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「業務委託 代理店 営業」に関する裁判例(5)平成30年 9月28日 札幌地裁 平27(ワ)1583号 地位確認等請求事件、賃金請求事件

「業務委託 代理店 営業」に関する裁判例(5)平成30年 9月28日 札幌地裁 平27(ワ)1583号 地位確認等請求事件、賃金請求事件

裁判年月日  平成30年 9月28日  裁判所名  札幌地裁  裁判区分  判決
事件番号  平27(ワ)1583号・平28(ワ)334号
事件名  地位確認等請求事件、賃金請求事件
裁判結果  請求棄却  上訴等  控訴  文献番号  2018WLJPCA09286004

評釈
小西康之・ジュリ 1532号103頁
水町勇一郎・ジュリ 1526号4頁
淺野高宏・労働法律旬報 1937号6頁
浜村彰・労働法律旬報 1937号20頁
小櫃吉高・Libra 19巻5号48頁
矢野昌浩・法セ 770号123頁
野田進・労判 1191号5頁
棗一郎・労判 1191号2頁
田口靖晃・労政時報 3967号16頁
大山盛義・法時 91巻5号161頁

裁判年月日  平成30年 9月28日  裁判所名  札幌地裁  裁判区分  判決
事件番号  平27(ワ)1583号・平28(ワ)334号
事件名  地位確認等請求事件、賃金請求事件
裁判結果  請求棄却  上訴等  控訴  文献番号  2018WLJPCA09286004

平成27年(ワ)第1583号 地位確認等請求事件(第1事件),
平成28年(ワ)第334号 賃金請求事件(第2事件)

札幌市〈以下省略〉
原告 X1
札幌市〈以下省略〉
原告 X2
上記2名訴訟代理人弁護士 棗一郎
小川英郎
淺野高宏
井澤慎次
同第1事件訴訟代理人弁護士 多田真之介
村田英之
同第1事件訴訟復代理人弁護士兼第2事件訴訟代理人弁護士 星加美佳
同訴訟復代理人弁護士 庄子浩平
大阪府池田市〈以下省略〉
被告 株式会社Y
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 鈴江勝
宿龍太

 

 

主文

1  原告らの請求をいずれも棄却する。
2  訴訟費用は原告らの負担とする。

 

事実及び理由

第1  請求
1  第1事件
(1)  原告らが,被告に対し,それぞれ労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。
(2)  被告は,原告ら各自に対し,72万円並びに平成27年7月27日から本判決確定の日まで毎月27日限り月額18万円の割合による金員及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2  第2事件
(1)  被告は,原告X1(以下「原告X1」という。)に対し,894万0541円及び別紙1の「未払額」欄記載の各金員に対する各「年月日」欄記載の日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
(2)  被告は,原告X1に対し,894万0541円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(3)  被告は,原告X2(以下「原告X2」という。)に対し,1208万2238円及び別紙2の「未払額」欄記載の各金員に対する各「年月日」欄記載の日の翌日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
(4)  被告は,原告X2に対し,1208万2238円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2  事案の概要
第1事件は,原告らが,主位的に,①被告が商業使用人であるB(以下「B」という。)に対して被告の従業員を雇用することを委任し,Bが被告のために原告らと労働契約を締結したことによって当該労働契約の効果が被告に帰属した,仮にBが商業使用人でなく代理商であったとしても,予備的に,②原告らと被告との間には黙示の合意による労働契約が成立している,③被告は代理商という法形式を濫用してBら代理商を意のままに支配しているからBが代理商であることを理由として使用者としての責任を免れることはできないと主張して,被告に対し,それぞれ労働契約上の地位を有することの確認を求めるほか,労働契約による賃金支払請求権に基づいて,それぞれ平成27年2月分から5月分までの未払賃金として72万円並びに同年6月分以降の未払賃金として同年7月27日から本判決確定の日まで毎月27日限り月額18万円の割合による金員及びこれらに対する各支払期日の翌日から支払済みまでの商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
第2事件は,原告らが,上記①ないし③により原告らと被告との間にそれぞれ労働契約が成立しているところ,原告らは別紙3及び別紙4各記載のとおりそれぞれ時間外労働等をしたと主張して,被告に対し,各労働契約による賃金支払請求権に基づいて,それぞれ労働基準法37条所定の割増賃金(原告X1につき合計894万0541円,原告X2につき合計1208万2238円)及びこれに対する別紙1及び別紙2の各「年月日」欄記載の日の翌日から支払済みまでの商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めるほか,同法114条に基づいて,上記割増賃金と同額の付加金及びこれに対する判決確定の日の翌日から支払済みまでの民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
1  前提事実(証拠原因を掲記しない事実は当事者間に争いがない。掲記した証拠の直後の〔〕内の記載は,当該証拠における関係頁番号ないし関係部分である。)
(1)  被告及びその関連会社とその事業
ア 被告は,冠婚葬祭互助会員の募集及び冠婚葬祭の請負等を主たる事業とする株式会社である。
イ 被告は,株式会社aと共同出資をしてb1株式会社を設立した。平成20年8月27日,同社の商号はb株式会社(以下「b社」という。)へと変更され,同年10月1日から,b社の営業及び保険商品の販売が開始された。b社の代表取締役は,被告の元代表取締役である。
ウ 被告は,全国の個人事業主及び法人と代理店契約及び業務執行委託契約を締結し,被告の経営する冠婚葬祭互助会の会員募集活動及び締約代理業務や葬儀式における営業等を行わせ(甲11,12,27,83,84。以下,被告と代理店契約を締結している個人事業主ないし法人を「代理店」といい,その代表者を「代理店主」という。),これらの代理店を統括するために,営業本部の下に地方ごとの「ブロック」を,その下に「支社」を設置したほか,平成23年6月に支部制を導入し,各支社の域内に「支部」を設け,各代理店との間で業務委託契約を締結するに際し,特定の「支部」と呼ばれる地域の範囲内で営業を行うことを取り決めるようになった(甲147)。被告においては,代理店を「支部」と,代理店主を「支部長」と呼称することもあった。
被告は,地域ごとの代理店のとりまとめや被告との間の業務事項の連絡,各代理店の目標の達成の確認等に関する業務を第三者に委託しており,同業務の委託を受けた者は,その担当地域に応じて「支社長」と呼称されることがあった(乙38の2〔51〕)。
(2)  Bと被告との間の契約等
ア Bは,平成14年10月28日,被告との間で,被告の冠婚葬祭の互助会員募集業務や互助会入会契約の締約代理業務を受託する旨の契約(以下「代理店契約」という。)及び被告の運営する葬儀の役務提供に関する業務執行委託契約をそれぞれ締結し,上記各代理店契約は1年ごとに更新された(以下,この代理店契約に基づくBの事業体を「c代理店」ということがある。)。また,Bは,b社との間においても,b社の生命保険の募集業務に関する業務委託契約を締結していた(弁論の全趣旨)。
イ Bは,平成22年12月6日,被告から受託した業務を遂行することを目的とした合同会社d(以下「本件合同会社」という。)を設立し,その代表社員となった(乙10)が,代理店契約はB個人の名義で更新し続けた(甲11,83から85まで)。Bは,被告における支部制導入後は札幌市手稲区及びその周辺(以下「手稲地域」という。)における営業活動を担当し,「手稲支部長」と呼ばれるようになった。
(3)  原告らとBとの間の各労働契約
ア 原告X1は,平成21年4月,Bとの間で,1年間の期間の定めのある労働契約を締結し,同契約は1年ごとに更新された。
イ 原告X2は,平成20年4月,Bとの間で,1年間の期間の定めのある労働契約を締結し,同契約は1年ごとに更新された。
ウ 原告らとBとの間における各労働契約は,葬儀の施行,被告が提供する冠婚葬祭の互助会契約の勧誘等の営業活動,b社の生命保険募集等を従事すべき業務とし,月例賃金は18万円(ただし,平成26年1月までは15万円)及び成果給であった。
原告らは,葬儀施行に従事するとともに,葬儀に出席した者に対し,互助会契約の勧誘等の営業活動を行っていた(以下,これらの活動を行う従業員を「FA職」ということがある。)。
(4)  代理店契約の終了とCによる労働契約の締結
ア Bは,平成27年1月29日付けで,被告に対し,代理店契約及び業務執行委託契約の解約を申し入れ,同月31日,上記各契約は終了した。
イ 被告との間で代理店契約を締結していた株式会社eの代表取締役であるC(以下「C」という。)は,平成27年2月1日頃,Bに代わり,Bが担当していた手稲地域での業務を引き継ぐこととなり,同日頃,Bの従業員のうち,原告ら以外の者との間でそれぞれ労働契約を締結したものの,原告らとの間で,いずれも労働契約を締結しなかった。
(5)  消滅時効援用の意思表示
被告は,原告ら各自に対し,平成28年4月19日の本件第1回弁論準備手続期日において,平成25年1月1日から同年5月11日までの労務に係る原告ら各自の賃金支払請求権につき消滅時効を援用する旨の意思表示をした(当裁判所に顕著な事実)。
2  争点
(1)  原告らと被告との間に労働契約が成立しているか。
ア Bが被告の従業員の採用について委任を受けた商業使用人であったか。
イ 原告らと被告との間で黙示の労働契約が成立していたか。
ウ Bが代理商であると被告が主張することが信義則違反ないし権利濫用といえるか。
(2)  Cが原告らと労働契約を締結しなかったことが,被告の原告らに対する解雇の意思表示に該当するか,同意思表示は有効か。
(3)  割増賃金の有無及びその額
ア 原告らの割増賃金の計算の基礎となる賃金額及び労働時間
イ 消滅時効の抗弁の成否
(4)  付加金の支払義務の有無
3  争点に関する当事者の主張
(1)  争点(1)ア(Bが被告の従業員の採用について委任を受けた商業使用人であったか)について
(原告らの主張)
ア Bが被告の商業使用人に該当するといえるためには,Bの行う営業活動が,被告の営業活動の一部をなしている必要がある。具体的には,①被告のBに対する指揮命令の有無を中心に,②Bが自己の計算と危険負担により仕事を遂行していたのか,それとも被告の営業補助者にすぎないのかという点を補完的に考慮しつつ決すべきである。そして,①指揮命令の有無を判断する際には,〈ア〉業務従事の指示に対する諾否の自由の有無,〈イ〉業務遂行上の指揮監督の有無,〈ウ〉場所的・時間的拘束性の有無を,②Bの営業補助者性を判断する際には,〈エ〉報酬の労務対価性,〈オ〉Bの事業者性の有無ないし被告への専属性の程度といった具体的事情をふまえて検討すべきである。
イ これを本件についてみると,以下のとおりであり,Bが被告の商業使用人であることが明らかである。なお,この点に関する原告らの主張の詳細は,別紙5記載第1のとおりである。
(ア) Bは,被告から依頼される仕事について諾否の自由がなかった。また,被告から,Bが担当していた札幌手稲支部の営業地域の半分を被告が新たに立ち上げる支部へ割譲するように求められたときも,これを断ることができなかった(上記〈ア〉)。
(イ) 被告は,Bに対する営業上の指揮命令を行い,Bを含む代理店主を役職に選任ないし解任することで,業務遂行上の指揮監督をしていた。また,被告は,Bに対し,毎月の営業成績の報告を求め,過大な営業目標の達成を強制し,FA職が目標を達成することができない場合には,当該FA職を葬儀の施行に従事させないように制裁措置を講じるように指示した。また,従業員の採用活動についても,被告からBに対して個別具体的な指示がされており,Bが独自に従業員の募集や採用を行うことは予定されていなかった。
さらに,被告は,Bの従業員に対しても,人事権について事実上の決定権を有し,労務管理を行い,直接賃金を支払い,具体的な業務指示を行うなど,直接の指揮命令をしていた。(以上,上記〈イ〉)
(ウ) Bは,支部長としての業務の性質上,おのずと始業及び終業の時刻が定まっており,出退勤時刻を自由に決定することができる状況にはなかった。また,Bが支部の拠点として事務所を設ける際には被告の許可を得る必要があり,被告の承認を受けた場所で営業活動を行わなければならなかった(上記〈ウ〉)。
(エ) 被告からBに対する報酬は給与名目で支払われており,かつ,報酬額の決定はすべて被告の指示により行われ,Bに自身の報酬額を決定する裁量はなかった(上記〈エ〉)。
(オ) 以上の事情にかんがみれば,Bが自らの計算と危険負担で業務を営んでいるとは言い難く,Bに事業者性はない。むしろ,被告は,平成23年6月より支部制を導入し,Bを含む代理店主を「支部長」として被告の下部組織に組み込み,対外的にも被告の従業員として取り扱うなど,Bの被告に対する専属性は極めて大きかった(上記〈オ〉)。
ウ 被告は,被告がBに対して従業員との労働契約の締結を委任したことはないと主張するが,代理店契約上Bが従業員を雇用することが予定されていること,被告の業務はFA職の存在が必要不可欠であること,その他被告が従業員の採用についてBに種々の指揮命令をしていることからすれば,被告が代理店契約をもってBに従業員との労働契約の締結を委任していることは明らかである。
(被告の主張)
ア Bは,自ら本件合同会社を設立し,D(以下「D」という。)と同社を共同経営して同人に対し役員給与を支払い,私用の車両に関する費用を同社の経費として負担させるなど,経営者としてのメリットを享受しているから,Bが独立した事業主であって被告の商業使用人に当たらない。実際に,Bと同様に代理店主の地位に立つ者の中には,被告の事業とは関係のない事業を行っている者もおり,代理店主は被告の商業使用人に該当しないから,Bも同様に被告の商業使用人に該当しない。
原告らが,被告によるBへの指揮命令として主張する事実は,いずれも代理店契約及び業務執行委託契約上Bが当然に負うべき義務に関するものや,被告が営利を目的とする企業であること,被告の行う互助会事業が割賦販売法による規制を受けることに由来する必要な範囲内での指示にすぎず,労働契約に基づく使用者から労働者に対する指揮命令と同視し得るものではない。また,各FA職に対する労務管理はBが行っており,FA職に対する指示もBが自らの判断と裁量で行うものであるから,被告がFA職に対して直接の指揮命令を行ったとはいえない。さらに,支部制の導入によって代理店主が被告の下部組織として組み込まれた事実はない。
イ 仮にBが商業使用人であるとしても,被告は,Bに対し被告の従業員を採用する権限を付与していないから,Bと原告らが締結した労働契約の効果は被告に帰属しない。また,原告らは,自己の労働契約の相手方がBないし本件合同会社であることを認識しており,Bに被告の従業員を雇用する権限がないことを知り,又は容易に知ることができたから,Bによる原告らとの間での労働契約の効果が被告に帰属することはない。
ウ 以上の点に関する被告の具体的主張は,別紙6記載第1のとおりである。
(2)  争点(1)イ(原告らと被告との間で黙示の労働契約が成立していたか)について
(原告らの主張)
Bが被告の代理商であったとしても,争点(1)アについて主張したとおり,原告らと被告の間には,支社や支部を介した業務上の指揮命令関係が存在し,賃金が被告から原告らに対し直接支払われ,FA職の採用にも被告が強く関与していたことに加え,原告らFA職の業務が被告の収益の中心となっていること,葬儀施行についてBと関係のない独自の指揮命令系統が存在することなどからすれば,遅くとも被告が支部制を導入した平成23年6月には,原告らと被告の間で黙示の労働契約が成立していたことは明らかである。
原告らと被告の間における黙示の労働契約の成立を判断する上で重要な事実は,別紙5記載第2のとおりである。
(被告の主張)
被告は,原告らFA職に対し,何ら具体的な指揮命令を行っていない。原告らを採用したのも,原告らの労務を管理しているのもBに他ならず,原告らに対して賃金を支払っているのもBであるから,原告らはBとの間で労働契約を締結しているものであって,原告らと被告との間で黙示の労働契約が成立する余地はない。
原告らの主張する事実に対する具体的な認否及び反論は,別紙6記載第2のとおりである。
(3)  争点(1)ウ(Bが代理商であると被告が主張することが信義則違反ないし権利濫用といえるか)について
(原告らの主張)
仮にBが商業使用人であるとはいえず,代理商であるとしても,被告は,争点(1)アのとおり,BやCを含む代理店主に対し,業務執行上の強固な指揮監督を行い,役職の選任及び解任等により実質的に人事権及び懲戒権を行使し,代理店主を経済的に被告に依存させる関係を構築してこれを維持し,支部制を採用して代理店主を被告の組織に組み入れることにより,BやCに対して代理商としての独立性を与えることなく,両名を意のままに管理支配していた。そして,被告は,後記(4)のとおり原告らの労働組合を解散させる不当労働行為をする目的で,B及びCを意のままに管理支配することのできる地位を利用して,被告とBとの間の代理店契約を終了させ,原告らの各労働契約をCに承継させなかった。
このように,被告は,Bとの間で代理店契約を締結し,原告らがBとの間で労働契約を締結しているという仕組みを濫用し,不当労働行為をする目的で原告らを解雇したものであるから,被告が,Bが代理商であることを主張することは,信義則違反ないし権利濫用であって,被告は原告らに対する雇用責任を負わなければならない。
(被告の主張)
BやCは独立した事業主であって,被告が両名を意のままに支配管理できる地位にあったとはいえない。また,Bとの間の代理店契約を解約するに至ったのは,c代理店の経営状態が悪化していたことが理由であって,原告らに対して不当労働行為を行う意思はない。
(4)  争点(2)(Cが原告らと労働契約を締結しなかったことが,被告の原告らに対する解雇の意思表示に該当するか,及び同解雇の意思表示の有効性)について
(原告らの主張)
被告は,平成27年1月31日,Bとの間の代理店契約を終了させるに際し,被告の労働者であった原告らについての労働契約をCに承継させなかった。このことは,被告が原告らに対し同人らを解雇する旨の意思表示をしたものに他ならない。上記解雇は,労働組合を結成した原告らを排除する目的でされた不当労働行為に当たるから,労働組合法7条1号に反して無効であるとともに,客観的合理的理由がなく,社会通念上の相当性もないから,労働契約法16条に反して無効である。
被告は,原告らの解雇は組合活動を理由としてされたものではないと主張するが,Cは原告らとの労働契約を承継しなかったことについて何ら合理的な説明をしておらず,原告らが労働組合の結成趣意書を配布して以降,被告のE営業本部長(以下「E部長」という。)がBと面会を重ね,原告らの組合結成を阻止するかのような言動をとっていること,手稲支部をCに引き継ぐことになったことも被告の意向であることからすると,被告及びCが意を通じて組合活動を行った原告らを排除する意図で原告らとの労働契約を承継させなかったことは明らかである。
(被告の主張)
原告らと被告との間に労働契約は成立していないし,原告らが再雇用されなかったことは独立した事業主たるCの判断であって被告の関与するところではない。Cが原告らと労働契約を締結しなかった理由は,原告らの営業意欲や態度等にあるのであって,組合の結成を理由としたものではない。以上の点に関する被告の具体的な主張は,別紙6記載第3のとおりである。
(5)  争点(3)ア(原告らの割増賃金の計算の基礎となる賃金額及び労働時間)について
(原告らの主張)
原告らと被告との間の各労働契約における労働条件は,原告らとBとの間の各労働契約における労働条件と同一である。そして,原告X1は別紙3記載のとおり,原告X2は別紙4記載のとおり,それぞれ労務を提供した。これに基づいて原告らの未払賃金額を算出すると,原告X1については別紙1,原告X2については別紙2のとおりである。
労働時間に関する詳細な主張は,別紙5記載第3のとおりである。
(被告の主張)
原告らと被告との間において労働契約が成立しているとはいえないから,被告が原告らに対して未払賃金の支払義務を負うものではない。原告らの労働実態については不知。
(6)  争点(3)イ(消滅時効の抗弁の成否)について
(被告の主張)
平成25年1月1日から同年5月11日までの間に発生した賃金請求権は,原告らが札幌地方裁判所に対し本件訴訟を本案事件とする仮処分命令を申し立てた平成27年5月12日の時点で2年の消滅時効が完成し,被告がこれを援用する旨の意思表示をしたことにより消滅した。
(原告らの主張)
争う。
(7)  争点(4)(付加金の支払義務の有無)について
(原告らの主張)
被告は,原告らに対し,未払賃金だけでなく,労働基準法114条に基づく付加金を支払うべき義務を負う。
(被告の主張)
争う。
第3  当裁判所の判断
1  認定事実
後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる(書証番号は特に断らない限り枝番号も含む。掲記した証拠の直後の〔〕内の記載は,当該証拠における関係頁番号ないし関係部分である。以下同じ。)。
(1)  Bと被告との間の代理店契約の定め
ア 平成23年8月に締結された被告とBとの間の代理店契約に係る契約書には,以下の規定がある(甲27,85)。
(ア) 代理店は,被告が指定する区域内において,被告の営む冠婚葬祭互助会の会員募集,同互助会の締約代理業務,集金業務,互助会入会後の会員の申込名義や住所の変更等の諸届に関する取次業務を被告の委託により行う(1条,2条)。
(イ) 被告は,代理店に対し,代理店の受託業務につき,顧客が契約したコース(甲123)及び被告が査定する契約数等に基づき定めるクラスにより半年ごとに決定される募集手数料,継続手数料その他の手数料を支払う(5条1項)。
(ウ) 代理店は,被告に対する代理店契約に基づく一切の債務を担保するために,業務細則の定めに従った金額を預託しなければならず(7条1号),被告から代理店への請求債権が発生し,代理店がその支払に応じない場合には,預託を受けた保証金から同債権の支払に充当することができる(同条2号)。被告は,契約期間が満了又は同契約が解除された場合には,預託を受けた保証金から代理店が被告に支払うべき債務等を控除した上で,その差額を,契約解消月から22か月後に返還する(10条本文)。
(エ) 代理店は,被告の冠婚葬祭事業と同種の営業を経営してはならず(8条1号),上記事業と同種の営業を営んでいる他の事業者の代理店に参入するなどの兼業をしてはならず(同条2号),被告より受託した業務を第三者に対し再委託してはならない(同条3号)。
(オ) 代理店は,その従業員に対する指導監督を行い,いやしくも外務員として不適当と認められる者を採用しないように努めなければならない(業務細則第3)。
(カ) 互助会契約に関する契約約款やパンフレット等を除き,代理店が設置する事務所の経費や従業員の人件費等の費用は代理店の負担とする。ただし,代理店が事務所を開設する際に事務所用の店舗を賃借する場合には,被告がこれを賃借した上で,代理店に対して必要な期間使用させることができ,この場合には,代理店は被告に対して賃料を支払う(業務細則第4)。また,被告は,代理店に対し,従業員の募集,指導,研修,監督等について,費用の一部負担等の援助を行うことがある(同第9)。
(キ) 被告から代理店へ支払われる入会獲得手数料の対象となる会員は,原則として加入者宅が被告の指定する営業地域内であることその他の条件を全て満たさなければならない(業務細則第5)。
(ク) 代理店は,税務署の定める申告期間内に,所得税の確定申告等の税務申告を実施しなければならない(業務細則第6(8))。
(ケ) 被告は,委託業務の監督のため,代理店に対して監査や事業所への立入検査をすることができる(業務細則第7)。
(コ) 代理店が代理店契約及び業務細則に違反する行為(名義貸契約,領収書の不正使用等)をした場合には,ペナルティ規定に則って,一定額の拠出,訓告,業務改善命令及び契約の解除といったペナルティを課すこととする(ペナルティ規定)。
イ 平成24年及び平成25年の代理店契約に係る契約書(甲83,84)においては,保証金に関する定め(上記ア(ウ))が削られる一方で,被告が指定した募集地域以外での入会を禁止する旨の規定(14条1項10号),代理店に代理店契約に定める解除事由や禁止行為に該当する事由がある場合は被告が代理店に対して訓告や罰金の制裁措置を含む業務改善命令を発令することができる旨の規定(17条)が加えられた。平成26年の代理店契約に係る契約書(甲11)においては,保証金に関する定め(上記ア(ウ))に相当する規定が再度定められた。Bと被告との間の平成24年以降の代理店契約に係る契約書には,育成手数料,葬祭施行手数料,キャンペーンに係る手数料等を支払う旨の定めがあった。(甲11,83,84)
ウ 上記各契約書においては,被告から委託された業務を行う場所について定められておらず,また,勤務時間も定められていなかった(甲11,27,83から85まで)。
(2)  Bが行っていた業務等
ア Bは,代理店契約の締結後,支社長からの求めに応じて,代理店における契約獲得本数その他の営業目標を定め,これを支社長に報告していた。定めた営業目標については,被告や支社長から再考を促され,これを改めたこともあった。定められた営業目標は,Bにおいて各FA職に割り振っていた。(甲31,32,乙38の3〔127~128〕,証人B〔8〕)
イ Bは,代理店において実施する見学会その他の催しの企画を考案し,これを被告に伝えて金銭的補助の稟議を求め,実施の前日には,PR職と呼ばれる従業員に対してその要領等を指示していた。また,新たにFA職を採用する際にも,被告に伝えて,求人広告掲出費用の補助,育成手数料等の支給の稟議を求めていた。上記の支給は,Bにおいて支出した費用のうち全部に及ぶこともあれば,一部にとどまることもあった。(甲35から37まで,57,58,60,61,72,239〔158〕,乙2,38の3〔125~126〕,証人B〔20~22,27〕)。
ウ Bは,支社長からの求めに応じ,B及びc代理店の従業員の名簿及び各タイムカード,新たに入社した従業員の履歴書その他の書類を提出していた。社員名簿には,それぞれの従業員についてコードが割り振られていた。(甲81,103,206,213)
なお,代理店主は,FA職が別の代理店に移動する場合には,被告に対してその旨の申請を行う必要があった(甲227)。
エ Bは,被告の支社長及びその担当する地域内の代理店主が参加する支部長会議に出席し,被告又はb社からの連絡事項を伝えられたほか,契約獲得本数等に関する目標について協議していた(甲50,53から55まで,193,194)。また,Bは,携帯電話機宛に送信される電子メールを通じて,営業目標の達成状況,各種書面の提出の締切日等について指示ないし連絡を受けていた(甲194,228,229)。
上記の連絡事項は,Bがその従業員に対してこれを伝えていた(甲238〔58〕,239〔111〕,証人B〔8〕)。
オ 支部長会議においては,支社長らが,各代理店から提出された書面をもとに把握した契約獲得本数(甲45,46,191)が目標を達成していない場合に,支部長に対し,目標を達成するために何か不足しているのか分析するよう指導を行っていた。支社長らによる指導は強い言葉での叱責に及ぶこともあったほか,F東札幌支社長(以下「F支社長」という。)から,目標を達成することができないFA職には葬儀の施行を行わせない,施行の回数を制限するなどの措置をとる旨の発言がされ,被告のG北海道統括営業部長から,目標を達成することができないのであれば支部長を降りてもらうこともある旨の発言がされることもあった。(甲56,94,167の2,180)
また,被告からは,営業担当の従業員に対して健康診断を受けさせるよう文書で指示し,これを受けない従業員は施行をさせないように指示したこともあった(甲138)。
もっとも,被告が,各代理店の契約獲得の方法その他の具体的な手順について,代理店主に対して特段の指示を行うことはなかった。その上,各代理店の立てた目標が達成されなかったとしても,代理店主やその従業員(FA職)に対し,被告や支社長からペナルティが課されることはなかった(証人C〔16〕)。
(3)  従業員の採用,解雇等
ア(ア) 従業員の採用は,原則として代理店ごとに募集を行い,代理店主が面接を行ってその採否を判断していた(甲58,239〔125~126〕,乙38の3〔143~144〕,証人C〔14,35〕)。もっとも,平成26年3月頃の採用は,支社名義でFA職を募集する旨の求人広告を北海道新聞に掲載し,履歴書を支社でとりまとめ,応募者の居住する地域に応じてその地域を担当する代理店に対し応募者を振り分ける方法により行われた(甲167の2〔12〕)。
なお,各代理店がその応募者に対して不採用の通知を行う際には,「(株)Y 人材開発課」名義のものを使用することもあった(甲110)。
(イ) 被告は,各代理店主に対し,代理店の新規採用者について,被告の定めた新人研修を受講させ,互助会の募集活動に必要な資格及び生命保険の募集人資格を取得させることを要請しており,これらの資格を取得することができない新規採用者については,代理店での営業活動を認めず,採用しないように指示していた。これを受けて,各代理店主は,新規採用者に対し,資格取得のために必要な試験を受験するよう指示していた。(甲62から64まで,139,原告X2本人〔20~21〕。なお,被告は,研修を受講する義務があったのは生命保険の募集人資格についてのみであると主張するが,そうした事実を認めるに足りる証拠はない。)
Bは,被告からの上記指示に従い,必要な資格を取得することができなかった従業員の雇用を断念したことがあった(甲239〔116〕,証人B〔38〕)。
イ Bは,平成26年8月19日に行われた支部長会議において,3か月以上の長欠は認められず,そうした従業員について退職手続を採るべきことを新しいルールとする旨全国会議で決められたとF支社長が発言したことを受けて,3か月以上休職していた従業員1人を解雇した(甲180〔2~3〕,239〔114~116〕,証人B〔42〕)。
ウ 被告は,支社長や代理店主に対し,支社長の担当する地域や代理店主が営業を行う地域の変更について打診することがあり,支社長や代理店主がこれに同意すると,支社長や代理店主が担当し営業を行う地域が変更された。被告は,上記の支社長や代理店主の担当地域の変更を「人事異動」と称していた。(甲127〔1~3〕,甲144,145,148,乙38の1〔33,46~47〕,乙38の2〔51〕)
(4)  c代理店における金銭負担等
ア Bは,被告が賃料月額25万9623円,共益費月額8万6541円で賃借している札幌市西区発寒所在の建物を,被告に対して毎月「家賃」名目で30万円を支払うことにより事務所として使用していた(甲18,乙3,乙38の2〔93〕)。
イ c代理店においては,毎月,会員種別ごとの契約口数を基準として所定の調整が行われた手数料に加え,被告からの育成手数料,葬祭施行手数料,キャンペーンに係る手数料その他の手数料が売上げないし収入となり,これに対して事務所家賃,電話料金,プール金,従業員給与等が支出となり,また,上記収入の額と支出の額の差額が,被告からBに支給すべき額となり,これが給与名目で翌月27日頃に被告から支払われていた。その額は,0円(平成26年2月分など)から314万5000円(同年10月分)まで,月ごとに変動していた。(甲18,101,218,乙1)
上記の支払は,支社長が作成し,Bが署名押印した「代理店請求書」を被告に提出し,被告において必要な手続を履践した上で行われた(甲18,乙38の3〔153〕,証人B〔5,6〕)。
ウ Bは,c代理店の代表ないし本件合同会社の代表者として,確定申告書及び労働保険料等整理計画書をそれぞれ提出していたほか,原告らを含むFA職3人を社会保険に加入させ,健康保険料,厚生年金保険料及び児童手当拠出金を納付していた(甲107,237〔41〕,238〔77〕,乙12,13,17から19まで,原告X2本人〔24〕)。また,Bは,本件合同会社の代表者として,互助会手数料等の売上に関する消費税及び地方消費税を納め,FA職らの給与から源泉徴収した所得税を納めていた(乙11,14)。
エ Bは,自らの年金収入を代理店の営業のための費用に充てることもあった(甲239〔158〕)。
(5)  原告らを含むc代理店のFA職の業務
ア Bは,平成20年に原告X2と面接し,被告の研修を受けさせて採用すべきものと判断し,その後に労働契約を締結した。上記研修を受けさせる旨Bが被告に伝えた際,被告から拒絶されることはなかった。また,Bは,平成21年に原告X1と面接をし,その後に労働契約を締結した(甲239〔125,126〕)。
イ 原告らは,平成20年ないし平成21年に「株式会社Y代理店 c代理店」宛ての,平成25年8月1日には「札幌手稲支部 B」宛ての各誓約書を提出し(甲6,9),また,「札幌手稲支部 店主 B」名義の労働契約書を交わし(甲7,10),平成25年8月1日,「株式会社Y 札幌手稲支部代理店」宛てに「私は,株式会社Yと業務委託契約を結んでいる札幌手稲支部代理店の従業員として雇用されており,株式会社Yとは何ら雇用関係も存在しないことを認識しております。」と記載された確認書を提出した(甲15,16)。
ウ Bは,原告らその他の従業員に対し,基本給として18万円,歩合給として互助会入会契約1本ごとに2万5000円のほか,交通費2万円を支払っていた。歩合給の額は,被告から1本2万円程度と指示されていたが,FA職の生活保障のため,Bが支社長と協議の上,これを2万5000円に引き上げたものである。(甲13,乙17から19まで,証人B〔27,28,42〕)
上記の各支払額は,他の札幌地区の代理店のものとは異なっていた(甲82,239〔132〕)。
エ 原告らは,FA職として,各代理店が担当するエリアを回り,葬儀施行を担当したときの遺族や親族らの自宅を訪問して互助会契約や生命保険契約の締結を含む営業活動を行うとともに,既存の互助会会員や生命保険の契約者を訪問して集金等の業務を行い,また,葬儀の施行に関連した業務等も行っていた。(甲172,206,213,232〔23〕)
オ 互助会会員やその親戚が亡くなった場合には,会員等から被告のシティホールに対し,葬儀依頼の連絡が入る。各シティホールは,その連絡を受けて,同シティホールの所在する地域を担当する代理店のFA職に対し,シティホールへ向かい,葬儀の施行を行うように連絡をする。なお,c代理店においては,FA職間の話合いにより,どのFA職が葬儀施行を担当するかを決めていた。(甲232〔22~23〕,原告X1本人〔27〕)
カ 葬儀施行の際には,被告と業務委託契約を締結している葬儀施行場所(シティホール)の館長から,客からの特別な要望等を踏まえた指示を受けることがあった(原告X1本人〔27〕)。
葬儀施行の際には,FA職は制服を着用することが被告により義務付けられ(甲117),互助会入会書の記載方法も被告から指定されていた(甲198)ほか,「3・6ルール」や「FAルール」と呼ばれる葬儀施行の際のルールが定められていた。上記「FAルール」の改訂版であることを示した文書(甲196)には,平成15年8月4日に店長会役員会及びFA役員会において決定したものである旨の記載があった。(甲195から197まで)。
北海道内のFA職は,葬儀施行が終わると,E部長に対し,葬儀施行に関する報告書を提出しなければならなかった。報告書は,その日に行われた業務の内容を記載するもので,客からの要請や,施設の故障等の特別な報告事項があれば併せて記載することとされていた(甲47,122,179,181〔1〕,乙9,38の1〔38~39〕)。
キ FA職は,被告からGPS機能付きの携帯電話の貸与を受けており,紛失した場合に備えて常に電源を入れておくように指示を受けていた(甲55〔5枚目〕,68,原告X1本人〔23〕)。
(6)  手稲第2支部の発足
平成25年6月1日,H及びIは,それぞれ被告との間で代理店契約を締結し,手稲地域の一部において被告から受託した業務を開始した(以下,これらの代理店を「手稲第2支部」と総称する。)。Bは,手稲第2支部が立ち上がる前に,J東札幌支社長から手稲地域での営業目標を達成するために手稲第2支部を立ち上げることを打診された。Bは,手稲第2支部によりc代理店の営業区域が奪われ,売上が減少する可能性があるが,これを断ると支部長の地位を降格させられたり,配置転換をされたりするおそれがあると考えたため,これを承諾した。(甲26,乙39〔4,5〕,証人B〔9,10,43〕,弁論の全趣旨)
(7)  F支社長によるFA職に対する業務指導等
Bは,平成26年9月30日,F支社長とb社のKブロックマネージャーから呼び出され,c代理店におけるFA職の営業成績が他の支部と比べて芳しくないことを指摘され,b社の保険獲得目標を達成することができないFA職について翌10月から葬儀施行を外して営業活動を行わせるべきであるとの指導を受けたが,Bはこれに応じなかった。
F支社長は,原告X2を含むc代理店に所属するFA職を呼び出し,①ルール付けに関しては,自分が,本社の会議で聞いた社長からの指示等を,3日以内に支部長会議を実施して,そこですべて下していき,これを持ち帰った支部長たちが,翌日,朝礼等を開いて,PR職やFA職に下していき,FA職がそれを速やかに実行に移すことで,組織は統制下に置かれていると自分は認識していること,②伝言ゲームのように途中で伝達内容が変わってしまうことは,管理者として疑問に思うし,会社の方向性からいうと非常に困ること,③手稲支部におけるb社の保険契約の獲得目標の達成率が他の支部と比べて著しく悪いこと,前月の施行が目標の50パーセントに満たない場合には,翌月の葬儀施行を調整する方針であることを話した。これに対して,原告X2は,「私たちはあなたの社員じゃありませんよ。」,「どうして支社長たちが,あなたたちが,なんで私たちに,なんの権利があって言ってるんですか。」,「私たちはY社に勤めているわけではないんですよ。」などと発言した。最終的に,Bは,原告らを含む保険獲得目標を達成していないFA職につき,葬儀の施行を外したり,これを制限したりするなどの措置をとることはなく,F支社長らもこれを強要することはなかった。(甲75,237〔23,43,53〕,238〔80〕,乙20,原告X1本人〔22〕,原告X2本人〔15~16〕)
(8)  Bと被告との代理店契約の解約
ア c代理店は,月間の新規契約獲得本数の目標として70本程度を掲げており,かつては契約獲得本数が月に100本を超えることもあったが,平成26年7月以降は,平均して50本台にとどまっており,同年12月の契約獲得本数は43本であった(乙39〔別表2〕,証人B〔40~41〕)。
また,c代理店は,平成26年10月以降3か月連続で赤字状態が継続しており,これを補てんするために,被告から,同月に約231万円,同年11月に約192万円,同年12月に約282万円をそれぞれ借り入れた(甲18の11,乙1の4,5,乙39〔14~15〕)。
イ F支社長は,Bに対し,平成26年11月頃,c代理店の経営が赤字となっていることを理由に,その閉鎖を勧めた(甲94〔13〕)。
F支社長は,同年12月20日,Bに対し,上記の閉鎖勧告に対してBが平成27年1月をもって閉鎖する意志を固めたと発言したことを確認し,Bが同月に閉鎖について協議をして代理店契約の解除願を作成する予定である旨発言したのに対し,貸付けを受けるためには,代理店経営の資金繰りが芳しくなく,貸付金が必要であるので借入れをお願いしたい旨に加え,借入金を完済しなかった場合は同月をもって代理店を廃業し,保証金による精算を依頼する旨を記載した文書を作成して提出するほうが良い旨発言した。そこで,Bは,平成26年12月分の借入れに際して,被告に対し,代理店経営のために192万3114円の資金が必要であって貸付けをお願いしたいこと,翌年1月に支払ができない場合には積み立てた保証金により借入分を清算するとともに,同月末日をもって被告との間での代理店契約を解除する意思であることを記載した書面(乙7)を提出した。(甲94〔13,14〕,237〔24〕,乙7,38の2〔52〕)
ウ c代理店の業績は,平成27年1月になっても回復せず,赤字の状態が継続していた。これを受けて,同月9日以降,E部長がBと代理店の閉業について協議を始めた(甲234〔別紙1から4まで〕,乙36)。F支社長も,同月16日にもBに対して廃業を勧め,Bが「今の支部で続ける気が出てきた」などと発言したのに対し,更に廃業を勧める趣旨の発言をした(甲94〔16,17〕)。同月26日には,E部長は,Bと面談し,経営が成り立っていないことを理由に代理店主を誰かに譲るよう勧め,同月末日をもってc代理店を閉業することについて協議するとともに,手稲地域でBに代わって代理店を経営し,c代理店に在籍していた従業員の雇用を引き継ぐ者を検討するように述べたところ,Bは,引継ぎの候補として,c代理店のFA職の中から原告X1及びL(以下「L」という。),他の代理店主の中から親交のあるCを挙げた。そのため,Bは,原告X1及びLに手稲地域で代理店主を営むことを打診し,これが断られた場合には,Cにこれを打診することとした。(甲94〔18~19〕,234〔別紙3の1,4,8,9,13,15頁〕)
エ 上記打診の結果,原告X1及びLは代理店主への就任を断ったものの,Cはこれを受け入れ,平成27年2月1日よりCが手稲地域で代理店を経営することとなった(甲234〔別紙4〕)。Cは,同日以降,c代理店が使用していた事務所や備品等をそのまま使用していたが,BとCの間で事業譲渡契約等は締結されなかった(乙38の3〔140,141〕,証人C〔33〕)。
オ Bは,c代理店の代表として,被告に対し,平成27年1月29日付けで経営悪化を理由とする契約解除願(乙8)を提出し,同月末日をもってc代理店と被告との間の代理店契約及び業務執行委託契約は解除された。なお,Bは,c代理店が被告に対して預託した保証金の返還を受けていない(甲239〔163〕,乙38の2〔76〕)。
2  争点(1)ア(Bが被告の従業員の採用について委任を受けた商業使用人であったか)について
(1)  会社その他の商人の使用人とは,その商人に従属し,その者に使用されて労務を提供する者と解するのが相当であり,これに該当するか否かは,当該商人との間の契約の形式にかかわらず,実質的にみて,当該商人から使用されて労務を提供しているといえるか否かによって判断すべきである。
(2)ア  前記前提事実及び前記認定事実によれば,代理店契約において被告がBに委託した業務の内容は,被告の指定する区域における互助会の会員募集,契約の締結及び締結後の事務のほか,被告の葬儀の施行に係る事務,b社の保険契約に関する事務につき,必要に応じて適当な従業員を採用し,指導監督を行ってこれを遂行することである(前記前提事実(2)ア,前記認定事実(1))。被告は,支社長を通じるなどして,Bに対し,代理店として営業すべき地域を手稲地域に限定し,その後に更にその地域を限定し,従業員の研修や健康診断について指示伝達するのみならず,獲得すべき契約数その他の目標の設定,催しの実施,従業員の新規採用の可否のほか,従業員の解雇について一般的な準則を設定し,担当すべき業務についても指示指導を行っており(前記認定事実(2),(3),(6)),こうした指示指導に従わないときには支部長を降りてもらうことその他の不利益処分を行う旨を示唆していた(前記認定事実(2)エ)ことが認められる。
そして,こうした指示指導は,Bに対し,代理店主の地位が失われるおそれがあることを考慮に入れた上でこれに従うか否かの判断を迫るものであり,実際にBは上記のおそれを認識した上で承諾していること(前記認定事実(6))を踏まえると,上記の指示指導内容については,代理店主であるBの諾否の自由が相当程度制約されていたものといわざるを得ない。
その一方で,被告や支社長は,契約獲得の方法その他の具体的な営業方法についてBに指示伝達をすることはなかった(前記認定事実(2)ア,オ)し,c代理店における従業員の報酬額は,Bが定めたとみるべきである(前記認定事実(5)ウ)。Bは,c代理店における各種催しの企画,従業員の採用等の際,被告に稟議を上げていた一方で,被告は稟議された事項につき金銭的な補助をするか否か及びその補助の範囲について判断するにとどまり,当該事項自体についての当否について判断しておらず(前記認定事実(2)イ),この点はBの裁量判断に任されていたとみることができる。Bの労働時間,代理店の事務所所在地については,代理店契約において定められておらず(前記認定事実(1)ウ),この点に関する被告による具体的な指揮命令が行われたことをうかがわせる証拠はない。
イ  また,Bの業務については,一部業務につき従業員を用いることは想定されているが,業務を再委託することは許されておらず(前記認定事実(1)),代替性はほぼないとみられる。
ウ  加えて,Bは,代理店の収入となる各種手数料のほか,自らの年金収入の中からも支弁して,事務所の賃料その他の経費を負担していた(前記認定事実(4)イ,エ)ものであり,また,Bの報酬は上記手数料から各種経費を控除した残額であって,月次の変動がみられていた(前記認定事実(4)イ)のであり,被告がBの報酬について源泉徴収を行ってもいなかった(弁論の全趣旨)。これらの事実からすると,Bは,自己の計算によって業務を遂行していたのであり,その報酬額は,労務それ自体と対応するものでなく,労務の成果と対応したものであるということができる。
(3)  以上の事実を総合考慮すると,Bについては,業務の方針や成果に関しては細部にわたって被告からの指示があり,これを拒否することは相当程度困難であった一方で,具体的な労務の遂行方法や労務の時間,場所については一定程度の裁量があったということができ,業務の代替性は乏しいものの,その業務を自己の計算によって行い,報酬額が労務の成果と対応しているものである。
したがって,Bは,被告に従属し,被告に使用されて労務を提供しているとはいえないから,Bが被告の使用人であるということはできない。
(4)  これに対して,原告らは,後記のとおり主張するが,それぞれにおいて説示するとおり,いずれも採用することができない。また,原告らのその他の主張は,いずれも上記判断を左右しない。
ア 原告らは,被告が,c代理店の従業員に対し,人事権について事実上の決定権を有し,労務管理を行い,直接賃金を支払い,具体的な業務指示を行うなど,直接の指揮命令をしていたと主張する。
しかし,Bは被告に対して従業員のタイムカード等の文書を継続的に提出していた(前記認定事実(2)ウ)が,被告がこれに基づいて従業員の労働時間その他の業務状況について具体的な指示指導を行っていたとは認められず,他に被告がc代理店の従業員の労務管理その他の人事権を有していたと認めるに足りる証拠はない。この点に関し,Bは,3か月以上休職している従業員については退職手続をとらなければならない旨の指示を受け,従業員1人を解雇した(前記認定事実(3)イ)が,上記指示が一般的な準則を述べるにすぎず,個別の従業員に言及するものでないことからすると,こうした言動があることから被告がc代理店の従業員に関する人事権について事実上の決定権を有していたと評価することはできない。
また,Bの従業員に対する賃金については,その振込みを被告が行っていたものであるが,その原資はc代理店が顧客から獲得した契約の本数やその従業員の属性等に基づき被告からc代理店に支払われる各種手数料にあるから,Bが自己の計算により代理店業務を行っていないと評価することはできない。
その他,本件全証拠を精査してみても,被告がc代理店の従業員に対して,直接の業務指示を行っていたと認めるに足りる証拠はない。
イ 原告らは,Bは朝礼を実施しなければならず,その他の業務も定型的であったため,おおむね午前8時から午後6時ないし7時まで勤務をしなければならなかったと主張する。
しかし,仮に朝礼の実施が被告から義務づけられていたとしても,朝礼の開始時刻その他業務時間について被告が何らかの指示指導をしたことをうかがわせる証拠は見当たらない。そうすると,かかる事情からBの勤務時間についての裁量を否定することはできない。
ウ 原告らは,Bの報酬が被告から「給与」名目で支給されていたことをもって,被告のBに対する報酬が労務対償性を有すると主張する。しかし,前記で説示したとおり,Bの報酬は業務の成果に対して支給されるものであって,名目によってその性質が左右されるということはできない。
また,原告らは,Bに対する報酬は支社長が作成する代理店請求書に基づいて算定されており,代理店の支出のほとんどを占めるFA職への給与額は被告により固定されていてBの判断で増減させることはできなかったから,Bの報酬額は被告の一存によって定められ,Bにこれを決定する裁量がなかったなどと主張し,Bの報酬には労務対償性があると主張する。しかし,代理店契約上,被告は代理店に対して契約獲得本数に応じた手数料を支払うものとされ,その算定方法も定められている(前記認定事実(1)ア(イ))ところ,本件の全証拠を精査してみても,被告がこうした定めに反して報酬を算定したことをうかがわせる証拠はない。また,Bの報酬額は,売上額から従業員に対する給与等を控除した残額となる(前記認定事実(4)イ)ところ,FA職に対する給与額はBが定めていた(前記認定事実(5)ウ)と認められるから,Bが自らの報酬額を定めることについて裁量の余地がなかったということはできない。なお,Bの報酬の支給に当たって必要であった代理店請求書を被告が作成していた(前記認定事実(4)イ)ことは,代理店契約で定められた手数料規定に基づいて算定された結果を記載していたにすぎないし,被告がBの業績にかかわらず一定額を支給するような調整を行ったとか,不当な報酬の減額を行ったなどの事実を認めるに足りる証拠はないことに照らすと,上記の認定を左右するものではない。
エ 原告らは,Bが事務所を構える際には被告の許可が必要であったこと,被告に対して支払う家賃の額は30万円と固定されていたことをもってBが独自の事務所を構えていたとは到底いえない旨主張する。
しかし,本件全証拠によっても,Bの事務所の開設に際して被告の許可が必要であったことは認め難いし,Bが賃借していた建物につき被告が賃貸人に支払っていた賃料等の額(前記認定事実(4)ア)に照らすと,Bが被告に支払った額が月額30万円であることが不相当とはいえないから,Bが独自の事務所を構えていたものでないと評価することはできない。
オ 原告らは,Bが本件合同会社を設立したことにつき,Bが法人を設立したのは被告からの指示であり,Dを業務執行役員に就任させたのも設立資金を出資してもらったことの見返りにすぎないことを指摘し,また,Bが確定申告や納税を行っていることにつき,被告からの指示によるものであり,確定申告の記載内容が被告による確認が行われていたことなどを指摘し,Bには独立した事業者性がないと主張する。
しかし,本件合同会社の設立後も被告は本件合同会社と業務委託契約の締結をし直すことなく,Bとの間で業務委託契約を更新し続けている(前記前提事実(2))ことからすると,その設立を被告が指示したとみることは困難である。また,確定申告及びこれに基づく納税は代理店契約上の義務であるだけでなく事業者の法的義務であるから,これを被告が代理店主に対して指示していたとしても,そのことをBの事業者性の判断に影響を及ぼす事情とみるのは相当でない。
カ 原告らは,①個人として被告と業務委託契約たる代理店契約を締結しているBと,同じく被告と業務委託契約を締結していた支社長について,これらの法的な地位を別異に解する理由はないところ,被告は支社長を自社の下部組織として扱っており,Bも同様であること,②被告が平成23年6月に支部制を導入したことにより,Bを含む代理店主が被告の組織の一員として組み込まれることになり,対外的にもそのように表示していたこと(その詳細は,別紙7のとおりである。),③被告が業務委託を締結している者に対しても「支社」,「支部」という企業の内部組織を意味する肩書をつけて対外的に表示していただけでなく,経済産業大臣に対して提出した財産及び収支に関する報告書(甲150)においても,業務委託を締結しているにすぎない者やその従業員を「臨時社員」に含めて報告していること,④支部制の導入により,被告は代理店主から預託を受けた保証金を返還せず,次の支部長に引き継ぐことで継続的な支部経営の原資として用いるようになったことその他の事情を指摘して,c代理店(札幌手稲支部)は被告の下部組織に組み込まれたこと,Bが被告との間で雇用関係があることを認識して対外的に表示したものと評価すべきことを各主張する。
しかし,前記で説示したとおり,商人の使用人に該当するか否かは,実質的に見て指揮命令関係にあるなどの事情から被告に使用されて労務を提供しているとみられるか否かによって判断すべきであり,被告が対外的に被告の内部組織として表示したか否か,代理店が被告の内部組織であるという認識を被告が有していたか否か,Bがいかなる認識を有し,表示をしていたかは,被告のBに対する指揮命令の有無及び程度に影響する事情ではない。また,Bと被告との間では,Bが預託した保証金に関する返還の規定はあり(前記認定事実(1)イ),c代理店の閉鎖に伴って保証金の返還がされていないのは保証金返還請求権が税務署により差し押さえられたためである(甲239〔164〕)ことからすれば,支部制の導入により,前の代理店主から預託を受けた保証金は次の支部長に引き継がれることになった旨の原告らの上記主張はその前提を欠いている。
3  争点(1)イ(原告らと被告との間で黙示の労働契約が成立していたか)について
(1)  原告らは,仮にBが被告の商業使用人といえず,これにより原告ら各自とBとの間の労働契約の効果が被告に帰属しないとしても,被告との間で黙示の労働契約が成立したと主張する。
(2)ア  そこで検討するに,まず,原告らの採用過程をみると,原告X2は,Bが面接した上で自ら採用を決定したものであり(前記認定事実(5)ア),被告はその採用に関与していない。原告X1も,Bが面接した上で採用を決定したものであり(前記認定事実(5)ア),被告がその採用に関与したことをうかがわせる証拠は見当たらない。
イ  次に,原告らに対する業務についての指揮命令の態様をみると,原告らは,FA職として,顧客からの契約獲得に向けた営業活動や契約獲得後の業務,葬儀の施行及びこれに関連する業務に主に従事していたものである(前記認定事実(5)エからカまで)。これらの業務については,支社長が,Bに対して,獲得目標,FAの職務の状況の把握,講習の実施等についての指示指導を行い,これを受けてBが原告らに対する指示を行っていたものであり(前記認定事実(2)エ),この点につき原告らが被告の社員や支社長らから直接指示を受けたものとみることはできない。葬儀に関連する業務については,葬儀場の館長から作業について具体的な指示があり(前記認定事実(5)カ),これを被告の関係者からの直接の指示とみる余地がある一方で,「FAルール」については代理店長やFA職の代表者による申合せであり(前記認定事実(5)カ),また,「3・6ルール」は被告の葬儀場において葬儀の施行に従事するFA職の一般的な準則を定めたものであるにすぎず,個々の葬儀の施行における被告の直接の指示を裏付けるものであるとは認めがたい。また,被告は,FA職に対し,制服の着用を義務付けており,互助会入会書の記載方法を指示し,携帯電話の常時携行を求めていたものである(前記認定事実(5)カ,キ)が,制服の着用や互助会の入会書の記載方法については,業務における一般的な準則であるにすぎないし,携帯電話をFA職に貸与していたとしても,被告が携帯電話で原告らの勤務時間や勤務場所について直接指示をしたことをうかがわせる証拠はない。
これらの事実に照らすと,原告らは,葬儀施行の際に被告の関係者から個別具体的な指示を受けることや,業務遂行に関する一般的な準則に基づいて業務に従事するよう被告から指示を受けることはあったものの,大半の業務に関しては,Bの指示のもとでこれに従事していたと認められる。
この点に関し,前記認定事実(7)によれば,F支社長がc代理店に所属するFA職に対して被告の方針を直接伝達したことがあると認められるが,その際,原告X2が被告の従業員ではない自分たちに支社長らが何の権利に基づいて指示をするのか疑問を呈したことに照らすと,こうした直接の伝達が恒常的に行われていたとみることはできない。
ウ  人事管理の態様についてみると,Bが原告らのタイムカード,契約獲得数等を記載した文書等を被告に対して提出し,被告がFA職の成績を把握していたということができる(前記認定事実(2)ウ)が,原告らの労働時間や成績を管理し,何らかの具体的な指示を発したことをうかがわせる証拠はない。また,F支社長らが,成績の良くないFA職について葬儀の施行を担当させない(前記認定事実(2)オ)こと,休職期間の長い者を退職させるべきことなどの方針をBに伝達していた(前記認定事実(3)イ)ことは認められるものの,原告らを含むFA職に対して直接の業務指示を行ったり,人事権を行使したことをうかがわせる証拠はなく,むしろ,Bは,c代理店における成績の良くないFA職を葬儀施行から外して営業活動を行わせるべきであるとのF支社長の指導に従わなかったのである(前記認定事実(7))。
エ  原告らに対する基本給及び歩合給の算定方法等の賃金は,Bが定め,c代理店の売上から拠出されていた(前記認定事実(5)ウ)ものであり,これを被告が原告ら各自の指定する銀行口座に振り込んでいたものである。また,原告らの社会保険料の納付や所得税の源泉徴収及び納付は,いずれもBが代表社員である本件合同会社において行っていた(前記認定事実(4)ウ)。
(3)  以上の事実を総合考慮すると,原告らの勤務時間,勤務場所及び勤務の具体的態様についての指揮命令は,葬儀場における一般的準則や葬儀施行の際の個別具体的な指示を除けば,ほぼBが行っており,原告らは,これに基づいてFA職の労務を提供していたとみるべきである。そして,その賃金の計算方法はBが定めており,社会保険料等の納付,所得税の源泉徴収といった労働者を使用する事業者が行うべき義務をBないし本件合同会社が履行していたのである。そうとすれば,被告が,原告らに対し,労務に関する指揮命令を行い,その対価として報酬を支払ったとみることはできないから,原告らと被告との間で黙示の労働契約が成立したということはできない。
(4)  これに対し,原告らは,後記のとおり主張するが,それぞれについて説示するとおり,いずれも採用することができない。
ア 原告らは,①FA職の求人募集広告や不採用通知が一般的に被告名義で行われていること,②パート従業員採用の際に被告が統一させた就業規則と短期雇用契約書に基づいていたこと,③書式が統一された誓約書を徴収していたことを主張する。しかし,原告ら各自は,Bとの間でc代理店を相手方とする労働契約書を作成しており(前記認定事実(5)イ),FA職として勤務する際の労働契約に係る意思表示は,Bに対して行ったとみざるを得ない。また,上記①及び③の各事実はいずれも労働契約締結前の名義や文書の体裁をいうものであり,そのことから被告による指揮命令があったとみるべきものでないし,上記②の事実はパート従業員についてのものであり,原告らの労務とは無関係であるから,原告らと被告との間の雇用関係を推認させるものではない。
イ 原告らは,被告が,①c代理店における雇用条件,研修に関する事項等を定めていたこと,②Bを介してFA職の担当事務,葬儀の施行等について指示指導をしていたことから,被告がFA職らに対して直接の指揮命令があったと主張する。
しかし,上記①については,被告がc代理店の従業員の労働条件を定めたとの事実が認められないことはこれまで説示したとおりである。上記②については,原告らとBとの間で明示の労働契約が締結されている(前記前提事実(3),前記認定事実(5)イ)ところ,具体的な業務指示等が被告からではなくBからされていることは,原告らと被告との間で黙示の労働契約が成立したとみるべき事情として否定的に評価せざるを得ない。なお,FA職に対する具体的な労務遂行方法の指揮命令についてはBに一定程度の裁量があったと認められることは既に説示したとおりであるから,被告の従業員や支社長がBに対してFA職の業務につき一定の指示をしていたとしても,これをもって被告から原告らに対する直接の指揮命令があったものと評価し得るものではない。
ウ 原告らは,被告がFA職に対し,支部間の異動や降格,懲戒等の人事権を行使し,成績不良のFA職を葬儀施行から外させるなどして,FA職の直接の労務管理を行っていたと主張する。
しかし,本件全証拠によっても,被告が原告らに対して直接の人事権を行使していたものとは認められないし,原告らは,営業目標を達成していないにもかかわらずそのことを原因に葬儀施行を外されたことはない(前記認定事実(7))のであるから,被告が原告らに対し,直接の労務管理を行っていたと認めることはできない。なお,原告らは,他支部のFA職に対し被告が直接の労務管理を行っていたとも主張するが,本件全証拠を検討してみても,被告が,他支部のFA職に対して直接の労務管理を行ったと認めることはできず,また,被告と原告ら以外のFA職との関係は,原告らと被告との間の雇用契約の成否に影響を及ぼすものでないから,原告らの上記主張は採用することができかい。
エ 原告らは,その他縷々主張するが,いずれも原告ら各自と被告との間に黙示の労働契約が成立したことを基礎づける事情であるということはできない。
4  争点(1)ウ(Bが代理商であると被告が主張することが信義則違反ないし権利濫用といえるか)について
(1)  原告らは,Bが代理商であるとしても,被告はB等の代理店主に代理商としての独立性を与えず,意のままに支配管理できる地位にあり,原告らの労働組合の結成を阻止ないし解散させる不当労働行為意思の下に上記地位を利用してBとの代理店契約を解約し,原告らとの労働契約をCに承継させなかったから,本件においてBが代理商であることを主張することは信義則違反ないし権利濫用であり,原告らに対する雇用責任を免れることはできないと主張する。
(2)  しかし,これまで説示したところに照らせば,被告が代理店主を意のままに支配し管理することができる地位にあったと認めることはできない。
また,Bに対して支部長の地位を離れて後任を探すように求めたのは,c代理店の経営状態が悪化していたことを理由としているものである(前記認定事実(8))から,原告らの組合活動に対して不利益な取扱いをすることを目的としていたものとは認められない。この点につき,後掲の証拠によれば,E部長において,平成27年1月9日頃,原告らによる組合活動を把握し,その頃から,組合を作るのは良いが,誰も得しない(甲94〔14〕),代理店を続けていくには,組合をつぶす趣旨ではないがその結成の動きに対応しないとならない(同〔15〕),原告X1に支部長をさせるのであれば組合活動をさておき会社と協力することが必要である(同〔18〕),いったん倒産させて,会社から人を送り込んで,面談してあなたは雇います雇いませんとやったら簡単なことだ(同〔19〕)という趣旨の発言をしたことが認められる。しかし,c代理店は,平成26年10月以降3か月連続で赤字状態が継続しており(前記認定事実(8)ア),E部長が原告らによる組合活動を把握する前からF支社長によってBとの代理店契約の解約が打診されていたこと(前記認定事実(8)イ)を踏まえると,こうした発言があることを論拠として,Bとの代理店契約解約の目的が労働組合の結成を阻止ないし解散することにあると推認することはできない。
(3)  以上のほか,他に被告においてBが独立した人格を有する代理商であることを主張することが信義則違反ないし権利濫用であることをうかがわせる事情はない。
第4  結論
以上によれば,原告らと被告との間において労働契約が成立し,又はその効果が被告に帰属するとはいえないから,その余の争点について判断するまでもなく,原告らの請求はいずれも理由がない。
よって,原告らの請求をいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。
札幌地方裁判所民事第5部
(裁判長裁判官 岡山忠広 裁判官 萩原孝基 裁判官 牧野一成)

 

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