【営業代行から学ぶ判例】crps 裁判例 lgbt 裁判例 nda 裁判例 nhk 裁判例 nhk 受信料 裁判例 pl法 裁判例 pta 裁判例 ptsd 裁判例 アメリカ 裁判例 検索 オーバーローン 財産分与 裁判例 クレーマー 裁判例 クレプトマニア 裁判例 サブリース 裁判例 ストーカー 裁判例 セクシャルハラスメント 裁判例 せクハラ 裁判例 タイムカード 裁判例 タイムスタンプ 裁判例 ドライブレコーダー 裁判例 ノンオペレーションチャージ 裁判例 ハーグ条約 裁判例 バイトテロ 裁判例 パタハラ 裁判例 パブリシティ権 裁判例 ハラスメント 裁判例 パワーハラスメント 裁判例 パワハラ 裁判例 ファクタリング 裁判例 プライバシー 裁判例 プライバシーの侵害 裁判例 プライバシー権 裁判例 ブラックバイト 裁判例 ベネッセ 裁判例 ベルシステム24 裁判例 マタニティハラスメント 裁判例 マタハラ 裁判例 マンション 騒音 裁判例 メンタルヘルス 裁判例 モラハラ 裁判例 モラルハラスメント 裁判例 リストラ 裁判例 リツイート 名誉毀損 裁判例 リフォーム 裁判例 遺言 解釈 裁判例 遺言 裁判例 遺言書 裁判例 遺言能力 裁判例 引き抜き 裁判例 営業秘密 裁判例 応召義務 裁判例 応用美術 裁判例 横浜地裁 裁判例 過失割合 裁判例 過労死 裁判例 介護事故 裁判例 会社法 裁判例 解雇 裁判例 外国人労働者 裁判例 学校 裁判例 学校教育法施行規則第48条 裁判例 学校事故 裁判例 環境権 裁判例 管理監督者 裁判例 器物損壊 裁判例 基本的人権 裁判例 寄与分 裁判例 偽装請負 裁判例 逆パワハラ 裁判例 休業損害 裁判例 休憩時間 裁判例 競業避止義務 裁判例 教育を受ける権利 裁判例 脅迫 裁判例 業務上横領 裁判例 近隣トラブル 裁判例 契約締結上の過失 裁判例 原状回復 裁判例 固定残業代 裁判例 雇い止め 裁判例 雇止め 裁判例 交通事故 過失割合 裁判例 交通事故 裁判例 交通事故 裁判例 検索 公共の福祉 裁判例 公序良俗違反 裁判例 公図 裁判例 厚生労働省 パワハラ 裁判例 行政訴訟 裁判例 行政法 裁判例 降格 裁判例 合併 裁判例 婚約破棄 裁判例 裁判員制度 裁判例 裁判所 知的財産 裁判例 裁判例 データ 裁判例 データベース 裁判例 データベース 無料 裁判例 とは 裁判例 とは 判例 裁判例 ニュース 裁判例 レポート 裁判例 安全配慮義務 裁判例 意味 裁判例 引用 裁判例 引用の仕方 裁判例 引用方法 裁判例 英語 裁判例 英語で 裁判例 英訳 裁判例 閲覧 裁判例 学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例 共有物分割 裁判例 刑事事件 裁判例 刑法 裁判例 憲法 裁判例 検査 裁判例 検索 裁判例 検索方法 裁判例 公開 裁判例 公知の事実 裁判例 広島 裁判例 国際私法 裁判例 最高裁 裁判例 最高裁判所 裁判例 最新 裁判例 裁判所 裁判例 雑誌 裁判例 事件番号 裁判例 射程 裁判例 書き方 裁判例 書籍 裁判例 商標 裁判例 消費税 裁判例 証拠説明書 裁判例 証拠提出 裁判例 情報 裁判例 全文 裁判例 速報 裁判例 探し方 裁判例 知財 裁判例 調べ方 裁判例 調査 裁判例 定義 裁判例 東京地裁 裁判例 同一労働同一賃金 裁判例 特許 裁判例 読み方 裁判例 入手方法 裁判例 判決 違い 裁判例 判決文 裁判例 判例 裁判例 判例 違い 裁判例 百選 裁判例 表記 裁判例 別紙 裁判例 本 裁判例 面白い 裁判例 労働 裁判例・学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例・審判例からみた 特別受益・寄与分 裁判例からみる消費税法 裁判例とは 裁量労働制 裁判例 財産分与 裁判例 産業医 裁判例 残業代未払い 裁判例 試用期間 解雇 裁判例 持ち帰り残業 裁判例 自己決定権 裁判例 自転車事故 裁判例 自由権 裁判例 手待ち時間 裁判例 受動喫煙 裁判例 重過失 裁判例 商法512条 裁判例 証拠説明書 記載例 裁判例 証拠説明書 裁判例 引用 情報公開 裁判例 職員会議 裁判例 振り込め詐欺 裁判例 身元保証 裁判例 人権侵害 裁判例 人種差別撤廃条約 裁判例 整理解雇 裁判例 生活保護 裁判例 生存権 裁判例 生命保険 裁判例 盛岡地裁 裁判例 製造物責任 裁判例 製造物責任法 裁判例 請負 裁判例 税務大学校 裁判例 接見交通権 裁判例 先使用権 裁判例 租税 裁判例 租税法 裁判例 相続 裁判例 相続税 裁判例 相続放棄 裁判例 騒音 裁判例 尊厳死 裁判例 損害賠償請求 裁判例 体罰 裁判例 退職勧奨 違法 裁判例 退職勧奨 裁判例 退職強要 裁判例 退職金 裁判例 大阪高裁 裁判例 大阪地裁 裁判例 大阪地方裁判所 裁判例 大麻 裁判例 第一法規 裁判例 男女差別 裁判例 男女差别 裁判例 知財高裁 裁判例 知的財産 裁判例 知的財産権 裁判例 中絶 慰謝料 裁判例 著作権 裁判例 長時間労働 裁判例 追突 裁判例 通勤災害 裁判例 通信の秘密 裁判例 貞操権 慰謝料 裁判例 転勤 裁判例 転籍 裁判例 電子契約 裁判例 電子署名 裁判例 同性婚 裁判例 独占禁止法 裁判例 内縁 裁判例 内定取り消し 裁判例 内定取消 裁判例 内部統制システム 裁判例 二次創作 裁判例 日本郵便 裁判例 熱中症 裁判例 能力不足 解雇 裁判例 脳死 裁判例 脳脊髄液減少症 裁判例 派遣 裁判例 判決 裁判例 違い 判決 判例 裁判例 判例 と 裁判例 判例 裁判例 とは 判例 裁判例 違い 秘密保持契約 裁判例 秘密録音 裁判例 非接触事故 裁判例 美容整形 裁判例 表現の自由 裁判例 表明保証 裁判例 評価損 裁判例 不正競争防止法 営業秘密 裁判例 不正競争防止法 裁判例 不貞 慰謝料 裁判例 不貞行為 慰謝料 裁判例 不貞行為 裁判例 不当解雇 裁判例 不動産 裁判例 浮気 慰謝料 裁判例 副業 裁判例 副業禁止 裁判例 分掌変更 裁判例 文書提出命令 裁判例 平和的生存権 裁判例 別居期間 裁判例 変形労働時間制 裁判例 弁護士会照会 裁判例 法の下の平等 裁判例 法人格否認の法理 裁判例 法務省 裁判例 忘れられる権利 裁判例 枕営業 裁判例 未払い残業代 裁判例 民事事件 裁判例 民事信託 裁判例 民事訴訟 裁判例 民泊 裁判例 民法 裁判例 無期転換 裁判例 無断欠勤 解雇 裁判例 名ばかり管理職 裁判例 名義株 裁判例 名古屋高裁 裁判例 名誉棄損 裁判例 名誉毀損 裁判例 免責不許可 裁判例 面会交流 裁判例 約款 裁判例 有給休暇 裁判例 有責配偶者 裁判例 予防接種 裁判例 離婚 裁判例 立ち退き料 裁判例 立退料 裁判例 類推解釈 裁判例 類推解釈の禁止 裁判例 礼金 裁判例 労災 裁判例 労災事故 裁判例 労働基準法 裁判例 労働基準法違反 裁判例 労働契約法20条 裁判例 労働裁判 裁判例 労働時間 裁判例 労働者性 裁判例 労働法 裁判例 和解 裁判例

「営業支援」に関する裁判例(128)平成19年 3月29日 東京地裁 平14(ワ)20737号 配転無効確認等請求事件 〔東日本電信電話ほか事件〕

「営業支援」に関する裁判例(128)平成19年 3月29日 東京地裁 平14(ワ)20737号 配転無効確認等請求事件 〔東日本電信電話ほか事件〕

裁判年月日  平成19年 3月29日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平14(ワ)20737号
事件名  配転無効確認等請求事件 〔東日本電信電話ほか事件〕
裁判結果  請求棄却  文献番号  2007WLJPCA03298005

要旨
◆入社後、地方で電話案内係や技術職等として長年職務に従事していた原告らを首都圏での営業職に配転する命令の効力が争われた事案につき、勤務地限定や職種限定の合意や労使慣行は認められないし、将来的な経営方針に照らして、原告らが従事していた業務を子会社にすべて外注委託化した上、原告らに子会社への転籍を含む選択肢を提示することには合理性・必要性が認められるから、継続しての在籍を選んだ原告らが配転の対象となることはやむを得ないし、人員の適正配置等の観点からも、本件配転には業務上の必要性が認められる一方で、配転に伴い通常甘受すべき程度を著しく超えた不利益や、配転に不当な動機・目的は認められないから、配転命令は有効であるとした事例

評釈
末啓一郎・労経速 1972号2頁
湊栄市・ジュニア・リサーチ・ジャーナル 15号151頁

参照条文
労働基準法2章
民法625条

裁判年月日  平成19年 3月29日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平14(ワ)20737号
事件名  配転無効確認等請求事件 〔東日本電信電話ほか事件〕
裁判結果  請求棄却  文献番号  2007WLJPCA03298005

群馬県高崎市〈以下省略〉
原告 X1
群馬県邑楽郡〈以下省略〉
原告 X2
新潟県三島郡〈以下省略〉
原告 X3
神奈川県大和市〈以下省略〉
原告 X4
東京都世田谷区〈以下省略〉
原告 X5
千葉県柏市〈以下省略〉
原告 X6
神奈川県大和市〈以下省略〉
原告 X7
横浜市〈以下省略〉
原告 X8
東京都青梅市〈以下省略〉
原告 X9
訴訟代理人弁護士 上田誠吉
同 坂本修
同 今村幸次郎
同 泉澤章
同 大崎潤一
同 小木和男
同 志村新
同 鷲見賢一郎
同 瀬野俊之
同 平井哲史
同 藤澤整
同 町田伸一
同 松島曉
同 菅俊治
同 松本恵美子
同 山崎徹
東京都新宿区〈以下省略〉
被告 Y1株式会社
代表者代表取締役 A
東京都千代田区〈以下省略〉
被告 株式会社Y2
代表者代表取締役 B
被告ら訴訟代理人弁護士 寺前隆
同 牛嶋勉
同 清水三郎
同 岡崎教行
同 茶谷幸彦

 

 

主文

1  原告らの請求をいずれも棄却する。
2  訴訟費用は原告らの負担とする。

 

 

事実及び理由

第1  請求
1  原告X1、同X2、同X4、同X5、同X6、同X7及び同X8が、それぞれ被告Y1株式会社との間で、原告X1につきコンシューマ事業推進本部(営業推進部マーケティング部門埼玉センタ第一営業担当)に、同X2につきコンシューマ事業推進本部(営業推進部マーケティング部門埼玉センタ第二営業担当)に、原告X4及び同X8につきコンシューマ事業推進本部(営業推進部マーケティング部門(神奈川センタ))に、原告X5につきビジネスユーザ事業推進本部(ビジネス営業部教育営業担当)に、原告X6につき技術部(情報システム体系化推進PT光SO・DB監査担当)に、原告X7につきビジネスユーザ事業推進本部(ネットワークソリューション部NI推進担当)に勤務すべき労働契約上の義務がないことをそれぞれ確認する。
2  被告Y1株式会社は、原告X1、同X2、同X3、同X4、同X5、同X6、同X7及び同X8に対し、各300万円及びこれに対する平成14年10月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3  被告らは、原告X9に対し、連帯して300万円及びこれに対する平成14年10月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
本件は、平成14年7月1日付け又は同年8月1日付けで、北海道、宮城県、山形県、群馬県、新潟県等から首都圏に配置転換(以下「配転」という。)された原告らが、原告らに対する配転は、①労働契約による勤務場所及び職種の限定に反する、②配転命令権を濫用して行われたものである、③ILO条約その他の法令や労働契約上の付随義務に反する、④不当労働行為に該当する、などにより無効であるとして、口頭弁論終結時における勤務先で勤務する労働契約上の義務がないことの確認を求めるとともに(口頭弁論終結時に定年退職となっている原告X3及び同X9を除く。)、不法行為に基づく慰謝料の請求をした事案である(以下、平成14年7月1日付け又は同年8月1日付けで原告らに対して行われた配転を総称して「本件各配転」という。なお、単に「本件配転」というときは、その記載に対応する原告に対して前記時期にされた配転を指す。)。
なお、原告らは、いずれも、本件各配転後、首都圏内で再配転されている。原告X3及び同X9を除く原告らは、いずれも、現在の勤務先で勤務する労働契約上の義務がないことの確認を求めているが、本件の争点は、本件各配転の有効性であり、原告らは、その後原告らにされた配転について個別の無効事由等を主張するものではない。本件事案の性質上、本件各配転が無効であれば、それを基礎としてされたその後の配転も無効とされるべきものであること、原告らには本件各配転以後で現在より前の勤務先で勤務する労働契約上の義務がないこと、したがって、原告らが現在の勤務先において勤務する義務がないことが確定すれば原告らの勤務先は本件各配転前の勤務先となることは、当事者双方の共通の認識であり、争いがない。
1  前提事実(争いがない事実及び適示した証拠により容易に認定できる事実。以下では、重複して証拠が提出されている場合は、そのうち1つのみを適示している。)
(1)  当事者
ア 原告らは、昭和30年代後半から昭和40年代にかけて日本電信電話公社(以下「電電公社」という。)に採用され、以後期間の定めのない社員(従業員の意味として用いる。以下も同様)として稼働しているものである。
電電公社は、昭和60年4月1日、日本電信電話株式会社等に関する法律(昭和59年12月25日法律第85号。以下「NTT法」という。)に基づき設立された日本電信電話株式会社(以下、事業再編の前後を問わず「NTT」という。)に対し、一切の権利義務を引き継いで解散し、原告らはNTTの社員となった。NTTは、その後、いわゆる純粋持株会社となり、NTTの事業は、平成11年7月1日付けで事業会社として設立された、被告Y1株式会社(以下「被告会社」という。)やa株式会社(以下「a社」という。)に営業譲渡され、これに伴い、原告らの雇用関係は、NTTから被告会社へ引き継がれた。なお、原告X9は、その後、被告株式会社Y2(以下、組織変更や名称変更の前後を問わず「被告Y2」という。)に在籍出向し、原告X3及び同X9は、口頭弁論終結時には定年退職となっている。
原告らは、いずれもNTTグループ労働者約1300名で組織する通信産業労働組合(以下「通信労組」という。)の組合員である。なお、NTTグループ各社の社員らで組織する労働組合には、通信労組のほかに、組織率99パーセント以上のNTT労働組合(組合員数約21万人)等がある。
イ 被告会社は、東日本地域(北海道、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、山梨県及び長野県)における地域電気通信業務、地域電気通信業務に付帯する業務、その他会社の目的を達成するために必要な業務及び東日本地域における地域電気通信業務とこれに付帯する業務を営むために保有する設備若しくは技術又はその社員を活用して行う電気通信業務を行う株式会社である。
被告Y2は、平成11年4月1日に、株式会社b東京、株式会社b関東、株式会社b信越が合併して設立された、被告会社の100パーセント出資子会社であり、IT(情報技術)、電気通信、情報通信に関する事業及び電気通信工事など各種工事の請負・施工等を営む株式会社である。
(2)  「構造改革」の発表
ア NTTは、平成13年4月16日、「NTTグループ3ヵ年経営計画(2001~2003年度)について」(以下「新3か年計画」という。)により、「東西地域会社の本体機能を企画・戦略、設備構築・管理、サービス開発、法人営業等に特化させ、注文受付、設備保守・運営、故障修理等の業務については、地域単位(県又は複数県を束ねたブロック)の経営資源活用会社等ヘアウトソーシングします。また、これに併せて、経営資源活用会社等は徹底した経営の効率化を図るとともに、地域密着型の事業活動によりグループ内外に向けた業容の拡大に取り組みます。」と発表した(以下、NTTグループの一員である被告らが新3か年計画に基づき採った以下の一連の施策を「本件構造改革」という。)。(甲1)
イ 被告会社は、同月27日、通信労組に対し、「Y1の構造改革に向けた業務運営形態等の見直し等について」と題する書面を提示し、新3か年計画の具体的内容を明らかにした。
その内容は、電気通信事業の基本である「オペレーショナル業務等については、新たに設置する県別子会社に徹底した業務のアウトソースを行い」、「アウトソーシング会社の労働条件については、同一地域同業種の労働条件をも意識して各社毎に設定することとし、給与水準については、現在のY1より概ね20から30パーセント下回る設定とする。」とし、これによる社員に対する処遇の具体策として、「選択型の雇用形態・処遇体系を提供する」として、「60歳満了型」、「60歳以降充実型」、「一時金型」を提示するというものであった(各雇用形態の具体的な内容は、後記(3)のとおり)。(甲2)
ウ 被告会社やa社は、平成13年10月25日、「当面の経営課題に対するNTTの取り組み」を、同年11月22日、「cの構造改革について」を発表した。その内容は、「業務の抜本的なアウトソーシングと雇用形態の多様化による人的コストの低減」を図るために、「c社員の6割程度(約6万人)、既存子会社を含めれば約10万人をアウトソーシング会社へ移行」、「51歳以上の移行社員は、cを退職し、15%~30%減の賃金水準でアウトソーシング会社で再雇用する仕組みを導入」するとした。(甲3)
(3)  本件構造改革による雇用形態の見直し
ア 被告会社は、平成13年12月6日、「Y1の構造改革に向けた業務運営形態等の見直し等について」を、以下のとおり発表した。なお、以下における50歳以上とは、平成14年3月31日時点での年齢が50歳以上の者を指している。(甲4)
「1.雇用形態・処遇体系の多様化の枠組み
(1) 雇用形態・処遇体系
① 繰延型
50歳(年齢については年度末の満年齢をいう。以下同じ。)時にY1を退職し、新会社に再雇用され、60歳定年制により60歳まで勤務した後、61歳以降は、現行のキャリアスタッフと同様の枠組みで、契約社員として新会社に再雇用され、最長65歳までの雇用を実現する形態。
また、勤務地が限定的となる一方、新会社においては所定内給与が低下することとなるが、激変緩和措置に加え、雇用保険など公的給付や企業年金(税制適格年金)の受給の組み合わせにより、61歳以降の充実した生活設計に資するものとする。
② 一時金型
雇用の形態としては前①と同様であるが、激変緩和措置については、Y1退職時に一時金を受給できる形態とし、生活設計の多様化に応えるものとする。
③ 60歳満了型(以下「満了型」という。)
Y1等において、企画・戦略、設備構築、サービス開発、法人営業等の業務に従事し、現行の人事・給与制度により60歳まで勤務する形態。
市場性の高いエリア等を中心として勤務地を問わず、成果・業績に応じて高い収入を得る機会を追及する意欲を持った社員に応えるものとする。
(2) 対象者等
対象者については、従事業務に関わらず、再雇用時の年齢が51歳となる社員(出向者を含む。ただし、Y2各社を除く期間の定めのない会社への出向者等を除く。)とし、50歳時に雇用形態の選択を行うこととする。
また、再雇用時の年齢が50歳以下となる社員が特に退職・再雇用の選択を希望する場合についても対象とする。ただし、この場合、激変緩和による給与加算及び一時金の措置は実施しないが、新会社の在籍期間等に応じ、退職手当が支給される。」
イ 被告会社は、平成13年12月3日、「構造改革の実施に伴う雇用形態・処遇体系の多様化の実施について」(社長達)により、「雇用体系・処遇体系の多様化を実施する」方法を以下のとおりとした。(甲5)
① 平成13年度に50歳以上となる社員は、平成14年1月18日までの間に「繰延型」、「一時金型」、「満了型」の雇用形態等を選択し、任命責任者に対し、通知しなければならない。なお、この通知をもって辞職願に代えることとする。
② 平成13年度に50歳以上となる社員が雇用形態等を選択・通知しない場合は「満了型」を選択したものとみなす。
③ 新会社への移行については、平成14年4月30日でY1を退職し、平成14年5月1日から新会社において再雇用されるものとする。
(4)  被告Y2における構造改革
被告会社が実施した本件構造改革は、コスト構造改革を標榜するものであり、被告Y2を始めとするグループ各社への委託費の削減も内容とするものであった。そのため、被告Y2は、被告会社の本件構造改革と併せ、グループ各社からの受託収入に軸足をおいた経営からの脱却を目指すこととし、被告会社等の電気通信設備の施工管理、故障修理・定期点検等、回線開通等、委託業務のほとんどを被告Y2から新会社に移行することや、上記(3)と同様の雇用形態・処遇体系の多様化等を内容とする構造改革を実施することとした。(乙118)
(5)  本件構造改革による新会社設立と業務の外注委託
本件構造改革で被告会社が業務を外注委託した先は、新たに設立された「サービス系会社」、「設備系会社」、「共通系会社」であった(以下、これら新たに設立された会社を総称して「新会社」という。)。
「サービス系会社」には、①中堅・中小企業や住宅ユーザに被告会社の商品やサービスを販売したり、注文受付を行う業務(訪問や電話により販売勧奨を行う営業業務、商品やサービスの注文を電話で受け付ける116業務、来客する顧客と対応する窓口業務)、②顧客からの注文等に応じて、その事務処理を行う業務(「SO業務」と称している。「SO」はサービスオーダーの略称である。)、③被告会社の商品・サービスに対応する料金の請求、審査、回収等の業務(料金業務)、④公衆電話の設置、改廃に伴う事務処理の業務、⑤電報サービスの販売成果の把握・分析及び広告宣伝等の業務を、「設備系会社」には、①被告会社の電話交換機等の通信設備の保守、故障対応の業務、②被告会社の商品である通信機器の故障対応の業務、③通信回線の敷設、保守、故障修理等の対応業務を、「共通系会社」には、①社員証発行や不動産管理及びそれに伴う事務処理等の業務(総務関係業務)、②給与等支給に伴う手続・事務処理業務及び研修の運営等の業務(人事関係業務)、③福利厚生に関する問い合わせ対応及び健康診断の手続等の業務(厚生関係業務)、④社内会計における伝票審査及び財務データのチェック等の業務(財務関係業務)を業務委託された。
また、被告Y2も、被告会社と同時期に実施した構造改革により、電気通信設備の施工管理・故障修理等、定期点検等、回線開通等の業務を外注委託した(以下、被告らが新会社に外注委託した業務を「移行対象業務」という。)。
その結果、原告らが本件各配転直前に従事していた業務は、いずれも、新会社に外注委託された(原告X7については争いがある。)。(乙118)
(6)  雇用形態選択の実施
ア 被告らは、平成13年10月、毎年行っている全社員を対象とする中間面談において、各社員から、その意向や個別の事情を聴取し、更に同年12月、雇用形態選択の対象となる51歳以上の社員(平成15年3月31日に51歳以上となる社員。以下も同様である。)を対象に個別面談を実施して、再度意向や個別の事情を確認するとともに雇用形態選択通知書を交付した。原告らの中には個別面談に応じない者もいたが、いずれの原告も雇用形態選択通知書は受領した。
イ 原告らは、雇用形態選択通知書の提出期限とされた平成14年1月18日までにこれを提出しなかったため、いずれも満了型を選択したものとみなされた。
原告らは、満了型を選択したとみなされた結果、後記(7)アないしケの各(ウ)、(エ)のとおり首都圏に配転された(ただし、原告X9は東京都内の配転である。)。原告らの配転先は、いずれも、大企業等の大口ユーザ等を対象とする事業の関連部門である被告会社の法人営業(AM担当やSOアシスト担当(又はSO推進担当))、又は専用サービスセンタの部門、あるいは被告Y2のメンテナンスビジネス部である。原告らはこれらの業務に従前従事した経験はなかった。
被告会社の法人営業は、主に、ソリューションビジネスと称する業務を行っている。ソリューションビジネスとは、企業や官公庁を対象に、個々の顧客が抱える経営課題、業務上の課題を聴取して、これらの課題を解決する情報通信システムの提案・構築を行うものである。この業務を担当しているのが、AM(「アカウントマネージャー」の略称)やSE(「システムエンジニア」の略称)である。AMは、顧客の窓口として、情報通信を切り口に経営的側面から業務コンサルティングを行い、顧客の潜在ニーズを掘り起こし、最新の技術動向を踏まえつつ顧客のニーズを満たす最適な情報システムの提案・販売を行う。SEは、AMの活動を技術的に支援し、技術面からのコンサルティングを実施し、情報通信システムの仕様検討・設計・機器の調達・構築支援等を行う。また、AMは、営業活動の中で、顧客への営業活動に伴い、顧客の設備に関する検討や調査、商品・サービスを受注した後のSO処置(社内システムに顧客の受注情報を入力する(「SOを投入する」と称している。)ための指示書作成業務や、指示書に基づき社内システムにSOを投入するSOセンタの業務、料金請求を行う業務等の一連の業務をいう。)、商品・サービスの工事手配、立会い、進捗管理等を担当することが多いため、被告会社は、AMのSO業務軽減による生産性向上を図るべく、SOアシスト担当やSO推進担当を設け、AMの業務を補佐させていた。
ウ 本件構造改革当時、被告会社には、満51歳以上の社員が約2万6700名在籍していたが、繰延型又は一時金型を選択した社員は約2万6000名であり、満了型を選択し、あるいは希望を述べず満了型を選択したとみなされた社員は約700名であった。そのうち、新会社への移行対象業務に従事していたのは、原告らを含め約300名であった。被告会社は、上記約300名のうち、約130名を首都圏の法人営業等に配転し、その他の者を地方の法人営業等に配転した。(乙118)
(7)  各原告の経歴、家族等
ア 原告X1(以下「原告X1」という。)
(ア) 原告X1は、昭和25年○月○日生まれ(本件配転当時52歳)の女性であり、群馬県立d高等学校を卒業後、電電公社に雇用された。(乙73)
原告X1は、平成14年当時、群馬県高崎市において、夫(53歳。なお、本件配転当時の年齢であり、以下の記載も同様である。)、二女(18歳)、二男(12歳)と4人で暮らしていた(長男、長女はすでに独立していた。)。
(イ) 原告X1は、昭和44年3月28日見習社員として雇用、同年7月28日社員として採用されて以降、桐生電報電話局(電話運用課、業務部電話運用課)、高崎電報電話局(営業部第三営業課、第一営業部料金課)、高崎支店(第一営業部料金課、同部料金担当、料金担当、お客様サービス部料金担当)、群馬支店(お客様サービス部高崎料金担当、同部料金センタ第一料金担当)において業務に従事していた。
(ウ) 被告会社は、原告X1を、平成14年4月24日付けで群馬支店営業部システムソリューション部門システムサービス担当、同年5月1日付けで同支店法人営業部法人総括担当に配転した後、同年7月1日付けで埼玉支店法人営業部エリアAM部門埼玉中央西営業担当に配転した(本件配転)。その後、原告X1は、平成15年4月1日付けで同部公共AM部門自治体担当に、平成17年4月1日付けでコンシューマ事業推進本部営業推進部マーケティング部門埼玉センタ第一営業担当に配転されている。
(エ) 埼玉支店法人営業部エリアAM部門埼玉中央西営業担当の職場は、埼玉県川越市内にあったため、原告X1は、群馬県高崎市内から約2時間かけて職場に通勤していた。
イ 原告X2(以下「原告X2」という。)
(ア) 原告X2は、昭和23年○月○日生まれ(本件配転当時54歳)の女性であり、群馬県立e高等学校を卒業後、電電公社に雇用された。(乙76)
原告X2は、平成14年当時、群馬県邑楽郡大泉町において、夫(54歳)、長女(22歳)、長男(20歳)、二男(16歳)と5人で暮らしていた。なお、原告X2には、2歳時の事故で瘢痕拘縮、火傷による右手指機能障害(障害等級3級)があった。
(イ) 原告X2は、昭和43年10月1日、電電公社に見習社員として雇用、昭和44年2月1日社員として採用されて以降、太田電報電話局(電話運用課、業務部電話運用課、営業部番号情報営業課)、太田支店(営業部番号情報営業課、同営業担当)、群馬支社(電報・番号情報営業部太田番号情報営業担当)、太田支店(番号情報営業部番号情報営業担当)、群馬支店(番号情報営業部太田番号情報営業担当)、太田支店(お客様サービス部116センタ担当)、群馬支店(太田営業支店お客様サービス部116センタ担当、お客様サービス部116センタ116担当、太田営業支店営業部営業担当、営業部販売企画担当、営業部東京パートナー受付センタ(太田センタ)パートナー受付担当)において業務に従事していた。
(ウ) 被告会社は、原告X2を、平成14年4月24日付けで群馬支店営業部ソリューション部門システムサービス担当、同年5月1日付けで同支店営業部法人総括担当に配転した後、同年7月1日付けで埼玉支店法人営業部エリアAM部門埼玉南営業担当に配転した(本件配転)。その後、原告X2は、平成15年4月1日付けで埼玉支店法人営業部企業AM部門企業第五担当、平成17年4月1日付けでコンシューマ事業推進本部営業推進部マーケティング部門埼玉センタ第二営業担当に配転されている。
(エ) 埼玉支店法人営業部エリアAM埼玉南営業担当の職場は、埼玉県川口市内にあったため、原告X2は、群馬県邑楽郡大泉町から約2時間かけて職場に通勤していた。
ウ 原告X3(以下「原告X3」という。)
(ア) 原告X3は、昭和21年○月○日生まれ(本件配転当時56歳)の男性であり、新潟県立f高等学校を卒業後、電電公社に雇用された。(乙79)
原告X3は、平成14年当時、新潟県三島郡与板町において、妻(51歳)と2人で暮らしていた。
(イ) 原告X3は、昭和39年4月1日見習社員として雇用、同年8月1日社員として採用されて以降、長岡電報電話局(料金課、第2電話営業課、業務部発行課、同部計算課、同部料金課)、長岡支店(営業部料金課料金第三係、お客様サービス部門料金担当)、長岡営業支店(お客様サービス部門料金担当)、新潟支店(お客様サービス部料金サービスセンタ長岡担当、サービス新潟移行本部PT兼務)において業務に従事した。
(ウ) 被告会社は、原告X3を、平成14年4月24日付けで新潟支店営業部第一営業部門法人営業担当、同年5月1日付けで同支店営業部法人営業担当に配転した後、同年7月1日付けで、法人営業本部サービスマネジメント部ネットワークソリューションセンタSO推進担当に配転した(本件配転)。その後、原告X3は、平成15年4月1日付けで東京支店営業企画部光IP販売プロジェクトに、平成17年4月1日付けでコンシューマ事業推進本部営業推進部マーケティング部門(東京センタ)に配転された後、平成18年3月31日、定年により被告会社を退職した。
(エ) 法人営業本部サービスマネジメント部ネットワークソリューションセンタは東京都葛飾区内にあったため、原告X3は単身赴任した。
エ 原告X4(以下「原告X4」という。)
(ア) 原告X4は、昭和21年○月○日生まれ(本件配転当時55歳)の男性であり、私立g高等学校電子工学科を卒業後、電電公社に雇用された。(乙81)
原告X4は、平成14年当時、宮城県岩沼市において、妻(50歳)、長女(28歳)、長男(24歳)と4人で暮らしていた。
(イ) 原告X4は、昭和40年4月1日見習社員として雇用、同年8月1日社員として採用されて以降、青森県にある甲地統制無線中継所、石巻無線中継所(昭和43年4月1日から)、石巻統制無線中継所、仙台統制無線中継所テレビジョン課(昭和51年11月1日から)、仙台統制無線中継所第二整備課、仙台ネットワークセンタ無線設備部・無線課、中央ネットワーク支社東日本総合技術センタ・電力技術課、仙台ネットワークセンタ無線設備部無線課、東北ネットワークセンタ設備部(設備運営・電力担当、設備運営・伝送無線担当、サービス推進部サービス運営・無線担当)において業務に従事し、平成9年9月1日、株式会社b東北(平成12年3月1日に株式会社Y2東北(以下、名称変更の前後を問わず「Y2東北」という。)に社名変更)に在籍出向し、同社仙台支店(ノードメンテナンスサービス部ノードメンテナンス担当、ノードサービス部無線サービス担当)の業務に従事した。
(ウ) Y2東北は、原告X4を、平成14年5月1日付けで同社経営企画部総務担当(勤務地は仙台市)に配転し、被告会社は、同年7月1日付けで神奈川支店神奈川西法人営業部AM担当に配転した(本件配転)。その後、原告X4は、平成17年4月1日付けでコンシューマ事業推進本部営業推進部マーケティング部門(神奈川センタ)に配転されている。
(エ) 神奈川支店神奈川西法人営業部は神奈川県厚木市内にあったため、原告X4は単身赴任した。
オ 原告X5(以下「原告X5」という。)
(ア) 原告X5は、昭和21年○月○日生まれ(本件配転当時55歳)の男性であり、北海道深川市立h高等学校卒業後、電電公社に雇用された。(乙83)
原告X5は、平成14年当時、妻を亡くしており、旭川市において、股関節に障害がある長女(24歳)と2人で暮らしていた。
(イ) 原告X5は、昭和40年4月1日見習社員として雇用、同年8月1日に社員として採用されて以降、旭川電話局(施設部第二線路宅内課)、旭川電報電話局(第一施設部第二線路宅内課、第二線路宅内課)、旭川支店(設備部フィールド設備担当、同部設備担当、営業推進部販売企画担当、営業推進担当、パーソナル営業担当等)において業務に従事した。
(ウ) 被告会社は、原告X5を、平成14年4月24日付けで旭川営業支店法人営業担当として配転した後、同年7月1日付けで東京支店第一法人営業本部第1営業部門営業担当第2公共担当に配転した(本件配転)。その後、原告X5は、平成15年4月1日付けで東京支店第一法人営業本部公共営業部門営業担当第2公共担当、平成16年7月1日付けでビジネスユーザ事業推進本部公共ソリューション営業部第十四営業担当、同年9月1日付けで同部第十一営業担当、平成18年8月1日付けでビジネスユーザ事業推進本部ビジネス営業部教育営業担当に配転されている。
(エ) 東京支店第一法人営業本部第1営業部門営業担当は東京都新宿区内にあったため、原告X5は長女と共に東京に転居し、その後長女が旭川に戻ったため単身で生活している。
カ 原告X6(以下「原告X6」という。)
(ア) 原告X6は、昭和23年○月○日生まれ(本件配転当時54歳)の男性であり、北海道i高等学校卒業後、電電公社に雇用された。(乙85)
原告X6は、平成14年当時、北海道北広島市において、妻(54歳)、長男(26歳)、実母(78歳)と4人で暮らしていた。
(イ) 原告X6は、昭和41年5月1日見習社員として雇用、同年9月1日社員として採用されて以降、千歳電報電話局(施設課、線路宅内課)札幌圏事業推進部(千歳営業所線路宅内担当、設備部フィールド設備センタ中央・設計施工担当)、札幌支店(設備部フィールド設備センタ・エンジニアリング担当、同部設備担当アクセス設備担当、同部サービス推進部門・発注資産管理担当)、北海道支店(設備部サービス推進部門発注・資産管理担当、同部門サービス設備担当)において業務に従事した。
(ウ) 被告会社は、原告X6を、平成14年4月24日付けで北海道支店法人営業部企画部門に配転した後、同年8月1日付けで専用サービスセンタ第一ビジネスサービス部門SO推進担当に配転した(本件配転)。その後、原告X6は、平成15年4月1日付けで技術部情報システム体系化推進PT体系化推進担当、平成18年5月1日付けで技術部情報システム体系化推進PT光SO・DB監査担当に配転されている。
(エ) 専用サービスセンタ第一ビジネスサービス部門は東京都港区内にあったため、原告X6は単身赴任した。
キ 原告X7(以下「原告X7」という。)
(ア) 原告X7は、昭和24年○月○日生まれ(本件配転当時53歳)の男性であり、山形県立j高等学校を卒業後、電電公社に雇用された。(乙87)
原告X7は、平成14年当時、山形県鶴岡市において、妻(49歳)及び両親(実父84歳、実母80歳)と4人で暮らしていた。
(イ) 原告X7は、昭和42年3月13日見習社員として雇用、同年7月13日社員として採用されて以降、仙台統制無線中継所(第一整備課、第二整備課、テレビジョン課)、酒田統制無線中継所(昭和52年3月28日から)(試験課、整備課)、山形ネットワークセンタ酒田分室(伝送無線課、伝送無線課、営業推進室)、山形支店(法人営業部門第二法人営業担当)、山形支店酒田営業所(第一営業担当、営業部ソリューション営業部門庄内地域担当)において業務に従事した。
(ウ) 被告会社は、原告X7を、平成14年4月24日付けで山形支店法人営業部庄内地域担当に配転した後、同年7月1日付けで神奈川支店神奈川西法人営業部に配転した(本件配転)。その後、原告X7は、平成17年7月1日付けでビジネスユーザ事業推進本部製造ソリューション営業部第三営業担当、平成18年7月1日付けで同部第一営業担当、同年8月1日付けでビジネスユーザ事業推進本部ネットワークソリューション部NI推進担当に配転されている。
(エ) 神奈川支店神奈川西法人営業部は神奈川県厚木市内にあったため、原告X7は単身赴任した。
ク 原告X8(以下「原告X8」という。)
(ア) 原告X8は、昭和23年○月○日生まれ(本件配転当時54歳)の男性であり、山形県立k高等学校を卒業後、電電公社に雇用された。(乙89)
原告X8は、平成14年当時、山形市において、妻(54歳)及び二男(25歳)と3人で暮らしていた。
(イ) 原告X8は、昭和41年10月1日見習社員として雇用、昭和42年2月1日社員として採用されて以降、天童電報電話局、山形電報電話局(施設部試験課、回線運営センタ専用線サービス課)、山形支店(設備部門専用線サービス担当、回線・専用サービス担当、回線・専用サービス部門専用サービス担当、法人営業部門専用ISDNサービス担当、同部門網高度課担当)において業務に従事した後、平成10年12月1日、Y2東北に在籍出向となり、Y2東北山形支店(ノードメンテナンスサービス部MACS担当、ノードサービス部MACS担当)において業務に従事した。
(ウ) Y2東北は、Y2東北山形支店が廃止されたことに伴い、原告X8を同社経営企画部総務担当(勤務場所は山形市)に配転した後、被告会社は、平成14年7月1日付けで東京支店第二法人営業本部千代田第2営業部門システムエンジニアリング担当に配転した(本件配転)。その後、原告X8は、平成15年4月1日付けで同支店同部門システムソリューション担当、平成17年4月1日付けでコンシューマ事業推進本部営業推進部マーケティング部門(神奈川センタ)に配転されている。
(エ) 東京支店第二法人営業本部千代田第2営業部門は東京都千代田区内にあったため、原告X8は単身赴任した。
ケ 原告X9(以下「原告X9」という。)
(ア) 原告X9は、昭和19年○月○日生まれ(本件配転当時57歳)の男性であり、私立l高等学校工業科電気通信科卒業後、電電公社に雇用された。(乙91)
原告X9は、平成14年当時、東京都青梅市において、妻(53歳)、二男(22歳)、長女(17歳)と4人で暮らしていた。
(イ) 原告X9は、昭和39年4月1日見習社員として雇用、同年8月1日社員として採用されて以降、国分寺電報電話局(機械課)、立川電報電話局(施設部市外機械課)、立川ネットワークセンタ(交換課)、多摩ネットワークセンタ(交換課)において業務に従事し、平成9年10月1日、被告Y2に在籍出向し、被告Y2東京ネットワークサービス事業部(西品質サービスセンタ)、第3マーケティング本部ネットワーク技術営業部門(西ネットワークサービスセンタ)、第2マーケティング本部(品質推進部門西ネットワークサービスセンタ)、西東京支店(第5マーケティング部)(以上の勤務場所はいずれも東京都立川市)において業務に従事した。
(ウ) 被告Y2は、原告X9を、平成14年4月24日付けで西東京支店第3JunKanビジネス部に配転した後、同年8月1日付けで、被告Y2のJunKanビジネス本部21メンテナンスビジネス推進部に配転した(本件配転)。その後、原告X9は、平成15年9月1日付けで法人営業本部ビジネス開拓PT営業担当、平成16年7月1日付けでビジネスユーザ事業推進本部ビジネス開拓PT営業担当に配転され、平成17年3月31日、定年により被告Y2を退職した。
(エ) JunKanビジネス本部21メンテナンスビジネス推進部は東京都千代田区にあったため、原告X9は、職場に通勤するためにそれまでより時間を要することになった。
2  争点
(1)  原告らと被告らとの間で、勤務場所や職種を限定することが労働契約の内容となっていたか
(2)  本件各配転は被告らの配転命令権を濫用して命じられたものか
ア 本件各配転の前提である本件構造改革は不当なものか
イ 本件各配転に必要性があるか
ウ 本件各配転に不当な動機・目的があったか
エ 本件各配転は原告らに通常甘受すべき程度を著しく超えた不利益を与えるものであったか
オ 本件各配転の手続は適正であったか
(3)  本件各配転はILO条約その他の法令や労働契約上の付随義務に違反するものか
(4)  本件各配転は通信労組に対する不当労働行為か
(5)  本件各配転は原告らに対する不法行為か、不法行為であるとすれば慰謝料はいくらが相当か
3  争点についての当事者の主張
(1)  争点(1)(勤務場所や職種を限定することが労働契約の内容となっていたか)について
(原告らの主張)
ア 電電公社や被告らの就業規則には、配転に関する一般条項が定められているが、このような一般条項は、原告らの募集・採用における職種の扱いに関する実態、各職種の具体的な業務内容、従来の配転の実態等に照らして限定的に解釈されるべきものである。
原告らは、いずれも、勤務場所や職種を限定して募集、採用されていたし、採用後も、概ね採用時の勤務場所において、同一の職種に従事してきた。原告らの勤務場所や職種を変更する際には、原告らにその都度意思確認がされ、本人の同意後に勤務場所や職種の変更をするという運用もされていた。
以上の実態に照らせば、原告らの勤務場所や職種を変更する際には、本人の同意を要することが、明示的あるいは黙示的に原告らと被告らとの間の労働契約の内容となっていたことは明らかである。
イ また、労働契約の解釈が労使対等決定原則に従って行われるべきことからすれば、業務上の必要性を欠く配転、不当な動機・目的に基づく配転、労働者に配転に伴い重大な職業上・生活上の不利益をもたらす配転はしないということが労働契約の内容となっているというべきである。
ウ 本件各配転はいずれも原告らの同意なしに行われたものであるし、争点(2)についての原告ら主張のとおり、業務上の必要性を欠き、不当な動機・目的に基づき、かつ、原告らに重大な職業上・生活上の不利益をもたらすものであったから、本件各配転は、いずれも労働契約に反するものとして無効である。
(被告らの主張)
ア 被告会社就業規則60条及び被告Y2就業規則58条は、「業務上必要があるときは、勤務事業所又は担当する職務を変更」すると定めている。電電公社や被告らが、原告らの勤務場所や担当職務を限定したことはないし、その同意がなければ配転を行わないという取扱いをしたこともない。明示的なものであれ、黙示的なものであれ、勤務場所や職務を限定する合意が成立した事実はない。
イ 原告らが主張するイの内容は、配転命令権行使の権利濫用性を論じるにあたって考慮すれば足りるのであり、原告らの主張するような議論をする実益はない。この点を別としても、本件各配転に業務上の必要性があり、かつ、配転が不当な動機・目的に基づいて行われたものではなく、原告らに何らの不利益も与えるものではなかったことは争点(2)に関する被告ら主張のとおりである。
ウ よって、争点(1)に関する原告らの主張は理由がない。
(2)  争点(2)(本件各配転は被告らの配転命令権を濫用して命じられたものか)について
(原告らの主張)
ア 就業規則に配転に関する一般条項があるとしても、使用者はこれを無制限に行使し得るものではなく、業務上の必要性がない場合や、これがある場合でも、他の不当な動機・目的により配転が行われたときや労働者に通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるときには、配転命令権を濫用したものとして配転命令は無効とされる。
本件各配転は、以下のとおり、その前提である本件構造改革が不当きわまりないものである上、満了型を選択した者を敵視し、重大な不利益を与えるために行われたものであり、業務上の必要性は認められないばかりか、不当な動機・目的を持って行われ、また、原告らに通常甘受すべき程度を超える著しい生活上の不利益を与えるものであるから、いずれも配転命令権を濫用したものとして無効である。
イ 本件構造改革の不当性
本件各配転のきっかけとなった本件構造改革は、①「構造改革」はコスト構造改革とし、人的コストでは350億円削減を目的とする、②被告会社が100パーセント出資する新会社を設立し、固定電話部門を中心に被告会社の業務を新会社に外注委託する、③新会社の業務は委託前に担当していた被告会社社員を中心に継続するが、その社員の所属は、被告会社社員の地位のまま在籍出向する者と、被告会社を退職して地域子会社で再雇用した者に二分する、④退職・再雇用となる社員の賃金は、被告会社在籍時より15パーセントから30パーセント引き下げる、⑤被告会社社員のうち51歳以上の者に対して、退職・再雇用の上、賃金を引き下げることに同意することを求める、⑥51歳以上の社員のうち、退職・再雇用と賃下げに同意しない者については、新会社に在籍出向させず、異職種・広域配転とすることを強調する、⑦51歳以上の社員のうち、退職・再雇用と賃下げに応じなかった者に対して、それまで従事していた業務から外し、かつ、実際に異職種・広域の配転を実施する、という内容のものであった。また、被告Y2が行った構造改革も、上記の構造改革と同内容のものであった。
以上のとおり、本件構造改革は、被告らの利益最大化を目的とした人的コスト削減策であり、合理性、必要性が全くない。被告らは、本件訴訟において本件構造改革の理由を経営危機、財務体質の悪化と主張するけれども、NTTグループ及び被告らは、ウで述べるとおり、巨額の利益を上げる超優良な経営状況であり、IP電話による固定電話の激減や接続料の値下げ等による財務状況の悪化もなく、被告らの主張は事実に反する。本件構造改革の手法も、「雇用形態選択制度」によって形式的に「本人の意思」に基づいた格好をとりながら、退職・再雇用・賃下げの受け皿以外に実態らしいものがない「OS会社」を設立し、在籍出向を拒絶することにより、51歳以上の社員を年齢差別し、退職・賃下げを事実上強制するものであり、違法・不当である。
ウ 本件各配転に必要性は認められないこと
被告らは、本件各配転は、それぞれの配転先が求めていた人材を本社から各支店等に伝え、各支店等において人選を進めた結果、いずれも原告らが適任者として選定されたと主張するが、原告らが職務経験を通じて培った技術や経験は、本件各配転による配転先の業務内容に全く合致しないか、又は原告らは少なくともあえて遠隔地から配転しなければならないほどの適性を有していなかった(候補者は首都園に多数存在していた。)。原告らに対する本件各配転は、オで述べるとおり、いずれも労働力の適正配置に反し、業務の能率増進・業務運営の円滑化に資するものではなかった。
また、本件各配転は、「構造改革」を契機として行われたものである。「構造改革」は、人的コスト削減を主目的として純粋持株会社であるNTTが企画・立案したものであるが、NTTグループは、平成13年3月期決算においてグループ全体で8983億円の利益を上げ、被告会社も接続料金の値下げによるグループ内の利益調整やリストラ費用の計上等により業績悪化の見せかけを作っているものの平成14年3月期決算において2兆5736億円もの売上高を計上する巨大安定企業であり、その良好な経営状態や財務体質に照らして、人的コスト削減を行う必要性はなかった。本件構造改革は本件各配転を実施する合理的な説明とはなり得ない。
エ 本件各配転は不当な動機・目的を持って行われたこと
(ア) NTTの「構造改革」は、イのとおり、被告らのサービスの基幹となる業務を、新会社に外注委託し、当該業務に従事していた51歳以上の社員について、被告会社を退職させた上で、賃金を大幅に切り下げて再雇用することを目的として行われたものであり、裁判例上で確立された就業規則の不利益変更の法理や、整理解雇の制限に関する法理を潜脱する不当な動機・目的で行われたものである。また、本件構造改革は、51歳以上の社員全員に退職再雇用を迫り、実質的に50歳定年制を企図するものであり、不当な動機・目的に基づくものであった。
(イ) 本件各配転は、配転の中でも著しい不利益をもたらす広域配転であったが、被告らはその候補者をあえて51歳以上の社員のうちの「満了型」選択者だけに限定した差別的人選を行った上、強行した。このことは、広域配転という不利益措置を51歳以上の者に課そうとする年齢差別を行うものであり、公序良俗に反する動機・目的で行われたことにほかならないものである。
(ウ) 本件各配転は、固定電話部門に「滞留」する中高年社員の労務コスト削減のために、被告会社が子会社を設立し、固定電話に関する業務を子会社に委託した上で、固定電話部門の中高年社員を被告らから退職させ、子会社において、従前と比べて15パーセントから30パーセント賃金を削減して「雇用替え」することを目的として行われたものである。
被告らは、これに応じた社員には、従来の業務への従事と勤務場所の限定を保証するのと対照的に、これに応じなかった社員には従来とは異なる職への配転と勤務場所の変更という不利益を与える必要があったのであり、平成14年に被告らが実施した雇用形態選択や本件各配転は、まさに、そのような不当な動機・目的で行われたものであった。
(エ) また、本件各配転は、通信労組における組合活動に従事していた原告らに対し、通信労組組合員であることを理由に行われたもので、組合活動上重大な支障を与える不当労働行為であり、不当な動機・目的に基づくものであった。
(オ) 被告らは、このような不当な動機・目的を持っていたため、満了型選択者(雇用形態選択書を提出しなかったため満了型とみなされた者も含む。以下も同様である。)に対しては、従前担当していた業務が移行された新会社への在籍出向を一切認めなかった。事業の継続性や業務の円滑な遂行という新会社の純粋な業務の必要性からすれば、原告らを在籍出向させない理由はない。
また、被告会社は、業務上の必要に基づき、地方圏から首都圏の法人営業等の業務のために人員を配置する際、地方圏の社員の負担を緩和するために原則3年間の期限付きの配転とし、期間経過後は配転元に復帰させるという運用をしていたが(被告会社内で、その運用は「パワーシフト」と呼ばれていた。)、被告会社は、満了型選択者に対する報復をする目的でこれを廃止し、広域配転による不利益に期限を設けないこととしたのである。
オ 原告らの個別事情
上記のような、業務上の必要性の欠如、不当な動機・目的の存在は、原告らに係る以下の個別の事情をみても明らかであるし、本件各配転が、原告らに配転に伴い通常甘受すべき程度を著しく超えた生活上、職業上の不利益を与えるものであったことも以下のとおり明らかである。
(ア) 原告X1
原告X1は、料金課での長年の経験を生かせない法人営業部に十分な研修もなく配属されるという職業上の不利益を受けた。同人は、法人営業の担当はできないため、地方自治体を客先とする緊急通報システム(福祉電話)の受注・撤去の仕事のみを担当させられ、職場で肩身の狭い思いをさせられている。また、原告X1の後任者は法人営業の経験・技術のない者が長野支店から配転となり、原告X1の配転先の埼玉支店からも1名東京支店に配転となっているが、これらの社員はいずれも満了型を選択した者で、かつ、通信労組組合員であった。原告X1に対する配転が、満了型選択者で通信労組組合員である者への不利益付与の目的で行われたことは明らかである。
原告X1は、本件配転により、自宅のある高崎市から川越市まで(現在は志木市)、通勤時間が約2時間となった。片道2時間の通勤が更年期を迎える原告X1に与える肉体的、精神的苦痛は多大なものであるばかりか、家族や群馬県内で1人暮らしをする実母の介護にも大きな支障が生じている。
(イ) 原告X2
原告X2は、電話交換業務、番号案内業務での長年の経験を生かせない法人営業部に十分な研修もなく配属されるという職業上の不利益を受けたばかりか、配転後の業務指示もなく、2か月間は担当顧客も割り当てられないという「窓際族」に追いやられ、その後も、必要な研修・指導もないまま放置されるという重大な不利益を受けている。
原告X2は、本件配転により、自宅のある群馬県邑楽群から川口市まで(現在は志木市)、通勤時間が約2時間となった。片道2時間の通勤がC型肝炎の持病を持つ原告X2に与える肉体的、精神的苦痛は多大なものであるばかりか、家族(特に高校を中退した二男)との関係に与えた影響は多大なものであった。
(ウ) 原告X3
原告X3は、料金事務での長年の経験を生かせない法人営業部に十分な研修もなく配属されるという職業上の不利益を受けた。しかも、配転先は、まともな仕事もなく、既に新会社への外注委託が決定されていたネットワークソリューションセンタであり(同センタは、満了型を選択した社員の集中、隔離のための部署であった。)、配転の必要性はおよそ認められない職場であったため、原告X3は、配転後、清掃等の無為な日々を過ごすことを余儀なくされた。
原告X3は、本件配転により、勤務場所が新潟県から東京都となり、単身赴任を強いられた。原告X3の実家は兼業農家であり、原告X3も両親の残した農地を維持するために、料金業務の傍ら農作業にも従事していた。配転は原告X3の農作業への従事を不可能とするものであり、原告X3に与えた影響は大きいし、単身赴任生活による支出の増加が2人の娘が海外留学している原告X3の家計に与えた影響も大きい。
(エ) 原告X4
原告X4は、無線通信技師としての長年の経験を生かせない法人営業部に十分な研修もなく配属されるという職業上の不利益を受けた。原告X4には吃音障害があり営業には不向きであるばかりか、配転先には無線に関する知識を活用する場もなく、原告X4を遠隔地から配転する業務上の必要性はなかった。厚木ロケーションには、原告X4の配転と同時に5名のAMが配置されたが、当時AMが9名しかいないところに、更に5名も満了型選択者をAMとして配置するのは異常であり、厚木ロケーションが満了型の受け皿として寄せ集められたことは明らかである。
原告X4は、本件配転により、勤務場所が宮城県から神奈川県となり、単身赴任を強いられている。原告X4は単身赴任を余儀なくされ、家族団らんを奪われたばかりか、宮城県内に住む年老いた実母や病気の姉の介護にも支障が生じるという不利益を受けている。また、本件配転は、原告X4の通信労組組合員としての活動や、通信労組宮城支部の活動に重大な支障を与えるものであった。
(オ) 原告X5
原告X5は、線路設備関係としての長年の経験や、その後の営業支援担当の経験を生かせない法人営業部に十分な研修もなく配属されるという職業上の不利益を受けた。配転先での業務は多岐にわたるものであるが、原告X5は、臨時電話や単独電話の新設・撤去等の業務しかできておらず、原告X5の従前の経歴は、配転先では役に立たないものであった。また、原告X5の後任には、満了型を選択した者が札幌から配転となっているように、原告X5を遠隔地から配転する必要性はなかった。
原告X5は、本件配転により、勤務場所が旭川市から東京都になり、単身赴任を強いられている。原告X5の単身赴任は、椎間板ヘルニア等の持病がある原告X5に対する苦痛はもとより、股関節に障害があり除雪作業のできない長女の生活に重大な支障を与えている。原告X5は、妻の左乳腺悪性腫瘍治療のため、多額の借金をしており、単身赴任生活により、単身で生活をしていた長男と併せ、3世帯を維持しなければならなくなり、経済的に多大な不利益を受けた。また、本件配転は、原告X5の通信労組組合員としての活動や、通信労組北海道支部の活動に重大な支障を与えるものであった。
(カ) 原告X6
原告X6は、線路業務での長年の経験を生かせない法人営業部(SO推進担当)に十分な研修もなく配属されるという職業上の不利益を受けた。原告X6の配転先では「専用回線設計・開通」が主要スキルとされており、原告X6の線路業務に関する知識は全く役立たず、原告X6を遠隔地から配転する必要性はなかった。
原告X6は、本件配転により、勤務場所が札幌市から東京都になり、単身赴任を強いられている。原告X6の単身赴任は、通信労組書記長としての任務があり、高血圧症の持病がある原告X6に対する苦痛はもとより、高齢でうつ病の実母や保育所長として多忙であった妻(本件配転後、原告X6の実母の介護のため退職に追い込まれた。)の生活にも重大な支障を与えた。
(キ) 原告X7
原告X7は、無線通信業務での長年の経験や、その後の法人営業担当等の経験を生かせない法人営業部(AM)に十分な研修もなく配属されるという職業上の不利益を受けた。原告X7の配転先ではAMを削減しており、原告X7を遠隔地から配転する必要性はなかった。原告X7が従事していた法人営業業務(大口ユーザ向け)は新会社に外注委託されなかったから、この点でも配転の必要はない。
原告X7は、本件配転により、勤務場所が山形県から神奈川県になり、単身赴任を強いられている。原告X7の単身赴任は、原告X7の生活に支障を与えたことはもとより、死期を控えた老齢の両親の生活や介護にも重大な影響を与えるものであった。また、本件配転は、原告X7の通信労組組合員としての活動や、通信労組山形支部の活動に重大な支障を与えるものであった。
(ク) 原告X8
原告X8は、主に専用線業務での長年の経験を生かすことができない法人営業部(システムエンジニアリング担当)に十分な研修もなく配属されるという職業上の不利益を受けた。原告X8の配転先では、原告X8が有する専用線業務の知識・経験に関連する業務はわずか2件のみであり、原告X8を遠隔地から配転する必要性はなかった。
原告X8は、本件配転により、勤務場所が山形県から東京都になり、単身赴任を強いられている。原告X8の単身赴任は、胃・十二指腸潰瘍の持病を持つ原告X8に対する苦痛はもとより、法律事務所事務員として多忙な妻の生活にも重大な支障を与えた。
(ケ) 原告X9
原告X9が配属されたメンテナンスビジネス推進部は、仕事の手順すら確立されておらず、配属後わずか13か月後に廃止された組織であり、満了型を選択した者を隔離するための職場にすぎなかった。同部において、原告X9の従前の知識や経験が業務に役立ったことはなく、原告X9を配転する必要性はおよそなかった。
原告X9は、本件配転により、勤務場所が立川市から東京都千代田区神田となり、自宅のある青梅市から片道約2時間の通勤を強いられた。片道約2時間の通勤は、原告X9の通信労組中央本部書記長としての活動や、母の介護に重大な支障を与えるものであった。
カ 手続の適正を欠くこと
労働条件は、使用者と労働者が対等の立場において決定すべきものであるが、本件各配転は、いずれも通信労組からの団体交渉の申入れや、原告らからの個別の異議申立てを無視して一方的に強行されたものであり、手続的にも適正を欠くものであった。
キ 以上のとおり、本件各配転には、業務上の必要性が認められないばかりか、本件各配転は不当な動機・目的に基づき行われたものであり、また、原告らに、配転に伴い通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を与えるものであったうえ、手続的適正を欠くものであるから、本件各配転は、配転命令権を濫用して行われたものであり、いずれも無効である。
(被告らの主張)
本件各配転は、以下のとおり、いずれも業務上の必要性に基づくものであり、かつ、正当な手続により行われたものである。
ア 本件構造改革の合理性・必要性
(ア) 被告会社は、事業再編前のNTTの収支構造を引き継いで平成11年7月に設立された会社であった。すなわち、被告会社は、その収入の約7割を固定電話の収入に依存し、法律等により新たな収入源の確保も規制されている一方で、NTT法上、全国各地の電気通信設備を不断に維持、更新するために毎年4000億円から5000億円の設備投資を義務づけられるという経営上の制限を負っていた。その人件費総額も営業費用の約22パーセントを占めており、人件費が被告会社の経営に与える影響も大きかった。
その後、被告会社の収支は、IT革命の飛躍的な進展、有力な外資系通信事業者やベンチャー企業等の新規参入による競争激化等により急速に悪化したため、被告会社が存続し、経営を維持するためには人的・物的コストを大幅に削減する等、コスト構造を改革することと、これまでの経営の収益構造についても抜本的に改革することが不可欠であり、その改革をもはや遅延できない状況となった(被告会社は、平成12年度に170億円、平成13年度に280億円、平成14年度に550億円の経常赤字が予測される状態となっていた。)。
被告会社は、平成11年11月、平成12年度から平成14年度の3年間を対象として、人員配置の見直し、グループ会社への出向・転籍、設備投資の削減等を内容とする「中期経営改善施策」を策定して、平成12年4月からこれを実施し、更に希望退職者募集の実施(約6500名が応募し退職)、新規採用の凍結(平成13年度から平成15年度まで)も行った。しかし、IP電話等の更なる普及も見込まれ電話事業の更なる減収が不可避であり、平成14年度の経常利益が大幅赤字となることも想定せざるを得なかったため、被告会社では社員の雇用の確保も危ぶまれる状態であった。
被告会社が従前、首都圏であると地方圏であるとを問わず、同一の人事制度、給与制度で社員を処遇してきたのは、市場に競争性がなく、被告会社が独占できていたから可能であったものであり、競争が激化した今日においてはこれを維持することは不可能であった。
そのため、被告会社は、平成13年4月16日、新3か年計画を作成して、「業務の抜本的なアウトソーシング(外注委託)」と「雇用形態・処遇体系の多様化」を柱とする本件構造改革を実施することとしたものであり、本件構造改革は被告会社にとって不可欠なものであった。
「業務の抜本的なアウトソーシング(外注委託)」とは、固定電話に関する提携業務及び地域密着型の業務を東日本地域の都道県別に新たに設立する「サービス系会社」、「設備系会社」、「共通系会社」の3系列の会社に外注委託するというものであり、「雇用形態・処遇体系の多様化」とは、社員が移行する新会社の労働条件を地場賃金並みのものとする(給与は15パーセントから30パーセント低い水準となる。)とともに、社員のライフプランの多様化も配慮し、雇用期間や賃金水準、勤務地域など労働条件の諸要素を多様に組み合わせて社員に選択させるものであった。
(イ) また、被告Y2は、主に電気通信設備の設備運営等に関する受託業務等を業務とする企業であり、その収入を被告会社その他のグループ会社からの業務の受託収入に大きく頼っていたところ、固定電話収入の減少を受けた被告会社等からの受託収入が大幅に減少したため、その収支が大幅に悪化していた。そのため、被告Y2にとって、被告会社等からの受託収入に頼る経営から、一般市場向けの事業を拡大し、その収支を改善することが必須の課題となっていた。
そのため、被告Y2は、被告会社等の電気通信設備の施行管理、故障修理・定期点検等、回線開通等の受託業務の大部分を新会社に移行するとともに、雇用形態・処遇体系の多様化を実施することとしたものである。
イ 本件各配転の必要性
(ア) 原告らは、いずれも、本件構造改革において、外注委託の対象となった業務に従事していた。
外注委託の対象となった業務に従事していた社員には、50歳以下の社員も51歳以上の社員もいたが、被告会社は、50歳以下の社員は新会社に在籍出向させることとし、51歳以上の社員は再配転の対象とすることとした。
これは、新会社には、51歳以上の退職再雇用選択者が多数在籍する見込みであり、年齢のバランスを取る必要があった一方で、51歳以上の満了型選択者に新会社への在籍出向を命じることは、賃金が減額となる繰延型を選択して新会社へ移籍した社員の不公平感を煽るものであったからであった。
原告らは、いずれも本件各配転時に51歳以上であったため、被告会社は、業務上の必要性のみならず、任用等のキャリアパス形成、スキル・年齢の一極集中の回避、将来にわたる円滑な業務運営や事業の継続性の確立という観点、更なる社員の個別の事情等を総合勘案して、原告らの再配転先を決定した。
原告らは、種々の配転障害事由を主張するが、原告らは、平成13年10月に実施された中間面談の際の自己申告や、平成13年12月に行われた個人面談において、具体的な配転障害事由を主張しなかった。後に原告らが通知書等で被告らに通知した配転障害理由も漠然としたものや事情を誇張したものにすぎなかった。また、これらの主張は、配転の内示の前後に行われたもので、時期に遅れたものでもあった。
原告らの中には健康上の理由を挙げる者もいたが、原告らの中に被告会社の健康管理規程上、指導区分に指定されている者もいなかった。
(イ) 新会社への業務の外注委託により被告会社に残された業務は、「経営・設備・開発・サービスに関わる戦略」を担う企画型業務と、法人営業業務と設備業務に限定された。そもそも原告らが従来稼働していた地方圏の法人営業業務は、人員が余剰であるばかりか、市場性が低く、収入増を図ることが困難でもあった。また、企画型業務や設備業務は、原告らの経歴からみて明らかに異質の業務であった。他方で、首都圏エリアではAM担当、SE担当が少なくともそれぞれ約600名、約1000名と大幅に不足している状態であり、被告会社にとって首都圏の法人営業強化は必須の課題であった。
また、被告Y2に残された業務は、主に一般市場向けの業務であり、これらの業務を強化することは被告Y2にとって必須の課題であった。
その結果、原告らの再配置先は、首都圏の各支店の法人営業や一般市場向けの業務等となったものであり、本件各配転は業務上の必要性に基づき行われたものである。
ウ 本件各配転に不当な動機・目的がないこと
原告らは、原告らのように高年齢の社員に、知識・経験・能力のない首都圏の法人営業に配転させるのは不合理であると主張するが、被告会社においては、もともと本来の意味での営業部門はないため、営業の経験がない社員を営業に転換することは被告会社において希有なことではなかった。また、原告らには法人営業等しか担当させうる業務はなかったし、50歳以下で地方で営業に従事している社員はそれぞれ大口ユーザ等の顧客を持っており、これらの社員を首都圏に配転させて、原告らを地元の法人営業に従事させることはデメリットが多く、現実的な選択肢ではなかった。
原告らは、本件各配転は、満了型を選択したことに対する報復目的で行われたにすぎず、原告らの配転の必要はなかったとも主張するが、本件各配転は、いずれも配転先からの人員配置要求に基づき、候補者の経歴や配転障害事由等を個別に考慮して行われたものであり、原告らの主張するような報復目的で配転が行われたという事実はない。
原告らは、51歳以上の社員を新会社に出向させなかったことをことさらに問題視するが、そもそも、いかなる者を新会社に出向させて委託業務に従事させるかについては使用者の合理的な裁量に属する問題である。被告会社が、満了型を選択した51歳以上の社員のうち、移行対象業務に従事していた者を中心として出向とせず、再配置した理由は、イ(ア)のとおりであり、業務上の必要性に基づくものであった。
エ 原告らの個別事情
原告らの事情を個別にみても、原告らに行われた配転が、業務上の必要性に基づいて行われたものではないなどといえないことは明らかである。また、原告らには配転に伴い生じた不利益はないか、あったとしても軽微なものにすぎなかった(本件配転前の個別面談等で具体的な支障を申し出た原告はいなかった。)。その詳細は、以下のとおりである。
(ア) 原告X1
埼玉県は、全自治体が電子自治体構築に向け、様々なシステム導入を検討していたため、被告会社としても埼玉県内における営業力を一段と強化する必要があり、埼玉支店全体では20名を超えるAMが不足する状態であった。このような中、同支店法人営業部エリアAM部門埼玉中央西営業担当は、担当する自治体数が他のエリアAM部門の営業担当と比較して多いため、人員を増加する必要があった。原告X1は、料金課において、長年の経験を持ち、各種商品に対する豊富な知識や接客経験を持ち、法人営業を行うのに十分な技能を有していたため、法人営業のAMの適任者と判断され、本件配転の対象となったものである。埼玉支店が原告X1を公共福祉の一貫として自治体が導入している緊急通報システムの担当とした理由は、自治体対応に他の社員を集中させる業務上の必要があったほか、緊急通報システムの担当が法人営業業務を初めて担当する原告X1にとって最適であるとともに、将来、原告X1がAMとして自治体を担当する場合にも有益であると考えられたからである。
原告X1は、通勤時間の増加により、家族の世話や実母の介護に支障が生じたとするが、原告X1は遅くとも午後8時には家に帰れるのであるし、子の年齢も、本件配転当時、二女18歳、二男12歳であり、原告X1の夫も家事や介護を手伝える状態にあったのだから、原告X1の主張する事由は配転の支障となり得るものではない。
(イ) 原告X2
被告会社埼玉支店法人営業部エリアAM部門埼玉南営業担当の管轄エリアはさいたま市の近隣であるため、IP・ブロードバンド系サービスの需要増が見込まれ、また、自治体対応の観点からも、AMが不足している状態であった。原告X2は、116センタにおいて、長年の経験を持ち、各種商品に対する豊富な知識や接客経験を持つほか、AMとしての活動経験も有しており、法人営業を行うのに十分な技能を有していたため、法人営業のAMとして適任であった。
原告X2は、通勤時間の増加による肉体的苦痛や、家族の世話への支障が生じたとするが、片道2時間の通勤時間は、配転に伴い労働者が通常甘受すべき程度を著しく超える不利益とはいえない。原告X2は遅くとも午後8時前には帰宅しており、家族の世話に支障が生じるとはいえないし、原告X2のC型肝炎の持病も、被告会社の健康管理規程上、指導区分に指定されていない。原告X2の主張する事由は配転の支障となり得るものではない。
(ウ) 原告X3
被告会社は、平成14年7月1日、業務の効率化の観点から、SOの受付・処理等を行う担当やお客様の設備状況の調査・コンサルティング・回線開通工事調整を一括して行うネットワークソリューションセンタ法人営業部をサービスマネジメント部内に組織化することとした。原告X3は、料金業務のうち回収業務に長年の経験を持ち、SO業務の豊富な経験を有しており、SOアシストから手配された主にアナログ回線やISDN回線、低速専用線といった商品・サービスの新設や変更等のSO処理及び回線調査等の業務を担当するSO推進担当となるのに十分な技能を有していた。
原告X3は、農作業に対する支障を主張するが、これは所定休日や年次有給休暇の利用により解決し得る問題であるし、電電公社への採用当時から生じ得る可能性がある問題であった。また、本件配転が原告X3に多大な経済的負担を与えたものでもない。原告X3の主張する事由は配転の支障となり得るものではない。
(エ) 原告X4
神奈川支店神奈川西法人営業部は、住宅戸数の増加に伴い、有線又は無線によるインターネット接続や無線LAN等の設備を新築マンションに予め設置するマンション営業の市場が拡大傾向にあったことや、ユーザカバレッジ向上の観点から、法人営業担当者の人員配置が急務の課題であった。他方で神奈川西法人営業部における業務内容は、教育系ユーザや大口ユーザをターゲットとする場合のような専門的知識やスキルを必ずしも必要としない営業活動が主たるものであった。原告X4は、IP・ブロードバンド事業に関する知識等を研修を通じ修得していたこと、無線の概要、無線の仕組み、電波伝搬、周波数帯域、電波出力等の無線に関する豊富な知識等を有しており、営業の幅を広げる可能性もあったことから、ユーザカバレッジという色合いが濃く、定型的な商品を扱うことが多く、格別の専門的知識を必要としない地域法人営業部である神奈川西法人営業部AM担当として適任であった。
原告X4は、実母や実妹の介護の必要を主張するが、原告X4が介護休暇や介護休職の制度を利用したことはないし、原告X4はその介護の必要性についても抽象的な主張しかしていない。原告X4の主張する事由は配転の支障となり得るものではない。
(オ) 原告X5
東京支店第一法人営業本部第1営業部門は、ユーザカバレッジを維持するため、行政・教育・医療・福祉関連の大規摸・大口ユーザに対してシステムやネットワーク構築等の提案・折衝ができるAMを必要としていた。原告X5は、線路宅内業務における長年の経験により加入者設備等についての豊富な知識のほか、小規模の法人ユーザ等に対する顧客対応等の知識・経験も有していた。原告X5は、旭川支店営業推進部において、SOHO・マスユーザ等を対象とした営業販売の業務に従事した経験等があり、前記部門においてAMの担当となるのに適していたため、本社から北海道支店に人選要請があった1名として、配転が命じられたものである。
原告X5は、配転による生活上の不利益として娘が股関節の手術をしていることや、経済的負担の増加、更に自身の健康状態の不安を挙げているが、原告X5の娘は既に成人して稼働している。原告X5が主張する経済的不利益についても、被告会社が支給する諸手当により回復し得るものであるし、原告X5の健康状態も被告会社の健康管理規程上、指導区分とされていない。原告X5が主張する事由は配転の支障となり得るものではない。
(カ) 原告X6
専用サービスセンタ第1ビジネスサービス部門は、専用サービスセンタで、今後収益の基盤となるIP・ブロードバンドビジネスの主力サービスである光サービスの需要が、首都圏エリアを中心に伸張することが予想され、大口ユーザの囲い込みに万全を期すべく、早急にSO推進担当(SO支援担当)を増員する必要があった。原告X6は、長年の加入者伝送設備の工事等の経験から、加入者伝送設備の現場業務や設計の知識・経験のほか、進捗管理のために関連会社と実際に折衝等を行う知識・経験を有しており、SO推進担当として適任であった。
原告X6は、配転の障害として、自身や高齢の実母の健康問題を挙げるが、本件配転当時、原告X6の実母に健康上の問題は生じていなかったし、原告X6本人についても、高血圧気味ではあるものの、健康管理規程上、指導区分とされていない。原告X6が主張する事由は配転の支障となり得るものではない。
(キ) 原告X7
神奈川支店神奈川西法人営業部は、(エ)のとおり、法人営業担当者の人員配置が必要であり、特に神奈川西法人営業部AM担当厚木ロケーションでは、マンション営業等の営業戦略に沿うべく営業体制を充実させることや、ユーザカバレッジ向上の観点から、AMを増員することが必要となっていた。原告X7は、法人営業のAM及び中小企業営業のAMの業務に従事し、ユーザへ訪問し、SEとも提携をしながら顧客に提案・折衝をする業務の経験を有していたことなどから、AM担当厚木ロケーションに適任であった。なお、原告X7は、外注委託されなかった大口ユーザ向け業務はごく一部を担当していたに過ぎないので、新会社への移行対象業務に従事していた者とされ、配転の対象となった。
原告X7は、家族や老齢の両親の生活や介護への支障を配転の障害として挙げるが、原告X7自身が両親の介護を行わなければならない事情はない。原告X7が主張する事由は配転の支障となり得るものではない。
(ク) 原告X8
東京支店第二法人営業本部千代田第2営業部門では、ユーザカバレッジを向上させるべく、電話回線を15回線以上保有するユーザに対してシステムやネットワーク構築等の提案・折衝を行うAMを技術的な側面からサポートするSEを必要としていた。原告X8は、長年専用線の業務や電報電話局での業務に従事した経験から、PBX、局内交換機はもとより、ビジネスホンに近いホームテレホンの知識・経験、顧客対応の知識・経験を有しており、第2営業部門SE担当として適任であった。
原告X8は、自身の健康問題、家族の生活への支障を配転障害事由として挙げるが、同人の胃潰瘍は、発病後も飲酒・喫煙を続けていることからも明らかなように極めて軽微なものであるし、家族との生活の問題もごく抽象的な事情をいうものにすぎない。原告X8が主張する事由は配転の支障となり得るものではない。
(ケ) 原告X9
被告Y2は、平成14年7月1日、既存の定額保守サービスのメンテナンスビジネスの拡大・充実を目的として、メンテナンスビジネス推進部を新設した。メンテナンスビジネス推進部は、その業務がメンテナンス業務を中心に、これを顧客のニーズを基にしてビジネスモデルとして具体化し、展開するものであったことから、故障修理等のメンテナンスに関する知識・経験、顧客の注文内容を理解し、工事依頼できる知識・経験、顧客との折衝ができる知識・経験を有する社員を必要としていたところ、原告X9は、電話交換設備に関する保守・設備管理の業務に従事していたほか、事前に行われた職場研修での評価も不適任ではなかったことから、メンテナンスビジネス推進部に配転された。
原告X9は、通勤時間が長時間となることを配転障害事由として挙げるが、原告X9は、勤務日・勤務時間のほとんどを組合休暇等で消費しており、配転による不利益はないか、あってもごくわずかにすぎない。また、同人が主張する、実母の介護の必要も実際にはなかったものである。原告X9が主張する事由は配転の支障となり得るものではない。
オ 手続が適正であること
被告会社は、全社員に対して、本件構造改革の実施に伴う雇用形態の多様化の概要及び選択の方法について、周知、説明し、更に、原告らを含む51歳以上の社員に対しては上長による個人面談を実施し、十分に周知・説明を尽くした。また、被告会社は、平成13年4月27日、「Y1の構造改革に向けた業務形態等の見直し等について」を提示し、その後、通信労組からの要求書に回答し、団体交渉において誠実に論議をした。
カ 以上のとおり、本件各配転は、業務上の必要に基づき行われたものであり、また、不当な動機・目的はなく、原告らに通常甘受すべき程度を著しく超える生活上、職業上の不利益を与えるものではないし、手続も適正であるから、被告らが行った本件各配転が、被告らの配転命令権を濫用したものということはできない。
(3)  争点(3)(本件各配転が法令や労働契約上の付随義務に違反するものか)
(原告らの主張)
ア 家族的責任を有する男女労働者の機会及び待遇の均等に関する条約(以下「ILO156号条約」という。)及び国際労働勧告第165号(以下「ILO165号勧告」という。)違反
ILO156号条約及び同165号勧告は、使用者が労働者の家族的責任を最大限に配慮すべきであり、労働者に仕事と家庭の選択を強いてはならないことを求めているところ、本件各配転は、いずれもこれらの定めや勧告に違反してされたものであり、無効である。
イ 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(以下「育児介護休業法」という。)26条違反
育児介護休業法26条は、使用者に対し、労働者の育児又は介護の状況に配慮すべきことを義務づけているところ、本件各配転は、老親や家族の介護等の原告らの実情に全く配慮しないでされたものであるから、いずれも、同法26条に反するものであり、無効である。
ウ その他の法令違反
本件各配転は、51歳以上の者を狙い打ちして行われ、労働者の人間性・尊厳や労使対等の原則を踏みにじり、労働組合に対する団体交渉拒否を行いながら強行されている点で、特に憲法14条、労働基準法3条、労働組合法1条、民法90条に反するものである。また、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(以下「高年齢者雇用安定法」という。)は、60歳未満の定年制を禁止するとともに、65歳までの雇用継続努力義務を使用者に義務づけているところ、「構造改革」は実質的に定年50歳制を導入するものである。本件各配転は実質的に定年50歳制を定めた本件構造改革に基づいて行われたものであるから、高年齢者雇用安定法にも違反する。また、本件各配転は、原告らの健康状態等に配慮しないで行われた点で労働安全衛生法62条に反するものであるし、本件構造改革は、実質的に会社を新設分割した上で、労働条件を一方的に不利益変更するものであるから、会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律(以下「労働契約承継法」という。)にも反するものである。
エ 労働契約上の付随義務違反
使用者には、労働契約上の付随義務として、配転の際に、生活に重大な不利益が生じることないよう配慮する義務、職務変更の際、労働者の職務上の能力やキャリアを傷つける配転をしないよう配慮する義務、労働者の人間性を配慮する義務を負うと解されるが、本件各配転はこれらの配慮を全く行わないでされたものであるから、本件各配転は、労働契約上の付随義務にも反するものとして、無効である。
(被告らの主張)
原告らが挙げる法令は、いずれも直接的に使用者の配転命令権を制限し、又は、何らかの義務を発生させるものではないし、本件各配転が原告らが引用する各法令の趣旨に反しているともいえない。また、原告らが主張するような付随義務が労働契約上発生するともいえないから、原告らの主張は理由がない。
(4)  争点(4)(本件各配転は通信労組に対する不当労働行為といえるか)
(原告らの主張)
本件各配転は、原告らが通信労組に加入しているがために行われた不利益取扱いである。本件各配転により、原告らが所属していた通信労組支部はいずれも活動不能の状態に陥っている。本件各配転は、通信労組が本件構造改革に反対する立場を堅持したことを理由として報復的に行われた配転であり、労働組合法7条1号、3号に違反するものとして、いずれも無効である。
(被告らの主張)
本件構造改革は、通信労組加入の組合員のみを対象として行われたものではなく、本件各配転は、通信労組に加入していることを理由として行われた不利益取扱いではない。実際に、満了型を選択し、配転の対象となった社員の中にはNTT労働組合組合員も存在する。また、原告らの中に、本件各配転を理由として組合活動に支障を生じた者もいない。
(5)  争点(5)(不法行為の成立・慰謝料の額)
(原告らの主張)
本件各配転は、以上のとおり無効であり、これにより原告らに多大な精神的・肉体的苦痛や経済的負担を与えたものであるから、被告会社は、原告らに対して、不法行為に基づく損害賠償義務を負う。原告らが受けた精神的苦痛を慰謝するには各300万円をもってするのが相当である。
なお、原告X9に対する配転は、被告Y2が実施したものであるが、原告X9に対する配転は、本件構造改革の一環として被告Y2が被告会社を代行して行ったものであり、被告らの共同不法行為によるものである。
(被告らの主張)
原告らの主張は争う。
なお、原告X9に対する配転には、被告会社は関与していない。
第3  当裁判所の判断
1  争点(1)(勤務場所や職種を限定することが労働契約の内容となっていたか)について
(1)  原告らは、採用時の合意又はその後の運用により、原告らの勤務場所や職種を限定することが、明示的又は黙示的に労働契約の内容となっていたところ、本件各配転は、いずれも、原告らの同意なしに一方的に行われたものであるから無効であると主張する。
(2)  しかし、原告らが、電電公社や被告らとの間で、勤務場所や職種を限定する旨の合意をしたことを直接示す証拠はない。
かえって証拠(乙10、68)及び弁論の全趣旨によれば、職員(社員)の配転について、電電公社就業規則51条は「職員は、業務上必要があるときは、勤務局所又は担当する職務を変更されることがある」と、被告会社就業規則60条(被告Y2就業規則58条は同内容の規定である。)は「社員は、業務上必要があるときは、勤務事業所又は担当する職務を変更されることがある」と規定していると認められるのであって、原告らについてのみ、これらの就業規則の適用対象外となると解すべき根拠はない。原告らは、採用時に上記就業規則の説明はなかったと主張するが、仮に採用時に就業規則の各条項について個別具体的な説明がなかったとしても、そのことから就業規則の効力が否定されることとなるものではないうえ、証拠(乙74、77、80、82、84、86、88、90、92)によれば、原告らは、いずれも、採用時に、「法令その他公社の定める諸規定を守り誠実に職務を遂行することを固く誓います」とする誓約書に署名、押印していると認められるのであるから、原告らに対して上記就業規則の適用があることは当然というべきである。
原告らは、各地域の電気通信局、電気通信部、電報電話局等で採用手続が採られたことを原告らに電電公社就業規則51条(被告会社就業規則60条、被告Y2就業規則58条)の効力が及ばないことの根拠として主張するようでもあるが、証拠(乙153、155、証人C)によれば、原告らについては採用手続が各地域の電気通信局、電気通信部、電報電話局等で採られたのは総裁の事務の煩瑣を避けるためにすぎず、原告らを地元限定の職員として採用した趣旨のものではなかったことが認められるのであるから、採用手続が各地域の電気通信局等で採られたことが、原告らに前記就業規則の適用が排除される根拠となるとは解されない。
(3)  もっとも、証拠(甲48、49、51、52、225、226)によれば、原告X1は、職種を「電話交換」、勤務場所を「原則として桐生、太田、渋川の各局に通勤可能の者とします」、「女子については桐生、太田、渋川の各電報電話局の予定」とする募集案内を見て電電公社に応募し、社員採用時には、「桐生電報電話局電話運用課勤務、電話交換職3級」との辞令の交付を受けたこと、原告X2は、「勤務局所までの通勤時間が1時間30分以内の地域に居住する者」であることを応募資格とする身体障害者の電話交換手の枠に応募して採用されたこと、原告X5は、見習社員雇用時に「旭川電話局施設部第二線路宅内課勤務、線路職3級」と、社員採用時に「旭川電話局施設部第二線路宅内課勤務、線路職3級」とする辞令の交付を受けていることが認められる。
しかし、採用募集や辞令は、採用後当面の勤務場所や職種を規律する根拠となる場合がありうるとしても、その者が長期間雇用された場合に、業務上の必要性に基づく配転命令権の行使を一切制限する根拠となり得るものとは解されない。また、その内容をみても、そもそも原告X1や同X2が主張する募集案内は、勤務地を「予定」とか、「通勤時間が1時間30分以内の地域」とするのみで、勤務場所を明確に限定したものではない。原告X5に対する辞令も、当面の職種や勤務場所を明示する以上に、職種や勤務場所を限定して採用する意思を示したものとは解されない。
原告らは、その勤務場所や職種が採用時に限定されていたことの根拠として、採用時に特定の職種の指定を受け、当該職種に応じた給与水準で処遇されていたほか、入社直後の研修も当該職種に限定した研修が行われていたこと(原告X3、同X4、同X6)、卒業した高校の推薦枠に応じて勤務場所が定められたこと(原告X5、同X7、同X9)、採用募集や採用試験が地元地域で行われたこと(原告X7、同X8)を挙げるが、これらの事実が、電電公社と原告らが勤務場所や職種を限定する合意をしたことの根拠となり得るものとは解されない。
また、原告らは、原告らの学歴や電電公社による採用の時期に照らせば、原告らのような者(特に女性労働者である原告X1及び同X2)については、特段の事情がない限り、広域配転を行わないことが黙示的に合意されていたというべきであるとも主張するが、原告らがいずれも、電電公社に配転命令権があることを内容とする就業規則を順守する誓約書を提出していることは前記認定のとおりであるし、証拠(乙75、78)によれば、女性労働者である原告X1及び同X2も、電電公社による採用面接の際、希望勤務場所はどこでもよいとし、原告X1は「県外でも行きたい」と希望していたと認められるのであるから(なお、原告X3、同X4及び同X8も同様の回答をしている(乙79、81、89)。)、前記のような見解に立つとしても(その当否は措く。)、原告らについて、広域配転をおよそ行わないとの合意が成立していたと認める余地もない。
以上のとおり、原告らと電電公社との間では就業規則に従った労働契約が締結されたものであり、原告らが職種や勤務場所を限定されて採用されたとみることはできない。
(4)  原告らは、採用後の勤務場所や職種が長年異動されなかったことからすれば、被告ら(電電公社)と原告らとの間には、本人の同意なしに勤務場所や職種が変更されることはないという合意が成立していた(労働契約の内容となっていた)というべきであると主張する。
確かに、前提事実(7)アないしケの各(イ)、(ウ)によれば、原告X1が約33年間群馬県内で主に電話交換手や料金担当業務に、原告X2が約34年間群馬県内で主に電話交換手や番号案内業務に、原告X3が約38年間新潟県内で料金事務に、原告X4が約37年間東北地方(最初の3年を除いて宮城県内)で無線通信業務に、原告X5が約37年間北海道内(すべて旭川市内)で主に線路設備業務に、原告X6が約36年間北海道内(すべて札幌市内及びその近郊)で主に線路業務に、原告X7が約35年間東北地方(最初の10年を除いて山形県内)で主に無線通信業務に、原告X8が約36年間山形県内で主に専用線業務に、原告X9が約38年間東京都内(すべて立川市内及びその近郊)で機械課業務等に従事していたことが認められ、長期間職種や勤務場所に変更がなかったことは、いずれも事実である。
しかし、前提事実(7)アないしケの各(イ)、(ウ)によると、原告らの中に、本件各配転前に、勤務場所や従事する業務が全く変更されなかった者は存在しない。後記のとおり、社員を異動させるに際して同意書を求めていた事実はなく、現に同意のない配転が行われていた事実もあるのだから、原告らに対して、従事する業務や勤務場所を変更する配転が行われた際に、原告らの同意を得ることが条件となっていたとも認められない。そうだとすれば、前記のとおり、原告らについては長期間異動がなかった事実があったとしても、結果的に長期間異動がなかったというにすぎず、被告らが労働契約上本人の同意を得なければ原告らを配転することができないと認識していたとは認められず、配転に際し、事前に社員の同意を得ることが、被告らと原告らとの労働契約の内容となっていたと認めることはできない。
原告らは、原告らと同様、高卒で採用され、原告らと同様の職種に従事している社員が本人の同意なしに広域配転の対象となったことはなく、広域配転の際に本人の同意を得ることは社内慣行となっていたと主張し、例えば、原告X4は、昭和51年には、従前の希望通り仙台統制無線中継所への配転が実現したし、昭和54年には、会津若松統制無線中継所への配転を拒否したところ、配転が実施されなかったことがあったと主張、陳述等し(甲142、原告X4本人)、他の原告らも同趣旨の主張、陳述等をする(甲184、185等)。
しかし、仮に、そのような事実が存在したとしても、上記の事実は、配転に際し、本人の意向を尊重した人事異動計画を被告会社が立案していたことを示すものにすぎないのであって、被告会社が本人の同意なしに配転を行わないことが労使の慣行となっていたことを示す事実であるとは解されない。被告会社が原告らに対して行われた配転に先立ち同意書を求めるなどして同意の有無を明確に確認する方法を採っていたのであれば格別、本件全証拠によってもそのような事実は認められない。このことからすれば、前記のような事実が存在したとしても、それは、被告会社が社員の意思を可能な限り尊重して配転を行っていたという以上のものであったとは解されない。被告会社において配転の権限を有する管理者が社員の同意がなければ配転をしないという慣行があることを承認し、これに従う意思を有していたとは認められない。
被告会社が、配転に際し、対象となる社員の同意を必要とする運用を行っていなかったことは、証拠(乙181、189)によれば、過去にも、新潟県内や千葉県内において、本人の意に反する配転が行われた事例が複数ある(千葉県内で配転の対象となった社員は、電話交換手3名である。)と認められることからも明らかであるし、証人Dも、被告会社が配転に際し本人の意思を尊重していたとの趣旨の証言をするものの、本人の同意を条件とする運用を被告会社が行っていたと証言するものではない。
以上のとおり、原告らが長期間異動をしなかったことから、本人の同意なしに勤務場所や職種が変更されないことが労働契約の内容となり、又は労使慣行となっていたと認めることもできない。
(5)  原告らは、電電公社と旧全国電気通信労働組合(NTT労働組合)との間で締結されていた労働協約上、異職種の配転の際には本人の同意が要件とされていたとも主張する。
しかし、証拠(甲27、28)及び弁論の全趣旨によれば、旧全国電気通信労働組合(NTT労働組合)と電電公社との間の労働協約である「職員の配置転換に関する協約」には、「配置転換は本人の適性、業務上の必要度、家庭の事情、経験、本人の希望、健康、通勤時間、住宅を総合的に勘案し、原則として、職員が現についている職位と同程度または同程度以上の職位で別表に定める関連ある職種間について行うものとする。」(2条1項)、「別表に定める関連ある職種以外の職種間における配置転換は、本人の同意を得て行うものとする。」(2条2項)と規定され、「営業職」と「関連ある職種」としては、「事務職」、「無線通信職」、「電話交換職」が定められ、本件各配転時に効力を有していた同趣旨の内容の労働協約である「社員の配置転換に関する協約」にも、「事務」と関連する職掌として「通信、オペレータ、機械、線路、データ、守衛、用務、海底線、研究開発」が、「通信」と関連する職掌として「事務、オペレータ、機械、線路、データ、守衛、用務、研究開発」が、「オペレータ」と関連する職掌として「事務、通信、機械、線路、データ、特殊技能、研究開発」が、「機械」に関連する職掌として「事務、通信、オペレータ、線路、データ、研究開発」が、「線路」に関連する職掌として「事務、通信、オペレータ、機械、データ、守衛、用務、海底線、研究開発」が規定されていることが認められる。前提事実(7)によれば、原告X1、同X2、同X3、同X7は「事務」職掌、原告X6、同X8は「線路」職掌、同X4は「通信」職掌、同X9は「機械」職掌であったのであるから、前記各協約上も、本件各配転につき、本人の同意が必要とされるものではない。かえって、前記協約上、上記異職種間の配転以外の配転については本人の同意を必要としないで配転し得ることが労使間で当然の前提とされていたことは明らかであり、原告らについてされた本件各配転につき、前記各協定によって原告らの同意が必要であるとすべき理由はおよそない。
また、証拠(乙278の1)によれば、旧全国電気通信労働組合(NTT労働組合)と電電公社との間の労働協約である「山上・へき地に所在する無線および搬送施設関係局所への配置転換に関する協約」があったと認められるけれども、同協定は、「へき地局所へ配置転換された者の在勤期間は、原則として、2年とする。」(3条)と規定するのみで、へき地勤務者の在勤期間に係る原則的な運用を定めた以上の内容のものでもないから、労働協約上も、原告らに対する配転命令権の行使の際、本人の同意が要件となると解する余地はない。
(6)  原告らは、労働契約上、業務上の必要性が認められない配転、不当な動機・目的により行われる配転、労働者に通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を与える配転を行わないことが、当然に契約の内容となっており、この内容に反する配転は、当然に労働契約上無効とされるべきであると主張する。配転命令権の行使に対する制限を、権利濫用の問題として考慮するほかに、上記のような労働契約の問題として考慮することに果たしていかなる実益があるかは疑問であるが、その点を措くとしても、本件各配転には、業務上の必要性が認められ、その動機・目的も不当なものではなく、配転に伴い原告らに生じたという不利益も、通常配転に伴い労働者が甘受すべき程度を著しく超えるものではなかったことは2に説示のとおりであるから、いずれにしても原告らの主張は理由がない。
また、原告らは、民法625条1項は、労働者の同意のない移籍の禁止を定めていると主張するが、本件各配転は原告らを被告らとは別の会社に移籍させる効果を持つものではないから、少なくとも原告らとの関係で、本件各配転が民法625条1項違反となる余地はない。原告らは、雇用形態・処遇体系の多様化の実施にあたり、繰延型を選択し、被告らを退職することを被告らが強要したとして、その態様が民法625条1項の趣旨に違反すると主張するようでもあるが、実際に原告らは繰延型を選択していないのであるし、雇用形態・処遇体系の多様化の実施にあたり、被告らが繰延型の選択を強要したといえないことも後述(2(14))のとおりであるから、原告らの主張は理由がない。
(7)  以上によれば、原告らと被告らとの間に、勤務場所や職種を限定する合意や慣行が存在したとは認められないから、争点(1)についての原告らの主張は理由がない。
2  争点(2)(本件各配転が被告らの配転命令権を濫用して命ぜられたものか)について
(1)  争点(1)に対する判断で説示のとおり、原告らに対しては、勤務場所又は職種が変更される旨を定める被告会社就業規則60条又は被告Y2就業規則58条の適用がある。もっとも、就業規則に配転に関する一般条項が定められているからといって、被告らの配転命令権が無制限に認められるものではない。配転命令権が、業務上の必要性が存しないにもかかわらず行使された場合や、業務上の必要性が存する場合であっても、他の不当な動機・目的をもって行われたものであるとき、又は、労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるときには、配転命令権が権利を濫用して行使されたものとして、無効となる。
そこで、以下、まず本件各配転の前提である本件構造改革の合理性、必要性をみたうえで、本件各配転の必要性があるかどうか((3)から(13)まで)、不当な動機・目的があるかどうか((14))、原告らに通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるかどうか((15))を、順次検討する。
(2)  本件構造改革の合理性・必要性
ア 本件各配転は、前提事実(2)ないし(7)のとおり、本件構造改革を前提とするものであり、本件構造改革による業務の外注委託と雇用形態の選択が直接的な契機となっているものである。したがって、本件構造改革に必要性も合理性もなく、また、その目的や動機あるいは内容や手法が不合理、不当であると認められる場合には、本件各配転は、そもそも合理的な前提を欠き、内容的にも不当、不合理なものということになり、配転命令権を濫用したものとなる可能性が大きくなる。
逆に、本件構造改革が経営上合理的な判断であり、その必要性もあったといえる場合には、そのことから直ちに、本件各配転に業務上の必要性があったとか、不当な動機・目的がなかったといえるわけではないけれども、本件各配転の合理性、必要性などを裏付ける重要な事情となり得る。
これを本件構造改革の内容に即していえば、本件構造改革による業務の外注委託は、被告らにおける原告らの担当業務を被告らから失わせるものであるから、業務の外注委託により従前の担当業務がなくなった場合には、その結果として、それまでとは異なる職務に従事せざるを得ないことは当然であるし、その際に、従前の勤務場所における配転が種々の事情により困難である場合に、遠隔地への配転が余儀なくされたとしても、そのことを直ちに不当といえない場合があることも、やむを得ないところである。配転における業務上の必要性は、当該配転先への配転が余人をもって替え難いといった高度の必要性に限定されるものではなく、労働力の適正配置、業務の能率推進、労働者の能力開発、勤務意欲の高揚、業務運営の円滑化といった点で、使用者の合理的運営に寄与する点があれば認められるものであるが、それまでの担当業務が会社になくなった結果、やむを得ず配転する場合と、従事すべき担当業務が存在しながら、あえて配転する場合とでは、前記必要性の判断にも自ずと差異が生じることは明らかである。
以上のとおり、本件構造改革が、合理性、必要性を有するものであったか、また、その程度はいかなるものであったかは、本件各配転の業務上の必要性等を判断するにあたり、重要な意味を持つというべきである。
イ そこで、本件構造改革の合理性、必要性を判断するが、まず、その前提として、本件構造改革の計画、実施等の経過をみることにする。前提事実に証拠(乙3ないし9、11ないし13、15ないし17、21、39、118、131の1ないし3、153、323、証人E、同C)及び弁論の全趣旨を総合すると、以下の事実が認められる。
(ア) 被告会社は、平成11年7月、NTTの再編成により発足した。被告会社の前身である電電公社は、電信電話設備を国内全体にひとしく整備・拡充することを使命としていたため、電話交換機、伝送路の設置、運用・保守等を日本全国で行うべく、昭和36年から昭和51年にかけて、年間平均約1万5000名の職員を採用した結果、職員数は、昭和54年度末時点で約33万人となり、その大半が電話交換機等の電気通信設備の保全等の業務に従事するという状態となっていた。昭和54年以降は、電気通信設備の拡充の必要が大幅に減少したことや、既存の電気通信設備の運用・保守等の保全部門は機械化が進んだため、保全部門に従事していた社員の適正配置及び活用は、昭和50年代半ばころから電電公社の重要な課題となっていた。
電電公社は、その後、民営化によるNTTの設立の後、業務拠点の集約化、需要の見込める新規分野の事業化とその事業の分社化等により、社員を大幅に減少させるとともに、合理化施策により社員の適正配置に努め、さらに数次にわたる希望退職募集を行ってきたが、被告会社設立当時においても、被告会社の社員数は約5万8050名(a社等再編成4社合計では約13万4000名)に達し、人件費総額も営業費用の22パーセントに達していた。
(イ) 情報通信産業においては、被告会社設立当時から、いわゆるIT革命と称される情報通信技術の飛躍的な進展を背景として、情報通信のマルチメディア化と国際化が急速に進展し、国内市場においても、有力な外資系通信事業者、ベンチャー企業等の新規参入により、地域通信から長距離・国際通信まで、あらゆる分野で激しい競争が繰り返されていた。
また、固定電話から携帯電話等の移動体通信への移行等により、平成10年度において営業収入の77パーセント、平成12年度において営業収入の70.5パーセントと、被告会社の収入の大部分を占めていた固定電話収入は、平成7年から平成11年にかけ毎年減少しており、将来的にも減少し続けることが見込まれていた。更に、平成12年10月実施予定の「プライスキャップ制」、平成13年5月実施予定の「マイライン(電話会社選択)」制度の導入、事業者間接続料金に関して当局の予定していた長期増分費用方式の実施等(いずれもその後予定通り実施された。)により、被告会社の収入は更に減少することが見込まれたため、被告会社が従前の経営体制を維持した場合には、平成12年度に170億円の、平成13年度に280億円の、平成14年度に550億円の経常損失を発生させることが予測されるに至った。
(ウ) そのような中、NTT、被告会社、a社は、平成11年11月、「中期経営改善施策」を策定し、平成12年から平成14年にかけて、被告会社及びa社において、人員削減(約2万1000人)、設備投資削減(約9000億円)、各種経費の削減等を行い、平成14年度までに730億円の経常利益の達成を企図することとした。
中期経営改善施策において行われた人員配置の見直しでは、被告会社は、従来の販売拠点等を見直し、人材を情報流通分野や、首都圏・地方圏県庁所在地等の市場性のある拠点に再配置することとし、販売業務、窓口業務、電話受付業務、料金業務、故障受付業務の拠点を大幅に統廃合するとともに、社員を固定電話から情報流通へ、また、市場性のある首都圏エリアへと大幅に異動させた。その結果、平成13年度末までに配転対象となった社員は約1万7200人となった。また、業務集約及び拠点の統廃合により、社員の余剰が明らかとなったため、被告会社は、平成13年度末までに約1800人の社員をグループ会社に出向、転籍とした。
更に、被告会社は、人件費削減のための施策として、平成12年から平成13年にかけて、4回にわたり、希望退職者を募集したほか(約6500名の社員が希望退職した。)、平成13年度から平成15年度にかけては、新規採用を行わなかった。
(エ) 中期経営改善施策の実施中も、競争激化により、NTTグループの市場でのシェアは、平成13年度時点で、長距離通信(県間通信)50.2パーセント(平成9年度比12.5パーセント減)、地域通信(県内通信)65.2パーセント(同23.9パーセント減)と減少し続けていたほか、固定電話契約者数も平成14年度末において5116万契約と平成5年度比で767万契約減となったほか、料金値下げ競争により、被告会社の収支は悪化した。平成13年11月時点で、被告会社の営業収入も平成12年度の2兆7900億円から平成13年度の2兆5700億円と2200億円減少し、経常利益も平成12年度の141億円から平成13年度は約75億円に落ち込むことが判明し、平成14年度には更なる経常利益の減少が想定される事態となった。
(オ) NTTは、平成13年1月、被告会社を始めとするグループ各社に、今後の営業収益の減少に耐え得る抜本的、効率的な事業計画の策定、提出を要請していた。被告会社の収支は、中期経営改善計画の実施によっても、(ウ)のとおり、大幅には改善しなかったため、NTTは、平成13年4月、新3か年計画を公表し、被告会社は、より抜本的、効率的な事業計画として、本件構造改革を実施することとした。
(カ) 本件構造改革では、「業務の外注委託」と「雇用形態・処遇体系の多様化」が重要な施策として位置づけられた。
「業務の外注委託」とは、固定電話に関する定型業務及び地域密着型の業務を東日本地域の都道県別に新たに設立する「サービス系会社」、「設備系会社」、「共通系会社」の3系列の会社(新会社)に外注委託するというものであった。
また、「雇用形態・処遇体系の多様化」とは、51歳以上の社員(平成15年3月31日に51歳以上となる者)について、①被告会社を退職し、新たに各都道県に設立された会社に雇用され、勤務場所は地元に限定されるが、賃金は地場賃金並みに減額される(具体的には、給与は従来より15パーセントから30パーセント低い水準となる。)という繰延型・一時金型か、②被告会社に60歳まで勤務するが、業務はこれまでの職務にかかわりなく法人営業等に限定される上、勤務場所は市場性の高いエリア(首都圏エリア等)となることがあるという満了型かのいずれかを、各社員に選択させるものであった。
被告会社は、本件構造改革の実施に先立ち、全社員(約4万6700人)のうち雇用形態選択制度の対象者である51歳以上の者約2万6700人の中で、約2万5000人が繰延型又は一時金型を選択し、新会社で再雇用されることとなると見込んでいた。
被告会社が、業務の外注委託と雇用形態・処遇体系の多様化を本件構造改革の重要な施策として位置づけたのは、これにより、コストの削減、とくに相対的に高い51歳以上の社員の人件費や、収益力が乏しい地方圏の人件費を抑えることができ(被告会社は、事業を独占していた時代に、首都圏エリア、地方圏エリアを問わず、全国一律の賃金を社員に支給することとしていたが、市場が小さい地方圏エリアでは、その収支がほとんど赤字となっていて、地方圏エリアで稼働する被告会社社員の賃金と地場賃金との格差は拡大していた。)、併せて、人員が過剰で収益力が乏しい地方圏から、人員が不足し収益力がある首都圏エリアに、労働力を異動させ、また、人員を、大きく需要が見込まれるIP・ブロードバンドビジネス(その中心を担うのが法人営業等である。)の販売強化に集中させることができるからであった。
(キ) 被告Y2は、主に電気通信設備の設備運営等に関する受託業務、通信機器販売・保守受託業務、各種ネットワークサービスの販売取次業務等を業務とする企業であり、その収入の大部分は、被告会社その他グループ会社からの業務の受託収入が占めていた。
ところが、被告会社の収益の基盤であった固定電話収入の減少に伴い、その収益が悪化し、平成11年度に48億円であった経常利益が、平成12年度には9億円となり、平成13年度には赤字に転落する見込みとなった。
そのような中、被告会社は、本件構造改革の一環としてコスト構造改革を実施し、被告Y2への委託費用を更に削減することを決定した。
そのため、被告Y2は、収益を被告会社等からの受託収入に頼る経営から、一般市場への事業転換を図ることとし、被告会社等の電気通信設備の施工管理、故障修理・定期点検等、回線開通等、受託業務の大部分を新会社に移行するとともに、被告会社が実施したのと同様の雇用形態・処遇体系の多様化を実施することとした。
ウ 上記のとおり、中期経営改善施策の実施によっても、被告会社の業績が大きく改善しなかったことや、被告Y2の収益が大幅に悪化し続けていたことからすれば、収益構造の大幅な転換を目指すことを内容とする本件構造改革が、被告らにとって経営上極めて重要な施策であったであろうことは明らかである。本件構造改革の実施時において、被告らの経営状態が、本件構造改革を実施しなければ直ちに危機に瀕する状態であったとまでは考えにくいものの、更なる改革を実施しなければ、被告らの収支は更に悪化し、経常損失を計上する事態となることも予想されたことからすれば、被告らがその業務態勢を一新し、収支構造の改善を図る施策を講じようとしたことは理解できることであって、その判断が不当なものであったとは解されない。
そして、固定電話による収入が減少傾向にあったこと、地方圏エリアにおける収支状態は良好でなく、地方圏エリアでは社員の賃金も地場賃金より高水準であったことからすれば、被告会社が、収支構造の改善を図る施策として、固定電話に関する定型業務及び地域密着型の業務を、賃金水準を地場賃金並みとする新会社に移行させ、被告会社の労働力は今後需要が見込まれるIP・ブロードバンドビジネスに集中させるべく、業務の外注委託と雇用形態・処遇体系の多様化を柱とする本件構造改革を実施したことも、十分合理的な判断であるということができる。被告会社から新会社に外注委託された業務は、前提事実(5)のとおり、中小規模のユーザ向けに対するサービス業務やSO業務、電話交換機や通信設備等の運用・保守に係る業務等であるが、これらの業務は、今後被告会社の主要な収入源となり得るものではないのに対し、これらの職務に従事する地方圏の社員の給与は高水準であったというのであるから、給与水準が被告会社より引き下げられる新会社に外注委託する業務として、これらの業務を選択したことにも特段不合理な点はない。また、被告Y2についても、従前の収入の大部分を占めていた被告会社等からの受託収入が減少し続けていたことからすれば、被告Y2が、一般市場向けの事業以外の事業を新会社に外注委託したことについても、特段不合理であるとは解されない。
原告らは、被告会社は、巨大安定企業であり、経営状態も財務体質も良好であり、人的コスト削減を行うことに合理性、必要性はなかったと主張する。しかし、被告会社が、平成12年度において2兆7945億円の営業収入と141億円の経常利益を出していたことは事実である(争いない)としても、前記(イ(イ))のとおり、被告会社の収入は、固定電話部門を中心として減少傾向にあり、その傾向は引き続くと予測されていたのであるし(前記のとおり、現実に被告会社の平成13年度の営業収入は前年度比2200億円減少している。)、当時、情報通信産業における値下げ競争やシェア獲得競争が容易にやむ状況にもなかったことも広く知られているところであるから、被告会社が、抜本的、効率的に経営体質を改善すべく、本件構造改革を実施したことには、合理性、必要性があったと認めることができる。
また、原告らは、NTTグループはグループ全体でみて安定した経営状態にあったのであるから、本件構造改革を行う必要はなかったと主張するが、被告らは、グループ会社と法的に一体の会社ではないのだから、NTTグループが全体でみて安定した状態にあるとしても、本件構造改革を実施する合理性、必要性がなかったということになるものではない。
エ 以上のとおり、本件構造改革は、被告会社及び被告Y2が、コスト削減により経営体質を改善し、併せて、労働力を人員が不足しかつ収益力がある首都圏を中心とする都市圏や今後需要が見込まれるIP・ブロードバンドビジネスに集中させるものであって、合理性、必要性があったと認めることができる。そして、被告らが大幅な経常損失を近いうちに発生させることが予測されていた状況下にあったことからすれば、その必要性は高かったと認められる。
オ もっとも、本件構造改革は、前記イ(カ)のとおり、社員に対して雇用形態の選択をさせるものであり、51歳以上の社員は、概括的にいえば、勤務場所は現在の勤務地に固定されるものの退職・再雇用による賃金の減額を受け入れるという繰延型・一時金型と、賃金水準は維持されるけれども、職種や勤務場所が変更される可能性のある満了型(地方圏に居住する者は、首都圏が勤務場所となると、必然的に住居移転や長距離通勤を迫られることになる。)のどちらかを選択することが求められる。前記のとおり、被告らにおいては、労働契約上あるいは労使慣行として、職種や勤務場所は本人の同意がない限り変更されないことになっていたとは認められないけれども、実態としては、勤務場所は長期間にわたって変更されず(自宅からの通勤が容易な勤務場所に限られていた。)、職種も本人が希望しない限り変更されないことが多かったことからすれば、賃金水準に変更がないとしても、職種が変更し、勤務場所も遠隔地になる可能性があるというのは、それまでの労働条件に比べて事実上の不利益となることは否定しがたい。かといって、退職・再雇用にすると、賃金が減額されるから、これも従前の労働条件より不利である。その意味で、特に、地方圏で移行対象業務に従事する51歳以上の社員にとっては、雇用形態の選択制度は、どちらを選択しても、従前の労働条件に比べて、事実上、不利益となることは否定しがたい。
そのうえ、雇用選択制度の対象者は51歳以上の社員であり、年齢が高く定年(60歳)までの期間が短いこと、これまで大きな職種変更や勤務場所の異動がなかったことから考えると、多くの社員が職種変更や勤務場所の変更の可能性がある満了型を選択せず、繰延型や一時金型を選択することは容易に予想される。被告会社は、51歳以上の社員の大多数が退職・再雇用を選択することを予想していたし、現実にも、大多数の社員は退職・再雇用を選択している(前記イ(カ))。そもそも本件構造改革の主要な目的は、人的コストの削減にある。大多数の社員が満了型を選択すると、賃金総額の減少は小さくなり、コスト削減の目的は達成されないことになる。この意味では、本件構造改革は、その制度自体が、大多数の社員が退職・再雇用を選択することを前提としているというべきである。
そうだとすると、本件構造改革の中核である雇用形態の選択制度は、その制度の仕組み自体から、51歳以上の社員を退職・再雇用による賃金減額へ誘導する面を有するといわなければならない。したがって、前記のとおり、本件構造改革には、コスト削減や人員の配置の見直しなど合理性、必要性が認められるにしても、さらに、その内容や手法に不合理な点はないかを検討する必要がある。この点については、後記(14)で、検討することとする。
(3)  本件各配転の必要性(本件各配転に共通の事情)
ア 以上のとおり、原告らの従事していた業務を被告らから新会社に外注委託することを内容の1つとする本件構造改革には、経営上の合理性、必要性が認められる。
そうすると、本件構造改革による新会社への業務の外注委託により、被告会社には原告らの担当業務がなくなったのであるから、担当業務がなくなった原告らが配転の対象となることはやむを得ない。そして、被告らが配転先を検討する際に、本人のそれまでの職務内容等を勘案した上で、可能な限りその適性が高いといえる職場を検討することが求められることは当然であるとしても、被告らからは、既に従前原告らが従事していた職務がなくなっている以上、従前の身分のまま在籍し続けることとなった原告らにとって、適性が高いといえる職場は自ずと限定されるのであるし、そのような職場が存在したとしても、常にその職場に原告らの配置が可能であるとも限られないのであるから、原告らの配転の業務上の必要性を検討する際に、配転が余人をもって替え難いといった高度の必要性が求められるべきものではないことはもとより、労働力の適正配置、業務の能率推進、労働者の能力開発、勤務意欲の高揚、業務運営の円滑化といった点で求められる業務上の必要性についても、従前従事していた職務が会社内に存在していた場合と比して、より緩やかに判断されることはやむを得ないことである。
イ そこで、次に、原告らを首都圏エリアに配転したことなどが、上記のような観点からみて、労働力の適正配置、業務の能率推進、労働者の能力開発、勤務意欲の高揚、業務運営の円滑化に資するものであったか検討する。
証拠(乙118、証人E)によれば、本件構造改革による業務の外注委託により、被告会社に残った業務は、主に経営・設備・開発・サービスに関わる戦略を担う企画型業務と、官公庁や主に首都圏エリアに本社を持つ一部上場会社等の大口顧客に対して会社の商品やサービスを販売したり、情報通信システムの構築を提案・折衝し、受注を目的とする法人営業業務となったこと、被告会社は、企画型業務は、収益を生み出す部門ではないことや、業務の性質上、当該業務に適した特化した知識・経験を有する最低限の人員の社員を充てることが望ましく、それ以外の社員は将来の収益の基盤となるIP・ブロードバンドビジネス推進の中心的な役割を担う法人営業に集中させることが望ましいと考えていたこと、以上の各事実が認められる。
そして、証拠(乙118、148の1・2、150ないし152、証人E)によれば、今後需要拡大が見込まれるIP・ブロードバンドビジネスの中でも収益効率性が高い顧客である民間事業所数は、地方圏エリア(北海道・青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島・茨城・栃木・群馬・新潟・山梨・長野)と首都圏エリア(東京・神奈川・埼玉・千葉)を比較すると、民間事業所数約286万のうち5割強を首都圏エリアで占め、従業者数100人以上の事業所で比較すると全体の約6割強を首都圏エリアで占めていること、首都圏エリアにおける1月当たり総請求額5万円以上30万円未満かつ3回線以上のユーザの市場分布率は58パーセント、総請求額30万円以上のユーザの市場分布率は64パーセント、大規模ユーザ(50回線以上)の市場分布率は78.4パーセント(いずれも平成11年9月末現在)であり、首都圏エリアに集中していること、被告会社の加入電話数(一般加入回線・ISDN回線)も59.1パーセントが首都圏エリアで占めていること、社員1人当たりの営業収益も、平成13年度末時点で、地方圏エリア1に対し、首都圏エリア1.5であり、首都圏エリアの収益性が高いこと、以上の各事実が認められるのであって、これらの事実に照らせば、市場性、収益性が高い首都圏エリアの法人営業に人員を集中させることが労働力の適正配置、業務の能率推進、業務運営の円滑化の観点から合理的な判断であったことは明らかである。また、証拠(乙323)によれば、被告Y2の収入の大部分を占めていた被告会社からの受託収入が減少傾向にあり、その原因も被告会社の固定電話収入の減少にあるため、早期に回復する見込みもなかったと認められることからすれば、被告Y2が一般市場への事業転換を図るべく構造改革を行い、労働力を一般市場関連の事業に集中しようとしたことに、上記と同様の合理性が認められることは明らかである。
なお、原告らは、当初、本件構造改革の目的として、IP・ブロードバンドビジネスの強化を目的とした人員配置を行うことは挙げられていなかったと主張するが、証拠(乙16、118、138)によれば、NTTが平成13年4月に公表した「NTTグループ3ヵ年経営計画(2001~2003年度)について」(新3か年計画)は、被告らを含むNTTグループ全体の事業の方向付けを行うものであったところ、その中では、「重点課題をIT革命に向けた取組み」とした上で、「ブロードバンド時代が現実のものとなりつつ」あることを踏まえて、「インターネット関連事業の拡大に積極的に取り組んでいきます。」、「光サービスの低廉化とエリア拡大に積極的に取り組むとともに、既に世界水準にあるADSL等メタル系サービスに対する早期需要の開拓に努め」るなどとされていたと認められるほか(本件構造改革は、新3か年計画の一環として実施されたものである。)、平成13年12月までにかけて行われた社員に対する説明においても、本件構造改革が、「「電話」から「情報流通」への事業構造転換等による経営基盤確立を目的」とした中期事業計画を受けて行われるものであり、「光・ADSL等のネットワークサービス及びプラットフォーム、コンテンツ事業等を中心としたIP事業等への取組み強化」を目的として行うものであると説明されていたと認められるのであるから、本件構造改革の目的の1つが、IP・ブロードバンドビジネスの強化にあり、そのためにIP・ブロードバンドビジネス関連の事業等に人員配置が強化されることは当然のことであるから、原告らの主張は理由がない
ウ 原告らは、新会社への業務委託により原告らの従前の担当業務がなくなったのであっても、当該業務を行っている新会社が地元にあるのだから、原告らを在籍出向させることができ、むしろ、原告らについては新会社に在籍出向させ、従前と同内容の職務に従事させることこそが、業務の能率推進、労働者の能力開発、勤労意欲の高揚に資するものであると主張する。現に、50歳未満の社員の中には、新会社に在籍出向して従前と同様の職務に従事している社員もいる(争いない)。
しかし、新会社に在籍する51歳以上の社員の大部分は、賃金が従前と比べ15パーセントから30パーセント減額となる繰延型を選択して、新会社で再雇用されることを選択した社員であること(乙118、証人E)からすれば、原告らのように満了型を選択したとみなされた者を新会社に在籍出向させることは、新会社で再雇用された社員の不公平感を煽り、その勤務意欲を削ぐ結果となることは明らかである。そもそも、満了型を選択した社員を地元の新会社に在籍出向させたのでは、本件構造改革の中核である雇用形態の選択制度にも沿わない。被告会社が、原告らについて、地元で設立された新会社への在籍出向を認めなかったことには、合理性が認められるというべきである。
もっとも、一般論として、首都圏の法人営業等(被告会社)や一般市場関連の事業(被告Y2)を強化することが望ましいことは是認し得るとしても、およそ原告らの適性を検討せずに、原告らを首都圏に広域配転するようなことが許されるものではない。その配転の際には、本人の適性を検討することが求められることは当然であり、その事情は、原告ら各人毎に異なるのであるから、以下では、進んで、原告らの個別事情について検討する。
(4)  原告X1の配転の必要性
ア 前提事実に証拠(甲189の1・2、乙21、22、432、435ないし437、439、441、443、451、453ないし455、457、459、証人F、同G、原告X1本人)及び弁論の全趣旨を総合すると、以下の事実が認められる。
(ア) 原告X1は、昭和44年3月28日、電電公社に見習社員として雇用されて以降、約10年間電話交換手として稼働し、以後、約23年にわたり、群馬県高崎市内所在の群馬支店等において主に料金業務に従事していた。
原告X1が従事していた料金業務は、顧客から受注したサービス・商品の代金審査や、リース契約により受注した場合の代金管理、被告会社が発行する電話帳への広告料の売掛金管理、顧客からの問い合わせ・苦情対応等であった。
(イ) 群馬支店は、首都圏の他支店と比べ、市場性が低いため、社員1人当たりの生産性も低い状態にあり、平成11年度に約66億円、平成12年度には約77億円超の経常損失を計上する状態となっていた。
群馬支店では、平成11年当時、約1490名の社員が在籍していたが、社員の生産性は低く、人員余剰の状態であると判断されたため、群馬支店は、将来のAM、SE育成の観点から首都圏へのパワーシフトの実施、業務確保方策として東京支店からの業務受託、販売拠点の統廃合等を実施し、経営状態を改善すべき方策を模索していた。
そのような中、本件構造改革が実施されることとなり、業務の外注委託や雇用形態・処遇体系の多様化等が現実化することとなったため、群馬支店では、平成13年6月及び同年12月に、社員説明会を開き、また上長等を通じ、全社員に対して、本件構造改革の枠組み、構造改革後の群馬支店や新会社の業務内容、新会社における労働条件等が説明された。
群馬支店は、同年10月、中間面談を実施し、各社員から、雇用形態・処遇体系の多様化実施の際、満了型、繰延型、一時金型のいずれを選択するかの意向を確認した。
同年12月21日以降には、51歳以上となる社員について、各上長が個別面談を実施し、①満了型を選択すると、被告会社に残存する業務のうち法人営業業務や企画等の業務に従事することや、全国転勤が前提となり、成果主義が徹底されること、②雇用形態選択通知書を提出しないなどいずれの雇用形態も選択する意思を示さない場合には、満了型を選択したとみなされることを説明し、雇用形態選択通知書が全社員に手交された。
(ウ) 原告X1は、平成13年6月及び同年12月の社員説明会に出席したが、団体交渉の場で個別の事情を説明しようと考え、上長が指示した個別面談には応じなかった。原告X1は、雇用形態選択通知書は受領していたが、これを提出期限とされた平成14年1月18日までに提出せず、独自に作成した「『雇用形態選択通知書』についての通知書」と題する書面を提出しようとしたが、上長は指示に反する文書であるためこれを受領しなかった。その後、上長は、所定様式に沿った雇用形態選択通知書を提出するよう求めたが、原告X1はこれに応じなかったため、被告会社は、原告X1が満了型を選択したものとみなした。
群馬支店では、51歳以上の雇用形態選択の対象となる社員は459名在籍していたが、内454名が繰延型又は一時金型を選択し、残りの5名中3名が満了型を選択し、2名が雇用形態選択通知書を提出せず、満了型を選択したとみなされた。
(エ) 原告X1は、平成14年2月5日、同月7日、同月19日に、上長に対し、満了型を認めたわけではないこと、広域配転には応じられないこと、現在の職場への出向を希望することを述べたほか、同年3月19日に、「遠隔地に行きたくない。」、「早く勤務地が知りたい。」旨主張した。また、原告X1は、同年6月12日、上長あてに、「Y1の構造改革によるNTT本体と雇用継続中の通信労組群馬支部組合員の最終配置についての要請書」を提出し、体力面や家事・育児面で負担となる遠距離通勤はできないので考慮して欲しい旨申し出、埼玉支店への配転について説明がされた同月20日にも、遠いので、中1と高3の子がいる家庭生活が成り立たないから受けられない、腸が弱く下痢をしやすいので、毎日遠距離通勤をすることはできないなどと申し出たが、被告会社はこれに応ぜず、同月24日、埼玉支店への配転を発令した。
これに対し、原告X1は、「配転命令には異議があります。」、埼玉支店への配転命令は「私が「一時金型」ないし「繰延型」を選択しなかったことに対する報復的不利益措置としか考えられません。」、埼玉支店への配転により「異職種で遠隔地配転のために多大な職業上・生活上の不利益を被ります。」などと記載された異議申立書を群馬支店長あてに提出した。
(オ) 原告X1が担当していた料金業務は、新会社に外注委託されたため、原告X1については、新たに従事する職務を探す必要が生じた。被告会社は、本件構造改革後、労働力をIP・ブロードバンドビジネスに集中させる方針であったため、原告X1につき、IP・ブロードバンドビジネスに関する業務に従事させることを企図し、同人を、平成14年4月24日付けで、群馬支店営業部システムソリューション部門システムサービス担当、同年5月1日付けで同支店法人営業部法人総括担当に配転し、同年6月30日までの間、同人に対する集合研修等を実施した。
被告会社が実施した集合研修の内容は、被告会社の商品・サービスに関する知識、顧客に対する提案・折衝の方法やインターネットやフレッツサービスを始めとしたIP・ブロードバンドに関する基礎知識等に関する座学研修や群馬支店法人営業部における実務研修等であった。
(カ) 埼玉支店は、人口規模は全国5位を有する埼玉県を管轄し、電話サービス加入者数は被告会社中3位(本件構造改革前)であったほか、経済面でもさいたま新都心の誕生等により、都市機能が集積する等、市場性が高く、今後の売上の向上が見込まれる支店であった。
埼玉支店の営業組織(法人営業部だけが担当している。)は、平成14年5月1日当時、公共AM部門、企業AM部門、エリアAM部門、営業企画部門等に分かれていた。そのうち公共AM部門、企業AM部門は、顧客規模が大きく、SIソリューションでは受託商品を扱う等、システムの構築等の専門的な知識、経験が必要となる部門であり、エリアAM部門は、各エリアの自治体や企業のうち電話回線を15回線以上保有する大口ユーザ等に対する営業活動を行う部門であり、顧客規模、販売額も大きくなく、AMの役割としては、窓口として顧客の通信に関わる課題や要望を聞き、顧客に、主に既存商品を利用した提案・販売を行うことが求められる部門であった。
埼玉支店法人営業部では、平成13年度より、自治体対応を強化すべく、AM担当者が企業等に対する提案活動に専念できるようAM担当者が本来担当すべき業務のうち、比較的重要度が低い業務を他の社員に集約して担当させるなど、AMに対するサポート体制を強化していた。
また、埼玉支店では、退職・再雇用を選択した社員のうち、非移行対象業務である法人営業に従事していた社員も相当数存在したため、今後、AMやSEが不足することが予想されていた。
そのため、埼玉支店は、被告会社営業企画部(被告会社における人事関係業務を実施している部門である。以下「本社」という。)に対し、法人AMの適任者としてAMの経験がある者、営業窓口・電話等で顧客対応の経験がある者の人員要請をしたところ、本社は、群馬支店に対し、埼玉支店におけるAM適任者2名の選定要請をした。
(キ) 群馬支店における満了型選択者5名のうち、原告X1、原告X2及びH(以下「H」という。)の3名が、新会社への移行対象業務に従事していたため、群馬支店は、その3名の中から埼玉支店におけるAM適任者2名を選定することとした。
原告X1には、リース・割賦契約代金や電話帳広告料の売掛金管理、電話による問い合わせ・苦情対応の経験が、原告X2には、訪問販売等による営業経験のほか、販売パートナからの取次情報に基づく受付処理・工事調整業務等の経験が、Hには、重払い返還処理業務、電話による問い合わせ・苦情対応の経験があったが、Hは既に59歳であり、今後の能力・経験の育成等が大きく見込めなかったため、群馬支店は、原告X1及び同X2を選定した。なお、原告X1及び同X2には法人AMの経験はなかったが、原告X1及び同X2には電話等による顧客対応経験があったため、群馬支店は、同人らが本社からの要請基準を満たすものと判断した。
(ク) 原告X1は、同年7月1日付けで埼玉支店法人営業部エリアAM部門埼玉中央西営業担当に配転された。
埼玉支店法人営業部は、埼玉県内の各自治体が、政府の「e-Japan構想」に基づき、ITによる便益を十分に生かせる環境整備を進めていたことから、AM担当を各自治体への対応に集中させることが望ましいと考えていた。埼玉支店法人営業部は、各AM担当が担当していた業務のうち、AM業務以外の業務を集約させる体制を採り、AM担当に対し各自治体への対応に集中し得るようしていたが、原告X1には法人営業の経験はなく、将来、AMとして活動するとしても、配転当初に従事する業務としては、AMのサポート業務とすることが適していると判断したため、原告X1には、緊急通報システム業務を集約して担当させ、各AM担当による各自治体への対応強化を図ることを企図した。
緊急通報システムとは、①自治体からの依頼に基づき老人宅等に緊急通報用電話機の設置工事を行う際の事務処理、②工事料金や月額料金の支払に関わる事務処理、③設置された緊急通報用の電話機の撤去、④緊急通報システムのセンタ装置への利用者の登録、⑤緊急通報システムの更改時における提案等の業務を内容とするものであり、商品や技術に関する専門的知識を要するものではなかった。
イ(ア) アの認定事実中、原告X1の配転が決定された過程((カ)、(キ))について、原告らは、これに関する被告らの主張(上記認定事実と同様である。)は後に作られた虚偽のものであり、上記認定のような選定過程ではなかったと主張する。
しかし、社員の配転に際して、配転元と配転先の各職場及び配転の指示をする本社との間で、およそ要請や検討等が行われなかったとは考えられないし、原告X1の選定過程に関する証人F及び同Gの各証言及び同人らの陳述書(乙432、441)は、具体的かつ詳細であるうえ、人員が不足している埼玉支店が増員の要請をし、人員が余剰であった群馬支店から配転されるということは何ら不自然でないことなども併せて考慮すると、上記証言及び書証を含む前記各摘示した各証拠等から、前記のとおりの事実を認めることができ、これを覆すに足りる証拠はない(後記(5)から(12)までの、他の原告らの選定過程の事実についても同様である。)。
なお、この点に関連して、原告らは、本件構造改革に伴う雇用形態選択により満了型とみなされ、被告会社の福島支店からサービス開発部フレッツネットワークサービスセンタ(FNC、東京都に所在)に配転となったI(本件訴訟の原告であったが、訴えを取り下げた。)に関して、配転先のFNCが作成した「60歳満了型選択者をFNCに受入るにあたっての基本的な考え方(案)」と題する文書(甲126)が存在し、これには「他の社員と同様にIP関連業務に従事してもらい戦力となるように育成を実施します。しかしながら、当面は開発、企画的要素が強い担当には配置しない。独立性の高い業務(自己完結型)を中心に従事させる(出発点として)」、「I社員については、FNCの文化を大きく否定する思想の持ち主」などの記載があることから、配転先が人員の要請をし、これに応じて、配転元が適任者を選定したとする被告らの主張はすべて虚偽であると主張している。しかし、上記文書は、配転先の職場が満了型選択者を受け入れるに際して採るべき適切な対応を検討していたことを示すものであり、その内容は配転先が人員の要請をしていたことや、人員の要請に応じて配転が行われたことと何ら矛盾するものではない。上記書面は、FNCにおいて増員が実現されることになったところ、増員は満了型選択者によって行われることになったことから、その対応を検討している文書であると理解できるものであって、配転対象者の選定に関する上記認定事実を覆すものではない。
(イ) 他方、上記ア(カ)、(キ)の認定事実に関して、被告らは、被告会社各支店が本社からの選定要請に応えて配転対象者を選定するに当たり、支店独自の考えによってその対象を移行対象業務に従事していた満了型選択者としたものであり、本社から支店に対して満了型選択者の中から選定するように指示がされた事実はないと主張し、被告会社の担当者であった各証人もそのように証言している。
しかし、本社から支店に対する選定要請がされたのは本件構造改革が実行され雇用形態選択が行われた直後であること、各支店とも歩調を合わせるかのように移行対象業務に従事していた満了型選択者を候補者とした上で原告らを配転対象者として選定していること(原告X1、同X2については上記認定のとおり。他の原告らは(6)ないし(12)で後述するとおり。)に照らせば、本社が各支店に対して明示的に指示したかどうかはともかく、本社は各支店に対して、移行対象業務に従事していた満了型選択者から配転対象者を選定することを前提として選定要請を行い、各支店は、本社からの要請を移行対象業務に従事していた満了型選択者の中から選定すべきものという認識のもとで、選定を行ったものと推認される。
ウ アの認定事実を前提に、原告X1の本件配転の必要性を判断する。
アの認定のとおり、群馬支店においては、移行対象業務に従事していた満了型選択者が3名存在していたのであるから、群馬支店は、これらの者については、新たに従事する職務を探す必要があったものである。そして、群馬支店においては、従前から人員余剰の状態にあったことや、その市場性も低かった一方で、被告会社は労働力を首都圏の法人営業に集中する必要があったことからすれば、これらの社員につき、群馬支店以外への配置を視野に入れて配転先を検討することがおよそ不当といい得るものではない。
そして、埼玉支店法人営業部では、AM担当に各自治体への対応に集中させるべくAM担当の増員を必要としていたというのであるから、人員要請を受けた本社が、新会社への移行対象業務に従事していた満了型選択者が3名存在していた群馬支店に対し、埼玉支店におけるAM適任者を選定するよう指示したこと(本社が明示的にしたかはともかく、配転すべき社員を移行対象業務に従事していた満了型選択者から選定することを前提に指示をしたと認められることは前記のとおりである。)は、十分合理的な判断であり、労働力の適正配置の観点から業務上の必要性が認められるものであったと解される。
次に、原告X1の適性についてみると、同人には、約23年にわたる料金業務従事経験があり、顧客対応については十分な知識・経験があると解されるところ、エリアAM部門のAMは、顧客規模、販売額も大きくなく、訪問販売等を通じて、主に既存商品を利用した提案・販売を行うことが求められていたというのであって(ア(ア)、(カ))、特に専門的知識等が求められる部署とも解されないことからすれば、原告X1には、従前法人営業や営業窓口等に従事した経験がなかったとしても、およそ前記のようなAMとしての適性に欠けていたとも解されない。また、業務経験を通じて、原告X1がAMとしての能力を向上させることも十分可能であったと解されることからすれば、本件配転は、原告X1の能力開発に資するものであるとも認められる。更に、被告会社が、原告X1を含め、新たな業務に従事することとなった社員に対しては、配転に先立ち、今後、被告会社が労働力を集中させるIP・ブロードバンドビジネスに関する基礎知識に係る研修を行っていること(ア(オ))も考慮すれば、被告会社は、配転に際し、相応の配慮を払っていたことも明らかである。原告らは、原告X1に行われた研修は十分でなかったとか、その後の実務に役立つものではなかったと主張するが、その研修内容は、被告会社の商品・サービスに関する知識、顧客に対する提案・折衝の方法といったものであり、およそ、原告X1のその後の法人営業部における業務に関連性がないといえるものではない。
また、埼玉支店法人営業部は、原告X1が、従来、法人営業に従事したことがなかったことから、当初の業務として、埼玉支店法人営業部が設置していたAMのサポート業務に従事させることを企図したというのであるから(ア(ク))、埼玉支店法人営業部埼玉中央西営業支店が担当する自治体中、原告X1が担当していた自治体以外の自治体は、緊急通報システム業務を集約して1人に担当させる体制を採っていなかったとしても、その判断が、労働者の能力開発の観点からみて不合理なものであり、必要がなかったとも解されない。
なお、配転候補者となった3名のうち、Hは59歳であり、定年退職を控えていたことからすれば、同人を配転の対象とせず、太田営業支店に配置したことには合理的な理由が認められる。
エ(ア) これに対し、原告らは、埼玉支店ではAMは不足していなかったとして、埼玉支店に勤務していた満了型選択者であるJ(以下「J」という。)他4名の社員が平成14年7月から8月にかけて東京支店や法人営業部等に配転となっていることをその根拠として挙げる。しかし、証拠(乙502)によれば、東京支店では、新会社への移行対象業務でなかった法人営業に従事していた社員約650名(うちAMが約250名、SEが約120名である。)が繰延型を選択し、退職したため、被告会社の枢要な支店である東京支店の法人営業部門では大幅な人員の欠員が生じていたことや、これを受け、平成14年4月から同年7月にかけ、全国の支店から東京支店にAM約30名、SE約40名の合計約80名の社員が配転となっており、J他4名の配転も本社組織や東京支店を最優先するとの被告会社の指示に基づくものであり、埼玉支店にAMが十分配置されていたことを理由とするものではなかったことが認められるのであって、これらの事実に照らせば、J他4名が東京支店等に配転されたからといって、埼玉支店のAMが不足していなかったことが裏付けられるというものではない。
(イ) 原告らは、平成14年7月1日付けで新会社であるサービス群馬から12名の社員が群馬支店に復帰し、法人営業部に配属されたことを捉え、群馬支店は人員余剰の状態ではなかったと主張する。しかし、証拠(乙432、証人F)によれば、サービス群馬からの12名の社員の復帰は、群馬支店におけるAMが不足していたために行われたものではなく、本件構造改革後、サービス群馬における人員が余剰となるためにやむを得ず行われたものにすぎなかったと認められるのであるから、原告らの主張には理由がない。
(ウ) また、原告らは、K(以下「K」という。)が、平成14年7月1日付けで長野支店法人営業部から群馬支店法人営業部に配転されていることも問題視するが、群馬支店におけるKの担当業務はソリューション業務であり(甲101の1)、これに原告X1が適しているとも解されないことからすれば(この点は、後記の原告X2についても同様である。)、Kの配転と原告X1の配転を関連づけることは相当でない。また、長野支店の人員に余剰が生じ、埼玉支店に人員不足が生じている場合に、長野支店の社員を埼玉支店に異動させるという選択もあるけれども、長野支店の社員を群馬支店に異動させ、群馬支店の社員を埼玉支店に異動させるという選択も、被告会社の人事権の行使としてあり得るというべきである(前者を選択すると、異動に伴い住居移転が必要となるが、後者にすれば住居移転は不要となるという面がある。)。後者の異動を選択したことが、直ちに人事権の裁量の逸脱・濫用になるとは認められない。
(エ) 原告らは、あえて遠隔地から原告X1を配転するまでもなく、首都圏エリアには、緊急通報システムを担当するのにより適した社員が多数いたはずであると主張するが、仮に、緊急通報システムを担当するのに適した社員が首都圏エリアに存在したとしても、緊急通報システムを担当するのに適した社員のうちいかなる社員を配置するかは、被告会社の裁量に属する問題であるし、前記のとおり、原告X1については、従前従事していた業務が新会社に移行したことにより、新たに担当業務を探さなければならない状態にあったのであるから、そのような社員の活用方法として、原告X1を埼玉支店への配転の対象としたことが、労働力の適正配置の観点から不合理であるとも解されない。
オ 以上によれば、被告会社が原告X1を埼玉支店法人営業部エリアAM部門埼玉中央西営業担当として配転したことには、業務上の必要性が認められる。
(5)  原告X2の配転の必要性について
ア 前提事実に証拠(甲193、乙21、22、432、435、438、440、451、452、454、455、462、証人F、同L、原告X2本人)及び弁論の全趣旨を総合すると、以下の事実が認められる。
(ア) 原告X2は、昭和43年10月1日、電電公社に見習社員として雇用されて以降、約20年間電話交換業務に従事し、その後、約8年にわたり116センタや太田営業支店等で、顧客からの問い合わせ等に対応する業務や営業業務に従事した。
原告X2が従事していた116センタ等における業務は、電話による顧客からの商品・ネットワークサービスに関する問い合わせに対する説明や注文受付等、担当ユーザに対する訪問活動(商品・ネットワークサービス等に関する提案、折衝、工事日程の調整等)、顧客からの注文内容等の精査等であった。
(イ) 群馬支店における経営状態と本件構造改革
(4)(原告X1の配転の必要性)ア(イ)と同じ。
(ウ) 原告X2は、平成13年6月及び同年12月の社員説明会に出席したが、上長が指示した個別面談には応じなかった。原告X2は、雇用形態選択通知書は受領していたが、これを提出期限とされた平成14年1月18日までに提出せず、独自に作成した「『雇用形態選択通知書』についての通知書」と題する書面を提出しようとしたが、上長は指示に反する文書であるためこれを受領しなかった。その後、上長は、所定様式に沿った雇用形態選択通知書を提出するよう求めたが、原告X2はこれに応じなかったため、被告会社は、原告X2が満了型を選択したものとみなした。
群馬支店では、満了型選択者は合計5名であり、そのうち3名が移行対象業務従事者であった。
(エ) 原告X2は、平成14年6月12日、上長あてに、「Y1の構造改革によるNTT本体と雇用継続中の通信労組群馬支部組合員の最終配置についての要請書」を提出し、同月20日に埼玉支店への配転を内示された際にも、C型肝炎のキャリアであるため遠距離通勤はできないとの申し出をしたが、被告会社はこれに応ぜず、同月24日、埼玉支店への配転を発令した。
これに対し、原告X2は、「配転命令には異議があります。」、埼玉支店への配転命令は「私が「一時金型」ないし「繰延型」を選択しなかったことに対する報復的不利益措置としか考えられません。」、埼玉支店への配転により「異職種で遠隔地配転のために多大な職業上・生活上の不利益を被ります。」などと記載された異議申立書を群馬支店長あてに提出した。
(オ) 原告X2が担当していた東京パートナ受付センタにおける業務は、新会社に外注委託されたため、原告X2については、新たに従事する職務を探す必要が生じた。被告会社は、本件構造改革後、労働力をIP・ブロードバンドビジネスに集中させる方針であったため、原告X2につき、IP・ブロードバンドビジネスに関する業務に従事させることを企図し、同人を、平成14年4月24日付けで、群馬支店(営業部システムソリューション部門システムサービス担当)、同年5月1日付けで同支店(法人営業部法人総括担当)に配転し、同年6月30日までの間、同人に対する集合研修等を実施した。
被告会社が実施した集合研修の内容は、被告会社の商品・サービスに関する知識、顧客に対する提案・折衝の方法やインターネットやフレッツサービスを始めとしたIP・ブロードバンドに関する基礎知識等に関する座学研修や群馬支店法人営業部における実務研修等であった。
(カ) 埼玉支店の状況
(4)(原告X1の配転の必要性)ア(カ)と同じ。
(キ) 群馬支店におけるAM適任者2名の選定
(4)(原告X1の配転の必要性)ア(キ)と同じ。
(ク) 原告X2は、同年7月1日付けで埼玉支店法人営業部エリアAM部門埼玉南営業担当に配転された。
埼玉支店法人営業部エリアAM部門埼玉南営業担当は、埼玉県内の各自治体が、政府の「e-Japan構想」に基づき、ITによる便益を十分に生かせる環境整備を進めていたこと、管轄エリアがさいたま市の近隣に位置しており、IP・ブロードバンド系サービスの需要が大きくなることが見込まれたこと、埼玉南営業担当のAMは1人当たり40から50の顧客を担当しており、十分な訪問営業活動ができていない状況にあったこと等から、AMの増強を必要としていた。
原告X2には、116受付業務に従事し、顧客に対し、被告会社の商品・サービスの提案を行った経験もあることや、担当ユーザに対する訪問活動の経験もあったことから、埼玉支店法人営業部は、原告X2をエリアAM部門埼玉南営業担当として配置した。
イ アの認定事実を前提に原告X2の本件配転の必要性を判断する。
原告X2を含む移行対象業務に従事していた満了型選択者の新たな職務として、群馬支店以外への配置を考慮したことがおよそ不当といい得ないことは、既に説示のとおりである。
そして、埼玉支店法人営業部からの人員要請を受けた本社が、群馬支店に対し、埼玉支店におけるAM適任者を選定するよう指示したことが、労働力の適正配置の観点から、業務上の必要性が認められるものであったことも既に説示のとおりである。
原告X2の適性についてみても、116受付業務に従事し、顧客に対し、被告会社の商品・サービスの提案を行った経験や、訪問活動を行った経験があるという原告X2の経歴(ア(ア))に照らし、訪問販売等を通じて、主に既存商品の提案・販売を行うエリアAM部門のAM(ア(カ))としての適性がおよそないとも考えられないこと、これが原告X2の能力開発のきっかけともなり得るものであったとも解されること、被告会社が、配転に先立ち、研修を行うなど、相応の配慮を行ったこと(ア(オ))も、原告X1と同様である。
ウ これに対し、原告らは、被告会社は、埼玉支店への配転後、長期間にわたって担当顧客を与えないという扱いをしており、原告X2の配転に業務上の必要性がなかったことは明らかであると主張する。
しかし、証拠(甲193、乙462、証人L、原告X2本人)によれば、原告X2には配転後約2か月間特定の顧客の担当が割り当てられなかったものの、これはAMの育成過程において珍しいことではなかったことや、平成14年9月に法人顧客6社の担当業務が割り当てられて以降、担当が増やされ、同年11月ころ以降は29社程度の担当が割り当てられるようになり、単独で訪問活動等をするようにもなっていることが認められるのであるから、原告X2がいわゆる窓際族のように、何の業務もなく放置されていたのではない。原告X2は、担当顧客毎に戦略指示や業務内容の指示がされなかったため、挨拶回り程度しかできなかったと主張するが、仮にそのような指示がなかったとしても、原告X2には担当する顧客が決められていたのであり、同人には、法人営業のAMとしての経験がなかったとしても、群馬支店において担当ユーザに対する訪問活動(商品・ネットワークサービス等に関する提案、折衝、工事日程の調整等)の経験もあったのであるから、原告X2が、従前の経験を生かし、又は上司や同僚の助言を仰ぐ等して業務を遂行することは十分可能であったと考えられるのであって、被告会社も同人にそのような期待をしていたものと解される。
証拠(甲199ないし203)によれば、本件配転後の原告X2の受注状況は、個人別目標達成率でみると、1.7パーセント(平成15年2月20日累計)、1パーセント(平成16年9月末日累計)、2パーセント(平成16年12月末日累計)、3パーセント(平成17年2月末日累計及び同年3月18日累計)となっており、他の社員と比較して相当に低いことが認められ、原告X2の稼働状況が、被告会社の上記のような期待に沿ったものでないことは明らかであるが、前記の同人の経歴等に照らせば、これが、原告X2のAMとしての適性の欠如に起因するものとも理解できない。
エ 以上によれば、被告会社が原告X2を埼玉支店法人営業部エリアAM部門埼玉南営業担当として配転したことには、業務上の必要性が認められる。
(6)  原告X3の配転の必要性
ア 証拠(甲166、170、171、乙21、22、52、355ないし359、364ないし368、370の1ないし3、382、383、証人M、同N、原告X3本人)及び前提事実によれば、以下の事実が認められる。
(ア) 原告X3は、昭和39年4月1日、電電公社に見習社員として雇用されて以降、約38年間、主に料金業務に従事した。
原告X3が従事していた料金業務は、時期により多少の相違はあるが、大別して、顧客に定期又は随時に料金を請求するとともに請求する料金を売掛金として管理する「審査業務」、電話料金の支払がない顧客に支払の依頼をする「回収業務」、顧客から電話で料金に関する問い合わせがあった場合に対応する「電話問い合わせ業務」であった。
原告X3は、長年料金業務に従事していたため、被告会社内で平成6年に導入された顧客管理や料金業務等のためのシステムであるCUSTOMを日常的に操作していたほか、売掛金管理や減算不能の管理、過払い、誤納の返還管理等に使用するシステムであるMEISTER、大口ユーザを対象とした料金関係のシステムであるPRIMEについても使用経験があった。
(イ) 新潟支店は、全国的にみると、人口規模、事業所数とも、中規模の市場性があるものの、平成13年当時、支店としての収支率(収入に対する経費の割合)が115.4パーセントと全社平均の97.4パーセントを大きく下回っていた(数値が高いほど収支率が悪い。)ほか、社員1人あたりの売上高も支店平均5900万円に対し4250万円と17支店中13位であるなど、その経費削減や生産性向上は必須の課題であった。そのため、新潟支店は、本件構造改革以前から、事業構造の転換を目的とした効率的な業務運営と人件費の大幅な削減により同支店の生産性を向上させ収益を確保することを柱とし、平成11年度末時点に在籍した約2000名の社員を平成12年度末に約1730名に削減し、販売拠点も統廃合したが、新潟支店は更に人員削減をする等、経営状態を改善すべき方策を模索していた。
そのような中、本件構造改革が実施されることとなり、業務の外注委託や雇用形態・処遇体系の多様化等が現実化することとなったため、新潟支店では、平成13年6月及び7月に、全社員を対象とした社員説明会を開催し、本件構造改革の枠組み、各手当制度、配転等人員流動関連制度等を説明した。
新潟支店は、同年10月、中間面談を実施し、各社員から、雇用形態・処遇体系の多様化実施の際、満了型、繰延型、一時金型のいずれを選択するかの意向を確認した。
また、新潟支店は、平成13年12月4日から同月12日にかけて、全社員を対象に、職場毎に、上長等を通じて「Y1の構造改革に向けた取り組みについて」を配布するとともに、本件構造改革の枠組み、新潟支店及び新会社の業務内容、新会社における労働条件等の概要等について説明をした。
同月12日以降には、51歳以上となる社員について、各上長が個人面談を実施し、①満了型を選択すると、被告会社に残存する業務のうち法人営業業務や企画等の業務に従事することや、全国転勤が前提となり、成果主義が徹底されること、②雇用形態選択通知書を提出しないなどいずれの雇用形態も選択する意思を示さない場合には、満了型を選択したとみなされることを説明し、雇用形態選択通知書が全社員に手交された。
(ウ) 原告X3は、団体交渉の場で個別の事情を説明しようと考えていたため、平成13年12月21日に実施された上長との面談の際、具体的な個別事情の相談や要望等は行わなかった(なお、被告会社は、原告X3が個人面談に応じなかったと主張するようでもあるが、他方で、被告会社は、準備書面(3)(89頁)、最終準備書面書面(1)(223頁)においては、原告X3が個別面談に応じたと主張している。このような被告会社の主張の経過に照らせば、被告会社は、原告X3が個別面談に応じたことを前提として、その意思を明らかにしなかったと主張しているにすぎないと解される。)。原告X3は、雇用形態選択通知書は受領していたが、これを提出期限とされた平成14年1月18日までに提出せず、独自に作成した「『雇用形態選択通知書』についての通知書」と題する書面を提出しようとしたが、上長は指示に反する文書であるためこれを受領しなかった。その後、上長は、所定様式に沿った雇用形態選択通知書を提出するよう求めたが、原告X3はこれに応じなかったため、被告会社は、原告X3が満了型を選択したものとみなした。
新潟支店では、51歳以上の雇用形態選択の対象となる社員は679名在籍していたが、内605名が繰延型又は一時金型を選択し、内64名が希望退職者募集に応じて退職し、残りの10名中6名が満了型を選択し、4名が雇用形態選択通知書を提出せず、満了型を選択したとみなされた。
(エ) 原告X3は、平成14年5月20日、上長あてに「Y1の発令に関する新潟支部の要求書」を提出し、「子供2人が外国留学中で経済的に切迫している」、「義母が寝たきりで介護が必要」、「通信労組首都圏ブロック交渉委員等の任務に就いている」と申し出た。また、原告X3は、同年6月6日にも上長あてに同趣旨の文書を提出し、同月10日には、「5歳年下の弟が癌である」、「子供2人に非常にお金がかかる」、「田圃もやっており大変」と申し出たが、被告会社はこれに応ぜず、同月19日、法人営業本部への配転を伝えた。原告X3からは、再度、上記と同趣旨の申し出がされたが、被告会社はこれらを配転障害事由とは考えなかったため、同月21日、原告X3へ配転の内示をした。
これに対し、原告X3は、「配転命令には異議があります。」、法人営業本部への配転命令は「私が「一時金型」ないし「繰延型」を選択しなかったことに対する報復的不利益措置としか考えられません。」、法人営業本部への配転により「異職種で遠隔地配転のために多大な職業上・生活上の不利益を被ります。」などと記載された異議申立書を新潟支店長あてに提出した。
(オ) 原告X3が担当していた料金業務は、新会社に外注委託されたため、原告X3については、新たに従事する職務を探す必要が生じた。被告会社は、本件構造改革後、労働力をIP・ブロードバンドビジネスに集中させる方針であったため、原告X3につき、IP・ブロードバンドビジネスに関する業務に従事させることを企図し、同人を、平成14年4月24日付けで、新潟支店営業部第一営業部門法人営業担当、同年5月1日付けで同支店営業部法人営業担当に配転し、同年6月30日までの間、同人に対する集合研修等を実施した。
被告会社が原告X3に対して実施した集合研修の内容は、AM・SE担当の主な業務内容と法人営業部で使用しているシステムやISO9001等についての概要、ソリューションビジネス研修、法人営業部の業務内容、教材を使用したビジネスマナー・応対マナー研修、商品受注後のSO投入のための指示書の処理方法、ソリューション営業のための経営データの見方、著作権・商標に関する法知識、イントラネットの技術入門、LANの基礎知識、見積書の作成方法、作成時の注意事項、ADSLの概要、法人営業業務に必要な情報収集の方法等に関する座学研修や新潟支店法人営業部における実務研修等であった。
(カ) 法人営業本部は、被告会社が行う他の法人営業部門とは異なり、平成14年時点においては、回線を50回線以上有する顧客(年商概ね500億円以上の上場企業や同1000億円以上の非上場企業、中央省庁、主要団体等)を担当する部であり、担当する顧客数も、平成14年に約1050社、平成15年に約1190社、平成16年に約1650社と増加していた。これらの顧客は、地方圏の顧客と比べて、電子商取引、電子決済、電子入札等の先進的な技術を要求することが多く、また、その取引額も多大なため、法人営業本部は、被告会社にとって、特に重要な組織であった。
法人営業本部は、AMの業務のうち、SO処理等の間接稼働業務を集約し、AMに営業活動に集中させ、生産性向上(ソリューション業務への専念)、回線(NW)デリバリ機能の一元実施体制による効率的な業務運営・オーダミス撲滅による業務効率化及びサービス品質の向上等を目的として、SOの受付・処理等を行う担当や、顧客の設備状況の調査・コンサルティング・回線開通工事調整を一括して行う組織を新たに設置することとし、平成14年7月1日、法人営業本部サービスマネジメント部内に、新たに「ネットワークソリューションセンタ」を立ち上げた。
同センタに配置された社員のうち、SO推進担当は、SOアシストから手配された主にアナログ回線やISDN回線、低速専用線といった商品・サービスの新設や変更等のSO処理及び回線調査等の業務を各支店等の関連部門と連携しながら行うこととされており、約30名の社員がSO推進担当に充てられることとなった。
そのため、法人営業本部は、本社に対し、SO推進担当として、社内システムを活用するなどしてSO業務等の経験を有する社員、法人営業業務の知識・経験を有する社員30名の人員要請をしたところ、本社は、新潟支店に対し、SO推進担当適任者1名の選定要請をした。
(キ) 新潟支店における満了型選択者10名のうち、原告X3を始めとして5名が、新会社への移行対象業務に従事していたため、新潟支店は、その5名の中から法人営業本部におけるSO推進担当適任者1名を選定することとした。
5名のうち、SO業務において使用頻度が高いCUSTOM等を使用してSO業務に従事した経験があるのは原告X3を含む4名であり、その中でも、原告X3と当時59歳であった社員ⅡとがCUSTOMの使用頻度が高かった。社員Ⅱは、販売パートナ担当に所属し、家電量販店等の販売代理店が商品の申込みを受けた後、その情報をもとに後日顧客に対し注文内容の確認や工事等の設定を行い、CUSTOMへの投入ができるよう注文票の作成を行うなどしていたため、SO推進担当に適していたが、年齢が59歳であり、配転から半年後に定年退職となる予定であるため、新潟支店は、同人は配転には適していないと判断した。また、原告X3は、被告会社が業務のエキスパート育成、社員個々人の人材育成を目的として実施していたスキル把握において、SO業務の1つである料金回収のスキルが「SA」と最高の評価であった(評価は、「SA」、「A」、「B」、「C」の順に行われる。前記5名のうち、原告X3を除く社員はスキル把握が「B」、「C」、あるいはスキル把握を拒否していた。)ため、新潟支店は、原告X3が本社からの要請基準を満たすものと判断した。
(ク) 原告X3は、同年7月1日付けで法人営業本部サービスマネジメント部ネットワークソリューションセンタSO推進担当に配転された。
なお、原告X3を含めSO推進担当となった社員に対しては、同日から同月12日までの間、業務内容説明、SO推進担当に関する業務研修、ネットワーク商品説明といった研修が実施された。
イ 以上のとおり、新潟支店においては、移行対象業務に従事していた満了型選択者が5名存在していたのであるから、新潟支店は、これらの者については、新たに従事する職務を探す必要があったものである。そして、新潟支店においては、従前から経費削減が問題となっており、余剰人員を抱える余裕もなかった一方で首都圏の法人営業に労働力を集中させる必要があったことからすれば、労働力の適正配置の観点から、これらの社員につき、新潟支店以外への配置を視野に入れて配転先を考慮することがおよそ不当といえるものではない。
他方で、法人営業部は、被告会社の枢要な部署であり、人員配置の必要性も高く、AMを営業活動に集中させるべく、SO業務を集約して行う部署を設置するため、人員が必要であったというのであるから(ア(カ))、人員要請を受けた本社が、新会社への移行対象業務に従事していた満了型選択者が5名存在していた新潟支店に対し、法人営業部におけるSO推進担当の適任者を1名選定するよう指示したことは、労働力の適正配置の観点から、業務上の必要性が認められることは明らかである。
そして、原告X3の適性をみると、同人は、長年SO業務の一部である料金業務に従事し、必須のシステムであるCUSTOMの使用頻度も高かったというのであるから、顧客の設備状況の調査・コンサルティング・回線開通工事調整を一括して行うことを目的として設立される組織であり、SO業務に関する知識、経験を有する社員が求められるネットワークソリューションセンタのSO推進担当としての適性がおよそなかったとも解されない。このことに、被告会社が、原告X3に対し、ア(オ)の研修のほか、SO推進担当としての基礎知識に係るア(ク)のような研修も実施するなど、相応の配慮もしていたことも併せて考慮すれば、原告X3に対する本件配転が、業務上の必要性もなく行われた不当な人事であったとは認め難い。
ウ(ア) これに対し、原告らは、法人営業本部のネットワークソリューションセンタが設置されたNTT○○ビル1階は、配転日の平成14年7月1日には内装工事や諸設備の新設工事のため使用できる状態ではなく、原告X3を含む職員が実際に出社を開始した同月15日になっても、パソコンや事務用品がなかったのであり、また、同日以降まともな業務は与えられず、同部署は同年9月12日に廃止方針が検討開始されたのであるから、同部署を設立する業務上の必要性はなかったと主張する。
確かに、証拠(甲169、170、232、235、原告X3本人)によれば、①平成14年7月1日付けでネットワークソリューションセンタに配属された社員は、同日から同月12日までは研修のため、NTT○○ビルには出勤しておらず、その間、NTT○○ビルでは内装工事や諸設備の新設工事が実施されていたこと、②同センタに配置された職員のうち管理職を除く31名中30名が満了型選択者であったこと、③配属された社員の初勤務日である同月15日は、所長挨拶や各自のパソコン設定等が業務として予定されていたこと、④ネットワークソリューションセンタの事務室には、初勤務日になっても必要な事務機器等が完全に備えられていなかったこと、⑤被告会社は、同年9月12日付けで、NTT労働組合に対する提案事項として、「法人営業本部のバックヤード業務のOS化」を挙げており、平成15年2月には、同センタの廃止・業務移管を正式に決定したこと、以上の各事実が認められる。
しかし、発令後、必要な研修が行われる間に(ネットワークソリューションセンタが新設部署であった以上、必要と考えられる研修を発令後に実施したとしても、何ら不自然なことではない。)、事務室の内装工事等を進めたとしても、同部署が不要であることの証とはいえないし、また、証拠(乙401)によれば、同年7月17日以降、「INS64」の復活案件が処理されたのを最初として、同月中には13件(1万2773回線)の案件が処理され、9件の案件が受け付けられていると認められるのであるから、同センタの業務が同年7月中には開始されていたことも明らかである。また、同センタに配置された社員31名(管理職を除く)中30名が満了型選択者であったとの点についても、被告会社には、移行対象業務に従事していた満了型選択者が約300名おり(前提事実(6)ウ)、これらの者については早急に従事する職務を探す必要があったことに照らせば、これらの者のうち、その適性が比較的高い者を中心に、被告会社の枢要な部署である法人営業部において稼働するAMの業務のうち間接業務を集約することとして設立された新設部署である同センタに配置したことが、労働力の適正配置の観点から不当なものであったとも解されない。
もっとも、被告会社が同センタの新会社への外注委託を、同センタ設立後約2か月後に検討し始めたことは上記認定のとおりであるが、同センタの廃止・業務移管が正式に決定したのは平成15年2月のことであるし、同センタの業務が移管され、同センタが廃止されるまでの間、同センタの業務を行う部署が被告会社内に必要となることは明らかであることからすれば、上記事実も、同センタ設立の必要性がおよそなかったことの根拠となり得るものではない。確かに、そのような部署に広域配転を行ってまで人員配置を行う必要があったかについて、原告X3が疑問を抱くことは理解できるところであるが、前記のとおり、本件構造改革に伴い、全国各地に生じた移行対象業務に従事する満了型選択者約300名については、早急に配転先を探す必要があったことからすれば、これらの者の中から同センタに配転される者が生じたとしても、そのこと自体やむを得ないことというほかない。
(イ) また、原告らは、原告X3は、SO業務に従事した経験はなく、CUSTOMについても操作に習熟していたとはいえないとか、原告X3が習熟していた顧客対応はネットワークソリューションセンタのSO推進担当として求められる技術ではなく、原告X3の人選は不合理なものであったとも主張する。
証拠(甲170、証人M、原告X3本人)によれば、原告X3はCUSTOMを日常的に使用していたものの、原告X3が使用していたのはその機能の全てではなかったこと、原告X3にはSO業務のうち指示書作成等のSOセンタ業務の経験はほとんどなかったこと、以上の事実が認められる。
しかし、これらの事実は、原告X3がSO推進担当としての即戦力ではなかったことを推認させる事情となり得るとしても、CUSTOMの作業に従事した経験があり、広範な内容の業務であるSO業務の一部とはいえ、SO業務である料金業務に従事した経験がある同人に、およそSO推進担当としての適性がなかったことを推認させるものではない。また、配転の対象となった候補者中、原告X3より適任であったと解された社員Ⅱについては、定年退職を間近に控えており、配転には適任ではないと判断されたというのであるから、その選定の過程にも不当な点は認められないし、そうである以上、SO業務の一部である料金業務について経験があり、また、日常的にCUSTOMを使用していた原告X3を選定したことにおよそ合理性がなかったということはできない。
(ウ) 原告らは、新潟県内には、原告X3に適した業務を行う部署として、従前料金サービスセンタ長岡担当が行っていた業務を外注委託されたm株式会社、n株式会社が存在すると主張するが、原告X3をこれらの会社に在籍出向させず、配転の対象としたことが経営判断として合理的なものと解されることは、既に説示のとおりである。
また、新潟支店の長岡営業支店には法人営業部門が存在するとしても(甲171)、これらの部門に満了型選択者を充てるか(充てるとしてどの社員を充てるか)、他の社員を充てるかは被告会社の裁量に属する問題であって、長岡営業支店に配置する社員として原告X3以外に適任者が存在しないのであれば格別、本件においてそのような事情を認めるに足りる証拠もないのであるから、被告会社が原告X3を長岡営業支店ではなく、法人営業本部のSO推進担当として配転したことが被告会社の裁量権を逸脱した措置であったとも解されない。
エ 以上によれば、被告会社が原告X3を法人営業本部ネットワークソリューションセンタSO推進担当として配転したことには、業務上の必要性が認められる。
(7)  原告X4の配転の必要性
ア 前提事実に証拠(甲142、乙21、22、55の1・2、235、236、262、289ないし291、298、570、証人O、同P、原告X4本人)及び弁論の全趣旨を総合すると、以下の事実が認められる。
(ア) 原告X4は、昭和40年4月1日、電電公社に見習社員として雇用されて以降、約37年間、主に無線に関する業務に従事していた。
原告X4が従事していた無線に関する業務は、無線設備の故障修理や定期試験などを行う維持管理、無線の信頼性向上を目的とした設備保守工事の実施等各種無線に関する業務であり、原告X4は、無線の概要、仕組み、電波伝搬、周波数帯域、電波出力等に関する知識や経験を有していた。また、原告X4は、他の社員と一緒に業務を行う際には、サブ作業主任や作業主任の立場で作業や作業指示を行うこともあった。
原告X4は、従事していた業務が平成9年にY2東北に移管されたことに伴い、Y2東北に在籍出向したものであり、従前と同様の業務に従事していた。
(イ) Y2東北は、被告会社等からの電気通信設備等の管理業務受託及び保守業務受託、情報通信用端末機器販売、情報通信システムの企画・開発・販売・設計・建設・保守及びコンサルティング等の事業を営むことを目的とする企業であり、ほとんどの社員が被告会社からの出向者であった。Y2東北は、固定電話収入の減少に伴い、被告会社からの受託費が大幅に減少したため、経常利益は、平成9年度の9億4000万円をピークとして、平成10年度に7億4000万円、平成11年度は9000万円、平成12年度は1億2000万円と、その経営状態は徐々に悪化していた。
そのため、Y2東北は、収入の軸足を被告会社等からの受託収入からIP・ブロードバンドビジネスを中心とした一般市場に移行させるとともに、コストの抑制を図るため、各支店の廃止、従前の業務の外注委託を実施することとした。その結果、原告X4が所属していた仙台支店ノードサービス部の業務全般が新会社に外注委託されることとなった。
Y2東北の社員の大部分は、被告会社からの出向社員であり、被告会社の実施した雇用形態・処遇体系の多様化の適用対象であったため、Y2東北は、平成13年6月18日から同月22日にかけ、全社員を対象に、社員説明会を開催し、本件構造改革の必要性、Y2東北の現状が厳しいものとなること、光・ブロードバンド市場へ人的資源等を注入していくこと等を説明し、同年7月10日から同月16日にかけてY2東北の構造改革の背景、必要性、施策概要等を全社員に説明した。
Y2東北は、同年10月には、中間面談を実施し、各社員から、雇用形態・処遇体系の多様化実施の際、満了型、繰延型、一時金型のいずれを選択するかの意向を確認した。
Y2東北は、同年12月10日から同月20日にかけて、Y2東北における構造改革の概要、新会社の会社・業務概要、雇用形態・処遇体系の多様化の趣旨及び概要、新会社における労働条件等について説明会を開催した。
また、同月10日以降には、51歳以上となる社員について、各上長が個別面談を実施し、①満了型を選択すると、被告会社に残存する業務のうち法人営業業務や企画等の業務に従事することや、全国転勤が前提となり、成果主義が徹底されること、②雇用形態選択通知書を提出しないなどいずれの雇用形態も選択する意思を示さない場合には、満了型を選択したとみなされることを説明し、雇用形態選択通知書が全社員に手交された。
(ウ) 原告X4は、上記の社員説明会にはいずれも出席していたが、組織として面談を拒否するよう指示されているとして、上長から退職再雇用の説明を聞いたものの、自らの希望を述べることはなかった。原告X4は、雇用形態選択通知書は受領していたが、これを提出期限とされた平成14年1月18日までに提出せず、その後の上長の指示にも応じなかったため、被告会社は、原告X4が満了型を選択したものとみなした。
Y2東北に出向していた被告会社社員のうち、51歳以上の雇用形態選択の対象となる社員は1752名在籍していたが、内1718名が繰延型又は一時金型を選択し、残りの34名中24名が満了型を選択し、10名が雇用形態選択通知書を提出せず、満了型を選択したとみなされた。
(エ) 原告X4が担当していたノードサービス部の業務全般は、新会社に外注委託されたため、原告X4については、新たに従事する職務を探す必要が生じた。被告会社は、本件構造改革後、労働力をIP・ブロードバンドビジネスに集中させる方針であったため、原告X4につき、IP・ブロードバンドビジネスに関する業務に従事させることを企図し、Y2東北は、原告X4を、平成14年5月1日付けで、経営企画部総務担当に配転し、同年6月30日までの間、集合研修等を実施した。
被告会社及びY2東北が原告X4に対して実施した集合研修の内容は、被告会社の商品・サービスに関する知識、顧客に対する提案・折衝の方法やインターネットやフレッツサービスを始めとしたIP・ブロードバンドに関する基礎知識等に関する座学研修やY2東北における実務研修等であった。
(オ) 原告X4は、平成14年6月17日、神奈川支店への配転が伝えられた際、上長に対し、家庭事情、組合活動を理由に配転には応じられないと申し出たが、被告会社はこれに応じなかった。
これに対し、原告X4は、「配転命令には異議があります。」、神奈川支店への配転命令は「私が「一時金型」ないし「繰延型」を選択しなかったことに対する報復的不利益措置としか考えられません。」、神奈川支店への配転により「異職種で遠隔地配転のために多大な職業上・生活上の不利益を被ります。」などと記載された異議申立書をY2東北の代表取締役社長あてに提出した。
(カ) 神奈川県は、平成13年当時の事業所数約31万事業所(全国4位)、人口約850万人、世帯数約350万世帯と、東京・大阪に次ぐ全国3位の市場性を有する地域であった。神奈川支店は、被告会社の収入基盤確立のために大きく貢献することが期待されている支店であり、特に近年IP・ブロードバンド市場の収益拡大に向けた取組みを積極的に行う重要な支店とされていた。
神奈川支店の営業組織は、平成14年5月当時、法人営業部と3つの各地域法人営業部とに分かれていた。そのうち、法人営業部は、顧客規模が大きく、SIソリューションでは受託商品を扱う等、システムの構築等の専門的な知識、経験が必要となる部門である。各地域法人営業部は、各地域の自治体や企業のうち電話回線を15回線以上保有する大口ユーザ等に対する営業活動を行う部門であるが、顧客規模、販売額は大きくなく、AMの役割としては、窓口として顧客の通信に関わる課題や要望を聞き、顧客に、主に既存商品を利用した提案・販売を行うことが求められる部門であった。
神奈川西法人営業部は、総回線数15回線以上を有する企業に対し、訪問活動を行い、顧客の通信に関わる現状・課題を聴取し、顧客の問題点を改善するため、既存の定型化された商品を用いて情報システムを提案する等の営業活動を行うことを業務内容としていた。
神奈川西法人営業部が担当する厚木地区では、住宅戸数の増加に伴い、有線又は無線によるインターネット接続や無線LAN等の設備を新築マンションに予め設置するマンション営業の市場が拡大傾向にあったため、これら商品の集中的な提案や、ユーザカバレッジの向上を図るべく、AMの増員を必要としていた。
そのため、神奈川支店神奈川西法人営業部は、本社に対し、総回線数15回線以上を有する大口ユーザに対してシステムやネットワーク構築等の提案・折衝を行うAMの適任者(できれば、顧客に商品・サービスを提案し折衝した経験を有する者、無線に関する知識・経験、電気通信に関する資格を有する者が望ましい。)の人員要請をした。
(キ) これを受け、本社は、Y2東北に対し、大口ユーザへの法人営業のAMの適任者1名の選定要請をした。
(ク) Y2東北に出向していた被告会社社員で満了型を選択し、あるいは選択したとみなされた34名の社員のうち、原告X4を含む30名が、新会社への移行対象業務に従事していたため、Y2東北は、その30名の中から神奈川支店におけるAM適任者1名を選定することとした。
Y2東北は、上記30名中、3名は、定年退職まで間もないため、これを配転候補者から外すこととした。Y2東北は、残りの27名中に法人営業等のAM経験がある者を探したが、その経験を有する者はいなかった。そのため、Y2東北は、無線に関する知識・経験の有無について検討したところ、無線経験を10年以上有しており、かつ、直近10年間に無線業務に従事していた社員は原告X4及び社員Ⅲの2名であった。Y2東北は、原告X4と社員Ⅲのいずれも適任と考えたが、社員Ⅲについては、同時にoから要請があった配転候補者として適任であったため、原告X4が本社からの要請基準を満たすものと判断した。
(ケ) 原告X4は、同年7月1日付けで神奈川支店神奈川西法人営業部に配転された。
イ 以上のとおり、Y2東北において、満了型選択者のうち、移行対象業務に従事していた社員については、他部署へ配置し直す必要があったものである。そして、出向先で従事する職務がなくなった社員について、出向先のY2東北で配転先を探すか、出向を解除して被告会社において配転先を探すかの問題は、会社の合理的な裁量に委ねられる問題であると解されるところ、本件において、原告X4について、Y2東北内ではなく、被告会社において配転先を探すこととした判断が合理性を欠くものであったことを窺わせる事情はない。
また、神奈川支店神奈川西営業所における市場動向はア(カ)のとおりであり、同営業所にはAMの増員をする必要があったというのであるから、人員要請を受けた本社が、新会社への移行対象業務に従事していた満了型選択者が30名いたY2東北に対し、神奈川支店神奈川西営業所におけるAM適任者を選定するよう指示したことには、労働力の適正配置の観点から、業務上の必要性が認められるものである。
Y2東北において、配転候補者となった30名の中から、原告X4を選定した経緯はア(ク)のとおりであり、最終的には、原告X4の無線に関する知識・経験が原告X4を選定した決定的な理由とされている。これは、神奈川支店神奈川西営業所からの、顧客に商品・サービスを提案し折衝した経験を有する者、無線に関する知識・経験、電気通信に関する資格を有する者との要請を受けてのものである。このうち、顧客に商品・サービスを提案し折衝した経験を有するものであれば、AMの適任者であることは容易に推測できるところであるが、無線に関する知識・経験については、これがマンション営業の市場が拡大傾向にあるという神奈川西営業所において必須の専門的知識・経験であるとまでは考え難いところである。もっとも、証拠(証人P、原告X4本人)によれば、無線に関する専門的知識・経験をマンション営業に生かす余地もあると認められることからすれば、無線に関する知識・経験は、AMとして、あれば足しとなる知識・経験であることも、また否定し難いところである。その意味において、神奈川西営業所が、本社に、無線に関する知識・経験があることを条件の1つとして挙げたことにおよそ合理性、必要性がないとも解されない。
Y2東北において、他に、顧客に商品・サービスを提案し折衝した経験を有する者がいたにもかかわらず、あえて無線に関する知識・経験がある者を優先して候補者としたのであれば、その選定には強い疑問が残るところであるが、本件においては、ア(ク)のとおり、候補者中に顧客に商品・サービスを提案し折衝した経験を有する社員はいなかったのであるから、Y2東北が次善の策として、無線に関する知識・経験の有無を基準に原告X4を選定したことはやむを得ないことというほかない。
ウ 確かに、原告X4は技術系の職員であり、それまでの経歴に照らして、同人の営業職への適性が高いとも解されないことからすれば(被告会社は、原告X4には、友人や知人に対して被告会社等の通信機器やネットワーク商品を販売する全社員販売の経験があったと主張するが、そのような経験が法人営業への適性の高さを裏付けるものとも解されない。)、何ら合理的な理由もなく、これを法人営業に配置することは許されないことである。
しかし、原告X4が従前担当していた無線業務は新会社に外注委託され、その結果、出向先のY2東北や被告会社には原告X4が従事すべき職務はなくなっていたのである。そして、被告会社に残存していた業務は、主に経営・設備・開発・サービスに関わる戦略を担う企画型業務と、大口顧客に対して会社の商品やサービスを販売することなどを行う法人営業業務であったところ、原告X4の経歴に照らして、同人に企画型業務が適任であるとは考えられないことからすれば、原告X4について、従前とは必要とされる知識・技術が異なる営業職への配転が検討されたことも、やむを得ないことというほかない。
そして、原告X4が配転された神奈川支店神奈川西営業所におけるAMの職務は、各地域の自治体や企業のうち電話回線を15回線以上保有する大口ユーザ等に対する営業活動を行う部門であり、顧客規模、販売額も大きくなく、AMの役割としては、窓口として顧客の通信に関わる課題や要望を聞き、顧客に、主に既存商品を利用した提案・販売を行うことを内容とするものであり、特に、専門的な知識、経験を要するものとも解されず、これまで営業経験がない技術系の職員にとっても、これを遂行することがおよそ不可能な職務とも解されない。このことは、証拠(乙262、304、原告X4本人)によれば、原告X4は、平成15年度には、他の社員と協力して秦野南が丘団地及びマンションへのBフレッツ販売業務に従事し、ポスティング活動や受付業務を行うなどした結果、Bフレッツにつき123契約を獲得し、約1400万円の販売額を達成し、担当者28名中14位の成績を上げていると認められることからも推認できるところである。
このことに、原告X4に対しても、被告会社の商品・サービスに関する知識、顧客に対する提案・折衝の方法やインターネットやフレッツサービスを始めとしたIP・ブロードバンドに関して、法人営業としての基礎知識に関する研修が行われており、相応の配慮がされていたこと(ア(エ))も併せて考慮すれば、その配転が技術系の職員である原告X4に行われたものであることを考慮しても、なお、その配転は労働力の適正配置の観点からの必要性が認められるものであったというほかない。
エ 原告らは、原告X4に吃音障害があることや東北訛りがあることから、原告X4はAMとして適任ではないと主張するが、原告X4の吃音障害や東北訛りが顧客との意思疎通を困難とするようなものではないことは、当法廷における同人の供述態度からも明らかであるし、同人はメールによっても顧客との意思疎通を図り得ていた(乙306の1ないし3)のであるから、原告X4の吃音障害や東北訛りがAMとして不適格であることの事情となるとは解されない。
オ 以上によれば、被告会社が原告X4を神奈川支店神奈川西法人営業部AM担当に配転したことには、業務上の必要性が認められる。
(8)  原告X5の配転の必要性
ア 前提事実に証拠(甲175、184、乙21、22、57、386、388ないし391、395、402、証人Q、同R、原告X5本人)及び弁論の全趣旨を総合すると、以下の事実が認められる。
(ア) 原告X5は、昭和40年4月1日、電電公社に見習社員として雇用されて以降、約30年間、線路宅内業務に従事し、それ以降は、小規模の法人ユーザ等に対する営業業務に従事していた。
原告X5が従事していた線路宅内業務は、電話局から電気通信サービス利用ユーザの入居する家・ビル等の建物や同建物内に敷設される電話ケーブル及び電気通信サービス利用ユーザの使用する電話機等の加入者設備及び加入者伝送設備に関わる工事、保守、管理等の業務であった。また、原告X5は、平成10年12月以降、旭川支店営業推進部等において、営業販売業務に従事し、小規模の法人ユーザ等に対する被告会社の商品・ネットワークサービス等の営業販売や通信機器等商品の発注・管理業務等といった販売担当者に対する支援業務、顧客を訪問し、被告会社の商品やネットワークサービス等に関する提案や折衝を行い、受注に至った場合は契約書を作成し、商品の設置等の工事を行う場合は顧客の通信設備等の状況を現地調査して、その調整等を行う業務等に従事した。
(イ) 北海道支店は、社員1人当たりの事業者数、固定電話加入者数が少ないなど、市場性が低い地域を管轄する支店であり、昭和61年以降数百億円規模の赤字を計上している支店であった。そのため、北海道支店は、希望退職の実施等により、平成11年度末に約4700名いた社員数を平成12年度末に約3900名に減少させ、販売業務の拠点等を大幅に統廃合するなどし、経営状態を改善すべき方策を模索していた。
そのような中、本件構造改革が実施されることとなり、業務の外注委託や雇用形態・処遇体系の多様化が現実化することとなったため、北海道支店は、平成13年6月及び同年12月に、社員説明会を開き、また上長を通じ、全社員に対し、本件構造改革の枠組み、構造改革後の北海道支店や新会社の業務内容、新会社における労働条件等を説明した。
同月10日から同月28日までの間、51歳以上となる社員について、各上長が個別面談を実施し、①満了型を選択すると、被告会社に残存する業務のうち法人営業業務や企画等の業務に従事することや、全国転勤が前提となり、成果主義が徹底されること、②雇用形態選択通知書を提出しないなどいずれの雇用形態も選択する意思を示さない場合には、満了型を選択したとみなされることを説明し、雇用形態選択通知書が全社員に手交された。
(ウ) 原告X5は、上記の社員説明会にはいずれも出席した。また、原告X5は、平成13年12月19日に上長との個別面談にも応じたが、「雇用形態についてはまだ決めていない。決めていないというより選びようがないといってもよい。組合に方針を委ねている。」と述べるにとどまった。また、原告X5は、雇用形態選択通知書は受領していたが、これを提出期限とされた平成14年1月18日までに提出せず、その後の上長の指示にも応じず、同月21日付けで「「構造改革に向けた業務運営形態等の見直し等」の実施に対する要求書」を提出し、雇用形態選択の実施方法に異議を述べ、強制的な配転に反対するとの意見等を申し出るのみであったため、被告会社は、原告X5が満了型を選択したものとみなした。
北海道支店では、51歳以上の雇用形態選択の対象となる社員は1326名在籍していたが、内1289名が繰延型又は一時金型を選択し、残りの37名中25名が満了型を選択し、12名が雇用形態選択通知書を提出せず、満了型を選択したとみなされた(いずれも出向社員を除く。)。
なお、北海道支店では、本件構造改革後に北海道支店に残る業務に従事する配置人員を約900名と試算していたが、平成14年5月時点の在籍者は、満了型選択者を含め約920名であった。
(エ) 原告X5が担当していた小規模の法人ユーザ等に対する営業販売業務は、新会社に外注委託されたため、原告X5については、新たに従事する職務を探す必要が生じた。被告会社は、本件構造改革後、労働力をIP・ブロードバンドビジネスに集中させる方針であったため、原告X5につき、IP・ブロードバンドビジネスに関する業務に従事させることを企図し、被告会社は、原告X5を、平成14年4月24日付けで旭川営業支店(法人営業担当)に配転し、同年6月30日までの間、集合研修等を実施した。
被告会社が原告X5に対して実施した集合研修の内容は、被告会社の商品・サービスに関する知識、顧客に対する提案・折衝の方法やインターネットやフレッツサービスを始めとしたIP・ブロードバンドに関する基礎知識等に関する座学研修や北海道支店における実務研修等であった。
(オ) 原告X5は、上記研修中の平成14年6月5日に実施された折り返し面談において、旭川の勤務を希望する、広域配転だといろいろ考えると申し出た。また、原告X5は、同月11日には、「配転に関する要求書」を提出し、同居の娘が精神的に不安定であること、自身の健康にも腰痛があり不安があること、組合活動の必要性を訴えたが、被告会社は、これらを配転障害事由となり得ないと判断したため同月20日、原告X5に東京支店への配転を内示した。
これに対し、原告X5は、同月21日に、上長へ配転に対する不満を述べるとともに、同月24日付けで「配転命令には異議があります。」、東京支店への配転命令は「私が「一時金型」ないし「繰延型」を選択しなかったことに対する報復的不利益措置としか考えられません。」、東京支店への配転により「異職種で遠隔地配転のために多大な職業上・生活上の不利益を被ります。」などと記載された異議申立書を北海道支店長あてに提出した。
(カ) 東京は、国の重要機関が集中するといったエリア特性に加え、企業の本社が集中し、事業者数においても全国20パーセント強を占めるなど、秀でた市場性を有しているため、東京支店は、被告会社にとって最重要拠点である。
東京支店の営業組織は、平成14年4月当時、法人営業本部と5つの営業支店法人営業部があったが、同年5月、本件構造改革の実施に伴い、法人営業本部が第一法人営業本部に、5つの営業支店法人営業部が第二法人営業本部となった。
(キ) このうち、第一法人営業本部は、主に東京支店エリアに存在する事業所のうち、各々の事業所で電話回線を15回線以上保有するユーザで、かつ、複数のエリアにまたがって事業を展開しているユーザに対するアカウント営業(あるユーザを特定のAMが担当して一元的に営業活動をすること)を行っており、そのうち、第1営業部門は行政・教育・医療・福祉関連ユーザを担当していた。同部門は、実際にアカウントするユーザを受け持つ営業担当、AMの技術的支援を行うSE担当、MI(「メンテナンスインテグレーション」の略称であり、顧客へのシステム構築・導入後において、被告会社がそのシステムのメンテナンス契約を顧客と結び、システム保守・管理等を請け負うことをいう。)・インフラ設備提案支援を行うカスタマサービス担当、部門内の事業計画策定等を行う営業推進担当に分かれていた。
そのうち、営業担当は、AM及びサポート担当で構成されており、具体的には、①行政・教育・医療・福祉関連ユーザに対するコンサルティング活動業務、②AMのコンサルティング活動のマネジメント業務、③AMによる商品、サービス受注後の事務処理等サポート業務を行うこととなっていた。
(ク) 被告会社は、AMの配置について、本社が配置基準を定め、事業所の回線規模により受持ち事業所数を決めていたが、東京支店では、本社配置基準では、十分なコンサルティング活動ができないと判断したため、4ユーザにAM1名を配置することとしていた。第1営業部門第2公共担当においては、平成14年3月時点で東京支店が定めた基準を満たすAMが配置されていたが、同年4月末に自己都合退職等により6名のAMが転出したため、同部門は、その補充を求めていたけれども、同年5月中に2名の補充がされたのみで、同担当は更なる人員補充を要請していた。ところが、同担当として理想である法人営業AMの担当者は、どこの支店も離したがらないという事情があったため、同部門は、少しでも早くAMを補充するために法人営業AMの従事者とは限定せず、営業業務に従事した経験を有する者の人員要請をしたところ、本社は、北海道支店に対し、東京支店第一法人営業本部への配転候補者として、実際に顧客を訪問し被告会社の商品やサービスを提案・折衝するなどしていた経験等を有する者1名の選定を指示した。
(ケ) 北海道支店で満了型選択者となった37名のうち、原告X5を含む29名が新会社に移行することとなった業務に従事していたため(移行対象業務従事者は当初32名であったが、このうち2名が平成14年5月1日付けでグループ会社に出向し、1名が休職中であった。)、北海道支店は、その29名の中から東京支店第一法人営業本部におけるAM適任者を選定することとした。
上記29名中、営業販売業務(中小企業営業及びマス営業)に従事した経験を有する社員は6名であったため、その段階で、北海道支店が本社に条件を確認したところ、固定電話に関する知識・経験を有する者が望ましいとの回答があった。原告X5は、長年線路宅内業務に従事しており、電気通信設備の保守、故障修理、予防保全、設備新増設工事に従事した経験があったため、北海道支店は、原告X5は加入者設備の構成に関する知識を有しており、本社からの要請基準を満たしていると判断した。
(コ) 原告X5は、同年7月1日付けで、東京支店第一法人営業本部第1営業部門営業担当第2公共担当に配転された。
イ 以上のとおり、北海道支店において、満了型選択者のうち、移行対象業務に従事していた社員については、他部署へ配置し直す必要があったものである。そして、北海道支店の市場性は低く、昭和61年以降大規模な赤字を生じさせていたことや、平成14年5月時点での北海道支店の在籍者数が事前の見込みより約20名多かったことからすれば、労働力の適正配置の観点から、これらの社員につき、北海道支店以外の部署への配置を検討したことには業務上の必要性が認められる。
そして、東京支店第一法人営業本部第1営業部門第2公共担当では、AMが退職等により欠員となっており、その補充が急務であったにもかかわらず、これが十分に補充されず、その理由も、本来前記担当として適任である法人営業経験のあるAMはどの支店も配転させたがらないという事情によっていたことに照らせば、同担当が次善の策として、法人営業の経験がなくとも営業業務に従事した経験がある者の人員要請をしたことには合理的な理由があったと解されるし、これを受けた本社が、満了型選択者であり、かつ、移行対象業務従事者が29名存在していた北海道支店に対し、候補者を1名選定するよう指示したことも、合理的な判断であったと解される。
北海道支店は、営業業務従事者が上記29名中に6名いたため、他の条件を本社に確認したところ、本社は、固定電話に関する知識・経験を有する者が望ましいと回答しているが、ユーザ宅・ビル内等の電話配線等の加入者設備の構成を理解していれば、ユーザに対するコンサルティング活動がしやすくなることは比較的容易に推認できることからすれば、これも、人選基準として何ら不合理なものであったとは解されない。
そして、原告X5の適性についてみても、同人には小規模とはいえ法人ユーザ等に対する営業業務に従事した経験があるばかりか、加入者設備・加入者伝送設備に関わる業務にも長年従事していたのであるから、同人に、行政・教育・医療・福祉関連ユーザに対するコンサルティング等を主たる業務とする法人営業に対する適性がおよそなかったとも考えられない。
ウ(ア) これに対し、原告らは、原告X5の線路宅内の知識・経験は、第2公共担当のAMとして役に立たないものであると主張するが、証拠(証人R)によれば、多くのユーザが使用しているPBX、ビジネスホン、ファックス等の通信機器に関し、ユーザの配線、配管等の設備状況を理解することは、これらの更改、導入に係る業務を円滑に行うことを可能とすると認められるのであるから、原告X5の線路宅内での知識・経験が、第2公共担当のAMとして全く活用し得ないものであるとは解されない。
また、原告らは、原告X5には、1回線から2回線を利用するユーザの営業しか担当した経験がなく、法人営業には向いていなかったと主張する。第2公共担当のAMとして法人営業を経験した者が最適であることは証人Rも認めているところであり、原告X5の経歴は第2公共担当として最適であったとはいい難いものである。しかし、次善の策として、営業業務に従事した経験を要求した判断が合理的なものと解されることは前記イのとおりであるし、証拠(証人Q)によれば、顧客の大小により顧客層や対象商品が異なるとしても、営業の本質は、顧客のニーズを捉えて、サービスを提案するという点にあって、その点については、顧客の大小により異なるものではないと認められるのであるから、営業業務に従事した経験を有する原告X5に、法人営業の適性が全くなかったとも解されない。
証拠(乙413)によれば、原告X5に対しては、上司から「なかなか商品知識も豊富にならない」ことが業績が上がらない原因として言及されていると認められるように、原告X5に第2公共担当として必要とされる商品知識が不足していたことは明らかであるが、これらの知識については、日常の業務や研修等を通じ補うことが可能であると解されることからすれば、原告X5にこれらの商品知識が欠如していたことが、同人の第2公共担当としての適性の欠如をあらわすものであるともいえない。
(イ) 原告らは、原告X5の東京支店への配転と同時に札幌支店から旭川営業支店に社員が1人配転されていることを問題視するが、証拠(原告X5本人)によれば、札幌支店から配転された社員は、原告X5が従事したことがないSO業務に従事する社員であると認められるのであるから、同事実は、前記判断を左右し得るものではない。
エ 以上によれば、被告会社が原告X5を東京支店第一法人営業本部第1営業部門第2公共担当に配転したことには、業務上の必要性が認められる。
(9)  原告X6の配転の必要性
ア 前提事実に証拠(甲185、乙386、388ないし390、394、395、398、414、415、証人Q、同S、原告X6本人)及び弁論の全趣旨を総合すると、以下の事実が認められる。
(ア) 原告X6は、昭和41年5月1日、電電公社に見習社員として雇用されて以降、約33年間、線路宅内業務に従事し、それ以降は、札幌支店設備部サービス推進部等において、顧客からの電気通信サービスの利用申込みや日常生活に支障を来す申告があった際に電柱や電話ケーブルの新設・移設工事の関連会社への発注、工事に伴う電気電信設備の増減管理を書類で行い、書類による電気通信設備の受渡しや設備の確認等の業務に従事していた。
原告X6が従事していた線路宅内業務は、電話局から電気通信サービス利用ユーザの入居する家・ビル等の建物や同建物内に敷設される電話ケーブル及び電気通信サービス利用ユーザの使用する電話機等の加入者設備及び加入者伝送設備に関わる工事、保守、管理等の業務であった。原告X6は、これらの業務を通じて、所外設備に関する電柱や電話ケーブルの新設・移設工事の発注、電気通信設備の受渡しや設備の確認等といった業務、加入者伝送設備(所外設備)の現場業務、設計業務について、知識・経験を有していた。
(イ) 北海道支店における経営状況と本件構造改革
(8)(原告X5の配転の必要性)ア(イ)と同じ。
(ウ) 原告X6は、上記の社員説明会にはいずれも出席した。原告X6に対しても個別面談は実施され、その際、原告X6からは、札幌で現在の業務に従事し続けたいこと、実母に軽い痴ほう症があること等を申し出たが、雇用形態の選択については、通信労組として統一的に回答するとして、これを明らかにしなかった。また、原告X6は、雇用形態選択通知書は受領していたが、これを提出期限とされた平成14年1月18日までに提出せず、その後の上長の指示にも応じず、「「構造改革に向けた業務運営形態等の見直し等」の実施に対する要求書」を提出し、雇用形態選択の実施方法に異議を述べ、強制的な配転に反対するとの意見等を申し出るのみであったため、被告会社は、原告X6が満了型を選択したものとみなした。
北海道支店における満了型選択者等の状況は(8)(原告X5の配転の必要性)ア(ウ)記載のとおりである。
(エ) 原告X6が担当していた設備部サービス推進部の業務は、本件構造改革により新会社に外注委託されたため、原告X6については、新たに従事する職務を探す必要が生じた。被告会社は、本件構造改革後、労働力をIP・ブロードバンドビジネスに集中させる方針であったため、原告X6につき、IP・ブロードバンドビジネスに関する業務に従事させることを企図し、被告会社は、原告X6を、平成14年4月24日付けで北海道支店法人営業部企画部門に配転し、同年6月30日までの間、集合研修等を実施した。
被告会社が原告X6に対して実施した集合研修の内容は、被告会社の商品・サービスに関する知識、顧客に対する提案・折衝の方法やインターネットやフレッツサービスを始めとしたIP・ブロードバンドに関する基礎知識等に関する座学研修や北海道支店における実務研修等であった。
また、原告X6の配転は同年8月1日付けとなったため、原告X6に対しては、同年7月中、北海道専用サービスセンタにおいて、専用線に関わる業務のOJT研修が行われた。
(オ) 原告X6は、上記研修中の平成14年6月11日に、「配転に関する要求書」を提出し、夫婦共働きであり、躁うつ病の実母の介護が必要であることや組合活動の必要があると訴えたが、被告会社は、これらを配転障害事由となり得ないと判断したため、同月22日、原告X6に専用サービスセンタへの配転となる予定である旨伝えた。
これに対し、原告X6は、同月25日付けで「配転命令には異議があります。」、専用サービスセンタへの配転命令は「私が「一時金型」ないし「繰延型」を選択しなかったことに対する報復的不利益措置としか考えられません。」、専用サービスセンタへの配転により「異職種で遠隔地配転のために多大な職業上・生活上の不利益を被ります。」などと記載された異議申立書を北海道支店長あてに提出した。
(カ) 専用サービスとは、顧客の指定区間を直接回線で結び、顧客が専用して回線を使用するサービスである。専用サービスセンタは、各支社等で実施していた専用サービスの受付・回線設計等の専用サービス業務、総合工事発注等のエンジニアリング業務、トラヒック監視・制御等のネットワーク運営業務等について業務集約による効率化を図るべく、平成11年1月に発足した組織である。同センタの業務は、当時、支社の法人営業本部等で実施していた専用サービスの受付・契約・SOデータ投入等の営業関連バックヤード業務、回線設計・開通試験・故障受付等のサービス運行管理業務、ISDNの一部大口ユーザに関わる故障受付業務とされていた。
平成14年8月当時、専用サービスセンタは、首都圏に所在している4つの部門(企画部門、第一ビジネスサービス部門、第二ビジネスサービス部門、カスタマサービス部門)と、3つの地域専用サービスセンタ(信越、東北、北海道各専用サービスセンタ)に分かれていた。首都圏の4部門のうち、第一ビジネスサービス部門は、大口ユーザ25社を担当し、これらのユーザからの専用サービスの申込み受付から工事指示書発注までの一連の業務を行う部門であった。第一ビジネスサービス部門のSO推進担当の業務は、①SOフロント担当、②SOコントロール担当、③回線設計担当、④SO推進担当に分けられており、そのうちSO推進担当は、顧客の要望する納期に専用サービスを提供し得るかどうかを確認し、納期回答を行う回線設計担当の業務の支援業務を行うこととされていた。具体的には、SO支援担当は、納期回答を行うために、所管する関連部署に連絡・問い合わせを行い、所内設備や所外設備等が具備しているかどうかを確認した上で、直ちに社内システムに設備の有無を投入(入力)することにより、回線設計担当が行う納期回答をサポートしたり、回線設計担当等が開通希望日に専用サービスが提供できないと回答した場合に、社内システム等を使用しながら、専用サービスの所内設備・所外設備の早期構築に向けた依頼、折衝を行う役割を果たしていた。
専用サービス部門の業務のうち、第一ビジネスサービス部門では、今後収益の基盤となるIP・ブロードバンドビジネスの主力サービスである光サービスの需要が伸張することが予想されたため、被告会社に多大な収益をもたらす大口ユーザの囲い込みに万全を期す必要があった。また、被告会社の顧客満足度は、納期回答の観点から他社に劣っているとされていたため、第一ビジネスサービス部門では、納期回答を早めること、担当する大口ユーザを25社から50数社に増やすこと等を目標として、早急にSO推進担当(SO支援担当)を増員する必要があると判断した。
そのため、第一ビジネスサービス部門SO推進担当は、本社に対して、専用線に関する設備等の電気通信設備に関する知識・経験等を有する社員の人員要求をしたところ、本社は、北海道支店に対し、専用サービスセンタにおける適任者2名の選定要請をした。
(キ) (8)(原告X5の配転の必要性)ア(ケ)記載のとおり、北海道支店では、29名について新たに従事する業務を探す必要があったことから、北海道支店は、その29名の中から専用サービスセンタにおける適任者2名を選定することとした。
北海道支店は、専用サービスセンタは、専用サービスに関わる設備運営を行う組織であることから、直近の被告会社の設備業務における仕事の流れを把握している社員が望ましいと判断し、直近で設備運営業務に従事していた社員を選定したところ、原告X6を含む3名の社員が候補となった。そのため、その段階で、北海道支店が本社に条件を確認したところ、電話ケーブル・電柱などの加入者伝送設備(所外設備)の設計・工事等の業務について理解している社員が望ましいとの回答があった。原告X6は、入社以来一貫して線路宅内業務に従事し、特に、加入者伝送設備に関する設計、工事、工事の監督業務、加入者伝送設備に関するサービス総合工事の発注、工事の進捗管理に従事していたのに対し、1名の社員は、電話ケーブル、電柱などについての知識、経験が全くなかったことから、北海道支店は、原告X6が本社からの要請基準を満たしていると判断した。
(ク) 原告X6は、同年8月1日付けで専用サービスセンタ第一ビジネスサービス部門SO推進担当(SO支援担当)に配転された。
イ 以上を前提に原告X6の配転の必要性を判断する。
北海道支店において、満了型選択者のうち、移行対象業務に従事していた社員について、北海道支店以外の部署への配置を視野に入れて配転先を検討したことがおよそ不当といえないことは既に説示のとおりである。
そして、専用サービス部門のうち、第一ビジネスサービス部門においてSO推進担当(SO支援担当)を増員する必要があると判断した理由は、同部門が、被告会社に多大な収益をもたらす大口ユーザの窓口となる部署であり、その囲い込みに万全を期す必要があったからであるというのであるから、その判断が経営上、不合理な判断であったとは解されない。
これに対し、北海道支店には、新たに従事する職務を探す必要がある満了型選択者であり、かつ、移行対象業務従事者が29名いたのであるから、第一ビジネスサービス部門SO推進担当からの人員要請を受けた本社が、北海道支店に配転候補者を2名選定するよう指示したことには、労働力の適正配置の観点から業務上の必要性が認められるものである。
原告X6の選定過程についてみると、北海道支店に対しては、専用線に関する設備等の電気通信設備に関する知識・経験がある者との要請がされ、北海道支店では、被告会社の電気通信設備に関する知識・経験を有する者として、特に直近に設備運営業務に従事していたという点を重視したというのであるから、その選定過程に不合理な点があったとも解されない。そして、候補となった3名のうち、本社は、電話ケーブル・電柱などの加入者伝送設備(所外設備)の設計・工事等の業務について理解している社員を優先して選定するよう指示したというのであるが、これも、配属予定先であるSO推進担当が、回線設計担当の業務の支援業務を行うことを業務内容とする部署であり、SO支援担当も、業務として、所内設備や所外設備等が具備しているかどうかを確認したり、専用サービスの所内設備・所外設備の早期構築に向けた依頼、折衝を行う役割を担っていることからすれば、不合理な人選要請であったとも解されない。
原告X6の適性についてみても、同人には、線路宅内業務に従事する過程で、電柱や電話ケーブルの新設・移設工事の関連会社への発注、工事に伴う電気電信設備の増減管理を書類で行い、書類による電気通信設備の受渡しや設備の確認等を行ったり、所外設備に関する電柱や電話ケーブルの新設・移設工事の発注、電気通信設備の受渡しや設備の確認等を行っていたというのであるから、同人に、前記ア(カ)のような業務を行うSO推進担当としての適性がおよそなかったとも考えられない。
ウ これに対し、原告らは、原告X6には専用線に関する業務に従事した経験はなく、専用サービスセンタのSO推進担当(SO支援担当)として適性はなかったと主張する。原告X6が、従前、専用サービスに係る業務に従事したことがないことは事実であるが、証拠(乙426、572、証人Q、原告X6本人)によれば、原告X6には、専用線を収容する装置等の知識はなく、「専用回路設計・開通」のスキルレベルは「C」とされている(平成14年10月現在)ものの、原告X6は、専用線でも用いられる所外設備の構築、所外設備関連部門との調整能力といった、SO推進担当(SO支援担当)に必要不可欠と解される分野に関しての知識、経験は有していたと認められるのであるから、原告X6が、専用サービスセンタのSO推進担当(SO支援担当)としておよそ不適格であったとは考えられないし、証拠(乙427、証人S)によれば、原告X6には、着任後、約5か月もの間、OJTが施され、必要な配慮も受けていると認められるのであるから、その配転が、北海道支店内で担当する業務がなくなった原告X6にとり、労働力の適正配置や労働者の能力開発といった点で、特段、不合理なものであったとも解されない。
原告らは、北海道支店内で配転候補となった29名の中には、専用線業務に従事した経験を有する社員(T、U)もおり、あえて原告X6を専用サービスセンタに配転する必要はなかったとも主張するが、証拠(証人Q)によれば、これらの社員には直近に設備運営業務に関与した経験がなく、その点で専用サービスセンタのSO推進担当(SO支援担当)として適任ではないと判断したと認められるところ、配転候補者中、いかなる者をいかなる基準で選定するかは、会社の合理的判断に委ねられるべき問題であると解されること(なお、T、Uは、北海道支店(札幌市)から東京営業本部、函館営業支店にそれぞれ配転されている。甲414)や、原告X6を選定した基準やその過程が特段不合理であったとも解されないことは既に述べたとおりであるから、原告らの主張は理由がない。
また、原告らは、専用サービスセンタは、平成14年4月の時点で外注委託されることが決定されており、そのような部署に、原告X6を広域配転する必要はなかったとも主張する。証拠(甲137)によれば、被告会社は、平成14年4月、「構造改革実施時における人材確保等について」において、専用サービスセンタについて、「構造改革後も適宜検証を行いつつ、必要に応じリファインを行っていく。」と記載していたと認められるが、同文書に、専用サービスセンタの廃止について直接的に言及する部分は認められないのであるし、仮に、被告会社が、当時、業務の外注委託を含めた施策を検討していたとしても、これが現実化するまでの間、同センタの業務を行う必要があることは自明であり、また、その間、収益向上等に向けた経営努力を放置すべき理由もないのであるから、上記事実も、原告X6の配転の必要性がおよそなかったことを根拠付けるものではない。
エ 以上によれば、被告会社が原告X6を専用サービスセンタ第一ビジネスサービス部門SO推進担当(SO支援担当)に配転したことには、業務上の必要性が認められる。
(10)  原告X7の配転の必要性
ア 前提事実に証拠(甲128、134、135、141、乙21、22、61、203ないし205、211、262、321、573、証人V、同P、原告X7本人)及び弁論の全趣旨を総合すると、以下の事実が認められる。
(ア) 原告X7は、昭和42年3月13日、電電公社に見習社員として雇用されて以降、無人中継所の設備保守、自動車電話の基地局の設計・建設、無人局の鉄鋼塗装の設計・積算及び監督業務等に従事した後、平成9年9月以降、山形支店及び同支店酒田営業所等において、法人営業の業務に従事した。
原告X7が、平成9年9月以降、山形支店において従事した業務は、法人営業(15回線以上の電話回線を保有するユーザへの営業)業務であり、原告X7は、行政機関を対象とした大口ユーザに対して訪問営業を行い、システム構築の提案を始め、固定電話の割引サービスの提案・折衝、電話の移転といった業務に関し、顧客や関連部署との折衝・調整等を行っていた。
平成11年2月以降、原告X7が山形支店営業部ソリューション営業部門庄内地域担当において従事した業務は、顧客に対し通信機器やネットワークサービス等の提案・折衝を行う業務であり、小規模な事業者(中小企業)や個人事業者(自営業)を主に担当し、直接訪問等による営業活動やユーザ囲い込み営業を担当した。当時、原告X7は15回線以上の電話回線を保有する大口ユーザ、主に3回線から14回線の電話回線を保有する中堅ユーザのうち中規模のユーザ、2回線以下のマスユーザを担当しており、合計約100ユーザを担当していたが、そのうち、3回線から14回線のユーザ及び2回線以下のユーザが約98件であった。
(イ) 山形県は、人口数、県民1人当たりの所得において全国で下位に属しており、他の支店等と比べると、山形支店の市場性・生産性は低い状態にあった。平成12年当時の山形支店の総収益は約410億円であるのに対し、総費用は約530億円であり、約120億円の収支差が生じており、平成13年当時の山形支店の全収益額は全支店17店中15位(社員1人当たりの収益額は14位)であった。山形支店は、希望退職の実施等により、平成11年度末に約1100名いた社員数を平成13年度末に約800名に減少させ、販売業務の拠点等を大幅に統廃合するなどしたほか、首都圏へのパワーシフトを実施するなど、その経営状態を改善すべき方策を模索していた。
そのような中、本件構造改革が実施されることとなり、業務の外注委託や雇用形態の多様化が現実化することとなったため、山形支店は、平成13年6月及び同年12月に、社員説明会を開き、また上長を通じ、全社員に対し、本件構造改革の枠組み、構造改革後の山形支店や新会社の業務内容、新会社における労働条件等を説明した。
同年12月7日から同月21日までの間、51歳以上となる社員について、各上長が個別面談を実施し、①満了型を選択すると、被告会社に残存する業務のうち法人営業業務や企画等の業務に従事することや、全国転勤が前提となり、成果主義が徹底されること、②雇用形態選択通知書を提出しないなどいずれの雇用形態も選択する意思を示さない場合には、満了型を選択したとみなされることを説明し、雇用形態選択通知書が全社員に手交された。
(ウ) 原告X7は、上記の社員説明会にはいずれも出席したが、面談は組織として拒否するよう指示されているとして、個別面談に応じなかった。
原告X7は、雇用形態選択通知書は受領していたが、これを提出期限とされた平成14年1月18日までに提出せず、その後の上長の指示にも応じなかったため、被告会社は、原告X7が満了型を選択したものとみなした。
山形支店では、51歳以上の雇用形態選択の対象となる社員は345名在籍していたが、内339名が繰延型又は一時金型を選択し、残りの6名が雇用形態選択通知書を提出せず、満了型を選択したとみなされた。
(エ) 山形支店営業部ソリューション営業部門庄内地域担当の法人営業の社員は15回線以上のユーザと3回線から14回線のユーザの双方を受け持っていたが、15回線以上のユーザ以外の業務は新会社に外注委託されることとなったため、山形支店は、主にいずれのユーザを担当しているかによって、その社員が移行対象業務に従事しているか否かを区別することとした。原告X7は、(ア)のとおり、主に3回線から14回線のユーザ及び2回線以下のユーザを担当していたため、山形支店は、原告X7を移行対象業務従事者と判別した。被告会社は、本件構造改革後、労働力をIP・ブロードバンドビジネスに集中させる方針であったため、原告X7につき、IP・ブロードバンドビジネスに関する業務に従事させることを企図し、被告会社は、原告X7を、平成14年4月24日付けで山形支店法人営業部庄内地域担当に配転し、同年6月30日までの間、集合研修等を実施した。
被告会社が原告X7に対して実施した集合研修の内容は、被告会社の商品・サービスに関する知識、顧客に対する提案・折衝の方法やインターネットやフレッツサービスを始めとしたIP・ブロードバンドに関する基礎知識等に関する座学研修や山形支店における実務研修等であった。
(オ) 原告X7は、平成14年4月15日、「雇用に関する『私の意向通知』」を提出し、本件構造改革に異議があることや、広域配転には応じられないこと等を申し出た。被告会社は、同年6月19日、原告X7に対し、神奈川支店神奈川西法人営業部に配転予定であることを通知したところ、原告X7は、同月24日付けで「配転命令には異議があります。」、神奈川支店への配転命令は「私が「一時金型」ないし「繰延型」を選択しなかったことに対する報復的不利益措置としか考えられません。」、神奈川支店への配転により「異職種で遠隔地配転のために多大な職業上・生活上の不利益を被ります。」などと記載された異議申立書を山形支店長あてに提出した。
(カ) 神奈川支店の状況
(7)(原告X4の配転の必要性)ア(カ)と同じ。
(キ) これを受け、本社は、山形支店に対し、大口ユーザへの法人営業のAMの適任者1名の選定要請をした。
(ク) 山形支店で満了型選択者となった6名は、原告X7を含む全員が新会社に移行することとなった業務に従事していたため、山形支店は、その6名の中から神奈川支店における法人営業のAM適任者を選定することとした。
上記6名中、法人営業、中小企業営業及びマス営業をした経験がある社員は原告X7を含めて5名いたが、原告X7は、ユーザへの提案・折衝を行う営業経験が一番長かったこと、大口ユーザを担当する業務との関連性が強い法人営業AMの経験もあったこと、実際に訪問活動を行った経験もあることから、原告X7を候補者として検討した。原告X7は、販売実績も前年比で伸びており、訪問活動、訪問時間も他の社員と遜色なく行っており、法人営業業務の「スキル把握」の結果が「指導を受けながら独力で業務を遂行できるレベル」(C)以上のレベルであると判定されていたことに加え、原告X7には無線中継所勤務の経験があり、無線業務の経験・知識も有していたことから、山形支店は、原告X7は、本社からの要請基準を満たしていると判断した。
(ケ) 原告X7は、同年7月1日付けで神奈川支店神奈川西法人営業部AM担当に配転された。
イ 以上のとおり、山形支店において、満了型選択者のうち、移行対象業務に従事していた社員6名については、他部署へ配置し直す必要があったものである。そして、山形支店は、従前から人員削減や業務改革に取り組んでおり、その経営状態も芳しくなかったことからすれば、山形支店が、これらの者につき、山形支店以外への配置を視野に入れて配転先を検討することがおよそ不当といい得るものではない。
また、神奈川支店神奈川西営業所がAMの増員を要請することに合理的な理由があったことは既に説示のとおりであることからすれば、同営業所からの人員要請を受けた本社が、山形支店に対し、同AMの人員の適任者を選定するよう指示したことには、労働力の適正配置の観点から、業務上の必要性が認められるものである。
なお、山形支店は、原告X7には法人営業の経験があったことや、本社から要請があった無線に関する知識・経験があったことを踏まえ、原告X7を選定したものであるが、その選定基準や選定過程に、特段不当な点は見受けられない(無線に関する知識・経験が条件の1つとされたことに合理性、必要性がなかったといえないことは既に説示のとおりである。)。
原告X7の適性についてみても、同人には、中小規模の顧客が大多数を占めていたとはいえ、法人営業のAMとして稼働した経験があったのであるから、同人に、神奈川支店神奈川西営業所のAMとしての適性がおよそなかったといえないことは明らかである。
ウ(ア) 原告らは、原告X7が配置された厚木ロケーションのAMは、平成14年5月時点の9名から、同年7月に14名に増員されたが、平成16年4月には7名に、平成17年4月には6名に減員されているように、厚木ロケーションにおける人員配置の必要性はなかったと主張するが、原告X7の配転から約2年後に厚木ロケーションのAMの人員が減少されたからといって、直ちに、配転当時に、増員の必要性がなかったといい得るものではない。
原告らは、平成14年7月1日付けで神奈川支店神奈川西営業所に配転された社員全員が満了型選択者であったことを問題視するようでもあるが、本件構造改革により、満了型選択者となり、かつ、移行対象業務に従事した者が被告会社内で約300名生じており(前提事実(6)ウ)、被告会社がその配置先を優先して探さなければならない状態にあり、これらの社員については、概ね平成14年7月1日付けで配転が実施されたことからすれば、神奈川支店神奈川西営業所に、平成14年7月1日付けで配転された社員が全員満了型選択者であったことが不当な人選結果によるものといい得るものでもない。神奈川支店神奈川西営業所に人員増の必要がなかったのであれば格別、その増員に業務上の必要性が認められることは既に説示のとおりである。
原告らは、神奈川支店神奈川西営業所には、近隣都県から人員の配置が可能であったとか、原告X7を山形県内の新会社に在籍出向させるべきであったとも主張するが、既に説示のとおり、被告会社は約300名の社員について配転先を探す必要があったのであるから、これらの者のうち、法人営業に適性がある社員を優先して首都圏への配転の対象とすることが何ら不当とは解されないし、原告X7を新会社に在籍出向させなかったことに合理的な理由があることも既に説示のとおりである。
(イ) 原告らは、原告X7が15回線以上の大口ユーザの担当もしていたことから、同人の担当業務が移行対象業務とはいえないとも主張するが、原告X7が担当していた15回線以上のユーザは、同人の担当ユーザのごく一部にすぎず、その業務の大部分が新会社に外注委託される対象となっていたことからすれば、山形支店が原告X7を移行対象業務に従事している社員であると判断したことは合理的である。
(ウ) 原告らは、山形支店法人営業部は、原告X7の配転後、退職・再雇用を選択し、新会社で雇用された社員5名を新会社から「逆出向」させており、山形支店法人営業部は人員余剰の状態ではなかったとも主張する。証拠(甲133、乙321)によれば、山形支店法人営業部には、平成14年7月1日以降、退職・再雇用を選択し、新会社で雇用された社員3名(他に2名が新会社で雇用されているものの、その勤務場所が山形支店とされている。)が、新会社から出向して在籍していたが、その理由は、いずれも、担当途中の大型案件があり、途中での離脱を避ける必要があった、顧客から個別に案件について当該社員の担当を依頼されたといった事情によるものであったと認められるのであるから、原告ら主張の事実は、山形支店で人員余剰の状態ではなかったことを裏付ける事実ではない。
エ 以上によれば、被告会社が原告X7を、神奈川支店神奈川西法人営業部AM担当に配転したことには、業務上の必要性が認められる。
(11)  原告X8の配転の必要性
ア 前提事実に証拠(甲143、乙21、22、289ないし291、293、296、315、565、証人W、同O、原告X8本人)及び弁論の全趣旨を総合すると、以下の事実が認められる。
(ア) 原告X8は、昭和41年10月1日、電電公社に見習社員として雇用されて以降、専用サービス部門やノードメンテナンスサービス部等において約16年間専用線の管理・保守及び故障が生じた場合の修理等の業務に従事し、専用線の業務フォロー、専用線の伝送路構成、専用線サービスの種類等に関する知識・経験を有していた。
また、原告X8は、それ以前の電報電話局勤務等の経験を通じ、交換機やPBXの保守点検、電話の故障受付、電話加入者からの電話の問い合わせやこれに対する対応業務も行ったことがあった。
(イ) Y2東北における経営状態と本件構造改革
(7)(原告X4の配転の必要性)ア(イ)と同じ。
(ウ) 原告X8は、上記の社員説明会にいずれも出席したが、面談は必要ないとして、個別面談には応じなかった。また、原告X8は、雇用形態選択通知書は受領していたが、これを提出期限とされた平成14年1月18日までに提出せず、その後の上長の指示にも応じなかったため、被告会社は、原告X8が満了型を選択したものとみなした。
Y2東北における満了型選択者等の状況は、(7)(原告X4の配転の必要性)ア(ウ)記載のとおりである。
(エ) 原告X8が担当していたノードサービス部の業務全般は、新会社に外注委託されたため、原告X8については、新たに従事する職務を探す必要が生じた。被告会社は、本件構造改革後、労働力をIP・ブロードバンドビジネスに集中させる方針であったため、原告X8につき、IP・ブロードバンドビジネスに関する業務に従事させることを企図し、Y2東北は、原告X8を、平成14年5月1日付けで、経営企画部総務担当に配転し、同年6月30日までの間、集合研修等を実施した。
被告会社及びY2東北が原告X8に対して実施した集合研修の内容は、被告会社の商品・サービスに関する知識、顧客に対する提案・折衝の方法やインターネットやフレッツサービスを始めとしたIP・ブロードバンドに関する基礎知識等に関する座学研修やY2東北における実務研修等であった。
(オ) 原告X8は、平成14年6月19日、東京支店法人営業部への配転が伝えられた際、上長に対し、健康状態から配慮を願いたいと申し出たが、被告会社はこれに応じなかった。
これに対し、原告X8は、「配転命令には異議があります。」、東京支店への配転命令は「私が「一時金型」ないし「繰延型」を選択しなかったことに対する報復的不利益措置としか考えられません。」、東京支店への配転により「異職種で遠隔地配転のために多大な職業上・生活上の不利益を被ります。」などと記載された異議申立書をY2東北の代表取締役社長あてに提出した。
(カ) 東京支店の状況
(8)(原告X5の配転の必要性)ア(カ)と同じ。
(キ) このうち、第二法人営業本部は、東京支店エリアを5つに分けたエリア毎(千代田、港、新宿、上野、多摩)に、各々の事業所で電話回線を15回線以上保有するユーザに対し、アカウント営業を行っていたが、第一法人営業本部と比較すると、ユーザの規模も契約額も小さかった(1受注当たり平均数百万円単位)。また、第一営業法人本部が、情報システムの受託構築を受注販売していたのに対し、第二法人営業本部では、電話回線、専用サービス、通話料金割引サービス、PBX、ビジネスホン、その他通信機器といった、被告会社の既存商品を扱うことが多く、そのAMには、電話回線を15回線以上保有する顧客に足繁く訪問活動し、最適な商品・サービスを提案・提供することが期待されていた。
第二法人営業本部千代田第2営業部門SE担当は、AMの提案支援・技術支援、受注案件の構築等を行う部署であった。同担当は、第1SE担当と、第2SE担当とに分かれていたが、第2SE担当は、AMがユーザにサービスの概要の提案を行った後の段階で、個々のユーザに合わせた詳細な提案書作成、見積書作成、システム設計といった技術的支援、受注案件の構築等を行うことを主な業務としていた。
東京支店第一法人営業本部では、AM1名に対しSE1名を配置するという基準を設けていたが、平成13年当時、第二法人営業本部では、AM10名に対しSE7名配置とする基準とされていたため、同部では、今後のユーザカバレッジ向上の観点からSE増員を必要と考えていた。また、同部のSEは、平成14年4月末までに12名退職となり、その後の補充を経ても、前記基準によっても、SEが6名不足するという事態となっていた。更に、退職したSEの中には、専用線スキル、線路・交換保守スキル、LANスキルを有する社員がいたが、同部は専用線スキル、LANスキルを有する社員を補充できないままでいた。
そのため、同部は、専用線に関わる知識・経験を有する社員、音声系商品(ビジネスホン・PBX)に関わる知識・経験を有する社員、LANに関わる知識・経験を有する社員の人員要請を行い、これを受けた本社は、Y2東北に対し、東京支店第二法人営業本部千代田第2営業部門のSEの適任者1名を選定するよう指示した。Y2東北が、必要とされる人材を確認したところ、本社は、光サービスの提供に不可欠となる専用線に関する知識・経験を有するSEの適任者1名を候補者として人選することをY2東北に指示した。
(ク) Y2東北に出向していた被告会社社員で満了型を選択し、あるいは選択したとみなされた34名の社員のうち、原告X8を含む30名が、移行対象業務に従事していたため、Y2東北は、その30名の中から前記SE適任者1名を選定することとした。
Y2東北は、上記30名中、3名は、定年退職まで間もないため、これを配転候補者から外すこととした。残りの27名中に、専用線業務を10年以上経験している社員は原告X8を含め3名存在した。そこで、Y2東北は、更に、本社に必要な人材を確認したところ、本社は、専用線の業務フローや伝送路構成が分かる者が望ましいと回答した。これを受け、検討したところ、Y2東北は、上記3名中、原告X8及び社員Ⅳがその要件を満たすものであると判断したが、社員Ⅳは、oに配転されることとなったため、Y2東北は、原告X8を候補者として選定した。
(ケ) 原告X8は、同年7月1日付けで東京支店第二法人営業本部千代田第2営業部門SE担当に配転された。
イ Y2東北において移行対象業務に従事していた満了型選択者については、配転先を検討する必要があったところ、その配転先をY2東北内で探すのではなく、被告会社内で配置先を探したことが特段不当と解されないことは既に説示のとおりである。
また、東京支店第二法人営業本部では、SEの退職等の理由により、その補充が必要とされていたのであるから、同部がSE適任者の増員要求をすることは自然なことであるし、人員要請を受けた本社が、移行対象業務に従事する満了型選択者が30名存在していたY2東北に、SE適任者を1名選定するよう指示したことには、労働力の適正配置の観点から、業務上の必要性が認められるものである。
原告らは、本社が挙げた条件である「専用線に関する知識・経験」は、原告X8が配転されたSE担当に必要となる知識・経験ではないとして、その根拠として、原告X8が配転後にSE担当として従事した業務の中では、専用線の知識・経験とは関係がないビジネスホンの案件が多かったことを挙げる。しかし、東京支店第二法人営業本部千代田第2営業部門が、専用線に関する知識・経験がある社員を必要としたのは、従前、その知識を有していたSE担当が退職したからというのであるから、その補充を求めることは何ら不自然ではないし、証拠(乙293、296、297、証人W、原告X8本人)によれば、専用線に知識があれば、仮想的な専用線による専用サービスであるIP-VAN等の光サービスの構成や機能等に対する理解も早くなること、顧客が専用線から光サービスへとサービスを更改する際にも、そのメリットを説明しやすいことが認められるほか、現に、原告X8も本件配転後に専用線に係る案件を担当したことがあると認められるのであるから、本社が「専用線に関する知識・経験」を有する社員を要求したことに理由がなかったといえるものではない。
そして、原告X8は、専用線業務に長く従事し、専用線の業務フローや、伝送路構成が分かる社員であったというのであるから、前記のような要請を受けたY2東北が、原告X8を適任者として選定したことには業務上の必要性が認められる。
なお、東京支店第二法人営業部が、人選の条件として、実際に補充できないでいた専用線に関わる知識・経験を有する社員、音声系商品(ビジネスホン・PBX)に関わる知識・経験を有する社員、LANに関わる知識・経験を有する社員であることを挙げたのに対し、本社は、Y2東北に対して、光サービスの提供に不可欠となる専用線に関する知識・経験を有するSEの適任者1名の選定を指示しており、東京支店第二法人営業本部の要請とは異なる指示をしている。原告らは、このように東京支店第二法人営業本部からの要請と、本社から被告Y2に対する選定指示の内容が齟齬していることについて、被告らの主張が後から作られた虚偽の主張であるが故に生じた齟齬であると主張するが、前記のような齟齬も、本件構造改革により配転が必要となった移行対象業務に従事する満了型選択者全員をいずれかの職場に配置する経過の中で生じたものにすぎないとも考えられるのであって、これが、被告らの主張が虚偽であるが故に生じた矛盾であるとはにわかに考えにくい。
ウ これに対し、原告らは、東京支店第二法人営業本部千代田第2営業部門が即戦力となるSEを求めていながら、SE経験がない原告X8を選定したことには、およそ業務上の必要性が認められないと主張する。しかし、被告会社が、約300人の社員につき配転先を探す必要があったことに照らせば、配転先の要求と配転された人材の経歴等が完全に一致しなかったとしても、やむを得ない場合があるというほかない。原告X8について、SEとしての適性が完全に欠如していたのであれば格別、約16年間専用線の管理・保守及び故障が生じた場合の修理等の業務に従事し、専用線の業務フォロー、専用線の伝送路構成、専用線サービスの種類等に関する知識・経験のほか、電報電話局勤務等の経験を通じ、交換機やPBXの保守点検、電話の故障受付、電話加入者からの電話の問い合わせやこれに対する対応業務にも従事した経験を有する原告X8に、被告会社の既存商品を用いて個々のユーザに合わせた詳細な提案書作成、見積書作成、システム設計といった技術的支援、受注案件の構築等を行うことを主な業務とするSEとしての適性がなかったとも解されない(現に、証拠(証人W)によれば、原告X8のSEとしての業務成績は、「期待し、要求する程度」である「C」とされていると認められる。)。
原告らは、東京支店第二法人営業本部千代田第2営業部門SE担当の年齢構成が若かったことを問題とし、同業務には若手社員が向いているのだから原告X8を同SE担当として配転することには業務上の必要性は認められないと主張するようであるが、証拠(乙308、証人W)によれば、原告X8の配転の4か月前の平成14年3月1日時点における同部門のSE担当の中には50歳以上の社員が35名中7名存在していたと認められ、このことからすれば、同部門のSE担当が若手社員のみに適した職務であるといえないことは明らかである。また、原告X8の配転時に50歳以上の社員が原告X8のみであったことからすれば、原告X8が職場の雰囲気に馴染めない面があったであろうことは容易に推測できるものの、そのことから、原告X8の配転に業務上の必要性がなかったといい得るものでもない(このことが原告X8に配転に伴い通常甘受すべき程度を超えた著しい不利益を与えたといえるものでもない。)。
エ 以上によれば、被告会社が原告X8を東京支店第二法人営業本部千代田第2営業部門に配転したことには、業務上の必要性が認められる。
(12)  原告X9の配転の必要性
ア 前提事実に証拠(甲144、146ないし151、165、乙22、23、63、64、323、325、329の1・2、330ないし332、証人Z、原告X9本人)及び前提事実によれば、以下の事実が認められる。
(ア) 原告X9は、昭和39年4月1日、電電公社に見習社員として雇用されて以降、一貫して、電気通信設備である電話交換設備の保守等の業務に従事していたが、平成9年10月、電話交換設備の保守等の業務が旧NTTから被告Y2に移行されたことに伴い、被告Y2に出向となった。
原告X9が従事していた電話交換設備の保守業務には、大別して、電話交換設備の定期点検と故障修理があり、原告X9は、交換機等のメンテナンスのスキルを有していた。
(イ) 被告Y2は、被告会社を始めとするNTTグループ会社から電気通信設備の維持管理等の業務を受託していたが、被告会社の固定電話収入の減少に伴い、被告Y2の収益の大半を占める被告会社からの受託費も大幅に減少し、経常利益も平成11年度の約48億円から平成12年度に約9億円と大幅に減少した。
これを受け、被告Y2は、業務運営の見直しや一般市場における事業領域の拡大を推進するなどの施策を講じた。ところが、これら施策にかかわらず、被告Y2は平成13年度には約105億円の経常損失を計上したため、被告Y2も業務の外注委託等を内容とする本件構造改革を実施することとなり、原告X9が従事していた電話交換設備の保守業務は外注委託されることとなった。
被告Y2の社員の大部分は、被告会社からの出向社員であり、被告会社の実施した雇用形態・処遇体系の多様化の適用対象であったため、被告Y2は、平成13年7月から8月にかけ、また同年12月、社員説明会を開き、また上長を通じ、本件構造改革の必要性、被告Y2の経営状態が悪化していること、被告Y2における構造改革の概要、新会社の会社・業務概要、雇用形態・処遇体系の多様化の趣旨及び概要、新会社における労働条件等について説明した。
同月10日以降には、51歳以上となる社員について、各上長が個別面談を実施し、①満了型を選択すると、被告会社に残存する業務のうち法人営業業務や企画等の業務に従事することや、全国転勤が前提となり、成果主義が徹底されること、②雇用形態選択通知書を提出しないなどいずれの雇用形態も選択する意思を示さない場合には、満了型を選択したとみなされることを説明し、雇用形態選択通知書が全社員に手交された。
(ウ) 原告X9は、上記の社員説明会にはいずれも出席していたが、組織として面談を拒否するよう指示されているとして、上長から退職再雇用の説明を聞いたものの、自らの希望を述べることはなかった。原告X9は、雇用形態選択通知書は受領していたが、これを提出期限とされた平成14年1月18日までに提出せず、その後の上長の指示にも応じなかったため、被告会社は、原告X9が満了型を選択したものとみなした。
被告Y2に出向していた被告会社の社員のうち、51歳以上の雇用形態選択の対象となる社員は7095名在籍していた(平成14年4月30日までに退職を申し出た278名を除く。)が、内7012名が退職・再雇用を選択し、残りの83名中44名が満了型を選択し、39名が雇用形態選択通知書を提出せず、満了型を選択したとみなされた。
(エ) 原告X9が担当していた電話交換設備の保守業務は新会社に外注委託されたため、原告X9については、新たに従事する職務を探す必要が生じた。被告Y2は、その再配置に際し、原告X9を始めとする出向社員については、被告Y2内で活用を検討する方針を決定した。
被告Y2は、被告会社からの受託収入の減少は解消しない見込みであり、一般市場への事業転換の加速が急務となっていたため、満了型選択者のうち、新会社への移行対象業務に従事していた社員について、基本的に、一般市場の事業分野を担当する組織を再配置予定先とし、事前研修及び集合研修を実施した上で、職場OJT等を通じて各社員の適性に合った配置先を決定する方針を立てた。原告X9は、この方針に沿い、平成14年4月24日付けで、被告Y2東京西東京支店第3JunKanビジネス部に配転され、以後、同年6月30日まで、研修を受けた。
被告Y2が原告X9に対して実施した事前研修及び集合研修の内容は、Web学習によるITレベルの自己スキル把握、社内推奨資格取得のための研修、配置が予定されている部署で扱うサービス等の概要、LAN・WANの基礎技術の研修であった。
これらの研修の際、各社員には、配属先となり得る組織の研修を本人に選択させるべく「OJT先希望調書」を提出することを指示したが、原告X9はこれを提出しなかった。
そのため、被告Y2は、後に新設される予定であったメンテナンスビジネス推進部で担当する予定業務の業務シミュレーションを原告X9に行わせることとした。
(オ) 原告X9は、平成14年4月24日付けで、被告Y2西東京支店第3JunKan部IT営業本部第1ソリューション営業担当への配転を命ぜられたが、同日付けで、「異職種配転の本人の同意を求める申し入れ(支店長宛)」を提出し、満了型選択者とされることに異議があること、東京以外の広域配転は認められないこと、異職種配転は不当労働行為であり認められないことなどを申し入れ、同月30日付けで、「不当な配転に対する抗議の申し入れ(支店長宛)」を提出し、通信労組役員として訓練及び研修には参加できないと申し入れた。
原告X9の研修への参加状況は、同人が組合休暇や年次休暇を頻繁に取得していたため、事件研修15日中出勤6回(内半日出勤5回)、就業研修8日中出勤5回(いずれも半日出勤)、OJT研修43日中出勤21回(内半日出勤20回)というものであった。
(カ) 被告Y2は、平成14年5月当時、一般市場向けの事業として13の組織を有していたが、メンテナンス推進部は、被告Y2が一般市場向けの新規事業を展開すべく同年7月1日付けで新設された組織であり、その業務内容はOA器機メンテナンスサービス、総合ビルメンテナンスサービス、「M3」サービス(一般市場向けの、被告らの通信機器の定額保守サービス)拡大の実現に向けたメンテナンス商品の企画・開発となることが予定されていた。
被告Y2は、構造改革後の一般市場の事業拡大予測を勘案して、満了型選択者83名中、移行対象業務に従事していた社員58名(退職者、病気休職者を除く)をメンテナンス推進部を含めた14の組織の中から、「料金センタ」(企画本部)、「ソリューションSE/SI」(法人営業本部)、「WAKWAK」(Xephionビジネス本部)、「M3」(メンテナンス推進部)、「Xephion」(Xephionビジネス本部)、「インターネットマンション」(サービスイノベーション本部)に配置することとした。
このうち、「M3」は、メンテナンスビジネス商品を具体化するために立ち上げる新組織の要員であるため、被告Y2は、故障修理等のメンテナンス、SO、ユーザとの折衝に関する知識・経験を有する社員を充てることが望ましいと判断した。
(キ) 被告Y2は、原告X9が、研修の際の希望も述べず、「M3」の研修にも異議を述べていなかったことや、原告X9には電話交換設備に関する保守・設備管理の業務に長く従事しており、これらの知識・技術を有することなどから、原告X9をメンテナンスビジネス推進グループへ配置することを決定した。
(ク) 原告X9は、同年8月1日付けで、被告Y2JunKanビジネス本部21メンテナンス推進グループに配転された。
イ 以上のとおり、被告Y2において、満了型選択者のうち、移行対象業務に従事していた社員については、他部署へ配置し直す必要があったものである。そして、これらの社員については、出向元の被告会社で配置先を検討するのではなく、被告Y2内で配置先を決定するとされたものであるが、出向先で従事する職務がなくなった社員について、出向先の被告Y2で再配置先を探すか、出向を解除して被告会社において再配置先を探すかの決定権は、被告会社の合理的な裁量に委ねられる問題であると解されるところ、本件において、原告X9について、被告会社内ではなく、被告Y2において配置先を探すこととした判断が合理性を欠くものであったことを窺わせる事情はない。
被告Y2は、被告会社からの受託収入が減少傾向にあったため、一般市場への事業転換を図るべく、一般市場向けの組織を強化することとしたというのであるから、新たに職務を与える必要があった満了型選択者につき、これらの組織のうち、研修や本人の希望等を通じて適正な配置先を探そうとした判断やその手法も、経営判断として合理的なものである。
これに対し、原告X9は、構造改革に反対するとの意見を述べるのみで、研修希望や配置先の希望も述べず、組合休暇や有給休暇取得のためとはいえ、研修へもほとんど参加せず、その従事する研修の内容にも特段異議を述べていなかったのであるから、被告Y2が、「M3」の研修に参加しており、被告らの通信機器の保守サービスを行う「M3」サービスの業務内容に関連がある電話交換設備の保守業務への従事経験がある原告X9をメンテナンス推進グループに配置したことには十分な合理性が認められる。
ウ これに対し、原告らは、メンテナンス推進グループには管理職を除く45名全員が満了型選択者であったことや、配転当時に仕事の手順も確立されていなかったことを挙げ、同グループは設立の必要性がない組織であったと主張する。
そして、証拠(甲12、153、原告X9本人)によれば、メンテナンスビジネス推進グループの管理職を除く職員は、いずれも満了型選択者であったこと、被告Y2が「M3」コースの研修の際に用いた資料には「新たに設置された組織のため、仕事の手順等が確立していません。」と記載されていたことが認められるものの、同グループの配属者が満了型選択者で占められることは、前記認定の満了型選択者の配置の経緯に照らし、特段不自然なことではないし、同グループの設立前の時点において、仕事の手順等が確立されていないことが、同グループの設立の必要性を否定し得る事情とも解されない。現に、証拠(証人Z)によれば、同グループは、平成14年9月から平成15年7月までの間に約9000件の市場調査を実施し、Bフレッツ、簡易IMCSといった商品の販売実績もあったと認められ、同グループは設立後、間もなく業務を開始しているのであるから、同グループが設立の必要もない部署であったということはできない。証拠(証人Z)及び弁論の全趣旨によれば、同部の事業収支は極めて悪く、立ち上げから約1年後に同部は廃止されたと認められるけれども、新規事業の立ち上げに伴い必然的に収益が上がるとも解されないことや、当初の見通しに反し、その収益状態が改善しなかった場合に、これを速やかに廃止すると決定することは、経営判断として何ら不合理なことでもない。
原告らは、「『メンテ事業』の立上げに向けて」と題する平成15年4月22日付け文書(甲154)中に、同グループ内では、「新規事業の『立上げ』は、どういうイメージで考えたらよいのか?」といった議論がされており、その段階でも業務の具体的手順等が確立されていなかったかの記載が多くあることを根拠に、同グループの業務内容は、その立上げ後9か月が経過しても確立されていなかったと主張するが、同文書の作成者については、原告X9自身、「神田の推進本部の企画部」、「企画担当」、「企画本部」とその供述内容を変えているばかりか、証拠(乙551、原告X9本人)によれば、前記書面には、その作成時点で「Y2-S」、「Y2営業企画本部」との被告Y2内には存在しない部署名が使用されていると認められることからすれば、上記文書の信用性は著しく低い。
エ 以上によれば、被告会社が原告X9をJunKanビジネス本部21メンテナンス推進グループに配転したことには、業務上の必要性が認められる。
(13)  本件各配転の必要性(まとめ)
以上のとおり、本件各配転には、いずれも業務上の必要性が認められる。
原告らの中には、原告X4のように、従前の職務とは必要とされる知識・経験が異なる職務に従事することとなった者もいるし、従前の職務とは異なる知識、経験が要求される部署に配転されたため、その能力を十分に生かしているといい難い原告もいるのであって、本件各配転が、余人をもって替え難い配転であったといえないことは明らかである。しかし、本件構造改革は、被告会社にとって重要な施策であり、これを実施する必要性も高かったと認められ、原告らの担当する職務が外注委託されたのも本件構造改革に伴うものであったことからすれば、原告らはそれまで従事していた職務が外注委託により被告らになくなった以上、他の職務に就くほかなく、原告らが必ずしもその適性が高いとまではいえない職場に配置されたとしてもやむを得ない。前記認定のとおり、被告会社は、原告らの配転に際してはその適性につき必要と考えられる検討をしていること、その配転先がおよそ適性がない職場であったとは認められないことも併せると、本件各配転についての業務上の必要性を否定することはできない。
(14)  不当な動機・目的について
配転に業務上の必要性が存する場合でも、配転命令が他の不当な動機・目的をもって行われたものであるときは、配転命令権の濫用であり、その配転は無効である。
そこで、以下、本件各配転が、不当な動機・目的で行われたものでないかどうかを検討する。
ア 前記のとおり、本件構造改革には合理性、必要性が認められるけれども、他方において、その中核である雇用形態の選択制度は、51歳以上の社員を退職・再雇用による賃金減額に誘導する面を有するというべきである。したがって、本件各配転は、各原告の個別的な事情をも考慮した上で各配転の必要性が肯定されるとしても、原告らが雇用形態選択により退職・再雇用を選択しなかった結果として実行されたという面を否定できない。そうすると、仮に、このような雇用形態の選択制度の内容・手法が不当であると評価されるのであれば、退職・再雇用を選択しなかったことによって実行されたということもできる本件各配転は、その目的において、不当とみるべき余地がある。
そこで、本件構造改革による雇用形態の選択制度が、その内容、手法において、不当かどうかを検討する。
まず、雇用形態の選択において、退職・再雇用(繰延型、一時金型)を選択せず、満了型を選択した場合、賃金は下がらないけれども、勤務場所や職種が変わる可能性が生じる。とくに、原告らのような移行対象業務従事者の場合には、職種は必然的に変更され、勤務場所も変更される可能性が大きい。また、成果主義による職務遂行が求められることにもなる(前提事実(3)ア)。しかしながら、前記のとおり、被告らにおいては実態として勤務場所が長期間変更されなかったなどの事情があり、満了型を選択した場合には事実上の不利益となることは否定できないものの、制度上は、職種や勤務場所が本人の同意がない限り変更されないことになっていたわけではないから、この不利益はあくまでも事実上のものにとどまる。制度上は、本件構造改革が行われる前と変化はなく、本件構造改革による勤務形態の選択が行われなかったとしても、勤務場所や職種の変更可能性がなかったとはいえない(この点で、原告らのように雇用形態選択通知書を提出しなかった者が、満了型を選択したものとみなされたことについては、違法・不当はない。)。成果主義による職務遂行が求められる点も、運用上の変化であり、制度上の不利益ではない。
次に、退職・再雇用を選択した場合には、賃金が15パーセントから30パーセント減額されるという不利益が生じる。ただ、新会社における賃金は、各都道県ごとに、類似業種の賃金水準を考慮し、被告会社における賃金水準との比較も行って決定したものであり、被告会社の賃金に比較すると減額となるが、それぞれの地域の類似業種の賃金水準を超えるものとなっている(乙153、証人C)。これに対して、勤務場所は、制度上限定され、各社員がこれまで勤務していた場所での勤務を退職時まで確実に継続できることになる。このほか、繰延型を選択した場合には、65歳まで契約社員として勤務を続けることができ、新会社から受け取る生涯賃金は満了型を選択した場合より多くなる。さらに、激変緩和措置として、繰延型を選択した場合には、被告会社の所定内賃金と新会社における所定内賃金との差額の60パーセントを61歳以降の契約社員期間における賃金加算分として受け取ることができ、一時金型を選択した場合には、同差額の50パーセントを一時金として受け取ることができることになっている(証拠(乙153)によれば、仮に原告らが繰延型を選択したとすれば、満了型を選択した場合と比して生涯賃金が約300万円から約580万円増加すると認められる。)(乙20、22)。
雇用形態選択を実施した経過をみると、確かに、本件構造改革による雇用形態の選択制度は、退職・再雇用に誘導する面を有するものであり、現に多数の社員が繰延型又は一時金型を選択しているけれども、これは、繰延型、一時金型と満了型の内容の差違から、退職・再雇用を選択する社員が多くなるにすぎないものである。いかなる雇用形態・処遇形態を選択するかは、個々の社員の自由意思に委ねられているのであって、被告らが雇用形態選択の対象となる社員に対して、繰延型又は一時金型の選択を強制した事実は認められない。原告らは、被告らが個別面談において、満了型選択の不利益を強調して社員に伝えるマニュアルを作成していたとも主張する。しかし、本件でその対応が問題とされるべき原告らの多くが個別面談に応じていない点は措くとしても、証拠(甲31)によれば、被告会社が作成した「個別面談時における社員対応例」中には、移行対象業務従事者が満了型を希望した場合には、「現在の業務に従事することはできなくなります。具体的にはY1の企画戦略、顧客サービス管理、設備構築、法人営業等の業務に従事することになり、引き続きY1の就業規則により、勤務地を問わず全国の事業所やグループ会社等において徹底した成果主義に基づいて業務遂行していただく」ことを説明することを定めているものの、前記書面中には、同時に、繰延型を希望する社員に対しては賃金が減額となるといった不利益があることや、繰延型を希望する社員が非移行対象業務に従事する社員である場合には、従前の業務に従事できなくなるといった不利益があることをそれぞれ説明することが定められ、社員にはこれらの不利益を勘案した上でいずれの型を選択するか最終的な決断をするよう助言することを定めたものにすぎないと認められるのであるから、被告らが、個別面談において移行対象業務に従事する社員に繰延型を選択するよう強制する意図を有していたとも認め難い。現に、原告らは、被告会社が、同マニュアルを使用して、繰延型を選択するよう執拗に社員に迫ったと主張するのみで、その主張を認めるに足りる適格な証拠も提出されていない。
以上のとおり、本件構造改革による雇用形態の選択において、満了型を選択した場合の不利益は、これまで事実上勤務場所や職種に変更がなかったものが変更の可能性が生じるというものであり制度的には変わりがなく、他方、繰延型又は一時金型を選択した場合には、賃金は下がるけれども、勤務場所の限定や定年後の勤務継続が確保されるという有利な面があり、賃金の減額についても、減額された賃金も各地域の類似業種の賃金よりは高く、激変緩和措置もあるから、不利益が大きすぎるとまではいえない。雇用形態の選択は、あくまで社員の自由意思によるものである。そして、本件構造改革には、合理性、必要性が認められ、その必要も大きかったと認められることは前記のとおりであり、このほか、本件構造改革については、被告らの社員の圧倒的多数が組織するNTT労働組合(組織率99パーセント以上である。)が了承していること(甲56、61)も併せて考えると、本件構造改革による雇用形態の選択制度は、その内容や手法が不当であるとは認められない。
そうだとすると、本件各配転が本件構造改革に基づく業務の外注委託と雇用選択制度を前提としているからといって、その目的・動機において、不当であるとはいえない。
なお、この点に関連して、原告らは、被告らには、繰延型又は一時金型を選択し安い賃金で再雇用された多くの社員に対する関係で、満了型選択者に対しては広域配転という不利益を与える必要があり、本件各配転はそのために行われたものであったとして、これを不当な目的・動機であると主張する。しかし、上記のとおり、本件構造改革による雇用形態選択制度は退職・再雇用へ誘導するという面があるものの、その内容、手法は不当ではないと認められるから、本件各配転が、繰延型又は一時金型を選択しなかった結果として行われたという面があることは事実であっても、これをもって不当な目的・動機ということはできない。本件各配転が、およそ配転の必要性がないにもかかわらず、退職・再雇用を選択しなかっただけの理由で行われたとすれば、不当な動機・目的があったことにもなりうるが、新会社への移行対象業務に従事していた満了型選択者を今後需要が見込まれる首都圏の法人営業を中心とした部署に配置することが経営上必要であったと認められ、原告らの個別事情をみても配転の必要性はあったと認められるのであるから、本件各配転が、満了型選択者に対する不利益付与の目的で行われた不当な動機・目的のもとに行われたものとは認められない。
イ 原告らは、本件構造改革は、51歳以上の社員について、被告会社を退職させた上で、賃金を大幅に切り下げて新会社で再雇用することを目的としたものであって、就業規則の不利益変更や整理解雇の制限に関する法理の潜脱を目的に行われたものであると主張する。
しかし、原告らは、繰延型又は一時金型を選択せず、満了型を選択したとみなされたのであるから、繰延型又は一時金型を選択し退職・再雇用となった場合の不当性、違法性は、直接的には、本件各配転の無効とは結びつかない(本件構造改革の内容、手法が不当かどうかは、本件各配転の動機・目的の不当性に関連するけれども、本件構造改革による雇用選択制度に不当性がないことは、前記のとおりである。)。
上記の点を措くとしても、まず、前記のとおり、いかなる雇用形態・処遇体系を選択するかは、個々の社員の自由意思に委ねられ、繰延型又は一時金型を選択しないことも可能であって、当然に退職・再雇用により賃金が減額されることになるのではない。雇用選択制度の運用の実態をみても、繰延型又は一時金型を強制した事実が認められないことは前記のとおりである。したがって、個々の社員の同意の有無に関わりなく変更された就業規則が適用されるかどうかが問題となる就業規則の不利益変更の法理が適用される場合とは異なる。また、繰延型又は一時金型を選択した場合の労働条件の内容は前記のとおりであって、合理性があると認められるのであるから、この点でも、就業規則の不利益変更の法理の潜脱とはいえない。
なお、原告らのように、雇用形態・処遇体系の選択をしなかったならば、労働条件の変更はないのであるから、就業規則の不利益変更と同視できる場合となる余地はない。新会社への移行対象業務に従事している満了型選択者にとっては、本件構造改革の実施は、広域配転の可能性を高める結果となった(約300名のうち約130名が首都圏に広域配転された。)という点をみれば、就業規則のうち配転に関する条項がこれらの者に不利益に適用される可能性が従前より高まったとはいい得るけれども、これも就業規則の運用に関する可能性の問題であり、就業規則の不利益変更の問題ではない。満了型選択者には、それまでとは異なる職務が与えられた上で、成果主義が問われることとなる(前提事実(3)ア)という点についても、労働条件を不利益に変更したことと同視し得る性質のものではない。
整理解雇の法理の潜脱という点については、前記のとおり、退職・再雇用を選択するかどうかは自由意思によるものであるうえ、そもそも、雇用形態選択により退職・再雇用を選択した場合には、再雇用されることが確保されているのだから、労働者としての地位を完全に失う整理解雇とは全く状況が異なり、整理解雇の法理の潜脱を考える余地はない。なお、原告らは、本件構造改革は、実質定年50歳制を企図するものであるとも主張するが、前記のとおりいかなる雇用形態・処遇体系を選択するかは社員の自由意思に委ねられているうえ、上記のとおり、繰延型又は一時金型を選択しても、再雇用されることが確保されている以上、これが実質定年50歳制と同視し得る制度であるともいえない。
ウ 原告らは、本件各配転は、満了型選択者を中心に候補者を選択して行われ、51歳以上の者に対する年齢差別、満了型選択者に対する不利益付与を目的として行われたものであり、その動機・目的は公序良俗に反するものであったと主張する。
しかし、雇用形態の選択は、51歳以上の社員に繰延型、満了型、一時金型を選択させるものであるとしても(50歳以下の社員も選択可能とされていたこと(前提事実(3))や、どの社員もいずれ50歳になることは措く。)、その選択をいずれかにするよう強制するものではないことは前記のとおりであるし、また、退職後の生活設計等について現実的に考慮し始める年代として51歳となる社員に対し、被告会社における雇用形態や処遇体系を任意に選択させることが、ことさらに年齢差別を行うものとして、公の秩序や、善良の風俗に反する施策であるとも考え難い。被告らが、首都圏への法人営業強化のための人員の候補者を、新会社への移行対象業務に従事する満了型選択者から多数選定したことは事実であるが、これも、本件構造改革によりこれらの者には従事すべき職務がなくなったことを契機とするものであって、被告会社には、これらの者を配転候補者とするにつき、業務上の必要性があったことからすれば、これが年齢差別や不利益付与といった不当な動機・目的のために行われたものであるとは認めがたい。
エ 原告らは、本件各配転は、通信労組に所属しているが故に行われた不利益取扱いであるとも主張する。
しかし、雇用形態・処遇体系の多様化は、所属組合のいかんをもって実施されたものではないし、証拠(乙118)によれば、移行対象業務に従事していた満了型選択者約300名中、NTT労働組合組合員が約160名、通信労組組合員が約140名であり、首都圏に配置された社員数はNTT労働組合組合員が約90名、通信労組組合員が約40名と認められるのであるから、これが通信労組組合員に対する不利益取扱いであるといえないことは明らかである。
オ 以上によれば、本件各配転が、不当な動機・目的で行われたものであるとは認められない。
(15)  原告らに対する不利益について
原告X1、同X2、同X9を除く原告らは、いずれも、配転により単身赴任を強いられており(原告X5は、後記のとおり、長女と同居後、長女自身の選択により単身赴任となっている。)、原告X1、同X2及び同X9も、長時間の遠距離通勤を強いられているものである。
どのような場合が配転に伴い労働者が通常甘受すべき程度の不利益といえるかは、労働者の具体的な不利益の内容、程度、その不利益を軽減するために使用者側が採った措置に加え、労働者の不利益と配転についての業務上の必要性との関係で定まるものと解されるが、単身赴任や遠距離通勤が、労働者の家族関係に与える影響は少なくなく、特に単身赴任は、家族との共同生活を維持し得なくさせるものであり、労働者に与える不利益の程度も大きいことからすれば、使用者が労働者に単身赴任を伴う広域配転を命じる際には、慎重に検討を要することが求められることはいうまでもなく、業務上の必要性についても、近隣地区への配転を行う際よりは高度のものが要求されて然るべきであると解される。また、単身赴任が前記のような不利益を伴うことからすれば、そのような配転を行う企業の実情に応じ、可能な限り、単身赴任の負担を軽減する措置が採られることが望ましいこともいうまでもない。
これを本件各配転についてみると、本件各配転が、余人をもって替え難い配転ではなかったことは既に説示のとおりであるが、本件構造改革に基づく一連の施策が被告会社の経営上、重要な施策と位置づけられ、これを実施する業務上の必要性も高かったと認められることや、既に従事する職務が外注委託されていた満了型選択者すべてを、人員配置の余裕が少ない地方圏で再配転することが、首都圏におけるIT・ブロードバンドビジネスの強化を図ろうとしていた被告会社にとって現実的な選択肢であったとも解されないことからすれば、これらの者の多くを首都圏に配転する必要性は高かったというほかない。
また、被告会社は、単身赴任者に対する負担軽減策として、単身赴任手当の支給(1か月3万円)や帰省費用の実費支給(6か月に7回分を限度とする。)をしているほか、単身寮を確保している(乙46、弁論の全趣旨)。遠距離通勤者に対しては、条件を満たせば、新幹線等の利用料金を支給している。
もっとも、以上の事情を前提としても、原告らに配転に応じ難い具体的事情があるなど、配転による不利益が具体的な内容及び程度において著しいものであれば、そのような事情を有する者に対してされた配転命令は、配転命令権を濫用したものとして無効とされることもありうる。そこで、以下、各原告ごとの個別事情を検討し、本件各配転が通常労働者が甘受すべき程度を著しく超えた不利益であったかどうかを検討する。
ア 原告X1について
原告X1は、本件配転により、①片道約2時間の遠距離通勤を強いられており、肉体的、精神的に多大な負担を強いられていること、②当時、高校三年生であった二女や中学校一年生であった二男とのふれあいの時間が奪われたこと、③当時、82歳であった実母の買い出しの手伝いに支障が生じたこと、④夫との家事の分担を十分に行えなくなったこと、⑤従前、培った料金業務の知識・経験を生かせない職場に配転されたこと、以上の不利益を被っているところ、これらの不利益は、労働者にとり、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益であると主張する。
しかし、片道2時間の通勤は、これが肉体的、精神的に負担となるものであることは容易に理解することができるけれども、首都圏に勤務する会社員にとって、これが希有な事象であるとも解されず、現に、被告会社においても、片道2時間通勤をしている社員は少なくないと認められる(弁論の全趣旨)。また、原告X1が主張する家族とのふれあいについても、その二女や二男は、本件配転時に18歳、12歳と思春期にあったものの(前提事実(7)ア(ア))、未成熟の児童とは異なり、その監護養育に手間がかかる年代ではない。実母の買い出しの手伝いについても、原告X1の主張によっても、2週間に1回程度買い出しを手伝うというものにすぎないことからすれば、本件配転が、その手伝いを困難にさせるものとは認められないし、家事が夫に集中したとの点についてみても、原告X1は、午後7時50分ころには帰宅できていたというのであるから(甲189、原告X1本人)、本件配転により、原告X1が子の監護養育も含めた家事を分担することがおよそ不可能になったとも認められない。原告X1の帰宅時間からみて、本件配転により集中したという、夫への家事の負担の程度が、夫婦共働きの世帯において見受けられる負担の程度を大幅に超えたものであるとは解し難い。証拠(甲191の1ないし3)によれば、原告X1は、インターネット上の「メンタルヘルス問診」の結果、「精神的ストレス反応・身体的ストレス反応・疲労・抑うつ・仕事のストレッサー」のすべてにおいて「産業医・保健師・看護師や専門家に相談してみてください」とされたと認められるが、上記判定も、専門医による問診の結果得られたものではなく、その信用性自体に疑問が残るばかりか(そのような精神状態が本件配転に起因するものと認めるに足りる証拠もない。)、その判定も、「専門家に相談してみてください」とするものにすぎず、原告X1が本件配転により精神的に過度の負担を強いられていることを立証し得るものでもない。
職業上の不利益についてみても、本件配転の経緯に照らせば、原告X1が従前と同様の職務に従事できなくなることはやむを得ないことであったといわざるを得ないし、原告X1がおよそ従前の知識・経験を生かし得ない職場に配転されたとか、およそ適性のない職場に配転されたとかいうこともできないことは既に説示のとおりである。
以上の事情に照らせば、本件配転により原告X1に生じたという各種の不利益が、配転に伴い通常甘受すべき程度を著しく超えるものとは認められない。
イ 原告X2について
原告X2は、本件配転により、①片道約2時間の遠距離通勤を強いられており、肉体的、精神的な負担が多大であること、②特にC型肝炎のキャリアである原告X2にとって、遠距離通勤が負担となること、③家族の団らんが奪われ、二男が高校を中退するに至ったこと、④従前培った116業務等における知識・経験が生かされない職場に配転されたこと、以上の不利益を被っているところ、これらの不利益は、労働者にとり、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益であると主張する。
しかし、①が労働者が通常甘受すべき程度を著しく超える不利益とはいえないことは前記のとおりであって、そのことに伴い、原告X2の朝食や夕食が外食や弁当等となることが多くなったとしても(原告X2本人)、これがおよそ労働者に甘受させるべきではない不利益であるとも解されない。原告X2は、家族との団らんの時間が減ったと主張するが、原告X2は、朝6時50分に家を出て、午後7時40分ころには帰宅していたというのであるし(甲193)、同居の子も、本件配転時に長女22歳、長男20歳、二男16歳といずれも未成熟の児童ではないのであるから(前提事実(7)イ(ア))、長距離通勤を強いられるようになったことが、ことさらに家族の団らんを奪うものであったとは認められないし、そのことが二男の中退の直接的な原因になったとも認められない。また、原告X2の健康状態についてみても、証拠(甲193、乙432、証人F、原告X2本人)によれば、原告X2はC型肝炎に罹患しているとはいえ、同人が本件配転前に医師から治療を受けていたり、業務を軽減するように指導されている事実はないし、被告会社産業医の見解によっても、肝機能の数値であるGOT、GPTは正常値で病状は落ち着いており、労働負荷軽減をする必要もない状態であったと認められるのであるから、これが配転に際し、具体的な支障となり得るものとも認められない。
職業上の不利益についてみても、本件配転の経緯に照らせば、原告X2が従前と同様の職務に従事できなくなることはやむを得ないことであって、原告X2がおよそ従前の知識・経験を生かし得ない職場に配転されたとか、およそ適性のない職場に配転されたとかいうこともできないことは既に説示のとおりである。
以上の事情に照らせば、本件配転により原告X2に生じたという各種の不利益が、配転に伴い通常甘受すべき程度を著しく超えるものであったとは認められない。
ウ 原告X3について
原告X3は、本件配転により、①単身赴任を強いられ、精神的に孤独な状態となったこと、②原告X3の妻も単身での生活を強いられ、精神的に追いつめられたこと、③農作業に従事することができなくなったこと、④海外留学をする2人の子の仕送りに支障が生じること、⑤義母の介護に支障が生じたこと、⑥従前培った料金業務での経験が生かされない職場に配転されたこと、以上の不利益を被っているところ、これらの不利益は、労働者にとり、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益であると主張する。
①や②については、単身赴任に伴い生じる不利益であり、可能な限り避けることが望ましい不利益であることは理解できるところであるが、我が国の労働環境において単身赴任という事態はおよそ希有な事態ではないことからすれば、単身赴任を強いられたという事実のみをもって、配転に伴い労働者が甘受すべき程度を著しく超える不利益であるとはいい難い。単身赴任に伴う不利益は、当該労働者の生活環境によっても異なるものであり、未成熟子や日常的な介護が必要な者が身近におり、これらの世話を代替して行う家族等がいないといった労働者に対して単身赴任を強いるのであれば、その不利益は具体的であり、かつ、その程度も大きいというべきであるが、そのような事情がない者に対して単身赴任を強いる配転をしたからといって、そのことが、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益であるとはいえない。現に、原告X3が主張する不利益も①や②のように、1人暮らしを強いられることによる原告X3や妻の寂しさといった抽象的なものにとどまるものであるから、前記のような具体的な不利益と比較すると、その不利益の程度は低いというほかない。
原告X3が農作業に従事できなくなったとの点についても、主たる生計を被告会社からの収入で立てている原告X3(弁論の全趣旨)にとって、その維持が必要不可欠となるとは認められないことや、仮にその維持を図るのが必要であるとしても、その面積は三反にすぎないというのであるから(甲170)、原告X3が新潟県長岡市周辺に在住しなければその維持を図り得ないものとも解されない。海外留学をする2人の子に対する仕送りに支障が生じるとの点についてみても、満了型選択者である原告X3の賃金は減額されていないのであるし、単身赴任手当(毎月3万円)のほか、6か月に7回を限度として帰郷の際に生じる実費が支給されていたのであるから、その出費が大幅に増加したとは認められないし、本件配転の結果、2人の子に対する仕送りが実際に途絶えたとか、減額されたなどと認めるに足りる証拠もないのであるから、本件配転が子に対する仕送りについて不利益を与えたとは解し難い。原告X3は、実母が高齢であることや、実弟が病気であることも配転に伴う不利益として主張するようでもあるが、原告X3の義母や実弟が、原告X3による介護が必要な状態であったと認めるに足りる証拠はない。
職業上の不利益についてみても、本件配転の経緯に照らせば、原告X3が従前と同様の職務に従事できなくなることはやむを得ないことであって、原告X3がおよそ従前の知識・経験を生かし得ない職場に配転されたとか、およそ適性のない職場に配転されたとかいうこともできないことは既に説示のとおりである。
以上によれば、本件配転により原告X3に生じたという各種の不利益が、配転に伴い通常甘受すべき程度を著しく超えるものであったとは認められない。
エ 原告X4について
原告X4は、本件配転により、①単身赴任を強いられ家族に対する責任を果たせなくなったこと、②実母や実姉の介護に支障が生じたこと、③原告X4の妻が精神的に不安定となったこと、④通信労組の組合員としての活動や、通信労組宮城支部の組合活動に支障が生じたこと、⑤従前培った無線に係る業務等での経験を生かせない職場に配転されたこと、以上の不利益を被っているところ、これらの不利益は、労働者にとり、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益であると主張する。
しかし、証拠(乙262、289、原告X4本人)によれば、特別養護老人ホームで生活する原告の実母の介護は、主に原告X4の兄が行っており、原告X4は週に1回程度の手伝いをしていたことや、原告X4は、兄と共に、実姉を病院に通院させていた事実が認められるものの、その程度や態様に照らせば、原告X4の配転が、その実母や実姉の介護に具体的な支障を与え得るものであったとは認められない(現に、原告X4が本件配転の前後に被告会社就業規則上の介護休暇や介護休職を取得した事実もない(乙262、289、原告X4本人)。)。なお、原告X4にも、単身赴任手当の支給、帰郷実費の支給がされている。
近隣で窃盗事件が生じて以降、原告X4の妻が精神的に不安定になったとか、原告X4が家事を分担することができなくなったとの点についても、原告X4の妻は成人した長女(本件配転当時28歳)、長男(同24歳)と同居しているというのであり(原告X4本人)、単身での生活を強いられているものではなく、家事の分担も親子間で分担し得ない程度のものであるとも解されないから、原告X4が主張する不利益の程度が大きいものとは解されない。
また、通信労組の組合員としての活動や、通信労組宮城支部の活動についても、原告X4は、現在も、通信労組神奈川支部に所属する組合員として活動を継続しているのであるし(原告X4本人)、原告X4の配転後、通信労組宮城支部の組合活動に具体的な支障が生じたと認めるに足りる証拠もない。
職業上の不利益についてみても、本件配転の経緯に照らせば、原告X4が従前と同様の職務に従事できなくなることはやむを得ないことであって、原告X4がおよそ従前の知識・経験を生かし得ない職場に配転されたとか、およそ適性のない職場に配転されたとかいうこともできないことは既に説示のとおりである。
以上によれば、本件配転により原告X4に生じたという各種の不利益が、配転に伴い通常甘受すべき程度を著しく超えるものであったとは認められない。
オ 原告X5について
原告X5は、本件配転により、①単身赴任を強いられ、股関節に障害がある長女の生活に支障が生じたこと、②経済的な負担が著しく増加したこと、③変形性頚椎症、椎間板ヘルニア、変形すべり症の持病がある原告X5に耐え難い苦痛が生じていること、④通信労組の組合員としての活動や、通信労組北海道支部の組合活動に支障が生じたこと、⑤従前培った線路設備部門での経験を生かせない職場に配転されたこと、以上の不利益を被っているところ、これらの不利益は、労働者にとり、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益であると主張する。
しかし、証拠(乙392、原告X5本人)によれば、原告X5は、配転に際し、長女(本件配転当時24歳)、長男(本件配転当時22歳)と同居することを前提とした社宅入居申込みを行い、実際に長女とは同居するに至ったと認められるのであるから、本件配転時に、原告X5の配転が、同人の単身赴任を余儀なくさせるものであったとか、長女の生活に支障を生じさせるものであったといえるものでないことは明らかである。
原告X5が主張する三世帯(原告X5、その長女、長男が別々の世帯となっている。)を維持するための経済的不利益についても、証拠(甲184、原告X5本人)によれば、長女は、本件配転後、原告X5と同居し、近隣で職に就いたが、その後、旭川で生活することを自ら選択し、別居するに至ったと認められ、長男は、社宅入居申込書の記載と異なり、独立してアルバイトで生計を維持していたと認められるのであるから、仮に、長男や長女への経済的援助を原告X5が行っていたとしても、これが本件配転に伴い生じた経済的負担の増加であるとは解されない。原告X5は、長女が旭川で貧困な生活を送っていることを強調して陳述等するが(甲184、原告X5本人)、同人の陳述等によっても、長女には稼働歴が複数認められることからすれば、その稼働能力がないものとは考えられず、現在の長女の生活が本件配転により生じた不利益とは認められない。原告X5に対しても、単身赴任手当、帰郷実費の支払がされている。
原告X5の健康状態についてみると、証拠(乙402、原告X5本人)によれば、原告X5は変形性頚椎症、椎間板ヘルニア、変形すべり症を持病として有しており、医師からなるべく重い物を持たないようにと指示されているものの、被告会社の健康管理規程に基づく指導区分認定の対象とはされていないと認められるのであるし、その疾病も中高年の者に比較的よく見受けられる疾病であって、通院先も日本全国に存在していることも広く知られていることからすれば、本件配転が原告X5の健康状態に具体的な不利益を与えるものとは認められない。
また、通信労組の組合員としての活動や、通信労組北海道支部の活動についても、原告X5は、現在も、通信労組本部副委員長として活動を継続しているのであるし(原告X5本人)、原告X5の配転後、通信労組北海道支部の組合活動に具体的な支障が生じたと認めるに足りる証拠もない。
職業上の不利益についてみても、本件配転の経緯に照らせば、原告X5が従前と同様の職務に従事できなくなることはやむを得ないことであって、原告X5がおよそ従前の知識・経験を生かし得ない職場に配転されたとか、およそ適性のない職場に配転されたとかいうこともできないことは既に説示のとおりである。
以上によれば、本件配転により原告X5に生じたという各種の不利益が、配転に伴い通常甘受すべき程度を著しく超えるものであったとは認められない。
カ 原告X6について
原告X6は、本件配転により、①単身赴任を強いられ、高齢でうつ病を患っている実母の介護に支障が生じ、妻が退職せざるを得なくなったこと、②高血圧の持病がある原告X6の健康状態に悪影響を与えかねないこと、③従前培った線路設備部門での経験を生かせない職場に配転されたこと、以上の不利益を被っているところ、これらの不利益は、労働者にとり、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益であると主張する。
証拠(甲185、原告X6本人)によれば、原告の実母は、平成2年ころ、うつ病に罹患し3年間通院し、当時は薬を服用していたこと、実母に軽い痴ほうの症状が出てきたことなどが理由で原告X6の妻は平成15年4月に退職し、実母の介護にあたっていることが認められる。
しかし、原告X6の実母のうつ病は、その病気自体が一般的には介護を必要とするものではないし、本件配転が実施された当時は、薬の服用をしていなかったことからすると、軽快していたとはいえないにしても、症状が重かったとは認められない。また、原告X6は、平成13年12月に行われた個別面談において、実母が軽度の痴ほう症であると申し出ているものの、平成14年6月11日付けで通信労組を通じて提出した「配転に関する要求書」には、実母の躁うつ病には触れているだけで痴ほう症は記載がないこと((9)(原告X6の配転の必要性)ア(ウ)、(オ))、原告X6が本件配転の前後に被告会社就業規則上の介護休暇や介護休職を取得した事実は認められないこと、本件配転当時に実母が要介護認定や要支援認定を受けていたと認めるに足りる証拠がないことからすれば、本件配転当時、実母に生じていた痴ほう症の程度が、日常的に介護を必要とするまでの状態であったとは認め難い。なお、原告X6に対しても、単身赴任手当及び帰郷実費の支払がされている。
原告X6の健康状態についてみると、証拠(乙56、原告X6本人)によれば、同人の高血圧の程度は、定期健康診断上「D:要治療・治療継続疾病の存在が考えられます。早めに病院を受診してください。現在治療中の方は主治医の指示のもとに治療継続してください。」というものであり、被告会社健康管理規程上、指導区分とされるものではなかったと認められるのであるし、その疾病も中高年の者に比較的よく見受けられる疾病であって、通院先も日本全国に存在していることは広く知られており、本件配転後、原告X6の高血圧症が悪化したと認めるに足りる証拠もないことからすれば、環境の変化等によるストレスが高血圧症に悪影響を与え得るものであることを考慮しても、なお、本件配転が原告X6の健康状態に、配転に伴い通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を与えるものであったとは解されない。証拠(甲186)によれば、原告X6は平成16年5月ころ、網膜静脈分枝閉鎖症を発症していると認められるけれども、その発症時期に照らすと、本件配転と同疾病の発症との間に因果関係があるとは考え難い。
職業上の不利益についてみても、本件配転の経緯に照らせば、原告X6が従前と同様の職務に従事できなくなることはやむを得ないことであって、原告X6がおよそ従前の知識・経験を生かし得ない職場に配転されたとか、およそ適性のない職場に配転されたとかいうこともできないことは既に説示のとおりである。
以上によれば、本件配転により原告X6に生じたという各種の不利益が、配転に伴い通常甘受すべき程度を著しく超えるものであったとは認められない。
キ 原告X7について
原告X7は、本件配転により、①単身赴任を強いられ、その両親の介護に支障が生じたこと、②経済的負担が増加したこと、③通信労組の組合員としての活動や、通信労組山形支部の組合活動に支障が生じたこと、④従前培った無線通信部門等での経験を生かせない職場に配転されたこと、以上の不利益を被っているところ、これらの不利益は、労働者にとり、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益であると主張する。
しかし、証拠(甲128)によれば、原告X7の実父は、脳梗塞で倒れたことがあると認められるものの、本件配転時には疾病を有しておらず、その介護が必要な状態にあったとは認められない。また、証拠(原告X7本人)によれば、実母は、平成14年中に、6回にわたり入院をしていたことや、原告X7は、本件配転前、週に1回程度、通院の際、実母を病院に送り迎えしていたことが認められるものの、入院中に原告X7が付き添いによる介護等を行ったことを認めるに足りる証拠はないし、病院への送迎についても、その頻度からみて、これが原告X7でなければ果たし得ない役割であったとも認められない(その妻や近隣に居住する子により代行することも十分可能と解される。)。このことに、証拠(甲134、135)によれば、原告X7は、平成14年4月15日付け及び同年6月24日付けで被告会社に提出した書面中で、配転に対する異議を述べた際にも、「80歳を越え死期が迫っている両親の元を離れることはできません。」、「生活上の不利益を被ります」とするのみで、その両親の介護が必要な状況を具体的に被告会社に申し出なかったと認められることや、原告X7が本件配転の前後に被告会社就業規則上の介護休暇や介護休職を取得した事実も認められないことも併せて考慮すれば、原告X7の実母の介護が日常的に必要であり、原告X7の配転により、その介護に重大な支障が生じる状態であったとは認め難い。
原告X7は、年齢的に死期が近かった両親が存在すること自体が配転の支障であるとも主張するが、その心情は理解し得るとしても、これが配転の具体的支障となり得るものではない。
原告X7は、単身赴任をしたことにより経済的負担が増加したとも主張するが、単身赴任手当や、6か月に7回を限度として帰郷の際に生じる実費が支給されていたから、その出費が大幅に増加したとは認められない。原告X7が毎週のように帰郷していたとすれば、交通費等がかさむことは当然であるが、原告X7が実母の介護等のために毎週帰郷していたとも認められないことは、前記認定の原告X7が行っていた介護の程度に照らしても明らかである。
また、通信労組の組合員としての活動や、通信労組山形支部の活動についても、原告X7は、現在も、通信労組神奈川支部に所属する組合員として活動を継続しているのであるし(弁論の全趣旨)、原告X7の配転後、通信労組山形支部の組合活動に具体的な支障が生じたと認めるに足りる証拠もない。
職業上の不利益についてみても、本件配転の経緯に照らせば、原告X7が従前と同様の職務に従事できなくなることはやむを得ないことであって、原告X7がおよそ従前の知識・経験を生かし得ない職場に配転されたとか、およそ適性のない職場に配転されたとかいうこともできないことは既に説示のとおりである。
以上によれば、本件配転により原告X7に生じたという各種の不利益が、配転に伴い通常甘受すべき程度を著しく超えるものであったとは認められない。
ク 原告X8について
原告X8は、本件配転により、①単身赴任を強いられ、夫婦共々寂しい生活を送っていること、②胃・十二指腸潰瘍を患っている原告X8の健康状態に悪影響を及ぼしかねないこと、③通信労組の組合員としての活動や、通信労組山形支部の組合活動に支障が生じたこと、④従前培った無線通信部門等での経験を生かせない職場に配転されたこと、以上の不利益を被っているところ、これらの不利益は、労働者にとり、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益であると主張する。
しかし、前記①が配転の具体的支障となり得る事由と解されないことはウで説示のとおりである。原告X8の健康状態についてみても、証拠(甲143、162ないし164)によれば、原告X8は、平成11年6月実施の健康診断で胃潰瘍と判明し、平成13年2月に胃・十二指腸潰瘍や自律神経失調症と診断されて以降、継続的に治療を継続しており、平成17年8月8日付けで胃潰瘍及び過敏性腸症候群と診断されていると認められるものの、証拠(甲162ないし164、原告X8本人)によれば、同人は、現在も飲酒・喫煙を続けていることや、平成17年8月8日付け診断書では自律神経失調症の診断はされておらず、過敏性腸症候群も症状は「比較的安定している」と診断されていることが認められるのであるから、その症状が配転の具体的支障となり得るものであったとは認め難い。原告X8は、若年の労働者の中でこれまでとは異なる業務に従事するという緊張を強いられており、本件配転が持病に悪影響を与えることは必至であるとも主張するが、原告X8の病状が本件配転後に悪化したと認められないことは前記のとおりであるから、原告X8の主張は理由がない。
原告X8に対しても、単身赴任手当及び帰郷実費は支給されている。
また、通信労組の組合員としての活動や、通信労組山形支部の活動についても、原告X8は、現在も、通信労組神奈川支部に所属する組合員として活動を継続しているのであるし(弁論の全趣旨)、原告X8の配転後、通信労組山形支部の組合活動に具体的な支障が生じたと認めるに足りる証拠もない。
職業上の不利益についてみても、本件配転の経緯に照らせば、原告X8が従前と同様の職務に従事できなくなることはやむを得ないことであって、原告X8がおよそ従前の知識・経験を生かし得ない職場に配転されたとか、およそ適性のない職場に配転されたとかいうこともできないことは既に説示のとおりである。
以上によれば、本件配転により原告X8に生じたという各種の不利益が、配転に伴い通常甘受すべき程度を著しく超えるものであったとは認められない。
ケ 原告X9について
原告X9は、本件配転により、①片道2時間の遠距離通勤を強いられていること、②通信労組中央本部書記長としての活動に支障が生じたこと、③実母の介護に支障が生じたこと、④従前培った電話交換機の保守・管理業務での経験を生かせない職場に配転されたこと、以上の不利益を被っているところ、これらの不利益は、労働者にとり、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益であると主張する。
しかし、①については、原告X9は以前の勤務先である立川までの通勤時間は30ないし40分であったと主張しているから、本件配転後、神田までの通勤時間が2時間というのは疑問であるが、この点を措くとしても、長時間通勤が首都圏で勤務する労働者に通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を与えるものと解されないことは、ア及びイのとおりである。また、証拠(原告X9本人)によれば、原告X9は、本件配転の前も後も、組合休暇等を取得して、週に3日から4日は東京都世田谷区松原(下高井戸駅の近所)にある組合事務室で組合活動をし続けていたというのであるから、千代田区神田への配転が、原告X9に通勤による不利益や組合活動への不利益を与えたものとは解されない。むしろ、本件配転により勤務場所と組合事務所は従前より近接した場所となったのであり、組合活動の観点からすれば、本件配転は原告X9に利益を付与した結果となっている。
上記③の点についてみても、原告X9は、実母の介護の必要につき、その必要は本件配転前の平成14年5月から生じていたと供述するが、同人の陳述書(甲144)には、「私が母が介護する必要は私の在職中にこそ現実化はしませんでした」と記載されているのであるから、前記供述はとても信用できるものではなく、他に、原告X9の実母が介護が必要な状態であったと認めるに足りる証拠はない。
職業上の不利益についてみても、本件配転の経緯に照らせば、原告X9が従前と同様の職務に従事できなくなることはやむを得ないことであって、原告X9がおよそ従前の知識・経験を生かし得ない職場に配転されたとか、およそ適性のない職場に配転されたとかいうこともできないことは既に説示のとおりである。
以上によれば、本件配転により原告X9に生じたという各種の不利益が、配転に伴い通常甘受すべき程度を著しく超えるものであったとは認められない。
コ まとめ
以上のとおり、原告らは、いずれも、配転に具体的な支障を有していたとはいい難いし、配転の結果、原告らに生じたという不利益も、主に原告本人や家族の寂しさや日常生活上の不便をいうものにすぎず、証拠上、子の監護養育や親の介護に具体的な支障を生じたとまで認められる原告はいない。もっとも、前記のような不利益であっても、単身赴任や遠距離通勤を強いられたことによって生じた不利益であることは否定できないのであるから、これらの不利益は可能な限り避けることが望ましい不利益であることはいうまでもないところである。しかし、我が国の労働者の労働環境に照らし、長期間雇用される間において、単身赴任や遠距離通勤を余儀なくされる時期が生じたとしても、そのことのみで配転が不当とは解されないことからすれば、原告らに認められる不利益の程度が配転に伴い生じることが想定される不利益の中でも大きなものであるとは解されない。
そして、原告らに対する配転は、余人をもって替え難い配転でなかったとしても、移行対象業務に従事していた原告らを配転する必要性は高く、その配転先として、首都圏が候補とされたことにも業務上の必要性が認められることからすれば、原告らに生じた前記の程度の不利益は、配転に伴い労働者が通常甘受すべき程度の不利益というほかなく、これらの不利益を根拠として、具体的に行使された配転命令権を権利の濫用として無効とするには足りないというほかない。
(16)  本件各配転の手続について
原告らは、本件各配転は、通信労組からの団体交渉の申入れや、原告らからの個別の異議申立てを無視して一方的に強行されたものであり、手続的にも無効であると主張する。
配転命令権の行使は、使用者の権利の行使であり、その行使に先立ち団体交渉の開催や、労働者の個別の異議を容れることが絶対的に必要であると解することはできない。団体交渉の申入れを無視して、配転命令権が行使されたとすれば、団体交渉拒否の不当労働行為の成否が問題となることはあるとしても、そのことが具体的に行使された配転命令を無効とする直接的な根拠となるとは解されない。
この点を措くとしても、証拠(甲70ないし84、乙41)によれば、被告会社と通信労組は、本件構造改革の実施について56回の団体交渉を開催していると認められるのであるし、原告らに対しては、いずれも、平成13年12月には、雇用形態・処遇体系の多様化の実施に先立ち、社員の個別の意向や事情を聴取する個別面談の機会が与えられていたのであって、原告らは、原告X6が実母が軽度の痴ほう症であると申し出たのを除き、いずれもこれを拒否したか、応じても具体的な意思表示をしなかったにすぎないのであるから、被告会社が原告らの意向を聞かずに一方的に配転を強行したといえるものではなく、本件構造改革及びこれによる原告らの雇用形態の選択に際して手続上、不当な点があったとは認められない。
(17)  以上によれば、本件各配転には、いずれも業務上の必要性が認められ、本件各配転が不当な動機・目的をもって行われたとも、原告らに対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであったとも認められないから、本件各配転が、配転命令権を濫用して行われたものとは認められない。
したがって、争点(2)に関する原告らの主張は理由がない。
3  争点(3)(本件各配転が法令や労働契約上の付随義務に違反するものか)
(1)  ILO156号条約及び同165号勧告違反の主張について
原告らは、本件各配転はILO156号条約や同165号勧告に反するものであり、無効であると主張する。
しかし、条約の多くは、締約国相互間の権利・義務を定めたもの、又は条約内容を各締約国の政策とし、あるいは、何らかの国内措置を採ることを義務づけるにとどまるものであって、これを国内法として直接的に適用し得るのは、条約が、私人間や私人・国家間の権利・義務を明白、確定的、完全かつ詳細に定めており、国内法の制定を待つまでもなく、執行可能な状態となっている場合のみと解されるところ、ILO156号条約は3条が、「(省略)…各加盟国は、家族的責任を有するものであって職業に従事しているもの…(省略)…が、また、できる限り職業上の責任と家族的責任との間に抵触が生ずることなく職業に従事する権利を行使することができるようにすることを国の政策の目的とする」と定めるのみであり、その内容が我が国の政策の目的とされるべきことを加盟国の政府に義務づけるものにすぎないから、ILO156号条約に違反することを理由として本件各配転を無効とする余地はない。
また、ILO勧告は、憲法98条2項の「確立された国際法規」ではなく、その内容に違反した行為が、ILO勧告を法源として無効とされる余地もない。
したがって、この点に関する原告らの主張には理由がない。
(2)  育児介護休業法26条違反の主張について
原告らは、本件各配転は、労働者の育児又は介護の状況に配慮すべきことを義務づけた育児介護休業法26条に違反するものであると主張する。
しかし、同条は、「事業主は、その雇用する労働者の配置の変更で就業の場所の変更を伴うものをしようとする場合において、その就業の場所の変更により就業しつつその子の養育又は家族の介護を行うことが困難となることとなる労働者がいるときは、当該労働者の子の養育又は家族の介護の状況に配慮しなければならない。」と定めるのみで、同条所定の事情がある労働者の転居を伴う配転を直接的に制限するものではないから、同条を根拠に個別の配転を無効と解することはできないというほかない。
また、この点を措くとしても、原告X3、同X4、同X5、同X6、同X7、同X8には、そもそも養育が必要な子は存在しないし、家族の介護についても、その家族には介護が必要でないか、必要としてもその程度は低いものにすぎないことは前記認定のとおりである。また、原告X1、同X2及び同X9の子もその年齢や同人らには同居の夫や妻がいることに照らし、遠距離通勤を強いられることにより養育に困難な状態が生じる状態であったとも解されない。これらの事情からすれば、具体的な配転命令権の行使が権利濫用か否か判断する際に、育児介護休業法26条の趣旨を考慮するのが相当であるとしても、本件各配転につき、育児介護休業法26条違反の問題は生じない。
(3)  その他の法令違反の主張について
原告らは、本件各配転は、51歳以上の者を狙い打ちして行われ、労働者の人間性・尊厳や労使対等の原則を踏みにじり、労働組合に対する団体交渉拒否を行いながら強行されている点で、憲法14条、労働基準法3条、労働組合法1条、民法90条に違反すると主張する。
しかし、本件各配転が51歳以上の者を年齢差別する目的で行われたものでないことは既に説示のとおりであるし、仮に団体交渉拒否の事実があったとしても、本件各配転を無効とするものとも解されないことも既に説示のとおりであるから、原告らの主張は理由がない。原告らは、本件構造改革は実質定年50歳制を意図したものであり高年齢者雇用安定法に違反するものであるとも主張するが、本件構造改革が51歳以上の社員に繰延型の選択を強いるものでないことは既に認定のとおりであるから、原告らの主張は理由がない。
原告らは、本件各配転が、労働安全衛生法や労働契約承継法に反して行われたものであるとも主張する。
しかし、労働安全衛生法62条は、中高年齢者の労働災害の防止上の観点から、適正な配置をするよう努力することを使用者に義務づける法律にすぎないのであるから、これを根拠に配転の無効を導くことはできないし、仮に、その趣旨を各配転の権利濫用性を検討するにあたり考慮すべきであるとしても、原告らについては、その健康上、配転の障害となり得るような事情がある者もいないことは既に説示のとおりであるから、本件各配転につき、同法違反の問題が生じる余地はない。また、原告らは、いずれも、本件各配転後も被告会社に在籍し続けていた者であり、原告らについては労働条件の引き下げは行われていないのであるから、原告らとの関係で労働契約承継法違反の有無につき論じる余地はない。
(4)  労働契約上の付随義務違反の主張について
原告らは、労働契約上の付随義務として、使用者は、配転の際に、生活に重大な不利益が生じることがないように配慮する義務、職務変更の際、労働者の職務上の能力やキャリアを傷つける配転をしないよう配慮する義務、労働者の人間性を配慮する義務を負うところ、本件各配転は、これらの労働契約上の義務に違反するものであったと主張する。
しかし、原告らが主張する内容は、高度に抽象的であり、一義性に欠け、これを、労働契約上の付随義務として理解することは困難というほかない。これらの内容は、配転命令権の行使が権利濫用といえるかどうかの問題として検討されるべき事項となり得るとしても、本件各配転がこれらの義務に違反するものと考えられないことは、既に説示のところから明らかである。
(5)  以上によれば、争点(3)に関する原告らの主張はいずれも理由がない。
4  争点(4)(本件各配転が、通信労組に対する不当労働行為といえるか)について
原告らは、本件各配転は、原告らが通信労組に加入していることを理由として行われたものであると主張するが、本件各配転が原告らが通信労組に加入していることを理由として行われたものと認められないことは、既に説示のとおりである(2(14)エ)から、原告らの主張は理由がない。
5  争点(5)(本件各配転は不法行為か等)について
これまで説示したとおり、本件各配転は無効であるとは認められず、これが不法行為であるとは認められない。
第4  結論
以上によれば、本件各配転が無効であるとは認められないから、その余の点について判断するまでもなく、原告らの請求はいずれも理由がない。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 中西茂 裁判官 本多幸嗣 裁判官 齋藤巌)

 

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