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判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(162)平成25年 9月24日 東京地裁 平22(ワ)43930号 土地所有権移転登記抹消登記手続等請求事件(本訴)、損害賠償請求事件(反訴)

判例リスト「完全成果報酬|完全成功報酬 営業代行会社」(162)平成25年 9月24日 東京地裁 平22(ワ)43930号 土地所有権移転登記抹消登記手続等請求事件(本訴)、損害賠償請求事件(反訴)

裁判年月日  平成25年 9月24日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平22(ワ)43930号・平24(ワ)3191号
事件名  土地所有権移転登記抹消登記手続等請求事件(本訴)、損害賠償請求事件(反訴)
裁判結果  一部却下、一部棄却  文献番号  2013WLJPCA09248016

要旨
◆Y1に対するX1共有地の持分全部移転登記、X2からY3社、Y2社へと順次移転する旨のX2所有地の所有権移転登記につき、X1らが、各登記の前提となる和解合意の公序良俗違反による無効等を主張して各登記の抹消登記手続を求め、また、前訴確定判決に基づくX1らのY3社に対する損害賠償債務の不存在確認、X1関係者の虚偽報告によりY3社が業務休止状態になったことに基づくX1らの損害賠償債務の不存在確認を求めた(本訴)ところ、各抹消登記手続請求認容の場合の予備的反訴として、Y3社が、X1に対し、損害賠償を求めた(反訴)事案において、本件和解合意の無効及び取消しをいうX1らの主張は理由がないとして、各抹消登記手続請求を棄却し、予備的反訴につき判断を要しないとした上、Y3社はX2に対する損害賠償債権を有しないと認めているとして、X2の債務不存在確認の訴えを却下し、その余の請求は棄却した事例

参照条文
民法90条
民法96条1項
民法695条
民法709条
採石法33条

裁判年月日  平成25年 9月24日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平22(ワ)43930号・平24(ワ)3191号
事件名  土地所有権移転登記抹消登記手続等請求事件(本訴)、損害賠償請求事件(反訴)
裁判結果  一部却下、一部棄却  文献番号  2013WLJPCA09248016

本訴 平成22年(ワ)第43930号 土地所有権移転登記抹消登記手続等請求事件
反訴 平成24年(ワ)第3191号 損害賠償請求事件

福島県いわき市〈以下省略〉
原告(反訴被告) X1
福島県いわき市〈以下省略〉
原告 X2
上記2名訴訟代理人弁護士 谷口正嘉
福島県いわき市〈以下省略〉
被告 Y1
東京都港区〈以下省略〉
被告 Y2株式会社
上記代表者代表取締役 A
福島県いわき市〈以下省略〉
被告(反訴原告) 有限会社Y3
(以下,単に「被告」という。)
上記代表者代表取締役 Y1
上記3名訴訟代理人弁護士 一木明

 

 

主文

1  原告X2の債務不存在確認請求に係る訴えをいずれも却下する。
2  原告X2のその余の本訴請求及び原告(反訴被告)X1の本訴請求をいずれも棄却する。
3  訴訟費用は,本訴反訴を通じ,原告(反訴被告)X1及び原告X2の負担とする。

 

事実及び理由

第1  請求
1  本訴
(1)  被告Y1(以下「被告Y1」という。)は,原告(反訴被告)X1(以下「原告X1」という。)に対し,別紙物件目録A1及び2記載の各土地について,福島地方法務局いわき支局平成22年10月1日受付第18193号の原告X1持分全部移転登記の抹消登記手続をせよ。
(2)  被告Y2株式会社(以下「被告Y2社」という。)は,原告X2(以下「原告X2」という。)に対し,別紙物件目録B1ないし3記載の各土地について,福島地方法務局いわき支局平成22年10月18日受付第19498号の所有権移転登記の抹消登記手続をせよ。
(3)  被告有限会社Y3(以下「被告Y3社」という。)は,原告X2に対し,別紙物件目録B1ないし3記載の各土地について,福島地方法務局いわき支局平成22年10月1日受付第18260号の所有権移転登記の抹消登記手続をせよ。
(4)  原告X1及び被告Y3社間の土地明渡等請求事件(福島地方裁判所いわき支部平成20年(ワ)第378号事件)について,平成22年7月16日に請求棄却判決がされ,後にこれが確定したことに基づく,原告らの被告Y3社に対する350万円の損害賠償債務が存在しないことを確認する。
(5)  平成16年に原告X1関係者が,いわき地方振興局企画商工部に対し,被告Y3社との賃貸借契約が終了したとの虚偽報告をし,これにより被告Y3社において開発認可申請中であった申請を妨害し,被告Y3社の業務一切が6年間休止状態となったことに基づく,原告らの被告Y3社に対する3879万3660円の損害賠償債務が存在しないことを確認する。
(6)  被告Y3社及び被告Y1は,原告X1に対し,各自55万円及びこれに対する平成22年12月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(7)  被告Y3社及び被告Y1は,原告X2に対し,各自55万円及びこれに対する平成22年12月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2  反訴(原告らの本訴請求(1)ないし(3)が認容される場合の予備的反訴である。)
原告X1は,被告Y3社に対し,3574万2832円及びこれに対する平成24年2月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
1  事案の要旨
(1)  本訴
ア 抹消登記請求(本訴請求(1)ないし(3))
原告X1が持分各117分の1を有していた別紙物件目録A1及び2記載の各土地(以下「原告X1共有地」という。)について,原告X1から被告Y1への原告X1持分全部移転登記がされ,また,原告X2が所有していた別紙物件目録B1ないし3記載の各土地(以下「原告X2所有地」という。)について,原告X2から被告Y3社への所有権移転登記がされているところ,原告らが,上記各登記の原因とされた売買契約は存在せず,あるいは,上記各登記の前提となる和解合意は公序良俗違反により無効であり,又は強迫により取り消しうるものである旨主張して,それぞれ上記各登記の抹消登記手続を求めるものである(なお,原告X2所有地については,さらに被告Y2社への所有権移転登記もされており,原告X2は,上記登記の抹消登記手続をも求めている。)。
イ 債務不存在確認請求(本訴請求(4)及び(5))
原告らが,①原告X1及び被告Y3社間の土地明渡等請求事件(福島地方裁判所いわき支部平成20年(ワ)第378号事件)について,平成22年7月16日に請求棄却判決がされ,後にこれが確定したことに基づく,原告らの被告Y3社に対する350万円の損害賠償債務及び②平成16年に原告X1関係者が,いわき地方振興局企画商工部に対し,被告Y3社との賃貸借契約が終了したとの虚偽報告をし,これにより被告Y3社において開発認可申請中であった申請を妨害し,被告Y3社の業務一切が6年間休止状態となったことに基づく,原告らの被告Y3社に対する3879万3660円の損害賠償債務が存在しないことの確認を求めるものである。
ウ 損害賠償請求(本訴請求(6)及び(7))
原告らが,被告Y3社の代表者被告Y1による恐喝行為により精神的苦痛を被ったとして,被告Y3社及び被告Y1に対し,不法行為に基づく損害賠償として,それぞれ慰謝料50万円及び弁護士費用5万円並びにこれらに対する訴状送達の日の翌日である平成22年12月3日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めるものである。
(2)  反訴
前記(1)アの各抹消登記手続請求が認容される場合の予備的反訴として,被告Y3社が,原告X1に対し,①平成16年に原告X1関係者が,いわき地方振興局企画商工部に対し,被告Y3社が採石作業を行っていた土地に係る賃貸借契約が終了したとの虚偽報告をし,これにより被告Y3社において開発認可申請中であった申請を妨害し,被告Y3社の業務一切が6年間休止状態となったものであり,逸失利益として3224万2832円の損害を被ったほか,②原告X1の被告Y3社に対する土地明渡等請求事件(福島地方裁判所いわき支部平成20年(ワ)第378号事件)の提起及び追行が不法行為に当たり,これにより被告Y3社は弁護士費用相当額350万円の損害を被ったと主張して,原告X1に対し,債務不履行及び不法行為に基づく損害賠償として,3574万2832円及びこれに対する反訴状送達の日の翌日である平成24年2月10日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
2  前提事実(証拠を掲記したもの以外は,当事者間に争いがない。)
(1)  土地賃貸借契約等
ア 原告X1の祖父であるB(以下「B」という。)と被告Y3社(代表者被告Y1)は,昭和58年4月22日,Bが,被告Y3社に対し,福島県いわき市〈以下省略〉の土地(採石区域実測面積2万平方メートルのほか,取付道路及び廃土堆積場用地の計画必要面積を含む。以下「本件賃貸土地」という。)を,仏石採取の目的で,期間を林地開発及び採石法33条の許認可後10年(ただし,採石の都合上双方協議の上延長できるものとする〔以下「契約延長条項」という。〕。),賃料を600万円(本契約締結と同時に前払する。)として賃貸する旨の賃貸借契約書を作成した(乙1。以下「本件賃貸借契約書」といい,これによる賃貸借契約を「本件賃貸借契約」という。)。
イ 被告Y3社は,昭和58年4月22日,Bの代理人Cに対し,本件賃貸借契約の賃料として2400万円を支払ったほか,同年3月20日,立木補償金として200万円を支払った(乙2,3)。
ウ B死亡後,本件賃貸土地を原告X1が相続により取得し,原告X1と被告Y3社は,平成6年6月19日,本件賃貸借契約書と概ね同内容の賃貸借契約書を作成した(乙4)。
エ その頃,原告X1は,被告Y1が代表者を務める株式会社a(以下「a社」という。)が本件賃貸土地から採石することの同意書を作成する(乙5)など,採石法33条の規定による採取計画の認可を得るのに必要な手続に協力した。
オ a社は,平成10年5月28日から平成12年5月27日まで及び同年9月13日から平成14年9月12日まで,林地開発許可及び採石法33条の規定による採取計画の認可を受け,本件賃貸土地を使用して採石業を行った(甲8,乙7ないし9,30,52の1ないし14)。
(2)  前件訴訟
ア 原告X1は,平成20年11月13日,本件賃貸借契約は,林地開発許可及び採石法33条の認可がされた平成10年5月28日から10年が経過した平成20年5月28日の経過により終了したと主張して,被告Y3社に対しては本件賃貸借契約の終了に基づき,a社に対しては所有権に基づき,それぞれ本件賃貸土地の明渡しを求めるとともに,被告Y3社に対しては債務不履行に基づき,a社に対しては不法行為に基づき,連帯して本件賃貸借契約の終了日の翌日である同月29日から上記明渡済みまで10か年2400万円の割合による賃料相当損害金の支払を求める訴訟を提起した(福島地方裁判所いわき支部平成20年(ワ)第378号。以下「前件訴訟」という。)。
イ 前件訴訟については,平成22年7月16日,本件賃貸借契約における賃料は,10か年600万円であり,被告Y3社が,Bの代理人Cに対し,昭和58年4月22日,2400万円を支払ったことで,契約延長条項により本件賃貸借契約の賃貸期間は40年間に延長されたとして,原告X1の請求をいずれも棄却するとの判決が言い渡され,同判決は,同年8月5日確定した(甲8,20)。
(3)  和解同意書への署名押印
原告X1及びその母である原告X2は,平成22年9月15日,前件訴訟の判決確定により,被告Y3社が原告X1に対し取得した合計3950万円(前件訴訟の弁護士費用350万円及び平成16年から同22年までの業務差止めによる損害金3600万円〔=月額50万円×12か月×6年〕)の損害賠償債務の弁済に代えて,原告らの資産証明書に記載されている山林一切の所有権を被告Y3社に譲渡する旨の記載のある和解同意書に署名押印した(乙37。以下,上記和解同意書を「本件和解同意書」といい,これによる合意を「本件和解合意」という。)。
(4)  所有権等移転登記
ア 原告X1は,平成22年9月28日当時,原告X1共有地の共有持分各117分の1を有していたが,原告X1共有地につき,同年10月1日,同年9月28日売買を原因とする被告Y1への原告X1持分全部移転登記がされた(甲1,2)。
イ 原告X2は,平成22年9月15日当時,原告X2所有地を所有していたが,同年10月1日,原告X2所有地につき,同年9月15日売買を原因とする被告Y3社への所有権移転登記がされ,さらに,同年10月18日,原告X2所有地につき,同月9日売買を原因とする被告Y2社への所有権移転登記がされた(甲3ないし5)。
(5)  被告Y3社の原告X1に対する債権の主張
被告Y3社は,平成22年10月19日,原告X1に対し,平成16年から同22年までの6年間にわたる業務差止めによる損害金3879万3660円等の支払を求めた(甲23)。
3  争点
(1)  本件和解合意の有効性(本訴)
(2)  民法94条2項類推適用の可否(本訴)
(3)  原告X1の債務不履行の成否及び損害(本訴及び反訴)
(4)  原告X1の前件訴訟の提起に係る不法行為の成否及び損害(本訴及び反訴)
(5)  被告Y1の原告らに対する不法行為の成否及び損害(本訴)
4  争点に関する当事者の主張
(1)  争点(1)(本件和解合意の有効性)について
(原告らの主張)
ア 前件訴訟の判決確定後,被告Y3社は,原告X1に対し,平成16年以降原告X1の妨害行為により採石業務を行うことができず,1年間で500万円,6年で3000万円の損害を被ったなどとして金銭の支払を求めていたところ,被告Y1は,平成22年8月17日午後4時頃,自宅近くの畑でインゲンの収穫をしていた原告X2の前に突然現れ,原告X2に対し,「金を出さないとぶっ殺す」と威迫した。
これにより身の危険を感じた原告らは,同月19日,被告Y3社との新たな土地賃貸借契約書の締結等の事後処理をD弁護士(以下「D弁護士」という。)に依頼した。
イ その後,D弁護士と被告Y1の間で書面のやり取りを経て,D弁護士が,同年9月9日,被告Y3社に対し,今後原告X2が受領する年金を原資として毎月2万円を50回に分けて総額100万円を支払うこと等を内容とする和解の申入れをしたところ,被告Y1はこれに激怒し,直ちに原告らと直談判するため,原告ら方に向かった。
D弁護士は,原告らの身に危険が迫っていると判断し,直ちに原告らに対し,これから被告Y1が原告ら方に行って原告らを恫喝することは確実なので,110番通報するか最寄りの駐在所に救助を求めるよう助言し,原告らは,最寄りの駐在所に直ちに救助を求めた。その後間もなく,被告Y1が原告ら方に現れたが,その直後に,駐在所勤務の警察官が原告ら方に来てくれたため,被告Y1は,世間話をしただけで帰り,事なきを得た。
ウ ところが,その後,被告Y1は,昼夜を問わず,原告ら方に電話をかけ,あるいは直接訪問し,被告Y3社が原告X1に対して3950万円の損害賠償請求権を有しているので原告らが所有する一切の山林を譲渡するよう執拗に迫った。
エ 被告Y1は,原告X2が当時76歳の老婆であり,上記アの被告Y1の恫喝によって畏怖し,また,原告X1が19歳の時に鬱病を発症し,以後30年間にわたり就職もできない精神状況が続いていることを知悉しながら,平成22年9月14日付けで損害賠償金3950万円の支払を求める文書を原告X1宛てに交付した上,翌15日,原告らを威迫し,上記3950万円の損害賠償請求権の支払に代えて,原告らが所有する一切の山林を被告Y3社に譲渡すること,及びそれらの登記手続に必要な一切の書類を被告Y3社に交付すること等を内容とする本件和解同意書を提示し,原告らにおいてこれに署名押印しなければ,原告らの身体や財産に危害が及ぶものと畏怖させ,原告らをして本件和解同意書に署名押印させた。
そもそも,前件訴訟における弁護士費用については,不法行為に基づく損害賠償請求の場合を除き,敗訴当事者に対して何らの損害賠償請求権も存在しないことは,判例上確立されている。また,被告Y3社が主張する6年間にわたる業務差止めによる損害賠償請求についても,その根拠は極めて薄弱であり,到底訴訟に耐えるものではない。しかしながら,被告Y1は,原告らに対し,上記損害賠償請求権が存在すると強弁し,原告らを恫喝して,本件和解同意書に署名押印させたものである。
オ その後も,被告Y1は,原告らに対し,さらに登記手続に必要な書類を交付すべき旨を執拗に要求しただけでなく,平成22年9月27日,これに畏怖した原告らが,被告Y1からの追及を免れるべく身を隠していた間に,原告ら方に勝手に上がり込んで原告らを探索し,自らの主張を記した貼り紙を原告らの玄関前に貼り付ける等している。
カ 以上によれば,本件和解合意は公序良俗違反により無効であり,又は,被告Y1の強迫により取り消しうるものである。
原告らは,被告Y3社に対し,平成22年12月2日到達の本件訴状をもって,本件和解合意を被告Y1の強迫を理由に取り消すとの意思表示をした。
(被告らの主張)
ア 被告Y1が,平成22年8月17日,原告X2に対し,「金を出さないとぶっ殺す」と威迫した事実はない。
後記(3)及び(4)(被告Y3社の主張)のとおり,被告Y3社は,原告X1に対する損害賠償請求権を有していたところ,被告Y1が原告ら方を訪問したのは,上記請求権に関し,被告Y3社が同月15日に原告X1に送付した書面について説明するとともに,原告X2が,同月5日,被告Y1に対し,石材業を営むE(以下「E」という。)なる人物に勧められて前件訴訟を行った旨説明をしていたところ,かかる人物は石材業界には見当たらないために,さらに詳しい事情を聞くためであった。
仮に,被告Y1が原告X2を強迫した事実があったとしても,本件和解合意が成立する同年9月15日までの約1か月間,原告らは,被告Y3社との交渉をD弁護士に委任したにもかかわらず,あえてD弁護士を介さずに本件和解合意に及んでおり,また,その間に一度警察官に相談したことがあり,真実強迫により財産を処分せざるを得ない状況であれば,再度警察に相談することは十分に可能であったにもかかわらず,そのような行動をとらずに,資産証明書を市役所から任意に取得して被告Y1に交付するなどしたことからすれば,本件和解合意と被告Y1の強迫行為との間の因果関係は存在しない。
イ 被告Y1が,平成22年9月9日,D弁護士との面談を打ち切って原告ら方を訪問したのは,激高したからではなく,廃土石処分場の位置指定問題についてはD弁護士では答えられないので,交渉にならなかったからである。同日以降,D弁護士は,代理人に就任していながら交渉の席についていないことを考えても,被告Y1がD弁護士との面談を打ち切ったのは,D弁護士の都合によるものというべきである。また,原告らが警察官を呼んだ事実はあるが,そのことと強迫の成立とは無関係である。
ウ 被告Y1が昼夜を問わず原告ら方に電話をしたとの事実はない。仮にかかる事実があったとしても,債権者が債務者に対して催告を繰り返せば強迫になるとの原告らの主張は,全く理由がない。
エ 本件和解合意にある代物弁済は,元々は原告X2の要望であり,被告Y1の要求によるものではない。被告Y3社の原告X1に対する上記損害賠償請求金額と代物弁済の対象地とは,経済的には全く釣り合わないのであり,被告Y1は渋々これに応じたのである。
オ 被告Y1が,原告らに対し,登記手続に必要な書類の交付を執拗に要求したとの事実はない。上記書類を取り揃える手続が終了した際,原告X2は,被告Y1に対し,「これでスッキリした。迷惑をかけてすまなかった。」と話していた。
カ 以上によれば,本件和解合意による代物弁済は有効であり,また,原告X1共有地の原告X1持分についての被告Y1に対する中間省略登記も有効である。
(2)  争点(2)(民法94条2項類推適用の可否)について
(被告Y2社の主張)
仮に,原告X2から被告Y3社への所有権移転登記が無効であったとしても,原告X2は,外観作出に代物弁済契約の締結という方法で原因を与えているから,その外観を信じて土地を購入した善意の被告Y2社は,民法94条2項の類推適用適用によって保護される。
(原告X2の主張)
争う。
(3)  争点(3)(原告X1の債務不履行の成否及び損害)について
(被告Y3社の主張)
ア a社は,採石法33条の規定による採取計画の認可期間が満了する平成14年9月12日まで本件賃貸土地において採石業務を行い,引き続き上記認可を受けるつもりであったが,そのためには,それまでの採石業務によって出現した荒廃環境を整備する必要があった。そのため,採石跡地の調整,植栽整備,沈砂地や調整池の再整備等の業務を遂行していたところ,原告X1は,平成15年頃,母である原告X2と共にこれらの業務を妨害した。
また,原告X1は,自ら又は原告X2を通じて,原告X2の知人であるEをして,平成16年頃,福島県の担当課であるいわき地方振興局企画商工部に対して,本件賃貸借契約は終了しているとの虚偽の情報を度々伝えさせ,担当課員にその旨疑念を抱かせて,原告X1との新たな賃貸借契約書の提示がなければ,採石法33条の規定による採取計画の認可をしないとの態度にさせた。
その結果,a社は,採石法33条の規定による採取計画の認可を受けることができず,採石業を停止せざるを得なかった。
イ 原告X1の代理人であるD弁護士は,平成17年6月1日付け内容証明郵便をもって,被告Y3社及びa社に対して,本件賃貸借契約の期間が終了していること及びa社に使用権原がないことを理由として,本件賃貸土地における採石工事の中止を求めた。
ウ 原告X1のこれらの行為は,賃貸人としての義務違反であり,a社が本件賃貸土地を使用収益することを妨害し,かつ採石法33条の規定による採取計画の認可申請手続に協力しなかったので,債務不履行に該当する。
エ 被告Y3社は,本件賃貸土地をa社に転貸していたから,これをa社に使用収益させる債務を負っていたところ,これが不可能となったので,債務不履行によりa社が被った損害を賠償する義務を負い,したがって,同額の損害を被った。
また,被告Y3社及びa社は,いずれも被告Y1及びその妻Fが100パーセントないし90パーセントを出資し,時機に応じて役割分担をしながら共通の事業を行っている関係にあるから,法人格否認の法理によっても,a社の被った損害は被告Y3社の被った損害というべきである。
オ 原告X1の上記債務不履行による損害額の計算は,本来,a社の帳簿書類を基に算定すべきであるが,平成23年3月11日に発生した東日本大震災によりほとんどの帳簿書類等を紛失してしまったため,損害額を直接算定することは不可能である。そのため,同社以外から入手した資料により売上額を計算し,それに利益率を加えて損害を算定することが許されるべきである。
平成10年度から平成13年度までの年平均売上額である4304万4531円に,利益率0.118(平成5年度の売上額11億7355万5368円から,売上原価9498万3034円,販売費及び一般管理費9億4035万9267円(賃借料9592万5822円を控除した額)を差し引くと,営業利益額は1億3821万3067円となり,売上額に対する比率は0.118となる。)を乗ずると,この4年間の年平均利益は507万9255円となる。
よって,a社が平成16年4月から平成22年8月5日までの間,採石業務を行うことができなかったことによる損害は,3224万2832円となる。
カ 被告Y3社と原告らは,被告Y3社の原告X1に対する上記損害賠償請求権を,原告らの有する土地により支払うとの代物弁済を内容とする本件和解合意をしたものであるが,原告らは本件和解合意の効力を争っており,仮に原告らの主張が認められて上記代物弁済の効力が否定された場合は,上記損害賠償請求権は復活するので,被告Y3社は,原告X1に対し,予備的に上記金員の支払を求める。
(原告らの主張)
原告X1に本件賃貸借契約上の債務不履行はない。a社は,本件賃貸土地における採石事業が採算に合わないと判断して,自ら事業を停止したのであり,被告Y3社主張の損害と原告X1の妨害行為とは無関係である。a社は,前件訴訟の判決確定後3年半以上経過した現時点においても,本件賃貸土地において採石事業を行っていない。
なお,a社が東日本大震災によりいかなる物的被害を被ったか否かは何ら明らかにされておらず,a社が真実帳簿書類等のほとんどを紛失したかは疑問である。
(4)  争点(4)(原告X1の前件訴訟の提起に係る不法行為の成否及び損害)について
(被告Y3社の主張)
ア 原告X1による前件訴訟の提起は,本件賃貸借契約における期間が40年間であることを承知の上で,本件賃貸借契約書における賃貸期間がBの都合で10年間と記載されていることを奇貨とする極めて詐術性の強いものであり,被告Y3社に対する不法行為となる。
イ これにより,被告Y3社及びa社(上記のとおり,被告Y3社とは一体であるというべきである。)は,前件訴訟の弁護士費用(着手金50万円及び成功報酬300万円)相当の損害を被った。
ウ 被告Y3社と原告らは,被告Y3社の原告X1に対する上記損害賠償請求権を,原告らの有する土地により支払うとの代物弁済を内容とする本件和解合意をしたものであるが,原告らは本件和解合意の効力を争っており,仮に原告らの主張が認められて上記代物弁済の効力が否定された場合は,上記損害賠償請求権は復活するので,被告Y3社は,原告X1に対し,予備的に上記金員の支払を求める。
(原告らの主張)
原告X1において,本件賃貸借契約が平成20年5月28日をもって終了したと考えたことには相応の根拠があるから,前件訴訟の提起は不法行為には当たらない。
(5)  争点(5)(被告Y1の原告らに対する不法行為の成否及び損害)について
(原告らの主張)
前記(1)(原告らの主張)のとおりの被告Y1による強迫行為は,原告らに対する不法行為を構成する。また,上記強迫行為は被告Y3社の職務に関して行われたものであるから,被告Y1及び被告Y3社は共同して,原告らに対する不法行為責任を負う。
被告Y1の上記強迫行為による損害としては,慰謝料各50万円,弁護士費用各5万円が相当である。
(被告Y1及び被告Y3社の主張)
争う。
第3  当裁判所の判断
1  認定事実
前提事実のほか,後掲の各証拠(枝番のあるものは枝番を含む。以下同じ。)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
(1)  原告X1による本件賃貸土地の明渡請求等
ア 被告Y1は,本件賃貸土地に係るa社に対する採石法33条の規定による採取計画の認可(前提事実(1)オ)が平成14年9月12日で期間満了となることから,新たな認可申請の準備をしていたが,その頃,原告らが,原告X2の知人であるEを介して,いわき地方振興局企画商工部に対し,本件賃貸借契約の期間が残存していない旨強く主張したため,いわき地方振興局企画商工部は,本件賃貸土地につき原告X1との間の新たな賃貸借契約書が提示されない限り,上記認可をしないとの意向を示した(甲10,乙11,103〔4項〕,被告Y1本人〔調書11,14~15,37頁〕)。
なお,原告らは,被告Y1が,平成21年12月4日実施の前件訴訟における本人尋問において,a社が平成14年9月12日以降に認可申請をしなかった理由として,①本件賃貸土地において災害あるいは近隣での事故があったため,行政から整備をするよう注意が入り,その整備に7年以上かかっていることと,②石を採っても売れないことを挙げており,他方,原告らによる妨害の事実については一切述べていなかった〔甲25〕ことを指摘するが,上記本人尋問の当時,被告Y1は,原告らのいわき地方振興局企画商工部に対する上記働きかけの事実を知らなかったものであるから(乙103〔4項〕,被告Y1本人〔調書14~15,37頁〕,弁論の全趣旨),上記指摘の点は,上記認定を左右するものではない。
イ 被告Y1は,上記認可申請準備と並行して,本件賃貸土地において,採石事業の再開に備えた整備作業を行っていたところ,平成15年3月頃,原告X2が,被告Y1が本件賃貸土地内において石を盗んでいる旨警察に通報し,警察官が作業現場に臨場したことがあった(乙103〔5項〕,被告Y1本人〔調書11~14頁〕)。
ウ 原告X1は,D弁護士を代理人として,平成17年6月1日付け通告書をもって,被告Y3社及びa社に対し,本件賃貸借契約の期間は,採石法33条の認可がされた平成6年から10年を経過した平成16年に満了しているとして,本件賃貸土地における採石工事の中止を求めた(乙12)。
これに対し,被告Y3社及びa社は,反論の書面を送付し,本件賃貸土地の明渡しを求める原告X1(D弁護士)との間で,書面のやり取りが続いたが,双方の主張は平行線を辿った(乙13ないし27)。
エ 原告X1は,平成20年11月13日,本件賃貸借契約は林地開発許可及び採石法33条の認可がされた平成10年5月28日から10年を経過した平成20年5月28日で期間満了により終了していると主張して,被告Y3社及びa社に対し,本件賃貸土地の明渡し等を求める前件訴訟を提起したが,平成22年7月16日,本件賃貸借契約の賃貸期間は未だ満了していないとして,原告X1の請求をいずれも棄却するとの判決が言い渡され,同判決は,同年8月5日確定した(前提事実(2))。
(2)  前件訴訟の判決確定後の交渉経過
ア 被告Y3社は,平成22年8月6日,原告X1に対し,本件賃貸借契約に基づく廃土石処分場の所在地及び面積の確定表示を求めるとともに,平成16年以降,原告X1の代理人弁護士が被告Y3社に対して一方的に本件賃貸借契約が終了したと通告したことにより,被告Y3社の採石業務許可申請を妨害し,被告Y3社は前件判決確定までの間,業務を中断せざるを得ず,莫大な損害を被ったとして,6年間の営業妨害損害金3000万円(年額500万円)を請求する旨の書面を送付した(甲9)。
イ D弁護士は,原告X1の代理人として,平成22年8月12日,被告Y3社に対し,上記請求には応じられない旨回答した(乙28)。そこで,被告Y3社は,同月15日,原告X1に対し,上記請求の根拠を説明する文書を送付した(甲10)。
ウ 被告Y1は,同月17日,原告ら方近くの畑で農作業をしていた原告X2に話しかけ,Eについて尋ねるとともに,本件賃貸土地に係る賃貸借契約書の書換え及び損害賠償金の支払を求めたところ,原告X2は,賃貸借契約書の書換えには応じるが,損害賠償金は金銭がないので土地で払う旨述べ,これに対し,被告Y1は,金銭を支払ってもらわなければ困る,払わないのであればD弁護士にも請求するなどと述べた(乙103〔8項〕,原告X2本人〔調書4~5,20頁〕,被告Y1本人〔調書17~20頁〕)。
なお,原告らは,その際,被告Y1が「金を出さないとぶっ殺す」と言った旨主張し,原告X2も本人尋問において同旨の供述をするが(調書4,20頁),被告Y1は本人尋問においてこれを否定する趣旨の供述をしている上(調書20頁),原告X2は,被告Y1の上記発言を駐在所の警察官に言ったかどうかは明確な記憶がない旨供述していること(調書21~22頁),原告らが上記発言につき警察に相談等をした形跡もうかがわれないことなどにも照らせば,被告Y1が「金を出さないとぶっ殺す」と言った旨の原告X2の供述はにわかに採用することができず,他に上記事実を認めるに足りる証拠はない。また,仮に被告Y1が上記発言をしたとしても,原告X2が,その本人尋問において「いくら何だって人をぶっ殺すと思わないわえ。」と供述していること(調書23頁)からすれば,これにより原告X2が畏怖したとはおよそ認められないというべきである。
エ 被告Y1は,同月18日,原告ら方を訪問し,原告X2も同席する中,本件賃貸借契約に係る土地賃貸借契約書の書換案を原告X1に交付した(乙29,103〔8項〕,原告X2本人〔調書25頁〕)。
オ 原告X1は,同月19日,前件訴訟における原告X1の訴訟代理人であったD弁護士に対し,上記土地賃貸借契約書の書換えの件について相談するとともに,本件賃貸借契約に関する被告Y3社との交渉及び本件賃貸借契約から派生する一切の問題の処理を依頼した(甲11,24〔4項〕,乙103〔8項〕,原告X2本人〔調書24~25頁〕)。
カ D弁護士は,原告X1の代理人として,被告Y3社に対し,同月20日付けの書面をもって,上記土地賃貸借契約書の書換案に対し,賃貸借期間は「林地開発及び採石法33条の許認可後36年間」とあるのを「平成10年5月28日から40年間,すなわち平成50年5月28日まで」とすることなどの修正提案を行うとともに,以後は原告X1及びその家族に対して直接の交渉及び面談をしないよう申し入れた(甲12)。その後,D弁護士は,被告Y1と電話で話をして,土地賃貸借契約書の修正について合意した(乙29,32,103〔8項〕,被告Y1本人〔調書20~21頁〕)。
被告Y1の妻は,平成22年8月23日,D弁護士を訪ね,修正した土地賃貸借契約書に被告Y3社の記名押印をするとともに,被告Y3社の要求事項(平成16年以降採石業務が6年間中断したことに対する補償及び廃土石処分場の提供)を記載した文書をD弁護士に交付した(乙29,33,弁論の全趣旨)。
キ 被告Y3社は,同月31日,D弁護士に対し,①前件訴訟の弁護士費用として350万円(着手金50万円及び成功報酬300万円)並びに②平成16年時に原告X1関係者が,いわき地方振興局企画商工部に対し,被告Y3社との本件賃貸借契約が終了した旨虚偽の報告をし,開発認可申請中であった申請を妨害したことにより,平成16年より平成22年まで業務の一切が休止状態になったことによる損害金3600万円の合計3950万円の支払を原告X1に請求する旨の書面をファクシミリで送信した(甲13,乙103〔9項〕)。
ク D弁護士は,平成22年9月9日,D弁護士の要請により来訪した被告Y1と面談し,今後原告X2が受給する年金を原資として毎月2万円を50回に分けて総額100万円を弁護士費用として被告Y3社に支払うか,あるいは本件賃貸土地でもって代物弁済するとの和解提案をした(甲14)。被告Y1はこれを拒絶し,D弁護士と交渉しても埒があかないので原告X2と直接会って交渉する旨告げ,D弁護士もこれを了承した(乙103〔9項〕,被告Y1本人〔調書21~24頁〕)。
ケ 被告Y1は,同日,原告ら方を訪問し,原告X2と交渉し,その間,あらかじめ原告X2から連絡を受けて臨場していた三坂駐在所の警察官は,被告Y1を強く制止することもなく,被告Y1より先に立ち去った(乙103〔10項〕,原告X2本人〔調書9~10頁〕,被告Y1本人〔調書26~28頁〕)。
なお,原告らは,以後,被告Y1への対応についてD弁護士に相談することはしていない(原告X2本人〔調書36~38頁〕)。
(3)  本件和解同意書への署名押印
ア その後も,被告Y1は,原告X2に対し,訪問や電話で,再三にわたり損害賠償金の支払を求め,これに対し,原告X2は,金銭はないので原告ら所有の山林で代物弁済するしかないなどと述べていた(乙103〔10項〕,原告X2本人〔調書11~12,32頁〕,被告Y1本人〔調書28~29頁〕)。
イ 被告Y1は,平成22年9月14日,原告X1に対し,上記(2)キと同様の金銭の支払を求める旨の同日付け書面を送付した(甲15)。
ウ 被告Y1は,同月14日,原告ら方を訪れ,原告らに対し,前件訴訟の判決確定により,被告Y3社が原告X1に対し取得した合計3950万円(前件訴訟の弁護士費用350万円及び平成16年から同22年までの業務差止めによる損害金3600万円〔=月額50万円×12か月×6年〕)の損害賠償債務の弁済に代えて,原告らが所有するすべての山林を被告Y3社に譲渡する旨の本件和解同意書の案を示したところ,原告X2は,少し考えさせてほしい旨述べたので,被告Y1は,翌日再度訪問することとした(原告X2本人〔調書38~39頁〕,被告Y1本人〔調書29~30頁〕)。
エ 被告Y1が,同月15日,原告ら方を再度訪れたところ,原告らは,本件和解同意書にそれぞれ署名押印して,被告Y1に交付するとともに,登記義務者欄に原告らの署名押印のある登記申請書数通,原告らの資産証明書,印鑑証明書及び登記済権利証数通を被告Y1に交付した(乙35ないし46,48ないし50,103〔11項〕,原告X2本人〔調書14頁〕,被告Y1本人〔調書29頁〕)。
(4)  その後の経過
ア 被告Y1が原告らから受領した資産証明書と登記済権利証とを照合したところ,原告X1の資産証明書に記載された不動産のほとんどにつき登記済権利証がなかったため,原告X2に連絡すると,上記以外の登記済権利証はないとのことだったので,登記済権利証のない不動産については法務局からの事前通知(不動産登記法23条1項)があるので回答するよう求めたところ,原告X2はこれを約束した(乙103〔11項〕,原告X2本人〔調書16~17頁〕)。
イ 被告Y1は,原告らに対し登記手続への協力を求めるため,同月27日及び28日に原告ら方を訪れたが,原告らが出てこなかったので,玄関に原告らの用件を記載した貼り紙をした(甲16,17。なお,貼り紙の文言は,特に原告らの身体・財産に対する害悪の告知を含むものではない。)。
ウ 谷口正嘉弁護士は,同月29日到達の内容証明郵便をもって,原告らの代理人として,被告Y3社に対し,本件和解合意は強迫により取り消しうるものであり,被告Y1は恐喝罪の実行に着手したものと解され,原告らの山林について移転登記が完了した時点において恐喝罪は既遂となるので,その前に移転登記手続を取り下げるよう求めるとともに,移転登記が完了した場合は,直ちに被告Y1を恐喝罪で刑事告訴するとともに,抹消登記手続を求める民事訴訟を提起する旨通告した(甲19)。
エ 同年10月1日,原告X1共有地につき,同年9月28日売買を原因とする被告Y1への原告X1持分全部移転登記がされ,また,原告X2所有地につき,同月15日売買を原因とする被告Y3社への所有権移転登記がされたが(前提事実(4)),原告X1の資産証明書(乙35)に記載された山林については,登記済権利証がなく,原告X1が法務局からの事前通知に対して回答しなかったため,所有権移転登記手続を了することはできなかった(甲18,23,乙103〔11項〕,被告Y1本人〔調書49頁〕)。
オ D弁護士は,同年10月15日をもって原告らの代理人を辞任し,その旨被告Y3社に通知した(乙51)。
2  争点(1)(本件和解合意の有効性)について
そもそも,上記1(1)認定の事実及び前件訴訟の確定判決の認定判断を前提とすれば,原告X1には,本件賃貸借契約に基づき被告Y3社ないしa社に本件賃貸土地の使用収益をさせる義務に違反した債務不履行があり,これにより被告Y3社ないしa社が相応の損害を被ったことも容易に想定される。また,原告X1が,本件賃貸借契約における賃貸借期間の合意がされた経緯を知悉しながら前件訴訟の提起に及んだとすれば,原告X1による前件訴訟の提起は不当訴訟に当たる可能性もあり,その場合,原告X1は被告Y3社の弁護士費用につき損害賠償責任を負担するものである。以上によれば,被告Y3社の原告X1に対する損害賠償請求が,全く根拠のないものであるとはいえず,さらに,原告らの資産証明書に記載された山林の固定資産評価額が合計140万円程度にすぎないこと(乙35,36)をも併せ考えれば,本件和解合意が,その内容において,著しく不当なものであるということはできない。
そして,上記1(2)及び(3)認定の事実によれば,原告らは,前件訴訟の判決確定後,被告Y3社から原告X1に対する損害賠償請求を受けて,金銭による支払能力がないので,原告ら所有の山林でもって代物弁済することとして,任意に本件和解合意に応じたものと認められるのであって,本件和解合意が被告Y1の強迫及びこれによる原告らの畏怖に基づくものであるとの事情があったということはできず,また,これが公序良俗に反するということもできない。
原告らは,原告X2が当時76歳の老婆であることや,原告X1が19歳の時に鬱病を発症し,以後30年間にわたり就職もできない精神状況が続いていることを指摘するが,原告X2については本人尋問の内容からも明らかなとおり,その判断能力については何らの問題はないし,原告X1についても,鬱病であるからといって,判断能力に何らかの問題があることをうかがわせる証拠はなく,上記認定判断が左右されるものではない。
以上によれば,本件和解合意の無効及び取消しをいう原告らの主張はいずれも理由がないから,原告X1共有地の原告X1持分及び原告X2所有地の所有権は,本件和解合意による代物弁済によって,被告Y3社に移転したというべきであり,したがって,原告らの本件各抹消登記手続請求は,いずれも棄却すべきものである(なお,原告X1共有地につき,被告Y3社ではなく被告Y1への原告X1持分全部移転登記がされていることや,登記原因が代物弁済ではなく売買とされていることについては,弁論の全趣旨(争点(1)に対する被告らの主張カ)によれば,被告Y3社に持分が移転した後に被告Y1へ更に移転したことを示す中間省略登記であることが認められるから,いずれも上記結論を左右するものではない。)。
そうすると,上記各請求が認容される場合の被告Y3社の予備的反訴については,もはや判断を要しない。
3  原告らの債務不存在確認請求について
(1)  原告X2の債務不存在確認請求に係る訴えについて
被告Y3社は,原告らの債務不存在確認請求に対し,当初,請求棄却の判決を求め(答弁書第1「請求の趣旨に対する答弁」),請求原因に対する認否においても債務が存在しないとの主張を「争う」とはしている。しかし,前記1(1)エのとおり,前件訴訟を提起したのは原告X1であり,その結果,同(2)ア及びキのとおり,被告Y3社の損害賠償請求は,原告X1に対して行われていた。同(2)ウ及び(3)アのとおり,被告Y1は原告X2とも損害賠償債務の支払の交渉をし,同(3)エのとおり,原告X2も本件和解同意書の当事者とはなっているものの,同(3)ウのとおり,和解同意書の対象となる損害賠償債務は原告X1の債務であって,原告X2については,原告X1の母であるために支払交渉の相手となり,かつ第三者弁済を行うものであることは,本件和解同意書の内容からも明らかである。そのため,被告Y3社は,予備的反訴請求においても,原告X1のみを被告としており,原告らの債務不存在確認請求に係る損害賠償債権は,原告X1のみに対し主張し,原告X2に対して主張するものでないことを明確にしている。そうすると,本件の口頭弁論終結時においては,被告Y3社は,原告X2に対して前記第1請求1(本訴)(4)及び(5)の損害賠償債権を有しないことを認めて同原告に対し同債権の主張はしないことを明らかにしているのであるから,原告X2の前記第1請求1(本訴)(4)及び(5)の債務不存在確認請求に係る訴えは,いずれも確認の利益を欠き,不適法である。
(2)  原告X1の債務不存在確認請求について
他方,原告X1の債務不存在確認請求について検討するに,原告X1は,本件和解合意によって,被告Y3社に対する合計3950万円(前件訴訟の弁護士費用350万円及び平成16年から同22年までの業務差止めによる損害金3600万円)の損害賠償債務を負担していることを認めたものといえ,また,本件和解合意による代物弁済は,原告らの資産証明書に記載された山林全てをその目的とするものであり,前記2のとおりその固定資産評価額(合計140万円程度)は上記損害賠償債務の金額に比して著しく低いため,本件和解合意の当事者が,その一部の履行によって損害賠償債務の一部が消滅するような関係にあると認識していたものとは認め難いところ,原告X1の資産証明書(乙35の1,2)に記載された山林についての所有権移転登記は未了であるから(上記1(4)エ),原告X1の被告Y3社に対する上記損害賠償債務は,未だ消滅していないというべきである。したがって,原告X1の債務不存在確認請求は,理由がない。
4  争点(5)(被告Y1の原告らに対する不法行為の成否及び損害)について
上記2の説示によれば,被告Y1の強迫によって原告らが精神的苦痛を受けたとの主張を採用することもできないから,こうした被告Y1の言動が不法行為に当たるとして,被告Y1及び被告Y3社に対し損害賠償を求める原告らの請求は,理由がない。
第4  結論
以上によれば,原告X2の債務不存在確認請求に係る訴えは不適法であるから却下し,原告X2のその余の本訴請求及び原告X1の本訴請求はいずれも理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。
(裁判官 川﨑聡子 裁判官 齊藤隆広 裁判長裁判官都築政則は,転官につき署名押印することができない。裁判官 川﨑聡子)

 

〈以下省略〉

 

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