【営業代行から学ぶ判例】crps 裁判例 lgbt 裁判例 nda 裁判例 nhk 裁判例 nhk 受信料 裁判例 pl法 裁判例 pta 裁判例 ptsd 裁判例 アメリカ 裁判例 検索 オーバーローン 財産分与 裁判例 クレーマー 裁判例 クレプトマニア 裁判例 サブリース 裁判例 ストーカー 裁判例 セクシャルハラスメント 裁判例 せクハラ 裁判例 タイムカード 裁判例 タイムスタンプ 裁判例 ドライブレコーダー 裁判例 ノンオペレーションチャージ 裁判例 ハーグ条約 裁判例 バイトテロ 裁判例 パタハラ 裁判例 パブリシティ権 裁判例 ハラスメント 裁判例 パワーハラスメント 裁判例 パワハラ 裁判例 ファクタリング 裁判例 プライバシー 裁判例 プライバシーの侵害 裁判例 プライバシー権 裁判例 ブラックバイト 裁判例 ベネッセ 裁判例 ベルシステム24 裁判例 マタニティハラスメント 裁判例 マタハラ 裁判例 マンション 騒音 裁判例 メンタルヘルス 裁判例 モラハラ 裁判例 モラルハラスメント 裁判例 リストラ 裁判例 リツイート 名誉毀損 裁判例 リフォーム 裁判例 遺言 解釈 裁判例 遺言 裁判例 遺言書 裁判例 遺言能力 裁判例 引き抜き 裁判例 営業秘密 裁判例 応召義務 裁判例 応用美術 裁判例 横浜地裁 裁判例 過失割合 裁判例 過労死 裁判例 介護事故 裁判例 会社法 裁判例 解雇 裁判例 外国人労働者 裁判例 学校 裁判例 学校教育法施行規則第48条 裁判例 学校事故 裁判例 環境権 裁判例 管理監督者 裁判例 器物損壊 裁判例 基本的人権 裁判例 寄与分 裁判例 偽装請負 裁判例 逆パワハラ 裁判例 休業損害 裁判例 休憩時間 裁判例 競業避止義務 裁判例 教育を受ける権利 裁判例 脅迫 裁判例 業務上横領 裁判例 近隣トラブル 裁判例 契約締結上の過失 裁判例 原状回復 裁判例 固定残業代 裁判例 雇い止め 裁判例 雇止め 裁判例 交通事故 過失割合 裁判例 交通事故 裁判例 交通事故 裁判例 検索 公共の福祉 裁判例 公序良俗違反 裁判例 公図 裁判例 厚生労働省 パワハラ 裁判例 行政訴訟 裁判例 行政法 裁判例 降格 裁判例 合併 裁判例 婚約破棄 裁判例 裁判員制度 裁判例 裁判所 知的財産 裁判例 裁判例 データ 裁判例 データベース 裁判例 データベース 無料 裁判例 とは 裁判例 とは 判例 裁判例 ニュース 裁判例 レポート 裁判例 安全配慮義務 裁判例 意味 裁判例 引用 裁判例 引用の仕方 裁判例 引用方法 裁判例 英語 裁判例 英語で 裁判例 英訳 裁判例 閲覧 裁判例 学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例 共有物分割 裁判例 刑事事件 裁判例 刑法 裁判例 憲法 裁判例 検査 裁判例 検索 裁判例 検索方法 裁判例 公開 裁判例 公知の事実 裁判例 広島 裁判例 国際私法 裁判例 最高裁 裁判例 最高裁判所 裁判例 最新 裁判例 裁判所 裁判例 雑誌 裁判例 事件番号 裁判例 射程 裁判例 書き方 裁判例 書籍 裁判例 商標 裁判例 消費税 裁判例 証拠説明書 裁判例 証拠提出 裁判例 情報 裁判例 全文 裁判例 速報 裁判例 探し方 裁判例 知財 裁判例 調べ方 裁判例 調査 裁判例 定義 裁判例 東京地裁 裁判例 同一労働同一賃金 裁判例 特許 裁判例 読み方 裁判例 入手方法 裁判例 判決 違い 裁判例 判決文 裁判例 判例 裁判例 判例 違い 裁判例 百選 裁判例 表記 裁判例 別紙 裁判例 本 裁判例 面白い 裁判例 労働 裁判例・学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例・審判例からみた 特別受益・寄与分 裁判例からみる消費税法 裁判例とは 裁量労働制 裁判例 財産分与 裁判例 産業医 裁判例 残業代未払い 裁判例 試用期間 解雇 裁判例 持ち帰り残業 裁判例 自己決定権 裁判例 自転車事故 裁判例 自由権 裁判例 手待ち時間 裁判例 受動喫煙 裁判例 重過失 裁判例 商法512条 裁判例 証拠説明書 記載例 裁判例 証拠説明書 裁判例 引用 情報公開 裁判例 職員会議 裁判例 振り込め詐欺 裁判例 身元保証 裁判例 人権侵害 裁判例 人種差別撤廃条約 裁判例 整理解雇 裁判例 生活保護 裁判例 生存権 裁判例 生命保険 裁判例 盛岡地裁 裁判例 製造物責任 裁判例 製造物責任法 裁判例 請負 裁判例 税務大学校 裁判例 接見交通権 裁判例 先使用権 裁判例 租税 裁判例 租税法 裁判例 相続 裁判例 相続税 裁判例 相続放棄 裁判例 騒音 裁判例 尊厳死 裁判例 損害賠償請求 裁判例 体罰 裁判例 退職勧奨 違法 裁判例 退職勧奨 裁判例 退職強要 裁判例 退職金 裁判例 大阪高裁 裁判例 大阪地裁 裁判例 大阪地方裁判所 裁判例 大麻 裁判例 第一法規 裁判例 男女差別 裁判例 男女差别 裁判例 知財高裁 裁判例 知的財産 裁判例 知的財産権 裁判例 中絶 慰謝料 裁判例 著作権 裁判例 長時間労働 裁判例 追突 裁判例 通勤災害 裁判例 通信の秘密 裁判例 貞操権 慰謝料 裁判例 転勤 裁判例 転籍 裁判例 電子契約 裁判例 電子署名 裁判例 同性婚 裁判例 独占禁止法 裁判例 内縁 裁判例 内定取り消し 裁判例 内定取消 裁判例 内部統制システム 裁判例 二次創作 裁判例 日本郵便 裁判例 熱中症 裁判例 能力不足 解雇 裁判例 脳死 裁判例 脳脊髄液減少症 裁判例 派遣 裁判例 判決 裁判例 違い 判決 判例 裁判例 判例 と 裁判例 判例 裁判例 とは 判例 裁判例 違い 秘密保持契約 裁判例 秘密録音 裁判例 非接触事故 裁判例 美容整形 裁判例 表現の自由 裁判例 表明保証 裁判例 評価損 裁判例 不正競争防止法 営業秘密 裁判例 不正競争防止法 裁判例 不貞 慰謝料 裁判例 不貞行為 慰謝料 裁判例 不貞行為 裁判例 不当解雇 裁判例 不動産 裁判例 浮気 慰謝料 裁判例 副業 裁判例 副業禁止 裁判例 分掌変更 裁判例 文書提出命令 裁判例 平和的生存権 裁判例 別居期間 裁判例 変形労働時間制 裁判例 弁護士会照会 裁判例 法の下の平等 裁判例 法人格否認の法理 裁判例 法務省 裁判例 忘れられる権利 裁判例 枕営業 裁判例 未払い残業代 裁判例 民事事件 裁判例 民事信託 裁判例 民事訴訟 裁判例 民泊 裁判例 民法 裁判例 無期転換 裁判例 無断欠勤 解雇 裁判例 名ばかり管理職 裁判例 名義株 裁判例 名古屋高裁 裁判例 名誉棄損 裁判例 名誉毀損 裁判例 免責不許可 裁判例 面会交流 裁判例 約款 裁判例 有給休暇 裁判例 有責配偶者 裁判例 予防接種 裁判例 離婚 裁判例 立ち退き料 裁判例 立退料 裁判例 類推解釈 裁判例 類推解釈の禁止 裁判例 礼金 裁判例 労災 裁判例 労災事故 裁判例 労働基準法 裁判例 労働基準法違反 裁判例 労働契約法20条 裁判例 労働裁判 裁判例 労働時間 裁判例 労働者性 裁判例 労働法 裁判例 和解 裁判例

「営業代行」に関する裁判例(38)平成12年 6月30日 東京地裁 平8(ワ)9569号 損害賠償等請求事件

「営業代行」に関する裁判例(38)平成12年 6月30日 東京地裁 平8(ワ)9569号 損害賠償等請求事件

要旨
◆経営コンサルティング業務に関するフランチャイズ契約の勧誘行為が、提供役務の実体とかけ離れたものを内容とするもので、不法行為を構成するとして、フランチャイズを展開した会社、その取締役及び担当者の損害賠償責任が認められた事例

出典
新日本法規提供

参照条文
民法709条
民法715条

裁判年月日  平成12年 6月30日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平8(ワ)9569号・平6(ワ)16421号・平7(ワ)14413号・平7(ワ)2346号
事件名  損害賠償等請求事件
裁判結果  一部認容  文献番号  2000WLJPCA06300007

当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり

 

主  文

一  被告株式会社日本エル・シー・エー、被告小林忠嗣、被告小林敬嗣、被告吉村一哉及び被告並木昭憲は、原告滝清志に対し、連帯して五八九万円及びこれに対する平成六年二月二八日から完済まで年五分の割合による金銭を支払え。
二  被告株式会社日本エル・シー・エー、被告小林忠嗣及び被告小林敬嗣は、原告有限会社日本コンサルティングセンターに対し、連帯して六一四万六二六〇円及びこれに対する平成五年三月三一日から完済まで年五分の割合による金銭を支払え。
三  被告株式会社日本エル・シー・エー、被告小林忠嗣、被告小林敬嗣及び被告大島洋之は、原告佐藤雄三に対し、連帯して六一七万四九九七円及びこれに対する平成六年七月三一日から完済まで年五分の割合による金銭を支払え。
四  被告株式会社日本エル・シー・エー、被告小林忠嗣及び被告小林敬嗣は、原告株式会社エスケービジネスプランに対し、連帯して六〇三万八一一〇円及びこれに対する平成六年三月三一日から完済まで年五分の割合による金銭を支払え。
五  被告株式会社日本エル・シー・エー、被告小林忠嗣及び被告小林敬嗣は、原告久保和巳に対し、連帯して六一四万六二六〇円及びこれに対する平成六年四月二五日から完済まで年五分の割合による金銭を支払え。
六  被告株式会社日本エル・シー・エー、被告小林忠嗣、被告小林敬嗣及び被告並木昭憲は、原告佐々木隆行に対し、連帯して六一四万六二六〇円及びこれに対する平成六年一〇月二〇日から完済まで年五分の割合による金銭を支払え。
七  被告株式会社日本エル・シー・エー、被告小林忠嗣、被告小林敬嗣、被告吉村一哉及び被告並木昭憲は、原告直林直行に対し、連帯して六一四万六二六〇円及びこれに対する平成五年一月二九日から完済まで年五分の割合による金銭を支払え。
八  反訴被告佐々木隆行は、反訴原告株式会社日本エル・シー・エーに対し、八三一万二七四三円及びこれに対する平成七年六月二八日から完済まで年六分の割合による金銭を支払え。
九  原告滝清志、原告有限会社日本コンサルティングセンター、原告佐藤雄三、原告株式会社エスケービジネスプラン、原告久保和巳、原告佐々木隆行、原告直林直行のその余の請求をいずれも棄却する。
一〇  原告株式会社アテイン及び原告有限会社システム・コミュニケーションの請求をいずれも棄却する。
一一  訴訟費用は、
1  原告滝清志と被告株式会社日本エル・シー・エー、被告小林忠嗣、被告小林敬嗣、被告吉村一哉及び被告並木昭憲との間において生じた分については、これを二分し、その一を原告滝清志の負担とし、その余は被告らの連帯負担とし、原告滝清志と被告尾崎三昌及び被告坂本充との間において生じた分については、全部滝清志の負担とし、
2  原告株式会社アテインと被告株式会社日本エル・シー・エー、被告小林忠嗣、被告小林敬嗣、被告尾崎三昌、被告坂本充、被告吉村一哉及び被告並木昭憲との間において生じた分については、全部原告株式会社アテインの負担とし、
3  原告有限会社日本コンサルティングセンターと被告株式会社日本エル・シー・エー、被告小林忠嗣及び被告小林敬嗣との間において生じた分については、これを五分し、その三を原告有限会社日本コンサルティングセンターの負担とし、その余は被告らの連帯負担とし、原告有限会社日本コンサルティングセンターと被告尾崎三昌、被告坂本充、被告吉村一哉、被告斉藤守及び被告瀬野幸洋との間において生じた分については、全部原告有限会社日本コンサルティングセンターの負担とし、
4  原告佐藤雄三と被告株式会社日本エル・シー・エー、被告小林忠嗣、被告小林敬嗣及び被告大島洋之との間において生じた分については、これを三分し、その二を原告佐藤雄三の負担とし、その余を被告らの連帯負担とし、原告佐藤雄三と被告尾崎三昌、被告坂本充、被告吉村一哉、被告山本正人及び被告斉藤守との間において生じた分については、全部原告佐藤雄三の負担とし、
5  原告株式会社エスケービジネスプランと被告株式会社日本エル・シー・エー、被告小林忠嗣及び被告小林敬嗣との間において生じた分については、これを五分し、その三を原告株式会社エスケービジネスプランの負担とし、その余は被告らの連帯負担とし、原告株式会社エスケービジネスプランと被告尾崎三昌、被告坂本充、被告吉村一哉及び被告山本正人との間において生じた分については、全部原告株式会社エスケービジネスプランの負担とし、
6  原告久保和巳と被告株式会社日本エル・シー・エー、被告小林忠嗣及び被告小林敬嗣との間において生じた分については、これを五分し、その三を原告の負担とし、その余は被告らの連帯負担とし、原告久保和巳と被告尾崎三昌、被告坂本充、被告吉村一哉、被告山本正人及び大島洋之との間において生じた分については、全部原告久保和巳の負担とし、
7  原告佐々木隆行と被告株式会社日本エル・シー・エー、被告小林忠嗣、被告小林敬嗣及び被告並木昭憲との間において生じた分については、これを二分し、その一を原告佐々木隆行の負担とし、その余は被告らの連帯負担とし、
8  反訴原告株式会社日本エル・シー・エーと反訴被告佐々木隆行との間において生じた分については、全部反訴被告佐々木隆行の負担とし、
9  原告直林直行と被告株式会社日本エル・シー・エー、被告小林忠嗣、被告小林敬嗣、被告吉村一哉及び被告並木昭憲との間において生じた分については、これを二分し、その一を原告直林直行の負担とし、その余は被告らの連帯負担とし、
10  原告有限会社システム・コミュニケーションと被告株式会社日本エル・シー・エー、被告小林忠嗣、被告小林敬嗣、被告吉村一哉及び被告並木昭憲との間において生じた分については、全部原告有限会社システム・コミュニケーションの負担とする。
一二  この判決は、第九項及び第一〇項を除き、仮に執行することができる。

 

事実及び理由

(以下、当事者は、特に断らない限り、第一ないし第三事件の各原告については、姓または会社の種類を除いた商号に単に「原告」を付して、第一ないし第三事件の被告株式会社日本エル・シー・エーを除く各被告については、姓〈ただし、被告小林忠嗣及び小林敬嗣は姓名〉に単に「被告」を付してそれぞれ表記し、被告株式会社日本エル・シー・エーは、「被告LCA」と表記する。)
第一  当事者の求めた裁判
(第一事件)
一  原告ら
1 被告LCA、被告小林忠嗣、被告小林敬嗣、被告尾崎、被告坂本、被告吉村及び被告並木は、原告滝に対し、各自一二二八万六〇〇〇円及びこれに対する平成六年二月二八日から完済まで年五分の割合による金銭を支払え。
2 被告LCA、被告小林忠嗣、被告小林敬嗣、被告尾崎、被告坂本、被告吉村及び被告並木は、原告アテインに対し、各自四九〇万六六九九円及びこれに対する平成五年四月六日から完済まで年五分の割合による金銭を支払え。
3 被告LCA、被告小林忠嗣、被告小林敬嗣、被告尾崎、被告坂本、被告吉村、被告斉藤及び被告瀬野は、原告日本コンサルティングセンターに対し、各自一五三七万五一一九円及びこれに対する平成五年三月三一日から完済まで年五分の割合による金銭を支払え。
4 被告LCA、被告小林忠嗣、被告小林敬嗣、被告尾崎、被告坂本、被告吉村、被告山本、被告大島及び被告斉藤は、原告佐藤に対し、各自一八五〇万三三八三円及びこれに対する平成六年七月三一日から完済まで年五分の割合による金銭を支払え。
5 被告LCA、被告小林忠嗣、被告小林敬嗣、被告尾崎、被告坂本、被告吉村及び被告山本は、原告エスケービジネスプランに対し、各自一四五八万九三五一円及びこれに対する平成六年三月三一日から完済まで年五分の割合による金銭を支払え。
6 被告LCA、被告小林忠嗣、被告小林敬嗣、被告尾崎、被告坂本、被告吉村、被告山本及び被告大島は、原告久保に対し、各自一四〇六万四七〇〇円及びこれに対する平成六年四月二五日から完済まで年五分の割合による金銭を支払え。
7 訴訟費用は、被告らの負担とする。
8 仮執行宣言
二  被告ら
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
(第二事件)
一  原告佐々木
1 被告LCA、被告小林忠嗣、被告小林敬嗣及び被告並木は、原告佐々木に対し、各自一一四七万六〇七〇円及びこれに対する平成六年一〇月二〇日から完済まで年五分の割合による金銭を支払え。
2 訴訟費用は被告らの負担とする。
3 仮執行宣言
二  被告ら
1 原告佐々木の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告佐々木の負担とする。
(第三事件)
一  原告ら
1 被告LCA、被告小林忠嗣、被告小林敬嗣、被告吉村及び被告並木は、原告直林に対し、各自一〇九〇万二四二〇円及びこれに対する平成五年一月二九日から完済まで年五分の割合による金銭を支払え。
2 被告LCA、被告小林忠嗣、被告小林敬嗣、被告吉村及び被告並木は、原告システム・コミュニケーションに対し、各自一一八万八三〇八円及びこれに対する平成五年一月二九日から完済まで年五分の割合による金銭を支払え。
3 訴訟費用は被告らの負担とする。
4 仮執行宣言
二  被告ら
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
(第四事件)
一  反訴原告
1 主文八項と同旨
2 訴訟費用は反訴被告の負担とする。
二  反訴被告
1 反訴原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は反訴原告の負担とする。
第二  事案の概要
第一事件ないし第三事件は、被告LCAと経営コンサルティング業務のフランチャイズ契約を締結した原告らが、被告LCAが勧誘時に行った説明内容は提供された役務ないしサービスの実態と著しく異なるものであって、被告LCAによる勧誘行為は、詐欺によるものであり、そうでないとしても契約締結交渉に際して相手方に誤解を与えないようにすべき信義則上の注意義務に違反したものとして不法行為を構成するなどとして、被告LCAやその取締役及び勧誘担当者に対し、契約後の被告LCAに対する支払額相当の損害賠償及び慰謝料等を請求した事案である。
第四事件は、反訴被告佐々木の貸金債務を連帯保証した反訴原告LCAが、債権者に代位弁済したとして、求償金の請求をした事案である。
一  基礎となる事実
(証拠により認定した場合は、認定に供した証拠を括弧内に掲記する)
1  当事者
(一) 原告らは、被告LCAと経営コンサルティング業務のフランチャイズ契約を締結した個人又は会社あるいは右契約後設立された会社である。
(二) 被告LCAは、経営コンサルティングを業務の一つとし、そのフランチャイズ制度を展開している会社である。
被告小林忠嗣は、平成五年八月一九日まで被告LCAの代表取締役であった者、被告小林敬嗣は、その後も被告LCAの代表取締役であった者である。
被告尾崎は、平成六年五月二〇日まで被告LCAの取締役(東日本事業部長)であった者、被告坂本は、被告尾崎の後任として取締役(東日本FC運営本部長)となった者であり、被告吉村は、平成三年八月八日、被告LCAの取締役(FC推進部部長)となった者である。
被告山本、同大島、同斉藤、同並木及び同瀬野は、被告LCAの従業員であり、原告らに対し、被告LCAとのフランチャイズ契約締結を勧誘した者である。
2  被告LCAが行うフランチャイズシステムの概要
被告LCAは、昭和三九年七月にその前身が設立されて以来、経営コンサルティングを主要な業務としてきたが、昭和六一年一一月から、LCAグループ・フランチャイズ制度(以下「本件フランチャイズシステム」という)を開始した。本件フランチャイズシステムは、被告LCAとフランチャイズ契約を締結した者に対し、経営コンサルティング業務に関するノウハウ等を提供する一方で、契約者が経営コンサルティング事業者として独立開業し、被告LCAのいわゆるフランチャイジーとして、コンサルティング業務を行うというものである。
本件フランチャイズシステムは、当初、公認会計士や税理士の資格を保有し、既に独立開業している者が主な契約対象者であった〔並木証言〕が、平成元年ころからは、中小企業診断士・社会保険労務士などの資格保有者や資格を保有していないが既に経営コンサルティング事業を独立して行っている者、あるいは、資格も事業経験もないがコンサルティング業務の開業を目指している者にまで契約対象者を広げていった。
3  原告らと被告LCAとのフランチャイズ契約
原告らは、被告LCAとの間で、以下の日に、被告LCAの保有するコンサルティングに関する経営システムならびにコンサルティングノウハウを用いて、被告LCAの指導の下に、コンサルティング業務を行う会社を経営するための契約(以下「本件各フランチャイズ契約」という)をそれぞれ締結した。
原告滝 平成元年二月二四日
(後に原告アテイン設立) (契約書の日付は三月三一日)
〔甲A四号証、乙一号証〕
原告日本コンサルティングセンター 平成二年一〇月一八日
原告佐藤 平成三年四月二二日
(契約書の日付は四月二〇日)
〔甲C六号証、乙三号証〕
島田謙司(以下「島田」という) 平成二年四月五日
(後に原告エスケービジネスプラン設立)
原告久保 平成二年一一月九日
原告佐々木 平成四年一一月上旬
(契約書上は一〇月二〇日)
〔甲F五号証、乙一一号証〕
原告直林 平成二年二月一五日
(後に原告システム・コミュニケーション設立)
4  本件各フランチャイズ契約の概要
本件各フランチャイズ契約は、契約者が、被告LCAの保有するコンサルティング経営システムならびにコンサルティングノウハウを用いて、被告LCAの指導の下に、コンサルティング会社を経営するために締結するという内容のものであり、契約書〔乙一ないし五、一一及び二五号証〕には、次のような規定がある(なお、契約書の内容には、契約締結の時期により若干の違いがあるため、原告滝が契約者となっているものを契約書A、島田及び原告直林が契約者となっているものを契約書B、原告日本コンサルティングセンター、原告佐藤及び原告久保が契約者となっているものを契約書C、原告佐々木が契約者となっているものを契約書Dという。)。
〈1〉(CI)
甲(契約者)は、本契約期間中、ロゴマーク・パンフ・名刺・看板等、営業活動上必要な一切のものについて、乙(被告LCA)が指定するCIツールを使用しなければならない。
〈2〉(会社設立)
甲(契約者)は、本契約締結日より起算して3箇月以内に、MAS事業を推進する別会社(MAS会社)〈契約書D-コンサルティング事業を推進する甲(契約者)が代表者となる別会社〉を設立し、MAS事業に〈契約書D-コンサルティング事業に〉着手しなければならない。但し、甲(契約者)自身がMAS会社である場合〈契約書D-コンサルティングを事業目的としている、あるいは目的とできる会社である場合〉、この限りではない。
〈3〉(従業員の教育および監督)
甲(契約者)は、MAS会社〈契約書D-甲〉の従業員について、乙(被告LCA)の指導の下に、十分な指導及び監督を心掛ける。
乙(被告LCA)は、甲(契約者)のMAS会社で就業する従業員に、必要な教育及び訓練を行わなければならない。
〈4〉(営業の指導)
乙(被告LCA)が、甲(契約者)のMAS会社の営業活動について、指示または指導したときは、原則として甲(契約者)はその指示または指導に従わねばならない。
〈5〉(ロイヤリティ)
甲(契約者)は、本契約により乙(被告LCA)が甲(契約者)のMAS会社の収益確保に向けたサービスに対する対価として……ロイヤリティを……支払う。
〈契約書A、B〉
……ロイヤリティの金額は、ロイヤリティ対象付加価値高の10%とする。
〈契約書C、D〉
乙(被告LCA)は、甲(契約者)のロイヤリティ対象付加価値額に応じて、ロイヤリティ比率を次のように変動させる。
ロイヤリティ対象付加価値額(年間) ロイヤリティ比率
六〇〇〇万円以下の部分       一〇%
六〇〇〇万円を超える部分      五%
一億円を超える部分         二%
〈6〉(営業権の取得)
甲(契約者)は、本事業営業権を得るため、加盟金三六〇万円(とその消費税一〇・八万円の計三七〇・八万円〈契約書B、C、D〉)を支払う。
本加盟金については、甲は、その理由のいかんを問わず乙(被告LCA)に対し、その返還を要求しないものとする。
〈7〉(開業費用)
甲(契約者)は、開業費用として、乙(被告LCA)に四八〇万円(五一四万円と、その消費税一五・四二万円の計五二九・四二万円〈契約書B、C、D〉)を支払う。
乙(被告LCA)は、甲(契約者)が、開業費用として支払った四八〇万円(五一四万円〈契約書B、C、D〉)に対して以下の商品の供給と、権利の保障を行う。
商品及び権利省略
〈8〉(広告宣伝費-販売促進)
乙(被告LCA)は、甲(契約者)の営業に対する側面援助として、全国に対して広告宣伝を行わねばならない。
甲(契約者)は、乙(被告LCA)の行う広告宣伝費用の一部として、……乙(被告LCA)に対して毎月三万円を支払う。
〈9〉(契約の期間)
本契約の期間は本契約締結の日から満五年を経過した時点で、甲(契約者)および乙(被告LCA)の同意のもとに終了させることができる。
〈10〉(解約)
イ 甲(契約者)が次のaおよびbに該当するときは、乙(被告LCA)は、催告のうえ、本契約を解約することができる。
a ロイヤリティその他、乙(被告LCA)に対する債務の支払いを怠ったとき。
b その他本契約に規定する義務に甲(契約者)が違反し、乙(被告LCA)が本契約の存続を適当でないと認めたとき。
ロ 次のaおよびbに該当したときは、甲(契約者)は催告のうえ、本契約を解約することができる。
a 乙(被告LCA)が本契約に規定する義務に違反したとき。
b 契約締結後二年目に、二〇〇〇万円の受注が実現できなかったとき。〈契約書AないしC。なお、契約書Dにおいては、右のロに対応する部分は次のとおりとなっている。〉
乙(被告LCA)が本契約に規定する義務に違反したときは、甲(契約者)は、催告のうえ、本契約を解約することができる。
二  争点
本件(第一ないし第三事件)の主要な争点は、被告LCAの原告らに対する本件各フランチャイズ契約締結についての勧誘行為が詐欺によるものとして不法行為を構成するか、そうでないとしても、右各契約締結の勧誘に際し、被告LCAの勧誘員が本件フランチャイズシステムの内容等について行った説明が実際に提供された役務ないしサービスの内容と著しく異なるものであって、右の勧誘行為は、契約締結交渉に際して相手方に誤解を与えないようにすべき信義則上の注意義務に違反したものとして不法行為を構成するか、構成するとした場合、右不法行為と相当因果関係のある損害の額はいくらか、である。
三  争点に関する当事者の主張
(第一ないし第三事件)
1 原告ら全員について
(一) 原告ら
(1)  被告らの勧誘行為
被告LCAは、原告らに対し本件各フランチャイズ契約の締結を勧誘するに当たり、その取締役らや担当者らに、本件フランチャイズシステムの内容や契約締結後にフランチャイジーとして得られる収入の見通し等についての資料を作成させ、これを原告らに対し交付してもっともらしい説明をさせたのであり、原告らは、これらの資料や具体的な説明の内容を信頼して、本件各フランチャイズ契約を締結したものである。
これらの説明等の中で特に重要な事項であったのは、〈1〉被告LCAが営業拠点(フランチャイジーが顧客を獲得するきっかけとなるようなセミナーを開催する場を提供してくれる銀行等の金融機関等)を紹介すること、〈2〉被告LCAが標準化されたノウハウを提供すること、〈3〉優秀なスーパーバイザー(フランチャイジーに対する助言、指導等の支援活動を行う被告LCAの担当者)によるサポート体制が整備されていること、〈4〉本件フランチャイズシステムにフランチャイジーとして参加すること自体によるメリットの存在(コンサルティング業者として社会的に知名度の高い被告LCAのフランチャイジーとして信頼を得ることができること等)、〈5〉高額な収入が確保されること、であった。
(2)  契約締結後の実態
ところが、本件各フランチャイズ契約締結後に被告LCAがフランチャイザーとして原告らに提供した役務ないしサービスや被告LCAあるいは本件フランチャイズシステムの実態は、〈1〉営業拠点の紹介は全くされなかったか著しく不完全なものであった、〈2〉被告LCAの提供する「ノウハウ」は使いものにならなかった、〈3〉スーパーバイザーは役に立たないものであった、〈4〉LCAの名称を使用しても有効ではなく、本件フランチャイズシステムのフランチャイジーであることのメリットはなかった、〈5〉個別的に作成された提案書に示されたような収入は得られなかった、など、右資料や具体的な説明の内容と著しく齟齬するものであった(各原告についての齟齬の具体的内容は後記2以下各(一)のとおり。)。このような齟齬は、見過ごすことのできないほど重要な事項にかかるものであり、原告らは、本件フランチャイズシステムの実態に見合った内容の説明を受ければ、決して一〇〇〇万円近い高額の金銭を支払ってまでして、本件フランチャイズシステムのフランチャイジーとなろうとはしなかった。
(3)  被告らの責任原因
右(2) のような著しい齟齬を知りつつ、すなわち説明内容のような役務ないしサービスの提供等ができない本件フランチャイズシステムの実態を知りながら、あたかもそれができるかのように実態を隠し虚偽の説明を行って原告らを勧誘し、本件各フランチャイズ契約を締結させることは、詐欺による勧誘行為として不法行為を構成する。
そして、被告LCAはこの齟齬を承知の上、会社ぐるみで本件各フランチャイズ契約締結の勧誘を行っているのであるから、右勧誘行為は被告LCAの不法行為を構成する。
被告小林忠嗣及び被告小林敬嗣は、本件各フランチャイズ契約当時、いずれも被告LCAの代表取締役であった者であり、被告LCAの営業行為として右勧誘行為を行ったものであるから、代表者としての不法行為責任を負う。また、被告LCAの取締役であった被告尾崎、被告坂本及び被告吉村は、違法なフランチャイズ商法を企画・推進した者として、同様に不法行為責任を負う。
また、本件各フランチャイズ契約の勧誘担当者は、右齟齬を知りながら、原告らに対し、虚偽の事実を告げたり重要事項を告げずに原告らを勧誘していたのであるから、この勧誘行為は、勧誘担当者による詐欺として不法行為を構成し、被告LCAも、勧誘担当者の使用者としての責任を負う。
仮に、被告LCAないし担当者らの勧誘行為が詐欺に当たると認められないとしても、被告らは、原告らとの本件各フランチャイズ契約締結交渉の過程において信義誠実の原則に則って行動すべき義務を負うものであり、原告らに対し、本件各フランチャイズ契約の締結を勧誘するに当たっては、本件フランチャイズシステムの実態について原告らに誤解を与えないように注意して説明すべき義務を負うものであるところ、本件において被告らが右注意義務を怠り、原告らに対し、被告LCAが提供する役務ないしサービスについて、いわゆるセールストークとして社会通念上許容される限度を逸脱した内容の説明を行い、本件契約を締結させた過失、いわゆる「契約締結上の過失」があることは明らかであるから、被告らは、原告らに対し、原告らが被った後記損害について賠償責任を負うものである。
(4)  原告らの損害(各原告の損害額の明細は別紙請求金額一覧のとおり)
原告らは、被告LCAの担当者らから勧誘を受け、その説明内容等が真実であると信じて本件各フランチャイズ契約を締結し、それぞれ一〇〇〇万円近くに上る「加盟金」及び「開業費用」を支払い、その後も教材費等を支払ったのであって、原告らは、右(3) の被告らの不法行為により、被告LCAに対する各支払額相当の損害を被ったものである。
また、原告らは、コンサルタントとして独立して経営していくこと、あるいは、コンサルタント業務を強化・拡大することを夢見ていたものであるが、右(3) の被告らの不法行為により、多額な出捐をさせられたことにより資金的な問題が増大して生活に不安を抱かざるを得ない状況に置かれ、また、挫折やしなくてもよい苦労をさせられ、多大な精神的苦痛を被った。その精神的苦痛を慰謝する金額としては、各原告(原告アテイン及び原告システム・コミュニケーションを除く)に対し、それぞれ一〇〇万円が相当である。
さらに、原告らは、原告ら訴訟代理人に委任して本件訴訟を提起することを余儀なくされたものであり、原告らが支払うべき弁護士費用も被告らの右(3) の不法行為と相当因果関係のある損害であるところ、原告らは、原告ら訴訟代理人との間で、本件訴訟における認容額の一割の報酬を支払うことを約した。
(5)  よって、原告らは、被告LCAに対し、被告LCA自らの不法行為責任又は使用者責任に基づき、被告らのうち、被告LCAの代表取締役や取締役であった者及び原告らの勧誘担当者らに対し、共同不法行為責任に基づき、損害賠償として、別紙請求金額一覧の請求金額欄記載の金銭及びこれに対する不法行為の後の日である別紙請求金額一覧の損害金起算日欄記載の日から完済まで、民法の定める年五分の割合による遅延損害金を支払うことを求める。
(二) 被告ら
(1)  本件フランチャイズシステム
本件フランチャイズシステムは、被告LCAが長年にわたる経営コンサルティングの実績の積み重ねにより蓄積してきたノウハウを、加盟者(フランチャイジー)に提供するものである。フランチャイジーは、本件フランチャイズシステムへの加盟により、〈1〉被告LCAの経営コンサルティング・ノウハウやコンサルティング事業のノウハウを得られること、〈2〉そのノウハウを研修やスーパーバイザーによる個別支援を通じて、通常より短期間に取得することができること、〈3〉その結果、独立開業が可能となること、というメリットを享受することができる。
(2)  本件フランチャイズシステム加盟者の勧誘行為
経営コンサルティング業務の専門性の高さから、被告LCAは、本件フランチャイズシステムへの加盟対象者は、企業経営に関する知識や経験を保有する者に限定しており、被告LCAは、こうした対象者に対し、本件フランチャイズシステムを紹介するセミナー及び加盟を具体的に検討する個別面談を通じて勧誘を行ってきた。
個別面談の際には、加盟候補者に対し、個別の事業プランを提示するが、これは当該加盟候補者とよく似た環境にある既存フランチャイジーの実績を考慮して作成されたものであるし、配布するパンフレットの内容も、被告LCAが提供した実績があり、現実に提供を予定しているサービス内容である。
こうした過程で、前記(1) のメリットに魅力を感じた者が、被告LCAとの契約を締結するのである。これらの者は、フランチャイズ契約が独立企業間の契約であること、本件フランチャイズシステムの性質上、被告LCAが示した事業プランを達成できるかは、自らの活動如何によること、事業プランに示された売上を実現するためには、人材の採用・育成という企業努力を伴うこと、パンフレットが一般的なものに過ぎないことを十分理解しているはずである。
なお、被告LCAが、フランチャイジーに対し、営業拠点として金融機関を紹介してきた実績があることから、契約希望者に対してその旨を説明し、紹介できる可能性を示唆したことはあるが、紹介の約束をしたことはない。営業拠点は、被告LCAの意図に反して紹介できなくなることもあるし、仮に紹介できても契約者の期待する結果を得られないこともある。
(3)  被告LCAが提供するサービス
被告LCAは、本件フランチャイズシステムのフランチャイジーに対し、コンサルティング商品の供給や研修の開催、スーパーバイザーによる指導等を行った。フランチャイジーは、これらを修得した上で自らの事業として経営コンサルティングを行っていくのであり、ノウハウの修得や実践に向けた営業努力などは、独立した事業経営者の自己責任として行われるべきものである。
(4)  まとめ
本件各フランチャイズ契約は、自らがコンサルタント事業を行うという意欲とその能力がある専門家に対して必要なノウハウと支援システムを提供するものであって、事業の成功を保証するものでもなければ、これを請け負うものでもない。本件各フランチャイズ契約は独立した企業間の契約であり、加盟者の事業については、自己責任の原則が貫徹される。
原告らの不法行為の主張には理由がない。
2 原告滝及び原告アテインについて
(一) 原告滝及び原告アテイン
(1)  説明内容
原告滝は、コンサルティング業務の経験はなかった者であるが、被告LCAの適正テストを受けた後の個別の説明において、勧誘担当者であった被告吉村、被告並木及び武藤達也(以下「武藤」という)から、原告滝宛てに作成された提案書〔甲A一号証〕の交付を受けた。この提案書二枚目には、「貴事務所がMAS事業を展開されてどれだけの売上を確保できるかについて算出致しております。」とあり、収入の見積りとして、一年目九五八万円、二年目二五二〇万円、三年目三二四八万円と記載されていた。
この提案書に基づく説明を受けてもなお本件フランチャイズ契約の締結に躊躇する原告滝に対し、被告担当者らは、右提案書四枚目に記載があるように直近のセミナーが予定され相当な収入を見込めること、その後も営業拠点を紹介すること、受注についてベテランのスーパーバイザーが同行するので受注が容易であること、セミナー運営から受注まで全て被告会社がお膳立てをすること、生活に困れば被告会社がお金を貸して面倒を見ることもあること、病気などで仕事が続けられない時には、加盟期間に応じた金額でフランチャイジーの権利を買い取るから心配ないこと等を説明した。
右のような説明を信じた原告滝は、多額の借金をして被告LCAと本件フランチャイズ契約を締結したのである。
(2)  契約後の実態
ところが、本件フランチャイズ契約締結後に設立した原告アテインの受注高は三年五か月間で二五五一万五〇〇〇円に過ぎず、開催予定との説明であったセミナーも延期・変更されるなど、その他の説明内容が実現されることもなかった。むしろ、被告LCAは、最初から右説明内容を実践する用意はなかったのである。
(二) 被告ら
(1)  説明内容
被告LCAは、原告滝に対し、個別の提案書により大東京火災海上浦和支店のセミナーを提案し、右セミナーによる受注試算は四六〇万円である。
また、売上収益モデルは既加盟フランチャイジーの実績に基づくものであり、加盟しようとする者がその売上収益を実現するにはしかるべき努力が必要であることを、原告滝は理解できていたところである。
(2)  契約後の実態
大東京火災海上浦和支店のセミナーは中止となったが、原告アテインは、大東京火災海上浅草支店及び太陽信用金庫におけるセミナーをフォローする権利を得、さらに、会計事務所の紹介を通して千代田生命亀戸支店の紹介を受けた。その結果、原告滝は二〇〇〇万円を超える受注実績を残した。
また、原告滝のスーパーバイザーであった朝賀は、営業同行や指導を繰り返し行った。
3 原告日本コンサルティングセンターについて
(一) 原告日本コンサルティングセンター
(1)  説明内容
原告日本コンサルティングセンター代表取締役永野栄三(以下「永野」という)は、経営コンサルタントとして独立開業していたものの、売上が継続受注につながらず、将来に不安を抱いていたものであるところ、来訪した被告斉藤から、原告日本コンサルティングセンター宛てに作成された「コンサルティング事業充実に向けての御提案書」と題する書面(以下「提案書」という)〔甲B一号証〕を交付された。この提案書の六枚目には「安定的に顧客が紹介される構造作りをする必要がある」とあり、その下に理想的な営業構造を図示したもの(加筆修正前のもの)が記載されており、また、一四枚目には、営業利益として、一年目五七四万円、二年目八七三万円、三年目二〇七四万円という数字が記載されている。被告斉藤は、この提案書を示すとともに、東和銀行を拠点として利用できると説明した。
それでもなお契約締結に躊躇する永野に対し、被告斉藤、被告並木、被告瀬野ら被告LCAの勧誘担当者らは、継続受注率が高いことや被告LCAを知らない銀行はないこと、積極的に手伝うことなどを強調して説明し、勧誘した。
右のような説明を信頼して、永野は、被告LCAと本件フランチャイズ契約を締結したのである。
(2)  契約後の実態
ところが、被告斉藤が永野に示した、提案書記載の「安定的に顧客が紹介される構造作り」のための構図は誤りであったというのであり、東和銀行への訪問は禁止され、それに代わる被告LCAのサポートもなかった。積極的な協力などもなかった。
(二) 被告ら
(1)  説明内容
個別提案書には東和銀行二支店が提示してあり、その拠点紹介による受注試算は三〇〇万円である。
(2)  契約後の実態
拠点紹介を一時見合わせる必要が生じたので、永野はスーパーバイザーと自社セミナーを企画・実施し、八〇〇万円の受注実績を上げた。その後、永野が顧客企業において暴力事件を起こしたため、拠点紹介を見合わせざるを得ないこととなった。
また、担当スーパーバイザーの相沢は、他の拠点開拓のために同行訪問を行うなどの支援を行ったものである。
4 原告佐藤について
(一) 原告佐藤
(1)  説明内容
原告佐藤は、横浜市内で社会保険労務士として独立開業していたが、被告LCAが開催したセミナー終了後の個別面談で、被告大島、被告山本及び被告斉藤から、横浜より千葉の方が簡単に顧客開拓ができ、収入が得られるとして千葉での開業を勧められ、拠点として京葉銀行を紹介すること、被告LCAが仕事を取って原告佐藤に振り分けること、被告LCAの仕事を手伝ってほしいこと、開業後暫くの間は客を振ること等を説明した。
そこで、原告佐藤は、右説明を信じ、被告LCAと本件フランチャイズ契約を締結して千葉で開業することとしたものである。
(2)  契約後の実態
ところが、本件フランチャイズ契約締結後、被告LCAが、原告佐藤に対し、京葉銀行の担当者を紹介したことや、仕事や客を振ったことはなく、説明どおりの支援をしなかった。むしろ、そもそも被告LCAは、原告佐藤に説明した内容の支援をすることを予定していなかったものである。
(二) 被告ら
(1)  説明内容
個別提案書により、台東区のベンチャーリンク提携金融機関二支店が提示されており、その拠点紹介による受注試算は一〇〇万円である。また、千葉に移転するなら京葉銀行を拠点として紹介することも可能であることを口頭で伝えた。
(2)  契約後の実態
原告佐藤は、千葉に移転することを前提としてフランチャイズ契約を締結したのではなく、当初は横浜で活動し、契約締結から五か月後に千葉に移転したものである。その間に、京葉銀行は、組織化する会員向けイベントの重点を経営セミナーから会員同士の交流会へと転換したため、営業拠点となり得なくなったものである。
5 原告エスケービジネスプランについて
(一) 原告エスケービジネスプラン
(1)  説明内容
原告エスケービジネスプラン代表取締役島田謙司(以下「島田」という)は、広告印刷会社を経営し、CI(コーポレート・アイデンティティ)に興味があったところ、被告LCAから届いたダイレクトメールにCI構築のコンサルティングの説明があったことから、被告LCAの説明を受けた。被告LCAの松本は、島田に対し、島田宛に作成された提案書〔甲D二ないし四号証〕を示すとともに、収支モデル(甲D四号証のもの)記載の営業利益(一年目五五万円、二年目九八九万円、三年目二〇五〇万円、四年目三五九七万円、五年目六三七〇万円)は確実であると断言し、スーパーバイザーが専属で付いて指導するので、島田一人でもできること、被告LCAの仕事を回すこと、医業経営コンサルタントの資格が国家資格になる予定で、その養成講座が間もなく締切りになること等を説明した。
そこで島田は、松本の説明を信頼し、被告LCAと本件フランチャイズ契約を締結したのである。
(2)  契約後の実態
ところが、フランチャイズ契約締結後に設立した原告エスケービジネスプランが受注する仕事の顧客は、それまで島田と取引があった会社ばかりで、被告LCAが仕事を回してくれることはなく、その営業利益も三年間で一二九万八〇〇〇円に過ぎなかった。また、医業経営コンサルタントが国家資格になることもなかった。
(二) 被告ら
(1)  説明内容
島田宛てに作成された提案書は甲D四号証だけである。これを用いて島田に重要項目として説明したのは、ノウハウの修得及びコンサルタントの採用であり、島田一人での活動を前提としたものではない。また、右の提案書に記載の収支モデルは文字通りモデルであるとともに、一八名のコンサルタント事業部門の人材を活用することを前提としたものであって、そこに記載された数値を保証したことなどない。
(2)  契約後の実態
それまでの島田の取引先を受注対象としたのは、島田からの積極的な申し入れがあったからであるし、取引の場には担当スーパーバイザーも同席していた。
6 原告久保について
(一) 原告久保
(1)  説明内容
原告久保は、運転免許以外の国家資格は有しておらず、また、経営コンサルタント業務の経験もなかったところ、被告山本は、医業経営コンサルタントが国家資格になること、顧客を紹介すること、スーパーバイザーによる支援や顧客の紹介をすること、売上については、契約書の解約条項に記載のある二〇〇〇万円は被告LCAが責任を持つこと等を説明した。
そして、是非国家資格というものを取りたいと考えていた原告久保は、右のような被告山本の説明を信用して、被告LCAとの間で本件フランチャイズ契約を締結したのである。
(2)  契約後の実態
ところが、医業経営コンサルタントは国家資格にならず、スーパーバイザーによる支援や顧客の紹介は不十分なものであり、受注は七一七万円にすぎなかった。
(二) 被告ら
(1)  説明内容
原告久保には、被告LCAのコンサルタント業務のアシスタント業務を紹介することを約した。
(2)  契約後の実態
原告久保は、被告LCAから顧客三社のアシスタント業務の紹介を受け、アシスタント料として一七七万八〇〇〇円の粗利益を獲得している。
また、原告久保自身が営業活動を行うことはほとんどなかった。
7 原告佐々木について
(一) 原告佐々木
(1)  説明内容
原告佐々木は、中小企業診断士の資格取得に向けた学習中に被告LCAの広告を見てその説明を受けたところ、被告並木及び被告LCA従業員の星野信一から被告佐々木宛に作成された「総合コンサルティング事業展開に向けた御提案」と題する書面(以下「提案書」という)〔甲F四号証〕の交付を受け、初年度営業利益は六二九万円であること、スーパーバイザーによる支援があること、タイアップ金融機関のセミナーに参加して受注活動をすることができること、等の説明を受けた。
そこで、佐々木は、これらの説明を信用し、加盟金や開業費用に充てる金銭を借り入れて、被告LCAと本件フランチャイズ契約を締結したのである。
(2)  契約後の実態
ところが、スーパーバイザーは全く役に立たず、タイアップ金融機関でのセミナーが開催されたこともなく、契約後の営業利益は僅か二〇〇万円に過ぎないなど、被告並木らの説明内容が実施、実現されることはなかった。むしろ、被告LCAは、初めから右(1) の説明内容のようなサービスを提供する用意がなかったものである。
(二) 被告ら
(1)  説明内容
原告佐々木に関する個別提案書は、原告佐々木自身が営業訪問、指導準備、指導訪問に一六七日かけることを前提としていたものである。
(2)  契約後の実態
ところが、原告佐々木が勤務していた会社を辞めたのは、フランチャイジーとしての活動開始から一年余り経ってからであり、その間、立ち上げに必要な活動は行っていなかった。
また、スーパーバイザーの前田は、営業活動の支援を行った。その結果、一五〇〇万円の受注が実現した。
8 原告直林及び原告システム・コミュニケーションについて
(一) 原告直林及び原告システム・コミュニケーション
(1)  説明内容
被告直林は、中小企業診断士の資格を保有していたが開業経験はなかったところ、被告並木及び被告吉村から、直林宛ての「受注並びに終始見通しに関する提案書」と題する書面(以下「提案書」という)の交付を受けるとともに、営業拠点を積極的に紹介すること、湘南地区の定員枠が残り一つしかないこと、医業経営コンサルタントが国家資格になること、優秀なスーパーバイザーの協力を得られること、二年目の売上が二〇〇〇万円に達しない場合は契約を解除することができること等の説明を受けた。
そこで、直林は、これらの説明を信用して、加盟金や開業費用に充てる金銭を借り入れ、被告LCAと本件フランチャイズ契約を締結したのである。
(2)  契約後の実態
ところが、被告LCAからの営業拠点の紹介はなく、担当スーパーバイザーは湘南地区での営業はさせず、その協力も不十分なもので、本件フランチャイズ契約締結後に原告直林が設立した原告システム・コミュニケーションの受注高は二年九ヶ月間で僅か三〇六万円に過ぎなかった。確かに被告LCAによる仕事の紹介はあったが、説明内容とは大きくかけ離れたものであった。
(二) 被告ら
(1)  説明内容
原告直林の主張は争う。
(2)  契約後の実態
被告LCAは、原告直林に二社の顧客を紹介しており、その結果、原告直林は四二〇万円の粗利益を獲得している。
(第四事件)
1 反訴原告
(一) 反訴被告は、平成四年一二月七日、本件フランチャイズ契約に基づく加盟金及び開業費用に充てるため、千代田生命保険相互会社(以下「千代田生命」という)から、九〇〇万円を以下の約定で借り受けた。なお、これは反訴被告の開業準備行為なので商行為に当たる。
〈1〉利率   年六・五パーセント
〈2〉支払方法 平成五年一月から平成一一年一二月までの間、毎月一七日限り、一五万一二八九円ずつ分割して支払う。
〈3〉特約   被告佐々木が〈2〉の分割金の支払いを一回でも怠ったときは、千代田生命の通知催告により、期限の利益を失う。
〈4〉遅延損害金 年一四パーセント
(二) 反訴原告は、右同日、反訴被告の委託を受け、千代田生命との間で、右1の反訴被告の債務を連帯保証する旨の合意をした。
(三) 反訴被告は、平成六年一一月二八日、右1〈2〉の分割金の支払いを怠り、千代田生命から平成七年二月一〇日付内容証明郵便により催告を受けたので、同日ころ、右1の借入金債務の期限の利益を喪失した。
(四) 反訴原告は、平成七年六月二七日、千代田生命に対し、右1の借入金債務の残金八三一万二七四三円を代位弁済した。
その結果、反訴被告は、反訴原告に対し、八三一万二七四三円の求償金債務を負うことになった。
(五) そこで、反訴原告は、反訴被告に対し、求償金請求権に基づき、八三一万二七四三円及び代位弁済の日の翌日である平成七年六月二八日から完済まで、商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求める。
2 反訴被告
(一) 1(一)は、反訴被告にとって商行為になるとの部分を除き、認める。
(二) 1(二)は、認める。
(三) 1(三)のうち、反訴被告が千代田生命への支払を拒否したこと及び千代田生命からの支払催告があったことは認める。
(四) 1(四)は、不知。
第三  争点に関する判断
(第一ないし第三事件)
一  被告らの詐欺について
本件全証拠によっても、被告LCA及びその担当者らの原告らに対する本件フランチャイズシステムへの加入の勧誘行為が原告から加盟金等の名目で金銭を騙し取ろうと意図して行ったものとまで認めることはできない。
したがって、被告らの詐欺を理由とする原告らの各請求は、いずれも理由がない。
二  被告らの注意義務について
被告LCA及びその担当者は、原告らが本件フランチャイズシステムに加入するように勧誘するに当たっては、契約締結交渉の当事者として、その相手方である原告らに対し、信義則上、原告らが本件フランチャイズシステムに加入した場合に被告LCAがフランチャイザーとして提供する役務ないしサービスの内容について、原告らが誤解をし、その誤解に基づいて加入契約を締結することがないように注意して説明すべき義務を負うものというべきであり、被告LCAが右の注意義務を怠り、原告らに対し、その提供する役務ないしサービスについて、いわゆるセールストークとして社会通念上許容される限度を逸脱した内容の説明を行って契約の締結を勧誘し、そのために契約の締結に至らせ、原告らに損害を生じさせたときは、右の勧誘行為は、違法なものとして原告らに対する不法行為を構成するものというべきである。
そこで、以下、右の点について、個々の原告ごとに順次検討することとする。
三  原告滝及び原告アテインについて
1 前示の基礎となる事実及び証拠〔甲A一、二、四ないし六号証、乙一、一四、三一ないし三三、五〇、五一、五四ないし五八、六〇、六五、六六号証、沖証言、原告滝の供述、被告並木の供述〕並びに弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
(一) 従前の職業及び資格
原告滝は、高校卒業後、工業用ゴム卸会社の営業職として働いていたが、昭和五八年、中小企業診断士の資格を取得した。ただし、資格取得の動機は、当時の仕事に役立てるためであり、独立開業する目的を有していたわけではない。原告滝は、右資格取得後も、営業の仕事を続けていた。
(二) 被告LCAと関わることとなるきっかけ
昭和六三年一一月ころ、原告滝のところへ被告LCAからダイレクトメールが郵送されてきた。そこには、「年収二〇〇〇万円から三〇〇〇万円も夢ではない」などと記載してあり、説明セミナーの案内が掲載されていた。
これに興味を持った原告滝は、同月一一日に被告LCAのセミナーに参加し、セミナー終了後の適性テストを受けた。
(三) 被告らによる勧誘
(1)  平成元年一月、武藤から原告滝に対し、詳しい説明がしたいとの電話があり、原告滝は、同月一九日ころ、被告LCAの事務所へ行った。説明に当たったのは、FC推進部部長の被告吉村、同補佐の被告並木及び同部員の武藤であった。
そこで、原告滝は、被告吉村らから、「受注並びに収支見通しに関するご提案書(越谷市)」と題する資料(以下「原告滝・提案書」という)〔甲A一号証〕及び会社案内のパンフレット〔甲A二号証の一ないし六〕を渡されて、被告LCAの説明及び勧誘を受けた。
原告滝・提案書は、表紙に「滝清志殿」と書かれ、原告滝が居住する埼玉県越谷市を中心とした地域における営業活動を前提として、原告滝のために作成された提案書である。右提案書は、〈1〉越谷市におけるMAS受注見込み、〈2〉「損保拠点からの付加価値獲得モデル」、〈3〉活動計画表、〈4〉収支見積り、等の各事項から構成されており、例えば、〈1〉の事項に関しては、「貴事務所がMAS事業を展開されてどれだけの売上を確保できるかについて算出致しております」との記載があり(なお、右にいう「MAS」とは、「マネージメント・アドバイザリー・サービス」の略である)、また、〈2〉の事項に関しては、D損保(大東京火災海上保険との説明)を拠点として開催されるセミナーにより、一回当たり四六〇万円の受注が見込めるとの趣旨が記載されている。右の点についての被告吉村らの説明によれば、四月に大東京火災海上が越谷でセミナーを予定しているとのことであり、この予定はかなり確実なもので、原告滝がこれに参加すれば、かなりの蓋然性で四六〇万円程度の受注が得られるという印象を受けるような説明であった。そして、このセミナーの後も被告LCAが営業拠点を紹介していくとの趣旨を説明し、継続的に右と同様の受注を確保できるとの趣旨を示唆した。なお、被告LCAが、フランチャイジーに対し、「営業基盤」として生保、損保、銀行をはじめとする金融機関等をパートナーとして紹介するということは、被告LCAの会社案内のパンフレット〔甲A二号証の二及び四〕にも明記されているところである。
さらに、〈3〉及び〈4〉の事項については、原告滝を想定した活動スケジュールが記載されていたり、原告滝を対象とした収支見積りが記載されるなどしており、初年度受注額は九五八万円、二年目は二五二〇万円とあって、被告吉村らは、この部分を示しながら、被告LCAと契約してフランチャイジーになれば、このように多額の収入も得られるのだとの趣旨の説明をした。
また、具体的な活動スケジュール表には、セミナーアンケートをもとに見込み客を訪問する際には、スーパーバイザーが同行することが記載されており(原告滝・提案書五枚目)、会社案内のパンフレット[甲A二号証の四〕には、「スーパーバイジング」として「会計事務所経営に精通したスーパーバイザーが」「単なる営業代行、指導代行にとどまらず」「総合的なコンサルティングを行」うと説明されている。そして、原告滝が、経営コンサルティング業務や会社経営の経験がなく、独立開業していくことについて不安があることを打ち明けると、被告吉村らは、スーパーバイザーに聞けば指導するから心配は要らないとの説明をした。
その他、パンフレット〔甲A二号証の一ないし六〕には、被告LCAでは、次々に新しいノウハウを開発し、標準化していることや、全世界的な組織力を基礎としたきめ細かいサポート体制が整えられていること等が記載されている。
(2)  その後、原告滝は、同年二月一四日に大東京火災海上が吉祥寺で開催した企業向けセミナーに出席し、同月二二日、再び被告LCAを訪れた。ここでは、再び被告吉村、被告並木及び武藤が説明に当たり、越谷で予定されていた大東京火災のセミナーは、四月一三日に浦和で開催されることに変更されたと話した上で、二月一四日のセミナーの結果に基づいた説明書面〔甲A三号証〕を示しながら、原告滝を大東京火災でのセミナーのフォロー(セミナー参加企業から継続受注を得るよう活動すること)をするフランチャイジーの一人にすることなどを説明した。なお、右の説明書面には、フォローをするフランチャイジー一名当たり七社の受注と一九社の見込客を獲得することができるかのような記載がある。
(3)  その結果、原告滝は、被告LCAとの間で本件フランチャイズ契約を締結することを決意し、被告吉村らから契約書〔乙一号証〕を受け取った。原告滝はこれを自宅に持ち帰り、自己の署名及び押印をして、同年二月二四日、被告LCAに持参した。なお、契約書の日付は、原告滝が勤めていた会社を退職した日と同じ日の同年三月三一日とされ、原告滝がフランチャイジーとしての活動を開始したのは、同年四月一日のことであった。
また、原告滝は、被告LCAに対し、加盟金三六〇万円及び開業費用四八〇万円を支払ったが、これらは、国民金融公庫からの借入金でまかなった。なお、原告滝は、同年五月九日、コンサルティング業務を行う原告株式会社アテインを設立した。
(四) 原告滝及び原告アテインの活動状況等
(1)  原告滝と被告LCAとのフランチャイズ契約の契約書上の日付(平成元年三月三一日)までには、被告LCAから教材や資料等一式が送付され、契約後は、いくつかの研修が開催されて、原告滝も参加した。
(2)  その間、原告滝が同年四月一三日に開催されるとの説明を受けていた浦和の大東京火災のセミナーは中止となり、翌一四日に浅草で開催されるセミナーに参加することとなった。ここで、原告滝は、担当スーパーバイザーの朝賀と共に、セミナーのフォローを試みたが、受注は得られなかった。なお、右朝賀は、被告LCA入社から数年しか経っていない経験の浅い者であり、その後、担当スーパーバイザーは、平成二年八月には大竹に、平成五年ころには岡本に変更になった。
(3)  原告滝は、浅草でのセミナーの後もコンサルティング業務の受注を得るべく活動を続けたが、結局、原告滝が退会した平成六年三月三〇日までに得られた受注は延べ二八件であり、そのうち、被告LCAが開催した太陽信用金庫でのセミナー参加会社に働きかけて受注を得たものが四件、何らかの形で被告LCA又はそのフランチャイジーからの紹介が介在しているものが一七件で、残りは原告アテインが開催したセミナーや原告滝個人の人脈から受注につながったものであった。ただし、被告LCAのフランチャイジーからの紹介によるものは、そのフランチャイジーが協力を要請できる金融機関(千代田生命)においてそのフランチャイジーと原告アテインが共同のセミナーを開催し、これに参加した企業から受注を得るというものであり、受注を得るに当たって被告LCAやそのフランチャイジーの存在がきっかけとはなっているものの、結局受注にまでつながるか否かは、すべて原告滝の営業活動にかかっているのが実情であった。結局、被告LCAが、原告滝及び原告アテインに対して、営業拠点(基盤)となるような金融機関等を積極的に紹介したことはなかったものと認められるところである。
また、右のような原告滝の営業活動にスーパーバイザーが同行したのは、原告滝が何度か企業を訪問した後の契約締結段階に至ってからだけの場合がほとんどであったと認められるのであり、スーパーバイザーが原告滝の相談に乗ることがあっても、十分な指導・助言を提供するというものではなかった。
右のようにして原告滝及び原告アテインが受注したコンサルティング業務報酬の合計金額は、約三年半で二五五一万五〇〇〇円であり、そのうち原告アテインの粗利益(付加価値)は、二〇四八万二〇〇〇円だった。なお、右付加価値額から、被告LCAに対し、ロイヤリティとして約一割の金銭が支払われた。
2 以上で認定・適示した事実に基づき、原告滝及び原告アテインの請求の当否について判断する。
(一) 被告らの不法行為の成否について
(1)  被告吉村らは、前1(三)のとおり、原告滝に対して、本件フランチャイズ契約の締結を勧誘するに際し、被告LCAが営業拠点を紹介するので受注が継続的に確保できること及びスーパーバイザーによる適切な指導など組織的な支援がなされるので経営コンサルティング業務の経験がない原告滝でも心配は要らないことを強調して説明したものと認められるところである。そして、その結果として得られる収入についても、原告滝を対象とした提案書に具体的な数字を記載することで、それだけの収入を得ることがかなり高い蓋然性のあることであると原告滝に受け取らせるような説明をしたものである。
一会社員に過ぎずコンサルティング業務の経験もなかった原告滝が、経営コンサルティング事業を独立して行おうとするに当たっては、果たして事業として利益を上げながら継続していくことができるのか、言い換えれば、いかにして顧客を獲得するか、その顧客に対する経営指導をどのようにして行えば継続的な受注につながるのかが、最大の関心事であり、かつ、心配の種であったはずである。これに対して、被告LCAは、コンサルティング業務について継続的な受注を可能とするための営業基盤となるような各種金融機関等をパートナーとして紹介すること及びスーパーバイザーによる指導等の組織的な支援体制等を売り物にして原告滝をフランチャイジーになるよう勧誘したものであって、原告滝が合計八四〇万円もの金銭を支払ってまで被告LCAと本件フランチャイズ契約を締結するに至ったのも、被告LCAの勧誘担当者であった被告吉村らにより、この二点が強調され、原告滝の右の不安を払拭させるような説明がされたからに他ならないと認められるところである。
(2)  ところが、契約後の実態を見ると、前1(四)のとおり、被告LCAは、原告滝ないし原告アテインがコンサルティング業務について継続的な受注を得るための営業基盤たるパートナーとしての金融機関の紹介も、原告滝の経験不足を補うような有能なスーパーバイザーによる指導等の組織的な支援もほとんど行っていないのである。そして、結果としてこのような役務ないしサービスの提供が十分にされなかった理由が本件コンサルティング契約締結後の特別の事情に基因するものであったことを認めるに足りる的確な証拠はなく、むしろ、被告LCAが一応は「セミナー」と名の付くものを開催してみたり、「スーパーバイザー」と称する経験の浅い社員を派遣してみたりしているところからすると、もともと被告LCAは、原告滝に説明したような内容と必要な水準に達した役務ないしサービスの提供をするだけの組織的な体制を整えていなかったものと窺われるところである。そして、右のような傾向は、他の原告らに関しても同様に認められること、前1(三)の勧誘の際の説明が、被告LCAが会社として作成したパンフレットや「提案書」に基づいてされたものであること等を併せ考慮すると、被告LCAは、その業務として、客観的には提供することができない内容あるいは水準の役務ないしサービスを提供することができるかのように説明して、原告滝に対し、本件フランチャイズシステムのフランチャイジーになるように勧誘し、本件フランチャイズ契約を締結させたものと認められるのであり、被告LCAとしては、そのような役務ないしサービスを実際には提供することができないことを認識していたものと推認するのが相当である。
(3)  そして、前示1及び右(1) 、(2) に照らせば、被告LCAが、原告滝に対し、本件フランチャイズシステムのフランチャイジーになるように勧誘した際に行った、継続的なコンサルティング業務受注の基盤となるべき営業拠点の紹介やスーパーバイザーによる指導等の組織的支援等の被告LCAが提供する役務ないしサービスに関する説明内容と、現実に提供した役務ないしサービスの内容あるいはその水準とのかい離は、本件コンサルティング契約締結の可否を左右するほど著しいものというべきであり、右のようなかい離を認識した上で行った被告LCAの勧誘行為は、いわゆるセールストークとして社会通念上許容される範囲を逸脱した違法なものといわざるを得ず、原告滝は、右のような被告LCAの勧誘行為により、本件フランチャイズ契約を締結することによって被告LCAから提供を受けることができる役務ないしサービスの内容あるいはその水準について誤解し、この誤解に基づいて本件フランチャイズ契約を締結するに至ったものと認められるのである。
したがって、被告LCAの原告滝に対する本件フランチャイズ契約締結に係る勧誘行為は、不法行為を構成するものというべきである。
また、原告滝を本件フランチャイズ契約締結に勧誘した当時、被告LCAの代表取締役であった被告小林忠嗣及び被告小林敬嗣は、代表取締役として被告LCAの業務を統括し、これを執行する立場にあった者であり、被告LCAの業務として右のような勧誘行為が行われていることは、当然認識していたか、少なくとも認識すべき立場にあったのであるから、右被告二名も、右の勧誘行為について不法行為責任を負う。
さらに、原告滝の勧誘に当たった被告吉村は、後に被告LCAのFC(フランチャイズ)推進部長の肩書きを有する取締役になった者であり、また、被告並木は、原告滝の勧誘時はFC推進部の主任であり、その後課長等を経て開発部の部長にまでなった者であり、いずれも被告LCAの本件フランチャイズシステムへの勧誘部門において責任ある立場にあった者であるから、被告LCAが客観的には提供することができないような内容あるいは水準の役務ないしサービスを勧誘に当たっての説明内容としていたということを十分に認識することが可能な立場にあったものと認められ、そのような状況の下で原告滝に対する勧誘行為を行ったのであるから、右二名も不法行為責任を負う。
なお、被告尾崎及び被告坂本については、原告滝に対する本件勧誘当時、取締役として具体的にどのような業務を行っており、原告滝に対する勧誘行為にどのように関与していたのかについて的確な立証がないから、これらの者が不法行為責任を負うものと認めることはできない。
(二) 損害
(1)  財産的損害
原告滝は、右(一)の違法な勧誘行為により、本件フランチャイズ契約を締結することによって被告LCAから提供を受けることができる役務ないしサービスの内容あるいは水準について誤解し、実態に即した説明がされていれば締結しなかったものと認められる本件フランチャイズ契約を締結したのであるから、原告滝が右契約に基づいて被告LCAに対して支払った加盟金三六〇万円は、被告LCAらの違法な勧誘行為により被った損害であると認められる。
また、加盟金と同時に支払った開業費用四八〇万円に関しては、前1(四)のとおり、教材や資料が送付されたところであるが、前示のとおり、現実に原告滝及び原告アテインに提供された役務ないしサービスは不十分な内容のものであったところ、そのことはノウハウの提供についても同様であると推認するのが相当であって、本件に顕れた諸般の事情を総合考慮すると、右開業費用のうち少なくとも三割相当額は、提供された教材等のサービスと正当な対価関係にはないものと認められるのであり、したがって、右相当額である一四四万円は、原告滝が被告LCAらの違法な勧誘行為により被った損害であるというべきである。
なお、原告滝及び原告アテインは、その余の出捐のすべてについても被告LCAらの不法行為と相当因果関係のある損害であると主張するが、原告滝及び原告アテインは、本件フランチャイズ契約締結後、被告LCAからコンサルティング業務についての一応の教育・指導等を受け、ある程度の受注を得ることができたこと等を考慮すると、これらについてまで被告LCAらの右不法行為と相当因果関係のある損害であると認めることはできない。
したがって、被告LCAらの右不法行為と相当因果関係のある原告滝の財産的損害は、五〇四万円である。
(2)  慰謝料
原告滝は、本件フランチャイズ契約を締結したものの、被告LCAから説明されたような役務ないしサービスの提供を受けることができず、そのため、想定された状況とは著しく異なる条件の下にコンサルティング業務を遂行することを余儀なくされ、ひいては生計の維持に不安を抱かされることとなるなど、通常予測される範囲を超える労苦を強いられるなどして、右の財産的損害の填補のみによっては慰謝され得ない精神的苦痛を被ったものと認められる。
右精神的苦痛に対する慰謝料としては、三〇万円が相当と認める。
(3)  弁護士費用
本件訴訟追行の難易、認容額等諸般の事情を考慮すれば、被告LCAらの不法行為と相当因果関係のある原告滝についての弁護士費用は、五五万円であると認めるのが相当である。
3 小括
以上によれば、原告滝の請求は、被告LCA、被告小林忠嗣、被告小林敬嗣、被告吉村及び被告並木に対し、連帯して五八九万円及びこれに対する不法行為の日の後の日である平成六年二月二八日から完済まで民法の定める年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが、原告滝のその余の請求及び原告アテインの請求は、いずれも理由がない。
四  原告日本コンサルティングセンターについて
1 前示の基礎となる事実及び証拠〔甲B一、二号証、乙二、三一ないし三四、五〇、六〇、六五号証、沖証言、原告日本コンサルティングセンター代表者の供述、被告並木の供述〕並びに弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
(一) 従前の職業及び資格
永野は、昭和六二年一二月二五日、原告日本コンサルティングセンターを設立し、経営コンサルタント業務を独立開業して行っていた。ただし、平成二年当時の仕事内容は、農協職員に対する教育研修が主なもので、一般企業からの受注は、一年に一、二件といったところであった。このような事業による収益には波があり、年間売上高は、多い年で一五〇〇万円程度、少ない年は三〇〇万円程度であった。
(二) 被告LCAと関わることとなるきっかけ
平成二年ころ、永野のところへ被告LCAからダイレクトメールが郵送され、これを見た永野は、被告LCAが主催するセミナーに参加した。そこでは、会社の経営者等を対象とした経営研究会や後継経営者養成講座の説明があり、これらを開催した上でその参加会社から個別の受注を獲得していくとのことであった。また、このような研修会の拠点として、被告LCAが提携している金融機関があるとの説明があった。そして、永野は、セミナー終了後、被告斉藤と個別に面談した。
(三) 被告らによる勧誘
(1)  同年九月二七日ころ、永野は、被告斉藤から、「コンサルティン事業充実に向けての御提案書」と題する資料(以下「日本コンサルティングセンター・提案書」という)〔甲B一号証〕を示され、本件フランチャイズシステムについての説明を受けた。
日本コンサルティングセンター・提案書は、表紙に「有限会社日本コンサルティングセンター御中」と書かれ、原告日本コンサルティングセンターが所在する埼玉県草加市を中心とした地域における営業活動を前提として、同社のために作成された提案書である。右提案書は、〈1〉御社の営業構造改善に向けて、〈2〉具体的営業の進め方、〈3〉現時点における可能受注試算額、〈4〉御社の商品力強化に向けて、〈5〉2年間の行動計画、〈6〉5年間の収支計画、等の各項目から構成されており、例えば、〈1〉の事項に関しては、「銀行、商工会議所、ライオンズクラブ/ロータリークラブ、同業者組合等々(以下これを「営業拠点」と呼ぶ)」、「安定的に顧客が紹介される構造作りをする必要がある」、被告LCAでは「全国で一〇三の金融機関と既に提携しており」「(フランチャイジーの)営業拠点としてご活用頂いております」との記載があり、また、被告LCAと提携関係にある「LCA提携銀行」「地元の銀行」「人脈」が集客し、セミナーを開催した上で、原告日本コンサルティングセンターに顧客が紹介され、新規顧客の獲得につながることを図示してある(ただし、右の営業構造図の記載は間違いであるとして、契約後に、被告LCAが銀行等と提携関係にあるとする部分を抹消し、結局は被告LCAは原告日本コンサルティングセンターにノウハウの提供やスーパーバイジング等を行うだけの位置づけとなるような形で修正が加えられた。)。被告斉藤は、日本コンサルティングセンター・提案書の具体的記載を示しながら、日本コンサルティングセンターのこれまでの営業構造を改善し、安定的に顧客を得られる構造作りが必要であることを強調した。
そして、被告斉藤は、永野に対し、具体的には金融機関等を営業拠点として活用する必要があり、被告LCAがこれまでにも提携金融機関等をフランチャイジーに紹介してきた実績があると説明した上で、日本コンサルティングセンター・提案書項目〈3〉の「現時点における可能受注試算額」中の「草加市内においてご紹介させて頂ける銀行にT銀行がございます。」と記載された箇所を示しながら、T銀行とは、被告LCAの関連会社であるベンチャーリンクと提携関係にある東和銀行のことであり、同銀行を紹介するから、ここを拠点として三〇〇万円の受注が得られると話した。そして、日本コンサルティングセンター・提案書の右項目のまとめとして、草加市及び近隣地域の新規開拓銀行からの受注と併せて年間六九〇〇万円の受注が試算されると記載されており(右提案書一〇枚目)、項目〈6〉の「5年間の収支計画」には、原告日本コンサルティングセンターが得られる営業利益として、一年目五七四万円、二年目八七三万円、三年目二〇七四万円などと具体的計算過程を示した上で記載されており、被告斉藤は、被告LCAと契約すればおよそこの程度の利益は上がるとの趣旨の説明をした。
(2)  その後、永野は、被告斉藤から既に被告LCAのフランチャイジーとして活動し、成功している会社を紹介されて、同社の社長の話を聞くなどした後、再度被告会社を訪れ、被告瀬野や被告斉藤から、再度勧誘を受けた。その結果、永野は、被告LCAとの間で、原告日本コンサルティングセンター代表取締役として、平成二年一〇月一八日付で本件フランチャイズ契約を締結した。
なお、原告日本コンサルティングセンターは、被告LCAに対し、加盟金三七〇万八〇〇〇円及び開業費用五二九万四二〇〇円(いずれも消費税込み)を支払ったが、これらは、太陽信用金庫から九〇〇万円を借り入れることでまかなった。
(四) 原告日本コンサルティングセンターの活動状況等
(1)  永野は、契約後、被告LCAから教材や資料等の交付を受け、被告LCAが開催したノウハウ研修会に平成三年二月ころまで参加し、経営コンサルティングのノウハウ修得に努めた。永野は、参加した研修会についてのアンケートで、意欲的な姿勢を示している。そして、近隣の南越谷地区の生保、損保、銀行等いくつかの金融機関をセミナー開催の依頼等のために訪問したが、開催に応じてくれるところは見つからなかった。
(2)  そこで、永野は、担当スーパーバイザーの相沢に対し、勧誘の際に営業拠点として紹介できると説明されていた東和銀行を紹介してほしい旨申し出たが、結局、東和銀行ではセミナーが開催できないとのことで、紹介を受けることができなかった。
その後も、永野は、右相沢に対し、営業拠点の紹介方を申し入れ、被告LCAの事務所にもその旨を申し入れたが、結局営業拠点の紹介をして貰えなかった。また、右相沢は、永野が滋賀銀行を受注獲得のために訪問した際に同行したことがあっただけである。なお、永野が被告LCAに右のように営業拠点の紹介方を申し入れたりする経過の中で、前示(三)(1) のように、被告瀬野によって日本コンサルティングセンター・提案書記載の営業構造図の訂正がされるなどしたところである。
(3)  結局、被告LCAから営業拠点の紹介を得られず、自ら拠点開拓を試みても成功しなかった原告日本コンサルティングセンターは、被告LCAとの間で平成五年一月二一日、一年間休会するとの覚書を交わし、被告LCAのフランチャイジーとしての活動を停止した。それまでの約二年三か月の間に原告日本コンサルティングセンターが獲得した受注案件は、延べ一〇件であり、受注総額は一一六五万円、原告日本コンサルティングセンターの営業利益は五三五万円余りに止まった。なお、右営業利益から、被告LCAに対し、ロイヤリティとして約一割の金銭が支払われた。
2 以上で認定・適示した事実に基づき、原告日本コンサルティングセンターの請求の当否について判断する。
(一) 被告らの不法行為の成否について
(1)  被告斉藤は、前1(三)のとおり、永野に対して、本件フランチャイズ契約の締結を勧誘するに際し、それまでの原告日本コンサルティングセンターの営業構造を改善し、営業拠点を活用するようにする必要がある旨を強調した上、その営業拠点として被告LCAが東和銀行を紹介する旨を述べ、それらの説明を基礎付けるような営業構造図を用いるなどして営業拠点の紹介が確実にされるものと永野が受けとめるような説明を行ったものと認められるところである。そして、その結果として得られる収入についても、原告日本コンサルティングセンターを対象とした提案書に具体的な数字を記載することで、それだけの収入を得ることがかなり高い蓋然性のあることであると原告日本コンサルティングセンターに受け取らせるような説明をしたものである。
既に経営コンサルティング業務を独立して行っており、年間売上高が一五〇〇万円程度に達することもあった永野にとっては、顧客が限られていて収益に波がある現状を打破し、新規顧客を開拓して継続的受注を増やし、収益を安定させるにはどうしたらよいかが最大の関心事であったはずである。これに対して、被告LCAは、コンサルティング業務について継続的な受注を可能とするためには、まず原告日本コンサルティングセンターの営業構造を改善することの必要性を強調し、そのための営業拠点を被告LCAが紹介することを売り物にして、被告LCAの関連会社であるベンチャーリンクと提携関係にあるとする具体的な金融機関名まで挙げるなどして永野を勧誘したものであって、年間売上高が少ない年には三〇〇万円程度しかなかった原告日本コンサルティングセンターが合計約九〇〇万円もの金銭を支払ってまで被告LCAと本件フランチャイズ契約を締結するに至ったのも、被告LCAの勧誘担当者であった被告斉藤らにより、右のような点が強調され、永野をして経営コンサルティング事業を安定して継続することができるものと期待させ、その内容について信頼感を抱かせるような説明がされたからに他ならないと認められるところである。
(2)  ところが、契約後の実態を見ると、前1(四)のとおり、被告LCAは、原告日本コンサルティングセンターに対し、その営業拠点とすべきものとして具体的な名前を挙げていた金融機関の紹介をしなかったばかりか、他にコンサルティング業務についての継続的な受注を得るための営業拠点としての金融機関等の紹介を何ら行わなかったのである。
そして、被告斉藤が永野に対する説明に用いた提案書記載の営業構造図が、本件コンサルティング契約締結後に、被告瀬野によって、誤りであったなどとして訂正されたことは前示1(三)(1) 、(四)(2) のとおりであるが、もともと、右提案書は、被告LCAがその業務として作成したものであり、責任者である被告並木もこれを点検していたものである〔被告並木の供述〕のだから、そのような提案書が作成されているということ自体、被告LCAにおいて、被告LCAの提携銀行等が集客し、これを原告日本コンサルティングセンターに紹介するというようなことが実際には行われないものであることを認識しつつ、敢えてそのような資料を作成し、これに沿った説明を行おうとしていたことを窺わせるものというべきである。
そして、営業拠点を紹介するとの説明がされながら、実際には紹介されないことが他の原告らにおいても同様に認められること等も併せ考慮すると、被告LCAは、その業務として、客観的には提供することができない内容の役務ないしサービスを提供することができるかのように説明して、永野に対し、原告日本コンサルティングセンターが本件フランチャイズシステムのフランチャイジーになるように勧誘し、本件フランチャイズ契約を締結させたものと認められるのであり、被告LCAとしては、そのような役務ないしサービスを実際には提供することができないことを認識していたものと認めるのが相当である。
なお、被告LCAは、東和銀行が被告LCAの関連会社であるベンチャーリンクの提携金融機関であったことは事実であり、これを原告日本コンサルティングセンターの営業拠点として紹介できなかったのは、他の加盟者とのトラブルが原因であり、被告LCAには責任がないと主張するようである。しかし、被告LCAは、永野の要請にもかかわらず、その後も営業拠点としての金融機関等の紹介は何ら行わなかったこと、本件コンサルティング契約の締結後になって、前示のように営業構造図が誤りであったなどとして、被告LCAが原告日本コンサルティングセンターに対し、営業拠点としての金融機関を紹介すべき役務ないしサービスを提供する関係には立たないかのように修正を行おうとしたこと等の事情に照らせば、被告LCAの右の主張を採用することはできない。
(3)  そして、前示1及び右(1) 、(2) に照らせば、被告LCAが、原告日本コンサルティングセンターに対し、継続的かつ安定的なコンサルティング業務受注の基盤となるべき営業拠点の紹介等の被告LCAが提供する役務ないしサービスに関する説明内容と、現実に提供した役務ないしサービスの内容あるいはその水準とのかい離は、本件コンサルティング契約締結の可否を左右するほど著しいものというべきであり、右のようなかい離を認識した上で行った被告LCAの勧誘行為は、いわゆるセールストークとして社会通念上許容される範囲を逸脱した違法なものといわざるを得ず、永野は、右のような被告LCAの勧誘行為により、本件フランチャイズ契約を締結することによって被告LCAから提供を受けることができる役務ないしサービスの内容について誤解し、この誤解に基づいて原告日本コンサルティングセンターの代表者として本件フランチャイズ契約を締結するに至ったものと認められるのである。
したがって、被告LCAの原告日本コンサルティングセンターに対する本件フランチャイズ契約締結に係る勧誘行為は、不法行為を構成するものというべきである。
また、原告日本コンサルティングセンターを本件フランチャイズ契約締結に勧誘した当時、被告LCAの代表取締役であった被告小林忠嗣及び被告小林敬嗣は、代表取締役として被告LCAの業務を統括し、これを執行する立場にあった者であり、被告LCAの業務として右のような勧誘行為が行われていることは、当然認識していたか、少なくとも認識すべき立場にあったのであるから、右被告二名も、右の勧誘行為について不法行為責任を負う。
なお、実際に勧誘に当たった被告斉藤は、被告LCAの単なる勧誘担当社員であるに過ぎず、被告LCAが契約の前後で担当社員を分離していたことも考慮すると、勧誘時の説明内容と被告LCAがフランチャイジーに対して実際に提供している役務ないしサービスの内容とのかい離を被告斉藤が認識し、または認識し得べきであったものと認めるに足りる的確な証拠がないから、被告斉藤が、右の勧誘行為について不法行為責任を負うものということはできない。また、被告瀬野は、スーパーバイザーの課長であり、永野が本件フランチャイズ契約締結を決意する直前の勧誘段階で勧誘行為に関与したものと認められるが、被告瀬野の関与の度合やその説明内容と実際に提供している役務ないしサービスの内容とのかい離の程度についての認識または認識可能性についての的確な立証はない。さらに、被告尾崎、被告坂本及び被告吉村については、原告日本コンサルティングセンターに対する本件勧誘当時、取締役として具体的にどのような業務を行っており、原告日本コンサルティングセンターに対する勧誘行為にどのように関与していたのかについて的確な立証はない。したがって、右の被告らが本件勧誘行為について不法行為責任を負うものと認めることはできない。
(二) 損害
(1)  財産的損害
原告日本コンサルティングセンターは、右(一)の違法な勧誘行為により、本件フランチャイズ契約を締結することによって被告LCAから提供を受けることができる役務ないしサービスの内容について誤解し、実態に即した説明がされていれば締結しなかったものと認められる本件フランチャイズ契約を締結したのであるから、原告日本コンサルティングセンターが右契約に基づいて被告LCAに対して支払った加盟金三七〇万八〇〇〇円は、被告LCAらの違法な勧誘行為により被った損害であると認められる。
また、加盟金と同時に支払った開業費用五二九万四二〇〇円に関しては、前1(四)のとおり教材や資料が送付されたところであるが、前示のとおり、現実に原告日本コンサルティングセンターに提供された役務ないしサービスは不十分な内容のものであったところ、そのことはノウハウの提供についても同様であると推認するのが相当であって、本件に顕れた諸般の事情を総合考慮すると、右開業費用のうち少なくとも三割相当額は、提供された教材等のサービスと正当な対価関係にはないものと認められるのであり、したがって、右相当額である一五八万八二六〇円は、原告日本コンサルティングセンターが被告LCAらの違法な勧誘行為により被った損害であるというべきである。
なお、原告日本コンサルティングセンターは、その余の出捐のすべてについても被告LCAらの不法行為と相当因果関係のある損害であると主張するが、原告日本コンサルティングセンターは、本件フランチャイズ契約締結後、被告LCAからコンサルティング業務についての一応の教育・指導を受け、ある程度の受注を得ることができたこと等を考慮すると、これらについてまで被告LCAらの右不法行為と相当因果関係のある損害であると認めることはできない。
したがって、被告LCAらの右不法行為と相当因果関係のある原告日本コンサルティングセンターの財産的損害は、五二九万六二六〇円である。
(2)  慰謝料
原告日本コンサルティングセンターは、実質的には永野の個人企業であるところ、永野は、本件フランチャイズ契約を締結したものの、被告LCAから説明されたような役務ないしサービスの提供を受けることができず、そのため、期待したような会社の業績向上を得られなかったばかりでなく、営業拠点の開拓等に関し、想定された状況とは著しく異なる条件の下での通常予測される範囲を超える営業努力を強いられるなどして、右の財産的損害の填補のみによっては慰謝され得ない精神的苦痛を被ったものと認められる。
右精神的苦痛に対する慰謝料としては、三〇万円が相当と認める。
(3)  弁護士費用
本件訴訟追行の難易、認容額等諸般の事情を考慮すれば、被告LCAらの不法行為と相当因果関係のある弁護士費用は、五五万円であると認めるのが相当である。
3 小括
以上によれば、原告日本コンサルティングセンターの請求は、被告LCA、被告小林忠嗣、被告小林敬嗣に対し、連帯して六一四万六二六〇円及びこれに対する不法行為の日の後の日である平成五年三月三一日から完済まで民法の定める年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが、その余の請求はいずれも理由がない。
五  原告佐藤について
1 前示の基礎となる事実及び証拠〔甲C一、二、六号証、乙三、三一ないし三四、五〇、六〇、六五号証、沖証言、原告佐藤の供述、被告並木の供述〕並びに弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
(一) 従前の職業及び資格
原告佐藤は、会社員として働いていたが、社会保険労務士の資格を取得し、平成元年六月、横浜で社会保険労務士の登録をして独立開業した。しかし、年間売上高は二〇〇万円にも満たないものであり、原告佐藤にとっては、いかにして売上高を増やすかが最大の課題であった。
(二) 被告LCAと関わることとなるきっかけ
平成三年ころ、被告LCAから、原告佐藤に対し、セミナーの開催案内等のダイレクトメールが送付され、それらに興味を持った原告佐藤は、平成三年三月八日及び同年四月六日に開催された被告LCA主催のセミナーに参加した。そして、四月六日のセミナー終了後、原告佐藤は、個別の説明を受けた。
(三) 被告らによる勧誘
(1)  平成三年四月六日の説明は、FC推進部チーフの被告大島、従業員の被告山本及び被告斉藤によって行われた。その中で、被告大島らは、原告佐藤は現在横浜で社会保険労務士事務所を開業しているが、横浜よりも千葉で仕事をした方が、顧客開拓が容易であり、収入も得やすいとの説明をした。その理由として、被告大島らは、千葉には被告LCAと密接な関係のある金融機関として京葉銀行があり、その顧客組織であるαビジネスクラブから顧客を開拓できるなどと話した。
(2)  その後も態度を決めかねている原告佐藤に対し、被告LCAの従業員らは、電話による勧誘を繰り返し、原告佐藤は、平成三年四月一八日ころ、被告LCAの事務所で被告大島及び被告山本に会い、再度説明を受けた。
その際、原告佐藤は、被告大島らから、「初年度活動プラン・収支モデル」と題する資料(以下「原告佐藤・提案書」という)〔甲C一号証〕を渡されて、被告LCAの説明及び勧誘を受けた。また、原告滝に渡されたものと類似のパンフレット〔甲A二号証、甲C二号証〕も交付された。
原告佐藤・提案書は、表紙に「佐藤雄三先生」と書かれ、原告佐藤のために作成された提案書である。右提案書は、〈1〉立ち上げ期の活動プラン、〈2〉行動プラン(二通り)、〈3〉商品修得の流れ、〈4〉営業の流れ、〈5〉立ち上げ期活動プラン、〈6〉初年度行動プラン、〈7〉初年度収支モデルの各事項から構成されており、例えば、〈2〉の事項に関しては、それぞれのプランによる獲得付加価値(営業利益)は、一方が初年度七四四万円、二年度二〇六四万円、他方が初年度四一四万円、二年度一八三三万円と記載されている。また、〈5〉の事項に関しては、「V/L(ベンチャーリンク)提携銀行への挨拶回り」、「V/L提携銀行主催セミナーへの参加」等の記載もある(ただし、そこには「台東区2支店」と記載されており、もともと原告佐藤を対象にして独自に作成された提案書であるかは疑問の残るところである。)。パンフレットに記載されている事項は、前三1(三)で認定・摘示した原告滝に交付されたもの〔甲A二号証〕とほぼ同様である。
そして、被告大島らは、原告佐藤に対し、再び、京葉銀行を紹介するので顧客の獲得は容易であるし、ベテランのスーパーバイザーが助言や指導などをするので千葉での開業には問題がないとの趣旨の説明を繰り返した。
(3)  その後も、被告山本による電話での勧誘が続き、その結果、原告佐藤は、被告LCAとの間で本件フランチャイズ契約を締結することを決意した。契約を締結した日は平成三年四月二二日であったが、契約書の日付は被告LCAの希望により同年四月二〇日とされた。なお、原告佐藤がフランチャイジーとしての活動を開始したのは、同年六月二一日であり、それまでは活動休止期間とされた。
原告佐藤は、被告LCAに対し、加盟金三七〇万八〇〇〇円、開業費用五二九万四二〇〇円を支払う必要があったが、開業費用については被告LCAと五月、七月、八月の三回の分割払とする合意をし、これらのすべてを退職金等でまかなった。
(四) 原告佐藤の活動状況等
(1)  原告佐藤は、千葉へ移転したが、教材等の商品が送付されたのは、開業費用全額支払後一か月以上経った後の平成三年一〇月になってからであり、すべてがそろったのは一一月ころであった。
(2)  また、原告佐藤は、平成四年二月ころ、独自にセミナーの開催を企画し、担当スーパーバイザーの林に対して、京葉銀行の支店長を紹介してくれるよう依頼したが、林は、「少し時間を下さい。」などと言うだけで日時が経過してしまい、結局、原告佐藤が企画したセミナーの開催は中止せざるを得なかった。
その後も、原告佐藤の催促にもかかわらず、被告LCAから京葉銀行の支店長が紹介されることがないまま推移し、同年六月には担当スーパーバイザーが入社後僅か四か月の伊藤に代わってしまった。そして、原告佐藤は、京葉銀行支店長の紹介を受けられないことから、同年八月には被告LCAに対する広告宣伝費の支払を停止し、平成五年三月一五日には、平成四年八月から一年間活動休止期間とする旨の覚書を、同年七月一九日には、活動休止期間を平成七年七月三〇日まで延長する旨の覚書を、それぞれ被告LCAと交わした。
結局、被告LCAとの本件フランチャイズ契約締結後、原告佐藤が受注を獲得した実績はない。
2 以上で認定・摘示した事実に基づき、原告佐藤の請求の当否について判断する。
(一) 被告らの不法行為の成否について
(1)  被告大島らは、前1(三)のとおり、原告佐藤に対して、本件フランチャイズ契約の締結を勧誘するに際し、千葉に移転すれば被告LCAが営業拠点として京葉銀行を紹介するので受注が継続的に確保できること及びベテランのスーパーバイザーによる適切な指導等の組織的な支援体制が整っているので心配は要らないことを強調して説明したものと認められるところである。そして、その結果として得られる収入についても、原告佐藤を対象とした提案書に具体的な数字を記載することで、それだけの収入を得ることがかなり高い蓋然性のあることであると原告佐藤に受け取らせるような説明をしたものである。
社会保険労務士として既に横浜で独立開業してはいたものの、年間売上高が思うように上がっていなかった原告佐藤にとっては、いかにして新規顧客を開拓するか、そして、その継続的受注を得て売上高を増加させるにはどうしたらよいかが、最大の関心事であったところである。これに対して、被告LCAは、千葉に移転すれば、コンサルティング業務について継続的な受注を可能とするための営業基盤となるような拠点として京葉銀行を紹介できること(このことは、後述のとおり、原告直林に対しても説明されていることである。)及びその後もベテランのスーパーバイザーによる適切な指導・助言などを行うので継続受注につながることを売り物にして、原告佐藤の弱点を捉えるような形でフランチャイジーになるよう勧誘したのである。原告佐藤が、約九〇〇万円というそれまでの年間売上高の数倍にも上る金銭を支払い、しかも、営業範囲に千葉を加えるのではなく、これまでの活動基盤の喪失や費用負担というリスクを伴うにもかかかわらず活動拠点そのもの(社会保険労務士としての登録地も)を千葉に移転してまで被告LCAと本件フランチャイズ契約を締結するに至ったのも、被告LCAの勧誘担当者であった被告大島らにより右の二点が強調され、原告佐藤をして経営コンサルティング事業を安定して継続することができるものと期待させるような説明がされたからに他ならないと認められるところである。
(2)  ところが、契約後の実態を見ると、前1(四)のとおり、被告LCAは、原告佐藤の再三にわたる要請にもかかわらず、京葉銀行を原告佐藤に紹介することはなく、また、原告佐藤の力量不足を補うようなベテランのスーパーバイザーによる指導・助言等の組織的支援も行わなかったのである。
右の点について、被告LCAは、結果として京葉銀行の紹介ができなかったのは京葉銀行の顧客組織が変わったからであり、原告佐藤を本件フランチャイズ契約に勧誘した当時は京葉銀行がベンチャーリンクの提携金融機関であったことは事実であり、原告佐藤に京葉銀行を紹介することができなかったことについて被告LCAには責任はないと主張するようである。しかし、原告佐藤が被告LCAと本件フランチャイズ契約を締結してから活動を開始するまでは僅か二か月しかなかったこと、他に京葉銀行に代わるような営業拠点の紹介も全くされなかったこと等の事情に照らせば、被告LCAの右主張を採用することはできない。むしろ、勧誘の際には営業拠点を紹介するなどと説明しながら、契約締結後はそれが全くあるいはほとんどされないことは他の原告らに関しても同様に認められることからすれば、そもそも被告LCAは、原告佐藤に説明したような内容あるいは水準の役務ないしサービスの提供をするだけの組織的な体制を整えていなかったものと窺われるところである。そして、右のような傾向は、他の原告らに関しても同様に認められること、前1(三)の勧誘の際の説明が、被告LCAが会社として作成したパンフレットや「提案書」に基づいてされたものであること等を併せ考慮すると、被告LCAは、その業務として、客観的には提供することができない内容あるいは水準の役務ないしサービスを提供することができるかのように説明して、原告佐藤に対し、本件フランチャイズシステムのフランチャイジーになるように勧誘し、本件フランチャイズ契約を締結させたものと認められるのであり、被告LCAとしては、そのような役務ないしサービスを実際には提供することができないことを認識していたものと推認するのが相当である。
(3)  そして、前示1及び右(1) 、(2) に照らせば、被告LCAが、原告佐藤に対し、本件フランチャイズシステムのフランチャイジーになるように勧誘した際に行った、継続的なコンサルティング業務受注の基盤となるべき営業拠点の紹介やスーパーバイザーによる指導等の組織的支援などの被告LCAが提供する役務ないしサービスに関する説明内容と、現実に提供した役務ないしサービスの内容あるいはその水準とのかい離は、本件コンサルティング契約締結の可否を左右するほど著しいものというべきであり、右のようなかい離を認識した上で行った被告LCAの勧誘行為は、いわゆるセールストークとして社会通念上許容される範囲を逸脱した違法なものといわざるを得ず、原告佐藤は、右のような被告LCAの勧誘行為により、本件フランチャイズ契約を締結することによって被告LCAから提供を受けることができる役務ないしサービスの内容あるいはその水準について誤解し、この誤解に基づいて本件フランチャイズ契約を締結するに至ったものと認められるのである。
したがって、被告LCAの原告佐藤に対する本件フランチャイズ契約締結に係る勧誘行為は、不法行為を構成するものというべきである。
また、原告佐藤を本件フランチャイズ契約締結に勧誘した当時、被告LCAの代表取締役であった被告小林忠嗣及び被告小林敬嗣は、代表助締役として被告LCAの業務を統括し、これを執行する立場にあった者であり、被告LCAの業務として右のような勧誘行為が行われていることは、当然認識していたか、少なくとも認識すべき立場にあったのであるから、右被告二名も、右の勧誘行為について不法行為責任を負う。
さらに、原告佐藤の勧誘に当たった被告大島は、当時FC推進部のチーフであり、被告LCAの勧誘部門において責任ある立場にあった者であるから、被告LCAが客観的には提供することができないような内容のあるいは水準の役務ないしサービスを勧誘に当たっての説明内容としていたということを十分に認識することが可能な立場にあったものと認められ、そのような状況の下で原告佐藤に対する勧誘行為を行ったのであるから、被告大島も不法行為責任を負う。
なお、実際に勧誘に当たった者のうち、被告山本及び被告斉藤は、被告LCAの単なる勧誘担当社員であるに過ぎず、被告LCAが契約の前後で担当社員を分離していたことも考慮すると、勧誘時の説明内容と被告LCAがフランチャイジーに対して実際に提供している役務ないしサービスの内容とのかい離を被告山本及び被告斉藤が認識し、または認識し得べきであったものと認めるに足りる的確な証拠がないから、被告山本及び被告斉藤が、右の勧誘行為について不法行為責任を負うものということはできない。また、被告尾崎、被告坂本及び被告吉村については、原告佐藤に対する本件勧誘当時、取締役として具体的にどのような業務を行っており、原告佐藤に対する勧誘行為にどのように関与していたのかについて的確な立証はない。したがって、右の被告らが本件勧誘行為について不法行為責任を負うものと認めることはできない。
(二) 損害
(1)  財産的損害
原告佐藤は、右(一)の違法な勧誘行為により、本件フランチャイズ契約を締結することによって被告LCAから提供を受けることができる役務ないしサービスの内容あるいはその水準について誤解し、実態に即した説明がされていれば締結しなかったものと認められる本件フランチャイズ契約を締結したのであるから、原告佐藤が右契約に基づいて被告LCAに対して支払った加盟金三七〇万八〇〇〇円は、被告LCAらの違法な勧誘行為により被った損害であると認められる。
また、加盟金とほぼ同時期に分割して支払った開業費用合計五三八万九九九〇円に関しては、前1(四)のとおり、教材や資料が送付されたところであるが、前示のとおり、現実に原告佐藤に提供された役務ないしサービスは不十分な内容のものであったところ、そのことはノウハウの提供についても同様であると推認するのが相当であって、本件に顕れた諸般の事情を総合考慮すると、右開業費用のうち少なくとも三割相当額は、提供された教材等のサービスと正当な対価関係にはないものと認められるのであり、したがって、右相当額である一六一万六九九七円は、原告佐藤が被告LCAらの違法な勧誘行為により被った損害であるというべきである。
なお、原告佐藤は、その余の出捐のすべてについても被告LCAらの不法行為と相当因果関係のある損害であると主張するが、千葉への移転に伴う諸費用についてはその損害が発生したことについての的確な立証がなく、その他の出捐については、原告佐藤が、本件フランチャイズ契約締結後、被告LCAからコンサルティング業務についての一応の教育・指導等を受けたこと等をも考慮すると、これらについてまで被告LCAらの右不法行為と相当因果関係のある損害であると認めることはできない。
したがって、被告LCAらの右不法行為と相当因果関係のある原告佐藤の財産的損害は、五三二万四九九七円である。
(2)  慰謝料
原告佐藤は、本件フランチャイズ契約を締結したものの、被告LCAから説明されたような役務ないしサービスの提供を受けることができず、そのため、想定された状況と著しく異なる条件の下にコンサルティング業務を受注するための活動を行うことを余儀なくされ、通常予測される範囲を超える労苦を強いられるなどして、右の財産的損害の填補のみによっては慰謝され得ない精神的苦痛を被ったものと認められる。
右精神的苦痛に対する慰謝料としては、三〇万円が相当と認める。
(3)  弁護士費用
本件訴訟追行の難易、認容額等諸般の事情を考慮すれば、被告LCAらの不法行為と相当因果関係のある弁護士費用は、五五万円であると認めるのが相当である。
3 小括
以上によれば、原告佐藤の請求は、被告LCA、被告小林忠嗣、被告小林敬嗣及び被告大島に対し、連帯して六一七万四九九七円及びこれに対する不法行為の日の後の日である平成六年七月三一日から完済まで民法の定める年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが、その余の請求は、いずれも理由がない。
六  原告エスケービジネスプランについて
1 前示の基礎となる事実及び証拠〔甲D一ないし六号証、乙四、三一ないし三四、五〇、六〇、六五号証、沖証言、原告エスケービジネスプラン代表者島田の供述、被告並木の供述〕並びに弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
(一) 従前の職業及び資格
原告エスケービジネスプラン代表取締役島田謙司(以下「島田」という)は、印刷広告業を営む会社である株式会社祐美企画を経営していた。
(二) 被告LCAと関わることとなるきっかけ
平成二年一月ころ、被告LCAから、CI構築のコンサルティング事業化に関するダイレクトメールが届き、これに興味を覚えた島田は、被告LCAの説明を受けた。
なお、ここでいうCI構築とは、コーポレート・アイデンティティー構築の略称で、企業のロゴマークやシンボルマークをデザインして、企業イメージを高めようとすることをいう。
(三) 被告らによる勧誘
(1)  平成二年一月三一日ころ、島田は、被告LCAの説明を受けた際、「三年後に月額五〇〇万円の付加価値を獲得するために」と題する書面〔甲D一号証〕を示された。右書面には、様々な活動プランが記載してあり、島田のために作成されたものであると認めることはできないが、〈1〉売上目標、〈2〉ルート別受注獲得目標、〈3〉商品力の強化(ノウハウ修得)目標、〈4〉ノウハウ修得計画、〈5〉収支計画、等の事項から構成されており、〈5〉の事項に関しては、一つの一般的な収支計画の一例として、営業利益一年目五一四万円、二年目一三〇四万円、三年目二三四九万円などと記載されている。
(2)  平成二年三月五日ころ、被告LCAの従業員松本(以下「松本」という)が島田を訪れ、「コンサルティング事業化の為の御提案書」と題する書面〔甲D二号証〕を示して説明に当たった。右書面も島田を対象に作成されたものであると認めることはできないが、〈1〉継続受注の獲得に必要なもの、〈2〉その実現のための具体的施策、〈3〉受注獲得に向けて、〈4〉工数計画、〈5〉収支モデル、等の各項目から構成されており、松本は、〈2〉の項目に関して記載されているスーパーバイザーによる支援や顧客獲得についての説明をし、また、被告LCAには、医業経営コンサルタントの国家資格を取得できる講座があるとの説明もした。
同年三月九日ころにも、松本は、島田に対し、「コンサルティング事業進出の為のご提案書」と題する書面〔甲D三号証〕を示して、説明を行った。これも島田を対象に作成されたものであると認めることはできないが、営業拠点開拓の方法や収支見積が記載されているものである。
なお、甲D一ないし三号証は、その作成過程において直接に島田を対象としていなかったものであるとはいえ、松本らによる説明の際に島田に示された場面で、これらが島田を対象としたものではないと明確に留保されていたと認めるに足りる証拠はなく、むしろ、一つの例であるにせよ、実現可能性のあるプランとして示されたものと認められるところである。
(3)  そして、同年二月一八日ころ、松本は、島田に対し、「コンサルティング機能保有に向けたご提案書」と題する資料(以下「島田・提案書」という)〔甲D四号証〕を示し、説明をした。
島田・提案書は、表紙に「株式会社祐美企画代表取締役島田謙司殿」と書かれ、CI構築のコンサルティングを前提とし、祐美企画における「人材育成機能と新規顧客獲得機能を担う為の具体的施策」をまとめた、島田のために作成された提案書である。右提案書は、〈1〉事業展開イメージ、〈2〉展開プラン、〈3〉工数計画、〈4〉収支モデル、の各項目から構成されており、〈4〉の項目に関しては、営業利益が一年目五五万円、二年目九八九万円、三年目二〇五〇万円などと記載されている。また、松本は、島田に対し、仕事はいくらでもあるから顧客を紹介するし、スーパーバイザーによる指導が充実しているという説明をした。ただし、島田・提案書はコンサルタントを別途採用することを前提とした内容となっている。さらに、松本は、医業経営コンサルタントが国家資格になるということを強調した。
(4)  結局、島田は、平成二年四月五日付で、被告LCAとの本件フランチャイズ契約を締結して、同月一九日、原告エスケービジネスプランを設立し、被告LCAに対し、加盟金三七〇万八〇〇〇円及び開業費用四九三万三七〇〇円を支払った。
(四) 原告エスケービジネスプランの活動状況
(1)  島田は、被告LCAから、教材を受け取り、各種の研修に参加した後、原告エスケービジネスプランとして、それまで島田と取引関係のあった会社からCI構築のコンサルタント事業の依頼を受けた。
しかし、被告LCAから新規顧客を紹介してもらえないことから、平成三年一一月ころ、被告LCA主催の事業者向け説明会の後、被告LCAの担当者に対し、顧客を紹介してくれるよう島田が申し入れたところ、右担当者からは、専担(被告LCAが採用し、フランチャイジーの下で営業活動やコンサルティング業務を行う者)を雇うように勧められた。右担当者の説明によれば、専担を置くことですべてが被告LCAの言うように回るようになるとのことであった。そこで、島田は、不本意ながら専担を一名雇ったが、この専担が新規顧客を獲得したことはなく、結局新規顧客の開拓にとって役に立たなかった。また、その後も被告LCAから顧客が紹介されることはなく、かえって、島田が自ら開拓するよう話される始末であった。
(2)  また、島田は、資格を取るように被告LCAに勧められ、DIPS(知的生産向上システム)の研修も受講した。
島田は、被告LCA側の事情により医業経営コンサルタントの養成講座を被告LCA以外の団体で受講したが、医業経営コンサルタントが国家資格になることはなかったし、被告LCAの養成講座が資格取得の認定講座となったのはかなり後になってからのことであった。
(3)  結局、原告エスケービジネスプランは、平成三年から五年までに、延べ一一件のコンサルティング業務を受注し、その業務報酬として八九二万三〇〇〇円を獲得したが、受注先はすべて島田が経営する会社あるいはその取引先であり、営業利益は総額約一三〇万円に過ぎなかった。
2 以上で認定・摘示した事実に基づき、原告エスケービジネスプランの請求の当否について判断する。
(一) 被告らの不法行為の成否
(1)  松本は、前1(三)のとおり、島田に対して、本件コンサルティング契約の締結を勧誘するに際し、仕事はいくらでもあるから被告LCAがこれを回すこと及びスーパーバイザーによる適切な指導がなされるのでCI構築のコンサルティング事業の経験がなくてもすぐに軌道に乗ることを強調して説明したものと認められるところである。そして、その結果として得られる収入についても、島田を対象とした提案書に具体的な数字を記載することで、それだけの収入を得ることがかなり高い蓋然性のあることであると島田に受け取らせるような説明をしたものである。
既に印刷広告業等を営む会社の経営を行っており、その経営も順調であった島田が、業務内容を拡大し、更なる利益追求を図ろうとして、以前から興味のあったCI構築のコンサルティング事業に乗り出そうとするに当たっては、新規事業を行うことが、本業の顧客拡大につながるか否か、そして、必要経費と売上高との関係から、事業として展開するだけの意味のある利益が上がるか否かが最大の関心事であったものと推察されるところである(前者については、商品力の強化等として島田・提案書にも明確にうたわれている。)。これに対して、被告LCAは、受注の獲得は容易であること、スーパーバイザーによる指導・助言等の組織的な支援体制があるのでコンサルティング業務を円滑に行うことができること及び相当の営業利益が見込めることを売り物にして、島田をフランチャイジーになるよう勧誘したものである。会社の経営者であるとはいえ、島田が約九〇〇万円もの金銭を支払ってまで被告LCAと本件フランチャイズ契約を締結し、新規事業に乗り出そうとしたのは、被告LCAの勧誘担当者であった松本により右の諸点が強調されたからに他ならないと認められるところである。
(2)  ところが、契約後の実態を見ると、前1(四)のとおり、被告LCAは、島田が設立した原告エスケービジネスプランに対し顧客を紹介することはなく、原告エスケービジネスプランは、専ら島田のそれまでの取引先に対する営業活動を行ってようやく受注が得られるような状況だったのであり、新規顧客の獲得という目的は全く達成されていないし、もとより松本が説明したような営業利益はおよそ達成されていないのである。さらに、スーパーバイザーによる指導等の組織的な支援が十分になされた形跡はないばかりか、契約締結後に雇い入れることを勧められた専担も役に立たなかったところである。
このような事情に加え、島田に対する当初の勧誘の段階で示された提案書が一般の経営コンサルティング事業に関する提案書であって、被告LCAは、CI構築のためのコンサルティング業務が一般のコンサルティング業務より領域が狭く、事業計画等を他のフランチャイジーと同様に扱うことができない性質のものではあることを看過しているものと窺われること、さらには、島田・提案書そのものも一般の提案書と同様の手法で作成されており、必ずしもCI構築の特殊性に十分に配慮したものとは窺われないことを考慮すると、そもそも勧誘に際して島田に説明した内容あるいは水準の役務ないしサービスは、客観的に見て被告LCAにおいて提供することができるものではなかったと窺われるところである。
そして、右のような傾向は、他の原告らに関しても同様に認められること、前1(三)の勧誘の際の説明が、被告LCAが会社として作成したパンフレットや「提案書」に基づいてされたものであること等を併せ考慮すると、被告LCAは、その業務として、客観的には提供することができない内容あるいは水準の役務ないしサービスを提供することができるかのように説明して、島田に対し、本件フランチャイズシステムのフランチャイジーになるように勧誘し、本件フランチャイズ契約を締結させたものと認められるのであり、被告LCAとしては、そのような役務ないしサービスを実際には提供することができないことを認識していたものと推認するのが相当である。
(3)  そして、前示1及び右(1) 、(2) に照らせば、被告LCAが、島田に対し、本件フランチャイズシステムのフランチャイジーになるように勧誘した際に行った、新規顧客の紹介やスーパーバイザーによる指導等の組織的支援などの被告LCAが提供する役務ないしサービスに関する説明内容と、現実に提供した役務ないしサービスの内容あるいはその水準とのかい離は、本件コンサルティング契約締結の可否を左右するほど著しいものというべきであり、右のようなかい離を認識した上で行った被告LCAの勧誘行為は、いわゆるセールストークとして社会通念上許容される範囲を逸脱した違法なものといわざるを得ず、島田は、右のような被告LCAの勧誘行為により、本件フランチャイズ契約を締結することによって被告LCAから提供を受けることができる役務ないしサービスの内容あるいはその水準について誤解し、この誤解に基づいて本件フランチャイズ契約を締結するに至ったものと認められるのである。
したがって、被告LCAの島田に対する本件フランチャイズ契約締結に係る勧誘行為は、不法行為を構成するものというべきである。
また、島田を本件フランチャイズ契約締結に勧誘した当時、被告LCAの代表取締役であった被告小林忠嗣及び被告小林敬嗣は、代表取締役として被告LCAの業務を統括し、これを執行する立場にあった者であり、被告LCAの業務として右のような勧誘行為が行われていることは、当然認識していたか、少なくとも認識すべき立場にあったのであるから、右被告二名も、右の勧誘行為について不法行為責任を負う。
なお、被告尾崎、被告坂本及び被告吉村については、島田に対する本件勧誘当時、取締役として具体的にどのような業務を行っており、島田に対する勧誘行為にどのように関与していたのかについて的確な立証がないから、これらの者が不法行為責任を負うものと認めることはできない。
また、原告エスケービジネスプランは、被告山本についても不法行為責任があると主張するが、被告山本が島田の勧誘に当たったと認めるに足りる証拠はない。
(二) 損害
(1)  財産的損害
島田は、右(一)の違法な勧誘行為により、本件フランチャイズ契約を締結することによって被告LCAから提供を受けることができる役務ないしサービスの内容あるいはその水準について誤解し、実態に即した説明がされていれば締結しなかったものと認められる本件フランチャイズ契約を締結したのであるから、原告エスケービジネスプランが右契約に基づいて被告LCAに対して支払った加盟金三七〇万八〇〇〇円は、被告LCAらの違法な勧誘行為により被った損害であると認められる。
また、加盟金と同時に支払った開業費用四九三万三七〇〇円に関しては、前1(四)のとおり、教材が交付されたところであるが、前示のとおり、現実に原告エスケービジネスプランに提供された役務ないしサービスは不十分な内容のものであったところ、そのことはノウハウの提供についても同様であると推認するのが相当であって、本件に顕れた諸般の事情を総合考慮すると、右開業費用のうち少なくとも三割相当額は、提供された教材等のサービスと正当な対価関係にはないものと認められるのであり、したがって、右相当額である一四八万〇一一〇円は、原告エスケービジネスプランが被告LCAらの違法な勧誘行為により被った損害であるというべきである。
なお、原告エスケービジネスプランは、その余の出捐のすべてについても被告LCAらの不法行為と相当因果関係のある損害であると主張するが、原告エスケービジネスプランは、本件フランチャイズ契約締結後、被告LCAからコンサルティング業務についての一応の教育・指導等を受け、ある程度の受注を得ることができたこと、医業経営コンサルタントの資格自体は有効なものとして取得できたものと窺われること等を考慮すると、これらについてまで被告LCAらの右不法行為と相当因果関係のある損害であると認めることはできない。
したがって、被告LCAらの右不法行為と相当因果関係のある原告エスケービジネスプランの財産的損害は、五一八万八一一〇円である。
(2)  慰謝料
原告エスケービジネスプランは、実質的には島田の個人企業であるところ、島田は、本件フランチャイズ契約を締結したものの、被告LCAから説明されたような役務ないしサービスの提供を受けることができず、そのため想定された状況と著しく異なる条件の下にコンサルティング業務を受注するための活動を行うことを余儀なくされ、通常予測される範囲を超える労苦を強いられるなどして、右の財産的損害の填補のみによっては慰謝され得ない精神的苦痛を被ったものと認められる。
右精神的苦痛に対する慰謝料としては、三〇万円が相当と認める。
(3)  弁護士費用
本件訴訟追行の難易、認容額等諸般の事情を考慮すれば、被告LCAらの不法行為と相当因果関係のある弁護士費用は、五五万円であると認めるのが相当である。
3 小括
以上によれば、原告エスケービジネスプランの請求は、被告LCA、被告小林忠嗣及び被告小林敬嗣に対し、連帯して六〇三万八一一〇円及びこれに対する不法行為の日の後の日である平成六年三月三一日から完済まで民法の定める年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが、その余の請求は、いずれも理由がない。
七  原告久保について
1 前示の基礎となる事実及び証拠〔甲E一ないし六号証、乙五、三一ないし三四、五〇、六〇、六五号証、沖証言、原告久保の供述、被告並木の供述〕並びに弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
(一) 従前の職業及び資格
原告久保は、コンピューターシステム開発及び給水管更生工事を業務内容とする株式会社テクニカルサービスシステムを経営していた者である。経営コンサルティング業務の経験はなく、国家資格も特に保有していなかった。
(二) 被告LCAと関わることとなるきっかけ
原告久保は、以前に銀行員の勧めで参加したセミナーで被告LCAの資料を入手したことがあったが、平成二年五、六月ころ、友人から被告LCA営業推進部の被告山本を紹介された。
(三) 被告らによる勧誘
(1)  被告山本は、何度か原告久保を訪れ、被告LCAについての説明書〔甲E二ないし四号証〕を示しながら、本件フランチャイズシステムのメリットとして、スーパーバイザーによる営業活動の徹底した支援が得られることや拠点開拓活動による営業構造の改善が図られること等を挙げ、コンサルティング事業の有望性と利益性を説き、営業利益として一年目三二万円、二年目二五二万円といった数字が期待できるとし、被告LCAのセミナーの開催実績等を説明した。
そして、被告LCAの標準化されたノウハウはどの職種にも適合する経営指導能力を短期間に身につけることを可能にするとし、経営コンサルティングの経験がなく、資格もない原告久保でも、数か月でコンサルタントとしてのノウハウを修得することができる、また、原告久保が自信がつくまでは被告LCAが紹介する会社に対する指導を指導員とともに行っていればよいとの趣旨の説明をし、さらに、医業経営コンサルタントが国家資格になるので今のうちに取得しておいた方がよいなどと勧めた。
(2)  原告久保は、右のような被告山本の説明を信じて、平成二年一一月九日付で被告LCAと本件フランチャイズ契約を締結した(なお、契約名義は、原告久保が経営する株式会社テクニカルシステムサービスとなっている。)。ただし、平成三年三月三一日までは、休眠期間とし、原告久保が実際にフランチャイジーとして活動を開始したのは、同年四月一日のことである。
(四) 原告久保の活動状況等
(1)  本件フランチャイズ契約締結後、被告LCAから原告久保に対して教材や資料一式が交付された。
一方、原告久保の担当スーパーバイザーである田中は、被告LCA主催のセミナー参加者等を対象として、原告久保とともに営業活動を行い、その結果、原告久保は平成四年五月に一件の受注を得た。また、原告久保は、被告LCAから平成五年に二件の仕事の紹介を得、アシスタントとしてコンサルタント業務に関わった。
原告久保は、その後も被告LCAに対し仕事を紹介してくれるように要求したが、紹介は得られず、結局、原告久保が被告LCAから紹介を受け、業務を行ったのは右の三件だけであり、営業利益は一七七万八〇〇〇円であった。
また、原告久保は、被告LCA側の事情により、被告LCA以外の団体で医業経営コンサルタントの養成講座を受講したが、医業経営コンサルタントが国家資格とならなかったことは、六1(四)で認定したとおりである。
(2)  原告久保は、自信がつくまでは自らの人脈で顧客開拓はしたくないと考えていたこともあり、右に認定・摘示した以上のコンサルティング活動はしていない。
2 以上で認定・摘示した事実に基づき、原告久保の請求の当否について判断する。
(一) 被告らの不法行為の成否について
(1)  被告山本は、前1(三)のとおり、原告久保に対して、本件フランチャイズ契約の締結を勧誘するに際し、原告久保が自らの力で経営コンサルティング業務を行う自信がつくまでは被告LCAが顧客を紹介すること及びスーパーバイザーによる適切な指導等の徹底した支援がされることを強調して説明したものと認められるところである。また、その結果得られる営業利益についても具体的な例を示しながら説明したところである。
会社の経営者ではあるものの、経営コンサルティング業務とは全く縁がなく、右業務に関連する資格も何ら保有していなかった原告久保が経営コンサルティング業務を始めようとするに当たっては、いかにしてそのノウハウを修得できるか、そして、いかにして顧客を獲得するかが最大の関心事であり、心配の種であったはずである。これに対して、被告LCAは、コンサルティング業務の遂行について原告久保に自信が付くまでは顧客を紹介すること及び被告LCAの標準化されたノウハウがスーパーバイザーによる適切な指導等の組織的な支援体制により、数か月の短期間で経営コンサルタントとして必要なノウハウの修得もできることを強調し、これを売り物にして、原告久保をフランチャイジーになるよう勧誘したものである。また、何の国家資格も保有していなかった原告久保にとっては、医業経営コンサルタントという資格(しかも将来国家資格になるというもの)を比較的容易に取得することができるということも魅力の一つであったところである。経営コンサルタント業務について全くの門外漢であった原告久保が、約九〇〇万円もの金銭を支払ってまで被告LCAと本件フランチャイズ契約を締結するに至ったのも、被告LCAの勧誘担当者であった被告山本により右の諸点が強調され、原告久保としても十分事業としてやっていけると思わせるような説明がされたからに他ならないと認められるところである。
(2)  ところが、契約後の実態を見ると、前1(四)のとおり、被告LCAが原告久保に対して顧客を紹介したのは、僅かに三件であり、これは、原告久保において経営コンサルティング能力を修得し、コンサルティング業務について自信を持つに至るのに十分とは決していえない件数というべきである。スーパーバイザーによる支援にしても、久保が活動した内容は、右の三件の顧客に対する指導のアシスタントとしての業務に過ぎないのであるから、徹底した支援がされたというにはほど遠いものといわざるを得ない。
右の点に関し、被告LCAらは、原告久保は、そもそもアシスタントとして契約したのであるかのような主張をするが、被告LCAと交わされた契約書〔乙五号証〕は、他の原告らと同様のフランチャイズ契約を内容とするものであるし、確かに原告久保に自信がつくまではアシスタント業務をしてもらう約束であったと認められるところではあるものの、自信がつくまでの支援が十分にされたものと認められないのは前示のとおりであるから、いずれにせよ被告LCAらの右主張は採用できない。
そして、右のような顧客を紹介するとの説明をしながら十分な紹介をしないという傾向は、他の原告らに関しても同様に認められること、前1(三)の勧誘の際の説明が、被告LCAが会社として作成したパンフレット等に基づいてされたものであること等を併せ考慮すると、被告LCAは、その業務として、客観的には提供することができない内容あるいは水準の役務ないしサービスを提供することができるかのように説明して、原告久保に対し、本件フランチャイズシステムのフランチャイジーになるように勧誘し、本件フランチャイズ契約を締結させたものと認められるのであり、被告LCAとしては、そのような役務ないしサービスを実際には提供することができないことを十分認識していたものと推認するのが相当である。
(3)  そして、前示1及び右(1) 、(2) に照らせば、被告LCAが、原告久保に対し、本件フランチャイズシステムのフランチャイジーになるように勧誘した際に行った、顧客の紹介やスーパーバイザーによる指導等の組織的支援などの被告LCAが提供する役務ないしサービスに関する説明内容と、現実に提供した役務ないしサービスの内容あるいはその水準とのかい離は、本件コンサルティング契約締結の可否を左右するほど著しいものというべきであり、右のようなかい離を認識した上で行った被告LCAの勧誘行為は、いわゆるセールストークとして社会通念上許容される範囲を逸脱した違法なものといわざるを得ず、原告久保は、右のような被告LCAの勧誘行為により、本件フランチャイズ契約を締結することによって被告LCAから提供を受けることができる役務ないしサービスの内容あるいはその水準について誤解し、この誤解に基づいて本件フランチャイズ契約を締結するに至ったものと認められるのである。
したがって、被告LCAの原告久保に対する本件フランチャイズ契約締結に係る勧誘行為は、不法行為を構成するものというべきである。
また、原告久保を本件フランチャイズ契約締結に勧誘した当時、被告LCAの代表取締役であった被告小林忠嗣及び被告小林敬嗣は、代表取締役として被告LCAの業務を統括し、これを執行する立場にあった者であり、被告LCAの業務として右のような勧誘行為が行われていることは、当然認識していたか、少なくとも認識すべき立場にあったのであるから、右被告二名も、右の勧誘行為について不法行為責任を負う。
なお、実際に勧誘に当たった被告山本は、被告LCAの単なる勧誘担当社員であるに過ぎず、被告LCAが契約の前後で担当社員を分離していたことも考慮すると、勧誘時の説明内容と被告LCAがフランチャイジーに対して実際に提供している役務ないしサービスの内容とのかい離を被告山本が認識し、または認識し得べきであったものと認めるに足りる的確な証拠がないから、被告山本が、右の勧誘行為について不法行為責任を負うものということはできない。また、被告尾崎、被告坂本及び被告吉村については、原告久保に対する本件勧誘当時、取締役として具体的にどのような業務を行っており、原告久保に対する勧誘行為にどのように関与していたのかについて的確な立証はない。したがって、右の被告らが本件勧誘行為について不法行為責任を負うものと認めることはできない。
また、原告久保は、被告大島についても不法行為責任があると主張するが、被告大島が原告久保の勧誘に当たったと認めるに足りる証拠はない。
(二) 損害
(1)  財産的損害
原告久保は、右(一)の違法な勧誘行為により、本件フランチャイズ契約を締結することによって被告LCAから提供を受けることができる役務ないしサービスの内容あるいはその水準について誤解し、実態に即した説明がされていれば締結しなかったものと認められる本件フランチャイズ契約を締結したのであるから、原告久保が右契約に基づいて被告LCAに対して支払った加盟金三七〇万八〇〇〇円は、被告LCAらの違法な勧誘行為により被った損害であると認められる。
また、加盟金とほぼ同時に支払った開業費用五二九万四二〇〇円に関しては、前1(四)のとおり、教材や資料が交付されたところであるが、前示のとおり、現実に原告久保に提供された役務ないしサービスは不十分な内容のものであったところ、そのことはノウハウの提供についても同様であると推認するのが相当であって、本件に顕れた諸般の事情を総合考慮すると、右開業費用のうち少なくとも三割相当額は、提供された教材等のサービスと正当な対価関係にはないものと認められるのであり、したがって、右相当額である一五八万八二六〇円は、被告LCAらの違法な勧誘行為により被った損害であるというべきである。
なお、原告久保は、その余の出捐のすべてについても被告LCAらの不法行為と相当因果関係のある損害であると主張するが、原告久保は、本件フランチャイズ契約締結後、被告LCAからコンサルティング業務についての一応の教育・指導等を受け、ある程度のアシスタント業務を行ったこと、医業経営コンサルタントの資格自体は有効なものとして取得できたものと窺われること等をも考慮すると、これらについてまで被告LCAらの右不法行為と相当因果関係のある損害であると認めることはできない。
したがって、被告LCAらの右不法行為と相当因果関係のある原告久保の財産的損害は、五二九万六二六〇円である。
(2)  慰謝料
原告久保は、本件フランチャイズ契約を締結したものの、被告LCAから説明されたような役務ないしサービスの提供を受けることができず、そのため、コンサルティング業務を遂行するに必要な能力を身に付けるに至らなかったなど、右の財産的損害の填補のみによっては慰謝され得ない精神的苦痛を被ったものと認められる。
右精神的苦痛に対する慰謝料としては、三〇万円が相当と認める。
(3)  弁護士費用
本件訴訟追行の難易、認容額等諸般の事情を考慮すれば、被告LCAらの不法行為と相当因果関係のある弁護士費用は、五五万円であると認めるのが相当である。
3 小括
以上によれば、原告久保の請求は、被告LCA、被告小林忠嗣及び被告小林敬嗣に対し、連帯して六一四万六二六〇円及びこれに対する不法行為の日の後の日である平成六年三月三一日から完済まで民法の定める年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが、その余の請求は、いずれも理由がない。
八  原告佐々木について
1 前示の基礎となる事実及び証拠〔甲F一ないし五号証、乙一一ないし一三、三一ないし三四、五〇、六〇、六五、六六号証、沖証言、原告佐々木の供述、被告並木の供述〕並びに弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
(一) 従前の職業及び資格
原告佐々木は、事務機等の販売会社の営業職として働いていたが、中小企業診断士の資格獲得のための勉強をしており、二次試験まで合格していた(本件フランチャイズ契約締結後に最終合格)。
(二) 被告LCAと関わることとなるきっかけ
平成四年九月上旬ころ、中小企業診断士の資格取得のための学習中であった原告佐々木は、企業診断専門誌に掲載された被告LCAのフランチャイジー募集広告を見て、被告LCAに対し、電話で問い合わせをした。その結果、被告LCAの事務所を訪問して説明を聞くこととなった。
(三) 被告らによる勧誘
(1)  被告LCAを訪問した原告佐々木は、被告並木及び被告LCAの従業員星野から「総合コンサルティング事業展開に向けた御提案」と題する書面〔甲F一号証〕の交付を受け、被告LCAの支援システムや活動イメージについての説明を受けた。右書面は、〈1〉ターゲット選定、〈2〉商品政策、〈3〉コンサルティング販路政策、〈4〉リクルーティング・トレーニング機能、〈5〉スーパーバイジング機能、〈6〉2年間の行動計画、〈7〉5年間の収支モデル、の各項目から構成された一般的な説明書である。被告並木らによる説明では、金融機関とタイアップした経営セミナーが開催され、被告LCAのフランチャイジーになればその参加企業の受注フォローを全面的に任せるとのことだった。
(2)  その後、再び被告LCAの事務所を訪れた原告佐々木に対し、被告LCAの担当者からパンフレット等〔甲F二、三号証〕を示して説明があった。
(3)  平成四年一〇月一九日、被告LCAにおいて、原告佐々木は、被告並木らから同日付けの「総合コンサルティング事業展開に向けた御提案」と題する資料(以下「佐々本・提案書」という)〔甲F四号証〕を示され、具体的な説明と勧誘を受けた。
佐々木・提案書は、表紙に「佐々木隆行殿」と書かれ、原告佐々木のために作成された提案書である。右提案書は、〈1〉本業計画ラフ案、〈2〉5年間の収支モデル、の各項目から構成されており、〈1〉の項目に関しては、受注活動中の「拠点開拓ルート」に関し、「LCAで調整させて頂いた上で、タイアップ金融機関をご活用頂くこともございます。」、「SV(スーパーバイザー)が代行」などの記載があり、また、〈2〉の項目に関しては、初年度の営業利益が六二九万円であるとの記載がある。また、被告並木らは、被告LCAやその関連会社と提携関係にある金融機関を営業拠点として紹介すること、スーパーバイザーにより全体スケジュールの指導や個別セミナーフォローの支援がされること等の説明を資料等を示しながら行った。
(4)  そこで、原告佐々木は、右の佐々木・提案書の記載によればセミナーからの見込み客確保が保証されている、他のフランチャイジーの受注実績からみて高い営業利益が得られる、などと考え、被告LCAと本件フランチャイズ契約を締結することを決意し、平成四年一一月上旬、同年一〇月二〇日付で被告LCAと本件フランチャイズ契約を締結した。
なお、原告佐々木は、被告LCAに対し、加盟金等を支払ったが、これらは、千代田生命の消費者ローンを利用することでまかなった。
また、原告佐々木は平成五年四月三〇日までを活動休止期間とし、実際に活動を開始したのは、勤務先を退職したころである平成六年三月のことであった。
(四) 原告佐々木の活動状況等
(1)  フランチャイジーとしての活動を開始した原告佐々木は、コンサルティング事業の見込客を集める目的で経営セミナーを開催するため、被告LCAに対し、営業拠点の紹介等を再三にわたって要求したが、結局紹介は全く得られなかった(営業拠点の紹介がなかったことについては争いがない)。
(2)  そこで、原告佐々木は、開業後である平成六年六月と七月、独自に企業向けのセミナーを二回開催し、その参加企業から継続受注を得るべく訪問活動をしたが、結局受注を得ることができたのは一社のみであった。その際の受注金額は一五〇〇万円であったが、原告佐々木が得ることのできた営業利益は二〇〇万円に過ぎず、しかも、そのうちの一割がロイヤリティとして被告LCAに支払われた。
なお、原告佐々木を担当したスーパーバイザーが、原告佐々木がセミナーを開催する際に積極的に協力したと認めるに足りる証拠はないし、原告佐々木の営業活動の過程で、スーパーバイザーが同行することも一応はあったが、担当スーパーバイザーが頻繁に交代するなど、組織的な指導がされたことはなく、十分な支援があったとは認められない。
2 以上で認定・摘示した事実に基づき、原告佐々本の請求の当否について判断する。
(一) 被告らの不法行為の成否について
(1)  被告並木らは、前1(三)のとおり、原告佐々木に対して、本件フランチャイズ契約の締結を勧誘するに際し、営業拠点として金融機関を紹介すること及びスーパーバイザーによる指導等組織的な支援がされることを強調して説明したものと認められるところである。そして、その結果として得られる収入についても、原告佐々木を対象とした提案書に具体的な数字を記載することで、それだけの収入を得ることがかなり高い蓋然性のあることであると原告佐々木に受け取らせるような説明をしたものである。
中小企業診断士の資格取得のための勉強中であり、未だ経営コンサルティング業務の経験を有していなかった原告佐々木が、資格取得と同時に独立してコンサルティング業務を行おうとするに当たっては、いかにして顧客を獲得するか、そして、どのようにして業務を進めていったらよいかが最大の関心事であり、かつ、心配の種であったものと推察されるところである。これに対して、被告LCAは、コンサルティング業務について継続的な受注を可能とするための営業基盤となるような金融機関を紹介すること及びスーパーバイザーによる指導・助言等の組織的な支援体制などを売り物にして、原告佐々木をフランチャイジーになるよう勧誘したものである。それまでは一会社員にすぎず、これから開業しようという原告佐々木が、約九〇〇万円もの金銭を支払ってまで被告LCAと本件フランチャイズ契約を締結するに至ったのも、被告LCAの勧誘担当者であった被告並木らにより、右の諸点が強調されたからに他ならないと認められるところである。
(2)  ところが、契約後の実態を見ると、前1(四)のとおり、被告LCAは、原告佐々木がコンサルティング業務について継続的な受注を得るための営業基盤たる金融機関を紹介することは全くなく、スーパーバイザーによる指導等の組織的な支援も十分には行っていないのである。
そして、右のような傾向は、他の原告らに関しても同様に認められること、前1(三)の勧誘の際の説明が、被告LCAが会社として作成したパンフレットや「提案書」に基づいてされたものであること等を併せ考慮すると、被告LCAは、その業務として、客観的には提供することができない内容あるいは水準の役務ないしサービスを提供することができるかのように説明して、原告佐々木に対し、本件フランチャイズシステムのフランチャイジーになるように勧誘し、本件フランチャイズ契約を締結させたものと認められるのであり、被告LCAとしては、そのような役務ないしサービスを実際には提供することができないことを認識していたものと推認するのが相当である。
(3)  そして、前示1及び右(1) 、(2) に照らせば、被告LCAが、原告佐々木に対し、本件フランチャイズシステムのフランチャイジーになるように勧誘した際に行った、継続的なコンサルティング業務受注の基盤となるべき営業拠点の紹介やスーパーバイザーによる指導等の組織的支援などの被告LCAが提供する役務ないしサービスに関する説明内容と、現実に提供した役務ないしサービスの内容あるいはその水準とのかい離は、本件コンサルティング契約締結の可否を左右するほど著しいものというべきであり、右のようなかい離を認識した上で行った被告LCAの勧誘行為は、いわゆるセールストークとして社会通念上許容される範囲を逸脱した違法なものといわざるを得ず、原告佐々木は、右のような被告LCAの勧誘行為により、本件フランチャイズ契約を締結することによって被告LCAから提供を受けることができる役務ないしサービスの内容あるいはその水準について誤解し、この誤解に基づいて本件フランチャイズ契約を締結するに至ったものと認められるのである。
したがって、被告LCAの原告佐々木に対する本件フランチャイズ契約締結に係る勧誘行為は、不法行為を構成するものというべきである。
また、原告佐々木を本件フランチャイズ契約締結に勧誘した当時、被告LCAの代表取締役であった被告小林忠嗣及び被告小林敬嗣は、代表取締役として被告LCAの業務を統括し、これを執行する立場にあった者であり、被告LCAの業務として右のような勧誘行為が行われていることは、当然認識していたか、少なくとも認識すべき立場にあったのであるから、右被告二名も、右の勧誘行為について不法行為責任を負う。
さらに、原告佐々木の勧誘に当たった被告並木は、原告佐々木の勧誘時は被告LCAのFC(フランチャイズ)開発部の部長であった者であり、被告LCAの本件フランチャイズシステムへの勧誘部門において責任ある立場を歴任していた者であるから、被告LCAが客観的には提供することができないような内容あるいは水準の役務ないしサービスを勧誘に当たっての説明内容としていたということを十分に認識することが可能な立場にあったものと認められ、そのような状況の下で原告佐々木に対する勧誘行為を行ったのであるから、被告並木も不法行為責任を負う。
(二) 損害
(1)  財産的損害
原告佐々木は、右(一)の違法な勧誘行為により、本件フランチャイズ契約を締結することによって被告LCAから提供を受けることができる役務ないしサービスの内容あるいはその水準について誤解し、実態に即した説明がされていれば締結しなかったものと認められる本件フランチャイズ契約を締結したのであるから、原告佐々木が右契約に基づいて被告LCAに対して支払った加盟金三七〇万八〇〇〇円は、被告LCAらの違法な勧誘行為により被った損害であると認められる。
また、加盟金と同時に支払った開業費用五二九万四二〇〇円に関しては、教材や資料が送付されたと推認されるところであるが、前示のとおり、現実に原告佐々木に提供された役務ないしサービスは不十分な内容のものであったところ、そのことはノウハウの提供についても同様であると推認するのが相当であって、本件に顕れた諸般の事情を総合考慮すると、右開業費用のうち少なくとも三割相当額は、提供された教材等のサービスと正当な対価関係にはないものと認められるのであり、したがって、右相当額である一五八万八二六〇円は、原告佐々木が被告LCAらの違法な勧誘行為により被った損害であるというべきである。
なお、原告佐々木は、その余の出捐のすべてについても被告LCAらの不法行為と相当因果関係のある損害であると主張するが、原告佐々木は、本件フランチャイズ契約締結後、被告LCAからコンサルティング業務についての一応の教育・指導等を受け、一社のみではあるが受注を得ることができたこと等を考慮すると、これらについてまで被告LCAらの右不法行為と相当因果関係のある損害であると認めることはできない。
したがって、被告LCAらの右不法行為と相当因果関係のある原告佐々木の財産的損害は、五二九万六二六〇円である。
(2)  慰謝料
原告佐々木は、本件フランチャイズ契約を締結したものの、被告LCAから説明されたような役務ないしサービスの提供を受けることができず、そのため、想定された状況と著しく異なる条件の下に、コンサルティング業務を受託するための活動を行うことを余儀なくされるなど、通常予測される範囲を超える労苦を強いられ、右の財産的損害の填補のみによっては慰謝され得ない精神的苦痛を被ったものと認められる。
右精神的苦痛に対する慰謝料としては、三〇万円が相当と認める。
(3)  弁護士費用
本件訴訟追行の難易、認容額等諸般の事情を考慮すれば、被告LCAらの不法行為と相当因果関係のある弁護士費用は、五五万円であると認めるのが相当である。
3 小括
以上によれば、原告佐々木の請求は、被告LCA、被告小林忠嗣、被告小林敬嗣及び被告並木に対し、連帯して六一四万六二六〇円及びこれに対する不法行為の日の後の日である平成六年一〇月二〇日から完済まで民法の定める年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが、その余の請求は、いずれも理由がない。
九  原告直林及び原告システム・コミュニケーションについて
1 前示の基礎となる事実及び証拠〔甲G一号証、乙二五ないし二九、三一ないし三四、五〇、六〇、六五号証、沖証言、原告直林の供述、被告並木の供述〕並びに弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
(一) 従前の職業及び資格
原告直林は、モービル石油経営相談課に勤務していたが、中小企業診断士の資格を有しており、経営コンサルタントとしての独立開業をめざしていた者である。
(二) 被告LCAと関わることとなるきっかけ
平成元年一二月ころ、原告直林は、企業診断の専門誌に被告LCAの中小企業診断士に対するセミナー開催の広告が掲載されているのを見てこれに興味を持ち、被告LCAに電話で問い合わせたところ、被告LCAから資料が送付されてきた。そして、原告直林は、被告LCAが開催するセミナーに参加した。
(三) 被告らによる勧誘
(1)  原告直林が参加したセミナーの終了後、原告直林は、本件フランチャイズシステムについて被告並木から説明を受けた。そこでは、被告LCAが中小企業のコンサルティングを行うための標準化されたノウハウを提供できること、金融機関等の営業拠点を紹介することができること、等の説明がされ、また、原告直林の居住地である湘南地区のフランチャイジーの定員枠は残り僅かであり、定員に達してしまうと千葉方面で営業展開しなければならない(なお、千葉では被告LCAは京葉銀行と密接な関係があるので、そこでも十分な成果をあげることは可能であるとのことであった)との話があった。
その後も、平成二年一月ころ、被告並木から、原告直林に対し、早く本件フランチャイズシステムに加入するように勧誘する電話があり、湘南地区の定員枠が一つしか残されていないことが強調された。
(2)  そこで、原告直林が、被告LCAを訪問すると、被告吉村及び被告並木が、甲A二号証のようなパンフレットや原告直林を対象とした「提案書」を示しながら、他のフランチャイジーの成功事例を説明し、被告LCAがスーパーバイザーの指導等により全面的に支援すること、医業経営コンサルタントが近く国家資格になり、歯科医院をターゲットにコンサルティング事業を行えば事業として安定すること等の説明をした。
(3)  その結果、原告直林は、平成二年二月一五日、被告LCAとの間で、本件フランチャイズ契約を締結した。なお、原告直林は、同月末日までは活動停止期間とし、同年三月一日から、活動を開始した。
また、加盟金及び開業費用合計九〇〇万円余りは、千代田生命の消費者ローンを利用してまかなった。
(四) 原告直林及び原告システム・コミュニケーションの活動状況等
(1)  原告直林は、平成二年四月七日、原告システム・コミュニケーションを設立し、経営コンサルティング業務はこの会社の業務として行った。
(2)  原告システム・コミュニケーションが営業を開始した後、担当スーパーバイザーは、湘南地区の営業拠点の紹介をせず、三浦地区での営業活動を勧めたが、原告直林はこれを断った。なお、被告LCAから、一応、営業拠点ということで大東京火災海上保険の東京営業本部が紹介されたが、これも営業拠点と呼べるようなものでなく(実際は、直林に大東京火災の営業について代理店契約を結んで協力してもらいたいというものであった。)、その他には、営業拠点となるような金融機関の紹介は全くされなかった。そこで、原告直林は、知人の勤務先やそこから紹介された金融機関等を訪問し、営業拠点の開拓に努め、セミナーを開催するなどした。その際には、スーパーバイザーが同行することもあったが、セミナーを通じて受注を得られたことはなかった。
医業経営コンサルタントが国家資格とならなかったことは、六1(四)で認定したとおりである。
結局、原告直林及び原告システム・コミュニケーションが被告LCAのフランチャイジーとして活動したのは、平成二年三月一日から平成三年二月二〇日まで、及び平成四年七月二一日から平成五年一月二〇日までの約一年半に過ぎず、その間に得た営業利益は、約三〇〇万円であり、それらはいずれも原告直林独自の活動の結果獲得した受注によるものである。
2 以上で認定・摘示した事実に基づき、原告直林及び原告システム・コミュニケーションの請求の当否について判断する。
(一) 被告らの不法行為
(1)  被告吉村及び被告並木は、前1(三)のとおり、原告直林に対して、本件フランチャイズ契約の締結を勧誘するに際し、営業拠点として金融機関を紹介すること及びスーパーバイザーによる指導等の組織的な支援がされることを強調して説明したものと認められるところである。
中小企業診断士の資格は保有していたが、独立開業の経験はなかった原告直林が、それまで勤務した会社を退職し、独立して経営コンサルティング業務を行おうとするに当たっては、いかにして顧客を獲得するか、そして、どのようにして業務を進めていったらよいかが最大の関心事であり、かつ、心配の種であったものと推察されるところである。これに対して、被告LCAは、コンサルティング業務について継続的な受注を可能とするための営業基盤となるような金融機関を紹介すること及びスーパーバイザーによる指導・助言等の組織的な支援体制などを売り物にして、原告直林をフランチャイジーになるよう勧誘したものである。これまでに独立して経営コンサルティング業務を行った経験のない原告直林が、約九〇〇万円もの金銭を支払ってまで被告LCAと本件フランチャイズ契約を締結するに至ったのも、被告LCAの勧誘担当者であった被告並木らにより右の諸点が強調されたからに他ならないと認められるところである。
(2)  ところが、契約後の実態を見ると、前1(四)のとおり、被告LCAは、原告直林がコンサルティング業務について継続的な受注を得るための営業基盤として金融機関を紹介することはなく、スーパーバイザーによる指導等の組織的な支援も十分に行っていないのである。さらに、被告並木らは、湘南地区のフランチャイジーの空き枠が一つしか残っていないなどとして原告直林を勧誘しておきながら、契約締結後には三浦地区での活動を勧めるなどしているところである。
そして、右のような傾向は、他の原告らにおいても同様に認められること、前1(三)の勧誘の際の説明が、被告LCAが会社として作成したパンフレットや「提案書」に基づいてされたものであること等を併せ考慮すると、被告LCAは、その業務として、客観的には提供することができない内容あるいは水準の役務あるいはサービスを提供することができるかのように説明して、原告直林に対し、本件フランチャイズシステムのフランチャイジーになるように勧誘し、本件フランチャイズ契約を締結させたものと認められるのであり、被告LCAとしては、そのような役務ないしサービスを実際には提供することができないことを認識していたものと推認するのが相当である。
(3)  そして、前示1及び(1) 、(2) に照らせば、被告LCAが、原告直林に対し、本件フランチャイズシステムのフランチャイジーになるように勧誘した際に行った、継続的なコンサルティング業務受注の基盤となるべき営業拠点の紹介やスーパーバイザーによる指導等の組織的支援などの被告LCAが提供する役務ないしサービスに関する説明内容と、現実に提供した役務ないしサービスの内容あるいはその水準とのかい離は、本件コンサルティング契約締結の可否を左右するほど著しいものというべきであり、右のようなかい離を認識した上で行った被告LCAの勧誘行為は、いわゆるセールストークとして社会通念上許容される範囲を逸脱した違法なものといわざるを得ず、原告直林は、右のような被告LCAの勧誘行為により、本件フランチャイズ契約を締結することによって被告LCAから提供を受けることができる役務ないしサービスの内容あるいはその水準について誤解し、この誤解に基づいて本件フランチャイズ契約を締結するに至ったものと認められるのである。
したがって、被告LCAの原告直林に対する本件フランチャイズ契約締結に係る勧誘行為は、不法行為を構成するものというべきである。
また、原告直林を本件フランチャイズ契約締結に勧誘した当時、被告LCAの代表取締役であった被告小林忠嗣及び被告小林敬嗣は、代表取締役として被告LCAの業務を統括し、これを執行する立場にあった者であり、被告LCAの業務として右のような勧誘行為が行われていることは、当然認識していたか、少なくとも認識すべき立場にあったのであるから、右被告二名も、右の勧誘行為について不法行為責任を負う。
さらに、原告直林の勧誘に当たった被告吉村は、後に被告LCAのFC(フランチャイズ)推進部長の肩書きを有する取締役になった者であり、また、被告並木は、原告直林の勧誘時はFC推進部課長であった者であり、いずれも被告LCAの本件フランチャイズシステムへの勧誘部門において責任ある立場にあった者であるから、被告LCAが客観的には提供することができないような内容あるいは水準の役務ないしサービスを勧誘に当たっての説明内容としていたということを十分に認識することが可能な立場にあったものと認められ、そのような状況の下で原告滝に対する勧誘行為を行ったのであるから、右二名も不法行為責任を負う。
(二) 損害
(1)  財産的損害
原告直林は、右(一)の違法な勧誘行為により、本件フランチャイズ契約を締結することによって被告LCAから提供を受けることができる役務ないしサービスの内容あるいはその水準について誤解し、実態に即した説明がされていれば締結しなかったものと認められる本件フランチャイズ契約を締結したのであるから、原告直林が右契約に基づいて被告LCAに対して支払った加盟金三七〇万八〇〇〇円は、被告LCAらの違法な勧誘行為により被った損害であると認められる。
また、加盟金と同時に支払った開業費用五二九万四二〇〇円に関しては、教材や資料が送付されたと推認されるところであるが、前示のとおり、現実に原告直林及び原告システム・コミュニケーションに提供された役務ないしサービスは不十分な内容のものであったところ、そのことはノウハウの提供についても同様であると推認するのが相当であって、本件に顕れた諸般の事情を総合考慮すると、右開業費用のうち少なくとも三割相当額は、提供された教材等のサービスと正当な対価関係にはないものと認められるのであり、したがって、右相当額である一五八万八二六〇円は、原告直林が被告LCAらの違法な勧誘行為により被った損害であるというべきである。
なお、原告直林及び原告システム・コミュニケーションは、その余の出捐のすべてについても被告LCAらの不法行為と相当因果関係のある損害であると主張するが、原告システム・コミュニケーションは、本件フランチャイズ契約締結後、被告LCAからコンサルティング業務についての一応の教育・指導等を受け、ある程度の受注を得ることができたこと等を考慮すると、これらについてまで被告LCAらの右不法行為と相当因果関係のある損害であると認めることはできない。
したがって、被告LCAらの右不法行為と相当因果関係のある原告直林の財産的損害は、五二九万六二六〇円である。
(2)  慰謝料
原告直林は、本件フランチャイズ契約を締結したものの、被告LCAから説明されたような役務ないしサービスの提供を受けることができず、そのため、想定された状況と著しく異なる条件の下に、コンサルティング業務を受託するための活動を行うことを余儀なくされるなど、通常予測される範囲を超える労苦を強いられ、右の財産的損害の填補のみによっては慰謝されない精神的苦痛を被ったものと認められる。
右精神的苦痛に対する慰謝料としては、三〇万円が相当と認める。
(3)  弁護士費用
本件訴訟追行の難易、認容額等諸般の事情を考慮すれば、被告LCAらの不法行為と相当因果関係のある原告直林についての弁護士費用は、五五万円であると認めるのが相当である。
3 小括
以上によれば、原告直林の請求は、被告LCA、被告小林忠嗣、被告小林敬嗣、被告吉村及び被告並木に対し、連帯して六一四万六二六〇円及びこれに対する不法行為の日の後の日である平成五年一月二九日から完済まで民法の定める年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが、原告直林のその余の請求及び原告システム・コミュニケーションの請求は、いずれも理由がない。
(第四事件)
一  反訴被告が、第二、三(第四事件)1(一)記載の消費貸借契約を締結したこと自体及び同(二)記載のとおり反訴原告が保証契約を締結したことについては、争いがなく、乙六三、六四号証及び弁論の全趣旨によれば、同(三)及び同(四)の事実を認めることができる。
したがって、反訴被告は、反訴原告に対し、八三一万二七四三円の求償金支払債務を負う。
また、右の保証契約は、少なくとも反訴原告にとり商行為(商法五〇三条)に当たることは明らかであるから、反訴被告は、反訴原告に対し、商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払義務を負う。
二  よって、反訴原告の反訴被告に対する請求は、理由がある。
第四  結論
右のとおりであるから、原告らの請求は、主文一ないし七に掲げる限度で理由があるからその限度でこれらを認容し、その余は、理由がないからこれらをいずれも棄却し、反訴原告の請求は、理由があるからこれを認容することとし、訴訟の費用の負担について民事訴訟法六一条、六四条本文及び六五条但書を、仮執行の宣言について同法二五九条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 川勝隆之 裁判官 坪井宣幸 裁判官 澤村智子)

 

当事者目録
第一事件原告 滝清志
同 株式会社アテイン
代表者代表取締役 滝清志
同 有限会社日本コンサルティングセンター
代表者代表取締役 永野栄三
同 佐藤雄三
同 株式会社エス ケー ビジネスプラン
代表者代表取締役 島田謙司
同 久保和巳
第二事件原告、第四事件反訴被告 佐々木隆行
第三事件原告 直林直行
同 有限会社システム・コミュニケーション
代表者代表取締役 直林直行
右九名訴訟代理人弁護士 江崎正行
同 瀬戸和宏
訴訟復代理人弁護士 冨永忠祐
第一ないし第三事件被告、第四事件反訴原告 株式会社日本エル・シー・エー
代表者代表取締役 小林敬嗣
第一ないし第三事件被告 小林忠嗣
同 小林敬嗣
同 並木昭憲
第一・第三事件被告 吉村一哉
第一事件被告 尾崎三昌
同 坂本充
同 山本正人
株式会社日本エル・シー・エー京都本社内
同 大島洋之
同 斉藤守
同 瀬野幸洋
右一一名訴訟代理人弁護士 飯田秀郷
同 栗宇一樹
同 赤堀文信
同 松本直樹
第一・第二事件被告復代理人、第三事件被告代理人、第四事件反訴原告代理人弁護士 和田聖仁
第三事件被告訴訟代理人弁護士 早稲本和徳
請求金額一覧〈省略〉

 

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