【営業代行から学ぶ判例】crps 裁判例 lgbt 裁判例 nda 裁判例 nhk 裁判例 nhk 受信料 裁判例 pl法 裁判例 pta 裁判例 ptsd 裁判例 アメリカ 裁判例 検索 オーバーローン 財産分与 裁判例 クレーマー 裁判例 クレプトマニア 裁判例 サブリース 裁判例 ストーカー 裁判例 セクシャルハラスメント 裁判例 せクハラ 裁判例 タイムカード 裁判例 タイムスタンプ 裁判例 ドライブレコーダー 裁判例 ノンオペレーションチャージ 裁判例 ハーグ条約 裁判例 バイトテロ 裁判例 パタハラ 裁判例 パブリシティ権 裁判例 ハラスメント 裁判例 パワーハラスメント 裁判例 パワハラ 裁判例 ファクタリング 裁判例 プライバシー 裁判例 プライバシーの侵害 裁判例 プライバシー権 裁判例 ブラックバイト 裁判例 ベネッセ 裁判例 ベルシステム24 裁判例 マタニティハラスメント 裁判例 マタハラ 裁判例 マンション 騒音 裁判例 メンタルヘルス 裁判例 モラハラ 裁判例 モラルハラスメント 裁判例 リストラ 裁判例 リツイート 名誉毀損 裁判例 リフォーム 裁判例 遺言 解釈 裁判例 遺言 裁判例 遺言書 裁判例 遺言能力 裁判例 引き抜き 裁判例 営業秘密 裁判例 応召義務 裁判例 応用美術 裁判例 横浜地裁 裁判例 過失割合 裁判例 過労死 裁判例 介護事故 裁判例 会社法 裁判例 解雇 裁判例 外国人労働者 裁判例 学校 裁判例 学校教育法施行規則第48条 裁判例 学校事故 裁判例 環境権 裁判例 管理監督者 裁判例 器物損壊 裁判例 基本的人権 裁判例 寄与分 裁判例 偽装請負 裁判例 逆パワハラ 裁判例 休業損害 裁判例 休憩時間 裁判例 競業避止義務 裁判例 教育を受ける権利 裁判例 脅迫 裁判例 業務上横領 裁判例 近隣トラブル 裁判例 契約締結上の過失 裁判例 原状回復 裁判例 固定残業代 裁判例 雇い止め 裁判例 雇止め 裁判例 交通事故 過失割合 裁判例 交通事故 裁判例 交通事故 裁判例 検索 公共の福祉 裁判例 公序良俗違反 裁判例 公図 裁判例 厚生労働省 パワハラ 裁判例 行政訴訟 裁判例 行政法 裁判例 降格 裁判例 合併 裁判例 婚約破棄 裁判例 裁判員制度 裁判例 裁判所 知的財産 裁判例 裁判例 データ 裁判例 データベース 裁判例 データベース 無料 裁判例 とは 裁判例 とは 判例 裁判例 ニュース 裁判例 レポート 裁判例 安全配慮義務 裁判例 意味 裁判例 引用 裁判例 引用の仕方 裁判例 引用方法 裁判例 英語 裁判例 英語で 裁判例 英訳 裁判例 閲覧 裁判例 学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例 共有物分割 裁判例 刑事事件 裁判例 刑法 裁判例 憲法 裁判例 検査 裁判例 検索 裁判例 検索方法 裁判例 公開 裁判例 公知の事実 裁判例 広島 裁判例 国際私法 裁判例 最高裁 裁判例 最高裁判所 裁判例 最新 裁判例 裁判所 裁判例 雑誌 裁判例 事件番号 裁判例 射程 裁判例 書き方 裁判例 書籍 裁判例 商標 裁判例 消費税 裁判例 証拠説明書 裁判例 証拠提出 裁判例 情報 裁判例 全文 裁判例 速報 裁判例 探し方 裁判例 知財 裁判例 調べ方 裁判例 調査 裁判例 定義 裁判例 東京地裁 裁判例 同一労働同一賃金 裁判例 特許 裁判例 読み方 裁判例 入手方法 裁判例 判決 違い 裁判例 判決文 裁判例 判例 裁判例 判例 違い 裁判例 百選 裁判例 表記 裁判例 別紙 裁判例 本 裁判例 面白い 裁判例 労働 裁判例・学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例・審判例からみた 特別受益・寄与分 裁判例からみる消費税法 裁判例とは 裁量労働制 裁判例 財産分与 裁判例 産業医 裁判例 残業代未払い 裁判例 試用期間 解雇 裁判例 持ち帰り残業 裁判例 自己決定権 裁判例 自転車事故 裁判例 自由権 裁判例 手待ち時間 裁判例 受動喫煙 裁判例 重過失 裁判例 商法512条 裁判例 証拠説明書 記載例 裁判例 証拠説明書 裁判例 引用 情報公開 裁判例 職員会議 裁判例 振り込め詐欺 裁判例 身元保証 裁判例 人権侵害 裁判例 人種差別撤廃条約 裁判例 整理解雇 裁判例 生活保護 裁判例 生存権 裁判例 生命保険 裁判例 盛岡地裁 裁判例 製造物責任 裁判例 製造物責任法 裁判例 請負 裁判例 税務大学校 裁判例 接見交通権 裁判例 先使用権 裁判例 租税 裁判例 租税法 裁判例 相続 裁判例 相続税 裁判例 相続放棄 裁判例 騒音 裁判例 尊厳死 裁判例 損害賠償請求 裁判例 体罰 裁判例 退職勧奨 違法 裁判例 退職勧奨 裁判例 退職強要 裁判例 退職金 裁判例 大阪高裁 裁判例 大阪地裁 裁判例 大阪地方裁判所 裁判例 大麻 裁判例 第一法規 裁判例 男女差別 裁判例 男女差别 裁判例 知財高裁 裁判例 知的財産 裁判例 知的財産権 裁判例 中絶 慰謝料 裁判例 著作権 裁判例 長時間労働 裁判例 追突 裁判例 通勤災害 裁判例 通信の秘密 裁判例 貞操権 慰謝料 裁判例 転勤 裁判例 転籍 裁判例 電子契約 裁判例 電子署名 裁判例 同性婚 裁判例 独占禁止法 裁判例 内縁 裁判例 内定取り消し 裁判例 内定取消 裁判例 内部統制システム 裁判例 二次創作 裁判例 日本郵便 裁判例 熱中症 裁判例 能力不足 解雇 裁判例 脳死 裁判例 脳脊髄液減少症 裁判例 派遣 裁判例 判決 裁判例 違い 判決 判例 裁判例 判例 と 裁判例 判例 裁判例 とは 判例 裁判例 違い 秘密保持契約 裁判例 秘密録音 裁判例 非接触事故 裁判例 美容整形 裁判例 表現の自由 裁判例 表明保証 裁判例 評価損 裁判例 不正競争防止法 営業秘密 裁判例 不正競争防止法 裁判例 不貞 慰謝料 裁判例 不貞行為 慰謝料 裁判例 不貞行為 裁判例 不当解雇 裁判例 不動産 裁判例 浮気 慰謝料 裁判例 副業 裁判例 副業禁止 裁判例 分掌変更 裁判例 文書提出命令 裁判例 平和的生存権 裁判例 別居期間 裁判例 変形労働時間制 裁判例 弁護士会照会 裁判例 法の下の平等 裁判例 法人格否認の法理 裁判例 法務省 裁判例 忘れられる権利 裁判例 枕営業 裁判例 未払い残業代 裁判例 民事事件 裁判例 民事信託 裁判例 民事訴訟 裁判例 民泊 裁判例 民法 裁判例 無期転換 裁判例 無断欠勤 解雇 裁判例 名ばかり管理職 裁判例 名義株 裁判例 名古屋高裁 裁判例 名誉棄損 裁判例 名誉毀損 裁判例 免責不許可 裁判例 面会交流 裁判例 約款 裁判例 有給休暇 裁判例 有責配偶者 裁判例 予防接種 裁判例 離婚 裁判例 立ち退き料 裁判例 立退料 裁判例 類推解釈 裁判例 類推解釈の禁止 裁判例 礼金 裁判例 労災 裁判例 労災事故 裁判例 労働基準法 裁判例 労働基準法違反 裁判例 労働契約法20条 裁判例 労働裁判 裁判例 労働時間 裁判例 労働者性 裁判例 労働法 裁判例 和解 裁判例

判例リスト「完全成功報酬|完全成果報酬 営業代行会社」(293)平成20年 3月26日 東京地裁 平17(ワ)22455号 損害賠償請求事件

判例リスト「完全成功報酬|完全成果報酬 営業代行会社」(293)平成20年 3月26日 東京地裁 平17(ワ)22455号 損害賠償請求事件

裁判年月日  平成20年 3月26日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平17(ワ)22455号・平18(ワ)15640号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  第1事件一部認容、第2事件一部請求棄却・一部訴え却下  文献番号  2008WLJPCA03268005

要旨
◆原告が、原告会社の取締役であった被告らが原告の資産を減少させることなどを企図して退職金規程を改訂し、増額された退職金を原告に支払わせて損害を被らせたなどとして被告らに対し損害賠償を請求した事案において、退職金規程の改訂は取締役の判断として著しく不合理であるなどとして原告の請求が一部認められた事例(第一事件)
◆第二事件被告会社の取締役であった原告らが、第二事件被告会社の解散決議によって取締役報酬相当額の損害を被ったとして被告会社に対し損害賠償を請求したほか、被告会社の株主である被告らに対し、被告会社の債務の履行が完了しないうちに残余財産の分配を受けたとして債権者代位権の行使による不当利得返還を請求するなどした事案において、本件解散決議に旧商法二五七条一項ただし書の類推適用はなく、当事者適格がないなどとして原告らの主張がいずれも排斥された事例(第二事件)

参照条文
民法1条3項
民法423条
民法703条
民法709条
民法719条
商法257条(平17法87改正前)
商法266条(平17法87改正前)
会社法339条

裁判年月日  平成20年 3月26日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平17(ワ)22455号・平18(ワ)15640号
事件名  損害賠償請求事件
裁判結果  第1事件一部認容、第2事件一部請求棄却・一部訴え却下  文献番号  2008WLJPCA03268005

平成17年(ワ)第22455号損害賠償請求事件(以下「第1事件」という。)
平成18年(ワ)第15640号損害賠償請求事件(以下「第2事件」という。)

東京都新宿区〈以下省略〉
第1事件原告兼第2事件被告 株式会社ルックジャパン
会社法386条による代表者監査役 丙谷C子
(第1事件被告兼第2事件原告甲山A夫,
同乙川B雄関係)
代表者清算人(第1事件被告丁沢D郎関係) 丙谷E介
東京都新宿区〈以下省略〉
第2事件被告 丙谷E介
東京都新宿区〈以下省略〉
第2事件被告 丙谷F美
東京都新宿区〈以下省略〉
第2事件被告 丙谷C子
東京都新宿区〈以下省略〉
第2事件被告 丙谷G代
東京都新宿区〈以下省略〉
第2事件被告 丙谷H作
上記2名法定代理人親権者 丙谷E介
同 丙谷C子
東京都新宿区〈以下省略〉
第2事件被告 丙谷I平
東京都新宿区〈以下省略〉
第2事件被告 丙谷J美
東京都新宿区〈以下省略〉
第2事件被告 丙谷K吉
上記9名訴訟代理人弁護士 加藤博史
東京都世田谷区〈以下省略〉
第1事件被告兼第2事件原告 甲山A夫
埼玉県川越市〈以下省略〉
第1事件被告兼第2事件原告 乙川B雄
上記2名訴訟代理人弁護士 高村隆司
兵庫県西宮市〈以下省略〉
第1事件被告 丁沢D郎
訴訟代理人弁護士 齊藤誠
訴訟復代理人弁護士 石川美津子

 

 

主文

1  第1事件
(1)  第1事件被告甲山A夫及び同乙川B雄は,第1事件原告に対し,連帯して金2347万6526円及びこれに対する平成17年11月2日からいずれも支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2)  第1事件原告のその余の請求をいずれも棄却する。
2  第2事件
(1)  第2事件原告らの不当利得返還請求に係る訴えをいずれも却下する。
(2)  第2事件原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
3  訴訟費用は,全事件を通じて,第1事件原告兼第2事件被告株式会社ルックジャパンに生じた費用の10分の9を第1事件被告兼第2事件原告甲山A夫及び同乙川B雄の負担,第1事件被告兼第2事件原告甲山A夫及び同乙川B雄に生じた費用の10分の1を第1事件原告兼第2事件被告株式会社ルックジャパンの負担,第1事件被告丁沢D郎に生じた費用は第1事件原告兼第2事件被告株式会社ルックジャパンの負担,第2事件被告丙谷E介,同丙谷F美,同丙谷C子,同丙谷G代,同丙谷H作,同丙谷I平,同丙谷J美及び同丙谷K吉に生じた費用は第1事件被告兼第2事件原告甲山A夫及び同乙川B雄の負担とし,その余は各自の負担とする。
4  この判決は,第1項(1)に限り,仮に執行することができる。

 

 

事実及び理由

第1  請求
1  第1事件
第1事件被告らは,第1事件原告に対し,連帯して金3244万1096円及び内金300万円に対する平成16年3月10日から,内金632万1315円に対する同年4月13日から,内金1362万0848円に対する同年5月21日から,内金528万9333円に対する同年6月30日から,内金120万9600円に対する同年12月24日から,内金300万円に対する第1事件被告甲山A夫及び同乙川B雄につき平成17年11月1日,同丁沢D郎につき同月4日からそれぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  第2事件
(1)ア  第2事件被告株式会社ルックジャパンは,第2事件原告甲山A夫に対し,金1236万1291円及びこれに対する平成18年8月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
イ  第2事件被告丙谷E介は,第2事件原告甲山A夫に対し,金508万8731円及びこれに対する平成18年8月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
ウ  第2事件被告丙谷F美は,第2事件原告甲山A夫に対し,金455万3075円及びこれに対する平成18年8月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
エ  第2事件被告丙谷C子は,第2事件原告甲山A夫に対し,金55万6258円及びこれに対する平成18年8月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
オ  第2事件被告丙谷G代は,第2事件原告甲山A夫に対し,金55万6258円及びこれに対する平成18年8月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
カ  第2事件被告丙谷H作は,第2事件原告甲山A夫に対し,金55万6258円及びこれに対する平成18年8月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
キ  第2事件被告丙谷I平は,第2事件原告甲山A夫に対し,金14万4215円及びこれに対する平成18年8月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
ク  第2事件被告丙谷J美は,第2事件原告甲山A夫に対し,金35万0236円及びこれに対する平成18年8月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
ケ  第2事件被告丙谷K吉は,第2事件原告甲山A夫に対し,金55万6258円及びこれに対する平成18年8月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2)ア  第2事件被告株式会社ルックジャパンは,第2事件原告乙川B雄に対し,金1545万1613円及びこれに対する平成18年8月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
イ  第2事件被告丙谷E介は,第2事件原告乙川B雄に対し,金636万0914円及びこれに対する平成18年8月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
ウ  第2事件被告丙谷F美は,第2事件原告乙川B雄に対し,金569万1344円及びこれに対する平成18年8月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
エ  第2事件被告丙谷C子は,第2事件原告乙川B雄に対し,金69万5322円及びこれに対する平成18年8月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
オ  第2事件被告丙谷G代は,第2事件原告乙川B雄に対し,金69万5322円及びこれに対する平成18年8月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
カ  第2事件被告丙谷H作は,第2事件原告乙川B雄に対し,金69万5322円及びこれに対する平成18年8月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
キ  第2事件被告丙谷I平は,第2事件原告乙川B雄に対し,金18万0268円及びこれに対する平成18年8月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
ク  第2事件被告丙谷J美は,第2事件原告乙川B雄に対し,金43万7795円及びこれに対する平成18年8月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
ケ  第2事件被告丙谷K吉は,第2事件原告乙川B雄に対し,金69万5322円及びこれに対する平成18年8月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(3)ア  第2事件被告株式会社ルックジャパンは,第2事件原告甲山A夫に対し,金200万円及びこれに対する平成18年8月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
イ  第2事件被告丙谷E介は,第2事件原告甲山A夫に対し,金82万3333円及びこれに対する平成18年8月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
ウ  第2事件被告丙谷F美は,第2事件原告甲山A夫に対し,金73万6666円及びこれに対する平成18年8月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
エ  第2事件被告丙谷C子は,第2事件原告甲山A夫に対し,金9万円及びこれに対する平成18年8月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
オ  第2事件被告丙谷G代は,第2事件原告甲山A夫に対し,金9万円及びこれに対する平成18年8月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
カ  第2事件被告丙谷H作は,第2事件原告甲山A夫に対し,金9万円及びこれに対する平成18年8月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
キ  第2事件被告丙谷I平は,第2事件原告甲山A夫に対し,金2万3333円及びこれに対する平成18年8月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
ク  第2事件被告丙谷J美は,第2事件原告甲山A夫に対し,金5万6666円及びこれに対する平成18年8月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
ケ  第2事件被告丙谷K吉は,第2事件原告甲山A夫に対し,金9万円及びこれに対する平成18年8月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(4)ア  第2事件被告株式会社ルックジャパンは,第2事件原告乙川B雄に対し,金200万円及びこれに対する平成18年8月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
イ  第2事件被告丙谷E介は,第2事件原告乙川B雄に対し,金82万3333円及びこれに対する平成18年8月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
ウ  第2事件被告丙谷F美は,第2事件原告乙川B雄に対し,金73万6666円及びこれに対する平成18年8月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
エ  第2事件被告丙谷C子は,第2事件原告乙川B雄に対し,金9万円及びこれに対する平成18年8月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
オ  第2事件被告丙谷G代は,第2事件原告乙川B雄に対し,金9万円及びこれに対する平成18年8月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
カ  第2事件被告丙谷H作は,第2事件原告乙川B雄に対し,金9万円及びこれに対する平成18年8月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
キ  第2事件被告丙谷I平は,第2事件原告乙川B雄に対し,金2万3333円及びこれに対する平成18年8月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
ク  第2事件被告丙谷J美は,第2事件原告乙川B雄に対し,金5万6666円及びこれに対する平成18年8月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
ケ  第2事件被告丙谷K吉は,第2事件原告乙川B雄に対し,金9万円及びこれに対する平成18年8月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(5)  第2事件被告丙谷E介,同丙谷F美,同丙谷C子,同丙谷G代,同丙谷H作,同丙谷I平及び同丙谷K吉は,第2事件原告甲山A夫に対し,連帯して金1236万1291円を支払え。
(6)  第2事件被告丙谷E介,同丙谷F美,同丙谷C子,同丙谷G代,同丙谷H作,同丙谷I平及び同丙谷K吉は,第2事件原告乙川B雄に対し,連帯して金1545万1613円を支払え。
第2  事案の概要
以下,第1事件原告兼第2事件被告株式会社ルックジャパンを「ルックジャパン」,第1事件被告兼第2事件原告甲山A夫を「甲山」,第1事件被告兼第2事件原告乙川B雄を「乙川」,第1事件被告丁沢D郎を「丁沢」と表記し,ルックジャパンを除く第2事件被告らにつき個別に表記する場合は姓を省略して名を表記する。また,甲山,乙川及び丁沢を併せて「甲山ほか2名」,第2事件被告らを併せて「ルックジャパンほか8名」と表記する。
第1事件は,ルックジャパンが,甲山ほか2名に対し,①甲山及び乙川は,ルックジャパンの取締役であったにもかかわらず,善管注意義務又は忠実義務に違反して,ルックジャパンの資産を減少させることなどを企図して,退職金規程を改訂して増額された従業員退職金をルックジャパンに支払わせるなどしてルックジャパンに損害を被らせ,②丁沢は,甲山及び乙川の行為を指示又は支援したなどと主張して,甲山及び乙川につき平成17年法律第87号による改正前の商法(以下「旧商法」という。)266条1項5号又は民法709条,719条1項,丁沢につき民法709条,719条1項及び2項に基づく損害賠償として,3244万1096円の連帯支払(第1の1)を求めた事案である。
第2事件は,甲山及び乙川が,①ルックジャパンに対し,ルックジャパンの解散決議によって取締役報酬相当額の損害を被ったと主張して,旧商法257条の類推適用による損害賠償として,甲山につき1236万1291円,乙川につき1545万1613円の支払(第1の2(1)ア及び(2)ア),②E介,F美,C子,G代,H作,I平,J美及びK吉に対し,ルックジャパンが債務を弁済していないのに,株主である上記8名に残余財産を分配し,そのためルックジャパンは無資力であると主張して,上記①の損害賠償請求権を被保全債権とする債権者代位権の行使による不当利得に基づく返還請求として,上記①の各金額につき上記8名の持株割合を乗じて算出した金員の支払(第1の2(1)イからケまで及び(2)イからケまで),③ルックジャパンに対し,ルックジャパンが甲山及び乙川所有の不動産に違法な仮差押えをしたと主張して,不法行為に基づく損害賠償として慰謝料各200万円の支払(第1の2(3)ア及び(4)ア),④E介,F美,C子,G代,H作,I平,J美及びK吉に対し,上記②と同旨を主張して,上記③の損害賠償請求権を被保全債権とする債権者代位権の行使による不当利得に基づく返還請求として,上記③の各金額につき上記8名の持株割合を乗じて算出した金員の支払(第1の2(3)イからケまで及び(4)イからケまで),⑤E介,F美,C子,G代,H作,I平及びK吉に対し,上記7名の賛成によるルックジャパンの解散決議が権利濫用であって取締役報酬相当額の損害を被ったと主張して,不法行為に基づく損害賠償として,上記①と同額の金員の連帯支払(第1の2(5)及び(6))を求めた事案である。
1  前提事実(段落末尾に掲記した証拠等により認められる。)
(1)  ルックジャパン
ルックジャパンは,昭和34年2月に設立された発行済株式の総数6000株の株式会社であり,監査役設置会社である。ルックジャパンは,平成16年3月17日,株主総会の決議によって解散し,E介が清算人として清算手続中である(甲12,124,125,133,乙12の1)。
ルックジャパンは,丙谷L夫(以下「L夫」という。)が昭和28年2月に海外向け広報誌「LOOK JAPAN」誌(以下「LJ誌」という。)を創刊して創業した個人事業を法人化したものである(甲131,乙32)。
LJ誌の平成16年4月号(同年3月発行)は,発行部数4万5029部のうち有料発行部数が4万2772部であり,そのうち内閣府が2万4570部,外務省が5788部を購入しているほか,その他の購入先もほとんどが官庁及び公的機関であった。LJ誌は,同月号をもって廃刊となった(甲12,96の5,甲105,113,乙32,弁論の全趣旨)。
(2)  ルックジャパンの株主
ルックジャパンの株主は,平成16年1月26日時点において,E介,F美,C子,G代,H作,I平,J美及びK吉であり,E介が2470株,F美が2210株,C子が270株,G代が270株,H作が270株,I平が70株,J美が170株及びK吉が270株であった(甲1の1から3まで,甲2,3,133)。
F美は,L夫の配偶者であり,E介及びI平は,L夫とF美との間の子である。C子は,E介の配偶者であり,G代及びH作はE介とC子との間の子である。J美は,I平の配偶者であり,K吉はI平とJ美との間の子である(甲133)。
(3)  L夫及びE介のルックジャパンにおける地位
L夫は,ルックジャパンの創業者であり,その設立から平成13年7月まで代表取締役社長を務め,その後も死亡した平成15年12月2日まで代表取締役会長を務めた。また,E介は,昭和55年にルックジャパンに入社後,平成3年3月に取締役に就任した。その後,E介は,平成9年3月に代表取締役副社長に就任し,平成13年7月に代表取締役社長に就任したものの,平成14年1月8日に取締役及び代表取締役社長を辞任した(甲123,124,131,133,147の2,3,乙6)。
(4)  ルックジャパンと甲山ほか2名との関係
乙川は,昭和39年,ルックジャパンに入社し,編集長を経て,昭和63年4月に取締役に就任し,ルックジャパンの解散時まで取締役を務めた。甲山は,総務庁に勤務した後,社団法人時事画報社の理事長等を経て,平成14年4月1日にルックジャパンの代表取締役社長に就任し,ルックジャパンの解散時まで社長を務めた(甲123,124,131,147の2,3,乙32)。
丁沢は,大阪大学教授に在職中の昭和53年にLJ誌の編集委員に就任し,LJ誌廃刊まで編集委員を務めた(甲131,乙3,32,丙1)。
(5)  ルックジャパンの役員
ルックジャパンでは,E介の社長辞任(平成14年1月8日)以前には,L夫,E介,F美,乙川,戊野M雄,J美が取締役,C子が監査役であった。その後,ルックジャパンでは,甲山の社長就任時(同年4月1日)には,L夫,乙川,J美,甲山が取締役,己原N郎(以下「己原」という。)が監査役であり,平成15年5月30日に取締役がいずれも重任され,L夫が死亡した以外には解散時まで役員に変更はなかった(甲124,131,133,乙32)。
(6)  E介による臨時株主総会招集請求
E介は,加藤博史弁護士(以下「加藤弁護士」という。)を代理人として,平成16年2月6日,ルックジャパンに対し,旧商法237条1項に基づき,ルックジャパンの解散等を会議の目的たる事項とする臨時株主総会の招集を求めた(以下「本件招集請求」という。)。これに対し,ルックジャパンは,同月19日,加藤弁護士に対し,ルックジャパンの解散決議は権利の濫用であって公序良俗に反する旨主張して,臨時株主総会の招集を拒否する旨の回答書を発した。そこで,E介は,加藤弁護士を代理人として,同月24日,東京地方裁判所に対し,ルックジャパンの株主総会招集許可を申請した(以下「本件申請事件」という。)。同裁判所は,本件申請事件について,同年3月8日,審問期日を開き,同日付けで株主総会の招集を許可した(甲4の1,2,甲6の1,2,甲7,50の2,甲99,103,107,113,133,乙32)。
(7)  ルックジャパンの解散
E介は,平成16年3月9日,ルックジャパンの株主に対し,同月26日に臨時株主総会を開催する旨通知した。その後,E介は,株主全員の同意を得て開催日を繰上げ,同月17日,ルックジャパンの臨時株主総会を開催し,ルックジャパンの解散に加え,E介を清算人に選任することなどが決議された(以下ルックジャパンの解散決議を「本件解散決議」という。)。なお,J美は,本件解散決議について賛成しなかった(甲12,13,113,124,125,133,乙11の2,乙13)。
2  当事者の主張
(1)  第1事件
(ルックジャパンの主張)
ア 退職金規程の改訂
(ア) 甲山及び乙川は,本件招集請求の後,①本件解散決議を阻止するための交渉材料を作出するために,②本件解散決議が不可避である場合には清算手続による株主らへの残余財産分配額の総額を減少させるために,③甲山及び乙川において実質的に新設しようとするルックジャパンの事実上の承継会社の事業に利するために,又はこれらの意図の全部若しくはその一部を実現するためにルックジャパンの資産減らしを行うことを企てた。
(イ) 甲山及び乙川は,共謀して,平成16年2月24日ころ,上記(ア)の企てを実現するため,ルックジャパンの解散に際しての従業員退職金の支払総額を増大させることによって,ルックジャパンに損害を与え,かつ第三者であるルックジャパンの従業員らの利益を図る目的をもって,又はこれらの目的のいずれかの目的をもって,ルックジャパンの退職金規程(以下「本件退職金規程」という。)につき支給基準を増額改訂し支給対象を拡大することなどの改訂を議案とするルックジャパン取締役会を開催し,当該取締役会において本件退職金規程の改訂を決議し,労働基準法90条による手続履践後,同月25日,改訂後の本件退職金規程を中央労働基準監督署に届け出て(別紙1が改訂前の本件退職金規程であり,別紙2が改訂後の本件退職金規程である。),これにより,ルックジャパンの利益を図りその資産を保全し資産減少を防止すべき善管注意義務又は忠実義務に違反した。
(ウ) その結果,甲山及び乙川は,ルックジャパンをして,改訂後の本件退職金規程によって,①平成16年5月21日に退職従業員7名分の退職金合計1905万3082円,②同年6月30日に退職従業員1名分の退職金1360万円の合計3265万8082円の従業員退職金の支払を余儀なくさせ,これらを支払わせ,ルックジャパンに対し,別紙3のとおり,①について改訂前の本件退職金規程によって支払われるべき退職金支払額合計との差額1362万0848円,②について改訂前の本件退職金規程によって支払われるべき退職金支払額との差額528万9333円の合計1891万0181円の損害を与えた。
イ 「ルックジャパン50周年記念誌」の編集・製作等の発注
(ア) 甲山及び乙川は,共謀して,平成16年2月23日ころ,上記ア(ア)の企てを実現するため,ルックジャパンの費用負担において,ルックジャパンの解散後にその事業を事実上承継させるために設立を予定していた会社の販売促進のための無料配布用の書籍「ルックジャパン50周年記念誌」(以下「本件記念誌」という。)を製作することによって,ルックジャパンに損害を与え,かつ第三者である事実上の事業承継の設立会社の利益を図る目的をもって,本件記念誌の企画,編集を株式会社スリーアイパブリケーション(以下「スリーアイ」という。)に対して,本件記念誌の印刷等を凸版印刷株式会社(以下「凸版印刷」という。)に対してそれぞれ発注を行ない,これにより,ルックジャパンの利益を図りその資産を保全し資産減少を防止するべき善管注意義務又は忠実義務に違反した。
(イ) その結果,甲山及び乙川は,ルックジャパンをして,平成16年12月24日スリーアイに対して編集,企画の報酬120万9600円を,同年4月13日凸版印刷に対して印刷費用等632万1315円をそれぞれ支払うことを余儀なくさせ,これらを支払わせ,ルックジャパンに対し,合計753万0915円の損害を与えた。
ウ 不相当な弁護士費用の支払
(ア) 甲山及び乙川は,本件招集請求を受けたにもかかわらず,上記ア(ア)の企てを実現するため,正当な理由なくこれを拒否し,E介がやむなく本件申請事件を申請するや,平成16年2月26日ころ,庚崎D介弁護士(以下「庚崎弁護士」という。)に対してその応訴を委任した。
(イ) 甲山及び乙川は,それぞれルックジャパンの代表取締役,取締役として,6か月前より引き続き総株主の議決権の100分の3以上を有する株主からの臨時株主総会の招集請求があった場合には旧商法の規定に従い臨時株主総会の招集をすべき義務があるにもかかわらず,その義務に違反してこれを拒否し,また勝訴の見込みがない以上ルックジャパンに損害を与えることのないよう弁護士費用を支払って弁護士に応訴を委任すべきではないのにこれを委任した上,ルックジャパンに少なくとも弁護士との委任契約に定められた又はこれにより請求される弁護士費用相当の損害を与えることを予見しながら,又はルックジャパンにその損害を与えることを容易に予見できるのに,ルックジャパンの資産減らしのため,何ら勝訴もしていないのにもかかわらず,ルックジャパンを害するため又は庚崎弁護士を利するため,平成16年3月10日ころ,委任契約により又はその請求に基づき,弁護士報酬名下に不相当に高額である弁護士費用300万円を庚崎弁護士に対して支払い,もって善管注意義務に違反し,これにより,ルックジャパンに対し,300万円の損害を与えた。
エ 丁沢の行為
(ア) 丁沢は,LJ誌の大口購買者としてルックジャパンの事業の命運を左右するほどルックジャパンに対して大きな影響力を有していた内閣府等政府関係筋において長年各種委員等を務めるなどし,事実上の政府広報誌的扱いを受けていたLJ誌の編集の中心的かつ不可欠な人物として内閣府広報室から最重要視されていたことなどによる内閣府広報室に対する影響力を背景として,ルックジャパンにおける従前の丙谷家側経営体制を崩しその後の経営体制を確立するに際して事実上のキングメーカーの役割を果たした経緯があり,その経緯によって平成14年4月以降は従前にも増してLJ誌の編集方針のみならずルックジャパンの経営自体についても極めて大きな発言力を有し,かつルックジャパンの経営者である甲山及び乙川の経営判断に対して絶対的な影響力を有していた。
(イ) 甲山及び乙川は,本件招集請求を受け,真っ先に丁沢に対して,これにいかに対応すべきであるかなどの相談をし,その意見を乞い又はその指示を仰いだ。
丁沢は,平成17年2月9日ころから同年3月初旬ころにかけて,甲山及び乙川に対し,本件招集請求には応じないこと,本件申請事件については応訴して争うべきこと,万一臨時株主総会においてルックジャパンの解散決議がされる場合に備えてルックジャパンの資産減らしの措置をすべきことなどの意見を述べ,またはこれらの方向性を示唆するなど,その意思を表明し,その方針又はこれに沿う方向性において対応すべき旨の指示を行い,又はその意見に沿った甲山及び乙川の措置を支援し,若しくはその示唆,意思に沿う甲山及び乙川の措置を支持した。
上記アからウまでの甲山及び乙川の行為・措置は,丁沢の意見ないし指示に従ったものであり,又は丁沢の示唆,意思に沿う経営判断として行われたものであり,若しくは甲山及び乙川のこれらの行為・措置は丁沢の支援によって,又はその指示のもとに行われた。
(ウ) 丁沢は,甲山及び乙川から相談を受け,自ら指示又は示唆し,あるいは方向性に関する意見,意思を表明したときは,甲山,乙川らルックジャパンの経営者らは,これらに反する経営判断を行うことがなくこれらに沿った経営判断をすることになること,あるいはその支援,指示は経営者らの経営判断及びその遂行を助長しこれを容易にするものであることを認識しており,又は少なくとも容易に認識することができた。
オ 甲山ほか2名の責任の根拠及びその関係
(ア) 甲山及び乙川の上記アからウまでの各行為・措置はいずれも旧商法266条1第5号の行為に該当するものであり,その行為は同時に,民法709条,719条1項の共同不法行為をも構成するものであるから,甲山及び乙川はルックジャパンに対して連帯して損害賠償責任を負う。
(イ) 丁沢の上記エの行為は,甲山及び乙川の上記(ア)の各義務違反・各不法行為を指示し又は支援するものであって,甲山及び乙川の上記義務違反の教唆及び幇助又はそのいずれかの不法行為を構成するから,丁沢は民法719条2項によって甲山及び乙川の共同行為者として甲山及び乙川とともにルックジャパンに対して連帯して損害賠償責任を負う。
カ 損害
ルックジャパンは,甲山ほか2名の各義務違反行為,各不法行為により,①従業員退職金支払額合計額の差額1891万0181円,②本件記念誌製作費等753万0915円,③不相当な弁護士費用の支払300万円,④本件につき甲山ほか2名が負担すべき弁護士費用300万円の合計3244万1096円の損害を被った。
キ 結論
よって,ルックジャパンは,甲山ほか2名に対し,甲山及び乙川につき旧商法266条1項5号又は民法709条,719条1項,丁沢につき民法709条,719条1項及び2項に基づく損害賠償として,3244万1096円及び内金300万円に対する損害発生の日である平成16年3月10日から,内金632万1315円に対する損害発生の日である同年4月13日から,内金1362万0848円に対する損害発生の日である同年5月21日から,内金528万9333円に対する損害発生の日である同年6月30日から,内金120万9600円に対する損害発生の日である同年12月24日から,内金300万円に対する損害発生の後である訴状送達の日(甲山及び乙川につき平成17年11月1日,丁沢につき同月4日)からそれぞれ支払済みまでの民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める(第1の1)。
(甲山及び乙川の主張)
ア ルックジャパンの主張ア(ア)は否認する。同ア(イ)のうち,甲山及び乙川が平成16年2月24日ころにルックジャパンの取締役会を開催し,本件退職金規程を改訂して中央労働基準監督署に届け出たことを認め,その余は否認する。同ア(ウ)のうち,ルックジャパンが合計3265万8082円の従業員退職金を支払ったことを認め,その余は否認する。
イ ルックジャパンの主張イ(ア)のうち,本件記念誌の企画及び編集をスリーアイに対して,印刷等を凸版印刷に対してそれぞれ発注したことを認め,その余は否認する。同イ(イ)のうち,ルックジャパンがスリーアイに120万9600円を,凸版印刷に632万1315円を支払ったことを認め,その余は否認する。
凸版印刷に対してルックジャパンが支払った632万1315円のうち,280万3710円はLJ誌の平成16年5月号の発行立ち上げ準備に要した経費であり,16万1280円はルックジャパン会社案内改訂版デザインの中止経費であるから,本件記念誌の費用ではない。
ウ ルックジャパンの主張ウ(ア)のうち,本件招集請求を受けてこれを拒否したこと,E介が本件申請事件を申請したこと,庚崎弁護士に応訴を委任したことを認め,その余は否認する。同ウ(イ)のうち,弁護士費用300万円を支払ったことを認め,その余は否認する。
エ ルックジャパンの主張エ(ア)は否認する。同エ(イ)のうち,甲山及び乙川が本件招集請求を受けたことを丁沢に報告したことを認め,その余は否認する。
オ ルックジャパンの主張オはいずれも争う。
カ ルックジャパンの主張カは争う。
(丁沢の主張)
ア ルックジャパンの主張アはいずれも詳細を知らない。
イ ルックジャパンの主張イ(ア)のうち,ルックジャパンの創立50周年の記念事業の1つとして本件記念誌を発行する企画があったことを認め,その余は知らない。同イ(イ)は知らない。
ウ ルックジャパンの主張ウ(ア)のうち,甲山及び乙川が庚崎弁護士に法律的な問題に関して依頼していたことを認め,その余は知らない。同ウ(イ)は知らない。
エ ルックジャパンの主張エ(ア)のうち,丁沢がLJ誌の編集方針について意見を述べることがあったことを認め,その余は否認する。同エ(イ)のうち,本件招集請求があった際に,甲山及び乙川が丁沢に対して当該事実を連絡したことを認め,その余は否認する。同エ(ウ)は否認する。
オ ルックジャパンの主張オ(ア)のうち,甲山及び乙川の行為が旧商法266条1項5号に該当することについては不知,民法709条,同719条1項の共同不法行為であるとする点については争う。同(イ)は否認する。
カ ルックジャパンの主張カは争う。
(2)  第2事件
(甲山及び乙川の主張)
ア ルックジャパンに対する旧商法257条の類推適用による損害賠償請求
(ア) 甲山及び乙川は,平成15年5月30日,ルックジャパンの取締役に重任され,その任期は平成17年3月31日決算期後3か月以内に招集される定時株主総会までであった。甲山の取締役報酬は毎月80万円,乙川の取締役報酬は毎月100万円であった。
(イ) 本件解散決議がされたため甲山及び乙川は取締役の地位を失った。
(ウ) ルックジャパンは,平成6年3月31日から平成15年3月31日までの毎営業年度において利益を計上していた。ルックジャパンは,解散時には取締役3名,監査役1名,従業員10名の陣容でLJ誌を出版しており,LJ誌は高い社会的評価を受けていた。
(エ) ルックジャパンは,利益を出し経営が順調であったにもかかわらず解散したため,任期満了前に甲山及び乙川が取締役の地位を失ったことは,取締役が正当な事由なくして株主総会決議により任期満了前に解任された状況(旧商法257条)と類似しており,甲山及び乙川は,同条の類推適用により損害賠償として任期満了までの報酬相当額をルックジャパンに対して請求することができる。
(オ) よって,甲山及び乙川は,ルックジャパンに対し,旧商法257条の類推適用による損害賠償として,甲山につき平成16年3月分の報酬相当額の36万1291円(日割計算で43万8709円は支払済み)と同年4月から平成17年6月までの15か月分の報酬相当額の1200万円の合計1236万1291円,乙川につき平成16年3月分の報酬相当額の45万1613円(日割計算で54万8387円は支払済み)と同年4月から平成17年6月までの15か月分の報酬相当額の1500万円の合計1545万1613円及びこれらに対する訴状送達の日の翌日である平成18年8月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める(第1の2(1)ア及び(2)ア)。
イ 上記アの債権を被保全債権とする不当利得返還請求権の債権者代位権の行使
(ア) 上記アと同じ。
(イ) ルックジャパンは,残余財産をE介,F美,C子,G代,H作,I平,J美及びK吉に分配したため,現在は財産がほとんどない状態である。
(ウ) 清算人は,債務の履行が完了しないうちに残余財産の分配をすることは許されない(旧商法430条1項,131条)。
(エ) よって,甲山は,E介,F美,C子,G代,H作,I平,J美及びK吉に対し,債権者代位権の行使による不当利得に基づく返還請求として,E介につき508万8731円,F美につき455万3075円,C子につき55万6258円,G代につき55万6258円,H作につき55万6258円,I平につき14万4215円,J美につき35万0236円及びK吉につき55万6258円(それぞれの額は1236万1291円にルックジャパンの発行済株式の総数を除して持株数を乗じた額である。)並びにこれらに対する訴状送達の日の翌日である平成18年8月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,乙川は,E介,F美,C子,G代,H作,I平,J美及びK吉に対し,債権者代位権の行使による不当利得に基づく返還請求として,E介につき636万0914円,F美につき569万1344円,C子につき69万5322円,G代につき69万5322円,H作につき69万5322円,I平につき18万0268円,J美につき43万7795円及びK吉につき69万5322円(それぞれの額は1545万1613円にルックジャパンの発行済株式の総数を除して持株数を乗じた額である。)並びにこれらに対する訴状送達の日の翌日である平成18年8月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める(第1の2(1)イからケまで及び(2)イからケまで)。
ウ ルックジャパンに対する違法な仮差押えによる損害賠償請求権
(ア) ルックジャパンは,甲山及び乙川が所有する別紙物件目録1及び2記載の各不動産につき仮差押命令の発令を得て,その旨の登記がされた(以下「本件仮差押え」という。)。
(イ) ルックジャパンは,本件仮差押えにつき被保全権利も保全の必要性も存在せず違法な仮差押えであることを知りながら,仮差押命令の申立てをした。
(ウ) 甲山及び乙川は,本件仮差押えによって,不動産を処分することも担保に供することもできず信用を失墜したほか,精神的損害を被ったのであり,その損害額は少なくとも各200万円を下らない。
(エ) よって,甲山及び乙川は,ルックジャパンに対し,不法行為に基づく損害賠償として,慰謝料各200万円及びこれらに対する訴状送達の日の翌日である平成18年8月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める(第1の2(3)ア及び(4)ア)。
エ 上記ウの債権を被保全債権とする不当利得返還請求権の債権者代位権の行使
(ア) 上記ウと同じ。
(イ) 上記イ(イ)及び(ウ)と同じ。
(ウ) よって,甲山は,E介,F美,C子,G代,H作,I平,J美及びK吉に対し,債権者代位権の行使による不当利得に基づく返還請求として,E介につき82万3333円,F美につき73万6666円,C子につき9万円,G代につき9万円,H作につき9万円,I平につき2万3333円,J美につき5万6666円及びK吉につき9万円(それぞれの額は200万円にルックジャパンの発行済株式の総数を除して持株数を乗じた額である。)並びにこれらに対する訴状送達の日の翌日である平成18年8月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,乙川は,E介,F美,C子,G代,H作,I平,J美及びK吉に対し,債権者代位権の行使による不当利得に基づく返還請求として,E介につき82万3333円,F美につき73万6666円,C子につき9万円,G代につき9万円,H作につき9万円,I平につき2万3333円,J美につき5万6666円及びK吉につき9万円(それぞれの額は200万円にルックジャパンの発行済株式の総数を除して持株数を乗じた額である。)並びにこれらに対する訴状送達の日の翌日である平成18年8月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める(第1の2(3)イからケまで及び(4)イからケまで)。
オ E介,F美,C子,G代,H作,I平及びK吉に対するルックジャパンの株主総会における違法な決議による損害賠償請求
(ア) E介,F美,C子,G代,H作,I平及びK吉は,ルックジャパンの平成16年3月17日開催の株主総会において,ルックジャパンの解散に賛成し,その結果,本件解散決議がされ,甲山及び乙川はルックジャパンの取締役の地位を失った。
(イ) ルックジャパンが上記ア(ウ)の状況であるにもかかわらず,E介,F美,C子,G代,H作,I平及びK吉が意思を連絡して本件解散決議をすることは権利の濫用であり,違法に甲山及び乙川に損害を与えたものである。
(ウ) よって,甲山及び乙川は,E介,F美,C子,G代,H作,I平及びK吉に対し,不法行為に基づく損害賠償として,甲山につき平成16年3月分の報酬相当額の36万1291円(日割計算で43万8709円は支払済み)と同年4月から平成17年6月までの15か月分の報酬相当額の1200万円の合計1236万1291円,乙川につき平成16年3月分の報酬相当額の45万1613円(日割計算で54万8387円は支払済み)と同年4月から平成17年6月までの15か月分の報酬相当額の1500万円の合計1545万1613円の連帯支払を求める(第1の2(5)及び(6))。
(ルックジャパンほか8名の主張)
ア 甲山及び乙川の主張ア(ア)及び(イ)はいずれも認める。同ア(ウ)第1文は認め,第2文のうち,LJ誌の社会的評価は不知,その余は認める。同ア(エ)のうち,ルックジャパンが利益を計上していたこと及び解散したことを認め,経営が順調であったことは否認し,その余は争う。
仮に本件解散決議に旧商法257条の類推適用が認められるとしても,甲山及び乙川は,本件招集請求に合理的な理由なく応じようとはせず,本件退職金規程を不合理に改訂しているから,正当事由がある。
イ 甲山及び乙川の主張イ(ア)に対する認否は上記アと同じ。同イ(イ)のうち,残余財産の分配は一部の範囲についてのみ認め,その余は否認する。同イ(ウ)は争う。
ルックジャパンは,平成18年3月31日において回収済み資産保有額が7210万円以上あった。しかし,第1事件の係属により清算結了までは時間を要することが見込まれたため,同年4月に4800万円について分配を行ったものの,2410万円以上の未分配資産がある。さらに,ルックジャパンは,甲山ほか2名に対し,3244万円以上の損害賠償請求権を有しているから,ルックジャパンの有する未分配資産額は約5654万円となり,甲山及び乙川の請求金額合計額を上回る。
ウ 甲山及び乙川の主張ウ(ア)は認める。同ウ(イ)及び(ウ)は否認する。
エ 甲山及び乙川の主張エ(ア)に対する認否は上記ウと同じ。同エ(イ)は否認ないし争う。
オ 甲山及び乙川の主張オ(ア)は認める。同オ(イ)は否認ないし争う。
3  争点
したがって,本件の争点は,次のとおりである。
(1)  第1事件
ア 甲山及び乙川が①本件退職金規程の改訂,②本件記念誌の編集・製作等の発注,③庚崎弁護士に対する弁護士費用の支払について善管注意義務又は忠実義務に違反したか(上記2(1)ルックジャパンの主張アからウまで)。
イ 丁沢が上記ア①から③までの行為を教唆又は幇助したか(上記2(1)ルックジャパンの主張エ)。
ウ 損害額(上記2(1)ルックジャパンの主張カ)。
(2)  第2事件
ア 本件解散決議について旧商法257条1項ただし書の類推適用があるか。同項ただし書の類推適用がある場合に正当事由があるか(上記2(2)甲山及び乙川の主張ア)。
イ ルックジャパンが無資力であるか(上記2(2)甲山及び乙川の主張イ及びエ)。
ウ 本件仮差押えが違法であるか。違法である場合の慰謝料額(上記2(2)甲山及び乙川の主張ウ)。
エ 本件解散決議が権利濫用であるか(上記2(2)甲山及び乙川の主張オ)。
第3  当裁判所の判断
1  甲山及び乙川の善管注意義務又は忠実義務の有無(争点(1)ア)と損害額(争点(1)ウ)について
(1)  以下,段落末尾に掲記した証拠等によれば,次の各事実がそれぞれ認められる。
ア ルックジャパンでは,本件招集請求がされた平成16年2月6日,乙川が公認会計士事務所に旧商法の株主総会に関する規定部分をファックス送信させ,また,甲山及びルックジャパンの嘱託である辛田P作(以下「辛田」という。)が内閣府を訪問して本件招集請求につき報告した。ルックジャパンは,本件招集請求に先立って,L夫の弔慰金支給の件を議題として同月9日に臨時株主総会を開催する旨を株主に対して通知していた(弔慰金等の総額として900万円が予定されていた。)。しかし,株主が当該株主総会に委任状の提出も出席もしなかったため,ルックジャパンは,同日に取締役会を開催し,甲山,乙川,己原及び辛田が出席した上,本件招集請求への対応が協議された。当該取締役会においては,株式の買取り,新会社設立,ルックジャパンが解散の場合には資産1億8000万円の余りが出て丁沢や内閣府から訴訟問題が起こるなどの意見が交換され,乙川は,同月10日,庚崎弁護士に本件招集請求への対応を相談した。ルックジャパンは,同月12日,ホテルニューオータニにおいて編集会議を開催し,乙川,丁沢ほか6名が出席した。また,甲山ほか2名に辛田,庚崎弁護士らを加えた合計7名は,同月13日,ホテルニューオータニにおいて会合を開き,本件招集請求について,庚崎弁護士の意見を聴くとともに対応を協議した。ルックジャパンは,同月17日までに,庚崎弁護士に対し,本件招集請求に対する回答書の作成を依頼し,同月19日,加藤弁護士に対し,ルックジャパンの解散決議は権利の濫用であって公序良俗に反する旨主張して,本件招集請求を拒否する旨の回答書を発した。ルックジャパンは,同月20日,ホテルニューオータニにおいて編集会議を開催し,甲山ほか2名に13名を加えた合計16名が出席した(枝番号を含めて甲6,42から45まで,52から54まで,113,154,丙1,証人壬岡,乙川本人,丁沢本人,弁論の全趣旨)。
イ この間,辛田は,平成16年2月10日ころ,ルックジャパンの従業員であった壬岡Q子(以下「壬岡」という。なお,ルックジャパンでは旧姓である「癸井」を使用していた。)に対し,本件退職金規程の改訂のため,従業員退職金の計算を指示した。壬岡は,辛田が指示した試算条件に従って試算し,同月23日ころ,辛田に対し,改訂後の本件退職金規程の案を提出した。乙川は,同月24日,役員の了承があったとして,従業員に対し,上記の案を説明し,従業員の代表が意見書に署名押印した。壬岡は,同月25日,中央労働基準監督署長に対し,改訂後の本件退職金規程を届け出た。壬岡は,同年3月4日ころ,辛田の指示によって,同年2月24日付けの本件退職金規程の改訂を承認する旨の決議を記載した取締役会議事録を作成し,甲山及び乙川の押印を得たものの,J美は押印を拒否した。甲山は,ルックジャパンの代表取締役として,同年3月11日,加藤弁護士に対し,本件退職金規程の改訂の理由として,会社の都合による解雇の際に退職金を支給するための条項が欠けているため,国家公務員退職手当法とルックジャパンにおける過去の裁判での和解結果等を参考にした旨の書面を差し出した。改訂前の本件退職金規程は別紙1のとおりであり,改訂後の本件退職金規程は別紙2のとおりである(枝番号を含めて甲13,22から26まで,40,41,60,77から79まで,98〔枝番号の4,5を除く〕,113,154,証人壬岡)。
ウ また,乙川は,平成16年2月12日,スリーアイの代表取締役であって,かつてルックジャパンの編集長を務めていた丑木R平(以下「丑木」という。)に対し,本件記念誌に関する打診をし,丑木は,直ちに数社の年史資料を収集し分析した。乙川は,同月20日,丑木に対し,本件記念誌の企画・編集に関する協力を要請し,同月23日,ルックジャパンにおいて,甲山,乙川,辛田ほか1名と丑木及び凸版印刷の従業員を含めて打合せを行い,甲山はスリーアイに対して本件記念誌の企画・編集を発注するとともに,凸版印刷に対して本件記念誌の印刷等を発注した。丑木と凸版印刷の従業員は,同月24日,凸版印刷において打合せを行い,本件記念誌の基本コンセプト,日程,作業分担,進め方等を決め,同日以降,丑木は,企画方針,内容,翻訳,選択,分類,チェック等の作業を,凸版印刷はデザイン,組版,製版の作業をした。本件記念誌は,LJ誌の過去の記事を年代ごとに選んで構成するものであり,スポンサー等に対して無償で配布することが予定されていた(枝番号を含めて甲12,13,40,58,88〔枝番号の5,6を除く〕,91,113,145,154,乙14,証人壬岡,乙川本人,弁論の全趣旨)。
エ ルックジャパンは,平成16年2月26日,庚崎弁護士との間で,①本件申請事件に関する件,②ルックジャパンの存続(株式買取を含む。)又は条件付き解散につき選択的に交渉する件を委任処理事項,庚崎弁護士の報酬金(着手金,成功報酬,実費,日当を含む。)として300万円及び消費税を支払う旨の委任契約を締結した。庚崎弁護士は,同日,加藤弁護士と交渉し,株式買取りなどのルックジャパン存続の方向での解決を図ったものの,加藤弁護士は,任意の株主総会の招集を求めたため,交渉は互いに歩み寄りのないまま終わった。また,庚崎弁護士と加藤弁護士は,同年3月4日,再度交渉し,庚崎弁護士は,加藤弁護士に対し,L夫の退職慰労金や株式買取代金を含めて合計8000万円の支払を提案したものの,同日中に当該提案を撤回し,改めて従業員退職金7000万円,退職予告手当400万円,印刷業者立ち上がり経費,派遣社員経費,LJ誌廃刊通知費の支払を処理することを条件に,任意に株主総会を招集することを提案した。壬岡は,同月5日,加藤弁護士に対し,上記提案の資料として改訂後の本件退職金規程等をファックス送信した。しかし,本件申請事件の同月8日の審問期日において,庚崎弁護士が本件招集請求が権利の濫用であって公序良俗に反する旨主張したものの,加藤弁護士が本件退職金規程の改訂が背任行為であると指摘し,審問も打ち切られたため,交渉が成立することはなかった。庚崎弁護士は,同月9日,加藤弁護士に対し,従前撤回した8000万円の支払案を再度提案し,更に8600万円から9700万円の支払があり得る旨伝えたけれども,加藤弁護士は,同月11日,E介の意向として提案を拒否した。ルックジャパンは,同月10日,庚崎弁護士の請求に基づいて,庚崎弁護士に対し,委任契約に係る報酬として315万円(消費税を含む。)を支払った(枝番号を含めて甲47,50,63,69,81から83まで,95から99まで,100,105,113,乙9,10,乙川本人)。
オ この間,乙川は,平成16年3月4日,丁沢に対し,内閣府政府広報室室長から甲山あてに「たとえ社名・ロゴが変わろうとも,これからも広報室の買上・支援を続けるとの前提で,丁沢先生のご指導を引き続きお願いできる旨,先生のご了承を得ました」との連絡があったことについての謝辞や,どのような事態にも対応できるように新会社を設立することを前提として公認会計士と相談していることなどをファックス送信して報告した。また,乙川は,同月8日,丁沢に対し,庚崎弁護士の経過報告等をファックス送信して報告し,同月9日,丁沢に対し,本件申請事件について株主総会の招集許可がされたことや,庚崎弁護士が加藤弁護士に対して株式買取案を提案したことなどをファックス送信して報告した。乙川は,同月11日,ホテルニューオータニにおいて丁沢と会い,丁沢に対し,本件申請事件の報告等をした(枝番号を含めて甲63,66,69,108,乙川本人,丁沢本人)。
カ 株式会社ジャパンジャーナル(以下「ジャパンジャーナル」という。)は,平成16年4月13日に設立され,寅葉S吉,乙川T夫(乙川の弟)及び丑木が設立時の取締役,寅葉が設立時の代表取締役,辰口U雄が設立時の監査役であった。その後,ジャパンジャーナルでは,同年7月30日,乙川T夫及び丑木が取締役を辞任し,乙川及び巳上V郎が取締役に就任し,平成17年6月30日,寅葉S吉が取締役及び代表取締役に,乙川,巳上V郎が取締役に,辰口U雄が監査役に重任された。丁沢は,ジャパンジャーナルの編集委員を務めている。甲山ほか2名は,ジャパンジャーナルの株主である(枝番号を含めて甲145,155,161,162,乙川本人,丁沢本人)。
キ ルックジャパンは,平成16年3月26日までには,凸版印刷に対し,本件記念誌の印刷等の契約を解約した。凸版印刷は,同月31日,本件記念誌中止費用(デザイン,組版,製版代)として335万6745円,LJ誌5月号中止費用として280万3710円及びルックジャパン会社案内改訂版中止費用として16万1280円の合計632万1735円を請求した。ルックジャパンは,同年4月13日,凸版印刷に対し,同額を支払った(枝番号を含めて甲88,89,133,ルックジャパン代表者本人)。
ク ルックジャパンは,平成16年5月21日,従業員7名に対し,改訂後の本件退職金規程に従った退職金として合計1905万3082円(中小企業退職金共済の支払分を除く。)を支払い,同年6月30日,壬岡に対し,同様に1360万5000円を支払った。改訂前の本件退職金規程に従った場合との差額は,1891万0181円である(枝番号を含めて甲30から39,114,133,ルックジャパン代表者本人)。
ケ スリーアイは,平成16年3月24日,ルックジャパンに対し,本件記念誌製作に関する企画・編集費として201万6000円を請求した。ルックジャパンは,同年12月20日,スリーアイとの間で,本件記念誌の企画・編集の報酬額を120万9600円とする旨を合意した上で,同月24日,スリーアイに対し,同額を支払った(枝番号を含めて甲92から94まで,120から122まで,133,ルックジャパン代表者本人)。
(2)  以上に基づいて,まず,本件退職金規程の改訂について検討する。
ア 改訂後の本件退職金規程は,改訂前と比較して,①退職金発生事由について「会社の解散による場合も含む。」と明記され,②算定基礎額について退職時の「基本給+職務手当」に「実績評価手当」が加算され,③支給乗率について勤続年数より小さい乗率から勤続年数の数(ただし35を上限とする。)とされ,④事業の縮小等による解雇又は会社の解散による解雇の場合の退職金額は,「基本給+職務手当+実績評価手当」×勤続年数によって得た額に「100分の100を限度とした割合を乗じて得た額」の合計額とする旨の規定が新設され,⑤勤続1年未満の者に対しても退職金を支給し,勤続3年未満の者は3年以上の者と同じ算定方式にしたといった変更点がある(上記(1)イ)。
そして,証拠(甲30の2)によれば,改訂前後の本件退職金規程に従って,上記(1)クの支給時点における壬岡ほか7名の退職金を計算すると,別紙3のとおりであることが認められ,改訂前の本件退職金規程に従った金額が1596万5401円であるのに対し,改訂後の本件退職金規程に従うと,1891万0181円から5340万1763円の増額(増額率は118%から334%)となる。
このように,本件退職金規程の改訂では,退職金発生事由について「会社の解散による場合も含む。」と明記され,会社の解散による場合には改訂後の支給額の更に最大限2倍の退職金を支給するとされ,会社の解散による場合でなくとも退職金支給額が改訂前と比較して倍以上になっているなど従業員にとって大幅に有利な内容になっている。これらに対して,証拠(甲147の6,乙36)によれば,ルックジャパンの売上は,平成8年度の約6億8546万円から平成15年度の約4億8163万円と減少傾向にあったこと,ルックジャパンでは,平成10年度以降,人件費を削減したこと,ルックジャパンの平成11年度から平成15年度における営業利益は約1580万円,約1757万円,約3263万円,約5442万円,約2408万円であったことがそれぞれ認められ,ルックジャパンは,売上が減少する中で人件費を削減することによって営業利益を計上していた状況に照らすと,本件退職金規程の改訂は,通常の経営判断とはいい難いものである。
イ また,本件退職金規程は,本件招集請求後の平成16年2月10日ころから改訂作業が行われ,改訂後の本件退職金規程は,少なくとも甲山及び乙川の了承のもと(J美は後日の取締役会議事録作成の際に押印していない。),同月24日,従業員に対して説明され,従業員の代表が意見書に署名押印した上で,同月25日,中央労働基準監督署長に対して届出がされたものである(上記(1)イ)。
そうすると,本件退職金規程の改訂は,本件招集請求後に行われたものであり,また上記アの改訂内容等に照らすと,本件招集請求に対する対抗措置であったと認められる。本件退職金規程の改訂には,ルックジャパンが解散した場合に失業する従業員に対する配慮があったことは否定できないけれども,本件退職金規程の改訂は,本件招集請求に対する対抗措置である上,ルックジャパンの負担において一方的に従業員を利するものであるといえるから,取締役の判断として著しく不合理な判断であるといえる。そうすると,本件退職金規程の改訂に関与した取締役である甲山及び乙川は善管注意義務及び忠実義務に違反したといわざるを得ない。
そして,本件退職金規程の改訂による損害は,ルックジャパンが改訂後の本件退職金規程に従って壬岡ほか7名の従業員に対して支給した退職金と改訂前の本件退職金規程に従った場合の差額である1891万0181円(上記(1)ク)と認めるのが相当である。
したがって,本件退職金規程の改訂についての善管注意義務及び忠実義務違反の主張は理由がある。
ウ これに対し,甲山及び乙川は,本件退職金規程について,平成15年後半から見直しを検討していた旨主張するけれども,これを的確に認めることができる証拠はないから採用できない。
(3)  次に,本件記念誌の編集・製作等の発注について検討する。
ア 本件記念誌は,本件招集請求後の平成16年2月12日に乙川が丑木に対して打診し,同月20日に協力を要請した上,甲山が,同月23日,スリーアイに対して本件記念誌の企画・編集を,凸版印刷に対して本件記念誌の印刷等を発注したものであり,LJ誌の過去の記事を年代ごとに選んで構成し,スポンサー等に対して無償で配布することが予定されていたものである(上記(1)ウ)。
このように,本件記念誌は,本件招集請求の後に発注しており,かつ無償で配布することが予定されていたのであるから,甲山及び乙川は,本件招集請求を認識しながら,ルックジャパンにとって無償の行為を行ったといえる。そして,月刊のLJ誌の発行を準備することはともかく,ルックジャパンが解散するか否かは未確定の状態であったとはいえ,株主の対応(上記(1)ア)に照らせば,ルックジャパンが解散となる蓋然性が高かったのであるから,無償配布を予定していた本件記念誌の編集・製作等を発注することは取締役の判断として著しく不合理であるといえる。そうすると,本件記念誌の編集・製作等の発注に関与した甲山及び乙川は善管注意義務及び忠実義務に違反したといわざるを得ない。
これに対し,甲山及び乙川は,本件記念誌がL夫の生前から企画されていたものである旨主張する。しかしながら,証拠(乙7,27)によれば,L夫の生前に予定していた刊行物は記念論文集であることが認められるのに対し,本件記念誌は,LJ誌の過去の記事を年代ごとに選んで構成したものであり,明らかに異なるものであるから,甲山及び乙川の主張は採用できない。
イ そして,本件記念誌の編集・製作等の発注による損害は,凸版印刷がルックジャパンに対して本件記念誌中止費用(デザイン,組版,製版代)として請求し,ルックジャパンが支払った335万6745円(上記(1)キ)とルックジャパンがスリーアイに対して本件記念誌の企画・編集の報酬として支払った120万9600円(上記(1)ケ)の合計456万6345円であると認めるのが相当である。
これに対し,ルックジャパンは,凸版印刷がルックジャパンに対してLJ誌5月号中止費用及びルックジャパン会社案内改訂版中止費用として請求した金額についても本件記念誌の編集・製作等の発注による損害であると主張する。しかしながら,証拠(乙15から17まで,34)によれば,LJ誌5月号及びルックジャパン会社案内改訂版については作業を行ったことや成果物が存在することが認められ,本件記念誌とは無関係であるから,ルックジャパンの主張は採用できない。
ウ したがって,本件記念誌の編集・製作等の発注についての善管注意義務及び忠実義務違反の主張は,損害賠償として456万6345円を認める限度で理由がある。
(4)  続いて,庚崎弁護士に対する弁護士費用の支払について検討する。
ア ルックジャパンは,甲山及び乙川が,勝訴の見込みがない以上ルックジャパンに損害を与えることのないよう弁護士費用を支払って弁護士に応訴を委任すべきではないのに委任したなどと主張する。
しかしながら,ルックジャパンの庚崎弁護士に対する委任事項は,本件申請事件に関する件だけではなく,ルックジャパンの存続(株式買取を含む。)又は条件付き解散につき選択的に交渉する件であって,実際に,庚崎弁護士は,本件申請事件だけでなく,加藤弁護士との間において,株式買取り等の交渉を行っている(上記(1)エ)。
そうすると,たとえ本件申請事件について株主総会の招集が許可されることが見込まれていたとしても,任意の交渉において株主との紛争を解決することを考えて庚崎弁護士に対して委任したものと解されるから,このような判断が取締役の判断として著しく不合理であるということはできない。加えて,ルックジャパンは,庚崎弁護士に対し,委任契約に係る報酬として315万円(消費税を含む。)を支払っている(上記(1)エ)けれども,委任事項に照らすと,弁護士費用が直ちに不相当であるともいえない。
イ したがって,庚崎弁護士に対する弁護士費用の支払についての善管注意義務及び忠実義務違反の主張は理由がない。
(5)  上記(2)から(4)までのとおり,本件につき甲山及び乙川が負担すべき弁護士費用を除いて,ルックジャパンの旧商法266条1項5号に基づく損害賠償請求は2347万6526円の限度で理由がある。
ところで,旧商法266条1項5号に基づく損害賠償責任は,取締役がその任務を懈怠して会社に損害を被らせることによって生ずる債務不履行責任であるから(もっとも法によってその内容が加重された特殊な責任である。),特段の事情のない限り,弁護士費用を損害と認めることはできない。
そして,特段の事情について主張・立証はないから,旧商法266条1項5号に基づく損害賠償として本件につき甲山及び乙川が負担すべき弁護士費用を認めることができない。
(6)  最後に,不法行為に基づく請求について検討する。
ルックジャパンは,不法行為に基づく損害賠償請求について,甲山及び乙川の責任原因として善管注意義務又は忠実義務を主張するのみであり,甲山及び乙川が取締役の地位を離れて,①本件退職金規程の改訂,②本件記念誌の編集・製作等の発注,③庚崎弁護士に対する弁護士費用の支払について,いかなる注意義務を負うのかを主張していない。
そうすると,甲山及び乙川に対して不法行為に基づく損害賠償責任を認めることはできない。
(7)  したがって,ルックジャパンの甲山及び乙川に対する旧商法266条1項5号に基づく損害賠償請求は,2347万6526円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成17年11月2日からいずれも支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める限度で理由がある(同号に基づく損害賠償債務は,期限の定めのない債務と解するのが相当であるから,請求を受けた時から遅滞に陥る。)けれども,その余の甲山及び乙川に対する請求はいずれも理由がない。
2  丁沢の教唆又は幇助の有無(争点(1)イ)について
(1)  前記1(6)のとおり,甲山及び乙川に対して不法行為に基づく損害賠償責任を認めることはできない。
そうすると,丁沢に対する不法行為に基づく損害賠償請求は,甲山及び乙川の不法行為を前提とした丁沢の教唆又は幇助を責任原因とするものであるから,前提を欠くといわざるを得ない。
したがって,ルックジャパンの丁沢に対する不法行為に基づく損害賠償請求は,その余について判断するまでもなく理由がない。
(2)  以上のとおりであるけれども,念のため,丁沢の教唆又は幇助の有無について検討する。
前記1(2)及び(3)のとおり,①本件退職金規程の改訂,②本件記念誌の編集・製作等の発注について,甲山及び乙川の旧商法266条1項5号に基づく損害賠償責任が認められる。
他方で,丁沢は,平成16年2月13日の会合において,本件招集請求について協議に参加し(前記1(1)ア),その後,同年3月に入って,乙川が丁沢に対してファックス送信して本件申請事件等を報告している(前記1(1)オ)けれども,①本件退職金規程の改訂,②本件記念誌の編集・製作等の発注について,丁沢の関わりや具体的な教唆又は幇助を的確に認めることができる証拠はない。
確かに,証拠(甲62の3,乙川本人)によれば,丁沢の言葉として書き留められたメモが残っていることが認められるけれども,その内容も抽象的なものにすぎず,①本件退職金規程の改訂,②本件記念誌の編集・製作等の発注について,丁沢の教唆又は幇助を具体的に認定するには至らないというべきである。
(3)  したがって,いずれにせよルックジャパンの丁沢に対する不法行為に基づく損害賠償請求は理由がない。
3  旧商法257条1項ただし書の類推適用の有無等(争点(2)ア)について
(1)  まず,本件解散決議について旧商法257条1項ただし書の類推適用があるかを検討する。なお,会社法附則2項によれば,同法は,他の法律に定めがある場合を除き,同法施行前に生じた事項にも適用され,旧商法257条1項ただし書については他の法律に定めがないから,会社法施行前であっても役員の解任については同法339条2項が適用されると解される。そうすると,ここでも旧商法257条の類推適用ではなく,会社法339条2項の類推適用が問題ではないかと解されるけれども,甲山及び乙川の主張に従って検討する。
旧商法257条1項は,会社に取締役の任意の解任権を与えており,その行使は適法であるにもかかわらず,同項ただし書が会社の取締役に対する損害賠償責任を認めていることに照らすと,故意又は過失を要件としない特別の法定責任であると解され,同項ただし書は取締役の任期を保障する考えに基づくものではないというべきである。そうすると,会社の解散決議によって取締役が任期途中において地位を失ったとしても(なお,取締役以外の者が清算人に選任されない限り,取締役が清算人になる〔旧商法417条1項〕。),取締役の任期の保障を前提として同項ただし書を類推する基礎はないと解するのが相当である。
したがって,本件解散決議について旧商法257条1項ただし書を類推適用することはできない。
(2)  もっとも,たとえ本件解散決議について旧商法257条1項ただし書を類推適用できるとしても,甲山及び乙川は,前記1(2)のとおり,善管注意義務及び忠実義務に違反して本件退職金規程を改訂しているから,ルックジャパンには正当事由があるといえる。
(3)  したがって,甲山及び乙川のルックジャパンに対する旧商法257条1項ただし書の類推適用による損害賠償請求は理由がない。そうすると,甲山及び乙川のE介,F美,C子,G代,H作,I平,J美及びK吉に対する上記の損害賠償請求権を被保全債権とする債権者代位権の行使による不当利得返還請求は,その余について判断するまでもなく,当事者適格がないから却下を免れない。
4  本件仮差押えの違法性の有無等(争点(2)ウ)について
証拠(甲167,168)によれば,本件仮差押えは,甲山及び乙川が,①本件退職金規程の改訂,②本件記念誌の編集・製作等の発注,③庚崎弁護士に対する弁護士費用の支払について善管注意義務又は忠実義務に違反し,ルックジャパンが①従業員退職金支払額合計額の差額1891万0181円,②本件記念誌製作費等753万0915円,③不相当な弁護士費用の支払300万円の合計2944万1096円の損害を被ったと主張して,旧商法266条1項5号に基づく損害賠償請求を被保全権利として,甲山及び乙川につき各1472万0548円を請求債権として仮差押えをしたものであることが認められる。
他方で,前記1のとおり,ルックジャパンの甲山及び乙川に対する旧商法266条1項5号に基づく損害賠償請求は,①従業員退職金支払額合計額の差額1891万0181円,②本件記念誌製作費等456万6345円の合計2347万6526円の限度で認められる。
そうすると,本件仮差押えの被保全権利は,大部分が認められているのであるから,その余について判断するまでもなく,本件仮差押えが違法であるということはできない。
したがって,甲山及び乙川のルックジャパンに対する不法行為に基づく損害賠償請求は理由がない。そうすると,甲山及び乙川のE介,F美,C子,G代,H作,I平,J美及びK吉に対する上記の損害賠償請求権を被保全債権とする債権者代位権の行使による不当利得返還請求は,その余について判断するまでもなく,当事者適格がないから却下を免れない。
5  本件解散決議の権利濫用の有無(争点(2)エ)について
甲山及び乙川は,ルックジャパンが平成6年3月31日から平成15年3月31日までの毎営業年度において利益を計上していたことや,LJ誌は高い社会的評価を受けていたことなどとして,本件解散決議が権利濫用であると主張する。
しかしながら,ルックジャパンは,売上が減少する中で人件費を削減することによって営業利益を計上していた状況(前記1(2)ア)や,LJ誌の購入先のほとんどが官庁及び公的機関であったこと(前提事実(1))を考慮すると,たとえルックジャパンが営業利益を計上していたとしても,将来にわたり利益を確保できたかは不透明であり,株主によるルックジャパンの解散という判断が権利濫用に該当するとまでいうことはできない。その他本件に現われた事情を考慮しても,本件解散決議が権利濫用であることを肯定する事情は見当ならないというべきである。
したがって,甲山及び乙川のE介,F美,C子,G代,H作,I平及びK吉に対する不法行為に基づく損害賠償請求は理由がない。
6  結論
よって,主文のとおり判決する。
(裁判官 小川雅敏)

 

〈以下省略〉

 

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