えられる。
(イ) そして,前記認定事実のとおり,①世界規模の外資系金融機関である被告は,平成20年(2008年)秋のリーマンショックによる市況の顕著な悪化を受けて,経費節減のため,業務の外注化及び効率化を図る傾向を強め,日本での業務の重点を外注した仕事の管理(コントロール)の構築・強化に置くようになり,②経理・財務部においても,全員出席の下でのタウンホール・ミーティングで,記帳等の作業自体よりも,そのような作業の外注化の管理(コントロール)及び業務の効率化等が毎年にわたって重要な目標として設定され,③原告に関しても,アプレイザル・ミーティング等で,そのような部の目標に沿って,毎年,外注化された業務の管理(コントロール)や業務の効率化,積極的かつ主体的な問題解決を目標として設定し,アプレイザル・シートにも,それらの業務が職務内容や目標として明記されるようになったもので,これらの事実によれば,原告には,エクセル等を用いた単なる事務作業のみならず,積極的かつ主体的に,外注化された業務の管理(コントロール)や業務の効率化を検討することが,日常の業務として,設定・要求されていたこと,しかも,それは,訴外会社における過去のアプレイザル・シートに記載された原告の職務内容や目標(甲12。ただし,平成22年(2010年)のものは除く。)と比較すれば明らかなとおり,世界の経済情勢の変化を踏まえて,その当時に訴外会社から原告に期待・要求された職責から変容しているものであることが認められる。
(ウ) ところが,それにもかかわらず,原告は,前記認定事実のとおり,毎年のタウンホール・ミーティングで説明された経理・財務部の目標を理解しているとか,特にリーマンショック以降,訴外会社又は被告における原告の業務内容が,経理に関する直接的な事務作業から,それら作業の外注先の管理(コントロール)に変わったことを認識している旨を一応供述するものの(原告17~18頁),結局のところ,①タウンホール・ミーティングで説明された被告の経理・財務部の目標をそもそもきちんと把握していないばかりか,それが原告自身の目標と具体的に結び付いているものという意識がなく,②毎年のアプレイザル・シートにも,訴外会社に在籍した当時(平成22年(2010年)は除く。)と異なり,世界の経済情勢の変化等に応じて,それら外注化された業務の管理(コントロール)や効率化に主体的かつ積極的に取り組むべきことが,通常の職務内容又は目標として,具体的に明記されて要請されるようになったにもかかわらず,その意識が欠如しており,自分の取り組むべき仕事が過去のものと変わらず,過去においてはその業務で高い業績評価を得ていたのに,現状において低い評価しか与えられないのは,被告の査定が原告を解雇に追いやるための恣意的なものに他ならないからであるとの偏頗な考えに固執し,③特に平成24年(2012年)12月27日のC元マネージャーとの間のアプレイザル・ミーティングでの発言からも明らかなとおり,C元マネージャーから,エクセル等の事務作業をこなせるということだけでは,シニア・スタッフとして高い評価をつけることができないと示唆されているにもかかわらず,自分は,そのような事務作業以上の業務を要求されるならば実施するが,マネージャーという立場にはなく,そのような事務作業以上の業務を要求されているものではないという考えに基づいて業務遂行に当たっていたもので,これらの事実からすれば,原告が,タウンホール・ミーティング,原告自身に対するアプレイザル・ミーティング,それを踏まえたアプレイザル・シートに明記された原告の職責,つまり,単なる事務作業にとどまらず,一定の経験を有し,給与面で相応の待遇を受けるシニア・スタッフとして,積極的かつ主体的に,外注化された業務の管理(コントロール)や効率化の改善を日常業務として担うよう要請されていることを,全く理解していなかったことが認められる。
(エ) そのように,世界の経済情勢の変化等を踏まえて過去から変容した日常業務における職責を被告から明示的に要請されているにもかかわらず,原告においてそもそもその理解が全く欠如した上で漫然と業務に当たっていた状況に鑑みれば,被告における原告の人事考課(アプレイザル)の総合評価が,平成23年(2011年)から平成25年(2013年)の3年間にわたり,4段階評価の「3/to be improved(改善の余地あり)」又は6段階評価の「5/below expectations(期待以下)」と,いずれも下から2番目にとどまったのは,極めて妥当なものであったといえる。
(オ) そして,そのような状況を踏まえて,前記認定事実のとおり,①B部長は,原告に対し,平成26年(2014年)5月から同年8月にかけて,第1警告書ないし第3警告書を交付するとともに,その他の補足説明に係る書面や,パフォーマンスレビュー等の面談を通じて,それまでの毎年の人事考課(アプレイザル)で原告の目標として設定されてきた外注化された業務の管理(コントロール)や業務の効率化,積極的かつ主体的な問題解決等について,より具体的な業務(「電話経費処理プロセス改善」,「関係会社間経費未払費用計上プロセス改善」,「問い合わせ対応時間分析及び改善」及び「SAP(会計システム)外貨エントリープロジェクト」)を特定して,その改善を要請し,②しかも,その要請の内容は,現状のプロセス等を踏まえて問題点を洗い出し,その解決策を主体的かつ積極的に提案して,それらを報告書にまとめるという極めて簡明かつ基本的なことであるが,③原告は,そのように極めて簡明かつ基本的な業務指示又は業務命令を幾度となく繰り返されたにもかかわらず,それらの業務がそもそも日常業務として原告に明示的に課せられたものであるいう認識を全く欠いたままに,その主張からも明らかなとおり,これらを「時間の浪費にしかならない無意味な作業」と捉え,訴外会社における過去の業績評価との比較や,B部長によるパワーハラスメント等を論難して,これに従うことを受け入れようとしなかったものであって,このような事情に鑑みれば,原告の経験や待遇に基づき設定された日々の業務内容の範囲での一定程度の水準を保った業務遂行を被告において期待していれば当然のこと,その業務指示又は業務命令違反の程度は甚だしいものといえるし,それが原告の業務に対する根本的な理解の欠如に起因するもので,何度説明をしてもそのような前提すら理解される兆しが全くなかったことからすると,改善の見込みはもはやないと言うほかない。
(カ) 以上によれば,原告は,世界の経済情勢の変化を踏まえた被告における自己の職務内容を正しく理解しないままに,その業務遂行を怠って,3年にわたり低評価を受けたばかりか,そのような状況を踏まえて,極めて簡明かつ基本的な業務指示又は業務命令を第1警告書ないし第3警告書等を通じて与えられ,併せて原告のそもそもの職責を何度も説明されたにもかかわらず,結局,それに対する理解を全く示すことのないままに,これに従わなかったものであるから,就業規則33条の(1)に定める解雇事由(「上司の命令に従わず,又は他の従業員との協調性を欠くなど勤務態度が不良であり,改善の見込みが乏しいと認められる場合」)があることは明らかであるし,そのような業務遂行に関する根本的な理解力の欠如に鑑みれば,同条の(3)に定める解雇事由(「業務能率又は勤務成績が著しく不良で,職務遂行に必要な能力が欠如又は不足している場合」)もあるものといえ,本件解雇は,客観的に合理的な理由がある。
原告はB部長の指示するとおりに業務改善を行ったと考えており,B部長が恣意的に原告の業績を無視していると考えるようであるが(原告40頁等),特に自ら設定した期限を何らの説明もないままに徒過したこと等に代表されるように,業務遂行において一般的労働者に当然に求められる根本的な姿勢が欠如していることが一番の問題なのであって,そのことを理解できないままに,期限を徒過しても提出物を出したからよいと考えるその姿勢自体が,まさしく上記の解雇事由の存在を裏付けるものである。
ウ これに対し,原告が様々に反論するので検討する。
(ア) 原告は,原告が被告会社に入社するまでの経緯等,つまり,訴外会社を含め○○グループで長年勤務し,高い業績評価を得て,昇給を積み重ねてきた事実を本件において考慮すべきである旨を主張するところ,前記前提事実及び前記認定事実のとおり,法的には原告が訴外会社を合意退職しており,しかもその際に3000万円弱もの退職所得を受領したことを踏まえれば,本件解雇の有効性を検討するに当たり,訴外会社での業績を安易に勘案することにはやや躊躇を覚えざるを得ない。
もっとも,被告においても,事実上,そのような原告の○○グループでの経験に鑑みて,シニア・スタッフとしての期待を寄せていたものである以上,訴外会社での経緯を全く考慮しないということもはばかられるところであって,原告が訴外会社に勤務していた当時と被告に勤務していた当時で,世界の経済情勢の変化に伴って,原告の職責等が変化したこと,それにもかかわらず,原告がそのような変化を正しく理解することができずに順応できなかったことは既に説示したとおりであり,そのような点を踏まえた上での過去との比較に鑑みれば,「個人の能力は,簡単に劣化するものではなく,特定の従業員が同じような仕事を処理しているケースにおいて,年月の経過により熟練度を増して上がることはあれども,若年性認知症を発生したというような特段の事情が生じない限り下がることがないのが社会常識であるにもかかわらず,原告の業績評価は,B部長が上司になってから,不自然かつ不合理に突如として下げられたもので,そこには,当初から原告を解雇に追いやらんとするB部長をはじめとする被告の意図がみてとれる」という趣旨の原告の主張は,自身の職責等の変化を見落としている点で,そもそもの前提を誤ったものと言わざるを得ない。
(イ) 原告は,被告が,従前の人事考課(アプレイザル)の運用に反して,その指針である「SMARTS」を意図的に無視し,いかなる課題を達成すれば評価が高まり,あるいは逆に達成できなければ評価が低まるのかの予測もつけられないような抽象的な目標設定を掲げ,そもそも恣意的な業績評価を自在にできる状況を作出し,現に原告に対して恣意的な業績評価を行った旨を主張する。
しかしながら,アプレイザル・シートやアプレイザル・ミーティングで原告の職務内容や目的は簡明かつ具体的に明示されていたもので,それにもかかわらず,原告が,そのように明示された自身の職務内容や目的,さらにはそれが従前の訴外会社におけるものから変容していることを単に正しく理解することさえできず,求められた業務を自らの職責のものと受け止めて主体的かつ積極的に実施することがなかったのであるから,課題をどの程度達成すれば評価されるのか否かを議論する前提をそもそも欠いていると言わざるを得ない。原告は,改善項目の内容自体は一応理解しているとして,どれほど改善できれば業績評価の数字が上がるのか下がるのか,丸になるかバツになるか不明確である点が問題であるという旨を供述する(原告23~24,29頁等)ところ,確かに業績評価の結果は,従業員の給与面等での待遇に結び付き得る重要なポイントであると考えられるが,それは飽くまで,自身の職責を理解した者が,指示又は命令された業務に実際に取り組んだ上で,その職責に見合う業績を遂げたこと,あるいは遂げなかったことに伴って付与されるまさしく結果にすぎず,数字が上がるから実施する,数字に直結しないから,あるいは,数字がどのようにつけられるかわからないから実施しないという類いのものではなく,原告の上記供述のような観点こそ,むしろ「SMARTS」を正しく理解しない業績評価の数字だけに捉われた硬直化した考えと言わざるを得ない。
(ウ) 原告は,被告が原告を解雇に追いやるために意図的に異常に低い業績評価をし続けたもので,そのような被告の意図は,平成24年(2012年)12月27日に実施された原告とC元マネージャーとのアプレイザル・ミーティングの会話録音内容(甲37)を踏まえれば,C元マネージャーが,原告の業績評価を「5/below expectations(期待以下)」とする客観的事由がないことを認識しながら,原告の年俸がマネージャー並みに高額であり,APチームにマネージャーの他にそれと同等の年俸を得る人員が存在することは経済的合理性を欠くという観点の下,正当な理由もないままに業績に見合わない低い評価を与えたことを自認していることからも明らかであるといえる旨を主張する。
しかしながら,前記認定事実のとおり,C元マネージャーは,原告に対して,エクセル操作を活用してレポート作成をこなすこと等による円滑な業務遂行の補助に係る貢献について謝意を示す一方で,それのみではマネージャー並みに高額である原告の年俸に見合う仕事がなされているとはいえず,そのような観点を踏まえれば高い評価を与えることが困難である旨を伝えているのであり(甲37の1・4頁等参照),その職責をも鑑みた場合にまで原告の業績評価が不当に低いことを自認したものとまでは言えない。しかも,前記認定事実のとおり,原告は,そのアプレイザル・ミーティングにおいて,「経理と規則に係る会計知識の向上」という目標に関連する事項として,より専門的な知識を身につけるべく,例えば税理士試験を受けるなどすることをC元マネージャーから提案されたにもかかわらず,結局,そのような知識向上への努力を具体的に行った形跡もない(弁論の全趣旨)のであって,その点をさて措いて,C元マネージャーの発言の言葉尻を捉えて,原告を解雇に追いやる意図があったなどと決めつけるのは,手前勝手な独自の解釈と言うほかない。
(エ) 原告は,特に第1警告書ないし第3警告書で改善を求められる問題点が,C元マネージャーの退職等に伴う人員不足等からくる繁忙期にかかるものであり,原告の能力等に起因するものではないのに,原告を解雇に追いやるための粗探しというB部長の考えに基づいて時間の浪費にしかならない無意味な作業を過度に強いるような業務命令に従うことは,期待可能性もなければ必要性もない旨を主張するところ,確かに,前記認定事実のとおり,平成26年(2014年)4月前後には相応の超過勤務が生じているが,上記の各警告書で改善を求められている事項は,毎年の人事考課(アプレイザル)でも明らかにされていた原告の日常業務に関わる問題であり,上記繁忙期に突如として湧き出た問題ではなく,そもそも日常業務の遂行に関して根本的な改善を求められているという認識が原告において欠如している点(原告は,そのように日常業務の遂行に関する根本的な改善を求められているという認識が欠如しているために,被告が,C元マネージャーの退職時期の前後に重ねて,原告に対して,日常業務には含まれない「時間の浪費にしかならない無意味な作業」を突如として要求してきたというような考えに陥っている点)が最も憂慮すべきなのであって,原告の主張はその前提を誤っていると言うほかない。
(オ) 原告は,本件解雇が年俸の高い原告をコストカットするという観点の下,そもそも訴外会社においてB部長が原告の上司に就任した当初の段階から意図されていたもので,シニア・スタッフという抽象的な概念に基づく高い職責を振りかざし,その職責に見合った業績が上げられていないであるとか,原告の能力による問題ではない事柄を原告の能力不足に起因するものであるとか決めつける等して,客観的な解雇事由が全く存在しないにもかかわらず,原告とB部長等とのミーティングの内容(甲38)につき原告の業務遂行能力が著しく劣るとの誤った印象に誘導するような虚偽を並べ立てた議事録(乙18)を作成してまで,原告の解雇事由を仕立て上げた旨を主張する。
しかしながら,そのように原告が主張するB部長あるいは被告の意図を的確に認めるに足りる証拠は一切ない。
また,原告とB部長等とのミーティングの内容(甲38)の議事録(乙18)は,Dマネージャーにおいて議論の要旨をまとめたものであるところ(証人B部長31頁,証人Dマネージャー1~2頁),会話録音内容(甲38)を逐一起こしたものではなく,必ずしも正確に会話の要旨を捉えられていない部分もあるかもしれないが,会話録音内容をもってしても,原告がそもそもの自身の職責を理解する能力を著しく欠いていることや,業務遂行の基本的な手法が踏まえられていない旨をB部長等から幾度となく注意指導されていることが明らかにみてとれるから,被告において虚偽を並べ立てた議事録を作成してまで解雇事由を仕立て上げたとは到底言えず,原告の上記主張は採用できない。
(カ) 原告は,被告が,本訴が提起される以前の段階で,原告の3年にわたる能力不足からくる業績不良を解雇理由としていたにもかかわらず,それが困難であるとみるや,第1警告書ないし第3警告書に対する業務指示又は業務命令違反に解雇理由をすり替えた旨を主張するところ,確かに,被告は,前提として原告の複数年にわたる業績不良を問題視しているものの,前記前提事実及び前記認定事実のとおり,本件解雇の理由に関しては,当初から一貫して第1警告書ないし第3警告書等での業務指示又は業務命令に違反して業務改善を図らなかったことを明示しており,解雇理由をすり替えてはおらず,原告の上記主張はその前提を誤っており,採用することができない。
(2)  解雇の相当性について
原告は,仮に,原告について,能力不足や業務指示又は業務命令違反と評価されたとものとしても,それによって何らの業務上の支障や損害も被告には生じていないことに鑑みれば,本件解雇に社会通念上の相当性がないことは明らかである旨を主張する。
しかしながら,原告の能力不足や業務指示又は業務命令違反が,前記のとおり,原告の自身の業務に対する根本的な理解の欠如に起因するものであり,まずそのことを理解させるべくB部長等において,3年にもわたり,かつ,毎回相当の時間を割いて原告に対してミーティング等を実施していること(もっとも,原告は,被告のそのような努力をもってしても,問題点の本質を理解することができず,むしろ,被告の査定に問題があり,原告を解雇するためのプログラムないしプロジェクトを被告が遂行しているものという考えにしか至らなかった。)からも,被告に無用な労力を強いていることは明らかであって,業務上の支障が生じていることは容易に推認できる。
そのような事情に加えて,第1警告書ないし第3警告書等でもって再三にわたり最後通告ともいうべき本件労働契約の解消の可能性が強く示唆され,それら各警告を踏まえたパフォーマンスレビュー等においても,具体的な業務に関する改善の指示又は命令,そして,それを達成するための基本的な姿勢(現状のプロセスを分析して問題点を洗い出した上で解決策を積極的かつ主体的に考えて報告書にまとめることや,期限を守ること等)の誤りを何度も繰り返し注意指導されたにもかかわらず,原告において,業務内容や仕事の取り組み方に対する根本的な理解を欠いたままに,そのことをさて措いて,被告が原告を解雇に追いやるよう仕組んでいるとの考えに固執して,見直すべきは原告自身の業務遂行のあり方ではなく,被告の恣意的な人事考課(アプレイザル)であるなどとして,被告に対する非難に傾注し,業務改善に対する姿勢を全く見せなかったことを踏まえれば,原告を他部署へ配置転換したり,あるいは,減給したりしたところで,結局のところ,原告がこれらについても自らを解雇に追いやるためのプログラムないしプロジェクトの一環と捉えて,自身の非を認めずに,被告を非難することに終始するであろうことが容易に推認できることからすると,本件解雇前に被告が原告に与えた警告及び業務改善のための機会に不足はなかったものといえるから,本件解雇には社会通念上の相当性があるといえる。
3  結論
以上によれば,原告の請求は理由がないから,いずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第11部
(裁判官 上田真史)

 

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