【営業代行から学ぶ判例】crps 裁判例 lgbt 裁判例 nda 裁判例 nhk 裁判例 nhk 受信料 裁判例 pl法 裁判例 pta 裁判例 ptsd 裁判例 アメリカ 裁判例 検索 オーバーローン 財産分与 裁判例 クレーマー 裁判例 クレプトマニア 裁判例 サブリース 裁判例 ストーカー 裁判例 セクシャルハラスメント 裁判例 せクハラ 裁判例 タイムカード 裁判例 タイムスタンプ 裁判例 ドライブレコーダー 裁判例 ノンオペレーションチャージ 裁判例 ハーグ条約 裁判例 バイトテロ 裁判例 パタハラ 裁判例 パブリシティ権 裁判例 ハラスメント 裁判例 パワーハラスメント 裁判例 パワハラ 裁判例 ファクタリング 裁判例 プライバシー 裁判例 プライバシーの侵害 裁判例 プライバシー権 裁判例 ブラックバイト 裁判例 ベネッセ 裁判例 ベルシステム24 裁判例 マタニティハラスメント 裁判例 マタハラ 裁判例 マンション 騒音 裁判例 メンタルヘルス 裁判例 モラハラ 裁判例 モラルハラスメント 裁判例 リストラ 裁判例 リツイート 名誉毀損 裁判例 リフォーム 裁判例 遺言 解釈 裁判例 遺言 裁判例 遺言書 裁判例 遺言能力 裁判例 引き抜き 裁判例 営業秘密 裁判例 応召義務 裁判例 応用美術 裁判例 横浜地裁 裁判例 過失割合 裁判例 過労死 裁判例 介護事故 裁判例 会社法 裁判例 解雇 裁判例 外国人労働者 裁判例 学校 裁判例 学校教育法施行規則第48条 裁判例 学校事故 裁判例 環境権 裁判例 管理監督者 裁判例 器物損壊 裁判例 基本的人権 裁判例 寄与分 裁判例 偽装請負 裁判例 逆パワハラ 裁判例 休業損害 裁判例 休憩時間 裁判例 競業避止義務 裁判例 教育を受ける権利 裁判例 脅迫 裁判例 業務上横領 裁判例 近隣トラブル 裁判例 契約締結上の過失 裁判例 原状回復 裁判例 固定残業代 裁判例 雇い止め 裁判例 雇止め 裁判例 交通事故 過失割合 裁判例 交通事故 裁判例 交通事故 裁判例 検索 公共の福祉 裁判例 公序良俗違反 裁判例 公図 裁判例 厚生労働省 パワハラ 裁判例 行政訴訟 裁判例 行政法 裁判例 降格 裁判例 合併 裁判例 婚約破棄 裁判例 裁判員制度 裁判例 裁判所 知的財産 裁判例 裁判例 データ 裁判例 データベース 裁判例 データベース 無料 裁判例 とは 裁判例 とは 判例 裁判例 ニュース 裁判例 レポート 裁判例 安全配慮義務 裁判例 意味 裁判例 引用 裁判例 引用の仕方 裁判例 引用方法 裁判例 英語 裁判例 英語で 裁判例 英訳 裁判例 閲覧 裁判例 学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例 共有物分割 裁判例 刑事事件 裁判例 刑法 裁判例 憲法 裁判例 検査 裁判例 検索 裁判例 検索方法 裁判例 公開 裁判例 公知の事実 裁判例 広島 裁判例 国際私法 裁判例 最高裁 裁判例 最高裁判所 裁判例 最新 裁判例 裁判所 裁判例 雑誌 裁判例 事件番号 裁判例 射程 裁判例 書き方 裁判例 書籍 裁判例 商標 裁判例 消費税 裁判例 証拠説明書 裁判例 証拠提出 裁判例 情報 裁判例 全文 裁判例 速報 裁判例 探し方 裁判例 知財 裁判例 調べ方 裁判例 調査 裁判例 定義 裁判例 東京地裁 裁判例 同一労働同一賃金 裁判例 特許 裁判例 読み方 裁判例 入手方法 裁判例 判決 違い 裁判例 判決文 裁判例 判例 裁判例 判例 違い 裁判例 百選 裁判例 表記 裁判例 別紙 裁判例 本 裁判例 面白い 裁判例 労働 裁判例・学説にみる交通事故物的損害 2-1 全損編 裁判例・審判例からみた 特別受益・寄与分 裁判例からみる消費税法 裁判例とは 裁量労働制 裁判例 財産分与 裁判例 産業医 裁判例 残業代未払い 裁判例 試用期間 解雇 裁判例 持ち帰り残業 裁判例 自己決定権 裁判例 自転車事故 裁判例 自由権 裁判例 手待ち時間 裁判例 受動喫煙 裁判例 重過失 裁判例 商法512条 裁判例 証拠説明書 記載例 裁判例 証拠説明書 裁判例 引用 情報公開 裁判例 職員会議 裁判例 振り込め詐欺 裁判例 身元保証 裁判例 人権侵害 裁判例 人種差別撤廃条約 裁判例 整理解雇 裁判例 生活保護 裁判例 生存権 裁判例 生命保険 裁判例 盛岡地裁 裁判例 製造物責任 裁判例 製造物責任法 裁判例 請負 裁判例 税務大学校 裁判例 接見交通権 裁判例 先使用権 裁判例 租税 裁判例 租税法 裁判例 相続 裁判例 相続税 裁判例 相続放棄 裁判例 騒音 裁判例 尊厳死 裁判例 損害賠償請求 裁判例 体罰 裁判例 退職勧奨 違法 裁判例 退職勧奨 裁判例 退職強要 裁判例 退職金 裁判例 大阪高裁 裁判例 大阪地裁 裁判例 大阪地方裁判所 裁判例 大麻 裁判例 第一法規 裁判例 男女差別 裁判例 男女差别 裁判例 知財高裁 裁判例 知的財産 裁判例 知的財産権 裁判例 中絶 慰謝料 裁判例 著作権 裁判例 長時間労働 裁判例 追突 裁判例 通勤災害 裁判例 通信の秘密 裁判例 貞操権 慰謝料 裁判例 転勤 裁判例 転籍 裁判例 電子契約 裁判例 電子署名 裁判例 同性婚 裁判例 独占禁止法 裁判例 内縁 裁判例 内定取り消し 裁判例 内定取消 裁判例 内部統制システム 裁判例 二次創作 裁判例 日本郵便 裁判例 熱中症 裁判例 能力不足 解雇 裁判例 脳死 裁判例 脳脊髄液減少症 裁判例 派遣 裁判例 判決 裁判例 違い 判決 判例 裁判例 判例 と 裁判例 判例 裁判例 とは 判例 裁判例 違い 秘密保持契約 裁判例 秘密録音 裁判例 非接触事故 裁判例 美容整形 裁判例 表現の自由 裁判例 表明保証 裁判例 評価損 裁判例 不正競争防止法 営業秘密 裁判例 不正競争防止法 裁判例 不貞 慰謝料 裁判例 不貞行為 慰謝料 裁判例 不貞行為 裁判例 不当解雇 裁判例 不動産 裁判例 浮気 慰謝料 裁判例 副業 裁判例 副業禁止 裁判例 分掌変更 裁判例 文書提出命令 裁判例 平和的生存権 裁判例 別居期間 裁判例 変形労働時間制 裁判例 弁護士会照会 裁判例 法の下の平等 裁判例 法人格否認の法理 裁判例 法務省 裁判例 忘れられる権利 裁判例 枕営業 裁判例 未払い残業代 裁判例 民事事件 裁判例 民事信託 裁判例 民事訴訟 裁判例 民泊 裁判例 民法 裁判例 無期転換 裁判例 無断欠勤 解雇 裁判例 名ばかり管理職 裁判例 名義株 裁判例 名古屋高裁 裁判例 名誉棄損 裁判例 名誉毀損 裁判例 免責不許可 裁判例 面会交流 裁判例 約款 裁判例 有給休暇 裁判例 有責配偶者 裁判例 予防接種 裁判例 離婚 裁判例 立ち退き料 裁判例 立退料 裁判例 類推解釈 裁判例 類推解釈の禁止 裁判例 礼金 裁判例 労災 裁判例 労災事故 裁判例 労働基準法 裁判例 労働基準法違反 裁判例 労働契約法20条 裁判例 労働裁判 裁判例 労働時間 裁判例 労働者性 裁判例 労働法 裁判例 和解 裁判例

「営業代行」に関する裁判例(37)平成19年 3月28日 大阪地裁 平14(ワ)11728号 配転無効確認等請求事件 〔NTT西日本(大阪・名古屋配転)事件・第一審〕

「営業代行」に関する裁判例(37)平成19年 3月28日 大阪地裁 平14(ワ)11728号 配転無効確認等請求事件 〔NTT西日本(大阪・名古屋配転)事件・第一審〕

要旨
◆合理化計画に伴って原告らに対して行われた配転命令の一部について、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであり、権利濫用に当たると認められ、慰謝料請求が認容された事例

裁判経過
上告審 平成21年12月 8日 最高裁第三小法廷 決定
控訴審 平成21年 1月15日 大阪高裁 判決 平19(ネ)1401号 配転無効確認等請求控訴事件 〔NTT西日本(大阪・名古屋配転)事件・控訴審〕

評釈
井上耕史・民主法律時報 418号2頁
河村武信・民主法律 271号120頁

裁判年月日  平成19年 3月28日  裁判所名  大阪地裁  裁判区分  判決
事件番号  平14(ワ)11728号
事件名  配転無効確認等請求事件 〔NTT西日本(大阪・名古屋配転)事件・第一審〕
裁判結果  一部却下、一部認容、一部棄却  上訴等  控訴  文献番号  2007WLJPCA03289007

主文
1  原告Dの訴えのうち,被告大阪支店(茨木)に勤務すべき労働契約上の義務がないことの確認を求める訴え及び被告大分支店において勤務すべき労働契約上の地位にあることの確認を求める訴えをいずれも却下する。
2  被告は,原告Eに対し,80万円及びこれに対する平成15年2月20日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
3  被告は,原告Fに対し,40万円及びこれに対する平成15年2月20日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
4  被告は,原告Rに対し,80万円及びこれに対する平成15年2月20日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
5  原告E,同F及び同Rのその余の請求,並びにその余の原告らの請求(原告Dの第1項記載の訴えに係る請求を除く。)を,いずれも棄却する。
6  訴訟費用は,次のとおりの負担とする。
(1) 原告Eに生じた費用は,その3分の1を被告の負担とし,その余を原告Eの負担とする。
(2) 原告Fに生じた費用は,その6分の1を被告の負担とし,その余を原告Fの負担とする。
(3) 原告Rに生じた費用は,その3分の1を被告の負担とし,その余を原告Rの負担とする。
(4) その余の原告らに生じた各費用は,いずれも各原告らの負担とする。
(5) 被告に生じた費用は,その30分の1を被告の負担とし,その36分の1を原告Eの負担とし,その30分の1を原告Fの負担とし,その36分の1を原告Rの負担とし,その余をその余の原告らの負担とする。
7  この判決は,第2ないし第4項に限り,仮に執行することができる。

事実及び理由
第1  当事者の求めた裁判
1  原告ら
(1) 原告D(原告4)について
ア 訴えの交換的変更前の請求の趣旨(被告は,原告D(原告4)の訴えの変更について異議を述べているため,この部分については訴えの取下げがされていないと解する。)
原告D(原告4)が,被告大阪支店(茨木)に勤務すべき労働契約上の義務がないことを確認する。
イ 訴えの交換的変更により追加された請求の趣旨
原告D(原告4)が,被告大分支店において勤務すべき労働契約上の地位にあることを確認する。
(2) 全ての原告ら(原告D(原告4)を含む。)について
被告は,原告らに対し,各300万円及びこれらに対する第1事件原告ら(原告1~4)については平成14年11月29日から,第2事件原告ら(原告5~22)については平成15年2月20日から,第3事件原告(原告23)については平成15年10月31日から各支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
(3) 訴訟費用は,被告の負担とする。
(4) (2)について,仮執行宣言
2  被告
(1) 原告らの請求をいずれも棄却する。
(2) 訴訟費用は,原告らの負担とする。
第2  事案の概要
1  本件は,被告の従業員である原告らが,違法な配転命令を受けたと主張して慰謝料請求をするほか,原告D(原告4)が,その受けた配転命令の効力を争い,配転先に勤務すべき義務のないことの確認と,配転元において勤務する地位の確認を求めている事案である。
2  前提事実(証拠等の掲記のない事実は,当事者間に争いがない。)
(1) 当事者等
ア 原告らは,いずれも,昭和30年代後半から昭和40年代にかけて,日本電信電話公社(以下「旧電電公社」という。)に採用され,その従業員となった者である。
イ 旧電電公社は,昭和60年4月1日,日本電信電話株式会社等に関する法律(昭和59年法律第85号。以下「NTT法」という。)に基づき設立された日本電信電話株式会社(以下「NTT」という。)に一切の権利義務を引き継いで解散した。
これにより,原告らは,NTTの従業員となった。
ウ その後,NTT法の改正によりNTTがいわゆる純粋持株会社となったのに伴い,平成11年7月1日,西日本地域(静岡県,愛知県,岐阜県及び富山県以西の地域)における地域電気通信業務を目的とする株式会社として被告が,東日本地域(上記以外の地域)における地域通信業務を目的とする株式会社として東日本電信電話株式会社(以下「NTT東日本」といい,被告とNTT東日本を併せて「東西地域会社」という。)が設立され,それぞれの地域通信事業を承継した。
これにより,原告らは,被告の従業員となった。
エ 原告らは,NTTグループの労働者で組織する通信産業労働組合(以下「通信労組」という。)の組合員である。
NTTグループの従業員らで組織する労働組合には,通信労組の他に,NTT労働組合(NTTグループ内での多数派組合である。以下「NTT労組」という。)など7つの組合がある。
平成13年3月当時,被告のグループ会社内における通信労組の組合員数は約580名であり,また,被告のグループ会社内における組織率は,通信労組が約0.8%であるのに対し,NTT労組は約99%であった(甲F1の1・3,乙F1の1,乙D57,証人c)。
(2) NTT東西の構造改革
ア 構造改革の実施に至るまでの経緯
(ア) NTTは,平成13年4月16日,「NTTグループ3カ年経営計画(2001~2003年度)について」と題する計画(以下「本件3カ年計画」という。)を発表した(甲A7)。
NTTは,この中で,①東西地域会社の本体機能を企画・戦略,設備構築・管理,サービス開発,法人営業等に特化させ,注文受付,設備保守・運営,故障修理等の業務については,地域単位(県又は複数県を束ねたブロック)の経営資源活用会社等へ業務委託することや,②この施策の実施に併せて,従業員のライフプランの多様化等を踏まえつつ,例えば,退職・再雇用等により雇用形態の多様化・処遇の多様化等に取り組み,人的コストの低減を図ることを表明した。
(イ) 被告は,平成13年5月8日,通信労組に対し,「NTT西日本の構造改革に伴う労働条件諸制度等の見直し等について」を提示した(甲A9)。
被告は,この中で,概略,①固定電話・専用線に関わる基本業務を,地域単位で新たに設立する子会社(以下「OS会社」という。)に業務委託(アウトソーシング)すること,②51歳以上の従業員については,被告を退職させて,従前の賃金の20から30%下回る賃金水準で,OS会社において再雇用すること,③50歳以下の従業員については,OS会社に出向させることを提示した。
(ウ) NTT,NTT東日本及び被告は,平成13年10月25日,「当面の経営課題に対するNTTの取り組み」を発表した(甲A27)。
この中で,東西地域会社の従業員の概ね半数以上(6万人程度)をOS会社に移行させること,及び既存の子会社への移行分を含めれば10万人程度をOS会社等に移行させることを予定していることを公表した。
(エ) 被告は,平成13年11月12日にNTT労組に対し,また,同月13日に通信労組に対し,「アウトソーシング会社の労働条件等について」を示した(乙A19,甲F2の1,証人d)。
被告は,この中で,次のとおり,3つの選択パターンを提示して,構造改革に伴う労働条件諸制度等の見直しを説明した(乙A19)。
a 「繰延型」
50歳で被告を退職し,OS会社に再雇用され60歳で退職し,その後は,現行のキャリアスタッフ制度(定年年齢以後も契約社員としての雇用の可能性を認めた制度。乙F1の2)と同様に,OS会社に再雇用され,最高65歳までの雇用を実現するという形態である。
勤務地が限定的となる一方,所定内給与が低下することから,激変緩和措置と雇用保険などの公的給付の受給との組合せにより,61歳以降の充実した生活設計に資する。
b 「一時金型」
雇用の形態としては,「繰延型」と同様である。
激変緩和措置として被告退職時において一時金を受給できるパターンとし,生活設計の多様化に応える。
c 「60歳満了型」
被告本体において,企画・戦略,顧客サービス管理,設備構築,法人営業等に従事する。現行の人事・給与制度の適用を受け,60歳まで勤務する。
勤務地を問わず,成果業績に応じて高い収入を得る機会を追求する従業員に応える。
(オ) NTT,NTT東日本及び被告は,平成13年11月22日,「NTT東西の構造改革の公表について」を公表した(甲A32)。
この中で,OS会社への移行時期を平成14年5月を目途とすることを明らかにした。
(カ) 被告は,平成13年12月7日,通信労組に対し,「雇用形態・処遇体系の多様化に伴う意向確認等について」を提示した(甲A39)。
被告は,この中で,雇用形態の選択等についての各従業員の意向確認を,意向確認調書等の配布及び回収などにより行うことや,意向確認調書等を提出しない場合には,「60歳満了型」の選択があったものとして扱うことを示した。
イ 構造改革における雇用形態の変更(本件計画)の概要
(ア) 被告は,平成13年12月14日,人事部長名で,「雇用形態・処遇体系の多様化に伴う意向確認の実施について」と題する書面を作成し,被告の事業の一部をOS会社へ委託するとともに,被告の従業員の雇用形態を変更させることを内容とする計画(以下「本件計画」という。)を定め,この中で,各従業員に対する意向確認の内容や方法について定めた(甲A43,乙D15)。
なお,被告は,本件計画を実施するに当たって,就業規則の変更を行っていない(乙D19,乙F1の2)。
本件計画の具体的内容は,次のとおりである。
a 目的
被告の構造改革の一環として,グループ一体となりコスト競争力の強化を図り,新たなグループ運営体制の確立に向け,営業系地域会社,設備系地域会社及び共通系地域会社(これらは,いずれもOS会社と同趣旨のものであり,以下,まとめて「OS会社」という。)を設立し,業務を委託するのに合わせ,従業員の雇用確保及びライフラインの多様化を図る観点から,選択型の雇用形態・処遇体系の多様化を実施することとし,円滑な施策実施を図るため,従業員に意向確認を行う。
b 対象者
(a) 51歳以上(平成15年3月31日現在の年齢であり,この日が,本件計画による雇用形態の変更の対象者の範囲を示す年齢の基準日となる。)の従業員(原則として,出向している従業員を含む。)
(b) 50歳以下の従業員であって,OS会社への退職・再雇用を希望する者
c 意向確認の内容
雇用形態の選択(後記d),「繰延型」又は「一時金型」を選択した場合の再雇用先の希望会社等(後記e)について,各従業員に対する意向確認を行う。
d 雇用形態
(a) 「繰延型」
51歳以上の従業員が平成14年4月30日に被告を退職し,同年5月1日にOS会社に再雇用され,60歳定年制により60歳まで勤務した後,61歳以降は,現行のキャリアスタッフ制度と同様の枠組みで,契約社員としてOS会社に再雇用され,最長65歳までの雇用を実現する形態である。
勤務地が府・県内に限定的となる一方で,月例給与が20から30%低下するが,激変緩和措置として契約社員期間において給与加算が行われ,雇用保険などの公的給付や企業年金(税制適格年金)の受給の組合せにより,61歳以降の充実した生活設計に資する。
(b) 「一時金型」
雇用形態としては「繰延型」と同様であるが,月例給与が20から30%低下することに対する激変緩和措置については,平成14年4月30日の被告退職時に一時金として支給する形態とし,生活設計の多様化に応える(なお,「繰延型」及び「一時金型」は,いずれも被告を退職してOS会社に再雇用されるというものであるから,以下,これらをまとめて「退職・再雇用」ということがある。)。
(c) 「60歳満了型」
被告の本社・支店において,本社・支店の業務(企画・戦略,設備構築,サービス開発,法人営業等の業務)に従事,又はOS会社以外のグループ会社へ出向し,60歳まで勤務する形態である。
転用・配置換又は出向により,市場性の高いエリア等を中心として勤務地を問わず,成果業績に応じて高い収入を得る機会を追求する意欲を持った従業員に応える。
e 再雇用先のOS会社等
(a) 「繰延型」又は「一時金型」を選択した従業員の再雇用先
外部委託される業務に従事している従業員は,原則として,その業務が移行する地域単位のOS会社を再雇用先とし,外部委託される業務以外に従事している従業員は,本人の業務経験,スキル及び希望等,並びにOS会社の人員状況等を考慮し決定する。
(b) 勤務地については,原則として府・県単位の事業所とし,次のいずれかから選択する。
① 退職時に勤務している支店等が所在する府・県
② 採用後に初期配属された組織の所在地に対応する府・県
なお,①,②以外に希望がある場合には,本人事情等を考慮し,例外的に採用後に初期配属された組織以外の採用旧支社管内の府・県も選択できるものとする。
f 意向確認調書
具体的な意向確認に当たっては,定型の意向確認調書により被告に申し出ることとし,意向確認調書の記入に当たっては,面談等を行うこととする。
意向確認調書を提出しない従業員,及び意向確認調書を提出するが雇用形態を選択しない従業員については,「60歳満了型」の意向があるものとみなす。
g 意向確認期間
意向確認期間は,平成13年12月17日から平成14年1月31日までとする。
(イ) 被告は,平成14年1月4日,前記(ア)と同趣旨の社長達を発した。
ウ OS会社の設立及び業務委託の実施
(ア) 被告は,次のとおり,OS会社等を設立するとともに,既存の被告のグループ会社を再編成することとし,その旨を平成14年4月3日に公表した(乙D14,乙D18)。
a 営業系及び設備系地域会社の統括会社
次の2社を統括会社とする。これらは,いずれも,被告の100%出資により,平成13年10月31日に設立された会社である。
(a) 営業系統括会社
「株式会社エヌ・ティ・ティマーケティングアクト」(以下「アクト社」という。)
(b) 設備系統括会社
「株式会社エヌ・ティ・ティネオメイト」(以下「ネオメイト社」という。)
b 営業系地域会社
アクト社の100%出資により,15の営業地域に営業系地域会社各1社を設立し,それらの名称をいずれも「株式会社エヌ・ティ・ティマーケティングアクト+地域名」とする(以下,これらの営業系地域会社(15社)を「アクト各社」という。)。
c 設備系地域会社
ネオメイト社の100%出資により,15の営業地域に設備系地域会社各1社を設立し,それらの名称をいずれも「株式会社エヌ・ティ・ティネオメイト+地域名」とする。これらのほか,ネオメイト社とアクト社との合計100%出資により設立された株式会社エヌ・ティ・ティ・ドゥ(上記15の営業地域外である沖縄県を担当)を加えた16社を,設備系地域会社とする(以下,これらの設備系地域会社(16社)を「ネオメイト各社」という。)。
d 共通系地域会社
株式会社エヌ・ティ・ティビジネスアソシエ(NTTの100%出資の既存子会社)と被告との合計100%出資により,16の地域に共通系地域会社各1社を設立し,それらの名称をいずれも「株式会社エヌ・ティ・ティビジネスアソシエ+地域名」とする(以下,これらの共通系地域会社(16社)を「アソシエ各社」という。)。
(イ) 被告は,平成14年5月1日から,次のとおり,被告で行っている料金請求,商品販売,故障修理,設備オペレーション,総務,経理等の業務を,OS会社に業務委託した(乙A29,乙D14)。
a 営業系地域会社
被告は,各種注文受付(116番業務),料金請求業務,公衆電話事業及び電報事業の運営などのサービス系業務の実施や,ネットワーク商品等の販売に関わるユーザー対応,販売活動等の実施を,アクト各社に委託した。
b 設備系地域会社
被告は,電気通信設備の監視・制御に関するオペレーション業務及び保全管理業務や,故障受付業務(113番業務)を,ネオメイト各社に委託した。
c 共通系地域会社
被告は,①総務,厚生,ビル・土地管理等業務の実施,②人事・給与,人材育成業務の実施,③経理,契約業務の実施を,アソシエ各社に委託した。
エ 本件計画の実施
(ア) NTT労組は,本件計画を了承したが,通信労組は,本件計画を了承しなかった。
(イ) 被告は,従業員に対し,平成13年12月19日から,意向確認手続についての説明を開始し,同月25日から,意向確認調書を配布し,個別面談を開始し,その上で,平成14年1月4日から同月31日までの間に意向確認調書等を提出するように求めた。
「繰延型」又は「一時金型」を選択した従業員に対しては,被告は,平成14年2月から,順次,辞職承認通知書を交付し,同年4月30日をもって退職することを承認する旨と,退職日の翌日をもってOS会社に雇用される旨とを通知した。
他方,「60歳満了型」を選択した従業員や,意向確認調書等を提出しないために「60歳満了型」の意向があるものとみなされた従業員(前記ア(カ),イ(ア)f参照)に対しては,ソリューション営業(企業等から出される業務上の要求や企業等に存する問題点等を分析し,より効率的かつ円滑な業務運営を図ることができるようなシステムを企画・構築し,それを保守・運用するというサービスの総称)に従事させることとし,平成14年4月ころから,大阪支店での兼務発令をした上で,大阪支店で研修を実施する計画を示した。
(ウ) 本件計画の実施により,OS会社に移管される業務に従事していた被告従業員のうち51歳以上の希望者は,被告を退職し,OS会社が再雇用した。また,被告は,OS会社に移管される業務に従事していた被告従業員のうち50歳以下の者については,その大半をOS会社に出向させた。
「60歳満了型」を選択した従業員(そのようにみなされた者も含む)は,平成14年5。月1日当時,463名(雇用形態を選択すべき従業員のうちの約1.7%に当たる。)であった。
これにより,被告の従業員数は,平成14年3月には約5万0450人(出向者を除く。)であったが,平成14年5月1日には約1万5600人(出向者を除く。)となった(乙D1)。
(エ) 被告は,ソリューション営業に従事させることとなった60歳満了型の従業員のために,営業スキルを与えるための研修を行った(以下,この研修を「本件スキル転換研修」という。)。
本件スキル転換研修は,NTT西日本研修センター(大阪市内)における集合研修(2週間の座学),及び大阪支店での業務研修(2週間の実践)により構成され,平成14年4月,5月,6月,10月,11月及び12月の計6回,各月50名程度ずつで実施した。
オ 原告らに対する本件配転命令
(ア) 意向確認
原告らは,いずれも,意向確認調書等(前記エ(イ)参照)を提出しなかった(甲E17の2,24)。
そのため,被告は,原告らを「60歳満了型」の従業員として扱うこととした。
(イ) 第1事件原告ら(原告1~4)に対する配転命令(本件配転命令1)
被告は,平成14年5月ないし6月,第1事件原告ら(原告1~4)に対して,別紙配置転換目録記載1ないし4のとおり配転する旨の命令を発した(以下,これらの配転命令をまとめて「本件配転命令1」という。)。
(ウ) 第2及び第3事件原告ら(原告5~23)に対する第1次配転命令
(本件配転命令2)
被告は,平成14年4月23日,第2事件及び第3事件原告ら(原告5~23)に対して,別紙配置転換目録記載5ないし23の各「(1)第1次配転」のとおり配転する旨の命令を発した(以下,これらの配転命令をまとめて「本件配転命令2」という。)。
(エ) 第2及び第3事件原告ら(原告5~23)に対する第2次配転命令
(本件配転命令3)
その後,被告は,平成14年11月ないし12月,第2事件及び第3事件原告ら(原告5~23)に対して,別紙配置転換目録記載5ないし23の各「(2)第2次配転」のとおり配転する旨の命令を発した(以下,これらの配転命令をまとめて「本件配転命令3」といい,本件配転命令1ないし3をまとめて「本件配転命令」という。)。
(オ) 原告らは,いずれも,本件配転命令について同意したことがない。
(カ) 原告らは,本件配転命令により,各配転先において,次のような業務に従事することとなった。
a 本件配転命令1及び2
原告らは,本件配転命令1及び2により,各配転先において,ソリューション営業を担当することとなった。
原告らは,このソリューション営業として,具体的には,1,2回線事業者(電話回線を1又は2回線利用している事業者を意味する)等の小口の。ユーザーに対するインターネット接続に関連する商品の営業を担当していた。
b 本件配転命令3
(a) 名古屋MI担当
本件配転命令3により名古屋支店第1ソリューション営業部ソリューションSE担当(SEとは,システムエンジニアの略で,情報通信システムの設計・施工管理などの業務を意味する。)に配属された原告ら9名(原告5~12,23)は,その配転先において,MI業務(メインテナンス・インテグレーションの略で,ユーザー設備の運用・保守を集中して行う業務を意味する。)を担当することとなった(以下「名古屋MI担当」という。)。
これらの原告らは,このMI業務として,平成14年11月ないし12月ころには,保守手引書と呼ばれる文書の修正等の作業に着手した。
(b) 名古屋支店営業企画部Bフレッツ販売推進PT担当(以下「名古屋BフレッツPT担当」という。)について
本件配転命令3により名古屋BフレッツPT担当となった原告ら(原告13~22)は,20戸未満のマンションに対するBフレッツ(被告が提供している光ファイバーによる定額制のインターネット接続サービスである(乙D28の1・2)。後記(5)イ参照)の販売を担当することとなった。
(3) 原告らの略歴(退職,再配転命令等)
ア 原告A(原告1),原告B(原告2),原告I(原告9)及び原告M(原告13)は,いずれも,平成18年3月31日に,被告を定年退職した(甲D124,甲E2の1,甲E9,甲E13の1)。
また,原告U(原告21)は,平成17年5月に,被告を退職した。
イ 原告D(原告4)及び前記ア記載の退職済みの原告5名(原告1,2,9,13,21)を除く,その余の原告らは,いずれも,平成18年7月1日付けで再配転されるなどした結果,既に本件配転命令の際の配転元の近辺で勤務している。
ウ 原告らの,その他の略歴は,別紙経歴表に記載のとおりである(甲E2の1,甲E4の1,甲E5の1,甲E6の1,甲E7の1,甲E8の1,甲E10の1,甲E11の1,甲E12の1,甲E13の1,甲E14の1,甲E15の1,甲E16の1,甲E17の1,甲E19の1,甲E20の1,甲E23の1,甲E24)。
(4) 被告等における就業規則の内容
ア 旧電電公社及び被告における各就業規則においては,配転について次のような規定が置かれている。
(ア) 旧電電公社の就業規則(昭和31年12月20日制定。乙D23)
職員は,業務上必要があるときは,勤務局所又は担当する職務を変更されることがある(51条)。
(イ) 被告の就業規則(平成11年7月1日制定。乙D19)
a 社員(2条:被告に常時勤務する者であって,期間を定めて雇用される者以外の者)は,業務上必要があるときは,勤務事業所又は担当する職務を変更されることがある(60条)。
b 社員は,業務上の都合により,別に定めるところにより,出向させられることがある(61条)。
イ 被告における就業規則においては,社員の定年年齢は満60歳とされ,定年退職日は定年年齢に達した日以後の最初の3月31日とされている(73条1項。乙D19)。
(5) 被告におけるインターネット接続商品等
ア インターネット接続方法として,一般に,通信速度が速いブロードバンドと,通信速度が遅いナローバンドに区分されており,その概要は次のとおりである(乙D28の1・2,乙D29の2)。
(ア) ブロードバンドに当たると言われるものとしては,例えば,次のような接続方法がある。
a 光ファイバー接続
利用者宅まで光ファイバーを敷設し,インターネットに接続するサービスであり,通信速度が非常に速く,次世代のインターネット接続と言われているものである。
b ADSL接続
従来の電話回線を利用したインターネット接続方法で,加入電話と共用する方法と,共用しない方法とがある。
(イ) ナローバンドに当たると言われているものとしては,次のような接続方法がある。
a ISDN接続
従来の電話回線を利用したインターネット接続方法であり,デジタル信号をやりとりする方法である。
b アナログモデム接続
従来の電話回線を利用したインターネット接続方法であり,アナログモデムでコンピューターからのデジタル信号をアナログ信号に変換し,アナログ信号をやりとりする方法である。
イ 本件配転命令が行われた当時,被告は,被告の用意した通信網を利用して定額でインターネットを利用できるようにするための商品(「フレッツ」と呼ばれている。)を提供していたが,その商品の種類としては,次のようなものがあった(乙D28の1・2)。
(ア) 「Bフレッツ」
光ファイバーによる定額制のインターネット接続サービスである。そのサービスの種類としては,次のようなものがある。
a ビジネスタイプ
企業などのビジネスユーザーを対象としたもので,接続可能端末台数は50台である。
b ベーシックタイプ
ビジネスユーザー向けのものであり,接続可能端末台数は10台である。
c ファミリータイプ
パーソナルユーザー向けのものである。
d マンションタイプ
マンションなどの集合住宅内で共用するために,低価格で利用可能なものである。
(イ) 「フレッツADSL」
ADSLを利用した定額制のインターネット接続サービスである。
(ウ) 「フレッツISDN」
被告のISDNサービスである「INSネット」の回線を利用した,定額制のインターネット接続サービスである。
3  原告らの請求の内容
(1) 原告D(原告4)について
原告D(原告4)に対する本件配転命令1(別紙配置転換目録記載4の配転命令)が無効であることを理由として,①同配転命令による配転先(被告大阪支店(茨木))において勤務すべき義務がないことの確認請求(第1の1(1)ア),及び,②同配転命令の際の配転元(被告大分支店)において勤務すべき地位にあることの確認請求(第1の1(1)イ)
(2) 全ての原告ら(原告D(原告4)を含む。)について
原告らに対する本件配転命令(別紙配置転換目録記載の各配転命令)により受けた精神的苦痛に対する慰謝料請求として各300万円,及びこれらに対する原告らの各訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払請求(第1の1の(2))
4  争点
本件訴訟における争点は,次のとおりである。
(1) 原告らの労働契約における勤務地又は職種の限定の有無(争点1)
(2) 本件計画の必要性の有無(争点2)
(3) 本件計画が脱法的なものであったか否か(争点3)
(4) 本件計画が年齢による差別に当たるか否か(争点4)
(5) 本件配転命令における業務上の必要性の有無(争点5)
(6) 本件配転命令が不当な動機・目的に基づくものであるか否か(争点6)
(7) 本件配転命令が不当労働行為に該当するか否か(争点7)
(8) 本件配転命令において適正な手続が執られていたか否か(争点8)
(9) 各原告らが本件配転命令によって受けた不利益の程度等(原告らが,本件配転命令により,通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を受けたか否か等)(争点9)
(10)  各原告らの損害額(争点10)
第3  争点に関する当事者の主張
1  原告らの主張
本件配転命令は,次のとおり,違法なものである。
(1) 争点1(原告らの労働契約における勤務地又は職種の限定の有無)について
ア 勤務地の限定について
原告らは,いずれも,各地域の電気通信局において別個に行われる採用試験にそれぞれ合格して旧電電公社に採用され,本件配転命令まで,別紙経歴表に記載のとおり,採用された電気通信局単位の各地域内(管内)で勤務してきたのであり,他の管内に配転されることはなかった。旧電電公社がNTTとなった以降も,特に電気通信局単位の各地域外への配転(「管外配転」と呼ばれていた。)は,本人の希望のある場合等にのみ行われてきた。
このように,原告らの勤務地は労働契約において限定されていたのであり,本件配転命令のように,同意なく地域外へ配転することは労働契約に違反する。
なお,具体的な旧電電公社における職員の任命等は,次のとおり行われていたのであり,これによって生じた労働契約上の地位が,被告に承継されたものである。
(ア) 職員の採用
旧電電公社においては,各地の電信電話業務を執行するため,東京,関東,信越,東海,北陸,近畿,中国,四国,九州,東北及び北海道に各電気通信局が置かれていた。そして,各電気通信局長は,管轄する機関の課長以上の者などを除く職員を任命する権限を委任されていた。
原告らは,次のとおり,各電気通信局長によって旧電電公社の職員に任命された。
a 原告A(原告1),原告B(原告2)  四国電気通信局長
b 原告C(原告3)            中国電気通信局長
c 原告D(原告4)            九州電気通信局長
d その他の原告ら(原告5~23)   近畿電気通信局長
原告らが採用時に交付された書面には,採用局所として,「管内の通勤可能な局所」に仮配置され,後日改めて「管内の通勤可能な局所」へ配置されることが,明示されていた。
(イ) 職員の募集方法
旧電電公社では,本社業務に従事する職員と,各電気通信局等の管轄する施設で業務に従事する職員とを分けて採用することとし,本社業務に従事する職員については大学卒業以上の者を,各電気通信局等の管轄する施設で業務に従事する職員については高校卒業の者を,それぞれ対象として募集してきた。
そして,旧電電公社は,各電気通信局等の管轄する施設で業務に従事する職員については,職員募集に際して,勤務地域を限定し,かつ,勤務場所に通勤可能な地域内に住居を確保することなどを募集の要件としていた。
イ 職種の限定について
旧電電公社においては,職員の募集に際して職種を限定して募集しており,原告らは職種ごとに採用された。原告らが採用時に交付された書面には,採用された職種が限定して表示されている。
また,原告らは,本件配転命令まで,意思に反して職種の異なる業務に就くことを命じられたことはない。
このように,原告らと被告との間の労働契約においては,職種が限定されていたのであり,本件配転命令のように,同意なく他の職種へ配転することは労働契約に違反する。
ウ 旧電電公社や被告の就業規則(前提事実(4)ア)との関係
旧電電公社や被告の就業規則は,同一管内において勤務事務所(勤務局所)を変更されることがあることを確認したものにすぎないし,職種を限定されて募集,採用された原告らについて言えば,その職種の範囲内で職務変更されることがあることを確認したものにすぎない。
エ 本件配転命令の効力
以上のとおり,本件配転命令は,被告と原告らとの間の労働契約における勤務地及び職種の限定に反するものであり,違法である。
また,仮に労働契約上勤務地及び職種の限定がされていなかったとしても,原告らの勤務地及び担当職種は長らく安定していたにもかかわらず,本件配転命令は,安定的な職業生活及び家庭生活を急激かつ根本的に破壊するものであった。このことは,本件配転命令が権利濫用に当たることを基礎づけるものである。
(2) 争点2(本件計画の必要性の有無)について
本件配転命令は本件計画の一環として行われたものであるから,本件計画自体の違法性は本件配転命令の違法性を裏付けるものである。
ア 被告ないしはNTTグループの経営状況
(ア) NTTグループは,グループ全体で,平成13年3月期においては8983億円,平成14年3月期においては9473億円という巨大な営業利益をあげている。平成14年3月期には,純利益の段階では赤字が計上されたが,これは,NTTドコモやNTTコミュニケーションズの海外投資の失敗(特別損失約1兆4000億円)による一時的なものである。NTTグループの内部留保は,全体で8兆8000億円と言われており,従業員の労働条件を切り下げる必要性は全くない。
被告のみについて見ても,平成14年3月期には2兆4067億円もの売上高を計上しており,業績の悪化が言われているものの,その実際は,接続料の値下げによるグループ内の利益調整などによる見せかけの業績数値をもとにしたものにすぎないのであり,被告において大規模な雇用形態の見直しを図る必要性はない。
また,本件計画の方針が最初に発表された平成13年4月当時,被告が見込んでいた赤字額は840億円であり,物的コストの削減等により十分改善できる程度のものであった。
このように,本件計画は,攻撃的リストラ(過大な目的,又は目的と手段及び結果との不均衡という比例原則違反のリストラ)であり,必要性がなかったものである。
(イ) なお,①本件計画の策定当時に黒字であったNTT東日本も含めて,本件計画が実施されたこと,②NTTの東西地域会社への分割計画の段階から,被告の赤字をNTT東日本が填補することが予定されていたこと,③NTTグループ各社がその収支において緊密な関係に立っていることからすると,本件計画の必要性の有無の判断においては,被告のみの経営状況のみならず,NTTグループ全体の経営状況を見て,必要性を検討すべきである。
イ 被告が考慮していないコスト削減の事由
被告は,本件計画の策定に当たって,次のようなコスト削減の事由を考慮していなかった。
(ア) 追加希望退職募集
被告が平成14年1月に実施した追加希望退職募集により,250億円ないし300億円のコスト削減が図られた。
(イ) NTT東日本からの交付金
NTTの東西地域会社への分割計画の段階から,被告の赤字をNTT東日本が填補することが予定されており,NTT法により,実際に,平成12年度にNTT東日本から被告に対して約724億円が支払われるなどされており,この制度の利用が考えられる。
(ウ) 接続料のユニバーサル・サービス基金
接続料による赤字を補填する法的な制度として,接続料のユニバーサル・サービス基金の制度(電気通信事業法によるもの)があるが,被告はこれを受領しようとしていない。
(エ) NTTに対するコンサルティング料
被告がNTTに対して支払うコンサルティング料(業界内では上納金と呼ばれている。)を,廃止又は削減すべきである。
(オ) 大量退職による人件費の自然減
いわゆる団塊の世代の大量退職により,本件計画によらなくても,年平均約3440人の自然退職者が生じることが見込まれ,年平均約344億円,10年間で総額約3500億円の人件費削減効果が見込まれた。
(3) 争点3(本件計画が脱法的なものであったか否か)について
本件計画によりOS会社に転籍させられた従業員は,賃金の切下げを受けている。
本来,賃金の切下げは,就業規則の改訂により行われる場合でも,特別に高度の必要性が存在する例外的な場合を除いては,一方的に行うことは許されない。また,本件計画は,実質的には会社の新設分割であり,会社分割に当たっては,分割のみを理由とする労働条件の一方的な不利益変更は禁じられている(会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律)。
本件計画では,業務委託や,繰延型又は一時金型の選択による退職・再雇用という手法を用いることによって,これらの規制をかいくぐろうとしている。
(4) 争点4(本件計画が年齢による差別に当たるか否か)について
ア 本件計画は,50歳以下の従業員についてはOS会社への在籍出向を認めながら,51歳以上の従業員は退職・再雇用させて賃金を切り下げるというものである。50歳という年齢でこのような区別をする合理性はない。
イ 本件計画は,51歳以上の従業員全員に退職・再雇用を迫るものであり,実質的に50歳定年制を導入するものである。これは,高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(以下「高年齢者雇用安定法」という。)4条に違反するものである。
(5) 争点5(本件配転命令における業務上の必要性の有無)について
ア 本件配転命令全般について
次の各点からすると,本件配転命令は,いずれも必要性がなかった。
(ア) 本件計画により被告で行っていた業務の一部がOS会社に委託されたが(前提事実(2)ウ(イ)),原告らが担当していた業務がOS会社に委託されたとしても,それらの原告らをOS会社に在籍出向させ,従来と同様の仕事を行わせるべきであった。また,被告は,委託した業務をOS会社から引き取って,原告らをこれに従事させることもできた。
(イ) 異職種への配転を行うに当たっては,適応能力の高い若年労働者を配転させるのが合理的である。51歳以上の従業員については,業務の能率の観点からは,その知識,経験,能力を活用するために,従来同様の勤務地及び職種に就かせることが,常識に適う。
(ウ) ①本件配転命令1及び2により原告らに与えられた業務は,収益の期待できない業務であるし,②本件配転命令3に関しても,片道2時間以内の者については新幹線通勤が認められており,これによる被告の費用負担は過大である。
このように,本件配転命令により収益を見込むことは困難であり,本件配転命令においては経済的合理性が図られていない。
イ 本件配転命令1について(原告1~4)
原告1ないし4を,元の職場である中国,四国,九州各地の支店でのソリューション営業の部門に配置することが合理的であるにもかかわらず,被告はそのような検討をしていない。
ウ 本件配転命令2について(原告5~23)
次の各点からすると,本件配転命令2を行う必要性はなかった。
(ア) 本件配転命令2により,原告らは,1,2回線事業者を対象とするアウトバウンド営業(積極的に売込みをかける営業形態を意味する。)に従事することとなったが,被告は,本件計画の中で,このような営業を被告の業務として位置づけていなかった。
(イ) 原告らに交付されていたユーザー(1,2回線事業者)のリストには,零細な事業者が記載されているのみであり,そのようなリストを利用して成果があがるはずがなかった。
(ウ) 取扱商品の違いや,営業方法の違いを考えると,小口のユーザーについての営業を続けたからといって,大口のソリューション営業を担当できるようになるとは考えられない。
(エ) 被告は,原告らのような60歳満了型の従業員がソリューション営業を担当することができるようにスキルアップさせようという意思がなかった。被告において実施された本件スキル転換研修は形ばかりのものであり,日々の指導も全くなかった。
エ 本件配転命令3について(原告5~23)
(ア) 名古屋支店全般について(原告5~23)
a 原告5ないし23が名古屋支店で担当した,Bフレッツのマンションタイプの営業及びMI業務は,いずれも,もともとはOS会社に委託される予定であった業務である。
b 被告は,名古屋支店への配転による費用対効果や配転以外の方法による名古屋支店への人員補充について検討していないなど,名古屋支店における人員配置の必要性を真摯に検討したとは言えず,そもそも名古屋支店への配転の必要性が存在したとは考えられない。
c 原告ら(原告5~23)は,本件配転命令2の後,半年も経ずして,本件配転命令3を受けた。また,これらの原告らの一部は,前提事実(3)イのとおり,本件訴訟係属中である平成18年7月1日に,京阪神の勤務先に再配転された。これらは,名古屋支店への配転の必要性が初めからなかったことを示すものである。
(イ) 名古屋MI担当について(原告5~12,23)
a 原告ら(原告5~12,23)が名古屋MI担当として行っていた業務は,保守手引書の修正及び作成や,データベース(「たもつくん」と称されるもの)への入力といった単純な作業であり,京阪神の各支店から従業員を配転させる必要性はなかった。
なお,保守手引書は,ネオメイト各社が自らの業務実施のために使用するネオメイト各社の内部文書であり,その修正及び作成は,本来,ネオメイト各社において行われるべきものである(前記(ア)a参照)。
b 被告がMI業務を強化する方策を検討し始めたのは平成15年4月以降のことであり,本件配転命令3とMI業務強化とは関連しない。また,むしろ,名古屋支店よりも大阪支店の方がMI業務が低調であったのであり,大阪支店から名古屋支店へ配置転換させる必要性はなかった。
(ウ) 名古屋BフレッツPT担当について(原告13~22)
a 原告ら(原告13~22)が名古屋BフレッツPT担当として行っていた業務は,20戸未満の集合住宅に対するBフレッツ・マンションタイプのチラシ広告をポスティングするなどの,成果が上がるはずもない単純作業であり,大阪支店から従業員を配転させる必要性はなかった。
b 光ファイバーに関しては,平成14年5月当時の愛知県内においては,被告が独占状態にあり,その2年後の時点においても,中部電力等のシェアは5%未満でしかない。
c 原告ら(原告13~22)のほとんどが,長年技術職に従事してきた者たちであり,即戦力となる者ではなかった。また,この業務は,大口ソリューション営業へのスキルアップとなるものではなかった。
(6) 争点6(本件配転命令が不当な動機・目的に基づくものであるか否か)について
被告は,退職・再雇用が選択され易いように,60歳満了型を選択した場合には遠距離の異職種配転というデメリットがあることを示すため,退職・再雇用を選択しなかった従業員に対する報復,あるいは,今後も毎年繰り返される50歳に達した従業員に対して退職・再雇用に同意させるための見せしめ,脅しの目的で,本件配転命令を行った。
そのことは,次の点から明らかである。
ア 前記(5)(争点5)のとおり,本件配転命令には業務上の必要性がなかったのであり,本件配転命令は,60歳満了型の従業員に対して遠距離の異職種配転を行うという結論先にありきで行われたものである。
イ 被告は,60歳満了型の従業員数が予測できない当初から,それらの従業員を配転することを方針として,大規模な本件計画を実施しており,前記(5)ア(ア),イのとおり,配転を回避しようとしなかった。
ウ 特に本件配転命令3を受けた原告ら(原告5~23)は,前記(5)エ(イ)a,(ウ)aのとおり,充足感や達成感の得られない単純作業を担当させられ,徒労感,屈辱感を与えられたほか,被告は,60歳満了型のグループと50歳未満の従業員グループとの間を衝立で仕切るなどして,退職・再雇用に応じなかったこれらの原告らが冷遇されていることを社内に見せしめた。
(7) 争点7(本件配転命令が不当労働行為に該当するか否か)について
本件配転命令は,通信労組の組合員に対する不利益取扱い(労組法7条1号)及び支配介入(同条3号)の不当労働行為に該当するものであり,次に述べる事情からそのようにいうことができる。
ア 通信労組は,労使協調路線をとってきた全電通労組(現在のNTT労組)に批判的な労働者が同労組を脱退して,昭和56年4月に結成した労働組合である。また,通信労組は,その結成以来,旧電電公社の民営化反対闘争をはじめとして,被告に対し常に労働者の要求を対置して活動してきた歴史を有している。
このように,通信労組は,被告から見れば,労働者の要求を抑えつける上で支障となる存在であるところ,本件計画に対して,その発表の段階から一貫して,その疑問を取り上げて要求を対置してきた。
イ 次のとおり,被告は,被告における最大の労働組合であるNTT労組の執行部の協力をとりつけるとともに,他方で,通信労組を差別的に取り扱い,情報を与えず不誠実な団体交渉を行った。そして,NTT労組と合意した直後に,雇用形態の選択についての意向確認手続において,何らの意思表示をしない者を「60歳満了型」とみなすという不当な取扱いをし,また,意向確認手続について通信労組が労働組合として組織的に対応する旨要求したのに,これを無視した。被告は,NTT労組と合意した後は,退職・再雇用を選択しない者の大半を占めるのが通信労組の組合員であることを知りつつ,通信労組の組合員を意図的に配転の対象者とすることを企図したものである。
(ア) 被告は,平成13年4月16日に本件3カ年計画を発表したが,その書面は,通信労組には交付されていない。通信労組は,報道発表によって初めて,本件3カ年計画を知らされたのである。他方で,NTT労組には,その2か月以上前に,その詳細が伝えられ,協議が行われていた。
その他,被告は,NTT労組における意思統一を援助したり,NTT労組との最終合意に向けた交渉を行うために,通信労組との団体交渉の開催時期を遅らせたり,NTT労組に交付した資料や情報を通信労組には明らかにしないなどの取扱いをした。
(イ) 被告は,NTT労組との間での団体交渉で合意成立が確認された平成13年11月9日の後は,意向確認調書等を提出しない場合には60歳満了型の選択があったものとみなすことを明らかにしたり,直ちに意向確認手続を実施しようとするなど,NTT労組との間での合意事項を通信労組に対して押しつけようとする姿勢で対応した。
通信労組は,平成13年12月18日の団体交渉において,意向確認手続については個別面談には応じず,通信労組が組織として対応するという方針を伝え,団体交渉の開催を申し入れ,平成14年1月9日にも同様の申入れをした。しかし,被告は,OS会社の社名,役員,資本金等の基本事項も労働条件の内容も明らかにしないまま,個別面談に応じるのは業務命令であると述べて,退職・再雇用の選択を強要し,通信労組による組織的対応を拒否した。
意向確認期間中(前提事実(2)イ(ア)g参照)に行われた通信労組と被告との団体交渉は,平成14年1月24日に実施された団体交渉の1度のみであり,実質的な交渉が行われないまま意向確認期間が終了した。
(ウ) 通信労組は,平成14年2月から本件配転命令までの間に,被告に対し,配転について団体交渉で扱うことを求めたが,被告はこの問題についての団体交渉を拒否した。意向確認手続によって463名の者が60歳満了型となったが,その7割近くの300名を超える労働者が通信労組の組合員であったにもかかわらず,このような団体交渉を拒否したことは,本件配転命令が不当労働行為に該当することを示すものである。
ウ 本件配転命令により,地方都市における通信労組の地方組織(支部)では,大半の組合員が配転されたり,役員が配転されたりしたため,甚大な影響が生じた。本件配転命令は,通信労組の組合員を狙い撃ちにして行われたものである。
エ 被告は,本件配転命令2と同時期に,大阪支店内の通信労組の組合員を,大阪支店内の別のビルに相互に配転するという「玉突き配転」を行った。この配転は,通信労組の組合員らを技術職から営業職へ異職種配転するのみならず,あえて異なるビルに異動させる不自然なものであった。
このような配転が行われた目的は,近隣のビルごとに分会を結成して団結を築き上げてきた通信労組に対し,組合員の分会異動を伴う総入れ替えによって,各分会における人間関係の形成を初対面からやり直さざるを得ないという形で,通信労組の団結を弱めさせるところにあった。
(8) 争点8(本件配転命令において適正な手続が執られていたか否か)について
異職種配転及び遠隔地配転を命じる際には,使用者は,労働者に対して,配転すべき業務上の必要性及び合理性,配転先での労働条件や元職への復帰予定等について,当該労働者への十分な説明をしなければならない。
しかし,本件配転命令について,業務上の必要性や合理性,配転先での勤務内容や処遇,地元への復帰予定時期などについて説明を受けた原告は1人もおらず,原告らが受ける不利益について,被告が具体的事情を聴取した上で配慮を示そうとしたことも一度もない。
また,通信労組は,一貫して本件計画及びそれに基づく広域配転には必要性も合理性もないと主張してきたが,被告は,これらに関する資料を示すこともなく,誠実な団体交渉を通じて本件配転命令についての理解を得ようともしなかった。
さらには,被告は,旧電電公社において行われていた,転勤等についての本人の意向確認を行う制度(転勤希望調書等の提出や,個人面談など)を行わず,本件配転命令を強行した。
(9) 争点9(各原告らが本件配転命令によって受けた不利益の程度等)について
各原告らが本件配転命令によって受けた不利益については,次のとおりである。
このうち,特に,原告C(原告3),原告E(原告5),原告M(原告13),原告Q(原告17),原告R(原告18),原告S(原告19),及び原告T(原告20)に対する本件配転命令は,①ILO第156号条約(家族的責任を有する男女労働者の機会及び待遇の均等に関する条約)3条(家族とともに生活し家族を介護する権利),及び,②育児休業,介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成13年法律第118号による改正後のもの。以下「育児介護休業法」という。)26条に,顕著に違反するものである。
ア 原告A(原告1)について
(ア) 原告Aは,昭和39年に採用されて以来,無線技術者として業務に就くために必要な国家資格を取得し,本件配転命令1までの間,高知で4年間,高松で34年間,一貫して無線業務に従事してきた。
ところが,本件配転命令1の後は,営業経験がないにもかかわらず,土地勘のない大阪において,訪問やダイレクトメールの発送等による営業活動を,多大なストレスの中で行ったが,成果に結びつかず,成果主義賃金制度の下で,実績を上げることができなかったために,夏季及び年末の特別手当の25パーセントを削減されるなどした。
このように,原告Aは,長年培ってきた知識や経験をないがしろにされ,精神的に多大な苦痛を与えられた。
(イ) 原告Aは,妻が右下肢に障害を有し,身体障害者手帳(2種5級)の交付を受けていること,その妻は宿直勤務を含む不規則勤務に就いていること,そのため,家事労働は原告Aと妻とが協力して行ってきたこと,自分が自宅にいないことになれば,妻の負担が過重となり耐えられなくなることなどの事情があった。
なお,原告Aは,平成14年4月17日,被告に対して,広域配転や大阪での本件スキル転換研修には応じられない旨の申入書を提出し,その中で,前記の事情を説明した。それにもかかわらず,同年4月22日に大阪で本件スキル転換研修を受講する命令の内示がされ,同年5月7日からの本件スキル転換研修の受講を命じられたが,この間,被告は,前記の事情に配慮しようとせず,また,本件スキル転換研修の必要性などを説明しなかった。また,被告は,原告Aに対する本件配転命令1に当たって,家庭の事情等を聞かれたことがなかった。
(ウ) 原告Aは,本件配転命令1により,単身寮における単身赴任を強いられることとなった。
原告Aは,平成15年12月ころから神経症状が現れ,微熱が続くようになった。
また,原告Aは,平成17年7月24日,高松の自宅にいた際,心臓発作にみまわれ,冠れん縮性狭心症と診断され,直ちに投薬治療を受けるようになり,ニトロペン錠を携帯するよう指示された。そして,原告Aは,同年8月20日までは病気休暇(健康管理区分A,同月23日から)9月22日まで4時間軽減勤務(健康管理区B)と判定されたため,高松に戻すよう要求した。被告はこれを拒絶し,原告Aは,単身での1人住まいの生活を強いられることとなったが,平成17年10月1日に香川に再配置された。
イ 原告B(原告2)について
(ア) 原告Bは,昭和39年に旧電電公社に採用されて以来,一貫して,徳島市において,電話交換機の保守業務に従事してきた。
ところが,本件配転命令1の後は,従来の業務とは全く関係のない営業業務に従事することとなり,成果など期待できない業務を与えられながらノルマを強制され,それを達成できないことを理由に業務成績を低くされるという嫌がらせを受けた。
(イ) 原告Bの妻は,頸肩腕障害,足腰の捻挫や坐骨神経痛を患い,家事労働も満足にできない状況であり,原告Bも家事を分担していた。
なお,原告Bは,その旨を被告に説明したが,被告は,これに対して配慮する姿勢を見せず,本件配転命令1を強行した。
(ウ) 原告Bは,本件配転命令1により,単身寮における単身赴任を強いられることとなった。
原告Bは,本件配転命令1の以前には,健康上何ら問題がなかったが,平成15年春ころから,体がだるく疲れが取れない状況が続くようになり,同年7月に「うつ」と診断された。同年9月9日から「うつ病」のために約4か月間の自宅療養を余儀なくされた。その後,原告Bは,平成16年1月19日から1日4時間の勤務限定で職場に復帰し,同年3月から1日6時間勤務,同年6月から通常の勤務に復帰した。
また,原告Bの妻は,本件配転命令1の後,それまで分担してきた様々な負担を1人で負うこととなり,腰痛の症状が徐々に悪化して,最終的には5分と座っていられない状態となり,腰椎変形症のために平成14年11月6日から30日間の病気休暇を取得するに至った。
ウ 原告C(原告3)について
(ア) 原告Cは,昭和41年に旧電電公社に採用されて以来,一貫して,岡山県倉敷市又は岡山市において,線路技術職に従事し,宅内工事,設計,調査,保全,委託,監督,経理,固定資産業務といった宅内業務に携わってきた。
ところが,原告Cは,本件配転命令1により,これまで全く経験のない営業業務に従事することとなり,苦労を強いられるとともに,自分のスキルを全く活かすことができず,多大な精神的苦痛を受けた。
また,原告Cが従前従事してきた業務は,平成14年5月以降も,OS会社に委託されず,被告に残されていた。
(イ) 原告Cは,妻が理学療法士として岡山県倉敷市内の病院に勤務していたことから,単身赴任するしかなかった。
原告Cの妻は,本件配転命令1の後である平成15年6月中旬ころから,右足小指付近に痛みと腫れが生じ,痛みが肩や膝に広がるようになり,同年7月22日,関節リウマチと診断された。妻は,起床,食事,着替え,排泄,入浴,就寝等の動作を独力ですることができず,日常生活に介護を必要としている。原告Cは,本件配転命令1のため,その介護を行うために,やむを得ず,同年8月1日から同年10月1日までの間,介護休職(その間は無給とされる。)を取得した。
原告Cは,早期に岡山に戻すように被告に要求し,ようやく平成16年1月1日付けで岡山支店に再配転となった。
この妻の発症は本件配転命令1の後に生じたものであるが,そのことから本件配転命令1の効力には影響しないと弁解することは許されない。中高年層は,いつ重病に罹患してもおかしくないのであるから,中高年夫婦に単身生活を強いることは,それ自体相当でないからである。
エ 原告D(原告4)について
(ア) 原告Dは,昭和42年に旧電電公社に採用されて以来,一貫して,大分県において,技術職(機械職)に従事し,交換機の設計,施工,保守,監督,技術者育成,インターネット接続などに携わってきた。
ところが,本件配転命令1の後は,これまで経験のない営業業務に従事することとなり,顧客に商品を売り込むこと自体,非常にプレッシャーがかかる上に,商品知識や土地勘などもなく,ストレスがたまるとともに,自分のスキルを全く活かすことができず,多大な精神的苦痛を受けた。
(イ) 原告Dは,妻が看護師として大分県別府市内の病院に勤務していたことから,単身赴任するしかなかった。
原告Dは,平成11年,HTLV-I(成人T細胞白血病ウイルスI型)を有していることが判明した。成人T細胞白血病は,40歳代から発症率が高くなり,発症のメカニズムは解明されていないが,体力や免疫力が落ちると,それを引き金として発症すると言われている。また,発症した場合の治療法は確立しておらず,最終的な治癒が期待できるのはごく一部にとどまり,50%生存率は半年以内とも言われている。さらには,その発症率自体は低いものの,原告Dの実兄がこの病気で死亡しているという家族歴が見られ,原告Dの発症の危険度は高いと考えられる。
したがって,その発症を予防することが重要であるが,そのためには,バランスのある食事を摂る,不摂生をしない,ストレスをためない,睡眠を十分にとる,規則正しい生活をするなどして,免疫力を高める方法しかない。しかし,本件配転命令1により,住環境,食生活,仕事面において全てが大きく変化し,その発症の不安が高まった。
なお,本件配転命令1の当時,原告DがHTLV-Iを有していることを知らなかったと弁解することは許されない。被告は,配転に当たって従業員の健康等に配慮する義務を負うところ,本件配転命令1に当たって原告Dの健康等について全く聴取していないし,本件訴訟においてその生命の危険を訴えているにもかかわらず,現在に至るまで大分に戻そうとしないのであって,最初から原告Dの健康問題に配慮するつもりなどなかったと見られるからである。
このほか,原告Dには,睡眠時無呼吸症候群,シックハウス症候群があり,また,腰痛が再発した。
オ 原告E(原告5)について
(ア) 原告Eは,昭和42年に旧電電公社に採用されてから,当初の約8年間は電報配達業務に従事したが,その所属部署が廃止されたため,職種転換の研修を受けた後,一貫して,電話交換機メンテナンス業務や保守・サービス開通業務,回線故障受付などの設備系業務に従事してきた。
ところが,本件配転命令2及び3により,自己の職歴や経験を全く活かすことができなくなる損害を受けた。
(イ) 本件配転命令3の当時,原告Eの両親が要介護の状態にあり,しかも,原告Eの妻が勤務していた上に,その実父(ひとり暮らし)の世話が必要であったこと等のために,妻を含め,他の親族による介護が不可能な状態であった。
すなわち,本件配転命令3の当時,原告Eの父(当時86歳)は,脳梗塞とパーキンソン症候群を患っており,壁伝えに歩くことができる程度であり,通院等の外出の際には車椅子が必要であり,しかも,自分自身で車椅子を動かすことができず,介添えが必要な状況であった。そのため,原告Eは,自宅に父を引き取って世話をしていた。
また,当時,原告Eの母(当時84歳)は,脳梗塞の後遺症により身体が不自由であった上,痴呆の症状が出ていたため,母の住居(大阪府忠岡町)に頻繁に出向いて介護する必要が高かった。
なお,原告Eは,平成14年10月30日,被告にこの事情を説明したが,被告は,原告Eに対して,本件配転命令3を行った。被告は,同年11月6日開催の団体交渉において,原告Eの家庭状況には配慮しないという姿勢を示した。
(ウ) 原告Eは,本件配転命令3により,名古屋に新幹線で通勤することとなり,午前5時過ぎに起床して午後8時ころに帰宅する生活となり,両親の介護を行うことができなくなった。
原告Eの父は,脳梗塞の後遺症が進行し,平成15年2月26日,要介護2級と認定されたが,同年9月26日の深夜に急死した。また,母は,原告Eが本件配転命令3により母の住居に出向くことができなくなったために,精神的不安定が増し,同年8月には脳梗塞及び痴呆と診断され,同年9月には要介護2級と認定され,痴呆症状はさらに進行した。このために,原告Eは,平成16年2月末からは,介護のために母の住居に寝泊まりし,そこから名古屋に通勤せざるを得なくなった。
また,原告Eは,このような介護の負担を被告に繰り返し報告して,大阪へ戻すように要求してきたが,被告は応じなかった。原告Eは,早朝出勤や介護のため,心身ともに疲労し,平成16年6月にはうつ病になった。被告は,ようやく,同年6月25日,原告Eを大阪支店に復帰させることとし,その後は,原告Eの母の健康状態,精神状態は,飛躍的に好転した。
カ 原告F(原告6)について
(ア) 原告Fは,平成13年5月に糖尿病を発症して以来,通院加療中であるとともに,食事制限をしなければならず,本件配転命令3に際して,被告にその旨を申し入れたが,被告は一顧だにしなかった。原告Fは,本件配転命令3により,長時間かつ長距離の通勤となり,どうしても生活が不規則となり,血糖値が上昇するとともに,耳鳴りが頻繁に起こるようになった。
(イ) 原告Fは,このような身体症状の悪化により,被告に繰り返し大阪へ戻すように求めてきたが,被告は,これに誠実に対応せず,平成17年4月1日になって初めて大阪支店へ配転した。
キ 原告G(原告7)について
(ア) 原告Gは,昭和44年に旧電電公社に採用されて以来,29年間にわたり電話設備の建設及び保守業務に従事したが,平成10年3月に所属部署の廃止に伴い,営業系職種へ異動することとなり,約10か月間に及ぶ職種転換の研修が行われた後,平成11年1月,システムエンジニア(SE)として大阪東営業支店(第二マルチメディア)に配属され,アカウントマネージャー(AM)と同行する営業活動に従事した。また,原告Gは,被告の職務上の指導と援助のもとで,6種類のSE関連資格(ベンダー資格)を取得した。
ところが,本件配転命令2及び3により,自己の職歴や取得資格を全く活かすことができなくなったのであり,この損害は重大である。
(イ) 原告Gは,以前から高尿酸血症の症状があり,通院治療を受け,食事制限の指導を受けていた。
(ウ) 原告Gは,本件配転命令3により,名古屋に新幹線で通勤することとなり,規則的な摂食が困難になったとともに,スポーツによる身体運動が十分にできなくなるという,健康管理上の大きな損害を受けた。
ク 原告H(原告8)について
(ア) 原告Hは,昭和43年に旧電電公社に採用されて以来,ほぼ一貫して機械職に従事し,電報に関する機械,社内データ端末機,ファックス,電話機等の取付けなどに携わってきた。
ところが,本件配転命令2及び3により,これまで経験したことのない営業職に配転され,自己の経験を全く活かすことができなくなる損害を受けた。
(イ) 原告Hは,本件配転命令3により,名古屋に新幹線で通勤することとなった。
また,原告Hは,平成15年12月,飛蚊症と胃潰瘍が発見されたが,これは,本件配転命令3による心身の疲労が健康に悪影響を及ぼしたものである。
なお,原告Hは,平成14年10月30日に本件配転命令3の内々示があった際,町内の自治会長をしているので無理だと述べたが,全く聞き入れられなかった。
ケ 原告I(原告9)について
(ア) 原告Iは,昭和39年に旧電電公社に採用されて以来,技術職に従事し,電話等の故障受付,交換機の保守作業,交換機の新設,旧機の撤去作業などに携わってきた。
ところが,本件配転命令2及び3により,これまで経験したことのない営業職に配転され,自己の経験を全く活かすことができなくなる損害を受けた。
(イ) 原告Iは,以前から高血圧症であった。
なお,原告Iは,被告から家庭事情や健康状態等を聴取されていない。
(ウ) 原告Iは,本件配転命令3により,名古屋に新幹線で通勤することとなり,降血圧剤を離すことができず,また,早朝に出勤するために,健康の維持増進のための毎朝の散歩が実行できなくなった。
コ 原告J(原告10)について
(ア) 原告Jは,昭和44年に旧電電公社に採用されて以来,一貫して,テレックスの保守を中心とした機械職に従事してきた。
ところが,本件配転命令2及び3により,これまで経験したことのない営業職に配転され,自己の経験を全く活かすことができなくなる損害を受けた。
(イ) 原告Jは,本件配転命令3により,単身赴任を余儀なくされた。
鹿児島県で独居生活をしている原告Jの妻の父が病気がちであったが,本件配転命令3のために,妻が自宅を離れることができなくなり,看病が十分にできなくなった。
また,原告Jは,単身赴任のために,疲労を原因とする歯周病や,神経性の下痢となり,また,平成15年8月には未破裂の脳動脈瘤が見つかった。
なお,原告Jは,平成14年10月29日,これらの事情を被告に説明したが,被告は,これに対して考慮しない姿勢をあらわにし,本件配転命令3を行った。
サ 原告K(原告11)について
(ア) 原告Kは,昭和47年に旧電電公社に採用されて以来,一貫して,大阪市内で機械の保守業務に従事してきた。
ところが,本件配転命令2及び3により,これまで経験したことのない営業職に配転され,自己の経験を全く活かすことができなくなる損害を受けた。
(イ) 原告Kは,平成3年6月から,網膜色素上皮剥離,開放隅角緑内障,視神経萎縮という眼の疾患のために,継続的に通院治療を受けていた。
また,原告Kには兵庫県西宮市内に居住する80歳を超えた両親がおり,毎週末ごとに介護のためにその住居を訪問していた。
なお,原告Kは,平成14年10月30日,これらを被告に説明したが,被告は,これらを考慮せず,本件配転命令3を行った。
(ウ) 原告Kは,本件配転命令3により,長距離通勤となり,眼の疾患のための通院が困難となった上,両親の住居を訪問することも困難となった。
また,名古屋支店で命じられた業務は,一日中パソコンの画面を見ながらの単純な字句の修正作業であり,もともと眼に疾患を抱えていた原告Kにとっては,負担の大きい業務であった。
シ 原告L(原告12)について
(ア) 原告Lは,昭和42年に旧電電公社に採用された際は事務職に従事していたが,その2年後に希望して機械職に転換した後は,平成元年1月まで市外電話回線や専用線の装置保守業務に従事し,その後は建設業務に従事して,現場の設計,積算,監督業務に携わってきた。この間,就労場所は大阪市内であった。
ところが,本件配転命令2及び3により,これまでの知識経験を全く活かすことができなくなる損害を受けた。
(イ) 原告Lの妻の両親は,いずれも大阪府守口市に居住し,介護の必要性があった。すなわち,義父は,糖尿病と高血圧で,片方の目が不自由であり,また,義母は,喘息の発作があり入院を余儀なくされるときがある上,痴呆も進行していた。そのため,原告Lは,本件配転命令3の前には和歌山市に居住していたが,妻が義父母の介護のために守口市まで通っていた。
なお,原告Lは,平成14年10月30日,このような事情を被告に説明したが,被告は,これを考慮せず,本件配転命令3を行った。
(ウ) 原告Lは,本件配転命令3により,単身赴任をすることとなったが,平成15年1月10日,腎臓結石のために激痛にみまわれ,5日間入院することとなったほか,その後も何度か激痛に襲われ,不安な日々を過ごしている。また,平成15年1月以後,腰痛の持病のために通院するようになり,それがヘルニアによるものと診断された。
ス 原告M(原告13)について
(ア) 原告Mは,昭和40年に旧電電公社に採用されて以来,一貫して,大阪府下で線路職や設備系の技術職に従事し,所外・所内の電話設備の建設・保守現場で維持管理に携わってきた。原告Mが取得したその関連の資格は11種類にも及ぶ。
ところが,本件配転命令2及び3により,これまで経験したことのない営業職に配転され,自己の経験を全く活かすことができなくなる損害を受けた。
(イ) 原告Mは,本件配転命令3までは,妻と義母(83歳)と同居していたが,義母は,骨粗鬆症のために歩行がままならず,また,本件配転命令3の直前には肺ガンに罹患していることが判明した。妻が義母の介護を行っていたが,原告Mは,妻や義母と支え合いながら生活してきた。
なお,原告Mは,平成14年10月30日,このような事情を被告に説明したが,被告は,これを考慮せず,本件配転命令3を行った。
(ウ) 原告Mは,本件配転命令3により,単身寮で単身赴任を余儀なくされ,義母の介護は妻1人によることとなった。なお,新幹線通勤が平成15年10月に認められるようになったため,全面的に妻の負担となることはなくなったものの,2時間を超える通勤時間のため,妻の負担は重いままであった。
また,原告Mは,高血圧の傾向にあり,妻が食事管理をしていたため,単身寮での単身赴任や長距離通勤は,健康に悪い影響を与えた。
セ 原告N(原告14)について
(ア) 原告Nは,昭和41年に旧電電公社に採用され,それ以来,設備管理課,業務開発センター,保全課などの設備技術部門を経て,平成11年に113センタに配属された。
ところが,本件配転命令2及び3により,自己の経験を全く活かすことができなくなる損害を受けた。
(イ) 原告Nは,本件配転命令3により,名古屋に新幹線で通勤することとなり,ライフワークとして取り組んでいた太極拳の指導を行うことができなくなった。また,本件配転命令3の後,運動ができないことなどのため,高血圧と高尿酸値の状態となり,治療を受けるようになった。
なお,原告Nに対する本件配転命令3は,約10名以上の被告の労務担当従業員が原告Nを取り囲んだ上で,担当課長が辞令を読み上げるという,不当な方法で行われた。
ソ 原告O(原告15)について
(ア) 原告Oは,昭和43年に旧電電公社に採用され,それ以来,大阪府下において,線路技術職,機械職の技術職に従事してきた。
ところが,本件配転命令2及び3により,自己の経験を全く活かすことができなくなる損害を受けた。
(イ) 原告Oは,本件配転命令3の10年以上前から椎間板ヘルニアの持病があり,通院治療を受ける必要があった。
なお,原告Oは,このような事情を幾度となく被告に説明したが,被告は,これを考慮せず,本件配転命令3を行った。
(ウ) 原告Oは,本件配転命令3により,名古屋に新幹線で通勤することとなり,椎間板ヘルニアが悪化したが,通勤時間の関係から従来のかかりつけの医師の治療を受けることが困難となったため,やむを得ず名古屋の整骨院に通院することとなった。また,本件配転命令3により,従来から行っていた少年野球の指導に支障が生じるようになった。
タ 原告P(原告16)について
(ア) 原告Pは,昭和40年に旧電電公社に採用され,それ以来一貫して,大阪府下において有線通信職,線路技術職などの技術職として勤務してきた。
ところが,本件配転命令2及び3により,自己の経験を全く活かすことができなくなる損害を受けた。
(イ) 原告Pは,地元の大阪市西成区で多数のボランティア活動を行い,例えば,近所に住む82歳の全盲の女性の身の回りの世話などをしていた上,西成区視聴覚教育協議会会長などに就いていた。
なお,原告Pは,平成14年10月31日,本件配転命令3の内示を受けた際に,このような事情を被告に説明したが,被告は,これを考慮せず,本件配転命令3を行った。
(ウ) 原告Pは,妻が看護師として大阪市西成区内の医院に勤務していたことなどから,本件配転命令3により,名古屋に新幹線で通勤することとなった。このため,早朝からの出勤を強いられるようになり,身体全体の疲労感,倦怠感を生み出している。また,前記のボランティア活動などについても,本件配転命令3により,大きな支障をきたしている。
チ 原告Q(原告17)について
(ア) 原告Qは,昭和45年に旧電電公社に採用され,それ以来,主に市外中継交換機の保守,メンテナンスに従事し,新技術に伴う研修を受けながら,特にデジタル交換機の収容設計,ファイル更新業務に携わってきた。
ところが,本件配転命令2及び3により,自己の経験を全く活かすことができなくなる損害を受けた。
(イ) 原告Qの母は,高齢であり,平成12年に心臓バイパス手術を受けた後,入退院を続けており,寝たきりで常時介護を要する状態であった。原告Qは,母と別居していたが,その日常の介護や通院の付き添いなどを全て行い,原告Q以外にその介護を頼める者はいなかった。
また,原告Qは,胆石を患っており,定期的に検査を受けなければならない状態にあった。
なお,原告Qは,事前にこのような事情を被告に説明したが,被告は,これを考慮せず,本件配転命令3を行った。
(ウ) 原告Qは,本件配転命令3により,名古屋に新幹線で通勤することとなり,有給休暇を取って母(平成16年12月に死亡した。)の介護に当たらざるを得なくなり,また,遠距離通勤等のために慢性的に疲労が蓄積するようになった。
ツ 原告R(原告18)について
(ア) 原告Rは,昭和40年に旧電電公社に採用され,それ以来,交換機の保守,点検の業務やサービスオーダーに付随する事務業務に従事してきた。
ところが,本件配転命令2及び3により,自己の経験を全く活かすことができなくなる損害を受けた。
(イ) 原告Rの妻は,平成13年5月に肺ガンが見つかり,同年7月に肺の半分を摘出する手術を受けた。幸い手術は成功し,同年8月には退院することができたが,原告Rができる限り家事を分担して,妻の負担を軽減するように協力していた。主治医からは,5年以内に再発がなければ大丈夫である旨言われていた。
なお,原告Rは,本件配転命令3の打診を受けた平成14年10月末ころ,このような事情を被告に説明したが,被告は,これを考慮せず,本件配転命令3を行った。
(ウ) 原告Rは,本件配転命令3により,単身社宅で単身赴任を余儀なくされた。原告Rが自宅からの通勤を申し出たにもかかわらず,通勤所要時間が所定の2時間を超過しているという形式的な根拠のみで,この申出を認めなかった。この単身社宅は,勤務場所まで1時間15分も要するような遠方にあった。
原告Rの妻は,平成15年11月ころ,肺ガンが再発するとともに,肺以外にもガンが転移していることが判明し,急遽入院することとなった。このため,原告Rは,大阪に戻すように,被告に強く主張した。被告は,特別に新幹線通勤を認めるが,その必要がなくなったときには単身赴任に戻ることを書面に記載するように求めたところ,これに対し,原告Rが「必要がなくなったらというのは,妻が死んだらという意味か」と大声を上げて抗議した結果,新幹線通勤が認められた。
原告Rは,平成16年4月1日付けで大阪へ再配転されたが,妻は,同年11月13日に死亡した。本件配転命令3とそれに伴う単身赴任等が妻の病気を悪化させたのではないかと,今でも痛恨の極みである。
テ 原告S(原告19)について
(ア) 原告Sは,昭和39年に旧電電公社に採用され,それ以来,一貫して線路技術職に従事してきた。
ところが,本件配転命令2及び3により,自己の経験を全く活かすことができなくなる損害を受けた。
(イ) 原告Sは,妻が大阪府寝屋川市内の会計事務所にフルタイムの事務員として勤務しており,また,新幹線通勤が許可されなかったため,本件配転命令3により,単身赴任を余儀なくされた。
原告Sは,業務上の,また,単身赴任の疲労とストレスから,平成16年1月には喘息と診断された。また,平成17年1月には膀胱ガンと診断され,同年2月には手術を受けたが,同年5月に再発し,同年9月に再手術を受けた。
また,妻は,原告Sが単身赴任となったことによる不安や寂しさから,平成15年6月にはうつ病と診断され,6か月余りの治療を余儀なくされた。
ト 原告T(原告20)について
原告Tは,本件配転命令3により,名古屋に新幹線で通勤することとなった。
原告Tの母は,高齢であり,その身辺介護は母と同居している原告Tの兄がしているところ,原告Tも母の介護について相当の責任を果たさなければならないが,本件配転命令3により,週末に母を訪ねることくらいしかできないこととなった。また,原告Tは,地域山岳会の事務局長等に就いていたが,長距離通勤のために責任ある活動を行えなくなった。
ナ 原告U(原告21)について
(ア) 原告Uは,昭和46年に旧電電公社に採用され,それ以来,一貫して,大阪府下において電話交換機の保守建設という技術系の業務に従事してきた。
ところが,本件配転命令2及び3により,自己の経験を全く活かすことができなくなる損害を受けた。
(イ) 原告Uの妻には,和歌山県日高郡中津村に居住する高齢の母がおり,原告U及びその妻は,従前より,週に1回はその住居を訪れて介護を行っていた。また,原告Uの妻は,左腕が肩あたりまでしか上がらないことから,時々介護を必要とする状況にあった。
なお,原告Uは,本件配転命令3の打診を受けた際,このような事情を被告に説明したが,被告は,これを考慮せず,本件配転命令3を行った。
(ウ) 原告Uは,本件配転命令3により,名古屋に新幹線で通勤することとなり,通勤上及び業務上のストレスは,従前から患っていた高脂血症に悪影響を及ぼすものであるし,その治療のための通院もスムーズに行えない状況に置かれた。
なお,原告Uは,平成17年5月に京都に配転されたのを機に,仕事に対する気力を失い,退職に追い込まれた。
ニ 原告V(原告22)について
(ア) 原告Vは,平成3年に営業職に配置され,平成5年に東大阪支店営業部に配属されて以来,同支店の管轄地域で販売営業としての外販活動に従事してきており,優秀な実績を上げていた。
ところが,本件配転命令2及び3により,長年培ってきた営業基盤を奪われ,知らない土地で成果の上がらない意義の乏しい単純労働を命じられて,営業マンとしての誇りを傷つけられ,精神的苦痛を受けた。
(イ) 原告Vの妻の両親は,いずれも高齢であり,原告Vの妻のみならず,原告Vも,毎週末には身の回りの世話のために通っていた。義父は潰瘍性大腸炎を患い,義母は膠原病を患っていたほか,2,3年前に心臓にペースメーカーを入れる手術を受けている。
なお,原告Vは,本件配転命令3の発令を受けた翌日,このような事情を被告に説明したが,被告は,これを考慮せず,本件配転命令3を再検討しようとしなかった。
(ウ) 原告Vは,本件配転命令3により,名古屋に新幹線で通勤することとなり,平成16年9月ころから耳鳴りが起こるようになり,疲労とストレスを原因とする突発性難聴であると診断された。また,週末に妻の両親の居宅に通うことが困難になった。
ヌ 原告W(原告23)について
(ア) 原告Wは,昭和43年に旧電電公社に採用され,それ以来,一貫して,兵庫県南部において交換機設備の保守業務に従事してきた。
ところが,本件配転命令2及び3により,自己の経験とは全く無関係な単純労働に従事させられ,仕事に対する誇りや意欲を奪われた。
(イ) 原告Wは,本件配転命令3により,名古屋に新幹線で通勤することとなり,疲労が蓄積し,平成16年1月には,大腸ポリープ切除の手術をするなど,健康に悪影響が生じている。
(10)  争点10(各原告らの損害額)について
原告らが違法な本件配転命令により被った精神的苦痛は甚大であり,これを慰謝するには,原告らに対して少なくとも各300万円の慰謝料の支払が必要である。
2  被告の主張
(1) 争点1(原告らの労働契約における勤務地又は職種の限定の有無)について
ア 原告らは,旧電電公社に採用された者であるが,旧電電公社は,全国各地に支店を有し,その業務内容も,事務系業務,営業・各種サービス業務,配線や保守等の現業業務など,多岐にわたっていた。したがって,旧電電公社は,正社員については,職種,職務内容,勤務地,勤務場所等の限定を付さずに採用しており,従業員の職種や勤務地を決定する権限は,人事権の一内容として,当然に旧電電公社に帰属していた。前提事実(4)ア(ア)の旧電電公社の就業規則の定めは,このことを明らかにしたものであった。
そして,組織改編などを経た後の現在の被告においても変わることはなく,被告の就業規則においても前提事実(4)ア(イ)aのとおり規定されている。
以上のことから,原告らは勤務地や職種の変更について,包括的な同意をしているものと解すべきである。
イ 原告らが本件配転命令前の勤務地及びその近辺で勤務し,一定の職種の範囲内の業務に従事していたのは,偶然,遠隔地への配転がなく,職種を変更することがなかったからにすぎず,このことによって,勤務地や職種を限定する旨の合意が生じるものではない。
実際にも,被告においては,勤務地や職種の変更が数多くあった。
また,旧電電公社の募集においては,最初の配属場所が示されていたにすぎない。
(2) 争点2(本件計画の必要性の有無)について
本件計画は,構造改革の中心となるものであり,また,構造改革には,次のとおり必要性があった。
ア 構造改革の必要性
(ア) 被告の設立当初の状況(中期施策の実施等)
被告は,平成11年7月に西日本地域における地域電気通信業務を目的として設立されたが,従来のNTTの収益構造ないし事業構造を承継していた。すなわち,被告は,①収益のほとんどを固定電話収入に依存せざるを得ない収益構造,②NTT法上,収益の期待できる新たな事業領域に容易に進出することができない事業構造,③NTT法上義務付けられているユニバーサル・サービス提供のため,電気通信設備を維持,更新していかなければならず,そのために毎年多額の投資を行わなければならないという支出構造,④設備の維持,保守等のための人件費が極めて多く必要であるという支出構造を有していた。
また,平成11年当時,情報通信事業においては,いわゆるIT革命と称される情報通信技術の飛躍的な進展を背景として,インターネットや移動体通信が急速に普及,拡大するとともに,情報通信の国際化が急速に進展し,グローバルで激しい競争が活発化しようとする環境にあった。
このように,被告は,設立当初から厳しい経営環境にさらされ,黒字体質への早期転換,固定電話に依拠した企業からインターネットに代表されるIP技術を活用する情報流通企業へ脱皮することが,喫緊の課題であった。
そのため,被告は,平成11年11月に「中期経営改善施策」と称する3カ年計画(以下「本件中期施策」という。)を策定し,情報流通営業の充実を図るとともにコストを削減させるため,新規採用の凍結,グループ会社間の人員再配置等による人件費の削減,設備投資の効率化といった施策を実施した。
本件中期施策の実施中にも,当初予想し得なかった経営環境の悪化があったため,平成12年12月から平成14年4月までにわたって,希望退職者を募集し,これにより約1万2000人が退職した。
(イ) 財務状況の悪化
本件中期施策の実施にもかかわらず,①固定電話の回線数の減少及び通話量の減少(携帯電話の飛躍的な伸び),②接続料収入の減収(アメリカとの政府間協議の結果による),③マイライン制度(顧客が優先的に利用する電話会社をあらかじめ登録することにより,自動的にその電話会社を利用した通話になるというシステム)の導入による被告のシェアの低下,④インターネットアクセス市場の動向(インターネットアクセス市場において,ISDN等からブロードバンド需要への急激なシフトによりISDNの需要が激減し,ADSL市場においても「ヤフー!BB」等の新規参入業者との間の価格競争により大幅な収益拡大が見込めなかったこと),⑤IP電話(IP技術を応用しつつ,従来のインターネット電話よりも音質が改善され,距離や時間を問わず一律に価格が安い電話サービス)の登場,⑥ソフトバンク社の固定電話市場への参入,といった経営環境の変化が生じた。
このような急激な変化により,被告の財務内容は悪化の一途をたどり,平成13年2月発表の平成13年度(平成13年4月1日から平成14年3月31日まで)の事業計画では,売上高2兆5540億円,経常損失約840億円と予想したが,平成13年11月の中間決算発表時には経常損失約1400億円と予想を下方修正した。結果的には,平成13年度は,売上高が約2兆1906億円,経常損失が約1704億円,当期未処理損失が約3962億円となった。また,平成14年度以降も,約1500億円規模の大幅な赤字が継続し,自立した企業として存続し得ない厳しい事態を想定せざるを得ず,従業員の雇用確保も困難となるまでの強い危機感を持たざるを得ない状況であった。
このようなことから,被告としては,財務状況等を考慮すると,一過性の対処策のみではなく,事業構造を大きく転換させる方策をとる必要があるとの判断に至った。
イ 被告ないしはNTTグループの経営状況(原告らの主張(2)ア)について
(ア) 攻撃的リストラという主張について
仮に優良企業であっても,競争力を確保し,将来を見据えた経営戦略をとらなければ,企業の存立自体が危ぶまれる状態にまで至りうることは,昨今の企業倒産の状況から見れば明らかである。そして,その有力な予防策の1つとして,人件費の削減があることも当然のことである。
(イ) NTTグループと被告との関係
NTTグループが全体として黒字だからといって,その中の赤字企業において経営上の努力が不要となるものではない。連結決算の対象となる企業の間においても,債権債務が法的に別個のものとされるのと同様に,資産や負債が法的に別個のものであることは当然である。
なお,被告の赤字をNTT東日本が填補するというのは,NTT東日本の設立後の3年間に限定された特例にすぎず,むしろ,この3年以内に黒字構造に転換させることが,被告にとっての至上命題であったのである。
ウ 被告が考慮していないコスト削減の事由(原告らの主張(2)イ)について
追加希望退職募集(原告らの主張の(ア)参照)について考慮されていることは,前記ア(ア)のとおりであり,また,NTT東日本からの交付金(原告らの主張の(イ)参照)を受けられる時期が限られていることは,前記イ(イ)のとおりである。
また,被告はNTTに対して「グループ経営運営費」を支払っているが(原告らの主張の(エ)参照),これは経営上の指導,助言というサービスへの対価であり,金額についても,平成12年度には75億円であったが,平成15年度には55億円にまで減額されている。
さらには,いわゆる団塊の世代の大量退職による経費削減(原告らの主張の(オ)参照)についても考慮されているし,これによる経費節減だけでは被告の財務状況が改善しないことは明らかである。
(3) 争点3(本件計画が脱法的なものであったか否か)について
ア 人件費削減のためには種々の手法があるが(整理解雇,賃金等の不利益変更,配転による人員の有効利用など,),その内容とのバランスで,その法的な有効無効が決せられるところ,整理解雇は労働者にとって一方的に生活の資を奪われることであり,賃金等の不利益変更も労働者にとって最も重要な労働条件が一方的に変更されるもので労働者に対する不利益性が高いことから,企業経営上の(高度な)必要性が要件とされる。
しかし,配転については,賃金が確保されるなど,大きな不利益が存在しないことから,経営上の必要性ではなく業務上の必要性があれば足り,その業務上の必要性も判例上緩やかに解されている。
イ なお,原告らは,何らの雇用形態も選択しなかったために60歳満了型を選択したものとみなされたが,これにより原告らの雇用契約上の地位に変更は生じておらず,何の不利益も生じていない。
ただ,被告の残る業務としては,企画・戦略業務と大口ソリューション営業しかなく,その中でも被告が特に大都市圏でのソリューション営業に注力する方針をとったことから,結果において,60歳満了型の従業員の多くが大口ソリューション営業への職種転換や,大都市圏への異動を受けたにすぎない。
(4) 争点4(本件計画が年齢による差別に当たるか否か)について
ア 原告らの主張(4)アについて
そもそも,本件計画における雇用形態選択の制度は,従業員に対して,退職・再雇用とともに職場の地域限定や65歳までの雇用の確保という選択の余地を与えるものにすぎないのであり,これに応じる意向のない者は,OS会社に対して業務委託がされた後の被告において,その能力,適性に応じて従来どおりの労働条件での業務が可能なのであり,その選択権は原告らに与えられており,そもそも差別には当たらない。
また,この雇用形態の選択は,51歳に達する従業員全員に適用されるものであり,現在その年齢に達しない者であってもいずれ対象となるのであって,一定の従業員のみをねらい打ちにした一過性の施策ではなく,その意味では平等を欠くものではない。
さらには,憲法14条及び労働基準法3条は,国籍,信条,性別,社会的身分を理由とした差別を禁じているものであるが,年齢はこれ該当しない。
被告が51歳を区切りとしたのは,一般に50歳前後の年齢は,年度末年齢50歳から企業年金の受給権が発生することからも裏付けられるように,マイホームの購入,教育費の増加,子どもの結婚等の事由から,勤務地域や一時的資金等に対する様々なニーズが生じやすい年代であることを総合的に勘案して,この年齢を基準に退職・再雇用という新たな選択の途を考えたのであり,合理的な区分というべきである。
イ 原告らの主張(4)イについて
本件配転命令を行った平成14年当時の高年齢者雇用安定法においては,60歳以上の雇用継続は,単に努力義務にすぎなかった。また,被告は,従来のキャリアスタッフ制度を廃止していない。
(5) 争点5(本件配転命令における業務上の必要性の有無)について
ア 60歳満了型の従業員の人員配置についての被告の方針等
(ア) 大都市圏の大口ソリューション営業への重点的配置
被告は,前記(2)のとおり,収益の拡大を見込めないまま毎年1500億円規模の赤字が継続することが予測される状況において,より抜本的なコスト削減を行うために,業務の大幅な委託を内容とする本件計画を実施した。その結果,被告には,経営戦略や企画に関する業務と,大口ソリューション営業の業務が残るのみとなったが,60歳満了型の従業員が従事していた業務の大半が被告からなくなったことから,60歳満了型の従業員については,被告に残ったこれらの業務へ配転することとした。
60歳満了型の従業員は,平成14年5月1日の時点で463名であったところ(前提事実(2)エ(ウ)),固定電話による音声通話の減少,マイライン導入による被告のシェアの低下,企業におけるデータ通信等のIPビジネスへの構造転換などの事業環境の変化に適応して収益拡大を図るには,大口ソリューション営業を強化する必要があったことなどから,被告は,60歳満了型の従業員を大口ソリューション営業に重点的に配置することとした。
また,大口ソリューション営業部の中でも,特に京阪神地区及び名古屋は,需要が大きく競争環境が厳しいことから,営業重点地域として位置づけられており,また,様々な業種,規模のユーザーやシステム案件に接する機会が多く,60歳満了型の従業員の早期のスキルアップのために配置することが効果的と考えられた。そのため,被告は,60歳満了型の従業員のうち大口ソリューション営業に従事させることとした従業員を大阪,兵庫,京都,名古屋の各支店に配属させることとした。
ただし,グループ会社に出向中の従業員,法人営業等における企画戦略業務の経験により高いスキルを有する者,定年までの残年数が短い者(57歳程度以上の者)などについては,グループ会社に出向させるなどの例外的な扱いをした。
(イ) 本件スキル転換研修(前提事実(2)エ(エ))
a 大口ソリューション営業に従事させることとなった60歳満了型の従業員のほとんどは,それまで営業に携わったことがなく,営業スキルの不足が懸念されたため,被告は,本件スキル転換研修を行うこととした。
平成14年5月1日から本件スキル転換研修受講までの待機期間については,所属支店のソリューション営業部等において,パソコン等を活用した自学自習及び実業務を通じた業務研修等により本件スキル転換研修に備えさせることとした。
なお,大阪支店出身者については,それまでに市場性の高い地域で実経験を積んでいることから,業務研修の受講を免除した。
また,受講者の選定については,比較的営業に近い職種に従事していた従業員や中小規模支店の従業員を早期に受講させることとしたほか,各支店の受講人数のバランスを考慮した。
b 被告は,本件スキル転換研修後,受講者のスキル習熟度に応じて,SA,A,B,C,Dの5段階評価を行った(以下「本件スキル判定」という。)。
(ウ) 各支店のソリューション営業部への配転
被告は,本件スキル転換研修の修了者を京阪神及び名古屋の各支店のソリューション営業部に順次配転した。
本件スキル転換研修の修了者の各支店への配置に当たっては,本件スキル判定を1つの基準として,全国的に見て被告の営業強化につながるよう,各支店のスキルバランスが偏らないように配慮した。
また,各従業員の居住地などの地理的事情,各支店の人員状況なども考慮した。
さらには,従業員の健康状態及び家庭事情,労働組合活動の状況等により,出身支店に残すなどして,従業員が著しい不利益を被らないような配慮を行った。
(エ) 転居等に伴う従業員の不利益を軽減するための措置
被告においては,転居や遠距離通勤を要する配転を行う場合には,次のような措置を行っている。
a 家族帯同の場合
世帯社宅の確保,引越費用等の支給,家族が病気等の場合の近隣病院の確認や紹介等
b 単身赴任の場合
単身赴任社宅の確保,単身赴任手当の支給,引越費用や帰省手当等の支給,本人が病気等の場合の近隣病院の確認や紹介等
c 遠距離通勤の場合
特急や新幹線利用料金の支給(ただし,片道2時間以内などの条件を充たす場合)
(オ) 大阪支店の営業体制(本件配転命令1及び2)
a 大阪支店では,本件計画の実施に伴い,管轄下のユーザーのうち,支店に残すように指示のあった売上高100億円以上の企業等の約1500社,及び大阪支店の経営戦略上独自に受け持つこととした約2300社の,合計3800社を大阪支店ソリューション営業部において受け持つこととし,それよりも下位のユーザー層を営業系地域会社である株式会社エヌ・ティ・ティマーケティングアクト関西(以下「アクト関西社」という。)に業務委託することとした。
大阪支店ソリューション営業本部においては,約3800社の対象ユーザーを,売上等の規模によって上位層の約800社と下位層の約3000社に分けた。
このうち,上位層約800社については,業種別に3つに区分けし,第1ないし第3ソリューション営業部にそれぞれ配置した。また,下位層約3000社については,本件計画の実施前の組織を統廃合しつつ地域別に区分けを行い,大阪北ソリューション営業部,大阪中央ソリューション営業部,大阪南ソリューション営業部の3つの営業部体制とした。
b 大阪支店では,①本件計画の実施前に大阪支店,和歌山支店,大阪府下のグループ会社又は本社事業部に所属していた従業員で60歳満了型の者(217名),及び,②本件計画実施後に本件スキル転換研修を受けて他府県から大阪支店に配置換えとなる60歳満了型の従業員(平成14年4月から6月までの間に本件スキル転換研修を修了した者で,大阪支店以外の出身者は,原告A(原告1),原告C(原告3),原告D(原告4)を含めて27名であった。)の配置について,検討を行った。
その結果,これらの者の大半が営業未経験者,又は大口ユーザーに対する営業経験のない者であったため,いきなり大口ユーザーを担当する第1ないし第3ソリューション営業部に配置することはせず,小規模ユーザーを対象とする営業活動を行う中でスキルを高めてもらうのが適当であると判断し,これらの者の大半を各地域のソリューション営業部の営業担当に配置することとした。
そして,これらの者には,1ないし3回線ユーザー(中小企業や商店等)に対するフレッツADSL及びBフレッツ等を中心とした通信サービスの導入を提案する業務を担当させることとした。
c 被告の今後の生き残りを図るためには,早期にブロードバンドサービスのシェアを確保し,市場における優位性を確保することが重要であったが,平成14年4月から,関西電力系事業者のケイ・オプティコムが,関西圏全域での光ファイバーサービスの提供を開始したことにより,この地域において激しい競争が繰り広げられることとなった。
このようなブロードバンド市場の状況からすれば,被告としては,京阪神地域におけるADSLサービスや光ファイバーサービスの市場シェアを少しでも多く獲得することが,被告の一時的な収益拡大の観点のみならず,今後の事業展開を考えた場合にも極めて重要であり,そのような観点から60歳満了型の従業員の担当業務は重要な意味を有するものであった。
(カ) 名古屋支店の営業体制(本件配転命令3)
a 名古屋支店における人員の必要性
本件配転命令1及び2の後,名古屋支店において,被告の主力商品である光ファイバーサービスの販売やMI業務を強化する必要が生じてきたことから,本件配転命令3を行った。
すなわち,まず,名古屋支店エリアにおいては,ADSL市場のシェアが他支店の平均よりも低かった。また,被告は,平成13年秋から名古屋市内の一部地域でBフレッツサービスを開始し,同地域では光ファイバーサービスの提供をほぼ独占していたが,平成14年春に,中部電力が同年11月から光ファイバーサービスを開始するとの報道発表を行ったことから,大阪支店エリアと同様に,名古屋支店エリアにおいても,光ファイバーサービスをめぐる厳しい競争が想定された。これを受けて,被告は,マンション等の集合住宅を早期に囲い込むことが重要と考え,同年9月,マンション等へのBフレッツの拡販に特化したプロジェクトチームである名古屋BフレッツPTを発足させ,そのため,名古屋BフレッツPTの要員として60歳満了型の従業員を配置させる必要があった。
また,被告の収益基盤を安定させるには,システム装置の受注のみならず,システム受注後の運用や保守管理全般(MI業務)を併せて受注することが有益な手段だったが,当時,名古屋支店では,そのための体制作りが人員不足のためにできない状況であり,MI業務の体制を強化する必要があった。
b 名古屋支店における人員配置の方針
名古屋BフレッツPT担当及び名古屋MI担当には,即戦力として活用できる人材であることが望ましかったが,そのような人材を十分に確保することができなかったため,京阪神地域の各支店(特に大阪支店)はソリューション営業の中心地であり,他社との厳しい競争の経験もあったことから,これらの各支店でソリューション営業に従事していた60歳満了型の従業員を重点的に名古屋支店に異動させることを考えた。
また,ソリューション営業に従事して間もない60歳満了型の従業員であれば,名古屋支店に異動させたとしても,転出元の組織に与える業務上の支障も比較的小さく,名古屋支店においてソリューション営業を担当することにより,ソリューション営業のためのスキルアップが期待できると考えた。
京阪神地域の各支店から名古屋支店への異動者の人選については,個人的事情から異動を回避すべき者を除き,配属後の業務に順応し円滑な業務の実施を行うことができるようにという観点から,①平成14年上半期の業績評価結果が標準以上の者,②本件スキル転換研修の秋期における受講者については,本件スキル判定が標準(C評価)以上の者から人選し,それら従業員の経験等を勘案して,名古屋BフレッツPT担当又は名古屋MI担当に配置することとした。また,本件スキル転換研修の秋期における修了者のうち大規模支店を除く支店の出身者,及び名古屋支店出身者については,原則として名古屋BフレッツPT担当及び名古屋MI担当に配置することとした。
c 名古屋BフレッツPT担当
(a) 名古屋BフレッツPTの組織体制としては,企画担当者10名程度,SE担当者が30名程度,販売担当者が40ないし60名程度,合計80ないし100名程度を想定していた。このうち,名古屋支店からは,企画担当10名,販売担当10名,SE担当20名程度を配置し,その余は他支店からの転入者で補う必要があった。
平成14年9月発足当初,名古屋BフレッツPTは,企画担当者4名,SE担当者18名,販売担当者24名,合計46名であったが,その後,順次,企画担当者を3名,SE担当者12名,販売担当者を37名(原告らを含む。)それぞれ増員した。
(b) 被告の提供するBフレッツシリーズには,ビジネスタイプ,ベーシックタイプ,ファミリータイプ,マンションタイプの4種類がある(前提事実(5)イ(ア)参照)。このうち,マンションタイプは集合住宅全体で加入することを前提としたサービスで,1つの集合住宅で8戸以上の契約が見込める場合に提供されるものであり,また,ファミリータイプは,各戸別に契約可能なサービスであり,一戸建てやオフィス等においても利用されているものである。
そこで,名古屋支店では,概ね20戸以上の集合住宅であれば,8戸以上の契約が見込まれると考え,20戸以上の集合住宅を営業対象とする販売第1グループと,20戸未満の集合住宅を営業対象とする販売第2グループを設けた。そして,マンションタイプの販売には高度の知識とスキルを要することや,管理組合等への説明のために夜間や休日の労働を要請する場合が多くなることなどを考慮した結果,販売第1グループには,名古屋支店のソリューション営業部で従前から大口ソリューション営業に従事していた従業員8名と,九州の支店において営業系業務に従事していた従業員12名を充てることとし,販売第2グループには,比較的営業経験の少ない京阪神地域からの転入者(原告らを含む。)を充てることとした。
(c) 販売第1グループ,販売第2グループともに,基本的にはBフレッツのマンションタイプを勧奨商品としていたが,その販売が困難な場合には,Bフレッツのファミリータイプ,フレッツADSL,その他のNTTの商品を販売するように指示していた。
また,いずれのグループにおいても,経験豊富な従業員を講師としてオリエンテーションを実施したり,勉強会等を開催して,スキルの付与に努めていた。
d 名古屋MI担当
(a) 名古屋支店においては,本件計画の実施前にMI業務に従事していた従業員の多くが退職・再雇用によりOS会社に移行したこともあり,本件計画の実施後のMI業務の担当者が,課長1名(○○課長)の他わずか9名となり,その人員では,保守契約の見積書作成等の限られた作業を行うのが精一杯で,ユーザーへの積極的な提案等ができないだけでなく,保守手引書の不備によるトラブル対応に追われる状況であった。
そこで,MI業務を強化すべく,平成14年11月に新たに課長1名(○○課長)をMI業務の担当とし,○○課長の下に6名の有スキル者を配置し,○○課長の下に原告らの一部を含めた20名を配置した。
○○課長のグループは,主にMIに関する提案業務と下請業者への発注業務を,○○課長のグループは,主に保守手引書作成等の業務を行うこととした。なお,平成15年4月には,○○課長のグループを「MI企画担当」と,○○課長のグループを「MIサポート担当」と,役割を明確にした(なお,以下では,その時期にかかわらず,○○課長のグループを「MI企画担当,○○課長の」グループを「MIサポート担当」と呼ぶことがある。)。
(b) 被告は,MIサポート担当の当面の業務として,保守手引書(ユーザー・被告・下請業者間の連絡系統図,システム構成図などを記載したもので,故障発生時の緊急修理等を行う際には欠かせないものである。)の修正,整備を行わせることとした。平成15年2月ころからは,新規又は既存システムの更改に係る保守手引書の作成作業や,MI企画担当が行っている保守見積書の作成に参画させた。
また,原告らの一部には,「たもつくん」と呼ばれるデータベースの作成,管理を行わせた。この「たもつくん」は,MI業務の進捗管理や保守契約状況をデータベース管理して,AM(アカウントマネジャー)とMI担当者との間で情報を共有化するとともに,管理されたデータに応じたMI業務を行うことができるようなシステムであり,新規に保守契約をしてくれそうなユーザーを洗い出したり,保守契約の更新忘れを防止する目的で作成されたものである。
なお,MIサポート担当では,勉強会の実施や,日常業務を通じた指導等により,必要なスキルを順次習得させた。また,名古屋支店では,MI業務に関する様々な勉強会を実施していた。
イ 原告らの主張(5)ア(本件配転命令全般)について
(ア) 原告らの主張(ア)について
原告らをOS会社に在籍出向させることを認めれば,同じOS会社には退職・再雇用を選択し,従来の70ないし80%相当の賃金で業務を行っている従業員がいるところ,原告らが従来と同一の賃金で同じ職場で同じ業務を行った場合,モラル面で著しい障害になることは明らかであり,そのような人員配置を認めることはできない。
(イ) 原告らの主張(イ)について
本件計画の実施の結果,被告に残った機能は,①経営戦略や企画に関する業務と,②大口ソリューション営業の業務であるところ,被告としては,60歳満了型の原告らに対して,この2つの業務のいずれかを担当させるほかないのであり,この2つの業務を比較したとき,原告らについては少しでも収益に直結する営業部門に配置した方が合理的であると考えられたため,本件配転命令を行ったのである。
また,50歳以下の大口ソリューション営業を担当する従業員は,既にそれぞれが地方において顧客を持っており,そのような従業員を異動させることは,顧客との関係上,デメリットが大きく,合理的な配置ではなかった。
(ウ) 原告らの主張(ウ)について
まず,①本件配転命令1及び2により原告らに与えられた業務が収益を期待できないという点については,原告らが担当するに至ったのはBフレッツ及びフレッツADSLの販売であるが,これらの商品は今後のIP系収入拡大に向けて被告が最も重視している商品であり,これらの販売業務の必要性がないかのような主張は暴論であり,自らに課せられた業務と責任に対する認識が欠けた主張であると言わざるを得ない。
また,②本件配転命令3により生じた新幹線通勤による被告の費用負担の点については,原告らの労働力を被告の業務において最も有効に活用するために必要な費用であり,原告らが配転先で十分にその業務を全うし,被告の営業に寄与すれば回収できたものである。むしろ,原告らを配転せず,地方支店に置いた場合,そのような収益拡大につながる可能性は低く,原告らに対する人件費が被告にとって有用でないコストとなるおそれが高かったのである。
ウ 原告らの主張(5)イ(本件配転命令1)について
被告は,最終的な目標としては,原告らには,中小規模ユーザーではなく,早期に大口ユーザーに対する営業を行ってもらうことを考えていた。そのためには,中小規模ユーザーの担当から着実に経験を積ませ,スキルアップを図りながら大口ユーザーに対する営業ができるようにするべきであり,競争が激しく,新製品の投入も早い大都市圏で研修することの効果は高い。また,原告らに対しては,いずれは大都市圏で業務をさせることを目的としていたのであり,最初から大都市圏で業務を行わせることが適当であった。
エ 原告らの主張(5)ウ(本件配転命令2)について
(ア) 原告らの主張(ア)について
被告は,中小規模のユーザー向けの営業活動を基本的にアクト関西社に業務委託したが,アクト関西社では人員規模の関係からAMを配置できるのが3回線以上のユーザーであった。そこで,大阪支店では,アクト関西社に1,2回線のユーザーを任せていたのでは営業が手薄になると考えて,このようなユーザーに対しても営業活動を行うこととした。
(イ) 原告らの主張(イ)について
このような主張は,原告らの努力,工夫が不足していることを示しているにすぎず,実際に,原告らと同様に平成14年5月以降に職種が転換した者の中にも,売上げが原告らの数倍ある者がいる。そもそも,顧客リストは営業活動のきっかけにすぎないものであり,要は営業努力の問題である。
(ウ) 原告らの主張(ウ)について
小規模ユーザーに対する営業活動において用いる営業手法や商品知識は,大口ユーザーに対する営業活動を行う上での基本であり,小規模ユーザーの対応さえできないような状態であれば,大口ユーザーの対応は不可能である。
(エ) 原告らの主張(エ)について
被告は,前記ア(イ)のとおり本件スキル転換研修を行い,その他,大阪支店や名古屋支店においても様々な研修を行った。また,被告においては,通信教育講座の費用負担をするなど,自学自習によるスキルアップの手段を取りそろえるなどしている。
オ 原告らの主張(5)エ(本件配転命令3)について
(ア) 原告らの主張(ア)について
a 原告らの主張aのうち,Bフレッツのマンションタイプの営業の点について
中小規模の事業所ユーザーについては,OS会社である株式会社エヌ・ティ・ティマーケティングアクト名古屋(以下「アクト名古屋社」という)が。受け持つことを考えていたが,事業所ユーザー以外の一般ユーザーについては,積極的な営業体制を構築しておらず,アクト名古屋社において家電量販店や116番を通じたユーザーからの注文を待って販売するという体制を考えていた。そこで,集合住宅の早期囲い込みを図るべく,積極的な営業体制を構築できないかアクト名古屋社と協議したところ,アクト名古屋社も名古屋支店エリアの全域の集合住宅を担当するだけの余裕がないという状況である一方,被告の今後の販売戦略を持つことは有意義であると考えられたことから,名古屋支店エリアを,アクト名古屋社が担当するエリアと名古屋支店が担当するエリアとに分けることとなった。また,名古屋支店の既存のソリューション営業部では集合住宅まで受け持つことは困難な状況だったために,既存の販売部隊ではなく,新たに名古屋BフレッツPTを発足させることとしたのである。
b 原告らの主張aのうち,MI業務の点について
MI業務のうち業務委託されたものは,実際の保守作業及び中小規模ユーザーに対するMI業務であり,大口ユーザーに関する業務は被告に残されていた。そして,MI業務での売上げを伸ばしていくために重要なことは,保守契約のニーズの高い大口ユーザーから新規の保守契約を取得し,契約の更新を繰り返してもらうことであり,そのためにはMI提案業務(AMのセールスのために保守見積書等を作成することなど)を強化する必要があった。
c その他,原告らの主張b及びcについては,争う。
(イ) 原告らの主張(イ)について
a 原告らの主張aについて
被告は,保守手引書の修正等だけではなく,新たな保守手引書の作成,保守見積書の作成,データベースの作成等も命じている。また,保守手引書の修正等は,必ずしも単純作業であったとは言えない。
b 原告らの主張bについて
前記ア(カ)d(a)のとおり,被告が名古屋MI担当の体制の整備を始めたのは平成14年11月ころであり,また,名古屋支店のシステム受注高に対するMI業務の受注高の割合は,他支店に比べて半分程度しかなかったのであり,MI業務を強化しなければならない必要性があった。
(ウ) 原告らの主張(ウ)について
a 原告らの主張aについて
販売第2グループにおいても平成14年度当初からファミリータイプやフレッツADSLの売上げは着実に伸びてきていたなど,成果が上がらないような業務ではなかった。また,被告は,原告らに対し,マンションタイプの販売のみを求めていたのではなく,マンションタイプの販売が困難なときは,ファミリータイプやフレッツADSL等のその他の商品の販売を行うことも重要であると,繰り返し説明していた。
b その他,原告らの主張b及びcについては,争う。
(6) 争点6(本件配転命令が不当な動機・目的に基づくものであるか否か)について
本件配転命令については,前記(5)のとおり,合理的な理由があったのであり,原告ら主張のような動機・目的があったと考えるべき理由はない。
なお,仮に原告ら主張のような動機・目的があったとすると,①60歳満了型の従業員でも配転命令を受けていない従業員は数多くいること,②原告ら(原告D(原告4)を除く)を含め,一旦は配転命令を受けた者のうちの多くが,元の勤務地の近傍に再配転されていること,③60歳満了型の従業員の育成や研修に多額の費用をかけていることについて,およそ説明ができない。
(7) 争点7(本件配転命令が不当労働行為に該当するか否か)について
ア 被告は,本件計画に基づく業務上の必要性により本件配転命令を行ったのであり,人員配置の決め方についても,対象者のスキル等を基準として行ったのであって,組合潰しや組合役員の狙い撃ちといった不当な目的により行ったものではない。
NTT労組の組合員である60歳満了型の従業員は121名おり,そのうちの61名(50.4%)について,配転先が異なる都道府県となる配転を命じているのに対し,通信労組の組合員である60歳満了型の従業員は306名おり,そのうちの107名(34.9%)について,同様の配転命令を行ったのであり,通信労組の組合員であることを理由に配転させた事情はない。
イ 原告らの主張(7)イについて
(ア) 本来,NTT労組との間での組合間差別や通信労組に対する団交拒否の問題と本件配転命令の問題とは別次元の問題であるし,本件配命令に至るまでの経過においても不当労働行為は存しない。
被告と通信労組は,平成11年11月,基本的労働条件等の,本社が所掌する事項については中央交渉委員会で対応し,各県域支店等の組織の長が所掌する事項については地域交渉委員会で対応する方式(2段階交渉方式)を行うことを確認した。本件計画に関する労使間論議に当たっても,この方式で行うことが合意された。
被告は,平成13年4月27日に本件計画の概要を記載した資料を通信労組に送付し,同年5月8日にはその詳細な資料を送付した(前提事実(2)ア(イ))。また,被告と通信労組は,同年5月11日に団体交渉を行い,その後も団体交渉を重ねた。
しかし,通信労組は,本件計画そのものに反対の姿勢を崩さず,団体交渉も入口論に終始する結果となり,各施策についての深い論議に至らなかった。
(イ) 原告らの主張(ア)について
まず,被告がNTT労組に対して本件3カ年計画を説明,協議を行ったのは,被告とNTT労組との間の経営協議会の場においてである。この経営協議会は,経営の基本施策など重要課題について会社が労働組合に説明し意見を徴する場であり,団体交渉とは異なる場である。
また,被告は,本件計画にかかる労働条件の諸問題に関しては,検討段階から通信労組に対しても逐次提案してきたところであり,提案に当たっては,被告内に存在する全ての労働組合に対して,ほぼ同一時期に同様の項目内容を示して対応しており,NTT労組を含む他の労働組合との関係で差別的な取扱いなどない。
(ウ) 原告らの主張(イ)について
意向確認調書等を提出しない場合には60歳満了型の選択があったものとみなす扱いをすることそのものが,特段の選択を押しつけるものとまで言えず,また,被告は通信労組に対してこの扱いについて一定の説明を行っており,さらには,通信労組との間でのこの扱いについての団体交渉後に意向確認手続を行っているのであるから,被告に不誠実な点はない。
この他,被告が,個別面談を受けることは業務命令であると言明した点についても,それは被告の方針を説明したにすぎず,組合を無視する発言ではないし,被告は通信労組からの団体交渉の要求があったときには,要求の期間内に団体交渉に応じていた。また,被告は,平成13年5月8日以降,OS会社における労働条件について,通信労組に,随時,提案及び説明を行っていた。
(エ) 原告らの主張(ウ)について
組合員の個別の配属問題については,被告の経営そのものに関する事項であり,被告がこれに対する団体交渉を拒否するについては正当な理由がある。
ウ 原告らの主張(7)ウについて
被告が把握しうる限りでは,本件計画の実施直前に地方都市に在勤した60歳満了型の従業員のうちの通信労組の組合員数(86名)とNTT労組の組合員数(44名)の比較に加え,それらのうち本件スキル転換研修後の配転により地方都市から大都市圏(京阪神及び名古屋)へ異動した者の人数(通信労組の組合員は25名,NTT労組の組合員は34名)の比較によれば,通信労組の組合員のみならず,相当数のNTT労組の組合員も配転されていることが分かる。このように,通信労組の組合員を狙い撃ちにした事実はない。なお,組合役員については,通信労組は被告に対して組合役員名簿を提出していない。
また,被告は,本件配転命令に当たって,組合活動に関しても考慮した。具体的には,従来の団体交渉において組合側から「交渉団長」又は「窓口」として指定されてきた組合員を組合活動上不可欠な者と判断し,当面は転居を伴う配転を見合わせたり,転勤先を配慮するなどした。
エ 原告らの主張(7)エについて
被告は,そもそも,関西地区に通信労組の分会がいくつ存在していたのかや,どの区域単位ごとに分会が存在していたのかなど,通信労組の分会組織については全く関知しておらず,配転に際して通信労組の組合員の異動を伴うようにあえて人選することは不可能である。
また,大阪支店に在籍する通信労組の組合員の勤務先のビルに変更が生じたのは,本件計画の実施の結果,大阪支店の営業体制を大きく見直し,各事業所の所在するビルについても抜本的見直しを行った結果にすぎない(前記(5)ア(オ)a参照)。
(8) 争点8(本件配転命令において適正な手続が執られていたか否か)について
被告は,定期的に従業員との個別面談等を通じて本人の健康状態や家庭事情等の把握に努めており,雇用形態の選択の際にも51歳以上の退職者全員に個人面談を受けるように促したが,原告ら通信労組の組合員の大半は,組合の意向として,個人面談に応じなかった。
原告らが本件訴訟において主張している個人的事情の中には,本件配転命令前に被告に明らかにしていなかった事実が含まれる。被告は,雇用形態を選択すべき対象者に対して,平成13年12月から,本件計画の内容,労働条件,雇用形態選択の内容等を説明しており,原告らは,60歳満了型の従業員となった場合に転居を要する配転となる可能性があることを十分に承知しており,仮にこれに応じられない事情があれば個人面談等において主張する機会があったにもかかわらず,その機会を自ら放棄したものである。被告としては,把握できなかった事実を配慮することはできないのであるから,本件配転命令前に被告が知らなかった事情を本件配転命令の違法性を決する上で考慮されるべきではない。
(9) 争点9(各原告らが本件配転命令によって受けた不利益の程度等)について
ア 原告A(原告1)について
(ア) 原告Aは,本件計画の実施前,株式会社NTT-ME四国(以下「NTT-ME四国」という。)香川支店において,無線設備の保全維持管理全般,現況調査業務に従事していた。しかし,本件計画の実施により,原告Aが従事していた業務は,全てOS会社に移管された。
被告は,原告Aを大都市圏での大口ソリューション営業に配置することとし,平成14年5月1日,被告香川支店ソリューション担当に配置するとともに,同月7日から本件スキル転換研修を受講させた。原告Aの本件スキル判定の結果はCで,帰省の際の交通事情等を考慮して大阪支店に配置することとし,本件配転命令1を行った。
原告Aは,大阪支店ソリューション営業本部大阪南ソリューション営業部において,1ないし3回線の事業所ユーザーに対するBフレッツ等を中心とした通信サービス等の導入を提案する業務に従事していた。
(イ) 被告が原告Aに面談を申し出なかったのは,通信労組から個人面談を拒否する旨の通知を受けていたからである。
被告は,平成14年4月17日及び同月22日におけるNTT-ME四国への申入れにより,原告Aの妻の障害の内容を把握していたが,原告Aが妻との共働きを続けていることからして,原告A自らが妻の介護を行わなければならないような切迫した状況とは考えられない。
なお,被告は,本件配転命令1当時の通信労組の愛媛支店地域交渉団長及び交渉窓口の2名については,組合活動上不可欠な者と判断し,当面,大都市圏への配転を見合わせるという配慮をしている。
イ 原告B(原告2)について
(ア) 原告Bは,本件計画の実施前,NTT-ME四国徳島支店において,パケット・フレームリレーサービスに関する交換機の保全維持,回線開通全般(現地対応業務),故障対応業務に従事していた。しかし,本件計画の実施により,原告Bが従事していた業務は,全てOS会社に移管された。
被告は,原告Bを大都市圏での大口ソリューション営業に配置することとし,平成14年5月1日,被告徳島支店営業担当に配置するとともに,同月7日から本件スキル転換研修を受講させた。原告Bの本件スキル判定の結果はBで,帰省の際の交通事情等を考慮して兵庫支店に配置することとし,本件配転命令1を行った。
原告Bは,兵庫支店ソリューション営業部において,平成14年5月から同年9月までは,ITスキル習得を目指したパソコンによる自学自習等を行った。また,平成15年4月にブロードバンドPTに異動した後は,1,2回線事業所ユーザー等へのBフレッツ,ADSL等のIP系商品の訪問販売を行った。
(イ) 被告は,平成14年4月22日に,原告Bから,その妻の腰痛についての申告を受けていたが,当時,その妻は被告の徳島支店に所属していたため,その所属長に確認したところ,その妻は通常どおり勤務していたことが判明したため,特段の問題はないものと判断した。
また,原告Bの自宅から兵庫支店の勤務地までの通勤時間は約1時間40分ないし50分であり,自宅通勤を甘受できない範囲ではなく,うつ病に罹患した原因が単身赴任にあったとしても,原告Bが単身赴任を選択したのであり,被告の責任を問うことは失当でる。
ウ 原告C(原告3)について
(ア) 原告Cは,本件計画の実施前,被告岡山支店において,オーダ処理業務(線番異動処理,設備管理業務)に従事していた。しかし,本件計画の実施により,原告Cが従事していた業務は,全てOS会社に移管された。
被告は,原告Cを大都市圏での大口ソリューション営業に配置することとし,平成14年4月1日から本件スキル転換研修を受講させた。原告Cの本件スキル判定の結果はBで,大阪支店に配置することとし,本件配転命令1を行った。
原告Cは,大阪支店ソリューション営業本部大阪南ソリューション営業部において,1ないし3回線の事業所ユーザーに対するBフレッツ等を中心とした通信サービス等の導入を提案する業務に従事していた。
(イ) 被告は,本件配転命令1の内示や発令の際を含め,原告Cが単身赴任を余儀なくされるような家庭事情の申告を受けていない。また,原告Cの妻が介護を要するに至ったのは,本件配転命令1の後に生じた事情である。
なお,被告は,岡山支店については,通信労組から地域交渉団長や交渉窓口の担当者の氏名について通知を受けておらず,原告Cが組合活動上不可欠な者であるとは考えていなかった。
エ 原告D(原告4)について
(ア) 原告Dは,本件計画の実施前,被告大分支店において,現地調査を含む設備検討業務及びINS1500(被告のISDN商品の名称)に関わる事務処理等の業務に従事していた。しかし,本件計画の実施により,原告Dが従事していた業務は,全てOS会社に移管された。
被告は,原告Dを大都市圏での大口ソリューション営業に配置することとし,平成14年4月1日から本件スキル転換研修を受講させた後,同年5月1日に大分支店企画担当に配置した。原告Dの本件スキル判定の結果はBで,大阪支店に配置することとし,本件配転命令1を行った。
原告Dは,大阪支店ソリューション営業本部大阪北ソリューション営業部において,1ないし3回線の事業所ユーザーに対するBフレッツ等を中心とした通信サービス等の導入を提案する業務に従事していた。
なお,原告Dは,従前から,ユーザー宅などにおいてパソコン等の設定を行うほか,営業業務を行っていた。
(イ) 被告は,本件配転命令1の内示や発令の際を含め,原告DがHT
LV-Iウイルスを保有している旨の申告を受けていない。
オ 原告E(原告5)について
(ア) 原告Eは,本件計画の実施前,株式会社NTT-ME関西(以下「NTT-ME関西」という。)大阪支店営業部大阪北営業部(中央東営業)において,現地調査を含む設備検討業務及びINS1500に関わる事務処理等の業務に従事していた。しかし,本件計画の実施により,原告Eが従事していた業務は,全てOS会社に移管された。
被告は,原告Eを大都市圏での大口ソリューション営業に配置することとし,平成14年5月1日に本件配転命令2を行い,同年10月1日から約2週間の本件スキル転換研修(そのうちの業務研修は免除された)を。受講させた。原告Eの本件スキル判定の結果はCで,名古屋支店の営業強化を図るために,本件配転命令3を行った。
原告Eは,名古屋MI担当として,保守手引書の作成等を行った。
(イ) 原告Eの父は,原告E,その妻,長女とともに同居し,昼間は特に介護を必要としていない状況からすれば,原告E自らが父の介護を行わなければならないような状況とは考えられなかった。また,原告Eの母が脳梗塞痴呆と診断されたのは本件配転命令3の後であり,被告としては本件配転命令3に当たって考慮しうる事情ではなかった。
カ 原告F(原告6)について
(ア) 原告Fは,本件計画の実施前,NTT-ME関西大阪支店サービスフロント担当において,データ通信系サービスの故障受付,サービスオーダの回線開通業務に従事していた。しかし,本件計画の実施により,原告Fが従事していた業務は,全てOS会社に移管された。
被告は,原告Fを大都市圏での大口ソリューション営業に配置することとし,平成14年5月1日に本件配転命令2を行い,同月7日から約4週間の本件スキル転換研修を受講させた。原告Fの平成14年上半期の業績評価結果は標準以上であり,名古屋支店の営業強化を図るために,本件配転命令3を行った。
原告Fは,名古屋MI担当として,保守手引書の作成等を行った。
(イ) 原告Fの血糖値の点は,本件配転命令3の際には安定していたことからすれば,本件配転命令3に当たって考慮すべき事情にはならない。
キ 原告G(原告7)について
(ア) 原告Gは,本件計画の実施前,被告大阪支店大阪東ビジネスユーザ営業部ビジネスユーザ営業部門において,小規模ユーザーに対するアカウントマネージャー(AM)との帯同による提案活動業務(SE)に従事していた。しかし,本件計画の実施により,原告Gが従事していた業務は,全てOS会社に移管された。
被告は,原告Gを大都市圏での大口ソリューション営業に配置することとし,平成14年5月1日に本件配転命令2を行った。なお,原告Gが既にソリューション営業に従事していたことから,原告Gには本件スキル転換研修を行わなかった。原告Gの平成14年上半期の業績評価結果は標準以上であり,名古屋支店の営業強化を図るために,本件配転命令3を行った。
原告Gは,名古屋MI担当として,保守手引書や保守見積書の作成等を行った。
(イ) 原告Gの高尿酸血症の点については,原告Gは新幹線通勤をしていたのであるから,通院は可能であったと考えられる。また,スポーツが十分にできなくなった点は,通常甘受すべき範囲内のものというべきである。
ク 原告H(原告8)について
(ア) 原告Hは,本件計画の実施前,被告大阪支店なにわビジネスユーザ営業部ビジネスユーザ営業部門において,中規模ユーザーに対する営業活動業務(AM)に従事していた。しかし,本件計画の実施により,原告Hが従事していた業務は,全てOS会社に移管された。
被告は,原告Hを大都市圏での大口ソリューション営業に配置することとし,平成14年5月1日に本件配転命令2を行った。なお,原告Hが既にソリューション営業に従事していたことから,原告Hには本件スキル転換研修を行わなかった。原告Hの平成14年上半期の業績評価結果は標準以上であり,名古屋支店の営業強化を図るために,本件配転命令3を行った。
原告Hは,名古屋MI担当として,保守手引書や保守見積書の作成等を行った。
(イ) 原告Hの飛蚊症と胃潰瘍の点については,本件配転命令3の当時には発覚していない事情であるし,本件配転命令3を差し控えなければならないほどの事情でもない。
ケ 原告I(原告9)について
(ア) 原告Iは,本件計画の実施前,被告大阪支店設備部ネットワーク高度化PTにおいて,アナログ設備,中継メタリックケーブル縮退によるスリム化の総合進捗管理業務に従事していた。しかし,本件計画の実施により,原告Iが従事していた業務は,全てOS会社に移管された。
被告は,原告Iを大都市圏での大口ソリューション営業に配置することとし,平成14年5月1日に本件配転命令2を行い,同年11月5日から約2週間の本件スキル転換研修(そのうちの業務研修は免除された)を。受講させた。原告Iの平成14年上半期の業績評価結果は標準以上で,本件スキル判定の結果はBであり,名古屋支店の営業強化を図るために,本件配転命令3を行った。
原告Iは,名古屋MI担当として,保守手引書の作成等を行った。
(イ) 原告Iの高血圧症の点については,本件配転命令3の当時まで何ら問題なく業務を行っていたことから,配転に当たって考慮すべき事情ではない。
コ 原告J(原告10)について
(ア) 原告Jは,本件計画の実施前,NTT-ME関西大阪支店サービスフロント担当において,データ通信系サービスの故障受付,サービスオーダの回線開通業務に従事していた。しかし,本件計画の実施により,原告Jが従事していた業務は,全てOS会社に移管された。
被告は,原告Jを大都市圏での大口ソリューション営業に配置することとし,平成14年5月1日に本件配転命令2を行い,同年6月3日から本件スキル転換研修を受講させた。原告Jの平成14年上半期の業績評価結果は標準以上であり,名古屋支店の営業強化を図るために,本件配転命令3を行った。
原告Jは,名古屋MI担当として,保守手引書の作成等を行った。
(イ) 原告Jの妻の父(義父)の看病の点については,義父を大阪に呼んで同居するとか,家族とともに名古屋に転居して妻だけ鹿児島に帰るなど,様々な選択肢が考えられる中で,単身赴任を選択したのは原告J自身である。
また,歯周病,神経性の下痢,脳動脈瘤については,本件配転命令との関連性は不明である。
サ 原告K(原告11)について
(ア) 原告Kは,本件計画の実施前,NTT-ME関西エンジニアリングサポート担当において,故障管理,定期試験の業務に従事していた。しかし,本件計画の実施により,原告Kが従事していた業務は,全てOS会社に移管された。
被告は,原告Kを大都市圏での大口ソリューション営業に配置することとし,平成14年5月1日に本件配転命令2を行い,同年5月7日から本件スキル転換研修を受講させた。原告Kの平成14年上半期の業績評価結果は標準以上であり,名古屋支店の営業強化を図るために,本件配転命令3を行った。
原告Kは,名古屋MI担当として,保守手引書の作成等を行った。
(イ) 原告Kの眼の疾患の点については,原告Kが地元から新幹線通勤をしており,その治療には影響がないと思われる。また,両親が高齢である点については,本件配転命令3の当時,姉夫婦が同居していた点からすると,原告Kが介護する必要性はなかった。
シ 原告L(原告12)について
(ア) 原告Lは,本件計画の実施前,NTT-ME関西の関西設備エンジニアリングセンタ第4設計担当において,伝送設備設計,物品受渡しの業務に従事していた。しかし,本件計画の実施により,原告Lが従事していた業務は,全てOS会社に移管された。
被告は,原告Lを大都市圏での大口ソリューション営業に配置することとし,平成14年5月1日に本件配転命令2を行い,同年6月3日から本件スキル転換研修を受講させた。原告Lの平成14年上半期の業績評価結果は標準以上であり,名古屋支店の営業強化を図るために,本件配転命令3を行った。
原告Lは,名古屋MI担当として,保守手引書の作成等を行った。
(イ) 原告Lの妻の両親の介護の点については,妻の両親と同居するなどの選択肢があるのもかかわらず,別居することを選んだのは原告L自身である。また,原告Lの腎臓結石やヘルニア等の点については,いずれも本件配転命令の後に明らかになったものであり,本件配転命令に当たって考慮すべき事情には当たらない。
ス 原告M(原告13)について
(ア) 原告Mは,本件計画の実施前,NTT-ME関西大阪支店所外設備管理担当において,所外設備データベース維持管理業務の一環である土地使用等に関わる維持管理業務に従事していた。しかし,本件計画の実施により,原告Mが従事していた業務は,全てOS会社に移管された。
被告は,原告Mを大都市圏での大口ソリューション営業に配置することとし,平成14年5月1日に本件配転命令2を行い,同年10月1日から約2週間の本件スキル転換研修(そのうちの業務研修は免除された)を。受講させた。原告Mの平成14年上半期の業績評価結果は標準以上で,本件スキル判定の結果はBであり,名古屋支店の営業強化を図るために,本件配転命令3を行った。
原告Mは,名古屋BフレッツPT担当として,その販売第2グループに所属し,マンション等集合住宅へのBフレッツ等の営業業務に従事した。
(イ) 原告Mの義母の病状の点については,その妻が在宅介護ていたのであるし,義母の肺ガンは本件配転命令3の後に判明した事情である。
セ 原告N(原告14)について
(ア) 原告Nは,本件計画の実施前,被告大阪支店パーソナルユーザ営業部カスタマサービスセンタ北部カスタマサポート部門第一フロント担当において,電話(113番)による故障受付,故障修理手配業務に従事していた。しかし,本件計画の実施により,原告Nが従事していた業務は,全てOS会社に移管された。
被告は,原告Nを大都市圏での大口ソリューション営業に配置することとし,平成14年5月1日に本件配転命令2を行い,同年10月1日から約2週間の本件スキル転換研修(そのうちの業務研修は免除された)を。受講させた。原告Nの平成14年上半期の業績評価結果は標準以上で,本件スキル判定の結果はAであり,名古屋支店の営業強化を図るために,本件配転命令3を行った。
原告Nは,名古屋BフレッツPT担当として,その販売第2グループに所属し,マンション等集合住宅へのBフレッツ等の営業業務に従事した。
(イ) 原告Nの高血圧等の点については,本件配転命令3の後の事情である。
ソ 原告O(原告15)について
(ア) 原告Oは,本件計画の実施前,被告大阪支店パーソナルユーザ営業部カスタマサービスセンタ北部カスタマサポート部門第二フロント担当において,電話(113番)による故障受付,故障修理手配業務に従事していた。しかし,本件計画の実施により,原告Oが従事していた業務は,全てOS会社に移管された。
被告は,原告Oを大都市圏での大口ソリューション営業に配置することとし,平成14年5月1日に本件配転命令2を行い,同年10月1日から約2週間の本件スキル転換研修(そのうちの業務研修は免除された)を。受講させた。原告Oの平成14年上半期の業績評価結果は標準以上で,本件スキル判定の結果はBであり,名古屋支店の営業強化を図るために,本件配転命令3を行った。
原告Oは,名古屋BフレッツPT担当として,その販売第2グループに所属し,マンション等集合住宅へのBフレッツ等の営業業務に従事した。
(イ) 原告Oの椎間板ヘルニア等の点については,本件配転命令3まで特段の支障なく業務を行っていたのであり,配転に当たって支障となるような事情とは言えない。
また,被告は,組合活動については,交渉団長及び交渉窓口の2名については,組合活動上不可欠な者と判断し,当面,大都市圏への配転を見合わせるという配慮をしていたが,原告Oはこれらの役職にはなかった。
タ 原告P(原告16)について
(ア) 原告Pは,本件計画の実施前,被告大阪支店パーソナルユーザ営業部テクニカルサポート部門DB管理担当において,所外設備変更処理(サービスオーダコントロール)業務に従事していた。しかし,本件計画の実施により,原告Pが従事していた業務は,全てOS会社に移管された。
被告は,原告Pを大都市圏での大口ソリューション営業に配置することとし,平成14年5月1日に本件配転命令2を行い,同年10月1日から約2週間の本件スキル転換研修(そのうちの業務研修は免除された。)を受講させた。原告Pの平成14年上半期の業績評価結果は標準以上で,本件スキル判定の結果はCであり,名古屋支店の営業強化を図るために,本件配転命令3を行った。
原告Pは,名古屋BフレッツPT担当として,その販売第2グループに所属し,マンション等集合住宅へのBフレッツ等の営業業務に従事した。
(イ) 原告Pのボランティア活動等の点については,長距離通勤に伴う不利益として通常甘受すべき範囲内のものと言うべきである。
チ 原告Q(原告17)について
(ア) 原告Qは,本件計画の実施前,NTT-ME関西の関西設備エンジニアリングセンタ第二回線担当において,ネットワークサービス工事情報,回線開通,回線廃止のデータ変更業務に従事していた。しかし,本件計画の実施により,原告Qが従事していた業務は,全てOS会社に移管された。
被告は,原告Qを大都市圏での大口ソリューション営業に配置することとし,平成14年5月1日に本件配転命令2を行い,同年6月3日から本件スキル転換研修を受講させた。原告Qの平成14年上半期の業績評価結果は標準以上であり,名古屋支店の営業強化を図るために,本件配転命令3を行った。
原告Qは,名古屋BフレッツPT担当として,その販売第2グループに所属し,マンション等集合住宅へのBフレッツ等の営業業務に従事した。
(イ) 原告Qの母の介護の点については,その母が長兄と同居していることからすると,原告Q自らが母の介護を行わなければならないような状況とは考えられない。
ツ 原告R(原告18)について
(ア) 原告Rは,本件計画の実施前,NTT-ME関西の大阪支店営業部カスタマサポート営業部において,CUSTOMオーダー受付処理業務に従事していた。しかし,本件計画の実施により,原告Rが従事していた業務は,全てOS会社に移管された。
被告は,原告Rを大都市圏での大口ソリューション営業に配置することとし,平成14年5月1日に本件配転命令2を行い,同年10月1日から約2週間の本件スキル転換研修(そのうちの業務研修は免除された)を。受講させた。原告Rの平成14年上半期の業績評価結果は標準以上で,本件スキル判定の結果はCであり,名古屋支店の営業強化を図るために,本件配転命令3を行った。
原告Rは,名古屋BフレッツPT担当として,その販売第2グループに所属し,マンション等集合住宅へのBフレッツ等の営業業務に従事した。
(イ) 原告Rの妻の病状の点については,本件配転命令3の当時には,肺ガンの摘出手術の経過は幸いに良好であったのであり,配転に当たって特段考慮すべき事情ではなかった。
テ 原告S(原告19)について
(ア) 原告Sは,本件計画の実施前,NTT-ME関西の大阪支店設備サービス部京阪所外設備担当において,地下,地上設備の保守業務に従事していた。しかし,本件計画の実施により,原告Sが従事していた業務は,全てOS会社に移管された。
被告は,原告Sを大都市圏での大口ソリューション営業に配置することとし,平成14年5月1日に本件配転命令2を行い,同年6月3日から本件スキル転換研修を受講させた。原告Sの平成14年上半期の業績評価結果は標準以上であり,名古屋支店の営業強化を図るために,本件配転命令3を行った。
原告Sは,名古屋BフレッツPT担当として,その販売第2グループに所属し,マンション等集合住宅へのBフレッツ等の営業業務に従事した。
(イ) 原告Sの喘息等やその妻のうつ病の点については,本件配転命令3の後の事情である。
ト 原告T(原告20)について
(ア) 原告Tは,本件計画の実施前,NTT-ME関西の大阪支店カスタマサポート営業部営業サポート担当において,業者への発注管理(発注伝票の作成)業務に従事していた。しかし,本件計画の実施により,原告Tが従事していた業務は,全てOS会社に移管された。
被告は,原告Tを大都市圏での大口ソリューション営業に配置することとし,平成14年5月1日に本件配転命令2を行い,同年10月1日から約2週間の本件スキル転換研修(そのうちの業務研修は免除された)を受。講させた。原告Tの平成14年上半期の業績評価結果は標準以上で,本件スキル判定の結果はBであり,名古屋支店の営業強化を図るために,本件配転命令3を行った。
原告Tは,名古屋BフレッツPT担当として,その販売第2グループに所属し,マンション等集合住宅へのBフレッツ等の営業業務に従事した。
(イ) 原告Tの母の介護の点については,原告Tの兄が同居してその介護を行っていることから,原告T自身が母の介護を行わなくてはならないような状況とは考えられない。その他,原告Tの地域山岳会等の活動の点は,通常甘受すべき範囲内のものというべきである。
ナ 原告U(原告21)について
(ア) 原告Uは,本件計画の実施前,NTT-ME関西の設備エンジニアリングセンタ第二回線担当において,ネットワークサービス工事情報,回線開通,回線廃止のデータ変更業務に従事していた。しかし,本件計画の実施により,原告Uが従事していた業務は,全てOS会社に移管された。
被告は,原告Uを大都市圏での大口ソリューション営業に配置することとし,平成14年5月1日に本件配転命令2を行い,同年6月3日から本件スキル転換研修を受講させた。原告Uの平成14年上半期の業績評価結果は標準以上であり,名古屋支店の営業強化を図るために,本件配転命令3を行った。
原告Uは,名古屋BフレッツPT担当として,その販売第2グループに所属し,マンション等集合住宅へのBフレッツ等の営業業務に従事した。
(イ) 原告Uの高脂血症の点については,月1回程度かかりつけの医院に通院することは十分可能である。
ニ 原告V(原告22)について
(ア) 原告Vは,本件計画の実施前,被告大阪支店大阪東ビジネスユーザ営業部ビジネスユーザ営業部門において,中規模ユーザーに対する営業活動業務(AM)に従事していた。しかし,本件計画の実施により,原告Vが従事していた業務は,全てOS会社に移管された。
被告は,原告Vを大都市圏での大口ソリューション営業に配置することとし,平成14年5月1日に本件配転命令2を行った。なお,原告Vが既にソリューション営業に従事していたことから,原告Vには本件スキル転換研修を行わなかった。原告Vの平成14年上半期の業績評価結果は標準以上であり,名古屋支店の営業強化を図るために,本件配転命令3を行った。
原告Vは,名古屋BフレッツPT担当として,その販売第2グループに所属し,マンション等集合住宅へのBフレッツ等の営業業務に従事した。
(イ) 原告Vの妻の両親の介護の点については,大阪には原告Vの妻と娘がおり,介護に当たっては代替性があると判断でき,原告V自らが妻の両親の介護を行わなければならないような状況とは考えられない。また,原告Vの耳鳴り等の病状については,本件配転命令との関連性が明らかでないし,本件配転命令3の後の事情である。
ヌ 原告W(原告23)について
(ア) 原告Wは,本件計画の実施前,被告神戸支店設備部ネットワーク高度化推進グループにおいて,設備系業務に従事していた。しかし,本件計画の実施により,原告Wが従事していた業務は,全てOS会社に移管された。
被告は,原告Wを大都市圏での大口ソリューション営業に配置することとし,平成14年5月1日に本件配転命令2を行い,同年10月1日から本件スキル転換研修(約4週間)を受講させた。原告Wの本件スキル判定の結果はCであり,名古屋支店の営業強化を図るために,本件配転命令3を行った。
原告Wは,名古屋MI担当として,保守手引書の修正,整備やデータベース(たもつくん)の構築,運用を行った。
(イ) 原告Wの組合活動の点については,被告は,交渉団長及び交渉窓口の2名については,組合活動上不可欠な者と判断し,当面,大都市圏への配転を見合わせるという配慮をしていたが,原告Wはこれらの役職にはなかった。
(10)  争点10(各原告らの損害額)について
争う。
第4  当裁判所の判断
1  争点1(原告らの労働契約における勤務地又は職種の限定の有無)について
(1) 原告らは,当初,旧電電公社に採用され,NTT,続いて被告へと,その労働契約関係が承継された者であるが(前提事実(1)ア~ウ),旧電電公社及び被告のいずれの就業規則においても,業務上必要があるときは,勤務地又は担当する職務を変更されることがある旨が明記されていたことは,前提事実(4)アのとおりである。
また,本件全証拠を検討しても,旧電電公社において採用された際に勤務地や職種を限定する旨の合意がされていたと認めるに足りる証拠はないし,一定地域外への配転や職種の変更について同意を要する旨の慣行が形成されていたと認めるに足りる証拠もない。
そうすると,原告らの同意なく本件配転命令が行われた(前提事実(2)オ(イ)~(オ)参照)からといって,直ちにそれが違法となるものではない。
(2) この点について,原告らは,原告らの主張(1)のとおり主張するが,いずれも採用することができない。
ア 勤務地の限定(原告らの主張(1)ア)について
なるほど,原告A(原告1),原告Q(原告17)及び原告V(原告22)については,近接する府県に配転されたことがあったが,原告らは,原則として,本件配転命令までの間,当初配置された府県内において勤務してきた(前提事実(3)ウ及び別紙経歴表参照)ところである(甲D96,原告S)。
しかし,高卒で地方採用の従業員でも,本社に配転されたり,県境を越えて配転される例もあり(乙D36の2,乙F1の2,証人a),本件全証拠を検討しても,被告において採用された地域外への配転命令が当該従業員の同意なしに行われた事例が皆無であったことを認めるに足りる証拠はない。
また,原告らは,原告らの主張(1)ア(ア)のとおり,各電気通信局長によって旧電電公社の職員に採用され,採用時に交付された書面にはその管内の局所へ配置する旨が記載されていた旨主張し,なるほど,証拠(甲D60,甲D61,原告S)及び弁論の全趣旨によれば,この事実が認められるところである。しかし,証拠(甲D50,乙D24の1~20,乙D36の2,乙F1の2,証人a)によれば,採用に関する通知書が各電気通信局長の名において作成されていたのは,旧電電公社においては総裁から各電気通信局長に対して職員の任命(採用)についての一定の委任がされていたからにすぎないこと,また,管内の局所に配置する旨の記載も最初の配置先を記載したものであることが認められ,それ以上に,勤務地を限定することを約する趣旨のものと認めるに足りる証拠はない。
さらには,原告らは,原告らの主張(1)ア(イ)のとおり,旧電電公社は,各電気通信局等の管轄する施設で業務に従事する職員については,職員募集に際して勤務地域を限定していた旨主張し,なるほど,証拠(甲D51~59,甲D96,甲D99~106,原告S)によれば,旧電電公社においては,原告らが採用された昭和39年ないし昭和47年ころ,各電気通信局ごとに,採用時の勤務地を示して,職員の募集がされていたことが認められる。しかし,これらの募集の記載内容をもって,旧電電公社が募集に当たって採用後の勤務地域を将来にわたって限定する旨を示したと認めることはできず,他にこれを認めるに足りる証拠もない。
イ 職種の限定(原告らの主張(1)イ)について
原告らは,旧電電公社において,職種ごとに限定して採用されたのであり,本件配転命令までは意思に反して異職種の業務に就くことを命じられたことはない旨主張する。
なるほど,証拠(甲D51~59,甲D96,甲D99~106,原告S)によれば,旧電電公社においては,昭和39年ないし昭和47年ころ,各電気通信局ごとに,採用時の業務内容を示して,職員の募集がされていたことや,採用時に交付された書面に職種が記載されていたことが認められる。しかし,これらの記載をもって,旧電電公社が採用後の職種を将来にわたって限定する旨を示したと認めることはできず,他にこれを認めるに足りる証拠もない。
ウ むしろ,証拠(原告S)及び弁論の全趣旨によれば,旧電電公社,NTTないし被告の職員や従業員が,配置換えや職種変更に際し,同意書の提出を求められたことはなかったことが認められる。
また,証拠(乙F7)及び弁論の全趣旨によれば,旧電電公社の当時から本件配転命令の当時に至るまで,職員ないし従業員の配置転換ついての内部規程があり(被告においては,平成11年7月1日付け人事部長作成の「社員の配置転換について」と題する書面),同規程においては,①配置換えについて従業員の同意を要する旨の規定がないこと,②職種変更についても,事務(営業業務を含む。),通信,機械,線路,データ,研究開発の各職掌間における配転については,従業員の同意を要しないとされ,医療や自動車運転手などの特殊な職掌間での一定範囲の配転についてのみ,従業員の同意を要するものと定められていたにすぎないことが認められる。
以上の各事実に加え,被告の就業規則の内容(前提事実(4))を総合すると,原告らについて勤務地や職種の限定があったものと認めることはできない。
(3) 以上によれば,本件配転命令が,原告らの同意なく行われたこと自体をもって,それを違法と認めることはできない。
もっとも,それが,業務上の必要性がないのに行われた場合,それが他の不当な動機ないし目的をもって行われた場合,又は原告らに対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものである場合など,特段の事情がある場合には,権利の濫用として許されないものと考えられるが(最高裁昭和59年(オ)第1318号同61年7月14日第二小法廷判決・裁判集民事148号281頁参照),原告らが本件配転命令に至るまでの間に就業した勤務地や担当した業務内容は,上記権利の濫用に当たるか否かの判断において考慮するのが相当であると考えられる。
2  争点2(本件計画の必要性の有無)について
(1) 前提事実,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められる。
ア 中期経営改善施策(本件中期施策)
NTT法の改正によりNTTがいわゆる純粋持株会社となったのに伴い,被告は,平成11年7月1日,西日本地域における地域電気通信業務を目的とする株式会社として設立され,NTTの西日本におけ地域通信事業を承継した(前提事実(1)ウ)。
被告は,その設立当時,NTTの従来の事業の構造をそのまま受け継いだことから,その収益のほとんどを固定電話の収入に依存せざるを得ず,また,その設備の維持,保守等のために多額の人件費を必要としているという構造上の問題を抱えており,他方で,NTT法上,電話の役務のあまねく日本全国における適切,公平かつ安定的な提供の確保に寄与すべき責務を負うこととされており(NTT法3条),電話の通信設備の維持,保守を続けるべき立場にあった上,その営むことができる業務の範囲が限定されており(NTT法1条2項,2条3項ないし5項),新たな事業領域に容易に進出することができなかった。(以上について,乙D1,乙D36の2,乙D38の1,乙F1の1)
ところが,IT(情報技術)革命と呼ばれる情報通信技術の飛躍的な進展を背景に,情報通信分野における競争は,固定電話から移動体電話(携帯電話等)へ,電話(音声通信)からデータ通信へと変化し,また,高速のインターネットアクセスサービスにおける激しい競争が繰り広げられるにようになった。これらにより,固定電話の収入が先細りになることが見込まれることとなり,被告は,情報流通企業へと変革を図る必要があった。
そのため,被告は,平成11年11月17日,本件中期施策を公表し,これにより,平成12年度から平成14年度までの3年間(平成12年4月1日から平成15年3月31日まで)において,インターネットに関する各種のサービスを取りそろえるほか,人員削減や設備投資の削減などを行って事業構造の転換を図った。そして,被告は,本件中期施策により,平成14年度に300億円程度の黒字をあげることを目標としていた。
(以上について,乙D3,乙D7,乙D8,乙D29の1,乙D36の2,乙F1の1)
イ 本件中期施策実施以後の経営環境
ところが,本件中期施策の実施中に,次のような経営環境の変化が生じた。
(ア) 携帯電話が飛躍的に伸び,固定電話については契約者数が減少傾向にあるとともに(平成12年には,固定電話加入者数を超えた。),その利用量が減少したため,固定電話の収入が減少してきた(乙D4,乙D12,乙D36の2,乙D40,乙F1の1)。
(イ) 被告が重要な収入源と見込んでいた接続料(通信設備を有しない事業者が通信設備を有する事業者(多くの場合,被告がこれに当たる。)からその設備を借り受けて営業を行う場合の使用料)が,平成12年7月,日米規制緩和協議の中で,平成14年度までの3年間で22.5%値下げされることとなった(乙D36の2,乙D38の2,乙D41,乙F1の1)。
(ウ) 平成13年5月から,いわゆるマイライン(優先接続制度:利用者が優先的に利用する電話会社をあらかじめ登録しておくことにより,従来必要であった識別番号をダイヤルすることなく自動的に,その電話会社を利用して通話することができる仕組み。なお,従来は,NTTグループ各社を利用する場合には識別番号が必要なかったため,被告は有利な立場であった。)が導入されることになり,各電話会社がマイラインの登録を競い合うようになり,被告のシェアが低下するという問題が生じた。
また,接続料の値下げ(前記(イ))により,他の電話会社が,マイラインの導入に合わせて市内通話料金を値下げしたために,被告も対抗上値下げを行わざるを得なくなり,この結果,被告は,シェアの低下と料金の値下げという二重の減収要因を抱えるに至った。(以上について,乙D36の2,乙D42の1~3,乙D43,乙D52の5・6,乙F1の1)
(エ) 平成12年ころから,距離や時間を問わず一律に低料金で利用できるIP電話と呼ばれるサービスが登場し,固定電話の利用が減少するおそれが生じた(乙D36の2,乙F1の1)。
ウ 被告の財務状況の見通し
被告における平成12年度の中間決算が,平成12年11月に取りまとめられたところ,同年度中間期末における経常損失は約416億円にのぼり,同年度末における経常損失が900億円を超えることが見込まれていた(甲D82,甲D83,乙D52の4,証人a)。
また,被告は,この平成12年度の中間決算が取りまとめられた平成12年11月以降,検討を続け,平成14年度の経常損失が1500億円規模にのぼるものと予測するに至り,前記のように平成14年度に黒字化するという本件中期施策での目標(前記ア参照)を達成することは極めて困難となった(乙D6,乙D36の2,乙F1の1,乙F7,証人a)。
その後,被告は,平成12年度の決算において約1058億円の経常損失を計上し,平成13年度の決算において約1705億円の経常損失を計上するに至った(乙D8,乙D11)。しかも,平成13年度の営業収益(約2兆1907億円)は,平成12年度の営業収益(約2兆4029億円)から約2122億円も減少するに至った(乙D11)。
エ 構造改革(本件計画)
前記イ及びウのような経営環境を踏まえ,被告は,本件中期施策を上回る抜本的な事業構造の転換を図るために,OS会社等への業務委託や人件費の削減を盛り込んだ構造改革(本件計画)を実施することとした。
すなわち,被告は,NTT法上,電話の役務の全国における提供を確保すべく,電話の通信設備の維持,保守を続けるべき立場にあった上,営むことができる業務の範囲が限定されていたため(前記ア参照),本件計画において,コスト削減のために,NTT法の規制が及ばない子会社(OS会社)を各地域で設立し,OS会社に対して,被告が行っていた業務の大半を低コストで業務委託(アウトソーシング)するとともに,OS会社において新規の事業を展開し,グループ全体の収益拡大を図ることとした。その上で,被告本体が行う業務を,①事業計画の策定,商品開発等の経営戦略に関わる業務と,②設備構築に関する業務,③被告のブランド力を活かすことのできる大口顧客に対するソリューション営業業務(大口ソリューション営業)に特化することとした。
また,被告は,これまで依存してきた固定電話の収入の低下の実情から,多数の従業員を従来どおりの労働条件で雇用し続けることは困難と考え,本件計画において,希望退職者を募る一方,被告の従業員の一部をOS会社に移行(51歳以上の者については,被告からの退職とOS会社への再雇用による移行であり,50歳以下の者については,在籍出向による移行である。なお,今後51歳に達する者についても同様に,このような退職・再雇用による移行が予定されている。)させることとした。そして,OS会社に対する業務委託の対価を下げるとともに,OS会社が新事業において各地域における同業他社と互角に競争することができるように,OS会社に移行させる51歳以上の従業員の賃金を地場賃金並みの水準に引き下げることとし,その地場賃金を検討した上で,従前の被告における賃金を20%から30%下回る賃金水準を設定することとした(なお,50歳以下の者については,在籍出向のため,51歳に達するまでの賃金は従前の水準が維持される。)。
被告は,OS会社へ従業員を円滑に移行させるようにするため,賃金水準が低下する反面で,OS会社においては勤務地を限定するとともに65歳まで雇用延長することとし,また,本件計画導入からの5年間に限定して,定年までの賃金水準の低下について最大で50%程度を填補する激変緩和措置を取り入れることとした。その上で,被告は,同意した従業員のみについて,被告を退職し,OS会社において再雇用するということとした。
なお,被告は,OS会社への従業員の移行について,被告との雇用関係を続けつつ在籍出向の方法を採ることも検討したが,その方法では人件費を削減することが困難であると考えた。
(以上について,乙D6,乙D13,乙D36の2,乙D45の1・2,乙D46,乙F1の1・2,証人a)
オ 本件計画の実施以後
本件計画は,平成14年5月1日に実施された(前提事実(2)ウ(イ),オ(イ))。
被告は,その後,平成14年度には約449億円の経常利益を,平成15年度には約906億円の経常利益をあげるに至った(乙F1の2)。
(2) 以上の事実によれば,被告が本件計画を実施した当時,被告が多額の経常損失を計上しており,その原因が,固定電話をとりまく経営環境に大規模な変化が生じている中で,被告の事業構造が,それに要する人件費の点を含め,経営環境に適合しない状況が生じていたところにあったことが認められる。
そうすると,本件計画を実施したことについての必要性はあったと言うべきである。
(3) 以上の点について,原告らは,原告らの主張(2)のとおり主張するが,いずれも採用することができない。
ア 原告らは,NTTグループ全体では巨大な利益を上げていたことなどを主張して,本件計画の必要性について,NTTグループ全体の経営状況を見て判断すべきである旨主張する(原告らの主張(2)ア(ア))。
しかし,被告が独立した法人格を有する以上,NTTグループ全体の財務状況にさえ問題がなければ被告の事業における問題点を改善する必要性がないとは言えない。しかも,原告らが主張するNTTグループの中には,NTTを1人株主とする会社のみならず,株式会社NTTドコモや株式会社NTTデータといった上場会社も含まれるところ(甲F1の3,乙D3,乙D58,乙F1の1,証人a),これらの会社まで含めたグループ全体の財務状況を見て,被告における本件計画の必要性を検討することは相当ではない。
イ また,原告らは,被告が本件計画の策定に当たって考慮しなかったコスト削減事由がある旨主張する(原告らの主張(2)イ)。しかし,この点についても,次に述べるとおり理由がない。
(ア) 追加希望退職募集(原告らの主張(2)イ(ア))
原告らは,被告が平成14年1月に実施した追加希望退職募集による250億円ないし300億円のコストの削減を考慮していない旨主張する。
なるほど,被告が平成14年1月に希望退職者を募集した際(募集期間は同年1月中旬から2週間程度,退職時期は同年4月末日とされていた。),想定以上の希望退職の申し出(約2600名)があったこと,これにより,前記(1)オのとおり,平成14年度に経常利益をあげることができたことが認められる(甲A101,乙D39,乙F1の2,証人a)。
しかし,この希望退職者募集は,本件計画の実施に伴って,従業員に対する雇用形態についての意向確認手続(前提事実(2)イ(ア)c,f,g参照)に合わせて実施されたものであり(甲A101),本件計画と一体のものとして行われたものと認めるのが相当であり,この希望退職者募集により原告ら主張のようなコストの削減が図られていたとしても,そのことによって本件計画の必要性が失われるものとは認められないし,コスト削減の金額が十分であると認めるに足りる証拠もない。
(イ) NTT東日本からの交付金(原告らの主張(2)イ(イ))
原告らは,NTT法に基づくNTT東日本からの交付金の制度の利用を考慮していない旨を主張する。
なるほど,東西地域会社の設立に際して,被告において赤字が生じることが予想されていたために,「日本電信電話株式会社法の一部を改正する法律」(平成9年法律第98号)の附則11条は,NTT東日本は被告の経営の安定化を図る必要があるときは,郵政省令で定める金額の範囲内で,被告に対し,その事業に要する費用に充てるための金銭を,各事業年度に係る利益の処分として交付することができる旨を定め,この制度により,被告が,平成12年度に724億円をNTT東日本から受け入れたことが認められるところである(乙D8,乙D36の2,乙F1の1,証人a)。
しかし,同条は,この制度を,NTT東日本の設立の日以後3年以内に終了する各事業年度に限定しており,平成14年度以降はこの制度を利用することができないことと定めていたのであり,このことからすると,むしろ,被告にとって平成14年度には黒字化することを目標とすべき必要性が高かったことがうかがわれ,この原告らの主張を認めることはできない。
なお,被告の平成15年度の決算において,営業収益として東西交付金184億円が計上されているものの,これは接続料が全国一律とされているところ,被告における接続コストがNTT東日本よりも高いために(地形的要因等に基づく。),事業者間において調整するという性格のものであり,本件計画の策定に当たってコスト削減事由とて考慮すべきものとはいえないし,そもそも,本件計画の策定後に法改正により認められたものであり,考慮することもできないものであったことが認められる(甲D10,証人a)。
(ウ) 接続料のユニバーサル・サービス基金(原告らの主張(2)イ(ウ))
原告らは,接続料による赤字を填補するためのユニバーサル・サービス基金の制度があるにもかかわらず,被告がそれを受領しようとしない旨主張する。
なるほど,被告が,電気通信事業法109条(平成13年法律第62号により追加され,同年11月30日に施行された。)が定める交付金(接続料を下げて全国均一料金を維持するために赤字が発生した場合に,その赤字を補填するもの。)を受領しようとしていないこと,平成14年当時に被告が受けることができる同交付金の額が年間107億円から301億円と推計されていたことが認められる(甲D86ないし88,証人a)。
しかし,平成14年度の経常損失が1500億円規模にのぼることが想定されていたことや,平成13年度決算において前年度よりも営業収益が2000億円以上も減少していたこと(前記2(1)ウ)を考慮すると,その交付金をもってしても想定された損失を埋めることができなかったことは明らかである。この事情を考慮すると,この原告ら主張の事実をもって本件計画の必要性がなかったとは言えない。
(エ) NTTに対するコンサルティング料(原告らの主張(2)イ(エ))
原告らは,被告がNTTに対してコンサルティング料を支払うことを廃止すべきである旨主張する。
しかし,証拠(乙F1の2,証人a)によれば,NTTが持株会社として被告に経営上の指導や助言を行っていることが認められることからすると,コンサルティング料を支払うことが不相当であると言うことはできず,この支払がされていることをもって,本件計画の必要性を否定することはできない。
(オ) 大量退職による人件費の自然減(原告らの主張(2)イ(オ))
原告らは,自然退職により大幅な人件費の削減効果が見込まれた旨主張する。
しかし,証拠(乙F1の2,証人a)によれば,被告が本件計画の策定に当たって,退職者と採用予定者との差による人件費の減少を検討した上で,本件計画の実施が必要と考えていたことが認められる。しかも,証拠(乙F1の2,証人a,証人d)によれば,そもそも,被告が行うべき業務量自体(OS会社等へ委託するものも含む。)が減少するものではないから,人件費が減少してもその委託等のための費用の発生を避けることはできないのであって,原告ら主張のように,自然退職により生じた人件費の削減がそのまま被告全体の経費の減少に結びつくものではないことが認められる。
そうすると,この原告らの主張を認めることはできない。
(4) 以上に判断したところからすると,本件計画は,固定電話をとりまく経営環境の変化に被告の事業構造を適合させるために必要な措置であったと認められるのであって,本件配転命令の前提として,被告がOS会社に対して業務委託(アウトソーシング)を行うこととしたこと自体を不当と言うことはできない。
そうすると,本件配転命令の違法性の有無を論じるについては,被告がOS会社に対して業務委託を行ったために,従前は被告本体が行ってきた業務の多くの部分が失われる結果となったことを前提とした上で,そのような実情の下で行われた本件配転命令が権利の濫用に当たるかという観点から判断されるべきであると考えられる(前記1(3)参照)。
3  争点3(本件計画が脱法的なものであったか否か)について
原告らは,本来,賃金の切下げは原則として一方的に行うことはできないにもかかわらず,本件計画は,業務委託や退職・再雇用という手法によって,賃金の切下げを行おうとする脱法的なものである旨主張する(原告らの主張(3))。
なるほど,被告を退職しOS会社に再雇用された者は,それにより賃金が減少したところではあるが,これらの者は,本件計画の実施に際して退職・再雇用に同意したのであって(前提事実(2)エ(イ)),同意によって賃金が減少されるという手法を脱法的と言うことはできない。
原告らにおいては,退職・再雇用についての同意がされておらず(すなわち,繰延型及び一時金型のいずれも選択されていない。),被告との雇用関係が従前どおりに継続され,賃金の減少も生じていない。したがって,本件においては,従前の原告らと被告との間の雇用関係を前提として,本件計画の実施に伴って行われた本件配転命令について,その適法性を判断すべきこととなる。
4  争点4(本件計画が年齢による差別に当たるか否か)について
(1) 50歳で区別する合理性(原告らの主張(4)ア)について
原告らは,本件計画は,50歳以下の従業員についてはOS会社への在籍出向を認めながら,51歳以上の従業員は退職・再雇用させて賃金を切り下げるというものであり,年齢による違法な差別に当たる旨主張する。
ア しかし,そもそも本件計画は,従業員の意思にかかわらず51歳以上の従業員に被告を退職させ,OS会社へ雇用関係を移行させて,賃金を減額させるというものではなく,各従業員が51歳に至った段階で,退職・再雇用を選択する機会を与えるというものにすぎないと考えられる。
イ なるほど,従業員が51歳に至った段階で退職・再雇用を選択しない場合には,遠隔地や異職種への配転があり得ることとなる点は,従業員にとって重要な点であると考えられる。しかし,前記1で判断したとおり,被告においては,従業員の勤務地や職種の限定はされていなかったと認められ,このことを前提として考えると,本件計画が,直ちに51歳以上の者に対して不利益を課すものとまでは言えない。
また,被告は,年度末年齢が50歳に至ったときから,企業年金の受給権が発生することや,一般的にその時期にマイホームの購入,子供の教育等の家庭事情から,勤務地域や一時的資金に対する様々なニーズが生じることを考慮して,51歳に至った段階で従業員にこのような機会を与えたことが認められる(乙36の2,乙F1の1,乙F1の2)。
そうすると,本件計画が51歳以上の者に対して不利益を課すものとまでは言えず,このように51歳という年齢を基準として設定したことを不合理ということもできない。
ウ なるほど,被告は,51歳以上の被告の従業員(すなわち,60歳満了型の従業員)の配置については,本件計画の実施以前から,遠隔地や法人営業等への配転する方針であることを示すなどして,本件計画の実施後はOS会社への在籍出向を原則として認めないという方針を立てている(甲A24,甲A33,甲A35,乙D15,乙D16,乙D21,乙D36の2,乙F1の1,乙F1の2,乙F7,証人a)。
しかし,原告らが主張するように,50歳以下の従業員についてはOS会社への在籍出向を認めながらも,51歳以上の従業員(つまり,退職・再雇用を選択せずに,被告に残った60歳満了型の従業員)には在籍出向は認めないこととしたからといって,それを年齢による違法な差別であるということはできない。
なぜなら,まず,原告らは,本件計画実施の前後を問わず,被告に対してOS会社等への在籍出向を求めるべき実体法上の権利を有するものとは言えず,本件計画は,50歳以下の者に在籍出向を求め得る権利を付与したものでも,51歳以上の者に従前あった在籍出向を求め得る権利を喪失させたものでもない。このように,本件計画は,51歳の前後で従業員の権利関係を異別に取り扱う趣旨のものではない。
また,被告が,本件計画の実施後,51歳以上の被告の従業員にOS会社への在籍出向を認めない方針を立てたのは,本件計画の実施により退職・再雇用を選択してOS会社に再雇用された結果賃金の減額が生じている被告の元従業員と,従前どおりの賃金が維持されている60歳満了型の従業員とが,同じ職場において同様の職務を担当した場合には,両者の間に不平等感が生じることが考えられるため,そのような不都合を避けようとしたためであることが,1つの理由となっていることが認められる(乙D36の2,乙F1の1,乙F1の2,証人b)。
エ 以上によれば,この原告らの主張を認めることはできない。
原告らの年齢については,本件配転命令が権利の濫用に当たるかの判断に当たって考慮されるべきであると考えられる(前記1(3)参照)。
(2) 高齢者の雇用安定(原告らの主張(4)イ)について
原告らは,本件計画が,51歳以上の従業員に退職・再雇用を迫るものであり,高年齢者雇用安定法4条に違反するものである旨主張する。
しかし,前記4(1)アで述べたとおり,本件計画が従業員の意思にかかわらず51歳以上の従業員に被告を退職させる趣旨のものではなく,各従業員が51歳に至った段階で,退職・再雇用を選択する機会を与えるというものである。そうすると,この原告らの主張を認めることはできない。
なお,被告においては,従前,キャリアスタッフ制度と呼ばれる制度があり,定年年齢である60歳(前提事実(4)イ参照)以後も時給制による契約社員として雇用されることがあり得ることとされていたが,本件計画の実施により,被告本体においてはこの制度が廃止され,各OS会社に移行されたことが認められる(乙D15,乙D16,乙D18,乙F1の2。なお,被告は,従来のキャリアスタッフ制度を廃止していないと主張するが,上記証拠によると,構造改革の中で,ネオメイト各社,アクト各社へ業務を移転した結果,被告本体においてはキャリアスタッフ制度により行われるべき業務がなくなり,これを廃止したことが認められる。)。しかし,高年齢者雇用安定法は,本件計画の実施当時には,高年齢者雇用確保措置を講ずる努力義務を定めていたにとどまる上(平成16年法律第103号による改正前の同法9条),仮にキャリアスタッフ制度の廃止に疑義があったとしても,そのことから直ちに本件配転命令を違法ということはできない。
5  争点5(本件配転命令における業務上の必要性の有無)について
(1) 前提事実,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められる。
ア 60歳満了型の従業員の人員配置についての被告の方針
(ア) 被告においては,本件計画の策定当時,51歳以上の従業員(約3万人)のほとんどの者が退職・再雇用を選択するものと想定し,それらの者については,担当していた業務の移行先であるOS会社において再雇用されるという方針であったため,特に人員配置上の問題はないと考えていた。
しかし,平成13年10月ころに行われた上司との面談(定期的に行われていたもの)において意向の把握を行ったところ,60歳満了型の者が500名ないし1000名程度生じる可能性があること,また,その大半がOS会社に業務委託する予定である業務に従事している者であることが判明した。そこで,被告は,平成13年11月末ころ,60歳満了型の従業員を,大阪,京都及び兵庫といった京阪神の地域,並びに名古屋の地域を中心とした大規模支店において,大口ソリューション営業を担当させるという方針を立てた。
そして,被告は,この方針を前提として,平成13年12月中旬ないし平成14年1月初旬ころ,従業員に対し,60歳満了型の者について,①被告の本社若しくは支店の業務(企画・戦略,設備構築,サービス開発,法人営業等の業務)に従事するか,又はOS会社以外のグループ会社に出向することが見込まれることや,②市場性の高いエリア等を中心として,勤務地を問わず,成果業績に応じて高い収入を得る機会を追求する意欲を持った従業員に応える雇用形態であることを知らせた。
(以上について,乙D37の1,乙D15~17,乙D108,乙F2の1,乙F7,証人a,証人b)
(イ) 前記(ア)のとおり,60歳満了型の従業員に大口ソリューション営業を担当させることとしたのは,まず,被告本体が行う業務を,①経営戦略に関わる部分と,②設備構築に関する業務,③大口ソリューション営業業務に特化するという方針を立てたこと(前記2(1)エ参照)を前提とすると,60歳満了型の従業員が担当する業務の内容は被告本体が行うこれらの業務の範囲内となるところ,被告の収益に直結し,人員拡充の必要性の見られる営業部門を担当させることが合理的な選択であると考えたからであった(なお,被告は,60歳満了型のOS会社への在籍出向については,前記4(1)ウのとおり,行わない方針であった。)。
また,60歳満了型の従業員にソリューション営業を担当させる地域として京阪神及び名古屋の地域を選択したのは,大口の顧客がこれらの大都市部に多く,被告の経営戦略上は大規模市場エリアであるこれらの地域に営業担当者を重点配置すべきと考え,また,地方のソリューション営業では得られない高度な案件を経験する機会が得られ,大口ソリューションを担当するに向けてのスキルアップが期待できると考えたからであった。
(以上について,乙D36の2,乙D37の1,乙F1の1・2,乙F2の1・2,乙F7,証人a,証人b)
(ウ) 平成14年1月末を期限として行われた雇用形態についての意向確認の結果,60歳満了型の従業員が463名となることが判明した(前提事実(2)イ(ア)f,g,エ(ウ)参照)。また,この60歳満了型の大半が,OS会社に業務委託される業務に従事している,営業経験のない者であることが判明し,これら60歳満了型の従業員にソリューション営業を担当させるには,知識やスキルの不足が懸念された。
このため,被告は,原則として,57歳以上の従業員については,定年までの期間が短いことから,ソリューション営業への職種転換は行わないこととした。
また,被告は,ソリューション営業への職種転換に当たって,本件スキル転換研修を実施することとし,本件スキル転換研修の修了者に対して本件スキル判定を行い,その判定結果を踏まえて,各支店の人員状況や受入希望のほか,支店間のスキルの不均衡(習熟度の高い者又は低い者が一定の支店に集中することなど)が生じないようにする等を考慮の上,京阪神及び名古屋の各支店のソリューション営業部門に配置することとした。
なお,60歳満了型の従業員のうち,グループ会社に出向中で当該グループ会社の管理,監督すべき役職に就いている者等については,ソリューション営業への職種転換は行わないこととされたため,本件スキル転換研修の対象者は366名となった。
(以上について,乙D37の1,乙D49の1・2,乙F2の1・2,証人b)
(エ) さらに,被告は,この本件スキル転換研修の対象者のうち,病気や介護等の個人的事情を有する者や,配転を行うとその所属する労働組合に活動上の問題が生ずる者については,各所属元の判断等により,ソリューション営業への職種転換は行わないこととし,これにより,本件スキル転換研修の対象者366名のうちの26名については,受講させず,配転は行わないこととした。
なお,被告は,本件スキル転換研修後にも,修了者のうちの5名については,その個人的事情を考慮して,配転を見合わせた。
(以上について,乙D37の1,乙F2の1・2,証人b)
(オ) 被告は,平成14年4月以降,大阪において,合計366名に対して本件スキル転換研修を実施した。本件スキル転換研修は,1回当たりに受け入れられる人数に限りがあったことから,平成14年4月,5月,6月,10月,11月及び12月の6回に分けて行われた。
本件スキル転換研修においては,①集合研修(2週間程度の座学やロール・プレイング等),及び②業務研修(2週間程度の大阪支店の地区におけるソリューション営業の実践)が実施された。また,ビジネスマインド,被告の商品の内容,ソリューション営業の内容などについての教材が利用された。なお,10月,11月及び12月に実施された回においては,研修実施前に各支店における研修を受けていた状況等を踏まえ,業務研修(②)を1週間に短縮し,また,大阪支店からの受講者については,研修実施前に営業の実践が相当程度されていたことから,業務研修(②)を実施しなかった。
このほか,被告は,自学自習のための手段についても用意していた。
(以上について,甲A60,乙D27,乙D28の1・2,乙D29の1・2,乙D30,乙D31,乙D32の1・2,乙D37の1,乙D49の1・2,乙D50,乙D59,証人b)
(カ) 被告は,本件スキル転換研修の受講者に対して,その修了時にテストを行うなどして,最も習熟度の高い「SA」から,「A」,「B」,「C」及び最も低い「D」までの5段階で本件スキル判定を行った。
そして,被告は,「SA」ランクの受講者については,最も市場性の高い大阪支店又は名古屋支店に配置することとした。また,その他のランクの受講者については,①東海,北陸地方に所属する者は名古屋支店に,②中国地方に所属する者は大阪支店に,③四国,九州地方に所属する者は,大阪支店(ただし,一部は兵庫支店)又は名古屋支店に配置することとした。また,④京阪神及び名古屋の各支店に所属する者は,原則として所属元の支店に配置することとしたが,スキルの不均衡が生じないようにするため,大阪支店と京都支店との間,大阪支店と兵庫支店との間において,一定の配置換えを行った。
(以上について,乙D37の1,乙F2の1・2,証人b)
イ 大阪支店のソリューション営業担当者の人員配置の方針
(ア) 被告の行う営業業務の範囲
本件計画の実施前には,被告の各支店において,大規模ユーザーに対する営業業務から料金請求等に至るまで,様々な営業業務が行われていた。しかし,本件計画の実施により,これらの営業業務の大半がOS会社に委託されることとなり,被告の支店では,企画や戦略等の経営戦略に関する業務,設備構築に関する業務,及び大口ユーザーに対するソリューション営業のみを担当することとされた(前記2(1)エ参照)。
そして,被告は,被告の支店において担当する大口ユーザー向けソリューション営業の範囲について,100億円以上の売上高を有するユーザー,地方公共団体及び経営戦略上支店で受け持つこととしたユーザーに限定し,それ以外の営業業務についてはOS会社に業務委託するという方針を立てた。
(以上について,乙D101,乙D108,乙F3の1,乙F6)
(イ) 本件計画による大阪支店の変容
本件計画の実施前には,大阪支店の営業部門は,①大規模ユーザーを対象としてソリューション営業を行うビジネスユーザソリューション営業部,②大阪府下のエリア別に中小規模ユーザーを営業対象とするビジネスユーザ営業部,③電話等による注文受付(116センタ,故障修理受付)(113センタ)及び料金回収等を行うパーソナルユーザ営業部で構成されていた。また,本件計画前に大阪支店が担当していた大規模ユーザー及び中規模ユーザーの合計は,約6万6000社であった。
ところが,前記(ア)の方針を受けて,本件計画後に大阪支店が担当するユーザーを選定したところ,約3800社にまで減少することとなった。
そこで,大阪支店において営業部門の組織の見直しを行うこととし,このうち特に規模の大きい約800社については従前からの営業担当者(AM)が引き続き担当するように配慮しつつ,業種業態別に,第1ソリューション営業部(製造,建設,通信等),第2ソリューション営業部(流通,サービス,金融等),及び第3ソリューション営業部(公共(行政),教育等)に区分して,その営業担当者を配置した。
また,その余の約3000社については,地域ごとに区分し,大阪北ソリューション営業部,大阪中央ソリューション営業部,及び大阪南ソリューション営業部の3つに再編成した。
その上,大阪支店と大阪所在のOS会社との間での事業所の割付作業を行う必要があったが,極力自社ビルを使用して賃貸ビルの利用を解消する等の方針で作業を行い,本件計画の実施により,営業部門の事業所数を37箇所から13箇所に減少させることとした。
なお,本件計画により,従前の和歌山支店が大阪支店に統合されることとなった。
(以上について,甲D13,甲D15,乙D108,乙D119,乙F6,証人i)
(ウ) 大阪支店における60歳満了型の従業員の配置の方針
平成14年2月ころ,大阪支店(統合前の和歌山支店を含む。)の従業員のうちの111名の者が60歳満了型として扱われること,これらの者に加え,大阪府下のグループ会社に所属していた者等のうち106名の者も60歳満了型として扱われること,また,これら合計200名を超える者が大阪支店のソリューション営業部に配属される予定であることが決定された。
これを受けて,大阪支店では,これらの者の配置について検討したが,その大半の者が,営業業務の経験がないか,大口ユーザーに対する営業経験がない者であったため,いきなり大口ユーザーに対するソリューション営業を担当させることは難しいと考えられた。そこで,いずれは大口ユーザーに対するソリューション営業を担当することができるようになることを目指しつつ,まずは基本的な営業手法や商品知識を身につけさせようという方針をとることとし,小規模ユーザーに対するソリューション営業を担当させることとした。
また,大阪支店の地域では,当時,ADSLや光ファイバーによるインターネット接続サービスにおいて,他社との間で競争が激化していたという事情があり,特に光ファイバー接続サービスについては,マンション等の集合住宅に光サービス回線を設置すれば,その集合住宅全体の入居者を囲い込みやすくなるという事情があった。そのため,被告は,60歳満了型の従業員にこれらのサービスについての営業活動に従事させて,収益につなげることを期待していた。
そこで,被告の大阪支店では,60歳満了型の従業員を,各地域のソリューション営業部(大阪北ソリューション営業部,大阪中央ソリューション営業部,及び大阪南ソリューション営業部)に配置することとし,具体的な配置部署の割当てについては,各営業部の事業所(各ビル)の受入態勢が考慮された。
(以上について,甲D17,乙D108,乙D110~112,乙D120の1~3,乙D121,乙D122,乙F6,証人i)
ウ 本件配転命令1(第1事件原告ら)
(ア) 被告は,次のとおり,第1事件原告らに対して,本件スキル転換研修及び本件スキル判定を行った。
a 原告A(原告1。当時,香川支店所属)に対して,平成14年5月実施の本件スキル転換研修を受講させ,その本件スキル判定の結果はCであった。
b 原告B(原告2。当時,徳島支店所属)に対して,平成14年5月実施の本件スキル転換研修を受講させ,その本件スキル判定の結果はBであった。
c 原告C(原告3。当時,岡山支店所属)に対して,平成14年4月実施の本件スキル転換研修を受講させ,その本件スキル判定の結果はBであった。
d 原告D(原告4。当時,大分支店所属)に対して,平成14年4月実施の本件スキル転換研修を受講させ,その本件スキル判定の結果はBであった。
(以上について,乙D37の2,乙F2の1~2,証人b)
(イ) 被告は,第1事件原告らの所属元から配転を見合わせるべき個人的事情等についての報告や相談を受けていなかった。
そこで,被告は,前記ア(カ)記載の方針に従って,本件配転命令1(原告B(原告2)については兵庫支店,その他の第1事件原告らについては大阪支店のソリューション営業担当部署への配転)を行った。
(以上について,乙D37の1・2,乙F2の1・2,証人b)
エ 本件配転命令2(第2事件及び第3事件原告ら)
被告は,前記ア(カ)記載の方針に従って,平成14年5月1日を任命日として,本件配転命令2(いずれの原告らについても,従前の勤務地域内での配転であった。)を行った。
(以上について,乙D37の1,乙D108,乙F2の1・2,証人b)
オ 名古屋支店の状況
(ア) 本件計画の実施前には,名古屋支店の営業部門は,①愛知県全域の大口ソリューション営業を行うビジネスユーザ営業部,②各地域別にソリューション営業を行う地域ごとの各営業部(中央ビジネスユーザ営業部,中央北ビジネスユーザ営業部,中央南ビジネスユーザ営業部,岡崎ビジネスユーザ営業部,豊橋ビジネスユーザ営業部),③料金回収等を行うパーソナルユーザ営業部で構成されていた。なお,この当時は,MI業務(メインテナンス・インテグレーションの略で,ユーザー設備の運用・保守を集中して行う業務を意味する。)は,ビジネスユーザ営業部内において担当されていた。
また,本件計画の実施前に名古屋支店が担当していたユーザーは約1万2000社であった。
(以上について,乙D64,乙D101,乙F3の1・2,証人g)
(イ) 前記イ(ア)のとおり,名古屋支店においても,従来行われていた営業業務の大半がOS会社(名古屋支店における営業系地域会社は,アクト名古屋社であった。)に委託されることとなり,名古屋支店で担当する業務は,企画や戦略等の経営戦略に関する業務,及び大口ユーザーに対するソリューション営業のみとなった。
また,前記イ(ア)に記載の大口ユーザーの範囲についての被告の方針により,名古屋支店が担当する大口ユーザーの範囲は,約1100社にまで減少することとなった。
そこで,名古屋支店においても,営業部門の組織を見直すこととし,業務の効率性を高めるために,業種別に,第1ソリューション営業部(公共担当),第2ソリューション営業部(金融・製造担当),第3ソリューション営業部(流通担当)に再編成し,第1ソリューション営業部には,「ソリューションSE担当」という部門を置くなどして,統括的な機能を持たせることとした。そして,MI業務については,このソリューションSE担当において担当することとなった。なお,これらの他,インターネット接続サービスの販売企画や販売戦略の策定などを行う部署として,営業企画部を設置した。
名古屋においては,これらの営業部門の組織の見直しは,本件計画の実施を見越して,その実施前である平成14年3月に事実上スタートさせていた(名古屋支店において「プレ構造改革」と呼ばれていた。)。すなわち,この組織の見直しにより約750社のユーザーについては営業担当者(AM)の変更が生じることとなっていたが,新旧担当者間での引継ぎや,ユーザーへの訪問などは,同月中に完了されていた。
(以上について,乙D64,乙D86,乙D101,乙F3の1・2,証人g)
カ 名古屋BフレッツPT(本件配転命令3について)
(ア) 被告は,本件計画の実施当時,従来の固定電話の収入に依存するのではなく,情報流通企業へと変革を図る方針を定め,インターネット接続に関するサービスを取りそろえる等していたが(前記2(1)ア参照),今後のインターネット接続サービスにおいては,その通信速度の速さから,光ファイバー接続によるものが主流を占めるもの考え,Bフレッツ(光ファイバーによるインターネット接続サービスである。前提事実(5)イ(ア)参照)の販売に力を入れる考えを持っていた。
名古屋支店の地域では,被告は,名古屋市内の一部において,平成13年11月から,Bフレッツの提供を開始しており,同市内での光ファイバーによるサービスをほぼ独占していた。
ところが,平成14年4月23日,中部電力が同年秋から名古屋市内において光ファイバーによるサービスの提供を開始すると報道発表するに至り,被告では,名古屋支店における営業業務の在り方について,早急に対策を講じる必要が生じた。
そこで,名古屋支店においては,Bフレッツの積極的な販売の推進が販売戦略として示されることとなり,また,平成14年6月上旬に被告の本社で開催された支店長会議では,光ファイバーについての新規参入に対抗するためには,マンション等の集合住宅の早期囲い込みが最優先で行われるべきである旨の方針が示されるに至った。
これを受けて,名古屋支店の営業企画部においては,名古屋支店地域におけるBフレッツの積極的な販売の推進のための方策について検討することとなった。
(以上について,乙D86~88,証人e,証人f)
(イ) ところで,前記オ(イ)のとおり,本来,本件計画の実施後は,名古屋支店は大口ユーザーに対する営業のみを行い,中小規模ユーザーに対する営業についてはアクト名古屋社が担当することとされていた。
しかし,アクト名古屋社では,中小規模ユーザーを対象とすることから,インバウンド営業(顧客からの商品の注文の連絡があるのを待って販売するという,受動的な営業形態を意味する。)を行うことを基本的に想定しており,アウトバウンド営業(積極的に売込みをかける営業形態を意味する。)のための専門の販売部隊は用意されておらず,また,既に営業のための人員体制を組んだところであり,名古屋支店の全区域を担当するだけの人員の余裕はない状況であった。
他方,名古屋支店の各ソリューション営業部においては,前記オ(イ)のとおり,既に営業部門の組織の見直しがされ,大口ユーザーごとの担当者を定めた直後のこともあって,マンション等向けの営業活動まで行う余裕がなかった。
(以上について,乙D86,証人e)
(ウ) そこで,被告においては,平成14年7月,Bフレッツの販売推進を被告(名古屋支店)とアクト名古屋社とが分担して行うこと,また,被告(名古屋支店)においては,従前からあった各ソリューション営業部ではなく,同年9月1日付けで新たに設置する「Bフレッツ販売推進PT」(以下「名古屋BフレッツPT」という。)というプロジェクトチームにおいて担当することを決定した。
具体的な営業体制としては,まず,名古屋支店の地域を,概略,東西の2地域に区分して,アクト名古屋社が担当する地域と,被告(名古屋支店)が担当する地域とに区分した。
その上で,担当するユーザーの範囲について,①20戸以上の集合住宅,②20戸未満の集合住宅,③1戸建に分類し,このうちの①については,前記の地域ごとに被告(名古屋支店)とアクト名古屋社とがそれぞれ担当し,②,③については,名古屋支店内の全地域について被告(名古屋支店)が担当することとした。
なお,集合住宅を①と②に区分したのは,20戸以上の集合住宅については,大手のマンション管理会社に対する折衝や大規模な入居者説明会等を要するのに対して,20戸未満の集合住宅では,そのような営業活動が必要とされる場面が比較的少ないと考えられたためであった。
(以上について,甲D26の1,乙D86,証人e)
(エ) 名古屋支店の営業企画部では,平成14年6月中旬ころ,このBフレッツの販売推進のために,80名から100名の人員の確保を想定していた。
これに対して,被告の本社内部で検討したところ,平成14年8月上旬ころ,名古屋支店内において確保可能な人員は約40名に限られていることが判明し,その余については,他支店からの転入を検討せざるを得ないこととなった。
(以上について,乙D37の2,乙D86,証人b,証人e)
(オ) 名古屋BフレッツPTは,平成14年9月1日に発足した。
その体制は,概要,①販売グループ(Bフレッツを中心とする商品の販売を行う,②。)SEグループ(Bフレッツに必要な機器の設置のための調査や,その設置方法の検討といった,技術的な支援業務を行う。),③企画グループ(販売活動に関する各種企画,販売戦略の立案等を行う。),及び④営業代行社員(名古屋BフレッツPTの発足後,販売担当者の着任までの間の措置として,社外委託を行ったもの。)から成っていた。
このうち,販売グループ(①)には,20戸以上の集合住宅を対象とする販売第1グループと,20戸未満の集合住宅を担当する販売第2グループが置かれた。
(以上について,甲D26の2,乙D86,乙D87,証人e,証人f)
(カ) 販売第1グループ及び販売第2グループには,平成14年9月から平成15年2月の間に,順次,販売担当者が着任し,いずれのグループにも20名(原告らを含む。)の担当者が配置されるに至った。
本件配転命令3により名古屋BフレッツPTに配転された原告ら(原告13~22)は,いずれも,平成14年11月8日付け又は同年12月16日付けで,販売第2グループに着任した(前提事実(2)オ(エ),(カ)b(b)参照)。
(以上について,甲D107,乙D78,乙D87)
キ 名古屋MI担当(本件配転命令3について)
(ア) 従来から,システムの新規導入に比べると,MI業務(メインテナンス・インテグレーションの略で,ユーザー設備の運用・保守を集中して行う業務を意味し,不正侵入のチェックやセキュリティー対策等も含まれる。)は,一般にあまり注目されない分野であった。
しかし,MI業務は,①既に多くの企業ではシステム化が進んでおり,既に導入されたシステムやネットワークの運用や管理を専門家に任せたいというニーズが高まってきていたこと,②システムの運用や管理を受注することで,ユーザーを囲い込むことができ,システムの更改等の際に新たな契約を獲得する機会が得られること,③MI業務の売上高は,新規導入に比べると小さいが,契約期間中に安定した収入が得られることなどから,重要な業務であると認識されるに至っていた。
そのようなことから,被告においては,平成14年2月ころ,各支店においてMI業務を強化するように指示がされ,名古屋支店においてもそのための体制の整備が課題となるに至った。しかし,名古屋支店においては,同年3月にはプレ構造改革(前記オ(イ)参照)が予定されていたために,本件計画の実施が一段落した後に,MI業務の体制の強化を図ることとした。
(以上について,乙D101,乙D107,証人g)
(イ) MI業務には,①営業担当者(AM)がユーザーに対して保守契約を勧めるに当たって使用する保守見積書の作成や,保守提案書(運用や保守を勧めるについてのプレゼンテーション資料)の作成補助,営業担当者に同行してする,保守管理についての提案(同行提案),②保守契約の締結に至った場合,保守・修理を実際に行う委託業者(本件計画実施後は,多くの場合,OS会社であるネオメイト各社である。)との業務委託契約の調整及び発注,③保守手引書(システムの日常メンテナンスや故障発生時の修理等に備えて,ユーザー,被告(故障受付担当)及び保守・修理業者などの間の連絡系統図や修理体制図,システムの構成図や設置場所等を記載したもの)の作成などが含まれる。
本件計画の実施前には,名古屋支店のMI業務の担当者が20名程度おり,前記①ないし③の業務を担当していた。ところが,本件計画の実施後,そのうちの15名が退職・再雇用を選択することとなり,MI業務に残るのは5名のみとなった。
一方,本件計画の実施後,名古屋支店に残る業務は,前記の①(「MI提案業務」と呼ばれていた。)のみとなる予定であり,②及び③についてはOS会社(株式会社エヌ・ティ・ティネオメイト名古屋。以下「ネオメイト名古屋社」という。)に業務委託される予定であったし,また,前記オ(イ)のとおり,名古屋支店が担当するユーザー数が大幅に減少することから,差し当たっては,5名で業務を行うことは可能と考えていた。
また,被告(名古屋支店)からアクト名古屋社に移管される多数のユーザーについて,その保守契約の当事者を被告(名古屋支店)からアクト名古屋社に引き継がなくてはならず,また,保守・修理業者の変更等が生じることから,保守手引書の修正作業を行うべきこととなったが,この作業については一時的なものであり,60歳満了型の従業員(本件スキル転換研修までの待機者)を,暫定的に4名配置することで対応可能と考えていた。
このように,被告では,平成14年3月ころには,差し当たっては,これら合計9名でMI業務を行うことは可能と考えていた。
(以上について,甲D44,乙D101~103,証人g)
(ウ) ところが,平成14年4月下旬ころ,被告(名古屋支店)とネオメイト名古屋社との間の協議の結果,前記(イ)の②(業務委託契約の調整及び発注)及び③(保守手引書の作成)の業務も被告(名古屋支店)に残ることとなった。
また,被告(名古屋支店)は,ネオメイト名古屋社から,業務委託を受ける以上は保守手引書の内容を正確にしてもらいたい旨の要請を受けるに至った。
これにより,被告(名古屋支店)では,アクト名古屋社に移管されないユーザー(すなわち,従前どおり,名古屋支店で担当するユーザー)の保守手引書の修正(本件計画の実施に伴って,会社名や部署名等の変更があった点について,保守手引書の記載を改めること等)のみならず,その整備(本件計画前に行われたシステムの変更について,MI担当がその変更内容についてメモ書き程度を残したままにしているなど,保守手引書に変更内容が反映されないままとなっていたものがあり,その点について保守手引書の記載を改めること)の作業を行うこととなった。
これらの作業は,名古屋支店にとっては,予想外の業務の負担であった。そして,名古屋支店ではプレ構造改革が行われ,人員の配置が終わった時期でもあり,新たな人員措置は困難な状況であったため,他の部署のシステムエンジニア(SE)の応援を得ることで,その場をしのぐという状況であった。しかも,その当時,中部国際空港の件について多数のSEを担当させていたことなどから,他の部署のSEの応援には限界があった。
そのため,名古屋支店においては,MI業務の停滞が生じるに至った。
(以上について,甲D43,乙D101,乙D102,証人g,証人h)
(エ) 名古屋支店では,平成14年6月ころ,MI業務の停滞を解消するため,MI担当の体制を見直して,この機会に強化しようと考えた。そこで,本件計画実施前の人員と同水準の20名(前記(イ)のとおり,暫定的に配置された60歳満了型の4名を除いて20名)の体制を目指して,15名の人員措置が要請された。
これを受けて,平成14年7月及び8月に,名古屋支店内から合計8名の人員がMI担当に配置された(うち5名は一時的な配置の予定であった。)。
しかし,本件計画の実施直後であるために,それ以上に,名古屋支店内での人員措置が困難であったため,被告は,他支店からの配転を含めて検討し,その結果,京阪神支店の60歳満了型の従業員12名(原告ら9名(原告5~12,23)を含む。)を配転することとした。
名古屋支店としては,既にMI業務についてのスキルを有する者が望ましいと考えており,これら60歳満了型の従業員はスキルを有しているとは言えないところではあったが,当時は保守手引書の修正及び整備の業務が山積しており,このMI業務の停滞を解消するためにはとにかく人手が必要であると考えていた。また,これら60歳満了型の従業員に保守手引書の修正及び整備を担当させることで,スキルを有するその他の者に,より高度なMI提案業務を担当させる余裕が得られるであろうし,これらの60歳満了型の従業員がスキルアップしてMI提案業務を行うことができるようになれば,MI業務の体制強化が図れるものと考えていた。
(以上について,乙D101,乙D102,証人g,証人h)
(オ) そこで,名古屋支店は,平成14年9月下旬ころ,MI提案業務(前記(イ)①)や業務委託契約の調整及び発注(前記(イ)②)の業務を担当するグループ(以下「MI提案グループ」という。)と,保守手引書の作成(前記(イ)③)並びに修正及び整備(前記(ウ)参照)を担当するグループ(以下「MIサポートグループ」という。)に区分することとした。そして,MI提案グループにはMI業務についてのスキルの高い者を,MIサポートグループにはMI業務についてのスキルの十分でない者を配置させる方針を立てた。
名古屋支店では,MIサポートグループに配置された者については,当面,保守手引書の修正及び整備などの業務を担当させながら,MI業務についての基本的知識を習得しそのスキルを高めるようにし,いずれは保守手引書の作成ができるようにすることを考えていた。
(以上について,乙D102~104,証人g,証人h)
(カ) 平成14年11月8日及び同年12月16日,合計12名(原告ら9名(原告5~12,23)を含む。)の60歳満了型の従業員が着任した(本件配転命令3)。
名古屋支店では,当時,従前からMI業務に従事していた者が16名いたところ,そのうちのスキルの高い6名をMI提案グループに配置し,その余の10名と新しく着任した12名(合計22名)をMIサポートグループに配置した。
なお,これらの者の一部は,MI業務の管理や保守契約状況をデータベース管理して営業担当者(AM)と情報を共有するためのシステム(被告においては「たもつくん」と呼ばれていた。)の企画,構築,運用も担当した。
(以上について,甲D41,甲D42,乙D78,乙D102,証人h)
(2) 前記(1)及び前記2(1)において認定したところをまとめると,次のとおり,本件配転命令のいずれについても,業務上の必要性が認められる。
ア 本件配転命令1について
被告においては,本件中期施策の実施にかかわらず,平成12年度及び平成13年度には多額の経常損失を計上し,これまで依存してきた固定電話の収入が低下してきた実情から,多数の従業員を従来どおりの労働条件で雇用し続けることは困難と考えるに至った(前記2(1))。
そこで,被告は,本件計画を実施し,被告の従業員の一部をOS会社に移行(退職・再雇用)させるとともに,被告の行う業務を,企画・戦略,設備構築,サービス開発,法人営業等に限定し,特に営業部門については大口ソリューション営業に特化することとし(前提事実(2)ア(ア),前記(1)ア(ア),(イ)参照),その余の業務についてはOS会社に業務委託することとした。そして,この本件計画を実施すべき必要性があったことについては,前記2で判断したとおりである。
この本件計画の実施を前提とすると,OS会社への退職・再雇用に同意しなかった従業員(60歳満了型)は,従来どおり被告の従業員として就業することとなるが,被告の行う業務の範囲がOS会社に委託されずに残された前記の業務の範囲に限られるに至ったことからすると(前記(1)ア(イ)参照),これらの従業員を収益に直結する大口ソリューション営業の部門に配置したことは,事業遂行上合理的な判断であると認められる。なお,被告が原則として原告らをOS会社に出向させない(被告からOS会社に移された業務を担当させない)こととしたことが,原告主張のような違法な差別と認められないことについては,前記4で判断したとおりである。
また,60歳満了型の従業員に大口ソリューション営業を担当させるについて,京阪神及び名古屋という大規模市場に重点的に配置させたこと(前記(1)ア(イ)参照)も,事業遂行上合理的な判断であると認められる。
さらには,従前の担当業務から異職種への配転に当たる者については,本件スキル転換研修を行い,本件スキル判定を経て,具体的な配置先が定められており(前記(1)ア(ウ)~(カ)参照),営業のスキルに乏しい者に大口ソリューション営業を担当させることについて,一定の配慮がされているところである。
以上によれば,本件配転命令1について,業務上の必要性が認められる。
イ 本件配転命令2について
前記アのとおり,60歳満了型の従業員を大口ソリューション営業の部門に配置したことについては,必要性,合理性が認められるところであるし,大阪支店内の営業部門の事業所の設置の見直しがされ,各事業所の受入態勢を考慮して具体的な配置先が定められたことが認められるところである(前記(1)イ(イ),(ウ)参照)。
以上によれば,本件配転命令2についても,業務上の必要性が認められる。
ウ 本件配転命令3について
名古屋BフレッツPT担当への配転命令(原告13~22)については,①平成14年3月中に名古屋支店で本件計画を前提とした人員配置(プレ構造改革。前記(1)オ(イ)参照)が行われた後に,中部電力の光ファイバーサービスへの参入が発表され,それに対抗するために,積極的に主にBフレッツの販売を強化すべく,名古屋BフレッツPTの部署が設置され(前記(1)カ(ア)~(ウ)参照),②名古屋支店内においてはその必要人員を用意することが困難であったために,京阪神地区からの人員の配転が行われたこと(前記(1)カ(エ)参照)が認められ,これらの事実によれば,この配転命令についても,業務上の必要性が認められる。
また,名古屋MI担当への配転命令(原告5~12,23)については,①被告においてMI業務の重要性が認識されるようになってきていたこと(前記(1)キ(ア)参照),②プレ構造改革の後に,それまで名古屋支店で担当することを予想していなかった保守手引書の作成や,保守手引書の修正及び整備の業務を行う必要が生じたため,これらのMI業務において停滞が生じ,その担当者を増員する必要が生じたこと(前記(1)キ(イ)~(エ)参照),③名古屋支店内においてはその必要人員を用意することが困難であったために,京阪神地区からの人員の配転が行われたこと(前記(1)キ(エ),(オ)参照)が認められ,これらの事実によれば,この配転命令についても,業務上の必要性が認められる。
(3) 以上の点について,原告らは,原告らの主張(5)のとおり主張するが,
いずれも採用することができない。
ア 本件配転命令全般(原告らの主張(5)ア)について
(ア) 原告らは,本件配転命令全般について,まず,原告らをOS会社に在籍出向させたり,被告がOS会社に委託した業務を引き取るなどして,従来と同様の仕事を行わせるべきであった旨主張する(原告らの主張(5)ア(ア))。
しかし,前記4(1)ウにおいて判断したとおり,賃金の減額が生じているOS会社に再雇用された被告の元従業員と,従前どおりの賃金が維持されている60歳満了型の被告従業員とが,同じ職場で同様の職務を担当した場合,両者の間に不公平感が生じることが考えられるため,そのような不都合を避けようとしたものであり,このような理由により原告らをOS会社に在籍出向させなかったことを不合理ということはできない。また,本件計画を実施する必要があったことについては,前記2で判断したとおりであるが,OS会社に委託した業務を引き取ることは,本件計画の趣旨に反することになる。
そうすると,この原告らの主張を認めることはできない。
(イ) 原告らは,異職種への配転を行うに当たっては,適応能力の高い若年労働者を配転させるのが合理的であり,51歳以上の従業員を異職種へ配転させることには合理性がない旨主張する(原告らの主張(5)ア(イ))。
なるほど,本件配転命令が権利の濫用に当たるかの判断に当たっては,原告らの年齢を考慮の上で判断されるべきであると考えられる(前記4(1)エ)。
しかし,51歳以上の従業員を一概に適応能力がないと言うことはできないし,また,被告においても,原則として,57歳以上の従業員については,定年までの期間が短いことから,異職種への配転を避けたことが認められ(前記(1)ア(ウ)参照),従業員の年齢に対する一定の配慮を行っていたことが認められる。
なお,本件配転命令1及び3が遠隔地への配転に当たる点について検討しても,およそ51歳から57歳までという年齢層の者について,遠隔地への配転を一律に避ける必要があるとまで認めることはできず,個々の従業員ごとにその健康状態等を考慮して判断することが相当であると考えられる。
以上によれば,この原告らの主張を認めることはできない。
(ウ) 原告らは,本件配転命令により収益を見込むことは困難であり,本件配転命令においては経済的合理性が図られていない旨主張する(原告らの主張(5)ア(ウ)。なお,同(5)ウ(イ),エ(ア)b,及びエ(ウ)aも同趣旨であると解される。)。
a しかし,まず,本件全証拠を検討しても,本件配転命令により原告らが担当することとなった各業務において,収益の見込みがなかったと認めるに足りる証拠は見当たらない。
なるほど,本件配転命令の配転先において,原告らに交付されたユーザーのリストには,小規模のユーザーなど,販売活動が成功する見込みが必ずしも大きくないユーザーについてのリストがあったことや,OS会社の対象となるユーザーが含まれていたことがあったことが認められるところである(甲D22,甲D38,甲D39,甲D108,甲D129,乙F6,原告V,原告A)。
しかしながら,それらのリストを利用して,戸別の訪問やポスティング(広告を郵便受けに投函することによる営業活動)等の販売活動を行うことにより,十分とは言えないものの,実際に一定の業績が上げられているところであり,需要を掘り起こすための努力をすれば販売が成功する見込みはあったことが認められる(乙D87,乙F6,原告A,証人f,証人i)。そうすると,リストの中に販売活動を行う対象として必ずしも適切でない者が含まれていたり,小規模のユーザーについてのリストであったからといって,本件配転命令により原告らが担当することとなった営業業務が収益の見込みのないものであったと認めることはできない。
b この点に関し,原告らは,本件配転命令3について,通勤時間が片道2時間以内の者には新幹線通勤が認められており,それによって被告に生じる費用負担は大きく,経済的合理性が図られていない旨主張する。
なるほど,本件配転命令3のために被告が負担するに至った通勤費や単身赴任のために要する費用が相当高額にのぼったことが認められる(甲D116,乙F1の2,原告W)。
しかし,本件全証拠を検討しても,被告が,本件配転命令3を行った場合に要する費用が,それによって生じる利益よりも上回ると認識しつつ,あえて本件配転命令3を行ったと認めるに足りる証拠は見当たらない。むしろ,前記(2)ウで判断したとおり,本件配転命令3が,本件計画の実施に伴って名古屋支店における営業業務のために必要となった人員を措置する趣旨で行われたことが認められるところであるし,また,前記(1)ア(イ)ないし(カ)で認定したとおり,被告においては,本件スキル転換研修を実施するなどして,職種転換が生じる60歳満了型の従業員が大口ソリューションを担当することができるようにスキルアップすることを期待していたことが認められるところであり,被告は,原告らが名古屋支店において一定の成果を上げることを期待して本件配転命令3を行ったと認めるのが相当である。
c 以上によれば,この点についての原告らの主張を認めることはできない。
イ 本件配転命令1(原告らの主張(5)イ)について
原告らは,本件配転命令1に関して,原告1ないし4を元の職場である中国,四国,九州各地の支店でのソリューション営業の部門に配置することが合理的である旨主張する。
しかし,前記(1)ア(イ)で認定したとおり,大口の顧客が多い京阪神及び名古屋といった大都市部に営業担当者を重点配置すべきであったことや,60歳満了型の従業員のスキルアップが期待できることから,原告1ないし4について大阪支店へ配転したことが認められ,このことからすると,本件配転命令1を不合理であるとは言えない。
ウ 本件配転命令2(原告らの主張(5)ウ)について
(ア) 原告らは,1,2回線事業者を対象とするアウトバウンド営業がもともと被告の業務と位置づけられていなかったこと(原告らの主張(5)ウ(ア)参照)や,小口のユーザーについての営業を続けたからといって大口ソリューション営業を担当できるようになるとは限らないこと(原告らの主張(5)ウ(ウ)参照)を主張する。
なるほど,証拠(乙F6,証人i)によれば,被告大阪支店の地域においては,OS会社であるアクト関西社が3回線以上の事業者に対する営業を担当することとなっていたために,それよりも小口である1,2回線事業者に対する営業活動を大阪支店の各ソリューション営業部において行うこととしたことが認められる(もっとも,その数は膨大であり,営業活動が手薄となっていた。)。そして,本件計画においては被告の行う営業業務が大口のソリューション営業に特化されるものと考えられていたこと(前記(1)ア(イ)参照)からすると,被告においてこのような小規模のユーザーに対する営業活動を担当することは,本件計画の本来の趣旨に合致しない面があると考えられる。
しかし,前記(1)イ(ウ)で認定したとおり,被告においては,営業経験の十分でない60歳満了型の従業員が大口ソリューション営業を担当するについては,まずは,小規模のユーザーに対する営業業務を行う中で,基本的な営業手法や商品知識を身につけることが有意義であると考えたために,まず小口のユーザーに対する営業を担当させたことが認められるのであり,このような被告の方針に不合理な点はない。原告らは,小規模ユーザーと大口ソリューションでは取扱商品や営業方法が異なる旨主張するが,むしろ,接客のスキルなどの基本的な営業手法や,必要とされる商品知識は,この両者において異なるところは特にないことが認められる(乙D108,乙F2の2,乙F6,証人i)。また,証拠(乙D77,乙D108,乙F6,証人d,証人i)によれば,小規模ユーザーの担当から大口ソリューション営業にステップアップした60歳満了型の従業員がある程度いたことが認められる。
そうすると,この原告らの主張を認めることはできない。
(イ) また,原告らは,被告には,60歳満了型の従業員がソリューション営業を担当することができるようにスキルアップさせようという意思がなかった旨主張する。
しかし,被告は,60歳満了型の従業員をソリューション営業に職種転換させるに当たっては,本件スキル転換研修を実施し,自学自習のための手段も用意していた(前記(1)ア(ウ)~(カ)参照)。
このほかにも,大阪支店では,平成14年5月に,独自のソリューション営業についての入門研修等を実施した(乙D120の1~3,乙D121,乙D122,乙F6,証人i,原告W)。また,名古屋BフレッツPT担当や名古屋MI担当においても,独自に勉強会が実施されていた(甲D27~37,甲D44,乙D95の1~11,乙D104~106,証人f,証人h)。
このように,研修が実施されていることからすると,被告に60歳満了型の従業員をスキルアップさせるつもりがなかったと言うことはできない。
なお,この点について,原告らは,被告において行われた研修が形ばかりのものであった旨主張するが,これを認めるに足りる証拠はない。むしろ,前記(1)ア(オ)で認定したところからすると,366名という多数の従業員を限られた時間の中で受講させなければならなかった事情はあったものの,職種転換に対応可能な程度には研修が行われていたと認めるのが相当である。
エ 本件配転命令3(原告らの主張(5)エ)について
(ア) まず,原告らは,本件配転命令3について,Bフレッツのマンションタイプの営業やMI業務は,いずれも,もともとはOS会社に委託される予定であった業務である旨主張する(原告らの主張(5)エ(ア)a参照)。
なるほど,本件計画においては被告の行う営業業務が大口のソリューション営業に特化されるものと考えられていたこと(前記(1)ア(イ)参照)からすると,被告においてこのような小規模のユーザーに対する営業活動を担当することは,本件計画の本来の趣旨に合致しない面があると考えられる。しかし,前記(2)ウで判断したところによれば,名古屋支店におけるプレ構造改革において人員配置が行われた後に,本件計画策定当時に予想していなかった中部電力の光ファイバーサービスへの参入が発表され,Bフレッツの販売を強化しなければならない強い必要性が生じたことや,MI業務の体制強化のため,新たな人員措置が必要になり,名古屋BフレッツPTや,名古屋MI担当への配転が実施されたことが認められるのであって,この原告ら主張のような事情があったからといって,本件配転命令3についての業務上の必要性の有無の判断が左右されるものではない。
また,原告らは,本件配転命令2のわずか後に本件配転命令3が行われたことや,既に本件訴訟係属中に京阪神地域に再配転されており,これらは,本件配転命令3が最初から必要なかったことを示している旨主張する(原告らの主張(5)エ(ア)c参照)。
しかし,前記のとおり,中部電力の参入などの事情は,本件計画策定当時に予想しておらず,しかも,この事態に対応する必要性は強かったことから,可及的にすみやかな人員措置が必要になり,その結果,本件配転命令3が行われたことからすると,本件配転命令2のわずか後に本件配転命令3が行われたからといって,本件配転命令3についての業務上の必要性の有無の判断が左右されるものではない。また,その後に再配転が行われているからといって,本件配転命令3の時点で業務上の必要性がなかったということにはならない。
(イ) また,原告らは,名古屋MI担当への配転について,名古屋MI担当として行っていた業務は,いずれも単純な作業であり,京阪神の各支店から従業員を配転させる必要はなかった旨主張する(原告らの主張(5)エ(イ)a参照)。
なるほど,証拠(甲D116,甲E7の1,甲E8の1,甲E9の1,甲E10の1,甲E11の1,甲E12の1,甲E23の1,証人h,原告W)によれば,名古屋MI担当のMIサポートグループに配置された者が担当していた業務の多くが,保守手引書の修正及び整備や,「たもつくん」と呼ばれるシステムの構築,運用などといった,データの入力(又は書換え)を中心とする単純な作業であったことが認められる。
しかし,保守手引書の修正及び整備の作業は,その内容(前記(1)キ(ウ)参照)にかんがみれば,被告におけるMI業務の基礎的なデータを正しく整理し,その後の保守業務が正確かつ円滑に行われるために必要な業務であったと考えられるし,また,「たもつくん」は,保守提案・契約の進捗管理を徹底し,MI業務の受注の向上を図るとともに,MI業務に関する資料を集約させて,保守体制の確立を図るためのシステムであったことが認められ(甲D44,証人h),MI業務のために有用な業務であったことが認められる。
このように,MIサポートグループが担当していた業務の多くの部分が単純な作業であっても,その作業はMI業務としての意義を有したと考えられる。
また,前記(1)キ(ウ)ないし(オ)で認定したとおり,名古屋支店において,MI業務の強化にあたり,人員不足を補うため,スキルの高い者をMI提案グループに配置し,スキルの十分でない者をMIサポートグループに配置することにしたのであって,他の支店から従業員(MI業務についてのスキルが十分でない。)を配転させた上,MIサポートグループに配置し,単純な作業を担当させることになったのも,人員不足に対処する方策としてはやむを得なかったと認められる。他方,MIサポートグループに配置した者についても,当面の間,保守手引書の修正や整備などの業務を担当させながら,MI業務についての基本的知識を習得させてスキルを高め,いずれは保守手引書の作成ができるようにすることを考えていたことが認められる。
そうすると,京阪神の各支店から従業員を配転させる意味がなかったとまでは言えず,この原告らの主張を認めることはできない。
なお,原告らは,保守手引書は,ネオメイト各社(前提事実(2)ウ(ア)c参照)の内部文書であり,その修正等や作成は,本来ネオメイト各社において行われるべきである旨主張する(原告らの主張(5)エ(イ)a参照)。しかし,証拠(乙D103,証人g,証人h)によれば,名古屋支店において作成されていた保守手引書とは,故障時の連絡先や故障処理の流れのほか,システムの構築内容等を記載した書面で,被告(名古屋支店)とネオメイト名古屋社との間において,一定のユーザーのシステムの保守業務を委託するに当たり,その保守の内容を確認する趣旨で作成するものであり,そのシステムについての保守の内容や品質に関わるものであるために,被告(名古屋支店)において作成されていたことが認められる。したがって,被告(名古屋支店)において作成されていた保守手引書がネオメイト名古屋社の内部資料であったと認めることはできない。
(ウ) また,原告らは,被告がMI業務を強化する方策を検討し始めたのは平成15年4月以降のことであり,このことは本件配転命令3と無関係である旨や,名古屋支店よりも大阪支店の方がMI業務が低調であった旨主張する(原告らの主張(5)エ(イ)b参照)。
しかし,前記(1)キ(ウ),(エ)で認定したとおり,名古屋MI担当への配転命令は,名古屋支店においてMI業務の停滞が生じたことを契機として実施されたことが認められるのであり,この原告らの主張のような事実があったとしても,このことをもって本件配転命令3の業務上の必要性についての判断が左右されるものではなく,そもそも,原告らの主張する事実を認めるに足りる証拠もない。
(エ) また,原告らは,名古屋BフレッツPTへの配転について,光ファイバーに関しては,平成14年5月当時の愛知県内においては,被告が独占状態であり,その2年後の時点においても,中部電力等のシェアは5%未満でしかない旨主張する(原告らの主張(5)エ(ウ)b参照)。
しかし,前記(1)カ(ア)で認定したとおり,中部電力の光ファイバーサービスへの参入が発表されたことを契機として,名古屋BフレッツPTが設置されるに至ったことが認められるのであり,その前後における被告のシェアの動向によって,本件配転命令3の業務上の必要性についての判断が左右されるものではない。
(オ) さらには,原告らは,名古屋BフレッツPTへ配転された原告ら(原告13~22)のほとんどが,即戦力となる者ではなく,また,その担当した業務は大口ソリューション営業へのスキルアップとなるものではなかった旨主張する(原告らの主張(5)エ(ウ)c参照)。
なるほど,これらの原告ら(原告13~22)の多くは,本件配転命令2により,平成14年5月に職種転換したところであり,営業業務についての経験を十分に有するには至っていなかったものである。
しかし,大阪支店において若干の営業経験は既に有していたところであり(前記(1)エ参照),その上,証拠(乙D64~66,乙F3の1・2,乙F4の1・2,乙F5の1・2)によれば,名古屋支店においても,大阪支店においてと同様に(前記(1)イ(ウ)参照),営業業務の経験のない60歳満了型の従業員については,直ちに大口ソリューション営業を担当させることは難しいものの,いずれは大口ソリューション営業を担当することができるようになることを目指しつつ,まずは基本的な営業手法や商品知識を身につけさせようと考えて,小規模ユーザーに対するソリューション営業を担当させるという方針を立てていたことが認められ,このような趣旨で小規模ユーザーを対象とする営業業務に従事させたことについて不合理な点は見当たらない。なお,小規模ユーザーに対する営業活動が大口ソリューション営業へのステップアップとなり得ることについては,前記ウ(ア)で判断したとおりである。
そうすると,この原告らの主張を認めることはできない。
6  争点6(本件配転命令が不当な動機・目的に基づくものであるか否か)について
(1) 原告らは,退職・再雇用が選択され易いように,60歳満了型を選択した場合には遠距離の異職種配転というデメリットがあることを示すため,退職・再雇用を選択しなかった従業員に対する報復,あるいは,今後も毎年繰り返される50歳に達した従業員に対して退職・再雇用に同意させるための見せしめ,脅しの目的で,本件配転命令を行った旨主張する(原告らの主張(6))。
しかし,本件全証拠を検討しても,被告がこのような動機ないし目的で本件配転命令を行ったことを認めるに足りる証拠はない。
むしろ,前記5(1)及び(2)で判断したとおり,業務上の必要性のために本件配転命令が行われたと見るのが相当である。原告らは,本件配転命令には業務上の必要性がなかった旨主張するが(原告らの主張(6)ア),この主張を認めることはできない。
(2) また,この点について,原告らは,被告が60歳満了型の従業員数が予測できない当初から,それらの従業員を配転することを方針として,配転を回避しようとしなかった旨を主張する(原告らの主張(6)イ)。
しかし,本件計画は,従前に被告が行ってきた業務の大半をOS会社に業務委託し,被告本体は企画・戦略,設備構築,サービス開発,法人営業等の業務のみを行うこととするというものであり,そのことは本件計画の策定の当初からの方針であったのであるから(前提事実(2)ア(ア)参照),被告がOS会社に委託する予定の業務に従事していた60歳満了型の従業員の扱いについて,早い段階から検討を行っていたとしても,それはむしろ当然のことであったと考えられる。また,前記5(1)及び(2)で判断したとおり,本件配転命令には業務上の必要性が認められるのであるから,配転を回避しようとしなかったからといって,何らかの不当な動機ないし目的があったことを推認させるものでもない。
そうすると,この原告らの主張を認めることはできない。
(3) さらには,原告らは,充足感や達成感の得られない単純作業を担当させられ,徒労感,屈辱感を与えられた旨や,衝立などで仕切られるなどして,冷遇されていることを社内に見せしめられた旨主張する(原告らの主張(6)ウ)。
しかし,既に認定したとおり,被告が原告らの配置について,いずれは大口ソリューション営業を担当することができるように,基本的な作業を担当させつつ,知識経験を身につけさせようとしたのであり(前記5(3)ウ(ア),エ(オ)参照),このような方針が不合理なものと言うことはできない。そうすると,単純作業を担当させられたことをもって,本件配転命令に何らかの不当な動機ないし目的があったことを推認することはできない。
また,被告が,原告らがその執務環境等において冷遇されていることを社内に示そうと意図したことを認めるに足りる証拠もない。なるほど,証拠(甲D24,甲D116,甲D119,証人f,原告V,原告W)によれば,名古屋BフレッツPTの置かれた事務所における販売第1グループと販売第2グループとの間や,名古屋MI担当の事務所におけるMI提案グループとMIサポートグループとの間に,衝立が置かれていたものの,その衝立はこれらの間の交流を特に阻害するようなものではなかったことが認められる。また,その他,被告が原告らと他の被告従業員との交流を阻害したことを認めるに足りる証拠はない。
(4) 以上によれば,この原告らの主張を認めることはできない。
7  争点7(本件配転命令が不当労働行為に該当するか否か)について
(1) 前提事実,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められる。
ア 通信労組と被告との関係
原告らは,いずれも通信労組の組合員である(前提事実(1)エ)。
通信労組は,昭和56年に,旧電電公社の労働者が結成した労働組合であり,NTTないし被告に対して,労働者の要求を対置した活動を行ってきた(甲A1の2,甲F1の1・3,乙D53の1~13)。
イ 本件計画について,通信労組と被告との交渉等の経緯
(ア) NTTは,平成13年4月16日,本件計画の出発点となった本件3カ年計画を発表した(前提事実(2)ア(ア))。
(イ) 被告は,同年4月27日,通信労組に対し,「NTT西日本の構造改革に伴う検討課題について」と題する1枚の書面を交付した。この書面には,本件3カ年計画に関する検討項目が箇条書きされているのみであった。これが,本件計画の実施につながる一連の経過において,被告から通信労組に示された最初のものであった。
(以上について,甲F1の1,甲F2の1・2,乙D20)
(ウ) 被告は,同年5月8日,通信労組に対し,「NTT西日本の構造改革に伴う労働条件諸制度等の見直し等について」を提示した(前提事実(2)ア(イ))。
これを契機として,同年5月11日,通信労組と被告との間で団体交渉(「第13回中央交渉」と呼ばれている。)が行われた。
その後,平成14年9月までの間に,通信労組と被告とは,平成13年7月11日,8月10日,9月19日,10月12日,11月6日,12月6日,12月18日,平成14年1月24日,2月15日,3月12日,3月28日,4月19日,5月17日,7月22日,9月5日,9月26日の合計16回,団体交渉(第14回ないし第29回中央交渉)が行われた。
また,平成13年5月から平成14年4月までの間に,これらの中央交渉のほかに,各地域における交渉が合計17回行われた。
これらの他にも,被告は,この間,通信労組に対し,様々な事項について提案を行って情報を与え,また,勉強会に当たる場を作って説明を行うなどした。
なお,被告は,平成13年11月13日,通信労組に対して,退職・再雇用を選択した従業員のOS会社における労働条件について説明した(前提事実(2)ア(エ)参照)。
(以上について,甲A10,甲D77,甲F2の1・3,乙D22,乙D51,乙D75,乙D76,乙F2の1・2,証人d,原告A)
(エ) これに対して,被告は,NTT労組との間では,既に平成13年2月9日ころから,本件計画に関する論議を行っていた。
これは,被告が,NTT労組との間では,従来から,団体交渉以外に,経営協議会という場において経営についての論議をしてきており,そのような場において本件計画に関する論議がされていたためであった。
他方,被告は,通信労組に対しては,論議の対象を労働条件に関することに限定し,被告の経営に関する事項については論議しない態度をとっていた。すなわち,被告は,通信労組の書面による質問や団体交渉等の際に,業務運営上の施策については被告の責任において実施していくつもりである旨を回答し,経営に関する事項については論議する考えはない旨を示していた。
(以上について,甲A10,甲A13,甲A15,甲A17,甲A22,甲A25,甲B4,甲F1の2・3,甲F2の1・3,乙D51,乙F1の2)。
(オ) 通信労組は,平成13年12月13日ころ,被告が同年12月17日から平成14年1月31日までの間に個々の従業員に対して雇用形態についての意向確認手続を行うこととしたこと(前提事実(2)イ(ア)参照)に対して,通信労組の組合員の雇用形態についての意向確認については,通信労組が把握して被告に対応するので,個別面談による個人対応を行わないことを要求するとともに,団体交渉を申し入れた。
これに対して,被告は,被告としては責任をもって各従業員ごとに対応する旨を回答するとともに,個別面談を受けるようにとの指示は業務命令である旨を述べて,通信労組の組合員についても個別面談を実施する方針を維持した。
このため,通信労組は,組合員に対して,個別面談を拒否するようにと指示した。
(以上について,甲A40,甲A42,甲A44,甲A51,甲D124,甲F1の3,甲F2の1・3,乙A38,乙D51,原告A)
(カ) 通信労組は,平成14年2月5日ころ,被告に対して,組合員の希望勤務地や希望職種を示して,本人の希望を尊重した配置を行うように要求するとともに,組合員の勤務地や担当業務について,具体的に事前に対応し,団体交渉で取り扱うことを要請した。
しかし,被告は,これに対して,同年2月8日の回答書や同年2月15日開催の団体交渉(第22回中央交渉)において,被告が責任をもって個々の従業員ごとに対応する旨を述べて,組合員の配置や研修について事前に団体交渉で論議することを拒否するとともに,配転を実施した結果,異論が生じた場合には,通信労組からの要求等に基づいて,団体交渉において扱う考えであることを示した。
(以上について,甲A55,甲A56の1・2,甲A57,甲A58,甲A63,甲A66,甲A67,乙D51)
(2) ところで,本件配転命令が不当労働行為に当たるかについては,本件配転命令についての業務上の必要性の有無及びその程度を考慮して,被告の反組合的意思(不当労働行為意思ないし支配介入意思)の有無等について総合的に判断すべきであると考えられる。
ア まず,前記2及び5(特に前記5(2))において既に判断したとおり,本件配転命令は,いずれも,本件計画の実施に伴って生じた業務上の必要性に基づいたものであり,しかも,本件計画は,固定電話をとりまく経営環境が大きく変化する中で,人件費の削減を含め,被告の事業の在り方を大きく見直す必要性がある状況の下で策定され,実施されたものである。
そうすると,本件配転命令における業務上の必要性は,単なる業務の能率増進,勤務意欲の高揚などといった一般的なものに止まるのではなく,事業遂行上必要と認められる比較的高度のものであったと考えられるところである。
イ また,被告は,本件計画において,被告本体に残される業務を経営戦略に関わる部分,設備構築に関する業務,大口ソリューション営業に限定することとしていたのであり(前記5(1)ア(イ)参照),退職・再雇用を選択せず被告に残ることとした従業員が,被告に残された大口ソリューション営業に関連する業務を担当することについては,人員配置の在り方として自然であり,大口ソリューション営業を行う地域として,大都市部としたことについても,不自然な点はない。
さらには,既に前記5(特に前記5(2)ウ)で認定したように,本件配転命令3は,中部電力の光ファイバーサービスへの参入など,本件計画の策定の際に予想していなかった事情により,名古屋支店において人員の必要性が生じたために行われたものである。
このことからすると,本件配転命令における業務上の必要性は,具体的な事情に基づいたものであり,被告の恣意が介入する余地は大きくなかったと考えられる。
ウ さらには,証拠(甲D124,甲F2の1,証人d)及び弁論の全趣旨によれば,60歳満了型の従業員463名(前提事実(2)エ(ウ)参照)のうち,通信労組の組合員が305名程度を,NTT労組の組合員が120名程度をそれぞれ占めていたこと,また,本件配転命令の当時,通信労組の組合員のみならず,NTT労組の組合員についても相当数の者が遠隔地に配転されたことがうかがわれ,配転命令の対象となるか否かは,所属する労働組合によるものではなく,単に,60歳満了型を選択したか否かという点に基づいていたことが認められる。
エ 以上によれば,本件配転命令が通信労組の組織の動揺や弱体化を生じさせようといった反組合的意思に基づいて行われたものとは推認しがたいところである。
(3) 以上の点について,原告らは,原告らの主張(7)のとおり主張するが,いずれも採用することができない。
ア まず,原告らは,通信労組が被告に対して労働者の要求を対置した活動を行ってきた旨を主張し(原告らの主張(7)ア),なるほど,そのような事実が認められるところではある(前記(1)ア参照)。
しかし,そのような事実をもって,本件配転命令が不当労働行為に該当すると,たやすく推認することはできないと考えられる。
イ また,原告らは,通信労組に本件3カ年計画を知らされた時期が,NTT労組に比べて遅いなど,通信労組を差別的に取り扱い,情報を与えずに不誠実な団体交渉を行った旨主張する(原告らの主張(7)イ(ア))。
なるほど,前記(1)イ(エ)で認定したとおり,被告は,従来から,NTT労組との間では,経営協議会という場において,被告の経営についての論議を行っており,本件計画については,平成13年2月ころから論議を行っていたのに対して,通信労組との間では,運営上の施策について論議しようとしなかったことが認められるところである。
しかし,仮に,本件計画についての情報を伝えた時期や,運営上の施策についての論議を行うか否かの点で,NTT労組の場合と通信労組の場合とで取扱いが異なったこと自体により,本件配転命令における反組合的意思を推認することができるものではない。これらの点において労働組合間に生じた取扱いの差異は,本件計画の実施に際しての被告と各労働組合との間における対応において生じた手続上の問題にすぎないし,前記(2)アや前記2で判断したとおり,本件計画は事業遂行上の必要から策定されたものであって,本件計画の策定自体に何らかの反組合的意思がうかがわれるものではないからである。
ウ また,原告らは,通信労組が意向確認手続については個別面談に応じず,組織として対応する旨を申し入れたにもかかわらず,被告が通信労組による組織的対応を拒否した旨主張する(原告らの主張(7)イ(イ))。
なるほど,前記(1)イ(オ)で認定したとおり,被告がこのような通信労組の申入れに応じず,個別面談を実施する方針を維持したことが認められる。しかし,被告が,雇用形態の選択に当たって,個別に従業員に面談して,その意向を確認すること自体は,むしろ,使用者として行う必要があったところであると考えられる。したがって,被告が,個別面談を行わないようにとの要求を受け容れなかったからといって,そのことによって本件配転命令についての反組合的意思をうかがうことはできない。
なお,原告らは,被告がOS会社の社名,役員,資本金等の基本事項も労働条件の内容も明らかにしないまま,退職・再雇用の選択を迫った旨主張するが,被告は,平成13年11月13日,退職・再雇用を選択した従業員のOS会社における労働条件について説明をしており(前提事実(2)ア(エ)),証拠(甲F2の1,乙A19)によれば,その説明内容は雇用形態の選択の判断が可能な程度の説明であったことが認められる。
エ また,原告らは,通信労組が,平成14年2月以降,被告に対して,配転について団体交渉で取り扱うことを求めたが,被告は配転について団体交渉を拒否した旨主張する(原告らの主張(7)イ(ウ))。
なるほど,前記(1)イ(カ)で認定したとおり,通信労組が被告に対して配転について団体交渉で取り扱うことを要請したが,被告が,配転について事前に団体交渉で議論することを拒否したことが認められる。
しかし,被告が個々の従業員の具体的な配置先を決定するに際し,事前に団体交渉に応じるべき義務があったということはできないし,また,前記(1)イ(カ)で認定したとおり,被告は,配転命令後に異論があった場合には,要求があれば団体交渉において取り扱う考えを示していたことが認められ,配転についての団体交渉の一切を拒否していたものではない。さらには,被告が配転について事前に団体交渉で取り扱うことを拒否したことは本件配転命令を行う前の通信労組との間における対応において生じた手続上の問題にすぎず,そのことから直ちに,本件配転命令における反組合的意思を推認することができるものではない。
なお,原告らは,60歳満了型の従業員の約7割に当たる約300名が通信労組の組合員であった点を指摘する。しかし,これらの60歳満了型の従業員のうち誰に対して配転を命じるかが決まっていたわけではなく,前記(2)ウで認定したとおり,60歳満了型であるNTT労組の組合員のうちの相当数に対しても遠隔地への配転命令が行われていることに照らすと,原告らのこの指摘を考慮しても上記の判断を左右するものではない。
オ また,原告らは,本件配転命令により,地方都市における通信労組の組織(支部)では,甚大な影響が生じた旨を主張する(原告らの主張(7)ウ)。
なるほど,証拠(甲D116,甲D124,原告W,原告A)によれば,本件配転命令により支部の人数がわずかとなり,活動に支障が生じた地域があったことが認められる。
しかし,本件配転命令について比較的高度で具体的な業務上の必要性が認められることは,既に前記(2)ア及びイにおいて判断したとおりであるし,証拠(乙D74の1・2,乙F2の1,原告A)によれば,被告が,本件配転命令を行うに際して,通信労組の各地域交渉や地域ブロック交渉における交渉団長と窓口(正)の立場にある者については,団体交渉に支障が生じないようにするために,他地域への配転を差し控えたことが認められる。
これらの事情を考慮すると,通信労組の活動に支障が生じた地域があったからといって,本件配転命令が不当労働行為に当たると言うことはできない。
カ また,原告らは,被告は本件配転命令2と同時期に大阪支店内の通信労組の組合員を別のビルに相互に配転するという「玉突き配転」を行って,近隣のビルごとに結成された分会における人間関係の形成を阻害し,通信労組の団結を弱めさせようとした旨主張する(原告らの主張(7)エ)。
しかし,既に前記5(1)イ(イ)及び(ウ)で認定したとおり,本件計画の実施に際して,被告大阪支店が担当するユーザー数が大幅に減少したため,その営業部門の組織の見直しがされ,事業所の割付作業がされたために,事業所数が大幅に減少したことが認められ,このような状況の下で大阪支店内の営業部門の従業員の配置が大きく見直されたことは自然なことであり,本件配転命令2が通信労組の団結を弱めさせる意図で行われたと認めることはできない。
(4) この他,本件全証拠を検討しても,本件配転命令が不当労働行為に該当することをうかがわせる事情を認めるに足りる証拠は見当たらない。
そうすると,本件配転命令について,不当労働行為意思ないし支配介入意思があったと認めるには足りず,本件配転命令が通信労組の組合員に対する不利益取扱い(労組法7条1号)や支配介入(同条3号)の不当労働行為に当たると認めることはできない。
8  争点8(本件配転命令において適正な手続が執られていたか否か)について
(1) まず,原告らは,本件配転命令について,業務上の必要性や合理性,配転先での勤務内容や処遇,地元への復帰予定時期などについて説明しなかったことや,誠実な団体交渉を通じて本件配転命令についての理解を得ようともしなかった旨主張する(原告らの主張(8))。
しかし,被告は,前記7(1)イ(ウ)で認定したとおり,団体交渉や,勉強会に当たる場など,本件計画についての説明を行ったり情報を与える機会を設けており,退職・再雇用を選択した場合における労働条件を説明したほか,前記5(1)ア(ア)で認定したとおり,60歳満了型の従業員について,企画・戦略等や法人営業等の業務などに従事することが見込まれる旨や,市場性の高いエリア等を中心として,勤務地を問わず勤務することが見込まれる雇用形態である旨を,当初から説明していたところである。また,証拠(甲A10~12,甲A15,甲A16,甲A20,甲A22,甲A25,甲A40,甲A49)によれば,被告が,これらの通信労組に対する団体交渉や書面での回答等においても,被告の事業が携帯電話の利用の拡大や他業者との競争のために苦境にあることや,赤字を計上していることなどに触れつつ,人件費の削減を検討しなければならず,本件計画が必要であることについて説明していたこと,また,60歳満了型の従業員については,異職種への配転や遠隔地への配転があり得る旨を説明していたことが認められる。
また,地元への復帰予定時期についての説明がされていなかったという事情があったからといって,直ちに本件配転命令について適正な手続が執られていないと認めることはできない。
そうすると,この原告らの主張を認めることはできない。
(2) また,原告らは,被告が,配転により原告らの受ける不利益について,具体的事情を聴取して配慮を示そうとしなかった旨や,本人の意向確認を行わなかった旨を主張する(原告らの主張(8))。
しかし,むしろ,既に前記7(1)イ(オ)で認定したとおり,通信労組が,被告に対して個別面談による個人対応を行わないようにと要求し,組合員に対して個別面談を拒否するように指示したのであり,そのために被告が原告らの個別的具体的事情についての把握がされない結果になったからといって,本件配転命令について被告が適正な手続を執らなかったと評価されることにはならない。
(3) 以上によれば,この原告らの主張を認めることはできない。
9  争点9(各原告らが本件配転命令によって受けた不利益の程度等)及び争点10(各原告らの損害額)について
(1) 以上に論じたとおり,本件配転命令は,業務上の必要性に基づいて行われたものであり,不当な動機・目的をもって行われたと認めることはできず,不当労働行為に当たるともいえないところである。
そこで,進んで,本件配転命令が原告ら個々人に対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる等,本件配転命令が権利濫用に当たると見られるような特段の事情が存するかについて検討することとする。
(2) まず,前提事実(3)ウ及び別紙経歴表のとおり,原告A(原告1),原告Q(原告17)及び原告V(原告22)については,近接する府県に配転されたことがあったが,これらの例外を除くと,原告らは,いずれも,本件配転命令までの間,採用当初に配置された府県内において勤務してきたところである。また,ほとんどの原告は,技術職として採用され,そのうちの多くは,本件配転命令までの間,技術職として勤務してきており,経歴の中で,営業を中心として経験した者は極めて少ない。
しかし,前記1において判断したとおり,就業規則には勤務地又は担当する職務を変更されることがある旨明記されており,原告らが旧電電公社に採用された際に勤務地や職種を限定する旨の合意がされていたとは認められず,一定地域外や他職種への配転について同意を要する旨の慣行が形成されていたと認めることもできない。その上,前記5において判断したとおり,本件配転命令について認められる業務上の必要性は,比較的高度で具体的なものであったと認められる。
これらの事情を考慮すると,本件配転命令1ないし3がそれまで原告らが経験したことのない遠隔地への配転であったり,他職種への配転であるからといって,そのことのみをもって,これらの配転が原告ら個々人に対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであると認めるには足りない。このような配転が権利濫用に当たるか否かについては,さらに原告らが具体的に主張する個々人の事情を検討の上,これらの配転が通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであると認められるかを判断する必要があると考えられる。
(3) ところで,使用者としては,配転命令の時点において認識していた事情を考慮の上で,当該従業員の生活関係にどの程度の影響が生じるかを検討し,配転命令に及ぶか否かを判断することになるのであるから,原則として,その時点において使用者の認識していなかった事情を考慮して配転の当否を判断することは相当でないと考えられる。したがって,本件配転命令が権利濫用に当たるか否かは,本件配転命令が行われた各時期において,被告が認識していた事情を基礎として判断されるべきである。
なお,本件の場合には,前記7(1)イ(オ)で認定したとおり,原告らに対して配転命令が行われる可能性が高い状況であったにもかかわらず,通信労組において個別面談を拒否する方針が立てられており,その結果,原告らが被告に対して個人的事情を積極的に説明しようとする姿勢に乏しく,その機会が十分でなかったことがうかがえる。
また,育児介護休業法26条は,事業主に対して,労働者の就業場所の変更に当たって,当該労働者の子の養育又は家族の介護の状況に配慮しなければならない旨を定めているところ,本件配転命令が行われた平成14年5月以降当時には,同条が既に施行されていたのであるから,本件配転命令が権利濫用に当たるかを判断するに当たっては,同条の趣旨を踏まえて検討することが必要である。
なお,原告らは,ILO第156号条約3条に違反する旨も主張するが,同条約3条は,その文言から明らかなとおり,各加盟国に対して国の政策の目的とすべき事項を定めたものと解されるから,使用者と労働者との間の具体的な紛争の解決に当たっては,育児介護休業法の趣旨に基づいて判断することで足りるものと考えられる。
(4) そこで,以上に論じたことを前提に,原告ら各人について,本件配転命令が通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであったかについて,以下検討する。
ア 原告A(原告1。本件配転命令1関係)について
(ア) 異職種への配転である点について
証拠(甲E1の1,甲D124~126,乙D82,原告A)によれば,原告Aが,国家資格を有する無線技術者として主として無線通信の業務に従事してきた者であり,本件配転命令1に至るまで,営業業務の経験を有してはいなかったことが認められる。
しかし,前記1において判断したとおり,原告らについて職種の限定がされていたとは認められず,かつ,前記5において判断したとおり,本件配転命令1について認められる業務上の必要性が比較的高度のものであったと認められることを考慮すると,原告Aがこれまでに経験のなかった営業業務の担当に配転されたからといって,本件配転命令1が原告Aに対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものと認めることはできない。
なお,原告Aは,それまで無線技術者としての業務の経験しかなく,本件配転命令1により,慣れない営業に従事させられた結果,D評価しか得られなかったと述べるが(甲E1の1,原告A),本件配転命令1と同じ機会にされた配転命令により異職種配転がされた者の中にも,よい成績を収めたと推測される従業員がおり(乙D37の1,乙D108,乙F6),原告AがD評価しか得られなかったことの原因を異職種配転に求めることは相当とはいえない。
また,原告Aは,慣れない土地で,慣れない営業をすることにより,肉体的,精神的苦痛を受けたとも述べるが,営業に伴う肉体的,精神的負担が一定程度あり,原告Aの当時の年齢を考えると,その負担は軽くはなかったということができるとしても,営業に通常伴う負担を特に超えていたと認める証拠はなく,また,原告Aの当時の年齢を理由に,異職種配転自体を一般的に否定することはできない(以下,異職種配転を受けた他の原告らについても同様のことがいえる。)。
(イ)遠隔地への配転である点について
本件配転命令1の結果,原告Aは,大阪府堺市内に単身赴任することとなった(甲E1の1)。
ところで,本件全証拠を検討しても,原告Aについて,本件配転命令1の当時,子の養育又は家族の介護などといった事情を含め,遠隔地への配転を避けなければならないような個人的事情が存したと認めるに足りる証拠はない。
原告Aは,遠隔地への配転である結果,単身赴任を余儀なくされたこと,単身赴任生活における負担などを述べるが,週末毎の帰宅が可能であったと推認されるなど(甲E1の1),一般的な単身赴任に伴う負担を超える事情が存したと認める証拠はなく,単身赴任を余儀なくされたというだけで,本件配転命令1が権利の濫用に当たるということはできない(以下,特に断らない限り,単身赴任を選択した他の原告らについても同様のことがいえる。)。
原告Aの妻は,右下肢に2種5級の障害を有していることが認められるが,他方で,32年間,知的障害者の施設に勤務していたことが認められる(甲E1の1)。妻に対する何らかの介護が必要であるとしても,どのような介護がどの程度必要であるかを明らかにする証拠はない。原告Aが単身赴任となるだけでなく,その妻も,ひとり暮らしを余儀なくされることを併せ考えても,通常甘受すべき程度を著しく超える不利益が生じるとまでは認められない。
なお,原告Aは,心臓発作を起こすなど,健康を害した旨を主張するが,それは本件配転命令1の後に生じた事情であり,再び自宅から通勤可能な職場への再配転をすべきという事情にはなり得ても,本件配転命令1が権利の濫用に当たることを裏付ける事情とはならない。
また,原告Aは,遠隔地への配転による労働組合活動上の不利益を述べるが,前記7のとおり,本件配転命令1が不当労働行為に該当すると認めることはできず,また,前記5のとおり,本件配転命令1に業務上の必要性が認められる以上,原告Aが,自己の労働組合活動上の不利益を受けたとしても,これを通常甘受すべき程度を著しく超える不利益ということはできない。
(ウ) 本件配転命令1により原告Aが被る不利益や負担は,上記(ア),(イ)で個別に検討した負担を総合したものとして検討すべきであるが,前記5のとおり,本件配転命令1の業務上の必要性が,異職種の配転であるということと,遠隔地への配転であることを一体としたものであることに照らすと,原告Aに対する本件配転命令1が権利の濫用に当たるとは認められない(原告B,原告C,原告Dについても,同様のことがいえる。)。
イ 原告B(原告2。本件配転命令1関係)について
(ア) 異職種への配転である点について
証拠(甲E2の1)によれば,原告Bが,電話交換機の保守業務に従事してきた者であり,本件配転命令1に至るまで,営業業務の経験を有していなかったことが認められる。
しかし,原告らについて職種の限定がされていたとは認められず,かつ,本件配転命令1について認められる業務上の必要性が比較的高度のものであったと認められることを考慮すると,本件配転命令1が原告Bに対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものと認めることはできない。
なお,原告Bは,徳島へ再配転された後,営業の成績はよく(甲E2の1,少なくとも),異職種配転であることを理由として,配転の違法性をいうことはできない。
(イ) 遠隔地への配転である点について
本件配転命令1の結果,原告Bは,神戸市内に単身赴任することとなった(甲E2の1)。
ところで,本件全証拠を検討しても,原告Bについて,本件配転命令1の当時に,子の養育又は家族の介護などといった事情を含め,遠隔地への配転を避けなければならないような個人的事情が存したと認めるに足りる証拠はない。
原告Bの妻は,本件配転命令1の当時,腰痛や頸肩腕障害などの症状を有し,腰痛のために接骨院に通院していたことが認められるが,他方で,当時,NTTの従業員として勤務していたことが認められ(甲E2の1・2・15~20),妻に対する何らかの介護が必要であるとしても,どのような介護がどの程度必要であるかを明らかにする証拠はない。また,原告Bが単身赴任した後も,長女と次女が同居しており,同居している間は,娘から介護を受けることを期待できたことが推測され,通常甘受すべき程度を著しく超える不利益が生じると認めるに足りる事情はうかがわれない。また,証拠(甲E2の2)によれば,被告が本件配転命令1の当時に上記事情を把握していなかったことが認められ,そのことについて,特段の落ち度を認める事情もうかがえない。
なお,原告Bの妻の上記症状が悪化したことや,原告Bが,うつ病に罹患するに至ったことが認められるが(甲E2の1・2),いずれも本件配転命令1の後に生じた事情であり,本件配転命令1が権利の濫用に当たることを裏付ける事情とはならない。
(ウ) 以上によれば,原告Bに対する本件配転命令1が権利の濫用に当たるとは認められない。
ウ 原告C(原告3。本件配転命令1関係)について
(ア) 異職種への配転である点について
証拠(甲E3の1~16)によれば,原告Cが,主として線路技術職として宅内業務全般に従事してきた者であり,本件配転命令1に至るまで,営業業務の経験を有していなかったことが認められる。
しかし,原告らについて職種の限定がされていたとは認められず,かつ,本件配転命令1について認められる業務上の必要性が比較的高度のものであったと認められることを考慮すると,本件配転命令1が原告Cに対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものと認めることはできない。
また,原告Cは,その従事してきた業務が平成14年5月以降もOS会社に委託されずに被告に残されている旨主張する。しかし,証拠(甲E3の1)によれば,原告Cが本件配転命令1の当時,現に担当していた業務(宅内業務の一部であるオーダー処理業務)が,既にOS会社に委託されており,宅内業務の一部が被告に残されているにすぎないことが認められ,被告本体において行われていた宅内業務についてOS会社に業務委託する方針を進めていることがうかがわれるのであって,原告Cに対する本件配転命令1の必要性を否定する事情とはならない。
(イ) 遠隔地への配転である点について
本件配転命令1の結果,原告Cは,大阪府堺市内に単身赴任することとなった(甲E3の1)。
ところで,本件全証拠を検討しても,原告Cについて,本件配転命令1の当時に,子の養育又は家族の介護などといった事情を含め,遠隔地への配転を避けなければならないような個人的事情が存したと認めるに足りる証拠はない。
なお,原告Cは,妻が関節リウマチに罹患した旨主張するが,本件配転命令1の後に生じた事情であり,本件配転命令1が権利の濫用に当たることを裏付ける事情とはならない。
原告Cは,中高年夫婦に単身生活を強いること自体相当でないと主張するが,健康の管理等の観点から,同居が望ましいことはいうまでもないが,上述したとおり,一般的な単身赴任に伴う負担であるというべきであり,前記5で述べた業務上の必要性に照らし,その必要性を減殺する事情には当たらないというべきである。
また,原告Cも,遠隔地への配転による労働組合活動上の不利益を述べるが,原告Aのところで述べたことと同様のことがいえる。
(ウ) 以上によれば,原告Cに対する本件配転命令1が権利の濫用に当たるとは認められない。
エ 原告D(原告4。本件配転命令1関係)について
(ア) 異職種への配転である点について
証拠(甲E4の1,乙D83,乙D123,乙D124,原告D)によれば,原告Dが,主として技術職として従事してきた者であり,本件配転命令1に至るまで,若干の営業業務の経験はあったものの,十分には有していなかったことが認められる。
しかし,原告らについて職種の限定がされていたとは認められず,かつ,本件配転命令1について認められる業務上の必要性が比較的高度のものであったと認められることを考慮すると,本件配転命令1が原告Dに対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものと認めることはできない。
(イ) 遠隔地への配転である点について
本件配転命令1の結果,原告Dは,大阪府三島郡島本町内に単身赴任することとなった(甲E4の1)。
ところで,原告Dは,本件配転命令1の当時既に,HTLV-I(成人T細胞白血病ウイルスI型)を有しており,発症を予防すべき状況にあった旨主張する。しかし,証拠(原告D)及び弁論の全趣旨によれば,原告Dが本件配転命令1以前に被告にこの健康上の事情を説明したことがないこと,原告D自身がこのウイルスの保有が自己の健康上重大なことであることを知ったのは本件訴訟提起に際してであり,本件訴訟の提起によって初めてこの健康上の事情を被告に示したことが認められる。そうすると,被告において本件配転命令1の当時にこの原告Dの健康上の事情を考慮することはできなかったのであるから,この原告Dの主張を認めることはできない。
また,原告Dは,睡眠時無呼吸症候群やシックハウス症候群を有する旨主張するが,証拠(甲E4の1,甲E4の4,甲E4の8,原告D)によれば,これらの事情についても,本件配転命令1以前に被告に示したことがなかったことがうかがわれる。
(ウ) 以上によれば,原告Dに対する本件配転命令1が権利の濫用に当たるとは認められない。
もっとも,原告Dには,前記(イ)のとおり,健康上の問題が認められ,規則正しい食生活とストレス緩和のできる環境整備が求められること(甲E4の7),原告Dの勤務地や単身赴任先と自宅(大分県別府市)との距離が他の原告らに比べても格段に遠く,週末の帰宅が経済的,時間的に容易とはいえないことなどの事情を考慮すると,被告においては,現在の原告Dの健康上の状況を確認し,その状況を十分に踏まえて,時宜にかなった,適切な配慮をすることが求められる。
オ 原告E(原告5。本件配転命令2及び3関係)について
(ア) 本件配転命令2について
証拠(甲E5の1,原告E)によれば,原告Eが,採用当初は電報配達業務を,その後は職種を転換して配線・故障対応業務に従事してきた者であり,本件配転命令2に至るまで,営業業務の経験を有していなかったことが認められる。
しかし,原告らについて職種の限定がされていたとは認められず,かつ,前記5において判断したとおり,本件配転命令2について認められる業務上の必要性が比較的高度のものであったと認められることを考慮すると,本件配転命令2が原告Eに対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものと認めることはできない。
そうすると,原告Eに対する本件配転命令2が権利の濫用に当たるとは認められない。
(イ) 本件配転命令3について
本件配転命令3を受け,原告Eは,転居(単身赴任)を避けるため,新幹線通勤ができるよう被告と交渉し,これが認められた(甲E5の1)。
ところで,原告Eに対する本件配転命令3に関して,証拠(甲E5の1~7,甲E5の14~18,原告E)によれば,次の事実が認められる。
a 原告Eの実父は,本件配転命令3の当時86歳であったが,脳梗塞後遺症やパーキンソン症候群等を患い,壁伝えに体を支えて歩くことができる程度であり,通院等の外出の際には車椅子が必要であるなど,介護が必要な状況であった。そのため,原告Eは,自宅(大阪府柏原市)に実父を引き取り,原告Eが家にいる間は,入浴やトイレなどの世話をしていた。
また,原告Eの実母は,本件配転命令3の当時84歳であったが,以前に脳梗塞を患い,その後遺症に苦しんでいた上,痴呆の症状が出ていた。そのため,原告Eは,実母の居宅(大阪府忠岡町)に頻繁に出向いて世話をする必要があった。
b 他方,原告Eの妻は,本件配転命令3の当時,住宅ローンの支払のためもあって大阪市所在の会社に勤務しており,次女や三女の妊娠や出産が相次いだことや,その実父(大正5年生まれ)も高齢でひとり暮らしをしており,その兄弟らと分担して夕食の世話をしなければならなかったために,原告Eの実父母の介護に当たることができる状況ではなかった。また,原告Eには3人の娘がいたが,次女や三女は前記のような状況であった上,長女についても大阪市内で勤務していた。
このように,原告E以外の家族が原告Eの実父母の介護を行うことは実際上困難な状況にあった。
c そこで,原告Eは,本件スキル転換研修を受講していた平成14年10月上旬ころ,所属の課長(○○課長)に対して前記a及びbの実情を告げた。
また,原告Eは,同年10月30日,名古屋支店への配転についての打診を受けた際に,再び,同課長に対して,前記a及びbの実情を説明し,名古屋支店への配転を行わないようにと申し入れた。
しかし,被告は,原告Eに対して本件配転命令3を行った。その反面,通勤時間が2時間を超える場合には新幹線通勤を認めないこととされており,原告Eの自宅は大阪府柏原市にあるため,本来であれば新幹線通勤を認ることができなかったが,特例として新幹線通勤を認めた。
その結果,原告Eは,転居(単身赴任)を避けることができたものの,通勤時間が片道2時間25分となったため(本件配転2による配転先の勤務場所である曽根崎ビルと,新大阪駅と,原告Eの自宅との位置関係からすると,ほぼ,新幹線通勤分の通勤時間が加算されることとなったことが推認される。),実父母の介護のための時間を確保することが困難となった。
d その後,原告Eの実父は,平成15年9月26日,入浴中に脳梗塞の症状が出たために死亡した。
また,原告Eの実母は,平成15年8月ころから,脳梗塞及び痴呆と診断され,日常的な介護を要する状況に至っていた。そのため,原告Eは,介護休職を申請して,平成16年2月ころからは6時間勤務となり,同年5月ころからは4時間勤務となった。
原告Eは,平成16年7月1日,大阪支店に配転された。
(ウ) 前記(イ)で認定したところをまとめると,本件配転命令3の当時,原告Eの実父が介護を要する状況にあり,実母についても頻繁に世話をすることが必要な状況にあったが,原告Eの他にその介護を行う余力のある者が家族の中にいなかったことが認められる。
以上の事実によれば,育児介護休業法26条の趣旨も踏まえて検討すれば,本件配転命令3は,通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものと認めるのが相当である。
なお,被告は,原告Eに対し,新幹線通勤を認めているが,これにより転居(単身赴任)を避けること自体はできたものの,通勤時間に長時間(片道約2時間25分)を要するため,結局は,実父母の介護を行うことは困難となったのであるから,上記判断を左右するには至らないというべきである。
したがって,原告Eに対する本件配転命令3は権利濫用に当たるものであり,前記(イ)で認定した諸般の事情を考慮すると,本件配転命令3による精神的損害を80万円と認めるのが相当である。
カ 原告F(原告6。本件配転命令2及び3関係)について
(ア) 本件配転命令2について
証拠(甲E6の1)によれば,原告Fが,主として通信機器等の保守業務に従事してきた者であり,本件配転命令2に至るまで,営業業務の経験を有していなかったことが認められる。
しかし,原告らについて職種の限定がされていたとは認められず,かつ,本件配転命令2について認められる業務上の必要性が比較的高度のものであったと認められることを考慮すると,本件配転命令2が原告Fに対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものと認めることはできない。
そうすると,原告Fに対する本件配転命令2が権利の濫用に当たるとは認められない。
(イ) 本件配転命令3について
本件配転命令3の結果を受け,原告Fは,転居(単身赴任)を避けるため,新幹線通勤を選択した(甲E6の1)。
ところで,証拠(甲E6の1~4)によると,原告Fは,本件配転命令3の当時,糖尿病に罹患して通院加療中であり,食事制限を受ける必要があったことが認められる。
たしかに,証拠(甲E6の1)によれば,本件配転命令3の当時,原告Fの糖尿病の症状が安定していたことが認められるし,糖尿病の通院や治療自体に,地域的な差があるとは考えにくい。
しかし,本件配転命令3に伴い,家族を伴って転居することの困難な事情がある以上(一般的に転居には負担が伴う上,上記証拠によると,原告Fには同居の長男がいること,原告Fの定年までの年数を考えた場合,一家による転居が容易でないことが推認できる。),単身赴任にしろ,新幹線通勤にしろ,原告Fの自宅と配転先の勤務場所の距離や通勤時間を考えた場合,糖尿病の通院や治療自体に支障があるといわざるを得ない(新幹線通勤の場合,往復約2時間程度通勤時間が加算され,通院や治療時間を確保することが困難となるという支障がある上,身体的な負担も軽くない。他方,単身赴任の場合,食事療法などの点において,支障があるというべきである。)。このことは,原告Fが,平成17年4月1日,再び,被告大阪支店ソリューション営業本部へ再配転されるまでの間,幸いにも,糖尿病が特に悪化することがなかったからといって,左右されるものでもない。
(ウ) そうすると,本件配転命令3は,原告Fに対し,糖尿病の通院や治療に支障を来し,あるいは,そのことについて不安を抱かせたということができ,通常甘受すべき程度を著しく越える不利益を負わせたというべきである。
したがって,原告Fに対する本件配転命令3は権利の濫用に当たるものであり,前記(イ)で認定した諸般の事情(特に,糖尿病の悪化を招来することなく,新幹線通勤を終了することになったこと)を総合考慮すると,本件配転命令3による精神的損害を40万円と認めるのが相当である。
キ 原告G(原告7。本件配転命令2及び3関係)について
(ア) 本件配転命令2について
証拠(甲E7の1)及び弁論の全趣旨によれば,原告Gは,採用当初は電話設備の建設及び保守業務を担当していたが,平成11年以降,SE(システムエンジニア)としての中小規模ユーザー向けの業務を担当し,SE関連の様々な資格を取得したことが認められる。そうすると,原告Gが,本件配転命令2によりソリューション営業を担当することになったことが,従来とは異職種の業務に配転されたと言うことはできない。
また,本件全証拠を検討しても,その他,本件配転命令2が原告Gに対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであることをうかがわせる事情は見当たらない。
原告Gは,自己の職歴や取得資格を活かすことができなくなったことによる不利益,負担や,配転先が営業成績をあげることのできる部署ではないなどと述べるが(甲E7の1),前記5で判断した事情に照らすと,いずれも本件配転命令2の業務上の必要性を否定するには至らない。
そうすると,原告Gに対する本件配転命令2が権利の濫用に当たるとは認められない。
(イ) 本件配転命令3について
本件配転命令3を受け,原告Gは,転居(単身赴任)を避けるため,新幹線通勤を選択した(甲E7の1)。
ところで,原告Gは,本件配転命令3により担当することになった名古屋MI担当の業務についても,大阪における3年4か月の営業経験や資格を活かせないと述べるが(甲E7の1),前記5のとおり,本件配転命令3に比較的高い業務上の必要性が認められる以上,やむを得ないというべきである(以下,名古屋MI担当についた他の原告らについても同様のことがいえる。)。
また,証拠(甲E7の1)によると,原告Gは,以前から高尿酸血症に症状があり,通院治療を受け,食事制限の指導を受けていたことがうかがえる。
しかし,上記高尿酸血症の程度や,生活に与える具体的影響は必ずしも明らかとはいえず(むしろ上記証拠によると,原告Gは、本件配転命令3の直前まで,週3,4回,スポーツクラブに通って水泳やエアロビクスをしていたことが認められる。),本件全証拠を検討しても,本件配転命令3によりその通院治療や食事制限を受けることが特に困難にならざるを得なくなるような事情は見当たらない。
原告Gは,新幹線通勤をすることによりスポーツする時間がなくなったと述べるが(甲E7の1),転居(単身赴任)を避け,新幹線通勤を選択したことに通常伴う負担というべきである。
また,本件全証拠を検討しても,その他,本件配転命令3が原告Gに対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであることをうかがわせる事情は見当たらない。
なお,本件配転命令3は,本件配転命令2に引き継いで短期間になされているが,前記5のとおり,それぞれの配転命令に業務上の必要性を認めることができ,そのことのために原告Gに対する本件配転命令3が権利の濫用に当たることになるものではない(以下,本件配転命令2,3を受けた他の原告らについても,同様のことがいえる。)。
そうすると,原告Gに対する本件配転命令3が権利の濫用に当たるとは認められない。
ク 原告H(原告8。本件配転命令2及び3関係)について
(ア) 本件配転命令2について
証拠(甲E8の1)によれば,原告Hは,採用以来,機械職としての業務に従事してきたが,平成10年ころから,営業業務に従事するようになり,平成12年10月ころからは,ユーザーを訪問してADSL関係の商品の販売を行う業務を担当していたことが認められる。そうすると,原告Hが,本件配転命令2によりソリューション営業を担当することになったことが,従来とは異職種の業務に配転されたと言うことはできない。
また,本件全証拠を検討しても,その他,本件配転命令2が原告Hに対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであることをうかがわせる事情は見当たらない。
そうすると,原告Hに対する本件配転命令2が権利の濫用に当たるとは認められない。
(イ) 本件配転命令3について
本件配転命令3を受け,原告Hは,転居(単身赴任)を避けるため,新幹線通勤を選択した(甲E8の1)。
また,本件全証拠を検討しても,本件配転命令3が原告Hに対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであることをうかがわせる事情は見当たらない。
原告Hは,新幹線通勤をすることにより,自治会長としての活動ができなくなると述べるが(甲E8の1),配転に通常伴う負担というべきである。
なお,原告Hは,飛蚊症や胃潰瘍に罹患した旨主張するが,それは本件配転命令3の後に生じた事情である。
そうすると,原告Hに対する本件配転命令3が権利の濫用に当たるとは認められない。
ケ 原告I(原告9。本件配転命令2及び3関係)について
(ア) 本件配転命令2について
証拠(甲E9の1)によれば,原告Iが,電話等の故障受付,修理者への手配業務などに従事してきた者であり,本件配転命令2に至るまで,営業業務の経験を有していなかったことが認められる。
しかし,原告らについて職種の限定がされていたとは認められず,かつ,本件配転命令2について認められる業務上の必要性が比較的高度のものであったと認められることを考慮すると,本件配転命令2が原告Iに対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものと認めることはできない。
そうすると,原告Iに対する本件配転命令2が権利の濫用に当たるとは認められない。
(イ) 本件配転命令3について
本件配転命令3を受け,原告Iは,転居(単身赴任)を避けるため,新幹線通勤を選択した(甲E9の1)。
また,本件全証拠を検討しても,本件配転命令3が原告Iに対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであることをうかがわせる事情は見当たらない。
原告Iは,以前から高血圧症であった旨主張するが,その症状の程度や,生活に与える具体的な影響は不明であり,本件配転命令3によりその治療や食事療法等が特に困難にならざるを得なくなるような事情も見当たらない。
そうすると,原告Iに対する本件配転命令3が権利の濫用に当たるとは認められない。
コ 原告J(原告10。本件配転命令2及び3関係)について
(ア) 本件配転命令2について
証拠(甲E10の1)によれば,原告Jが,機械職としての業務に従事してきた者であり,本件配転命令2に至るまで,営業業務の経験を有していなかったことが認められる。
しかし,原告らについて職種の限定がされていたとは認められず,かつ,本件配転命令2について認められる業務上の必要性が比較的高度のものであったと認められることを考慮すると,本件配転命令2が原告Jに対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものと認めることはできない。
そうすると,原告Jに対する本件配転命令2が権利の濫用に当たるとは認められない。
(イ) 本件配転命令3について
本件配転命令3の結果,原告Jは,名古屋市内に単身赴任することとなった(甲E10の1)。
ところで,原告Jは,本件配転命令3により担当することになった名古屋MI担当の業務につき,配転までしてさせる業務ではないと述べるが(甲E10の1),前記5で述べた業務上の必要性に照らし,採用できない。
また,原告Jは,鹿児島県で独居生活をしている妻の父が病気がちであった旨主張する。しかし,本件全証拠を検討しても,原告Jの妻の父の本件配転命令3当時における具体的状況は不明である(少なくとも,原告Jあるいはその家族による介護を常に必要とする状況にあったとは認められない。)。その他,本件配転命令3が原告Jに対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであることをうかがわせる事情は見当たらない。
なお,原告Jは,歯周病等に罹患したり,未破裂の脳動脈瘤が発見された旨主張するが,それらは本件配転命令3の後に生じた事情であり,本件配転命令3が権利の濫用に当たることを裏付ける事情とはならない。
そうすると,原告Jに対する本件配転命令3が権利の濫用に当たるとは認められない。
サ 原告K(原告11。本件配転命令2及び3関係)について
(ア) 本件配転命令2について
証拠(甲E11の1)によれば,原告Kが,機械の保守業務に従事してきた者であり,本件配転命令2に至るまで,営業業務の経験を有していなかったことが認められる。
しかし,原告らについて職種の限定がされていたとは認められず,かつ,本件配転命令2について認められる業務上の必要性が比較的高度のものであったと認められることを考慮すると,本件配転命令2が原告Kに対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものと認めることはできない。
そうすると,原告Kに対する本件配転命令2が権利の濫用に当たるとは認められない。
(イ) 本件配転命令3について
本件配転命令3を受け,原告Kは,転居(単身赴任)を避けるため,新幹線通勤を選択した(甲E11の1)。
ところで,原告Kは,以前から網膜色素上皮剥離,開放隅角緑内障,視神経萎縮という眼の疾患を有しており,通院治療を要する状況であった旨主張し,証拠(甲E11の2)によれば,原告Kがこのような眼の疾患を有していたことが認められる。
しかし,証拠(甲E11の1・12)によれば,原告Kには新幹線通勤が許可されていることが認められ,本件全証拠を検討しても,本件配転命令3によりその通院治療を受けることが特に困難にならざるを得なくなるような事情は見当たらない(原告Fの場合は,食事療法などの問題があり,新幹線通勤も単身赴任もその治療に支障があると認められる点において,原告Kの場合とは異なるといえる。)。
また,原告Kは,兵庫県西宮市内に居住する80歳を超えた両親を毎週末ごとに介護のために訪問していた旨を主張する。しかし,証拠(甲E11の1)によれば,本件配転命令3の当時には,原告Kの姉夫婦がその両親と同居していたことがうかがわれ,本件全証拠を検討しても,その両親が本件配転命令3当時,原告Kによる介護を要する状況であったことを認めるに足りる証拠はない。
さらには,原告Kは,本件配転命令3により担当することとなった業務が,一日中パソコンの画面を見ながらの作業であり,眼に疾患のある原告Kにとっては負担の大きい作業であった旨主張する。しかし,本件全証拠を検討しても,パソコン作業が具体的に原告Kの眼の疾患にどのような影響を与えていたのかについて認めるに足りる証拠はない。
その他,本件全証拠を検討しても,本件配転命令3が原告Kに対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであることをうかがわせる事情は見当たらない。
そうすると,原告Kに対する本件配転命令3が権利の濫用に当たるとは認められない。
シ 原告L(原告12。本件配転命令2及び3関係)について
(ア) 本件配転命令2について
証拠(甲E12の1)によれば,原告Lが,主として保守業務及び建設業務などに従事してきた者であり,本件配転命令2に至るまで,営業業務の経験を有していなかったことが認められる。
しかし,原告らについて職種の限定がされていたとは認められず,かつ,本件配転命令2について認められる業務上の必要性が比較的高度のものであったと認められることを考慮すると,本件配転命令2が原告Lに対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものと認めることはできない。
そうすると,原告Lに対する本件配転命令2が権利の濫用に当たるとは認められない。
(イ) 本件配転命令3について
本件配転命令3の結果,原告Lは,名古屋市内に単身赴任することとなった(甲E12の1)。
原告Lは,大阪府守口市内に居住する妻の両親に介護の必要があった旨主張する。なるほど,証拠(甲E12の1)によれば,妻の両親が介護を必要とする状態であることがうかがわれるものの,その具体的程度は不明であり(妻が片道3時間かけて介護に通っていると述べるものの,毎日のこととは考えにくい。),本件全証拠を検討しても,原告Lが本件配転命令3当時に妻の両親を介護する具体的な必要性があったことを認めるに足りる証拠はない。
また,その他,本件配転命令3が原告Lに対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであることをうかがわせる事情は見当たらない。
原告Lは,腎臓結石や腰痛等に罹患した旨主張するが,それらはいずれも本件配転命令3の後に生じた事情である。
そうすると,原告Lに対する本件配転命令3が権利の濫用に当たるとは認められない。
ス 原告M(原告13。本件配転命令2及び3関係)について
(ア) 本件配転命令2について
証拠(甲E13の1,甲E13の5~14,乙D85)によれば,原告Mが,線路職の業務や設備系の維持管理業務に従事してきた者であり,線路作業に必要な各種の資格を多数取得してきたこと,また,本件配転命令2に至るまで,営業業務の経験を有していなかったことが認められる。
しかし,原告らについて職種の限定がされていたとは認められず,かつ,本件配転命令2について認められる業務上の必要性が比較的高度のものであったと認められることを考慮すると,本件配転命令2が原告Mに対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものと認めることはできない。
そうすると,原告Mに対する本件配転命令2が権利の濫用に当たるとは認められない。
(イ) 本件配転命令3について
本件配転命令3の結果,原告Mは,単身赴任をすることとなったが,平成15年10月のダイヤ改正後,新幹線通勤が認められた(甲E13の1)。
ところで,原告Mは,本件配転命令3までは妻とその母(義母)と同居していたが,義母は骨粗鬆症のために歩行がままならず,また,本件配転命令3の直前には肺ガンに罹患していることが判明した(甲E13の1)。しかし,本件全証拠を検討しても,原告M自身が本件配転命令3当時に義母を介護する具体的な必要性があったことを認めるに足りる証拠はない。
また,その他,本件配転命令3が原告Mに対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであることをうかがわせる事情は見当たらない。
原告Mは,高血圧の傾向にあった旨主張するが,本件全証拠を検討しても,本件配転命令3によりその治療や食事管理が特に困難にならざるを得なくなるような事情は見当たらない。
そうすると,原告Mに対する本件配転命令3が権利の濫用に当たるとは認められない。
セ 原告N(原告14。本件配転命令2及び3関係)について
(ア) 本件配転命令2について
証拠(甲E14の1)によれば,原告Nが,設備技術部門や「113センタ(電話加入」者から故障の報告を受ける部署)において従事してきた者であり,本件配転命令2に至るまで,営業業務の経験を有していなかったことが認められる。
しかし,原告らについて職種の限定がされていたとは認められず,かつ,本件配転命令2について認められる業務上の必要性が比較的高度のものであったと認められることを考慮すると,本件配転命令2が原告Nに対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものと認めることはできない。
そうすると,原告Nに対する本件配転命令2が権利の濫用に当たるとは認められない。
(イ) 本件配転命令3について
本件配転命令3を受け,原告Nは,転居(単身赴任)を避けるため,新幹線通勤を選択した(甲E14の1)。
ところで,原告Nは,空手と太極拳を続け,指導者としても活躍していたことがうかがえるが(甲E14の1),本件配転命令3の結果,遠距離通勤を余儀なくされ,空手や太極拳の指導を続けることが困難になったとしても,原告Nにとって,通常甘受すべき程度を著しく超える不利益ということはできず,他に,そのような不利益をうかがわせる事情は見当たらない。
原告Nは,高血圧や高尿酸値の状態となった旨主張するが,それは本件配転命令3の後に生じた事情である。
そうすると,原告Nに対する本件配転命令3が権利の濫用に当たるとは認められない。
ソ 原告O(原告15。本件配転命令2及び3関係)について
(ア) 本件配転命令2について
証拠(甲E15の1)によれば,原告Oが,線路技術職や機械職としての業務に従事してきた者であり,本件配転命令2に至るまで,営業業務の経験を有していなかったことが認められる。
しかし,原告らについて職種の限定がされていたとは認められず,かつ,本件配転命令2について認められる業務上の必要性が比較的高度のものであったと認められることを考慮すると,本件配転命令2が原告Oに対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものと認めることはできない。
そうすると,原告Oに対する本件配転命令2が権利の濫用に当たるとは認められない。
(イ) 本件配転命令3について
本件配転命令3を受け,原告Oは,転居(単身赴任)を避けるため,新幹線通勤を選択した(甲E15の1)。
ところで,本件全証拠を検討しても,本件配転命令3が原告Oに対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであることをうかがわせる事情は見当たらない。
原告Oは,以前から椎間板ヘルニアの持病を有し,通院治療の必要があった旨主張するが,通院治療の具体的内容は,再発した際にかかりつけの医師に牽引してもらっていたというものであり,他方で,少年野球の監督を続けていたというのであるから(甲E15の1),継続して治療を受ける必要があったとは認められない。
そうすると,原告Oに対する本件配転命令3が権利の濫用に当たるとは認められない。
タ 原告P(原告16。本件配転命令2及び3関係)について
(ア) 本件配転命令2について
証拠(甲E16の1)によれば,原告Pが,有線通信職や線路技術職としての業務に従事してきた者であり,本件配転命令2に至るまで,営業業務の経験を有していなかったことが認められる。
しかし,原告らについて職種の限定がされていたとは認められず,かつ,本件配転命令2について認められる業務上の必要性が比較的高度のものであったと認められることを考慮すると,本件配転命令2が原告Pに対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものと認めることはできない。
そうすると,原告Pに対する本件配転命令2が権利の濫用に当たるとは認められない。
(イ) 本件配転命令3について
本件配転命令3を受け,原告Pは,転居(単身赴任)を避けるため,新幹線通勤を選択した(甲E16)。
ところで,原告Pは,地元でのボランティア活動を続けていたことがうかがえるが(甲E16),本件配転命令3の結果,遠距離通勤を余儀なくされ,これらの活動に支障が生じたとしても,原告Pにとって,通常甘受すべき程度を著しく超える不利益ということはできず,他に,そのような不利益をうかがわせる事情は見当たらない。
そうすると,原告Pに対する本件配転命令3が権利の濫用に当たるとは認められない。
チ 原告Q(原告17。本件配転命令2及び3関係)について
(ア) 本件配転命令2について
証拠(甲E17の1)によれば,原告Qが,市外中継交換機の保守,デジタル交換機の収容,ファイル更新業務などに従事してきた者であり,本件配転命令2に至るまで,営業業務の経験を有していなかったことが認められる。
しかし,原告らについて職種の限定がされていたとは認められず,かつ,本件配転命令2について認められる業務上の必要性が比較的高度のものであったと認められることを考慮すると,本件配転命令2が原告Qに対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものと認めることはできない。
そうすると,原告Qに対する本件配転命令2が権利の濫用に当たるとは認められない。
(イ) 本件配転命令3について
本件配転命令3を受け,原告Qは,転居(単身赴任)を避けるため,新幹線通勤を選択した(甲E17の1)。
ところで,原告Qは,母が高齢であり,心臓バイパス手術を受けた後,入退院を続けており,常時介護を要する状態であった旨や,母と別居していたものの,その介護や通院の付き添いを全て行い,原告Q以外にその介護を頼める者がいなかった旨を主張する。なるほど,証拠(甲E17の1~5)によれば,原告Qの母が平成12年に心臓バイパス手術を受け,本件配転命令3の当時,常時介護を要したことが認められる。
しかし,他方,同証拠によれば,①原告Qの母は,原告Qの兄と同居していたこと,②その兄が過労により体調の悪い時期に,原告Qは,休暇を取るなどして,母の通院の送迎を行ってはいたものの,主として兄が母の介護に当たっていたこと,③原告Qには,新幹線通勤が許可されており,本件配転命令3により,上述した内容の介護に大きな支障が生じたとは見られないことが認められる。したがって,本件配転命令3の結果,原告Qの通勤時間が長くなったとしても,そのことから,直ちに,原告Qに対し,母の介護について,通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせたということはできず,他に,そのような不利益をうかがわせる事情は見当たらない。
そうすると,原告Qに対する本件配転命令3が権利の濫用に当たるとは認められない。
ツ 原告R(原告18。本件配転命令2及び3関係)について
(ア) 本件配転命令2について
証拠(甲E18の1)によれば,原告Rが,機械職としての業務に従事してきた者であり,本件配転命令2に至るまで,営業業務の経験を有していなかったことが認められる。
しかし,原告らについて職種の限定がされていたとは認められず,かつ,本件配転命令2について認められる業務上の必要性が比較的高度のものであったと認められることを考慮すると,本件配転命令2が原告Rに対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものと認めることはできない。
そうすると,原告Rに対する本件配転命令2が権利の濫用に当たるとは認められない。
(イ) 本件配転命令3について
本件配転命令3の結果,原告Rは,愛知県瀬戸市内に単身赴任することとなった(甲E18の1)。
ところで,原告Rに対する本件配転命令3に関して,証拠(甲E18の1~5)によれば,次の事実が認められる。
a 原告Rの妻は,平成13年7月ころ,肺ガンのために右肺上葉切除手術を受けた。医師からは,経過は良好で,早期に発見されたため,再発の可能性も低く,手術後5年間再発しなければ大丈夫と言われていた。
b 原告Rの妻は,本件配転命令3の時点では,何とか家事もこなせるように回復していたが,原告Rは,できる限り家事を分担して妻の負担を軽減するようにしていた。
c 本件配転命令3の後である平成15年11月ころ,原告Rの妻の肺ガンの再発が判明した。
d 原告Rは,平成16年1月から新幹線通勤が認められ,さらに,同年4月1日,大阪支店へ再配転となった。
e 原告Rの妻は,入退院を繰り返した後,平成16年11月12日に死亡した。
(ウ) 前記(イ)で認定したところをまとめると,本件配転命令3の当時,原告Rの妻は,肺ガンの摘出手術を受け,結果は良好であったものの,未だ1年4か月が経過しただけで,再発を心配することをしなくてよいといわれる5年は経過しておらず,少なくともその間は,夫である原告Rが妻と同居し,家事による負担を軽減させるとともに,ガンの再発に不安を抱きながら生活する妻を精神的にサポートし,さらには,その日々の健康状態を子細に見守る必要性が高かったというべきである。
そうすると,本件配転命令3は,原告Rにとって,通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであると認めるのが相当である。
したがって,原告Rに対する本件配転命令3は権利濫用に当たるものであって,前記(イ)で認定した諸般の事情を考慮すると,本件配転命令3による精神的苦痛を80万円と認めるのが相当である。
テ 原告S(原告19。本件配転命令2及び3関係)について
(ア) 本件配転命令2について
証拠(甲E19の1)によれば,原告Sが,線路技術職としての業務に従事してきた者であり,本件配転命令2に至るまで,営業業務の経験を有していなかったことが認められる。
しかし,原告らについて職種の限定がされていたとは認められず,かつ,本件配転命令2について認められる業務上の必要性が比較的高度のものであったと認められることを考慮すると,本件配転命令2が原告Sに対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものと認めることはできない。
そうすると,原告Sに対する本件配転命令2が権利の濫用に当たるとは認められない。
(イ) 本件配転命令3について
本件配転命令3の結果,原告Sは,単身赴任することとなった(甲E19の1)。
ところで,本件全証拠を検討しても,本件配転命令3が原告Sに対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであることをうかがわせる事情は見当たらない。
原告Sは,自身が喘息や膀胱ガンに罹患したことや,妻がうつ病に罹患した旨主張するが,いずれも,本件配転命令3の後に生じた事情であり,本件配転命令3が権利の濫用に当たることを裏付ける事情とはならない。
そうすると,原告Sに対する本件配転命令3が権利の濫用に当たるとは認められない。
ト 原告T(原告20。本件配転命令2及び3関係)について
(ア) 本件配転命令2について
証拠(甲E20の1)によれば,原告Tが,採用当初は電報配達業務に従事していたが,その後,営業窓口業務,電話機器の外販業務,保守契約の締結業務などを担当してきたことが認められる。そうすると,原告Tが,本件配転命令2によりソリューション営業を担当することになったことが,従来とは異職種の業務に配転されたと言うことはできない。
また,本件全証拠を検討しても,その他,本件配転命令2が原告Tに対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであることをうかがわせる事情は見当たらない。
そうすると,原告Tに対する本件配転命令2が権利の濫用に当たるとは認められない。
(イ) 本件配転命令3について
本件配転命令3を受けて,原告Tは,転居(単身赴任)を避けるため,新幹線通勤を選択した(甲E20の1)。
原告Tは,配転先が,営業成績をあげることのできる部署ではないと述べるが(甲E20の1),前記5で判断した事情に照らすと,本件配転命令3の業務上の必要性を否定するには至らない。
ところで,原告Tは,実母が高齢であり,その身辺介護は実母と同居している兄がしているところ,原告Tも実母の介護について相当の責任を果たさなければならないが,本件配転命令3により週末に母を訪ねることくらいしかできなくなった旨主張する。しかし,本件全証拠を検討しても,本件配転命令3当時に原告T自身が実母を実際に介護していたことや,原告T自身が介護をする具体的な必要性があったことを認めるに足りる証拠はない。
また,その他,本件配転命令3が原告Tに対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであることをうかがわせる事情は見当たらない。
そうすると,原告Tに対する本件配転命令3が権利の濫用に当たるとは認められない。
ナ 原告U(原告21。本件配転命令2及び3関係)について
(ア) 本件配転命令2について
証拠(甲E24,乙D84)によれば,原告Uが,交換機の保守建設等の業務に従事してきた者であり,本件配転命令2に至るまで,営業業務の経験を有していなかったことが認められる。
しかし,原告らについて職種の限定がされていたとは認められず,かつ,本件配転命令2について認められる業務上の必要性が比較的高度のものであったと認められることを考慮すると,本件配転命令2が原告Uに対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものと認めることはできない。
そうすると,原告Uに対する本件配転命令2が権利の濫用に当たるとは認められない。
(イ) 本件配転命令3について
本件配転命令3を受けて,原告Uは,転居(単身赴任)を避けるため,新幹線通勤を選択した(甲E24)。
ところで,原告Uは,従前から高脂血症を患っていたと主張するが,その治療内容は,毎月1回通院する程度であり(甲E24),新幹線通勤により,治療が困難になるとは認められない。
また,原告Uは,和歌山県日高郡に高齢の義母がおり,週に1回はその住居を訪問して介護を行っていた旨主張する。しかし,本件全証拠を検討しても,本件配転命令3当時に原告U自身がその義母を介護をする具体的な必要性があったことを認めるに足りる証拠はない。
その他,本件配転命令3が原告Tに対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであることをうかがわせる事情は見当たらない。
そうすると,原告Uに対する本件配転命令3が権利の濫用に当たるとは認められない。
ニ 原告V(原告22。本件配転命令2及び3関係)について
(ア) 本件配転命令2について
証拠(甲E22の1,原告V)によれば,原告Vが,採用当初は電報受付業務や資材業務などに従事していたが,平成3年ころからは営業業務を担当するようになり,外販活動に従事するようになったことが認められる。そうすると,原告Vが,本件配転命令2によりソリューション営業を担当することになったことが,従来とは異職種の業務に配転されたと言うことはできない。
また,本件全証拠を検討しても,その他,本件配転命令2が原告Vに対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであることをうかがわせる事情は見当たらない。
そうすると,原告Vに対する本件配転命令2が権利の濫用に当たるとは認められない。
(イ) 本件配転命令3について
本件配転命令3を受けて,原告Vは,転居(単身赴任)を避けるため,新幹線通勤を選択した(甲E22の1)。
ところで,原告Vは,妻の両親がいずれも高齢であり,義父は潰瘍性大腸炎に,義母は膠原病などに罹患し,身の回りの世話を行う必要がある旨主張する。なるほど,証拠(甲E22の1)によれば,これらの事実が認められるものの,同証拠によれば,原告Vの妻が主としてその世話に当たっていること,また,原告Vには新幹線通勤が許可されており,義父母の世話を手伝うことが不可能というわけではなく,他方,本件全証拠を検討しても,本件配転命令3当時に原告V自身が義父母を世話するべき具体的な必要性があったことを認めるに足りる証拠はない。
また,その他,本件配転命令3が原告Vに対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであることをうかがわせる事情は見当たらない。なお,原告Vは,突発性難聴に罹患した旨主張するが,これは本件配転命令3の後に生じた事情である。
そうすると,原告Vに対する本件配転命令3が権利の濫用に当たるとは認められない。
ヌ 原告W(原告23。本件配転命令2及び3関係)について
(ア) 本件配転命令2について
証拠(甲E23の1,甲D116,原告W)によれば,原告Wが,交換機の設備保守業務に従事してきた者であり,本件配転命令2に至るまで,営業業務の経験を有していなかったことが認められる。
しかし,原告らについて職種の限定がされていたとは認められず,かつ,本件配転命令2について認められる業務上の必要性が比較的高度のものであったと認められることを考慮すると,本件配転命令2が原告Wに対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものと認めることはできない。
そうすると,原告Wに対する本件配転命令2が権利の濫用に当たるとは認められない。
(イ) 本件配転命令3について
本件配転命令3を受けて,原告Wは,転居(単身赴任)を避けるため,新幹線通勤を選択した(甲E23の1)。
本件全証拠を検討しても,本件配転命令3が原告Wに対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであることをうかがわせる事情は見当たらない。
原告Wは,自身が大腸ポリープの手術を受けたことなどを主張するが,本件配転命令3の後に生じた事情である。
そうすると,原告Wに対する本件配転命令3が権利の濫用に当たるとは認められない。
10  原告D(原告4)の確認の訴えについて
(1) 大阪支店において勤務すべき義務の不存在確認の訴えについて(前記第1の1(1)ア)
ところで,本件における原告Dの訴えのうち,まず,被告大阪支店(茨木)(すなわち,本件配転命令1によって勤務を命じられた被告大阪支店ソリューション営業本部大阪北ソリューション営業部第13営業担当)に勤務すべき労働契約上の義務がないことの確認の訴え(前記第1の1(1)ア)については,前提事実(3)イ(別紙経歴表の4参照)のとおり,原告Dは,本件配転命令1の後,大阪支店(茨木)とは別の被告大阪支店ソリューション営業本部大阪北ソリューション営業部第11営業担当へ,さらには,被告本社マーケティング部マーケティング推進部門への配転命令を受けていることを考えると,この確認の訴えは過去の法律関係を確認しようとするものにすぎないものと認められる。
そうすると,この確認の訴えは不適法であって,却下すべきこととなる。
(2) 大分支店において勤務すべき地位にあることの確認の訴えについて(前記第1の1(1)イ)
また,本件における原告Dの訴えのうち,被告大分支店において勤務すべき地位にあることの確認の訴え(前記第1の1(1)イ)については,原告Dが,被告に対し,被告大分支店において就労する権利を求めることはできないというべきであるし,被告に対し,これに対応する義務を認めさせる利益もないというべきであり,この確認の訴えについても,不適法であるとして却下すべきこととなる。
第5  結論
1  原告ら(全員)の慰謝料請求について
以上に判断したとおり,原告E,原告F,原告Rに対する本件配転命令3については,権利の濫用に当たり,それによって生じた精神的損害は,原告E,原告Rについては各80万円,原告Fについては40万円に相当すると認められるが,その他の本件配転命令については,違法と認めることはできないのであるから,その余の原告らの慰謝料請求については,いずれも棄却すべきこととなる。
2  原告D(原告4)の確認の訴えについて
原告Dの確認の訴えについては,確認の利益を認めることはできず,いずれも却下すべきこととなる。
3  よって,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 山田陽三 裁判官 川畑正文 裁判官 細川二朗)

別紙  当事者目録
(以下省略)

別紙  配置転換目録

1 原告A(原告1)
配転元  香川支店(以下省略)
発令日  平成14年6月3日
任命(着任)日  平成14年6月10日
配転先  大阪支店(以下省略)
2 原告B(原告2)
配転元  徳島支店(以下省略)
発令日   平成14年6月3日
任命(着任)日  平成14年6月10日
配転先  兵庫支店(以下省略)
3 原告C(原告3)
配転元  岡山支店(以下省略)
発令日  平成14年5月7日
任命(着任)日  平成14年5月13日
配転先  大阪支店(以下省略)
4 原告D(原告4)
配転元  大分支店(以下省略)
発令日  平成14年5月7日
任命(着任)日  平成14年5月13日
配転先  大阪支店(以下省略)
5 原告E(原告5)
(1) 第1次配転
配転元  NTT-ME関西大阪支店(以下省略)
発令日  平成14年4月23日
任命(着任)日  平成14年5月 1日
配転先  大阪支店(以下省略)
(2) 第2次配転
発令日  平成14年11月 1日
任命(着任)日    平成14年11月 8日
配転先  名古屋支店(以下省略)
6 原告F(原告6)
(1) 第1次配転
配転元  NTT-ME関西大阪支店(以下省略)
発令日  平成14年4月23日
任命(着任)日  平成14年5月 1日
配転先   大阪支店(以下省略)
(2) 第2次配転
発令日  平成14年11月 1日
任命(着任)日    平成14年11月 8日
配転先  名古屋支店(以下省略)
7 原告G(原告7)
(1) 第1次配転
配転元  大阪支店(以下省略)(×××ビル)
発令日  平成14年4月23日
任命(着任)日  平成14年5月 1日
配転先  大阪支店(以下省略)(××ビル)
(2) 第2次配転
発令日  平成14年11月 1日
任命(着任)日    平成14年11月 8日
配転先  名古屋支店(以下省略)
8 原告H(原告8)
(1) 第1次配転
配転元  大阪支店(以下省略)(××ビル)
発令日  平成14年4月23日
任命(着任)日  平成14年5月 1日
配転先  大阪支店(以下省略)(××ビル)
(2) 第2次配転
発令日  平成14年11月 1日
任命(着任)日    平成14年11月 8日
配転先  名古屋支店(以下省略)
9 原告I(原告9)
(1) 第1次配転
配転元  大阪支店(以下省略)(××ビル)
発令日  平成14年4月23日
任命(着任)日  平成14年5月 1日
配転先  大阪支店(以下省略)(××ビル)
(2) 第2次配転
発令日  平成14年12月 9日
任命(着任)日    平成14年12月16日
配転先  名古屋支店(以下省略)
10 原告J(原告10)
(1) 第1次配転
配転元  NTT-ME関西(以下省略)
発令日  平成14年4月23日
任命(着任)日  平成14年5月 1日
配転先  大阪支店(以下省略)
(2) 第2次配転
発令日  平成14年11月 1日
任命(着任)日    平成14年11月 8日
配転先  名古屋支店(以下省略)
11 原告K(原告11)
(1) 第1次配転
配転元  NTT-ME関西(以下省略)
発令(着任)日  平成14年4月23日
任命日  平成14年5月 1日
配転先  大阪支店(以下省略)
(2) 第2次配転
発令日  平成14年11月 1日
任命(着任)日    平成14年11月 8日
配転先  名古屋支店(以下省略)
12 原告L(原告12)
(1) 第1次配転
配転元  NTT-ME関西(以下省略)
発令日  平成14年4月23日
任命(着任)日  平成14年5月 1日
配転先  大阪支店(以下省略)
(2) 第2次配転
発令日  平成14年11月 1日
任命(着任)日    平成14年11月 8日
配転先  名古屋支店(以下省略)
13 原告M(原告13)
(1) 第1次配転
配転元  NTT-ME関西(以下省略)
発令日  平成14年4月23日
任命(着任)日  平成14年5月 1日
配転先  大阪支店(以下省略)
(2) 第2次配転
発令日  平成14年11月 1日
任命(着任)日    平成14年11月 8日
配転先  名古屋支店(以下省略)
14 原告N(原告14)
(1) 第1次配転
配転元  大阪支店(以下省略)(××ビル)
発令日  平成14年4月23日
任命(着任)日  平成14年5月 1日
配転先  大阪支店(以下省略)(××ビル)
(2) 第2次配転
発令日  平成14年11月 1日
任命(着任)日    平成14年11月 8日
配転先  名古屋支店(以下省略)
15 原告O(原告15)
(1) 第1次配転
配転元  大阪支店(以下省略)(××ビル)
発令日  平成14年4月23日
任命(着任)日  平成14年5月 1日
配転先  大阪支店(以下省略)(××ビル)
(2) 第2次配転
発令日  平成14年11月 1日
任命(着任)日    平成14年11月 8日
配転先  名古屋支店(以下省略)
16 原告P(原告16)
(1) 第1次配転
配転元  大阪支店(以下省略)(××ビル)
発令日  平成14年4月23日
任命(着任)日  平成14年5月 1日
配転先  大阪支店(以下省略)(××ビル)
(2) 第2次配転
発令日  平成14年11月 1日
任命(着任)日    平成14年11月 8日
配転先  名古屋支店(以下省略)
17 原告Q(原告17)
(1) 第1次配転
配転元  NTT-ME関西(以下省略)
発令日  平成14年4月23日
任命(着任)日  平成14年5月 1日
配転先  大阪支店(以下省略)
(2) 第2次配転
発令日  平成14年11月 1日
任命(着任)日    平成14年11月 8日
配転先  名古屋支店(以下省略)
18 原告R(原告18)
(1) 第1次配転
配転元  NTT-ME関西大阪支店(以下省略)
発令日  平成14年4月23日
任命(着任)日  平成14年5月 1日
配転先  大阪支店(以下省略)
(2) 第2次配転
発令日  平成14年11月 1日
任命(着任)日    平成14年11月 8日
配転先  名古屋支店(以下省略)
19 原告S(原告19)
(1) 第1次配転
配転元  NTT-ME関西大阪支店(以下省略)
発令日  平成14年4月23日
任命(着任)日  平成14年5月 1日
配転先  大阪支店(以下省略)
(2) 第2次配転
発令日  平成14年12月 9日
任命(着任)日    平成14年12月16日
配転先  名古屋支店(以下省略)
20 原告T(原告20)
(1) 第1次配転
配転元  NTT-ME関西大阪支店(以下省略)
発令日  平成14年4月23日
任命(着任)日  平成14年5月 1日
配転先   大阪支店(以下省略)
(2) 第2次配転
発令日  平成14年12月 9日
任命(着任)日    平成14年12月16日
配転先  名古屋支店(以下省略)
21 原告U(原告21)
(1) 第1次配転
配転元  NTT-ME関西(以下省略)
発令日  平成14年4月23日
任命(着任)日  平成14年5月 1日
配転先  大阪支店(以下省略)
(2) 第2次配転
発令日  平成14年12月 9日
任命(着任)日    平成14年12月16日
配転先  名古屋支店(以下省略)
22 原告V(原告22)
(1) 第1次配転
配転元  大阪支店(以下省略)(×××ビル)
発令日  平成14年4月23日
任命(着任)日  平成14年5月 1日
配転先  大阪支店(以下省略)(×××ビル)
(2) 第2次配転
発令日  平成14年12月 9日
任命(着任)日    平成14年12月16日
配転先  名古屋支店(以下省略)
23 原告W(原告23)
(1) 第1次配転
配転元  神戸支店(以下省略)
発令日  平成14年4月23日
任命(着任)日  平成14年5月 1日
配転先  兵庫支店姫路(以下省略)
(2) 第2次配転
発令日  平成14年11月 1日
任命(着任)日    平成14年11月 8日
配転先  名古屋支店(以下省略)

別紙  経歴表
(以下省略)
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