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「営業アウトソーシング」に関する裁判例(22)平成29年 2月22日 東京地裁 平27(ワ)13996号 地位確認等請求事件

「営業アウトソーシング」に関する裁判例(22)平成29年 2月22日 東京地裁 平27(ワ)13996号 地位確認等請求事件

裁判年月日  平成29年 2月22日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平27(ワ)13996号
事件名  地位確認等請求事件
裁判結果  一部却下、一部棄却  上訴等  控訴  文献番号  2017WLJPCA02226005

要旨
◆著しい能力不足、勤務態度の不良が認められ、解雇が有効とされた例

評釈
加茂善仁・ジュリ増刊(実務に効く労働判例精選 第2版) 124頁
野川忍・Niben frontier 174号2頁(講演録)(前編)

参照条文
労働契約法16条
民事訴訟法135条

裁判年月日  平成29年 2月22日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平27(ワ)13996号
事件名  地位確認等請求事件
裁判結果  一部却下、一部棄却  上訴等  控訴  文献番号  2017WLJPCA02226005

原告 A
訴訟代理人弁護士 佐藤正知
同 笠置裕亮
被告 N社
代表者代表取締役 B
訴訟代理人弁護士 向井千杉
同 小林幸弘
同 吉岡雅史

 

 

主文

1  本件訴えのうち、(後記請求の趣旨第2項にかかる請求のうち、)本判決確定後毎月26日限り21万9000円及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年6%の割合による金員の支払を求める部分並びに(後記請求の趣旨第3項にかかる請求のうち、)本判決確定後毎年6月末日及び12月末日限り23万2022円及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年6%の割合による金員の支払を求める部分を却下する。
2  原告のその余の請求を棄却する。
3  訴訟費用は原告の負担とする。
 

事実及び理由

第1  請求の趣旨
1  原告が、被告に対する労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。
2  被告は、原告に対し、①18万4349円及びこれに対する平成26年2月27日から支払済みまで年6%の割合による金員並びに②同年3月26日から毎月26日限り21万9000円及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。
3  被告は、原告に対し、平成26年6月末日から毎年6月末日及び12月末日限り各23万2022円及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年6%の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
原告は、被告の従業員として勤務してきたが、被告から、その勤務成績不良、勤務態度不良等を理由に解雇された。本件は、原告が、同解雇は労働契約法16条に反し無効であると主張して、被告に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに(請求の趣旨第1項)、解雇されなければ得られたであろう賃金の支払(同第2項)及び賞与の支払(同第3項)を請求した事案である。
1  前提となる事実(当事者間に争いのない事実及び後掲各証拠等により容易に認めることができる事実。証拠等の掲記のない事実は当事者間に争いがない。)
(1)  当事者及び雇用契約の締結等
ア 被告は、コンピュータに関連する電子機器システムの開発、運用及びソフトウェアプロダクトの開発等の事業を行う会社である(書証略)。
イ 原告は、昭和57年4月、被告に期間の定めのない正社員として雇用された。
(2)  原告の被告社内での経歴(書証略、弁論の全趣旨)
ア 原告は、被告に入社当初、システム事業部、応用システム事業部等に配属され、当初はシステムエンジニアとして勤務し、官庁・公共システム部・群馬システムセンター等に配属されたが、その後、遅くとも平成2年ころから以降、間接部門(いわゆるバックオフィス)に配属されて勤務するようになった。
イ 原告は、平成14年4月1日、アプリケーションサービスセンター(平成17年4月1日に「情報システム部」、平成23年7月1日に「業務サービス統括部」と改称された。)に配属され、以後、後記ウの在籍出向期間を除いて後記解雇に至るまで、同部に所属していた。
なお、この間、原告は、平成24年6月ころまでシステム開発関係の業務に従事することはなかったが、同月ころ、社内の業務管理システムの開発に従事したことがあった。
ウ 原告は、平成25年1月8日から甲株式会社(以下「甲」という。)に在籍出向となり、被告社内のドキュメントセンター(被告はドキュメントセンターにおける業務をアウトソーシングしていた。)におけるコピー、スキャニング業務等に従事したが、同月25日、同出向契約が終了となり、再度、被告の業務サービス統括部に所属することとなった。
エ 被告は、平成25年6月ころ、再度、原告を在籍出向させることとし、公益財団法人産業雇用安定センター(以下「産業雇用安定センター」という。)に委託し、原告の同出向先の打診を行ったことがあったが、結局、原告の出向は実現しなかった。
(3)  被告の就業規則上の解雇規定(書証略)
被告の就業規則82条1項は、従業員の解雇事由を定めるところ、その2号には、「はなはだしく能力の劣る場合」、4号には「前各号のほか解雇が相当と認められる事由がある場合」と規定されている。
(4)  本件解雇
被告は、平成25年8月、原告に対し、平成26年2月5日付けで原告を解雇する旨の解雇予告(以下「本件解雇予告」という。)を行い、同日、原告を解雇した(以下「本件解雇」という。)。
同解雇予告通知書には、原告の解雇理由として、「当社従業員就業規則第82条第1項第2号及び同項第4号の解雇事由に該当する為」との記載がある(書証略)。
(5)  原告の賃金額
本件解雇時における原告の基本給は月額21万9000円であり、当月末締め(弁論の全趣旨)、当月26日払いとされている。
2  争点及び当事者の主張
(1)  本件解雇が有効か否か(争点1)。
(原告の主張)
以下のとおり、本件解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当とも認められないものであって、無効である。
ア 被告は、原告の能力が甚だしく劣るというが、その能力不足は客観的に裏付けられておらず、仮に能力不足であったとしても、その程度は甚だしいものとはいえない。原告に対する人事考課、賞与評価の内容は、いずれも不合理である。
イ また、被告は、原告に対し、能力向上のための必要な訓練や教育措置を施しておらず、そればかりか、原告が仕事を求めていたにもかかわらず、嫌がらせと断じざるを得ないような業務(リサイクルセンターにおけるハードディスクの破壊業務など)を執拗に打診し続け、それ以外にはさしたる仕事を与えずに干した。
そして、長年システム開発業務から離れていた原告に対し、平成24年になって、十分な業務訓練やOJTもないままに、突然同業務を指示するなど、達成不可能な業務を指示した。
これらは、原告を退職させる目的の嫌がらせであり、かつ、あえて解雇理由を作出しようとしたものである。
(被告の主張)
以下のとおり、本件解雇は、客観的に合理的な理由があり、かつ、社会通念上も相当と認められるもので、有効である。
ア 原告は、被告への入社以来、システムエンジニアとしての業務や社内における定常的な資産管理業務に従事したものの、新入社員相当の業務すら十分に遂行することができないなど著しくその勤務成績は著しく不良であり、その人事考課等においても、ほとんどの期間において、最低ランクの評価を受けていた。
また、原告は上司からの度重なる注意、指導を真摯に受け止めることなく推移し、被告が与えた極めて初歩的な業務ないし課題についても完了することができなかったばかりか、リサイクルセンターでの業務を担当するよう指示されても、それを拒んだ。
このような中、被告は、平成25年1月、やむを得ず、原告に甲への在籍出向を命じ、被告社内におけるドキュメントセンター(印刷室)での事務作業を行わせたものの、原告は、その能力不足、勤務態度不良などの事情により、当該出向先から3週間足らずで出向終了を要請されるなどし、さらに、その後の出向要請をも拒むなどした。
以上のように、原告は、被告の格別の配慮にもかかわらず更なる出向を拒否する態度に終始したことから、被告は、本件解雇に至ったものである。
イ 被告が、原告に対し、退職させるための嫌がらせをしたとか、仕事を与えずに干したなどという点については、否認する。
また、解雇理由を作出する目的で、原告を突然システム開発業務に従事させたという点も否認する。
(2)  原告の賃金請求権の有無(争点2)
(原告の主張)
前記のとおり、本件解雇は無効であるから、原告は、被告に対し、民法536条2項により、平成26年2月分として18万4349円(同月分の日割分として3万4651円は既払)及び平成26年3月分以降毎月26日限り各21万9000円の賃金請求権を有する。
(被告の主張)
原告の賃金請求権の発生及びその額については否認ないし争う。
(3)  原告の賞与請求権の有無(争点3)
(原告の主張)
原告は、被告に対し賞与請求権を有する。被告においては毎年6月と12月に賞与が支給されるところ、本件解雇前の原告の各期の賞与は、23万2022円である。前記のとおり、本件解雇は無効であるから、原告は、被告に対し、民法536条2項により、平成26年6月末日から毎年6月末日及び12月末日限り各23万2022円の賞与請求権を有する。
(被告の主張)
原告が被告に対し、賞与請求権を有することは否認ないし争う。また、各期における原告の賞与の額は21万9000円である。
第3  当裁判所の判断
1  本判決確定後の賃金及び賞与請求に関する訴えの適法性について
原告は、本件訴えにおいて、被告に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることを前提に、本判決確定日以降にその請求権が発生するものも含めて、弁済期が未到来の賃金及び賞与並びにこれらに対する遅延損害金の支払を求める。
しかしながら、将来の給付を求める訴えは、あらかじめその請求をする必要がある場合に限り提起することができるとされているところ(民訴法135条)、本件全証拠を検討しても、原告が被告に対し労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する旨の判決が確定してもなお被告がその後に発生する賃金及び賞与を支払わないというべき特段の事情は窺われず、当該部分についてあらかじめその請求をする必要があるとは認められない。
したがって、本件訴えのうち、本判決確定日の翌日以降に発生する賃金及び賞与並びにこれらに対する遅延損害金の支払を求める部分は、不適法であるから、却下されるべきである。
2  争点1(本件解雇の有効性)について
(1)  認定事実
前提となる事実、証拠(証拠略)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実を認めることができる。
ア 原告の被告入社後、平成24年ころまでの経緯
(ア) 原告は、被告への入社に当たり、システムエンジニアの職を希望していたこともあり、被告は、原告の入社後、原告をシステム事業部に配属した。
(イ) しかし、被告は、平成2年ころから、原告をシステム事業部ではなく、間接部門(いわゆるバックオフィス)に配属するようになった。
(ウ) 被告は、職能資格制度を採用しており、入社一、二年目相当とされる1級職から始まり、概ね入社3年目相当とされる2級職、概ね入社5年目相当とされる「3級職」などを経て、主査(主任)を経て管理職へと昇級するものであるところ(最上級は7級職である〔人証略〕。)、原告は、入社16年目の平成9年4月時点でもいまだ3級職に止まっており、同月には2級職に降格された。
(エ) 被告は、平成10年9月ころ、原告との間で話し合いを持ち、その際、被告は、原告に対し退職勧奨を行ったが、これに対し、原告は、引き続き被告において勤務したい旨述べて、これを断った。原告は、同月10日付けで上司宛てに、「決意表明」と題する書面(以下「決意表明」という。)を提出した。同書面には、「仕事を進めていく上で、上司の要求しているものは何なのか正しく汲み取り、コミュニケーションを密にして明確な成果を出せるように取り組んでまいります。(中略)取り組みの結果、期待される成果が出せない場合は、自らの処置につき会社の判断に委ねます。期待される成果を出すことにより、会社が解雇などの処置を無効とし(注:原文そのまま)、双方におきまして最善の結果となるように、全力で業務に取り組みます。」などの記載がある(書証略)。
(オ) 被告は、平成10年9月中旬ころから約1か月間、原告の業務遂行能力を改めて測定する目的で、原告に7つの課題業務を出し、その達成度の調査を行った。これに対する原告の達成度は、平均で5点満点中の2.14点と極めて低いものに止まった。(書証略)
(カ) 原告は、平成10年11月から同年12月ころにかけて、被告の指示により、乙株式会社(以下、単に「乙」という。)における週1回の研修・コンサルテーションを受講した。乙の担当者作成にかかる原告に関する報告書によれば、原告の言動として、コミュニケーション能力に関する問いかけに対しても、原告は、上司にうまく取り入る人を滑稽だと思うと的外れな回答をし、会社に戻るにはコンピュータの資格を取るのが一番であり、人間性そのものは関係ない、資格を取れば会社に戻れるし、等級も給料も上がるなどと回答し(12月8日)、コンピュータ業界に詳しいコンサルタントが同席した際、原告は、同コンサルタントを睨むような形相を見せるなどしたなどと記載されている。原告の話を聞いた同コンサルタントは、原告について、話の内容にまとまりがなく、自分はプログラマーではなくSE(システムエンジニア)である旨述べるが、SEとして対人折衝ができるとは思えないなどと厳しい評価を下している(12月15日)。(書証略)
(キ) 被告は、平成11年4月、原告につき能力や勤務態度等に改善が見られなかったとして、原告を2級職から1級職に降級した。これに対し、原告は、格別異議を述べることはなかった。
(ク) 原告は、平成16年度ころから平成20年度にかけて、被告のアプリケーションサービスセンター(平成17年4月1日以降は「情報システム部」と呼称)のITガバナンスグループにおいて、社有の情報関連設備の管理等を担当した。
(ケ) この間、被告においては、原告に対し、被告社内のパソコン、サーバ等の機器やソフトウェアの管理業務等を行うリサイクルセンターでの業務を行うよう何度も求めた。同センターにおける業務は、被告社内で使用するパソコン、サーバ等の機器を不要になった部署から新しく必要とする部署に受渡しをしたり、破損、故障したパソコンを廃棄処分するなどの業務であったが、原告は、同センターでの業務を嫌い、同業務への従事を拒み続けた。(証拠略)
(コ) 原告は、社内の情報セキュリティ関連業務に従事したいという意向を有しており、また、自らには同業務を担当するだけの能力があるにもかかわらず、被告がやらせてくれないと不満を抱いていたが、上司らは、原告の勤務状況、勤務態度に照らし、同業務を担当させるのは無理であると考えていた。もっとも、原告の上司で情報システム部長であったC(以下「C」という。)は、平成21年度ころ、原告が情報セキュリティに関する専門知識を身につけることを期待して、情報セキュリティ関連業務を行う上で必要な国家資格を取得するよう勧め、原告は同資格試験を2度受験したが、いずれも不合格に終わり、同資格を取得することができなかった(書証略)。
なお、この頃、Cは、原告に対し、被告の情報システム部の事業管理グループにおいて、社内の業務知識を整理した資料・ガイドブックの作成等を指示しており、その一環として、情報セキュリティに関するガイドブックを作成するよう指示していたところ、原告は、その成果物をCの下に持参した。Cは、その成果物に記載されている内容につきさらに具体的な説明を求めたところ、原告は、同成果物に記載されている内容で十分であって、それについての説明をする必要はないなどと述べたことから、Cは、そのような原告の態度に対し、注意を与えた。(証拠略)
(サ) Cは、原告の最大の問題点が周囲とのコミュニケーション能力の欠如にあると考えたことから、被告は、平成22年度ころから、原告に対し、被告の情報システム部(平成23年7月1日以降は「業務サービス統括部」と呼称)における部内ホームページの更新作業を担当させることにした。
同作業の具体的な内容としては、毎週の朝礼で行われる管理職の訓示や、持ち回りで行われる従業員の3分間スピーチの内容の要旨をまとめ、まとめた要旨で問題がないかを当該スピーチをした者に確認した上、その要旨を部内のホームページに掲載するというものであり、このような業務を通じて、Cは、原告が情報システム部の各メンバーとのコミュニケーションの取り方を学ぶことを期待した。しかるに、原告は、当初、当該スピーチをした者のところに足を運んで確認するのではなく、メールを送って確認していたことから、Cは、そのようなやり方では原告のコミュニケーション能力の向上につながらないと考え、相手のところに行って直接話をすべきである旨述べて諭したところ、原告は、各社員のところに行って話をするようになったものの、今度は、各メンバーの間から、原告の話が要領を得ないとか、原告に怒鳴られたなどとして、苦情が出てくるようになった。このようなことから、やむを得ず、被告は、平成23年ころ、原告のホームページ更新作業を中止させた。なお、これらのホームページ更新作業については、いずれも半日程度もあれば完了するものであり、原告は、1週間のうちの残りの時間については、担当できる業務もないままに、無為に過ごしていた。
(以上、証拠略)
イ 平成24年以降本件解雇までの経緯
(ア) 平成24年5月ないし同年6月ころ、被告は、その業績が悪化したことから、間接部門に所属する40歳以上の全社員を対象として、早期退職者を募集した。被告は、原告に対し、上記早期退職者募集制度に応募するよう勧奨したが、原告は、引き続き被告において勤務したい旨の希望を述べた。
(イ) 原告が、システム開発関係業務を希望し、当時の自らに対する処遇に満足していなかったこともあり、被告は、平成24年6月下旬ころ、原告に対し、品質進捗データ分析システム(被告の社内の業務管理用システムである「ProcessDirector」の中に保存された顧客向けシステム開発の過程で生じたバグに関するデータを取り込み、当該データに係るグラフを表示するツール)の開発を指示した(証拠略。この点につき、原告は、間接部門におけるスタッフ職であり、システム開発関係業務を希望していなかったなどと主張するが、原告は、人事考課書面の「従事したい業務」欄に、「システム企画、設計、展開、新勤怠工数管理システム」などと記載していることなどに照らし〔書証略〕、採用することができない。)。
(ウ) この品質進捗データ分析システムの開発に当たり、被告は、原告に対し、同システムの開発に必要なプログラミング言語であるJAVAについての8日間の講習と、システム開発における品質管理についての2日間の講習を受講させた。また、被告は、同開発作業に当たり、原告に対し、定期的に原告から報告を受けることや、成果物のレビューを行うこと、質問がある場合の方法等についての取り決めを行うなどした
(書証略)。
同システムの開発スケジュールとしては、機能設計書作成、詳細設計書作成という工程を平成24年7月中に、製造単体テストという工程を同年8月中に、結合テスト、受入テストという最終工程を同年9月中に終える予定になっていたが(書証略)、原告は、同年8月中旬に至っても機能設計書の工程を終えることができなかったばかりか、同システムの使用はJAVAによる開発には不向きであるとか述べたり、同システムの開発自体の必要性に対し疑義を述べるなどの態度をみせるようになった。なお、機能仕様書の作成という過程は、JAVA等のプログラミング言語を必要とする過程ではない。(証拠略)
結局、被告は、原告による同システムの開発作業を打ち切ることを決定した(証拠略)。原告からは、同打ち切り後の平成24年8月28日に機能設計書として一応の成果物が提出されたものの、空白部分があり、完成した内容とはいえなかった(証拠略)。
(エ) 被告は、被告本社内のドキュメントセンター(印刷室。社内の各部署から依頼を受けて行う書類のコピー、スキャニング業務や、当該業務のために使用する複合機の管理業務を行う。)における業務を丙株式会社(以下「丙」という。)に委託しており、丙は、甲に同業務を再委託していたところ、被告は、原告に対し、平成25年1月8日、甲への在籍出向を命じ、上記ドキュメントセンターにおける業務を担当させることとした。なお、同在籍出向に当たり、甲の入社試験等は実施されていない(書証略)。
原告は、同月8日から同月11日までの4日間、甲社内において研修を受け、その後、ドキュメントセンターでの業務を開始したが、同月22日ころ、丙から、原告の勤務状況が不良であり、現場メンバーへの負荷が大きく、既に限界であるなどとして、その在籍出向を打ち切ってもらいたい旨の要請があったことから、被告は、原告に関する甲との出向契約を解除し、原告の甲への出向を打ち切った。
原告については、甲の担当者から研修時における原告の状況等に関する報告がされているところ、同報告の記載によれば、原告が、当該出向に対し不満を抱いていたり、前日の研修内容を全く覚えておらず、業務内容に対し関心を示す様子も窺われない、説明を一度では理解できないことから再度噛み砕いた説明をすると「まあ、それは分かっているんですけどね」と返して理解できないことをうやむやにしようとする、自分が嫌いな業務(複合機周りの清掃、パソコンへのスキャンなどの複雑な操作)については、「まぁ、こんなのはあまり無いんでしょうから」と決めつけるなどとされている。また、原告の性格傾向に関する記載として、自分の転勤先から仕事内容の変遷まで休み時間中話しているが、話の要点が最後まで分からず、何を話したいのか理解できない部分もある、マイペースで自分を曲げない部分が垣間見られる、基本的に人と関わることが苦手で、研修会場で複数の受講者がいることを知り顔をしかめていた、などとされている。さらに、原告は、「アドビ社」、「共有フォルダ」、「ファイル形式」などという用語を分からなかったともされている。(書証略)
また、丙が出向打ち切りを要請した際の報告に添付されたファイルには、出向中の原告の状況について、事細かに記載されているところ、「片面→両面&サイズ変更(A4→B5)のコピーができない」「基本的なコピー作業しかできない。(同一サイズ原稿の単純コピー)」「ミックスサイズ原稿など、ちょっと複雑な作業をさせると混乱してミスが発生し、手戻りが増えるので任せられない。」「検品の手順理解度が低い。」「検品方法を間違えた。」などとされ、原告の言動や、その性格傾向に関する記載としても、「思い込みで作業をする。」「失敗を目の前で指摘しても『完璧にやってる』と言い張り、実物を見せても分からない。」「ミスをしても自分が正しいと思い込んでいる。」「会話が整理されていなく、何を言おうとしているのか掴めないため、普通のコミュニケーションがとれない。」「独り言が多く、周囲に話かける(注:原文のまま)ような独り言が多い。」「毎回、自分の意見を主張するため、現場でのやり方を説得するのに時間を要する。」「成果物にちょっとした汚れがあっても『社内文書だからこれ位いいだろう』」「『なぜダブルチェックをするのか。1回で充分。非効率ではないか』といった主張が強く、標準手順を素直に受け入れない。」「研修を通じて、『なぜこのようなことに時間を取ってまで研修をするのか』との発言。」「ビジネスマナーに拒否反応。」「実機実習の復習を『十分学習したので』と拒否。実習=スキルアップのチャンスを拒否する例はまずありません。」などとされ、現場のメンバーの生の声として、「PC操作が苦手」「愚痴が多く、教え甲斐がない」「普通の人が1時間作業→ご本人作業+スタッフ確認・サポートで2時間掛かる」「OJTを行うスタッフは理解してもらえず徒労感、疲労困憊(女性スタッフいわく『幼稚園児に教えている様』どう説明すればいいのか?』」とされている。(書証略)
(オ) 被告は、上記甲への在籍出向を解除した後、原告を業務サービス統括部に復帰させ、人事総務部の業務で使用されていた宛名印字ツールの分析作業を行わせた。これは、人事総務部を社内クライアントとして、業務サービス統括部が上記作業を受託するものであり、同部の主担当者を原告、人事総務部側の窓口をD人事部エキスパート(以下「D」という。)とするものであり、宛名印字ツールとは、従前、人事総務部の非技術職の職員がデータベースソフト(マイクロソフト・アクセス)を用いて制作した簡単なツールであった。しかるに、原告は、この作業中に、Dとの間で意思の疎通を欠くようになるなどし、結局、この業務も中途で頓挫することとなった(証拠略)。
(カ) 被告は、平成25年6月ころ、再度、原告を在籍出向させることとし、産業雇用安定センターに対し、原告の出向先の紹介を依頼するとともに、原告に対し、上記方針を伝えた上で、同センターに「自己紹介書」「職務経歴書」等の必要書類を提出するよう指示したが、原告は、被告での勤務を希望するなどと述べて、事実上これを拒否した。その後、被告は、原告の希望を容れて、労働組合の委員長も同席の上で、少なくとも2回にわたり原告との面談をもち、在籍出向に応じるよう説得を重ねたが、原告が翻意することはなかった(なお、後記本件解雇予告後、本件解雇までの間も、原告が同出向に応じる姿勢をみせることはなかった。)。
(キ) そこで、被告は、平成25年8月5日、原告に対し、平成26年2月5日をもって原告を解雇する旨の解雇予告(本件解雇予告)を行い(書証略)、同日、原告を解雇した(本件解雇)。
ウ 原告の人事考課、賞与考課
(ア) 被告においては、平成16年度以降、各年度ごとに、上位から「A」「B」「C」「D」の4段階の評価ランクで従業員の人事考課を行っているところ、原告につき、2004年(平成16年)度の総合評価は「B」(要件の大半を達成)であったものの、2005年(平成17年)度は「C」(要件の一部を達成)、2006年(平成18年)度から2011年(平成23年)度にかけて連続して最低ランクの評価である「D」(要件を未達成)であった。
同人事考課に関する書面(「~年度自己申告」と表題にある書面書証略)における上司のコメントとしては、「現業務は遂行しているが、新業務への取り組み姿勢が見受けられず、積極性が欠けている。」「業務を変えて、様子を見るが、改善なきときは、異動を検討したい。」(2004年度)、「新たな仕事を受け入れず。」(2005年度から2009年度)、「現状の業務にリサイクルセンター業務を追加したいが自分のやるべき業務ではないと担当せず。」(2005年度)、「依頼したことも積極的にやらないし、嫌な仕事はしない。仕事へのやる気が見受けられない。」(2007年度及び2008年度)、「他者とのコミュニケーションが全くできず、自分自身の実力を全く客観的に評価できていない。退職を含めた人事的対応が必要。」(2009年度)、「仕事の意味づけができて居らず、何のためにその仕事をしているのかについて全く考えていない。形式だけ整えれば良いというものではないことに気づかないと成長はしない。」「他の人の言うことを理解しようという姿勢が無く、独りよがりとなっていて改善が見込めない。転職など自分に合う職業を考えた方が自分自身のためになるのではないか。」(2010年度)、「自らが貢献していないことに気づいていない。」「現行の業務は半日程度(1週間の)で終わるレベル。自ら業務を拡大する努力を促しているが行っていない。これ以上の降格は望めない(降格させる職級が無い)。」(2011年)というものであった。
(以上、書証略)
(イ) また、被告においては、前記人事考課に関する書面のうち、末尾に記載する「今後のキャリアプランへの支援策」欄の上司のコメントを、その評価ランクとともに、考課対象者に開示(フィードバック)することとなっていた(書証略)。同書面における原告に対する上司のコメントとしては、「グループへの貢献に努力してほしい。業務を選ばず、前向きに取り組んでほしい。」(2004年度)、「IT資産管理グループメンバ(注:原文のまま)として、必要な業務を担うべき。今後継続して指導していく。」(2005年度)、「IT資産管理グループとして、必要な業務を前向きに担うこと。」(2006年度及び2007年度。2008年度もほぼ同じ)、「どんな仕事でもやるぐらいの気概で取り組まないと仕事を与えられることはない。その覚悟をしてもらいたい。」(2009年度)、「上司、先輩、同僚を含め、相手が言わんとしているところを正しく理解し、その意見に反応しないと独善的な行動となり、チームで仕事をする当社のような環境においては、成長できないし、仕事の幅も広がらない。他人の意見を真摯に聞くという努力をしてもらいたい。形式的、表面的な理解では、相手の本音は分からず、コミュニケーションが活発になっていくことはないと言うことを理解すること。」(2010年度)、「大きな声で部員と挨拶を行うなど基本的なコミュニケーションを取れるようにして欲しい。部員と色々と話をすることにより、意思疎通が生まれてくる。業務については、与えられるのを待つのではなく自らが出来ることを示し、積極的に獲得していって欲しい。」(2011年度)とされている。なお、2012年度については、コメントは記載されていない。
(書証略)
(ウ) 被告においては、平成16年度以降、各年度上期と下期ごとに、上位から「S」「A」「B」「C」「D」の5段階の評価ランクで従業員の賞与考課を行っているところ、上司評価欄の「貢献度」は2004年度下期及び2005年度上期がそれぞれ「C」、2005年度下期から2012年度下期まではいずれも最低ランクの「D」であった(ただし、2010年度下期については未記入)。
同賞与考課に関する書面(「~年度下期マイ・コミットメント」と題する書面書証略)における上司のコメントの抜粋としては、「IT資産管理における改善計画書は具体的内容となっておらず、成果は不十分。…リサイクルセンターを担当して欲しいが、本人希望に合わず、作業せず。」(2005年度上期)、「再度リサイクルセンターを担当するように依頼したが、本人希望に合わず、作業せず。」(同年度下期。なお、原告がリサイクルセンター業務を行わないという趣旨の同様の記載は、2006年度下期から2008年度下期の間のいずれの期にも存在する。)、「日常業務(移管処理)において、費用処理との関連でタイムリーな処理が必要であるが問題意識が欠如している。」(2005年度下期)、「数値データの集計を実施したが、作業品質が悪い。また、業務遂行に積極性が欠ける。」(2006年度上期。なお、業務遂行に積極性が欠けるとか、前向きな対応も見受けられないなどの趣旨の記載は、2006年度上期以降2007年度下期までのいずれの期にも存在する。)、「資格があれば仕事が出来ると思うのは間違いであると言うことは面接で説明したとおり。…思い込みだけでは仕事はできないのでチームとして何かをしようと言うことを検討して下さい。」(2009年度下期)、「コミュニケーションの向上を図る目的で作業アサインしたが、形式的に作業しているだけで作業だけ見れば順調に見えるが、目的を達成する方向にはなっていない。また、上記目的のため作業量そのものはとても少ないので総合的には貢献度は大変低いと言わざるを得ない。」(2010年度上期)、「目標設定も出来ず、元々要請されている作業の目的も理解できず単なる作業者となっている。」(2011年度上期)、「ルールに沿ったマイコミ運営を行って欲しい。上記作業では空き時間が発生するので、部内の計画Gとコミュニケーションを取り、計画Gの業務を任せられるように成長して欲しいと伝えているが、達成されず。…よって貢献度Dと判定した。」(2011年度下期)、「HP更新は、1級の業務レベルではない事と、これを足がかりに業務拡大することを依頼しているが、逆に業務中止となった。コミュニケーションが取れず、関係者と争いを起こした為。システム開発は、WBSも完成できず中止となった。何度もレビューを行ない指導をしたが改善されなかった。」(2012年度上期)、「人事総務部の部内ツールの分析業務を任せたが、依頼元との基本的なコミュニケーションがとれず、作業開始直後の作業範囲や作業見本についてのレビューが完了していない。また、日報の記入内容について指導しているが改善が出来ていない。報連相も出来ていないので業務を任せることが難しいレベルである。」(2012年度下期)などとされている。なお、これらの上司のコメントについては、前記(イ)の人事考課と同様に、原告に対し、フィードバックがなされている。(以上、書証略)
(エ) 平成15年度以前については、前記(ア)の評価制度とは異なっており、かつ、詳細な記録は残されていないものの、被告の社内記録によれば、平成5年度以降、原告の人事考課及び賞与考課のいずれについても、そのほとんどの年度において最低ランク又はそれに近い評価がなされている(書証略)。
(オ) 原告は、上司との面談の場などにおいて、自らの処遇について不満を述べることはあっても、人事考課、賞与考課において低い評価がされている理由を問い質したり、フィードバックされた内容につき異議を述べることなどはなかった(人証略)。なお、原告に対する業績レビューの面談については、通常、30分から60分程度かけて行われていた(人証略)。
(2)  認定事実に基づく判断
ア 以上のとおり、原告は、被告に入社して以来極めて低い勤務評定を受け続け、平成10年9月には退職勧奨を受け、自らの欠点を踏まえて明確な成果を出せるよう取り組む旨の決意表明を提出し、平成11年4月には新入社員相当の資格等級である1級職にまで降級された。このように、原告の勤務成績は著しく不良であったと認められ、奮起を促されて決意表明を提出し、その後も上司の指導を受け、いくつもの業務を指示されたものの、そのうちの多くの業務について完遂することができないなど、その勤務成績は向上せず、従事を指示されたリサイクルセンターでの業務についても拒否するなど、その勤務態度も不良であったものである。このような中、被告は、原告を甲に在籍出向させる形で被告社内の印刷業務を行わせようとしたものの、そこでの勤務状況も不良であったことから同出向先から出向解除を要請され、その後産業雇用安定センターへの在籍出向をも原告が拒んだことから、やむなく原告を解雇したものと認められる。
このように、原告の勤務成績の著しい不良は長年にわたるものであり、その程度は深刻であるばかりか、その勤務態度等に鑑みると、もはや改善、向上の見込みがないと評価されてもやむを得ないものである。被告は、かような原告に対し、人事考課、賞与考課のフィードバック等を通じて注意喚起を続け、かつ、在籍出向を命じるなどして解雇を回避すべく対応しているものであって、手続面でも格別問題のない対応をしていると認められる。このような点に鑑みれば、本件解雇は、客観的に合理的な理由を有し、社会通念上相当と認められるものであって、有効と認められる。
イ これに対し、原告は、本件解雇は解雇権の濫用に当たるもので無効であると主張するが、以下のとおり、いずれも理由がない。
(ア) まず、原告は、平成15年度ころまでは、自らが希望した業務を受け入れてもらい、上司からも評価してもらっていたが、平成16年度以降、原告の希望はことごとく無視されるようになったもので、同時点以降の上司が不当に低い評価をした旨主張する。
しかしながら、前記認定のとおり、原告については、社内記録が残されている平成5年度以降をみても、そのほとんどの年度において最低ランク又はそれに近い評価がなされているところ(前記(1)ウ)、このような評価は、原告が入社16年を経ても3級職に止まっていたのみならず、平成9年4月には2級職に(前記(1)ア(ウ))、平成11年4月には入社1、2年目に相当する1級職にそれぞれ降級されていることや(前記(1)ア(キ))、平成10年には退職勧奨をされ、それを断った際、原告自身が、仕事を進めていく上で、上司の要求しているものを正しく汲み取り、コミュニケーションを密にして成果を出せるよう取り組む旨述べ、期待された結果を出せない場合には、自らの処置を被告の判断に委ねる旨記載した決意表明を提出していること(前記(1)ア(エ))などからも、合理的なものであったと認められる。このように、平成16年度以前は、原告が上司から良い評価を受けていたという主張は、事実と異なるものであって、採用することができない。原告は、当時従事していた業務に関する資料や成果物等(書証略)を提出して、自らの勤務成績が良好であった旨主張し、かつ、同主張に沿う供述をするが(人証略)、いずれの証拠資料も、原告の主張を裏付けるに足りるものではない(例えば、甲13のプログラム仕様書〔略〕については、あくまで原告自身の検討段階のものにすぎず〔人証略〕、その内容も証拠上何ら明確ではないし、甲17のメール〔略〕も、自身を宛先にした自らのメモ的なもので〔人証略〕、他のメンバーとコミュニケーションを取っていたという証拠ですらない。甲18ないし20の資料〔略〕についても、これらの業務に原告が関与していたことの一応の証拠にはなり得ても、それ以上に、原告が適切に同業務を行っていたことを格別裏付けるものではない。)。
(イ) 原告は、平成10年11月から同年12月にかけて乙における研修とは、研修の名を冠しただけのいわゆる追い出し部屋であると主張するが、本件全証拠によってもそのような事実を認めるには足りない。原告は、机と椅子だけが置かれた1畳もない個室で過ごすように命じられ、実のある研修も行われなかったなどと主張するが、部屋の状況のみから直ちに追い出し部屋であると認めることはできないし、前記(1)ア(カ)認定のとおり、コミュニケーション能力等に関する研修が行われていたと認められるものであって、原告の主張は採用できない。また、被告が企業として経済的な出捐をして研修を受けさせる形を取っている以上、仮に、原告が主張するようにこれが退職強要の一環であったとするならば、頻度として週1回、期間として一、二か月(前記(1)ア(カ))というのはいささか意味がないといえるものであって、この意味で、原告の主張は的を射ていないという他はない。
(ウ) 原告は、原告の勤務成績不良、勤務態度不良の事実は、何ら客観的に裏付けられていないと主張する。
しかしながら、前記(1)で詳細に認定した事実のとおり、原告の基本的な能力不足やコミュニケーション能力の致命的な欠如については、原告の人事考課、賞与考課の各書面の記載のみならず(前記(1)ウ)、具体的な出来事、すなわち、前記(1)ア(コ)の情報セキュリティのガイドブックに関するエピソード、同(サ)の部内ホームページ更新作業をめぐる他のメンバーとのトラブル、(1)イ(ウ)の品質進捗データ分析システムの開発作業の頓挫、同(エ)の甲における原告の言動及びそれに対する同社担当者の評価などを含めた一連の事実によって、十分に裏付けられているということができ、その勤務成績が著しく不良であったことは客観的に明らかということができる。
また、勤務態度の点についても、原告は、前記認定のとおり、平成16年度ころから被告のリサイクルセンターでの業務を行うよう、再三にわたって求められていたにもかかわらずこれを拒み続け(前記(1)ア(ケ))、甲への出向については了解したものの、産業雇用安定センターを通じた出向については、これを事実上拒絶した(前記(1)イ(カ))。また、勤務成績不良に関して説示した上記の各事情についてみても、情報セキュリティガイドブックの制作、部内ホームページ更新作業、品質進捗データ分析システムの開発作業、宛名印字ツールの分析作業等、いずれも、原告の課題や能力に応じ、あえて原告のためにあてがった業務としての側面があることは否定できないところ(もとより、さほど必要性の高い業務であったとは思われないし、必要性があるとしても、割り振ることができれば誰に割り振っても良い業務であることが窺われる。上司からみれば、原告に対するサポートが必要になることからして、他の従業員に命じた方が手間が掛からなかったとも推察される。)、原告は、これに応えることができず、かえって不平を述べたり言い訳をしたりしていたものであって(前記(1)ア(コ)、同イ(ウ))、このような点に照らすと、原告の努力不足は著しいといわざるを得ず、その勤務態度は真摯さを欠き、不良であったということができる。
そもそも、原告は、異動により部署を変え、上司が入れ替わってきたにもかかわらず、そのほとんどの時期において最低ランク又はそれに近い評価を受け続けてきたものであって、そのこと自体が勤務成績、態度の不良を裏付けるというべきであるところ、それを覆すだけの事情(例えば、継続的に、不当に低い評価をされ続けるべき動機の存在など)は、本件証拠上何ら認められない。むしろ、被告社内のみならず、乙や甲などの外部業者からも能力面、態度面双方にわたって極めて厳しい評価がなされている(前記(1)ア(カ)、イ(エ))。原告は、乙も、甲も、被告の意を受けて解雇理由を作出する目的で原告に対し不当な評価をしたという趣旨の主張をするが、乙での研修が追い出し部屋といえないことについては前記(イ)で説示したとおりであるし、甲についても、その報告として、原告の言動や態度等に関し、詳細かつ具体的な記載をした上で厳しい評価を下しているものであって、およそ事実に反した不当なものとは認められない。これらの業者らによる原告の行動、態度に関する詳細な記載内容は、原告に関する被告の人事考課書面や賞与考課書面の各記載内容とも概ね整合するもので、互いにそれらの信用性を補完しあうものということができる。
また、原告は、平成16年度(2004年度)の評価として比較的良好な評価がされていること(人事考課において「B」、賞与考課において上期、下期とも「C」)を強調するが、この時期は、リサイクルセンターでの業務を行うことを求め始めた時期に当たることから、原告の態度の変化や努力を期待して様子を見ていたとも思われるのであって、この点をもって、原告の勤務成績、態度が不良でなかったと推認するのは相当でない。現に、同じ上司(J)であるにもかかわらず、人事考課については、平成18年度(2006年度)以降継続して「D」、賞与考課についても、平成17年度(2005年度)下期以降継続して「D」とされているのであって、C以降の原告の上司が不当な評価をした旨の、原告の批判は当たらない。
さらに、原告は、数値データの集計と記録業務に関し功績賞をもらったことがあるとも供述するが(人証略)、何らの裏付けもないものであって、採用することはできない(原告は、2007年度と2008年度の各人事考課書面〔書証略〕の表現のわずかな違い〔「達成度指標」の「責任性」欄参照〕を捉えて、原告が功績賞を受賞したことから、原告の集計分析業務を非難できなかった証左であると主張するが、根拠に乏しいといわざるを得ない。)。
原告は、人事考課書面等におけるコメントが抽象的であると主張するが、当然のことながら、人事考課書面等におけるコメントは、考課対象者の課題や問題点を凝縮した簡略な記載になっているもので、ある程度抽象化された内容になるのは避けられないし、実際には、面談の場で上司による口頭での補足や、質疑応答がなされていたものであるから(原告も業績レビューの面談につき、通常30分から60分程度かけて行われていた旨認めている。前記(1)ウ(オ)参照)、上記の原告の批判は当たらない。むしろ、原告らの上司による原告に対するフィードバックの文言は、年を追うにつれてその厳しさを増しているものであるところ(前記(1)ウ(イ)(ウ)参照)、これには原告の奮起を促す目的もあったものと推認されるが、これに対しても、原告は何らの具体的な反論もしない上に疑問も呈しなかったものであって(証拠略)、このような点は、原告の向上意欲の乏しさを示すとともに、上記人事考課の内容の相当性を示すものであるということができる。
さらに、原告は、原告が職能等級において最下級(1級職)に属し、賃金も高額でない以上、その能力不足の程度もそのような等級にあることを前提に考えるべきであるとも主張するが、約30年間も被告に勤続してなおも1級職に属することが極めて異例であり、職場全体の士気、モチベーションという観点からも、新卒で1級職にある職員とは全く意味合いが異なるというべきであるから、この点に関する原告の主張も、採用することができない。
以上のとおり、勤務成績不良、勤務態度不良の事実が客観的に裏付けられていない旨の原告の主張については、これを採用することができない。
(エ) 上記(ウ)に関連して、原告は、物理的にハードディスクを破壊するリサイクルセンターでの業務は、原告に対する嫌がらせであると主張するが、そのようなハードディスクを破壊する業務といえども、被告社内において必要性のある業務であって、業務内容に照らしそれを直ちに嫌がらせと決めつけることはできないし、既に認定したとおり、同センターでの業務は、(上記のような破壊業務だけでなく)広く被告社内のパソコン、サーバ等の機器やソフトウェアの管理業務等を行う業務であると認められるから(前記(1)ア(ケ))、原告の上記主張を採用することはできない。確かに、同センターでの業務は、システムエンジニア等のいわゆる被告における花形業務と比較して、地味で好ましい印象を与えないのはCも証言するとおりであるが(人証略)、原告の主張は、原告がそのように仕事を選り好みできる状況になかったという現状認識が欠けている上、意に染まない業務を行わないという原告の自分本位の姿勢を如実に表すものとして、失当といわざるを得ない(原告は、リサイクルセンターでの業務内容につき、単にハードディスクを物理的に破壊する業務であると誤解しており、被告からもその業務内容について正確な説明がなかった旨主張するが、被告から業務内容につき説明があったか否かはともかく、原告がその業務内容を把握していなかったとは考え難く、にわかに信用し難い。)。
原告は、なおも、被告がリサイクルセンターでの業務に従事するよう求めつつも、それを業務命令としては命じられなかったことをもって、それが嫌がらせ目的に出たものであることを示しているなどとも主張するが、業務命令を発しなかったことをもって嫌がらせ目的と断ずること自体根拠がないというべきであるし、現に、専任で同センターでの業務を担当していた職員がいること自体からしても、そのような嫌がらせ目的は否定されるというべきである(原告も、同職員をリサイクルセンターで勤務させていることまでを嫌がらせと言っているわけではないと思われる。)。
(オ) また、原告は、具体的に計画グループへの関与を求め、会議等への参加を積極的に希望するなど、原告が仕事を求めていたにもかかわらず、ホームページ更新作業程度の業務しか与えないなど、仕事を与えなかったものであることからも、被告が、原告に改善、教育の機会を与えず、意図的に原告を干していたことは明らかである旨主張する。しかしながら、従業員の特性、能力等に応じてどのような業務を割り振るかについては、基本的に使用者の専権に属するのは当然であるところ、前記のとおり、原告は、長年にわたって最低ランクの評価がされ、そのコミュニケーション能力の欠如という点から他のメンバーと共同して行う業務に従事させることはできないと目されていたものであって、前記認定事実からも認められる原告の業務の遂行ぶりからすれば、被告がそのように判断することが不当とは認められない。また、被告としては、そのような観点から、平成16年ころから、原告に対しリサイクルセンターでの業務に従事するよう求めていたものであるが、原告はこれを拒んだのであるから、そのような中で、原告に与えることのできる業務が減少するのはやむを得ないというべきである。もっとも、そのような中でも、被告は、原告に対し、平成21年度ころから部内ホームページの更新作業を、平成24年6月ころからは品質進捗データ分析システムの開発作業、平成25年には宛名印字ツールの分析作業に従事させるなど、OJTを通じて原告の能力を伸張させる試みを行ってきたが、原告は、他のメンバーとトラブルを起こしたり、不平を述べるなどしていずれも頓挫させたものである。会議に出席する機会が与えられなかったという点についても、会議に出席するのは、あくまで業務にアサインされた者であることが前提であるから、原告の主張は本末転倒といわざるを得ない。
原告は、なおも改善、教育の機会が与えられなかった旨主張するが、既にみたように十分にかような機会を与えられてきたというべきであるし、入社して30年近くが経過し、十分に分別があってしかるべき立場にあるはずの原告に対し、被告が行ってきたOJTや研修以上に教育の機会を与える必要があったとは認められない。原告は、人事考課書面等におけるコメントが抽象的でいかなる面をどのように改善すべきか読み取ることができないなどとして、改善、教育の機会が与えられていないとも主張するが、前記説示のとおり、実際には、面談の場で上司による口頭での補足や、質疑応答がなされており(前記(1)ウ(オ))、さらに、職場でのOJTの中でも指導がされていると推認するのが相当であるから、この点に関する原告の主張も失当である。
したがって、被告が、原告に改善教育の機会を与えず、意図的に原告を干してきた旨の主張については、採用することができない。
(カ) 原告は、平成24年の品質進捗データ分析システムの開発作業に関し、長年、原告が間接部門で勤務しており、プログラムの開発事業から離れており、同作業に用いるプログラム言語であるJAVAに原告が習熟していないことを承知していたにもかかわらず、解雇理由を作出する目的で、あえて期間内で達成不可能な業務を命じたと主張する。
しかしながら、原告がシステムエンジニアとしての仕事を希望していたことは前記(1)イ(イ)認定のとおりである上、原告は、(後記説示のとおり、その能力不足から、)当時やむなく間接部門に配属されてはいたものの、社内で使用するシステム、IT機器類の管理などを担当する業務サービス統括部に所属し、部内ホームページの更新作業にも従事しており、システム開発業務と無縁の領域に属していたものではないし、被告が、同開発作業を原告に命じるに当たり、JAVAについての8日間の講習を受講させるのみならず、定期的に原告から報告を受けることや、成果物のレビューを行うこと、質問がある場合の方法等についての取り決めを行うなど、手厚い態勢を敷いていると認められるから(前記(1)イ(ウ))、これを解雇理由を作出する目的であったと決めつけるのは、合理的な根拠がない。そもそも、前記認定のとおり、原告が頓挫した機能仕様書の作成という過程は、同開発作業の最も初期段階の過程であり、しかも、プログラム言語を必要としない過程であるから、原告がJAVAに習熟しておらず、十分に同言語についての研修の機会を与えられなかったことを理由とするのは、的外れといわざるを得ない。
(キ) 原告は、採用以来約30年間にわたり、懲戒処分等を受けることもなく勤続してきたにもかかわらず、突然本件解雇を強行した旨主張するが、既に認定した事実及びそれを前提とする説示内容に照らすと、原告が長年問題なく勤務してきたと認めることは到底できないし、被告としても、原告に対し、その勤務成績が著しく不良であることを感銘付ける努力を行っていると認められるから、その解雇に至る手続面でも問題があるとは認められない。
(大企業であるが故に対応できたという面もあろうが、)むしろ、被告は、原告が対応できそうな業務をあてがい、可能な限りの改善、教育を行い、その向上を期してきたにもかかわらず、原告は、その能力不足、勤務態度の不良さ故に向上できなかったものであり、被告が、在籍出向等可能な限りの解雇回避措置を尽くしたにもかかわらず、その甲斐なく解雇に至ったというのが本件の実情であると認められる。原告は、被告の対応につきことごとく嫌がらせである旨主張するが、既にみたようにいずれも嫌がらせであるとは認められず、むしろ、被告は、原告に対し、容易にクリアーできるレベルのオーダーをしてきたということができる。しかるに、そのような被告のオーダーに対し、結果を出すことができず、一段上へのステップに進むことができなかった原告の対応こそが、その著しい能力不足、勤務態度の不良を裏付けているというべきである。
第4  結論
以上のとおり、本件訴えのうち、原告が被告に対し、本判決確定後の賃金及び賞与等の支払を求める部分については不適法であるから却下されるべきであり、その余の請求については、争点2、3につき判断するまでもなく理由がないから、これを棄却することとして、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第19部
(裁判官 西村康一郎)
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