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「営業ノルマ」に関する裁判例(6)平成29年11月 1日 東京地裁 平28(ワ)26124号 不当利得返還請求事件

「営業ノルマ」に関する裁判例(6)平成29年11月 1日 東京地裁 平28(ワ)26124号 不当利得返還請求事件

裁判年月日  平成29年11月 1日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平28(ワ)26124号
事件名  不当利得返還請求事件
裁判結果  認容  文献番号  2017WLJPCA11018005

要旨
◆原告が、被告との間で、被告の所有する本件会社の発行済株式全てを買い受ける旨の本件契約をいわゆる表明保証条項を定めた上で締結した後、本件会社が破産手続開始決定を受けたことから、被告の表明保証違反を主張して、被告に対し、既払代金相当額の損害賠償を求めた事案において、本件会社は、貸借対照表に記載しておらずかつ基準日以降の通常の業務の範囲内で生じたとはいえない債務を1億円以上も負っており、事業協力者からは損害賠償請求を、顧客からは受講料の不当利得返還請求等を受けるとともに、本件会社の従業員が次々と退職して事業活動を継続することが困難な状況に陥っていたことのほか、本件会社及びその役員等に関する紛争の実態は同社による違法な営業活動、顧客情報の無断使用等、今後の事業の存続が危ぶまれるような極めて深刻なものであったのに、被告は和解による解決可能性が高いかのように偽装していたこと等を認定して、被告の各表明保証違反を認めるなどし、請求を認容した事例

裁判経過
控訴審 平成30年 9月27日 東京高裁 判決 平29(ネ)5452号 不当利得返還請求控訴事件

参照条文
民法415条

裁判年月日  平成29年11月 1日  裁判所名  東京地裁  裁判区分  判決
事件番号  平28(ワ)26124号
事件名  不当利得返還請求事件
裁判結果  認容  文献番号  2017WLJPCA11018005

東京都港区〈以下省略〉
原告 株式会社X
同代表者代表取締役 A
同訴訟代理人弁護士 山口拓郎ほか
東京都千代田区〈以下省略〉
被告 Y株式会社
同代表者代表取締役 B
同訴訟代理人弁護士 鈴木俊

 

 

主文

1  被告は,原告に対し,2925万円及びこれに対する平成28年9月5日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2  訴訟費用は被告の負担とする。
3  この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。

 

事実及び理由

第1  請求
1  主文第1項と同じ。
2  仮執行宣言
第2  事案の概要
1  原告は,平成28年6月16日,被告との間で,被告の所有する株式会社a(対象会社)の発行済株式の総数1000株全てを代金2925万円で買い受ける旨の株式譲渡契約(本件契約)をいわゆる表明保証条項を定めた上で締結し,同日,被告に対し,上記代金全額を支払った。ところが,対象会社は,同年7月22日,支払不能の状態にあることが認められるとして,破産手続開始の決定を受けた。
本件は,原告が,破産せざるを得ないような無価値の対象会社を購入してしまったのは,被告に本件契約上の表明保証違反があったためであると主張して,被告に対し,本件契約上の表明保証違反を理由とする損害賠償請求権に基づき,被告に支払った代金相当額2925万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成28年9月5日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
被告は,上記表明保証違反の有無を主に争っている。
2  前提事実
(1)  原告(甲1)は,平成23年12月26日に成立した,日用雑貨品の製造販売等を目的とする株式会社である。
(2)  対象会社(甲4)は,平成24年3月30日,セミナープロデュース事業(セミナーの講師やセミナーを提供する会社から委託を受けて,セミナーの準備,集客,集金を行う事業)等を行う株式会社であり(甲52),平成28年6月16日以前の代表取締役は被告代表者(B)であった。
(3)  被告(甲3)は,平成27年2月20日に成立した,株式の保有,売買,その他の投資事業等を目的とする株式会社である。
被告は,平成28年6月16日当時,対象会社の発行済株式の総数1000株全てを所有していた。
(4)  原告は,平成28年6月16日,被告との間で,被告の所有する対象会社の発行済株式の総数1000株全てを代金2925万円で買い受ける旨の本件契約(甲2)を締結し,同日,被告に対し,上記代金全額を支払った(甲11)。本件契約には,被告が,原告に対し,次のアないしウの事項を表明し,保証する旨の条項が定められており(本件契約6条7号ないし9号),この条項について重大な違反があった場合,被告はこれによって原告が被った損害,損失,費用等を賠償する旨の条項が定められていた(本件契約7条)。
ア 対象会社は,基準日(平成28年2月29日。以下同じ。)現在の貸借対照表に表示されている債務及び基準日以降,通常の業務の範囲内において生じた債務以外には,いかなる債務(対象会社に知れている債務か否かを問わない。)も負担していないこと,また,基準日後,対象会社の財政,資産の状態,経営成績等に重大な悪影響を及ぼすおそれのある事由が生じていないこと
イ 被告(対象会社の前株主であるBを含む。)及び対象会社がそれぞれ原告に対して開示(口頭による開示を含む。)した事実又は資料の記載内容が,全て真実かつ正確なものであり,虚偽や重大な誤りは存在しないこと,また,かかる開示された情報以外に,対象会社とその役員又は従業員との間の契約(口頭によるものを含む。)のほか,対象会社に重大な悪影響を及ぼすか,及ぼすことが合理的に予見される事実は存在しないこと
ウ 対象会社並びにその役員及び従業員に関して,訴訟その他の紛争(役員及び従業員に関しては対象会社の従業員に関するものに限る。)が存在せず(ただし,被告(対象会社の前株主であるBを含む。)及び対象会社がそれぞれ原告に対して開示(口頭による開示を含む。)し,原告が承知しているものを除く。),また,合理的に予見される範囲において,かかる紛争のおそれも存在しないこと
(5)  ところが,対象会社は,平成28年7月22日,支払不能の状態にあることが認められるとして,破産手続開始の決定を受け(東京地方裁判所平成28年(フ)第5222号,甲5。本件破産手続開始決定),これを不服とするBが本件破産手続開始決定に対する抗告を申し立てたが,その抗告審において,平成29年4月25日,Bの抗告を棄却する旨の決定(東京高等裁判所平成28年(ラ)第1730号,甲57)がされ,本件破産手続開始決定は確定した。
(6)  原告は平成28年8月4日に本件訴訟を提起し,その訴状は同年9月4日に被告に送達された(記録上明らかな事実)。
3  争点(被告の表明保証違反の有無)及びこれに関する当事者の主張
(原告の主張)
(1) 被告は,本件契約の締結に先立ち,原告に対し,対象会社の決算報告書等の資料を交付した上,①対象会社は,平成27年11月にリストラを実施し,残った社員のモラルは極めて高く,定着率もよい,②対象会社には二つの営業部があり,各営業部が数多くある提携先から有望な商品を三つ選択し,毎月二つの営業部で各三つ,合計六つのセミナーを運営している,③対象会社には自社で開発したセミナーがあり,自社セミナーでは,セミナーを提供する講師や会社を探す必要はなく,利益率もよい,④対象会社には,受講者からセミナー代金の返還を請求する訴訟が5件係属しているが,いずれも和解により終結見込みであるなどと説明していた。
(2) ところが,実際は,対象会社においては,①従業員全員が平成28年6月初旬には退職を決意していた,②そのため,新規の営業活動は一切行われていなかった,③かえって,営業ノルマを達成できない従業員にはペナルティが課され,その支払を拒否して退職した従業員から,未払給与や残業代の支払を請求する訴訟が提起されていた,④セミナーを提供する会社(株式会社b,株式会社c)との関係でも,その顧客情報の無断使用により2300万円以上の損害賠償請求を受けていた,⑤顧客との関係でも,脅迫又は詐欺的な行為により顧客にセミナー代金を支払わせていたことにより,5000万円以上の代金返還請求を受けていた。他方,対象会社には1000万円程度の預金,現金しかなく,対象会社が本件破産手続開始決定を受けることは不可避の状況にあった。
(3) したがって,被告には本件契約上の表明保証違反(本件契約6条7号ないし9号違反)があり,対象会社が破産せざるを得ないような無価値の会社であったことに照らせば,その違反の程度は重大なものであったから,被告は,原告に対し,原告が支払った代金相当額2925万円を賠償すべき義務を負うというべきである。
(被告の主張)
原告の上記主張は否認し,争う。
仮に本件契約上の表明保証違反の事実があったとしても,被告から上記事実について開示を受けていた原告は悪意であったから,被告が本件契約上の表明保証違反を理由とする損害賠償責任を負うことはないし,原告が被告から開示を受けていた上記事実について本件契約上の表明保証違反を主張することは信義則に違反して許されない。
第3  当裁判所の判断
1  前提事実,証拠(甲50,甲52,乙35のほか後記各書証,被告代表者本人)及び弁論の全趣旨によれば,本件契約が締結されるに至る経緯,対象会社の実態等について,次の事実が認められ,この認定に反する被告代表者の陳述,供述は,上記各証拠のほか弾劾証拠(甲58ないし甲62)に照らして信用することができない。
(1)  原告は,平成28年(以下,平成28年については,特に必要のない限り,年月日における「年」の記載を省略する。)5月中旬,株式会社eから,対象会社の100%株式譲渡案件(譲渡時期6月,譲渡代金4500万円)の紹介を受けた(甲17)。
(2)  原告は,被告から,対象会社の定款,組織図,社員名簿(甲21)等のほか,第4期(平成27年3月1日から平成28年2月29日まで)決算報告書(甲9),3月末日時点の合計残高試算表(甲16),4月末日時点の合計残高試算表(甲20),対象会社が最近行ったプロデュースセミナー実績(甲18)の各資料の提供を受けた。
これらの資料によれば,対象会社においては,直近1年間の売上高として約2億2926万円もあった上,ホームページに記載されていない三つのセミナープロデュース事業では1件当たり6500万円弱ないし8000万円強の売上げもあるなど,対象会社の事業は好調であり,その経営に問題があるとは認められなかった。
(3)  原告は,5月23日,対象会社の経営状況等について被告から事情聴取したところ,被告の説明によれば,対象会社の譲渡を急ぐのは,Bが渡米してシリコンバレーで起業することを予定し,8月にシリコンバレーで開催されるベンチャーキャピタル主催のコンテストに参加することを予定しているため,6月初旬までに起業した会社を売却したという実績が必要であるとのことであった。また,対象会社においては,予定していた上場を断念したため,平成27年9,10月にリストラを実施したが,現在残っている従業員のモラルは極めて高く,定着率もよいとのことであった。
(4)  被告の上記説明を信じた原告は,対象会社の買収を前向きに検討することとし,5月24日,被告に対し,①従業員の継続雇用(流出リスクの回避)に対する協力を求める趣旨で,Bが渡米後も対象会社の取締役に就任して対象会社の経営に引き続き関与するよう依頼する一方,②代金額4500万円の支払名目はBへの退職金と役員報酬とし,その支払方法は,6月中旬の基本合意時に450万円,同月末の正式契約時に1650万円,その後は毎月末日限り月額100万円の24回分割払とすることを提案した(甲22,乙6)。
これに対し,被告は,5月25日,①Bが1年間対象会社に在籍するという折衷案を提案する一方,②代金の支払名目については,退職金ではなく譲渡金とするよう求めた上,正式契約時に全額の65%に相当する2925万円の一括払,残額である1575万円を12回の分割払とする内容の支払時期を早める別案を提示した(甲15)。
(5)  原告は,被告から,5月30日には対象会社の監査報告書を(甲23),6月1日には対象会社の商業登記簿謄本や資金繰り表を(甲24),同月3日には対象会社のセミナー開催や顧客へのセールスレターを(甲26),それぞれ受領した。これらの資料の中に,被告の原告に対する従前の説明を否定するようなものはなかった。
また,原告は,6月9日,被告から,5月に対象会社が自社開発の新商品を販売したため,その売上額が1500万円弱であること,ただ,売上げの65%程度がクレジットカード決済であるので,入金までに若干のタイムラグがあることなどの説明を受けた(甲27)。
さらに,原告は,6月10日,被告から,対象会社の5月末日時点の合計残高試算表(甲29)と6月末日時点の合計残高試算表(甲30)を受領した。これらの資料によっても,被告の原告に対する従前の説明を否定するようなものはなく,原告から見て対象会社の事業に問題は認められなかった。
(6)  原告は,6月14日,被告から,①係争案件について,対象会社が請求している案件も含めて5件の訴訟(その総額は約2300万円)があるが,担当弁護士によれば,いずれも和解筋で全額敗訴は考えられないこと,他に4件の内容証明郵便のやり取りレベルの案件があるが,担当弁護士からの返信に対する反応がなく,数箇月が経過していること,②従業員について,チームリーダーを務めるCから6月13日付けで退職届(その退職予定日は7月12日)が提出されたこと,チームの管理職であるDが5月末に退職したこと,チームのメンバーであったEが6月末に退職する予定であること,しかし,現在の対象会社の従業員は7名(Bを除く。)であり,その中核であるF,Gは引き続き残っていることなどの説明を受けた(甲8)。
なお,原告は,6月15日,対象会社が上場を目指していた頃に平成27年9月29日付け意見書(甲31)を作成した担当弁護士に面談したことがあったが,係争案件に関する被告の原告に対する従前の説明を否定するような指摘を受けることも,係争案件の訴訟資料(乙11の1)の提供を受けることもなかった。
(7)  原告は,6月16日,被告との間で,本件契約を締結した。本件契約において,代金額は被告の希望する2925万円と約され,その支払も契約締結時の一括払とすることが約されていたが,自己資金で賄うことができなかった原告は,被告側から提案されたスキーム(乙5)に従って,対象会社から借り入れた金員(甲10,甲11)をもって被告に支払う代金の支払原資とすることとされた。
なお,本件契約上,対象会社の代表取締役としての業務の引継ぎは6月末日までをめどとして行われることが約されていたほか(甲2の9条),Bの提案により,対象会社の6月の売上げに影響しないよう,本件契約の締結による株式譲渡や代表者の交代を対象会社の従業員に発表するのは7月1日以降とすることとされた。
(8)  ところが,原告は,6月16日以降,被告から,対象会社の従業員が次々と退職する旨の連絡を受けた(Hの退職届は6月16日付け(甲46),Iの退職届は同月21日付け(甲47の1頁))。もっとも,被告は,対象会社の従業員の中核となるF,Gの退職を心配する原告(乙7)に対し,F,Gは引き続き業務に当たっており,彼らは業務へのオーナーシップが強いので,他人の退職に影響を受けないなどと告げて,F,Gが退職しないことを強調していた(甲47の2頁)。
しかし,原告は,7月8日,被告から,対象会社の従業員であるFの退職の意思が固く,7月末に退職する予定であるとの連絡を受けた(甲48)。もっとも,Bは,5月15日の時点でFが7月中に対象会社を退職する予定であることを承知していた(甲49)。
(9)  また,対象会社の代表取締役の交代後である7月以降に行われた調査により,対象会社につき,次のような事実も発覚した。
ア 対象会社は,平成27年8月20日,業務委託契約を締結していたd社から,同社の顧客情報を対象会社が無断使用したことについて抗議を受けていた(甲36)。
イ 対象会社は,業務委託契約を締結していた株式会社cの代理人弁護士から,3月31日付け通知書(甲12)をもって,対象会社が契約期間満了後も株式会社cの商品の販売権限があるように装って販売したり,同社の商品であるかのように装って同社の商品ではないものを販売したりしたとして,1145万円の請求を受けていた。
ウ 対象会社は,業務委託契約を締結していた株式会社b(乙10)の代理人弁護士から,6月29日付け通知書(甲13)をもって,同社の顧客に対する詐欺,脅迫,同社の顧客情報の無断使用などの違法な営業活動があった旨の指摘を受けていた。これに対し,Bは,対象会社の従業員に対し,株式会社bに同社の顧客情報の無断使用の情報が入らないように対応するよう指示していた(甲32,甲33)。
エ 他方,対象会社は,平成27年9月以降,その顧客からも,対象会社の違法な営業活動を理由とする返金請求(対象会社の認識するところだけでも合計約5989万円)を次々と受けていた(甲14のほか,Jにつき甲37,Kにつき甲38の1及び2,Lにつき甲39,Cにつき甲40,Mにつき甲41,N,O,Pにつき甲42)。
(10)  原告代表者が新たに代表取締役となった対象会社は,7月22日,対象会社が約8324万円の債務を負担しており,これらの債務を支払うだけの資産がないという債務超過の状態にあって,支払不能にあると主張して,破産手続開始の申立てをし(東京地方裁判所平成28年(フ)第5222号。甲57の2頁),同日,本件破産手続開始決定(甲5)がされた。
これを不服とするBが本件破産手続開始決定に対する抗告を申し立てたが,その抗告審は,平成29年4月25日,本件破産手続開始決定当時,対象会社の資産が約4051万円であるのに対し,その負債は合計約1億2906万円と債務超過の状態にあって,対象会社は,現にその債務を弁済していなかった上,事業協力者からは損害賠償請求を,顧客からは受講料の不当利得返還請求又は損害賠償請求を受ける一方,対象会社の従業員が次々と退職し,事業活動を継続することが困難な状況に陥っており,支払能力を欠くために,弁済期の到来している債務を一般的かつ継続的に弁済することができない状態にあった,すなわち,支払不能にあったと判断して,Bの抗告を棄却する旨の決定(甲57)をし,本件破産手続開始決定は確定した。
2(1)  前提事実(4)アのとおり,本件契約上,被告は,原告に対し,対象会社が,基準日(平成28年2月29日)現在の貸借対照表に表示されている債務及び基準日以降,通常の業務の範囲内において生じた債務以外には,いかなる債務(対象会社に知れている債務か否かを問わない。)も負担していないこと,また,基準日後,対象会社の財政,資産の状態,経営成績等に重大な悪影響を及ぼすおそれのある事由が生じていないことを表明し,保証していたにもかかわらず,上記1で認定した事実によれば,対象会社は,上記貸借対照表に記載しておらず,かつ基準日以降の通常の業務の範囲内において生じたとはいえない債務を1億円以上も負っていたのであるから,被告には本件契約6条7号の表明保証違反があったというべきである。
(2)  次に,前提事実(4)イのとおり,本件契約上,被告は,原告に対し,被告(対象会社の前株主であるBを含む。)及び対象会社がそれぞれ原告に対して開示(口頭による開示を含む。)した事実又は資料の記載内容が,全て真実かつ正確なものであり,虚偽や重大な誤りは存在しないこと,また,かかる開示された情報以外に,対象会社とその役員又は従業員との間の契約(口頭によるものを含む。)のほか,対象会社に重大な悪影響を及ぼすか,及ぼすことが合理的に予見される事実は存在しないことを表明し,保証していたにもかかわらず,上記1で認定した事実によれば,被告から原告に開示された資料上,対象会社の事業の存続に問題があることをうかがわせるような情報は全く提供されておらず,被告の原告に対する口頭による説明上も,対象会社の経営は順調であったというものであったのに対し,実際の対象会社は,事業協力者からは損害賠償請求を,顧客からは受講料の不当利得返還請求又は損害賠償請求を受けていたほか,対象会社の従業員が次々と退職し,事業活動を継続することが困難な状況に陥っていたのであるから,被告には本件契約6条8号の表明保証違反があったというべきである。
(3)  さらに,前提事実(4)ウのとおり,本件契約上,被告は,原告に対し,対象会社並びにその役員及び従業員に関して,訴訟その他の紛争(役員及び従業員に関しては対象会社の従業員に関するものに限る。)が存在せず(ただし,被告(対象会社の前株主であるBを含む。)及び対象会社がそれぞれ原告に対して開示(口頭による開示を含む。)し,原告が承知しているものを除く。),また,合理的に予見される範囲において,かかる紛争のおそれも存在しないことを表明し,保証していたにもかかわらず,上記1で認定した事実によれば,被告が,原告に対し,5件の訴訟案件と4件の訴訟外案件の存在は告知していたものの,これらの紛争の実態は,係争の各相手方から指摘されたように,対象会社による違法な営業活動,顧客情報の無断使用等,対象会社における今後の事業の存続が危ぶまれるような極めて深刻なものであったのに,被告から原告への告知内容はそのような紛争の深刻さを正しく伝えることなく,かえって,全面敗訴はあり得ず,和解による解決可能性が高いかのように偽装していたのであるから,被告には本件契約6条9号の表明保証違反があったというべきである。
(4)  そして,以上のような被告の本件契約上の表明保証違反は,対象会社の単なる債務超過というにとどまらず,破産原因となる支払不能を構成するほど重大な違反(本件契約7条)であったことは上記1で認定し,上記2(1)ないし(3)で判示したところに照らして明らかであるから,被告は,原告に対し,これによって被った損害を賠償すべき義務があるところ,原告としては,対象会社が支払不能の状態にあるような無価値の会社であると知らされていれば,本件契約を締結し,その譲渡代金を支払うことはなかったから,原告から被告に支払われた譲渡代金全額(2925万円)をもって相当因果関係のある損害と認める。
(5)  なお,上記1で認定し,上記2(1)ないし(3)で判示したところに照らせば,本件契約の締結に至った原告において,被告から開示を受けていなかった事実につき悪意であったとは認められないし,また,原告が被告から開示を受けていなかった事実について本件契約上の表明保証違反を主張することが信義則に違反するともいえない。
3  以上と異なる被告の主張は,上記1で認定し,上記2で判示したところに照らして,いずれも採用することができない。
第4  結論
よって,原告の請求は理由があるから,これを認容することとして,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第39部
(裁判官 田中秀幸)

 

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